説明

通信制御システム

【課題】監視対象者の安全確保,安全確認の的確化と迅速な対応,犯罪の未然防止と抑止効果の向上を図る通信制御システムを提供すること。
【解決手段】複数の監視対象者の監視端末と、監視端末の位置情報を管理する情報管理装置(センタ)とを備え、監視端末が、地理的位置情報を取得する位置情報取得部と、相互にグループ化することが許可された監視対象者の監視端末どうしでグループを設定するグループ設定部と、取得した位置情報とグループの設定情報とを、センタへ送信する送信部とを備え、情報管理装置が、位置情報とグループの設定情報を受信する受信部と、監視対象者の属性情報と、監視対象者の監視レベルの判定条件とを記憶した記憶部と、設定されたグループ内の監視端末ごとに受信した位置情報から、監視端末相互間の距離を算出する相互距離確認部と、算出された距離と、監視対象者の属性情報と、判定条件とから、監視対象者の現在の監視レベルを判定する監視レベル判定部とを備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、通信制御システムに関し、特に、児童等の監視対象者の安全の確保と、犯罪の未然防止および抑止効果をより高めるために、情報管理装置と監視端末等間で送受信される監視情報の通信制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、児童に対する犯罪が増加傾向にあることを考慮して、GPSや携帯電話を利用した児童の安全を確認する監視システムが提案されている。
たとえば、児童に、GPSにより位置を把握することのできるGPS携帯電話を持たせ、児童の保護者や学校関係者が、パソコンや携帯電話を用いてその児童の現在位置を確認するシステムが利用されている。
【0003】
また、児童自らが危険を察知して防犯ブザーを鳴らした場合、防犯ブザーとGPS携帯電話とを連動させて、保護者等の端末に、その児童の現在位置情報を自動的に通知するシステムも利用されている。
さらに、児童の通学路等を含む監視領域を、GPS携帯電話に予め登録しておき、その児童が監視領域の外へ出た場合に、その児童の現在位置情報を、自動的に保護者等の端末に通知するシステムや、その児童のGPS携帯で警報音を鳴らすシステム(特許文献1参照)も提案されている。
また、監視対象者が予め登録された行動予定データと異なる予定外の行動をとった時のみに自動的に監視者に通報する位置情報配信装置も提案されている(特許文献2参照)。
【0004】
さらに、無線式の親機端末と、徘徊者等が持った無線式の端末との間で電波を送受信し、互いに電波を受信しない距離だけ離れた場合に、それぞれの端末から、メッセージを音声で発報する音声通報装置が提案されている(特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2006−171970号公報
【特許文献2】特開2002−101442号公報
【特許文献3】特開2001−52288号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記のような従来の監視システム等では、次のような問題がある。
(1)児童の現在位置を確認できるシステムでは、保護者等が、登下校時に児童の現在位置を把握できたとしても、その児童が危険な状況にあるかまでは把握できない。すなわち、児童の安全確認という観点から、位置情報の把握だけでは情報として不十分である。
(2)児童自ら防犯ブザーを鳴らす操作をする場合、特に低学年の児童などその操作自体困難な状況にある場合もあり、また、防犯ブザーを鳴らした後に、保護者等がその位置を確認しても手遅れとなる場合もある。
(3)監視領域外に出たときに通報するシステムでは、領域外に出た原因が犯罪によるものか、正常な登下校時における児童の偶然の行動によるものなのか、不明であり、また、犯罪は、当該登録された監視領域内でも行われる可能性がある。すなわち、通常の通学路上でも安全とは言えず、監視領域の内と外の区別と、犯罪に巻き込まれる可能性とは必ずしも一致しない。
【0006】
(4)行動予定データを予め登録するシステムでは、行動予定が多種ある場合はその登録が煩雑である。また、危険が及んでいない場合でも、登録された行動予定にない予定外の行動をした場合には通知されてしまい、誤報となる可能性がある。
さらに、監視対象者が児童などの場合には、予定行動の範囲内であったとしても、犯罪に合う可能性があり、安全の確保が不十分である。
以上のように、従来の監視システム等では、いずれも安全の確保が不十分な場合があり、特に通常安全と考えられるエリア内や行動範囲内でも、犯罪に巻き込まれる可能性があることから、そのような場合のより十分な安全確保と、犯罪の抑止効果等が望まれる。
【0007】
また、児童に対する犯罪の約8割は、児童が一人でいる時に発生しているという統計データも存在する。すなわち、通常の通学路上や監視領域内であっても、児童が一人もしくは少人数となった場合に、重点的に監視することが望まれる。
そこで、本願発明は、以上のような事情を考慮してなされたものであり、単に位置情報を通信するのではなく、監視対象者に対応した特定の条件に基づいて、監視および通知内容を変化させることのできる監視情報の通信制御システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、複数の監視対象者がそれぞれ所持する監視端末と、監視端末の位置情報を管理する情報管理装置とを備え、前記監視端末が、地理的位置情報を取得する位置情報取得部と、相互にグループ化することが許可された監視対象者の監視端末どうしでグループを設定するグループ設定部と、前記取得した位置情報と前記グループの設定情報とを、情報管理装置へ送信する第1送信部とを備え、前記情報管理装置が、前記位置情報とグループの設定情報を受信する第1受信部と、監視対象者の属性情報と、監視対象者の監視レベルを判定するための条件とを記憶した管理情報記憶部と、前記設定されたグループに属する監視端末ごとに受信した位置情報から、監視端末相互間の距離を算出する相互距離確認部と、前記算出された距離と、前記監視対象者の属性情報と、前記監視レベル判定条件とから、監視対象者の現在の監視レベルを判定する監視レベル判定部とを備えたことを特徴とする通信制御システムを提供するものである。
これによれば、監視端末相互間の距離と監視対象者の属性情報とを用いて監視対象者の監視レベルを判定しているので、監視対象者の現在の状態に対応して、より的確な監視と迅速な対応が可能となる。特に、位置情報や監視端末の相互距離に加えて監視対象者の属性情報を用いて監視レベルを判定しているので、位置だけでは把握できない危険な状態を検出することができる。
【0009】
また、この発明は、前記特定の監視対象者の監視状態を確認する確認端末をさらに備え、前記情報管理装置が、前記監視レベル判定部によって判定された監視レベルに予め対応づけられた動作を実行し、前記確認端末に、監視対象者の現在の監視レベルを識別する状態情報を通知することを特徴とする。
これによれば、監視対象者の監視レベルに対応した現在の状態情報を、確認端末へ通知しているので、監視対象者の安全確認を的確にすることができ、確認端末で監視対象者の監視状態を確認する者の監視負担を軽減でき、さらに迅速な対応が可能となることで犯罪の未然防止や犯罪の抑止効果の向上を図ることができる。
【0010】
また、前記確認端末が、各監視対象者の属性情報と、相互にグループ化することが許可された監視対象者のリストとを登録する入力部と、前記登録された監視対象者の属性情報を前記情報管理装置へ送信し、前記監視対象者のリストを前記監視端末へ送信する第2送信部とを備えたことを特徴とする通信制御システムを提供するものである。
これによれば、監視対象者の属性情報などの監視情報を、確認端末を利用する監視者が登録することができ、これらの情報を予め情報管理装置に送信しておくことで、的確な安全確認と監視が可能となる。
【0011】
さらに、前記監視端末が、前記監視対象者のリストを記憶する監視情報記憶部を備え、前記グループ設定部は、監視対象者のリストの中に含まれる監視対象者の監視端末のみの間でグループを設定し、当該リストに含まれない監視対象者の監視端末との間ではグループを設定しないことを特徴とする。
これによれば、グループ設定可能な監視対象者を制限することができ、より的確な監視が可能となる。相互にグループ化することが許可された監視対象者のリストを、以下の実施例では、ホワイトリストと呼ぶ。
【0012】
また、前記確認端末が、前記情報管理装置から通知された監視対象者の状態情報を用いて、監視をする者へ知らせる報知情報を生成する報知情報生成部を備えたことを特徴とする。
また、前記確認端末は、報知部を備え、前記情報管理装置から通知された監視対象者の状態情報には、監視対象者の現在の監視レベルと、現在の位置情報と、属性情報とを含み、前記報知情報生成部によって生成される報知情報には、通知された状態情報を視覚的に表現した地図情報および聴覚的に報知する音声情報とを含み、前記報知部が、地図情報を表示し、音声情報を出力することを特徴とする。
これによれば、監視対象者の現在の監視レベルと状態情報に対応した報知をするので、監視する者の監視負担の軽減と、的確な対応が可能となる。
【0013】
さらに、前記情報管理装置の管理情報記憶部には、前記監視レベルを判定するための条件とその条件を満たしたときに実行する動作を含む監視レベル情報を予め記憶し、前記監視レベル情報は、少なくとも監視対象者を監視しない非監視状態レベルと、グループ設定をしかつ監視を開始することを示す第1監視レベルと、監視を開始後、設定されたグループに含まれていた特定の監視対象者が一人になったこと、あるいは一定数以下の人数になったことを示す第2監視レベルとを含むことを特徴とする。
これによれば、安全状態の程度に対応して監視レベルを判定するので、監視対象者の現在の監視状態を、より的確に把握できる。
【0014】
また、前記第2監視レベルの特定の監視対象者は、監視対象者の属性情報によって決定されることを特徴とする。
これによれば、監視対象者の現在の位置情報だけでなく、その属性情報によってその監視レベルの監視対象者を決定するので、監視対象者の位置だけでは把握できない危険な状態を検知することが可能となり、監視する者のより的確な監視および対応が可能となる。
【0015】
また、この発明において、前記監視対象者の属性情報は、監視対象者自身の氏名,性別,年令,学年,学校名,保護者特定情報,連絡先情報のうちいずれか1つ以上を含むようにしてもよい。
さらに、この発明の監視対象者には、児童,徘徊者,旅行参加者,共同作業員などを含めることができる。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、監視端末相互間の距離と監視対象者の属性情報とを用いて、監視対象者の監視レベルを判定しているので、監視対象者の現在の状態に対応して、より的確な監視と迅速な対応が可能となる。
特に、現在位置だけでなく、2人以上の監視対象者の相互距離と属性情報をも利用することにより位置だけでは把握できない危険な状態を検出することができる。
たとえば、監視対象者が通常の通学路を歩行中でも、グループから離れて一人で単独行動している場合は、危険な状態にあることを検出できる。
また、監視レベルに対応づけられた動作と状態情報の通知をすることにより、監視をする者の監視負担の軽減と、より的確な安全確認と犯罪の未然防止と、犯罪の抑止効果の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を使用して本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の実施例の記載によって、この発明が限定されるものではない。
この発明において、位置情報は、人工衛星から送られてくる電波を用いて取得することができ、いわゆるGPSを利用すればよい。位置情報取得部は、以下の実施例では、GPS位置情報受信部に相当する。
グループ設定部は、以下の実施例のペア(グループ)設定部に相当する。グループとは2人以上の仲間を形成することをいい、以下の実施例では、特に2人のグループをペアと呼んでいる。すなわち、ペアは、グループの下位概念である。
また、監視対象者の属性情報は、監視レベルの判定のために情報管理装置へ送信されるが、監視レベルの判定を監視端末側で行う場合は監視端末へ送信してもよく、また予め監視端末の記憶部に格納しておいてもよい。
【0018】
<この発明の通信制御システムの構成>
図1に、この発明の通信制御システムの全体構成接続図を示す。
図1において、この発明の監視情報の通信制御システムは、主として、監視対象者(たとえば、児童)が所持する監視端末(監視TEとも呼ぶ)100と、監視者(たとえば、保護者)が所有する確認端末(確認TEとも呼ぶ)200と、監視情報や登録情報などを一元管理し、監視対象者の監視レベルを判定して通報を行う情報管理装置(センタとも呼ぶ)300とから構成される。
これらの端末(100,200)や装置300は、ネットワーク10を介して相互に接続され、監視情報などの種々のデータを通信する。
【0019】
情報管理装置300は、たとえばセキュリティ会社や、地域の防犯管理会社,公共施設,警察署,学校などのいずれかに設置されるコンピュータである。
この装置300は、一般的なパソコンやワークステーションと同様の構成を有し、たとえば、CPU,ROM,RAM,I/Oコントローラおよびタイマーからなるマイクロコンピュータ,ネットワーク接続モジュール,HDDのような記録装置などを備え、HDDに格納された制御プログラムに基づいて、CPUが種々のハードウェアを動作させることにより、この発明の通信制御機能を実現する。
【0020】
確認端末200は、監視対象者を監視する監視者の自宅や事務所に設置されるコンピュータであり、たとえば、保護者宅,学校,地区の防犯委員宅,警察署などに設置される。確認TE200としては、パソコンの他、持ち運び可能な携帯電話,通信機能を有するモバイル端末が利用できる。
【0021】
また、確認端末200は、1台の場合もあるが、監視をする者(たとえば保護者)が複数いるときは、その人数分(2a〜2k)だけ存在する。
また、確認端末200では、後述するような登録情報の設定入力処理,監視TE100の位置および監視レベルの確認と監視対象者への報知処理等を行う。
ここで、監視レベルの確認とは、たとえば、監視対象者(自分の子供)が、一人で行動しているか、グループで行動しているか、危険度の高い状況にあるかなどを確認することである。
【0022】
監視端末100は、監視対象者が携帯する小型のコンピュータであり、たとえば、通信機能を有する携帯電話が用いられる。
また、監視TE100は、人工衛星11からのGPS信号(位置情報)を常時受信し、自己の位置(緯度,経度)を特定する機能を有する。監視端末100は、たとえば、監視対象者である児童ごとに携帯され、複数台(1a〜1n)存在する。
【0023】
また、複数台の監視TE100は、予め登録された監視対象者の範囲内で、ペアあるいはグループを設定する。ペアあるいはグループの設定は、特定のイベントごとにその都度行われる。特定のイベントとは、たとえば、児童の登校,下校,集団登校,遠足や旅行での集団行動などを意味する。
たとえば、監視対象者である2人の児童が一緒に登校する時、あるいは下校する時に、その2人の児童が所持する監視TE(1aと1b)間で、ペア設定される。
また、複数人の児童が集団登校あるいは集団下校する時に、それらの児童が所持する監視TE相互間で、グループの設定をする。
【0024】
たとえば、図1では、2つの監視TE(1aと1b)間で、ペア設定(P1)され、4台の監視TE(1c〜1f)間で、1つのグループ設定(G1)がされ、8台の監視TE(1g〜1n)間で、別のグループ設定(G2)がされていることを示している。
ペア設定とは、2つの監視TE100が、一定の距離(たとえば10m)以上離れることなく、その後の行動を共にすることを意味する設定である。グループ設定とは、複数台の監視TE100が、互いに一定の距離以上離れることなく、その後の行動を共にすることを意味する設定である。一定の距離以上離れたか否かは、各監視TE100で受信した人工衛星からの位置情報を用いて判断することができる。
【0025】
この発明では、このようなペア設定やグループ設定が行われた後、監視対象者(児童など)の行動により、ペアやグループの形成状況に変化が生じた場合、その変化の状況に対応して監視レベル(監視モードとも呼ぶ)を柔軟に変化させることを特徴とする。
【0026】
監視対象が児童の場合、互いにあまり離れずにペアやグループで行動しているときは、犯罪に巻き込まれる可能性は比較的少ないと考えられるので、監視レベルは低くし、通知や確認を行う頻度は少なくする。
一方、ペアやグループで行動していた状態から、1人で行動するようになった場合や一定距離以上離れて少人数で行動するようになった場合、犯罪に巻き込まれる可能性が高くなったと考えられるので、監視レベルを高くし、通知や確認を行う頻度を多くし、さらに必要に応じて特別な監視動作を行うようにする。
【0027】
たとえば、図1において、監視TE(1a,1b)を持った2人の児童がペア設定をして一緒に下校を開始した場合、各児童の持つ監視TE(1a,1b)の位置情報をセンタ側で常に把握しておき、一定距離内(たとえば10m)を維持して行動しているときは、監視レベルは低く(レベルL1)設定し、保護者には何も通知しない。
一方、2人の監視TEのそれぞれの位置情報から、一定時間以上一定距離以上離れた状態が連続した場合には、相互に一人になったと判断し、監視レベルを高レベル(レベルL3)に変更し、保護者に、その児童が一人になったことを通知する。
【0028】
以上の説明は一実施例であるが、このように各監視TEの位置情報をもとに、監視レベルを変更して、監視対象者の状態に対応した確認をするようにすれば、監視者の監視の負荷の軽減,犯罪の未然防止と抑制,安全性確認の確実性の向上などを図ることが可能となる。
【0029】
図2に、この発明の通信制御システムの一実施例の構成ブロック図を示す。
この発明の監視TE100,確認TE200,情報管理装置300は、それぞれネットワーク10を介して、相互に接続され監視情報等を相互に通信する。
ここで、ネットワーク10としては、たとえば、インターネット等の広域通信網,ローカルエリアネットワーク,携帯電話などの無線通信網などが利用できる。
【0030】
確認端末200は、主として、ネットワーク10に接続し通信を行うための送信部201,受信部202に加え、登録情報を入力するための入力部204,登録情報を記憶するための登録情報記憶部206,監視対象者の状況を確認するための報知部205および報知情報生成部203とを備える。
入力部204は、音声,文字,記号等の入力,項目の選択,確認指示などを入力するためのものであり、マイク,キー,マウスなどに相当する。
報知部205は、監視対象者の状況や監視受信情報等を、監視する者に知らせるためのものであり、文字,図形等で視覚的に知らせる表示部(LCD)や、音声で聴覚的に知らせるスピーカなどが相当する。
【0031】
報知情報生成部203は、受信した監視情報から、表示部に表示すべき文字情報や図形を生成したり、報知音声を生成する部分である。また、監視対象者の監視TE100へ送信する情報を生成する部分である。
登録情報記憶部206は、監視する者が入力した登録情報を記憶するメモリであり、書き換え可能なメモリが用いられる。
【0032】
ここで、登録情報とは、図6に示すようなホワイトリストD11,ブラックリストD12,センタアドレスの他、監視TE100のアドレスや電話番号などである。これらの登録情報は、確認TE200の中に記憶されるとともに、必要に応じて、情報管理装置300や監視TE100へ送信される。
【0033】
登録情報のうち、ホワイトリストとは、ペア設定あるいはグループ設定が可能な監視対象者(たとえば児童)を記録したリストであり、ブラックリストとは、ペア設定あるいはグループ設定ができない監視対象者を記録したリストである。このホワイトリストとブラックリストは、監視TE100へ送信される。
たとえば、下校時に、ホワイトリストに載っている児童どうしであれば、ペア設定(あるいはグループ設定)が可能であるが、ブラックリストに載っている児童どうしはペア設定(グループ設定)ができないようにする。
一実施例として、ホワイトリストに入れる児童とは、自宅が近い者,同じマンションに住んでいる者,途中まで通学路が同じ者,兄弟,日頃から一緒に遊んでいる仲間などが考えられる。
【0034】
一方、ブラックリストに入れる児童とは、帰る方向が反対の者など、通常は一緒に登下校するケースが無い者が考えられる。
このような登録情報の入力は、本システムが稼働される前や、稼働中でも変更する必要が生じたときに行われる。
また、登録情報の入力は、監視する者、たとえば保護者や学校の職員などが入力するのが好ましい。
【0035】
監視端末100は、主として、ネットワークを介した通信を行うための送信部101,受信部102,GPS位置情報受信部104,ペア(グループ)設定部105,出力部106,出力情報生成部107,通知情報生成部108,および監視情報記憶部103とを備える。
GPS位置情報受信部104は、人工衛星11からの電波を受けて、その監視TE100の位置情報(緯度,経度)を生成する部分である。ただし、人工衛星からの電波の他、交差点などの所定の地点に設置された発信装置からの情報を受信して、現在位置を特定できる場合は、そのような受信情報を利用してもよい。
今日、人工衛星から送られてくる電波を利用すれば、誤差5m程度まで現在位置を特定できるので、数メートル単位で、2つの監視TE100の相互間の距離を認識することができる。
【0036】
ペア(グループ)設定部105は、登校や下校などの特定のイベントの発生時に、複数の監視TE間で相互監視をすることを設定する部分である。設定をより確実に自らの意思で行うため、あるいは、イベントごとにペアやグループが異なる場合があるので、各監視TE100に設けられた特定のボタンを手動で押下ることにより、ペア設定を実行することが好ましい。
【0037】
また、特定ボタンを押下げたことを、近くにいる他の監視TE100に送信してもよい。
たとえば、各自の監視TE100を持つ5人の児童が1ヶ所に集合してグループ設定をする場合を考える。所定の近距離内に存在する5つの監視TE100において、一定時間(たとえば10秒)以内に特定ボタンが押下られた場合、その監視TEを特定する情報と共に特定ボタンが押下げられたことを示す情報を相互に通信しあい、相互通信が確認できた5台の監視TE100で、グループ設定をしてもよい。
グループ設定をすると、各監視TE100を特定する情報またはその所有者である児童を特定する情報と、設定したグループの識別情報(ID)とからなるグループ情報が作成される。
【0038】
また、低学年の児童がペア設定やグループ設定を行う場合もあるので、ペア設定やグループ設定の操作は、容易に確実にできる操作であることが好ましい。
したがって、たとえば、専用ボタン押下のような操作,監視端末どおしを近接させたり接触させることにより行えるようにしてもよい。
【0039】
ペア(グループ)設定により作成された情報は、図4に示すようにペア(グループ)情報D33として記憶されると共に、情報管理装置300に送信される。
また、ペア設定あるいはグループ設定は、予めホワイトリストに登録された児童相互間でのみされるものとする。
すなわち、上記のような相互通信をした場合、他の監視TE100から送られてきた情報を確認して、ホワイトリストに登録された監視TEか否かチェックする。また、ブラックリストがある場合は、ブラックリストに登録された監視TEか否かチェックする。
そして、ホワイトリストに登録され、かつブラックリストに登録されていない監視TEであれば、その監視TEとペア設定あるいはグループ設定を実行する。
逆に、ホワイトリストに登録されていない監視TEとはペア設定およびグループ設定をしないようにする。また、ブラックリストに登録されている監視TEともペア(グループ)設定はしないようにする。ペア(グループ)設定をしない場合は、監視TEの所有者に、音声や表示でその旨を出力する。
【0040】
出力部106は、監視TE100側で、警報等を視覚的又は聴覚的に出力する部分であり、スピーカやLED,表示部(LCD)が相当する。
出力情報生成部107は、出力部106に出力する情報を生成する部分であり、たとえば監視レベルに対応した警告をするための音声,文字,図形等を生成する。
通知情報生成部108は、センタ300や確認TE200に通知する情報を生成する部分である。たとえば、GPS位置情報受信部104によって受信した情報をもとに、現在の位置情報を生成する。また、ペア設定をしたとき、図4に示したようなペア(グループ)情報D33を生成する。
あるいは、目的地の1つである自宅に到着したとき、目的地に到着したことを示す情報を生成する。生成した情報は、所定の時間間隔であるいは生成した直後に、送信部101から、予め定められた通知先へ送信される。
【0041】
監視端末100の監視情報記憶部103に記憶される情報としては、たとえば、図2に示すような情報がある。
ここで、登録情報(図6のD11,D12)とは、確認TE200で入力されたホワイトリストとブラックリストである。上記したように、この登録情報は、ペア(グループ)設定部105で行うペア設定時に、ペア設定の可否の判断のために利用される。
【0042】
センタ情報(図6のD13)とは、センタを特定する情報であり、たとえばセンタアドレスと通知間隔とからなる。
通知間隔とは、監視TE100の現在位置の情報を、センタ300へ送信する時間間隔を意味し、1つの数値を予め固定的に設定してもよいが、より適切な監視を行うために、複数の監視レベルに対応させて通知間隔も予め複数個記憶しておき、監視レベルが変化するごとに、通知間隔を変更するようにしてもよい。
【0043】
たとえば、監視レベルが低い場合は、比較的安全と考えられるので、比較的長い時間間隔(たとえば60秒)を設定する。また危険度が大きく監視レベルが高い場合は、通知頻度を上げるため、比較的短い時間間隔(たとえば、15秒)を設定する。
この通知間隔は、監視TE100側で設定入力してもよい。ただし、監視レベルをセンタ側で判定する場合は、監視レベルが変化するごとに監視レベルに対応した通知間隔の情報を、センタから監視TE100へ送信してもよい。
位置情報(図6のD14)とは、監視TE100の現在の位置を示す情報(緯度,経度),自宅の位置情報(緯度,経度),学校の位置情報(緯度,経度),その他所有者が立入りしそうな建物や場所の位置情報(緯度,経度)などである。
【0044】
ここで、現在地情報は、時刻とともに変化する。また、その他の自宅の位置情報などは固定的な情報なので、監視TE100側で予め設定入力するか、あるいは、確認TE200で作成した情報を、確認TEから予め転送して記憶しておく。
なお、図2の実施例の構成では、監視レベルの判定をセンタ300側で行うものとしているが、監視TE200に、監視レベル判定部305を設けて、監視TE100側で、独自に監視レベルを判定し、監視レベルに対応した通知処理などを実行してもよい。
【0045】
情報管理装置300は、主として、送信部301,受信部302,相互距離確認部304,監視レベル判定部305,および管理情報記憶部303を備える。
相互距離確認部304は、各監視TE100から受信した現在の位置情報を含む監視受信情報や、ペア(グループ)情報を用いて、ペア(グループ)設定された監視TEごとの距離情報を算出する部分である。
監視レベル判定部305は、受信された監視受信情報や算出された距離情報を基にして、各監視TE100の現在の監視レベルを判断する部分である。この監視レベルの判定には、予め設定された監視レベル情報のレベル条件が利用される。
【0046】
すなわち、監視受信情報により認識される監視TE100の現在の状況が、どの監視レベルのレベル条件に合致するかを判断し、現在の監視レベルを判定する。そして監視レベルが変化した場合は、変化後の監視レベルに対応づけられた動作を実行する。
たとえば、あるグループG1に属していた監視TE100について算出された距離情報がいずれも一定距離以上となった場合には、そのグループG1から離れ、一人になったと判断できる。この場合、「一人になった」というレベル条件を有する監視レベルに監視レベルを変更し、監視対象者が一人になったことを示す状態情報を、保護者等の所定の通知先に、通知する。
【0047】
管理情報記憶部303は、この発明のシステムで送受信される種々の情報を記憶する部分である。この記憶部303に記憶される管理情報としては、たとえば、図3,図4および図5に示すような情報(D31〜D36)がある。
ここで、ペア(グループ)情報D33と監視受信情報D35とは、監視TE100から送られてくる情報であり、通知先情報(D31,D32),要注意地域情報D34および監視レベル情報D36は、予め設定されるか、あるいは、確認TE200から予め送信されてくる情報である。
【0048】
図3には、通知先情報の一実施例として、保護者情報D31と、児童情報D32を示している。
保護者情報D31は、各保護者を特定する情報からなり、主として、保護者ID,氏名,住所,自宅電番,携帯電番,メールアドレス,児童情報(ID),付加情報(地区委員など)などを含む。
児童情報D32は、各児童を特定する情報からなり、主として、児童ID,氏名,連絡先情報(携帯電番,メールアドレス),学校名,学年,性別,保護者特定情報(ID),自宅位置情報,学校位置情報,付加情報(登下校手段など),通学経路情報などを少なくとも1つ以上含む。
なお、保護者および児童を特定する情報の内容は、これらの情報すべてを含む必要はなくいずれかのみを採用してもよく、さらに図示されたものに限らず、付加情報として他の情報を含めてもよい。
【0049】
図4には、ペア(グループ)情報D33,要注意地域情報D34,監視受信情報D35の一実施例を示している。ペア(グループ)情報D33は、ペア設定あるいはグループ設定された監視TE100の情報であり、監視TE100で生成されたペア(グループ)情報に対応する。
【0050】
図4のペア(グループ)情報は、グループ化された監視TE100の持主である複数の児童IDと、そのグループIDとグループ名とを含む。
ペア設定の場合は、2人の児童IDが含まれる。ペア(グループ)情報には、この他に、ペア設定された時刻情報や、人数,グループの構成員の属性情報(低学年,高学年の区別,年齢,性別,人見知りをするかしないかなどの性格)などを含めてもよい。
【0051】
要注意地域情報D34とは、監視の程度を高める地域の位置情報を意味し、たとえば、過去に実際に犯罪や事故が起こった場所,暗い場所,人通りの少ない通路,見通しの悪い場所,街灯の少ない場所,警察から遠い場所などの地域情報をいう。
このような地域を通過する場合、より安全性を高めるため、ペアまたはグループで行動中でも、監視レベルを高くし、監視TEからの位置情報の通知の間隔を短くするなど、特別な動作を行わせることが好ましい。
【0052】
監視受信情報D35とは、各監視TE100から送信されてくる情報であり、たとえば、児童ID,監視レベル,年月日,時分秒,現在地緯度経度などの情報を含む。
この監視受信情報D35と、ペア(グループ)情報とを用いて、1つのグループに属する児童の相互間の距離が算出される。
【0053】
図5に、センタ300に予め格納される監視レベル情報D36を示す。
監視レベルは、監視の程度を示す数値情報であり、たとえば、後述するように、最も監視の厳しいレベルをL4とし、監視の必要のないレベルをL0とし、L0からL4までの5段階のレベルを設定する。
1つの監視レベルごとに、条件と、動作と、通知先とが設定される。
「条件」とは、ある監視TE100の現在の状況がその監視レベルにあるかを判断する基準を意味する。
たとえば、監視TE100の監視受信情報,ペア情報,算出された距離情報から総合的に判断して、その監視TEの所有者が一人になったという基準を満たす場合、監視レベルをL3(重点監視モード,レベル3)と判定する。
【0054】
「動作」とは、その条件が満たされている場合、およびその条件が満たされ他の監視レベルからその監視レベルへ移行してきた場合に、取るべき処理を意味する。
たとえば、ペア(グループ)設定がされたことを示す情報(ペア情報)を受信した場合で、監視レベルがレベルL0からレベルL1へ移行したことを認識した場合、レベルL1に対応付けられた動作が実行される。
この場合、監視レベルL1の監視レベル情報D36の動作として、「グループ設定されて登校が開始されたことを示す情報を、保護者に通知せよ」という旨の処理が記憶されている場合は、そのような通知処理が実行される。
【0055】
また、「通知先」には、上記動作を行うべき相手先の情報が記憶される。たとえば、上記の例では、通知の相手先である保護者のアドレスや電話番号が記憶される。
なお、以上説明した各記憶部(103,303)に記憶される情報は一実施例であり、監視対象や監視レベルの数や条件等が異なれば、その内容も異なる。
【0056】
<監視レベル情報の具体例>
図7に、監視レベル情報D36の具体例の説明図を示す。ただし、監視レベル情報D36の実際の内容は、不揮発性メモリに、コンピュータが認識可能な数値データやプログラムの形式で記憶される。
この情報D36は、センタ側で設定入力してもよいが、確認TE200で作成し、センタ300へ転送してもよい。
【0057】
図7では、5つの監視レベル(L0〜L4)を設けている。
レベル0(L0)は非監視モードであり、他のレベル1〜4(L1〜L4)は監視モードであり、レベルの数値が大きいほど、監視の程度が高いこと、すなわち監視の重要性が大きいことを意味する。
また、図7では、監視対象者として児童を想定し、児童が学校へ登下校する場合の状況を考慮して作成した情報を示している。
【0058】
図7のレベル0において、条件としては3つの状態がある。
(条件1)監視TE100を持つ児童が、学校へ到着したこと。
(条件2)児童が、自宅へ到着したこと。
(条件3)現在の時刻が、非監視時間帯であること。
この場合、上記いずれか1つの条件が満たされている時に、その児童の監視レベルを、レベル0(L0)と判定する。条件1の「児童が学校へ到着したこと」は、図6に示す監視TE100の位置情報D14から判断できる。
【0059】
たとえば、児童の現在位置の情報(緯度,経度)が、学校の緯度経度情報と一致するか、あるいは、学校の敷地内に相当する位置情報の領域に入った場合は、監視TE100を持つ児童が学校に到着したと判断する。そして、学校に到着したと判断した監視TE100から「学校への到着情報」を、センタ300へ送信する。センタでは、この情報を受信することで、その監視TE100を持つ児童が学校へ到着したと判断する。
【0060】
また、図3等には示していないが、学校や自宅の位置情報(緯度経度)をセンタ300側でも予め記憶しておき、時々刻々受信する監視TEの現在位置情報と、予め記憶しておいた学校の位置情報と比較して、学校に到着したか否かを、センタ側で判断してもよい。
条件3の非監視時間帯とは、下校時刻から次の日の登校時間まで、あるいは日曜祝日などが該当する。
このような3つの条件のうちいずれかを満たす場合、レベル0の「動作」を実行する。
たとえば、条件1または条件2を満たしたとき、「到着通知」を送信する。通知先は、条件1の場合「自宅(保護者宅)」であり、条件2の場合は「学校,地区委員」である。
【0061】
図7のレベル1(L1)は、ペア設定またはグループ設定をした後、登校(集団登校)を開始した場合、または下校(集団下校)を開始した場合に、設定される。
たとえば、登校を開始したことは、センタ300が、ペア(グループ)設定されたことを示す情報を受信した後、ペア(グループ)設定された監視TE100が移動したことを検知することにより、判断することができる。下校も同様である。
また、レベル1(L1)の条件を満たした場合、各児童の自宅に対して、登校開始通知または下校開始通知を行う。
【0062】
図7のレベル2(L2)は、レベル1の状態よりも危険度が増加したことを示す注意喚起モードである。ここでは、たとえば、次の3つの条件のうち、いずれかが、満たされれば、レベル2(L2)となる。
(条件1)低学年の児童のみのグループとなっていること。
(条件2)女子のみのグループとなっていること。
(条件3)高学年の児童が一人であること。
低学年の児童のみのグループか否かは、センタに予め記憶されている児童情報(学年)と、現在移動している児童の現在の位置情報とをチェックすることにより判断できる。
同様に、女子のみのグループか否かも、児童情報(性別)を参照することにより判断できる。
【0063】
高学年の児童が一人か否かは、児童情報(学年)と、時々刻々送信されてくる監視TE100の位置情報を確認すれば判断できる。
たとえば、グループ設定されていた複数の児童の監視TEについてそれぞれの現在位置情報から監視TEの相互距離を算出し、レベル0では、予め定めた一定距離L0(たとえば、10m)の中にあったものの、ある児童の監視TEを中心として一定距離L0の範囲内に、他の監視TEが存在しない状態が、一定時間(たとえば100秒)以上連続した場合は、監視レベルを、レベル2(L2)に変更する。
【0064】
他のレベルからレベル2(L2)に変化した直後、およびレベル2の状態が一定時間間隔(たとえばa秒)以上続いた場合は、児童が3つの条件のうちどの状態となったかを示す状態情報と、その状態となった位置の情報、もしくは、現在の位置情報を通知する。通知先は、たとえば、自宅,学校,地区委員,警察である。
ここで、レベル2は、レベル3や4に比べて監視の程度は低くてもよいと考えられるので、その通知間隔(a秒)は、比較的長く設定する。
たとえば、a=60(秒)や、120(秒)としてもよい。
【0065】
図7のレベル3(L3)は、レベル2よりも危険度が増加し、監視の程度がかなり高くなったことを示す重点監視モードである。ここでは、たとえば、次の7つの条件のうちいずれかが満たされたとき、監視レベルをレベル3に設定する。
(条件1)低学年の児童が一人になった。
(条件2)女子の児童が一人になった。
(条件3)同一位置に一定時間以上、停止した状態が継続。
(条件4)要注意地域に移動したことを検知。
(条件5)一定時間以上、位置情報の受信無し。
(条件6)学童の生徒が一人になった。
(条件7)近隣地域で犯罪,災害またはブザー押下が発生。
【0066】
要注意地域に移動したか否かは、センタに予め記憶されている要注意地域情報D34と、現在位置情報とを対比すれば確認できる。
位置情報が受信できない状態とは、監視TE100が故障したかあるいは電源が切られた場合を意味する。この場合、その監視TE100へは連絡できない可能性があるので、受信できなくなった直前の位置へ誰かが駆けつけるか、あるいはグループ設定されている他の監視TEの所有者に、問合せ情報を送信するなどの措置をする。
【0067】
条件7において、児童の現在位置の近隣地域で殺人などの犯罪が発生した場合や、火事などの災害が発生していた場合、そのような重大イベントが発生したことが、他の報知システムから通知されてくる場合がある。センタがこの通知を受信し、その重大イベントが発生した地域の近くにいる児童に対して、警戒を呼びかける通知をする。
近隣地域Aにいる他の児童がブザーを押下げた場合も、同様に、ブザーを押下げた地域Aの近くにいる児童aに対して警戒通知をし、さらに、この児童aの監視レベルを、レベル3としてもよい。
【0068】
監視レベルがレベル3(L3)に変化した場合、7つの条件のうち、どの条件が満たされたかを示す状態情報と、その児童の現在の位置情報を、自宅,学校,地区委員,警察など、必要と考えられる通知先へ通知する。
レベル3は、レベル2よりも監視の程度が高いので、通知頻度を高め、この場合の通知間隔(b秒)は、レベル2(a秒)よりも短くする(b<a)。
また、レベル3では、その条件を満たした児童に対して、注意喚起のために、音声等による通知動作を行う。音声等による通知は、合成音声による自動的な通知でもよく、または、その監視TEへ電話をかけ保護者等が自らの声で直接呼びかけをしてもよい。
あるいは、その児童の監視TEへ、警戒を呼びかける電子メールを送信してもよい。
【0069】
図7のレベル4(L4)は、最も危険度が大きく、単なる監視だけでなく特別な対応が必要と考えられる緊急モードである。
ここでは、たとえば、次の4つの条件のうち、いずれかが満たされたとき、監視レベルをレベル4に設定する。
(条件1)監視TEがあり得ない速度で移動したことを検知。
(条件2)児童が自らの意思で警報ブザーを鳴らしたこと。
(条件3)指定エリア外への移動を検知。
(条件4)指定エリア内への移動を検知。
【0070】
あり得ない速度で移動する場合とは、児童の通学手段(たとえば、徒歩,自転車)による移動では考えられない高速度で、現在位置情報が変化する場合を意味する。
たとえば、現在位置情報が、時速60kmで変化した場合などが、この条件1に合致する。この場合、児童が自動車に連れ込まれて誘拐されたことが想定される。
【0071】
児童が警報ブザーを鳴らした場合、警報ブザーと連動させて特別な情報を、監視TEからセンタへ通知するようにする。センタがこの特別な情報を受信した場合が、条件2に相当する。
児童が警報ブザーを鳴らした場合も、誘拐や事故など重大なイベントに巻き込まれた可能性があることから、監視レベルをレベル4に設定する。
児童が進入してはいけない建物や、進入があり得ない危険区域に入った場合が条件4に相当する。また、通学地域や通学路などのエリアが指定されている場合に、児童がそれらのエリア外へ移動した場合が条件3に相当する。このように特定のエリア内外へ移動したことを検知した場合も、監視レベルをレベル4に変更する。この場合も誘拐や事故等の可能性があるからである。
【0072】
レベル4(L4)に変化した場合も、レベル3(L3)と同様に、自宅や学校等に対して、どの条件が満たされたかを示す状態情報の通知と、現在位置情報の通知を行う。早期対応をするために、この場合の通知間隔(c秒)は、最も短い時間とすることが好ましい。
また、レベル4特有の動作として、保護者や学校職員等に対して、現場への駆けつけ指示または要請を通知する。あるいは、現場が自宅等から離れている場合には、現場に近い地区の防犯委員など、早く現場に行ける者に対して、現場への駆けつけ指示または要請を通知する。さらに、レベル4の特有動作として、現場の近くにいる児童に対して注意,喚起のために音声等による通知を行う。
以上が、登下校、あるいは通学途中の児童に対して考えられる監視レベル情報の実施例であるが、実際の運用状況や地域特有の問題点などを考慮しながら、条件や動作の内容を見直し、改善していくことが必要である。
【0073】
<監視レベルの状態遷移と、監視情報等の通信制御>
図8に、監視レベルの状態遷移図の一実施例を示す。
監視レベル(L0〜L4)は、監視TEの現在の状況がどの条件を満たすかによって変化するが、単に隣接するレベルに変化するだけでなく、状況の急変によって大きくレベルが変化する場合もある。
たとえば、グループ設定をした複数の児童が通常どおり登校を開始し、比較的安全な状態でグループで行動している最中であっても、近隣地域で犯罪が発生した場合には、監視レベルはL1からL3に変化する。すなわち、監視レベルの変化は、すべてのレベル間で起こり得る。
【0074】
図8には、5人の児童(1a〜1e)がグループとなり下校する場合の状態遷移の具体例も示している。5人の児童は、当初学校に在校している状態とする。
この場合、レベル0(L0)の状態からスタートするが、5人の児童が全員学校に到着しているという条件1が満たされている状態に相当する。グループを設定する5人の児童の属性情報を次のようなものと仮定する。児童1aは、低学年の女子児童,児童1bは低学年の男子児童,児童1cは高学年の男子児童,児童1d,1eは高学年の女子児童とする。
下校時、このような5人が集合し、各自の監視TEで、グループ設定のための操作をする。いずれもホワイトリストに登録され、グループ化可能なメンバーであったとすると、グループ設定が実行される。この後、下校を開始すると、監視レベルはレベル0(L0)からレベル1(L1)へ変化し、下校開始通知が、各児童の保護者の確認TEへ通知される。
【0075】
最初は5人の児童が所定の距離を越えない範囲で一緒に下校していたが、ある地点Aで、3つのグループに分かれたとする。
3つのグループとは、低学年の児童(1a,1b)2人のグループG1,高学年の男子児童(1c)1人のグループG2,高学年の女子児童(1d,1e)2人のグループG3とする。
このとき、3つのグループ(G1,G2,G3)は、それぞれレベル2(L2)の条件1,2および3を満たすので、どのグループも監視レベルが、レベル1(L1)からレベル2(L2)へ変化する。
【0076】
次に地点Bで、2人の低学年の児童(1a,1b)が、児童1aの自宅に到着し、児童1aは帰宅したが、児童1bはその後1人で帰路についたとする。このとき、児童1aについては、自宅に到着したので、レベル0(L0)に変化する。一方、児童1bについては、低学年の児童が一人になったので、レベル3(L3)の条件1に合致することになる。すなわち、児童1bは、監視レベルが、レベル2(L2)からレベル3(L3)に変化し、重点監視モードに入る。
重点監視モード(レベル3)となった児童1bについて、監視レベルがレベル3に変化したことを示す状態と、監視レベルが変化した地点Bの位置情報とが、児童1bの保護者(自宅)や、学校,地区委員,警察などの関係者に通知される。
【0077】
また、2人の高学年の女子児童(1d,1e)が帰路の途中の地点Cで、分かれて、それぞれ一人で帰路についたとする。このときどちらの児童(1d,1e)についても、「女子の児童が一人になった」というレベル3(L3)の条件2に合致するので、監視レベルが、レベル2(L2)からレベル3(L3)へと変化する。そして、レベル3となった2人の女子児童(1d,1e)それぞれについて、上記した児童1bと同様の通知処理が実行される。
また、児童1b,1d,1eそれぞれについて、監視TEからセンタへの位置情報の通知間隔が短くなり、b秒に設定される。さらに、レベル3(L3)になったことを、保護者が確認TEで確認した場合には、保護者側から児童に対して音声通知による注意喚起を行うことができる。
【0078】
その後、一人となった女子児童1dが、地点Dで、通常の帰宅スピードと異なる高速度で移動していることが検知されたとする。この場合、レベル4の条件1(ありえない速度での移動検知)に合致するので、児童1dの監視レベルが、レベル3(L3)からレベル4(L4)に変化する。したがって、レベル4(L4)の動作が実行される。具体的には、そのレベル変化の状態通知と地点Dの位置情報とを保護者等へ通知するのに加えて、その地点Dの近くにいる児童への注意喚起の通知や、近隣地区の委員に対して駆けつけ指示などが通知される。
また、一人となった女子児童1eが、地点Eで警報ブザーを押下げたとする。このとき、レベル4の条件2(児童が警報ブザーを鳴らした)に合致するので、児童1eの監視レベルが、レベル3(L3)からレベル4(L4)に変化する。したがって、この児童1eについても、レベル4の動作として定められた処理が実行される。
【0079】
また、地点Aで一人で帰路についた高学年の男子児童1cが、その後自宅に到着したとすると、監視レベルが、レベル2(L2)からレベル0(L0)へ変化する。同様に、地点Bで一人になった低学年児童1bが、その後自宅に到着したとすると、監視レベルが、レベル3(L3)からレベル0(L0)へ変化する。
以上の状態遷移は一実施例であり、各レベルの条件に合致するようなイベントが生じるごとに、監視レベルが変化し、変化後の監視レベルに対応した動作が実行される。
以下に、監視レベルの状態遷移の具体的なタイムチャートを示して、監視情報等の通信制御の一実施例を説明する。
【0080】
<この発明の通信制御の第1実施例>
ここでは、2人の児童が下校する監視状況において、監視情報等の通信制御の一実施例について説明する。
図9に、学校から自宅へ帰宅するまでのタイムチャートの一実施例を示す。ここで、低学年の2人の児童(1,2)がそれぞれ監視TE100を持ち、それぞれの保護者と、学校,地区委員,警察に、それぞれ確認TE200が備えられているものとする。
【0081】
まず、学校において、低学年の児童1と児童2が、互いの監視TE100どうしで、ペア設定(イベントT1)をする。この時の監視レベルは、レベル0(L0)である。
児童1と2とが相互にホワイトリストに登録されていたとすると、ペア設定部105がペア設定を行い、ペア情報を作成する。作成されたペア情報は、送信部101によってそれぞれの監視TE100からセンタ300へ送信される。
また、GPS位置情報受信部104によって受信された2人の児童の現在位置情報も、センターへ送信される。
センタ300では、ペア情報を受信し、さらに受信した現在位置情報の変化から下校が開始されたことを検出すると、監視レベル判定部305が、児童1と2の監視レベルをどちらも、レベル0(L0)からレベル1(L1)へ変更する(イベントT2)。
【0082】
そして、センタ300では、監視レベル1(L1)の条件2が満たされたことから、レベル1の条件2に対応する動作を実行する。この場合、図7に示すように下校開始通知が、児童1と2の保護者(自宅)にそれぞれ送信される(イベントT3)。
この後しばらく2人の児童が離れることなく通常の通学路を一緒に歩いていたとする。この歩行中も、一定時間間隔で、2人の児童の現在位置情報が、センタへ送信される(イベントT4)。
この位置情報は、監視のレベルが比較的低いレベル1(L1)のときに送信されるものであるので、その送信間隔は、レベル2の通知間隔よりも長く設定してもよい。イベント4の状態では、センタの相互距離確認部304が、2人の現在位置情報をもとに、常に2人の距離を算出している。
【0083】
さらに、イベントT4の状態がしばらく続いた後、2人とも児童1の自宅に到着したとする(イベントT5)。このとき、児童1の監視TEで、受信したGPS位置情報から、自宅に到着したことを認識したとすると、児童1の監視TEからセンタへ、自宅へ到着したことを示す情報を送信する。この場合、児童1について、レベル0(L0)の条件2が成立する。すなわち、センタが、児童1の自宅へ到着したことを示す情報を受信すると、レベル0(L0)の条件2が満たされるので、監視レベル判定部305が、児童1の監視レベルを、レベル1(L1)からレベル0(L0)へ変更する(イベントT6)。
【0084】
なお、児童1の自宅の位置情報をセンタ側で管理している場合は、児童1の監視TEから送られてくる現在位置情報と自宅の位置情報とを比較し、一致した場合に児童1が帰宅したと判断し、監視レベル判定部305がレベル0(L0)の条件2を満たしたと判定してもよい。
児童1については、監視レベル0(L0)の条件2が成立したので、自宅への到着通知(児童1の帰宅通知)を、センタから学校等へ通知する(イベントT7)。
ただし、児童1の到着通知は、このタイミングではまた行わずに、後述するイベント14のタイミングで、行ってもよい。すなわち、ペア設定をしていた児童が2人とも帰宅したのを確認した後に、まとめて2人の帰宅通知を送信してもよい。
【0085】
一方、児童2が児童1の自宅付近で児童1と別れた場合、センタは、児童2の現在位置情報を継続して受信することにより、児童2が一人になったことを検出する。
具体的には、センタの相互距離確認部304が、ペア設定していた2人の児童の監視受信情報を確認し、両者の現在の位置情報を取得し、その距離を算出する。そして、監視レベル判定部305が、算出した相互距離と、予め定められた距離(たとえば10m)とを比較する。相互距離が予め定められた距離を越えていた場合は、「低学年の児童2が一人になった」と判断する。
低学年の児童2が一人になったことは、レベル3(L3)の条件1に合致するため、児童2の監視レベルを、レベル1(L1)からレベル3(L3)へ変更する(イベントT6)。
そして、センタは、図7に示したレベル3(L3)の動作を実行する。
【0086】
図7によれば、レベル3(L3)の条件1に合致したイベントが発生し、児童2が重点監視モードに入ったこと(状態情報の通知)と、児童2の現在位置情報とを、センタから児童2の保護者へ通知する(イベントT9)。具体的には、たとえば、児童2が下校中に児童1と別れ、児童1の自宅付近で一人になったことを、児童2の保護者の確認TEへ通知する。
さらに、センタは、位置情報の通知間隔を短くしてb秒に変更すべきことを、児童2の監視TEへ送信する(イベントT8)。この通知間隔の変更指示を受信した児童2の監視TEは、この後位置情報の通知間隔をb秒に変更する。上記イベントT7,T8,T9の順序は問わない。
【0087】
この後、児童2の監視TEからセンタへ、変更後の通知間隔で、現在位置情報等が送信される(イベントT11)。すなわち、一人になった児童2については、より短い時間間隔で、その現在位置の確認がされる。
イベントT9で、児童2が一人になったことを確認した保護者は、必要ならば「声掛けサポート」により児童2に対して注意喚起をする(イベントT10)。たとえば、合成音声による注意喚起の通知や、注意喚起をうながす電子メールの送信を行う。あるいは、児童2に電話をかけ、保護者自らの声で直接注意を喚起してもよい。
【0088】
その後、児童2が、自宅へ到着したとする(イベントT12)。自己へ到着したか否かの判断は、上記したイベントT5の場合と同様である。すなわち、自宅への到着通知を、児童2の監視TEからセンタへ送信するか、またはセンタが児童2の現在位置と自宅の緯度経度情報との一致を確認することにより、自宅への到着(帰宅)を判断する。
センタが、児童2が自宅へ到着したと判断すると、レベル0(L0)の条件が満たされるので、監視レベルを、レベル3(L3)からレベル0(L0)へ変更する(イベントT13)。
【0089】
その後、児童2が、自宅に到着したこと(到着通知)を、センタが学校や地区委員等に送信する(イベントT14)。
以上が、2人の児童がペア設定して下校する場合の一実施例のタイムチャートであるが、3人以上の児童がグループ設定をして下校する場合も、人数が増えるだけで、ほぼ同様の処理が行われる。
以上のようにいくつかの監視レベルを設けてそれぞれのレベルの状況に応じた監視や動作を行うようにしているので、より適切な監視ができ、監視する者の負担の軽減,監視対象者のより適切な安全の確認,犯罪の未然防止と犯罪の抑止効果を高めることができる。
【0090】
<通信制御の第2実施例>
ここでは、第1実施例の児童2が一人になった後に、児童2が自らブザーを押下げた場合の実施例を説明する。
図10に、児童が一人になった後のタイムチャートの一実施例を示す。この例では、児童2の監視レベルは、レベル3(L3)から、レベル4(L4)へ変化し、最終的に帰宅後にレベル0(L0)となる。
図9のイベント11の状態で、児童2の監視TEから、定期的に現在位置情報がセンタへ送信されていたとする。この状況で、児童2に何らかの異常が発生したため、児童2が、自らの意思で、ブザーを押下げたとする(イベントT21)。
児童2の監視TEにおいて、ブザーが押下げられたことを確認すると、通知情報生成部108が、ブザーと連動した特定の情報(ブザー押下情報)を生成し、送信部101がセンタへ送信する。このとき、ブザーが押された地点の位置情報も、センタへ送信する。
【0091】
このブザー押下情報を受信したセンタ300では、「児童がブザーを鳴らした」というレベル4(L4)の条件2が満足されたことが確認されるので、監視レベル判定部305が、監視レベルを、レベル3(L3)からレベル4(L4)へ変更する(イベントT22)。その後、レベル4の動作を実行する。
まず、レベル4の条件2が成立し、児童2が監視レベル4(L4)の状態になったこと(状態通知)と、ブザーが押下げられた地点の位置情報を、センタから、自宅、警察,学校および地区委員の確認TEへ送信する(イベントT23)。
【0092】
イベントT23により、児童2がブザーを押下げたことを確認した保護者や学校の担当者は、音声等により、児童に対して状況の確認をする(声掛けサポート:イベントT25)。
また、センタから児童2の監視TEに対して、現在位置情報の通知間隔を変更する指示を送信する(イベントT24)。ここでは、通知間隔を最も短い時間隔(c秒)とするように指示を出す。
【0093】
また、児童2がブザーを押下げた地点の近くにいる他の児童についての監視レベルを、レベル3(L3)に変更する(イベントT27)。
さらに、児童2がブザーを押下げた地点の近隣の地区委員および保護者に対して、近くの地点で児童2がブザーを押下げたこと、その地点の位置情報と、ブザーが押下げられた現場へ駆けつけてほしい旨の指示(要請)を送信する(イベントT26)。
この駆けつけ指示を確認した地区委員等は、児童2がブザーを押下げた現場へ駆けつけ、児童2の状況を確認する(イベントT28)。
【0094】
たとえば、現場近くの地区委員が、その現場に駆けつけ、児童2の無事が確認されたものとし、その後、児童2は通常通り帰路についたとする。
この場合、図示していないが、児童2の監視TEでのブザー解除や、地区委員からのセンタへの連絡等により、センタにおいて、児童2の安全が確認された場合には、監視レベルを、レベル3(L3)に戻してもよい。ただし、帰宅するまで、レベル4(L4)を維持したままとしてもよい。
【0095】
その後、児童2が、自宅へ到着したとする(イベントT29)。この場合、イベントT12と同様に、レベル0(L0)の条件2が満たされるので、センタにおいて、児童2の監視レベルをレベル4(L4)からレベル0(L0)に変更する(イベントT30)。そして、レベル0(L0)の動作である「自宅への到着通知」を関係者に送信する(イベントT31)。
ここでは、学校,地区委員,警察の他に、イベントT26で通知した近隣の地区委員や、イベントT27で監視レベルを変更した現場の近くにいた児童に対しても、「児童2の自宅への到着通知」をしてもよい。
なお、監視レベルが変更された児童については、「自宅への到着通知」を受信したことにより、監視レベルを変更前のレベルに戻してもよい。
【0096】
以上は、レベル4(L4)の緊急状態が発生した場合の通信制御の一実施例であるが、レベル4へ状態が遷移する場合でも図10とは異なる通信制御や、関係者による対応が実行される場合がある。
また、監視対象者の現在位置情報を基本情報とし、さらに学年などその者を特定可能な情報をも利用して、監視レベルを判定しているので、監視対象者の現在の状況に対応して、より適切な通信制御処理をすることが可能となる。
また、上記実施例のような通信制御により、監視する者の監視負担の軽減とより適切な対応を可能とすることができ、犯罪の未然防止や抑制に寄与することができる。
【0097】
<その他の実施例>
また、図7に示した「動作」によってセンタから確認TEを持つ保護者等に、状態通知や現在位置情報が通知されるが、センタの記憶部303には、児童情報として、児童を特定する属性情報(氏名,学年,性別など)も記憶されているので、状態情報の中に、児童の属性情報を含めてもよい。
属性情報を含めることにより、確認TE側でよりわかりやすく的確な確認が可能となる。
【0098】
たとえば、レベル2(L2)の条件1の低学年の児童のみのグループG1となったという状態情報の通知が、保護者の確認TEに送信されたとする。この通知の中に、各児童の学年と性別の属性が含まれていた場合と、その属性を視覚的に区別するように、報知情報生成部203が報知情報を生成する。
学年および性別によってグループG1内の児童をアイコンの形状と色分けで区別し、通学路の地図とともに、そのグループG1がいる現在位置に、各児童のアイコンを表示するようにすれば、現在のグループ内の児童構成が一目瞭然である。たとえば、1年生は○,2年生は□,3年生は△,男子は青色,女子は赤色で表示することが考えられる。
【0099】
また、状態通知の中に、各児童の氏名が含まれる場合には、表示される児童のアイコン付近に氏名を表示すれば、保護者にとってより的確な確認ができ、安心感が増す。
また、各児童の位置情報は一定時間間隔で監視TEからセンタへ送信されてきているので、センタから確認TEへの状態通知を同様の時間間隔で行うようにすれば、保護者は確認TEのディスプレイ上で、ほぼリアルタイムで、登下校の様子を視覚的に把握することができる。
また、レベル3や4のように危険性が高い状態の場合には、児童のアイコンの点滅表示や、音声による報知を組み合わせることにより、より的確な確認ができる。
【0100】
また、レベル3で低学年の児童が一人になった場合に、確認TEにおいて、その児童の現在位置を示す視覚的な地図表示と、音声による報知(たとえば、「児童bがB地点を1人で帰宅中です」)を行えば、いつ頃自宅へ到着しそうかなどを的確に確認することができ、安心感が増す。
また、児童が一人になった後、地図上に現在位置を点滅表示させ、見通しの悪い通路にまもなく入りそうなことを、視覚的に確認することもできる。このような場合に、通路に入る直前に、確認TE側から保護者が児童に対して電話をかけ、音声で注意を喚起してもよい。あるいは、保護者が他の迂回路を指示することや、迎えがくるまで明るい場所で待機することを指示することも可能となる。
また、児童の他に、徘徊者,旅行参加者,共同作業員などを監視対象者とする場合には、その者の状況に応じた監視レベルの条件や動作が設定される。したがって上記実施例とは異なるような監視レベルの変化や動作が実行され得る。
【0101】
<付記>
以上の実施例を含む実施形態に関し、更に、以下の付記を開示する。
(付記1)
複数の監視対象者がそれぞれ所持する監視端末と、監視端末の位置情報を管理する情報管理装置とを備え、
前記監視端末が、地理的位置情報を取得する位置情報取得部と、相互にグループ化することが許可された監視対象者の監視端末どうしでグループを設定するグループ設定部と、前記取得した位置情報と前記グループの設定情報とを、情報管理装置へ送信する第1送信部とを備え、
前記情報管理装置が、前記位置情報とグループの設定情報を受信する第1受信部と、監視対象者の属性情報と、監視対象者の監視レベルを判定するための条件とを記憶した管理情報記憶部と、前記設定されたグループに属する監視端末ごとに受信した位置情報から、監視端末相互間の距離を算出する相互距離確認部と、前記算出された距離と、前記監視対象者の属性情報と、前記監視レベル判定条件とから、監視対象者の現在の監視レベルを判定する監視レベル判定部とを備えたことを特徴とする通信制御システム。
【0102】
(付記2)
前記特定の監視対象者の監視状態を確認する確認端末をさらに備え、前記情報管理装置が、前記監視レベル判定部によって判定された監視レベルに予め対応づけられた動作を実行し、前記確認端末に、監視対象者の現在の監視レベルを識別する状態情報を通知することを特徴とする付記1の通信制御システム。
【0103】
(付記3)
前記確認端末が、各監視対象者の属性情報と、相互にグループ化することが許可された監視対象者のリストとを登録する入力部と、前記登録された監視対象者の属性情報を前記情報管理装置へ送信し、前記監視対象者のリストを前記監視端末へ送信する第2送信部とを備えたことを特徴とする付記2の通信制御システム。
【0104】
(付記4)
前記監視端末が、前記監視対象者のリストを記憶する監視情報記憶部を備え、前記グループ設定部は、監視対象者のリストの中に含まれる監視対象者の監視端末のみの間でグループを設定し、当該リストに含まれない監視対象者の監視端末との間ではグループを設定しないことを特徴とする付記3の通信制御システム。
【0105】
(付記5)
前記確認端末が、前記情報管理装置から通知された監視対象者の状態情報を用いて、監視をする者へ知らせる報知情報を生成する報知情報生成部を備えたことを特徴とする付記2の通信制御システム。
【0106】
(付記6)
前記確認端末は、報知部を備え、
前記情報管理装置から通知された監視対象者の状態情報には、監視対象者の現在の監視レベルと、現在の位置情報と、属性情報とを含み、前記報知情報生成部によって生成される報知情報には、通知された状態情報を視覚的に表現する地図情報および聴覚的に報知する音声情報とを含み、前記報知部が、地図情報を表示し、音声情報を出力することを特徴とする付記5の通信制御システム。
【0107】
(付記7)
前記情報管理装置の管理情報記憶部には、前記監視レベルを判定するための条件とその条件を満たしたときに実行する動作とを含む監視レベル情報を予め記憶し、
前記監視レベル情報は、少なくとも監視対象者を監視しない非監視状態レベルと、グループ設定をしかつ監視を開始することを示す第1監視レベルと、監視を開始後、設定されたグループに含まれていた特定の監視対象者が一人になったこと、あるいは一定数以下の人数になったことを示す第2監視レベルとを含むことを特徴とする付記1の通信制御システム。
【0108】
(付記8)
前記第2監視レベルの特定の監視対象者は、監視対象者の属性情報によって決定されることを特徴とする付記7の通信制御システム。
【0109】
(付記9)
前記監視対象者の属性情報は、監視対象者自身の氏名,性別,年令,学年,学校名,保護者特定情報,連絡先情報のうちいずれか1つ以上を含むことを特徴とする付記1の通信制御システム。
【0110】
(付記10)
前記監視対象者は、児童,徘徊者,旅行参加者または共同作業員であることを特徴とする付記1乃至9のいずれかに記載の通信制御システム。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】この発明の通信制御システムの一実施例の全体構成の説明図である。
【図2】この発明の通信制御システムの一実施例の構成ブロック図である。
【図3】この発明の情報管理装置の管理情報の一実施例の説明図である。
【図4】この発明の情報管理装置の管理情報の一実施例の説明図である。
【図5】この発明の情報管理装置の管理情報の一実施例の説明図である。
【図6】この発明の監視端末の監視情報の一実施例の説明図である。
【図7】この発明の監視レベル情報の一実施例の説明図である。
【図8】この発明の監視レベルの状態遷移図である。
【図9】この発明の第1実施例の監視レベルの状態変化のタイムチャートである。
【図10】この発明の第2実施例の監視レベルの状態変化のタイムチャートである。
【符号の説明】
【0112】
10 ネットワーク
11 人工衛星
100 監視端末(TE)
101 送信部
102 受信部
103 監視情報記憶部
104 GPS位置情報受信部
105 ペア(グループ)設定部
106 出力部
107 出力情報生成部
108 通知情報生成部
200 確認端末(TE)
201 送信部
202 受信部
203 報知情報生成部
204 入力部
205 報知部
206 登録情報記憶部
300 情報管理装置
301 送信部
302 受信部
303 管理情報記憶部
304 相互距離確認部
305 監視レベル判定部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の監視対象者がそれぞれ所持する監視端末と、監視端末の位置情報を管理する情報管理装置とを備え、
前記監視端末が、地理的位置情報を取得する位置情報取得部と、相互にグループ化することが許可された監視対象者の監視端末どうしでグループを設定するグループ設定部と、前記取得した位置情報と前記グループの設定情報とを、情報管理装置へ送信する第1送信部とを備え、
前記情報管理装置が、前記位置情報とグループの設定情報を受信する第1受信部と、監視対象者の属性情報と、監視対象者の監視レベルを判定するための条件とを記憶した管理情報記憶部と、前記設定されたグループに属する監視端末ごとに受信した位置情報から、監視端末相互間の距離を算出する相互距離確認部と、前記算出された距離と、前記監視対象者の属性情報と、前記監視レベル判定条件とから、監視対象者の現在の監視レベルを判定する監視レベル判定部とを備えたことを特徴とする通信制御システム。
【請求項2】
前記特定の監視対象者の監視状態を確認する確認端末をさらに備え、前記情報管理装置が、前記監視レベル判定部によって判定された監視レベルに予め対応づけられた動作を実行し、前記確認端末に、監視対象者の現在の監視レベルを識別する状態情報を通知することを特徴とする請求項1の通信制御システム。
【請求項3】
前記確認端末が、各監視対象者の属性情報と、相互にグループ化することが許可された監視対象者のリストとを登録する入力部と、前記登録された監視対象者の属性情報を前記情報管理装置へ送信し、前記監視対象者のリストを前記監視端末へ送信する第2送信部とを備えたことを特徴とする請求項2の通信制御システム。
【請求項4】
前記監視端末が、前記監視対象者のリストを記憶する監視情報記憶部を備え、前記グループ設定部は、監視対象者のリストの中に含まれる監視対象者の監視端末のみの間でグループを設定し、当該リストに含まれない監視対象者の監視端末との間ではグループを設定しないことを特徴とする請求項3の通信制御システム。
【請求項5】
前記確認端末が、前記情報管理装置から通知された監視対象者の状態情報を用いて、監視をする者へ知らせる報知情報を生成する報知情報生成部を備えたことを特徴とする請求項2の通信制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−70981(P2008−70981A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−247140(P2006−247140)
【出願日】平成18年9月12日(2006.9.12)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】