運転支援装置及びプログラム
【課題】 車両の接触が起きた場合に、2次的な接触を考慮して支援を行う。
【解決手段】 周辺車両の走行情報が取得され(S100)、走行情報に含まれる各車両の予測軌道から周辺車両同士の接触が不可避であるか否かが判断される(S120)。接触が不可避であると判断されると(S120:YES)、データベースを参照することにより接触態様から接触後挙動が特定される(S130)。例えば、データベースを用い、周辺車両のうち該当車両の車種、積載量、接触時の車速、及び、接触形態に基づき、接触後移動方向、及び、接触後移動距離を特定するという具合である。接触後挙動が特定されると次に、地図データ上の危険エリアが特定され(S140)、特定された危険エリアに基づき、ブレーキ操作やハンドル操作が促される。
【解決手段】 周辺車両の走行情報が取得され(S100)、走行情報に含まれる各車両の予測軌道から周辺車両同士の接触が不可避であるか否かが判断される(S120)。接触が不可避であると判断されると(S120:YES)、データベースを参照することにより接触態様から接触後挙動が特定される(S130)。例えば、データベースを用い、周辺車両のうち該当車両の車種、積載量、接触時の車速、及び、接触形態に基づき、接触後移動方向、及び、接触後移動距離を特定するという具合である。接触後挙動が特定されると次に、地図データ上の危険エリアが特定され(S140)、特定された危険エリアに基づき、ブレーキ操作やハンドル操作が促される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転者の運転を支援する運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の接触を未然に防ぐ技術が種々開示されている。例えば、自車両と接触する可能性のある車両に対し、注意情報を送信する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。この技術では、自車及び周囲車両の車速、進行方向及び位置情報に基づき、自車両を中心とする所定距離内に周囲車両がある場合、周囲車両を注目リストに登録する。そして、注目リストの車両が自車両と接触する可能性がある場合には、注意情報をその車両に対して送信する。
【0003】
【特許文献1】特開2008−90663号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、車両の接触には、既に車両間に接触が生じた後に、その接触した車両が接触のはずみでとる挙動により、別の車両と起こす2次的な接触がある。上記特許文献1においては、2次的な接触については考慮されていないが、2次的な接触に対する支援についても望まれていた。
【0005】
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、車両の接触が起きた場合に、2次的な接触を考慮した支援を行うことにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の運転支援装置は、車両の接触態様と、当該接触態様に対応する接触後挙動とを、対応付ける対応情報を記憶する対応情報記憶手段と、所定範囲内の周辺車両から走行情報を受信する通信手段と、周辺車両の走行情報に基づき、周辺車両の接触を予測するとともに、当該接触態様を特定する接触態様特定手段と、対応情報記憶手段の対応情報を参照して、特定された接触態様に対応する接触後挙動を特定する挙動特定手段と、挙動特定手段にて特定された接触後挙動に基づく支援を行う支援手段と、を備えていることを特徴とする。
【0007】
つまり、周辺車両の走行情報から車両の接触態様を特定し、接触態様から接触後挙動を特定して、接触後挙動に基づく支援を行うのである。例えば、ブレーキ操作を促したり、ハンドル操作を促したりすることが例示される。これにより、車両の接触が起きてしまった場合にも、2次的な接触を考慮した支援を行うことができる。なお、本発明の運転支援装置は、車両に搭載されて用いられる車載用ナビゲーション装置として具現化されることが考えられる。また、道路脇に設置される路側機として具現化することが考えられる。
【0008】
また、本発明では、接触態様から接触後挙動を特定するにあたって、車両の接触態様と当該接触態様に対応する接触後挙動とを対応付ける対応情報が用いられるため、容易に接触後挙動を特定することができる。
【0009】
特定された接触後挙動に基づく支援を行う際、接触が予測された周辺車両との接触を回避するための接触回避方法を判定するようにし、判定された接触回避方法に基づく支援が支援手段によって行われるようにしてもよい。このようにすれば、車両の接触を回避するための適切な支援がなされるため、2次的な接触を考慮した支援を行うことができる。
【0010】
以上は、運転支援装置の発明として説明してきたが、次に示すようなプログラムの発明としても実現できる。
すなわち、所定範囲内の周辺車両から走行情報を受信する通信処理と、周辺車両の走行情報に基づき、前記周辺車両の接触を予測するとともに、当該接触態様を特定する接触態様特定処理と、車両の接触態様と当該接触態様に対応する接触後挙動とを対応付ける対応情報を参照して、特定された接触態様に対応する接触後挙動を特定する挙動特定処理と、挙動特定処理にて特定された接触後挙動に基づく支援を行う支援処理と、を含むことを特徴とするプログラムである。このようなプログラムをコンピュータシステムにて実行することで、上述した運転支援装置と同様の効果が奏される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本形態の車載用ナビゲーション装置1の全体構成を示す概略ブロック図である。車載用ナビゲーション装置1は、車両に搭載されて用いられ、後述するように、車車間通信により車両同士で走行情報を交換する。
車載用ナビゲーション装置1は、制御部(ナビECU)10を中心に構成されている。制御部10には、GPS(Global Positining System)受信機20、地図データ記憶部30、センサ群40、通信部50、データベース60、カメラ70、表示部80、及び、音声出力部90が電気的に接続されている。
【0012】
制御部10は、いわゆるコンピュータシステムとして構成されており、内部にはCPU、ROM、RAM、及び、I/Oなどを備えている。
GPS受信機20は、衛星からの電波を受信する。この電波に基づく測位によって、自車位置(本形態では、地図上の位置座標)を検出することが可能となっている。もちろん、図示しない地磁気センサ、ジャイロスコープ、距離センサなどと、相互に補完しながら自車の位置座標を検出しても良いし、GPS受信機20を用いずに自車の位置座標を検出してもよい。
【0013】
地図データ記憶部30は、例えばハードディスク装置(HDD)として実現される記憶装置である。なお、他の記憶媒体を用いても差し支えない。この地図データ記憶部30は、位置検出の精度向上のためのいわゆるマップマッチング用データおよび経路を探索するための地図データを記憶している。また、地図データには、施設情報等の各種データが含まれている。
【0014】
センサ群40には、自車両の車速及び加速度を特定するための情報を取得するセンサが含まれる。例えば、車速センサ及び加速度センサである。なお、車速及び加速度を得ることができればよいため、他のセンサで構成してもよい。また、センサ群40には、車両シート内部に配置された着座センサが含まれる。これにより、制御部10は、搭乗者数を取得可能となっている。本形態において搭乗者数は、車両の積載量とみなされる。また、センサ群40には、ステアリングセンサが含まれており、これにより、制御部10は、操舵角度を取得可能となっている。
【0015】
通信部50は、無線通信を行うための構成である。車載用ナビゲーション装置1は、複数台の車両に搭載されて用いられる。このとき各車両同士の間で車車間通信を可能とするのが、この通信部50である。
【0016】
データベース60は、車両の接触の態様(以下単に「接触態様」という)と車両の接触後の挙動(以下単に「接触後挙動」という)とを対応付ける対応情報を記憶するデータベースである。後述するように、この対応情報を参照することで、接触態様に基づいて接触後挙動を特定可能となっている。
【0017】
カメラ70は、車両の周辺を撮影可能なカメラであり、例えばCCDカメラとして具現化される。後述するように、カメラ70による撮影画像により、車両側方に障害物(車両を含む)があるか否かが判断される。
【0018】
表示部80は、ディスプレイ装置として具現化される。近年では、液晶表示器を用いて構成することが一般的である。音声出力部90は、スピーカ装置として具現化される。本形態では、運転支援を行うのであるが、この運転支援のための画像表示及び音声案内を実現するのが、表示部80及び音声出力部90である。
【0019】
このように構成された車載用ナビゲーション装置1が複数台の車両に搭載されることは、既に述べた。本形態では、自車両と、自車両を基準とした所定範囲内に位置する車両(以下「周辺車両」という)とを含む複数台の車両が、相互に通信を行う。
【0020】
図2は、接触後挙動特定処理を示すフローチャートである。
最初のステップ(以下、ステップを単に記号「S」で示す)100において、周辺車両の走行情報を取得する。この処理は、図1に示した通信部50を介した車車間通信によって実現される。
【0021】
ここで、走行情報について説明しておく。走行情報には、「位置座標」、「車種」、「積載量」、「車速」、「加速度」、及び、「予測軌道」が含まれる。なお、「予測軌道」には、時刻情報が対応付けられている。
「位置座標」は、上述したように、GPS受信機20によって測位される車両の位置座標である。
【0022】
「車種」は、軽自動車、普通自動車、及び、大型自動車の分類を意味する。さらに、普通自動車は、コンパクトカー、セダン、SUV(スポーツ・ユーティリティ・ビークル)、及び、ミニバンに分類される。
【0023】
「積載量」は、上述したように、搭乗者数である。搭乗者数は、センサ群40に含まれる着座センサから取得される。
「車速」は、上記位置座標における車両の速さである。例えば、車速は、センサ群40に含まれる車速センサの情報として取得される。
「加速度」は、上記位置座標における車両の加速度である。例えば、加速度は、センサ群40に含まれる加速度センサの情報として取得される。
【0024】
「予測軌道」は、上記位置座標における車速、加速度及び操舵角度から算出される車両の軌道である。なお、上述したように操舵角度は、センサ群40に含まれるステアリングセンサから取得される。本形態において、各車両は自車両の所定時点毎の予測位置を予測軌道としてそれぞれ算出し、周辺車両へ送信するようになっている。例えば、現時点での位置座標、0.5秒後の位置座標、1.0秒後の位置座標、という具合に自車両の予測位置を算出することが考えられる。もちろん、各車両が周辺車両の予測軌道を、送信される情報(例えば、加速度、車速及び操舵角度など)から、算出する構成としてもよい。
【0025】
S110では、自車両の走行情報を送信する。走行情報については既に述べた通りである。この処理は、周辺車両に対し、通信部50を介した車車間通信によって、走行情報を送信するものである。上述したS100及びS110の処理によって、複数台の車両(自車両及び周辺車両)で走行情報が共有されることになる。
【0026】
次のS120では、接触が不可避か否かを判断する。この処理は、周辺車両からの走行情報中の予測軌道に基づき、周辺車両同士の接触が不可避であるか否かを判断するものである。具体的には、制御部10(例えばROM等)に車種毎の外形形状を示す形状データが記憶されており、周辺車両からの走行情報中の予測軌道にて示される予測位置は車両中央の位置座標であるため、当該予測位置と形状データとに基づいて、周辺車両の外形形状の予測軌道を特定する。そして、同一時刻における周辺車両同士の外形形状に基づいて、周辺車両同士の接触が不可避であるか否か、を判断する。なお、接触が不可避である場合には、上述した形状データを用いて車両の外形における接触箇所を特定する。また、接触が不可避である場合には、走行情報に含まれる「車速」、「加速度」、及び、接触が予測されるまでの時間に基づいて、接触時の車速を特定する。
【0027】
ここで、S120の処理を詳細に説明しておく。
図3に示すように、例えばX車両は、現時点での位置座標ZX1、0.5秒後の位置座標ZX2、及び1.0秒後の位置座標ZX3を予測軌道として算出する。同様にY車両は、現時点での位置座標ZY1、0.5秒後の位置座標ZY2、及び、1.0秒後の位置座標ZY3を予測軌道として算出する。
【0028】
このとき、X車両及びY車両から走行情報を受信した第三車両(不図示)は、車種毎の形状データを用いて、X車両及びY車両の外形形状の予測軌道を特定する。図3に示すように、現時点、0.5秒後、1.0秒後のX及びYの各車両の外形形状をGX1、GY1、GX2、GY2、GX3、GY3とし、当該外形形状の予測軌道を特定するという具合である。予測軌道を特定すると、第三車両は、外形形状の予測軌道に基づき、X車両とY車両とが接触するか否かを判断する。また、接触箇所の特定について言えば、図3に示した例では、X車両における接触箇所は車両正面(詳しくは車両正面左方)と特定され、Y車両における接触箇所は車両側面(右前方)と特定される。なお、図3では、説明を簡単にするため、0.5秒後、1.0秒後としているが、外形形状の接触を判断するために、さらに細かい間隔で予測位置を算出するようにしてもよい。あるいは、第三車両において、送信される離散的な予測位置を、数学的に補間することとしてもよい。
【0029】
図2に戻りS120で接触が不可避であると判断された場合(S120:YES)、S130へ移行する。一方、接触が不可避でないと判断された場合(S120:NO)、すなわち接触が避けられる可能性がある場合には、本接触後挙動特定処理を終了する。
【0030】
S130では、データベース60を参照して、接触後挙動を特定する。この処理は、S120にて接触が不可避であると判断された周辺車両の接触後挙動を特定するものである。ここで、接触後挙動の特定に用いられるデータベース60の一例を図4に示す。
【0031】
図4に示すように、ここには、事例1、2、3、・・・として車両X及び車両Yの各車両で、「接触態様」と「接触後挙動」とが対応付けられている。このとき、接触態様は、各車両の「車種」、「積載量」、「接触時の車速」及び「接触形態」で示される。尚、本実施形態において、「接触形態」は、接触時における周辺車両それぞれの接触箇所にて示される。また、接触後挙動は、各車両の「接触後移動方向」及び「接触後移動距離」で示されている。
【0032】
具体的に、例えば事例1を見ると、車両Xは、車種が「軽自動車」、積載量(搭乗者数)が「1」、接触時の車速が「30km/h未満」、接触形態が「車両側面(右後方)」となっている。一方、車両Yは、車種が「ミニバン」、積載量(搭乗者数)が「3」、接触時の車速が「50km/h未満」、接触形態が「車両正面」となっている。
そして、このような接触態様に対応する接触後挙動として、車両Xの接触後移動方向が「車両X前方」及び「車両X左斜め前方」、接触後移動距離が「2m〜3m」となっている。一方、車両Yの接触後移動方向が「車両Y前方」、接触後移動距離が「1m〜2m」となっている。
【0033】
このようなデータベース60は、実際の車両の接触が生じた場合に情報収集することで構築することが考えられる。構築されたデータベース60は、情報センタから配信されることとしてもよい。このとき、情報センタにおいて収集される情報は、接触車両に搭載されたナビゲーション装置などから自動的に情報センタへ送信されるようにすることが考えられる。データベース60に記録される事例数が十分に多くなれば、ほとんど全ての接触態様に対し、その後の接触後挙動を特定することが可能となる。
【0034】
図2中のS130では、具体的には、S120にて接触が不可避であると判断された周辺車両の走行情報に基づいて、データベース60を参照し、接触後挙動を特定する。尚、「接触形態」については、S120にて接触が不可避であるか否かの判断を行った際に特定された接触形態を取得するとともに、「接触時の車速」についても同様に、S120において特定された接触時の車速を取得する。
S140では、地図上の位置に変換する。この処理は、接触後挙動としての「接触後移動方向」及び「接触後移動距離」を用い、車両X及び車両Yの接触後の位置を地図上の位置に変換するものである。そして変換された車両X及び車両Yの接触後の位置を中心とした所定領域(例えば半径5m)を危険エリアとして特定する。S140の処理終了後、本接触後挙動特定処理を終了する。
【0035】
接触後挙動特定処理に続いて行われるのが、次に示す支援処理である。図5は、支援処理を示すフローチャートである。
最初のS200において、回避判定処理を実行する。この回避判定処理の詳細は図6に示すところである。
図6中のS201では、回避フラグをリセットする。後述するように、回避フラグは、回避の必要があると判断された場合にセットされる。
【0036】
次のS202では、接触後の車両X及び車両Yの位置が自車両の走行に影響するか否かを判断する。具体的には、自車両の進行方向の延長線上に危険エリアが存在するか否かに基づき、判断を行う。ここで自車両に影響があると判断された場合(S202:YES)、S203へ移行する。一方、自車両に影響がないと判断された場合(S202:NO)、回避の必要はない、として、本回避判定処理を終了する。この場合は、回避フラグはリセットされたままとなる。
【0037】
S203では、周辺情報を取得する。この処理は、図1中のカメラ70による撮影画像により、車両側方に障害物があるか否かの情報を取得するものである。もちろん、車両の側方に障害物があるか否かを判断できればよいため、例えば、カメラ70に代え、レーダ装置などを採用してもよい。
【0038】
S204では、接触後の車両X及び車両Yの位置までの距離が十分にあるか否かを判断する。この判断は、具体的には、自車両の位置、及び、危険エリアの位置に基づいて、自車両から危険エリアまでの距離を算出し、算出した距離が自車両の車速に応じて予め設定されている基準距離よりも大きい場合に、危険エリアまでの距離が十分にあると判断する。ここで危険エリアまでの距離が十分にあると判断された場合(S204:YES)、S205にて減速回避と判定し回避フラグをセットして、本回避判定処理を終了する。一方、危険エリアまでの距離が不十分であると判断された場合(S204:NO)、S206へ移行する。
【0039】
S206では、S203にて取得した周辺情報を用い、自車両の側方に回避可能なスペースがあるか否かを判断する。ここで自車両の側方に回避可能なスペースがあると判断された場合(S206:YES)、S207にて操舵回避と判定し回避フラグをセットして、本回避判定処理を終了する。一方、自車両の側方に回避可能なスペースがないと判断された場合(S206:NO)、S208にて自動減速回避と判定し回避フラグをセットして、本回避判定処理を終了する。なお、自動減速回避判定は、危険エリアまでの距離が不十分なため、自動制御による減速を行うという判定である。
【0040】
このような回避判定処理が実行されることを前提として、図5中のS210では、回避が必要か否かを判断する。この判断は、図6に示した回避判定処理における回避フラグに基づいて行われる。ここで回避が必要であると判断された場合(S210:YES)、すなわち回避フラグがセットされている場合には、S230へ移行する。一方、回避が必要でないと判断された場合(S210:NO)、すなわち回避フラグがセットされていない場合には、S220にて、接触車両の案内を行う。例えば、表示部80及び音声出力部90を介し、接触が予測される地点を地図上に表示し、接触が予測されることを音声で案内するという具合である。S220の処理終了後、本支援処理を終了する。
【0041】
S230では、減速回避判定がなされたか否かを判断する。図6中のS205又はS208にて減速回避と判定された場合にここで肯定判断され、S207にて操舵回避と判定された場合にここで否定判断される。減速回避判定がなされたと判断された場合(S230:YES)、S250へ移行する。一方、減速回避判定がなされていないと判断された場合(S230:NO)、すなわち操舵回避判定がなされている場合には、S240にてハンドル操作を促し、その後、本支援処理を終了する。このS240では、例えば、車線変更が可能である場合、当該車線変更を促す画像表示を行うと共に、車線変更を促す音声を出力する。
【0042】
S250では、自動減速回避判定がなされたか否かを判断する。この処理は、図6中のS208にて自動減速回避判定がなされたか否かを判断するものである。ここで自動減速回避判定がなされたと判断された場合(S250:YES)、S260にて自動減速制御を行い、本支援処理を終了する。一方、自動減速回避判定がなされていないと判断された場合(S250:NO)、すなわち運転者に減速を促す通常の減速回避判定である場合には、S270へ移行する。
【0043】
S270では、ブレーキ操作を促す。ここでは、例えば、ブレーキによる減速を促す画像表示を行うと共に、ブレーキによる減速を促す音声を出力する。S270の処理終了後、本支援処理を終了する。
【0044】
以上、接触後挙動特定処理及び支援処理について説明したが、当該処理に対する理解を容易にするため、ここで、具体例を挙げて説明しておく。
図7は、記号Mで示す交差点に進入しようとする複数の車両300、310、320、330を示す説明図である。これら車両300〜330を区別するため、適宜、A車両300、B車両310、C車両320、及び、D車両330と記述する。ここでA車両300は大型自動車であり、B〜Dの車両310〜330は普通自動車(セダン)であるものとする。また、A車両及びB車両の積載量(搭乗者数)はともに「1」であるとする。なお、実際にはA〜Dの各車両300〜330に搭載される車載用ナビゲーション装置1の制御部10が各処理の主体となるが、以下の説明では、A〜Dの各車両300〜330を主体として記述する。
【0045】
図7中で交差する一方の道路(図中の左右に延びる道路)は、両側4車線(片側2車線)となっており、他方の道路(図中の上下に延びる道路)は、大型自動車のすれ違いが困難な狭隘道路となっている。記号Jはいわゆる中央線を示し、記号K、Lは、車線の区切りを示す車線境界線を示している。
【0046】
このような状況下で、例えば自車両をC車両320とすれば、自車両は、周辺車両であるA車両300、B車両310、及びD車両330から走行情報を取得すると共に、当該周辺車両に対して走行情報を送信する(図2中のS100、S110)。
【0047】
そして、取得される走行情報中の予測軌道に基づきA車両300とB車両310との接触が不可避であると判断したものとして(図2中のS120:YES)説明を続ける。
このとき、自車両は、データベース60を参照することにより、A及びBの車両300、310からの走行情報に基づいて、A及びBの各車両300、310の接触後挙動を特定する(図2中のS130)。例えば、図4に示したデータベース60を用い、A及びBの各車両300、310の「車種」、「積載量」、「接触時の車速」、「接触形態」に基づき、A及びBの各車両300、310の「接触後移動方向」、「接触後移動距離」を特定するという具合である。その後、上述したように、接触後移動方向及び接触後移動距離から、地図上の危険エリアを特定する(S140)。
【0048】
ここで、データベース60を用いた接触後挙動の特定について具体的に説明する。
図8に示す例では、A車両の接触態様は、車種が「大型自動車」、積載量が「1」、接触時の車速が「30km/h未満」、接触形態が「車両正面」となっているものとする。一方、B車両の接触態様は、車種が「セダン」、積載量が「1」、接触時の車速が「10km/h未満」、接触形態が「車両側面(右前方)」となっているものとする。
【0049】
本形態では、このような接触態様を元にデータベース60を検索する。すると、図11に示すように、事例Lに相当することが分かる。したがって、接触後移動方向について、A車両300は「車両前方」と特定され、B車両310は「車両左側方」及び「車両前方」と特定される。また、接触後移動距離について、A車両300は「1m未満」と特定され、B車両310は「2〜3m」と特定される。
【0050】
このようにして特定された接触後挙動(すなわち、接触後移動方向及び接触後移動距離)に基づく危険エリアが図8中に斜線で示すエリアである。
【0051】
また、図9に示す例では、A車両の接触態様は、車種が「大型自動車」、積載量が「1」、接触時の車速が「30km/h未満」、接触形態が「車両側面(左中央)」となっているものとする。一方、B車両の接触態様は、車種が「セダン」、積載量が「1」、接触時の車速が「10km/h未満」、接触形態が「車両正面」となっているものとする。
【0052】
図8に示した例と同様に、このような接触態様を元にデータベース60を検索する。すると、図11に示すように、事例Mに相当することが分かる。したがって、接触後移動方向について、A車両300は「移動なし」と特定され、B車両310は「車両左右側方」及び「車両後方」と特定される。また、接触後移動距離について、A車両300は「0m」と特定され、B車両310は「〜1m」と特定される。
【0053】
このようにして特定された接触後挙動(すなわち、接触後移動方向及び接触後移動距離)に基づく危険エリアが、図9中に斜線で示すエリアである。
【0054】
さらにまた、図10に示す例では、A車両の接触態様は、車種が「大型自動車」、積載量が「1」、接触時の車速が「30km/h未満」、接触形態が「車両正面」となっているものとする。一方、B車両の接触態様は、車種が「セダン」、積載量が「1」、接触時の車速が「10km/h未満」、接触形態が「車両側面(右後方)」となっているものとする。
【0055】
図8及び図9に示した例と同様に、このような接触態様を元にデータベース60を検索する。すると、図11に示すように、事例Nに相当することが分かる。したがって、接触後移動方向について、A車両300は「車両前方」と特定され、B車両310は「車両左側方」及び「車両左斜め前方」と特定される。また、接触後移動距離について、A車両300は「1m未満」と特定され、B車両310は「3m〜4m」と特定される。
【0056】
このようにして特定された接触後挙動(すなわち、接触後移動方向及び接触後移動距離)に基づく危険エリアが、図10中に斜線で示すエリアである。
【0057】
危険エリアが特定されると自車両であるC車両320は、自車進行方向を考慮して危険エリアが自車両に影響するか否かを判断する(図6中のS202)。図8及び図10に示した例では、自車両の進行方向の延長線上に危険エリアが存在するため、肯定判断される。一方、図9に示した例では、自車両の進行方向の延長線上に危険エリアが存在しないため、否定判断される。
【0058】
ここで否定判断された場合(図6中のS202:NO)、回避の必要はないと判断されて(図5中のS210:NO)、接触車両の案内が行われる(S220)。この場合、自車両であるC車両320においては、例えば、表示部80及び音声出力部90を介して、接触が予測される地点が地図上に表示され、接触が予測される旨が音声で案内される。
【0059】
一方、肯定判断された場合(図6中のS202:YES)、周辺情報が取得され(S203)、危険エリアまでの距離が十分あるか否かが判断されて(S204)、距離が十分あると判断されると(S204:YES)、減速回避と判定される(S205)。その場合、支援処理では、減速回避判定であるとして(図5中のS230:YES)、ブレーキ操作が促される(S270)。例えば、表示部80を介して図12に記号G1で示すような画像が表示され、音声出力部90を介して記号H1で示すような「減速してください。自車進行方向に障害物が現れる可能性があります。」という案内が行われる。
【0060】
なお、図8及び図10の例で、危険エリアまでの距離が不十分であるとの判断がなされた場合(図6中のS204:NO)、側方には車両Aの存在により回避スペースがないため(S206:NO)、自動減速回避判定がなされることになる(S208)。この場合、自動減速制御が行われる(図5中S250:YES、S260)。ここでは、図12中に記号H1で示した案内に代え、例えば「自動減速制御を行います。」などの案内が行われる。なお、自動減速制御は、危険エリアまでの距離に基づき、適切なブレーキ操作を自動的に行うものである。
【0061】
また、図10の例で自車両がD車両330である場合を説明する。この場合、危険エリアまでの距離が不十分であるとの判断がなされた場合(図6中のS204:NO)、側方に二点鎖線で示す回避スペースがあるため(S206:YES)、操舵回避の判定がなされることになる(S207)。その場合、支援処理では、操舵回避判定であるとして(図5中のS230:NO)、ハンドル操作が促される(240)。この場合、例えば、表示部80を介して図13に記号G2で示すような画像が表示され、音声出力部90を介して記号H2で示すような「左に車線変更してください。自車進行方向に障害物が現れる可能性があります。」という音声案内が行われる。なお、図13に示すように、記号G2で示した画像には、記号G21で示すような車線境界線の表示や、記号G22で示すような車線の表示を行うようにしてもよい。
【0062】
なお、本形態におけるデータベース60が「対応情報記憶手段」を構成し、制御部10及び通信部50が「通信手段」を構成する。また、制御部10は「接触態様特定手段」、「挙動特定手段」及び「回避方法判定手段」を構成し、制御部10、表示部80及び音声出力部90が「支援手段」を構成する。
【0063】
また、図2中のS100の処理が「通信手段」の機能としての「通信処理」を構成し、S120及びS130の処理が「挙動特定手段」の機能としての「挙動特定処理」を構成し、図5に示す支援処理が「支援手段」の機能としての「支援処理」を構成する。また、図6に示した回避判定処理(図5中のS200)が「回避方法判定手段」の機能としての処理を構成する。
【0064】
次に、本形態の車載用ナビゲーション装置1によって奏される効果を説明する。
本形態では、周辺車両の走行情報が取得され(図2中のS100)、走行情報に含まれる各車両の予測軌道から周辺車両同士の接触が不可避であるか否かが判断される(S120)。接触が不可避であると判断されると(S120:YES)、データベース60を参照することにより接触態様から接触後挙動が特定される(S130)。接触後挙動が特定されると次に、地図データ上の危険エリアが特定される(S140)。そして、特定された危険エリアに基づき、ブレーキ操作やハンドル操作が促される(図5中のS270、S240)。これにより、接触が起きてしまった場合にも、2次的な接触を考慮した支援を行うことができる。また、本形態では、図4に示すようなデータベース60を用いるため(図2中のS130)、容易に接触後挙動を特定することができる。
【0065】
また、本形態では、支援処理を行うにあたって、回避判定処理(図6)が実行されるようになっている。この回避判定処理では、周辺情報が取得され(S203)、危険エリアまでの距離が十分にある場合(S204:YES)、減速回避判定が行われる(S205)。一方、危険エリアまでの距離が不十分である場合(S204:NO)、自車両の側方にスペースがあれば操舵回避判定が行われ(S206:YES、S207)、自車両の側方にスペースがなければ自動減速回避判定が行われる(S206:NO、S208)。そして、これらの判定に基づき支援処理が実行される(図5中のS230〜S270)。これにより、車両の接触を回避するための適切な支援がなされるため、2次的な接触を考慮した支援を行うことができる。
【0066】
特に、危険エリアまでの距離がない場合で、しかも自車両の側方にスペースがない場合には(図6中のS204:NO、S206:NO)、自動減速回避と判定されて(S208)、自動的に減速制御が行われる(図5中のS260)。したがって、危険エリアまでの距離がない場合で、しかも自車両の側方にスペースがない場合であっても、接触が予測される車両を回避するための適切な支援が可能となっている。
【0067】
以上本発明は、上述した実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々なる形態で実施できることは言うまでもない。
【0068】
(イ)上記実施形態では走行情報として車両の「位置座標」、「車種」、「積載量」、「車速」、「加速度」及び「予測軌道」を採用していたが、これらの情報のうちの一部を走行情報として採用してもよい。また、「シフト位置」などの情報を走行情報に加えてもよい。走行情報に「シフト位置」を加えれば、より詳細に接触後挙動を特定することができる。
【0069】
(ロ)上記実施形態では車両に搭載される車載用ナビゲーション装置1として発明を具現化した。これに対し、例えば交差点などに設置される路側機として発明を具現化することも考えられる。路側機とした場合、周辺車両の走行情報を取得し、上述したのと同様の接触後挙動特定処理を実行する。その後、支援処理についても路側機が代わって実行し、運転支援に関する情報を各車両へ送信する。このような路側機として具現化した場合も、上記実施形態と同様の効果が奏される。
【0070】
(ハ)上記実施形態では、自車両を基準とする所定範囲内の周辺車両から走行情報を取得していた。この意味で、「通信手段は、自車両を基準とする所定範囲内の周辺車両から走行情報を取得すること」としてもよい。これに対し、例えば交差点など地図上の地点を基準とする所定範囲内の周辺車両と走行情報を共有する構成としてもよい。この意味で「通信手段は、地図上の地点を基準とする所定範囲内の周辺車両から走行情報を取得すること」としてもよい。所定範囲を適切に設定すれば、自車両に影響する周辺車両の動向を適切に把握でき、上述の効果が際立つ。
【0071】
(ニ)上記形態では、データベース60を参照することによって、接触態様から接触後挙動を特定している。このとき、同一の事例がデータベース60にない場合には、例えば、類似する事例を参照するようにしてもよい。
また、同一の事例がデータベース60にない場合には、例えば、接触態様に基づき計算を行って接触後挙動を特定するようにしてもよい。具体的には、車両重量(積載量を含む)、接触時の車速、路面の摩擦係数、及び、反発係数などから、物理法則を用いて接触後挙動を算出する。この意味で、「挙動特定手段は、特定された接触態様に対応する接触後挙動を計算によって特定可能であること」としてもよい。
これらの構成を採用すれば、同一の事例がデータベース60にない場合であっても、危険エリアの特定が可能となり、2次的な接触を考慮した支援を行うことができる。
【0072】
(ホ)上記形態では車両同士の接触について言及してきたが、例えば、地図データを用いて地図上の構造物を特定することにより、車両の構造物との接触をデータベース化してもよい。上述したように地図データには、施設情報等の各種データが含まれている。したがって、障害物となり得る構造物(ビル、信号機、中央分離帯など)と車両との接触態様と、当該接触態様に対応する接触後挙動とを対応付けたデータベースを記憶しておき、地図データ上の構造物の座標値情報と周辺車両の走行情報とに基づいて、周辺車両と構造物との接触を予測するとともに接触態様を特定し、上記のデータベースを参照して接触態様に対応する接触後挙動を特定し、当該特定された接触後挙動に基づく支援を行うことが考えられる。このようにすれば、周辺車両が道路上の構造物と接触することが予測される場合においても、当該接触が予測された周辺車両との接触を回避するための適切な支援がなされ、2次的な接触を考慮した支援を行うことができる。
【0073】
(へ)さらに、上記形態では特定された接触後挙動を地図上の構造物を考慮せず地図上の位置へ変換している(図2中のS140)が、上述したように車両と道路上の構造物との接触をデータベース化しておけば、図2中のS140にて、当該障害物となり得る構造物を考慮した上で、地図上の位置への変換を行い、危険エリアを特定してもよい。例えば図8の例で言うと、破線で示す構造物Pが存在する場合には、A車両300及びB車両310の接触後、さらに、B車両310と障害物Pとの接触を予測するとともに接触態様を特定し、B車両310の接触後挙動を上述のデータベースを用いて考慮し、記号PRで示す部分も危険エリアとして特定するという具合である。この意味で「挙動特定手段は、地図データに基づき、車両以外の構造物との接触を考慮して接触後挙動を特定すること」としてもよい。このようにすれば、周辺車両同士の接触後に、さらに道路上の構造物との接触が予測される場合においても、適切に危険エリアが特定されることになり、2次的な接触を考慮した支援を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】実施形態の車載用ナビゲーション装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】接触後挙動特定処理を示すフローチャートである。
【図3】周辺車両の接触判断手法を概念的に示す説明図である。
【図4】データベースの一例を示す説明図である。
【図5】支援処理を示すフローチャートである。
【図6】支援処理の前提となる回避判定処理を示すフローチャートである。
【図7】交差点へ向けて走行する車両を示す説明図である。
【図8】接触形態と特定される危険エリアとを例示する説明図である。
【図9】接触形態と特定される危険エリアとを例示する説明図である。
【図10】接触形態と特定される危険エリアとを例示する説明図である。
【図11】データベースからの検索例を示す説明図である。
【図12】ブレーキ操作を促す際の画像表示と音声とを例示する説明図である。
【図13】ハンドル操作を促す際の画像表示と音声とを例示する説明図である。
【符号の説明】
【0075】
1…車載用ナビゲーション装置、10…制御部(通信手段、接触態様特定手段、挙動特定手段、支援手段、回避方法判定手段)、20…GPS受信機、30…地図データ記憶部、40…センサ群、50…通信部(通信手段)、60…データベース(対応情報記憶手段)、70…カメラ、80…表示部(支援手段)、90…音声出力部(支援手段)、300〜330…車両
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転者の運転を支援する運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の接触を未然に防ぐ技術が種々開示されている。例えば、自車両と接触する可能性のある車両に対し、注意情報を送信する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。この技術では、自車及び周囲車両の車速、進行方向及び位置情報に基づき、自車両を中心とする所定距離内に周囲車両がある場合、周囲車両を注目リストに登録する。そして、注目リストの車両が自車両と接触する可能性がある場合には、注意情報をその車両に対して送信する。
【0003】
【特許文献1】特開2008−90663号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、車両の接触には、既に車両間に接触が生じた後に、その接触した車両が接触のはずみでとる挙動により、別の車両と起こす2次的な接触がある。上記特許文献1においては、2次的な接触については考慮されていないが、2次的な接触に対する支援についても望まれていた。
【0005】
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、車両の接触が起きた場合に、2次的な接触を考慮した支援を行うことにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の運転支援装置は、車両の接触態様と、当該接触態様に対応する接触後挙動とを、対応付ける対応情報を記憶する対応情報記憶手段と、所定範囲内の周辺車両から走行情報を受信する通信手段と、周辺車両の走行情報に基づき、周辺車両の接触を予測するとともに、当該接触態様を特定する接触態様特定手段と、対応情報記憶手段の対応情報を参照して、特定された接触態様に対応する接触後挙動を特定する挙動特定手段と、挙動特定手段にて特定された接触後挙動に基づく支援を行う支援手段と、を備えていることを特徴とする。
【0007】
つまり、周辺車両の走行情報から車両の接触態様を特定し、接触態様から接触後挙動を特定して、接触後挙動に基づく支援を行うのである。例えば、ブレーキ操作を促したり、ハンドル操作を促したりすることが例示される。これにより、車両の接触が起きてしまった場合にも、2次的な接触を考慮した支援を行うことができる。なお、本発明の運転支援装置は、車両に搭載されて用いられる車載用ナビゲーション装置として具現化されることが考えられる。また、道路脇に設置される路側機として具現化することが考えられる。
【0008】
また、本発明では、接触態様から接触後挙動を特定するにあたって、車両の接触態様と当該接触態様に対応する接触後挙動とを対応付ける対応情報が用いられるため、容易に接触後挙動を特定することができる。
【0009】
特定された接触後挙動に基づく支援を行う際、接触が予測された周辺車両との接触を回避するための接触回避方法を判定するようにし、判定された接触回避方法に基づく支援が支援手段によって行われるようにしてもよい。このようにすれば、車両の接触を回避するための適切な支援がなされるため、2次的な接触を考慮した支援を行うことができる。
【0010】
以上は、運転支援装置の発明として説明してきたが、次に示すようなプログラムの発明としても実現できる。
すなわち、所定範囲内の周辺車両から走行情報を受信する通信処理と、周辺車両の走行情報に基づき、前記周辺車両の接触を予測するとともに、当該接触態様を特定する接触態様特定処理と、車両の接触態様と当該接触態様に対応する接触後挙動とを対応付ける対応情報を参照して、特定された接触態様に対応する接触後挙動を特定する挙動特定処理と、挙動特定処理にて特定された接触後挙動に基づく支援を行う支援処理と、を含むことを特徴とするプログラムである。このようなプログラムをコンピュータシステムにて実行することで、上述した運転支援装置と同様の効果が奏される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本形態の車載用ナビゲーション装置1の全体構成を示す概略ブロック図である。車載用ナビゲーション装置1は、車両に搭載されて用いられ、後述するように、車車間通信により車両同士で走行情報を交換する。
車載用ナビゲーション装置1は、制御部(ナビECU)10を中心に構成されている。制御部10には、GPS(Global Positining System)受信機20、地図データ記憶部30、センサ群40、通信部50、データベース60、カメラ70、表示部80、及び、音声出力部90が電気的に接続されている。
【0012】
制御部10は、いわゆるコンピュータシステムとして構成されており、内部にはCPU、ROM、RAM、及び、I/Oなどを備えている。
GPS受信機20は、衛星からの電波を受信する。この電波に基づく測位によって、自車位置(本形態では、地図上の位置座標)を検出することが可能となっている。もちろん、図示しない地磁気センサ、ジャイロスコープ、距離センサなどと、相互に補完しながら自車の位置座標を検出しても良いし、GPS受信機20を用いずに自車の位置座標を検出してもよい。
【0013】
地図データ記憶部30は、例えばハードディスク装置(HDD)として実現される記憶装置である。なお、他の記憶媒体を用いても差し支えない。この地図データ記憶部30は、位置検出の精度向上のためのいわゆるマップマッチング用データおよび経路を探索するための地図データを記憶している。また、地図データには、施設情報等の各種データが含まれている。
【0014】
センサ群40には、自車両の車速及び加速度を特定するための情報を取得するセンサが含まれる。例えば、車速センサ及び加速度センサである。なお、車速及び加速度を得ることができればよいため、他のセンサで構成してもよい。また、センサ群40には、車両シート内部に配置された着座センサが含まれる。これにより、制御部10は、搭乗者数を取得可能となっている。本形態において搭乗者数は、車両の積載量とみなされる。また、センサ群40には、ステアリングセンサが含まれており、これにより、制御部10は、操舵角度を取得可能となっている。
【0015】
通信部50は、無線通信を行うための構成である。車載用ナビゲーション装置1は、複数台の車両に搭載されて用いられる。このとき各車両同士の間で車車間通信を可能とするのが、この通信部50である。
【0016】
データベース60は、車両の接触の態様(以下単に「接触態様」という)と車両の接触後の挙動(以下単に「接触後挙動」という)とを対応付ける対応情報を記憶するデータベースである。後述するように、この対応情報を参照することで、接触態様に基づいて接触後挙動を特定可能となっている。
【0017】
カメラ70は、車両の周辺を撮影可能なカメラであり、例えばCCDカメラとして具現化される。後述するように、カメラ70による撮影画像により、車両側方に障害物(車両を含む)があるか否かが判断される。
【0018】
表示部80は、ディスプレイ装置として具現化される。近年では、液晶表示器を用いて構成することが一般的である。音声出力部90は、スピーカ装置として具現化される。本形態では、運転支援を行うのであるが、この運転支援のための画像表示及び音声案内を実現するのが、表示部80及び音声出力部90である。
【0019】
このように構成された車載用ナビゲーション装置1が複数台の車両に搭載されることは、既に述べた。本形態では、自車両と、自車両を基準とした所定範囲内に位置する車両(以下「周辺車両」という)とを含む複数台の車両が、相互に通信を行う。
【0020】
図2は、接触後挙動特定処理を示すフローチャートである。
最初のステップ(以下、ステップを単に記号「S」で示す)100において、周辺車両の走行情報を取得する。この処理は、図1に示した通信部50を介した車車間通信によって実現される。
【0021】
ここで、走行情報について説明しておく。走行情報には、「位置座標」、「車種」、「積載量」、「車速」、「加速度」、及び、「予測軌道」が含まれる。なお、「予測軌道」には、時刻情報が対応付けられている。
「位置座標」は、上述したように、GPS受信機20によって測位される車両の位置座標である。
【0022】
「車種」は、軽自動車、普通自動車、及び、大型自動車の分類を意味する。さらに、普通自動車は、コンパクトカー、セダン、SUV(スポーツ・ユーティリティ・ビークル)、及び、ミニバンに分類される。
【0023】
「積載量」は、上述したように、搭乗者数である。搭乗者数は、センサ群40に含まれる着座センサから取得される。
「車速」は、上記位置座標における車両の速さである。例えば、車速は、センサ群40に含まれる車速センサの情報として取得される。
「加速度」は、上記位置座標における車両の加速度である。例えば、加速度は、センサ群40に含まれる加速度センサの情報として取得される。
【0024】
「予測軌道」は、上記位置座標における車速、加速度及び操舵角度から算出される車両の軌道である。なお、上述したように操舵角度は、センサ群40に含まれるステアリングセンサから取得される。本形態において、各車両は自車両の所定時点毎の予測位置を予測軌道としてそれぞれ算出し、周辺車両へ送信するようになっている。例えば、現時点での位置座標、0.5秒後の位置座標、1.0秒後の位置座標、という具合に自車両の予測位置を算出することが考えられる。もちろん、各車両が周辺車両の予測軌道を、送信される情報(例えば、加速度、車速及び操舵角度など)から、算出する構成としてもよい。
【0025】
S110では、自車両の走行情報を送信する。走行情報については既に述べた通りである。この処理は、周辺車両に対し、通信部50を介した車車間通信によって、走行情報を送信するものである。上述したS100及びS110の処理によって、複数台の車両(自車両及び周辺車両)で走行情報が共有されることになる。
【0026】
次のS120では、接触が不可避か否かを判断する。この処理は、周辺車両からの走行情報中の予測軌道に基づき、周辺車両同士の接触が不可避であるか否かを判断するものである。具体的には、制御部10(例えばROM等)に車種毎の外形形状を示す形状データが記憶されており、周辺車両からの走行情報中の予測軌道にて示される予測位置は車両中央の位置座標であるため、当該予測位置と形状データとに基づいて、周辺車両の外形形状の予測軌道を特定する。そして、同一時刻における周辺車両同士の外形形状に基づいて、周辺車両同士の接触が不可避であるか否か、を判断する。なお、接触が不可避である場合には、上述した形状データを用いて車両の外形における接触箇所を特定する。また、接触が不可避である場合には、走行情報に含まれる「車速」、「加速度」、及び、接触が予測されるまでの時間に基づいて、接触時の車速を特定する。
【0027】
ここで、S120の処理を詳細に説明しておく。
図3に示すように、例えばX車両は、現時点での位置座標ZX1、0.5秒後の位置座標ZX2、及び1.0秒後の位置座標ZX3を予測軌道として算出する。同様にY車両は、現時点での位置座標ZY1、0.5秒後の位置座標ZY2、及び、1.0秒後の位置座標ZY3を予測軌道として算出する。
【0028】
このとき、X車両及びY車両から走行情報を受信した第三車両(不図示)は、車種毎の形状データを用いて、X車両及びY車両の外形形状の予測軌道を特定する。図3に示すように、現時点、0.5秒後、1.0秒後のX及びYの各車両の外形形状をGX1、GY1、GX2、GY2、GX3、GY3とし、当該外形形状の予測軌道を特定するという具合である。予測軌道を特定すると、第三車両は、外形形状の予測軌道に基づき、X車両とY車両とが接触するか否かを判断する。また、接触箇所の特定について言えば、図3に示した例では、X車両における接触箇所は車両正面(詳しくは車両正面左方)と特定され、Y車両における接触箇所は車両側面(右前方)と特定される。なお、図3では、説明を簡単にするため、0.5秒後、1.0秒後としているが、外形形状の接触を判断するために、さらに細かい間隔で予測位置を算出するようにしてもよい。あるいは、第三車両において、送信される離散的な予測位置を、数学的に補間することとしてもよい。
【0029】
図2に戻りS120で接触が不可避であると判断された場合(S120:YES)、S130へ移行する。一方、接触が不可避でないと判断された場合(S120:NO)、すなわち接触が避けられる可能性がある場合には、本接触後挙動特定処理を終了する。
【0030】
S130では、データベース60を参照して、接触後挙動を特定する。この処理は、S120にて接触が不可避であると判断された周辺車両の接触後挙動を特定するものである。ここで、接触後挙動の特定に用いられるデータベース60の一例を図4に示す。
【0031】
図4に示すように、ここには、事例1、2、3、・・・として車両X及び車両Yの各車両で、「接触態様」と「接触後挙動」とが対応付けられている。このとき、接触態様は、各車両の「車種」、「積載量」、「接触時の車速」及び「接触形態」で示される。尚、本実施形態において、「接触形態」は、接触時における周辺車両それぞれの接触箇所にて示される。また、接触後挙動は、各車両の「接触後移動方向」及び「接触後移動距離」で示されている。
【0032】
具体的に、例えば事例1を見ると、車両Xは、車種が「軽自動車」、積載量(搭乗者数)が「1」、接触時の車速が「30km/h未満」、接触形態が「車両側面(右後方)」となっている。一方、車両Yは、車種が「ミニバン」、積載量(搭乗者数)が「3」、接触時の車速が「50km/h未満」、接触形態が「車両正面」となっている。
そして、このような接触態様に対応する接触後挙動として、車両Xの接触後移動方向が「車両X前方」及び「車両X左斜め前方」、接触後移動距離が「2m〜3m」となっている。一方、車両Yの接触後移動方向が「車両Y前方」、接触後移動距離が「1m〜2m」となっている。
【0033】
このようなデータベース60は、実際の車両の接触が生じた場合に情報収集することで構築することが考えられる。構築されたデータベース60は、情報センタから配信されることとしてもよい。このとき、情報センタにおいて収集される情報は、接触車両に搭載されたナビゲーション装置などから自動的に情報センタへ送信されるようにすることが考えられる。データベース60に記録される事例数が十分に多くなれば、ほとんど全ての接触態様に対し、その後の接触後挙動を特定することが可能となる。
【0034】
図2中のS130では、具体的には、S120にて接触が不可避であると判断された周辺車両の走行情報に基づいて、データベース60を参照し、接触後挙動を特定する。尚、「接触形態」については、S120にて接触が不可避であるか否かの判断を行った際に特定された接触形態を取得するとともに、「接触時の車速」についても同様に、S120において特定された接触時の車速を取得する。
S140では、地図上の位置に変換する。この処理は、接触後挙動としての「接触後移動方向」及び「接触後移動距離」を用い、車両X及び車両Yの接触後の位置を地図上の位置に変換するものである。そして変換された車両X及び車両Yの接触後の位置を中心とした所定領域(例えば半径5m)を危険エリアとして特定する。S140の処理終了後、本接触後挙動特定処理を終了する。
【0035】
接触後挙動特定処理に続いて行われるのが、次に示す支援処理である。図5は、支援処理を示すフローチャートである。
最初のS200において、回避判定処理を実行する。この回避判定処理の詳細は図6に示すところである。
図6中のS201では、回避フラグをリセットする。後述するように、回避フラグは、回避の必要があると判断された場合にセットされる。
【0036】
次のS202では、接触後の車両X及び車両Yの位置が自車両の走行に影響するか否かを判断する。具体的には、自車両の進行方向の延長線上に危険エリアが存在するか否かに基づき、判断を行う。ここで自車両に影響があると判断された場合(S202:YES)、S203へ移行する。一方、自車両に影響がないと判断された場合(S202:NO)、回避の必要はない、として、本回避判定処理を終了する。この場合は、回避フラグはリセットされたままとなる。
【0037】
S203では、周辺情報を取得する。この処理は、図1中のカメラ70による撮影画像により、車両側方に障害物があるか否かの情報を取得するものである。もちろん、車両の側方に障害物があるか否かを判断できればよいため、例えば、カメラ70に代え、レーダ装置などを採用してもよい。
【0038】
S204では、接触後の車両X及び車両Yの位置までの距離が十分にあるか否かを判断する。この判断は、具体的には、自車両の位置、及び、危険エリアの位置に基づいて、自車両から危険エリアまでの距離を算出し、算出した距離が自車両の車速に応じて予め設定されている基準距離よりも大きい場合に、危険エリアまでの距離が十分にあると判断する。ここで危険エリアまでの距離が十分にあると判断された場合(S204:YES)、S205にて減速回避と判定し回避フラグをセットして、本回避判定処理を終了する。一方、危険エリアまでの距離が不十分であると判断された場合(S204:NO)、S206へ移行する。
【0039】
S206では、S203にて取得した周辺情報を用い、自車両の側方に回避可能なスペースがあるか否かを判断する。ここで自車両の側方に回避可能なスペースがあると判断された場合(S206:YES)、S207にて操舵回避と判定し回避フラグをセットして、本回避判定処理を終了する。一方、自車両の側方に回避可能なスペースがないと判断された場合(S206:NO)、S208にて自動減速回避と判定し回避フラグをセットして、本回避判定処理を終了する。なお、自動減速回避判定は、危険エリアまでの距離が不十分なため、自動制御による減速を行うという判定である。
【0040】
このような回避判定処理が実行されることを前提として、図5中のS210では、回避が必要か否かを判断する。この判断は、図6に示した回避判定処理における回避フラグに基づいて行われる。ここで回避が必要であると判断された場合(S210:YES)、すなわち回避フラグがセットされている場合には、S230へ移行する。一方、回避が必要でないと判断された場合(S210:NO)、すなわち回避フラグがセットされていない場合には、S220にて、接触車両の案内を行う。例えば、表示部80及び音声出力部90を介し、接触が予測される地点を地図上に表示し、接触が予測されることを音声で案内するという具合である。S220の処理終了後、本支援処理を終了する。
【0041】
S230では、減速回避判定がなされたか否かを判断する。図6中のS205又はS208にて減速回避と判定された場合にここで肯定判断され、S207にて操舵回避と判定された場合にここで否定判断される。減速回避判定がなされたと判断された場合(S230:YES)、S250へ移行する。一方、減速回避判定がなされていないと判断された場合(S230:NO)、すなわち操舵回避判定がなされている場合には、S240にてハンドル操作を促し、その後、本支援処理を終了する。このS240では、例えば、車線変更が可能である場合、当該車線変更を促す画像表示を行うと共に、車線変更を促す音声を出力する。
【0042】
S250では、自動減速回避判定がなされたか否かを判断する。この処理は、図6中のS208にて自動減速回避判定がなされたか否かを判断するものである。ここで自動減速回避判定がなされたと判断された場合(S250:YES)、S260にて自動減速制御を行い、本支援処理を終了する。一方、自動減速回避判定がなされていないと判断された場合(S250:NO)、すなわち運転者に減速を促す通常の減速回避判定である場合には、S270へ移行する。
【0043】
S270では、ブレーキ操作を促す。ここでは、例えば、ブレーキによる減速を促す画像表示を行うと共に、ブレーキによる減速を促す音声を出力する。S270の処理終了後、本支援処理を終了する。
【0044】
以上、接触後挙動特定処理及び支援処理について説明したが、当該処理に対する理解を容易にするため、ここで、具体例を挙げて説明しておく。
図7は、記号Mで示す交差点に進入しようとする複数の車両300、310、320、330を示す説明図である。これら車両300〜330を区別するため、適宜、A車両300、B車両310、C車両320、及び、D車両330と記述する。ここでA車両300は大型自動車であり、B〜Dの車両310〜330は普通自動車(セダン)であるものとする。また、A車両及びB車両の積載量(搭乗者数)はともに「1」であるとする。なお、実際にはA〜Dの各車両300〜330に搭載される車載用ナビゲーション装置1の制御部10が各処理の主体となるが、以下の説明では、A〜Dの各車両300〜330を主体として記述する。
【0045】
図7中で交差する一方の道路(図中の左右に延びる道路)は、両側4車線(片側2車線)となっており、他方の道路(図中の上下に延びる道路)は、大型自動車のすれ違いが困難な狭隘道路となっている。記号Jはいわゆる中央線を示し、記号K、Lは、車線の区切りを示す車線境界線を示している。
【0046】
このような状況下で、例えば自車両をC車両320とすれば、自車両は、周辺車両であるA車両300、B車両310、及びD車両330から走行情報を取得すると共に、当該周辺車両に対して走行情報を送信する(図2中のS100、S110)。
【0047】
そして、取得される走行情報中の予測軌道に基づきA車両300とB車両310との接触が不可避であると判断したものとして(図2中のS120:YES)説明を続ける。
このとき、自車両は、データベース60を参照することにより、A及びBの車両300、310からの走行情報に基づいて、A及びBの各車両300、310の接触後挙動を特定する(図2中のS130)。例えば、図4に示したデータベース60を用い、A及びBの各車両300、310の「車種」、「積載量」、「接触時の車速」、「接触形態」に基づき、A及びBの各車両300、310の「接触後移動方向」、「接触後移動距離」を特定するという具合である。その後、上述したように、接触後移動方向及び接触後移動距離から、地図上の危険エリアを特定する(S140)。
【0048】
ここで、データベース60を用いた接触後挙動の特定について具体的に説明する。
図8に示す例では、A車両の接触態様は、車種が「大型自動車」、積載量が「1」、接触時の車速が「30km/h未満」、接触形態が「車両正面」となっているものとする。一方、B車両の接触態様は、車種が「セダン」、積載量が「1」、接触時の車速が「10km/h未満」、接触形態が「車両側面(右前方)」となっているものとする。
【0049】
本形態では、このような接触態様を元にデータベース60を検索する。すると、図11に示すように、事例Lに相当することが分かる。したがって、接触後移動方向について、A車両300は「車両前方」と特定され、B車両310は「車両左側方」及び「車両前方」と特定される。また、接触後移動距離について、A車両300は「1m未満」と特定され、B車両310は「2〜3m」と特定される。
【0050】
このようにして特定された接触後挙動(すなわち、接触後移動方向及び接触後移動距離)に基づく危険エリアが図8中に斜線で示すエリアである。
【0051】
また、図9に示す例では、A車両の接触態様は、車種が「大型自動車」、積載量が「1」、接触時の車速が「30km/h未満」、接触形態が「車両側面(左中央)」となっているものとする。一方、B車両の接触態様は、車種が「セダン」、積載量が「1」、接触時の車速が「10km/h未満」、接触形態が「車両正面」となっているものとする。
【0052】
図8に示した例と同様に、このような接触態様を元にデータベース60を検索する。すると、図11に示すように、事例Mに相当することが分かる。したがって、接触後移動方向について、A車両300は「移動なし」と特定され、B車両310は「車両左右側方」及び「車両後方」と特定される。また、接触後移動距離について、A車両300は「0m」と特定され、B車両310は「〜1m」と特定される。
【0053】
このようにして特定された接触後挙動(すなわち、接触後移動方向及び接触後移動距離)に基づく危険エリアが、図9中に斜線で示すエリアである。
【0054】
さらにまた、図10に示す例では、A車両の接触態様は、車種が「大型自動車」、積載量が「1」、接触時の車速が「30km/h未満」、接触形態が「車両正面」となっているものとする。一方、B車両の接触態様は、車種が「セダン」、積載量が「1」、接触時の車速が「10km/h未満」、接触形態が「車両側面(右後方)」となっているものとする。
【0055】
図8及び図9に示した例と同様に、このような接触態様を元にデータベース60を検索する。すると、図11に示すように、事例Nに相当することが分かる。したがって、接触後移動方向について、A車両300は「車両前方」と特定され、B車両310は「車両左側方」及び「車両左斜め前方」と特定される。また、接触後移動距離について、A車両300は「1m未満」と特定され、B車両310は「3m〜4m」と特定される。
【0056】
このようにして特定された接触後挙動(すなわち、接触後移動方向及び接触後移動距離)に基づく危険エリアが、図10中に斜線で示すエリアである。
【0057】
危険エリアが特定されると自車両であるC車両320は、自車進行方向を考慮して危険エリアが自車両に影響するか否かを判断する(図6中のS202)。図8及び図10に示した例では、自車両の進行方向の延長線上に危険エリアが存在するため、肯定判断される。一方、図9に示した例では、自車両の進行方向の延長線上に危険エリアが存在しないため、否定判断される。
【0058】
ここで否定判断された場合(図6中のS202:NO)、回避の必要はないと判断されて(図5中のS210:NO)、接触車両の案内が行われる(S220)。この場合、自車両であるC車両320においては、例えば、表示部80及び音声出力部90を介して、接触が予測される地点が地図上に表示され、接触が予測される旨が音声で案内される。
【0059】
一方、肯定判断された場合(図6中のS202:YES)、周辺情報が取得され(S203)、危険エリアまでの距離が十分あるか否かが判断されて(S204)、距離が十分あると判断されると(S204:YES)、減速回避と判定される(S205)。その場合、支援処理では、減速回避判定であるとして(図5中のS230:YES)、ブレーキ操作が促される(S270)。例えば、表示部80を介して図12に記号G1で示すような画像が表示され、音声出力部90を介して記号H1で示すような「減速してください。自車進行方向に障害物が現れる可能性があります。」という案内が行われる。
【0060】
なお、図8及び図10の例で、危険エリアまでの距離が不十分であるとの判断がなされた場合(図6中のS204:NO)、側方には車両Aの存在により回避スペースがないため(S206:NO)、自動減速回避判定がなされることになる(S208)。この場合、自動減速制御が行われる(図5中S250:YES、S260)。ここでは、図12中に記号H1で示した案内に代え、例えば「自動減速制御を行います。」などの案内が行われる。なお、自動減速制御は、危険エリアまでの距離に基づき、適切なブレーキ操作を自動的に行うものである。
【0061】
また、図10の例で自車両がD車両330である場合を説明する。この場合、危険エリアまでの距離が不十分であるとの判断がなされた場合(図6中のS204:NO)、側方に二点鎖線で示す回避スペースがあるため(S206:YES)、操舵回避の判定がなされることになる(S207)。その場合、支援処理では、操舵回避判定であるとして(図5中のS230:NO)、ハンドル操作が促される(240)。この場合、例えば、表示部80を介して図13に記号G2で示すような画像が表示され、音声出力部90を介して記号H2で示すような「左に車線変更してください。自車進行方向に障害物が現れる可能性があります。」という音声案内が行われる。なお、図13に示すように、記号G2で示した画像には、記号G21で示すような車線境界線の表示や、記号G22で示すような車線の表示を行うようにしてもよい。
【0062】
なお、本形態におけるデータベース60が「対応情報記憶手段」を構成し、制御部10及び通信部50が「通信手段」を構成する。また、制御部10は「接触態様特定手段」、「挙動特定手段」及び「回避方法判定手段」を構成し、制御部10、表示部80及び音声出力部90が「支援手段」を構成する。
【0063】
また、図2中のS100の処理が「通信手段」の機能としての「通信処理」を構成し、S120及びS130の処理が「挙動特定手段」の機能としての「挙動特定処理」を構成し、図5に示す支援処理が「支援手段」の機能としての「支援処理」を構成する。また、図6に示した回避判定処理(図5中のS200)が「回避方法判定手段」の機能としての処理を構成する。
【0064】
次に、本形態の車載用ナビゲーション装置1によって奏される効果を説明する。
本形態では、周辺車両の走行情報が取得され(図2中のS100)、走行情報に含まれる各車両の予測軌道から周辺車両同士の接触が不可避であるか否かが判断される(S120)。接触が不可避であると判断されると(S120:YES)、データベース60を参照することにより接触態様から接触後挙動が特定される(S130)。接触後挙動が特定されると次に、地図データ上の危険エリアが特定される(S140)。そして、特定された危険エリアに基づき、ブレーキ操作やハンドル操作が促される(図5中のS270、S240)。これにより、接触が起きてしまった場合にも、2次的な接触を考慮した支援を行うことができる。また、本形態では、図4に示すようなデータベース60を用いるため(図2中のS130)、容易に接触後挙動を特定することができる。
【0065】
また、本形態では、支援処理を行うにあたって、回避判定処理(図6)が実行されるようになっている。この回避判定処理では、周辺情報が取得され(S203)、危険エリアまでの距離が十分にある場合(S204:YES)、減速回避判定が行われる(S205)。一方、危険エリアまでの距離が不十分である場合(S204:NO)、自車両の側方にスペースがあれば操舵回避判定が行われ(S206:YES、S207)、自車両の側方にスペースがなければ自動減速回避判定が行われる(S206:NO、S208)。そして、これらの判定に基づき支援処理が実行される(図5中のS230〜S270)。これにより、車両の接触を回避するための適切な支援がなされるため、2次的な接触を考慮した支援を行うことができる。
【0066】
特に、危険エリアまでの距離がない場合で、しかも自車両の側方にスペースがない場合には(図6中のS204:NO、S206:NO)、自動減速回避と判定されて(S208)、自動的に減速制御が行われる(図5中のS260)。したがって、危険エリアまでの距離がない場合で、しかも自車両の側方にスペースがない場合であっても、接触が予測される車両を回避するための適切な支援が可能となっている。
【0067】
以上本発明は、上述した実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々なる形態で実施できることは言うまでもない。
【0068】
(イ)上記実施形態では走行情報として車両の「位置座標」、「車種」、「積載量」、「車速」、「加速度」及び「予測軌道」を採用していたが、これらの情報のうちの一部を走行情報として採用してもよい。また、「シフト位置」などの情報を走行情報に加えてもよい。走行情報に「シフト位置」を加えれば、より詳細に接触後挙動を特定することができる。
【0069】
(ロ)上記実施形態では車両に搭載される車載用ナビゲーション装置1として発明を具現化した。これに対し、例えば交差点などに設置される路側機として発明を具現化することも考えられる。路側機とした場合、周辺車両の走行情報を取得し、上述したのと同様の接触後挙動特定処理を実行する。その後、支援処理についても路側機が代わって実行し、運転支援に関する情報を各車両へ送信する。このような路側機として具現化した場合も、上記実施形態と同様の効果が奏される。
【0070】
(ハ)上記実施形態では、自車両を基準とする所定範囲内の周辺車両から走行情報を取得していた。この意味で、「通信手段は、自車両を基準とする所定範囲内の周辺車両から走行情報を取得すること」としてもよい。これに対し、例えば交差点など地図上の地点を基準とする所定範囲内の周辺車両と走行情報を共有する構成としてもよい。この意味で「通信手段は、地図上の地点を基準とする所定範囲内の周辺車両から走行情報を取得すること」としてもよい。所定範囲を適切に設定すれば、自車両に影響する周辺車両の動向を適切に把握でき、上述の効果が際立つ。
【0071】
(ニ)上記形態では、データベース60を参照することによって、接触態様から接触後挙動を特定している。このとき、同一の事例がデータベース60にない場合には、例えば、類似する事例を参照するようにしてもよい。
また、同一の事例がデータベース60にない場合には、例えば、接触態様に基づき計算を行って接触後挙動を特定するようにしてもよい。具体的には、車両重量(積載量を含む)、接触時の車速、路面の摩擦係数、及び、反発係数などから、物理法則を用いて接触後挙動を算出する。この意味で、「挙動特定手段は、特定された接触態様に対応する接触後挙動を計算によって特定可能であること」としてもよい。
これらの構成を採用すれば、同一の事例がデータベース60にない場合であっても、危険エリアの特定が可能となり、2次的な接触を考慮した支援を行うことができる。
【0072】
(ホ)上記形態では車両同士の接触について言及してきたが、例えば、地図データを用いて地図上の構造物を特定することにより、車両の構造物との接触をデータベース化してもよい。上述したように地図データには、施設情報等の各種データが含まれている。したがって、障害物となり得る構造物(ビル、信号機、中央分離帯など)と車両との接触態様と、当該接触態様に対応する接触後挙動とを対応付けたデータベースを記憶しておき、地図データ上の構造物の座標値情報と周辺車両の走行情報とに基づいて、周辺車両と構造物との接触を予測するとともに接触態様を特定し、上記のデータベースを参照して接触態様に対応する接触後挙動を特定し、当該特定された接触後挙動に基づく支援を行うことが考えられる。このようにすれば、周辺車両が道路上の構造物と接触することが予測される場合においても、当該接触が予測された周辺車両との接触を回避するための適切な支援がなされ、2次的な接触を考慮した支援を行うことができる。
【0073】
(へ)さらに、上記形態では特定された接触後挙動を地図上の構造物を考慮せず地図上の位置へ変換している(図2中のS140)が、上述したように車両と道路上の構造物との接触をデータベース化しておけば、図2中のS140にて、当該障害物となり得る構造物を考慮した上で、地図上の位置への変換を行い、危険エリアを特定してもよい。例えば図8の例で言うと、破線で示す構造物Pが存在する場合には、A車両300及びB車両310の接触後、さらに、B車両310と障害物Pとの接触を予測するとともに接触態様を特定し、B車両310の接触後挙動を上述のデータベースを用いて考慮し、記号PRで示す部分も危険エリアとして特定するという具合である。この意味で「挙動特定手段は、地図データに基づき、車両以外の構造物との接触を考慮して接触後挙動を特定すること」としてもよい。このようにすれば、周辺車両同士の接触後に、さらに道路上の構造物との接触が予測される場合においても、適切に危険エリアが特定されることになり、2次的な接触を考慮した支援を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】実施形態の車載用ナビゲーション装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】接触後挙動特定処理を示すフローチャートである。
【図3】周辺車両の接触判断手法を概念的に示す説明図である。
【図4】データベースの一例を示す説明図である。
【図5】支援処理を示すフローチャートである。
【図6】支援処理の前提となる回避判定処理を示すフローチャートである。
【図7】交差点へ向けて走行する車両を示す説明図である。
【図8】接触形態と特定される危険エリアとを例示する説明図である。
【図9】接触形態と特定される危険エリアとを例示する説明図である。
【図10】接触形態と特定される危険エリアとを例示する説明図である。
【図11】データベースからの検索例を示す説明図である。
【図12】ブレーキ操作を促す際の画像表示と音声とを例示する説明図である。
【図13】ハンドル操作を促す際の画像表示と音声とを例示する説明図である。
【符号の説明】
【0075】
1…車載用ナビゲーション装置、10…制御部(通信手段、接触態様特定手段、挙動特定手段、支援手段、回避方法判定手段)、20…GPS受信機、30…地図データ記憶部、40…センサ群、50…通信部(通信手段)、60…データベース(対応情報記憶手段)、70…カメラ、80…表示部(支援手段)、90…音声出力部(支援手段)、300〜330…車両
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の接触態様と、当該接触態様に対応する接触後挙動とを、対応付ける対応情報を記憶する対応情報記憶手段と、
所定範囲内の周辺車両から走行情報を受信する通信手段と、
前記周辺車両の走行情報に基づき、前記周辺車両の接触を予測するとともに、当該接触態様を特定する接触態様特定手段と、
前記対応情報記憶手段の前記対応情報を参照して、特定された接触態様に対応する接触後挙動を特定する挙動特定手段と、
前記挙動特定手段にて特定された接触後挙動に基づく支援を行う支援手段と、
を備えていることを特徴とする運転支援装置。
【請求項2】
請求項1に記載の運転支援装置において、
前記挙動特定手段にて特定された接触後挙動に基づき、前記接触が予測された周辺車両との接触を回避するための接触回避方法を判定する回避方法判定手段を備え、
前記支援手段は、前記回避方法判定手段にて判定された接触回避方法に基づく支援を行うことを特徴とする運転支援装置。
【請求項3】
所定範囲内の周辺車両から走行情報を受信する通信処理と、
前記周辺車両の走行情報に基づき、前記周辺車両の接触を予測するとともに、当該接触態様を特定する接触態様特定処理と、
車両の接触態様と当該接触態様に対応する接触後挙動とを対応付ける対応情報を参照して、特定された接触態様に対応する接触後挙動を特定する挙動特定処理と、
前記挙動特定処理にて特定された接触後挙動に基づく支援を行う支援処理と、
を含むことを特徴とするプログラム。
【請求項1】
車両の接触態様と、当該接触態様に対応する接触後挙動とを、対応付ける対応情報を記憶する対応情報記憶手段と、
所定範囲内の周辺車両から走行情報を受信する通信手段と、
前記周辺車両の走行情報に基づき、前記周辺車両の接触を予測するとともに、当該接触態様を特定する接触態様特定手段と、
前記対応情報記憶手段の前記対応情報を参照して、特定された接触態様に対応する接触後挙動を特定する挙動特定手段と、
前記挙動特定手段にて特定された接触後挙動に基づく支援を行う支援手段と、
を備えていることを特徴とする運転支援装置。
【請求項2】
請求項1に記載の運転支援装置において、
前記挙動特定手段にて特定された接触後挙動に基づき、前記接触が予測された周辺車両との接触を回避するための接触回避方法を判定する回避方法判定手段を備え、
前記支援手段は、前記回避方法判定手段にて判定された接触回避方法に基づく支援を行うことを特徴とする運転支援装置。
【請求項3】
所定範囲内の周辺車両から走行情報を受信する通信処理と、
前記周辺車両の走行情報に基づき、前記周辺車両の接触を予測するとともに、当該接触態様を特定する接触態様特定処理と、
車両の接触態様と当該接触態様に対応する接触後挙動とを対応付ける対応情報を参照して、特定された接触態様に対応する接触後挙動を特定する挙動特定処理と、
前記挙動特定処理にて特定された接触後挙動に基づく支援を行う支援処理と、
を含むことを特徴とするプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−152656(P2010−152656A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−330250(P2008−330250)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]