説明

運転支援装置

【課題】カーブ走行時における運転操作を支援すること。
【解決手段】カーブ検出部11がナビゲーション装置2の出力から自車両のカーブの進入を予測した場合に、カーブデータ取得部12がそのカーブの形状を示す情報を取得する。理想モデル算出部13は、カーブに関する情報、自車両の状態、周辺状況からカーブ走行の理想モデルを算出し、支援処理部1が車内通知系40を用いて運転者に対する助言を行なうと共に車両制御50を用いて自車両の走行状態が理想モデルに近づくように支援する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両の運転を支援する運転支援装置に関し、特にカーブ走行時における運転操作を支援する運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の走行に関する情報を収集し、運転者に情報提供を行なうことで車両の運転を支援する装置が考案されている。たとえば、特許文献1が開示するナビゲーション装置では、現在位置から目的地までの予定経路を設定し、交差点などの近傍で進行方向を指示することで運転を支援していた。
【0003】
また、特許文献2,3および4は、信号機の表示状態を検知もしくは予測し、自車両の停止が必要であるか否かを判断して運転者に通知することで運転操作を支援する技術を開示している。
【0004】
さらに、特許文献5が開示するカーブ進入危険防止支援システムは、路面に設置した装置がカーブの形状を記憶するとともに路面状態を監視し、車両が進入した場合にはその車両の速度で安全に通過可能であるか否かを判定して通知することで車両事故を防止していた。
【0005】
【特許文献1】特開2004−205316号公報
【特許文献2】特開2000−268294号公報
【特許文献3】特開2003−44985号公報
【特許文献4】特開2001−236600号公報
【特許文献5】特開2002−163791号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、従来の技術は主に事故の防止を目的としたものであった。しかしながら、事故が起こらない範囲内であっても、未熟な運転者による運転操作では運転操作の過不足が生じ、車両の挙動が不安定となるとともに運転操作が煩雑になる。
【0007】
たとえば、未熟な運転者がカーブを走行する場合、カーブ進入前に十分な減速を行えずカーブ進入後に減速する、過度の減速の後に加速する、などの運転操作が発生しうる。同様に、本来、一定の舵角で走行すべき定曲率領域においてハンドル調整する運転も頻発している。
【0008】
一方で、熟練した運転者ならば、カーブ進入前の直線において必要十分な減速をおこない、定曲率領域では一定の舵角と速度を保持し、出口側のクロソイド領域で適度に加速する、などのように、比較的少ない運転操作で車両を効率的に操作する。
【0009】
そこで、未熟な運転者に対しては、運転操作に対する助言や車両挙動の補正を行うことで、熟練した運転者が運転した場合と同様の安定した車両挙動を、簡易な操作で実現することが望まれる。
【0010】
すなわち、従来、運転者の運転操作自体を状況に適応して補助する運転支援装置が望まれていたにも関わらず、このような運転支援装置は実現されていなかった。
【0011】
本発明は、上述した従来技術における問題点を解消し、課題を解決するためになされたものであり、特にカーブ走行における運転操作を支援する運転支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、請求項1の発明に係る運転支援装置は、車両に搭載され、自車両の運転を支援する運転支援装置であって、自車両の進路におけるカーブを検出するカーブ検出手段と、前記カーブ検出手段が検出したカーブの形状を示すカーブ情報を取得するカーブ情報取得手段と、前記カーブ情報に基づいて当該カーブの通過にかかる運転操作を支援する支援手段と、を備えたことを特徴とする。
【0013】
この請求項1の発明によれば運転支援装置は、自車両の進路にカーブを検出した場合にその形状を示すカーブ情報を取得してカーブの通過にかかる運転操作を支援する。
【0014】
また、請求項2の発明に係る運転支援装置は、請求項1の発明において、前記カーブ情報取得手段は、カーブ開始点の位置情報、カーブ入口側のクロソイド距離、定曲率領域の曲率、定曲率領域の距離およびカーブ出口側のクロソイド距離を前記カーブ情報として取得することを特徴とする。
【0015】
この請求項2の発明によれば運転支援装置は、自車両の進路にカーブを検出した場合に、カーブ開始点の位置情報、カーブ入口側のクロソイド距離、定曲率領域の曲率、定曲率領域の距離およびカーブ出口側のクロソイド距離を取得してカーブの形状を特定し、カーブの通過に必要な運転操作を支援する。
【0016】
また、請求項3の発明に係る運転支援装置は、請求項1または2の発明において、前記カーブ情報取得手段は、自車両の経路設定および経路誘導を行なうナビゲーション装置から前記カーブ情報を取得することを特徴とする。
【0017】
この請求項3の発明によれば運転支援装置は、自車両の進路にカーブを検出した場合に、ナビゲーション装置からカーブ情報を取得してカーブの通過にかかる運転操作を支援する。
【0018】
また、請求項4の発明に係る運転支援装置は、請求項1,2または3の発明において、前記カーブ情報取得手段は、車外との通信によって前記カーブ情報を取得することを特徴とする。
【0019】
この請求項4の発明によれば運転支援装置は、自車両の進路にカーブ検出した場合に、車外との通信によってカーブ情報を取得してカーブの通過にかかる運転操作を支援する。
【0020】
また、請求項5の発明に係る運転支援装置は、請求項1〜4のいずれか一つの発明において、前記カーブ情報、自車両の状態を示す状態情報および周辺の状況を示す状況情報を用いて前記カーブの走行モデルを算出するモデル算出手段をさらに備え、前記支援手段は、自車両の走行状態が前記走行モデルに近づくように運転操作を支援することを特徴とする。
【0021】
この請求項5の発明によれば運転支援装置は、自車両の進路にカーブを検出した場合にその形状を示すカーブ情報を取得し、カーブ情報、自車両の状態、周辺状況を用いてカーブの走行モデルを算出し、自車両の走行状態が走行モデルに近づくように運転操作を支援する。
【0022】
また、請求項6の発明に係る運転支援装置は、請求項1〜5のいずれか一つの発明において、前記支援手段は、表示および/または音声出力によって運転操作を支援することを特徴とする。
【0023】
この請求項6の発明によれば運転支援装置は、自車両の進路にカーブを検出した場合にその形状を示すカーブ情報を取得し、表示や音声出力によって運転操作に関する助言や情報提供を行なう。
【0024】
また、請求項7の発明に係る運転支援装置は、請求項1〜6のいずれか一つの発明において、前記支援手段は、車両の挙動制御によって運転操作を支援することを特徴とする。
【0025】
この請求項7の発明によれば運転支援装置は、自車両の進路にカーブを検出した場合にその形状を示すカーブ情報を取得し、車両の挙動を制御することで運転操作を支援する。
【0026】
また、請求項8の発明に係る運転支援装置は、請求項7の発明において、前記支援手段は、車両が入口側のクロソイド領域に到達するまでに必要な減速を実現するよう減速支援を行なうことを特徴とする。
【0027】
この請求項8の発明によれば運転支援装置は、自車両の進路にカーブを検出した場合にその形状を示すカーブ情報を取得し、車両が入口側のクロソイド領域に到達するまでに必要な減速を支援する。
【0028】
また、請求項9の発明に係る運転支援装置は、請求項7または8の発明において、前記支援手段は、自車両が定曲率領域を走行中である間に舵角を一定に保持する操舵支援を行なうことを特徴とする。
【0029】
この請求項9の発明によれば運転支援装置は、自車両の進路にカーブを検出した場合にその形状を示すカーブ情報を取得し、定曲率領域を走行中に舵角を一定に保持する支援を行なう。
【0030】
また、請求項10の発明に係る運転支援装置は、請求項7,8または9の発明において、前記支援手段は、自車両が定曲率領域を走行中である間に走行速度を一定に保持する加減速抑制支援を行なうことを特徴とする。
【0031】
この請求項10の発明によれば運転支援装置は、自車両の進路にカーブを検出した場合にその形状を示すカーブ情報を取得し、定曲率領域を走行中に走行速度を一定に保持する加減速抑制支援を行なう。
【0032】
また、請求項11の発明に係る運転支援装置は、請求項7〜10のいずれか一つの発明において、前記支援手段は、自車両が出口側のクロソイド領域を走行中である場合に、横方向加速度が所定の値の範囲内での加速を支援する加速支援を行なうことを特徴とする。
【0033】
この請求項11の発明によれば運転支援装置は、自車両の進路にカーブを検出した場合にその形状を示すカーブ情報を取得し、自車両が出口側のクロソイド領域を走行中である場合に、横方向加速度が所定の値の範囲内での加速を支援する。
【0034】
また、請求項12の発明に係る運転支援装置は、請求項11の発明において、前記横方向加速度の上限を、前記定曲率領域を走行中に生じる横方向加速度と同一の値とすることを特徴とする。
【0035】
この請求項12の発明によれば運転支援装置は、自車両の進路にカーブを検出した場合にその形状を示すカーブ情報を取得し、自車両が出口側のクロソイド領域を走行中である場合に、横方向加速度が定曲率領域の走行時の値を超えない範囲で加速を支援する。
【0036】
また、請求項13の発明に係る運転支援装置は、請求項7〜12のいずれか一つの発明において、前記支援手段は、運転者による減速操作を検出した場合に前記車両の挙動制御を開始することを特徴とする。
【0037】
この請求項13の発明によれば運転支援装置は、自車両の進路にカーブを検出した場合にその形状を示すカーブ情報を取得し、さらに運転者による減速操作を検出した場合に車両の挙動制御を開始する。
【発明の効果】
【0038】
請求項1の発明によれば運転支援装置は、自車両の進路にカーブを検出した場合にその形状を示すカーブ情報を取得してカーブの通過にかかる運転操作を支援するので、カーブ走行中の運転操作を支援する運転支援装置を得ることができるという効果を奏する。
【0039】
また、請求項2の発明によれば運転支援装置は、自車両の進路にカーブを検出した場合に、カーブ開始点の位置情報、カーブ入口側のクロソイド距離、定曲率領域の曲率、定曲率領域の距離およびカーブ出口側のクロソイド距離を取得してカーブの形状を特定し、カーブの通過に必要な運転操作を支援するので、カーブの形状を正確に特定し、カーブ走行中の運転操作を支援する運転支援装置を得ることができるという効果を奏する。
【0040】
また、請求項3の発明によれば運転支援装置は、自車両の進路にカーブを検出した場合に、ナビゲーション装置からカーブ情報を取得してカーブの通過にかかる運転操作を支援するので、カーブに関する情報を簡易に取得してその形状を特定し、運転操作を支援する運転支援装置を得ることができるという効果を奏する。
【0041】
また、請求項4の発明によれば運転支援装置は、自車両の進路にカーブ検出した場合に、車外との通信によってカーブ情報を取得してカーブの通過にかかる運転操作を支援するので、カーブに関する情報を確実に取得してその形状を特定し、運転操作を支援する運転支援装置を得ることができるという効果を奏する。
【0042】
また、請求項5の発明によれば運転支援装置は、自車両の進路にカーブを検出した場合にその形状を示すカーブ情報を取得し、カーブ情報、自車両の状態、周辺状況を用いてカーブの走行モデルを算出し、自車両の走行状態が走行モデルに近づくように運転操作を支援するので、状況に適応した運転支援を行なう運転支援装置を得ることができるという効果を奏する。
【0043】
また、請求項6の発明によれば運転支援装置は、自車両の進路にカーブを検出した場合にその形状を示すカーブ情報を取得し、表示や音声出力によって運転操作に関する助言や情報提供を行なうので、カーブの走行時における運転操作を簡易に支援する運転支援装置を得ることができるという効果を奏する。
【0044】
また、請求項7の発明によれば運転支援装置は、自車両の進路にカーブを検出した場合にその形状を示すカーブ情報を取得し、車両の挙動を制御することで運転操作を支援するので、車両の走行状態を確実に理想モデルに近づける運転支援装置を得ることができるという効果を奏する。
【0045】
また、請求項8の発明によれば運転支援装置は、自車両の進路にカーブを検出した場合にその形状を示すカーブ情報を取得し、車両が入口側のクロソイド領域に到達するまでに必要な減速を支援するので、カーブ進入前における減速を支援する運転支援装置を得ることができるという効果を奏する。
【0046】
また、請求項9の発明によれば運転支援装置は、自車両の進路にカーブを検出した場合にその形状を示すカーブ情報を取得し、定曲率領域を走行中に舵角を一定に保持する支援を行なうので、定曲率領域走行時のハンドル操作を支援する運転支援装置を得ることができるという効果を奏する。
【0047】
また、請求項10の発明によれば運転支援装置は、自車両の進路にカーブを検出した場合にその形状を示すカーブ情報を取得し、定曲率領域を走行中に走行速度を一定に保持する加減速抑制支援を行なうので、定曲率領域走行時の加減速操作を支援する運転支援装置を得ることができるという効果を奏する。
【0048】
また、請求項11の発明によれば運転支援装置は、自車両の進路にカーブを検出した場合にその形状を示すカーブ情報を取得し、自車両が出口側のクロソイド領域を走行中である場合に、横方向加速度が所定の値の範囲内での加速を支援するので、クロソイド領域走行時における加速操作を支援する運転支援装置を得ることができるという効果を奏する。
【0049】
また、請求項12の発明によれば運転支援装置は、自車両の進路にカーブを検出した場合にその形状を示すカーブ情報を取得し、自車両が出口側のクロソイド領域を走行中である場合に、横方向加速度が定曲率領域の走行時の値を超えない範囲で加速を支援するので、クロソイド領域走行時における安定した加速操作を支援する運転支援装置を得ることができるという効果を奏する。
【0050】
また、請求項13の発明によれば運転支援装置は、自車両の進路にカーブを検出した場合にその形状を示すカーブ情報を取得し、さらに運転者による減速操作を検出した場合に車両の挙動制御を開始するので、運転者の運転操作を尊重しつつ運転操作を支援する運転支援装置を得ることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0051】
以下に添付図面を参照して、この発明に係る運転支援装置の好適な実施例について詳細に説明する。
【実施例】
【0052】
図1は、本発明の実施の形態である運転支援装置1の概要構成を示す概要構成図である。同図に示すように運転支援装置1は、ナビゲーション装置2、道路情報収集装置31、カメラ32、速度センサ33、加速度センサ34、車内通知系40および車両制御系50に接続する。
【0053】
ナビゲーション装置2は、GPS(Global Positioning System)人工衛星と通信して特定した自車両の位置と地図データ21とを利用して走行経路の設定および誘導を行なう車載装置である。この経路の誘導は具体的には車内通知系40を用いて行なう。また、ナビゲーション装置2は、道路情報収集装置31が取得した道路情報を経路設定や経路誘導に利用する。
【0054】
さらに地図データ21は、カーブなどの道路形状に関する詳細な情報を有しており、ナビゲーション装置1は運転支援装置1に対して自車両の位置情報や道路形状に関する情報を供給する。
【0055】
道路情報収集装置31は、VICS(Vehicle Information and Communication System)による道路交通情報の受信や、路側に設置された路側通信装置との通信によって道路の形状、渋滞の発生状況、工事や事故の有無、天候、路面状態などの情報を収集する。そして、道路情報収集装置31は、収集した情報をナビゲーション装置2および運転支援装置1に提供する。
【0056】
カメラ32は、自車両の周囲を撮影する撮影手段である。また、速度センサ33は自車両の走行速度を測定する測定手段であり、加速度センサ34は自車両にかかる加速度を測定する測定手段である。
【0057】
車内通知系40は、自車両の乗員に対して通知を行なう装置群であり、表示による通知を行なうディスプレイ41や音声による通知を行なうスピーカ42などを含む。この車内通知系40は、運転支援装置1、ナビゲーション装置2の他、車載オーディオ装置など各種車載装置で共用することができる。
【0058】
車両制御系50は、車両の動作制御を行なう装置群であり、アクセル操作に基づいてエンジンの動作を制御するエンジン制御機構51、ブレーキペダルの操作に基づいて車両の制動を行なうブレーキ制御機構52、ハンドル操作に基づいて車両の舵角を制御する舵角制御機構53、車両のサスペンションの状態を制御するサスペンション制御機構54などを含む。
【0059】
運転支援装置1は、その内部にカーブ検出部11、カーブデータ取得部12、理想モデル算出部13および支援処理部14を有する。カーブ検出部11は、ナビゲーション装置2から自車両が走行を予定している道路の形状を取得し、自車両の進路上にカーブが存在するか否かを判定する。
【0060】
カーブデータ取得部12は、カーブ検出部11がカーブを検出した場合に、そのカーブの形状を示すカーブ情報を取得する。カーブの形状は、図2に示すようにカーブ手前の直線領域A0、曲率が徐々に増大する入口側のクロソイド領域A1、曲率が一定値をとる定曲率領域A2、曲率が徐々に減少する出口側のクロソイド領域A3およびカーブ終了後の直線領域A4によって形成される。
【0061】
そこで、カーブ情報D1を「カーブ開始点(直線領域A0とクロソイド領域A1との境界点)の位置情報」、カーブ情報D2を「入口側のクロソイド領域A1の距離」、カーブ情報D3を「定曲率領域A2の曲率」、カーブ情報D4を「定曲率領域A2の距離」、カーブ情報D5を「出口側のクロソイド領域A4の距離」とし、カーブ情報D1〜D5をナビゲーション装置2から取得することで、カーブの形状を把握することができる。なお、ナビゲーション装置2は、この他に路幅や車線数、傾斜状況などを取得して利用することができる。
【0062】
理想モデル算出部13は、カーブデータ取得部12が取得したカーブ情報D1〜D5、道路情報収集装置31が収集した道路情報、カメラ32が撮影した周辺の画像、速度センサ33が測定した自車両の速度、加速度センサ34が測定した自車両の加速度および車両制御系50から取得した自車両の制御状態をもとに、自車両がカーブ走行する際の理想的な走行モデルである理想モデルを算出する。
【0063】
この理想モデルの具体例として、図2に示したカーブを走行する場合の理想モデルを図3に示す。現時点で自車両が直線領域A0を速度V1で走行中であるとすると、まずカーブ開始点(直線領域A0とクロソイド領域A1との境界点)までに速度V2まで減速する。
【0064】
そして、入口側のクロソイド領域A1では速度V2を保持したまま曲率の増大に合わせて車両の舵角が増大するようにハンドル操作を行なう。その結果、加速度センサ34が示す自車両の横方向の加速度は、曲率変化に沿って増大することとなる。
【0065】
その後、曲率R1の定曲率領域A2では、速度V2とハンドルの切り角(車両の舵角)を保持する。そのため、加速度センサ34は、曲率R2に対応する横方向加速度G1を保持することとなる。
【0066】
そして、出口側のクロソイド領域A3では、曲率の減少に合わせて舵角が減少するようにハンドル操作を行なうと共に、速度V1まで加速する。この加速によって横方向の加速度が増大するので、横方向加速度がG1以下となるように加速量を調節する。
【0067】
このような理想的な走行モデルに従って走行すれば、少ない運転操作で車両を効率的に操作することができるとともに、車体に対する加速度の発生を抑制して安定した走行を実現することができる。
【0068】
そこで、支援処理部14は、車内通知系40および車両制御系50を用いて、車両挙動を理想モデルに近づけるように支援する。具体的には、車内通知系40を用いた支援は、運転操作の実行タイミング(たとえば減速開始タイミングやハンドル操作開始タイミング)や、操作量の過不足を運転者に通知する処理である。
【0069】
車両制御系50を用いた支援では、運転操作による車両挙動を補正することで、車両挙動を理想モデルに近づける支援を行なう。なお、支援処理は通常走行における運転操作を支援し、より少ない運転操作で安定した走行状態を実現するものである。そのため、所定の閾値以上の操作量で運転操作が実行された場合には、支援処理を中断し、運転者による運転操作に従う。
【0070】
この車両制御系50を用いた支援の具体例を図4に示す。まず、自車位置が直線領域A0である場合、主にエンジン制御機構51およびブレーキ制御機構52による減速支援を行う。すなわち、運転操作による減速が不足している場合に、エンジン回転数の低下やブレーキの制動力強化を自律的に実行し、クロソイド領域A1への侵入前に速度V2までの減速を実現する。
【0071】
なお、この減速支援は、運転者がアクセル踏力を小さくする、ブレーキペダルを踏む、などの減速操作を実行した場合に開始する。これは、運転者による運転操作を尊重し、運転者自身の操作の補助の範囲で運転操作を支援するためである。
【0072】
つぎに、クロソイド領域A1では、舵角制御機構53によって車両の舵角を制御し、クロソイド領域A1の曲率変化に追従させる。また、エンジン制御機構51およびブレーキ制御機構52によって加減速を抑制し、定速での走行を支援する。
【0073】
同様に、定曲率領域A2では、舵角制御機構53によって車両の舵角の保持を支援するとともに、エンジン制御機構51およびブレーキ制御機構52によって定速での走行を支援する。
【0074】
つづいて、クロソイド領域A3では、舵角制御機構53によって車両の舵角を制御し、クロソイド領域A3の曲率変化に追従させる。また、運転者がアクセルペダルを操作したならば、横方向加速度がG1を越えない範囲で加速を支援する。
【0075】
ここで、運転者によるアクセルペダルの操作を加速支援の開始条件にしているのは、直線領域A0における減速支援と同様に、運転者による運転操作を尊重し、運転者自身の操作の補助の範囲で運転操作を支援するためである。
【0076】
なお図4では、各領域における主な支援を説明したが、他の支援を併せて実施可能であることは言うまでもない。たとえば、自車両にかかる横方向加速度に応じてサスペンション制御機構54を制御し、自車両の安定性を高めることができる。同様に、直線領域A0,A4においてハンドリング支援を実行して直進を支援してもよいし、直線領域A4において加速支援を実行してもよい。
【0077】
つぎに、運転支援装置1の処理動作について説明する。図5は、運転支援装置1の処理動作を説明するフローチャートであり、同図に示す処理フローは、運転支援装置1の稼動中に繰り返し実行される。
【0078】
まず、カーブ検出部11は、ナビゲーション装置2から自車両の走行予定を取得し(ステップS101)、自車両の進路上にカーブがあるか(カーブに接近中であるか)否かを判定する(ステップS102)。
【0079】
その結果、自車両がカーブに接近中でない場合(ステップS102,No)、運転支援装置1は処理を終了する。一方、自車両がカーブに接近中である場合(ステップS102,Yes)、カーブデータ取得部12がナビゲーション装置2からカーブ情報を取得する(ステップS103)。
【0080】
その後、理想モデル算出部13は、カーブデータ取得部12が取得したカーブ情報に加え、道路情報収集装置31、カメラ32、速度センサ33、加速度センサ34および車両制御系50の出力を用いて自車両がカーブ走行する際の理想的な走行モデルである理想モデルを算出する(ステップS104)。
【0081】
そして、支援処理部14は、車両制御系50の出力をもとに運転者による運転操作を監視し、運転者が減速操作を実行した場合(ステップS105,Yes)に支援処理を開始する(ステップS106)。
【0082】
支援処理部14は、この支援処理をカーブ走行中である間(ステップS107,No)繰り返し、カーブの通過が完了した、すなわち出口側のクロソイド領域を抜けて直線領域に入った場合(ステップS107,Yes)に処理を終了する。
【0083】
上述してきたように、本実施例にかかる運転支援装置1は、自車両のカーブの進入を予測した場合に、そのカーブの形状を示す情報を取得し、カーブに関する情報、自車両の状態、周辺状況からカーブ走行の理想モデルを算出し、自車両の走行状態が理想モデルに近づくように支援する。そのため、運転操作を状況に適応して補助し、熟練した運転者が運転した場合と同様の安定した車両挙動を、簡易な操作で実現することができる。
【0084】
なお、本実施例ではカーブの形状を示す情報として「カーブ開始点の位置情報」、「入口側のクロソイド領域の距離」、「定曲率領域の曲率」、「定曲率領域の距離」、「出口側のクロソイド領域の距離」の5つの情報を使用しているが、カーブの形状を特定可能であれば任意の情報を用いることができる。
【0085】
また、本実施例ではカーブの形状を示す情報をナビゲーション装置2から得ているが、車両外との通信によってカーブの形状を示す情報を取得する構成としてもよい。
【0086】
また、サービスのシナリオとしては以下の通りとなる。
(1)状態通知としては、カーブ進入前にインパネやナビ画面に進入するカーブの静的情報を乗員に通知する。
静的情報とは、カーブまでの残距離、カーブの形状等である。ナビ画面に表示する際は、通常のナビ(地図等)の画面に割り込ませ、この情報を例えば、右半分の画面に分割表示する。音声で通知する場合、「この先右カーブが急になっています」等を実施する。
【0087】
(2)アドバイス通知としては、カーブに快適に進入、通過する為の必要な操作を乗員に指示する。またカーブ内の動的情報を進入前に乗員に通知する。
ナビ画面に表示する際は、通常のナビ(地図等)の画面に割り込ませて例えば「カーブ内工事中」、「カーブ進入の快適速度」等、矢印やメッセージを含めたアドバイス表示を行なう。
【0088】
このようにすることで、乗員は通常の地図画面も参照しつつ、アドバイス画面を見ることができるので、乗員は適切なカーブ進入や通過ができる。動的情報とは、「カーブ内の交通量」「カーブの路面状態」等である。音声で通知する場合、「カーブの快適速度は30km/hです。減速してください」等を実行する。
【0089】
(3)サポート処置としては、カーブに快適に進入、通過する為の必要な操作を実質的に援助する。
例えば、乗員のアクセルオフをトリガに理想速度まで減速(シフトダウン、ブレーキ)を行なう。また、そのような処置内容は画面に表示する。
【産業上の利用可能性】
【0090】
以上のように、本発明にかかる運転支援装置は、車両の運転の支援に有用であり、特にカーブ走行における運転操作の支援に適している。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明の実施例にかかる運転支援装置の概要構成を示す概要構成図である。
【図2】カーブの形状の特定について説明する説明図である。
【図3】図2に示したカーブを走行する場合の理想モデルを説明する説明図である。
【図4】図1に示した車両制御系50を用いた支援の具体例を説明する説明図である。
【図5】図1に示した運転支援装置の処理動作を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0092】
1 運転支援装置
2 ナビゲーション装置
11 カーブ検出部
12 カーブデータ取得部
13 理想モデル算出部
14 支援処理部
21 地図データ
31 道路情報収集装置
32 カメラ
33 速度センサ
34 加速度センサ
40 車内通知系
41 ディスプレイ
42 スピーカ
50 車両制御系
51 エンジン制御機構
52 ブレーキ制御機構
53 舵角制御機構
54 サスペンション制御機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、自車両の運転を支援する運転支援装置であって、
自車両の進路におけるカーブを検出するカーブ検出手段と、
前記カーブ検出手段が検出したカーブの形状を示すカーブ情報を取得するカーブ情報取得手段と、
前記カーブ情報に基づいて当該カーブの通過にかかる運転操作を支援する支援手段と、
を備えたことを特徴とする運転支援装置。
【請求項2】
前記カーブ情報取得手段は、カーブ開始点の位置情報、カーブ入口側のクロソイド距離、定曲率領域の曲率、定曲率領域の距離およびカーブ出口側のクロソイド距離を前記カーブ情報として取得することを特徴とする請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項3】
前記カーブ情報取得手段は、自車両の経路設定および経路誘導を行なうナビゲーション装置から前記カーブ情報を取得することを特徴とする請求項1または2に記載の運転支援装置。
【請求項4】
前記カーブ情報取得手段は、車外との通信によって前記カーブ情報を取得することを特徴とする請求項1,2または3に記載の運転支援装置。
【請求項5】
前記カーブ情報、自車両の状態を示す状態情報および周辺の状況を示す状況情報を用いて前記カーブの走行モデルを算出するモデル算出手段をさらに備え、前記支援手段は、自車両の走行状態が前記走行モデルに近づくように運転操作を支援することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の運転支援装置。
【請求項6】
前記支援手段は、表示および/または音声出力によって運転操作を支援することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の運転支援装置。
【請求項7】
前記支援手段は、車両の挙動制御によって運転操作を支援することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の運転支援装置。
【請求項8】
前記支援手段は、車両が入口側のクロソイド領域に到達するまでに必要な減速を実現するよう減速支援を行なうことを特徴とする請求項7に記載の運転支援装置。
【請求項9】
前記支援手段は、自車両が定曲率領域を走行中である間に舵角を一定に保持する操舵支援を行なうことを特徴とする請求項7または8に記載の運転支援装置。
【請求項10】
前記支援手段は、自車両が定曲率領域を走行中である間に走行速度を一定に保持する加減速抑制支援を行なうことを特徴とする請求項7,8または9に記載の運転支援装置。
【請求項11】
前記支援手段は、自車両が出口側のクロソイド領域を走行中である場合に、横方向加速度が所定の値の範囲内での加速を支援する加速支援を行なうことを特徴とする請求項7〜10のいずれか一つに記載の運転支援装置。
【請求項12】
前記横方向加速度の上限を、前記定曲率領域を走行中に生じる横方向加速度と同一の値とすることを特徴とする請求項11に記載の運転支援装置。
【請求項13】
前記支援手段は、運転者による減速操作を検出した場合に前記車両の挙動制御を開始することを特徴とする請求項7〜12のいずれか一つに記載の運転支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−111184(P2006−111184A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−302274(P2004−302274)
【出願日】平成16年10月15日(2004.10.15)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】