説明

部品内蔵プリント配線板、部品内蔵プリント配線板の製造方法および電子機器

【課題】接続信頼性の高い部品内蔵プリント配線板を提供する。
【解決手段】内蔵部品となる電子部品40の実装(はんだリフロー)時に於いて、はんだ接合部31から流出する接着性樹脂の流路が、ソルダーレジスト20によって規制され、不要箇所への流出を阻止して、電子部品40の下面と部品実装面部との間に形成される間隙部に導かれることから、間隙部に十分な量の接着性樹脂が流入し上記間隙部が充填材32で満たされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子回路に介在されるチップ部品を内蔵した部品内蔵プリント配線板、部品内蔵プリント配線板の製造方法、および部品内蔵プリント配線板を用いた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリント配線板を対象とした部品実装技術として、サブストレートの下面(ボード実装面)にはんだ付け端子を設けたBGA(ball grid array)部品を実装するプリント配線組立体に於いて、基板と基板に実装するBGA部品との間にアンダーフィル樹脂を流し込む技術が存在する。さらにアンダーフィル樹脂の不要部への流出を阻止する技術が提案されている。
【特許文献1】特開2000−260818号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一方、近年では、電子回路装置に用いられる、複数層を形成するプリント配線板として、内層側のパターン形成面に形成した導体パターン(パッド)上に受動素子等のチップ部品を半田接合し、上記内層側に絶縁材料を積層して、チップ部品を絶縁材料で覆うことによって電子部品内蔵プリント配線板を製造する基板製造技術が実用化に向けて開発されている。このような構造の部品内蔵プリント配線板に於いては、チップ部品と、このチップ部品に回路接合した導体パターンの形成面との間の間隙部にボイドと称される気体溜まり(空気溜まり若しくはガス溜まり)が形成される。この間隙部に形成された気体溜まりが、後の積層工程、部品実装(リフロー)工程等を含む基板製造時に於ける各種の加熱処理加工、若しくは電子機器内への組み込み後に於ける受熱等に於いて加熱されると、上記気体溜まりに溜まった空気若しくはガスが熱膨張し、この熱膨張により、導体パターンの剥離、チップ部品の損傷、回路切断、基板の剛性劣化等、種々の不具合を招く。
【0004】
本発明は上記実情に鑑みなされたもので、接続信頼性の高い部品内蔵プリント配線板提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、他の部材が積層される基材の内層側のパターン形成面に電子部品が実装される部品内蔵プリント配線板であって、前記パターン形成面上の前記電子部品を実装する実装面部を囲繞した耐熱性被覆層と、前記パターン形成面上の前記実装面部にはんだ粉末と接着性樹脂を混合した接合材料によって実装された電子部品とを具備したことを特徴とする。
【0006】
さらに本発明は、前記部品内蔵プリント配線板に於いて、前記電子部品と前記パターン形成面との間に充填された前記接着性樹脂からなる充填材を具備したことを特徴とする。
【0007】
また本発明は、他の部材が積層される基材の内層側のパターン形成面に電子部品が実装される部品内蔵プリント配線板の製造方法であって、前記パターン形成面上の前記電子部品を実装する実装面部を耐熱性被覆材料で囲繞し、前記電子部品をはんだ粉末と接着性樹脂を混合した接合材料により前記実装面部に実装して、前記パターン形成面上の前記実装面部と前記電子部品との間に前記接着性樹脂を充填したことを特徴とする。
【0008】
また本発明は、電子機器本体と、この電子機器本体に設けられた回路基板とを備え、前記回路基板に、他の材料が積層される基材の内層側のパターン形成面に電子部品が実装される部品内蔵プリント配線板を用いた電子機器であって、前記回路基板は、前記パターン形成面上の前記電子部品を実装する実装面部を囲繞した耐熱性被覆層と、前記パターン形成面上の前記実装面部にはんだ粉末と接着性樹脂を混合した接合材料によって実装された電子部品とを具備した多層プリント配線板を用いて構成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
接続信頼性の高い部品内蔵プリント配線板を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明に係る部品内蔵プリント配線板は、他の部材が積層される基材の内層側のパターン形成面に電子部品が実装される部品内蔵プリント配線板であって、上記パターン形成面上の上記電子部品を実装する実装面部を耐熱性被覆材料で囲繞し、上記電子部品をはんだ粉末と接着性樹脂を混合した接合材料により上記実装面部に実装して、上記パターン形成面上の上記実装面部と上記電子部品との間に上記接着性樹脂を充填したことを特徴とする。
【0011】
本発明に係る部品内蔵プリント配線板の内蔵部品接合材料は、一般にSMT(surface mount technology)で使われているはんだペーストの代替として考えられたものである。
【0012】
従来のはんだペーストは、はんだ粉末にフラックスを混ぜてペースト状にしたものである。フラックスには、部品端子や基板端子の表面酸化物を除去するため、塩素、臭素、または複合化合物である有機酸等が含まれており、スクリーン印刷し易い粘度調整、部品搭載後に部品が脱落しづらいタック力調整がされているのが一般的である。
【0013】
本発明の実施形態に係る部品内蔵プリント配線板は、接着機能をもった樹脂をはんだ粉末に加え混ぜ合わせてペースト状にした接合材料を用いる。さらに内蔵部品実装面を形成したパターン形成面に上記ペーストの樹脂成分が流れ広がるのを防ぐためにソルダーレジストを形成している。このような構造により内蔵部品の部品実装後に樹脂成分が効率よく部品下面に充填された構造となり、実装強度と信頼性を向上させることができる。
【0014】
以下図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
本発明の実施形態に係る部品内蔵プリント配線板の構造を図1に示す。
図1に示す本発明の実施形態に係る部品内蔵プリント配線板は、基材10と、基材10に絶縁層を形成する絶縁部材50を介して積層された他の部材60とを有して構成される。
【0015】
基材10の表層側および内層側のパターン形成面10a,10bには回路構成上必要とされる導体パターン13、ソルダーレジスト14等が形成されている。表層側のパターン形成面10aには、さらに必要に応じて部品実装用のランド、端子電極等(いずれも図示せず)が形成される。
【0016】
また内層側のパターン形成面10bには、さらに内蔵される電子部品の電極をはんだ接合するパッド12,12が形成されるとともに、上記電子部品の実装面部を囲繞する所定厚のソルダーレジスト20が形成されている。このパッド12,12とソルダーレジスト20の形状並びに配置例を図2に示している。ここではパターン形成面10bに形成された導電パターン13,13の先端に矩形状のパッド12,12が設けられたパターン構成を例に示している。
【0017】
上記パターン形成面10b上のパッド12,12を含む電子部品の実装面部には、内蔵部品となる電子部品40が実装されている。この電子部品40は直方体形状の部品本体に一対の電極を設けた、例えばコンデンサ、抵抗素子等のチップ部品であり、上記一対の電極がパッド12,12にはんだ接合されることによって、パターン形成面10b上の予め定められた電子部品の実装面部に実装される。
【0018】
このはんだ接合には、はんだ粉末と接着性樹脂を混合した接合材料が用いられる。この接合材料は、電子部品40をマウントする前の工程に於いてパッド12,12上に塗布される(図4に示す符号30参照)。
【0019】
上記パターン形成面10b上の予め定められた電子部品の実装面部に実装された電子部品40の下面部と上記実装面部との間に形成される間隙には充填材32が充填されている。また、はんだ接合部分には樹脂皮膜33が被着されている。この充填材32および樹脂皮膜33は、それぞれ電子部品40の実装(はんだリフロー)時に、接合材料に含まれる接着性樹脂により形成される。電子部品40のはんだ接合時に於いて当該接合部から流出する接着性樹脂は、ソルダーレジスト20によって不要箇所への流出が抑えられ、これによって十分な量の接着性樹脂が電子部品40の下面と上記実装面部との間に形成される間隙部に流れ込み、当該間隙部に間隙すべてを埋め尽くす十分な量の充填材32が充填されるとともに、接着性樹脂の一部がはんだ接合部分に被着して樹脂皮膜33を形成する。
【0020】
上記図1に示す部品内蔵プリント配線板を製造する工程を図3乃至図7に示している。
【0021】
図3に示す工程では、熱硬化性樹脂等により構成された基材10のパターン形成面10bに形成されたパッド12,12を含む、電子部品の実装面部に対して、その周囲にソルダーレジスト20が形成される(図2参照)。
【0022】
図4に示す工程では、電子部品の実装面部に設けられたパッド12,12の面上に、接着機能をもった樹脂(接着性樹脂)をはんだ粉末に加え混ぜ合わせてペースト状にした接合材料30が、例えばスクリーン印刷等により所定量単位で塗布される。
【0023】
図5に示す工程では、パッド12,12上に接合材料30を介在して電極が位置する状態で内蔵部品となる電子部品40がパターン形成面10b上の実装面部にマウントされる。
【0024】
図6に示す工程では、パターン形成面10b上の実装面部にマウントされた電子部品40を上記実装面部に実装する加熱(はんだリフロー)処理が行われ、電子部品40の電極がパッド12,12にはんだ接合される。この部品実装時に於いて、はんだ接合部31から流出する接着性樹脂は、ソルダーレジスト20によって不要箇所への流出が抑えられる。これによって十分な量の接着性樹脂が電子部品40の下面と上記実装面部との間に形成される間隙部に流れ込み、間隙部に間隙すべてを埋め尽くす十分な量の充填材32が充填される。また一部の接着性樹脂がはんだ接合部31の表面に付着し樹脂皮膜33,33を形成する。
【0025】
図7に示す工程では、電子部品40が実装された基材10のパターン形成面10b上に、熱硬化性樹脂を用いた絶縁部材50が積層され、さらに絶縁部材50を介して他の部材60が積層される。この他の部材60は、例えば基材10とともに複数層の基板を構成するもので、表層側および内層側の各パターン形成面に回路構成上必要とされる導体パターン61,63が形成されるとともに表層側のパターン形成面の必要箇所にソルダーレジスト64が形成される。
【0026】
これらの工程を経て、上記図1に示す部品内蔵プリント配線板が製造される。
【0027】
上記した部品内蔵プリント配線板は、内蔵部品となる電子部品40の実装(はんだリフロー)時に於いて、はんだ接合部31から流出する接着性樹脂の不要箇所への流出がソルダーレジスト20によって断たれ、接着性樹脂が、電子部品40の下面と部品実装面部との間に形成される間隙部に導かれることから、間隙部に十分な量の接着性樹脂が流入し、上記間隙部が充填材32で満たされる。これにより、ボイドの発生に伴う、導体パターンの剥離、チップ部品の損傷、回路切断、基板の剛性劣化等の各種不具合を解消した接続信頼性の高い部品内蔵プリント配線板を提供することができる。また、上記間隙部が充填材32で満たされていることから、外層実装時のリフロープロセス時に於いて、はんだが部品下面を流れてショートする等の不具合を解消でき、製造歩留まりを大幅に向上させることができる。
【0028】
上記実施形態により製造された部品内蔵プリント配線板を実装した電子機器の構成を図8に示している。この図8は、上記実施形態に係る部品内蔵プリント配線板をポータブルコンピュータ等の小型電子機器に適用した例を示している。
【0029】
図8に於いて、ポータブルコンピュータ1の本体2には、表示部筐体3がヒンジ機構を介して回動自在に設けられている。本体2には、ポインティングデバイス4、キーボード5等の操作部が設けられている。表示部筐体3には例えばLCD等の表示デバイス6が設けられている。
【0030】
また本体2には、上記ポインティングデバイス4、キーボード5等の操作部および表示デバイス6を制御する制御回路を組み込んだプリント回路板(マザーボード)8が設けられている。このプリント回路板8は、上記図1に示した実施形態の部品内蔵プリント配線板を用いて実現される。
【0031】
このプリント回路板8に用いた部品内蔵プリント配線板は、内蔵部品となる電子部品40の実装(はんだリフロー)時に於いて、はんだ接合部31から流出する接着性樹脂の流路が、ソルダーレジスト20によって規制され、不要箇所への流出を阻止して、電子部品40の下面と部品実装面部との間に形成される間隙部に導かれることから、間隙部に十分な量の接着性樹脂が流入し上記間隙部が充填材32で満たされる。従って、電子機器内への組み込み後に於ける受熱等に於いて、プリント回路板8が加熱されても、気体溜まりに溜まった空気若しくはガスの熱膨張により、導体パターンの剥離、チップ部品の損傷、回路切断、基板の剛性劣化等を招くという虞が排除さる。従って、プリント回路板8は、接続信頼性が高く、その結果ポータブルコンピュータ1は、安定した機器動作が可能になる。
【0032】
なお、本発明は上記した実施形態に留まらず、例えば複数枚のコア部材を絶縁層を介在して積層した多層部品内蔵プリント配線板に於いても本発明を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施形態に係る部品内蔵プリント配線板の構成を示す側断面図。
【図2】上記実施形態に係る部品内蔵プリント配線板のパッドとソルダーレジストの形状並びに配置例を示す平面図。
【図3】上記実施形態に係る部品内蔵プリント配線板の製造工程を示す側断面図。
【図4】上記実施形態に係る部品内蔵プリント配線板の製造工程を示す側断面図。
【図5】上記実施形態に係る部品内蔵プリント配線板の製造工程を示す側断面図。
【図6】上記実施形態に係る部品内蔵プリント配線板の製造工程を示す側断面図。
【図7】上記実施形態に係る部品内蔵プリント配線板の製造工程を示す側断面図。
【図8】本発明の実施形態に係る電子機器の外観構成を示す斜視図。
【符号の説明】
【0034】
1…ポータブルコンピュータ、2…本体、3…表示部筐体、4…ポインティングデバイス、5…キーボード、6…表示デバイス、8…プリント回路板(マザーボード)、10…基材、12…パッド、13,61,63…導体パターン、20…ソルダーレジスト、30…接合材料、31…はんだ接合部、32…充填材、33…樹脂皮膜、40…電子部品、50…絶縁部材、60…他の部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
他の部材が積層される基材の内層側のパターン形成面に電子部品が実装される部品内蔵プリント配線板であって、
前記パターン形成面上の前記電子部品を実装する実装面部を囲繞した耐熱性被覆層と、
前記パターン形成面上の前記実装面部に、はんだ粉末と接着性樹脂を混合した接合材料によって実装された電子部品と、
を具備したことを特徴とする部品内蔵プリント配線板。
【請求項2】
前記電子部品と前記パターン形成面との間に充填された、前記接着性樹脂からなる充填材を具備したことを特徴とする請求項1記載の部品内蔵プリント配線板。
【請求項3】
前記実装面部を囲繞した前記耐熱性被覆層の端部は前記接着性樹脂の前記実装面部外への流出を防ぐ壁部を形成することを特徴とする請求項2記載の部品内蔵プリント配線板。
【請求項4】
前記耐熱性被覆層はソルダーレジストにより形成される請求項3記載の部品内蔵プリント配線板。
【請求項5】
他の部材が積層される基材の内層側のパターン形成面に電子部品が実装される部品内蔵プリント配線板の製造方法であって、
前記パターン形成面上の前記電子部品を実装する実装面部を耐熱性被覆材料で囲繞し、
前記電子部品をはんだ粉末と接着性樹脂を混合した接合材料により前記実装面部に実装して、
前記パターン形成面上の前記実装面部と前記電子部品との間に前記接着性樹脂を充填した
ことを特徴とする部品内蔵プリント配線板の製造方法。
【請求項6】
電子機器本体と、この電子機器本体に設けられた回路基板とを備え、
前記回路基板は、
他の材料が積層される基材の内層側のパターン形成面に電子部品が実装される部品内蔵プリント配線板であって、前記パターン形成面上の前記電子部品を実装する実装面部を囲繞した耐熱性被覆層と、前記パターン形成面上の前記実装面部にはんだ粉末と接着性樹脂を混合した接合材料によって実装された電子部品とを具備した多層プリント配線板を用いて構成されたことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−266379(P2007−266379A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−90427(P2006−90427)
【出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】