説明

配線構造及びその形成方法

【課題】コンタクトブロックを用いた炭素元素からなる線状構造体を材料とする配線を、できるだけ工程数を削減して、低コストで容易且つ確実に形成する。
【解決手段】コンタクトブロック1,2の対向面1a,2aを起点として、互いの対向面に向かってそれぞれ複数本のCNT3a,3bを成長させてゆき、CNT3a,3bを交差するように接触させて両者を電気的に接合してCNT束3を形成する。そして、電気的に接合されたCNT束3の間隙を金属材料4で埋め込み、CNT束3と金属材料4との複合状態とされてなる配線5を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LSIに代表される半導体装置等に用いられる配線構造、詳細には、配線材料として微細性、高電気伝導特性及び高許容電流密度特性を活かした炭素元素からなる線状構造体を適用した配線構造及びその形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今では、特にゲーム機器や携帯端末等のマルチメディア分野に牽引されるLSI市場は着実な増大傾向にある。LSIの配線に関して、従来多用されている銅(Cu)配線では、抵抗や電流密度の面で将来的に限界が訪れると考えられる。
【0003】
そこで、Cu配線に代わる候補として、低抵抗且つ高電流密度耐性を有する炭素元素からなる線状構造体が注目されている。この線状構造体としては、いわゆるカーボンナノチューブ(Carbon Nano Tube:CNT)又は(Carbon Nano Fiber:CNF)等があり、その多くの魅力的な物性から注目を集めている。
【0004】
従前より、LSI配線にCNTを用いる提案が幾つかされており、例えば、CNT束を縦方向のビア接続に用いることが精力的に研究されている(非特許文献1を参照)。しかしながら、LSI配線においては、縦方向のビア接続のみではなく、横方向の配線にもCNTを用いることが当然に要求される。横方向の配線としてCNT束を形成する方法として、ブロック状の下地導電体である所謂コンタクトブロックを用いたCNT束の横方向形成技術が報告されている(非特許文献2を参照)。コンタクトブロックの側面にCNTの形成に必要な触媒金属を形成し、CVD法によりCNT束を成長することによって、コンタクトブロックの側面に垂直な方向にCNT束を形成することができる。CNT束を形成する面、即ち触媒金属を形成する面を選択することにより、CNT束の成長方向を選択することができる。
【0005】
【特許文献1】特開2006−148063号公報
【非特許文献1】IEEE International Interconnect Technology Conference 2006, pp.230.
【非特許文献2】IEEE International Interconnect Technology Conference 2005, pp. 234.
【非特許文献3】Jpn. J. Appl. Phys. Vol. 41 (2002) pp. 4370-4374
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非特許文献2の方法で横方向の配線を形成する場合には、CNT束の先端側でもう一方の配線(或いは電極)に接続させる必要がある。例えば、非特許文献3に示されているように、コンタクトブロックから成長させた後、CNT束の先端に後付で別のコンタクトブロックを形成することが提案されている。しかしながら、同じ階層の配線層においてコンタクトブロックを複数回に分けて別々に形成する必要があるため、製造プロセスが煩雑になり、且つコストが高くなるという欠点がある。
【0007】
また、特許文献1では、絶縁膜溝の側壁或いは薄い仕切り導電膜を利用したCNT束の形成方法が開示されているが、この場合、3次元的な配線ネットワーク形成が不可能である。また、Cu配線を土台として3次元状に組み上げるとしているが、CNTとCuとの組み合わせは、許容電流電流密度の差(CNT:109A/cm2,Cu:106A/cm2)により、Cu配線にエレクトロマイグレーションによる断線が生じることが懸念される。また、Cuはドライエッチング等による加工が難しく、ブロック形成が困難である。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、コンタクトブロックを用いた炭素元素からなる線状構造体を材料とする配線を、できるだけ工程数を削減して、低コストで容易且つ確実に形成することを可能とし、炭素元素からなる線状構造体を材料とする配線からなる3次元の配線ネットワーク構造を実現する配線構造及びその形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の配線構造は、所定間隔で対向配置されてなるブロック状の一対の下地導電体と、
前記下地導電体同士を電気的に接続する配線とを含み、前記配線は、前記各下地導電体の各対向面から垂直にそれぞれ炭素元素からなる線状構造体が形成されており、前記対向面間で前記線状構造体の一部が交差して接触し、電気的に接合されてなる。
【0010】
本発明の配線構造の形成方法は、ブロック状の一対の下地導電体を、所定間隔で対向配置されるように形成する工程と、前記各下地導電体の各対向面から垂直にそれぞれ炭素元素からなる線状構造体を、前記対向面間で前記線状構造体の一部が交差して接触するように成長させて電気的に接合し、配線を形成する工程とを含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、コンタクトブロックを用いた炭素元素からなる線状構造体を材料とする配線を、できるだけ工程数を削減して、低コストで容易且つ確実に形成することが可能となり、炭素元素からなる線状構造体を材料とする配線からなる3次元の配線ネットワーク構造が実現される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
−本発明の基本骨子−
本発明では、ブロック状の一対の下地導電体(コンタクトブロック)を、所定間隔で対向配置されるように形成し、各下地導電体の各対向面から垂直にそれぞれ線状構造体を、対向面間で線状構造体の一部が交差して接触するように成長させて電気的に接合し、配線を形成してなる、配線構造を提示する。
【0013】
詳細な一例について、図1を用いて説明する。
先ず、一対のコンタクトブロック1,2を水平面上に形成する。この状態でCVD法により、コンタクトブロック1,2の対向面1a,2aを起点として、互いの対向面に向かって(図中、一対の矢印で示す)CNT、ここではそれぞれ複数本のCNT3a,3bを成長させてゆく(図1(a))。CNT束3a,3bを成長時間を適宜調節することにより、CNT3a,3bを交差するように接触させて両者を電気的に接合し、CNT束3を形成する(図1(b))。なお、各対向面1a,2aから成長させるCNT3a,3bは例えば1本ずつでも良いが、ここでは十分な電気的接続を図るべく、それぞれ複数本の場合を例示した。そして、コンタクトブロック1,2間の確実な電気的接続及び更なる低抵抗化を図るべく、コンタクトブロック1,2間を金属材料4で充填し、電気的に接合されたCNT束3の間隙を金属材料4で埋め込み、CNT束3と金属材料4との複合状態とされてなる配線5を形成する(図1(c))。
【0014】
コンタクトブロックは、Ti,TiN,W,Mo,Agからなる群から選ばれた少なくとも1種、又は前記群から選ばれた少なくとも1種を含む合金を材料として形成することが好適である。これらの材料は、ドライエッチング等によるブロック加工性にも適している。また、Agは低抵抗な材料であるために特に好ましい。また、Ti,TiN,W,Moは、エレクトロマイグレーションが少なく電流密度耐性に優れているために特に好ましい。またMoは、CNTとの電気的な低抵抗接合が得られるために特に好ましい。
【0015】
上記の複合状態を形成する金属材料は、Cu,Ti,TiN,W,Mo,Agからなる群から選ばれた少なくとも1種、又は前記群から選ばれた少なくとも1種を含む合金が好適である。Cu,Agは、低抵抗な材料であるために特に好ましい。また、Ti,TiN,W,Moは、エレクトロマイグレーションが少なく電流密度耐性に優れているために特に好ましい。またMoは、CNTとの電気的な低抵抗接合が得られるために特に好ましい。
【0016】
本発明では、上記した配線構造を基本構成として、複数の上記の配線構造を水平面に配設して層構造を構成しても良い。更には、この層構造を、上下のコンタクトブロックを電気的に接続するビア部を介して複数層積層し、3次元の配線ネットワーク構造を構築することもできる。この場合、ビア部もCNTで形成することにより、CNTにより電気的接続がなされ、低抵抗且つ機械的強度の高い3次元の配線ネットワーク構造が実現する。
【0017】
−本発明を適用した具体的な諸実施形態−
以下、本発明を適用した具体的な諸実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。本実施形態では、説明の便宜上、配線構造の構成をその形成方法と共に詳説する。
【0018】
(第1の実施形態)
図2−1及び図2−2は、第1の実施形態による配線構造の形成方法を工程順に示す概略断面図である。なお、図示の便宜上、図2−1(b)〜図2−2(c)ではシリコン基板11の図示を省略する。
【0019】
先ず、図2−1(a)に示すように、層間絶縁膜12及びビア部14を形成する。
詳細には、例えばシリコン基板11上に各種の半導体素子(MOSトランジスタ等:不図示)を形成した後、シリコン酸化膜等の層間絶縁膜12を形成する。その後、当該半導体素子との電気的接続を図るべく、リソグラフィー及びドライエッチングにより層間絶縁膜12にビア孔13を形成する。そして、ビア孔13を埋め込むように層間絶縁膜12上にCVD法等により例えばタングステン(W)を堆積し、例えばCMP法により層間絶縁膜12の表面が露出するまでWを研磨して、ビア孔13を充填するビア部14を形成する。
【0020】
続いて、図2−1(b)に示すように、層間絶縁膜12上でビア部14と接続される一対のコンタクトブロック15,16を形成する。
詳細には、ビア部14の上面が露出する層間絶縁膜12の表面(ほぼ水平面とされている)に、スパッタ法又は蒸着法により、Ti,TiN,W,Mo,Agからなる群から選ばれた少なくとも1種、又は前記群から選ばれた少なくとも1種を含む合金、ここではTiN膜を例えば100nm程度の厚みに堆積する。そして、このTiN膜をリソグラフィー及びドライエッチング(又はミリング)により加工し、層間絶縁膜12上でそれぞれビア部14と電気的に接続されてなる一対のコンタクトブロック15,16を形成する。TiN膜の加工に用いたレジストは灰化処理等により除去される。
【0021】
続いて、図2−1(c)に示すように、コンタクトブロック15,16を覆う層間絶縁膜17を形成する。
詳細には、例えばCVD法により、層間絶縁膜12上にコンタクトブロック15,16を覆うように、シリコン酸化膜又は所定の低誘電率材料の膜を例えば200nm程度の厚みに堆積し、層間絶縁膜17を形成する。
【0022】
続いて、図2−1(d)に示すように、層間絶縁膜17に配線溝18を形成する。
詳細には、層間絶縁膜17をリソグラフィー及びドライエッチングにより加工し、層間絶縁膜12の底面及びコンタクトブロック15,16の各対向面15a,16aを露出させる配線形状に、配線溝18を形成する。
【0023】
続いて、図2−1(e)に示すように、CNTの成長触媒となる触媒19を全面に堆積する。
詳細には、例えばレーザーアブレーション法、スパッタ法又は蒸着法により、Fe,Ni,Coから選ばれた少なくとも1種、又はこれらの合金、ここではCoを材料として、配線溝18の内壁面を含む全面に触媒19を堆積する。本実施形態では、触媒19を極薄状態、例えば1nm程度に堆積することにより、図示のように多数の微粒子の状態に触媒19を形成する場合を例示する。触媒19の堆積条件を変えて、微粒子ではなく薄膜状態に触媒19を形成しても良い。
【0024】
続いて、図2−2(a)に示すように、CNT束21を成長させる。
詳細には、CVD法を用いて配線溝18内にCNT束21を成長させる。CNT束21は、配線溝18内で露出するコンタクトブロック15,16の各対向面15a,16aに付着する触媒19からそれぞれCNT21a,21bが選択的に成長してなる。ここでは、対向面15a,16aに付着する触媒19を核として、当該対向面15a,16aに垂直に、互いの対向面に向かってCNT21a,21bを成長させ、CNT21a,21bを交差するように接触させて両者を電気的に接合し、CNT束21を形成する。
【0025】
CNT21a,21bの成長条件は、例えば熱CVD法を用い、反応ガスとしてアセチレンを100sccmの流量で真空チャンバー内に導入し、圧力を1kPa、基板温度を500℃とする。CNT21a,21bの長さは、1ミクロン/10分程度の成長レートで調節が可能である。また、熱フィラメントによりガス解離を行う熱フィラメントCVD法を用いても良い。この場合、例えば反応ガスとしてアセチレンを100sccmの流量で真空チャンバー内に導入し、圧力を1kPa、基板温度を500℃、熱フィラメント温度を1800℃とする。
【0026】
続いて、図2−2(b)に示すように、CNT束21と金属材料22との複合状態を形成する。
詳細には、コンタクトブロック15,16間の確実な電気的接続及び更なる低抵抗化を図るべく、CNT束21の形成された配線溝18内を金属材料22で充填する。金属材料22としては、Cu,Ti,TiN,W,Mo,Agからなる群から選ばれた少なくとも1種、又は前記群から選ばれた少なくとも1種を含む合金、ここではCuを用い、例えば無電解メッキ法により配線溝18内を充填するように例えば厚み300nm程度に堆積する。このとき、電気的に接合されたCNT束21のCNT21a,21bの間隙が金属材料22で埋め込まれ、CNT束21と金属材料22とが複合状態とされる。
【0027】
しかる後、図2−2(c)に示すように、配線23を形成する。
詳細には、CPM法により、コンタクトブロック15,16の上面が露出するまでCNT21a,21b、金属材料22及び層間絶縁膜12の各上部を研磨して平坦化する。これにより、配線溝18をCNT束21と金属材料22との複合材料で埋め込み、コンタクトブロック15,16間を電気的に接続する、横方向の(層間絶縁膜12の表面に起因する、ほぼ水平面上に)配線23が形成される。
以上の工程により、本実施形態の配線構造を完成させる。
【0028】
なお、本実施形態では、炭素元素の線状構造体としてCNTを形成する場合について例示したが、CNTの代わりに例えば繊維状のCNFを形成しても良い。この場合、CNTの形成と同様に、CVD法や熱CVD法等を用い、成長温度をCNT形成時よりも低温(例えば300℃程度)として成長形成する。
【0029】
本実施形態によれば、コンタクトブロック15,16を用いたCNT21及び金属材料22からなる複合材料からなる配線23を、できるだけ工程数を削減して、低コストで容易且つ確実に形成することが可能となる。
【0030】
(変形例)
ここで、第1の実施形態の変形例について説明する。本例では、第1の実施形態と同様に配線構造を形成するが、CNTの触媒の形成態様が異なる点で相違する。なお、第1の実施形態で説明した構成部材等と同一のものについては同符号を付す。
図3−1及び図3−2は、第1の実施形態の変形例による配線構造の形成方法を工程順に示す概略断面図である。なお、図示の便宜上、図3−1(b)〜図3−2(c)ではシリコン基板11の図示を省略する。
【0031】
先ず、図3−1(a)〜図3−1(d)に示すように、第1の実施形態の図2−1(a)〜図2−1(d)と同様の工程を経る。
【0032】
続いて、図3−1(e)に示すように、CNTの成長触媒となる触媒31を、コンタクトブロック15,16の各対向面15a,16aのみに選択的に堆積する。
詳細には、例えばNi無電解メッキ法を用いることにより、コンタクトブロック15,16の露出面、ここでは配線溝18内で露出するコンタクトブロック15,16の各対向面15a,16aのみに、NiP層が例えば島状(又は微粒子状)の触媒31として選択的に堆積する。このように、CNTの形成に必要な部分のみに触媒を堆積することにより、不要な部分に触媒を堆積することによる金属汚染等の発生が防止される。
なお、触媒31をその堆積時には薄膜状に形成し、図3−2(a)でCNT21の成長温度に昇温する際に、触媒31を島状(又は微粒子状)とするようにしても良い。
【0033】
しかる後、図3−2(a)〜図3−2(c)に示すように、第1の実施形態の図2−2(a)〜図2−2(c)と同様の工程を経て、本例の配線構造を完成させる。
【0034】
本例によれば、コンタクトブロック15,16を用いたCNT21及び金属材料22からなる複合材料からなる配線23を、できるだけ工程数を削減して、しかも環境に与える悪影響を回避しつつ、低コストで容易且つ確実に形成することが可能となる。
【0035】
(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態について説明する。本実施形態では、第1の実施形態と同様に配線構造を形成するが、当該配線構造を3次元の配線ネットワーク構造として構築する点で相違する。なお、第1の実施形態で説明した構成部材等と同一のものについては同符号を付す。
図4は、第2の実施形態による配線構造の形成方法を工程順に示す概略断面図であり、図5〜図7は、図4に対応した概略平面図であり、図8は完成した配線構造を示す概略斜視図である。図4の各図は、図5〜図7の破線I−I'〜III−III 'に沿った断面に対応している。なお図8では、図示の便宜上、層間絶縁膜12以下の階層部分を省略する。
【0036】
本実施形態では、3次元の配線ネットワーク構造を構成する各配線層の形成に、第1の実施形態の変形例を適用する。勿論、第1の実施形態を適用しても良い。
先ず、図4(a)及び図5に示すように、層間絶縁膜12上に第1の配線層101を形成する。
詳細には、第1の実施形態の変形例における図3(a)〜図3(h)の各工程と同様の工程を経て、層間絶縁膜12上における層間絶縁膜17内で複数組、ここでは6組のコンタクトブロック15,16間を配線23により電気的に接続して一体化されてなる第1の配線層101を形成する。
なお、本実施形態では、6組のコンタクトブロック15,16に対応して、層間絶縁膜12には図示の例で7個のビア部14が形成されている。
【0037】
続いて、図4(b)及び図6に示すように、第1の配線層101上にビア層102を形成する。
詳細には、先ず、第1の配線層101上に層間絶縁膜33を、CVD法等によりシリコン酸化膜等を例えば厚み300nm程度に堆積して形成する。
【0038】
次に、6組のコンタクトブロック15,16を構成する7個のコンタクトブロックのうち所定のもの、ここでは2つのコンタクトブロック15と1つのコンタクトブロック16の上面を露出させるように、リソグラフィー及びドライエッチングにより層間絶縁膜33を加工し、ビア孔34を形成する。
【0039】
次に、例えばNi無電解メッキ法を用い、コンタクトブロック15,16の露出面、ここではビア孔34の底部で露出するコンタクトブロック15,16の各上15b,16bのみに、NiP層が選択的に触媒35として堆積する。
【0040】
次に、CVD法を用いてビア孔34内にCNT束36を成長させ、ビア部37を形成する。CNT束36は、ビア孔34内で露出するコンタクトブロック15,16の各上面15b,16bに付着する触媒35から選択的に成長する。ここでは、上面15b,16bに付着する触媒35を核として、当該上面15b,16bに垂直(上方)に成長する。
CNT束36の成長条件は、例えば熱CVD法を用い、反応ガスとしてアセチレンとアルゴンの混合ガスを0.5sccm:1000sccmの流量で真空チャンバー内に導入し、圧力を1kPa、基板温度を400℃とする。
以上により、層間絶縁膜33に形成されたビア孔34内をCNT束36で充填してなるビア部37を備えたビア層102が形成される。
【0041】
しかる後、図4(c)及び図7に示すように、ビア層102上に第2の配線層103を形成する。
詳細には、第1の実施形態の変形例における図3(b)〜図3(h)の各工程と同様の工程を経る。この場合、ビア層102上において、CNT束36の上部が露出する3つのビア孔34上に各コンタクトブロック15と、これらのコンタクトブロック15と対応するコンタクトブロック16とが形成され、第1の実施形態の変形例と同様に各コンタクトブロック15,16間に配線23がそれぞれ形成される。これにより、層間絶縁膜33上における層間絶縁膜17内で複数組、ここでは3組のコンタクトブロック15,16間を配線23により電気的に接続して一体化されてなる第2の配線層102が形成される。
以上により、図8に示すような3次元の配線ネットワーク構造とされた配線構造を完成させる。
【0042】
なお、本実施形態では、1層のビア層を介して配線層が2層積層された場合を例示したが、更に多数の配線層を積層して多層配線構造を形成しても良い。
【0043】
本実施形態によれば、コンタクトブロック15,16を用いたCNT21及び金属材料22からなる複合材料からなる配線23を、できるだけ工程数を削減して、しかも環境に与える悪影響を回避しつつ、低コストで容易且つ確実に形成することが可能となり、CNTを材料とする配線からなる3次元の配線ネットワーク構造が実現される。
【0044】
(変形例)
ここで、第2の実施形態の変形例について説明する。本例では、第1の実施形態と同様に配線構造を形成するが、配線ネットワーク構造の最終形態が異なる点で相違する。なお、第2の実施形態で説明した構成部材等と同一のものについては同符号を付す。
図9は、第2の実施形態の変形例による配線構造を示す概略斜視図である。なお図9では、図示の便宜上、層間絶縁膜12以下の階層部分を省略する。
【0045】
本例では、層間絶縁膜12を、シリコン酸化膜の代わりに、後述するウェットエッチングで不溶の材料、例えばSiNで形成する。
そして、第2の実施形態における図4(c)、図7及び図8の工程の後、第1及び第2の配線層101,103、ビア層102のシリコン酸化膜からなる層間絶縁膜17,33を、例えばフッ酸系のエッチング液を用いたウェットエッチングにより、溶解除去する。
【0046】
その結果、図9に示すように、コンタクトブロック15,16、配線23及びビア部37の言わば配線骨格のみからなる3次元の配線ネットワーク構造が完成する。
CNTはCu配線と異なりその機械的強度が極めて強いため、本実施形態の配線ネットワーク構造のように配線を支える層間絶縁膜が無い状態でも、外的衝撃等に耐えることができる。従って、本実施形態によれば、上記した第2の実施形態の奏する諸効果に加え、簡易な製造プロセスにより、極めて軽量の3次元の配線ネットワーク構造が実現する。
【0047】
以下、本発明の諸態様について、付記としてまとめて記載する。
【0048】
(付記1)所定間隔で対向配置されてなるブロック状の一対の下地導電体と、
前記下地導電体同士を電気的に接続する配線と
を含み、
前記配線は、前記各下地導電体の各対向面から垂直にそれぞれ炭素元素からなる線状構造体が形成されており、前記対向面間で前記線状構造体の一部が交差して接触し、電気的に接合されてなることを特徴とする配線構造。
【0049】
(付記2)前記配線は、前記線状構造体を包含するように前記下地導電体間を金属材料で充填してなる、前記線状構造体と前記金属材料との複合材料で形成されていることを特徴とする付記1に記載の配線構造。
【0050】
(付記3)前記各対向面には、前記線状構造体の触媒材料が設けられており、当該触媒材料を核として前記線状構造体が成長形成されていることを特徴とする付記1又は2に記載の配線構造。
【0051】
(付記4)前記線状構造体は、カーボンナノチューブ又はカーボンナノファイバーであることを特徴とする付記1〜3のいずれか1項に記載の配線構造。
【0052】
(付記5)前記下地導電体は、Ti,TiN,W,Mo,Agからなる群から選ばれた少なくとも1種、又は前記群から選ばれた少なくとも1種を含む合金からなることを特徴とする付記1〜4のいずれか1項に記載の配線構造。
【0053】
(付記6)前記複合材料を形成する前記金属材料は、Cu,Ti,TiN,W,Mo,Agからなる群から選ばれた少なくとも1種、又は前記群から選ばれた少なくとも1種を含む合金からなることを特徴とする付記1〜5のいずれか1項に記載の配線構造。
【0054】
(付記7)一組又は複数組の前記一対の下地導電体が水平に配設され、前記配線が横方向に形成されている層構造を有することを特徴とする付記1〜6のいずれか1項に記載の配線構造。
【0055】
(付記8)前記層構造が、上下の前記下地導電体を電気的に接続するビア部を介して複数層積層されており、3次元の配線ネットワーク構造が形成されてなることを特徴とする付記7に記載の配線構造。
【0056】
(付記9)前記ビア部は、前記線状構造体からなることを特徴とする付記8に記載の配線構造。
【0057】
(付記10)前記線状構造体は、前記各対向面から1本又は複数本形成されていることを特徴とする付記1〜9のいずれか1項に記載の配線構造。
【0058】
(付記11)ブロック状の一対の下地導電体を、所定間隔で対向配置されるように形成する工程と、
前記各下地導電体の各対向面から垂直にそれぞれ炭素元素からなる線状構造体を、前記対向面間で前記線状構造体の一部が交差して接触するように成長させて電気的に接合し、配線を形成する工程と
を含むことを特徴とする配線構造の形成方法。
【0059】
(付記12)前記線状構造体を成長させた後、前記線状構造体を包含するように前記下地導電体間を金属材料で充填する工程を更に含み、
前記配線を、前記線状構造体と前記金属材料との複合材料で構成することを特徴とする付記11に記載の配線構造の形成方法。
【0060】
(付記13)対向配置された前記各下地導電体の前記各対向面に触媒材料を配する工程を更に含み、
前記各対向面の前記触媒材料を核として、前記線状構造体を成長させることを特徴とする付記11又は12に記載の配線構造の形成方法。
【0061】
(付記14)前記線状構造体は、カーボンナノチューブ又はカーボンナノファイバーであることを特徴とする付記11〜13のいずれか1項に記載の配線構造の形成方法。
【0062】
(付記15)前記下地導電体は、Ti,TiN,W,Mo,Agからなる群から選ばれた少なくとも1種、又は前記群から選ばれた少なくとも1種を含む合金からなることを特徴とする付記11〜14のいずれか1項に記載の配線構造の形成方法。
【0063】
(付記16)前記複合材料を形成する前記金属材料は、Cu,Ti,TiN,W,Mo,Agからなる群から選ばれた少なくとも1種、又は前記群から選ばれた少なくとも1種を含む合金からなることを特徴とする付記11〜15のいずれか1項に記載の配線構造の形成方法。
【0064】
(付記17)一組又は複数組の前記一対の下地導電体を水平に配設し、前記配線を横方向に形成して層構造とすることを特徴とする付記11〜16のいずれか1項に記載の配線構造の形成方法。
【0065】
(付記18)前記層構造を、上下の前記下地導電体を電気的に接続するビア部を介して複数層積層し、3次元の配線ネットワーク構造を形成することを特徴とする付記17に記載の配線構造の形成方法。
【0066】
(付記19)前記ビア部を、前記線状構造体から形成することを特徴とする付記18に記載の配線構造の形成方法。
【0067】
(付記20)前記各層構造を形成する際に、前記下地導電体及び前記配線の少なくとも一部を埋め込むように埋め込み絶縁膜を形成し、
前記ビア部を形成する際に、前記層構造間を埋め込むように層間絶縁膜を形成し、
前記各層構造及び前記ビア部を形成した後に、前記埋め込み絶縁膜及び前記層間絶縁膜を除去することを特徴とする付記19に記載の配線構造の形成方法。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の基本構成を説明するための模式図である。
【図2−1】第1の実施形態による配線構造の形成方法を工程順に示す概略断面図である。
【図2−2】図2−1に引き続き、第1の実施形態による配線構造の形成方法を工程順に示す概略断面図である。
【図3−1】第1の実施形態の変形例による配線構造の形成方法を工程順に示す概略断面図である。
【図3−2】図3−1に引き続き、第1の実施形態の変形例による配線構造の形成方法を工程順に示す概略断面図である。
【図4】第2の実施形態による配線構造の形成方法を工程順に示す概略断面図である。
【図5】第2の実施形態による配線構造の形成方法を工程順に示す概略平面図である。
【図6】図5に引き続き、第2の実施形態による配線構造の形成方法を工程順に示す概略平面図である。
【図7】図6に引き続き、第2の実施形態による配線構造の形成方法を工程順に示す概略平面図である。
【図8】第2の実施形態において、完成した配線構造を示す概略斜視図である。
【図9】第2の実施形態の変形例において、完成した配線構造を示す概略斜視図である。
【符号の説明】
【0069】
1,2,15,16 コンタクトブロック
1a,2a,15a,16a 対向面
3,21,36 CNT束
3a,3b,21a,21b CNT
4,22 金属材料
11 シリコン基板
12,17,33 層間絶縁膜
13,34 ビア孔
14,37 ビア部
18 配線溝
19,31,35 触媒
23 配線
101 第1の配線層
102 ビア層
103 第2の配線層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定間隔で対向配置されてなるブロック状の一対の下地導電体と、
前記下地導電体同士を電気的に接続する配線と
を含み、
前記配線は、前記各下地導電体の各対向面から垂直にそれぞれ炭素元素からなる線状構造体が形成されており、前記対向面間で前記線状構造体の一部が交差して接触し、電気的に接合されてなることを特徴とする配線構造。
【請求項2】
前記配線は、前記線状構造体を包含するように前記下地導電体間を金属材料で充填してなる、前記線状構造体と前記金属材料との複合材料で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の配線構造。
【請求項3】
一組又は複数組の前記一対の下地導電体が水平に配設され、前記配線が横方向に形成されている層構造を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の配線構造。
【請求項4】
前記層構造が、上下の前記下地導電体を電気的に接続するビア部を介して複数層積層されており、3次元の配線ネットワーク構造が形成されてなることを特徴とする請求項3に記載の配線構造。
【請求項5】
前記ビア部は、前記線状構造体からなることを特徴とする請求項4に記載の配線構造。
【請求項6】
ブロック状の一対の下地導電体を、所定間隔で対向配置されるように形成する工程と、
前記各下地導電体の各対向面から垂直にそれぞれ炭素元素からなる線状構造体を、前記対向面間で前記線状構造体の一部が交差して接触するように成長させて電気的に接合し、配線を形成する工程と
を含むことを特徴とする配線構造の形成方法。
【請求項7】
一組又は複数組の前記一対の下地導電体を水平に配設し、前記配線を横方向に形成して層構造とすることを特徴とする請求項6に記載の配線構造の形成方法。
【請求項8】
前記層構造を、上下の前記下地導電体を電気的に接続するビア部を介して複数層積層し、3次元の配線ネットワーク構造を形成することを特徴とする請求項7に記載の配線構造の形成方法。
【請求項9】
前記ビア部を、前記線状構造体から形成することを特徴とする請求項8に記載の配線構造の形成方法。
【請求項10】
前記各層構造を形成する際に、前記下地導電体及び前記配線の少なくとも一部を埋め込むように埋め込み絶縁膜を形成し、
前記ビア部を形成する際に、前記層構造間を埋め込むように層間絶縁膜を形成し、
前記各層構造及び前記ビア部を形成した後に、前記埋め込み絶縁膜及び前記層間絶縁膜を除去することを特徴とする請求項9に記載の配線構造の形成方法。

【図1】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−251701(P2008−251701A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−89011(P2007−89011)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成18年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「次世代半導体材料・プロセス基盤(MIRAI)プロジェクト」委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】