説明

長尺物の外観検査方法及びその装置

【課題】画像処理を行わずに検査を行うことができ、検査速度を向上することのできる長尺物の外観検査方法及びその装置を提供する。
【解決手段】撮像データ幅方向の複数の所定位置ごとに照射線Lの高さ方向位置データを求めることにより成る照射線位置データ群を各撮像データごとに作成し、各高さ方向位置データのうち幅方向所定範囲の高さ方向位置データから撮像データ幅方向の前記所定位置ごとに設けられた基準データを引いた値を加算し、加算した値が所定の基準範囲内か否かを判定することから、長尺物であるホースHの表面に成形不良等により凹凸が形成されていることを検出可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホース、電線等の略円形断面の長尺物や鋼板等の平板状長尺物の外観を検査するための長尺物の外観検査方法及びその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種の外観検査方法としては、長尺物の外周面に向かって所定の光源から線状光を照射するとともに、光源と長尺物とを長尺物の長手方向に相対的に移動させながら、線状光が長尺物の外周面に照射されて成る照射線を線上光面と所定の角度をなす方向から所定時間おきに撮像し、撮像データ内における照射線の位置に基づき、撮像データ幅方向の複数の所定位置ごとに照射線の高さ方向位置データを求めることにより成る照射線位置データ群を各撮像データごとに作成し、各照射線位置データ群の高さ位置データを前記所定位置ごとに設けられた基準データによって減算処理し、減算処理された各照射線位置データ群を撮像順に並べて検査用画像を作成し、予め設定されている所定形状の凹凸が検査用画像内に生じているか否かの判定を行うものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−309714号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記外観検査方法では、予め設定されている所定形状の凹凸が検査用画像内に生じているか否かを判定するために、検査用画像上で画像処理を行う必要があり、画像処理ソフトウェアの分だけ検査装置のコストが高くつくという問題点があった。
【0005】
また、長尺物の生産性を向上するために、長尺物の検査速度の高速化を図る必要があるところ、前記外観検査方法では、予め設定されている所定の凹凸が検査用画像内に生じているか否かを判定するために検査用画像上で画像処理を行う必要があるので、画像処理を行うコンピュータを高性能化する必要があり、コンピュータを高性能化する分だけ検査装置が高くつくという問題点もあった。
【0006】
また、画像処理を行う場合はパラメータの設定が複雑であり、検査対象の状態等に応じてユーザーが自主的にパラメータ等を調整することが非常に困難であるという問題点もあった。
【0007】
さらに、画像処理によって所定形状の凹凸の有無を判定するためには、光源と長尺物とを長尺物の長手方向に一定速度で相対的に移動させなければならない制約があった。
【0008】
本発明は前記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、画像処理を行わずに検査を行うことができ、検査速度の高速化を図ることのできる長尺物の外観検査方法及びその装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は前記目的を達成するために、本発明の長尺物の外観検査方法では、長尺物の表面に向かって所定の光源から線状光を照射するとともに、光源と長尺物とを長尺物の長手方向に相対的に移動させながら、線状光が長尺物の表面に照射されてなる照射線を線状光面と所定の角度をなす方向から所定時間おきに撮像する工程と、撮像データ内における照射線の位置に基づき、撮像データ幅方向の複数の所定位置ごとに照射線の高さ方向位置データを求めることにより成る照射線位置データ群を撮像データごとに作成する工程と、各照射線位置データ群について、各高さ方向位置データのうち複数の高さ方向位置データから撮像データ幅方向の前記所定位置ごとに設定された基準データを引いた値、または、前記複数の高さ方向位置データと前記基準データとの差を加算する工程と、各照射線位置データ群について、前記加算した値が所定の基準範囲内か否かを判定する工程とを含んでいる。
【0010】
また、本発明の長尺物の外観検査装置は、長尺物の表面に向かって線状光を照射する光源と、光源と長尺物とを長尺物の長手方向に相対的に移動させる移動機構と、線状光が長尺物の表面に照射されて成る照射線を線状光面と所定の角度をなす方向から所定時間おきに撮像する撮像装置と、撮像データ内における照射線の位置に基づき、撮像データ幅方向の複数の所定位置ごとに照射線の高さ方向位置データを求めることにより成る照射線位置データ群を撮像データごとに作成する照射線位置データ作成手段と、各照射線位置データ群について、各高さ方向位置データのうち複数の高さ方向位置データから撮像データ幅方向の前記所定位置ごとに設定された基準データを引いた値、または、前記複数の高さ方向位置データと前記基準データとの差を加算する加算手段と、各照射線位置データ群について、前記加算した値が所定の基準範囲内か否かを判定する判定手段とを備えている。
【0011】
これにより、長尺物の表面に向かって線状光が照射されることから、線状光が長尺物の表面に照射されて成る照射線はその位置の長尺物の輪郭を正確に示す。また、照射線が線上光面と所定の角度をなす方向から撮像されるので、照射線の位置の長尺物の輪郭が正確に撮像される。さらに、光源と長尺物とを長尺物の長手方向に相対的に移動させながら、照射線を所定時間おきに撮像することから、長尺物の輪郭が長手方向に亘って連続的且つ正確に撮像される。
【0012】
また、撮像データ内における照射線の位置に基づき、撮像データ幅方向の複数の所定位置ごとに照射線の高さ方向位置データを求めることにより成る照射線位置データ群を各撮像データごとに作成し、各照射線位置データ群について、各高さ方向位置データのうち複数の高さ方向位置データと撮像データ幅方向の前記所定位置ごとに設けられた基準データとの差を加算する。このため、例えば長尺物が円筒状に形成されている場合には、円弧状の照射線が撮像されることになり、前記基準データが円弧状の照射線の径方向内側に位置するデータであり、前記複数の高さ方向位置データが撮像データ幅方向における所定範囲の高さ方向位置データである場合には、前記差を加算した値は前記所定範囲における照射線と基準データとの間の面積に応じた値となり、長尺物の表面が意図せず凹状に形成されている場合には、照射線と基準データとの間の面積が小さくなり、前記差を加算した値も小さくなる。また、前記加算した値が所定の基準範囲内か否かを判定することから、長尺物の表面に成形不良等により凹凸が形成されていることを検出可能である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、長尺物の輪郭を長手方向に亘って連続的且つ正確に撮像することができ、しかも長尺物の表面に成形不良等により凹凸が形成されていることを画像処理を行わずに検出できるので、検査速度の高速化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態を示す長尺物の外観検査装置の要部斜視図
【図2】長尺物の外観検査装置の要部側面図
【図3】図2におけるA−A線断面図
【図4】ホースの要部斜視図
【図5】撮像データの例
【図6】図5の一部拡大図
【図7】制御部の動作説明図
【図8】制御部の動作説明図
【図9】制御部の動作説明図
【図10】制御部の動作説明図
【図11】制御部の動作説明図
【図12】制御部の動作説明図
【図13】制御部の動作説明図
【図14】長尺物の外観検査装置のブロック図
【図15】制御部の動作を示すフローチャート
【図16】本実施形態の第1変形例を示す制御部の動作説明図
【図17】本実施形態の第2変形例を示す制御部の動作説明図
【図18】本実施形態の第3変形例を示す制御部の動作説明図
【図19】本実施形態の第4変形例を示す制御部の動作説明図
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態の長尺物の外観検査装置を図1乃至図15を参照しながら説明する。
【0016】
この長尺物の外観検査装置は、照射対象物上で線状となる光(以下、線状光Sという)を照射可能な複数の照射装置10と、ゴム製のホースHをその長手方向に移動させる移動機構20と、ホースHをガイドするための第1ガイド機構30及び第2ガイド機構40と、各照射装置10の線状光SがホースHの外周面に照射されて成る照射線Lを線状光Sの光面と所定の角度α(本実施形態では略30°)をなす方向から撮像可能な複数の撮像装置50とを備えている。
【0017】
各照射装置10から照射される線状光Sは赤色レーザー光から成り、線状光SはホースHの外周面に線状に照射される。本実施形態では照射装置10が4つ設けられ、各照射装置10は互いにホースHの周方向に90°ずれた位置に配置されている。また、各照射装置10は線状光Sの光面がホースHの軸方向と略垂直に交わるように配置されている。各照射装置10から照射された線状光Sは互いにホースHの周方向に繋がり、各照射装置10の線状光SがホースHの外周面に照射されてなる照射線LはホースHを一周している。
【0018】
移動機構20は上下一対のベルトコンベヤ21を有し、各ベルトコンベヤ21の間にホースHを挟持するとともに、各ベルトコンベヤ21を回転させることにより、ホースHをその長手方向に移動可能である。
【0019】
第1ガイド機構30は4つのガイド部材31を有し、各ガイド部材31は互いにホースHの周方向に略90°ずれた位置に配置されている。各ガイド部材31は照射線Lに対してホースHの搬送方向の上流側に配置され、各ガイド部材31は図示しないエアシリンダによってホースHの外周面に押付けられるようになっている。第1ガイド機構30に対してホースHの搬送方向の上流側にはホースHを第1ガイド機構30に案内する補助ガイド機構32が設けられている。
【0020】
第2ガイド機構40は4つのガイド部材41を有し、各ガイド部材41は互いにホースHの周方向に略90°ずれた位置に配置されている。各ガイド部材41は照射線Lに対してホースHの搬送方向の下流側に配置され、各ガイド部材41は図示しないエアシリンダによってホースHの外周面に押付けられるようになっている。
【0021】
各撮像装置50はX軸方向(撮像データ内におけるホースHの幅方向に対応する方向)及びX軸と直交しているY軸方向(撮像データ内におけるホースHの高さ方向に対応する方向)にそれぞれ複数ずつ画素を有する二次元撮像装置である。本実施形態では、撮像データ幅方向をX軸方向と称し、撮像データ高さ方向をY軸方向と称する。また、本実施形態では撮像装置50は複数設けられ、各撮像装置50は互いにホースHの周方向に等角度間隔(本実施形態では90°間隔)で配置されている。また、各撮像装置50は各照明装置10とホースHの周方向に互い違いに配置され、本実施形態では各撮像装置50は各照明装置10と互いにホースHの周方向に略45°ずれた位置に配置されている。
【0022】
各照明装置10、移動機構20、各撮像装置50は周知のコンピュータから成る制御部60に接続され、制御部60は液晶画面等の周知の表示装置61及びキーボード等の周知の操作部62を有し、操作部62にはスタートボタンが設けられている。
【0023】
以上のように構成された長尺物の外観検査装置を用いてホースHの外観を検査する方法について、図4乃至図13と図15のフローチャートを参照しながら説明する。
【0024】
先ず、ホースHが各ガイド機構30,40を通過して移動機構20の各ベルトコンベヤ21によって挟持されている状態で、操作部62のスタートボタンが操作されると(S1)、移動機構20によってホースHを移動させるとともに(S2)、各照明装置10によってホースHの外周面に向かって線状光Sを照射する(S3)。
【0025】
続いて、各撮像装置50によってそれぞれ所定時間おき(本実施形態では1mm秒おき)にホースHの外周面の照射線Lを撮像する(S4)。例えば、ホースHが速度(本実施形態では35m/min)で移動する場合は、ホースHが所定距離(本実施形態では0.58mm)移動する度に各撮像装置50による撮像が行われる。以下は各撮像装置50のうち1つの撮像装置50について説明するが、他の撮像装置50についても同様の処理が行われる。
【0026】
続いて、撮像装置50によって撮像された各撮像データ(例えば図5参照)から、図6に示すように、撮像データ幅方向の複数の所定位置(X軸方向の各画素の位置)に応じた照射線Lの高さ方向(Y軸方向)の位置データを抽出し、図7に示すように、撮像データ幅方向の前記複数の所定位置ごとに照射線Lの高さ方向位置データを求めることにより成る照射線位置データ群を撮像データごとに作成する(S5)。例えば、X軸方向の左から26番目の画素位置(図6のX=25)における高さ方向位置データとして63が抽出され、X軸方向の左から27番目の画素位置(図6のX=26)における高さ方向位置データとして65が抽出され、これらの高さ方向位置データが照射線位置データ群を構成する(図7参照)。また、1回目に撮像した撮像データを撮像データ1、n回目に撮像した撮像データを撮像データnとし、図7のように撮像データごとに照射線位置データ群を作成する。
【0027】
本実施形態では、撮像データはX軸方向及びY軸方向にそれぞれ128の画素を有する。また、高さ方向位置データはY軸方向の画素1つ分を1として数値化されたものであり、輝度の重心位置を周知のサブピクセル処理によって位置データとして抽出している。また、照射線Lが写っていないX軸方向の左から1番目の画素位置(X=0)等については、高さ方向位置データは0としている。尚、図5及び図6は図4の照射線Lを撮像した撮像データであり、図4に示すホースHの外周面には成形不良等により凹状部Kが形成されている。
【0028】
続いて、各照射線位置データ群について以下の処理を行う。尚、図7〜図13に示すように、以下の処理が行われている間も、各高さ方向位置データは撮像データ幅方向(X軸方向)の位置データと対応づけられている。尚、以下のステップ6〜13では撮像データ1の照射線位置データ群についての処理が説明されているが、各撮像データの照射線位置データ群について同様の処理が行われる。
【0029】
先ず、図8に示すように、各高さ方向位置データを大きい順に並べ替えるとともに(S6)、各高さ方向位置データのうち大きい方から所定番目(例えば60番目)の高さ方向位置データを撮像データ幅方向の一方の基準点P1として設定する(S7)。これにより、図8の場合、X=92の高さ方向位置データが一方の基準点P1として設定される。また、図9に示すように、略円形断面を有するホースHを撮像する場合は、撮像データ幅方向の中央近傍の高さ方向位置データが最も大きくなる可能性があるので、撮像データ幅方向の中央近傍である幅方向所定番目(例えば63番目であるX=62)を最も大きくなると予想される高さ方向位置データとして予め設定しておき、前記所定(X=62)の高さ方向位置データに対して前記一方の基準点P1とは撮像データ幅方向の反対側に位置し、且つ、一方の基準点P1よりも大きい高さ方向位置データのうち最も小さい高さ方向位置データを撮像データ幅方向の他方の基準点P2として設定する(S8)。これにより、図9の場合、X=33の高さ方向位置データが他方の基準点P2として設定される。
【0030】
続いて、X方向の画素数を2で割った位置、つまり、カメラの画角の中心位置を仮の中心位置C1として設定する(S9)。例えば、図10に示すように、X方向の画素数を2で割った位置であるX=63または64の高さ方向位置データが仮の中心位置C1として設定される。本実施形態ではX=63の高さ方向位置データが仮の中心位置C1として設定される。
【0031】
続いて、図11に示すように、各高さ方向位置データのうち大きい方から所定個数(例えば63個)の高さ方向位置データが前記仮の中心位置C1に対して撮像データ幅方向の何れの方向にいくつ多く分布しているかを求め、多く分布している方向に分布個数の差の1/2だけ前記仮の中心位置C1を補正することにより、真の中心位置C2を設定する(S10)。例えば、各高さ方向位置データのうち大きい方から63個の高さ方向位置データが前記仮の中心位置C1に対して撮像データ幅方向の右側に29個、左側に33個分布している場合は、前記仮の中心位置を左側に2個移動させ、X=61の高さ方向位置データが真の中心位置C2として設定される。
【0032】
続いて、図12に示すように、真の中心位置C2から撮像データ幅方向の一方側(右側)所定番目(例えば40番目であるX=101)の高さ方向位置データを一方の端点T1として設定し、真の中心位置C2から撮像データ幅方向の他方側(左側)所定番目(例えば40番目であるX=21)の高さ方向位置データを他方の端点T2として設定する(S11)。
【0033】
また、図13に示すように、真の中心位置C2と各端点T1,T2とを直線で結ぶとともに、該直線の前記撮像データ幅方向の各所定位置における高さ方向の位置をそれぞれ前記各所定位置における基準データとして設定し(S12)、各端点T1,T2の間の高さ方向位置データから前記所定位置ごとに設定された基準データを引いた値を加算する(S13)。例えば、図13に示されている撮像データの場合は、加算した値は(−1)+(−2)…+(+4)+(+5)…+(+2)+0=350のようになる。このため、図4〜図13のように、ホースHの外周面の一部に凹状部Kが形成されており、照射線Lの一部が凹状となっている場合は、凹状部分が無い場合と比較して前記加算した値が小さくなる。一方、ホースHの外周面の一部に凸状部が形成されており、照射線Lの一部が凸状となっている場合は、凸状部分が無い場合と比較して前記加算した値が大きくなる。
【0034】
続いて、各照射線位置データ群について、前述のように加算された値が所定の基準範囲内か否かを判定する(S14)。次に、ステップS15において基準範囲(例えば370〜430)外であると判定された照射線位置データ群が所定の撮像回数だけ連続している場合は(S15)、ホースHの外周面に成形不良等による凹凸が形成されていると判定し(S16)、移動機構20によるホースHの移動を停止させる(S17)。尚、基準範囲内でないと判定された照射線位置データ群が1つだけの場合に、ステップS15でホースHの外周面にホースHの外周面に成形不良等による凹凸が形成されていると判定することも可能である。また、前記所定の撮像回数が5回以上となる場合は、比較的面積の広い凹状部または凸状部が形成されていることになる。
【0035】
このように、本実施形態によれば、ホースHの外周面に向かって線状光Sが照射されることから、線状光SがホースHの外周面に照射されて成る照射線Lはその位置のホースHの輪郭を正確に示す。また、照射線Lが線状光Sの光面と所定の角度αをなす方向から撮像されるので、照射線Lの位置のホースHの輪郭が正確に撮像される。さらに、各照射装置10に対してホースHを長手方向に移動させながら、照射線Lを所定時間おきに撮像することから、ホースHの輪郭が長手方向に亘って連続的且つ正確に撮像される。
【0036】
また、撮像データ内における照射線Lの位置に基づき、撮像データ幅方向の複数の所定位置ごとに照射線Lの高さ方向位置データを求めることにより成る照射線位置データ群を各撮像データごとに作成し、各照射線位置データ群について、各高さ方向位置データのうち複数(X=21〜101)の高さ方向位置データから撮像データ幅方向の前記所定位置ごとに設けられた前記基準データを引いた値を加算する。ここで、ホースHは略円形断面を有することから、ホースHに凹状部Kが形成されていない場合は、滑らかな円弧状の照射線Lが撮像されることになり、前記基準データが円弧状の照射線Lの線上または径方向内側に位置するようになる。従って、前記差を加算した値はX=21〜101の範囲における照射線Lと基準データとの間の面積に応じた値となり、ホースHの表面に意図せず凹状部Kまたは凸状部が形成されている場合には、照射線Lと基準データとの間の面積が小さくまたは大きくなり、前記差を加算した値も小さくまたは大きくなる。また、前記加算した値が所定の基準範囲内か否かを判定することから、ホースHの表面に成形不良等により凹凸が形成されていることを検出可能である。
【0037】
従って、ホースHの輪郭を長手方向に亘って連続的且つ正確に撮像することができ、しかもホースHの表面に成形不良等により凹凸が形成されていることを画像処理を行わずに検出できるので、費用をかけずに検査速度の高速化を図ることができる。
【0038】
また、ステップS9の仮の中心位置C1またはステップS10の真の中心位置C2を求めることにより、撮像データ内における照射線Lの撮像データ幅方向の中心位置が求められることから、ステップS13において設定される基準データ用の線と照射線Lとを撮像データ幅方向に位置を合わせることができ、検査の精度を向上する上で極めて有利である。
【0039】
また、ステップS12において、各高さ方向位置データのうち複数の点を結ぶ線を設定し、その線の前記撮像データ幅方向の各所定位置における高さ方向位置を求め、求められた各高さ方向位置を基準データとして設定していることから、ホースHの外周面に凹凸が形成されているか否かが前記加算した値に顕著にあらわれ、検査の精度を向上する上で極めて有利である。
【0040】
また、ステップS7〜12のように真の中心位置C2及び各端点T1,T2を求め、真の中心位置C2及び各端点T1,T2を用いて基準データ用の線を設定するようにしたので、基準データ用の線と照射線Lとを撮像データ幅方向に位置を合わせることができ、検査の精度を向上する上で極めて有利である。例えば、図16のように、照射線Lの幅方向一端側に大きな凸状部が形成されている場合に、単に最も大きな高さ方向位置データを中心位置として設定すると、基準データ用の線と照射線Lとを撮像データ幅方向に位置を合わせることができなくなるが、ステップS7〜12のように真の中心位置C2を求める場合は、図16のような場合でも基準データ用の線と照射線Lとを撮像データ幅方向に位置を合わせることができる。
【0041】
尚、本実施形態では、ステップS10において真の中心位置C2を設定するものを示したが、ステップS9において設定した仮の中心位置C1をステップS11の真の中心位置として用いることも可能であり、この場合でも前述と同様の作用効果を達成可能である。
【0042】
また、本実施形態では、ステップS9において、X方向の画素数を2で割った位置、つまり、カメラの画角の中心位置を仮の中心位置C1として設定するものを示した。これに対し、一方の基準点P1と他方の基準点P2に対して幅方向の中心に位置する高さ方向位置データを仮の中心位置C1として用いることも可能である。
【0043】
尚、本実施形態では、ステップS10のように真の中心位置C2を設定するものを示したが、ホースHに比較的小さい凹凸のみが発生する場合は、単に最も大きな高さ方向位置データを真の中心位置C2として設定することも可能であり、この場合でも前述と同様の作用効果を達成可能である。
【0044】
尚、本実施形態では、ステップS13において各端点T1,T2の間の高さ方向位置データから前記所定位置ごとに設定された基準データを引いた値を加算するものを示した。これに対し、各端点T1,T2の間の高さ方向位置データと前記所定位置ごとに設定された基準データとの差を加算することも可能であり、この場合でも前述と同様の作用効果を達成可能である。
【0045】
尚、本実施形態では、ステップS12において真の中心位置C2と各端点T1,T2とを直線で結び、該直線の前記撮像データ幅方向の各所定位置における高さ方向の位置をそれぞれ前記各所定位置における基準データとして設定するものを示した。これに対し、真の中心位置C2と各端点T1,T2とを曲線で結び、該曲線の前記撮像データ幅方向の各所定位置における高さ方向の位置をそれぞれ前記各所定位置における基準データとして設定することも可能であり、また、各端点T1,T2のみを直線または曲線で結び、または、各端点T1,T2及び各基準点P1,P2を互いに直線または曲線で結び、該直線または曲線の前記撮像データ幅方向の各所定位置における高さ方向の位置をそれぞれ前記各所定位置における基準データとして設定することも可能であり、これらの場合でも前述と同様の作用効果を達成可能である。
【0046】
また、本実施形態では、真の中心位置C2から撮像データ幅方向の一方側40番目の高さ方向位置データを一方の端点T1として設定するとともに、真の中心位置C2から撮像データ幅方向の他方側40番目の高さ方向位置データを他方の端点T2として設定し、真の中心位置C2と各端点T1,T2とを結んだ直線の前記撮像データ幅方向の各所定位置における高さ方向の位置をそれぞれ前記各所定位置における基準データとして設定し、前記引いた値を加算している。これに対し、図17に示すように、真の中心位置C2から撮像データ幅方向の一方側20番目の高さ方向位置データを第2の一方の端点T3として設定するとともに、真の中心位置C2から撮像データ幅方向の他方側20番目の高さ方向位置データを第2の他方の端点T4として設定し、各端点T3,T4を結んだ直線の前記撮像データ幅方向の各所定位置における高さ方向の位置をそれぞれ前記所定位置における基準データとして設定し、前述のように引いた値とさらに求めることも可能である。これにより、照射線Lの頂点近傍の検出精度をさらに高めることが可能となる。
【0047】
尚、本実施形態では、ステップS6において各高さ方向位置データを大きい順に並べ替えるものを示したが、各高さ方向位置データを大きい順に並べ替えずにステップS7以降を行うことも可能であり、この場合でも前述と同様の作用効果を達成可能である。
【0048】
尚、本実施形態では、ステップS8において、撮像データ幅方向の中央近傍の所定の高さ方向位置データ(例えばX=62)に対して一方の基準点P1とは撮像データ幅方向の反対側に位置する高さ方向位置データを他方の基準点P2として設定するものを示した。これに対し、各高さ方向位置データのうち最も大きい高さ方向位置データに対して一方の基準点P1とは撮像データ幅方向の反対側に位置する高さ方向位置データを他方の基準点P2として設定することも可能であり、この場合でも前述と同様の作用効果を達成可能である。
【0049】
尚、本実施形態では、ステップS12において、前記各高さ方向位置データのうち複数の点を結ぶ線を設定し、その線の前記撮像データ幅方向の各所定位置における高さ方向位置を求め、求められた各高さ方向位置を基準データとして設定するものを示した。これに対し、図18に示すように、前記各高さ方向位置データとは異なる位置に基準データを求めるための例えば円弧状の線STを設定することも可能であり、その他の形状の線を設定することも可能であり、これらの場合でも前述と同様の作用効果を達成可能である。尚、これらの場合でも、基準データ用の線を前記仮の中心位置C1または真の中心位置C2を基準に設定することにより、基準データ用の線と照射線Lとを撮像データ幅方向に位置を合わせることができ、検査の精度を向上することができる。
【0050】
尚、本実施形態では、ホースHの外周面を検査するものを示したが、ホースHの代わりに鋼板等の長尺の平板状部材を検査することも可能であり、電線等のその他の長尺物を検査することも可能である。尚、平板状部材を検査する際には、基準データを求めるために図19に示すような直線SLを設定することが可能である。
【0051】
また、本実施形態では、ホースHを移動機構20によって移動させることにより、ホースHと各照射装置10とを相対的に移動させるものを示したが、ホースHを移動させる代わりに各照明装置10をホースHの長手方向に移動させることにより、ホースHと各照明装置10とを相対的に移動させることも可能である。
【符号の説明】
【0052】
10…照射装置、20…移動機構、21…コンベヤベルト、30…第1ガイド機構、31…ガイド部材、32…補助ガイド機構、40…第2ガイド機構、41…ガイド部材、50…撮像装置、60…制御部、61…表示装置、62…操作部、H…ホース、S…線状光、L…照射線、K…凹状部、P1…一方の基準点、P2…他方の基準点、T1…一方の端点、T2…他方の端点、C1…仮の中心位置、C2…真の中心位置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺物の表面に向かって所定の光源から線状光を照射するとともに、光源と長尺物とを長尺物の長手方向に相対的に移動させながら、線状光が長尺物の表面に照射されてなる照射線を線状光面と所定の角度をなす方向から所定時間おきに撮像する工程と、
撮像データ内における照射線の位置に基づき、撮像データ幅方向の複数の所定位置ごとに照射線の高さ方向位置データを求めることにより成る照射線位置データ群を撮像データごとに作成する工程と、
各照射線位置データ群について、各高さ方向位置データのうち複数の高さ方向位置データから撮像データ幅方向の前記所定位置ごとに設定された基準データを引いた値、または、前記複数の高さ方向位置データと前記基準データとの差を加算する工程と、
各照射線位置データ群について、前記加算した値が所定の基準範囲内か否かを判定する工程とを含む
ことを特徴とする長尺物の外観検査方法。
【請求項2】
略円形の断面を有する長尺物を用い、
前記各高さ方向位置データを用いて撮像データ内における照射線の撮像データ幅方向の中心位置を求め、求められた中心位置を基準に照射線の径方向内側に配置されるような線を設定し、その線の前記撮像データ幅方向の各所定位置における高さ方向位置を求め、求められた各高さ方向位置を前記基準データとして設定する
ことを特徴とする請求項1記載の長尺物の外観検査方法。
【請求項3】
略円形の断面を有する長尺物を用い、
前記各高さ方向位置データのうち複数の点を結ぶ線を設定し、その線の前記撮像データ幅方向の各所定位置における高さ方向位置を求め、求められた各高さ方向位置を前記基準データとして設定する
ことを特徴とする請求項1記載の長尺物の外観検査方法。
【請求項4】
略円形の断面を有する長尺物を用い、
前記各高さ方向位置データのうち大きい方から所定番目の高さ方向位置データを撮像データ幅方向の一方の基準点として設定する工程と、最も大きいまたは撮像データ幅方向の中央近傍の所定の高さ方向位置データに対して前記一方の基準点とは撮像データ幅方向の反対側に位置し、且つ、一方の基準点よりも大きい高さ方向位置データのうち最も小さい高さ方向位置データを撮像データ幅方向の他方の基準点として設定する工程と、各基準点に基づいて撮像データ幅方向の中心位置を設定する工程と、中心位置から撮像データ幅方向の一方及び他方にそれぞれ離れた高さ方向位置データをそれぞれ一方及び他方の端点とする工程と、前記中心位置、一方の端点及び他方の端点のうち2つ以上を結ぶ線を設定し、その線の前記撮像データ幅方向の各所定位置における高さ方向位置を求める工程とを経て、求められた各高さ方向位置を前記基準データとして設定する
ことを特徴とする請求項1記載の長尺物の外観検査方法。
【請求項5】
略円形の断面を有する長尺物を用い、
前記各高さ方向位置データのうち大きい方から所定番目の高さ方向位置データを撮像データ幅方向の一方の基準点として設定する工程と、最も大きいまたは撮像データ幅方向の中央近傍の所定の高さ方向位置データに対して前記一方の基準点とは撮像データ幅方向の反対側に位置し、且つ、一方の基準点よりも大きい高さ方向位置データのうち最も小さい高さ方向位置データを撮像データ幅方向の他方の基準点として設定する工程と、各基準点に基づいて撮像データ幅方向の仮の中心位置を設定する工程と、各高さ方向位置データのうち大きい方から所定個数の高さ方向位置データが前記仮の中心位置に対して撮像データ幅方向の何れの方向にいくつ多く分布しているかを求め、その分布状態に基づき前記仮の中心位置を補正して真の中心位置を設定する工程と、真の中心位置から撮像データ幅方向の一方及び他方にそれぞれ離れた高さ方向位置データをそれぞれ一方及び他方の端点とする工程と、前記中心位置、一方の端点及び他方の端点のうち2つ以上を結ぶ線を設定し、その線の前記撮像データ幅方向の各所定位置における高さ方向位置を求める工程とを経て、求められた各高さ方向位置を前記基準データとして設定する
ことを特徴とする請求項1記載の長尺物の外観検査方法。
【請求項6】
長尺物の表面に向かって線状光を照射する光源と、
光源と長尺物とを長尺物の長手方向に相対的に移動させる移動機構と、
線状光が長尺物の表面に照射されて成る照射線を線状光面と所定の角度をなす方向から所定時間おきに撮像する撮像装置と、
撮像データ内における照射線の位置に基づき、撮像データ幅方向の複数の所定位置ごとに照射線の高さ方向位置データを求めることにより成る照射線位置データ群を撮像データごとに作成する照射線位置データ作成手段と、
各照射線位置データ群について、各高さ方向位置データのうち複数の高さ方向位置データから撮像データ幅方向の前記所定位置ごとに設定された基準データを引いた値、または、前記複数の高さ方向位置データと前記基準データとの差を加算する加算手段と、
各照射線位置データ群について、前記加算した値が所定の基準範囲内か否かを判定する判定手段とを備えた
ことを特徴とする長尺物の外観検査装置。
【請求項7】
前記長尺物が略円形の断面を有し、
前記加算手段を、各高さ方向位置データを用いて撮像データ内における照射線の撮像データ幅方向の中心位置を求め、求められた中心位置を基準に照射線の径方向内側に配置されるような線を設定し、その線の前記撮像データ幅方向の各所定位置における高さ方向位置を求め、求められた各高さ方向位置を前記基準データとして設定するように構成した
ことを特徴とする請求項6記載の長尺物の外観検査装置
【請求項8】
前記長尺物が略円形の断面を有し、
前記加算手段を、各高さ方向位置データのうち複数の点を結ぶ線を設定し、その線の前記撮像データ幅方向の各所定位置における高さ方向位置を求め、求められた各高さ方向位置を前記基準データとして設定するように構成した
ことを特徴とする請求項6記載の長尺物の外観検査装置。
【請求項9】
前記長尺物が略円形の断面を有し、
前記加算手段を、各高さ方向位置データのうち大きい方から所定番目の高さ方向位置データを撮像データ幅方向の一方の基準点として設定するステップと、最も大きいまたは撮像データ幅方向の中央近傍の所定の高さ方向位置データに対して前記一方の基準点とは撮像データ幅方向の反対側に位置し、且つ、一方の基準点よりも大きい高さ方向位置データのうち最も小さい高さ方向位置データを撮像データ幅方向の他方の基準点として設定するステップと、各基準点に基づいて撮像データ幅方向の中心位置を設定するステップと、中心位置から撮像データ幅方向の一方及び他方にそれぞれ離れた高さ方向位置データをそれぞれ一方及び他方の端点とするステップと、前記中心位置、一方の端点及び他方の端点のうち2つ以上を結ぶ線を設定し、その線の前記撮像データ幅方向の各所定位置における高さ方向位置を求めるステップとを経て、求められた各高さ方向位置を前記基準データとして設定するように構成した
ことを特徴とする請求項6記載の長尺物の外観検査装置。
【請求項10】
前記長尺物が略円形の断面を有し、
前記加算手段を、各高さ方向位置データのうち大きい方から所定番目の高さ方向位置データを撮像データ幅方向の一方の基準点として設定するステップと、最も大きいまたは撮像データ幅方向の中央近傍の所定の高さ方向位置データに対して前記一方の基準点とは撮像データ幅方向の反対側に位置し、且つ、一方の基準点よりも大きい高さ方向位置データのうち最も小さい高さ方向位置データを撮像データ幅方向の他方の基準点として設定するステップと、各基準点に基づいて撮像データ幅方向の仮の中心位置を設定するステップと、各高さ方向位置データのうち大きい方から所定個数の高さ方向位置データが前記仮の中心位置に対して撮像データ幅方向の何れの方向にいくつ多く分布しているかを求め、その分布状態に基づき前記仮の中心位置を補正して真の中心位置を設定するステップと、真の中心位置から撮像データ幅方向の一方及び他方にそれぞれ離れた高さ方向位置データをそれぞれ一方及び他方の端点とするステップと、前記中心位置、一方の端点及び他方の端点のうち2つ以上を結ぶ線を設定し、その線の前記撮像データ幅方向の各所定位置における高さ方向位置を求めるステップとを経て、求められた各高さ方向位置を前記基準データとして設定するように構成した
ことを特徴とする請求項6記載の長尺物の外観検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2010−197107(P2010−197107A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−39848(P2009−39848)
【出願日】平成21年2月23日(2009.2.23)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】