説明

陽極酸化アルミナの検査装置および検査方法、ならびに陽極酸化アルミナを表面に有する部材の製造方法

【課題】陽極酸化アルミナの状態(微細凹凸構造の形状、欠陥等)を簡易に検査できる検査装置および検査方法、ならびに陽極酸化アルミナの微細凹凸構造の形状等のムラや表面の欠陥が抑えられた、陽極酸化アルミナを表面に有する部材の製造方法を提供する。
【解決手段】モールド100に光を照射するライン状照明装置10(第一の照射手段)と;モールド100の陽極酸化アルミナで反射した光を撮像するカラーラインCCDカメラ12(第一の撮像手段)と;モールド100に光を照射するライン状照明装置20(第二の照射手段)と;モールド100の陽極酸化アルミナで反射した光を撮像するモノクロラインCCDカメラ22(第二の撮像手段)と;2つのカメラによって撮像された画像から得られた色情報および輝度情報に基づいて陽極酸化アルミナの状態の良否を判定する画像処理装置30(画像処理手段)とを有する検査装置を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム基材の表面に形成された、複数の細孔(微細凹凸構造)を有する陽極酸化アルミナ(多孔質の酸化皮膜)を検査する装置および方法、ならびに陽極酸化アルミナを表面に有する部材(モールド等)の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
可視光の波長以下のピッチの微細凹凸構造を表面に有する物品は、反射防止機能等を発現することから、その有用性が注目されている。特に、モスアイ(Moth−Eye)構造と呼ばれる微細凹凸構造は、空気の屈折率から材料の屈折率に連続的に増大していくことで有効な反射防止機能を発現することが知られている。
【0003】
微細凹凸構造を表面に有する物品の製造方法としては、下記の方法が知られており、生産性、経済性の点から、(ii)の方法が優れている。
(i)透明基材等の表面を直接加工して微細凹凸構造を表面に有する物品を製造する方法。
(ii)微細凹凸構造に対応した反転構造を有するモールドを用いて、透明基材等の表面に反転構造を転写する方法。
【0004】
モールドに反転構造を形成する方法としては、電子線描画法、レーザー光干渉法等が知られている。近年、より簡便に反転構造を形成できる方法として、アルミニウム基材の表面を陽極酸化する方法が注目されている(例えば、特許文献1参照)。
アルミニウム基材の表面を陽極酸化することによって形成される陽極酸化アルミナは、アルミニウムの酸化皮膜(アルマイト)であり、ピッチが可視光の波長以下である複数の細孔(微細凹凸構造)を有する。
【0005】
該陽極酸化アルミナにおいては、陽極酸化の際にアルミニウム基材を浸漬させる電解液の濃度や温度にムラが生じたり、アルミニウム基材の表面の性状にムラがあったりすると、陽極酸化アルミナの微細凹凸構造の形状(細孔の深さや内径、細孔間のピッチ等)、陽極酸化アルミナの厚さ等に多少のムラが生じることがある。陽極酸化アルミナの微細凹凸構造の形状や陽極酸化アルミナの厚さが設計どおりに形成されない領域の面積が大きくなると、そのモールドは、微細凹凸構造を表面に有する物品の製造に用いることができない。しかし、これまで、陽極酸化アルミナの微細凹凸構造の形状や陽極酸化アルミナの厚さを簡易に検査できる方法がなかった。
【0006】
また、陽極酸化アルミナは、接触等によって傷付きやすい、液状の異物が付いた場合、該異物が細孔に浸潤して細孔を埋めてしまう、という問題も有する。
よって、陽極酸化アルミナの微細凹凸構造の形状や陽極酸化アルミナの厚さの検査と、陽極酸化アルミナの表面の傷、異物等の欠陥の検査とを合わせて行うことによって、陽極酸化アルミナにある欠陥がどの工程で発生したのか、どういった要因で発生したのか等、原因を究明することができる。しかし、これまで、陽極酸化アルミナの微細凹凸構造と合わせて、陽極酸化アルミナの表面の傷、異物等の欠陥を簡易に検査できる方法がなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−156695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、陽極酸化アルミナの微細凹凸構造の形状や陽極酸化アルミナの厚さと、陽極酸化アルミナの表面の欠陥とを簡易に検査できる検査装置および検査方法、ならびに陽極酸化アルミナの微細凹凸構造の形状や陽極酸化アルミナの厚さのムラが抑えられ、かつ陽極酸化アルミナの表面の欠陥が抑えられた、陽極酸化アルミナを表面に有する部材の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、陽極酸化アルミナの微細凹凸構造に応じて、陽極酸化アルミナで反射する光の色が変化することを見出し、本発明に至った。陽極酸化アルミナで反射する光の色は、しゃぼん玉に見られるような薄膜の干渉色だけではなく、陽極酸化アルミナの微細凹凸構造の形状や陽極酸化アルミナの厚さの影響を反映したものである。
【0010】
すなわち、本発明の陽極酸化アルミナの検査装置は、陽極酸化アルミナに光を照射する照射手段と、照射手段から照射され、陽極酸化アルミナで反射した光を撮像する撮像手段と、撮像手段によって撮像された画像から得られた色情報および輝度情報に基づいて、陽極酸化アルミナの状態の良否を判定する画像処理手段とを有することを特徴とする。
【0011】
本発明の陽極酸化アルミナの検査装置は、前記照射手段として、第一の照射手段と、第二の照射手段とを有し、前記撮像手段として、第一の照射手段から照射され、陽極酸化アルミナで反射した光を撮像する第一の撮像手段と、第二の照射手段から照射され、陽極酸化アルミナで反射した光を撮像する第二の撮像手段とを有し、画像処理手段が、第一の撮像手段によって撮像された画像から得られた色情報に基づいて、陽極酸化アルミナの状態の良否を判定する第一の判定部と、第二の撮像手段によって撮像された画像から得られた輝度情報に基づいて、陽極酸化アルミナの状態の良否を判定する第二の判定部とを有することが好ましい。
【0012】
前記第一の撮像手段は、陽極酸化アルミナの表面の法線に対して、第一の撮像手段の光軸の角度が45〜89.9°となるように配置されることが好ましい。
前記第二の撮像手段は、陽極酸化アルミナの表面の法線に対して、第二の撮像手段の光軸の角度が0〜70°となるように配置されることが好ましい。
前記第一の撮像手段は、前記色情報としてRGBの画像信号を出力するものであり、前記第一の判定部は、RGBの画像信号に基づいて、陽極酸化アルミナの状態の良否を判定するものであってもよい。
前記第一の撮像手段は、前記色情報としてRGBの画像信号を出力するものであり、前記画像処理手段は、RGBの画像信号をHSL表色系の情報に変換する変換部を有し、前記第一の判定部は、HSL表色系の情報に基づいて、陽極酸化アルミナの状態の良否を判定するものであってもよい。
【0013】
本発明の陽極酸化アルミナの検査方法は、陽極酸化アルミナに照射手段から光を照射し、照射手段から照射され、陽極酸化アルミナで反射した光を撮像手段にて撮像し、撮像手段によって撮像された画像から得られた色情報および輝度情報に基づいて、陽極酸化アルミナの状態の良否を判定することを特徴とする。
【0014】
本発明の陽極酸化アルミナの検査方法は、陽極酸化アルミナに第一の照射手段から光を照射し、第一の照射手段から照射され、陽極酸化アルミナで反射した光を第一の撮像手段にて撮像し、第一の撮像手段によって撮像された画像から得られた色情報に基づいて、陽極酸化アルミナの状態の良否を判定するとともに、陽極酸化アルミナに第二の照射手段から光を照射し、第二の照射手段から照射され、陽極酸化アルミナで反射した光を第二の撮像手段にて撮像し、第二の撮像手段によって撮像された画像から得られた輝度情報に基づいて、陽極酸化アルミナの状態の良否を判定することが好ましい。
【0015】
本発明の陽極酸化アルミナの検査方法においては、前記第一の撮像手段によって撮像された画像から色情報としてRGBの画像信号を得て、該RGBの画像信号に基づいて、陽極酸化アルミナの状態の良否を判定してもよい。
本発明の陽極酸化アルミナの検査方法においては、前記第一の撮像手段によって撮像された画像から色情報としてRGBの画像信号を得て、該RGBの画像信号をHSL表色系の情報に変換し、該HSL表色系の情報に基づいて、陽極酸化アルミナの状態の良否を判定してもよい。
【0016】
本発明の、陽極酸化アルミナを表面に有する部材の製造方法は、アルミニウム基材の表面を陽極酸化することによって、陽極酸化アルミナを表面に有する部材を得る工程と、本発明の陽極酸化アルミナの検査方法によって、前記陽極酸化アルミナを検査する工程とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の陽極酸化アルミナの検査装置および検査方法によれば、陽極酸化アルミナの微細凹凸構造の形状や陽極酸化アルミナの厚さと、陽極酸化アルミナの表面の欠陥とを簡易に検査できる。
本発明の、陽極酸化アルミナを表面に有する部材の製造方法によれば、陽極酸化アルミナの微細凹凸構造の形状や陽極酸化アルミナの厚さのムラが抑えられ、かつ陽極酸化アルミナの表面の欠陥が抑えられた、陽極酸化アルミナを表面に有する部材を安定して製造できる。
【0018】
また、陽極酸化アルミナの微細凹凸構造の形状や陽極酸化アルミナの厚さと、陽極酸化アルミナの表面の欠陥とを同時に検査することによって、検査結果から、陽極酸化アルミナに異常が発生した工程や原因を早期に究明できる。そして、その結果を、陽極酸化の工程にフィードバックすることによって、異常が再発するのを防止でき、陽極酸化アルミナを表面に有する部材の品質を向上できる。
また、陽極酸化アルミナの微細凹凸構造の形状や陽極酸化アルミナの厚さの検査と、陽極酸化アルミナの表面の欠陥の検査とを別々に行う場合と比較して、陽極酸化アルミナを表面に有する部材を載せかえる工数を軽減できる。その結果、検査時間を短縮でき、載せかえによる傷、異物付着のリスクを軽減できるため、陽極酸化アルミナを表面に有する部材の検査コスト(製造コスト)を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の陽極酸化アルミナの検査装置の一例を示す上面図および側面図である。
【図2】陽極酸化アルミナを表面に有するモールドの製造工程を示す断面図である。
【図3】第一の撮像手段によって撮像した、陽極酸化アルミナを表面に有する部材の表面の画像である。
【図4】光軸の角度θが5°である第一の撮像手段によって撮像した画像から得られた、図3のライン102の各画素における正常部に対する色相差をプロットしたグラフである。
【図5】光軸の角度θが15°である第一の撮像手段によって撮像した画像から得られた、図3のライン102の各画素における正常部に対する色相差をプロットしたグラフである。
【図6】光軸の角度θが25°である第一の撮像手段によって撮像した画像から得られた、図3のライン102の各画素における正常部に対する色相差をプロットしたグラフである。
【図7】光軸の角度θが35°である第一の撮像手段によって撮像した画像から得られた、図3のライン102の各画素における正常部に対する色相差をプロットしたグラフである。
【図8】光軸の角度θが45°である第一の撮像手段によって撮像した画像から得られた、図3のライン102の各画素における正常部に対する色相差をプロットしたグラフである。
【図9】光軸の角度θが55°である第一の撮像手段によって撮像した画像から得られた、図3のライン102の各画素における正常部に対する色相差をプロットしたグラフである。
【図10】光軸の角度θが65°である第一の撮像手段によって撮像した画像から得られた、図3のライン102の各画素における正常部に対する色相差をプロットしたグラフである。
【図11】光軸の角度θが75°である第一の撮像手段によって撮像した画像から得られた、図3のライン102の各画素における正常部に対する色相差をプロットしたグラフである。
【図12】光軸の角度θが85°である第一の撮像手段によって撮像した画像から得られた、図3のライン102の各画素における正常部に対する色相差をプロットしたグラフである。
【図13】光軸の角度θごとに、図3のライン102の各画素における正常部に対する色相差の最大値をプロットしたグラフである。
【図14】第一の撮像手段によって撮像した、陽極酸化アルミナを表面に有する部材の表面の画像である。
【図15】第二の撮像手段によって撮像した、陽極酸化アルミナを表面に有する部材の表面の画像である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<陽極酸化アルミナの検査装置>
図1は、本発明の陽極酸化アルミナの検査装置の一例を示す上面図および側面図である。
検査装置は、複数の細孔(微細凹凸構造)を有する陽極酸化アルミナがロール状のアルミニウム基材の表面に形成されたロール状のモールド100を回転させる回転手段(図示略)と;モールド100にライン状に光を照射するライン状照明装置10(第一の照射手段)と;ライン状照明装置10から照射され、モールド100の陽極酸化アルミナで反射した光を撮像するカラーラインCCDカメラ12(第一の撮像手段)と;モールド100にライン状に光を照射するライン状照明装置20(第二の照射手段)と;ライン状照明装置20から照射され、モールド100の陽極酸化アルミナで反射した光を撮像するモノクロラインCCDカメラ22(第二の撮像手段)と;カラーラインCCDカメラ12およびモノクロラインCCDカメラ12からの画像信号を処理する画像処理装置30(画像処理手段)と;モールド100と、ライン状照明装置10、カラーラインCCDカメラ12、ライン状照明装置20およびモノクロラインCCDカメラ22とを、モールド100の長手方向に沿って相対的に移動させる移動手段(図示略)とを有する。
【0021】
(第一の照射手段)
ライン状照明装置10は、モールド100への光の照射範囲の長手方向がモールド100の周方向(回転方向)に直交するように配置される。
ライン状照明装置10としては、高周波点灯の蛍光灯点灯装置、ロッド照明、ライン状に配置された光ファイバ照明、LED照明等が挙げられる。
【0022】
(第一の撮像手段)
カラーラインCCDカメラ12は、複数のカラーCCD素子が1次元に配置されたカメラであり、ライン状照明装置10から照射され、モールド100の陽極酸化アルミナで反射した光をカラーCCD素子で受光し、画素ごとにRGBの画像信号を出力するものである。
【0023】
カラーラインCCDカメラ12は、撮像範囲の長手方向がモールド100の周方向(回転方向)に直交するように配置される。また、カラーラインCCDカメラ12は、撮像範囲にあるモールド100の陽極酸化アルミナの表面(接平面)の法線Nに対して、カラーラインCCDカメラ12の光軸Lの角度θが45〜89.9°となるように配置されることが好ましい。角度θが45°以上であれば、陽極酸化アルミナの微細凹凸構造に対応した、陽極酸化アルミナからの反射光の色が明確に現れる。角度θは、ノイズの影響を受けにくくなる点から、65°以上が好ましく、70°以上がより好ましく、80°以上がさらに好ましい。角度θが89.9°を超えると、撮像が困難になる。角度θが89.9°付近では、モールド100の周方向に対する撮像範囲が大きくなり撮像分解能が下がるため、モールド100の撮像視野近傍にスリット等を設置し、撮像分解能の低下を抑えるようにしてもよい。なお、第一の撮像手段は、第一の照射手段によりモールドに照射され、モールド100で反射された光を受光できるように配置されていればよいが、好ましくは、第一の撮像手段の光軸と、第一の照射手段の光軸とは、法線Nに対して対称となるように配置される。
【0024】
(第二の照射手段)
ライン状照明装置20は、モールド100への光の照射範囲の長手方向がモールド100の周方向(回転方向)に直交するように配置される。
ライン状照明装置20としては、高周波点灯の蛍光灯点灯装置、ロッド照明、ライン状に配置された光ファイバ照明、LED照明等が挙げられる。
【0025】
なお、モールド100の周方向(回転方向)と平行な線傷等を検出する場合は、ライン状照明装置20の出射光に指向性および傾きを持たせ、モールド100の周方向(回転方向)と平行な線傷の側面に光が当たるようにし、線傷をより鮮明に際立たせるようにしてもよい。
【0026】
(第二の撮像手段)
モノクロラインCCDカメラ22は、複数のCCD素子が1次元に配置されたカメラであり、ライン状照明装置20から照射され、モールド100の陽極酸化アルミナで反射した光をCCD素子で受光し、画素ごとにモノクロの画像信号を出力するものである。
【0027】
モノクロラインCCDカメラ22は、撮像範囲の長手方向がモールド100の周方向(回転方向)に直交するように配置される。また、モノクロラインCCDカメラ22は、撮像範囲にあるモールド100の陽極酸化アルミナの表面(接平面)の法線Nに対して、モノクロラインCCDカメラ22の光軸Lの角度θが0〜70°となるように配置されることが好ましい。角度θが70°以下であれば、陽極酸化アルミナの異物、傷等の欠陥を検出しやすい。ただし、角度θが0°の場合、モールド100表面に映ったモノクロラインCCDカメラ22自身が画像にも映り込みノイズとなってしまうため、角度θは5〜50°がより好ましい。なお、第二の撮像手段は、第二の照射手段によりモールドに照射され、モールド100で反射された光を受光できるように配置されていればよいが、好ましくは、第二の撮像手段の光軸と、第二の照射手段の光軸とは、法線Nに対して対称となるように配置される。
【0028】
(画像処理手段)
画像処理装置30は、カラーラインCCDカメラ12によって撮像された画像から得られたRGBの画像信号(色情報)に基づいて、陽極酸化アルミナの状態の良否を判定する第一の判定部(図示略)と;モノクロラインCCDカメラ22によって撮像された画像から得られたモノクロの画像信号(輝度情報)に基づいて、陽極酸化アルミナの状態の良否を判定する第二の判定部(図示略)と;各CCDカメラ等と各判定部等との間を電気的に接続するインターフェイス部(図示略)と;色情報や輝度情報、判定に用いる閾値等を記憶する記憶部(図示略)とを具備する。
画像処理装置30は、必要に応じて、RGBの画像信号をHSL表色系の情報に変換する変換部を有していてもよい。この場合、第一の判定部は、HSL表色系の情報に基づいて、陽極酸化アルミナの状態の良否を判定する。
【0029】
なお、第一の判定部、第二の判定部、変換部等は、専用のハードウエアにより実現されるものであってもよく;メモリおよび中央演算装置(CPU)によって構成され、第一の判定部、第二の判定部、変換部等の機能を実現するためのプログラムをメモリにロードして実行することによって、その機能を実現させるものであってもよい。また、第一の判定部、第二の判定部、変換部等は、一つの画像処理装置内に設けられていてもよく、それぞれが個別の画像処理装置内に設けられていてもよい。
また、画像処理装置には、周辺機器として、入力装置、表示装置等が接続されるものとする。ここで、入力装置とは、ディスプレイタッチパネル、スイッチパネル、キーボード等の入力デバイスのことをいい、表示装置とは、CRT、液晶表示装置等のことをいう。
【0030】
(第一の判定部)
第一の判定部にて、カラーラインCCDカメラ12から出力された画素ごとの256階調のRGBの画像信号を取得し、取得した画像信号に基づいて、陽極酸化アルミナの微細凹凸構造の形状(細孔の深さや内径、細孔間のピッチ等)、陽極酸化アルミナの厚さ等が所定の範囲内にあるかを判定する。
また、判定の簡単化の目的で、変換部にてRGBの画像信号をHSL表色系に変換し、階調化された色相(H)のデジタル情報に基づいて、陽極酸化アルミナの微細凹凸構造の形状(細孔の深さや内径、細孔間のピッチ等)、陽極酸化アルミナの厚さ等が所定の範囲内にあるかを判定することも可能である。
【0031】
判定に際して、具体的には、色の階調があらかじめ設定された階調(閾値)の範囲外にあるNG画素を抽出し、所定の領域(例えば2000×4000ピクセル)におけるNG画素の割合が、所定の割合(例えば5%)を超えた場合等において、検査対象のモールド100が不良品であると判定する。
【0032】
例えば、RGBの画像信号にて判定するための閾値は、以下のように決定できる。
陽極酸化アルミナの細孔の深さおよび細孔間のピッチがそれぞれ200nmおよび100nm、100nmおよび100nm、200nmおよび200nmの3種類のモールドA、B、Cを準備する。
【0033】
該3種類のモールドの表面を、図1に示す検査装置のライン状照明装置10(第一の照射手段)とカラーラインCCDカメラ12(第一の撮像手段)とを用いて撮像する。256階調のRGBの画像信号の平均値を表1に示す。
【0034】
【表1】

【0035】
細孔の深さ、細孔間のピッチが違うと、モールドからの反射光の色が異なる。すなわち表1に示すRGBの画像信号の値が異なってくる。
【0036】
細孔間のピッチが同じで、細孔の深さが異なるモールドAとBとを比較すると、G信号で差が49と最も大きい。ここで、例えばモールドAを良品とし色の閾値を40とすると、G信号の差からモールドBを不良品と判定できる。
該例では、細孔の深さの差が100nmであったが、深さの差が100nmより小さい場合は、閾値を小さくすることで判別が可能となる。
【0037】
細孔の深さが同じで、細孔間のピッチが異なるモールドAとCとを比較すると、G信号で差が17と最も大きい。ここで、例えばモールドAを良品とし色の閾値を10とすると、G信号の差からモールドCを不良品と判定できる。
該例では、細孔間のピッチの差が100nmであったが、細孔間のピッチの差が100nmより小さい場合は、閾値を小さくすることで判別が可能となる。
【0038】
細孔の深さ、細孔間のピッチが両方とも異なるが、アスペクト比(細孔の深さ/細孔間のピッチ)が1.0で同じモールドBとCとを比較すると、G信号で差が32と最も大きい。ここで、例えばモールドBを良品とし色の閾値を30とすると、G信号の差からモールドCを不良品と判定できる。
該例では、細孔の深さの差、細孔間のピッチの差がともに100nmであったが、細孔の深さの差、細孔間のピッチの差が100nmより小さい場合は、閾値を小さくすることで判別が可能となる。
【0039】
モールドA、B、Cのそれぞれを識別したい場合は、色の閾値を例えば10とすることによってG信号で判別が可能となる。
なお、RGBの画像信号にて陽極酸化アルミナの微細凹凸構造の形状(細孔の深さや内径、細孔間のピッチ等)、陽極酸化アルミナの厚さ等が所定の範囲内にあるかを判定するための閾値は、R、G、B信号のうち、最も差の大きいG信号に着目して決定したが、閾値の決め方は上述の方法に限定されない。
【0040】
また、HSL表色系にて判定するための閾値は、以下のように決定できる。
陽極酸化アルミナの細孔の深さおよび細孔間のピッチがそれぞれ200nmおよび100nm、100nmおよび100nm、200nmおよび200nmの3種類のモールドA、B、Cを準備する。
【0041】
該3種類のモールドを図1に示す検査装置のライン状照明装置10(第一の照射手段)とカラーラインCCDカメラ12(第一の撮像手段)とを用いて撮像し、変換部にてRGBの画像信号をHSL表色系に変換する。256階調の色相(H)信号の平均値を表2に示す。
【0042】
【表2】

【0043】
細孔の深さ、細孔間のピッチが違うと、モールドからの反射光の色が異なる。すなわち表2に示す色相(H)信号の値が異なってくる。
【0044】
細孔間のピッチが同じで、細孔の深さが異なるモールドAとBとを比較すると、差が10である。ここで、例えばモールドAを良品とし色の閾値を5とすると、モールドBを不良品と判定できる。
該例では、細孔の深さの差が100nmであったが、深さの差が100nmより小さい場合は、閾値を小さくすることで判別が可能となる。
【0045】
細孔の深さが同じで、細孔間のピッチが異なるモールドAとCとを比較すると、差が24である。ここで、例えばモールドAを良品とし色の閾値を20とすると、モールドCを不良品と判定できる。
該例では、細孔間のピッチの差が100nmであったが、細孔間のピッチの差が100nmより小さい場合は、閾値を小さくすることで判別が可能となる。
【0046】
細孔の深さ、細孔間のピッチが両方とも異なるが、アスペクト比(細孔の深さ/細孔間のピッチ)が1.0で同じモールドBとCとを比較すると、差が14である。ここで、例えばモールドBを良品とし色の閾値を10とすると、モールドCを不良品と判定できる。
該例では、細孔の深さの差、細孔間のピッチの差がともに100nmであったが、細孔の深さの差、細孔間のピッチの差が100nmより小さい場合は、閾値を小さくすることで判別が可能となる。
【0047】
モールドA、B、Cのそれぞれを識別したい場合は、色の閾値を例えば5とすることで判別が可能となる。
なお、HSL表色系にて陽極酸化アルミナの微細凹凸構造の形状(細孔の深さや内径、細孔間のピッチ等)、陽極酸化アルミナの厚さ等が所定の範囲内にあるかを判定するための閾値の決め方は上述の方法に限定されない。
【0048】
(第二の判定部)
第二の判定部にて、モノクロラインCCDカメラ22から出力された画素ごとの256階調のモノクロの画像信号を取得し、取得した画像信号に基づいて、陽極酸化アルミナに傷、異物等の欠陥があるかを判定する。
【0049】
判定に際して、具体的には、モノクロの画像信号の階調があらかじめ設定された階調(閾値)の範囲外にあるNG画素を抽出し、所定の領域(例えば2000×4000ピクセル)におけるNG画素の割合が、所定の割合(例えば5%)を超えた場合等において、検査対象のモールド100が不良品であると判定する。
【0050】
(移動手段)
移動手段(図示略)は、モールド100の外周全面を撮像するために、モールド100と、ライン状照明装置10、カラーラインCCDカメラ12、ライン状照明装置20およびモノクロラインCCDカメラ22とを、モールド100の長手方向に沿って相対的に平行移動させるものである。
【0051】
移動手段は、モールド100を固定し、ライン状照明装置10、カラーラインCCDカメラ12、ライン状照明装置20およびモノクロラインCCDカメラ22を、モールド100の長手方向に沿って平行移動させるものであってもよく;ライン状照明装置10、カラーラインCCDカメラ12、ライン状照明装置20およびモノクロラインCCDカメラ22を固定し、モールド100を、カラーラインCCDカメラ12およびモノクロラインCCDカメラ22の撮像範囲の長手方向に沿って平行移動させるものであってもよい。
【0052】
(他の形態)
なお、本発明の陽極酸化アルミナの検査装置は、陽極酸化アルミナに光を照射する照射手段と、照射手段から照射され、陽極酸化アルミナで反射した光を撮像する撮像手段と、撮像手段によって撮像された画像から得られた色情報および輝度情報に基づいて、陽極酸化アルミナの状態の良否を判定する画像処理手段とを有するものであればよく、図示例のものに限定はされない。
【0053】
たとえば、第一の照射手段は、図示例のライン状照明装置10に限定されず、面状照明装置、スポット状照明装置であってもよい。また、照明装置に、拡散板、反射板、シリンドリカルレンズ、集光レンズ等の補助部材を組み合わせてもよい。
【0054】
また、第一の撮像手段は、図示例のカラーラインCCDカメラ12に限定はされず、カラーイメージCCDカメラであってもよく、反射スペクトルを測定する光検出器であってもよい。
【0055】
また、第二の照射手段は、図示例のライン状照明装置20に限定されず、面状照明装置、スポット状照明装置であってもよい。また、照明装置に、拡散板、反射板、シリンドリカルレンズ、集光レンズ等の補助部材を組み合わせてもよい。また、照明装置を複数組み合わせて、複数の方向から照射する構成としてもよい。
また、モノクロラインCCDカメラ22の位置を変更し、カラーラインCCDカメラ12とともに、ライン状照明装置10から照射され、モールド100の陽極酸化アルミナで反射した光を撮像する構成とすることによって、ライン状照明装置20を省略してもよい。
【0056】
また、第二の撮像手段は、図示例のモノクロラインCCDカメラ22に限定されず、カラーラインCCDカメラであってもよい。
また、光軸の角度によっては、第二の撮像手段を省略し、カラーラインCCDカメラ12(第一の撮像手段)のみの構成としてもよい。
また、ラインCCDカメラに限定はされず、イメージCCDカメラであってもよい。
【0057】
また、モールド100の長さがカラーラインCCDカメラ12、モノクロラインCCDカメラ22それぞれの撮像範囲内に収まっている場合は、上述の移動手段を省略してもいい。
また、ライン状照明装置10、カラーラインCCDカメラ12、ライン状照明装置20およびモノクロラインCCDカメラ22をモールド100の長手方向に複数台並べて一度に外周全面を撮像する構成としてもよい。
【0058】
また、検査対象のモールド100が不良品であると判定する方法も、上述の方法に限定されない。例えば、上述のようにNG画素領域の割合で判定するのではなく、正常部と比較して階調差が大きい領域はサイズが小さくても一つの欠陥とカウントし、階調差が小さくても領域が大きい場合も欠陥とカウントし、そのカウントされた欠陥の総数により、良否を判定するようにしてもよい。
【0059】
また、画像処理装置30においては、画像信号を256階調の画像信号として処理しているが、画像信号から正常部と異常部を判別できればよいため、画像信号は、512階調であってもよく、1024階調であってもよく、アナログ信号であってもよい。
また、第一の判定部は、第一の撮像手段が光検出器である場合、光検出器にて測定された反射スペクトルから良品、不良品を判定するものであってもよい。
また、反射スペクトルは可視波長(例えば380nm〜780nm)の範囲で一定間隔(例えば1nmおき)に測定したものでもよく、可視波長を越える範囲で測定したものもよく、また局所的な範囲の波長(例えば700nm近傍)にて測定したものでもよく、複数の局所的な範囲の波長(例えば400nm近傍と700nm近傍)にて測定した組み合わせのものでもよい。
【0060】
<陽極酸化アルミナの検査方法>
図1に示す検査装置を用いた陽極酸化アルミナの検査方法について説明する。
【0061】
まず、陽極酸化アルミナの細孔の深さおよび細孔間のピッチがそれぞれ200nmおよび100nmとなるような条件にてロール状のアルミニウム基材の表面の陽極酸化を行い、モールド100を得る。
【0062】
モールド100を回転手段に取り付け、回転するロール状のモールド100の陽極酸化アルミナの表面に、ライン状照明装置10から光を照射し、陽極酸化アルミナからの反射光をカラーラインCCDカメラ12にて撮像する。
【0063】
また、回転するロール状のモールド100の陽極酸化アルミナの表面に、ライン状照明装置20から光を照射し、陽極酸化アルミナからの反射光をモノクロラインCCDカメラ22にて撮像する。
【0064】
必要に応じてライン状照明装置10、カラーラインCCDカメラ12、ライン状照明装置20およびモノクロラインCCDカメラ22を、モールド100の長手方向に沿って平行移動させ、陽極酸化アルミナの外周全面を撮像する。
【0065】
カラーラインCCDカメラ12から出力された、モールド100の陽極酸化アルミナの外周全面分の画像について、画像処理装置30において、画素ごとにRGBの画像信号を必要に応じてHSL表色系に変換し、256階調で表される色(色相(H))のデジタル情報を得る。さらに、モノクロラインCCDカメラ22から出力された、モールド100の陽極酸化アルミナの外周全面分の画像について、画像処理装置30において、画素ごとにモノクロの画像信号を256階調のデジタル情報として得る。
【0066】
画像処理装置30にて、カラーラインCCDカメラ12とモノクロラインCCDカメラ22のそれぞれから得た画像信号において、階調があらかじめ設定された範囲外にあるNG画素を抽出し、所定の領域(例えば2000×4000ピクセル)におけるNG画素の割合が、所定の割合(例えば5%)を超えた場合等において、検査対象のモールド100が不良品であると判定する。
【0067】
上述の方法では、モールド100の外周全面分の画像を一度に処理しているが、画像が大きくて処理に負荷がかかる場合は、複数の小領域に分けて処理する方法でもよい。
【0068】
(作用効果)
以上説明した陽極酸化アルミナの検査装置および検査方法にあっては、陽極酸化アルミナの微細凹凸構造の形状(細孔の深さや内径、細孔間のピッチ等)、陽極酸化アルミナの厚さ等に応じて、陽極酸化アルミナで反射する光の色が変化することを利用して、陽極酸化アルミナの微細凹凸構造が設計どおりに形成されているかを見積もることができる。また、陽極酸化アルミナの傷、異物等の欠陥も合わせて検出できる。そのため、陽極酸化アルミナの微細凹凸構造の形状や陽極酸化アルミナの厚さと、陽極酸化アルミナの表面の欠陥とを簡易に検査できる。
【0069】
また、陽極酸化アルミナの微細凹凸構造の形状(細孔の深さや内径、細孔間のピッチ等)、陽極酸化アルミナの厚さ等の異常と、陽極酸化アルミナの傷、異物等の欠陥から、陽極酸化アルミナに異常が発生した工程や原因を早期に究明できる。また、陽極酸化アルミナの微細凹凸構造の形状や陽極酸化アルミナの厚さの検査と、陽極酸化アルミナの傷、異物等の欠陥の検査とを別々に行う場合と比較して、陽極酸化アルミナを表面に有する部材(モールド)の載せかえる工数を軽減できるため、検査時間を短縮でき、載せかえによる傷、異物付着のリスクを軽減できる。
【0070】
<陽極酸化アルミナを表面に有する部材の製造方法>
本発明の、陽極酸化アルミナを表面に有する部材の製造方法は、アルミニウム基材の表面を陽極酸化することによって、陽極酸化アルミナを表面に有する部材を得る工程(陽極酸化工程)と、本発明の陽極酸化アルミナの検査方法によって、前記陽極酸化アルミナを検査する工程(検査工程)と、必要に応じて陽極酸化アルミナを修復する工程(修復工程)とを有する。
以下、陽極酸化アルミナを表面に有する部材の一例である、陽極酸化アルミナを表面に有するモールドの製造方法について説明する。
【0071】
(陽極酸化工程)
陽極酸化工程は、下記の工程(a)〜(f)を順に行う工程であることが好ましい。
第1の酸化皮膜形成工程(a):
鏡面化されたアルミニウム基材の表面を電解液中、定電圧下で陽極酸化して、表面に酸化皮膜を形成する(以下、工程(a)とも記す。)。
酸化皮膜除去工程(b):
酸化皮膜を除去し、陽極酸化の細孔発生点をアルミニウム基材の表面に形成する(以下、工程(b)とも記す。)。
第2の酸化皮膜形成工程(c):
細孔発生点が形成されたアルミニウム基材の表面を電解液中、定電圧下で再度陽極酸化して、細孔発生点に対応した細孔を有する酸化皮膜を表面に形成する(以下、工程(c)とも記す。)。
孔径拡大処理工程(d):
細孔の径を拡大させる(以下、工程(d)とも記す。)。
酸化皮膜成長工程(e):
細孔の径が拡大された酸化皮膜を有するアルミニウム基材の表面を電解液中、定電圧下で再度陽極酸化する(以下、工程(e)とも記す。)。
繰り返し工程(f):
必要に応じて、孔径拡大処理工程(d)と酸化皮膜成長工程(e)とを繰り返し行う(以下、工程(f)とも記す。)。
【0072】
工程(a)〜(f)を有する方法によれば、鏡面化されたアルミニウム基材の表面に、開口部から深さ方向に徐々に径が縮小するテーパ形状の細孔が周期的に形成され、その結果、複数の細孔を有する陽極酸化アルミナが表面に形成されたモールドを得ることができる。
【0073】
工程(a)の前に、アルミニウム基材の表面の酸化皮膜を除去する前処理を行ってもよい。酸化皮膜を除去する方法としてはクロム酸/リン酸混合液に浸漬する方法等が挙げられる。
また、細孔の配列の規則性はやや低下するが、モールドの表面を転写した材料の用途によっては工程(a)を行わず、工程(c)から行ってもよい。
以下、工程(a)〜(f)を詳細に説明する。
【0074】
工程(a):
第1の酸化皮膜形成工程(a)では、鏡面化されたアルミニウム基材の表面を電解液中、定電圧下で陽極酸化し、図2に示すように、アルミニウム基材40の表面に、細孔41を有する酸化皮膜42を形成する。
電解液としては、酸性電解液、アルカリ性電解液が挙げられ、酸性電解液が好ましい。
酸性電解液としては、シュウ酸、硫酸、これらの混合物等が挙げられる。
【0075】
シュウ酸を電解液として用いる場合、シュウ酸の濃度は、0.7M以下が好ましい。シュウ酸の濃度が0.7Mを超えると、陽極酸化時の電流値が高くなりすぎて酸化皮膜の表面が粗くなることがある。
また、陽極酸化時の電圧を30〜60Vとすることによって、ピッチが100nm程度の規則性の高い細孔を有する陽極酸化アルミナが表面に形成されたモールドを得ることができる。陽極酸化時の電圧がこの範囲より高くても低くても規則性が低下する傾向にあり、ピッチが可視光の波長より大きくなることがある。
電解液の温度は、60℃以下が好ましく、45℃以下がより好ましい。電解液の温度が60℃を超えると、いわゆる「ヤケ」といわれる現象が起こる傾向にあり、細孔が壊れたり、表面が溶けて細孔の規則性が乱れたりすることがある。
【0076】
硫酸を電解液として用いる場合、硫酸の濃度は0.7M以下が好ましい。硫酸の濃度が0.7Mを超えると、陽極酸化時の電流値が高くなりすぎて定電圧を維持できなくなることがある。
また、陽極酸化時の電圧を25〜30Vとすることによって、ピッチが63nm程度の規則性の高い細孔を有する陽極酸化アルミナが表面に形成されたモールドを得ることができる。陽極酸化時の電圧がこの範囲より高くても低くても規則性が低下する傾向があり、ピッチが可視光の波長より大きくなることがある。
電解液の温度は、30℃以下が好ましく、20℃以下がより好ましい。電解液の温度が30℃を超えると、いわゆる「ヤケ」といわれる現象が起こる傾向にあり、細孔が壊れたり、表面が溶けて細孔の規則性が乱れたりすることがある。
【0077】
工程(a)では、陽極酸化を長時間施すことで形成される酸化皮膜が厚くなり、細孔の配列の規則性を向上させることができるが、その際、酸化皮膜の厚さを30μm以下とすることにより、結晶粒界によるマクロな凹凸がより抑制され、光学用途の物品の製造により適したモールドを得ることができる。酸化皮膜の厚さは、1〜10μmがより好ましく、1〜3μmがさらに好ましい。酸化皮膜の厚さは、電界放出形走査電子顕微鏡等で観察できる。
【0078】
工程(b):
工程(a)の後、工程(a)により形成された酸化皮膜42を除去することにより、図2に示すように、除去された酸化皮膜42の底部(バリア層と呼ばれる)に対応する周期的な窪み、すなわち、細孔発生点43を形成する。
形成された酸化皮膜42を一旦除去し、陽極酸化の細孔発生点43を形成することで、最終的に形成される細孔の規則性を向上させることができる(例えば、益田、「応用物理」、2000年、第69巻、第5号、p.558参照。)。
【0079】
酸化皮膜42を除去する方法としては、アルミニウムを溶解せず、アルミナを選択的に溶解する溶液によって除去する方法が挙げられる。このような溶液としては、例えば、クロム酸/リン酸混合液等が挙げられる。
【0080】
工程(c):
細孔発生点43が形成されたアルミニウム基材40を電解液中、定電圧下で再度陽極酸化し、再び酸化皮膜を形成する。
工程(c)では、工程(a)と同様の条件(電解液濃度、電解液温度、化成電圧等)下で陽極酸化すればよい。
これにより、図2に示すように、円柱状の細孔44が形成された酸化皮膜45を形成できる。工程(c)においても、陽極酸化を長時間施すほど、深い細孔を得ることができるが、例えば反射防止物品などの光学用の物品を製造するためのモールドを製造する場合には、ここでは0.01〜0.5μm程度の酸化皮膜を形成すればよく、工程(a)で形成するほどの厚さの酸化皮膜を形成する必要はない。
【0081】
工程(d):
工程(c)の後、工程(c)で形成された細孔44の径を拡大させる孔径拡大処理を行って、図2に示すように、細孔44の径を拡径する。
孔径拡大処理の具体的方法としては、アルミナを溶解する溶液に浸漬して、工程(c)で形成された細孔の径をエッチングにより拡大させる方法が挙げられる。このような溶液としては、例えば、5質量%程度のリン酸水溶液等が挙げられる。工程(d)の時間を長くするほど、細孔の径は大きくなる。
【0082】
工程(e):
図2に示すように、再度、陽極酸化すると、円柱状の細孔44の底部から下に延びる、直径の小さい円柱状の細孔44がさらに形成される。
陽極酸化は、工程(a)と同様な条件で行えばよい。陽極酸化の時間を長くするほど深い細孔を得ることができる。
【0083】
工程(f):
工程(d)と工程(e)を繰り返す、繰り返し工程(f)によって、図2に示すように、細孔44の形状を開口部から深さ方向に徐々に径が縮小するテーパ形状にでき、その結果、周期的な複数の細孔を有する陽極酸化アルミナが表面に形成されたモールド100を得ることができる。最後は工程(d)で終わることが好ましい。
【0084】
工程(d)と工程(e)の条件、例えば、陽極酸化の時間および孔径拡大処理の時間を適宜設定することによって、様々な形状の細孔を形成することができる。よって、モールドから製造しようとする物品の用途等に応じて、これら条件を適宜設定すればよい。また、このモールドが反射防止膜等の反射防止物品を製造するものである場合には、このように条件を適宜設定することによって、細孔のピッチや深さを任意に変更できるため、最適な屈折率変化を設計することも可能となる。
【0085】
このようにして得られたモールドは、多数の周期的な細孔が形成された結果、表面に微細凹凸構造を有するものとなる。そして、この微細凹凸構造における細孔のピッチが可視光の波長以下、すなわち400nm以下であると、いわゆるモスアイ構造となる。
ピッチは、微細凹凸構造の凹部(細孔)の中心からこれに隣接する凹部(細孔)の中心までの距離である。
ピッチが400nmより大きいと可視光の散乱が起こるため、十分な反射防止機能は発現せず、反射防止膜等の反射防止物品の製造には適さない。
【0086】
モールドが反射防止膜等の反射防止物品を製造するものである場合には、細孔のピッチが可視光の波長以下であるとともに、細孔の深さは、50nm以上であることが好ましく、100nm以上であることがより好ましい。
深さは、微細凹凸構造の凹部(細孔)の開口部から最深部までの距離である。
細孔の深さが50nm以上であれば、モールドの表面の転写によって形成された光学用途の物品の表面、すなわち転写面の反射率が低下する。
【0087】
また、モールドの細孔のアスペクト比(深さ/ピッチ)は、1.0〜4.0が好ましく、1.3〜3.5が好ましく、1.8〜3.5がさらに好ましく、2.0〜3.0が最も好ましい。アスペクト比が1.0以上であれば、反射率が低い転写面を形成でき、その入射角依存性や波長依存性も十分に小さくなる。アスペクト比が4.0より大きいと転写面の機械的強度が低下する傾向がある。
【0088】
モールドの形状は、平板でもあってもよく、ロール状であってもよい。
モールドの微細凹凸構造が形成された表面は、離型が容易になるように、離型処理が施されていてもよい。離型処理の方法としては、例えば、シリコーン系ポリマーやフッ素ポリマーをコーティングする方法、フッ素化合物を蒸着する方法、フッ素系またはフッ素シリコーン系のシラン化合物をコーティングする方法等が挙げられる。
【0089】
(検査工程)
得られたモールドについて、図1に示した検査装置によって、陽極酸化アルミナからの反射光をカラーラインCCDカメラ12、モノクロラインCCDカメラ22にて撮像する。
【0090】
カラーラインCCDカメラ12から出力された、モールド100の陽極酸化アルミナの画像について、画像処理装置30において、画素ごとにRGBの画像信号を必要に応じてHSL表色系に変換し、色(色相(H))の情報を得る。モノクロラインCCDカメラ22から出力された、モールド100の陽極酸化アルミナの画像について、画像処理装置30において、画素ごとに輝度情報を得る。
取得した色情報と輝度情報からモールド100の良否を判定し、良品であれば微細凹凸構造を表面に有する物品の製造工程等へとモールド100を進める。
【0091】
(修復工程)
不良品ではあるが、傷等の欠陥がなく、モールド全体の微細凹凸構造の異常(細孔の深さが全体的に深いまたは浅い、細孔のピッチが全体的に広いまたは狭い等)のみであれば、モールド100に対して前記工程(a)〜(f)のいずれかを再度実施し、陽極酸化アルミナを修復する。モールド全体ではなく部分的に微細凹凸構造が異常であったり、傷等の欠陥があったりして、前記工程(a)〜(f)のいずれかの実施だけでは修復できないような場合は、陽極酸化アルミナをアルミニウム基材の一部ごと除去し、前記工程(a)〜(f)を最初から実施してもよい。また、部分的な微細凹凸構造の異常であっても、その異常が異物付着によって細孔が埋まった欠陥である場合は、クリーニング等による異物除去を行うことによって微細凹凸構造の異常を修復してもよい。モールド100の修復後、再度検査を行い、モールド100が良品となるまで修復工程と検査工程を繰り返し実施する。
【0092】
(作用効果)
以上説明した本発明の、陽極酸化アルミナを表面に有する部材の製造方法にあっては、本発明の陽極酸化アルミナの検査方法によって、前記陽極酸化アルミナを検査する工程を有するため、陽極酸化アルミナの微細凹凸構造の形状や陽極酸化アルミナの厚さのムラが抑えられ、かつ陽極酸化アルミナの表面の欠陥が抑えられた、陽極酸化アルミナを表面に有する部材を安定して製造できる。
【実施例】
【0093】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0094】
(モールドa)
純度:99.99%のアルミニウムインゴットを外径:200mm、内径:155mm、長さ:350mmに切断した圧延痕のない円筒状のアルミニウム基材に、羽布研磨処理を施した後、これを過塩素酸/エタノール混合溶液中(体積比:1/4)で電解研磨し、鏡面化した。
【0095】
工程(a):
該アルミニウム基材について、0.3Mシュウ酸水溶液中で、直流:40V、温度:16℃の条件で30分間陽極酸化を行った。
工程(b):
厚さ3μmの酸化皮膜が形成されたアルミニウム基材を、6質量%リン酸/1.8質量%クロム酸混合水溶液に浸漬して、酸化皮膜を除去した。
工程(c):
該アルミニウム基材について、0.3Mシュウ酸水溶液中で、直流:40V、温度:16℃の条件で30秒間陽極酸化を行った。この際、シュウ酸水溶液中の温度にムラが生じるように、シュウ酸水溶液の撹拌を止めた。
【0096】
工程(d):
酸化皮膜が形成されたアルミニウム基材を、30℃の5質量%リン酸水溶液に8分間浸漬して、細孔径拡大処理を行った。
工程(e):
該アルミニウム基材について、0.3Mシュウ酸水溶液中で、直流:40V、温度:16℃の条件で30秒間陽極酸化を行った。この際、シュウ酸水溶液中の温度にムラが生じるように、シュウ酸水溶液の撹拌を止めた。
工程(f):
前記工程(d)および工程(e)を合計で4回繰り返し、最後に工程(d)を行って、設計上では平均ピッチ:100nm、深さ:200nmの略円錐形状の細孔を有する陽極酸化アルミナが表面に形成されたロール状のモールドaを得た。
【0097】
(モールドb)
前記工程(c)および工程(e)において、シュウ酸水溶液中の温度にムラが生じないように、シュウ酸水溶液の撹拌を実施した以外は、モールドaの製造と同様にして、平均ピッチ:100nm、深さ:200nmの略円錐形状の細孔を有する陽極酸化アルミナが表面に形成されたロール状のモールドbを得た。
【0098】
〔実験例1〕
図1に示す検査装置を用い、まずは、ライン状照明装置10(第一の照射手段)とカラーラインCCDカメラ12(第一の撮像手段)とによって、陽極酸化アルミナの微細凹凸構造の検査を実施した。
モールド100は、モールドaとした。
ライン状照明装置10としては、Panasonic社製の蛍光光源FL20SS・EX−N/18を40kHzにて用いた。
カラーラインCCDカメラ12としては、JAI社製のCV−L107CL−3CCDを用いた。
画像処理装置30としては、Matrox社製のMIL9を用いた。
【0099】
撮像範囲にあるモールド100の陽極酸化アルミナの表面(接平面)の法線Nに対するカラーラインCCDカメラ12の光軸Lの角度θを、5°から85°の間で変えながら、カラーラインCCDカメラ12にてモールド100の表面を撮像した。
モールド100とカラーラインCCDカメラ12との距離は、約50cmとした。
ライン状照明装置10は、モールド100の表面の反射光がカラーラインCCDカメラ12に入るように配置した。
【0100】
図3は、光軸Lの角度θ=85°の条件にて、モールド100の表面の1周分を撮像した画像の一部分を切り出し、カラーをモノクロに変換した画像である。
陽極酸化アルミナの微細凹凸構造の異常部101が、画像中央付近に黒く撮像されている。
【0101】
光軸Lの角度θを5°〜85°の間にて10°おきに変化させて撮像した画像を画像処理装置30にてRGBの画像信号から色相(H)信号に変換した。図3の異常部101を含むライン102の各画素における正常部に対する色相差をプロットしたグラフを、図4〜12に示す。
なお、色相(H)は通常、0〜360°で表現するが、画像処理装置30内では0〜360°を0〜255の8bitデータで表現している。図4〜12の各グラフの縦軸は、正常部の色相(H)を基準とし、異常部との色相(H)との差分を取った値である。また、横軸は画素である。
【0102】
例えば、閾値を色相差1.0以上とした場合、図4〜7の光軸Lの角度θ=5°〜35°では、異常部を検出できない。光軸Lの角度θ=45°から異常部を検出でき、光軸Lの角度θがさらに大きくなるにつれて、検出感度が高くなる。
【0103】
光軸Lの角度θを5°〜85°の間にて5°おきに変化させて撮像した画像を画像処理装置30にてRGBの画像信号から色相(H)信号に変換した。各画像にて正常部と異常部との色相差の最大値をプロットしたものを図13に示す。
光軸Lの角度θ=65°では45°のときよりも正常部と異常部の色相差が大きいため感度よく検出でき、光軸Lの角度θ=80°ではさらに検出感度が高くなり、光軸Lの角度θ=85°ではさらに感度よく検出できる。
【0104】
実験例1の結果から、撮像範囲にあるモールド100の陽極酸化アルミナの表面(接平面)の法線Nに対するカラーラインCCDカメラ12の光軸Lの角度θは、45°以上が好ましく、65°以上がより好ましく、80°以上がさらに好ましく、85°以上が特に好ましいことがわかる。
【0105】
〔実施例1〕
図1に示す検査装置を用い、上述の検査方法にてモールドの陽極酸化アルミナの微細凹凸構造の検査と合わせて傷および異物の検査を実施した。
モールド100は、モールドaと同様の手順にて作製した。
ライン状照明装置10、カラーラインCCDカメラ12は、実験例1と同じである。
ライン状照明装置20としては、ヴイ・エス・テクノロジー社製のLB−LS300/10WHを用いた。
モノクロラインCCDカメラ22としては、エクセル社製のTI5150DCLを用いた。
【0106】
第一の撮像手段であるカラーラインCCDカメラ12は、撮像範囲にあるモールド100の陽極酸化アルミナの表面(接平面)の法線Nに対して、カラーラインCCDカメラ12の光軸Lの角度θが80°となるように配置した。
モールド100とカラーラインCCDカメラ12との距離は、約50cmとした。
第一の照射手段であるライン状照明装置10は、モールド100の表面の反射光がカラーラインCCDカメラ12に入るように配置した。
【0107】
第二の撮像手段であるモノクロラインCCDカメラ22は、撮像範囲にあるモールド100の陽極酸化アルミナの表面(接平面)の法線Nに対して、モノクロラインCCDカメラ22の光軸Lの角度θが10°となるように配置した。
モールド100とモノクロラインCCDカメラ22との距離は、約50cmとした。
第二の照射手段であるライン状照明装置20は、撮像範囲にあるモールド100の陽極酸化アルミナの表面(接平面)の法線Nに対して、ライン状照明装置20の光軸Lの角度θが45°となるように配置した。
【0108】
実施例1において、モールド100の長さは第一および第二の撮像手段の撮像範囲に収まっているため、第一の撮像手段、第一の照射手段、第二の撮像手段および第二の照射手段を平行移動させる移動手段は省略した。
【0109】
図14は第一の照射手段と第一の撮像手段とを用いて、モールド100の表面の1周分を撮像した画像の一部分を切り出し、カラーをモノクロに変換した画像である。
陽極酸化アルミナの微細凹凸構造の異常部210が、画像上部中央に正常部よりも白く撮像されている。
【0110】
図15は第二の照射手段と第二の撮像手段とを用いて、モールド100の表面の1周分を撮像したモノクロ画像の一部分を切り出したものであり、切り出した位置は図14と同じである。
モールド100の表面の欠陥211、212、213が白い輝点として撮像されている。
【0111】
欠陥211、213は線状であるため、傷欠陥であることが画像から判断できる。
陽極酸化アルミナの微細凹凸構造の異常部210は、単体で存在していた場合、陽極酸化工程の際に発生したと考えられる。
また、欠陥212は、単体で存在していた場合、陽極酸化工程以外で傷または異物が付くことによって発生したと考えられる。
【0112】
ここで、欠陥212は、陽極酸化アルミナの微細凹凸構造の異常部210のほぼ中央に位置しており、欠陥212を中心に油脂等の液状物が広がって細孔が埋まり、陽極酸化アルミナの微細凹凸構造の異常部210が引き起こされたと推定するのが妥当と思われる。
よって、欠陥212は、陽極酸化工程ではなく、後工程で異物が付着したために発生したものであり、後工程のクリーン化が重要であるとフィードバックすることができた。
ちなみに、欠陥212を拡大観察した所、異物の付着が視認できた。
【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明の陽極酸化アルミナの検査装置および検査方法は、アルミニム基材の表面を陽極酸化することによってピッチが可視光の波長以下である微細凹凸構造を有する陽極酸化アルミナを形成する、モールドの製造に有用である。
【符号の説明】
【0114】
10 ライン状照明装置(第一の照射手段)
12 カラーラインCCDカメラ(第一の撮像手段)
20 ライン状照明装置(第二の照射手段)
22 モノクロラインCCDカメラ(第二の撮像手段)
30 画像処理装置(画像処理手段)
40 アルミニウム基材
45 酸化皮膜(陽極酸化アルミナ)
100 モールド(部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極酸化アルミナに光を照射する照射手段と、
照射手段から照射され、陽極酸化アルミナで反射した光を撮像する撮像手段と、
撮像手段によって撮像された画像から得られた色情報および輝度情報に基づいて、陽極酸化アルミナの状態の良否を判定する画像処理手段と
を有する、陽極酸化アルミナの検査装置。
【請求項2】
前記照射手段として、第一の照射手段と、第二の照射手段とを有し、
前記撮像手段として、第一の照射手段から照射され、陽極酸化アルミナで反射した光を撮像する第一の撮像手段と、第二の照射手段から照射され、陽極酸化アルミナで反射した光を撮像する第二の撮像手段とを有し、
画像処理手段が、第一の撮像手段によって撮像された画像から得られた色情報に基づいて、陽極酸化アルミナの状態の良否を判定する第一の判定部と、第二の撮像手段によって撮像された画像から得られた輝度情報に基づいて、陽極酸化アルミナの状態の良否を判定する第二の判定部とを有する、請求項1に記載の陽極酸化アルミナの検査装置。
【請求項3】
前記第一の撮像手段が、陽極酸化アルミナの表面の法線に対して、第一の撮像手段の光軸の角度が45〜89.9°となるように配置された、請求項2に記載の陽極酸化アルミナの検査装置。
【請求項4】
前記第二の撮像手段が、陽極酸化アルミナの表面の法線に対して、第二の撮像手段の光軸の角度が0〜70°となるように配置された、請求項2または3に記載の陽極酸化アルミナの検査装置。
【請求項5】
前記第一の撮像手段が、前記色情報としてRGBの画像信号を出力するものであり、
前記第一の判定部が、RGBの画像信号に基づいて、陽極酸化アルミナの状態の良否を判定するものである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の陽極酸化アルミナの検査装置。
【請求項6】
前記第一の撮像手段が、前記色情報としてRGBの画像信号を出力するものであり、
前記画像処理手段が、RGBの画像信号をHSL表色系の情報に変換する変換部を有し、
前記第一の判定部が、HSL表色系の情報に基づいて、陽極酸化アルミナの状態の良否を判定するものである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の陽極酸化アルミナの検査装置。
【請求項7】
陽極酸化アルミナに照射手段から光を照射し、
照射手段から照射され、陽極酸化アルミナで反射した光を撮像手段にて撮像し、
撮像手段によって撮像された画像から得られた色情報および輝度情報に基づいて、陽極酸化アルミナの状態の良否を判定する、陽極酸化アルミナの検査方法。
【請求項8】
陽極酸化アルミナに第一の照射手段から光を照射し、
第一の照射手段から照射され、陽極酸化アルミナで反射した光を第一の撮像手段にて撮像し、
第一の撮像手段によって撮像された画像から得られた色情報に基づいて、陽極酸化アルミナの状態の良否を判定し、
陽極酸化アルミナに第二の照射手段から光を照射し、
第二の照射手段から照射され、陽極酸化アルミナで反射した光を第二の撮像手段にて撮像し、
第二の撮像手段によって撮像された画像から得られた輝度情報に基づいて、陽極酸化アルミナの状態の良否を判定する、請求項7に記載の陽極酸化アルミナの検査方法。
【請求項9】
前記第一の撮像手段が、陽極酸化アルミナの表面の法線に対して、第一の撮像手段の光軸の角度が45〜89.9°となるように配置された、請求項8に記載の陽極酸化アルミナの検査方法。
【請求項10】
前記第二の撮像手段が、陽極酸化アルミナの表面の法線に対して、第二の撮像手段の光軸の角度が0〜70°となるように配置された、請求項8または9に記載の陽極酸化アルミナの検査方法。
【請求項11】
前記第一の撮像手段によって撮像された画像から色情報としてRGBの画像信号を得て、
該RGBの画像信号に基づいて、陽極酸化アルミナの状態の良否を判定する、請求項7〜10のいずれか一項に記載の陽極酸化アルミナの検査方法。
【請求項12】
前記第一の撮像手段によって撮像された画像から色情報としてRGBの画像信号を得て、
該RGBの画像信号をHSL表色系の情報に変換し、
該HSL表色系の情報に基づいて、陽極酸化アルミナの状態の良否を判定する、請求項7〜10のいずれか一項に記載の陽極酸化アルミナの検査方法。
【請求項13】
アルミニウム基材の表面を陽極酸化することによって、陽極酸化アルミナを表面に有する部材を得る工程と、
請求項7〜12のいずれか一項に記載の陽極酸化アルミナの検査方法によって、前記陽極酸化アルミナを検査する工程と
を有する、陽極酸化アルミナを表面に有する部材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図3】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−255652(P2012−255652A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−127287(P2011−127287)
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】