説明

集積半導体基板構造の製造方法

【課題】GaN素子およびCMOS素子の両方を備えた集積回路を製造するための改善した方法を提供する。
【解決手段】集積半導体基板構造100は、基板11と、GaNヘテロ構造20と、半導体基板層30とを備える。GaNヘテロ構造20は、第1素子エリアに存在し、少なくとも部分的に保護層8で覆われている。半導体基板層30は、CMOS素子の区画のための第2素子エリアに存在する。GaNヘテロ構造20および半導体基板層30の少なくとも1つが、基板11の少なくとも1つの溝内をエピタキシャル成長して形成され、GaNヘテロ構造20および半導体基板層30は横方向に並置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、GaNベース素子の区画(definition)のための第1素子エリアおよびCMOS素子の区画のための第2素子エリアが設けられた集積半導体基板構造を製造する方法に関する。本発明はまた、こうして形成された集積半導体基板構造に関する。本発明はさらに、集積半導体基板構造を備えた集積回路を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
GaNは、電力応用や光学応用などの用途で有望な候補である。その例は、発光ダイオード、電力増幅器、電力コンバータの製造を含む。このタイプの素子を制御するために、典型的には制御エレクトロニクスが必要になる。GaN素子の高い品質を活用し、機能性および小型サイズの要求を満たすために、制御エレクトロニクスおよびGaN素子の集積化が有益と考えられる。こうした集積化は、GaNヘテロ構造の成長のためにシリコン基板を使用する先行開発に適している。幾つかの基板および、基板の幾つかの結晶配向が用いられている。特に、(111)配向を持つシリコン基板が、興味深い候補であることが判明している。Si(111)上のGaN成長における大きな挑戦は、面内熱膨張係数の大きな不整合であった(GaNは5.59×10−6−1、Siは2.6×10−6−1)。このことは、ヘテロ構造を成長温度から室温へ冷却する際に、GaN層でクラックを生じさせる傾向がある。この問題は、低温AlNバッファ層または中間層を用いることによってかなり低減した。
【0003】
最近、SOI基板の使用が有益な結果をもたらすことが判明した。素子層の(001)配向および(111)配向の両方を用いた実験を行った。文献(Zhou, Applied Physics Letters 86 (2005), 081912)は、(111)配向を持つSOI基板構造の素子層上のGaN成長について報告した。SOI基板は、SIMOX(酸素注入による分離)技術によって市販されている。シリコン素子層およびSiO埋め込み誘電体層の厚さは、それぞれ200nmと360nmであった。
【0004】
GaN層は、このSOI基板上に、バッファ層無しで、MOCVD反応装置内でHをキャリアガスとして用いて直接成長した。GaN堆積の前に、基板を1100℃に10分間、H環境下で加熱して、基板表面から自然酸化物を除去した。続いて、GaN層を1100℃で堆積した。GaN層の結晶品質は、Si素子層によって直接影響を受けているように思われる。
【0005】
米国特許公開US20060284247号は、シリコンCMOS回路を備えたAlGaN/GaN増幅器の集積化を開示する。アモルファスまたは多結晶のシリコンの平坦化層および単結晶シリコンの薄い層をSiC基板上に形成した。その後、AlGaNおよびGaNを含むGaNヘテロ構造をエピタキシャル成長させた。シリコン窒化物またはシリコン酸化物の保護層をGaNヘテロ構造の上に堆積した。これに続いて、シリコン層が保護層に、特に、その上部層がパッシベーション層と接合したSOI基板の形態で接合される。その後、SOI基板を薄くして、そのハンドリングウエハおよびその埋め込み酸化物を除去した。得られたシリコン素子層は、典型的には50nm〜200nmの厚さを有する。GaN素子の区画のための第1素子エリアを規定し、シリコンは、これらのエリアでエッチング除去した。これに続いて、CMOS素子がシリコン層上の第2素子エリアに製作され、GaN素子がGaNヘテロ構造上に製作される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
公知の方法の不具合は、接合プロセスが繊細であり、強い接合が得られないことである。公知の方法は、好ましくは、接合界面において溝を1つ又はそれ以上の層に付与して、残留ガスを界面から除去する。これらの溝は、特にウエハの中心で必要となり、さもなければ接合は充分に良好にならない。溝は、典型的には1〜2mmのピッチである。このことは、ピッチが最終チップ内部に存在することになり、利用可能な表面エリアの量が減少することを意味する。
【0007】
さらに、接合プロセスを完了させるアニール工程が必要である。このアニール工程は、4インチウエハで175℃であり、24〜100時間を要する。1150℃に達するより高い温度が使用できる。さらに、こうした高温は、基板構造の完成後にCMOS素子の区画のためにも必要である。高い温度は、冷却の際に温度差を生じさせ、熱応力をもたらす。この熱応力は、基板サイズの増加とともにより飛躍的になる。先行技術で使用した4インチ基板は、もはやCMOSの産業プロセスの代表するものでなく、産業プロセスは8インチおよび12インチ直径の基板サイズを使用している。
【0008】
シリコンのGaNへの拡散は、こうした高温工程の他の結果でもある。シリコンは、典型的には、接合層として典型的に用いられるシリコン酸化物から拡散する。こうしたシリコンの拡散は、GaN層の材料特性や、移動度などの素子特性を劣化させる傾向がある。
【0009】
要するに、公知の方法および素子は、幾つかの不具合があり、産業的に実行可能なものではない。
【0010】
従って、第1の目的は、シリコン及び/又は酸化物粒子のGaN層への拡散に対して敏感でない、改善した素子を提供することである。
【0011】
本発明の第2の目的は、GaN素子が第1素子エリアに区画でき、CMOS回路が第2素子エリアに区画できる集積半導体基板構造を製造するための改善した方法を提供することである。
【0012】
更なる目的は、GaN素子およびCMOS素子の両方を備えた集積回路を製造するための改善した方法を提供し、改善した素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(発明の要旨)
本発明の第1態様によれば、第1の目的は、請求項1記載の発明に従って達成される。集積半導体基板構造は、基板と、GaNベース素子の区画のための第1素子エリアに存在し、少なくとも部分的に保護層で覆われているGaNヘテロ構造と、CMOS素子の区画のための第2素子エリアに存在する半導体基板層とを備える。ここで、GaNヘテロ構造および半導体基板層の少なくとも1つが、基板の少なくとも1つの溝(trench)に設けられ、GaNヘテロ構造および半導体基板層は、横方向に並置(juxtapose)される。このことは、集積半導体基板構造に少なくとも実質的に平坦化した表面が設けられるという利点を有する。
【0014】
本発明に従えば、半導体層は、GaNヘテロ構造に対して並置される。その結果、得られた層スタックは実質的に平面的(planar)であり、このことは、産業的に実行可能な材料およびプロセス、特に従来のCMOSプロセスから知られたこうしたプロセスに基づいて、単一の相互接続構造の設置に好都合である。
【0015】
並置は、半導体層およびGaNヘテロ構造の少なくとも1つを溝内に配置することによって達成される。GaNヘテロ構造が溝内に存在する場合、この溝は、半導体層を通って下地の基板まで延びている。半導体層が溝内に存在する場合、この溝は、GaNヘテロ構造を通って基板まで延びている。
【0016】
本発明の利点は、GaNヘテロ構造の横方向サイズが実質的に減少することである。このことは、著しく低いレベルの熱応力をもたらし、GaN中のクラックおよび空洞(void)の形成について著しく低いリスクをもたらす。さらに、基板構造の反りが、GaNヘテロ構造の横方向サイズを制限することによって低減できる。本発明の他の利点は、汚染のリスクが減少することである。
【0017】
最初に、種(species)の拡散が発生し得る界面エリアをより制限する。効果的には、それは溝の1つ又はそれ以上の側壁に制限される。側壁での界面エリアは、典型的には、平面的な層の間の界面エリアよりもかなり小さい。さらに、側壁は、GaNの汚染を典型的に生じさせるシリコン酸化物を含む必要性がない。
【0018】
さらに、商業的に実現できるように充分に小さく、汚染の悪影響を回避できるように充分大きい、GaNヘテロ構造のエッジに沿ったバッファゾーンを区画してもよい。適切には、絶縁層が溝の側壁に存在している。こうした絶縁層は、応力および電気的影響に対して適切なバリアである。適切な材料がシリコン酸化物またはシリコン窒化物であり、こうした材料の堆積は半導体プロセスにおいて周知である。しかしながら、いずれか他の層の堆積、例えば、アルミニウム酸化物などの堆積は排除されておらず、複数の層、例えば、「ONO」としても知られているシリコン酸化物、シリコン窒化物およびシリコン酸化物のスタックを付与してもよい。最も適しているのは、層は、一様な堆積によって、例えば、化学気相堆積法を用いて設けられる。
【0019】
一実施形態において、半導体層は溝内に存在している。本実施形態は、ハンドリングウエハ、埋め込み絶縁層および上部層を備えたSOI型基板の使用との組合せにおいて特に適している。溝は、適切にはハンドリングウエハへ延びている。そして、半導体層は、ハンドリングウエハ上で成長する。このことは、ハンドリングウエハが上部層とは別の結晶配向を有してもよいという利点を有する。上部層の結晶配向は、GaNヘテロ構造の成長のために最適化されることになる。ハンドリングウエハの結晶配向は、CMOS素子の区画のために最適化されるように選択できる。結晶配向の相違点に加えて、2つの層は、例えば、Si,SiCなどの異なる組成を有してもよい。半導体層は、エピタキシャルプロセスでの成長またはアモルファス層としての堆積が可能である。後者の場合、それは再結晶処理で、典型的には当業者に知られているような上昇温度での再結晶化することが好ましい。再結晶化の場合、適切な注入(implantation)によって、例えば、アルゴンまたは窒素を用いて下地の酸化物を破壊してもよい。再結晶化および、これに関連したいずれかの態様、例えば、下地酸化物の処理などの処理ステップは、半導体産業において周知である。
【0020】
他の実施形態において、GaNヘテロ構造は、溝内に存在している。本実施形態は、例えば、単結晶シリコン基板との組合せで適用してもよい。酸化物の欠如により、GaNヘテロ構造から基板への熱移送がより効率的になる。このことは、素子の動作にかなり関連している。最適な実施態様では、小溝(groove)が溝の底部に存在している。小溝は、GaNヘテロ構造の成長に適した結晶配向を持つ側面を有する。1つの重要な例では、基板は、(100)配向を持つシリコン基板であり、小溝の露出した側面は、GaNタイプの層の成長に好ましい(111)配向を有する。
【0021】
明確化のため、垂直な上面図で見た場合、本発明で用いる溝は矩形状に限定されないことに留意する。それは、円形、楕円形、U字状、L字状、アイランド(島)を囲むようなリング形状でもよい。溝は、基板を横断するレーン(lane)として延びていてもよい。半導体層が溝内に存在する場合、より複雑な形状、例えば、レーン、リングなどが最適のように思われる。この手法において、GaNの横方向延長はできる限り制限される。これは、ハンドリング目的にとって好都合である。GaNが島状に形成される場合、アイランドは、最も好ましくは、円、六角形、八角形などである。鋭角及び/又は、中央から遠くに延びる角部は、不在になる。このことは有利であり、こうした鋭角および角部は熱応力に対して最も敏感だからである。
【0022】
更なる実施形態において、基板構造上で延びる分離レーンは、半導体層に区画される。個々の集積回路は、典型的には、分離または鋸(sawing)レーンに沿ってウエハのソーイング、エッチングまたはレーザ加工を行うことによって半導体ウエハから得られる。最も普通の手法はソーイングである。しかしながら、ソーイングは、個々の半導体回路にかなりの応力を発生する傾向がある。特に、GaN含有層と下地シリコン層の間の界面を通る切断は、歩留まりにとって有害な応力を発生するであろう。この素子は、GaN含有層の無い、好ましくは、シリコンを含有するだけの分離レーンの生成を可能にする。
【0023】
本発明の第2態様によれば、第2の目的は、請求項7記載の集積半導体基板構造の製造方法において達成される。集積半導体基板構造には、GaNベース素子の区画のための第1素子エリアと、CMOS素子の区画のための第2素子エリアが設けられる。該方法は、
半導体基板を用意するステップと、
半導体基板上に保護層を形成するステップであって、保護層は、第1素子エリアにおける半導体基板を露出し又は露出したままにしてパターン化されるものであり、
第1素子エリアにおける半導体基板に少なくとも1つの溝を形成するステップと、
該少なくとも1つの溝にGaNヘテロ構造を選択成長させ、保護層を選択成長用マスクとして用いて第1素子エリアを区画するステップと、
保護層を少なくとも部分的に除去し、第2素子エリアを露出するステップと、を含む。
【0024】
この態様の方法は、半導体基板における1つ又はそれ以上の溝の中にGaNヘテロ構造の成長を提供する。半導体基板は、適切にはシリコン基板である。保護層は、ここでは、GaNヘテロ構造の選択成長を可能にするマスクとして機能する。それは、例えば、シリコン酸化物を含み、例えば、基板の熱酸化によって得られるものである。
【0025】
1つの最も適切な実施形態において、溝の底面がエッチングされ、GaNヘテロ構造の成長にとって有利な配向を持つ結晶面を露出させる。この手法において、基板とは別の配向を持つ半導体層の使用が阻止される。特に、GaN成長に最適と考えられる基板は、(111)配向を持つシリコンである。こうした基板は、標準の(100)シリコンよりも高価であり、予想できないハンドリング問題を生じさせることがある。好ましくは、底面での表面エリアの大部分はエッチングされ、所望の結晶面を露出させる。より好ましくは、底面の70%超、80%超あるいはほぼ全部の表面エリアがエッチングされる。より好ましくは、等方性エッチングを用いて小溝を作成し、こうした小溝は、逆ピラミッドを含む。他の形状も排除されない。
【0026】
本発明の第3態様によれば、第2の目的はさらに、請求項9記載の集積半導体基板構造の製造方法において達成される。集積半導体基板構造には、GaNベース素子の区画のための第1素子エリアと、CMOS素子の区画のための第2素子エリアが設けられる。該方法は、
半導体基板を用意するステップと、
半導体基板上にGaNヘテロ構造を成長させるステップと、
GaNヘテロ構造の上部に保護層を付与するステップであって、保護層は、第2素子エリアにおけるGaNヘテロ構造を露出し又は露出したままにしてパターン化されるものであり、
GaNヘテロ構造を通る少なくとも1つの溝を形成し、第2素子エリアにおける基板の基板層を露出し、該少なくとも1つの溝に半導体層を選択成長させることによって、第2素子エリアに半導体基板層を設けるステップと、
保護層を少なくとも部分的に除去し、第1素子エリアを露出するステップと、を含む。
【0027】
この方法の適切な実施形態において、半導体基板は、ハンドリング層、埋め込み絶縁層および素子層を含むSOI基板であり、素子層は、GaNヘテロ構造の成長にとって適切な結晶配向を有する。
【0028】
一実施形態において、GaNヘテロ構造に作成された溝は、SOI基板構造のハンドリング層まで延びている。換言すると、SOI基板構造のハンドリング層は、溝を形成するときに露出する。このことは、ハンドリング層での半導体層の成長を可能にするものであり、以下では、ハンドリングウエハとも称している。
【0029】
再結晶プロセスにおいて、半導体層は、ハンドリングウエハと同じ配向で再結晶化できる。このことは、CMOS回路の性能にとって適切である。素子層は、好ましくは、(111)結晶配向を有する。この配向は、GaNヘテロ構造の成長にとって最善のように思われるためである。しかしながら、(111)結晶配向を持つ基板、特にシリコン基板は、CMOS回路にとって最善ではない。ハンドリングウエハは、典型的には、好ましくは(100)配向を有する。
【0030】
更なる有利な実施形態において、絶縁層が溝の側壁に設けられる。こうした絶縁層は、応力および電気的影響に対して適切なバリアである。適切な材料がシリコン酸化物またはシリコン窒化物であり、こうした材料の堆積は半導体プロセスにおいて周知である。しかしながら、いずれか他の層の堆積は排除されておらず、複数の層、例えば、「ONO」としても知られているシリコン酸化物、シリコン窒化物およびシリコン酸化物のスタックを付与してもよい。
【0031】
更なる実施形態において、GaNヘテロ構造の成長前に、SOI基板の素子層は、素子層アイランドが得られるようにパターン化され、GaNヘテロ構造は、素子層アイランド上に選択成長される。このことは、GaNヘテロ構造の正規の成長を得るのに適しており、素子層の特性に良い影響を有する、適切には、素子層のパターンは、GaNヘテロ構造の活性層の下にあるバッファ層中で過成長(overgrown)になる。
【0032】
他の実施形態において、保護層は、その場(in situ)成長する。用語「その場(in situ)成長」とは、下地層が成長する装置から途中で取り出すことなく、途中で基板を室温まで冷却することなく、層が下地層の上で成長するプロセスを意味する。好ましくは、その場(in situ)成長層の成長温度は、下地層の成長温度とほぼ同じである。用語「ほぼ同じ」とは、例えば、700℃〜1000℃の成長温度では200℃未満の差を意味する。発明者によって、こうしたその場(in situ)成長の保護層は、熱分解温度を超えてしまう温度ステップに対して、下地のGaNヘテロ構造を保護することが可能であることが判明した。より好ましくは、保護層は、シリコン窒化物などの窒化物を含み、このシリコン窒化物は、下地のGaNヘテロ構造の構造と最も良く適合する。
【0033】
更なる実施形態において、CMOS素子は、半導体基板層において少なくとも部分的に規定され、その後、少なくとも1つの追加層がGaNヘテロ構造に追加される。
【0034】
追加層は、適切にはインジウム(In)含有層であり、詳細にはInAlN,InGaNまたはInAlGaNである。半導体基板層へのCMOS素子の区画後に、この追加層の設置は、印加される温度および温度安定性の結果である。In含有層は、発光ダイオードの製造のために特に望ましい。最も好ましくは、In含有層は、多重量子井戸の形態で設けられ、それ自体先行技術で知られている。CMOS素子の区画における高温ステップは、典型的には、拡散、注入(implantation)、再結晶化、STIまたはLOCOSの設置を含む。
【0035】
本発明の第4態様によれば、集積回路の製造方法が提供される。この方法は、(i)本発明に係る集積半導体基板構造を用意するステップと、(ii)GaN素子を第1素子エリアに区画するステップと、(iii)少なくとも1つのCMOS素子を第2素子エリアに区画するステップと、(iv)GaN素子および少なくとも1つのCMOS素子の両方のための相互接続構造を設けるステップ、とを含む。
【0036】
更に好ましい実施態様において、CMOS素子の製造は、1100℃未満またはこれと等しい温度を維持するように行われる。このことは、特に保護層を設けた場合、詳細には、その場(in situ)成長の保護層を設けた場合、GaN層にとって実現可能な熱履歴(thermal budget)と考えられる。
【0037】
CMOS素子およびGaN素子を相互接続するためには、単一の相互接続構造が好ましい。CMOS用の相互接続構造は、典型的には4つ又はそれ以上のレベルを含む。10より多いレベルを持つ構造は、工業的に製作される。CMOS素子およびGaN素子の相互接続は、より高いレベル、例えば、1つを除く最高レベルまたは最高レベルまで、分離を維持することが好ましい。
【0038】
GaN素子は、典型的には個々のCMOS素子より大きな寸法を有するため、その相互接続はより大きな寸法を有することになる。こうした相違に対処するために、特に、1つ又はそれ以上のいわゆる低誘電率(low-K)材料を含む相互接続構造を用いた場合、下記プロセスのうちの1つを適用してもよい。
【0039】
即ち、CMOS素子へのより低い相互接続レベルの区画とは別個のステップにおけるGaN素子への第1相互接続レベルの区画。より低いレベルのCMOS相互接続を製造する場合、GaN相互接続のエリアは絶縁材料で充填され、これは別個のステップで再び開放される。化学機械研磨ステップ(CMP)を用いて、CMOS相互接続の上に堆積した余分な金属及び/又は絶縁材料を除去するとともに、GaN素子との第1相互接続を製作する。代替として、GaN相互接続を準備するためのこうした金属堆積は、CMOS相互接続を覆うマスクによるパターン化した金属堆積でもよい。
【0040】
CMOS素子との相互接続レベルの形成と同時で、より大きなパターンを用いて、あるいは、適切には1つの垂直相互接続の複数の相互接続への再分割によって、GaN素子との相互接続レベルの区画。それとともに、1つの相互接続レベルでの寸法は同等に保たれる。適切には、追加のダミーパターンを適切な設計に追加してもよく、その結果、金属密度は、同じか、あるいはCMOS相互接続およびGaN相互接続において少なくとも同等である。
【0041】
GaNヘテロ構造とのコンタクト金属として、例えば、TiN,TaN,TiW,TiWNなどの材料の使用。こうした材料は、例えば、Au,Ptなどの貴金属とは対照的に、CMOSプロセスと両立し得る。
【0042】
本発明の第5態様によれば、集積回路が提供される。この集積回路は、基板と、GaNベース素子の区画のための第1素子エリアに存在し、少なくとも部分的に保護層で覆われているGaNヘテロ構造と、CMOS素子の区画のための第2素子エリアに存在する半導体基板層と、第1素子エリアに区画されたGaN素子および第2素子エリアに区画されたCMOS素子と、CMOS素子およびGaNベース素子を相互接続する相互接続構造とを備える。ここで、集積半導体基板構造には、平坦化した表面が設けられ、そこにGaNヘテロ構造および半導体基板層の少なくとも1つが基板内の少なくとも1つの溝に設けられ、GaNヘテロ構造および半導体基板層は、横方向に並置される。
【0043】
本発明のこれらの態様および他の態様について、図面を参照してさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1a】本発明に係る集積半導体基板構造の製造方法における複数のステップを示す。
【図1b】本発明に係る集積半導体基板構造の製造方法における複数のステップを示す。
【図1c】本発明に係る集積半導体基板構造の製造方法における複数のステップを示す。
【図2】第1実施形態に係る集積半導体基板構造を示す。
【図3a】第2実施形態に係る集積半導体基板構造の製造方法を示す。
【図3b】第2実施形態に係る集積半導体基板構造の製造方法を示す。
【図3c】第2実施形態に係る集積半導体基板構造の製造方法を示す。
【図3d】第2実施形態に係る集積半導体基板構造の製造方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本発明は、特定の実施形態について特定の図面を参照しながら説明するが、本発明はこれらに限定されない。記載した図面は概略的なものに過ぎず、非限定的である。図面において、幾つかの要素のサイズは、説明目的のため、誇張してスケールどおり描いていないことがある。寸法および相対寸法は、本発明の実際の実用化と対応していない。異なる図面における同じ参照符号は、同じまたは同様な要素に対応する。
【0046】
ここで使用している用語「備える、含む(comprising)」は、「含む(including)」「含有する(containing)」「特徴とする(characterized by)」と同義語で、包括的または制限無しであり、追加の未記載の要素または方法ステップを除外していない。
【0047】
ここで使用している含有物の量、反応条件などを表現する数字は、全ての場合において用語「約」で修飾されているものと理解すべきである。従って、反対のことを示していない限りは、ここで言及している数値パラメータは、得ようとする所望の特性に依存して変化し得る近似値である。少なくとも各数値パラメータは、有効数字の桁数および普通の丸め手法の観点で解釈すべきである。
【0048】
下記の材料または層が正確な組成表示なしで言及している場合、例えば、SiN(いわゆるシリコン窒化物または窒化物)またはSiO(いわゆるシリコン酸化物)、AlGaNなどは、非化学量論的組成(SiまたはSi)および化学量論的組成(SiまたはSiO)の両方が含まれる。層は、非化学量論的組成(SiまたはSi)を持つ領域と、化学量論的組成(SiまたはSiO)を持つ領域との組合せにできる。
【0049】
本発明は、改善した特性を持つIII族−窒化物電界効果素子を製造する方法を提案する。高電子移動度トランジスタ(HEMT)は、III族−窒化物電界効果素子のよく知られている例である。III族−窒化物電界効果素子の動作は、2つの活性層間の界面またはその近傍での2次元電子ガス(2DEG)の生成をベースとしている。2DEGは、トランジスタのチャネルとして機能するものであり、ここではチャネルとも称している。その横方向の延長の観点で、2DEGは、2DEG層とも称される。
【0050】
III族−窒化物電界効果素子での活性層は、2DEGの形成に関与する層である。これは、例えば、層は自発的または圧電的に分極していたり、あるいは、層の全体または一部が高くドープされ、自由電子が2DEG層の中に拡散することによる。2DEG層は、即ち、トランジスタのチャネルは、活性層内または2つの活性層間の界面に位置している。活性層は、トランジスタ効果にとって本質的である。
【0051】
図面は、スケールどおり描いておらず、説明目的のためだけを意図している。異なる図面における同じ参照符号は、同様のコンポーネントを参照している。
【0052】
本発明は、CMOS回路およびGaN素子の両方を単一の集積回路に集積化する方法に関する。シリコン基板が、III族−窒化物層の成長およびGaN素子の処理のためのキャリアとして典型的に使用されているが、集積化は問題があることが判明している。しかしながら、GaN成長のためのキャリアとして使用されているシリコン基板は、CMOS回路に適したシリコン基板とは別の結晶配向を有する。従って、先行技術は、GaN含有層の層スタックの上部に、シリコン層のスタックを提案している。上述したように、このスタック法は扱いにくく、GaN素子およびCMOS回路の両方のために単一の相互接続構造を設けようとした場合に問題が生ずる。
【0053】
本願の文脈において、用語「III族−窒化物層」およびGaN含有層は、同義語として典型的に使用している。詳細には、用語「GaN含有層」は、例えば、InGaN,AlGaNなどの複合化合物を含むものである。用語「GaNヘテロ構造」は、典型的には少なくとも1つのGaN層を含む多層構造を参照している。典型的には、GaNヘテロ構造は、核生成(nucleation)層、少なくとも1つのバッファ層、第1活性層、第2活性層を備える。典型的には、AlN核生成(nucleation)層を用いる。少なくとも1つのバッファ層は、AlGaNを含んでもよく、Ga含有量は、適切には、成長時に徐々にまたはステップ的に増加している。構造の上部に存在する保護層は、適切には、その場(in situ)で設置したシリコン窒化物層である。得られたヘテロ構造は、トランジスタ、発光ダイオードまたは他の半導体素子の区画に適している。
【0054】
本願内で用いる用語「ヘテロ構造」は、本質的に複数の層を参照している。ヘテロ構造は、適切に動作する半導体素子を得るために必要な全ての層を備える必要はない。特に、InAlNまたはInGaNなどのIn含有層を含む素子の場合、用語「ヘテロ構造」は、典型的には部分的な構造を参照している。それにより、In含有層は、適切には、半導体基板層内でCMOS素子の区画に必要なものより低い温度で設置(成長または堆積)される。CMOS素子の区画後にのみ、これらを付与することがより有益である。
【0055】
本発明によれば、集積半導体基板構造を製造する方法が提供され、半導体材料は、III族−窒化物層の層スタック内に規定された溝内に設けられる。
【0056】
図1a〜図1cは、集積半導体基板構造100の製造における4つの段階を断面図で示す。最初のステップにおいて、図1aに示すように、複数の層が半導体基板1の上部に設けられる。本実施形態で使用する半導体基板1は、ハンドリング層またはハンドリングウエハ11と、埋め込み絶縁層12と、素子層13を含むSOI(シリコン・オン・インシュレータ)型の基板1である。素子層13は、GaN含有層の成長が可能なように選択される。適切には、それは、(111)結晶配向を持つ単結晶シリコン基板である。埋め込み絶縁層12は、典型的にはシリコン酸化物であるが、他の材料、例えば、シリコン窒化物または、シリコン窒化物とシリコン酸化物の組合せなども除外されない。ハンドリングウエハ11は、適切には、(100)結晶配向を持つシリコン基板である。この配向は、半導体プロセスにおいて広く用いられている。ハンドリングウエハは、適切には単結晶シリコン基板である。
【0057】
GaNヘテロ構造20は、以下、層スタック20とも称しており、典型的には複数のIII族−窒化物層を含む。最小限として、第1活性層6および第2活性層7が必要であり、GaN素子のチャネルは、第1活性層と第2活性層の界面に形成される。このチャネルは、2次元電子ガス(2DEG)または2DEG層とも称される。GaNからなる第1活性層およびAlGaNからなる第2活性層が、トランジスタ(HEMT)にとって必要である。AlGaNからなるゼロ番目の層、GaNからなる第1層および、AlGaN,InGaNまたはこれらの組合せからなる第2層の層スタックが、ダブルヘテロ電界効果トランジスタ(DH−FET)として知られている特定のHEMTでは典型的である。後者の場合、GaNからなる第1活性層の厚さは、従来のHEMTと比べて、例えば、100〜200nmにかなり減少している。これらの活性層は、典型的には、核生成層4および少なくとも1つのバッファ層5(適切にはAlGaNを含む)の上に成長する。この構造は、AlNで覆われ、SiNからなる保護層8で覆われてもよい。
【0058】
InGaNからなる第1活性層およびGaNからなる第2活性層が、発光ダイオードにとって有益であると考えられる。最も適切には、発光ダイオードは量子井戸を含む。こうした量子井戸は、例えば、少なくとも1つの、GaNまたはInGaNからなる層と、少なくとも1つのInAlNからなる層を含む。量子井戸は、単一量子井戸(その単一層)または多量子井戸(その複数層、好都合にはステップ構造)でもよい。多量子井戸は、多重量子井戸とも知られ、好ましい。量子井戸は、適切には、核生成層、少なくとも1つのバッファ層およびGaN層を含むヘテロ構造の上部に設けられる。こうしたGaN層は、好ましくは、Si原子の導入によってn型ドープされる。層スタックの区画は、それ自体、GaN素子の区画技術における当業者に知られている。層スタック20の層は、典型的にはエピタキシャル成長される。
【0059】
パッシベーション層8が、層スタック20の上に存在する。好ましくは、このパッシベーション層は、少なくとも電子供与元素と窒素を含み、例えば、SiNパッシベーション層または、薄いその場(in-situ)SiNパッシベーション層(4)である。SiNは、非化学量論的なSiまたは、化学量論的なSiまたは、化学量論的なSiと非化学量論的なSiの組合せとすることができる。最善の場合、このSiNは、Siである。パッシベーション層、例えば、SiNの厚さは、1nm〜5000nmの範囲で変化してもよいが、より良好には2nm〜10nm、より良好には3nm〜5nmである。これは、欧州特許公開EP1612866号に係るMOCVD、またはこの分野で知られた他の方法によって行える。SiN層は、例えば、有機金属化学気相成長法(MOCVD)で堆積できる。好ましくは、SiNは、高い品質を有し、これは限られた欠陥数を意味する。好ましくは、SiNは、その場(in situ)で堆積され、最善の場合は素子の冷却前に行う。「その場(in situ)」とは、パッシベーション層が同じ堆積ツールにおいて設けられることを意味し、最善の場合は素子の冷却前、例えば、パッシベーション層8を、第1活性層6および第2活性層7の堆積と同じ反応チャンバ内で堆積させることによって行う。
【0060】
本発明に導く実験において、パッシベーション層のその場(in situ)設置は、CMOS回路とGaN素子を組み合わせようとした場合、有益な結果をもたらすことが判明した。その場(in situ)堆積のSiNパッシベーション層8の存在により、層スタック20の表面は、極めて高い温度、例えば、1100℃を超える温度で適切な安定性を示すことが判った。その場(in situ)堆積シリコン窒化物の厚さは、1単分子層(〜0.2ナノメータ)から少なくとも1マイクロメータの範囲にできる。その場(in situ)堆積シリコン窒化物8がナノメータスケールの厚さを有する場合、他の誘電体層がその上に適切に堆積される。こうした誘電体層の適切な例は、シリコン酸化物と、非化学量論的なシリコン窒化物を含む。図1aに示す実施形態において、追加の誘電体層が設けられる。この追加の誘電体層9は、下記の方法ステップにいてエッチングマスクとして機能する。
【0061】
図1bは、処理の第2段階での集積半導体基板構造を示す。ここで、溝14の設置後の構造100を示している。本例において、溝14は、層スタック20を通り、素子層13を通り、埋め込み絶縁層12を通って延びている。それは、ハンドリングウエハ11にも延びている。これは非常に有益と考えられるが、厳密には必要ではない。溝14の底は、例えば、埋め込み絶縁層12の上部、または素子層13の上部にしてもよい。次のステップに進む前に、絶縁層15を溝14の内側に生成してもよい。この生成は、、例えば、熱処理またはプラズマ処理など、適切な処理の結果でもよい。それは、代替として、堆積ステップ、好ましくは、化学気相堆積を用いた結果でもよい。絶縁体15の設置は、GaN層からなる層スタック20と、溝14の内部に形成される半導体層との間に充分な絶縁を可能にする。絶縁は、熱的な理由だけでなく、電気的な理由、例えば、ドーピングレベルや固有電荷(inherent charge)などで有益であろう。層スタック20は、半導体層とは別の動作電圧でもよい。絶縁体15は、アニールまたは成長のステップの際、層スタック20から半導体層へ、あるいは逆方向の原子の拡散を防止するのに有効である。絶縁層は、溝14の底では好ましくない。それは、異方性エッチング工程を用いてこの底から部分的または完全に除去してもよい。
【0062】
図1cは、処理の最終段階での集積半導体基板構造を示す。ここで、半導体層30を溝14内に選択的に成長させた後の構造100を示している。半導体材料の成長の選択性に起因して、溝の内側にだけ成長が生じ、追加の誘電体層9の上には生じない。成長プロセスは、ここでは、成長した半導体層30の一部または、全部の半導体層30がパッシベーション層4の上方に延びるレベルになるまで継続するように示す。それは、その後、例えば、先行技術で知られているような化学機械研磨処理を用いて平坦化され、平坦化した表面31が得られる。追加の誘電体層9は、同じステップ、あるいはその前にエッチングステップで除去してもよい。
【0063】
代替として、平坦な上面31を生成するように成長プロセスを最適化してもよく、あるいは、成長プロセスはより早い段階で停止してもよく、その後、誘電体または絶縁層が半導体層の上部に生成される。そして、誘電体または絶縁層は、素子の区画のために局所的に開口してもよい。半導体層30の成長は、典型的には中央部において速いため、誘電体または絶縁層は、溝14のエッジでより厚くなる。このことは、層スタック20と半導体層30との間の応力を最小化する柔軟(compliant)層として機能することため、有益と考えられる。半導体層30は、典型的にはシリコンであるが、いずれか他の半導体材料、例えば、SiGeなどでもよい。誘電体層は、適切には、シリコン酸化物、シリコン窒化物、シリコン酸窒化物である。それは、例えば、化学気相成長法を用いて堆積してもよく、あるいは低品質の酸化物層として、例えば、熱分解(pyrolithic)シリコン酸化物(pyrox)などでもよい。代替として、誘電体層は、例えば、急速加熱処理などによる熱酸化物でもよい。
【0064】
半導体層30は、アモルファス層、多結晶層または単結晶層として成長してもよい。最適には、多結晶層として成長し、その後、再結晶化させる。再結晶化ステップは、好ましくは、成長の直後、即ち、平坦化ステップの前で何れか追加の層の堆積または生成の前に行う。半導体層を埋め込み絶縁層12の上部に成長させた場合、成長プロセスの前に核生成層を適切に堆積する。こうした核生成層は、半導体層でもよいが、代わりに他のタイプの材料でもよい。
【0065】
平坦化した表面31では、集積半導体基板構造100は、素子プロセスの準備ができている。素子表面31がパッシベーション層8の表面より下方に位置するのが望ましい場合、エッチング処理はCMP作業の後に行ってもよい。こうした処理は、異なる基板材料の上部層、即ち、SiGeまたはSiCが、半導体層30の上部に作成される場合、有益であろう。CMOS素子は、第2素子エリア52に設けてもよく、一方、HEMT、LEDまたは他のヘテロ素子は、第1素子エリア51に設けてもよい。
【0066】
GaNヘテロ構造の溝内における半導体層の成長(あるいは逆も同様)の利点は、得られる表面基板の表面が、かなり平坦化できることである。先行技術での接合は、パッシベーション層の上部における半導体層の存在をもたらした。こうして半導体層は、SOI基板の素子層として形成され、50〜200nmオーダーで典型的な厚さを有する。この厚さは、既に、単一の相互接続構造を実用化するための主要な技術的問題を構成する。今日では、発展したCMOSトランジスタは100nm未満の特徴部サイズを有する。古い世代のCMOSプロセスは、通常、約200nmに達する限界(critical)特徴部サイズを有する。第1相互接続層は、典型的には、対応する横方向サイズを特徴としている。層厚は、典型的には、こうした特徴部サイズよりもかなり小さい。GaN素子は、より大きくなる傾向があり、より大きな相互接続を有する。換言すると、より高いレベルで存在する先行技術のCMOS回路は、GaN素子よりかなり微細な相互接続を必要とする。一方、本発明によれば、溝内の半導体層の表面は、保護層とともに平坦化されることになる。代替として、それは、前記保護層未満のレベルで規定される。さらに、産業的に実行可能であって、純粋なCMOS回路用に以前に開発されたルールおよびガイドラインに従う単一の相互接続構造を作成することはより容易である。
【0067】
その製造直後に、集積半導体基板構造100の上に素子プロセスを継続させる必要性はないことが判る。実際、集積半導体基板構造100の製造は、素子プロセスとは別個に、即ち、別の会社によって行ってもよい。
【0068】
適切な一実施形態において、溝14は、CMOS回路の区画を意図したエリアだけに規定されない。溝は、分離レーンとして意図したエリアにおいて追加的に規定される。個々の集積回路が、典型的には、分離または鋸(sawing)レーンに沿ってウエハのソーイング、エッチングまたはレーザ加工を行うことによって半導体ウエハから得られる。最も普通の手法はソーイングである。しかしながら、ソーイングは、個々の半導体回路にかなりの応力を発生する傾向がある。特に、GaN含有層と下地シリコン層の間の界面を通る切断は、歩留まりにとって有害な応力を発生するであろう。この方法は、GaN含有層の無い、好ましくは、シリコンを含有するだけの分離レーンの生成を可能にする。
【0069】
図2は、集積半導体基板構造100の上に製造された集積回路を示す。CMOS回路50が半導体層30の素子表面31に形成されている。GaN素子40が層スタック20に形成されている。さらに、パッシベーション層4が開口しており、ゲート電極41、ソースおよびドレインのコンタクト42が設けられている。集積回路は、典型的には相互接続構造を含み、この図面には示していない。
【0070】
図3a〜図3dは、本発明に係る製造方法の代替の実施形態を示す。ここでは、基板1の溝14は、GaN材料20で充填されて第1素子エリア51を生成し、一方、基板1は、第2素子エリア52の区画のために使用することになる。明らかに、基板1は単なるテンプレートであって、第2素子エリア52を追加の溝内で堆積または成長した材料に規定することは排除していない。
【0071】
図3aは、溝14をシリコン基板1にエッチングした結果を示す。エッチングマスク22は、シリコン基板1の表面に存在している。シリコン基板は、典型的には(100)配向を有し、例えば、従来の単結晶シリコン基板である。本例は単結晶シリコン(100)基板を参照しているが、代替の基板も排除していない。
【0072】
図3bは、該方法の第2ステップの結果を示し、溝14の側壁が絶縁体15で覆われており、エッチングマスク24を溝の底部に付与している。適切には、絶縁体15およびエッチングマスクは単層として設けられる。最も適切には、その製造は、溝の底面が露出するエリアを規定するようにパターン形成されるレジスト層の堆積から開始する。その後、絶縁材料が溝表面の露出部分(側壁を含む)に堆積可能である。代替として、例えば、熱酸化によって、絶縁層を全体の溝表面に設けてもよく、その後、エッチングマスクを設けて、ドライエッチングを適用するようにしてもよい。
【0073】
図3cは、本発明に係る基板構造の製造の更なるステップを示す。ここでは、シリコン基板1において等方性エッチングを行う。この等方性ウェットエッチングにより、表面14−1,22−1を備えたV字状の小溝が得られる。プロセスの詳細は、それ自体当業者に知られている。最も適切には、表面の半分(ここでは、符号22−1)が絶縁マスク、例えば、酸化物または窒化物で再び覆われる。これを設ける1つの方法は、溝内のレジストマスクの設置であり、側面22−1のエリアでは露出している。その後、マスク22−1が付与できる。このマスクが溝の側壁にある絶縁層15を覆うことは問題ではない。絶縁層がシリコン酸化物で作成された場合、前記絶縁層15の上部に窒化物保護層を付与することも有益であろう。側面22−1の被覆が完全でなくても不利益ではない。その主たる目的は、成長の抑制であるからである。
【0074】
図3dは、本発明の第2実施形態に係る基板構造100の製造の最終段階を示す。ここで、溝14は、AlGaN層とGaN層(ここでは個々に図示していない)からなる層スタック20で充填され、その上部に追加のキャップ層7とパッシベーション層8がある。こうして第1素子エリア52は溝14に生成され、第2素子エリア51はそれに近接して、シリコン基板1の上に生成される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
GaNベース素子の区画のための第1素子エリアに存在し、少なくとも部分的に保護層で覆われているGaNヘテロ構造と、
CMOS素子の区画のための第2素子エリアに存在する半導体基板層とを備え、
GaNヘテロ構造および半導体基板層の少なくとも1つが、基板の少なくとも1つの溝に設けられ、GaNヘテロ構造および半導体基板層は横方向に並置されている集積半導体基板構造。
【請求項2】
絶縁層が、GaNヘテロ構造と半導体基板層との間で、該少なくとも1つの溝の少なくとも1つの側壁に存在している請求項1記載の集積半導体基板構造。
【請求項3】
基板は、ハンドリング層、埋め込み絶縁層および素子層を備えたSOI基板であり、
素子層は、GaNヘテロ構造の成長に適した結晶配向を有する請求項1記載の集積半導体基板構造。
【請求項4】
半導体層は、SOI基板構造のハンドリング層の上に存在し、埋め込み絶縁層および素子層は、第2素子エリアにおいて除去されている請求項3記載の集積半導体基板構造。
【請求項5】
半導体層は、再結晶化されて、SOI基板構造のハンドリング層と同じ結晶配向を有する請求項4記載の集積半導体基板構造。
【請求項6】
GaNヘテロ構造は、溝内に存在しており、
溝には、底部において、GaNヘテロ構造の成長に適した配向を持つ側面を有する少なくとも1つの小溝が設けられる請求項1記載の集積半導体基板構造。
【請求項7】
GaNベース素子の区画のための第1素子エリアと、CMOS素子の区画のための第2素子エリアが設けられる集積半導体基板構造の製造方法であって、
半導体基板を用意するステップと、
半導体基板上に、第1素子エリアにおける半導体基板を露出し又は露出したままにしてパターン化された保護層を形成するステップと、
第1素子エリアにおける半導体基板に少なくとも1つの溝を形成するステップと、
該少なくとも1つの溝にGaNヘテロ構造を選択成長させ、保護層を選択成長用マスクとして用いて第1素子エリアを区画するステップと、
保護層を少なくとも部分的に除去し、第2素子エリアを露出するステップと、を含む方法。
【請求項8】
溝の底面がエッチングされ、GaNヘテロ構造の成長にとって有利な配向を持つ結晶面を露出させる請求項7記載の方法。
【請求項9】
GaNベース素子の区画のための第1素子エリアと、CMOS素子の区画のための第2素子エリアが設けられる集積半導体基板構造の製造方法であって、
半導体基板を用意するステップと、
半導体基板上にGaNヘテロ構造を成長させるステップと、
GaNヘテロ構造の上部に、第2素子エリアにおけるGaNヘテロ構造を露出し又は露出したままにしてパターン化された保護層を付与するステップと、
GaNヘテロ構造を通る少なくとも1つの溝を形成し、第2素子エリアにおける基板の基板層を露出し、該少なくとも1つの溝に半導体層を選択成長させることによって、第2素子エリアに半導体基板層を設けるステップと、
保護層を少なくとも部分的に除去し、第1素子エリアを露出するステップと、を含む方法。
【請求項10】
下地の半導体層と同じ結晶配向が得られるように、半導体層を再結晶化するステップをさらに含む請求項9記載の方法。
【請求項11】
溝には少なくとも1つの側壁が設けられ、側壁には、半導体層の成長前に絶縁層が設けられる請求項7または9記載の方法。
【請求項12】
半導体構造の上面は、少なくとも1つの溝における層成長の後に研磨される請求項7または9記載の方法。
【請求項13】
集積回路の製造方法であって、
請求項1〜6のいずれかに記載の集積半導体基板構造を用意するステップと、
GaN素子を第1素子エリアに区画するステップと、
少なくとも1つのCMOS素子を第2素子エリアに区画するステップと、
GaN素子および少なくとも1つのCMOS素子の両方のための相互接続構造を設けるステップ、とを含む方法。
【請求項14】
基板と、
GaNベース素子の区画のための第1素子エリアに存在し、少なくとも部分的に保護層で覆われているGaNヘテロ構造と、
CMOS素子の区画のための第2素子エリアに存在する半導体基板層と、
第1素子エリアに区画されたGaN素子および、第2素子エリアに区画されたCMOS素子と、
CMOS素子およびGaNベース素子を相互接続する相互接続構造とを備え、
集積半導体基板構造には、平坦化した表面が設けられ、そこにGaNヘテロ構造および半導体基板層の少なくとも1つが基板内の少なくとも1つの溝に設けられ、
GaNヘテロ構造および半導体基板層は、横方向に並置されている集積回路。

【図1a】
image rotate

【図1b】
image rotate

【図1c】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3a】
image rotate

【図3b】
image rotate

【図3c】
image rotate

【図3d】
image rotate


【公開番号】特開2011−101007(P2011−101007A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−243860(P2010−243860)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(591060898)アイメック (302)
【氏名又は名称原語表記】IMEC
【Fターム(参考)】