説明

難燃性非ハロゲンエポキシ樹脂組成物、それを用いたプリプレグ及び電気配線板用積層板

【課題】耐熱性、耐トラッキング性、安全性が高く、かつ難燃性の優れたエポキシ樹脂組成物及びこれを用いたプリプレグ、電気配線板用積層板を提供する。
【解決手段】エポキシ樹脂、硬化剤及び添加剤からなるエポキシ樹脂組成物において、(a)すべての材料がハロゲン及びアンチモン化合物の含有量が0.1重量%以下であり、(b)硬化剤の少なくとも1つがフェノール類、トリアジン環を有する化合物(但し、ベンゾグアナミンを除く)及びアルデヒド類の重縮合物でありメチルエチルケトンに固形分80重量%以下にて溶解する変性フェノール樹脂で、さらに、フェノール類のノボラック樹脂を配合してなり、(c)難燃補助作用を有する添加剤を含む難燃性非ハロゲンエポキシ樹脂組成物である。また、当該難燃性非ハロゲンエポキシ樹脂組成物を用いたプリプレグ、電気配線板用積層板である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気配線板用絶縁材料、成型材用、接着用、特にガラス基材エポキシ樹脂電気配線板用絶縁材料に適した難燃性非ハロゲンエポキシ樹脂組成物、それを用いたプリプレグ及び電気配線板用積層板に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂組成物は、優れた電気絶縁性、電気特性、接着性、硬化物の機械特性等により電気絶縁材料を中心に広く使用されている。これらの電気絶縁材料は、安全性の面から高い難燃性が求められハロゲン系難燃剤、アンチモン化合物又はリン系難燃剤等を併用して難燃化されている。しかしながら近年、環境汚染や毒性の面からこれらに使用される材料の規制が高まってきている。中でも、ダイオキシン等の有機ハロゲン物質の毒性、発がん性が問題となっておりハロゲン含有物質の低減、削除が強く求められている。
【0003】
また、アンチモンの発がん性の問題から、アンチモン化合物についても低減、削除の要求が高まっている。このような状況のなかリン系難燃剤による代替が提案、検討されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、リン系難燃剤を中心として難燃化した場合、耐熱性、吸湿による特性劣化、炭化促進による難燃作用のために高電圧下において導通トラックが形成されやすくその結果、耐トラッキング性が低下してくる。また、赤リンを主成分としたリン系難燃剤を使用した場合、発火性や燃焼時に発生するフォスフィンガスの有害性が問題であり、難燃性と積層板の特性や加工性との両立を図ることが困難であった。本発明はこれらの問題を解決し、耐熱性、耐トラッキング性、安全性が高く、かつ難燃性の優れたエポキシ樹脂組成物及びこれを用いたプリプレグ、電気配線板用積層板を提供することを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、エポキシ樹脂、硬化剤及び添加剤からなるエポキシ樹脂組成物において、(a)すべての材料がハロゲン及びアンチモン化合物の含有量が0.1重量%以下であり、(b)硬化剤の少なくとも1つがフェノール類、トリアジン環を有する化合物(但し、ベンゾグアナミンを除く)及びアルデヒド類の重縮合物でありメチルエチルケトンに固形分80重量%以下にて溶解する変性フェノール樹脂で、さらに、フェノール類のノボラック樹脂を配合してなり、(c)難燃補助作用を有する添加剤を含む難燃性非ハロゲンエポキシ樹脂組成物である。また、本発明は、難燃補助作用を有する添加剤が無機充填剤であり、エポキシ樹脂と硬化剤の固形分の合計100重量部に対し、無機充填剤を30〜250重量部配合すると好ましく、また、無機充填剤として、少なくとも30重量部以上の無機水和物を含有する無機充填剤を配合すると好ましいものである。さらに、本発明は、硬化剤の少なくとも1つに用いるフェノール類、トリアジン環を有する化合物及びアルデヒド類の重縮合物(付加縮合物)でありメチルエチルケトンに固形分80重量%以下にて溶解する変性フェノール樹脂が、フェノールとビスフェノールAまたはフェノールとアルキルフェノール類を併用し、トリアジン環を有する化合物がメラミンであると好ましい難燃性非ハロゲンエポキシ樹脂組成物である。そして、硬化剤として、少なくともフェノール類、トリアジン環を有する化合物及びアルデヒド類の重縮合物でありメチルエチルケトンに固形分80重量%以下にて溶解する変性フェノール樹脂とフェノール類のノボラック樹脂を併用し配合すると好ましく、エポキシ樹脂として、エポキシ当量が400〜600g/eqであるビスフェノールA型エポキシ樹脂をエポキシ樹脂のうち50重量%以上配合すると好ましいものである。また、本発明は、耐トラッキング性を向上させるため前記難燃性非ハロゲンエポキシ樹脂組成物において、リン含有化合物を含まないと好ましい難燃性非ハロゲンエポキシ樹脂組成物である。そして、難燃性非ハロゲンエポキシ樹脂組成物をワニスとし、基材に含浸、乾燥させてプリプレグを作製し、このプリプレグの同種又は異種のプリプレグを組み合わせて用い、その片面又は両面に金属箔を積層し、加熱加圧成形して得られる電気配線板用積層板である。プリプレグに用いる基材は、織布又は不織布が好ましく、織布から得られる同種のプリプレグあるいは不織布から得られる同種のプリプレグをそれぞれ単独で用いて積層板にしたり、また、コンポジット積層板のように不織布から得られるプリプレグの両面に織布から得られるプリプレグを積層し、更にその外側に金属箔を積層し加熱加圧成形して電気配線板用積層板を得る。そして、織布、不織布に用いる難燃性非ハロゲンエポキシ樹脂組成物は、組成がその範囲内なら異なっていても良い。
【発明の効果】
【0006】
本発明の難燃性非ハロゲンエポキシ樹脂組成物及びそれを用いたプリプレグ、電気配線板用積層板は、耐熱性、耐トラッキング性、安全性が高く、かつ難燃性であり、ハロゲンやアンチモンを含まない積層板を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明者らは、難燃化手法について鋭意検討した結果、エポキシ樹脂と硬化剤と難燃補助作用のある添加剤からなるエポキシ樹脂組成物において、すべての材料がハロゲン及びアンチモン化合物の含有量が0.1重量%以下であり、硬化剤の少なくとも1つにフェノール類、トリアジン環を有する化合物及びアルデヒド類との重縮合物でありメチルエチルケトンに固形分80重量%以下にて溶解する変性フェノール樹脂を使用し、難燃補助作用を有する添加剤を配合した場合、上記の課題が解決されることを見出し本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明におけるエポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、環状脂肪族エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、ジグリシジルエステル系エポキシ樹脂等があげられ、これらのエポキシ樹脂を単独または数種類混合して使用することができる。また、本発明の難燃性非ハロゲンエポキシ樹脂組成物を織布または不織布の基材と複合化したコンポジット積層板に使用する場合、エポキシ樹脂として、エポキシ当量が400〜600g/eqであるビスフェノールA型エポキシ樹脂を使用するエポキシ樹脂中の50重量%以上使用することが、成形性、特性、コストの両立がはかれるので好ましい。これは、本発明で使用する硬化剤としてフェノール類、トリアジン環を有する化合物及びアルデヒド類の重縮合物である変性フェノール樹脂は、反応性が高く、エポキシ当量が400g/eq未満であるビスフェノールA型エポキシ樹脂をエポキシ樹脂中の50重量%以上使用すると硬化が速すぎるため成形圧力が、5MPa未満の低圧力下での成形が困難になり常態および加熱処理後のそりが大きくなってしまうためである。また、エポキシ当量が600g/eqを超えるビスフェノールA型エポキシ樹脂をエポキシ樹脂中の50重量%以上使用すると硬化物の耐熱性、難燃性、ガラス転移温度が低下するため好ましくない。
【0009】
本発明で使用する硬化剤のフェノール類、トリアジン環を有する化合物及びアルデヒド類の重縮合物でありメチルエチルケトンに固形分80重量%以下にて溶解する変性フェノール樹脂を得るために使用するフェノール類として、フェノールやビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなどの多価フェノール類、クレゾール、キシレノール、エチルフェノール、ブチルフェノールなどのアルキルフェノール類、アミノフェノール、フェニルフェノールなどがあげられ1種または2種類以上を併用することも可能である。好ましくはフェノールとビスフェノールAの組合せ、または、フェノールとアルキルフェノール類を組合せて使用すると、フェノールを単独で使用した場合より積層板に成形するときの硬化時の反応性が抑制され成形性に優れ、また、ビスフェノールAやアルキルフェノールを組合せて使用すると、単独で使用したフェノール樹脂の場合より難燃性に優れるので好ましい。また、トリアジン環を有する化合物として、メラミンまたはベンゾグアナミン、アセトグアナミンなどのグアナミン誘導体、シアヌル酸またはメチルシアヌレート、エチルシアヌレートなどのシアヌル酸誘導体や、イソシアヌル酸またはメチルイソシアヌレート、エチルシアヌレートなどのイソシアヌル酸誘導体などがあげられる。好ましくは耐熱性や難燃性が良好で、低価格なメラミンが適している。トリアジン環を有する化合物は、その種類や使用量を変化させることにより、例えばN(窒素)含有量を調整することにより難燃性、反応性、耐熱性などの最適化を図ることができる。アルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、トリオキサン、テトラオキシメチレン等が挙げられこれらに限定されるものではないが、取扱いの容易さからホルムアルデヒドが好ましく、特に価格等の理由からホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒドが好ましい。
【0010】
本発明で使用する変性フェノール樹脂の合成方法は、前記のフェノール類、トリアジン環を有する化合物、アルデヒド類の主材料を所望のN(窒素)含有量、水酸基当量になる配合比にて、触媒下に反応させる。このときの触媒としては、トリアジン環を有する化合物の溶解性が良好なことから塩基性触媒が好ましく、中でも金属等が触媒残として残ると電気絶縁材料として好ましくないため、アミン類が好ましい。反応の順番は制限されず、主材料全てを同時でも、2種の主材料を先に選択的に反応させることもでき、アセトン、メチルエチルケトン等の各種溶媒の存在下で反応させることにより安定制御が可能で好ましい。反応物は、中和、水洗、加熱処理、蒸留等を常法に従って行い未反応のフェノール類、アルデヒド類、メチロール基、溶媒を除去して本発明で使用する変性フェノール樹脂を得る。
【0011】
さらに、本発明で使用する硬化剤の変性フェノール樹脂を数種類組み合わせたり、他のフェノール類のノボラック樹脂と併用して硬化剤として使用することができ、それにより硬化剤単独では得られない成形性や難燃性、耐熱性を得ることが可能であるため併用することも好ましい。
【0012】
難燃補助作用を有する添加剤として無機充填剤が挙げられ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ゼオライトやハイドロタルサイト等の無機水和物、クレー、タルク、ワラストナイト、マイカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、アルミナ、シリカ、ガラス粉などの汎用無機充填剤や、ホウ酸亜鉛、スズ酸亜鉛、ヒドロキシスズ酸亜鉛などのB(ホウ素),Sn(スズ)系充填剤や酸化亜鉛、酸化スズなどの金属酸化物、または、赤リンなどの無機リン系材料や、銅や亜鉛などの硝酸塩などを制限なく使用可能である。また、これら無機充填剤をシランカップリング剤やチタネートカップリング剤などにより処理して使用することにより有機樹脂成分と無機充填剤との接着性が改善され、耐熱性、温湿度に対する安定性や安全性が増し好ましい。
【0013】
ハロゲン及びアンチモン化合物の含有量が、0.1重量%以下である材料のみを使用して目標の難燃性を達成するためには、エポキシ樹脂組成物中のトリアジン環の含有率を多くする必要があるが、有機樹脂固形分中のN含有率は5重量%程度までが限界であり、難燃性UL94V−1又は、UL94V−0を達成するためには、他の特性や成形性を無視して特殊なエポキシ樹脂を使用するか、本発明の変性フェノール樹脂を極端に増量しない限り相当に困難である。そのため、難燃性UL94V−1又はUL94V−0達成のためには、難燃補助作用を有する添加剤が必要である。難燃補助作用を有する添加剤として無機充填剤が好ましく、エポキシ樹脂と硬化剤の固形分の合計100重量部に対し、無機充填剤を30〜250重量部配合すると好ましい。無機充填剤を30重量部以上配合して可燃性物質の割合を減少させ、さらに難燃性UL94V−0達成のため無機充填剤として無機水和物を30重量部以上使用することが好ましい。耐トラッキング性を向上させるため、リン含有化合物を使用しない場合は、無機充填剤を100重量部以上配合することが好ましい。無機充填剤の配合量が250重量部を超える場合、無機充填剤の割合が大きすぎて、不織布や織布基材に難燃性非ハロゲンエポキシ樹脂組成物のワニスを含浸し、乾燥させて得られるプリプレグには、粘度増大によるボイドや塗りむら等が発生し、得られる積層板の耐熱性や加工性、絶縁性などが劣ってくる傾向にある。さらに高水準の耐熱性、加工性、絶縁性を求める場合には、無機充填剤と共に、有機物系添加物により難燃性を補助し、無機充填剤を減量することにより積層板の特性をより向上させることができる。
【0014】
有機物系添加物として、メラミンシアヌレート、メラミンフォスフェートなどのメラミン誘導体やリン酸エステル、亜リン酸エステル、ポリリン酸アンモニウム、含窒素リン化合物、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリフェニルフォスファイトなどの各種有機リン化合物や予め硬化させたエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂の粉末やシリコーン化合物、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイド、ポリエチレンテレフタレートなどの熱可塑性樹脂又は、その変成物なども難燃性や耐熱性の向上ができるので配合することも有効である。但し、前記したように、リン含有化合物を使用した場合、難燃化作用が炭化物の生成を促進し表面部分を既燃焼物で被覆する作用があるため、耐トラッキング性を著しく劣化させてしまう。そのため、耐トラッキング性が要求される用途に使用する場合は極力使用しないことが望ましく、使用する場合でも、積層板の外層部の耐トラッキングの要求される部分のみはリン含有化合物を使用しないエポキシ樹脂組成物を使用することが好ましい。
【0015】
本発明で用いる基材としては、コットン、リンターのような天然繊維基材、アラミド、ポリビニルアルコール、ポリエステル、アクリルのような有機合成繊維基材、ガラス、アスベストのような無機繊維基材が使用される。難燃性から、ガラス繊維基材が好ましい。ガラス繊維基材としては、Eガラス、Cガラス、Dガラス、Sガラスなどを使用した織布や不織布が好ましい。さらに、ガラス繊維とセルロース系繊維や有機繊維とを混抄したものも用いることができる。
【0016】
本発明は、硬化剤として難燃性を高めるN(窒素)を含有したトリアジン環を含有する化合物をフェノール類、アルデヒド類と重縮合させた変性フェノール樹脂を使用するため、安定した状態で分子構造中にNを多量に取り込み、さらに難燃性を高める難燃補助作用を有する添加剤として無機充填剤を配合することにより、高い難燃性および他特性とのバランスに優れた難燃性非ハロゲンエポキシ樹脂組成物を得ることが可能である。また、無機充填剤として、難燃作用や作用する温度域の異なる難燃剤を併用することにより各々の難燃剤を単独で使用する場合に比較して相乗的に作用しさらに高い難燃性および他特性とのバランスに優れた難燃性非ハロゲンエポキシ樹脂組成物を得ることが可能である。
【実施例】
【0017】
実施例1〜12及び比較例1〜3以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこの実施例のみに限定されるものではない。表1に実施例及び比較例に使用したエポキシ樹脂、硬化剤、難燃補助作用を有する添加剤等を示した。表1の硬化剤K−A,B,Cは、前述した方法で得た変性フェノール樹脂であり、表1に示した主材料の固形分100重量部に対し、0.35重量部のトリエチルアミンを触媒として加え、80℃にて5時間反応させ、次に水を除去しながら125℃まで昇温し2時間反応した後に、常圧下で水を除去しつつ185℃まで昇温してから減圧下で未反応物であるフェノール等を除去して変性フェノール樹脂を得た。そして、以下に示す方法によりワニスを作製し、基材へ塗工(含浸、乾燥)してプリプレグを作製し、これと銅箔を用いて加熱加圧成形し、電気配線板用積層板を成形した。表2に示す配合となるようエポキシ樹脂と硬化剤を各々1種以上使用しエポキシ樹脂のエポキシ基と硬化剤の水酸基が当量となるように配合し、エポキシ樹脂と硬化剤の固形分の合計100重量部に対し、表2に示す添加剤を配合し、ワニス中の固形分の比率が75±3重量%になるように溶剤メチルエチルケトンを加えて攪拌しワニスを作製した。得られたワニスをガラスクロス(厚み0.2mm、坪量210g/m2)に固形分が52重量%となるように含浸し、160℃で10分間乾燥して表層用プリプレグを得た。また、前記ワニスをガラス不織布(坪量73g/m2)に固形分89重量%となるように含浸し、160℃で7分間乾燥して芯材層用プリプレグを得た。表層用プリブレグをそれぞれ1枚ずつ両外層に配置しその間に芯材層用プリプレグを3枚積層し、厚さ18μmの電解銅はくを最外両層に配置して、170℃、80分間、4MPaで加熱、加圧成形して、厚さ1.6mmの両面銅張りコンポジット積層板を得た。得られたコンポジット積層板について、難燃性、成形性、耐トラッキング性、銅箔引き剥がし強さ及び銅箔付はんだ耐熱性を測定し、その結果を表2に示した。
なお、測定方法は、下記のようにして行った。
難燃性:UL94垂直試験法により試験した。
成形性:コンポジット積層板の銅箔をエッチングにより除去し、主としてボイドの発生状況について評価した。ボイドの発生がなく良好なものを◎で、軽微なボイドが発生したものを○で、ボイドが発生したものを△で、ボイドが全面に発生しているもの及び積層板の周辺部が薄くなっているものを×として評価した。
耐トラッキング性:コンポジット積層板の銅箔をエッチングにより除去し、50×50mmの試験片を作製し、4mm間隔に電極をセットし、一定電圧を印加しながら30秒間隔で塩化アンモニウムの0.1重量%電解液を注射器から滴下し、試験面がトラッキング破壊するまでの滴下数を求めた。次に電圧を変えて電圧と滴下数の関係曲線を作り、50滴に対応する電圧(C.T.I)を求めた。
銅箔引き剥がし強さ:JIS C6481に準拠して測定した。
銅箔付はんだ耐熱性:コンポジット積層板を銅箔が付いたまま、25×25mmの大きさに試験片を作製し、これを260℃のはんだ浴に浮かべ、フクレ、剥がれが発生するまでの時間を測定した。
【0018】
【表1】

【0019】
【表2】

【0020】
比較例1、2は、硬化剤にビスフェノールA型ノボラック樹脂を用いた場合であるが、無機充填剤を配合した(比較例2)場合でも難燃性に劣る。そして、比較例3は、硬化剤にフェノールとベンゾグアナミンとホルムアルデヒドを重縮合した変性フェノール樹脂を用いた場合であるが、添加剤を配合していないため難燃性に劣り、燃焼してしまった。比較例3に対し、同じエポキシ樹脂、硬化剤を配合し、難燃補助作用を有する添加剤を配合した実施例1〜3は、難燃性がUL−V0,V−1であり難燃性に優れる。実施例3のように添加剤の配合量が250重量部と多くなると、難燃性、耐トラッキング性に優れてくるが、成形性、銅箔引き剥がし強さに劣ってくる。また、硬化剤にメラミンを使用した変性フェノール樹脂を配合した実施例4〜7は、耐熱性が向上し、さらにビスフェノールAを併用した変性フェノール樹脂を配合した実施例8、10〜12は、成形性、耐熱性が向上する。使用したエポキシ樹脂のエポキシ当量が、400〜600の範囲にある実施例6、8、9、11、12は成形性に優れ、ボイドのない積層板を得ることができる。エポキシ樹脂を併用した実施例10でも、成形性が良好となる。実施例11、12は、水酸化アルミニウム(添加剤T−A)の配合量を実施例8の150重量部から100重量部と減らし、メラミンシアヌレート(添加剤T−C)やリン酸エステル化合物(T−D)を更にそれぞれ8重量部配合した場合であるが、難燃性、成形性は、同等であり、はんだ耐熱性が向上した。耐トラッキング性は、リンを含有する実施例11では、劣るようになるが、添加剤を配合してない比較例1、3よりは向上する。このように、エポキシ樹脂、硬化剤としてフェノール類、トリアジン環を有する化合物及びアルデヒド類の重縮合物及び難燃補助作用を有する添加剤を含む難燃性非ハロゲンエポキシ樹脂組成物とすることにより、積層板を難燃化がすることができる。そして、エポキシ樹脂のエポキシ当量が400〜600の範囲にあるものを配合することで、成形性に優れボイド等のない積層板を得ることができる。更に、無機充填剤に有機物系添加物を併用して配合すると、無機充填剤の配合量を減少させることができ、はんだ耐熱性等が向上する。但し、リンを含有した化合物は耐トラッキング性を低下させるので、その用途には避けたほうが好ましい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂、硬化剤及び添加剤からなるエポキシ樹脂組成物において、(a)すべての材料がハロゲン及びアンチモン化合物の含有量が0.1重量%以下であり、(b)硬化剤の少なくとも1つがフェノール類、トリアジン環を有する化合物(但し、ベンゾグアナミンを除く)及びアルデヒド類の重縮合物でありメチルエチルケトンに固形分80重量%以下にて溶解する変性フェノール樹脂で、さらに、フェノール類のノボラック樹脂を配合してなり、(c)難燃補助作用を有する添加剤を含む難燃性非ハロゲンエポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
硬化剤の少なくとも1つに用いるフェノール類、トリアジン環を有する化合物及びアルデヒド類の重縮合物でありメチルエチルケトンに固形分80重量%以下にて溶解する変性フェノール樹脂が、フェノールとビスフェノールAまたはフェノールとアルキルフェノール類を併用し、トリアジン環を有する化合物がメラミンである請求項1に記載の難燃性非ハロゲンエポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
難燃補助作用を有する添加剤が無機充填剤であり、エポキシ樹脂と硬化剤の固形分の合計100重量部に対し、無機充填剤を30〜250重量部配合する請求項1または2に記載の難燃性非ハロゲンエポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
無機充填剤として、少なくとも30重量部以上の無機水和物を含有する無機充填剤を配合する請求項3に記載の難燃性非ハロゲンエポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
エポキシ樹脂として、エポキシ当量が400〜600g/eqであるビスフェノールA型エポキシ樹脂をエポキシ樹脂のうち50重量%以上配合する請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の難燃性非ハロゲンエポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の難燃性非ハロゲンエポキシ樹脂組成物において、リン含有化合物を含まない難燃性非ハロゲンエポキシ樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の難燃性非ハロゲンエポキシ樹脂組成物をワニスとし、基材に含浸、乾燥させて得られるプリプレグ。
【請求項8】
基材が、織布又は不織布である請求項7に記載のプリプレグ。
【請求項9】
請求項7または請求項8に記載の同種又は異種のプリプレグを組み合わせて用い、その片面又は両面に金属箔を積層し、加熱加圧成形して得られる電気配線板用積層板。

【公開番号】特開2008−13773(P2008−13773A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−208463(P2007−208463)
【出願日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【分割の表示】特願平10−16837の分割
【原出願日】平成10年1月29日(1998.1.29)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】