説明

電力供給ユニットの制御装置および制御方法、その方法をコンピュータに実現させるためのプログラム、そのプログラムを記録した記録媒体

【課題】負荷と二次電池とコンバータとを備えた電力供給ユニットにおいて、二次電池の過放電による劣化を抑制しつつ、低温の二次電池を早期に暖機する。
【解決手段】ECUは、モータジェネレータの要求トルク値T(MG)に基づいて、バッテリの定格電圧値VBを昇圧した電力をモータジェネレータに供給する必要があるか否かを判断するステップ(S104)と、昇圧した電力を供給する必要がないと判断されると(S104にてYES)、バッテリの温度に基づいて、バッテリを暖機する必要があるか否かを判断するステップ(S108)と、暖機する必要があると判断されると(S108にてYES)、昇圧コンバータの出力電圧値VHが最大電圧値VH(MAX)になるように、昇圧コンバータに昇圧指令を出力するステップ(S110)と、を含むプログラムを実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力供給ユニットの制御技術に関し、特に、二次電池の定格電圧をコンバータにより昇圧した電力を負荷に供給する電力供給ユニットの制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
バッテリを動力源とするモータの出力により走行する電気自動車や、エンジンの出力とバッテリを動力源とするモータの出力とにより走行するハイブリッド自動車が知られている。モータの動力源であるバッテリは、温度が低いほど内部抵抗が大きくなり入出力特性が低下する。そのため、バッテリ温度が低い場合には、モータへの放電や回生エネルギの充電が十分に行なえなくなり、車両の動力性能や燃費性能が低下する。これらの性能の低下を回避するために、バッテリを早期に暖機して、バッテリの入出力特性を回復させる必要がある。バッテリ温度が低い場合にバッテリを暖機する技術に関して、たとえば、特開2001−268715号公報(特許文献1)に開示された技術がある。
【0003】
この公報に開示されたハイブリッド電気自動車は、エンジンの動力により走行するための手段と、バッテリを動力源としてモータの動力により走行するための手段と、バッテリの温度を検出するためのバッテリ温度検出手段と、バッテリ温度検出手段により検出されたバッテリ温度が予め定められた温度よりも低いときエンジンの動力により走行する駆動力を予め定められた値だけ減らした値を指令値とするためのエンジン出力指令手段と、モータの動力により走行する駆動力を予め定められた値だけ増やした値を指令値とするためのモータ出力指令手段と、エンジン出力指令値とモータ出力指令値に基づきバッテリに放電指令を与えるための放電指令手段とを含む。
【0004】
この公報に開示されたハイブリッド電気自動車によると、バッテリ温度が予め定められた温度よりも低いと、モータ出力指令値が増やされる。そのため、バッテリ温度が予め定められた温度よりも高い場合に比べて、バッテリからの放電電力をより高くして、バッテリを暖機することができる。さらに、モータ出力指令値が増やされることに伴って、エンジン出力指令値が減らされる。そのため、車両の走行にはなんら影響を与えることなく、バッテリの入出力特性を改善することができる。
【特許文献1】特開2001−268715号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されたハイブリッド電気自動車において、バッテリ温度が低い場合、上述のように、バッテリの出力特性が低下する。そのため、実際には、バッテリ低温時においてバッテリの放電電力が制限され、バッテリを早期に暖機することができない場合がある。さらに、バッテリ低温時において放電が長時間継続されると、バッテリが過放電となり著しく劣化するおそれがある。
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであって、その目的は、二次電池とコンバータとを備えた電力供給ユニットにおいて、二次電池の過放電による劣化を抑制しつつ、低温の二次電池を早期に暖機することができる電力供給ユニットの制御装置および制御方法、その方法をコンピュータに実現させるためのプログラム、そのプログラムを記録した記録媒体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明に係る制御装置は、負荷に電力を供給する二次電池と、負荷と二次電池との間に設けられ、スイッチング素子のオンオフにより入力電圧を変圧して出力するコンバータとを備えた電力供給ユニットを制御する。この制御装置は、負荷に要求される出力を算出するための手段と、要求される出力に基づいて、コンバータによる変圧が必要であるか否かを判断するための変圧判断手段と、二次電池の温度を検出するための手段と、二次電池の温度が予め定められた温度以下であるか否かを判断するための温度判断手段と、変圧判断手段により変圧が必要でないと判断され、かつ温度判断手段により二次電池の温度が予め定められた温度以下であると判断されると、コンバータを作動するように制御するための制御手段とを含む。第6の発明に係る制御方法は、第1の発明に係る制御装置と同様の要件を備える。
【0008】
第1または6の発明によると、二次電池の定格電圧がコンバータにより変圧されて負荷に供給される。二次電池は、低温の場合に出力特性が低下するため、負荷への電力供給を十分に行なえない場合がある。そのため、二次電池を早期に暖機して、二次電池の入出力特性を回復させる必要がある。そこで、負荷に要求される出力が低くコンバータによる変圧が必要ないと判断された場合であっても、二次電池が予め定められた温度以下の低温である場合には、コンバータが作動される。たとえば、二次電池の定格電圧を最大昇圧値に昇圧するようにコンバータが作動される。コンバータを作動すると、スイッチング素子のオンオフに起因して、直流成分に交流成分が重畳した電流(リプル電流)が発生し、二次電池には、直流成分に交流成分が重畳した充放電電流が流れる。そのため、充放電電流の直流成分が小さい場合であっても、交流成分によって二次電池内部での発熱を促進して、二次電池をより早期に暖機することができる。さらに、充放電電流の直流成分より交流成分が大きくなるようにコンバータが制御された場合には、スイッチング素子がオンオフされるたびに、充放電が繰返される。そのため、放電が長時間継続されることによる過放電を防止することができる。その結果、二次電池とコンバータとを備えた電力供給ユニットにおいて、二次電池の過放電による劣化を抑制しつつ、低温の二次電池を早期に暖機することができる電力供給ユニットの制御装置および制御方法を提供することができる。
【0009】
第2の発明に係る制御装置においては、第1の発明の構成に加えて、変圧判断手段は、コンバータによる昇圧が必要であるか否かを判断するための手段を含む。制御装置は、変圧判断手段により昇圧が必要であると判断されると、二次電池の定格電圧を要求される出力に応じた値に昇圧するように、コンバータを制御するための手段をさらに含む。制御手段は、定格電圧を予め定められた値に昇圧するように、コンバータを制御するための手段を含む。第7の発明に係る制御方法は、第2の発明に係る制御装置と同様の要件を備える。
【0010】
第2または7の発明によると、変圧判断手段による昇圧が必要であると判断されると、二次電池の定格電圧は負荷から要求される出力に応じた値に昇圧される。一方、変圧判断手段による変圧が必要ないと判断され、かつ二次電池が低温である場合には、二次電池の定格電圧が予め定められた値に昇圧される。これにより、負荷に要求される出力の大きさに関わらず、二次電池からの放電電流の交流成分の大きさを予め定められた値にすることができる。そのため、たとえば、放電電流の交流成分の大きさが最大となるように、二次電池の定格電圧を最大昇圧値に昇圧して、二次電池をより早期に暖機することができる。
【0011】
第3の発明に係る制御装置においては、第2の発明の構成に加えて、予め定められた値は、コンバータにおける最大昇圧値である。第8の発明に係る制御方法は、第3の発明に係る制御装置と同様の要件を備える。
【0012】
第3または8の発明によると、二次電池の定格電圧は、コンバータにおける最大昇圧値に昇圧される。このとき、放電電流の交流成分の振幅は最大となり、二次電池内部で発生するジュール熱が最大となる。そのため、二次電池を最短時間で暖機させることができる。
【0013】
第4の発明に係る制御装置においては、第1〜3のいずれかの発明の構成に加えて、電力供給ユニットは、コンバータと負荷との間に設けられ、入力電流を変換して出力するインバータをさらに含む。制御装置は、要求される出力に基づいて、負荷から要求される電力を算出するための手段と、コンバータの出力電圧を検出するための手段と、要求される電力と出力電圧とに基づいて、要求される電力が負荷に供給されるように、インバータにより変換される電流を制御するための手段とをさらに含む。第9の発明に係る制御方法は、第4の発明に係る制御装置と同様の要件を備える。
【0014】
第4または9の発明によると、たとえば、二次電池が低温でありコンバータにより最大昇圧されると、インバータで変換される電流値が小さくされる。そのため、バッテリを暖機するためにコンバータにより昇圧しつつ、要求に応じた電力を負荷に供給することができる。
【0015】
第5の発明に係る制御装置においては、第1〜4のいずれかの発明の構成に加えて、電力供給ユニットは、車両に搭載される。負荷は、二次電池の電力により車両の駆動力を発生するとともに、車両の制動時に回生電力を発生する回転電機である。第10の発明に係る制御方法は、第5の発明に係る制御装置と同様の要件を備える。
【0016】
第5または10の発明によると、車両に要求される駆動力が低く回転電機から要求される電力が低い場合でも、二次電池が低温の場合には、コンバータの昇圧により二次電池が早期に暖機される。これにより、二次電池の入出力特性をより早期に回復させて、車両の駆動力を回転電機に十分に出力させるとともに、車両の制動時に回転電機が発生する回生電力をより多く回収することができる。
【0017】
第11の発明に係るプログラムは、第6〜10のいずれかの発明に係る制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラムである。第12の発明に係る記録媒体は、第6〜10のいずれかの発明に係る制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラムをコンピュータ読み取り可能に記録した記録媒体である。
【0018】
第11または12の発明によると、コンピュータ(汎用でも専用でもよい)を用いて、第6〜10のいずれかの発明に係る制御方法を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0020】
図1を参照して、本実施の形態に係る電力供給ユニットの制御装置が搭載された車両について説明する。この車両は、バッテリ100と、インバータ200と、モータジェネレータ(MG)300と、平滑コンデンサ400と、ECU(Electronic Control Unit)600と、昇圧コンバータ800とを含む。なお、本発明の実施の形態に係る電力供給ユニットは、バッテリ100、昇圧コンバータ800、平滑コンデンサ400、およびインバータ200で構成され、MG300にバッテリ100の電力を供給する。
【0021】
バッテリ100は、複数のセルを直列に接続したモジュールをさらに複数直列に接続した組電池である。バッテリ100は、低温であるほど、内部抵抗が大きくなり入出力特性が低下する。
【0022】
インバータ200は、6つのIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)と、IGBTのエミッタ側からコレクタ側に電流を流すように、各IGBTにそれぞれ並列に接続された6つのダイオードとを含む。インバータ200は、ECU600からの制御信号に基づいて、MG300をモータまたはジェネレータとして機能させる。
【0023】
インバータ200は、MG300をモータとして機能させる場合、バッテリ100から供給された直流電力を交流電力に変換し、MG300に供給する。インバータ200は、各IGBTのゲートをオン/オフ(通電/遮断)してMG300に供給する電力(電流の大きさ)を制御することにより、MG300がECU600からの制御信号で要求される出力状態になるように制御する。
【0024】
インバータ200は、MG300をジェネレータとして機能させる場合、MG300が発電した交流電力を直流電力に変換し、バッテリ100に充電する。インバータ200は、各IGBTのゲートをオン/オフしてMG300が発電する回生電力(回生電流の大きさ)を制御することにより、ECU600からの制御信号で要求される回生制動力(回生トルク)が車両に作用するように制御する。
【0025】
MG300は、三相交流モータであるとともに、車両の回生制動時に発電するジェネレータである。MG300の回転軸は、最終的には車両のドライブシャフト(図示せず)に接続される。車両は、MG300からの駆動力により走行する。
【0026】
平滑コンデンサ400は、インバータ200と並列に接続されている。平滑コンデンサ400は、バッテリ100から供給された電力、またはインバータ200から供給された電力を平滑化するため、電荷を一旦蓄積する。平滑化された電力は、インバータ200またはバッテリ100に供給される。
【0027】
昇圧コンバータ800は、ECU600に接続され、バッテリ100と平滑コンデンサ400との間に設けられる。昇圧コンバータ800は、第1スイッチング素子(SW(1))810と、第2スイッチング素子(SW(2))820と、SW(1)810およびSW(2)820にそれぞれ並列に接続されるダイオード812および822と、電流変化を妨げるリアクトル830と、コンデンサ840とから構成される。
【0028】
SW(1)810およびSW(2)820は、PWM(Pulse Width Modulation)制御によりオン/オフ(スイッチング)されるIGBTである。
【0029】
ECU600からの制御信号によりSW(1)810およびSW(2)820がオン/オフされると、昇圧コンバータ800の出力電圧値VHは、入力電圧値VL(通常はバッテリ100の定格電圧値VB)を昇圧させた値となる。
【0030】
ECU600からの制御信号が停止されてSW(1)810およびSW(2)820のオン/オフが停止されると、昇圧コンバータ800の出力電圧値VHは、入力電圧値VLのままとなる。
【0031】
ECU600には、バッテリ温度センサ102、第1電圧計802、第2電圧計804、車速センサ702、アクセル開度センサ704、およびブレーキ踏力センサ706が接続される。
【0032】
バッテリ温度センサ102は、バッテリ100の温度を検出し、バッテリ温度を表わす信号をECU600に送信する。第1電圧計802は、昇圧コンバータ800の入力電圧値VLを検出し、入力電圧値VLを表わす信号をECU600に送信する。第2電圧計804は、昇圧コンバータ800の出力電圧値VHを検出し、出力電圧値VHを表わす信号をECU600に送信する。
【0033】
車速センサ702は、車速を検出し、車速を表わす信号をECU600に送信する。アクセル開度センサ704は、車両の運転者によるアクセルペダルの踏み込み量(アクセル開度)を検出し、アクセル開度を表わす信号をECU600に送信する。ブレーキ踏力センサ706は、車両の運転者によるブレーキ踏力を検出し、ブレーキ踏力を表わす信号をECU600に送信する。
【0034】
ECU600は、車速センサ702、アクセル開度センサ704およびブレーキ踏力センサ706等の各センサから送信される信号などに基づいて、ROM(Read Only Memory)に記憶されたプログラムを実行する。このプログラムにより、インバータ200や昇圧コンバータ800等が制御されて、車両は所望の状態で走行するように制御される。このプログラムは記録媒体に記録されて市場を流通する場合もある。
【0035】
また、ECU600は、バッテリ100の温度やSOC(State Of Charge)をパラメータとするマップなどに基づいて、バッテリ100への充電電力制限値(充電される電力の最大値)WINおよび放電電力制限値(放電される電力の最大値)WOUTを算出する。充電電力制限値WINおよび放電電力制限値WOUTは、バッテリ100が低温であるほど(すなわちバッテリ100の入出力特性が低下しているほど)小さな値となるように算出される。ECU600は、バッテリ100の充放電電力を充電電力制限値WINおよび放電電力制限値WOUTに制限するように、インバータ200および昇圧コンバータ800を制御する。これにより、バッテリ100の過放電や過充電が防止される。
【0036】
図2を参照して、昇圧コンバータ800を流れる電流について説明する。SW(1)810およびSW(2)820は、ECU600からの制御信号により、たとえば10KHz程度の高周波数でスイッチングされ、図2に示すように、オン/オフが互いに異なるように制御される。
【0037】
SW(2)820がオン(SW(1)810がオフ)されることより、バッテリ100からの電流がリアクトル830に充電され、リアクトル830内の電圧が上昇される。SW(2)820をオフ(SW(1)810がオン)されると、リアクトル830内に昇圧された電力がインバータ200に放電される。
【0038】
このようなリアクトル830の充電と放電とが繰返されることにより、リアクトル830を流れる電流I(L)は、図2に示すように、直流成分IL(DC)に交流成分IL(AC)が重畳した電流(電流)となる。交流成分IL(AC)の振幅値A(L)は、昇圧コンバータ800の出力電圧値VHが大きいほど大きな値となる。
【0039】
図3を参照して、本実施の形態に係る電力供給ユニットの制御装置の機能ブロック図について説明する。図3に示すように、この制御装置は、要求トルク値算出部610と、要求電力値算出部620と、要求トルク値算出部610に接続される昇圧判断部630と、暖機判断部640と、昇圧判断部630と暖機判断部640とに接続されるコンバータ指令部650と、要求電力値算出部620とコンバータ指令部650とに接続されるインバータ指令部660とを含む。
【0040】
要求トルク値算出部610は、車速センサ702、アクセル開度センサ704およびブレーキ踏力センサ706等の各センサから送信される信号やROMに記憶されたプログラムおよびマップに基づいて、MG300に要求されるトルク値(要求トルク値)T(MG)を算出する。
【0041】
要求電力値算出部620は、車速センサ702、アクセル開度センサ704およびブレーキ踏力センサ706等の各センサから送信される信号やROMに記憶されたプログラムおよびマップに基づいて、MG300から要求される電力値(要求電力値)P(MG)を算出する。
【0042】
昇圧判断部630は、要求トルク値T(MG)に基づいて、バッテリ100の定格電圧VBを昇圧した電力をMG300に供給する必要があるか否かを判断する。
【0043】
暖機判断部640は、バッテリ温度計102からの信号に基づいて、バッテリ100を暖機する必要があるか否かを判断する。
【0044】
コンバータ指令部650は、要求トルク値T(MG)および暖機判断部630の判断結果に応じた出力電圧値VHとなるような指令(制御信号)を、昇圧コンバータ800に出力する。
【0045】
インバータ指令部660は、要求電力値P(MG)および出力電圧値VHに基づいて、インバータ200に指令(制御信号)を出力する。
【0046】
このような機能ブロックを有する本実施の形態に係る制御装置は、デジタル回路やアナログ回路の構成を主体としたハードウェアでも、ECUに含まれるCPU(Central Processing Unit)およびメモリとメモリから読み出されてCPUで実行されるプログラムとを主体としたソフトウェアでも実現することが可能である。一般的に、ハードウェアで実現した場合には動作速度の点で有利で、ソフトウェアで実現した場合には設計変更の点で有利であると言われている。以下においては、ソフトウェアとして制御装置を実現した場合を説明する。なお、このようなプログラムを記録した記録媒体についても本発明の一態様である。
【0047】
図4を参照して、本実施の形態に係る電力供給ユニットの制御装置であるECU600が実行するプログラムの制御構造について説明する。なお、このプログラムは、予め定められたサイクルタイムで繰り返し実行される。
【0048】
ステップ(以下、ステップをSと略す。)100にて、ECU600は、車速センサ702、アクセル開度センサ704およびブレーキ踏力センサ706等の各センサから送信される信号などに基づいて、要求トルク値T(MG)を算出する。
【0049】
S102にて、ECU600は、車速センサ702、アクセル開度センサ704およびブレーキ踏力センサ706等の各センサから送信される信号などに基づいて、要求電力値P(MG)を算出する。なお、ECU600は、要求トルク値T(MG)に基づいて、要求電力値P(MG)を算出するようにしてもよい。
【0050】
S104にて、ECU600は、要求トルク値T(MG)に基づいて、バッテリ100の定格電圧値VBを昇圧した電力をMG300に供給する必要があるか否かを判断する。ECU600は、たとえば、要求トルク値T(MG)が予め定められたしきい値より大きい場合に、昇圧した電力を供給する必要があると判断する。なお、ECU600は、要求電力値P(MG)に基づいて、バッテリ100の定格電圧値VBを昇圧した電力をMG300に供給する必要があるか否かを判断するようにしてもよい。昇圧した電力を供給する必要があると(S104にてYES)、処理はS106に移される。そうでないと(S104にてNO)、処理はS108に移される。
【0051】
S106にて、ECU600は、出力電圧値VHが、要求トルク値T(MG)に応じた値VH(MG)となるように、昇圧コンバータ800に昇圧指令を出力する。
【0052】
S108にて、ECU600は、バッテリ100を暖機する必要があるか否かを判断する。ECU600は、たとえば、バッテリ温度計102から送信されるバッテリ温度が予め定められた温度以下である場合に、バッテリ100を暖機する必要があると判断する。暖機する必要があると(S108にてYES)、処理はS110に移される。そうでないと(S108にてNO)、処理はS112に移される。
【0053】
S110にて、ECU600は、出力電圧値VHが、最大電圧値VH(MAX)になるように、昇圧コンバータ800に昇圧指令を出力する。
【0054】
S112にて、ECU600は、出力電圧値VHが、バッテリ100の定格電圧値VBとなるように、昇圧コンバータ800への指令を停止する。
【0055】
S114にて、ECU600は、出力電圧値VHと要求電力値P(MG)とに基づいて、インバータ200で変換する電流値I(IN)を算出する。たとえば、ECU600は、要求電力値P(MG)を出力電圧値VHで除算した値を電流値I(IN)として算出する。
【0056】
S116にて、ECU600は、インバータ200で電流値I(IN)の大きさの電流が変換されるように、インバータ200に変換指令を出力する。
【0057】
以上のような構造およびフローチャートに基づく、本実施の形態に係る制御装置であるECU600により制御される電力供給ユニットの動作について説明する。
【0058】
車両の運転が開始さると、MG300の要求トルク値T(MG)および要求電力値P(MG)が算出される(S100、S102)。
【0059】
ところで、バッテリ100の温度が低いと、バッテリ100に内部抵抗が大きくなり入出力特性が低下する。そのため、放電電力制限値WOUTが小さな値となる。これにより、要求トルク値T(MG)が高い場合であっても、バッテリ100からの放電を十分に行なえない場合がある。また、MG300が大きな回生電力を発生した場合であっても、バッテリ100への充電を十分に行なえない場合がある。
【0060】
そこで、要求トルク値T(MG)が予め定められたしきい値より小さく、バッテリ100の定格電圧値VBを昇圧した電力を供給する必要がないと判断された場合(S104にてNO)であっても、バッテリ温度が予め定められた温度以下であると、バッテリ100を暖機する必要があると判断され(S108にてYES)、昇圧コンバータ800の出力電圧値VHが、最大電圧値VH(MAX)に制御される(S110)。
【0061】
これにより、リアクトル830を流れる電流I(L)は、上述したように、直流成分IL(DC)に交流成分IL(AC)が重畳した電流となる。このリアクトル830を流れる電流I(L)がコンデンサ840を経由してバッテリ100に流れる。その結果、バッテリ100を流れる電流I(B)は、図5に示すように、直流成分IB(DC)に交流成分IB(AC)が重畳した電流となる。
【0062】
直流成分IB(DC)に加えて交流成分IB(AC)によってバッテリ100内部での発熱が促進される。そのため、図6に示すように、直流成分IB(DC)のみの場合(すなわち昇圧コンバータ800による昇圧を行なわない場合)に比べて、バッテリ100をより早期に暖機することができる。
【0063】
これにより、その後に要求トルク値T(MG)が高くなった場合やMG300が大きな回生電力を発生した場合に備えて、バッテリ100の入出力特性をより早期に回復して、車両の動力性能や回生電力の回収率が低下することを抑制することができる。
【0064】
また、出力電圧値VHが最大電圧値VH(MAX)に昇圧されておりリアクトル830を流れる電流I(L)の振幅A(L)が最大となる。そのため、バッテリ100を流れる電流I(B)の交流成分IB(AC)の振幅A(B)も最大となり、バッテリ100内部で発生するジュール熱が最大となる。これにより、バッテリ100を最短時間で暖機させることができる。
【0065】
さらに、図6に示すように、バッテリ100を流れる電流I(B)の直流成分IB(DC)よりも交流成分IB(AC)の振幅A(B)が大きいと、SW(1)810およびSW(2)820がオン/オフされるたびに、バッテリ100の充放電が繰返される。そのため、バッテリ100の低温時において、放電が長時間継続されることによる過放電を防止することができる。
【0066】
インバータ200で変換される電流値I(IN)は、要求電力値P(MG)を出力電圧値VHで除算した値に制御される(S114、S116)。すなわち、出力電圧値VHが昇圧されたことに応じて、インバータ200で変換される電流値I(IN)が小さく制御される。そのため、MG300には、要求電力値P(MG)の電力が供給される。
【0067】
以上のように、本実施の形態に係る電力制御ユニットの制御装置によれば、モータジェネレータの要求トルクが小さく、バッテリの定格電圧を昇圧した電力をモータジェネレータに供給する必要がない場合であっても、バッテリ温度が低い場合には、最大昇圧値で昇圧するように昇圧コンバータが制御される。これにより、バッテリに交流成分を含む電流が流れるため、バッテリ内部での発熱がより促進される。さらに、バッテリを流れる電流の直流成分よりも交流成分の振幅が大きいと、昇圧コンバータのスイッチング素子がオン/オフされるたびに、バッテリの充放電が繰返される。そのため、放電が長時間継続されることによる過放電を防止することができる。これにより、バッテリの過放電による劣化を抑制しつつ、バッテリをより早期に暖機することができる。
【0068】
なお、本実施の形態においては、交流成分がバッテリ100の放電電流に含まれる場合について説明したが、本発明に係る電力制御ユニットの制御装置において、交流成分が含まれる電流がバッテリ100の放電電流であることに限定されない。すなわち、交流成分がバッテリ100の充電電流に含まれる場合であっても、バッテリをより早期に暖機するこができる。
【0069】
<第1の変形例>
上述した実施の形態においては、バッテリ100からの電力のみをMG300に供給する電力供給ユニットについて説明したが、本発明に係る制御装置が適用できる電力供給ユニットはこれに限定されない。
【0070】
たとえば、図7に示すように、第1の実施の形態に係る電力供給ユニットと比べて、平滑コンデンサ400とインバータ200との間にバッテリ100と並列に接続され、水素と空気中の酸素とを化学反応させて発電する燃料電池2010を含む電力供給ユニットにも、本発明に係る制御装置が適用できる。
【0071】
このような電力供給ユニットにおいては、バッテリ100の電力と燃料電池2010の電力とを、MG300の負荷に応じて最適に制御することが可能である。たとえば、MG300の要求トルク値T(MG)が低い場合には、燃料電池2010からの電力のみをMG300に供給し、MG300の要求トルク値T(MG)が高く燃料電池2010の電力だけでは不足する場合には、バッテリ100の電力が補充される。
【0072】
このようにバッテリ100の電力が必要になる場合に備えて、要求トルク値T(MG)が低い場合(S104にてYES)であっても、バッテリ温度が低温であると(S108にてYES)、昇圧するように昇圧コンバータ800が制御される(S110)。これにより、バッテリ100を早期に暖機して、MG300の要求トルク値T(MG)が高くなったときに、バッテリ100の電力を十分に補充することができる。
【0073】
なお、燃料電池2010の代わりに、たとえば、バッテリ100よりも入出力特性が優れるキャパシタを備えてもよい。この場合であっても、バッテリ100を早期に暖機して、バッテリ100の入出力特性を早期に回復させることができる。
【0074】
<第2の変形例>
上述した実施の形態においては、電力供給ユニットの制御装置が搭載される車両が、MG300からの駆動力のみにより走行する電気自動車として説明したが、本発明に係る電力供給ユニットが搭載される車両は、電気自動車に限定されない。たとえば、図8に示すように、ハイブリッド車両であってもよい。
【0075】
このハイブリッド車両は、第1の実施の形態に係る車両と比べて、インバータ200とMG300とに代えて、エンジン1000と、MG(1)1300と、MG(2)1310と、エンジン1000とMG(1)1300とMG(2)1310とに接続される動力分割機構1400と、MG(1)1300に接続されるインバータ(1)1200と、MG(2)1310に接続されるインバータ(2)1210と、減速機1040と、ドライブシャフト1050と、駆動輪1060とを含む。
【0076】
この車両は、エンジン1000およびMG(2)1310の少なくともいずれか一方からの動力が、減速機1040およびドライブシャフト1050を経由して駆動輪1060に伝達されることにより走行する。エンジン1000が発生する動力は、動力分割機構1400により2経路に分割される。一方は減速機1040およびドライブシャフト1050を介して駆動輪1060を駆動する経路である。もう一方は、MG(1)1300を駆動させて発電する経路である。
【0077】
このような車両において、MG(1)1300およびMG(2)1310の要求トルクが低い場合であっても、バッテリ温度が低温であると(S108にてYES)、昇圧するように昇圧コンバータ800が制御される(S110)。これにより、MG(1)1300およびMG(2)1310の要求トルクが高くなるときに備えて、バッテリ100を早期に暖機することができる。
【0078】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の実施の形態に係る電力供給ユニットの制御装置が搭載される車両の構造を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る電力供給ユニットを構成するコンバータを流れる電流を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る電力供給ユニットの制御装置の機能ブロック図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る電力供給ユニットの制御装置であるECUの制御構造を示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施の形態に係る電力供給ユニットを構成するバッテリを流れる電流を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る電力供給ユニットを構成するバッテリの温度の時間変化を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態の第1の変形例に係る電力供給ユニットの制御装置が搭載される車両の構造を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態の第2の変形例に係る電力供給ユニットの制御装置が搭載される車両の構造を示す図である。
【符号の説明】
【0080】
100 バッテリ、102 バッテリ温度計、200 インバータ、300 モータジェネレータ、400 平滑コンデンサ、600 ECU、800 昇圧コンバータ、802 第1電圧計、804 第2電圧計、810 第1スイッチング素子、820 第2スイッチング素子、812,822 ダイオード、830 リアクトル、840 コンデンサ、702 車速センサ、704 アクセル開度センサ、706 ブレーキ踏力センサ、1000 エンジン、1300 MG(1)、1310 MG(2)、1400 動力分割機構、1200 インバータ(1)、1210 インバータ(2)、1040 減速機、1050 ドライブシャフト、1060 駆動輪、2010 燃料電池。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷に電力を供給する二次電池と、前記負荷と前記二次電池との間に設けられ、スイッチング素子のオンオフにより入力電圧を変圧して出力するコンバータとを備えた電力供給ユニットの制御装置であって、
前記負荷に要求される出力を算出するための手段と、
前記要求される出力に基づいて、前記コンバータによる変圧が必要であるか否かを判断するための変圧判断手段と、
前記二次電池の温度を検出するための手段と、
前記二次電池の温度が予め定められた温度以下であるか否かを判断するための温度判断手段と、
前記変圧判断手段により前記変圧が必要でないと判断され、かつ前記温度判断手段により前記二次電池の温度が予め定められた温度以下であると判断されると、前記コンバータを作動するように制御するための制御手段とを含む、電力供給ユニットの制御装置。
【請求項2】
前記変圧判断手段は、前記コンバータによる昇圧が必要であるか否かを判断するための手段を含み、
前記制御装置は、前記変圧判断手段により前記昇圧が必要であると判断されると、前記二次電池の定格電圧を前記要求される出力に応じた値に昇圧するように、前記コンバータを制御するための手段をさらに含み、
前記制御手段は、前記定格電圧を予め定められた値に昇圧するように、前記コンバータを制御するための手段を含む、請求項1に記載の電力供給ユニットの制御装置。
【請求項3】
前記予め定められた値は、前記コンバータにおける最大昇圧値である、請求項2に記載の電力供給ユニットの制御装置。
【請求項4】
前記電力供給ユニットは、前記コンバータと前記負荷との間に設けられ、入力電流を変換して出力するインバータをさらに含み、
前記制御装置は、
前記要求される出力に基づいて、前記負荷から要求される電力を算出するための手段と、
前記コンバータの出力電圧を検出するための手段と、
前記要求される電力と前記出力電圧とに基づいて、前記要求される電力が前記負荷に供給されるように、前記インバータにより変換される電流を制御するための手段とをさらに含む、請求項1〜3のいずれかに記載の電力供給ユニットの制御装置。
【請求項5】
前記電力供給ユニットは、車両に搭載され、
前記負荷は、前記二次電池の電力により前記車両の駆動力を発生するとともに、前記車両の制動時に回生電力を発生する回転電機である、請求項1〜4のいずれかに記載の電力供給ユニットの制御装置。
【請求項6】
負荷に電力を供給する二次電池と、前記負荷と前記二次電池との間に設けられ、スイッチング素子のオンオフにより入力電圧を変圧して出力するコンバータとを備えた電力供給ユニットの制御方法であって、
前記負荷に要求される出力を算出するステップと、
前記要求される出力に基づいて、前記コンバータによる変圧が必要であるか否かを判断する変圧判断ステップと、
前記二次電池の温度を検出するステップと、
前記二次電池の温度が予め定められた温度以下であるか否かを判断する温度判断ステップと、
前記変圧判断ステップにより前記変圧が必要でないと判断され、かつ前記温度判断ステップにより前記二次電池の温度が予め定められた温度以下であると判断されると、前記コンバータを作動するように制御する制御ステップとを含む、電力供給ユニットの制御方法。
【請求項7】
前記変圧判断ステップは、前記コンバータによる昇圧が必要であるか否かを判断するステップを含み、
前記制御方法は、前記変圧判断ステップにより前記昇圧が必要であると判断されると、前記二次電池の定格電圧を前記要求される出力に応じた値に昇圧するように、前記コンバータを制御するステップをさらに含み、
前記制御ステップは、前記定格電圧を予め定められた値に昇圧するように、前記コンバータを制御するステップを含む、請求項6に記載の電力供給ユニットの制御方法。
【請求項8】
前記予め定められた値は、前記コンバータにおける最大昇圧値である、請求項7に記載の電力供給ユニットの制御方法。
【請求項9】
前記電力供給ユニットは、前記コンバータと前記負荷との間に設けられ、入力電流を変換して出力するインバータをさらに含み、
前記制御方法は、
前記要求される出力に基づいて、前記負荷から要求される電力を算出するステップと、
前記コンバータの出力電圧を検出するステップと、
前記要求される電力と前記出力電圧とに基づいて、前記要求される電力が前記負荷に供給されるように、前記インバータにより変換される電流を制御するステップとをさらに含む、請求項6〜8のいずれかに記載の電力供給ユニットの制御方法。
【請求項10】
前記電力供給ユニットは、車両に搭載され、
前記負荷は、前記二次電池の電力により前記車両の駆動力を発生するとともに、前記車両の制動時に回生電力を発生する回転電機である、請求項6〜9のいずれかに記載の電力供給ユニットの制御方法。
【請求項11】
請求項6〜10のいずれかに記載の制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項12】
請求項6〜10のいずれかに記載の制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラムをコンピュータ読み取り可能に記録した記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−109778(P2008−109778A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−290257(P2006−290257)
【出願日】平成18年10月25日(2006.10.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】