説明

電動式ブレーキ装置

【課題】軸力センサにより安定したブレーキ力の検出を可能にするとともに、減速度検出値による制御と組み合わせてあらゆる速度域で高い精度にてブレーキ制御を行う。
【解決手段】ブレーキロータ23の回転面に直交させて電気アクチュエータ4によりブレーキパッド22を押し付けて制動を行う電動式ブレーキにおいて、前記ブレーキパッド22の押付け力を検出する軸力センサ10から得られた検出値と、車輪速度センサ30から演算されて得られた減速度とから、運転者の操作目標とする減速度制御を行うことにより、温度変化の影響を受けにくく指向性を保持し易い直動変換部13、14に配設した軸力センサ10と、制動中のブレーキパッド22の摩擦係数の変化の影響を受けにくい減速度検出とを組み合わせて、操作者のブレーキ要求に基づく電気的ブレーキ制御をあらゆる速度域にて高い精度にて行うことが可能となった。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキロータの回転面に直交させて電気アクチュエータによりブレーキパッドを押し付けて制動を行う電動式ブレーキに関する。
【背景技術】
【0002】
車両において使用されるディスクブレーキ装置にあって、近年では、電気的なモータを原動機とする電気自動車の普及に伴って、ガソリン等の燃料を用いた原動機が発生する負圧等を利用したブレーキ倍力機構が使用できないため、電気自動車等において従来の油圧ブレーキシステムを搭載するには、例えば真空ポンプ等の倍力装置が必要になるが、そのためにブレーキ配管や油圧制御ユニットが車両の重量を増加させる虞れがあった。そこで、車両の軽量化、油圧廃止を目的として、また、回生ブレーキの制御のし易さからブレーキ装置の電動化が提案されている。電動ディスクブレーキは、電気アクチュエータによる回転トルクを減速機、直動変換機によって垂直抗力として、回転するブレーキロータへブレーキパッド等の摩擦材を押し付けるものである。
【0003】
さらに、ウェッジ作用等を利用した機械的な自己倍力機構によって制動を行う電動サーボディスクブレーキによる高効率化も図られている。このような電動サーボディスクブレーキの適用により電気アクチュエータの小型化や消費電力を低減することができ、電気自動車等の電動車両の航続距離増加やバッテリの小型化等への貢献が期待できる。また、このような電動式ブレーキ装置においては、制動時には摩擦ブレーキの摩擦材の摩擦係数が絶えず変動するが、これらの変動にに対応して、電動アクチュエータであるモータへの供給電力値とブレーキの制動トルク値との間の実際の関係が取得されて利用されておらず、精度のよい制御がなされていなかった。そこで、下記特許文献1に記載されたような高精度で制御を行う電動式ブレーキが提案された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−43041号公報(公報要約書参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1に開示された第1従来例である電動式ブレーキ装置を図8を用いて説明すると、図8(B)に示すように、コントローラ150が車両走行中に、モータ120、130への供給電流値Iと前輪ブレーキ122、後輪ブレーキ132が車輪に付与する制動トルク値Tとの実際の関係を推定し、その推定された関係を利用して、運転者によるブレーキ操作力Fに対する目標制動トルクT* を実現するための目標供給電流値I* を決定するものである。図8(A)に示すように、コントローラ150にはブレーキペダル140の操作力が操作力センサ302から入力されるとともに、車体減速度センサ310からの減速度が入力される。図8(C)に示すように、制動トルクTはディスク104に圧接されるブレーキパッドの裏板140の移動に応じて力センサ380にて検出される。前記裏板140は傾斜面を有しており、アクチュエータであるモータ120の回転駆動力が直動変換された押圧部材134の抗力をボール144を介して円滑に自己倍力する。
【0006】
このような電動式ブレーキ装置により、ブレーキペダル140の操作力に応じた供給電流値Iと、車輪におけるブレーキ部からの実際の制動トルク値Tとから実際の関係を推定して、運転者によるブレーキ操作力Fに対する目標制動トルクT* を実現するための目標供給電流値I* を決定できるので、電気的な制御の課題を克服して精度の良いブレーキ制御を行うことが可能となった。そして、自己倍力機構の採用も、アクチュエータであるモータの小型化や直動変換部における減速機の小型化を可能にした。
【0007】
しかしながら、前記従来の電動式ブレーキ装置にあって、ブレーキペダルの操作力と制動力との間のずれを克服して、油圧ブレーキのような精度の良いブレーキ制御が可能となったものの、制動トルクを検出する力センサ380がブレーキパッドの裏板近傍の進行方向に配設されているため、配設スペースの制限やブレーキパッドの摩擦熱の影響を受け易く、また、自己倍力機構におけるブレーキパッドの裏板の傾斜面に起因して力センサの指向性にばらつきが発生し、検出値の精度に悪影響を与える可能性があった。さらに、車体減速度センサから検出される減速度は車両の低速から停止時に到る低速域では精度が劣ることは避けられなかった。
【0008】
そこで本発明は、従来の電動式ブレーキ装置の諸課題を解決して、トルクセンサを用いることなく、軸力センサにより安定したブレーキ力の検出を可能にするとともに、減速度検出値による制御と組み合わせてあらゆる速度域で高い精度にてブレーキ制御が行える電動式ブレーキ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このため本発明は、ブレーキロータの回転面に直交させて電気アクチュエータによりブレーキパッドを押し付けて制動を行う電動式ブレーキにおいて、前記ブレーキパッドの押付け力を検出する軸力センサから得られた検出値と、車輪速度センサから演算されて得られた減速度とから、運転者の操作目標とする減速度制御を行うことを特徴とする。また本発明は、前記減速度制御は、車輪速度センサから演算された減速度あるいは車輪速度が所定の微速度以下になると、軸力センサからの検出値のみに基づいて行われるように構成したことを特徴とする。また本発明は、前記車輪速度センサおよび軸力センサからの出力が断たれてから一定時間経過した場合は、前記ブレーキパッドのロータへの押付けを機械的に保持するように構成したことを特徴とする。また本発明は、前記ブレーキパッドのロータへの押付け時に、ブレーキパッドの回転方向への連れ回りによってブレーキパッドの押付け方向の軸力が増大する自己倍力機構を備えたことを特徴とするもので、これらを課題解決のための手段とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ブレーキロータの回転面に直交させて電気アクチュエータによりブレーキパッドを押し付けて制動を行う電動式ブレーキにおいて、前記ブレーキパッドの押付け力を検出する軸力センサから得られた検出値と、車輪速度センサから演算されて得られた減速度とから、運転者の操作目標とする減速度制御を行うことにより、温度変化の影響を受けにくく指向性を保持し易い直動変換部に配設した軸力センサと、制動中のブレーキパッドの摩擦係数の変化の影響を受けにくい減速度検出とを組み合わせて、操作者のブレーキ要求に基づく電気的ブレーキ制御をあらゆる速度域にて高い精度にて行うことが可能となった。
【0011】
また、前記減速度制御は、車輪速度センサから演算された減速度あるいは車輪速度が所定の微速度以下になると、軸力センサからの検出値のみに基づいて行われるように構成した場合は、通常速度では既存の車輪速度センサを用いて低コストにて減速度制御を行い、車輪速度センサからの出力値の精度が劣化する所定の微速度以下では軸力センサからの検出値により減速度制御を行うので、あらゆる速度で高い精度での減速度制御が可能となる。さらに、前記車輪速度センサおよび軸力センサからの出力が断たれてから一定時間経過した場合は、前記ブレーキパッドのロータへの押付けを機械的に保持するように構成したことにより、車両の停止が確認されると、電気アクチュエータへの過大な電流の通電継続が防止され、消費電力の低減、電気アクチュエータの劣化抑制を可能にするとともに、機械的な駐車ブレーキが実現される。
【0012】
さらにまた、前記ブレーキパッドのロータへの押付け時に、ブレーキパッドの回転方向への連れ回りによってブレーキパッドの押付け方向の軸力が増大する自己倍力機構を備えた場合は、電気アクチュエータ自体の小型化による消費電力の低減、減速機の小型化等が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の電動式ブレーキ装置の第1実施例を示す要部断面図である。
【図2】本発明の電動式ブレーキ装置の第2実施例を示す要部断面図である。
【図3】本発明の電動式ブレーキ装置が採用された車両システム例図である。
【図4】ペダルストロークと要求減速度の関係例テーブルを示す図である。
【図5】本発明の電動式ブレーキ装置における制御例フローチャート図である。
【図6】同、通常速度における減速度制御のシステムブロック図である。
【図7】同、所定の微速度以下における減速度制御のシステムブロック図である。
【図8】従来の電動式ブレーキ装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の電動式ブレーキ装置を実施するための好適な形態を図面に基づいて説明する。本発明の電動式ブレーキ装置は、図1に示すように、ブレーキロータ23の回転面に直交させて電気アクチュエータ4によりブレーキパッド22を押し付けて制動を行う電動式ブレーキにおいて、前記ブレーキパッド22の押付け力を検出する軸力センサ10から得られた検出値と、車輪速度センサ30から演算されて得られた減速度とから、運転者の操作目標とする減速度制御を行うことを特徴とするものである。
【実施例1】
【0015】
図1は本発明の電動式ブレーキ装置の第1実施例を示す要部断面図である。図1において、電動式ブレーキ5は以下のように構成される。ハウジング8はサポート等により車体等の静止部に取り付けられる。前記サポートに対してハウジング8はフローティング状態にて支持され、ハウジング8の内外に介設されたブレーキパッド22がブレーキロータ23の回転面の両側に直交して直動するように構成される。矢印は正転時のロータ23の回転方向を示す。ハウジング8の内側(図面下方)には、電気アクチュエータであるモータ4、機械的保持機構28、減速機9、直動変換機である回動軸部13およびボールスクリュ14、さらには自己倍力機構19(16、17、18)等が収納設置される。
【0016】
前記ブレーキロータ23の回転面と直交状に、すなわちブレーキロータ23の回転軸と平行な回転軸を有する電気アクチュエータであるモータ4の回転駆動力は、歯車列からなる減速機9を介して、同様に前記ブレーキロータ23の回転軸と平行な回転軸部13に伝達される。回転軸部13には筒状のボールスクリュ14が螺合されており、該ボールスクリュ14がモータ4から回転軸部13に伝達された回転駆動力を直動変換して、ブレーキロータ23の回転面に直交状に作動プレート15、自己倍力機構19およびパッドプレート20を介してブレーキパッド22を押し付けてブレーキ動作を行う。その際、内側のブレーキパッド22に作用する反作用によりハウジング8が内側(図面下方)に移動しようとし、外側のブレーキパッド22を内側に押し付ける力となり、内外のブレーキパッド22、22によりブレーキロータ23を内外から挟持することになる。
【0017】
自己倍力機構19は、ボールスクリュ14側の作動プレート15に固定されたカム板16と、パッドプレート20に固定されたカム板18とこれらの間に介設されたボール17とから構成され、制動時におけるパッドプレート20のスプリング21に抗するブレーキロータ23との連れ回り移動の際に、対向するカム板16、18の傾斜面とボール17とのカム作用により、ブレーキパッド22の押付け方向の軸力を増大させることになる。前記ボールスクリュ14が螺合する回動軸部13には調芯プレート12が形成され、調芯ベアリング11と組み合わせて直動変換機の指向性すなわちブレーキロータ23の回転面に対する直交精度が向上・維持される。
【0018】
前記ボールスクリュ14の背面の密閉空間に軸力センサ10が設置され、該軸力センサ10が制動時のブレーキロータ23の回転面に対する制動力の反力を熱や水、埃の影響を受けずに精度良く検出する。一方、モータ4の反出力軸側には歯車を形成したモータロータ27が突出配置される。この歯車を形成したモータロータ27に、車輪速度センサ30および軸力センサ10からの出力が断たれてから一定時間経過するとソレノイド24の通電遮断によりケース26内にて進出するラッチ25が係止されて、前記ブレーキパッド22のロータへの押付けを機械的に保持するように構成されているので、電気アクチュエータであるモータ4への過大な電流の通電継続が防止され、消費電力の低減、電気アクチュエータの劣化抑制を可能にするとともに、機械的な駐車ブレーキが実現される。かくして、交差点での一時停止等で操作者がブレーキペダルを踏み続けても、電動ブレーキで消費する電力を抑制することができる。
【0019】
図3は本発明の電動式ブレーキ装置が採用された車両システム例図である。符号6はモータを原動機とした変速機等からなる駆動機構である。バッテリー7により原動機としての電気的エネルギーを得ると同時に、ブレーキ装置における電気アクチュエータ等の電力をも得る。操作者がブレーキペダル1を踏むことによって、ストロークシミュレータ2を通じてECU(ブレーキ制御用の制御手段)3においてブレーキペダル踏力やペダルストロークに応じて要求される車両の減速度(制動力)が決定される。その減速度の決定は、図4に例示するようなECU3内に格納されたペダルストローク=車輪減速度・ピストン軸力テーブルを参照して求められる。各車輪に設けられた電動ブレーキ5における電気アクチュエータ4のモータドライバへ、電流を指令値として各車輪の減速度(ブレーキ力)が制御される。操作方法はブレーキペダルに限らず、図3に図示しないレバー等が用いられる場合もある。ブレーキ制御用の制御手段であるECU3は、車両制御用の制御手段と共用してもよいが、別途設けられた車両制御用の制御ECUにおいて制御される車輪アンチロック制御、車体横滑り制御等の指令は、操作者の要求よりも優先される。
【0020】
図5は本発明の電動式ブレーキ装置における制御例フローチャート図である。ステップS1にて減速度(ブレーキ)制御が開始され、ステップS2にてブレーキペダルの踏動が判定される。踏動がなく、ステップS14にて車体制御ECUからの入力もないと電流指令が0となって保持機構(駐車ブレーキ)が解除される。ステップS14にて車体制御ECUからの入力があると、ステップS16にて車体制御ECUの電流指令に基づく減速度制御、例えば旋回中のオーバーステア防止のための横滑り制御等が行われる。ステップS2にてブレーキペダルの踏動が確認されると、ステップS3にて車輪速度が判定される。車輪速度Vが例えば5km/h以上の通常速度ならば、ステップS4に移行してペダルストロークに応じた減速度要求がなされる。ステップS5にて車体制御ECU指令がなされ、ステップS16の車体制御ECUの電流指令に基づく減速度制御への指令も行う他、ステップS6に移行して、制動時の制動エネルギーを駆動用モータにより回収する回生制御による減速度の差分を加味し、ステップS7に移行して減速度差分を考慮した電流指令による減速度制御がなされる。
【0021】
ステップS3にて車輪速度Vが所定の微速度が例えば5km/h以下の低速が判定されると、ステップS8にて保持機構が作動しているか否かが判定される。作動していると判定されればステップS13に移行して保持機構が継続する。ステップS8にて保持機構が非作動とされれば、ステップS9に移行してペダルストロークから軸力センサの検出値に基づいてブレーキ軸力要求がなされて、ステップS10にて軸力差分による電流指令によって減速度制御がなされる。ステップS11にて車輪速度=0すなわち車両の停止が確認され、例えば1秒経過すると、ステップS12にて保持機構が作動して、電流指令値が0となりスタートS1に戻る。制御はスタート・リターン間で例えば1msの制御周期でなされる。この制御が繰り返される。
【0022】
図6は通常速度における減速度制御のシステムブロック図である。通常の例えば5km/h以上の車輪速度のときは、操作者の要求減速度に対して電気アクチュエータの電流指令値は各車輪に設けられた車輪速度センサから車輪速度を算出し、それを微分演算した車輪減速度をフィードバックして要求値との差分を算出し、その差分値をゼロにするように電気アクチュエータの電流を制御する。電動車両では、減速時に駆動用モータによる回生制御も入るため、操作者の要求値に対して回生制御による制動力を加味して電動ブレーキの指令値が決定される。回生制御は駆動用モータ制御ECUにより行われる。制動中にブレーキパッドの摩擦係数が変化しても出力される減速度は変化しないので、ブレーキ操作の安定性に寄与でき、自己倍力型ディスクブレーキを用いることで、消費電力抑制も可能になる。既存の車輪速度センサを用いて制御が行えるためコスト低減にも寄与できる。
【0023】
図7は所定の微速度以下における減速度制御のシステムブロック図である。微減速例えば5km/h以下の車輪速度のときは、車輪速度センサから検出される車輪速度の減速度演算の精度が悪くなるためフィードバックされる減速度の精度も低下する。停止時にはフィードバックする減速度がゼロになり、操作者の要求が減速度のままだと必要以上の電流を電気アクチュエータへ供給することにもなってしまう。そこで、図6のような車輪減速度のフィードバックに基づく制御は好ましくなく、図7のような軸力センサを用いたブレーキ軸力フィードバック制御に切り換えられる。操作者による要求値をブレーキピストン(実施例ではボールスクリュ)軸力として電気アクチュエータへの電流指令制御に切り換える。このような制御によって、微速度にて精度が劣化する車輪速度あるいは減速度を用いることなく、軸力センサからの検出値によりブレーキ制御を高精度にて行うことができる。
【実施例2】
【0024】
図2は 本発明の電動式ブレーキ装置の第2実施例を示す要部断面図である。本実施例のものは自己倍力機構を持たない電動式ブレーキの構造例であり、図1の実施例のものとの差異は、ボールスクリュ14側に設置された作動プレート15が直接パッドプレート20に臨接されている。したがって、ブレーキロータ23へのブレーキパッド22、22の押し付けによるブレーキ軸力は、そのまま直動変換機であるボールスクリュ14の背面の密閉空間に設置された軸力センサ10にて熱や水、埃の影響を受けずに精度良く検出される。本実施例では、自己倍力機構がないので、その分、入力した軸力指令値に対して発生するブレーキトルクが速度・摩擦変化に対してあまり変動することがなく、電気アクチュエータであるモータの小型化については効果を見ないものの、指向性を高くできて熱の影響も受けにくく高い精度にて軸力の検出値が得られる軸力センサが検出した軸力値による軸力フィードバック制御が高精度にて行える。
【0025】
以上、本発明の実施例について説明してきたが、本発明の趣旨の範囲内で、電気アクチュエータとしてのモータの形状、形式、ブレーキパッドおよびパッドプレートの形状、形式、電気アクチュエータの回動からブレーキパッドを押し付けるまでの直動変換形態(実施例の回動軸部とボールスクリュとの螺合による他、回動軸部とパンタグラフとの組合せで直動に変換するもの等)、軸力センサの形状、形式およびその配設部位(好適にはブレーキ熱の発生部位であるブレーキロータから直交して離れた位置で回動軸部の調芯がなされたボールスクリュの背面等に配設される)、車輪速度センサの形状、形式(汎用の種々のものが採用され得る)および該センサからの減速度の演算形態、運転者の操作目標の設定形態(実施例のブレーキペダルの踏動によるストロークシミュレータ出力による他、適宜の操作目標手段が採用され得る)、減速度制御から軸力値制御への切替え形態(切替え時のゲイン調整で円滑に切替えるようにすることもできる)、ソレノイドの通電遮断によるラッチによる機械的保持形態(実施例のようにモータロータをラッチにて保持する他、分割内歯状のリング部材でモータロータを周囲から挟持することもできる)およびその保持部位(減速機の歯車を保持することもできる)、自己倍力機構の形状、形式等については適宜選定できる。また、実施例に記載の諸元はあらゆる点で単なる例示に過ぎず限定的に解釈してはならない。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明の電動式ブレーキ装置は、好適には電気自動車に適用されるが、電車等の鉄道車両のブレーキにも採用できる。また、燃料式エンジン等を併設するハイブリッド車両にも適用が可能である。
【符号の説明】
【0027】
4 電気アクチュエータ(モータ等)
5 電動式ブレーキ
8 ハウジング
9 減速機
10 軸力センサ
11 調芯ベアリング
12 調芯プレート
13 回動軸部
14 ボールスクリュ
15 作動プレート
16 カム板
17 ボール
18 カム板
19 自己倍力機構
20 パッドプレート
21 スプリング
22 ブレーキパッド
23 ブレーキロータ
24 ソレノイド
25 ラッチ
26 ケース
27 モータロータ
28 機械的保持機構
30 車輪速度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキロータの回転面に直交させて電気アクチュエータによりブレーキパッドを押し付けて制動を行う電動式ブレーキにおいて、前記ブレーキパッドの押付け力を検出する軸力センサから得られた検出値と、車輪速度センサから演算されて得られた減速度とから、運転者の操作目標とする減速度制御を行うことを特徴とする電動式ブレーキ装置。
【請求項2】
前記減速度制御は、車輪速度センサから演算された減速度あるいは車輪速度が所定の微速度以下になると、軸力センサからの検出値のみに基づいて行われるように構成したことを特徴とする請求項1に記載の電動式ブレーキ装置。
【請求項3】
前記車輪速度センサおよび軸力センサからの出力が断たれてから一定時間経過した場合は、前記ブレーキパッドのロータへの押付けを機械的に保持するように構成したことを特徴とする請求項1または2に記載の電動式ブレーキ装置。
【請求項4】
前記ブレーキパッドのロータへの押付け時に、ブレーキパッドの回転方向への連れ回りによってブレーキパッドの押付け方向の軸力が増大する自己倍力機構を備えたことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の電動式ブレーキ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−122649(P2011−122649A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−280401(P2009−280401)
【出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(000000516)曙ブレーキ工業株式会社 (621)
【Fターム(参考)】