電動車両の制御装置
【課題】モータと駆動輪の間のトルク伝達を断接する摩擦係合要素における目標伝達トルク容量の補正精度を向上することができる電動車両の制御装置を提供すること。
【解決手段】本発明の電動車両の制御装置は、走行駆動源となるモータ(モータジェネレータ)2と駆動輪(タイヤ)7,7の間に介装され、モータ2と駆動輪7,7との間のトルク伝達を断接する摩擦係合要素(第2クラッチ)5における目標指令値(目標伝達トルク容量)を設定する際、補正量演算手段(補正量演算部)401Bにより、目標指令値の補正量を、摩擦係合要素5への入力トルク(推定モータトルク)が増大するほど大きな値に設定する。
【解決手段】本発明の電動車両の制御装置は、走行駆動源となるモータ(モータジェネレータ)2と駆動輪(タイヤ)7,7の間に介装され、モータ2と駆動輪7,7との間のトルク伝達を断接する摩擦係合要素(第2クラッチ)5における目標指令値(目標伝達トルク容量)を設定する際、補正量演算手段(補正量演算部)401Bにより、目標指令値の補正量を、摩擦係合要素5への入力トルク(推定モータトルク)が増大するほど大きな値に設定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータと駆動輪との間のトルク伝達を断接する摩擦係合要素を備えた電動車両の制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンとモータと駆動輪の順に接続したハイブリッド車両において、モータと駆動輪の間に介装した摩擦係合要素をスリップ締結させ、エンジンを動力源に含みながら走行するWSCモードを有する電動車両の制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-143418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の電動車両の制御装置にあっては、WSCモード時に摩擦係合要素がスリップ締結するので、摩擦係合要素の伝達トルク容量制御を高精度で行わなければならなかった。そのため、摩擦係合要素における目標指令値である目標伝達トルク容量の補正精度を向上する必要があった。
【0005】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、モータと駆動輪の間のトルク伝達を断接する摩擦係合要素に対する目標指令値の補正精度を向上することができる電動車両の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の電動車両の制御装置では、モータと、摩擦係合要素と、入力トルク検出手段と、補正量演算手段と、を備える。
前記摩擦係合要素は、前記モータと駆動輪の間に介装され、前記モータと前記駆動輪との間のトルク伝達を断接する。
前記入力トルク検出手段は、前記摩擦係合要素への入力トルクを検出する。
前記補正量演算手段は、前記摩擦係合要素における目標指令値を設定する際、前記目標指令値の補正量を、前記入力トルクが増大するほど大きな値に設定する。
【発明の効果】
【0007】
よって、摩擦係合要素における目標指令値を設定する際、補正量演算手段により、目標指令値の補正量は、摩擦係合要素への入力トルクが増大するほど大きな値に設定される。
すなわち、摩擦係合要素への入力トルクが増大するほど、摩擦係合要素の入力軸周りのフリクショントルクは増加する。そのため、目標指令値の補正量を、摩擦係合要素への入力トルクが増大するほど大きな値に設定することで、入力トルクに応じて増加する上記フリクショントルク分の補正を実施することができ、摩擦係合要素ごとのばらつきを補正することができる。
この結果、モータと駆動輪の間のトルク伝達を断接する摩擦係合要素における目標指令値の補正精度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例1の制御装置が適用されたハイブリッド車両(電動車両の一例)のパワートレインを示すパワートレイン構成図である。
【図2】実施例1の制御装置が適用されたハイブリッド車両の制御システムを示す制御システム構成図である。
【図3】実施例1の統合コントローラを示す演算ブロック図である。
【図4】実施例1の制御装置で用いられる目標定常トルクマップ(a)とMGアシストトルクマップ(b)を示すマップ図である。
【図5】実施例1の制御装置で用いられる走行モード選択マップの一例を示す図である。
【図6】実施例1の制御装置で用いられるバッテリSOCに対する走行中発電要求出力マップの一例を示す図である。
【図7】実施例1の制御装置で用いられるエンジンの最適燃費線を示す特性図である。
【図8】実施例1の自動変速機における変速線の一例を示す変速マップ図である。
【図9】実施例1の動作点指令部が有する目標CL2トルク演算ブロック図である。
【図10】実施例1の第1補正量算出部の詳細な演算ブロック図である。
【図11】実施例1の統合コントローラにて実行される目標CL2トルク演算処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の電動車両の制御装置を実現する最良の形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
【実施例1】
【0010】
まず、構成を説明する。
図1は、実施例1の制御装置が適用されたハイブリッド車両のパワートレインを示すパワートレイン構成図である。以下、図1に基づきパワートレイン構成を説明する。
【0011】
実施例1の制御装置が適用されたハイブリッド車両は、図1に示すように、エンジン1と、モータジェネレータ(モータ)2と、自動変速機3と、第1クラッチ4(摩擦係合要素)と、第2クラッチ5と、ディファレンシャルギア6と、タイヤ7,7(駆動輪)と、を備えている。すなわち、このハイブリッド車両は、エンジンと1モータ・2クラッチを備えたパワートレイン構成である。
【0012】
前記エンジン1は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンであり、その出力軸とモータジェネレータ(略称MG)2の入力軸とが、第1クラッチ(略称CL1)4を介して連結される。
【0013】
前記第1クラッチ4は、エンジン1とモータジェネレータ2の間に介装され、エンジン1とモータジェネレータ2とを断接するクラッチであり、締結油圧を制御することによって伝達トルク容量が可変する。この第1クラッチ4としては、例えば、ダイアフラムスプリングによる付勢力を保ち、ピストンを有する油圧アクチュエータを用いたストローク制御により完全締結〜スリップ締結〜完全解放までが制御されるノーマルクローズの乾式単板クラッチが用いられる。
【0014】
前記モータジェネレータ2は、ロータに永久磁石を埋設しステータにステータコイルが巻き付けられた同期型モータである。このモータジェネレータ2の出力軸と自動変速機(略称AT)3の入力軸とが連結され、走行駆動源となる。
【0015】
前記第2クラッチ5は、モータジェネレータ2とタイヤ7,7の間に介装され、モータジェネレータ2とタイヤ7,7とを断絶するクラッチであり、締結油圧を制御することによって伝達トルク容量が可変する。この第2クラッチ5としては、例えば、比例ソレノイドで油流量及び油圧を連続的に制御できるノーマルオープンの湿式多板クラッチや湿式多板ブレーキが用いられる。
【0016】
前記自動変速機3は、有段の変速段を車速やアクセル開度等に応じて自動的に切り替える有段変速機であり、その出力軸にディファレンシャルギア6を介してタイヤ7,7が連結される。なお、実施例1では、前記第2クラッチ5として、自動変速機3とは独立の専用クラッチとして新たに追加したものではなく、自動変速機3の各変速段にて締結される複数の摩擦要素のうち、所定の条件に適合する摩擦要素(クラッチやブレーキ)を選択している。
【0017】
さらに、このパワートレインには、エンジン1の出力回転数を検出するエンジン回転センサ10と、モータジェネレータ2の入力回転数を検出するMG回転センサ11と、自動変速機3の入力軸回転数を検出するAT入力回転センサ(入力回転数検出手段)12と、自動変速機3の出力軸回転数を検出するAT出力回転センサ13と、が設けられる。
【0018】
そして、このハイブリッド車両は、駆動形態の違いによる走行モードとして、電気自動車モード(以下、「EVモード」という)と、ハイブリッド車モード(以下、「HEVモード」という)と、エンジン使用スリップ走行モード(以下、「WSCモード」という)とを、有する。
【0019】
前記「EVモード」は、第1クラッチ4を解放状態、第2クラッチ5を締結状態とし、モータジェネレータ2の駆動力のみで走行するモードである。この「EVモード」は、モータ走行モード・回生走行モードを有する。「EVモード」は、要求駆動力が低く、バッテリSOCが確保されているときに選択される。さらに、この「EVモード」では、第2クラッチ5を微小なスリップ状態に制御するマイクロスリップ制御モード(以下、μスリップモードという)を有する。このμスリップモードでは、モータジェネレータ2からの出力トルクであるクラッチ入力トルクを、第2クラッチ5における目標伝達トルク容量よりも僅かに増加することで、第2クラッチ5における入力回転数と出力回転数の間に極僅かな回転差を生じさせる。これにより、第2クラッチ5は微小なスリップ状態になる。
【0020】
前記「HEVモード」は、第1クラッチ4及び第2クラッチ5を締結状態として走行するモードであり、モータアシスト走行モード・発電走行モード・エンジン走行モードを有し、いずれかのモードにより走行する。なお、モータアシスト走行モードは、エンジン1とモータジェネレータ2の2つを駆動源として走行する。発電走行モードは、エンジン1を駆動源として走行すると同時に、エンジン1の動力を利用してモータジェネレータ2を発電機として動作させる。エンジン走行モードは、エンジン1の駆動力のみで走行する。この「HEVモード」は、要求駆動力が高いとき、あるいは、バッテリSOCが不足するようなときに選択される。
【0021】
前記「WSCモード」は、モータジェネレータ2の回転数制御とクラッチ油圧制御により、第2クラッチ5をスリップ締結状態に維持しながら走行するモードである。この「WSCモード」では、第2クラッチ5を経過するクラッチ伝達トルクが、車両状態やドライバー操作に応じて決まる要求駆動トルクとなるようにクラッチトルク容量をコントロールする。また、この「WSCモード」は、「HEVモード」の選択状態での停車時・発進時・減速時等のように、エンジン回転数がアイドル回転数を下回るような走行領域やポンプ吐出油が不足するような発進領域において選択される。加えて、「WSCモード」は、「EVモード」から「HEVモード」へのモード遷移に際して行われるエンジン始動制御中にトルク変動を吸収するために選択されると共に、「HEVモード」から「EVモード」へのモード遷移に際して行われるエンジン停止制御中にトルク変動を吸収するために選択される。
【0022】
図2は、実施例1の制御装置が適用されたハイブリッド車両の制御システムを示す制御システム構成図である。以下、図2に基づいて制御システム構成を説明する。
【0023】
実施例1の制御システムは、図2に示すように、統合コントローラ20と、エンジンコントローラ21と、モータコントローラ22と、インバータ8と、バッテリ9と、CL1用ソレノイドバルブ14と、CL2用ソレノイドバルブ15と、アクセル開度センサ16と、ATF温度センサ17と、SOCセンサ18と、電流センサ(入力トルク検出手段)19と、を備えている。
【0024】
前記統合コントローラ20は、パワートレイン系の動作点を統合制御する。この統合コントローラ20では、アクセル開度APOとバッテリ充電状態SOCと、車速VSP(自動変速機出力軸回転数に比例)と、に応じて、運転者が望む駆動力を実現できる運転モードを選択する。そして、モータコントローラ22に目標MGトルクもしくは目標MG回転数を指令し、エンジンコントローラ21に目標エンジントルクを指令し、CL1用ソレノイドバルブ14及びCL2用ソレノイドバルブ15に所定の駆動信号を指令する。
【0025】
前記エンジンコントローラ21は、エンジン1を制御する。前記モータコントローラ22は、モータジェネレータ2を制御する。前記インバータ8は、モータジェネレータ2を駆動する。前記バッテリ9は、電気エネルギーを蓄える。
【0026】
さらに、前記CL1用ソレノイドバルブ14は、第1クラッチ4の油圧を制御する。前記CL2用ソレノイドバルブ15は、第2クラッチ5の油圧を制御する。前記アクセル開度センサ16は、アクセル開度(APO)を検出する。前記ATF温度センサ17は、自動変速機3や第1クラッチ4、第2クラッチ5に供給される作動油(ATF)の温度を検出する。前記SOCセンサ18は、バッテリ9の充電状態を検出する。前記電流センサ19は、モータジェネレータ2に流れる電流を検出する。
【0027】
図3は、実施例1の統合コントローラ20を示す演算ブロック図である。以下、図3に基づいて統合コントローラ20の構成を説明する。
【0028】
前記統合コントローラ20は、図3に示すように、目標駆動トルク演算部100と、モード選択部200と、目標発電出力演算部300と、動作点指令部400と、変速制御部500と、を備えている。
【0029】
前記目標駆動トルク演算部100は、図4(a)に示す目標定常トルクマップと、図4(b)に示すMGアシストトルクマップを用いて、アクセル開度APOと車速VSPから、目標定常トルクとMGアシストトルクを算出する。
【0030】
前記モード選択部200は、図5に示すEV-HEV選択マップを用いて、アクセル開度APOと車速VSPから、目標走行モード(HEVモード、EVモード、WSCモード)を演算する。
このEV-HEV選択マップには、EV領域に存在する運転点(APO,VSP)が横切ると「HEVモード」へと切り替えるEV⇒HEV切替線と、HEV領域に存在する運転点(APO,VSP)が横切ると「EVモード」へと切り替えるHEV⇒EV切替線と、運転点(APO,VSP)が横切ることで「WSCモード」と「HEVモード」を切り替えるHEV⇔WSC切替線と、が設定されている。
前記EV⇒HEV切替線と前記HEV⇒EV切替線は、EV領域とHEV領域を分ける線としてヒステリシス量を持たせて設定されている。前記HEV⇔WSC切替線は、自動変速機3が1速段のときに、エンジン1がアイドル回転数を維持する第1設定車速VSP1に沿って設定されている。但し、「EVモード」の選択中、バッテリSOCが所定値以下になると、強制的に「HEVモード」を目標走行モードとする。
【0031】
前記目標発電出力演算部300は、図6に示す走行中発電要求出力マップを用いて、バッテリSOCから目標発電出力を演算する。また、現在の動作点から図7で示す最適燃費線までエンジントルクを上げるために必要な出力を演算し、前記目標発電出力と比較して少ない出力を要求出力として、エンジン出力に加算する。
【0032】
前記動作点指令部400では、アクセル開度APOと目標定常トルク,MGアシストトルクと目標運転モードと車速VSPと目標発電出力とを入力する。そして、これらの入力情報を動作点到達目標として、過渡的な目標エンジントルクと目標MGトルクと目標ATシフトとCL1ソレノイド電流指令を演算する。さらに、この動作点指令部400は、図9に示す目標CL2トルク演算ブロックを有し、第2クラッチ5における目標指令値である目標伝達トルク容量(目標CL2トルク)を演算する。
【0033】
前記変速制御部500は、目標CL2トルクと目標ATシフトとから、これらを達成するように自動変速機3内のソレノイドバルブを駆動制御するATソレノイド電流指令を演算する。図8に変速制御で用いられる変速線マップの一例を示す。車速VSPとアクセル開度APOから現在の変速段から次変速段をいくつにするか判定し、変速要求があれば変速クラッチを制御して変速させる。
【0034】
図9は、実施例1の動作点指令部が有する目標CL2トルク演算ブロック図である。
【0035】
前記動作点指令部400は、図9に示すように、補正前目標CL2トルク演算部401Aと、補正量演算部(補正量演算手段)401Bと、目標CL2トルク演算部401Cと、を備えている。
【0036】
前記補正前目標CL2トルク演算部401Aは、第2クラッチ5における伝達トルク容量の目標値の補正前の値(以下、補正前目標CL2トルクという)を演算する。ここでは、要求駆動トルクに応じた値を補正前目標CL2トルクとする。なお、要求駆動トルクは、アクセル開度APOと、自動変速機3の入力回転数及び出力回転数と、走行モードと、に基づく車両状態や運転者操作に応じて決まる。
【0037】
前記補正量演算部401Bは、第2クラッチ5における伝達トルク容量の目標値に対する総補正量を演算する。この補正量演算部401Bの詳細は後述する。
【0038】
前記目標CL2トルク演算部401Cは、補正前目標CL2トルクから総補正量を差し引き、第2クラッチ5における伝達トルク容量の目標値(目標CL2トルク)を求める。このとき、補正前目標CL2トルクに対して総補正量が対応するか否かを判定し、対応する場合に総補正量を反映させて目標CL2トルクを演算する。なお、総補正量の対応は、補正前目標CL2トルクが予め設定した値領域に該当するか否かに基づいて判定し、設定値領域に該当しない場合には対応しないとして、総補正量を反映させずに補正前目標CL2トルクをそのまま目標CL2トルクとする。この目標CL2トルクは、統合コントローラ20からCL2用ソレノイドバルブ15に入力される。
【0039】
前記補正量演算部401Bは、第1補正量算出部402と、CL2F/B制御部403と、第2補正量算出部404と、総補正量算出部405と、を備えている。
【0040】
前記第1補正量算出部402は、推定モータトルクによって代替される第2クラッチ5への入力トルクと、自動変速機3の入力回転数と、に基づいて、第2クラッチ5における伝達トルク容量の目標値に対する補正量(以下、「第1補正量」という)を算出する。この第1補正量算出部402の詳細は後述する。
【0041】
前記CL2F/B制御部403は、モータジェネレータ2の回転数制御によって第2クラッチ5をスリップ締結しているとき、目標モータトルクと推定モータトルクとの定常偏差に基づいて、第2クラッチ5のフィードバック補正量を演算する。ここで、目標モータトルクは、走行モードや車両状態によって任意に設定する。また、推定モータトルクは、インバータ出力電流値に基づいて算出する。そして、フィードバック補正量は、PID制御によって求められる。
なお、このCL2F/B制御部403では、目標モータトルクと推定モータトルクとの定常偏差が所定値以下のとき、フィードバッグ補正量を算出する。フィードバック補正量は、定常偏差が大きい時には外乱の影響が大きく、定常偏差が小さくなったときのみ正しく求めることができるからである。
【0042】
前記第2補正量算出部404は、CL2F/B制御部403によって求められたフィードバック補正量のうち、I項(積分要素)分の補正量の平均値(以下、「第2補正量」という)を算出する。つまり、I項分の補正量の総和を補正量検出回数で割った値を第2補正量とする。なお、第2補正量は、フィードバック補正量が所定回数(任意に設定可能)以上連続して出力されたときに求められる。
【0043】
前記総補正量算出部405は、第2クラッチ5への入力トルクと、自動変速機3の入力回転数と、に基づいて求められた第1補正量と、フィードバッグ補正量に基づいて求められた第2補正量を和算して、第2クラッチ5における伝達トルク容量の目標値に対する総補正量を算出する。このとき、推定モータトルクやAT入力回転数、ATF温度等の入力される値に異常があるか否かを判定し、異常がない場合に総補正量を算出する。なお、入力値の異常は、入力された値が予め設定した値領域に該当するか否かに基づいて判定し、設定値領域に該当しない場合には異常として、総補正量を算出しない。
【0044】
図10は、実施例1の第1補正量算出部の詳細な演算ブロック図である。
【0045】
前記第1補正量算出部402は、図10に示すように、トルク補正量算出部402aと、回転数補正量算出部402bと、第1倍率調整部402cと、第2倍率調整部402dと、和算器402eと、第3倍率調整部402fと、を有している。
【0046】
前記トルク補正量算出部402aは、インバータ出力電流値によって求められる推定モータトルクと、作動油温(以下、ATF温度という)と、トルク補正量算出マップと、に基づいてトルク補正量を算出する。ここで、「トルク補正量」とは、推定モータトルクによって代替される第2クラッチ5への入力トルクに基づいて設定される、第2クラッチ5の目標伝達トルク容量に対する補正量である。このトルク補正量は、第2クラッチ5への入力トルクに相当する推定モータトルクが増大するほど大きな値に設定される。また、このトルク補正量の特性は、ATF温度によって異なった曲線となる。
【0047】
前記回転数補正量算出部402bは、自動変速機3への入力回転数と、ATF温度と、回転数補正量算出マップと、に基づいて回転数補正量を算出する。ここで、「回転数補正量」とは、第2クラッチ5への入力回転数である自動変速機3の入力回転数に基づいて設定される、第2クラッチ5の目標伝達トルク容量に対する補正量である。この回転数補正量は、第2クラッチ5への入力回転数に相当する変速機入力回転数が増大するほど大きな値に設定される。また、この回転数補正量の特性は、ATF温度によって異なった曲線となる。
【0048】
前記第1倍率調整部402cは、トルク補正量に走行レンジや自動変速機3の変速段に応じて設定される倍率を積算する。
【0049】
前記第2倍率調整部402dは、回転数補正量に走行レンジや自動変速機3の変速段に応じて設定される倍率を積算する。
【0050】
前記和算器402eは、所定の倍率を積算したトルク補正量と、所定の倍率を積算した回転数補正量とを和算し、合計補正量を算出する。
【0051】
前記第3倍率調整部402fは、合計補正量に走行レンジや自動変速機3の変速段に応じて設定される倍率を積算し、第1補正量を算出する。
【0052】
図11は、実施例1の統合コントローラにて実行される目標CL2トルク補正処理の流れを示すフローチャートである。以下、図11の各ステップについて説明する。
【0053】
ステップS1では、車両走行モードが「EVモード」であって第2クラッチ5がマイクロスリップ(μスリップ)制御中であるか否かを判断する。YES(EVモード且つμスリップ中)の場合にはステップS2へ進み、NO(EVモードでない又はμスリップでない)場合にはステップS1を繰り返す。
【0054】
ステップS2では、ステップS1でのEVモード且つμスリップ中との判断に続き、補正前目標CL2トルクを演算し、ステップS3へ進む。ここで、補正前目標CL2トルクは、アクセル開度APO、自動変速機3の入力回転数及び出力回転数、走行モードに基づく車両状態や運転者操作に応じて決まる要求駆動トルクに応じた値となる。
【0055】
ステップS3では、ステップS2で求めた補正前目標CL2トルクが、所定の値領域に該当するか否かを判断する。つまり、補正前目標CL2トルクが予め設定された下限値以上、上限値以下であるか否かを判断する。これは、目標トルク領域によって補正量が異なるため、補正前目標CL2トルクに対応する補正量を適用するためである。YES(下限値≦補正前目標CL2トルク≦上限値)の場合にはステップS4へ進み、NO(下限値≧補正前目標CL2トルク又は補正前目標CL2トルク≧上限値)の場合にはステップS1へ戻る。
【0056】
ステップS4では、ステップS3での下限値≦補正前目標CL2トルク≦上限値との判断に続き、CL2F/B制御部403に入力された目標モータトルクと推定モータトルクの定常偏差が所定値以下であるかを判断する。YES(定常偏差≦所定値)の場合にはステップS5へ進み、NO(定常偏差>所定値)の場合にはステップS1へ戻る。なお、推定モータトルクは、インバータ出力電流値によって求められる。
【0057】
ステップS5では、ステップS4での定常偏差≦所定値との判断に続き、目標モータトルクと推定モータトルクとの定常偏差に基づいて、第2クラッチ5のフィードバック補正量を演算し、ステップS6へ進む。
【0058】
ステップS6では、ステップS5において求められたフィードック補正量が、所定回数以上連続して出力されたか否かを判断する。YES(出力回数≧所定回数)の場合にはステップS7へ進み、NO(出力回数<所定回数)の場合にはステップS1へ戻る。
【0059】
ステップS7では、推定モータトルクによって代替される第2クラッチ5への入力トルクと、自動変速機3の入力回転数と、に基づいて、第2クラッチ5における伝達トルク容量の目標値に対する第1補正量を算出し、ステップS8へ進む。
この第1補正量は、推定モータトルク、ATF温度、トルク補正量算出マップ及び所定の倍率に基づいて算出されるトルク補正量と、自動変速機3への入力回転数、ATF温度、回転数補正量算出マップ及び所定の倍率に基づいて算出される回転数補正量と、の合計に所定の倍率を積算することで求められる。
【0060】
ステップS8では、ステップS5において求められたフィードバッグ補正量に基づいて第2補正量を算出し、ステップS9へ進む。ここでは、この第2補正量は、フィードバック補正量のうち、I項(積分要素)分の補正量の平均値である。
【0061】
ステップS9では、ステップS7において求められた第1補正量と、ステップS8において求められた第2補正量とを和算し、総補正量を算出し、ステップS10へ進む。ここで、第1補正量は、走行レンジや変速段によって積算する倍率が異なるため、例えばDレンジとRレンジでは異なる値になる。そのため、総補正量も走行レンジ等に応じて異なる値になる。
【0062】
ステップS10では、ステップS2において求めた補正前目標CL2トルクから、ステップS9において求めた総補正量を差し引いて、目標CL2トルクを補正して出力し、エンドへ進む。
【0063】
次に、作用を説明する。
まず、「本発明の基本思想」の説明を行い、次に、実施例1の電動車両の制御装置における「目標CL2トルク補正作用」を説明する。
【0064】
[本発明の基本思想]
モータジェネレータ2とタイヤ7,7の間に介装され、モータジェネレータ2とタイヤ7,7との間のトルク伝達を断接する第2クラッチ5では、スタティックには、第2クラッチ5への入力トルクの目標値(目標入力トルク)と、第2クラッチ5における伝達トルク容量の目標値(目標CL2トルク)との差がゼロになることが理想である。すなわち、下記式(1)が成立するようにしたい。
Tin*−TCL2*=0 ・・・(1)
ここで、「Tin*」は目標入力トルクであり、「TCL2*」は目標CL2トルクである。
【0065】
しかしながら、実際にはクラッチ入力軸周りのフリクションが作用するため、下記式(2)が成立することとなる。
rTin−rTCL2−Tf=0 ・・・(2)
ここで、「rTin」は第2クラッチ5への入力トルクの実際値(実入力トルク)であり、「rTCL2」は第2クラッチ5における伝達トルク容量の実際値(実CL2トルク)であり、「Tf」は第2クラッチ5の入力回転軸周りの実際のフリクショントルク(実フリクショントルク)である。なお、この実フリクショントルクTfには、フリクション以外の要素も含まれるが、総和で「Tf」とする。
【0066】
さらに、実CL2トルクrTCL2に含まれるばらつきを「α」とすれば、下記式(3)が成立する。
rTin−(TCL2*±α)−Tf=0 ・・・(3)
ここで、実入力トルクrTinが検出(推定)可能とすれば、下記式(4)が成立する。
α=Tf−rTin+TCL2* ・・・(4)
【0067】
このため、実CL2トルクrTCL2に含まれるばらつきαを補正するには、実フリクショントルクTf分を補正する必要がある。この実フリクショントルクTf分の補正を行わないと、実CL2トルクrTCL2に含まれるばらつきαが間違った値になり、第2クラッチ5の制御を適正に行うことができなくなる。
【0068】
そして、この実フリクショントルクTfは、第2クラッチ5への実入力トルクrTinに応じて設定可能であるが、この実入力トルクrTinが増大するほど大きな値になる。そこで本発明では、第2クラッチ5における目標指令値である目標CL2トルクTCL2*を設定する際、目標CL2トルクTCL2*の補正量を、実入力トルクrTinが増大するほど大きな値に設定することとした。
【0069】
[目標CL2トルク補正作用]
実施例1の制御装置が適用されたハイブリッド車両において、「EVモード」で走行中第2クラッチ5を微小にスリップ締結させるマイクロスリップ制御を実行する場合、第2クラッチ5のスリップ量は非常に少ない。このため、第2クラッチ5におけるトルク容量制御を高精度で行う必要がある。
【0070】
そこで、まず、図11に示すフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS2へと進み、要求駆動トルクに応じた補正前目標CL2トルクが求められる。そして、この補正前目標CL2トルクが所定の値領域であれば、この補正前目標CL2トルクに対する補正量が求められる。
【0071】
このように、補正前目標CL2トルクが所定の値領域(所定範囲内)のときに、補正量が設定されるので、補正前目標CL2トルクに応じた適切な補正を行うことができて、補正精度の向上を図ることができる。
【0072】
さらに、目標モータトルクと推定モータトルクとの定常偏差が所定値以下であって、この定常偏差に基づいて求められたフィードバック補正量が所定回数(任意に設定可能)以上連続して出力されたときに、上記補正量は求められる。すなわち、図11に示すフローチャートにおいて、ステップS3→ステップS4→ステップS5→ステップS6→ステップS7へと進む。そして、まず第1補正量が算出される。この第1補正量は、トルク補正量及び回転数補正量に基づいて算出される。
【0073】
ここで、トルク補正量は、第2クラッチ5への入力トルクに相当する推定モータトルクが増大するほど大きな値に設定される。そのため、第2クラッチ5への入力トルクに応じて設定できる実フリクショントルクTf分の補正を実施することができる。
また、回転数補正量は、第2クラッチ5への入力回転数に相当する変速機入力回転数が増大するほど大きな値に設定される。そのため、上記実フリクショントルクTf分の補正精度の向上を図ることができる。
【0074】
さらに、トルク補正量及び回転数補正量は、それぞれATF温度に応じて異なる特性に基づいて設定されるため、第1補正量を設定する際に、ATF温度の影響が考慮され、上記実フリクショントルクTf分の補正精度の向上をさらに図ることができる。また、トルク補正量及び回転数補正量は、それぞれ走行レンジや自動変速機3の変速段に応じて設定される倍率を積算して求められるため、走行レンジや変速段による影響を考慮して異なる値にすることができる。これにより、上記実フリクショントルクTf分の補正精度の向上をさらに図ることができる。
【0075】
次に、ステップS8へと進み、第2補正量が求められる。この第2補正量は、モータジェネレータ2の回転数制御時における推定モータトルクを用いて求めた第2クラッチ5のフィードバッグ補正量に基づいて求められる。ここでは、フィードバック補正量のうち、I項(積分要素)分の補正量の平均値としている。
【0076】
第1補正量、第2補正量が共に求められたら、ステップS9→ステップS10へと進み、第1補正量と第2補正量の和である総補正量を算出して、この総補正量を補正前目標CL2トルクから差し引いて目標CL2トルクを設定する。このように、第1補正量と第2補正量の和である総補正量を用いて目標CL2トルクの補正を行うことで、第2クラッチ5への入力トルク及びフィードバック補正量の影響を考慮して補正することができ、補正精度の向上をさらに図ることができる。
【0077】
また、実施例1の電動車両の制御装置では、モータジェネレータ2の動力のみで走行する「EVモード」で走行中、第2クラッチ5をスリップ締結するマイクロスリップ制御中に補正制御処理を実行している。このため、第2クラッチ5への入力トルクを推定モータトルクで代替可能となり、入力トルクの検出精度を高くすることができる。この結果、目標CL2トルクの補正精度の向上を図ることができる。
【0078】
次に、効果を説明する。
実施例1の電動車両の制御装置にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0079】
(1) 走行駆動源となるモータ(モータジェネレータ)2と、前記モータ2と駆動輪(タイヤ)7,7の間に介装され、前記モータ2と前記駆動輪7,7との間のトルク伝達を断接する摩擦係合要素(第2クラッチ)5と、前記摩擦係合要素5への入力トルク(推定モータトルク)を検出する入力トルク検出手段(電流センサ)19と、前記摩擦係合要素5における目標伝達トルク容量(目標CL2トルク)を設定する際、前記目標伝達トルク容量の補正量(トルク補正量)を、前記入力トルク(推定モータトルク)が増大するほど大きな値に設定する補正量演算手段(補正量演算部)401Bと、を備える構成とした。
このため、モータ2と駆動輪7,7の間のトルク伝達を断接する摩擦係合要素5における目標伝達トルク容量の補正精度を向上することができる。
【0080】
(2) 前記補正量演算手段(補正量演算部)401Bは、前記補正量を、前記入力トルク(推定モータトルク)に基づいて設定する第1補正量と、前記モータ2の回転数制御時における推定モータトルクを用いて求めた前記摩擦係合要素5のフィードバッグ補正量に基づいて設定する第2補正量との和によって求める構成とした。
このため、(1)の効果に加え、補正量を求める際に、入力トルク及びフィードバック補正量の影響が考慮され、摩擦係合要素5における目標伝達トルク容量の補正精度を向上することができる。
【0081】
(3) 前記摩擦係合要素(第2クラッチ)5の入力回転数を検出する入力回転数検出手段(AT入力回転センサ)12を備え、前記補正量演算手段(補正量演算部)401Bは、前記補正量を、前記入力回転数が増大するほど、大きな値に設定する構成とした。
このため、(1)又は(2)の効果に加え、補正量を求める際に、摩擦係合要素5の入力回転数の影響が考慮され、摩擦係合要素5における目標伝達トルク容量の補正精度を向上することができる。
【0082】
(4) 前記摩擦係合要素(第2クラッチ)5は、油圧により駆動して前記伝達トルク容量を可変する油圧クラッチであり、前記補正量演算手段(補正量演算部)401Bは、前記補正量を、前記摩擦係合要素5を駆動する油の温度(ATF温度)に応じて設定する構成とした。
このため、(1)〜(3)いずれかの効果に加え、補正量を求める際に、摩擦係合要素5を駆動する作動油温の影響が考慮され、摩擦係合要素5における目標伝達トルク容量の補正精度を向上することができる。
【0083】
(5) 前記モータ(モータジェネレータ)2と前記駆動輪(タイヤ)7,7の間に配置された変速機(自動変速機)3を備え、前記補正量演算手段(補正量演算手段)401Bは、前記変速機3の走行レンジ又は変速比(変速段)のうち少なくとも一方に応じて設定する構成とした。
このため、(1)〜(4)いずれかの効果に加え、補正量を求める際に、変速機3の走行レンジや変速比の影響が考慮され、摩擦係合要素5における目標伝達トルク容量の補正精度を向上することができる。
【0084】
(6) 前記補正量演算手段(補正量演算手段)401Bは、前記モータ(モータジェネレータ)2の動力のみで走行する電気自動車モード(EVモード)で走行中、前記補正量を設定する構成とした。
このため、(1)〜(5)いずれかの効果に加え、摩擦係合要素5への入力トルクを推定モータトルクで代替することができ、入力トルクの検出精度を高くして目標伝達トルク容量の補正精度の向上を図ることができる。
【0085】
(7) 前記補正量演算手段(補正量演算部)401Bは、前記目標伝達トルク容量が所定範囲内のときに、前記補正量を設定する構成とした。
このため、(1)〜(6)いずれかの効果に加え、目標伝達トルク容量に応じた補正量をすることができ、さらに補正精度の向上を図ることができる。
【0086】
以上、本発明の電動車両の制御装置を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については、この実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0087】
実施例1では、第1補正量や第2補正量、総補正量を、目標CL2トルクの出力に応じてその都度演算しているが、算出する値を所定時間の平均値としたり、現在のATF温度を考慮して演算値を記憶する等の学習制御的に各補正量を求めることもできる。
【0088】
また、実施例1の電動車両の制御装置では、摩擦係合要素である第2クラッチ5における目標指令値として、目標伝達トルク容量に対する補正量を求めるようにした。しかしながらこれに限らず、目標指令値を第2クラッチ5における目標クラッチ圧(目標クラッチ締結油圧)とし、この目標クラッチ圧に対する補正量であってもよい。
【0089】
さらに、実施例1では、有段式の自動変速機3に内蔵した複数の摩擦要素のうち、所定の条件に適合する摩擦要素を選択して第2クラッチ5としている。そのため、補正量を算出した変速段以外であっても、同じ摩擦要素であれば、先に演算した補正量を用いて補正してもよい。これにより、補正演算に要する時間の短縮を図ることができる。
【0090】
なお、自動変速機3とは別に第2クラッチ5を設けても良く、例えば、モータジェネレータ2と変速機入力軸との間に自動変速機3とは別に第2クラッチ5を設ける例や、変速機出力軸とタイヤ7,7の間に自動変速機3とは別に第2クラッチ5を設ける例も含まれる。さらに、自動変速機3とは別に第2クラッチ5を設けた場合であれば、無段変速機を用いたり、手動変速機を用いることもできる。
【0091】
実施例1では、本発明の電動車両の制御装置をハイブリッド車両に対し適用した例を示したが、駆動源としてモータのみを搭載した電気自動車や、燃料電池車に対しても適用することができる。要するに、駆動源にモータを搭載することで摩擦係合要素への入力トルクを検出可能な車両であれば、本発明を適用できる。
【符号の説明】
【0092】
1 エンジン
2 モータジェネレータ(モータ)
3 自動変速機(変速機)
4 第1クラッチ
5 第2クラッチ(摩擦係合要素)
7,7 タイヤ(駆動輪)
12 AT入力回転センサ(入力回転数検出手段)
19 電流センサ(入力トルク検出手段)
20 統合コントローラ
401A 補正前目標CL2トルク演算部
401B 補正量演算部(補正量演算手段)
401C 目標CL2トルク演算部
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータと駆動輪との間のトルク伝達を断接する摩擦係合要素を備えた電動車両の制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンとモータと駆動輪の順に接続したハイブリッド車両において、モータと駆動輪の間に介装した摩擦係合要素をスリップ締結させ、エンジンを動力源に含みながら走行するWSCモードを有する電動車両の制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-143418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の電動車両の制御装置にあっては、WSCモード時に摩擦係合要素がスリップ締結するので、摩擦係合要素の伝達トルク容量制御を高精度で行わなければならなかった。そのため、摩擦係合要素における目標指令値である目標伝達トルク容量の補正精度を向上する必要があった。
【0005】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、モータと駆動輪の間のトルク伝達を断接する摩擦係合要素に対する目標指令値の補正精度を向上することができる電動車両の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の電動車両の制御装置では、モータと、摩擦係合要素と、入力トルク検出手段と、補正量演算手段と、を備える。
前記摩擦係合要素は、前記モータと駆動輪の間に介装され、前記モータと前記駆動輪との間のトルク伝達を断接する。
前記入力トルク検出手段は、前記摩擦係合要素への入力トルクを検出する。
前記補正量演算手段は、前記摩擦係合要素における目標指令値を設定する際、前記目標指令値の補正量を、前記入力トルクが増大するほど大きな値に設定する。
【発明の効果】
【0007】
よって、摩擦係合要素における目標指令値を設定する際、補正量演算手段により、目標指令値の補正量は、摩擦係合要素への入力トルクが増大するほど大きな値に設定される。
すなわち、摩擦係合要素への入力トルクが増大するほど、摩擦係合要素の入力軸周りのフリクショントルクは増加する。そのため、目標指令値の補正量を、摩擦係合要素への入力トルクが増大するほど大きな値に設定することで、入力トルクに応じて増加する上記フリクショントルク分の補正を実施することができ、摩擦係合要素ごとのばらつきを補正することができる。
この結果、モータと駆動輪の間のトルク伝達を断接する摩擦係合要素における目標指令値の補正精度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例1の制御装置が適用されたハイブリッド車両(電動車両の一例)のパワートレインを示すパワートレイン構成図である。
【図2】実施例1の制御装置が適用されたハイブリッド車両の制御システムを示す制御システム構成図である。
【図3】実施例1の統合コントローラを示す演算ブロック図である。
【図4】実施例1の制御装置で用いられる目標定常トルクマップ(a)とMGアシストトルクマップ(b)を示すマップ図である。
【図5】実施例1の制御装置で用いられる走行モード選択マップの一例を示す図である。
【図6】実施例1の制御装置で用いられるバッテリSOCに対する走行中発電要求出力マップの一例を示す図である。
【図7】実施例1の制御装置で用いられるエンジンの最適燃費線を示す特性図である。
【図8】実施例1の自動変速機における変速線の一例を示す変速マップ図である。
【図9】実施例1の動作点指令部が有する目標CL2トルク演算ブロック図である。
【図10】実施例1の第1補正量算出部の詳細な演算ブロック図である。
【図11】実施例1の統合コントローラにて実行される目標CL2トルク演算処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の電動車両の制御装置を実現する最良の形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
【実施例1】
【0010】
まず、構成を説明する。
図1は、実施例1の制御装置が適用されたハイブリッド車両のパワートレインを示すパワートレイン構成図である。以下、図1に基づきパワートレイン構成を説明する。
【0011】
実施例1の制御装置が適用されたハイブリッド車両は、図1に示すように、エンジン1と、モータジェネレータ(モータ)2と、自動変速機3と、第1クラッチ4(摩擦係合要素)と、第2クラッチ5と、ディファレンシャルギア6と、タイヤ7,7(駆動輪)と、を備えている。すなわち、このハイブリッド車両は、エンジンと1モータ・2クラッチを備えたパワートレイン構成である。
【0012】
前記エンジン1は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンであり、その出力軸とモータジェネレータ(略称MG)2の入力軸とが、第1クラッチ(略称CL1)4を介して連結される。
【0013】
前記第1クラッチ4は、エンジン1とモータジェネレータ2の間に介装され、エンジン1とモータジェネレータ2とを断接するクラッチであり、締結油圧を制御することによって伝達トルク容量が可変する。この第1クラッチ4としては、例えば、ダイアフラムスプリングによる付勢力を保ち、ピストンを有する油圧アクチュエータを用いたストローク制御により完全締結〜スリップ締結〜完全解放までが制御されるノーマルクローズの乾式単板クラッチが用いられる。
【0014】
前記モータジェネレータ2は、ロータに永久磁石を埋設しステータにステータコイルが巻き付けられた同期型モータである。このモータジェネレータ2の出力軸と自動変速機(略称AT)3の入力軸とが連結され、走行駆動源となる。
【0015】
前記第2クラッチ5は、モータジェネレータ2とタイヤ7,7の間に介装され、モータジェネレータ2とタイヤ7,7とを断絶するクラッチであり、締結油圧を制御することによって伝達トルク容量が可変する。この第2クラッチ5としては、例えば、比例ソレノイドで油流量及び油圧を連続的に制御できるノーマルオープンの湿式多板クラッチや湿式多板ブレーキが用いられる。
【0016】
前記自動変速機3は、有段の変速段を車速やアクセル開度等に応じて自動的に切り替える有段変速機であり、その出力軸にディファレンシャルギア6を介してタイヤ7,7が連結される。なお、実施例1では、前記第2クラッチ5として、自動変速機3とは独立の専用クラッチとして新たに追加したものではなく、自動変速機3の各変速段にて締結される複数の摩擦要素のうち、所定の条件に適合する摩擦要素(クラッチやブレーキ)を選択している。
【0017】
さらに、このパワートレインには、エンジン1の出力回転数を検出するエンジン回転センサ10と、モータジェネレータ2の入力回転数を検出するMG回転センサ11と、自動変速機3の入力軸回転数を検出するAT入力回転センサ(入力回転数検出手段)12と、自動変速機3の出力軸回転数を検出するAT出力回転センサ13と、が設けられる。
【0018】
そして、このハイブリッド車両は、駆動形態の違いによる走行モードとして、電気自動車モード(以下、「EVモード」という)と、ハイブリッド車モード(以下、「HEVモード」という)と、エンジン使用スリップ走行モード(以下、「WSCモード」という)とを、有する。
【0019】
前記「EVモード」は、第1クラッチ4を解放状態、第2クラッチ5を締結状態とし、モータジェネレータ2の駆動力のみで走行するモードである。この「EVモード」は、モータ走行モード・回生走行モードを有する。「EVモード」は、要求駆動力が低く、バッテリSOCが確保されているときに選択される。さらに、この「EVモード」では、第2クラッチ5を微小なスリップ状態に制御するマイクロスリップ制御モード(以下、μスリップモードという)を有する。このμスリップモードでは、モータジェネレータ2からの出力トルクであるクラッチ入力トルクを、第2クラッチ5における目標伝達トルク容量よりも僅かに増加することで、第2クラッチ5における入力回転数と出力回転数の間に極僅かな回転差を生じさせる。これにより、第2クラッチ5は微小なスリップ状態になる。
【0020】
前記「HEVモード」は、第1クラッチ4及び第2クラッチ5を締結状態として走行するモードであり、モータアシスト走行モード・発電走行モード・エンジン走行モードを有し、いずれかのモードにより走行する。なお、モータアシスト走行モードは、エンジン1とモータジェネレータ2の2つを駆動源として走行する。発電走行モードは、エンジン1を駆動源として走行すると同時に、エンジン1の動力を利用してモータジェネレータ2を発電機として動作させる。エンジン走行モードは、エンジン1の駆動力のみで走行する。この「HEVモード」は、要求駆動力が高いとき、あるいは、バッテリSOCが不足するようなときに選択される。
【0021】
前記「WSCモード」は、モータジェネレータ2の回転数制御とクラッチ油圧制御により、第2クラッチ5をスリップ締結状態に維持しながら走行するモードである。この「WSCモード」では、第2クラッチ5を経過するクラッチ伝達トルクが、車両状態やドライバー操作に応じて決まる要求駆動トルクとなるようにクラッチトルク容量をコントロールする。また、この「WSCモード」は、「HEVモード」の選択状態での停車時・発進時・減速時等のように、エンジン回転数がアイドル回転数を下回るような走行領域やポンプ吐出油が不足するような発進領域において選択される。加えて、「WSCモード」は、「EVモード」から「HEVモード」へのモード遷移に際して行われるエンジン始動制御中にトルク変動を吸収するために選択されると共に、「HEVモード」から「EVモード」へのモード遷移に際して行われるエンジン停止制御中にトルク変動を吸収するために選択される。
【0022】
図2は、実施例1の制御装置が適用されたハイブリッド車両の制御システムを示す制御システム構成図である。以下、図2に基づいて制御システム構成を説明する。
【0023】
実施例1の制御システムは、図2に示すように、統合コントローラ20と、エンジンコントローラ21と、モータコントローラ22と、インバータ8と、バッテリ9と、CL1用ソレノイドバルブ14と、CL2用ソレノイドバルブ15と、アクセル開度センサ16と、ATF温度センサ17と、SOCセンサ18と、電流センサ(入力トルク検出手段)19と、を備えている。
【0024】
前記統合コントローラ20は、パワートレイン系の動作点を統合制御する。この統合コントローラ20では、アクセル開度APOとバッテリ充電状態SOCと、車速VSP(自動変速機出力軸回転数に比例)と、に応じて、運転者が望む駆動力を実現できる運転モードを選択する。そして、モータコントローラ22に目標MGトルクもしくは目標MG回転数を指令し、エンジンコントローラ21に目標エンジントルクを指令し、CL1用ソレノイドバルブ14及びCL2用ソレノイドバルブ15に所定の駆動信号を指令する。
【0025】
前記エンジンコントローラ21は、エンジン1を制御する。前記モータコントローラ22は、モータジェネレータ2を制御する。前記インバータ8は、モータジェネレータ2を駆動する。前記バッテリ9は、電気エネルギーを蓄える。
【0026】
さらに、前記CL1用ソレノイドバルブ14は、第1クラッチ4の油圧を制御する。前記CL2用ソレノイドバルブ15は、第2クラッチ5の油圧を制御する。前記アクセル開度センサ16は、アクセル開度(APO)を検出する。前記ATF温度センサ17は、自動変速機3や第1クラッチ4、第2クラッチ5に供給される作動油(ATF)の温度を検出する。前記SOCセンサ18は、バッテリ9の充電状態を検出する。前記電流センサ19は、モータジェネレータ2に流れる電流を検出する。
【0027】
図3は、実施例1の統合コントローラ20を示す演算ブロック図である。以下、図3に基づいて統合コントローラ20の構成を説明する。
【0028】
前記統合コントローラ20は、図3に示すように、目標駆動トルク演算部100と、モード選択部200と、目標発電出力演算部300と、動作点指令部400と、変速制御部500と、を備えている。
【0029】
前記目標駆動トルク演算部100は、図4(a)に示す目標定常トルクマップと、図4(b)に示すMGアシストトルクマップを用いて、アクセル開度APOと車速VSPから、目標定常トルクとMGアシストトルクを算出する。
【0030】
前記モード選択部200は、図5に示すEV-HEV選択マップを用いて、アクセル開度APOと車速VSPから、目標走行モード(HEVモード、EVモード、WSCモード)を演算する。
このEV-HEV選択マップには、EV領域に存在する運転点(APO,VSP)が横切ると「HEVモード」へと切り替えるEV⇒HEV切替線と、HEV領域に存在する運転点(APO,VSP)が横切ると「EVモード」へと切り替えるHEV⇒EV切替線と、運転点(APO,VSP)が横切ることで「WSCモード」と「HEVモード」を切り替えるHEV⇔WSC切替線と、が設定されている。
前記EV⇒HEV切替線と前記HEV⇒EV切替線は、EV領域とHEV領域を分ける線としてヒステリシス量を持たせて設定されている。前記HEV⇔WSC切替線は、自動変速機3が1速段のときに、エンジン1がアイドル回転数を維持する第1設定車速VSP1に沿って設定されている。但し、「EVモード」の選択中、バッテリSOCが所定値以下になると、強制的に「HEVモード」を目標走行モードとする。
【0031】
前記目標発電出力演算部300は、図6に示す走行中発電要求出力マップを用いて、バッテリSOCから目標発電出力を演算する。また、現在の動作点から図7で示す最適燃費線までエンジントルクを上げるために必要な出力を演算し、前記目標発電出力と比較して少ない出力を要求出力として、エンジン出力に加算する。
【0032】
前記動作点指令部400では、アクセル開度APOと目標定常トルク,MGアシストトルクと目標運転モードと車速VSPと目標発電出力とを入力する。そして、これらの入力情報を動作点到達目標として、過渡的な目標エンジントルクと目標MGトルクと目標ATシフトとCL1ソレノイド電流指令を演算する。さらに、この動作点指令部400は、図9に示す目標CL2トルク演算ブロックを有し、第2クラッチ5における目標指令値である目標伝達トルク容量(目標CL2トルク)を演算する。
【0033】
前記変速制御部500は、目標CL2トルクと目標ATシフトとから、これらを達成するように自動変速機3内のソレノイドバルブを駆動制御するATソレノイド電流指令を演算する。図8に変速制御で用いられる変速線マップの一例を示す。車速VSPとアクセル開度APOから現在の変速段から次変速段をいくつにするか判定し、変速要求があれば変速クラッチを制御して変速させる。
【0034】
図9は、実施例1の動作点指令部が有する目標CL2トルク演算ブロック図である。
【0035】
前記動作点指令部400は、図9に示すように、補正前目標CL2トルク演算部401Aと、補正量演算部(補正量演算手段)401Bと、目標CL2トルク演算部401Cと、を備えている。
【0036】
前記補正前目標CL2トルク演算部401Aは、第2クラッチ5における伝達トルク容量の目標値の補正前の値(以下、補正前目標CL2トルクという)を演算する。ここでは、要求駆動トルクに応じた値を補正前目標CL2トルクとする。なお、要求駆動トルクは、アクセル開度APOと、自動変速機3の入力回転数及び出力回転数と、走行モードと、に基づく車両状態や運転者操作に応じて決まる。
【0037】
前記補正量演算部401Bは、第2クラッチ5における伝達トルク容量の目標値に対する総補正量を演算する。この補正量演算部401Bの詳細は後述する。
【0038】
前記目標CL2トルク演算部401Cは、補正前目標CL2トルクから総補正量を差し引き、第2クラッチ5における伝達トルク容量の目標値(目標CL2トルク)を求める。このとき、補正前目標CL2トルクに対して総補正量が対応するか否かを判定し、対応する場合に総補正量を反映させて目標CL2トルクを演算する。なお、総補正量の対応は、補正前目標CL2トルクが予め設定した値領域に該当するか否かに基づいて判定し、設定値領域に該当しない場合には対応しないとして、総補正量を反映させずに補正前目標CL2トルクをそのまま目標CL2トルクとする。この目標CL2トルクは、統合コントローラ20からCL2用ソレノイドバルブ15に入力される。
【0039】
前記補正量演算部401Bは、第1補正量算出部402と、CL2F/B制御部403と、第2補正量算出部404と、総補正量算出部405と、を備えている。
【0040】
前記第1補正量算出部402は、推定モータトルクによって代替される第2クラッチ5への入力トルクと、自動変速機3の入力回転数と、に基づいて、第2クラッチ5における伝達トルク容量の目標値に対する補正量(以下、「第1補正量」という)を算出する。この第1補正量算出部402の詳細は後述する。
【0041】
前記CL2F/B制御部403は、モータジェネレータ2の回転数制御によって第2クラッチ5をスリップ締結しているとき、目標モータトルクと推定モータトルクとの定常偏差に基づいて、第2クラッチ5のフィードバック補正量を演算する。ここで、目標モータトルクは、走行モードや車両状態によって任意に設定する。また、推定モータトルクは、インバータ出力電流値に基づいて算出する。そして、フィードバック補正量は、PID制御によって求められる。
なお、このCL2F/B制御部403では、目標モータトルクと推定モータトルクとの定常偏差が所定値以下のとき、フィードバッグ補正量を算出する。フィードバック補正量は、定常偏差が大きい時には外乱の影響が大きく、定常偏差が小さくなったときのみ正しく求めることができるからである。
【0042】
前記第2補正量算出部404は、CL2F/B制御部403によって求められたフィードバック補正量のうち、I項(積分要素)分の補正量の平均値(以下、「第2補正量」という)を算出する。つまり、I項分の補正量の総和を補正量検出回数で割った値を第2補正量とする。なお、第2補正量は、フィードバック補正量が所定回数(任意に設定可能)以上連続して出力されたときに求められる。
【0043】
前記総補正量算出部405は、第2クラッチ5への入力トルクと、自動変速機3の入力回転数と、に基づいて求められた第1補正量と、フィードバッグ補正量に基づいて求められた第2補正量を和算して、第2クラッチ5における伝達トルク容量の目標値に対する総補正量を算出する。このとき、推定モータトルクやAT入力回転数、ATF温度等の入力される値に異常があるか否かを判定し、異常がない場合に総補正量を算出する。なお、入力値の異常は、入力された値が予め設定した値領域に該当するか否かに基づいて判定し、設定値領域に該当しない場合には異常として、総補正量を算出しない。
【0044】
図10は、実施例1の第1補正量算出部の詳細な演算ブロック図である。
【0045】
前記第1補正量算出部402は、図10に示すように、トルク補正量算出部402aと、回転数補正量算出部402bと、第1倍率調整部402cと、第2倍率調整部402dと、和算器402eと、第3倍率調整部402fと、を有している。
【0046】
前記トルク補正量算出部402aは、インバータ出力電流値によって求められる推定モータトルクと、作動油温(以下、ATF温度という)と、トルク補正量算出マップと、に基づいてトルク補正量を算出する。ここで、「トルク補正量」とは、推定モータトルクによって代替される第2クラッチ5への入力トルクに基づいて設定される、第2クラッチ5の目標伝達トルク容量に対する補正量である。このトルク補正量は、第2クラッチ5への入力トルクに相当する推定モータトルクが増大するほど大きな値に設定される。また、このトルク補正量の特性は、ATF温度によって異なった曲線となる。
【0047】
前記回転数補正量算出部402bは、自動変速機3への入力回転数と、ATF温度と、回転数補正量算出マップと、に基づいて回転数補正量を算出する。ここで、「回転数補正量」とは、第2クラッチ5への入力回転数である自動変速機3の入力回転数に基づいて設定される、第2クラッチ5の目標伝達トルク容量に対する補正量である。この回転数補正量は、第2クラッチ5への入力回転数に相当する変速機入力回転数が増大するほど大きな値に設定される。また、この回転数補正量の特性は、ATF温度によって異なった曲線となる。
【0048】
前記第1倍率調整部402cは、トルク補正量に走行レンジや自動変速機3の変速段に応じて設定される倍率を積算する。
【0049】
前記第2倍率調整部402dは、回転数補正量に走行レンジや自動変速機3の変速段に応じて設定される倍率を積算する。
【0050】
前記和算器402eは、所定の倍率を積算したトルク補正量と、所定の倍率を積算した回転数補正量とを和算し、合計補正量を算出する。
【0051】
前記第3倍率調整部402fは、合計補正量に走行レンジや自動変速機3の変速段に応じて設定される倍率を積算し、第1補正量を算出する。
【0052】
図11は、実施例1の統合コントローラにて実行される目標CL2トルク補正処理の流れを示すフローチャートである。以下、図11の各ステップについて説明する。
【0053】
ステップS1では、車両走行モードが「EVモード」であって第2クラッチ5がマイクロスリップ(μスリップ)制御中であるか否かを判断する。YES(EVモード且つμスリップ中)の場合にはステップS2へ進み、NO(EVモードでない又はμスリップでない)場合にはステップS1を繰り返す。
【0054】
ステップS2では、ステップS1でのEVモード且つμスリップ中との判断に続き、補正前目標CL2トルクを演算し、ステップS3へ進む。ここで、補正前目標CL2トルクは、アクセル開度APO、自動変速機3の入力回転数及び出力回転数、走行モードに基づく車両状態や運転者操作に応じて決まる要求駆動トルクに応じた値となる。
【0055】
ステップS3では、ステップS2で求めた補正前目標CL2トルクが、所定の値領域に該当するか否かを判断する。つまり、補正前目標CL2トルクが予め設定された下限値以上、上限値以下であるか否かを判断する。これは、目標トルク領域によって補正量が異なるため、補正前目標CL2トルクに対応する補正量を適用するためである。YES(下限値≦補正前目標CL2トルク≦上限値)の場合にはステップS4へ進み、NO(下限値≧補正前目標CL2トルク又は補正前目標CL2トルク≧上限値)の場合にはステップS1へ戻る。
【0056】
ステップS4では、ステップS3での下限値≦補正前目標CL2トルク≦上限値との判断に続き、CL2F/B制御部403に入力された目標モータトルクと推定モータトルクの定常偏差が所定値以下であるかを判断する。YES(定常偏差≦所定値)の場合にはステップS5へ進み、NO(定常偏差>所定値)の場合にはステップS1へ戻る。なお、推定モータトルクは、インバータ出力電流値によって求められる。
【0057】
ステップS5では、ステップS4での定常偏差≦所定値との判断に続き、目標モータトルクと推定モータトルクとの定常偏差に基づいて、第2クラッチ5のフィードバック補正量を演算し、ステップS6へ進む。
【0058】
ステップS6では、ステップS5において求められたフィードック補正量が、所定回数以上連続して出力されたか否かを判断する。YES(出力回数≧所定回数)の場合にはステップS7へ進み、NO(出力回数<所定回数)の場合にはステップS1へ戻る。
【0059】
ステップS7では、推定モータトルクによって代替される第2クラッチ5への入力トルクと、自動変速機3の入力回転数と、に基づいて、第2クラッチ5における伝達トルク容量の目標値に対する第1補正量を算出し、ステップS8へ進む。
この第1補正量は、推定モータトルク、ATF温度、トルク補正量算出マップ及び所定の倍率に基づいて算出されるトルク補正量と、自動変速機3への入力回転数、ATF温度、回転数補正量算出マップ及び所定の倍率に基づいて算出される回転数補正量と、の合計に所定の倍率を積算することで求められる。
【0060】
ステップS8では、ステップS5において求められたフィードバッグ補正量に基づいて第2補正量を算出し、ステップS9へ進む。ここでは、この第2補正量は、フィードバック補正量のうち、I項(積分要素)分の補正量の平均値である。
【0061】
ステップS9では、ステップS7において求められた第1補正量と、ステップS8において求められた第2補正量とを和算し、総補正量を算出し、ステップS10へ進む。ここで、第1補正量は、走行レンジや変速段によって積算する倍率が異なるため、例えばDレンジとRレンジでは異なる値になる。そのため、総補正量も走行レンジ等に応じて異なる値になる。
【0062】
ステップS10では、ステップS2において求めた補正前目標CL2トルクから、ステップS9において求めた総補正量を差し引いて、目標CL2トルクを補正して出力し、エンドへ進む。
【0063】
次に、作用を説明する。
まず、「本発明の基本思想」の説明を行い、次に、実施例1の電動車両の制御装置における「目標CL2トルク補正作用」を説明する。
【0064】
[本発明の基本思想]
モータジェネレータ2とタイヤ7,7の間に介装され、モータジェネレータ2とタイヤ7,7との間のトルク伝達を断接する第2クラッチ5では、スタティックには、第2クラッチ5への入力トルクの目標値(目標入力トルク)と、第2クラッチ5における伝達トルク容量の目標値(目標CL2トルク)との差がゼロになることが理想である。すなわち、下記式(1)が成立するようにしたい。
Tin*−TCL2*=0 ・・・(1)
ここで、「Tin*」は目標入力トルクであり、「TCL2*」は目標CL2トルクである。
【0065】
しかしながら、実際にはクラッチ入力軸周りのフリクションが作用するため、下記式(2)が成立することとなる。
rTin−rTCL2−Tf=0 ・・・(2)
ここで、「rTin」は第2クラッチ5への入力トルクの実際値(実入力トルク)であり、「rTCL2」は第2クラッチ5における伝達トルク容量の実際値(実CL2トルク)であり、「Tf」は第2クラッチ5の入力回転軸周りの実際のフリクショントルク(実フリクショントルク)である。なお、この実フリクショントルクTfには、フリクション以外の要素も含まれるが、総和で「Tf」とする。
【0066】
さらに、実CL2トルクrTCL2に含まれるばらつきを「α」とすれば、下記式(3)が成立する。
rTin−(TCL2*±α)−Tf=0 ・・・(3)
ここで、実入力トルクrTinが検出(推定)可能とすれば、下記式(4)が成立する。
α=Tf−rTin+TCL2* ・・・(4)
【0067】
このため、実CL2トルクrTCL2に含まれるばらつきαを補正するには、実フリクショントルクTf分を補正する必要がある。この実フリクショントルクTf分の補正を行わないと、実CL2トルクrTCL2に含まれるばらつきαが間違った値になり、第2クラッチ5の制御を適正に行うことができなくなる。
【0068】
そして、この実フリクショントルクTfは、第2クラッチ5への実入力トルクrTinに応じて設定可能であるが、この実入力トルクrTinが増大するほど大きな値になる。そこで本発明では、第2クラッチ5における目標指令値である目標CL2トルクTCL2*を設定する際、目標CL2トルクTCL2*の補正量を、実入力トルクrTinが増大するほど大きな値に設定することとした。
【0069】
[目標CL2トルク補正作用]
実施例1の制御装置が適用されたハイブリッド車両において、「EVモード」で走行中第2クラッチ5を微小にスリップ締結させるマイクロスリップ制御を実行する場合、第2クラッチ5のスリップ量は非常に少ない。このため、第2クラッチ5におけるトルク容量制御を高精度で行う必要がある。
【0070】
そこで、まず、図11に示すフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS2へと進み、要求駆動トルクに応じた補正前目標CL2トルクが求められる。そして、この補正前目標CL2トルクが所定の値領域であれば、この補正前目標CL2トルクに対する補正量が求められる。
【0071】
このように、補正前目標CL2トルクが所定の値領域(所定範囲内)のときに、補正量が設定されるので、補正前目標CL2トルクに応じた適切な補正を行うことができて、補正精度の向上を図ることができる。
【0072】
さらに、目標モータトルクと推定モータトルクとの定常偏差が所定値以下であって、この定常偏差に基づいて求められたフィードバック補正量が所定回数(任意に設定可能)以上連続して出力されたときに、上記補正量は求められる。すなわち、図11に示すフローチャートにおいて、ステップS3→ステップS4→ステップS5→ステップS6→ステップS7へと進む。そして、まず第1補正量が算出される。この第1補正量は、トルク補正量及び回転数補正量に基づいて算出される。
【0073】
ここで、トルク補正量は、第2クラッチ5への入力トルクに相当する推定モータトルクが増大するほど大きな値に設定される。そのため、第2クラッチ5への入力トルクに応じて設定できる実フリクショントルクTf分の補正を実施することができる。
また、回転数補正量は、第2クラッチ5への入力回転数に相当する変速機入力回転数が増大するほど大きな値に設定される。そのため、上記実フリクショントルクTf分の補正精度の向上を図ることができる。
【0074】
さらに、トルク補正量及び回転数補正量は、それぞれATF温度に応じて異なる特性に基づいて設定されるため、第1補正量を設定する際に、ATF温度の影響が考慮され、上記実フリクショントルクTf分の補正精度の向上をさらに図ることができる。また、トルク補正量及び回転数補正量は、それぞれ走行レンジや自動変速機3の変速段に応じて設定される倍率を積算して求められるため、走行レンジや変速段による影響を考慮して異なる値にすることができる。これにより、上記実フリクショントルクTf分の補正精度の向上をさらに図ることができる。
【0075】
次に、ステップS8へと進み、第2補正量が求められる。この第2補正量は、モータジェネレータ2の回転数制御時における推定モータトルクを用いて求めた第2クラッチ5のフィードバッグ補正量に基づいて求められる。ここでは、フィードバック補正量のうち、I項(積分要素)分の補正量の平均値としている。
【0076】
第1補正量、第2補正量が共に求められたら、ステップS9→ステップS10へと進み、第1補正量と第2補正量の和である総補正量を算出して、この総補正量を補正前目標CL2トルクから差し引いて目標CL2トルクを設定する。このように、第1補正量と第2補正量の和である総補正量を用いて目標CL2トルクの補正を行うことで、第2クラッチ5への入力トルク及びフィードバック補正量の影響を考慮して補正することができ、補正精度の向上をさらに図ることができる。
【0077】
また、実施例1の電動車両の制御装置では、モータジェネレータ2の動力のみで走行する「EVモード」で走行中、第2クラッチ5をスリップ締結するマイクロスリップ制御中に補正制御処理を実行している。このため、第2クラッチ5への入力トルクを推定モータトルクで代替可能となり、入力トルクの検出精度を高くすることができる。この結果、目標CL2トルクの補正精度の向上を図ることができる。
【0078】
次に、効果を説明する。
実施例1の電動車両の制御装置にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0079】
(1) 走行駆動源となるモータ(モータジェネレータ)2と、前記モータ2と駆動輪(タイヤ)7,7の間に介装され、前記モータ2と前記駆動輪7,7との間のトルク伝達を断接する摩擦係合要素(第2クラッチ)5と、前記摩擦係合要素5への入力トルク(推定モータトルク)を検出する入力トルク検出手段(電流センサ)19と、前記摩擦係合要素5における目標伝達トルク容量(目標CL2トルク)を設定する際、前記目標伝達トルク容量の補正量(トルク補正量)を、前記入力トルク(推定モータトルク)が増大するほど大きな値に設定する補正量演算手段(補正量演算部)401Bと、を備える構成とした。
このため、モータ2と駆動輪7,7の間のトルク伝達を断接する摩擦係合要素5における目標伝達トルク容量の補正精度を向上することができる。
【0080】
(2) 前記補正量演算手段(補正量演算部)401Bは、前記補正量を、前記入力トルク(推定モータトルク)に基づいて設定する第1補正量と、前記モータ2の回転数制御時における推定モータトルクを用いて求めた前記摩擦係合要素5のフィードバッグ補正量に基づいて設定する第2補正量との和によって求める構成とした。
このため、(1)の効果に加え、補正量を求める際に、入力トルク及びフィードバック補正量の影響が考慮され、摩擦係合要素5における目標伝達トルク容量の補正精度を向上することができる。
【0081】
(3) 前記摩擦係合要素(第2クラッチ)5の入力回転数を検出する入力回転数検出手段(AT入力回転センサ)12を備え、前記補正量演算手段(補正量演算部)401Bは、前記補正量を、前記入力回転数が増大するほど、大きな値に設定する構成とした。
このため、(1)又は(2)の効果に加え、補正量を求める際に、摩擦係合要素5の入力回転数の影響が考慮され、摩擦係合要素5における目標伝達トルク容量の補正精度を向上することができる。
【0082】
(4) 前記摩擦係合要素(第2クラッチ)5は、油圧により駆動して前記伝達トルク容量を可変する油圧クラッチであり、前記補正量演算手段(補正量演算部)401Bは、前記補正量を、前記摩擦係合要素5を駆動する油の温度(ATF温度)に応じて設定する構成とした。
このため、(1)〜(3)いずれかの効果に加え、補正量を求める際に、摩擦係合要素5を駆動する作動油温の影響が考慮され、摩擦係合要素5における目標伝達トルク容量の補正精度を向上することができる。
【0083】
(5) 前記モータ(モータジェネレータ)2と前記駆動輪(タイヤ)7,7の間に配置された変速機(自動変速機)3を備え、前記補正量演算手段(補正量演算手段)401Bは、前記変速機3の走行レンジ又は変速比(変速段)のうち少なくとも一方に応じて設定する構成とした。
このため、(1)〜(4)いずれかの効果に加え、補正量を求める際に、変速機3の走行レンジや変速比の影響が考慮され、摩擦係合要素5における目標伝達トルク容量の補正精度を向上することができる。
【0084】
(6) 前記補正量演算手段(補正量演算手段)401Bは、前記モータ(モータジェネレータ)2の動力のみで走行する電気自動車モード(EVモード)で走行中、前記補正量を設定する構成とした。
このため、(1)〜(5)いずれかの効果に加え、摩擦係合要素5への入力トルクを推定モータトルクで代替することができ、入力トルクの検出精度を高くして目標伝達トルク容量の補正精度の向上を図ることができる。
【0085】
(7) 前記補正量演算手段(補正量演算部)401Bは、前記目標伝達トルク容量が所定範囲内のときに、前記補正量を設定する構成とした。
このため、(1)〜(6)いずれかの効果に加え、目標伝達トルク容量に応じた補正量をすることができ、さらに補正精度の向上を図ることができる。
【0086】
以上、本発明の電動車両の制御装置を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については、この実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0087】
実施例1では、第1補正量や第2補正量、総補正量を、目標CL2トルクの出力に応じてその都度演算しているが、算出する値を所定時間の平均値としたり、現在のATF温度を考慮して演算値を記憶する等の学習制御的に各補正量を求めることもできる。
【0088】
また、実施例1の電動車両の制御装置では、摩擦係合要素である第2クラッチ5における目標指令値として、目標伝達トルク容量に対する補正量を求めるようにした。しかしながらこれに限らず、目標指令値を第2クラッチ5における目標クラッチ圧(目標クラッチ締結油圧)とし、この目標クラッチ圧に対する補正量であってもよい。
【0089】
さらに、実施例1では、有段式の自動変速機3に内蔵した複数の摩擦要素のうち、所定の条件に適合する摩擦要素を選択して第2クラッチ5としている。そのため、補正量を算出した変速段以外であっても、同じ摩擦要素であれば、先に演算した補正量を用いて補正してもよい。これにより、補正演算に要する時間の短縮を図ることができる。
【0090】
なお、自動変速機3とは別に第2クラッチ5を設けても良く、例えば、モータジェネレータ2と変速機入力軸との間に自動変速機3とは別に第2クラッチ5を設ける例や、変速機出力軸とタイヤ7,7の間に自動変速機3とは別に第2クラッチ5を設ける例も含まれる。さらに、自動変速機3とは別に第2クラッチ5を設けた場合であれば、無段変速機を用いたり、手動変速機を用いることもできる。
【0091】
実施例1では、本発明の電動車両の制御装置をハイブリッド車両に対し適用した例を示したが、駆動源としてモータのみを搭載した電気自動車や、燃料電池車に対しても適用することができる。要するに、駆動源にモータを搭載することで摩擦係合要素への入力トルクを検出可能な車両であれば、本発明を適用できる。
【符号の説明】
【0092】
1 エンジン
2 モータジェネレータ(モータ)
3 自動変速機(変速機)
4 第1クラッチ
5 第2クラッチ(摩擦係合要素)
7,7 タイヤ(駆動輪)
12 AT入力回転センサ(入力回転数検出手段)
19 電流センサ(入力トルク検出手段)
20 統合コントローラ
401A 補正前目標CL2トルク演算部
401B 補正量演算部(補正量演算手段)
401C 目標CL2トルク演算部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行駆動源となるモータと、
前記モータと駆動輪の間に介装され、前記モータと前記駆動輪との間のトルク伝達を断接する摩擦係合要素と、
前記摩擦係合要素への入力トルクを検出する入力トルク検出手段と、
前記摩擦係合要素における目標伝達トルク容量を設定する際、前記目標伝達トルク容量の補正量を、前記入力トルクが増大するほど大きな値に設定する補正量演算手段と、
を備えることを特徴とする電動車両の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載された電動車両の制御装置において、
前記補正量演算手段は、前記補正量を、前記入力トルクに基づいて設定する第1補正量と、前記モータの回転数制御時における推定モータトルクを用いて求めた前記摩擦係合要素のフィードバッグ補正量に基づいて設定する第2補正量との和によって求めることを特徴とする電動車両の制御装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載された電動車両の制御装置において、
前記摩擦係合要素の入力回転数を検出する入力回転数検出手段を備え、
前記補正量演算手段は、前記補正量を、前記入力回転数が増大するほど、大きな値に設定することを特徴とする電動車両の制御装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載された電動車両の制御装置において、
前記摩擦係合要素は、油圧により駆動して前記伝達トルク容量を可変する油圧クラッチであり、
前記補正量演算手段は、前記補正量を、前記摩擦係合要素を駆動する油の温度に応じて設定することを特徴とする電動車両の制御装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載された電動車両の制御装置において、
前記モータと前記駆動輪の間に配置された変速機を備え、
前記補正量演算手段は、前記変速機の走行レンジ又は変速比のうち少なくとも一方に応じて設定することを特徴とする電動車両の制御装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載された電動車両の制御装置において、
前記補正量演算手段は、前記モータの動力のみで走行する電気自動車モードで走行中、前記補正量を設定することを特徴とする電動車両の制御装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載された電動車両の制御装置において、
前記補正量演算手段は、前記目標伝達トルク容量が所定範囲内のときに、前記補正量を設定することを特徴とする電動車両の制御装置。
【請求項1】
走行駆動源となるモータと、
前記モータと駆動輪の間に介装され、前記モータと前記駆動輪との間のトルク伝達を断接する摩擦係合要素と、
前記摩擦係合要素への入力トルクを検出する入力トルク検出手段と、
前記摩擦係合要素における目標伝達トルク容量を設定する際、前記目標伝達トルク容量の補正量を、前記入力トルクが増大するほど大きな値に設定する補正量演算手段と、
を備えることを特徴とする電動車両の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載された電動車両の制御装置において、
前記補正量演算手段は、前記補正量を、前記入力トルクに基づいて設定する第1補正量と、前記モータの回転数制御時における推定モータトルクを用いて求めた前記摩擦係合要素のフィードバッグ補正量に基づいて設定する第2補正量との和によって求めることを特徴とする電動車両の制御装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載された電動車両の制御装置において、
前記摩擦係合要素の入力回転数を検出する入力回転数検出手段を備え、
前記補正量演算手段は、前記補正量を、前記入力回転数が増大するほど、大きな値に設定することを特徴とする電動車両の制御装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載された電動車両の制御装置において、
前記摩擦係合要素は、油圧により駆動して前記伝達トルク容量を可変する油圧クラッチであり、
前記補正量演算手段は、前記補正量を、前記摩擦係合要素を駆動する油の温度に応じて設定することを特徴とする電動車両の制御装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載された電動車両の制御装置において、
前記モータと前記駆動輪の間に配置された変速機を備え、
前記補正量演算手段は、前記変速機の走行レンジ又は変速比のうち少なくとも一方に応じて設定することを特徴とする電動車両の制御装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載された電動車両の制御装置において、
前記補正量演算手段は、前記モータの動力のみで走行する電気自動車モードで走行中、前記補正量を設定することを特徴とする電動車両の制御装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載された電動車両の制御装置において、
前記補正量演算手段は、前記目標伝達トルク容量が所定範囲内のときに、前記補正量を設定することを特徴とする電動車両の制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−90491(P2012−90491A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−237258(P2010−237258)
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
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