説明

電子デバイス用基板、電子デバイス及びこれらの製造方法並びに電子機器

【課題】電気光学装置用基板の接続端子と外部接続部品とを熱圧着して接続する際の無機絶縁膜の破損による歩留まり低下を抑制する。
【解決手段】電気光学装置用基板(10)は、無機絶縁膜と、外部接続部品に接続される接続端子(14)とを備える。接続端子(14)は、無機絶縁膜が設けられていない領域に設けられているので、外部接続部品を接続端子(14)に熱圧着したとしても、無機絶縁膜の破損に起因する製品の歩留まり低下を抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子デバイス用基板、電子デバイス及びこれらの製造方法並びに電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、液晶ディスプレイやELディスプレイ、指紋センサ等の電子デバイスは、複数の薄膜トランジスタが設けられたTFT基板を備える。TFT基板には、各薄膜トランジスタを駆動するためのドライバICをTFT基板に接続する接続端子が設けられている。あるいは、TFT基板には各薄膜トランジスタを駆動するためのドライバ回路が設けられており、ドライバ回路に電気信号を供給するための外部接続部品をTFT基板に接続する接続端子が設けられている。
【0003】
TFT基板とドライバIC等の外部接続部品とを接続する方法として、例えば、特開2008−218542号公報に開示されているように、異方性導電フィルムを介して両者を熱圧着する方法が知られている。異方性導電フィルムは、熱硬化性接着剤のフィルム中に導電性粒子が分散されており、フィルムの厚さ方向に熱圧着されると、熱硬化性接着剤が流動化すると同時に、フィルム内部の導電性粒子がTFT基板の接続端子とドライバICの接続端子との間に捕捉かつ圧縮され、熱硬化した接着剤により変形が保持されて、端子間の電気的接続を得るものである。
【0004】
また、近年、フレキシブルな電子デバイスを実現するために、可撓性のある樹脂基板をTFT基板として用いることが、特開2008−276212号公報に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−218542号公報
【特許文献2】特開2008−276212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、TFT基板には、薄膜トランジスタを形成するために、下地保護膜、ゲート絶縁膜、層間絶縁膜、平坦化膜、上面保護膜などの絶縁膜が形成される。これらの絶縁膜には、通常、無機材料(例えば、酸化珪素又は窒化珪素)が使用される。TFT基板として可撓性の樹脂基板を用い、これらの絶縁膜として無機材料を用いた場合、異方性導電フィルムを介してTFT基板と外部接続部品とを熱圧着するために、TFT基板を高温(例えば、150℃〜200℃)かつ高圧(例えば、2Mpa〜5MPa)の環境下におくと、柔軟な樹脂基板が圧力によって変形し、これらの絶縁膜にクラック等が生じる。そのため、無機絶縁膜の上に設けられている配線が断線し、製品の歩留まりが低下する。
【0007】
そこで、本発明は、電子デバイス用基板の接続端子と外部接続部品とを熱圧着して接続する際の歩留まり低下を抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明に係わる電子デバイス用基板は、樹脂層と、樹脂層上の第1の領域に設けられた半導体層と、樹脂層上の第1の領域に設けられた複数の絶縁膜と、樹脂層上の第2の領域に設けられ、外部接続部品に接続される接続端子と、を備える電子デバイス用基板であって、接続端子は、複数の絶縁膜のうち無機材料からなる絶縁膜と平面的に重ならないことを特徴とする。少なくとも複数の接続端子と平面視で重なる領域には無機絶縁膜が設けられていないため、外部接続部品を接続端子に熱圧着した時、たとえ圧力によって接続端子の下層に存在する樹脂層が変形しても、樹脂層の上に設けられた配線に損傷が生じることはなく、無機絶縁膜の破損に起因する製品の歩留まり低下を抑制できる。本明細書において、樹脂層とは、それ自身で形状を保てる程度の剛性を持つ可撓性の樹脂基板や、基板上に形成されたフィルム状の樹脂層などを意味する。
【0009】
本発明に係わる電子デバイスは、本発明に係わる電子デバイス用基板と、熱硬化性接着剤を介して接続端子と接続された外部接続部品と、を備える。本発明に係わる電子機器は、本発明に係わる電子デバイスを備える。
【0010】
本発明に係わる電子デバイス用基板の製造方法は、樹脂層と、樹脂層上の第1の領域に設けられた半導体層と、樹脂層上の第1の領域に設けられた複数の絶縁膜と、樹脂層上の第2の領域に設けられ、外部接続部品に接続される接続端子と、を備える電子デバイス用基板の製造方法であって、半導体層および複数の絶縁膜を樹脂層上の第1の領域に形成する工程と、接続端子を、複数の絶縁膜のうち無機材料からなる絶縁膜と平面的に重ならないように樹脂層上の第2の領域に形成する工程と、を備えることを特徴とする。少なくとも複数の接続端子と平面視で重なる領域には、無機絶縁膜が設けられていないため、外部接続部品を接続端子に熱圧着した時、たとえ圧力によって接続端子の下層に存在する樹脂層が変形しても、樹脂層の上に設けられた配線に損傷が生じることはなく、無機絶縁膜の破損に起因する製品の歩留まり低下を抑制できる。本明細書において、樹脂層とは、それ自身で形状を保てる程度の剛性を持つ可撓性の樹脂基板や、基板上に形成されたフィルム状の樹脂層などを意味する。
【0011】
本発明に係わる電子デバイス用基板の製造方法は、半導体層および複数の絶縁膜を、第1の基板の一の面の第1の領域に形成する工程と、外部接続部品に接続される接続端子を、複数の絶縁膜のうち無機材料からなる絶縁膜と平面的に重ならないように一の面の第2の領域に形成する工程と、半導体層と複数の絶縁膜と接続端子とを、第1の基板から第2の基板に転写する工程と、半導体層と複数の絶縁膜と接続端子とを、第2の基板から樹脂層に転写する工程と、を備える。
【0012】
本発明に係わる電子デバイスの製造方法は、本発明に係わる電子デバイス用基板の製造方法によって製造された電子デバイス用基板と、外部接続部品と、を含む電子デバイスの製造方法であって、外部接続部品を、熱硬化性接着剤を介して接続端子に接続する工程をさらに含むことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態に係わる電子デバイス用基板の平面図である。
【図2】本実施形態に係わる電子デバイス用基板の一部省略平面図である。
【図3】実施例1に係わる電子デバイス用基板の製造工程断面図である。
【図4】実施例1に係わる電子デバイス用基板の製造工程断面図である。
【図5】実施例1に係わる電子デバイス用基板の製造工程断面図である。
【図6】実施例1に係わる電子デバイス用基板の製造工程断面図である。
【図7】実施例1に係わる電子デバイス用基板の製造工程断面図である。
【図8】実施例1に係わる電子デバイス用基板の製造工程断面図である。
【図9】実施例2に係わる電子デバイス用基板の製造工程断面図である。
【図10】実施例2に係わる電子デバイス用基板の製造工程断面図である。
【図11】実施例2に係わる電子デバイス用基板の製造工程断面図である。
【図12】実施例2に係わる電子デバイス用基板の製造工程断面図である。
【図13】実施例3に係わる電子デバイス用基板の製造工程断面図である。
【図14】実施例4に係わる電子デバイス用基板の製造工程断面図である。
【図15】実施例4に係わる電子デバイス用基板の製造工程断面図である。
【図16】実施例6に係わる電子機器の説明図である。
【図17】実施例6に係わる電子機器の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。ただし、以下の実施形態はあくまで本発明の一例に過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
なお、本願の電子デバイスとは、液晶表示装置や電気泳動表示装置、有機エレクトロルミネッセンス表示装置、エレクトロクロミック表示装置などの表示装置、あるいは、静電容量センサや光学センサ、圧力センサなどの各種センサ装置、あるいは、DRAMやSRAM、FeRAMなどの揮発性乃至は不揮発性記憶装置、あるいは、マイクロプロセッサーやデジタルシグナルプロセッサーなどの演算装置、あるいは此等装置を組み合わせた複合電子装置を指す。又、電子デバイス基板とは、此等電子デバイスに使用されて居り、樹脂層上に形成された薄膜トランジスタ回路や接続端子が設けられた基板を指す。
【0015】
図1は、本発明に係わる電子デバイス用基板10の平面図である。本発明において、電子デバイス用基板10は、基板11として可撓性のある樹脂基板が用いられおり、少なくとも第1の領域と第2の領域とを有して居る。第1の領域とは、半導体膜や電極、絶縁膜等が設けられており、薄膜トランジスタが形成されている。此の第1の領域を素子部12と呼ぶ。一方、第2の領域には、外部接続部品(例えば、ドライバIC又はフレキシブル配線基板など)が接続される複数の接続端子14が設けられており、第2の領域を接続部13と呼ぶ。接続端子14を介して、電気信号が外部接続部品から素子部12に供給される。
【0016】
素子部12には薄膜トランジスタや薄膜ダイオード、薄膜抵抗などからなる薄膜半導体回路が形成されている。薄膜半導体回路は例えば、トランジスタと画素電極とから成る表示装置で有ったり、薄膜ダイオードや薄膜コンデンサを用いたセンサ装置で有ったりする。
【0017】
素子部12に設けられているトランジスタは、半導体膜、電極(ゲート電極、ドレイン電極、ソース電極)、及び絶縁膜(ゲート絶縁膜、層間絶縁膜、下地保護膜、平坦化膜など)を備えている。一方、接続部13には、無機絶縁膜は設けられていない。すなわち、素子部12に設けられている絶縁膜は、すべて無機絶縁膜であってもよいし、そのうち一部の絶縁膜は有機絶縁膜であってもよいが、熱硬化性接着剤を含む異方性導電フィルム等を介して外部接続部品を接続部13に熱圧着する際に破損する虞のある無機絶縁膜は、少なくとも複数の接続端子14と平面視で重なる領域には、設けられていない。言い換えれば、複数の接続端子14は平面視でいずれの無機絶縁膜と重なっていない。
電子デバイス用基板10の製造過程において、基板11上の接続部13にも無機絶縁膜が形成されてもよいが、少なくとも複数の接続端子14が形成されるべき領域に設けられた無機絶縁膜は、複数の接続端子14を形成する前に除去される。本発明によれば、異方性導電フィルムを介して外部接続部品を複数の接続端子14に熱圧着した時、たとえ圧力によって接続端子14の下層に存在する樹脂層が変形しても、少なくとも複数の接続端子14と平面視で重なる領域にはいずれの無機絶縁膜も設けられていないため、基板11上に設けられた配線(図示せず)に損傷が生じることはなく、製品の歩留まり低下を効果的に抑制できる。
【0018】
外部接続部品は、前述したようにドライバICやフレキシブル配線基板などである。
ドライバICやフレキシブル配線基板には、接続端子14に接続される接続電極が設けられている。接続端子14と接続電極とが異方性導電フィルムを介して互いに重なり合う領域において、基板11に最も大きな圧力が加わる。従って、少なくとも接続端子14が平面視でいずれの無機絶縁膜とも重なっていなければ、製品の歩留まり低下を抑制する効果が得られる。
【0019】
しかし、接続端子14と接続電極とが異方性導電フィルムを介して互いに重なり合わない領域においても、異方性導電フィルムを介して圧力がいくらか基板11に加わって、配線が損傷する恐れがある。また、外部接続部品60を基板11に接続するとき、位置合わせ誤差のために、外部接続部品60が無機絶縁膜と重なってしまい、配線が損傷する恐れがある。そこで、無機絶縁膜を設けない領域の大きさを、以下に述べるように決めると良い。
【0020】
図2は、外部接続部品60としてフレキシブル配線基板を電子デバイス用基板10に実装した状態を示す、一部を省略した平面図である。外部接続部品60の幅をLf、接続部13の幅をLiとすると、0.25mm≦Li−Lf≦3mmという関係を満たすことが好ましい。0.25mm≦Li−Lfであれば、外部接続部品60を電子デバイス用基板10に実装する時に、位置合わせ誤差があっても、外部接続部品60が無機絶縁膜と重なることをほとんど回避できる。一方、金属配線と有機樹脂層との間の接着力は、金属配線と無機絶縁膜との間の接着力よりも弱いため、金属配線が有機樹脂層上に設けられている部分が長いと、金属配線が剥がれ易くなる。金属配線が剥がれ易くなることを防止するためには、Li−Lf≦3mmであることが好ましい。無機絶縁膜が設けられて居ない第2の領域は、実施例1に後述する転写法では工程途中で仮接着剤31が剥き出しになる状態がある(図7B)。又、実施例2に後述する直接形成法では有機樹脂層が剥き出しになる工程(例えば図9Bや図11A、図11B、図12A等)がある。斯うした状態では、転写法の場合仮接着剤が剥き出しの状態で劣化したり、直接形成法では樹脂がエッチングされたり膨潤伸縮するとの課題が生じ得る。斯うした課題を克服するには第2の領域は出来る限り小さい事が望ましく、経験的にLi−Lf≦3mmとされる。
【0021】
なお、電子デバイス用基板10の素子部12を形成するトランジスタ素子の構造は、ボトムゲート型トランジスタ又はトップゲート型トランジスタの何れでもよい。
【実施例1】
【0022】
以下、図3乃至図8を参照しながら転写法を用いた電子デバイス基板101の製造方法とその電子デバイス基板への外部接続部品の接続方法について説明する。尚、此等の図は電子デバイス基板の断面を描いており、図面の左側は薄膜素子が形成されている第1の領域12を示し、図面の右側は接続端子が形成される第2の領域13を示している。又、実施例1では電子デバイスとして画素電極を有する表示装置を例に取って説明する。
【0023】
まず、図3(A)に示すように、第1の基板20上に剥離層21及び下地保護膜22を形成する。第1の基板20の剥離層21及び下地保護膜22が形成された面を第1の基板20の表側の面とする。第1の基板20にはガラス基板や石英基板等の透光性を備えた基板が用いられる。第1の基板20は、適度な機械的強度を有しており、プロセス温度に耐え得るような耐熱性を備えていることが必要である。例えば、最高プロセス温度をTmaxとしたとき、歪点(ガラス転移温度Tg又は軟化点)がTmax以上の第1の基板20を用いることが好ましい。薄膜トランジスタの半導体層に低温ポリシリコン半導体を利用するには、歪点が350℃以上であることが好ましく、500℃以上であることがより好ましい。
【0024】
剥離層21は、エネルギー付与によって、剥離層21の層内、又は剥離層21と他の薄膜との間の界面に剥離(以下、「層内剥離」又は「界面剥離」という)を生じるような性質を有しており、好ましくは、光の照射により剥離層21を構成する物質の原子間又は分子間の結合力が消失又は減少する性質、即ち、アブレーションが生じて層内剥離又は界面剥離に至る性質を有しているものが好ましい。剥離層21への光照射により剥離層21から気体が放出され、分離効果が発現される場合もある。即ち、剥離層21に含有されていた成分が気体となって放出される場合と、剥離層21が光を吸収して一瞬気体となり、その蒸気が放出され、分離に寄与する場合とがある。剥離層21としては、例えば、アモルファスシリコン、水素含有アモルファスシリコン、窒素含有アモルファスシリコン、水素含有合金、窒素含有合金、等、公知の材料を用いることができる。
【0025】
下地保護膜22として、例えば、窒化珪素膜や酸化珪素膜等の無機絶縁膜を用いることができる。下地保護膜22の成膜法として、プラズマCVD法、スパッタ法などの公知の薄膜プロセスを適用できる。
【0026】
次に、図3(B)に示すように、プラズマCVD法、減圧CVD法、スパッタ法などの公知の薄膜プロセスを用いて、下地保護膜22上にノンドープの半導体層23を島状に形成する。続いて、図3(C)に示すように、半導体層23の表面を含む基板全面にゲート絶縁膜24を形成する。ゲート絶縁膜24として、例えば、窒化珪素膜や酸化珪素膜等の無機絶縁膜を用いることができる。
【0027】
続いて、図4(A)に示すように、ゲート絶縁膜24上にゲート電極25を形成し、ゲート電極25をマスクとして、半導体層23に低濃度の不純物をイオン注入することにより、半導体層23に低濃度のソース領域及びドレイン領域を形成する。
【0028】
次に、図4(B)に示すように、層間絶縁膜26を堆積し、ソース電極及びドレイン電極が形成されるべき位置にコンタクトホール26a,26bを開口する。層間絶縁膜26として、例えば、窒化珪素膜や酸化珪素膜等の無機絶縁膜を用いることができる。コンタクトホール開口時に、同時に、接続端子14が形成されるべき領域(図5(A)14が形成されるべき領域)に設けられている下地保護膜22、ゲート絶縁膜24、及び層間絶縁膜26を除去し、剥離層21を表面に露出させる。この工程により、接続端子14が形成されるべき領域からすべての無機絶縁膜が除去される。この様に接続端子14が形成されるべき領域から無機絶縁膜を除去する工程と、コンタクトホール26a,26bを開口する工程とを一括して同時に実施することにより、製造プロセスの増加を抑制できる。
【0029】
下地保護膜22、ゲート絶縁膜24及び層間絶縁膜26を除去する場合、これらの絶縁膜の端部は基板20に対して鈍角となる様ななだらかな斜面形状に加工することが望ましい。鈍角な斜面形状とは絶縁膜斜面の基板に対する開口側角度が概ね135°以上(絶縁膜側角度が45°以下)になっている状態を指す。絶縁膜の端部が90°近傍の急峻であると、絶縁膜の端部を跨いで設けられる配線(即ち接続端子14を為す金属配線)が断線する可能性があるが、端部がなだらかであれば、断線の可能性が低下するからである。さらに断線を防ぐためには、接続端子14を為す金属の厚さが、此等無機絶縁膜の厚さの総和(本実施例では、下地保護膜22の厚さとゲート絶縁膜24の厚さと無機層間絶縁膜26の厚さの和)よりも大きい方が好ましい。尚、ここでは、接続端子14が形成されるべき領域に無機絶縁膜を積層した後にすべての無機絶縁膜を除去する例を示したが、マスクを用いた蒸着法などによって、接続端子14が形成されるべき領域を避けて無機絶縁膜を形成してもよい。要するに、少なくとも接続端子14が形成されるべき領域に、いずれの無機絶縁膜も設けられていなければよい。
【0030】
次に、図5(A)に示すように、スパッタ法等の公知の薄膜プロセスを用いて低抵抗の導電膜を堆積する。低抵抗の導電膜を所定の形状にパターニングすることで、コンタクトホール26a,26bを介して半導体層23のソース領域及びドレイン領域にそれぞれ接続するソース電極27a及びドレイン電極27bを形成する。このとき、接続端子14が形成されるべき領域に堆積されている導電膜も同時に所定の形状にパターニングすることで、接続端子14を形成する。ソース電極27a及びドレイン電極27bを形成する工程と、接続端子14を形成する工程とを一括して同時に実施することにより、製造プロセスの増加を抑制できる。
【0031】
次に、図5(B)に示すように、基板全面に平坦化膜28を堆積する。平坦化膜28は、有機絶縁膜でもよく、或いは無機絶縁膜でもよい。また、平坦化膜28は、必須ではなく省略してもよい。有機絶縁膜の材質として、例えば、ポリスチレン、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリビニルフェニレン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレートのようなアクリル系樹脂、ポリテトラフルオロエチレンのようなフッ素系樹脂、ポリビニルフェノールあるいはノボラック樹脂のようなフェノール系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリブテンなどのオレフィン系樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
次に、図6(A)に示すように、ドレイン電極27bに接続するコンタクトホールを平坦化膜28に開口するとともに、接続端子14が設けられている領域にある平坦化膜28を除去し、接続端子14及び剥離層21を表面に露出させる。続いて、基板全面に透明電極材料を成膜し、これを所定の形状にパターニングすることにより、ドレイン電極27bに接続する画素電極29aを形成する。なお、接続端子14の露出面を透明電極材料29bで被覆し、接続端子14を保護するのが好ましい。この場合、接続端子14を為す金属は表面に露出していないが、電気的には透明電極材料29bを介して導通しているので、接続端子14は電気的に表面に露出して居ることになる。なお、必ずしも接続端子14の表面全体を透明電極材料29bで覆う必要はなく、少なくとも接続端子14の端部を覆うように透明電極材料29bを設ければ、接続端子14の剥離を抑制できる。透明電極材料としては、ITOなどが好適である。尚、此処では電子デバイスの例として表示装置を挙げたので、画素電極を設けたが、記憶装置や演算装置等、画素電極が不要な電子デバイスでは当然、この工程は省かれる。反対に演算装置等で積層配線が求められる場合は図5Bに示す絶縁膜堆積と図6Aに示すコンタクトホール開口並びに接続部からの絶縁膜除去と金属配線形成とを複数回繰り返すことになる。その場合、接続端子14を為す金属配線は必ずしもソース電極27aやドレイン電極27bと同じ金属である必然性はなく、積層配線を為す一層乃至複数層が用いられる。何れにしても接続部13では剥離層21上に直接接続端子14が形成され、その端子が電気的に表面に露出している。
【0033】
次に、図6(B)に示すように、仮接着剤31を用いて第1の基板20の表側の面を第2の基板30に貼り合わせ、第1の基板20の裏面側から光を照射する。第2の基板30は、第1の基板20に比べて耐熱性や耐食性に劣るものでも良い。第2の基板30に要求される特性(特に耐熱性)はこの後に行われる転写工程に耐える水準を満たせば良い。
【0034】
仮接着剤31としては、例えば、反応性硬化型接着剤、熱硬化型接着剤、光硬化型接着剤(紫外線硬化型接着剤等)、嫌気硬化型接着剤、その他の各種硬化型接着剤を用いることができる。具体的には、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、シリコン系接着剤、天然ゴム系接着剤、ポリウレタン系接着剤、フェノール系接着剤、酢酸ビニル系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤、ポリイミド系接着剤、ポリアミド系接着剤等を用いることができる。
【0035】
第1の基板20の裏面側から光を照射することにより、剥離層21の密着力が弱められる。剥離層21は、光が照射されると、層内剥離又は界面剥離を生じる。層内剥離又は界面剥離が生じる原理は、剥離層21の構成材料にアブレーションが生じること、また剥離層21に含まれるガスの放出、更には、照射直後に生じる溶融、蒸散等の相変化によるものである。アブレーションとは、照射光を吸収した剥離層21の構成材料が光化学的又は熱的に励起され、その表面や内部の原子又は分子の結合が切断されて放出することをいい、主に剥離層21の構成材料の全部又は一部が溶融、蒸散(気化)等の相変化を生じる現象として現れる。また、相変化によって微小な発泡状態となり、結合力が低下することもある。剥離層21が層内剥離を生じるか界面剥離を生じるか又はその両方であるかは、剥離層21の組成やその他種々の要因に左右され、その要因の一つとして、照射される光の種類、波長、強度、到達深さ等の条件が挙げられる。
【0036】
剥離層21に照射される光としては、剥離層21に層内剥離又は界面剥離を起こさせる光であればよく、特に限定されるものではない。例えば、X線、紫外線、可視光、赤外線(熱線)、レーザ光、ミリ波、マイクロ波、電子線、放射線(α波、β波、γ波)等が挙げられる。特に、剥離層21の剥離(アブレーション)を生じさせ易く、且つ高精度の局部照射が可能である点でレーザ光が好ましい。レーザ光は、コヒーレント光であり、第1の基板20を介して剥離層21に高出力パルス光を照射して高精度で所望部分に剥離を生じさせるのに好適である。したがって、レーザ光の使用によって容易に且つ確実に剥離層21を剥離させることができる。
【0037】
次に、図7(A)に示すように、剥離層21の結合力を弱めたら、第1の基板20と第2の基板30とを引き離す力を加え、第1の基板20を第2の基板30から剥離する。続いて、図7(B)に示すように、デバイス層の裏面に付着している剥離層21を除去する。剥離層21を除去する方法として、例えば、エッチング、アッシング、研磨等を挙げることができる。なお、剥離層21を除去すると、仮接着剤31の一部は接続部13にて大気中に露出する。大気中に仮接着剤が露出すると、仮接着剤が大気の水分を吸収して膨潤や変形をする可能性があるため、剥離層除去後は後述の接着工程(図8(A))を速やかに(好ましくは図7Aの剥離工程から基板接着工程を24時間以内に)実施するのが望ましい。先にも述べた様に電子デバイス用基板101の全体面積に占める接続部13の面積の割合をできるだけ小さくしてLi−Lf≦3mmとすると、仮接着剤31の膨潤や変形を抑制する上で効果的である。
【0038】
次に、図8(A)に示すように、デバイス層の裏面に接着剤(図示せず)を塗布し、デバイス層と基板11とを接着する。基板11は、前述したように、可撓性のある樹脂基板である。続いて、仮接着剤31及び第2の基板30を除去する。これにより、電子デバイス用基板101の製造工程は完了する。
【0039】
図8(B)は、半導体チップを外部接続部品60として電子デバイス用基板101に実装するための実装工程を示している。熱硬化性接着剤を含む異方性導電フィルム50を接続端子14上に塗布し、外部接続部品60を接続端子14に熱圧着することにより、外部接続部品60を接続端子14に接続する。熱圧着行程における温度は、例えば110度乃至150度、圧力は、例えば0.5MPa乃至5MPaに設定される。接続部13には、無機絶縁膜が除去されているため、異方性導電フィルム50を介して外部接続部品60を接続端子14に熱圧着した時、接続部13に設けられた配線(図示せず)に損傷が生じることはなく、製品の歩留まり低下を効果的に抑制できる。このように、本実施例によれば、特に新たな工程を追加せずとも、110度乃至150度、及び0.5MPa乃至5MPa程度の加熱加圧条件において安定的に外部接続部品60を実装することが可能になる。
【0040】
実施例1では、基板11として可撓性のある樹脂基板を用いたが、表面に樹脂層が設けられた可撓性を有する金属などの基板や、表面に樹脂層が設けられた可撓性を有さない金属などの基板、あるいは、非常に柔らかいフィルム状の樹脂基板を用いてもよい。
【0041】
なお、上述の説明では、第1の基板20に形成されたデバイス層(素子部12及び接続部13を構成するデバイス層)を剥離層21に光照射して基板11に転写することによって電子デバイス用基板101を製造する方法を例示したが、本実施例は、これに限られるものではない。転写方法としては剥離層の代わりにガラスに対するエッチングストッパ層21を設けて、ガラスを裏面からエッチングして図7Aの構造としてフレキシブル電子デバイス用基板101を作成しても良い。また、柔軟な基板11上にデバイス層を直接形成してもよい。この場合、樹脂層としては、金属との接着性に優れた官能基を含む樹脂層(エポキシ樹脂、イミド樹脂、アクリル樹脂等)が好適である。此に関しては実施例2にて詳述する。
【0042】
又、上述の説明では、外部接続部品60と接続端子14とを接続するための手段として、異方性導電フィルムを例示したが、異方性導電ペーストを用いてもよい。また、上述の説明では、半導体チップを外部接続部品60の一例として説明したが、フレキシブル配線基板や、半導体チップが実装されたフレキシブル配線基板を外部接続部品60として電子デバイス用基板101に実装してもよく、この場合においても、接続部13に設けられた配線に損傷が生じることはなく、製品の歩留まり低下を効果的に抑制できる。
【実施例2】
【0043】
図9乃至図12を参照しながら実施例2に係わる電子デバイス用基板102の製造方法とその電子デバイス基板への外部接続部品の接続方法について説明する。尚、此等の図は電子デバイス基板の断面を描いており、図面の右側は薄膜素子が形成されている第1の領域12を示し、図面の左側は接続端子が形成される第2の領域13を示している。実施例2では柔軟性を有する基板11上に直接半導体回路を形成する方法を述べる。
【0044】
電子デバイス用基板102には、複数の薄膜トランジスタなどの電子素子が設けられている。また、電子デバイス用基板102は、基板11を含む。基板11は、プラスティックフィルムなどの樹脂基板でも良いし、ガラス基板等の支持基板上に形成された厚さ数ミクロンから100ミクロン程度の樹脂層であっても良い。樹脂層は、薄膜トランジスタなどの電子素子が形成された後に支持基板から取り外されて、フレキシブル基板として用いられても良い。なお、実施例1と同一の部材については、同一の符号を付すものとし、重複する説明を省略する。
【0045】
まず、図9(A)に示すように、基板11の表側の面に下地保護膜22を堆積し、接続端子14が形成されるべき領域にある下地保護膜22を除去する。なお、下地保護膜22は必須ではなく、省略してもよい。
【0046】
次に、図9(B)に示すように、スパッタ法等の公知の薄膜プロセスを用いて基板全面に低抵抗の導電膜を堆積する。低抵抗の導電膜を所望の形状にパターニングすることにより、接続端子14を形成すると同時に、下地保護膜22上にゲート電極25を形成する。このように、接続端子14を形成する工程と、ゲート電極25を形成する工程とを一括して同時に実施することにより、製造プロセスの増加を抑制できる。なお、同図に示す接続端子14は、ゲート電極25に接続されており、トランジスタ素子に走査信号を供給する。
【0047】
次に、図10(A)に示すように、プラズマCVD法等の公知の薄膜プロセスを用いて基板全面にゲート絶縁膜24、真性半導体膜41、及びエッチングストッパー42を順次積層し、エッチングストッパー42をパターニングする。真性半導体膜41として、例えば、真性半導体アモルファスシリコンを用いることができる。エッチングストッパー42として、例えば、ゲート絶縁膜24と同じ材質(窒化珪素など)を用いることができる。
【0048】
次に、図10(B)に示すように、プラズマCVD法等の公知の薄膜プロセスを用いてn+型微結晶シリコン層を成膜し、これをパターニングすることにより、オーミックコンタクト層43a,43bを形成する。このとき、真性半導体膜41も所定形状に一括してパターニングする。
【0049】
続いて、図11(A)に示すように、接続端子14が設けられている領域にあるゲート絶縁膜24を除去する。但し、接続端子14の露出面の一部を被覆するようにゲート絶縁膜24を残存させるのが好ましい。これにより、基板11からの接続端子14の剥離を抑制できる。
【0050】
電子デバイス用基板102を例えば液晶表示装置として用いる場合には、次に、図11(B)に示すように、基板全面に透明電極材料を堆積し、これを所定の形状にパターニングすることにより、画素電極29aを形成する。なお、接続端子14の露出面を透明電極材料29bで被覆し、接続端子14を保護するのが好ましい。続いて、図12(A)に示すように、スパッタ法等の公知の薄膜プロセスを用いて、低抵抗の導電膜を堆積し、これを所定の形状にパターニングして、画素電極29aとオーミックコンタクト層43bとに接続するドレイン電極44bと、オーミックコンタクト層43aに接続するソース電極44aと、ソース電極44aに画像信号を供給する接続端子14aとを形成する。これにより、電子デバイス用基板102の製造工程は完了する。
【0051】
図12(B)は、外部接続部品60を電子デバイス用基板102に実装するための実装工程を示している。熱硬化性接着剤を含む異方性導電フィルム50を接続端子14,14a上に塗布し、外部接続部品60を接続端子14,14aに熱圧着することにより、外部接続部品60を接続端子14,14aに接続する。本発明によれば、異方性導電フィルムを介して外部接続部品を複数の接続端子14に熱圧着した時、たとえ圧力によって接続端子14の下層に存在する樹脂基板あるいは樹脂層が変形しても、少なくとも複数の接続端子14と平面視で重なる領域にはいずれの無機絶縁膜も設けられていないため、基板11上に設けられた配線(図示せず)に損傷が生じることはなく、製品の歩留まり低下を効果的に抑制できる。
【0052】
上述の説明では、ゲート電極25に接続される接続端子14と、ソース電極44aに画像信号を供給する接続端子14aとを、図1に示したように1カ所に集めて設けた例を示した。しかし、電子デバイス用基板102が有する複数の端部のうち、たとえば互いに隣接する2つの端部各々に接続部13を設け、一方の接続部には接続端子14をまとめて配置し、他方の接続部には接続端子14aをまとめて配置してもよい。または、1つの端部に複数の接続部13を設けてもよい。
【0053】
電子デバイス用基板102に複数の接続部13を設ける場合は、複数の接続部13各々において無機絶縁膜を設けないが、互いに隣り合う2つの接続部13間の領域では無機絶縁膜を設けることが好ましい。互いに隣り合う2つの接続部13間の領域に無機絶縁膜を設けておくことによって、基板11が必要以上に撓みやすくなることを防止し、また、素子部12に設けられた無機絶縁膜が剥がれやすくなることを防止する効果が得られる。
【実施例3】
【0054】
実施例3では、本発明に係る電子デバイス用基板10を指紋センサ用基板として適用する。本実施例においても実施例1と同様、電子デバイス用基板10は、基板11と、基板11の上に設けられたデバイス層とを備えている。デバイス層のうち第1の領域には、接触した指との間の静電容量を検出するための、センサ電極やトランジスタなどが設けられている。また、第2の領域には、外部接続部品(例えば、ドライバIC又はフレキシブル配線基板など)が接続される複数の接続端子14が設けられている。実施例1と異なるのは、基板11として、表面に樹脂層が設けられた可撓性を有さない金属基板を用いた点である。ここで、金属基板は樹脂層の支持層であるとみなすことができる。
【0055】
図13は、センサ電極を中心とする静電容量検出回路の断面図である。図13に示すように、静電容量検出回路131には、指紋の凹凸情報を担う検出信号を出力する信号増幅トランジスタ134と、被検者の指先Fとの間に静電容量133を形成するためのセンサ電極172とが形成されている。信号増幅トランジスタ134は、ゲート電極168、ゲート絶縁膜167、多結晶シリコン層(活性層)163、ソース電極165、ドレイン電極166を含んで構成されるトランジスタである。静電容量133は指紋の凹凸パターンに応じてその容量値が変化する可変容量である。指先Fの電位は基準電位に設定されている。センサ電極172はゲート電極168に接続しており、指紋の凹凸による検出容量Cdの変化を信号増幅トランジスタ134に伝達し、チャネルを流れるドレイン電流の増幅作用によって静電容量変化をセンシングできるように構成されている。
【0056】
本実施例に係る電子デバイス用基板10においても、素子部12に設けられているトランジスタは、半導体膜、電極(ゲート電極、ドレイン電極、ソース電極)、及び絶縁膜(ゲート絶縁膜、層間絶縁膜など)を備えている。一方、接続部13には、無機絶縁膜は設けられていない。すなわち、素子部12に設けられている絶縁膜は、すべて無機絶縁膜であってもよいし、そのうち一部の絶縁膜は有機絶縁膜であってもよいが、熱硬化性接着剤を含む異方性導電フィルム等を介して外部接続部品を接続部13に熱圧着する際に破損する虞のある無機絶縁膜は、少なくとも複数の接続端子14と平面視で重なる領域には、設けられていない。言い換えれば、複数の接続端子14は平面視でいずれの無機絶縁膜と重なっていない。
【0057】
電子デバイス用基板10の製造過程において、基板11上の接続部13にも無機絶縁膜が形成されてもよいが、少なくとも複数の接続端子14が形成されるべき領域に設けられた無機絶縁膜は複数の接続端子14を形成する前に除去される。本発明によれば、異方性導電フィルムを介して外部接続部品を複数の接続端子14に熱圧着した時、たとえ圧力によって接続端子14の下層に存在する樹脂層が変形しても、少なくとも複数の接続端子14と平面視で重なる領域にはいずれの無機絶縁膜も設けられていないため、樹脂層(基板11)上に設けられた配線(図示せず)に損傷が生じることはなく、製品の歩留まり低下を効果的に抑制できる。
【0058】
外部接続部品は、前述したようにドライバICやフレキシブル配線基板などである。ドライバICやフレキシブル配線基板には、接続端子14に接続される接続電極が設けられている。接続端子14と接続電極とが異方性導電フィルムを介して互いに重なり合う領域において、基板11に最も大きな圧力が加わる。従って、少なくとも接続端子14が平面視でいずれの無機絶縁膜とも重なっていなければ、製品の歩留まり低下を抑制する効果が得られる。
【0059】
本実施例に係る電子デバイス用基板10も、実施例1で説明した製造方法と同様な製造方法で製造することができるため、製造方法は省略する。
【実施例4】
【0060】
実施例4では、本発明に係る電子デバイス用基板10を、電気泳動表示装置用の基板として適用する。本実施例においても実施例1と同様、電子デバイス用基板10は、基板11と、基板11の上に設けられたデバイス層とを備えている。実施例1と同様、基板11として、可撓性を有する樹脂基板を用いた。樹脂基板の厚さは約100μmである。デバイス層のうち第1の領域には、電気泳動素子に含まれる粒子の分布を制御して画像表示するための回路素子が設けられている。回路素子は例えば、トランジスタ、画素電極などである。また、第2の領域には、外部接続部品(例えば、ドライバIC又はフレキシブル配線基板など)が接続される複数の接続端子14が設けられている。
【0061】
図14は、本発明に係る電子デバイス用基板10を電気泳動表示装置用の基板11として適用した電気泳動表示装置の部分断面図である。図示したように、電気泳動表示装置は、電気泳動表示装置用の基板11と対向電極122が設けられた対向基板120との間に電気泳動層123を挟持することによって構成されている。
【0062】
本実施例に係る電子デバイス用基板11においても、素子部12に設けられているトランジスタは、半導体膜、電極(ゲート電極、ドレイン電極、ソース電極)、及び絶縁膜(ゲート絶縁膜、層間絶縁膜など)を備えている。一方、実施例1と同様、接続部13には、無機絶縁膜は設けられていない。すなわち、素子部12に設けられている絶縁膜は、すべて無機絶縁膜であってもよいし、そのうち一部の絶縁膜は有機絶縁膜であってもよいが、熱硬化性接着剤を含む異方性導電フィルム等を介して外部接続部品を接続部13に熱圧着する際に破損する虞のある無機絶縁膜は、少なくとも複数の接続端子14と平面視で重なる領域には、設けられていない。言い換えれば、複数の接続端子14は平面視でいずれの無機絶縁膜と重なっていない。
【0063】
尚、図14において、符号10aは表示領域を示し、符号151は対向基板120を保護基板(図示せず)に接着するための接着層を示し、符号122は共通電極を示し、符号123は電気泳動層を示し、符号182は白色粒子(電気泳動粒子)を示し、符号183は黒色粒子(電気泳動粒子)を示し、符号180はマイクロカプセルを示し、符号185はバインダを示し、符号209は画素電極を示し、符号230はTFTを示し、符号232はゲート電極を示し、符号233はソース・ドレイン電極を示し、符号311はチャネル領域を示し、符号312はソース・ドレイン領域を示し、符号231は半導体層を示し、符号241,242は層間絶縁膜を示し、符号202はゲート絶縁膜を示し、符号205は絶縁膜を示す。
【0064】
次に、図15を用いて、実施例4に係る電子デバイス用基板10の製造方法を説明する。但し、第1の基板20に形成したデバイス層を第2の基板30に転写するまでは、実施例1で説明した製造方法と同様である。したがって、ここでは、第2の基板30に転写されたデバイス層から剥離層21を除去する工程(図7参照)の次の工程から説明する。
【0065】
図15(A)に示すように、デバイス層の裏面に接着剤(図示せず)を塗布し、デバイス層と基板11とを接着する。本実施例において、基板11は、粘着層51を介して支持基板52に貼り付けられている。続いて、仮接着剤31及び第2の基板30を除去する。
【0066】
次に、図15(B)に示すように、基板11と対向基板120との間に電気泳動層123を挟む。さらに、半導体チップを外部接続部品60として電気泳動表示装置用の基板11に実装する。最後に、基板11を支持基板52から剥離する。これにより、電気泳動表示装置の製造工程は完了する。
【0067】
本発明によれば、異方性導電フィルムを介して外部接続部品を複数の接続端子14に熱圧着した時、たとえ圧力によって接続端子14の下層に存在する樹脂基板(基板11)が変形しても、少なくとも複数の接続端子14と平面視で重なる領域にはいずれの無機絶縁膜も設けられていないため、樹脂基板(基板11)上に設けられた配線(図示せず)に損傷が生じることはなく、製品の歩留まり低下を効果的に抑制できる。
【実施例5】
【0068】
実施例4では、基板11として厚さ約100μmの可撓性を有する樹脂基板を用いたが、本実施例では、基板11として厚さ約10μmのフィルム状の樹脂層を用いた。実施例4と異なる点は、基板11の厚さと製造方法だけであるので、製造方法について説明する。
【0069】
実施例4では、デバイス層の最終的な転写先基板は、支持基板52に貼り付けられた可撓性を有する樹脂基板(基板11)であった。しかし、本実施例では、デバイス層は支持基板52上に固定された膜厚が10μmのフィルム状基板11に直接形成される。この場合、粘着層51がスピンコート法などによって支持基板52上に形成された後にフィルム状基板11が固定される。そして、図3乃至図6および図15(B)に示したのと同様な工程を経て、非常に薄い電気泳動表示装置が製造される。
【0070】
すなわち、支持基板52上に固定されたフィルム状基板11にデバイス層を形成する。次に、基板11と対向基板120との間に電気泳動層123を挟む。さらに、半導体チップを外部接続部品60として電気泳動表示装置用の基板11に実装する。最後に、支持基板52をフィルム状基板11から剥離する。これにより、非常に薄い電気泳動表示装置の製造工程は完了する。
【0071】
本発明によれば、異方性導電フィルムを介して外部接続部品を複数の接続端子14に熱圧着した時、たとえ圧力によって接続端子14の下層に存在する樹脂層(基板11)が変形しても、少なくとも複数の接続端子14と平面視で重なる領域にはいずれの無機絶縁膜も設けられていないため、樹脂層(基板11)上に設けられた配線(図示せず)に損傷が生じることはなく、製品の歩留まり低下を効果的に抑制できる。
【0072】
以上、液晶表示装置や電気泳動表示装置、指紋センサを用いて本発明に係る電子デバイス用基板10について説明したが、電子デバイス用基板10は、有機EL装置、無機EL装置、プラズマディスプレイ装置等の表示装置用基板や、演算装置(CPU)、メモリーなどの電子回路用基板にも適用できる。要は、少なくとも接続端子14が、素子部12に設けられている無機絶縁膜と平面視で重なっていなければ、外部接続部品を接続部13に熱圧着する際に、たとえ圧力によって接続端子14の下層に存在する樹脂層が変形しても、樹脂層(基板11)に設けられた配線に損傷が生じることはなく、製品の歩留まり低下を効果的に抑制できる。
【実施例6】
【0073】
次に、本発明に係わる電子機器の具体例について説明する。図16は、電子機器の具体例として、携帯電話530、ビデオカメラ540、テレビジョン550、及びロールアップ式テレビジョン560を例示する。図16(A)に示すように、携帯電話530は、アンテナ部531、音声出力部532、音声入力部533、操作部534及び電気光学装置(表示部)500を備える。
図16(B)に示すように、ビデオカメラ540は、受像部541、操作部542、音声入力部543、及び電気光学装置(表示部)500を備える。
図16(C)に示すように、テレビジョン550は、電気光学装置(表示部)500を備える。なお、パーソナルコンピュータ等に用いられるモニタ装置(電気光学装置)にも適用することができる。
図16(D)に示すように、ロールアップ式テレビジョン560は、電気光学装置(表示部)500を備えている。
上記の電気光学装置(表示部)500は、本発明に係る電子デバイス用基板10を備えている。電子デバイス用基板10を備える電気光学装置としては、液晶表示装置や電気泳動表示装置だけでなく、有機EL装置、無機EL装置、プラズマディスプレイ装置等が挙げられる。
【0074】
図17は、本発明に係わる電子デバイス用基板10を備える指紋センサを搭載したスマートカード81である。スマートカード81は、指紋センサ1と、CPUやメモリー素子などを実装したICチップ82と、液晶表示装置などの表示装置83を備えている。ICチップ82には、バイオメトリクス情報として、カード所有者の指紋情報が登録されている。指紋センサで検出した指紋と登録された指紋とを比較することによって、本人であるか否かが認証される。本発明は、このような電子デバイスにも適用される。
【0075】
なお、本実施例に係わる電子機器としては、上述の他、例えば、表示機能付きファックス装置、デジタルカメラのファインダ、携帯型TV、電子手帳、電光掲示板、宣伝広告用ディスプレイ等がある。
【0076】
上述の実施例は、用途に応じて適宜に組み合わせて、又は変更若しくは改良を加えて用いることができ、本発明は上述の実施例に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0077】
10…電子デバイス用基板 11…基板 12…素子部 13…接続部 14…接続端子 20…第1の基板 21…剥離層乃至はエッチングストッパ層 22…下地保護膜 23…半導体層 24…ゲート絶縁膜 25…ゲート電極 26…層間絶縁膜 26a,26b…コンタクトホール 27a…ソース電極 27b…ドレイン電極 28…平坦化膜 29a…画素電極 29b…透明電極材料 30…第2の基板 31…仮接着剤 50…異方性導電フィルム 60…外部接続部品 41…真性半導体膜 42…エッチングストッパー 43a,43b…オーミックコンタクト層 44a…ソース電極 44b…ドレイン電極 500…電気光学装置 530…携帯電話 531…アンテナ部 532…音声出力部 533…音声入力部 534…操作部 540…ビデオカメラ 541…受像部 542…操作部 543…音声入力部 550…テレビジョン 560…ロールアップ式テレビジョン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂層と、
前記樹脂層上の第1の領域に設けられた半導体層と、
前記樹脂層上の前記第1の領域に設けられた複数の絶縁膜と、
前記樹脂層上の第2の領域に設けられ、外部接続部品に接続される接続端子と、
を備える電子デバイス用基板であって、
前記接続端子は、前記複数の絶縁膜のうち無機材料からなる絶縁膜と平面的に重ならないことを特徴とする電子デバイス用基板。
【請求項2】
請求項1に記載の電子デバイス用基板と、
熱硬化性接着剤を介して前記接続端子と接続された外部接続部品と、
を備える電子デバイス。
【請求項3】
樹脂層と、
前記樹脂層上の第1の領域に設けられた半導体層と、
前記樹脂層上の前記第1の領域に設けられた複数の絶縁膜と、
前記樹脂層上の第2の領域に設けられ、外部接続部品に接続される接続端子と、
を備える電子デバイス用基板の製造方法であって、
前記半導体層および前記複数の絶縁膜を前記樹脂層上の前記第1の領域に形成する工程と、
前記接続端子を、前記複数の絶縁膜のうち無機材料からなる絶縁膜と平面的に重ならないように前記樹脂層上の前記第2の領域に形成する工程と、
を備える電子デバイス用基板の製造方法。
【請求項4】
半導体層および複数の絶縁膜を、第1の基板の一の面の第1の領域に形成する工程と、
外部接続部品に接続される接続端子を、前記複数の絶縁膜のうち無機材料からなる絶縁膜と平面的に重ならないように前記一の面の第2の領域に形成する工程と、
前記半導体層と前記複数の絶縁膜と前記接続端子とを、前記第1の基板から第2の基板に転写する工程と、
前記半導体層と前記複数の絶縁膜と前記接続端子とを、前記第2の基板から樹脂層に転写する工程と、
を備える電子デバイス用基板の製造方法。
【請求項5】
請求項3または4に記載の電子デバイス用基板の製造方法によって製造された電子デバイス用基板と、外部接続部品と、を含む電子デバイスの製造方法であって、前記外部接続部品を、熱硬化性接着剤を介して前記接続端子に接続する工程をさらに含むことを特徴とする電子デバイスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−138090(P2011−138090A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−203(P2010−203)
【出願日】平成22年1月4日(2010.1.4)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】