説明

電子材料洗浄方法および洗浄装置

【課題】過硫酸含有硫酸溶液を用いた電子材料の洗浄を廃液を伴うことを短時間かつ効果的に行うことを可能にする。
【解決手段】70質量%以上の硫酸溶液を電解する電解部11と、電解部11で電解されて得られた過硫酸含有硫酸溶液を送液する送りラインと、送りラインで送液される過硫酸含有硫酸溶液が収容される洗浄槽21と、オゾンを生成するオゾン生成部(オゾン発生器28)と、オゾン生成部で生成されたオゾンを洗浄槽21内の過硫酸含有硫酸溶液に供給するオゾン供給部(オゾン供給管26、バブリングノズル27)を備える電子材料洗浄装置1を用いて、電解して得られた過硫酸含有硫酸溶液が収容されている洗浄槽に電子材料100を浸漬して洗浄を行うとともに、洗浄中に洗浄槽21内の過硫酸含有硫酸溶液にオゾンガスを供給することでオゾンの分解を促し、優れた酸化力を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製造工程において極めて厳しい制御を要求される電子部品製造分野、具体的には半導体基板、液晶基板、有機EL基板、フォトマスク基板、ハードディスク基板等の製造分野において、電子材料上のレジストを効率的に剥離除去するための洗浄方法および洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体製造分野において製品の微細化、高機能化、高性能化が進むにつれ、製造工程が複雑になり製造にかかる工程数・時間が延びてきていることが問題となっている。そのため、製造工程で使用される硫酸や過酸化水素水等の薬液使用量も増加の一途を辿っており、その排液処理が問題となっている。
従来、半導体基板、液晶基板、有機EL基板、フォトマスク基板、ハードディスク基板等の製造分野における電子材料上のレジストの剥離洗浄は、硫酸と過酸化水素水を混合してなる過硫酸含有硫酸溶液であるSPM溶液(Sulfuric acid/hydrogen peroxide mixture)が用いられているが、レジスト剥離工程で使用されるSPM溶液の使用量は増える傾向にある。SPM溶液は使用しつづけると過硫酸濃度が分解によって低下するため、適宜過酸化水素水を加えながら使用している。SPM溶液では過酸化水素水を適宜加えるため水が生成して、硫酸濃度が低下し過酸化水素による過硫酸生成効率が落ちるため、SPM溶液を定期的に交換する必要がある。
また、上記SPM溶液にオゾンを加えて溶解させることで過酸化水素の濃度低下を防止する方法が提案されている(例えば特許文献1参照)が、薬液交換時期を遅らせることはできても薬液交換の必要性は回避できない。
一方、従来用いられている洗浄液(SPM溶液)の代替技術として硫酸溶液を電気分解して得られる過硫酸含有硫酸溶液である硫酸電解液を用いてレジストを剥離・分解処理を行うことが提案されている(例えば特許文献2、3)。硫酸電解液を用いることにより、硫酸濃度が低下せず過硫酸濃度が安定するため、安定的に高いレジスト剥離・分解処理能力が得られる。そのため、従来の低〜中濃度でイオン注入されたレジストのみならず、高濃度にイオン注入されたレジストでも、アッシング工程をスキップしてレジスト剥離・分解が行えることが判明している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平1−189921号公報
【特許文献2】特開2006−114880号公報
【特許文献3】特開2007−266495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前述のように、近年の半導体製造工程では、製品の微細化、高機能化、高性能化に伴い製造工程が複雑になりより高いレジスト剥離能力が求められるようになると共に、SPM溶液使用量の増加で、その排液処理が問題となってきている。また、製造工程数が増加したことで、製造に要する時間が長くなる傾向があるため、レジスト剥離工程を含め、各工程に要する時間を短縮することが強く望まれている。
また、アッシングレス基板を、硫酸電解液を用いてレジスト剥離洗浄を行った場合は、硫酸電解液中に多量のレジストが剥離または溶解してしまうため、レジストを短時間で分解することが望まれている。
【0005】
本発明は上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、電子材料のレジスト剥離処理に要する時間を大幅に短縮する電子材料洗浄方法および電子材料洗浄装置を提供することを目的とする。
本発明は、また、アッシングレスでの洗浄において、レジスト剥離効果を高め、かつ、溶解したレジストを短時間で分解するための方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明の電子材料洗浄方法のうち、第1の本発明は、70質量%以上の硫酸溶液を電解して得られた過硫酸含有硫酸溶液を電子材料に接触させて該電子材料を洗浄する電子材料洗浄方法において、前記過硫酸含有硫酸溶液が収容されている洗浄槽に前記電子材料を浸漬することによって前記接触による前記洗浄を行うとともに、前記洗浄中に前記洗浄槽内の過硫酸含有硫酸溶液にオゾンガスを供給することを特徴とする。
【0007】
第2の本発明の電子材料洗浄方法は、前記第1の本発明において、前記洗浄に用いた硫酸溶液を再び電解して過硫酸含有硫酸溶液を再生し、該過硫酸含有硫酸溶液を前記洗浄に再利用することを特徴とする。
第3の本発明の電子材料洗浄方法は、前記第1または第2の本発明において、前記洗浄槽内の過硫酸含有硫酸溶液が液温130℃超〜190℃(ただし前記過硫酸含有硫酸溶液の沸点以下)に加熱昇温されていることを特徴とする。
第4の本発明の電子材料洗浄方法は、前記第1〜第3の本発明のいずれかにおいて、前記洗浄槽内に供給される前記オゾンガスが50℃以上に加熱昇温されていることを特徴とする。
第5の本発明の電子材料洗浄方法は、前記第1〜第3の本発明のいずれかにおいて、前記洗浄槽内の過硫酸含有硫酸溶液にバブリングした前記オゾンガスを供給することを特徴とする。
第6の本発明の電子材料洗浄方法は、前記第1〜第5の本発明のいずれかにおいて、前記硫酸溶液の前記電解に用いる電極のうち、少なくとも陽極が導電性ダイヤモンド電極であることを特徴とする。
第7の本発明の電子材料洗浄方法は、前記第1〜第6の本発明のいずれかにおいて、前記電子材料が、アッシング処理をしていない電子材料であることを特徴とする。
【0008】
第8の本発明の電子材料洗浄装置は、70質量%以上の硫酸溶液を電解する電解部と、
前記電解部で電解されて得られた過硫酸含有硫酸溶液を送液する送りラインと、
該送りラインで送液される過硫酸含有硫酸溶液が収容される洗浄槽と、
オゾンを生成するオゾン生成部と、
前記オゾン生成部で生成されたオゾンを前記洗浄槽内の過硫酸含有硫酸溶液に供給するオゾン供給部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
第9の本発明の電子材料洗浄装置は、前記第8の本発明において、前記洗浄槽の過硫酸含有硫酸溶液を前記電解部に返流する戻しラインを備えることを特徴とする。
第10の本発明の電子材料洗浄装置は、前記第8または第9の本発明において、前記洗浄槽内に収容される過硫酸含有硫酸溶液を加熱して前記洗浄槽内での過硫酸含有硫酸溶液の液温を130℃超〜190℃(ただし前記過硫酸含有硫酸溶液の沸点以下)に加熱昇温させる過硫酸加熱部を備えることを特徴とする。
第11の本発明の電子材料洗浄装置は、前記第10の本発明において、前記過硫酸加熱部が、前記洗浄槽内に供給される過硫酸含有硫酸溶液を加熱する外部加熱器を有することを特徴とする。
第12の本発明の電子材料洗浄装置は、前記第10または第11の本発明において、前記過硫酸加熱部が、前記洗浄槽内に収容されている過硫酸含有硫酸溶液を加熱する内部加熱器を有することを特徴とする。
第13の本発明の電子材料洗浄装置は、前記第8〜第12の本発明のいずれかにおいて、前記洗浄槽内の過硫酸含有硫酸溶液に供給するオゾンを50℃以上に加熱昇温させるオゾン加熱部を備えることを特徴とする。
第14の本発明の電子材料洗浄装置は、前記第8〜第13の本発明のいずれかにおいて、前記オゾン供給部は、前記オゾンガスをバブリングして前記洗浄槽内の過硫酸含有硫酸溶液に供給するバブリングノズルを有しており、該バブリングノズルが焼結ガラス製,PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)製,PFA(パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂)製からなる群のいずれか1種であることを特徴とする。
第15の本発明の電子材料洗浄装置は、前記第8〜第14の本発明のいずれかにおいて、前記電解部に備える電極のうち、少なくとも陽極が導電性ダイヤモンド電極で構成されていることを特徴とする。
第16の本発明の電子材料洗浄装置は、前記第8〜第15の本発明のいずれかにおいて、前記オゾン供給部による前記過硫酸含有硫酸溶液へのオゾンの供給方向と、前記送りラインによる前記洗浄槽内への過硫酸含有硫酸溶液の供給方向とが交差し、供給された前記オゾンと供給された前記過硫酸含有硫酸溶液とが直ちに交流するように前記オゾン供給部と前記送りラインとが配置されていることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、硫酸溶液の電解で生成した過硫酸含有硫酸溶液(硫酸電解液)にオゾンガスを供給することにより、従来、レジスト剥離に用いられてきたSPM溶液や、硫酸電解液を単独で用いるときと比べて、電子部品材料上からのレジスト剥離や分解に要する時間(液回復時間)を大幅に短縮することが可能となる。より高い酸化力と、より多くの過硫酸量と、より多くのラジカルが発生するためであると考えられる。
ラジカルが多く生成する理由は、硫酸電解液中の過硫酸とオゾンガス気泡とが接する気泡界面において、過硫酸の分解で生成した硫酸ラジカルやOHラジカルによりオゾンの分解を促進することによって、さらに硫酸ラジカルおよびOHラジカルを生成するためであると推定される。よって本発明ではラジカルを生成しているところにオゾンを吹き込む必要がある。なお、上記機構の詳細は必ずしも明らかにはなっていない。
このため、硫酸電解液にオゾンガスを供給(望ましくはバブリング)することで、アッシングウエハのみならず、アッシングレスウエハの処理も短時間で行うことが可能となり、例えば1時間あたりのウエハ処理枚数(スループット)を大幅に増やすことができる。
【0011】
なお高温のSPM溶液中にオゾン供給して硫酸に反応させ、過酸化水素の消費を抑えてSPM溶液寿命を延命することは前記した特許文献1に記載がある。しかし、本発明では液寿命延命でなく酸化力向上の目的で硫酸電解液にオゾン供給するものであるから両技術の狙いは異なる。また、特許文献1における技術においても、従来のSPM洗浄のように洗浄排液を再使用すると過酸化水素が分解して水を生成するため徐々に硫酸濃度が低下して洗浄力が低下してしまう問題があり、本発明との相違は明らかである。
以下に、本発明をさらに説明する。
【0012】
[過硫酸溶液の生成]
本発明で用いる過硫酸とは、ペルオキソ一硫酸(HSO)およびペルオキソ二硫酸(H)を示す。これらペルオキソ一硫酸およびペルオキソ二硫酸とオゾンは、いずれも高い酸化力を有する。
ペルオキソ一硫酸は、以下の反応式に示すように硫酸とオゾンとの反応によって生成させることができる。
3HSO+O→3HSO
一方、ペルオキソ二硫酸は、以下の反応式に示すように硫酸溶液の電解酸化により生成させることができる。
2SO2−→S2−+2e
又は、
2HSO→S2−+2H+2e
【0013】
ペルオキソ二硫酸イオン(S2−)は、紫外線照射や高温加熱など強いエネルギーを受けると下記式に示すように励起して自己分解し、硫酸ラジカル(SO・−)を生成する。
2−→2SO
生成した硫酸ラジカルは、溶液中に溶解しているレジストの分解およびオゾンガスと過硫酸溶液の気液界面でオゾンと反応し、オゾンの分解も促進することによって、OHラジカル(OH・)を生成し、加速度的(スパイラル状)にラジカル分解反応が進行する。そのため、ラジカル量は硫酸電解液を単独で使用するときよりもラジカル量が格段に増え、レジストの分解を短時間に実施するできるものと考えられる。
【0014】
電解する硫酸溶液の硫酸濃度は70〜96質量%程度、特に80〜92質量%程度であることが好ましい。硫酸溶液の硫酸濃度が低すぎると硫酸溶液のレジスト溶解力が低下するため十分なレジスト剥離効果を得ることが困難になる。また、硫酸溶液の硫酸濃度が上記上限より高くなると、イオンフラックスの減少により電流効率の低下や電極損耗の恐れがあることから好ましくない。
【0015】
本発明において、レジストの剥離工程で用いる過硫酸含有硫酸溶液(硫酸電解液)は、硫酸溶液(通常、この硫酸溶液としては純水又は超純水に硫酸を溶解させたものが用いられる。)の電気分解で製造されたものである。レジスト剥離に用いることにより液中の過硫酸濃度が低下した硫酸溶液は、電気分解で再生して循環使用することが好ましい。この場合、過硫酸濃度が低下した硫酸溶液を洗浄槽から循環ラインを通して電解部に送液する。
電解部では、硫酸溶液に陽極および陰極を接触させ、電極間に電流を流して電気分解することによって硫酸イオン又は硫酸水素イオンを酸化してペルオキソ二硫酸イオンを生成させ、過硫酸濃度が十分に高い硫酸溶液を再生する。再生した過硫酸含有硫酸溶液を、循環ラインを通して洗浄槽に返送し、レジストの剥離洗浄に再使用する。このように、過硫酸含有硫酸溶液を洗浄槽と電解部との間で繰り返し循環することで、剥離洗浄に用いる過硫酸含有硫酸溶液の過硫酸イオン組成を、レジストの剥離洗浄に好適な高濃度に維持した状態で効率的な洗浄を継続することができる。
【0016】
硫酸溶液(過硫酸含有硫酸溶液も含む)の電解を行う電解部では、陽極と陰極とを対にして電気分解が行われる。電極の材質には、特に制限はないが、電極として一般に広く利用されている白金を陽極として使用した場合、ペルオキソ二硫酸イオンを効率的に製造することができず、白金が溶出するという問題がある。硫酸溶液の電解酸化によりペルオキソ二硫酸を生成する場合、電極からの不純物の溶出を防止するため、電極のうち少なくとも陽極として耐熱性・耐酸性・耐酸化性を持つ導電性ダイヤモンド電極が好適に用いられる。少なくとも陽極に導電性ダイヤモンド電極を用いた場合、導電性ダイヤモンド電極は化学的に安定で濃硫酸ないしは過硫酸含有硫酸溶液中に不純物を溶出しない利点があり、電極の耐久性を高めることができる。導電性ダイヤモンド電極によって、電流密度0.2A/cm程度の条件で硫酸イオン又は硫酸水素イオンからペルオキソ二硫酸イオンを生成することは報告されている(Ch.Comninellis et al.,Electrochemical and Solid−State Letters,Vol.3(2)77−79(2000))。
【0017】
導電性ダイヤモンド電極としては、シリコンウエハ等の半導体材料を基板とし、この基板表面に導電性ダイヤモンド薄膜を膜厚20μm以上に合成させたものや、基板を用いない条件で板状に析出合成したセルフスタンド型導電性多結晶ダイヤモンドを挙げることができる。なお、導電性ダイヤモンド薄膜はダイヤモンド薄膜の合成の際にホウ素または窒素をドープして導電性を付与したものであり、通常はホウ素ドープしたものが一般的である。これらのドープ量は、少なすぎると技術的意義が発生せず、多すぎてもドープ効果が飽和するため、ダイヤモンド薄膜の炭素量に対して、50〜20,000ppmの範囲のものが適している。本発明において、導電性ダイヤモンド電極は、通常は板状のものを使用するが、網目構造物を板状にしたものも使用できる。
【0018】
電解部における電解処理においては、導電性ダイヤモンド電極表面の電流密度を10〜100,000A/mとし、硫酸溶液をダイヤモンド電極面と平行方向に、通液線速度を10〜10,000m/時間で接触処理させることが望ましい。
【0019】
また、この過硫酸含有硫酸溶液によるレジストの剥離洗浄の時間は特に制限はなく、被洗浄材のレジストの付着状況、この剥離洗浄に先立つアッシング処理の有無、過硫酸含有硫酸溶液の過硫酸濃度や溶液温度、その後のウェット洗浄工程の条件等によっても異なるが、通常、バッチ式洗浄では5〜30分、特に10〜20分程度とすることが好ましい。
【0020】
なお、上述の如く、過硫酸含有硫酸溶液によるレジストの剥離洗浄に好適な温度は、130℃超〜190℃であるが、前述の電気分解温度が過度に高いと電解効率が低下し、また、電極の損耗も大きくなる。ただし、電気分解温度を過度に低くすると、レジストの剥離洗浄に用いる際の加熱エネルギーが大きくなることから、電解部で電気分解される溶液の温度は10〜90℃、特に40〜80℃とすることが好ましい。
【0021】
したがって、洗浄槽と電解部とで硫酸溶液を循環させる場合には、循環ラインに熱交換器を設け、電解部に送液する硫酸溶液を冷却すると共に、洗浄装置に送液する過硫酸含有硫酸溶液を加熱することができる。ただし、硫酸溶液を加熱する加熱部と、硫酸溶液を冷却する冷却部とをそれぞれ備えるものとしてもよい。
【0022】
[過硫酸含有硫酸溶液の温度]
上記過硫酸含有硫酸溶液は、洗浄に際し130℃超〜190℃の液温を有するのが望ましい。該液温は過硫酸含有硫酸溶液を加熱することにより調整する。洗浄槽内での過硫酸含有硫酸溶液の液温が130℃以下であると、過硫酸の分解で生成される硫酸ラジカルやOHラジカルの量が少なく、酸化力が十分に得られないだけでなく、オゾンの分解促進作用が十分に得られなくなる。一方、190℃を超えると過硫酸含有硫酸溶液の沸騰の恐れが高くなり、また部材が熱により変形する恐れもあるため好ましくない。したがって、過硫酸含有硫酸溶液の液温は下限を130℃超、上限を190℃とするのが望ましい。ただし硫酸濃度が低いと190℃未満でも沸騰することがあるので190℃以下でかつ沸点以下とする。
【0023】
過硫酸含有硫酸溶液を加熱する手段は特に限定されるものではないが、洗浄槽に供給される過硫酸含有硫酸溶液を外部加熱器で加熱するもの、洗浄槽内の過硫酸含有硫酸溶液を内部加熱器で加熱するものが挙げられる。処理を迅速に行うため、また、過硫酸含有硫酸溶液を洗浄槽と電解部との間で循環しつつ洗浄を行うためには、外部加熱器によって供給する過硫酸含有硫酸溶液を加熱するのが望ましく、所望によりさらに内部加熱器を設けるものが望ましい。洗浄槽内の過硫酸含有硫酸溶液を加熱する内部加熱器には特に制限はないが、加温ヒーターなどを用いることができ、また、洗浄槽内に設置する場合には石英製の投げ込みヒーターを用いてもよいし、テフロン(登録商標)被覆のヒーターを用いてもよい良い。洗浄槽に過硫酸含有硫酸溶液を供給する送りラインに設置する外部加熱器にも特に制限はないが、石英製の赤外線ランプを用いたヒーターなどを用いることができる。
【0024】
[オゾンガス発生]
本発明で用いるオゾンガスの発生機構には特に制限はない。酸素ガスを無声放電して生成するオゾンガスでもよいし、水を電気分解して生成するオゾンガスでもよい。
無声放電方式で用いられる酸素ガスの純度には特に制限はないが、より好ましくは99.99体積%以上の純度を有する酸素ガスを使うことが望ましい。
電気分解方式で用いられる水の純度に特に制限はないが、より好ましくは18MΩ・cm以上の水質であることが望ましい。
オゾンガスの濃度には特に制限はないが、100g/Nm以上、より好ましくは200g/Nm以上であることが望ましい。オゾンガスは通常20℃程度であるが、過硫酸含有硫酸溶液に供給したときの酸化反応効率を高めるため、また、過硫酸含有硫酸溶液の温度を不均等にしないためヒーターなどで事前に50℃以上に加熱昇温しておいてもよい。放電方式のOガス濃度は14体積%程度であり、この程度のOガスであれば爆発の危険性は低いので100℃までは昇温可能である。なお、あまりに高温では安全性に加えてOガスの半減期が短いので好ましくない。
比較的低温のオゾンガスが過硫酸溶液中に供給されることで、過硫酸溶液の温度調整として内部加熱器を効果的に用いることができる。
【0025】
[オゾンガスのバブリング]
また、本発明において、洗浄槽内でオゾンガスを効率良く微細な気泡でバブリングすることのできるノズルを用いることで、気泡と硫酸電解液の界面にてラジカルが効率良く発生するためより高い洗浄効果を得ることができる。
本発明においては、その優れた洗浄効果により、アッシング処理を施していない電子材料に対しても本発明の洗浄方法を適用することができ、この場合においても、電子材料上にレジストが残留することなくオゾンガスバブリングを行っている硫酸電解液処理で確実に、かつ、短時間での処理が行え、一連のレジスト剥離処理に要する時間を一層短縮して効率的な洗浄を行うことができる。
【0026】
[バブリングノズル形状]
洗浄槽内でのオゾンガスのバブリング方法には特に制限はない。配管を切りっぱなしの形状でもよいが、より好ましくはバブリングノズルが望ましい。バブリングノズルの材質は耐熱性耐酸性、耐酸化性を有するものであれば特に制限はないが、焼結ガラス製、PTFE製、PFA製などのノズルを用いることが望ましい。
【0027】
[洗浄槽]
洗浄槽は、1つの槽で構成することができるが、過硫酸含有硫酸溶液を収容した洗浄槽を2槽以上ならべて構成することもでき、2槽目以降の洗浄槽ではオゾンガスの供給を行わないものとしてもよい。また、これらの洗浄工程間にはリンスを行ってもよい。
この剥離洗浄の洗浄方式は、複数枚の電子材料を一括して洗浄処理するバッチ式で行うものに好適である。バッチ式洗浄は、通常、複数枚の電子材料を洗浄槽内の洗浄液に浸漬することにより行われる。
【0028】
[電子材料]
本発明において洗浄対象となる電子材料は、例えば、半導体基板、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、およびそのフォトマスク等の製造工程において、レジストパターンが形成された電子材料である。
通常、電子材料上のレジスト膜の厚さは0.1〜5.0μm程度であるが、何らこの厚さに限定されるものではない
【発明の効果】
【0029】
以上説明したように、本発明によれば、硫酸の電解で生成した過硫酸含有硫酸溶液にオゾンガスのバブリングを行うことにより、洗浄する電子材料上からのレジストなどの剥離および分解に要する時間を大幅に短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施形態の電子材料洗浄装置を示す図である。
【図2】同じく、他の実施形態の電子材料洗浄装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に、本発明の電子材料洗浄方法および電子材料洗浄装置の実施形態を説明する。
(実施形態1)
図1は、本発明の電子材料洗浄装置1の一実施形態を示すものであり、硫酸電解装置10と洗浄機20とを備えている。
硫酸電解装置10は、電解部11を備えており、ホウ素をドープしたダイヤモンド電極により構成された陽極および陰極(図示しない)が内部に配置され、両電極には図示しない電源が接続されている。なお、陽極、陰極以外にバイポーラ電極を備えるものであってもよい。
【0032】
上記電解部11には、電解液貯留槽12が循環ライン13を介して循環通液可能に接続されている。電解部11の出液側では、循環ライン13に気液分離部14が介設されている。気液分離部14は、気体を含んだ過硫酸含有硫酸溶液を収容して過硫酸含有硫酸溶液中の窒素ガス、酸素ガス、オゾンなどの気体を分離して系外に排出するものであり、既知のものを用いることができ、本発明としては気液分離が可能であれば、特にその構成が限定されるものではない。
また、循環ライン13の送り側には、過硫酸含有硫酸溶液を循環させる循環ポンプ15が介設されている。なお、上記では、気液分離部14と電解液貯留槽12とをそれぞれ備えるものについて説明したが、電解液貯留槽12で気液分離部14を兼ねるものであってもよい。
【0033】
また、電解液貯留槽12には、送液ポンプ16と送り自動弁17aが順次介設された送り循環ライン17が接続されている。また、電解液貯留槽12には、戻り自動弁18aと冷却器19が順次介設された戻り循環ライン18が接続されている。冷却器19は、硫酸溶液を冷却して40〜80℃の液温にするものであり、本発明としてはその構成が特に限定されるものではない。
以上の構成により硫酸電解装置10が構成されている。
【0034】
洗浄機20は、バッチ式の洗浄槽21を備えており、洗浄槽21では、排液側と入液側が循環ライン22で接続されている。循環ライン22の排液側は、洗浄槽21のオーバーフロー部21aに接続され、循環ライン22の入液側は、洗浄槽21の底部に上向きに接続されている。
循環ライン22の排液側には、送液ポンプ23とフィルタ24とインラインヒーター25とが介設されている。インラインヒーター25は、本発明の外部加熱器に相当する。
循環ライン22には、送液ポンプ23の下流側かつインラインヒーター25の上流側で、戻り循環ライン18が分岐接続されている。
また、戻り循環ライン18には、硫酸供給ユニット29が接続されており、初期稼働時や必要時に戻り循環ライン18を通して電子材料洗浄装置に硫酸を供給することができる。
【0035】
また、電解液貯留槽12に接続された送り循環ライン17は、インラインヒーター25の上流側で循環ライン22に合流するように接続されている。なお送り循環ライン17はインラインヒーター25の下流側で循環ライン22に合流することもできる。
上記インラインヒーター25は、上記したように本発明の過硫酸加熱部の外部加熱器に相当する。その構成は特に限定されず、既知のヒーターを用いることができるが、硫酸溶液を一過式で加熱するものが好ましい。
【0036】
また、電解液貯留槽12には、焼結ガラス製またはPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)製のバブリングノズル27が設置されている。バブリングノズル27は、オゾンガスをバブリングして放出するものであり、放出方向は、前記循環ライン22で供給される過硫酸含有硫酸溶液の供給方向と交差し、かつ直ちに互いに交流するように循環ライン22の供給口近傍に設置されている。バブリングノズル27には、オゾン供給管26の先端側が接続されており、オゾン供給管26は洗浄槽21外部に伸長して、その基端はオゾン発生器28に接続されている。オゾン発生器28は、本発明のオゾン発生部に相当する。
オゾン供給管26は、高温の過硫酸含有硫酸溶液と接触するので、耐熱性、耐酸性、耐酸化性を有するものが望ましく、焼結ガラス製、PTFE製、PFA製などとすることができる。なお、オゾン供給管26が過硫酸含有硫酸溶液と接触する部位のみを耐熱性耐酸性、耐酸化性の材質で構成してもよい。
上記オゾン供給管26とバブリングノズル27とによって、本発明のオゾン供給部が構成されている。
また、上記各構成により洗浄機20が構成されている。
【0037】
上記電解部11の出液側に接続された循環ライン13、送り循環ライン17、送り循環ライン17の合流位置以降の下流側の循環ライン22は、本発明の送りラインを構成している。
また、上記洗浄槽21に接続された循環ライン22の分岐位置まで、戻り循環ライン18、電解部11の入液側に接続された循環ライン13は、本発明の戻りラインを構成している。
なお、電子材料洗浄装置1は、制御部2によって、硫酸電解装置10および洗浄機20の各部がそれぞれ制御されている。
【0038】
次に、上記構成からなる電子材料洗浄装置の動作に基づいて、電子材料洗浄方法を説明する。
電解液貯留槽12には、硫酸濃度70質量%以上、液温度40〜80℃の硫酸溶液が貯留される。硫酸溶液は、硫酸供給ユニット29によって、戻り循環ライン18を通して供給されている。硫酸溶液は、必要に応じて装置の稼働中または停止中にも硫酸供給ユニット29から供給することができる。
電解液貯留槽12に貯留された硫酸溶液は、循環ポンプ15によって循環ライン13を通して送液され、電解に好適な温度のままで電解部11の入液側に導入される。電解部11では、図示しない直流電源によって陽極、陰極間に通電され、電解部11内に導入された硫酸溶液が電解される。なお、該電解によって電解部11では、陽極側で過硫酸を含む酸化性物質が生成されるとともに酸素ガスが発生し、陰極側では水素ガスが発生する。
これらの酸化性物質とガスは、前記硫酸溶液と混在した状態で電解部11から排液され、気液分離部14でガス成分が分離され、本システム系外に排出されて触媒装置(図示しない)などにより安全に処理される。
【0039】
ガスが分離された硫酸溶液は、過硫酸を含んでおり、循環ライン13の戻り側を通して電解液貯留槽12に戻された後、繰り返し電解部11に送られ電解により過硫酸の濃度が高められる。過硫酸濃度が適度になると、送り自動弁17aが開かれて電解液貯留槽12内の過硫酸含有硫酸溶液の一部は送り循環ライン17を通して送液ポンプ16によって送液される。送り自動弁17a、18aの開閉は、制御部2の制御によってなされる。
送り循環ライン17で送られる過硫酸を含んだ硫酸溶液(過硫酸含有硫酸溶液)は、インラインヒーター25の上流側で循環ライン22に合流し、循環ライン22を通して洗浄槽21内に導入される。
【0040】
また、循環ライン22では、送液ポンプ23で洗浄槽21内の過硫酸含有硫酸溶液が循環されるとともにインラインヒーター25で加熱されて洗浄槽21内に導入される。
インラインヒーター25では、過硫酸含有硫酸溶液が流路を通過しながら加熱される。このとき前記送り循環ライン17で送られた過硫酸含有硫酸溶液と混合されて、洗浄槽21内に供給された際に130℃超〜190℃(ただし過硫酸含有溶液の沸点以下)の範囲の液温を有するように加熱が行われる。
【0041】
洗浄槽21では、例えば、半導体材料100として、1×1012atoms/cm以上の濃度にイオン注入されたレジストが設けられたシリコンウェハなどの電子材料基板を洗浄対象とすることができる。
半導体材料100は、洗浄槽21内で、過硫酸含有硫酸溶液中に浸漬して処理が行われる。この際にオゾン発生器28でオゾンガスを発生させ、オゾン供給管26を通してバブリングノズル27にオゾンガスを供給する。すると、バブリングノズル27からはバブリングされたオゾンガスが放出され、循環ライン22で供給される過硫酸含有硫酸溶液と直ちに接触する。
【0042】
これにより過硫酸含有硫酸溶液は、過硫酸の自己分解による酸化力および硫酸による酸化力を発揮するとともに、生成した硫酸ラジカルがオゾンガスと気液界面で接触してオゾンの分解を促進し、OHラジカル(OH・)を生成し、さらに酸化力を高める。
半導体材料100は、過硫酸の自己分解による酸化力や硫酸の酸化力、オゾンの分解による酸化力などによって表面のレジスト等が短時間で剥離除去され、溶液中に移行したレジストも容易に分解される。
【0043】
洗浄に使用された硫酸溶液は、洗浄槽21のオーバーフロー部21aから循環ライン22に取り出され、送液ポンプ23によって該循環ライン22を通して送液され、フィルター24で硫酸溶液中に含まれる微粒子を除去した後、インラインヒーター25で加熱して洗浄槽21へ返送する。また、循環ライン22で取り出された硫酸溶液の残部は、戻り自動弁18aが開かれた戻り循環ライン18を通して電解液貯留槽12へと戻す。戻り自動弁18aは、必要に応じて制御部2によって開閉制御がなされており、循環ライン22で取り出した硫酸溶液の全量を洗浄槽21に循環させる工程を有していてもよい。
【0044】
電解液貯留槽12において、硫酸溶液は、循環ライン13を通して循環ポンプ15により電解部11に送られて過硫酸の生成がなされ、電解液貯留槽12に戻される。
上記硫酸溶液の循環を繰り返すことで、過硫酸濃度が安定した状態で電子材料100の洗浄を行うことができ、オゾンガスのバブリングによって洗浄時間を十分に短縮化することができる。
【0045】
なお、洗浄槽21で電子材料100を洗浄した後、リンス工程を設けることも可能である。リンス工程を行う場合、リンス水としては通常超純水が使用される。
なお、超純水としては、下記条件をいずれも満たす純水が望ましい。
電気比抵抗 :18MΩ・cm以上
金属イオン濃度:5ng/L以下
残留イオン濃度:10ng/L以下
微粒子数 :1mL中に0.1μm以上の微粒子5個以下
TOC :0.1〜10μg/L
【0046】
リンス工程では、用いるリンス水の温度が低すぎると十分なリンス効果を得ることができず、高すぎるとエネルギー効率の面から非効率であることから、リンス水の温度は10〜90℃、特に60〜80℃とすることが好ましい。
【0047】
また、リンス工程に要する時間は、その前後の工程の種類によっても異なるが、例えば、アッシングレスで洗浄する場合、過硫酸含有硫酸溶液による剥離洗浄後のリンス工程では、5〜30分、特に10〜20分程度とすることが好ましい。アッシング処理を行った後で洗浄をする場合、過硫酸含有硫酸溶液による剥離洗浄後のリンス工程では、3〜20分、特に5〜10分程度とすることが好ましい。
【0048】
<乾燥>
洗浄後は、リンス工程を実施する場合はその後、常法に従って、スピン乾燥、IPA乾燥することにより一連のレジスト剥離洗浄除去処理を終了することができる。レジストを除去した電子材料は、次工程へ送られる。
【0049】
[アッシング処理]
なお、本発明によるレジストの剥離洗浄を行うに先立ち、アッシング処理を行ってもよい。アッシング処理は、常法に従って、酸素プラズマなどにより、電子材料上のレジストを灰化処理することにより行われる。
ただし、本発明においては、オゾンガスバブリングした硫酸電解液を用いれば、アッシング処理を省略してもレジスト残渣の問題を引き起こすことなく、確実にレジストを洗浄除去することができる。アッシング処理の省略で、一連のレジスト剥離処理に要する時間とコストの大幅な削減が可能となる。
【0050】
(実施形態2)
次に他の実施形態を図2に基づいて説明する。
この実施形態2は、オゾン供給管26にオゾンガスを加熱するオゾンガス加熱器30を備えている以外は、前記実施形態1と同様の構成を有している。以下では、前記実施形態1と同様の構成については省略または簡略化して説明する。
オゾンガス加熱器30は、本発明のオゾンガス加熱部に相当し、オゾン供給管26で供給されるオゾンガスを加熱するものである。その際には、洗浄槽21で過硫酸含有硫酸溶液に供給する際にオゾンガスを50℃以上に昇温した状態になるように加熱している。
過硫酸含有硫酸溶液中に適度に加熱されたオゾンガスが供給されることで、過硫酸含有硫酸溶液中の温度分布を均等に保つことができるとともに、過硫酸の自己分解によって生成した硫酸ラジカルによってオゾンガスがより効果的に分解され、酸化力を高めて半導体材料100の洗浄処理をより短時間で行うことを可能にする。
なお、オゾンガス加熱器30の構成は、本発明としては特に限定されるものではなく、既知のものなどを用いることができる。要は、オゾンガスを適温に加熱できるものであればよい。
【実施例1】
【0051】
以下に本発明の実施例を説明する。なお、当然のことであるが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
以下の条件で洗浄試験を行い、各実験方式の処理時間を比較した。試験結果は表1に示した。

<条件>
ウエハサイズ :150mm(ドーズ量:5×1014atoms/cm,ドーズ元素:Bドーズ品。)
レジスト塗布厚み :1.7μm
アッシング有無 :アッシングレス
一回の処理枚数 :50枚/ロット
処理数 :4ロット/時間〜6ロット/時間
洗浄槽内処理温度 :140℃
硫酸 :電子工業グレード96質量%
過酸化水素 :電子工業グレード30質量%
【0052】
・SPM洗浄の場合は、混合比率が硫酸:過酸化水素=5:1(体積比)のSPM溶液を用い、ロット毎に適宜過酸化水素を補充して再利用(硫酸濃度は初期の85質量%弱から徐々に薄くなる)。
・過硫酸含有の硫酸電解液の場合は、回収した溶液を再度電解セルに通して再利用。硫酸濃度は85質量%で一定。
・レジスト剥離時間はウエハ上からレジストが剥離するまでの時間を目視により確認した。
・液回復時間は、目視による(処理液が透明に戻るまでの時間とした)。
・なお、時間は処理したロット枚で多少異なったため、最小値と最大値を載せた。
【0053】
【表1】

【0054】
SPM溶液は新液のときは剥離時間、液色回復時間ともに短いが、処理ロット数が増えると剥離時間、液色回復時間が共に延びる傾向があり、実験結果から明らかなように最小値、最大値の幅が大きい。
【0055】
量産工場での適用を考える場合は、プロセス処理時間は最大値に合わせる必要があり、[SPM溶液やSPM溶液+オゾンガスやSOM溶液(高温濃硫酸にオゾンガスを吹き込んだ溶液)]と[硫酸電解液や硫酸電解液+オゾンガス]とを比較すると、明らかに[硫酸電解液や硫酸電解液+オゾンガス]の方が処理時間、液回復時間の最大値、最小値の幅が小さいため、安定的な処理性能を維持した状態でプロセスへの適用が行える。
また、本実施例では最大値も他の条件よりも短いため、スループット向上に大きな優位性が認められた。
そのため、オゾンガスバブリングした硫酸電解液で洗浄することによりレジスト剥離時間が短縮でき、かつ、液回復時間が短縮できたことにより、レジスト剥離に要する時間を15分間から10分間に短縮できた。結果、1時間あたりに処理できる枚数は、200枚/時間から300枚/時間になり、単位時間あたりの処理効率は50%向上した。
【符号の説明】
【0056】
1 電子材料洗浄装置
10 硫酸電解装置
11 電解部
12 電解液貯留槽
13 循環ライン
17 送り循環ライン
18 戻り循環ライン
19 冷却器
20 洗浄機
21 洗浄槽
22 循環ライン
25 インラインヒーター
26 オゾン供給管
27 バブリングノズル
28 オゾン発生器
100 電子材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
70質量%以上の硫酸溶液を電解して得られた過硫酸含有硫酸溶液を電子材料に接触させて該電子材料を洗浄する電子材料洗浄方法において、
前記過硫酸含有硫酸溶液が収容されている洗浄槽に前記電子材料を浸漬することによって前記接触による前記洗浄を行うとともに、前記洗浄中に前記洗浄槽内の過硫酸含有硫酸溶液にオゾンガスを供給することを特徴とする電子材料洗浄方法。
【請求項2】
前記洗浄に用いた硫酸溶液を再び電解して過硫酸を再生し、前記過硫酸含有硫酸溶液を前記洗浄に再利用することを特徴とする請求項1記載の電子材料洗浄方法。
【請求項3】
前記洗浄槽内の過硫酸含有硫酸溶液が液温130℃超〜190℃(ただし前記過硫酸含有硫酸溶液の沸点以下)に加熱昇温されていることを特徴とする請求項1または2に記載の電子材料洗浄方法。
【請求項4】
前記洗浄槽内に供給される前記オゾンガスが50℃以上に加熱昇温されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電子材料洗浄方法。
【請求項5】
前記洗浄槽内の過硫酸含有硫酸溶液にバブリングした前記オゾンガスを供給することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の電子材料洗浄方法。
【請求項6】
前記硫酸溶液の前記電解に用いる電極のうち、少なくとも陽極が導電性ダイヤモンド電極であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の電子材料洗浄方法。
【請求項7】
前記電子材料が、アッシング処理をしていない電子材料であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の電子材料洗浄方法。
【請求項8】
70質量%以上の硫酸溶液を電解する電解部と、
前記電解部で電解されて得られた過硫酸含有硫酸溶液を送液する送りラインと、
該送りラインで送液される過硫酸含有硫酸溶液が収容される洗浄槽と、
オゾンを生成するオゾン生成部と、
前記オゾン生成部で生成されたオゾンを前記洗浄槽内の過硫酸含有硫酸溶液に供給するオゾン供給部と、を備えることを特徴とする電子材料洗浄装置。
【請求項9】
前記洗浄槽の硫酸溶液を前記電解部に返流する戻しラインを備えることを特徴とする請求項8記載の電子材料洗浄装置。
【請求項10】
前記洗浄槽内に収容される過硫酸含有硫酸溶液を加熱して前記洗浄槽内での過硫酸含有硫酸溶液の液温を130℃超〜190℃(ただし前記過硫酸含有硫酸溶液の沸点以下)に加熱昇温させる過硫酸加熱部を備えることを特徴とする請求項8または9に記載の電子材料洗浄装置。
【請求項11】
前記過硫酸加熱部が、前記洗浄槽内に供給される過硫酸含有硫酸溶液を加熱する外部加熱器を有することを特徴とする請求項10記載の電子材料洗浄装置。
【請求項12】
前記過硫酸加熱部が、前記洗浄槽内に収容されている過硫酸含有硫酸溶液を加熱する内部加熱器を有することを特徴とする請求項10または11に記載の電子材料洗浄装置。
【請求項13】
前記洗浄槽内の過硫酸含有硫酸溶液に供給するオゾンを50℃以上に加熱昇温させるオゾン加熱部を備えることを特徴とする請求項8〜12のいずれか1項に記載の電子材料洗浄装置。
【請求項14】
前記オゾン供給部は、前記オゾンガスをバブリングして前記洗浄槽内の過硫酸含有硫酸溶液に供給するバブリングノズルを有しており、該バブリングノズルが焼結ガラス製またはPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)製またはPFA(パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂)製であることを特徴とする請求項8〜13のいずれか1項に記載の電子材料洗浄装置。
【請求項15】
前記電解部に備える電極のうち、少なくとも陽極が導電性ダイヤモンド電極で構成されていることを特徴とする請求項8〜14のいずれか1項に記載の電子材料洗浄装置。
【請求項16】
前記オゾン供給部による前記過硫酸含有硫酸溶液へのオゾンの供給方向と、前記送りラインによる前記洗浄槽内への過硫酸含有硫酸溶液の供給方向とが交差し、供給された前記オゾンと供給された前記過硫酸含有硫酸溶液とが直ちに交流するように前記オゾン供給部と前記送りラインとが配置されていることを特徴とする請求項8〜15のいずれか1項に記載の電子材料洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−204546(P2012−204546A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−66712(P2011−66712)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】