説明

電気光学装置および電子機器

【課題】画素を透過する光の透過率が高く、光源から発する光を有効に利用可能な電気光学装置および電子機器を提供すること。
【解決手段】本適用例の電気光学装置としての液晶装置は、素子基板10と、画素に配置された透光性の画素電極15と、素子基板10と画素電極15との間に設けられ、誘電体層16bを介して対向配置された一対の透光性電極を有する蓄積容量16と、蓄積容量16と画素電極15との間に設けられた第3層間絶縁膜14と、を備え、画素を透過する光の分光分布が、少なくとも赤、緑、青の各波長範囲に対応して透過率のピークを有するように、画素電極15、一対の透光性電極としての第1電極16aおよび第2電極16c、ならびに第3層間絶縁膜14のそれぞれの膜厚が設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気光学装置および電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
上記電気光学装置として、例えば液晶プロジェクターの光変調手段(ライトバルブ)として用いられるアクティブ駆動型の液晶装置が挙げられる。該液晶装置の画素は、画素電極と、画素電極をスイッチング制御するトランジスターと、画素電極に書き込まれた画像信号を保持するための蓄積容量とを含む画素回路を有している。
【0003】
このような液晶装置では、より優れた表示品位を実現するために、例えば画素数を増やすことが試みられている。液晶装置の大きさを変えずに画素数を増やすことは画素の高精細化に繋がり、トランジスターの小型化はもちろんのこと、所定の電気容量を有する蓄積容量をどのように確保するかが課題となっている。
【0004】
上記課題を解決するため、表示領域のうち光が透過可能な開口領域において、トランジスター素子の上層に設けられた透明導電膜と、該透明導電膜上に形成された誘電体層と、該透明導電膜と該誘電体層と共に蓄積容量を構成し、該トランジスター素子に電気的に接続された透明な画素電極とを備えた電気光学装置が開示されている(特許文献1)。
上記電気光学装置によれば、開口領域に蓄積容量を構成しているので、非開口領域に蓄積容量を形成する場合に比べて、画素が高精細になっても、蓄積容量における所望の電気容量を確保できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−176119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、透光性の誘電体層を挟んで透明導電膜と画素電極とを単純に重ねただけでは、開口領域を透過する光がこれらの薄膜層に吸収されたり、該薄膜層の界面で反射したりして、必ずしも所望の透過率を得ることができないおそれがあった。言い換えれば、画素の開口領域に透光性の蓄積容量を設けた場合に、開口領域を透過する光の透過率を最適化する必要があるという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]本適用例の電気光学装置は、基板と、画素に配置された透光性の画素電極と、前記基板と前記画素電極との間に、誘電体層を介して対向配置された一対の透光性電極を有する蓄積容量と、前記蓄積容量と前記画素電極との間に層間絶縁膜と、を備え、前記画素を透過する光の分光分布が、少なくとも赤、緑、青の各波長範囲に対応して透過率のピークを有するように、前記画素電極、前記一対の透光性電極、および前記層間絶縁膜のそれぞれの膜厚が設定されていることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、画素電極と、蓄積容量を構成する一対の透光性電極と、これらの間の層間絶縁膜のそれぞれの膜厚が調整されて設定されているので、画素の開口領域における光の透過率が可視光の波長範囲に亘って、高い値を示す電気光学装置を提供することができる。
【0010】
[適用例2]上記適用例の電気光学装置において、前記画素電極および前記一対の透光性電極がITO膜からなり、これらの前記ITO膜のうちの1つの膜厚が140nm±10%の範囲にあり、残りの前記ITO膜の膜厚が140nm±5%の範囲にあると共に、前記層間絶縁膜がシリコンの酸化膜からなり、前記シリコンの酸化膜の膜厚が175nm±10%の範囲にあることが好ましい。
この構成によれば、一般的な透明導電材料であるITO膜や、同じく一般的な絶縁材料であるシリコンの酸化膜を用いて、画素の開口領域における光の透過率が高い値を示す電気光学装置を実現できる。
【0011】
[適用例3]上記適用例の電気光学装置において、前記層間絶縁膜は、前記蓄積容量側の第1酸化シリコン膜と、前記第1酸化シリコン膜に積層され、ボロンがドープされた第2酸化シリコン膜とを含むことが好ましい。
この構成によれば、第1酸化シリコン膜は化学的により安定なボロンがドープされた第2酸化シリコン膜で覆われることになり、この後に画素電極を例えばフォトリソグラフィ法などを用いて形成しても、層間絶縁膜が変質したり、エッチングされて膜厚が変動したりする不具合を避けることができる。つまり、安定した膜質と膜厚とを備えた層間絶縁膜とすることで、結果的に画素における高い透過率を安定的に確保することができる。
【0012】
[適用例4]本適用例の電子機器は、上記適用例の電気光学装置を備えたことを特徴とする。
これによれば、従来よりも明るい表示品質が実現された電子機器を提供することができる。
【0013】
[適用例5]上記適用例の電子機器において、前記電気光学装置を照明する光源を備え、前記光源から発する光における少なくとも赤、緑、青の各波長範囲の光強度のピーク波長と、前記電気光学装置の前記画素を透過する光の分光分布における少なくとも赤、緑、青の各波長範囲に対応する透過率のピーク波長とがほぼ合致していることを特徴とする。
これによれば、光源から発する光が効率よく利用され、明るい表示品質が実現された電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(a)は液晶装置の構成を示す概略平面図、(b)は(a)のH−H’線で切った概略断面図。
【図2】液晶装置の電気的な構成を示す等価回路図。
【図3】液晶装置における画素の配置を示す概略平面図。
【図4】(a)は画素における薄膜トランジスターと信号線の配置を示す概略平面図、(b)は画素における蓄積容量の一対の透光性電極と画素電極の配置を示す概略平面図。
【図5】図4のA−A’線で切った画素の構造を示す概略断面図。
【図6】図3のB−B’線で切った画素の構造を示す概略断面図。
【図7】(a)は実施例1〜実施例4における第1電極、第2電極、第3層間絶縁膜、画素電極の膜厚を示す表、(b)は実施例5〜実施例10における第1電極、第2電極、第3層間絶縁膜、画素電極の膜厚を示す表、(c)は比較例1〜比較例6における第1電極、第2電極、第3層間絶縁膜、画素電極の膜厚を示す表。
【図8】実施例1および比較例1〜比較例3における透過光の分光分布を示すグラフ。
【図9】実施例1〜実施例4および比較例4,5における透過光の分光分布を示すグラフ。
【図10】実施例1と実施例5〜実施例8における透過光の分光分布を示すグラフ。
【図11】実施例1と実施例9,10および比較例6における透過光の分光分布を示すグラフ。
【図12】電子機器としての投射型表示装置の構成を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。なお、使用する図面は、説明する部分が認識可能な状態となるように、適宜拡大または縮小して表示している。
【0016】
なお、以下の形態において、例えば「基板上に」と記載された場合、基板の上に接するように配置される場合、または基板の上に他の構成物を介して配置される場合、または基板の上に一部が接するように配置され、一部が他の構成物を介して配置される場合を表すものとする。
【0017】
(第1実施形態)
<液晶装置>
まず、本実施形態の電気光学装置としての液晶装置について、図1および図2を参照して説明する。図1(a)は液晶装置の構成を示す概略平面図、同図(b)は同図(a)のH−H’線で切った概略断面図、図2は液晶装置の電気的な構成を示す等価回路図である。
【0018】
図1(a)および(b)に示すように、本実施形態の電気光学装置としての液晶装置100は、対向配置された素子基板10および対向基板20と、これら一対の基板によって挟持された液晶層50とを有する。素子基板10および対向基板20は、透明な例えば石英基板やガラス基板などが用いられている。
【0019】
本発明における基板としての素子基板10は対向基板20よりも一回り大きく、両基板は、額縁状に配置されたシール材40を介して接合され、その隙間に正または負の誘電異方性を有する液晶が封入されて液晶層50を構成している。シール材40は、例えば熱硬化性または紫外線硬化性のエポキシ樹脂などの接着剤が採用されている。シール材40には、一対の基板の間隔を一定に保持するためのスペーサー(図示省略)が混入されている。
【0020】
額縁状に配置されたシール材40の内側には、同じく額縁状に遮光膜21が設けられている。遮光膜21は、例えば遮光性の金属あるいは金属酸化物などからなり、遮光膜21の内側が表示領域Eとなっている。表示領域Eには、マトリックス状に画素Pが複数配置されている。表示領域Eは、表示に寄与する有効な複数の画素Pを囲むように配置された複数のダミー画素を含んでいるとしてもよい。なお、図1では図示省略したが、表示領域Eにおいても複数の画素Pを平面的に区分する遮光部が設けられている。
【0021】
素子基板10の1辺部に沿ったシール材40との間にデータ線駆動回路101が設けられている。また、該1辺部に対向する他の1辺部に沿ったシール材40の内側に検査回路103が設けられている。さらに、該1辺部と直交し互いに対向する他の2辺部に沿ったシール材40の内側に走査線駆動回路102が設けられている。該1辺部と対向する他の1辺部のシール材40の内側には、2つの走査線駆動回路102を繋ぐ複数の配線105が設けられている。これらデータ線駆動回路101、走査線駆動回路102に繋がる配線は、該1辺部に沿って配列した複数の外部接続用端子104に接続されている。
以降、該1辺部に沿った方向をX方向とし、該1辺部と直交し互いに対向する他の2辺部に沿った方向をY方向として説明する。
【0022】
図1(b)に示すように、素子基板10の液晶層50側の表面には、画素Pごとに設けられた光透過性を有する画素電極15およびスイッチング素子としての薄膜トランジスター(TFT;Thin Film Transistor、以下、TFTとも称する)30と、信号配線と、複数の画素電極15を覆う配向膜18とが形成されている。
また、TFT30における半導体層に光が入射して光リーク電流が流れ、不適切なスイッチング動作となることを防ぐ遮光構造が採用されている。
【0023】
対向基板20の液晶層50側の表面には、遮光膜21と、これを覆うように成膜された層間絶縁膜22と、少なくとも表示領域Eに亘って層間絶縁膜22を覆うように設けられた対向電極23と、対向電極23を覆う配向膜24とが設けられている。
【0024】
遮光膜21は、図1(a)に示すように平面的にデータ線駆動回路101や走査線駆動回路102、検査回路103と重なる位置において額縁状に設けられている。これにより対向基板20側から入射する光を遮蔽して、これらの駆動回路を含む周辺回路の光による誤動作を防止する役目を果たしている。また、不必要な迷光が表示領域Eに入射しないように遮蔽して、表示領域Eの表示における高いコントラストを確保している。
【0025】
層間絶縁膜22は、例えば酸化シリコンなどの無機材料からなり、光透過性を有して遮光膜21を覆うように設けられている。また、層間絶縁膜22は、遮光膜21によって基板上に生ずる凹凸を緩和する平坦化層としても機能している。このような層間絶縁膜22の形成方法としては、例えばプラズマCVD法などを用いて成膜する方法が挙げられる。
【0026】
対向電極23は、例えばITOなどの透明導電膜からなり、層間絶縁膜22を覆うと共に、図1(a)に示すように対向基板20の四隅に設けられた上下導通部106により素子基板10側の配線に電気的に接続している。
【0027】
画素電極15を覆う配向膜18および対向電極23を覆う配向膜24は、液晶装置100の光学設計に基づいて選定される。例えば、ポリイミドなどの有機材料を成膜して、その表面をラビングすることにより、正の誘電異方性を有する液晶分子に対して略水平配向処理が施されたものや、SiOx(酸化シリコン)などの無機材料を気相成長法を用いて成膜して、負の誘電異方性を有する液晶分子に対して略垂直配向処理が施されたものが挙げられる。
【0028】
図2に示すように、液晶装置100は、少なくとも表示領域Eにおいて互いに絶縁されて直交する信号線としての複数の走査線3aおよび複数のデータ線6aと、走査線3aに対して平行する容量線3bとを有する。
【0029】
走査線3aとデータ線6aとにより区分された領域に、画素電極15と、TFT30と、蓄積容量16とが設けられ、これらが画素Pの画素回路を構成している。
【0030】
走査線3aはTFT30のゲートに電気的に接続され、データ線6aはTFT30のソースに電気的に接続されている。画素電極15はTFT30のドレインに電気的に接続されている。
データ線6aはデータ線駆動回路101(図1参照)に接続されており、データ線駆動回路101から供給される画像信号D1,D2,…,Dnを画素Pに供給する。走査線3aは走査線駆動回路102(図1参照)に接続されており、走査線駆動回路102から供給される走査信号SC1,SC2,…,SCmを各画素Pに供給する。データ線駆動回路101からデータ線6aに供給される画像信号D1〜Dnは、この順に線順次で供給してもよく、互いに隣り合う複数のデータ線6a同士に対してグループごとに供給してもよい。走査線駆動回路102は、走査線3aに対して、走査信号SC1〜SCmを所定のタイミングでパルス的に線順次で供給する。
【0031】
液晶装置100は、スイッチング素子であるTFT30が走査信号SC1〜SCmの入力により一定期間だけオン状態とされることで、データ線6aから供給される画像信号D1〜Dnが所定のタイミングで画素電極15に書き込まれる構成となっている。そして、画素電極15を介して液晶層50に書き込まれた所定レベルの画像信号D1〜Dnは、画素電極15と液晶層50を介して対向配置された対向電極23との間で一定期間保持される。
保持された画像信号D1〜Dnがリークするのを防止するため、画素電極15と対向電極23との間に形成される液晶容量と並列に蓄積容量16が接続されている。蓄積容量16は、TFT30のドレインと容量線3bとの間に設けられている。詳しくは後述するが、本実施形態では、蓄積容量16を構成する一対の透光性電極のうちの一方が容量線3bとして機能している。
【0032】
なお、図1(a)に示した検査回路103には、データ線6aが接続されており、液晶装置100の製造過程において、上記画像信号を検出することで液晶装置100の動作欠陥などを確認できる構成となっているが、図2の等価回路では省略している。また、検査回路103は、上記画像信号をサンプリングしてデータ線6aに供給するサンプリング回路、データ線6aに所定電圧レベルのプリチャージ信号を画像信号に先行して供給するプリチャージ回路を含むものとしてもよい。
【0033】
このような液晶装置100は透過型であって、画素Pが非駆動時に暗表示となるノーマリーブラックモードや、非駆動時に明表示となるノーマリーホワイトモードの光学設計が採用される。光学設計に応じて、光の入射側と射出側とにそれぞれ偏光素子が配置されて用いられる。
【0034】
次に、画素Pの平面的な配置と構造について、図3〜図6を参照して説明する。図3は液晶装置における画素の配置を示す概略平面図、図4(a)は画素における薄膜トランジスターと信号線の配置を示す概略平面図、同図(b)は画素における蓄積容量の一対の透光性電極と画素電極の配置を示す概略平面図、図5は図4のA−A’線で切った画素の構造を示す概略断面図、図6は図3のB−B’線で切った画素の構造を示す概略断面図である。
【0035】
図3に示すように、液晶装置100における画素Pは、例えば平面的に略四角形(略正方形)の開口領域を有する。開口領域は、X方向とY方向とに延在し格子状に設けられた遮光性の非開口領域により囲まれている。
【0036】
X方向に延在する非開口領域には、図2に示した走査線3aが設けられている。走査線3aは遮光性の導電部材が用いられており、走査線3aによって非開口領域の少なくとも一部が構成されている。
【0037】
同じく、Y方向に延在する非開口領域には、図2に示したデータ線6aが設けられている。データ線6aも遮光性の導電部材が用いられており、これらによって非開口領域の少なくとも一部が構成されている。
【0038】
非開口領域は、素子基板10側に設けられた上記信号線類によって構成されるだけでなく、対向基板20側において格子状にパターニングされた遮光膜21によっても構成されている。
【0039】
非開口領域の交差部付近には、図2に示したTFT30が設けられている。遮光性を有する非開口領域の交差部付近にTFT30を設けることにより、TFT30の光誤動作を防止すると共に、開口領域における開口率を確保している。詳しい画素Pの構造については後述するが、交差部付近にTFT30を設ける関係上、交差部付近の非開口領域の幅は、他の部分に比べて広くなっている。
【0040】
次に、図4〜図6を参照して画素Pの画素回路における薄膜トランジスターなどの各構成要素について説明する。
図4に示すように、画素Pは、走査線3aとデータ線6aの交差部に設けられたTFT30を有している。TFT30は、データ線側ソース・ドレイン領域30sと、チャネル領域30cと、画素電極側ソース・ドレイン領域30dと、データ線側ソース・ドレイン領域30sとチャネル領域30cとの間に設けられた接合領域30eと、チャネル領域30cと画素電極側ソース・ドレイン領域30dとの間に設けられた接合領域30fとを有するLDD(Lightly Doped Drain)構造の半導体層30aを有している。半導体層30aは上記交差部を通過して、走査線3aと重なるように配置されている。
【0041】
走査線3aはデータ線6aとの交差部において、X,Y方向に拡張された平面視で四角形の拡張部を有している。当該拡張部に平面的に重なると共に接合領域30fおよび画素電極側ソース・ドレイン領域30dと重ならない開口部を有する折れ曲がった形状のゲート電極30gが設けられている。
【0042】
ゲート電極30gは、Y方向に延在した部分が平面的にチャネル領域30cと重なっている。また、チャネル領域30cと重なった部分から折り曲げられてX方向に延在し、互いに対向する部分がそれぞれ走査線3aの拡張部との間に設けられたコンタクトホールCNT3,CNT4によって、走査線3aと電気的に接続している。
【0043】
コンタクトホールCNT3,CNT4は、平面視でX方向が長い矩形状(長方形)であって、半導体層30aのチャネル領域30cと接合領域30fとに沿って接合領域30fを挟むように両側に設けられている。
【0044】
データ線6aは、Y方向に延在すると共に、走査線3aとの交差部において同じく四角形の拡張部を有し、当該拡張部からX方向に突出した突出部6cに設けられたコンタクトホールCNT1によってデータ線側ソース・ドレイン領域30sと電気的に接続している。コンタクトホールCNT1を含む部分がソース電極31となっている。一方、画素電極側ソース・ドレイン領域30dの端部にもコンタクトホールCNT2が設けられており、コンタクトホールCNT2を含む部分がドレイン電極32となっている。
走査線3aの延在方向(X方向)において、コンタクトホールCNT2に隣り合うようにコンタクトホールCNT6,CNT5,CNT7が設けられている。コンタクトホールCNT2とコンタクトホールCNT5とは島状に設けられた第1中継電極6bを介して電気的に接続されている。コンタクトホールCNT6とコンタクトホールCNT7とは同じく島状に設けられた第2中継電極7bを介して電気的に接続されている。
【0045】
図4(b)に示すように、画素電極15は、前述した開口領域(図3参照)と平面的に重なると共に外縁部が非開口領域(図3参照)に掛かるように配置されている。また、画素電極15はコンタクトホールCNT7との電気的な接続を図るための突出部15aを有している。つまり、画素電極15は画素Pごとに設けられた略四角形(略正方形)の島状となっている。
蓄積容量16は、一対の透光性電極としての第1電極16aと第2電極16cとを有している。第1電極16aは前述した開口領域(図3参照)において画素電極15と平面的に重なるように画素Pごとに設けられている。第1電極16aはコンタクトホールCNT6との電気的な接続を図るための突出部16aaを有している。つまり、第1電極16aは、画素電極15と同じく略四角形(略正方形)の島状となっている。
【0046】
これに対して、第2電極16cは、X方向およびY方向にマトリックス状に配置された複数の画素Pに跨るように設けられている。また、第1電極16aが電気的に接続されるコンタクトホールCNT6や画素電極15が電気的に接続されるコンタクトホールCNT7と第2電極16cとが重ならないように開口された開口部16chを有している。つまり、第2電極16cは、表示領域Eに亘るように設けられ、複数の画素Pに共通する容量線3bの機能を有している。第2電極16cの一部が表示領域Eの外側に引き出されて、固定電位が供給される配線に電気的に接続されている。
【0047】
図5に示すように、素子基板10上には、まず走査線3aが形成される。走査線3aは、半導体層30aを遮光する遮光膜を兼ねており、例えばAl、Ti、Cr、W、Ta、Moなどの金属のうちの少なくとも1つを含む金属単体、合金、金属シリサイド、ポリシリサイド、ナイトライド、あるいはこれらが積層されたものを用いることができ、遮光性を有している。
【0048】
走査線3aを覆うように例えば酸化シリコンなどからなる下地絶縁膜10aが形成され、下地絶縁膜10a上に島状に半導体層30aが形成される。半導体層30aは例えば多結晶シリコン膜からなり、不純物イオンが注入されて、前述したデータ線側ソース・ドレイン領域30s、接合領域30e、チャネル領域30c、接合領域30f、画素電極側ソース・ドレイン領域30dを有するLDD構造が形成されている。
【0049】
半導体層30aを覆うように例えば酸化シリコンなどからなる第1絶縁膜(ゲート絶縁膜)11aが形成される。さらに第1絶縁膜11aを挟んでチャネル領域30cに対向する位置にゲート電極30gが形成される。ゲート電極30gは例えば多結晶シリコン膜を用いて形成することができ、同時に下地絶縁膜10aと第1絶縁膜11aとを貫通して走査線3a(拡張部)とゲート電極30gとを電気的に接続するコンタクトホールCNT3,CNT4(図示省略)も形成される。
【0050】
ゲート電極30gと第1絶縁膜11aとを覆うようにして例えば酸化シリコンなどからなる第2絶縁膜11bが形成される。半導体層30aのデータ線側ソース・ドレイン領域30sに重なる第1絶縁膜11aと第2絶縁膜11bとを貫通するコンタクトホールCNT1が形成される。同じく、半導体層30aの画素電極側ソース・ドレイン領域30dに重なる第1絶縁膜11aと第2絶縁膜11bとを貫通するコンタクトホールCNT2が形成される。続いて、第2絶縁膜11bを覆うように例えばAlなどの遮光性の金属からなる導電膜を成膜してパターニングすることにより、データ線側ソース・ドレイン領域30sにコンタクトホールCNT1を介して電気的に接続されるデータ線6aが形成される。同時に、画素電極側ソース・ドレイン領域30dにコンタクトホールCNT2を介して電気的に接続される第1中継電極6bが形成される。
【0051】
続いて、データ線6aおよび第1中継電極6bを覆うように第1層間絶縁膜12が形成される。第1層間絶縁膜12は、例えばシリコンの酸化物や窒化物あるいは酸窒化物からなり、TFT30が設けられた領域を覆うことによって生ずる表面の凹凸を平坦化する平坦化処理が施される。平坦化処理の方法としては、例えば化学的機械的研磨処理(Chamical Mechanical Polishing;CMP処理)やスピンコート処理などが挙げられる。
【0052】
第1中継電極6bと重なる位置に第1層間絶縁膜12を貫通するコンタクトホールCNT5が形成される。このコンタクトホールCNT5を被覆すると共に第1層間絶縁膜12を覆うように例えばAlなどの遮光性の金属からなる導電膜が成膜され、これをパターニングすることにより、配線7aと、コンタクトホールCNT5を介して第1中継電極6bに電気的に接続される第2中継電極7bとが形成される。
配線7aは、平面的にTFT30の半導体層30aやデータ線6aと重なるように形成され、固定電位が与えられてシールド層として機能するものである。
【0053】
配線7aと第2中継電極7bとを覆うように第2層間絶縁膜13が形成される。第2層間絶縁膜13も、例えばシリコンの酸化物や窒化物あるいは酸窒化物を用いて形成することができ、CMP処理などの平坦化処理が施される。
【0054】
次に、第2中継電極7bと重なる位置に第2層間絶縁膜13を貫通するコンタクトホールCNT6が形成される。このコンタクトホールCNT6を被覆すると共に第2層間絶縁膜13を覆うように、例えばITOなどの透明導電膜が成膜され、これをパターニングすることにより、突出部16aaを有する第1電極16aが形成される。第1電極16aは突出部16aaおよびコンタクトホールCNT6を介して第2中継電極7bと電気的に接続される。
【0055】
第1電極16aのうち少なくとも第2電極16cと対向する部分に誘電体層16bが成膜される。誘電体層16bとしては、シリコン窒化膜や、酸化ハウニュウム(HfO2)、アルミナ(Al23)、酸化タンタル(Ta25)などの単層膜、またはこれらの単層膜のうち少なくとも2種の単層膜を積層した多層膜を用いることができる。厚みは、電気容量を考慮して20nm〜30nmとする。誘電体層16bは、このように極薄い薄膜であり、可視光に対して高い透明性を有している。
【0056】
誘電体層16bを覆うように例えばITOなどの透明導電膜が成膜され、これをパターニングすることにより、容量線3bとして機能する第2電極16cが形成される。第2電極16cはパターニングされた誘電体層16bの側面を含めた表面を覆うように形成される。また、前述したように少なくとも複数の画素Pが含まれる表示領域Eに亘って形成されると共に、第2中継電極7bと平面的に重なる部分に開口部16chが形成される。
これによって、誘電体層16bを挟んで第1電極16aと第2電極16cとが対向配置され、透光性の蓄積容量16が構成される。
【0057】
蓄積容量16を覆って本発明の層間絶縁膜としての第3層間絶縁膜14が形成される。第3層間絶縁膜14も例えばシリコンの酸化物を用いて形成することができ、CMP処理などの平坦化処理を施してもよい。加えて、この後にフォトリソグラフィ法を用いて形成される画素電極15の形成工程で、第3層間絶縁膜14が変質したり、膜厚が変動することが無いように、化学的に安定なボロンがドープされた酸化シリコン膜で覆うことが好ましい。つまり、第3層間絶縁膜14は、蓄積容量16側の第1酸化シリコン膜と、第1酸化シリコン膜に積層され、ボロンがドープされた第2酸化シリコン膜とから構成されている。
【0058】
次に、第2中継電極7bと重なる位置に第2層間絶縁膜13および第3層間絶縁膜14を貫通するコンタクトホールCNT7が形成される。コンタクトホールCNT7を被覆すると共に、第3層間絶縁膜14を覆う例えばITOなどの透明導電膜が成膜され、これをパターニングすることにより、コンタクトホールCNT7を介して第2中継電極7bに電気的に接続される画素電極15が形成される。
【0059】
このような素子基板10の配線構造によれば、TFT30のドレイン電極32は、第1中継電極6b、コンタクトホールCNT5、第2中継電極7b、コンタクトホールCNT7を介して画素電極15と電気的に接続される。また、第1中継電極6b、コンタクトホールCNT5、第2中継電極7b、コンタクトホールCNT6を介して蓄積容量16の第1電極16aと電気的に接続される。
【0060】
図6に示すように、画素Pの開口領域には、透明な素子基板10上において順に形成された、下地絶縁膜10a、第1絶縁膜11a、第2絶縁膜11b、第1層間絶縁膜12、第2層間絶縁膜13、透光性の蓄積容量16、第3層間絶縁膜14、画素電極15が設けられている。
【0061】
素子基板10は、画素回路の構成を有することによって、対向基板20よりも複雑な層(膜)構造となっている。下地絶縁膜10a、第1絶縁膜11a、第2絶縁膜11b、第1層間絶縁膜12、第2層間絶縁膜13などの絶縁膜は、前述したようにシリコンの酸化物(酸化シリコン膜)または窒化物あるいは酸窒化物からなるため、素子基板10を構成するところの例えば石英基板とほぼ同じ屈折率(可視光領域で1.4〜1.5)を有している。したがって、屈折率がほぼ同じであるため、これらの層(膜)を透過する可視光は、層(膜)の界面で反射したり、屈折したりすることがほとんどないので、その光強度(透過率)が減衰し難い。
これに対して、蓄積容量16から画素電極15までの構造は、透明導電膜(ITOならば可視光波長領域で屈折率が1.5〜1.9)からなる第1電極16aと第2電極16cとの間に誘電体層16bが挟まれ、同じく透明導電膜からなる第2電極16cと画素電極15との間に第3層間絶縁膜14が挟まれた構造となっている。つまり、透明導電膜の間に透明導電膜に対して屈折率が異なる(低い)誘電体層16bや第3層間絶縁膜14を挟んだ構造となっているので、これらの層(膜)を透過する可視光は、層(膜)の界面で反射したり、屈折したりして、その光強度(透過率)が減衰するおそれがある。なお、誘電体層16bは、前述したように電気容量を確保する観点から膜厚を20nm〜30nmとしている。この膜厚の範囲では、開口領域における光の透過率に対してほとんど影響を及ぼさないので、無視することができる。
【0062】
本実施形態では、画素Pの開口領域を透過する光(透過光)の分光分布が、少なくとも赤の波長範囲(600nm〜700nm)、緑の波長範囲(500nm〜600nm)、青の波長範囲(400nm〜500nm)に対応してそれぞれ透過率のピークを有するように、画素電極15、一対の透光性電極としての第1電極16aおよび第2電極16c、第3層間絶縁膜14のそれぞれの膜厚が設定されている。以降、具体的な実施例、比較例を挙げて説明する。
【0063】
図7(a)は実施例1〜実施例4における第1電極、第2電極、第3層間絶縁膜、画素電極の膜厚を示す表、同図(b)は実施例5〜実施例10における第1電極、第2電極、第3層間絶縁膜、画素電極の膜厚を示す表、同図(c)は比較例1〜比較例6における第1電極、第2電極、第3層間絶縁膜、画素電極の膜厚を示す表である。図8は実施例1および比較例1〜比較例3における透過光の分光分布を示すグラフ、図9は実施例1〜実施例4および比較例4,5における透過光の分光分布を示すグラフ、図10は実施例1と実施例5〜実施例8における透過光の分光分布を示すグラフ、図11は実施例1と実施例9,10および比較例6における透過光の分光分布を示すグラフである。
【0064】
以下、図7(a)〜(c)を参照して、実施例1〜実施例10、比較例1〜比較例6における第1電極16a、第2電極16c、第3層間絶縁膜14、画素電極15について説明する。
【0065】
(実施例1)
実施例1は、第1電極16a、第2電極16c、画素電極15が、いずれもITO膜からなり、それぞれの膜厚は、140nmである。第3層間絶縁膜14は、第1酸化シリコン膜とボロンがドープされた第2酸化シリコン膜が積層されたものであって、膜厚は175nmである。
【0066】
(実施例2)
実施例2は、実施例1に対して、第1電極16a、第2電極16c、画素電極15の膜厚をそれぞれ5%(7nm)薄くして、133nmに設定したものである。
【0067】
(実施例3)
実施例3は、実施例1に対して、第1電極16a、第2電極16c、画素電極15の膜厚をそれぞれ5%(7nm)厚くして、147nmに設定したものである。
【0068】
(実施例4)
実施例4は、実施例1に対して、画素電極15の膜厚を10%(14nm)厚くしたものである。
【0069】
(実施例5)
実施例5は、実施例1に対して、第3層間絶縁膜14の膜厚を5%(9nm)薄くして、166nmに設定したものである。
【0070】
(実施例6)
実施例6は、実施例1に対して、第3層間絶縁膜14の膜厚を10%(17nm)薄くして、158nmに設定したものである。
【0071】
(実施例7)
実施例7は、実施例1に対して、第3層間絶縁膜14の膜厚を5%(9nm)厚くして、184nmに設定したものである。
【0072】
(実施例8)
実施例8は、実施例1に対して、第3層間絶縁膜14の膜厚を10%(17nm)厚くして、192nmに設定したものである。
【0073】
(実施例9)
実施例9は、実施例1に対して、第1電極16a、第2電極16c、画素電極15の膜厚をそれぞれ5%(7nm)薄くして133nmに設定し、且つ、第3層間絶縁膜14の膜厚を5%(9nm)薄くして166nmに設定したものである。
【0074】
(実施例10)
実施例10は、実施例1に対して、第1電極16a、第2電極16c、画素電極15の膜厚をそれぞれ5%(7nm)厚くして147nmに設定し、且つ、第3層間絶縁膜14の膜厚を5%(9nm)薄くして166nmに設定したものである。
【0075】
(比較例1)
比較例1は、実施例1に対して、第3層間絶縁膜14の膜厚を、およそ43%(75nm)薄くして100nmに設定したものである。
【0076】
(比較例2)
比較例2は、実施例1に対して、第3層間絶縁膜14の膜厚を、およそ43%(75nm)厚くして250nmに設定したものである。
【0077】
(比較例3)
比較例3は、実施例1に対して、第1電極16a、第2電極16c、画素電極15の膜厚をそれぞれ29%(40nm)薄くして、100nmに設定したものである。
【0078】
(比較例4)
比較例4は、実施例1に対して、第1電極16a、第2電極16c、画素電極15の膜厚をそれぞれ10%(14nm)薄くして、126nmに設定したものである。
【0079】
(比較例5)
比較例5は、実施例1に対して、第1電極16a、第2電極16c、画素電極15の膜厚をそれぞれ10%(14nm)厚くして、154nmに設定したものである。
【0080】
(比較例6)
比較例6は、実施例1に対して、第1電極16a、第2電極16c、画素電極15の膜厚をそれぞれ10%(14nm)厚くして154nmに設定し、且つ、第3層間絶縁膜14の膜厚をおよそ10%(17nm)薄くして158nmに設定したものである。
【0081】
以下、上記実施例1〜実施例10、上記比較例1〜比較例6について、開口領域を透過する光(透過光)の分光分布を光学的なシミュレーションによって求めた。また、図8〜図11に示す分光分布のグラフは、実施例1における赤の波長範囲(600nm〜700nm)における透過率のピークの値を「1」として指数化したものである。なお、透過光の分光分布を求めた光学的なシミュレーションについては、各実施例や各比較例の膜厚構成に相当するサンプル(試作品)の分光特性を実際に測定した結果と比較して、シミュレーションの妥当性が確認されている。
【0082】
図8に示すように、実施例1の分光分布は、赤の波長範囲(600nm〜700nm)、緑の波長範囲(500nm〜600nm)、青の波長範囲(400nm〜500nm)のそれぞれにおいて、透過率のピークを有している。したがって、可視光領域に亘って高い透過率が実現されている。とりわけ、赤のピーク波長はおよそ660nm、緑のピーク波長がおよそ550nm、青のピーク波長がおよそ460nmとなっており、所謂、光の三原色に相当する代表波長に透過率のピークが現れており、色再現性を考慮すると理想的な状態に近いと言える。それゆえに、以降、実施例1を基準として他の実施例や比較例について説明する。
【0083】
実施例1に対して、第3層間絶縁膜14の膜厚を、およそ43%薄くした比較例1と、およそ43%厚くした比較例2とでは、共に緑の波長範囲(500nm〜600nm)と、青の波長範囲(400nm〜500nm)とで透過率のピークを示すものの、赤の波長範囲(600nm〜700nm)では透過率のピークを示さず、緑の波長範囲(500nm〜600nm)に比べて透過率が著しく低下する。また、青の波長範囲(400nm〜500nm)における透過率も実施例1に比べると著しく低い。
【0084】
実施例1に対して、第1電極16a、第2電極16c、画素電極15の膜厚をそれぞれ29%薄くした比較例3は、緑の波長範囲(500nm〜600nm)と、青の波長範囲(400nm〜500nm)とにおいて透過率のピークを示すものの、赤の波長範囲(600nm〜700nm)では透過率のピークを示さず、やはり緑の波長範囲(500nm〜600nm)に比べて透過率が著しく低下する。言い換えれば、可視光波長範囲における透過率の変動幅が大きい。
【0085】
図9に示すように、実施例1に対して、第1電極16a、第2電極16c、画素電極15の膜厚を、5%薄くした実施例2や5%厚くした実施例3は、実施例1と同様に、赤の波長範囲(600nm〜700nm)、緑の波長範囲(500nm〜600nm)、青の波長範囲(400nm〜500nm)のそれぞれにおいて、透過率のピークを有している。ピークにおける透過率も同等である。また、可視光波長範囲における透過率の変動幅もほぼ実施例1と同等である。
【0086】
実施例1に対して、第1電極16a、第2電極16c、画素電極15の膜厚を、それぞれ10%薄くした比較例4は、赤の波長範囲(600nm〜700nm)、緑の波長範囲(500nm〜600nm)、青の波長範囲(400nm〜500nm)のそれぞれにおいて透過率のピークを示す。しかし、青の波長範囲(400nm〜500nm)では、透過率のピーク波長が490nmであり、490nmよりも短い波長範囲で、実施例1よりも透過率が低下している。また、430nm付近にも透過率のピークが現れているが、実際には430nm以下の短波長をカットして使用されることが多いので、十分な透過率を確保できるとは言えない。つまり、青の光の強度(光量)の不足が生ずる点で実施例1に劣る。
【0087】
実施例1に対して、ITO膜からなる第1電極16a、第2電極16c、画素電極15のうち画素電極15の膜厚だけを10%厚くした実施例4は、赤の波長範囲(600nm〜700nm)、緑の波長範囲(500nm〜600nm)、青の波長範囲(400nm〜500nm)のそれぞれにおいて透過率のピークを示す。そして、比較例4に比べると、青の波長範囲(400nm〜500nm)における透過率のピーク波長がおよそ470nmと短くなっている分、青の波長範囲(400nm〜500nm)における透過率が良くなっている。このような傾向は、図9には図示していないが、実施例1に対して、第1電極16aまたは第2電極16cの膜厚を10%厚くした場合の分光分布でも同様である。
【0088】
また、実施例1に対して、第1電極16a、第2電極16c、画素電極15の膜厚をそれぞれ10%厚くした比較例5は、赤の波長範囲(600nm〜700nm)、緑の波長範囲(500nm〜600nm)、青の波長範囲(400nm〜500nm)のそれぞれにおいて透過率のピークを示すものの、それぞれの透過率のピークが各波長範囲の短波長側にずれている。比較例4の場合と同様に、430nm以下の短波長をカットして使用されると、実施例1に比べて青の光の強度(光量)の不足が生じてしまう。
【0089】
図10に示すように、実施例1に対して、第3層間絶縁膜14の膜厚を、5%薄くした実施例5、5%厚くした実施例7は、実施例1と同様に、赤の波長範囲(600nm〜700nm)、緑の波長範囲(500nm〜600nm)、青の波長範囲(400nm〜500nm)のそれぞれにおいて透過率のピークを有する。ピークにおける透過率もほぼ同等である。また、可視光波長範囲における透過率の変動幅も実施例1とほぼ同等である。
【0090】
実施例1に対して、第3層間絶縁膜14の膜厚を10%薄くした実施例6、10%厚くした実施例8も、実施例1と同様に、赤の波長範囲(600nm〜700nm)、緑の波長範囲(500nm〜600nm)、青の波長範囲(400nm〜500nm)のそれぞれにおいて透過率のピークを有する。ピークにおける透過率もほぼ同等である。また、可視光波長範囲における透過率の変動幅は、実施例5および実施例7と比べるとやや大きくなっているものの、透過率のピーク波長は実施例1に対してそれほどずれておらず、実用上は問題が無いレベルといえる。
【0091】
図11に示すように、実施例1に対して、第1電極16a、第2電極16c、画素電極15および第3層間絶縁膜14の膜厚をそれぞれ5%薄くした実施例9、および第1電極16a、第2電極16c、画素電極15の膜厚をそれぞれ5%厚くし、第3層間絶縁膜14の膜厚を5%薄くした実施例10は、実施例1に対して、可視光波長範囲における透過率の変動幅がやや大きくなるものの、実施例1と同様に赤の波長範囲(600nm〜700nm)、緑の波長範囲(500nm〜600nm)、青の波長範囲(400nm〜500nm)のそれぞれにおいて透過率のピークを示す。ピークにおける透過率もほぼ同等である。
【0092】
実施例1に対して、第1電極16a、第2電極16c、画素電極15の膜厚をそれぞれ10%厚くし、第3層間絶縁膜14の膜厚を10%薄くした比較例6は、赤の波長範囲(600nm〜700nm)、緑の波長範囲(500nm〜600nm)、青の波長範囲(400nm〜500nm)のそれぞれにおいて透過率のピークを示すものの、それぞれの透過率のピークが各波長範囲の長波長側にずれている。第1電極16a、第2電極16c、画素電極15の膜厚をそれぞれ10%薄くした比較例4の場合と同様に、430nm以下の短波長をカットして使用されると、実施例1よりも青の光の強度(光量)の不足が生じてしまう。
【0093】
上記実施例1〜実施例10、および上記比較例1〜比較例6の分光分布によれば、可視光波長範囲において高い透過率を確保するには、ITO膜からなる第1電極16a、第2電極16c、画素電極15のうち1つの膜厚を140nm±10%の範囲とし、残りの電極の膜厚を140nm±5%の範囲に設定し、且つ、シリコンの酸化物からなる第3層間絶縁膜14の膜厚を175nm±10%の範囲に設定することが好ましい。さらに、ITO膜からなる第1電極16a、第2電極16c、画素電極15の膜厚をそれぞれ140nm±5%の範囲に設定し、且つ、シリコンの酸化物からなる第3層間絶縁膜14の膜厚を175nm±5%の範囲に設定することがより好ましい。
【0094】
なお、本実施形態における赤の波長範囲(600nm〜700nm)、緑の波長範囲(500nm〜600nm)、青の波長範囲(400nm〜500nm)は、これに限定されず、例えば、後述する電子機器としての投射型表示装置(液晶プロジェクター)の光変調手段(ライトバルブ)として、液晶装置100を用いる場合には、光源から得られる赤、緑、青の色光の分光分布に応じて設定されることが望ましい。また、赤、緑、青の色光の各波長範囲を一般的に示される三原色の光の波長範囲よりも狭めることによって色純度を改善することができる。言い換えれば、狭くなった各波長範囲に透過率のピークが生ずるように、第1電極16a、第2電極16c、画素電極15、第3層間絶縁膜14の膜厚を例えば実施例1を基準として、より狭い範囲に収まるように管理すればよい。
【0095】
以上に述べた実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1)上記液晶装置100は、画素Pの開口領域に配置された、ITO膜からなる第1電極16a、第2電極16cおよび画素電極15のうちの1つの膜厚が140nm±10%の範囲にあり、残りの電極の膜厚が140nm±5%の範囲にあると共に、シリコンの酸化物からなる第3層間絶縁膜14の膜厚が175nm±10%の範囲にある。これにより、画素Pの開口領域を透過する光の分光分布は、赤の波長範囲(600nm〜700nm)、緑の波長範囲(500nm〜600nm)、青の波長範囲(400nm〜500nm)のそれぞれにおいて透過率のピークを有する。したがって、可視光波長範囲に亘って高い透過率が実現された透過型の液晶装置100を提供できる。
(2)上記液晶装置100において、蓄積容量16と画素電極15の間に設けられた第3層間絶縁膜14は、蓄積容量16側の第1酸化シリコン膜と、第1酸化シリコン膜に積層され、ボロンがドープされた第2酸化シリコン膜とからなる。これにより、第1酸化シリコン膜は、化学的により安定なボロンがドープされた第2酸化シリコン膜で覆われることになり、この後に画素電極15をフォトリソグラフィ法などを用いて形成しても、第3層間絶縁膜14が変質したり、エッチングされて膜厚が変動したりする不具合を避けることができる。つまり、安定した膜質と膜厚とを備えた第3層間絶縁膜14とすることで、結果的に画素Pにおける高い透過率を安定的に確保することができる。
【0096】
(第2実施形態)
<電子機器>
図12は電子機器としての投射型表示装置の構成を示す概略図である。図12に示すように、本実施形態の電子機器としての投射型表示装置1000は、システム光軸Lに沿って配置された偏光照明装置1100と、光分離素子としての2つのダイクロイックミラー1104,1105と、3つの反射ミラー1106,1107,1108と、5つのリレーレンズ1201,1202,1203,1204,1205と、3つの光変調手段としての透過型の液晶ライトバルブ1210,1220,1230と、光合成素子としてのクロスダイクロイックプリズム1206と、投射レンズ1207とを備えている。
【0097】
偏光照明装置1100は、超高圧水銀灯やハロゲンランプなどの白色光源からなる光源としてのランプユニット1101と、インテグレーターレンズ1102と、偏光変換素子1103とから概略構成されている。
【0098】
ダイクロイックミラー1104は、偏光照明装置1100から射出された偏光光束のうち、赤色光(R)を反射させ、緑色光(G)と青色光(B)とを透過させる。もう1つのダイクロイックミラー1105は、ダイクロイックミラー1104を透過した緑色光(G)を反射させ、青色光(B)を透過させる。
【0099】
ダイクロイックミラー1104で反射した赤色光(R)は、反射ミラー1106で反射した後にリレーレンズ1205を経由して液晶ライトバルブ1210に入射する。
ダイクロイックミラー1105で反射した緑色光(G)は、リレーレンズ1204を経由して液晶ライトバルブ1220に入射する。
ダイクロイックミラー1105を透過した青色光(B)は、3つのリレーレンズ1201,1202,1203と2つの反射ミラー1107,1108とからなる導光系を経由して液晶ライトバルブ1230に入射する。
【0100】
液晶ライトバルブ1210,1220,1230は、クロスダイクロイックプリズム1206の色光ごとの入射面に対してそれぞれ対向配置されている。液晶ライトバルブ1210,1220,1230に入射した色光は、映像情報(映像信号)に基づいて変調されクロスダイクロイックプリズム1206に向けて射出される。このプリズムは、4つの直角プリズムが貼り合わされ、その内面に赤色光を反射する誘電体多層膜と青色光を反射する誘電体多層膜とが十字状に形成されている。これらの誘電体多層膜によって3つの色光が合成されて、カラー画像を表す光が合成される。合成された光は、投射光学系である投射レンズ1207によってスクリーン1300上に投射され、画像が拡大されて表示される。
【0101】
液晶ライトバルブ1210は、上述した第1実施形態の液晶装置100が適用されたものである。液晶装置100は、色光の入射側と射出側とにおいてクロスニコルに配置された一対の偏光素子の間に隙間を置いて配置されている。他の液晶ライトバルブ1220,1230も同様である。
【0102】
このような投射型表示装置1000によれば、画素Pの開口領域において、赤、緑、青の色光に対してそれぞれ高い透過率が得られる液晶装置100を液晶ライトバルブ1210,1220,1230として用いているので、偏光照明装置1100から発する光を有効に利用して明るい表示品位が実現されている。
【0103】
また、画素Pの開口領域において高い透過率が得られるということは、開口領域を透過する光の反射率が低下することを意味している。そうすると、反射した光が再び液晶層50を透過する確率が減るので、液晶装置100を液晶ライトバルブ1210,1220,1230として用いたときの耐光性寿命(例えば液晶層50や配向膜18,24の光劣化)が改善される。
【0104】
なお、光源としての偏光照明装置1100から射出された偏光光束のうち、赤色光(R)、緑色光(G)、青色光(B)の分光分布における光強度のピーク波長に対して、画素Pを透過する光の透過率のピーク波長がほぼ合致するように、液晶装置100における第1電極16a、第2電極16c、画素電極15、第3層間絶縁膜14の膜厚とその範囲をそれぞれ設定して用いることが好ましい。これによれば、光の利用効率をさらに高められる。なお、「ほぼ合致」とは、光源から発する色光の光強度のピーク波長に対して±5%以内の波長範囲に画素Pを透過する色光の透過率のピークが現れている状態を言う。
また例えば、青色光(B)の分光分布を430nmよりも波長が短い紫外光をカットして430nm〜500nmとし、液晶装置100の耐光性寿命をさらに改善する場合には、当該波長範囲に透過率のピークが来るように、第1電極16a、第2電極16c、画素電極15、第3層間絶縁膜14の膜厚とその範囲をそれぞれ設定する。
【0105】
本発明は、上記した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う液晶装置100および該液晶装置100を適用する電子機器もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
上記実施形態以外にも様々な変形例が考えられる。以下、変形例を挙げて説明する。
【0106】
(変形例1)蓄積容量16の一対の透光性電極である第1電極16aおよび第2電極16c、ならびに画素電極15は、透明導電膜としてITO膜を用いることに限定されず、IZO(Indium Zinc Oxide)を用いてもよい。
【0107】
(変形例2)本発明の層間絶縁膜としての第3層間絶縁膜14は、第1酸化シリコン膜とボロンがドープされた第2酸化シリコン膜の積層体であることに限定されず、酸化シリコン膜あるいは酸窒化シリコン膜の単層であるとしてもよい。
【0108】
(変形例3)上記液晶装置100におけるTFT30の半導体層30aは、走査線3aと重なるように配置されることに限定されない。例えば、データ線6aと重ねる配置や半導体層30aを途中で折り曲げて、走査線3aとデータ線6aとに重ねるように配置したとしても、本願の蓄積容量16、第3層間絶縁膜14、画素電極15の構成を適用することができる。
【0109】
(変形例4)本発明を適用可能な電気光学装置は、液晶装置100に限定されない。例えば、画素電極15が設けられた素子基板10側に発光が射出されるように、画素電極15上に発光層を含む機能層や陰極を設けたボトムエミッション方式の有機EL(エレクトロルミネッセンス)装置にも適用することができる。
【0110】
(変形例5)上記液晶装置100が適用される電子機器は、上記実施形態の投射型表示装置1000に限定されない。例えば、投射型のHUD(ヘッドアップディスプレイ)や直視型のHMD(ヘッドマウントディスプレイ)、または電子ブック、パーソナルコンピューター、デジタルスチルカメラ、液晶テレビ、ビューファインダー型あるいはモニター直視型のビデオレコーダー、カーナビゲーションシステム、電子手帳、POSなどの情報端末機器の表示部として好適に用いることができる。また、適用に際しては、透過型の液晶装置100を照明する光源の光の分光分布における少なくとも赤、緑、青の光強度のピーク波長に対して、画素Pを透過する光の透過率のピークが適合するように、第1電極16a、第2電極16c、画素電極15、第3層間絶縁膜14の膜厚とその範囲をそれぞれ設定して用いる。
【符号の説明】
【0111】
10…基板としての素子基板、14…層間絶縁膜としての第3層間絶縁膜、15…画素電極、16…蓄積容量、16a…一対の透光性電極のうちの第1電極、16b…誘電体層、16c…一対の透光性電極のうちの第2電極、100…電気光学装置としての液晶装置、1000…電子機器としての投射型表示装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
画素に配置された透光性の画素電極と、
前記基板と前記画素電極との間に、誘電体層を介して対向配置された一対の透光性電極を有する蓄積容量と、
前記蓄積容量と前記画素電極との間に層間絶縁膜と、を備え、
前記画素を透過する光の分光分布が、少なくとも赤、緑、青の各波長範囲に対応して透過率のピークを有するように、前記画素電極、前記一対の透光性電極、および前記層間絶縁膜のそれぞれの膜厚が設定されていることを特徴とする電気光学装置。
【請求項2】
前記画素電極および前記一対の透光性電極がITO膜からなり、これらの前記ITO膜のうちの1つの膜厚が140nm±10%の範囲にあり、残りの前記ITO膜の膜厚が140nm±5%の範囲にあると共に、前記層間絶縁膜がシリコンの酸化膜からなり、前記シリコンの酸化膜の膜厚が175nm±10%の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項3】
前記層間絶縁膜は、前記蓄積容量側の第1酸化シリコン膜と、前記第1酸化シリコン膜に積層され、ボロンがドープされた第2酸化シリコン膜とを含むことを特徴とする請求項1または2に記載の電気光学装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の電気光学装置を備えたことを特徴とする電子機器。
【請求項5】
前記電気光学装置を照明する光源を備え、
前記光源から発する光における少なくとも赤、緑、青の各波長範囲の光強度のピーク波長と、前記電気光学装置の前記画素を透過する光の分光分布における少なくとも赤、緑、青の各波長範囲に対応する透過率のピーク波長とがほぼ合致していることを特徴とする請求項4に記載の電子機器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2013−25138(P2013−25138A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−160718(P2011−160718)
【出願日】平成23年7月22日(2011.7.22)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】