説明

非周期的なパルスによる部分的溶解膜処理のシステムおよび方法

一態様において、本開示は薄膜処理方法に関する。本方法は、第1の選択された方向に薄膜を進める間、第1レーザパルスと第2レーザパルスで薄膜の第1領域を照射し、各レーザパルスは成形ビームを供給し、薄膜を部分的に溶解するのに十分なフルエンスを持ち、第1領域は再凝固および結晶化して第1の結晶化領域を形成する。更に本方法は、第3レーザパルスと第4レーザパルスで薄膜の第2領域を照射し、各レーザパルスは形成ビームを供給し、薄膜を部分的に溶解するのに十分なフルエンスを持ち、第2領域は再凝固および結晶化して第2の結晶化領域を形成する。第1レーザパルスと第2レーザパルス間の時間間隔は、第1レーザパルスと第3レーザパルス間の時間間隔の半分未満である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、米国特許第61/264082号「拡張型エキシマレーザアニーリングシステムおよび方法(Systems and Methods for Advanced Excimer Laser Annealing)」(2009年11月24日出願)、米国特許第61/286643号「拡張型エキシマレーザアニーリングシステムおよび方法(Systems and Methods for Advanced Excimer Laser Annealing)」(2009年12月15日出願)、米国特許第61/291488号「拡張型エキシマレーザアニーリングシステムおよび方法(Systems and Methods for Advanced Excimer Laser Annealing)」(2009年12月31日出願)、米国特許第61/257657号「部分溶解結晶化を通して低粒子内欠陥密度膜を用いる均一なサイズの小粒子多結晶性シリコンを得る方法(Method For Obtaining Uniformly Sized Small Grain Polycrystalline Silicon With Low Intragrain Defect−Density Films Through Partial Melt Crystallization)」(2009年11月3日出願)、米国特許第61/257650号「部分溶解結晶化を通して低粒子内欠陥密度膜を用いる均一なサイズの小粒子多結晶性シリコンを得る方法(Method For Obtaining Uniformly Sized Small Grain Polycrystalline Silicon With Low Intragrain Defect−Density Films Through Partial Melt Crystallization)」(2009年11月3日出願)、米国特許第61/291,663号「拡張型単一走査SLS(Advanced Single−Scan SLS)」(2009年12月31日出願)、米国特許第61/294,288号「連続発射SLS(Sequential Firing SLS)」(2010年1月12日出願)、米国特許第12/776756号「非周期的なパルスの連続的な横方向凝固のためのシステムおよび方法(Systems and Methods for Non−Periodic Pulse Sequential Lateral Solidification)」(2010年5月10日出願)、国際特許出願PCT/US2010/033565号「非周期的なパルスの連続的な横方向凝固のためのシステムおよび方法(Systems and Methods for Non−Periodic Pulse Sequential Lateral Solidification)」(2010年5月4日出願)に対する優先権を主張し、それらすべての開示をここに出典明示して、本明細書に組み入れる。
【0002】
本明細書に記載するすべての特許、特許出願、特許公報、および公報は、それらすべてをここに出典明示して、本明細書に組み入れる。本出願の教示と組み入れた文書の技術間で矛盾がある場合には、本出願が優先する。
【背景技術】
【0003】
半導体加工の分野において、非晶質シリコン薄膜を多結晶膜に変換することについて、様々な技術が説明されている。そのような技術の一つがエキシマレーザアニーリング(「ELA」)である。ELAは、限定されないが発熱に対し不耐性である基板(例えば、ガラス、およびプラスチック)のような基板上に均一の結晶粒を持つ多結晶膜の生成を可能にするパルスレーザ結晶化プロセスである。ELAシステムおよび処理の実施例は、本件出願人による米国特許第20090309104号「結晶方位制御されたポリシリコン生成システムおよび方法(Systems and Methods for Creating Crystallographic−Orientation Controlled Poly−Silicon Films)」(2009年8月20日出願)、米国特許第20100065853号「縁領域を最小にするための基板上の膜領域のレーザ結晶化プロセス処理およびシステム、およびそのような膜領域の構造(Process and System for Laser Crystallization Processing of Film Regions on a Substrate to Minimize Edge Areas, and Structure of Such Film Regions)」(2009年9月9日出願)、および米国特許第20070010104号「ライン型ビームを使用する基板上の膜領域のレーザ結晶化プロセス処理およびシステム、およびそのような膜領域の構造」(2006年3月9日出願)に記載される。
【0004】
従来のELAツールは、単一の走査において単位面積当たり多数のパルスを確立するために、パルス間に多くの重複(例えば、95パーセント)を含むサンプル表面上を低速度で連続的に走査する単一のラインビームを使用する。したがって、ELAにおいて、膜領域はエキシマレーザによって照射されることで膜は部分的に溶解し、その後、結晶化する。膜の連続的で部分的な溶解は、細かい粒子から成る多結晶膜の形成をもたらすことができるが、この方法は、パルス間のエネルギー変動、および/または不均一なビーム強度プロファイルにより引き起こされ得る微細構造の不均一性がしばしば問題となる。多数のパルスが均一な粒子サイズをもたらす累積効果を誘起するためだけでなく、短軸ビーム端の影響を軽減するためにも必要とされる。ビームのビーム端部分において、エネルギーは次第にゼロへ減少する。膜における位置に応じて、初期パルスエネルギーシーケンスにおける位置依存の変化が生じ得る。そのような変化を後のELA処理で除外することは容易ではなく、画素の明るさにアーチファクト(すなわち、ムラ)が生じる可能性がある。図1Aは、ELAを用いて得られ得るランダム微細構造を例示する。Si膜は複数回照射され、均一な粒子サイズのランダムな多結晶膜を生成する。図1Bは、従来のELA単一走査を表し、ビーム101が膜104を走査する際の短軸におけるラインビーム101の断面図を示す。ビーム101は矢印102の方向に進み、膜104の領域103は、ビーム101が膜104を横断する際に複数のレーザパルスで照射され得る。
【0005】
更に、非常に高い処理能力で均一な粒子構造(「UGS」)を得るために用いることができる結晶化方法およびツールが報告されている。例えば、そのようなシステムが米国特許20070010104号「ライン型ビームを用いる基板上の膜領域のレーザ結晶化プロセスのための処理およびシステム、およびそのような膜領域の構造(Processes and Systems for Laser 結晶化するation Processing of Film Regions on a Subst率 Utilizing a Line−Type Beam, and Structures of Such Film Regions)」に開示されている。UGSは、結晶化されている膜の完全溶解結晶化(「CMC」)および/または部分溶解結晶化(「PMC」)を含み得る単一のパルス照射処理である。UGS処理の更なる特徴は、画素薄膜トランジスタ(「TFT」)の列/行が存在する領域内のみで部分または完全な溶解が起こるように、レーザパルスの位置が制御された発射である。パルス間のステッピング距離がラインビームの幅を超えるとき、膜の照射されない領域(例えば、非晶質の成膜直後Si)はそのような列間に残る。この選択領域結晶化(「SAC」)処理は、したがって、単位面積当たりパルスの平均数が1未満となり得るので、非常に高い処理能力を持つことができる。
【0006】
しかしながら、以前のツールはどれも、例えば、画素が低密度なテレビで使われるような非常に大きな膜のELAにあまりよく最適化されていない。従来のELAは、画素位置間のSi基板を結晶化するために時間と資源が浪費される点において、そのような基板にとって非効率的な処理である。、UGSツールはそれらの領域をとばすことを可能にするが、得られた材料は典型的なELA材料より大幅により多くの欠陥があり、典型的な放射条件が使われた場合、材料の均一度も十分ではないだろう。
【発明の概要】
【0007】
レーザの位置制御された連続的な起動を用いる非周期的なパルス方法およびツールを記載する。システムは、結晶化プロセスにおいて別個の非周期的なレーザパルスを生成するために複数のレーザを使って実現され得る。すなわち、各レーザパルスは別々の部分的な溶解および凝固サイクルをもたらすという点で別個である。複数のレーザが、単一の走査または複数の走査において膜の選択された領域に照射および結晶化するために、協働するようにされたパルスシーケンスにおいて用いられる。
【0008】
一態様において、本開示は、第1の選択された方向に薄膜を進める間、第1レーザパルスおよび第2レーザパルスを用いて薄膜の第1領域に照射し、各レーザパルスは成形ビームを供給して、更に薄膜を部分的に溶解するのに十分なフルエンスを持つこと、第1領域が再凝固および結晶化して第1の結晶化された領域を形成すること、薄膜の第2領域に第3レーザパルスと第4レーザパルスを照射し、各パルスは成形ビームを供給して、更に薄膜を部分的に溶解するのに十分なフルエンスを持つこと、および第2領域が再凝固および結晶化して第2の結晶化された領域を形成することを含み、第1レーザパルスと第2レーザパルス間の時間間隔は、第1レーザパルスと第3レーザパルス間の時間間隔の半分未満である、薄膜処理の方法に関する。
【0009】
いくつかの実施形態において、第1レーザパルスと第2レーザパルス間の時間間隔は、薄膜の単一の溶解および凝固サイクル間の時間間隔より長い。いくつかの実施形態において、第1レーザパルスと第2レーザパルスのそれぞれは同じエネルギー密度を持つ、第1レーザパルスと第2レーザパルスのそれぞれは、異なるエネルギー密度を持つ、第1レーザパルスと第2レーザパルスは同程度の薄膜の溶解を実現する、および/または第1レーザパルスと第2レーザパルスのそれぞれは異なる程度の薄膜の溶解を実現する。いくつかの実施形態において、薄膜は既存の微結晶を欠いた非晶質シリコン膜にであり得る。いくつかの実施形態において、第1レーザパルスは非晶質シリコン膜を溶解し、欠陥コア領域を持つ結晶構造体を生成するのに十分なエネルギー密度を持つ。いくつかの実施形態において、第2レーザパルスは、欠陥コア領域を再溶解して均一な微細粒子結晶膜を生成するのに十分なエネルギー密度を持つ。
【0010】
いくつかの実施形態において、薄膜は非晶質シリコン膜であり得る。いくつかの実施形態において、薄膜は、低圧化学蒸着、プラズマ促進化学蒸着、スパッタリング、および電子ビーム蒸着の一つを使って蒸着される。
【0011】
いくつかの実施形態において、薄膜は処理されたシリコン膜であり得る。いくつかの実施形態において、処理されたシリコン膜は、第2の選択された方向に非晶質シリコン膜を進める間、非晶質シリコン膜を部分的に溶解するのに十分なフルエンスを持つ広範囲のレーザパルスで非晶質シリコン膜を照射することを含む方法によって後に処理された既存の微結晶を欠いた非晶質シリコン膜である。
【0012】
いくつかの実施形態において、広範囲のレーザパルスは、複数のレーザ源からのレーザパルスの連続的な重なりによって生成され、パルス間の遅延は単一の溶解および凝固サイクルを誘起するだけ十分短い。いくつかの実施形態において、非晶質シリコン膜はプラズマ促進化学蒸着を介して得られる。いくつかの実施形態において、広範囲のレーザパルスは、300ns全幅半値より大きいパルス長を持ち得る。
【0013】
いくつかの実施形態において、処理されたシリコン膜は、第2の選択された方向にシリコン膜を進める間、シリコン膜を完全に溶解するのに十分なフルエンスを持つレーザパルスでシリコン膜を照射することを含む方法によって処理されたシリコン膜である。いくつかの実施形態において、レーザパルスは複数のレーザ源からのレーザパルスの重なりによって生成される。
【0014】
いくつかの実施形態において、本方法は、第2の選択された方向に薄膜を進める間、第5レーザパルスと第6レーザパルスで薄膜の第3領域を照射することを含み、各レーザパルスは形成ビームを生成し、薄膜を部分的に溶解するのに十分なフルエンスを持ち、および第3領域は再凝固および結晶化して第3結晶化領域を形成し、第7レーザパルスと第8レーザパルスで薄膜の第4領域を照射し、各パルスは形成ビームを生成し、薄膜を部分的に溶解するのに十分なフルエンスを持ち、第4領域は再凝固および結晶化して第4結晶化領域を形成し、第5レーザパルスと第6レーザパルス間の時間間隔は第5レーザパルスと第7レーザパルス間の時間間隔の半分未満である。いくつかの実施形態において、第2の選択された方向は第1の選択された方向と反対であり、第3領域は第2領域と重なり、第4領域は第1領域と重なる。
【0015】
いくつかの実施形態において、第2の選択された方向は第1の選択された方向と同じであり、第3領域は第1領域と重なり、第4領域は第2領域と重なる。いくつかの実施形態において、本方法は第2の選択された方向に薄膜を進める前に第1の選択された方向に垂直な方向に薄膜を移動することを含む。いくつかの実施形態において、各レーザパルスは均一なエネルギー密度を持つ先頭部分を有するラインビームであり得る。いくつかの実施形態において、各レーザパルスはフラッド照射パルスであり得る。
【0016】
本開示の他の態様は、上記方法によって処理された薄膜に関する。本開示の他の形態は、上記方法によって処理された薄膜を持つ装置に関し、装置は薄膜の複数の結晶化領域内に配置された複数の電子回路を含む。いくつかの実施形態において、装置は表示装置であり得る。
【0017】
一態様において、本開示はレーザパルスを生成する一次および二次レーザ源と、基板上に薄膜を固定する作業面と、ビームパルスに対し薄膜を動かし、それによって薄膜の表面上でレーザビームパルスの伝搬方向を生成する台と、一次源から第1レーザパルスによって照射される可動台に載せられる薄膜の第1領域、二次源から第2レーザパルスによって照射される薄膜の第2領域、および一次源から第3レーザパルスによって照射される薄膜の第3領域を提供するために発するレーザと同期した台に対する命令を処理するコンピュータとを含む非周期的なレーザパルスを使用する薄膜処理システムに関し、処理命令は、第1、第2、および第3領域を照射するためにビームパルスに対して伝搬方向に膜を動かすために提供され、第1領域の中央と第2領域の中央間の距離は第1領域の中央と第3領域の中央間の距離の半分未満であり、第1、第2、第3レーザパルスは薄膜を部分的に溶解するのに十分なフルエンスを持つ。いくつかの実施形態において、台は一定速度で動く。
【0018】
本開示の他の態様は、既存の微結晶を欠いた非晶質シリコン膜を細かい粒子から成る膜に変換する方法に関し、本方法は、第1の選択された方向に非晶質シリコン膜を進める間、非晶質シリコン膜を部分的に溶解するのに十分なフルエンスを持つ広範囲のレーザパルスで非晶質シリコン膜を照射することを含み、細かい粒子から成る膜は、膜の厚さより短い平均横方向寸法を持つ粒子を持ち得る。いくつかの実施形態において、広範囲のレーザパルスは、300ns全幅半値より大きいパルス長を持ち得、更に、フラッド照射パルスである。いくつかの実施形態において、広範囲のレーザパルスは多数のレーザ源からのレーザパルスの遅延した重なりによって生成され、パルス間の遅延は単一の溶解および凝固サイクルを誘起するだけ十分短い。いくつかの実施形態において、非晶質シリコン膜はプラズマ促進化学蒸着を介して得られる。
【0019】
本開示の他の態様は、基板上に半導体薄膜を提供し、薄膜は基板に隣接する底面に位置する底界面と、底面と反対側の上面を持つことと、膜を完全に溶解する閾値の1.3倍大きいエネルギー密度を持つレーザビームで薄膜を照射し、エネルギー密度は膜を完全に溶解するよう選択されることとを含み、凝固の開始時、キャップ層が存在して半導体膜の上面で表面界面を形成し、照射と膜の完全な溶解の後、非均質核形成が上界面と底界面の両方で起こり、冷却時に非均質核形成により膜の底面で低欠陥シリコン粒子を形成する、薄膜処理方法に関する。いくつかの実施形態において、レーザビームは80ns、200nsまたは400nsより長いパルス継続時間を持つ。いくつかの実施形態において、半導体薄膜は、厚さ約100nmから約300nmの間のシリコン膜を含む。いくつかの実施形態において、基板はガラスまたは石英であり得る。いくつかの実施形態において、粒子は小さな等軸晶であり得る。いくつかの実施形態において、レーザビームのエネルギー密度は、局所的に完全に溶解する域値の1.4倍である。いくつかの実施形態において、キャップ層は、照射前に薄膜上面に薄い層を蒸着することによって形成される。いくつかの実施形態において、キャップ層は50nm未満の厚さを持つ酸化物層であり得る。いくつかの実施形態において、キャップ層は、酸素化環境において薄膜に照射することによって形成される。いくつかの実施形態において、酸素化環境は空気であり得る。いくつかの実施形態において、酸素化環境は酸素のみであり得る。いくつかの実施形態において、基板は絶縁膜によって覆われたパターン化された金属膜であり得、エネルギー密度は薄膜の完全に溶解する閾値の1.3倍より大きい。一態様において、本開示は上記方法によって作られたボトムゲート型TFTに関し、パターン化された金属膜はボトムゲートであり得、絶縁膜はゲート誘電体であり得る。
【0020】
この非周期的なシステムおよび方法は、高処理能力ELAおよび選択領域結晶化を可能にする。そのような処理は、アクティブマトリクス有機発光ダイオード(「AMOLED」)TVおよび超高画質液晶表示装置(「UD−LCD」)に対して要望される。これらどちらの商品にとっても、非晶質シリコンは性能と安定性を欠き、一方、現在の低性能な低温ポリシリコン(「LTPS」)技術は要求されるパネルサイズ(例えば、Gen8、最大2.2*2.5m2)において費用競争力があるとは見なされない。
【0021】
以下の記述は以下の図面を参照するとより容易に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1A】ELAを用いて得られ得るランダム微細構造を例示する。
【図1B】従来のELA単一走査を表す。
【図2】図2A−図2Cは本開示の一実施形態によるレーザパルスの例示的なエネルギープロファイルを表す。
【図2D】ワンショット照射プラズマ促進化学蒸着(PECVD)非晶質シリコン膜を表す。
【図3A】本開示の一実施形態による、非周期的なパルスELAシステムを表す。
【図3B】本開示の一実施形態による、非周期的なパルスELAシステムで使われるサンプルを表す。
【図4】本開示の一実施形態による、ビームパルスの例示的なプロファイルを示す。
【図5A】本開示の一実施形態による、非周期的なパルスELA処理を表す。
【図5B】本開示の実施形態による図5Aにおける領域590の分解図である。
【図6】本開示の一実施形態による、非周期的なパルスELA処理を表す。
【図7】本開示の一実施形態による、図5Aに記載されたような第1の非周期的なパルス走査を表し、膜の逆方向での第2走査も含む。
【図8】図8Aは本開示の一実施形態による、一照射後の膜の結晶構造を表す。図8Bは本開示の一実施形態による、図9Aにおける結晶構造体の図である。図8Cは本開示の一実施形態による、より高いエネルギー密度での一照射後であるが、まだPMCレジーム内の膜表面の原子間力顕微鏡(「AFM」)走査を表す。図8Dは本開示の一実施形態による図8Cにおける結晶構造体の図である。図8Eは本開示の一実施形態による、未溶解種結晶から横方向結晶化に際して形成された円形領域を示す。
【図9】本開示の一実施形態による、薄膜の界面応答関数を表す。
【図10】図10Aは本開示の一実施形態による、真空中における、300nm酸化物層を持つガラス基板上の150nm a−Siに対するFTRとBTRを表す。図10Bは本開示の一実施形態に従い、図10Bは真空での結果を表していないこと以外は図10Aと同様である。
【図11】図11Aは本開示の一実施形態による、1.32CMTの空気中および1.4CMTの真空中の300nm酸化面層を持つ200nm a−Si膜に対する、ナノ秒単位の時間(x軸)と正規化反射率値(y軸)のグラフを表す。図11Bは空気環境で得られる微粒組織の画像である。図11Cは真空環境で得られる微粒組織の画像である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本開示は、均一な多結晶膜を形成するために部分溶解結晶化および完全溶解結晶化を組合せた、非周期的なパルスレーザ技術を用いるシステムおよび方法に関する。いくつかの実施形態において、非周期的なパルスELAが既存の微結晶を欠いた非晶質成膜直後Si膜(例えば、低圧化学蒸着(LPCVD)、プラズマ促進化学蒸着(PECVD)、スパッタリング、または電子ビーム蒸着によって得られる膜)から微細粒子均質結晶膜を生成するために使われる。いくつかの実施形態において、微細粒子均質結晶膜の生成または非周期的なパルス照射方法のための前駆体膜の生成のいずれにも、フラッド照射方法が使われ得る。フラッド照射方法は、いかなる既存の微結晶をも欠いた非晶質シリコン膜(例えば、PECVD膜)が膜厚を超えた平均横方向寸法の粒子(すなわち、小さな柱状粒子)を持つ微細粒子均質結晶膜に2ステップで変形される、ツーショット部分溶解処理であり得る。フラッド照射方法は、いかなる既存の微結晶をも欠いた非晶質シリコン膜(例えば、PECVD膜)が膜厚未満の平均横方向寸法の微細粒子均質結晶膜に変形される、延長継続時間ワンショット部分溶解処理でもあり得る。フラッド照射方法は、膜の上と底の両方に酸化物界面を持つあらゆる種類の非晶質シリコン膜が低欠陥の小さな等軸晶Si膜に変形される、完全溶解処理でもあり得る。
【0024】
レーザの位置制御された連続起動を用いる、非周期的なパルスELA方法およびツールが説明される。システムは複数のレーザを使って結晶化プロセスにおける個別の非周期的なレーザパルスを生成するように実現され得、例えば、各レーザパルスは別々の部分的な溶解および凝固サイクルを生じる点で個別であり、パルス間の間隔が同じではない点で非周期的である。複数のレーザが協働するパルスシーケンスで使われ、単一の走査または複数の走査において膜の選択された領域を照射および結晶化する。複数の走査が、例えば緊密粒子サイズ分布を持つより均一な多結晶膜にをもたらすELAにおいて観測される複数の照射の累積効果からの利益を得るために、関心領域において、より多数の溶解および凝固サイクルに達することが望ましいだろう。
【0025】
非周期的パルス
レーザパルスの例示的なシーケンスを図2Aから図2Cに表す。y軸はエネルギー密度を表し、x軸は時間を表す。図2Aは、従来のELA処理において使われ得るレーザの周期的なパルス率を表す。周期的なレーザ反復率は、時間領域において均等に間隔を空けたレーザパルスパターンを結果としてもたらす。図2Bは、本明細書で開示される非周期的なパルス生成の例を示し、第2パルス105は第1パルス106と近接した時間関係で発生する。その後、第3パルス107が、第1パルス106と第2パルス105間の間隔より異なる時間間隔で発生する。図2Cは、レーザパルスのパルス率とレーザパワー(エネルギー密度)の両方が異なる場合の一実施形態を例示する。このように、照射された膜は、非周期的なパルス率と可変的な照射エネルギーを経る。第1パルス106と第2パルス105間の時間が比較的短いため、第1パルス106と第2パルス105によって照射される領域は重なりが増加する。
【0026】
第1パルス106と第2パルス105間の時間遅れは、第1パルス106と第3パルス107間の時間間隔の半分未満になり得る。いくつかの実施形態において、第1パルス106と第2パルス105間の時間間隔は、第1パルス106と第3パルス107間の時間間隔の10分の1未満、20分の1未満、または100分の1未満である。第1パルス106と第2パルス105間の時間遅れは、約3マイクロ秒から約1ミリ秒、約5マイクロ秒から約500マイクロ秒、および約10マイクロ秒から約100マイクロ秒であり得る。
【0027】
このように、図2Bおよび図2Cは、2つの近接配置または2つのレーザパルスの「列」を用いた非周期的なパルスパターンを表すが、3から5以上のレーザまたはレーザ空胴に対応する、より多数の近接配置されたパルス(例えば、3から5以上)が用いられてもよい。そのような実施形態において、異なるレーザ(例えば、2つの異なるレーザエネルギー源または同じレーザエネルギー源の2つの異なるレーザキャリアからのレーザビーム)からのより多くの近接配置されたパルスが使われると、対象領域は対応するより多くの回数だけ照射される。例えば、n個のレーザ源からのnパルスがレーザパルスの列を形成するために近接配置され得、単一の領域が単一の走査においてn回の照射を受ける。ビームは従来のELA処理と同様の幅を持ってもよい。
【0028】
パルス列中の2つの連続したパルスは同じエネルギー密度である必要はない。例えば、膜が第1パルスによりまだ熱い場合、第2パルスは第1パルスよりも低いエネルギー密度であり得る。同様に、より高いエネルギー密度が第1パルスに際しての光学性質の変化に対する補正のために使われてもよい(非晶質シリコンは結晶シリコンよりもわずかに良好にUV光を吸収する)。従って、第2パルスのエネルギー密度に対して適切な選択をすることは、膜が同程度の溶解をするように、両方の効果と、可能性として他の要因を考慮し得る。ここで、溶解の度合いは溶解の詳細とは無関係で溶解を測定することで理解される。溶解の詳細は、前駆体の相(非晶質または結晶)、不均質性(例えば、一様に欠陥を有するか、またはより大きくより良好な粒子によって囲まれた欠陥のあるコアを持っているか)、および表面形状(滑らかか荒いか、例えば、光の波長と同様な周期性を持っている)に関数として大幅に変化し得る。同程度の溶解は、したがって、第2パルス間の溶解の広がりが第1パルスのそれ(例えば、膜の約80パーセント)と同等である場合に達成される。より均一な多結晶膜をもたらす累積効果からの利益を目的とする複数の走査処理において、パルスのほとんどが、処理が最も効率的となるように、同程度の溶解をもたらすことが望まれる。
【0029】
したがって、図2Cに示すように、第1レーザパルスと第2レーザパルスは異なるエネルギー密度を持ち得る。具体的には、図2Cは、第1レーザパルスが第2レーザパルスよりも小さいエネルギー密度を持つことを表す。しかしながら、いくつかの実施形態において、第2レーザパルスが第1レーザパルスよりも小さいエネルギー密度を持つ。更に、複数の走査処理において、第1パルスと第2パルスのエネルギー密度間のオフセットは異なる走査において異なる、または無くてもよい。例えば、第1走査における第1および第2パルス間のエネルギー密度のオフセットは、光学特性の変化に対する補正のために選択され得、一方、第2走査においてオフセットは温度に対する補正のために選択され得る。いくつかの実施形態において、2つのパルスは異なるエネルギー密度を持ち得るにもかかわらず、第2のより低いエネルギーパルスが膜において、膜内の第1パルスからの残留熱によって、第1のより高いエネルギーパルスと同量の溶解をもたらし得る。
【0030】
一実施例において、本システムは、時間領域において近接配置された一連のパルスを生成するために、複数のレーザ源からの起動協調されたパルスを使うことで非周期的なレーザパルスを生成する(例えばチューブのような複数のレーザ空胴を持つ単一のレーザ源を使うことも可能である)。複数のレーザ源は、単一のレーザシステムに組み入れられてもよい。レーザシステムは、既定の方法で基板を照射する技術を制御するコンピュータを使うコンピュータ制御システムであり、例えば、コンピュータは、レーザの発射、台の移動、および1以上のレーザビームを生成するための1以上のレーザ空胴を制御する。各レーザビームは一つのレーザ源に対応する。各レーザビームは、単独のレーザまたは一つのレーザシステム内に格納された複数のレーザ空胴の一部であるレーザ空胴から生成され得る。
【0031】
複数のレーザ空胴を持つツール(例えば、チューブ)は、米国特許第7,364,952号「薄膜処理システムおよび方法(Systems and Methods for Processing Thin Films)」(2008年4月29日発行)に記載されたように、(1)複数のパルスを同時に起動し後で組み合わせることによってパルスエネルギーを増やすこと、(2)様々なチューブの起動を遅れさせ、後でそれらを組み合わせることによってパルス継続時間を増やすこと、が以前に開示されている。すなわち、パルスは変更された単一の溶解および凝固サイクルを提供するために組み合わされる。非周期的なパルスELAは、別々の溶解/凝固サイクルにおいて様々なレーザのパルスを使う点で異なる。しかしながら、パルスは、時間領域において十分近接しているので、台が高速度で移動している間、それらが大幅な重なりを示す。
【0032】
更に、非周期的なパルスELA方法およびツールは、電子機器に形成される膜の領域のみを結晶化するために、膜の選択領域結晶化を行うためにも使われ得る。非周期的なパルスELA方法およびツールは選択領域結晶化を提供し、膜の第1領域での結晶成長をもたらし、それに続くレーザの反復率によって決まる途切れ、そしてその後、2以上のレーザの第2パルス内の大幅な重なりを提供して、膜の第2領域での結晶成長をもたらす。レーザパルス間のタイミングは、以下に詳細に記載するように、照射された領域における非周期的なレーザパルスシーケンスと大幅な重なりを起こす。そのような方法およびシステムは、高処理能力のELA処理で使用できる。
【0033】
選択領域結晶化において、膜は、(本明細書では記載しないが、後の処理において)電子素子が作られる位置で結晶化する。しかしながら、すべての電子素子が等しく均一な、または一様に等しい導電材料を必要とする訳ではない。例えば、小型TFTは、結晶均一度に関して、大型TFTや大型コンデンサより更により多くを要求し得る。更に、電流駆動で使われるTFTは、スイッチングで使われるTFTより良い均一度を必要とし得る。したがって、結晶化される特定の領域の全領域のうち、一部分のみが高い結晶均一度と導電率の領域を得るため多数のレーザパルスを用いて結晶化することが必要になり得、一方、残部はより少ないパルスまたは単一のパルスで処理され得る。選択領域結晶化非周期的パルスELAは、膜の選択された領域を走査するための枠組みを提供し、それによって処理時間が減少する。
【0034】
非周期的パルスELA
非周期的なELAシステムは、以下の特徴の一以上を有する。つまり、複数のレーザまたはレーザチューブ、および短く連続するパルスを持つために後のパルスの起動を遅らせる手段のうち一以上を有する。システムは、レーザビームパルスが基板の特定の位置を照射するようにパルスの起動を位置制御することも有する。時間的に近接配置された2つのパルスのタイミングは、膜の照射された部分がパルス間で凝固されるようにすることが望ましく、一方、位置制御は、例えば、画素TFTや回路の列を作るために、照射された領域が基板上に適切に位置することを確実にする。レーザビームパルスは、パルスのシーケンスが選択された領域と重なるのに十分なビーム幅を持つトップハットビームプロファイルを持つことが更に望ましい。
【0035】
レーザ源の数は、処理能力、レーザのパワー、パネルのサイズ、画面のサイズ、システム設計、およびツールメンテナンスのような様々な要因に基づいて選ばれ得る。レーザ数を増やすと、一般的に、結晶化率を高める結果になるが、光学要素の数を増やす必要もあり、より複雑で費用のかかるシステム設計をもたらすだろう。また、レーザ数を増やすと、例えば、チューブ交換等の作業がより頻繁に必要になるため、ツールの動作不能時間を増やすことにもなり得る。レーザの数に対する例示値は、30、40、50インチ以上の大きさの直径を持つ画面を作るために、2m2およびできれば5から7.5m2の大きさより大きくなり得るガラスパネルを処理するためにそれぞれが約600W以上の電力を持つ2から4以上のレーザであり得る。
【0036】
非周期的なパルスELAツールは、従来のELAおよび/またはUGSツールを超える以下の利点を有し得る。
1.予め選択された領域への効率的な電力伝達:位置制御の効果により、画素TFT/回路間の領域が不必要に結晶化されることが無くなる。これはより高い有効結晶化率をもたらす。
2.ビーム端に関連するアーチファクトの除去:ビーム端は画素TFT/回路領域に当たらないので、その中の結晶化領域がすべて全く同じパルスシーケンスを受ける。
3.パルスシーケンスの最適化:領域は、複数のレーザ源からのパルスシーケンスによって、および多数の走査の間照射され、そのことによりシーケンスが最適化され得る(例えば、パルスエネルギー、パルス継続時間、パルスの余熱)。
4.走査間に垂直方向の変位を行うことによって、長軸上のビームの不均一性を軽減すること(短軸上のビームの不均一性も、走査内、または走査間に効果的な並行変位によって軽減され得る。すなわち、関心領域に対するビームの横位置を移すことによって)。
【0037】
複数の走査が、非周期的なパルスELAにおいて、満足な材料均一度を得るために通常は必要とされる。非周期的なパルスのSAC操作は、従来のELAより高い処理能力率をもたらす。更に、許容可能な均一の結晶構造体を得るために必要とされる非周期的なパルスELAでのパルス数は、従来のELAで要求される数よりも少なくなり得る。従来のELAにおいて、ビーム端が関心領域と重なり、走査方向に沿って照射される領域の結晶構造における変動をもたらす。結晶構造の変動については、例えば、ImとKimによる「Phase transformation mechanisms involved in excimer laser crystallization of amorphous silicon films, Appl. Phys. Lett. 63, (14)」(1993年10月4日)で考察されており、粒子サイズの変動が部分的に溶解した低圧化学蒸着(「LPCVD」)膜におけるエネルギー密度の関数として考察された。LPCVD非晶質Si膜は、エネルギー密度とともに増える粒子サイズを持つ膜にさせる結晶化を引き起こす小さな微結晶を含むと見られる、と説明されている。プラズマ促進化学蒸着(「PECVD」)膜において、溶解および凝固処理は、更に、そのような微結晶の欠如によって複雑にされる。したがって、結晶化に先立って、核形成処理を通じて結晶の形成が先行する。核形成密度が低い場合、例えば、これは、図2Dに示すワンショット(すなわち、1つのレーザパルス)照射PECVD非晶質Si膜の縁で可視であるような円板状の結晶構造体をもたらすだろう。図2Dは、ワンショットPECVD非晶質Si膜の縁領域120を示す。この縁領域120は、非晶質Si部分122と結晶Si部分124の両方を持つ。しかしながら、非晶質Siと結晶Si間の遷移領域126は鋭利な縁ではなく、結晶と非晶質材の混合物を含む不均質領域である。したがって、第1照射後の膜の不均一性は、粒子サイズの変動および/または円板状の結晶構造体があることによって影響される。そのような不均一性は、後の放射では容易に除外され得ない。従来のELAでは、10以上もの数のパルスの後でさえ、第1パルスビーム端のエネルギー密度勾配の効果は、まだ可視であり得る。したがって、多数のパルスが、第1パルスビーム端の影響を消すために必要である。
【0038】
本明細書で開示されるように、非周期的なパルスELAを用いるSACでは、等しく均一な結晶化膜を得るためのパルス数はより少なくなり得る。以下に更に詳しく記述するように、ラインビームの短軸中のエネルギープロファイルは、エネルギー密度が次第に変化する前縁および後縁および比較的一定のエネルギーの中央の平らな領域を含む。本明細書で使用される「ラインビーム」という語は、ビームの長さより大幅に短い幅を持つビームのことを言い、すなわち、ビームは大きなアスペクト比を持つ。従来のELAでは、ビーム端は、材料不均一度の重大な源である。非周期的なパルスELAでは、ビーム端は関心領域外に位置するため、関心領域が第1パルスのトップハット部分の部分で照射される。更に、ビームのエネルギー密度は、材料均一度を所望のレベルに達するために必要なパルスの数を減らすように、累積処理に対して最も均一な出発物質を生成するよう最適化され得る。
【0039】
非周期的パルスELAを実行するシステム
図3Aは、非周期的なパルスELAシステムを表す。システムは、例えば、308nm(XeCl)、248nmまたは351nmで動作する複数のレーザパルス源110、110’を含む。一連のミラー206、208、212は、y方向に走査可能であるサンプル台180にレーザビームを向ける。ビームは、例えば、約360mm、約470mm、約720mmまたは、1、2、またはそれ以上の走査におけるガラスパネルを処理するのに適切ないかなる長さを持つラインビームの形に形成される。システムは、レーザビームの空間プロファイルを制御するために使われ得るスリット140およびスリット140の反射を読み取るためのエネルギー密度測定器216のを含んでいてもよい。オプションのシャッター228は、サンプルが無い場合、または照射が必要でない場合に、ビームをブロックするために使われ得る。サンプル170は、処理のために台180上に配置され得る。更に、ホモジェナイザーが、より均一なトップハットビームプロファイルを提供するために使われ得る。減衰器が使われ得る。ビームエネルギーは、レーザを直接制御することによって制御される。台180は、線形移動台であり得、横方向に移動する機能を持ち得る。任意で、システムはパルスエクステンダー213およびミラー214を、延長継続時間パルスを生成するために含み得る。
【0040】
サンプル移動台180は、好ましくは、平面y方向に、ならびに任意でx方向およびz方向にサンプル170を移動させるコンピューティング構成によって制御される。このようにして、コンピューティング構成は、照射ビームパルスに対するサンプル170の相対的な位置を制御する。照射ビームパルスの反復とエネルギー密度も、コンピューティング構成によって制御される。当業者によって理解されるように、ビーム源110、110’(例えば、パルスエキシマレーザ)の代わりに、照射ビームパルスは、以下に記載される方法で、サンプル170の半導体(例えば、シリコン)薄膜の選択された領域を少なくとも部分的に溶解するのに(および、可能性としてそれらの全厚さを通して完全に溶解するのに)適切な短エネルギーパルスの他の既知な源によって生成され得る。そのような既知の源は、パルス個体状レーザ、断続連続波レーザ、パルス電子ビーム、およびパルスイオンビーム等であり得る。通常は、ビーム源110、110’によって生成される放射ビームパルスは、サンプルレベルにおいて400mJ/cm2から1J/cm2または1.5以上の範囲で、10から300n秒の範囲内のパルス継続時間(FWHM)、および10Hzから300Hzから600Hzまたは1.2kHz以上の範囲内のパルス反復率でビーム強度を提供する。
【0041】
図3Aの例示的なシステムは、以下に更に詳細に記載される方法で、サンプル170の半導体薄膜を処理するために使われ得る。マスク/スリットが、結果として得られるマスクされたビームパルス分布を定義するため、および、半導体薄膜の部分の隣接する部分および縁領域そのようなマスクされたビームパルスによって照射され、その後、結晶化される際に、それらの部分の不均一度を減らすために、本開示の例示的なシステムによって使われ得る。
【0042】
例えば、非周期的なパルスELA処理のラインビームは、約100未満から300ミクロンから、約400から600ミクロン以上の幅を持ち得る。ELAビームのフルエンスは、膜の完全な溶解を誘起しないよう選択される。従って、ELAビームは、所定の膜における完全な溶解を誘起するフルエンス値より、約5パーセントから30パーセント以上だけ低いフルエンスを持つ必要がある。完全な溶解を誘起するフルエンス値は、膜の厚さ、およびパルスの継続時間に左右される。更に、ELAビームは、約300Hzから約600Hzの比較的低い反復率を持ち得る。開示されたハイパワーレーザは、パルスがその領域内で膜を溶解し得るように、パルス毎に、照射される領域の長さにわたって適切なエネルギー密度を提供するのに十分なエネルギーを提供する。
【0043】
ELAラインビームは、JSW(株式会社日本製鋼所、日本、東京都品川区大崎一丁目11番1号 ゲートシティ大崎ウエストタワー)から入手可能なシステムで使われるような、比較的低い周波数レーザ源から生成され得る。TCZから入手可能であるような高周波数レーザは、パルス反復率およびTFTや回路のピッチによって決定される、必要とされる走査速度が非常に高くなるので、非周期的なELA処理にあまり適さない。
【0044】
図3Bに例示されるように、サンプル170の半導体薄膜175は、例えばガラス基板172上に直接配置され得、それらの間の1以上の中間層177上に含み得る。半導体薄膜175は、その少なくともある必要な領域が、それらの厚さ全体を通して少なくとも部分的に、または完全に溶解され得る限り、100オングストロームから10,000オングストローム間の厚さを持ち得る。
【0045】
本開示の例示的な実施形態において、半導体薄膜175は、シリコン(例えば、非晶質シリコン薄膜)、ゲルマニウム、シリコンゲルマニウム(SiGe)等で組成され得、それらすべては、低レベルの不純物を含むことが好ましい。半導体薄膜175のために他の元素や半導体材料を使用することも可能である。半導体薄膜175のすぐ下に配置される中間層177は、酸化シリコン(SiO2)、窒化シリコン(Si34)、および/または酸素、窒素、他の物質の混合物で組成され得る。
【0046】
ビームパルス200の例示的なプロファイルを図4に示す。それは、図3Aに例示されたシステムの光学素子によっても形成され、および/またはマスクによっても生成され得る、この例示的な実施形態において、ビームパルス200のエネルギー密度は、完全に溶解する閾値、すなわち、膜が完全に溶解するビームパルスのエネルギー密度より低いエネルギー密度のプロファイル220を持つ。特に、このプロファイル220は、上部205、前縁部分210、および後縁部分215を含む。この実施形態の上部205は、その中のエネルギー密度がほぼ一定である幅Cにわたって広がる。幅Cは、100ミクロンから1ミリメートルの間になり得る。前縁部分210は、距離D1(例えば、50ミクロンから100ミクロン間)にわたって広がることができ、後縁部分215は、距離D2(50マイクロメートルから100マイクロメートル間)にわたって広がり得る。前縁部分210は、エネルギー密度がほぼ一定の場合の点から結晶化閾値のより低い点、すなわち、膜が結晶化するビームパルスのエネルギー密度まで広がるD1Pの長さを持つ部分を持つ。同様に、後縁部分215は、結晶化閾値の点からエネルギー密度がほぼ一定の場合のより高い点まで広がるD2Pの長さを持つ部分を持つ。上部205は、一般的に、ビームの「トップハット」と称される。
【0047】
システムは、薄膜の複数の部分の同時走査を可能にする複数の投影レンズも含み得る。薄膜の複数の部分の同時走査が可能なシステムは、米国特許第7,364,952号「薄膜処理システムおよび方法(System and Method for Processing Thin Films)」に開示されている。上記方法およびシステムは二重のレーザ源を用いて記載されたが、追加のレーザも使われ得る。
【0048】
非周期的なレーザパルスパターンは、好ましくは、同じ反復率の複数のレーザのオフセット発射によって得られる。上記のように、レーザは、コンピュータシステムによって制御され、図2Bから図2Cに表されたパルスエネルギープロファイルを生成し得る。上記のように、開示された実施形態において、2つのレーザチューブが描写されているが、3つ以上のレーザチューブを非周期的なパルスELAに用いることができる。例えば、それぞれが別々のレーザパルスを発する3、4、5、それ以上のレーザチューブが、各走査の間、膜の各部分上に3、4、5、それ以上におよぶ照射を提供するために使われ得る。
【0049】
膜170は、非晶質または多結晶性半導体膜、例えば、シリコン膜であり得る。膜は、連続被膜、または不連続膜であり得る。例えば、膜が不連続膜である場合、リソグラフィーでパターン化された膜、または選択的に蒸着された膜であり得る。膜が選択的に蒸着された膜であるなら、例えば、化学気相蒸着、スパッタリング、またはシリコンに基づくインクのインクジェットプリント等の溶液処理された薄膜を介してなされる。
【0050】
非周期的パルスELA方法
図5Aは、非周期的なパルスELA処理を表す。図5Aは、2つのレーザパルスの2組によって照射された膜の例示的な図を示す。図において、第1の2つのレーザパルスはある時間的に共に近接して発生し、遅延(その間基板が矢印980によって示される−y方向に動き続ける)の後で、第2の2つのレーザパルスも時間的に共に近接して発生する。処理は少なくとも4つの照射ステップを含み、その照射ステップは、一次レーザからのパルスに対応する2つの照射ステップ(ステップ1と3)、および二次レーザからのパルスに対応する2つの照射ステップ(ステップ2と4)からなる。
【0051】
図5Aは、図3Aのシステムの光学素子によって形成された、および/またはマスクによってパターン化されたライン型ビーム164のパルスに対するサンプル170の薄膜175の連続的な移動を例示する。図5Bは、図5Aにおける領域590の分解図である。サンプル170上に提供される半導体薄膜175の照射のこの例示的な図において、サンプル170は、ライン型ビーム164の方向に対しマイナスy方向(矢印980)に移動する。サンプル170が、ライン型ビーム164によって薄膜175の第1行510に示されるような位置に、このような方法で移される場合、ビーム源110は、一次レーザ源110からの第1ライン型ビームパルス410によって、半導体薄膜175の第1行510で1以上の部分511から519を照射し、少なくとも部分的に溶解するために、コンピューティング構成によって発動される。図5に示す第1ライン型パルス410のプロファイルと長さは、図4に示すパルス200のプロファイルと長さに実質的に対応する。第1パルス410のトップハット部分205の幅Cが、領域910内の部分511から519の全断面を照射し、部分的に溶解するのに十分広いことが好ましい。これらの部分は、それらが画素を確定するために使われ得るようにするため、その中のある構造(例えば、TFT)に配置するよう指定され得る。部分的に溶解された再凝固部分は、小さな粒子領域を含む可能性が高いであろうが、その中は比較的均一な物質を含む。溶解した部分511から519は、再凝固し、結晶化し、それらがその中で均一な結晶粒成長をする。
【0052】
次に、二次レーザ源110’からの第2ラインビームパルス410は、薄膜175に照射され、薄膜175の部分的な溶解を誘起する。第2ラインビームパルス410のトップハット部分は、薄膜175の第2領域920に照射され、部分511―519の全断面を部分的に溶解する。図5に示すように、領域910と領域920は、大幅な重なりを持ち、第1結晶化領域960を形成する。開示した非周期的なパルスELA処理において、第1領域と第2領域間の重なりは、70パーセント、85パーセント、90パーセント、95パーセント、または99パーセントよりも大きくなり得る。
【0053】
上記のように第1行510がライン型パルス410と410’を使って照射され、部分的に溶解した後、サンプル170は、(コンピューティング構成の制御を介して)マイナスy方向に移され、ビーム164が、サンプル170上に提供される半導体薄膜175の第2行520に当たる。第1行510に関し、第2行520への到達に際し、一次レーザ源110が、第1行510の照射に関し、上記と実質的に同じ方法で、第2行520の領域940内の1以上の部分521−529を照射、および少なくとも部分的に、または完全に溶解する一次レーザから第3ライン型パルス420を生成するためにコンピューティング構成によって発動される。その後、二次レーザ源110’からの第4ラインビームパルス420が、薄膜175を照射し、部分521−529を含む薄膜175の部分的な溶解を誘起する。第4ラインビームパルス420のトップハット部分は、薄膜175の第4領域950を照射する。図5に示すように、第3領域940および第4領域950は、大幅な重なりを持ち、第2結晶化領域970を形成する。開示した非周期的なパルスELA処理において、第1領域と第2領域間の重なりは、70パーセント、85パーセント、90パーセント、95パーセント、または99パーセントよりも大きくなり得る。
【0054】
サンプル170のこの移動は、(ライン型ビーム164の照射を、半導体薄膜175の第1行510から第2行520へ動かすために)距離Dのにわたって行われる。距離Dを介したサンプル170の移動は、サンプル170の他の行の間で行われるので、距離Dは画素行周期、または画素ピッチと言うこともできる。
【0055】
ビーム164によるその照射に関するサンプル170の移動は、連続的に(例えば、止まることなしに)行われ得る。コンピューティング構成がレーザ110、110’は制御し、既定の周波数に基づいて対応するパルス410、410’、420、420’を生成する。このようにして、薄膜175の各行510、520がパルスによって正確に照射されるように、ライン型パルス410’、410、420’、420による半導体薄膜175の照射に関し、サンプル170の連続移動の速度を確定することが可能である。例えば、サンプル170の移動速度Vは、次の通りに定義することができる。V=D*flaser。ここで、flaserは、各レーザの周波数である。したがって、距離Dが200マイクロメートルでflaserが300Hzの場合、速度Vは約6cm/秒となり、一定速度となり得る。
【0056】
ビーム164によるその照射に関し、サンプル170が連続的に移動する必要はないが、一次レーザ源110および二次レーザ源110’の起動は、移動台180によって提供される位置決め信号に基づいて制御され得る。この信号は、ライン型ビーム164によるその照射の位置に対するサンプル170の位置を指示し得る。そのような信号に関連づけられたデータに基づいて、コンピューティング構成は、レーザ源110、110’の起動、およびサンプル170への移動を指示し、半導体薄膜170の特定の部分(例えば、行)への効果的な照射を達成することができる。したがって、半導体薄膜175の少なくとも一部への位置制御された照射は、ライン型ビーム164を使って達成され得る。
【0057】
4つの照射はすべて、領域を部分的に溶解し、その後、溶解した領域は、すぐに凝固して結晶化領域を形成する。第1領域910と第2領域920が重なる薄膜175の領域は、第1結晶化領域960を形成する。第3領域940と第4領域950が重なる薄膜175の領域は、第2結晶化領域970を形成する。
【0058】
第1および第2レーザパルスの膜速度および反復率(周波数)により、膜上の後の結晶化領域の位置が決まる。1以上の実施形態において、第1および第2結晶化領域960、970も重なり、その場合、膜がy方向に走査されると、膜表面全体が結晶化され得る。
【0059】
図5Aに示すように、第1および第2結晶化領域960、970は重ならない。したがって、非周期的なパルスシーケンスを、ある関心領域(例えば、ディスプレイやセンサ配列のようなアクティブマトリクス装置内の画素TFTまたは回路511−519、およびRFRまたは回路521―529)のみを選択積に結晶化するために使うことができる。このSAC実施形態において、第1および第2結晶化領域960、970間に重なりはない。重なりがないので、サンプルが保持される台はより速い速度で動くことができ、マトリクス型電子装置の周期を合わせるために、第1および第2結晶化領域960、970間のスペースを増やす。台速度のそのような増加により、全体的な処理能力が大きく増加し得る。例えば、ディスプレイの画素配列において、電子装置の密度はかなり低く、例えば、数百マイクロメートル以上か、例えば、1ミリより大きいかそれ以上の画素ピッチを持ち、処理能力の大きな増加は、それらの領域のみを結晶化することによって達成することができる。したがって、台は、与えられたレーザパルス率に対しより速いスピードで動くことができ、膜上の選択された領域の完全な結晶化を達成する。SAC非周期的なパルスELA処理システムの処理能力に対する例示値は、本出願の実施例部分で参照される。したがって、非周期的なパルスSACの処理能力向上は、大型テレビの製造で必要となるような大きなパネル、例えば、Gen8パネル(約2.20*2.50m2)に対してより競争力のある処理能力を可能にする。
【0060】
図6は、第1第3ラインビームパルス1000、1010が第2第4ラインビームパルス1020、1030よりも低いエネルギー密度を持つこと以外、図5Aに示す走査と同様の走査を表す。この図は、図7Cに表されたエネルギー密度に対応する。エネルギー密度は、完全な溶解閾値の約20パーセントから約70パーセントの範囲になり得る。一般的に、非周期的なパルスELAにおいて、第1の溶解および凝固サイクルは、低欠陥密度を持つ十分な均一度の材料となるELAでの累積処理の利益を得るように、最も均一な結晶構造体を提供するように最適化され得る。例えば、第1パルスは、完全な溶解閾値より高いエネルギー密度になり得る。例えば、そのようなより高いエネルギー密度は、単一の溶解および凝固サイクルのみをもたらすために、2つの第1パルスを同時に発射することによって容易に達成され得る。同様に、2つの第1パルスは、特に、出発物質がPECVD蒸着a−Si膜である場合、さらに部分的に溶解した材料の均一度をもたらし得るより長いパルス継続時間を持つ組み合わせられたパルスを形成するように、小さな遅延を伴って引き起こされ得る。
【0061】
図7は、図5Aに記載したような第1非周期的なパルス走査を表し、膜1100の逆方向への第2走査も含む。図7の第1走査において、領域1110、1112、1114、1116、および1118が、第1方向1120に走査が続くと照射される。図5Aに関して説明したように、5つの領域1110、1112、1114、1116、および1118のそれぞれは、第1ラインビームパルス1122によって照射された領域、および第2ラインビームパルス1124によって照射された領域に対応する。各照射は、照射された領域の部分的な溶解と、その後、結晶化をもたらす。第1ラインビームパルス1122によって照射された領域、および第2ラインビームパルス1124によって照射された領域によって形成された重なり領域は、第1領域1110に対応する。膜の5つの領域すべてが第1走査で照射された後、膜はプラスx方向に移され、第2走査が第1走査と逆の方向、つまり矢印1130の方向に起こる。複数の走査を行う従来のELA技術は、国際公開第2010/056990号「薄膜の結晶化システムおよび方法(Systems and Methods for Crystallization of Thin Films)」に開示されている。いくつかの実施形態において、膜は走査の前にx方向に移動しない、または、膜は第1および第2走査の間にマイナスx方向に移され得る。図7に示すように、第2走査は、照射された領域1132、1134、および1136等をもたらす。この複数のパス走査により、より高い品質の結晶膜を提供できる。膜は、1、2、3、4、5、またはそれ以上の回数、走査され得る。
【0062】
このように、非周期的なパルスELAシステムは、複数の走査を実行し、所望の回数のパルスに達することを可能にし、例えば、4つのレーザチューブシステムは、5つの走査処理で使われ、膜の単位面積当たり計20パルスに達することができる。本技術により膜の各部分に対するパルスエネルギーシーケンスの正確な制御が可能となる。例えば、非周期的なパルスELAにおいて、第1走査間のパルスの各列における第1パルスは、後の走査より低いフルエンスであり得る。いくつかの実施形態において、表面に当たる最後のパルスは、ELA処理された膜の表面粗さを減少するために、表面の溶解を誘起するように、より低いエネルギー密度である得る。さらに、画素TFTまたは回路やそれらのあらゆる部分の各部分は、ビーム端によるそれらの照射を完全に避けることができるので、全く同じパルスエネルギー密度シーケンスを持ち得る。関心領域に当たるビーム端を避けることは、累積処理をより迅速に望ましい均一度を持つ材料に収束することができ、それにより、そのような材料に対する全パルス数は、従来のELA処理に比較して少なくすることができるということを意味する。このように、本方法の利点は2つあり、それはつまり、選択領域結晶化の結果としてパルスの平均数を減らすこと、およびビームの端による照射を避けることにより第1パルス後の材料の初めの不均一度が少なくなるため、関心領域内のパルス数を減らすことである。
【0063】
以前に述べられたELA方法と比較して、非周期的なパルス選択領域結晶化ELAにおけるビーム幅は、しばしばより狭くすることができ、結晶化される領域の幅と同じ程度広いだけで十分である。したがって、余剰エネルギーが、ビーム長を増やすために使うために利用可能である。ビーム長をより長くすることは、より長い寸法の投影レンズ使うことで実現可能である。また、ビームパルスの走査間に膜内における複数の領域を同時に結晶化するように、ビームを別々の光パスに分けることができる。走査に際して処理された領域の長さを増やすことで、膜を完全に結晶化するよう要求される走査の全数を減らすことができる。
【0064】
更に、選択領域結晶化非周期的パルスELAは、関心領域がビームの後縁によって照射されないようにビームのトップハット部分を精密に整列するために使うことができる。理想的には、関心領域の第1照射は、ビームのトップハット部分で行われるか、少なくとも、膜の結晶化閾値を超える同様の全エネルギー密度であるラインビームの一部で行われるべきである。このようにして、ビーム端が膜上の関心領域を照射しないように膜を選択的に照射することによって、膜内の要求された微粒組織および均一度を生成するために必要とされる走査の回数を減らすことができる。
【0065】
いくつかの実施形態において、光学素子は、画素TFTまたは画素回路(または、少なくとも、後で画素TFTまたは回路が製造される位置)の別の列にそれぞれ向けられた2つ以上のラインビームにビームを分けるために使うことができる。このように行うことにより、単位面積当たりパルス数が2倍の2つのラインビームにビームを分けて使うことで、完全な結晶化に達するために必要な走査をより少なくすることを達成できる。多数の並列ラインビームを、画素TFT/回路の隣接する列に当てるために使うことができ、または、隣接しない列に影響を及ぼすために使うことができる。多数のラインビームは、ビームを分割する周知の方法を使って生成でき、別々の光経路にそれらを向けることができる。分割されたビームは、光パスの一部を通って、ともに進むために再結合することもでき、例えば、投影レンズを通る場合、または分割後すぐにでも再結合することができる。分割されたビームは、互いに並列に、および/または、互いに対しわずかにオフセットした角度の下で、進むことができる。ビーム長を維持しながらビームを分割することは、約m分の一の幅を持つビームをもたらす(mはラインビームの数である)。
【0066】
非周期的なパルスELA方法の特定のパラメータは、ビーム幅に左右され、次いでビーム幅は結晶化される領域の幅に左右され得る。例えば、アクティブマトリクス装置のサイズは、ある画素寸法を示唆することができる。その画素寸法により、非周期的なELA処理能力の利点を活かす新しい画素レイアウトをもたらすことができる。例えば、660マイクロメートルの画素ピッチを持つ55インチディスプレイは、300マイクロメートル程の広さの結晶化領域を必要とし得る。非周期的なELA処理結晶化スキームを用いてより適切なレイアウトになるように画素寸法を更に縮め、設計を最適化することで、例えば、150マイクロメートル以下にこの領域の寸法を減らすことができる。更に、最適化することは、2つの隣接する列内の画素に対して異なるレイアウトを有することができ、単一の照射内でそれらが重なることができるように、隣接する列のTFT/回路は互いにより近接して配置され得、その後、次に照射される領域に進む距離は更に長くなり得る。
【0067】
画素TFT以外に、例えば行および列ドライバを作るために、TFTはディスプレイの周辺部にあるのも望ましいだろう。行ドライバは、ビデオ信号を処理するためにより高い性能を持つ必要があるだろう。いくつかの実施形態において、SACは、ディスプレイの周辺部に所望のドライバを統合するために、結晶化された材料の十分な領域を提供する。別の実施形態において、非周期的なパルスELAの後、別の結晶化ステップが続き、ディスプレイの周辺部をより完全に結晶化することができる。このことは、これらの領域において従来の走査によるELAを実行することによって、同じレーザおよび光パスを使って行うことができ得る。あるいは、このことは狭いラインビームの形状をした固体状レーザを使って、順次横方向結晶化(「SLS」)またはELAを実行することができ得る。あるいは、2D投影放射ツールを使って、例えば、2ショットSLS(すなわち、米国特許出願第12/063,814号「高周波レーザを用いた薄膜の均一な連続的横方向結晶化のためのシステムおよび方法(Systems and Methods for Uniform Sequential Lateral Solidification of Thin Films Using High Frequency Lasers)」(2008年10月31日出願)に示される、単位面積当たり2つのレーザパルス)、またはドットSLS(すなわち、米国特許第7,645,337号「結晶方位制御されたポリシリコン膜の生成システムおよび方法(Systems and Methods for Creating Crystallographic−Orientation Controlled Poly−Silicon Films)」(2010年1月12日発行)に示される、ドットパターンを持つマスクを用いるSLS)を実行することができる。それらは、精密ステージから利点を得るために同じツールに統合することができる。本明細書で使われる、xショット処理は、膜の各対象領域をx回照査することを意味する。
【0068】
上記のように、選択領域結晶化は、例えば、行列型電子素子内等の関心領域のみを結晶化することを含む。したがって、結晶化領域の位置は、行列型電子素子または回路内のノードの位置に対して整列される必要がある。したがって、SACを実現するために、サンプル整列が実施されるべきである。サンプル整列のステップは、様々な技術によって達成することができる。一つの技術において、サンプル配列は、電子素子を作る別の処理ステップでサンプル位置を再現することができるような方法で、サンプルを配置する機能を更に持つ結晶化システムを使って確立することができる。よく行われるの方法の一つは、結晶化前、および結晶化プロセスが整列される前に検出された基準、または配列の印をパネルが備えることである。一般に、そのようなサンプル整列の方法は、一般に、薄膜トランジスタを作製するリソグラフィーの手順において用いられ、そこではそのような装置の様々な機能をオーバーレイするのはサブミクロン精度である。SACのサンプル整列は、リソグラフィーほどの正確さは必要としない。例えば、結晶化領域は、どちら側でも数ミクロンまたは10ミクロン以上関心領域よりも大きくすることができる。
【0069】
別の技術において、サンプル整列は、電子素子を作る前に結晶化領域の位置を検出することによって確立される。その位置は、電子装置が配置される領域を検出することを通して得られる。その領域は、非晶質から結晶への変化が光学性質の変化に対する結果として微視的に見ることができるので、検出することが可能である。
【0070】
サンプル配列のためのシステムは、基準を検出し、その基準に対して既知の位置にサンプルを整列する自動化システムを有することができる。例えば、システムは、膜上の基準を検出可能な光検出器の移動を制御し、その光検出器に応答するためのコンピューティング構成を有することができる。この光検出器は、例えば、CCDカメラであり得る。
【0071】
PEC VP非晶質Si膜の均一な部分溶解結晶化
上記のように、部分溶解結晶化技術は、シリコン膜を結晶化するために1以上の照射を使うものであり、少なくとも最後のパルスが膜の完全な溶解を誘起しない。いくつかの実施形態において、部分的な溶解フラッド照射方法を、微細粒子均質結晶膜を生成するため、あるいは非周期的なパルス照射方法のための、前駆体膜を生成するために用いることができる。部分的な溶解フラッド照射方法は、ツーショットの部分的溶解処理であり得、そこで、いかなる既存の微結晶をも欠いた非晶質シリコン膜(例えば、PECVD膜)は、2ステップで、膜厚を超える平均横方向寸法を持つ粒子を有する微細粒子均質結晶膜に変形される。部分的な溶解フラッド照射方法は、延長継続時間ワンショット部分的溶解処理でもあり得、ここでは、いかなる既存の微結晶をも欠いた非晶質シリコン膜(例えば、PECVD膜)は、膜厚より短い平均横方向寸法を持つ粒子を有する微細粒子均質結晶膜に変形される。
【0072】
James Im教授は研究で、超横方向成長(「SLG」)が、「ほぼ完全な溶解」が起こり、低粒内欠陥密度を持つ粒子の横方向成長が結果として生じる(Im他、APL63、p1993 1993年)方法による完全な溶解閾値に近いエネルギー密度でのワンショット照射処理において、発生し得ることを示した。そのような材料は、100cm2/Vsを超える移動性を持つTFTを生成するために使われ得る。しかしながら、本材料のTFT均一度は悪く、それは、粒子サイズが、(1)パルスエネルギー密度、(2)前駆体膜の不均一性、および(3)完全な非晶質膜が使われた場合の結晶核形成処理の確率論的な性質、に対し大きく依存するるためである。しかしながら、このSLGレジームにおける複数の照射は、より均一なサイズの粒子をもたらすことができる。これは、照射する光の波長と整合する膜の周期的な表面粗さの形成によって可能になり、自己安定化処理をもたらす。この手法は、ELAとして商業化されており、最も一般的にはラインビームを用いる。上記のように、ELA処理は累積処理であり、ほぼ完全な溶解レジームにおける複数の放射に起因して、初めの不均一な多結晶膜をより均一な状態に収束する。しかしながら、ELA処理は、初めの多結晶性状態が均一である場合、より効果的となり得る。
【0073】
上記のように、より均一な多結晶膜は、関心領域はビームの端で照射されないUGSシステム、または非周期的なパルスELAシステムを使うことで得ることができる。しかしながら、ビームのトップハット部分で最初に照射される領域でさえ、前駆体膜の不均一性により不均一度の影響を受け、完全な非晶質膜の場合、結晶核形成処理の確率論的な性質の影響を受け得る。本開示は、上記のELA処理(従来のもの、および非周期的なパルスの両方)の効率を増すために有益になり得る、均一な初期の結晶化された多結晶膜を生成するために部分溶解結晶化を行う方法およびシステムに関する。別の実施形態において、高められた均一度を有する得られたPMC材料は、更なるELA処理なしに薄膜電子素子を生成するために、それ自体を使うことができる。これは、より低い性能の薄膜装置(例えば、100cm2/Vs、または10cm2/Vs程低い)で十分だが、膜の均一度が依然として重要である状況において有益であり得る。
【0074】
部分溶解結晶化(すなわち、完全溶解に近い閾値未満のエネルギー密度での結晶化)は、ImとKimによる「非晶質シリコン膜のエキシマレーザ結晶化に関する相数変換機構(Phase transformation mechanisms involved in excimer laser crystallization of amorphous silicon films)」(Appl. Phys. Lett. 63 1993年10月4日)において、LPCVDを使って蒸着される非晶質Si膜について述べられている。この研究は、LPCVD Si膜は完全な非晶質ではなく、結晶化の種結晶となる小さな微結晶が膜の中に存在することを示す。微結晶の高い密度のため、微結晶間の横方向の空間は極めて小さく、結晶成長は膜の平面に垂直な方向に主として発生する。非常に小さな大きさの粒子は、均一なTFTを作るために、この材料を魅力あるものにする。LPCVD膜のそのようなワンショット結晶化は、更にレーザパルスのステージに同期させた放射を可能にするフラッド照射ツールを用いて実施されるUGS方法と称されるものの一つである(二次源投影システムを使用する米国特許第2006−0030164 Al号「膜領域の縁領域および構造を最小化するための基板上の膜領域のレーザ結晶化プロセスのための処理および方法(Process and system for laser crystallization processing of film regions on a substrate to minimize edge areas, and a structure of such film regions)」、および、ラインビームELAシステムを使用する米国特許第2007−0010104 Al号「膜領域のライン型ビームおよび構造を用いた基板上の膜領域のレーザ結晶化プロセスのための処理およびシステム(Processes and systems for laser crystallization processing of film regions on a substrate utilizing a line−type beam, and structures of such film regions)」参照)。可能性として、これは、非常に高い処理能力を持つLTPS装置を作る方法となり得る。現在、そのような装置は、非晶質シリコンが不十分な性能レベル(nチャンネルUGS TFTに対して30または更に50cm2/Vsまでに比べ、nチャンネルa−Si TFTに対して約1cm2/Vs)にあると判断されるUD−LCD TV商品(例えば、約2000*4000画素、480Hz、および80”)に対して考えられている。
【0075】
非常に小さな柱状粒子を持つPMC材料の微粒組織は、この部分的な溶解エネルギー密度レジームでは一般的に決して達成されるものではない。研究により、現在理解されているような部分溶解結晶化は、小粒子の均一なLTPS TFTの製造で再現的に使われ得ないことが示されている。Mariucci等(Thin Solid Films 427 (2003) 91-95)は、例えば、非常に不均質で部分的に非常に不完全な材料(横方向の成長を通してより大きくより良好な粒子によって囲まれた不完全なコア)が得られることを示した。
【0076】
図8Aは、PMCレジームの低端における一照射後の膜表面のAFM走査を表す。これは横方向の成長を示す大きな突起、および凝固に際してSiの膨張による対応する横方向のマスフローによって囲まれた円板状の構造を示す。図8Bは、図8Aにおける結晶構造体の図である。8Bにおける結晶構造体は、不完全なコア800を持つ。この構造は、横方向結晶化の種結晶を作り、円板状の構造によりもたらされる低密度の核形成現象の結果である。最初の成長状態は、均衡状態からかけ離れている。したがって、結晶は非常に不完全である。成長前面が互いに進むにつれて、十分な熱が発せられ、膜にかなりの再加熱を引き起こす。この再加熱は、より低い欠陥密度の横方向成長をもたらし得る。
【0077】
図8Cは、より高いエネルギー密度での一照射後だが、まだPMCレジーム内の膜表面のAFM走査を表す。図8Dは、図8Cの結晶体構造の図である。ここで、より高いエネルギー密度放射から導入された更なる熱は、相転移の最初のステージにおいて形成された不完全なコア領域の再溶解をもたらす。不完全なコア領域の溶解閾値は、低欠陥密度外環のものより低く、したがって、優先的に溶解する。それらエネルギー密度の再成長は、外環から種結晶を入れられ、内側へ向かうだろう。この種結晶を入れることで、凝固に際してのSiの膨張により、中央に小さな突起ができる。これら突起は、図8CのAFM走査において見ることができる。不完全なコア領域の再溶解は、より均一な膜をもたらし得る。図8Dは、膜のほぼ完全な溶解のために十分なエネルギー密度で得られる結晶体構造の図である。図8Eは、未溶解種結晶からの横方向結晶化に際して形成された円形領域を示す。
【0078】
不完全なコア領域の二次溶解は、レーザパルスの時間的なプロファイルによって影響され得る。例えば、Coherent社(Santa Clara, CA)から入手可能なエキシマレーザは、強度のピークを示す時間的プロファイルを持つ傾向がある。第1ピークは、膜の最初の爆発的な結晶化を引き起こし得、一方、第2ピークは、最初のステージの間に形成された不完全なコア領域の選択的な再溶解をもたらし得る。レーザの時間的プロファイルは、時間とともに可変であることで知られ、特に、レーザガスの老化に伴う。最終的に、時間とともに、第3の強度ピークが発現し得る。このように、コアの再溶解後の材料がより均一になり得る一方、レーザツールからの多くのパルスに関して容易に再生可能にはならない。他のレーザは単一の強度ピークのみを持ち得、同じパルス内の再溶解の詳細は、おそらく異なるだろう。
【0079】
この微粒組織の再現性を向上するための方法の一つは、膜を2度照射することである。第1パルスは不完全なコア材料を得るために最適化され得、一方、第2パルスは再溶解のために最適化され得、このように、コア領域を良好にするする。これは、2回の走査、またはステージを次の位置に進める前に、2つのパルスが各位置に照射されるステップおよび照射手順を使って行われ得る。
【0080】
本開示は、より効率的な方法、つまり、単一の走査でのこのような2部分照射部分溶解結晶化プロセスを提供するシステムに関する。非周期的なパルスELAシステムは、2部分処理の第1レーザパルスを生成するために使われ、大きな粒子を持つが、膜全体の均一度が低い中間の微粒組織を得ることができ、一方、第2パルスは、中間の微粒組織を良好するために使われ、最終的な均一な膜を生成する。このように、本方法は第2パルスを遅延起動すること(および、可能性として第1または第2パルスのフルエンス制御)で、再溶解したコア領域の最適化されたエネルギー密度窓を得ることを教示する。遅延された起動は以前にも提案されているが、ここでは、パルス継続時間延長を模倣し、ミラーによる光損失を無くす。パルスを近接しており、重ねることができるので、これは、第2パルスの到達に際して、膜が完全には冷やされず、あるいは完全に凝固されることさえ無いことを意味し、エネルギー密度のより効率的な利用をもたらす。更に、第1および第2パルスのエネルギー密度は、同じであり得るか、または異なり得る。しかしながら、第2パルスの到達前に、膜は完全には冷やされ得ないので、膜は、第1パルスと比較して第2パルスからの異なる密度の溶解にみまわれ得る。
【0081】
通常は、初めの膜は、厚さ約40nmから100nm、または200nmまでのSiO2被覆ガラス、石英、または酸化Siウェハ上のSi膜である。一般的に、膜が薄くなるほど蒸着時間が少なくなり、所望のレベルの溶解に達するために必要なエネルギー密度が低くなるので好ましい。パルスは、約30ns FWHM以上、または例えば、300ns FWHM以上までのパルス継続時間を持つことができる。一般的に、パルスがより短くなると、熱が少なくなるため下の基板への影響が少なくなり、より高い処理能力を確立できるため、Si膜の溶解はより効率的になる。膜は、部分的な溶解エネルギー密度範囲全体にわたって照射され得る。
【0082】
別の実施形態において、(PECVDを使って得られるような)微結晶欠陥膜を使用しながら、円板状の領域が完全に回避される。円板状の領域は、核形成密度を増やすことによって避けることができる。核形成密度を高めることで、垂直の結晶化プロセスをもたらすことができ、横方向成長と横方向マスフローの減少が結果としてもたらされる。核形成密度を高めることは、パルス継続時間を長くすることで、非晶質Si溶解はよりゆっくりと前に進むので、パルス継続時間をより長くするようシフトすることにより達成され得る。図9に示す界面応答関数(「IRF」)で見られるように、(その温度に関し固体−液体界面の速度について述べている)このことは、それらの温度が結晶Si溶解温度Txmに関しより過冷却されることを意味する。図9のIRFは、x軸に温度を、y軸に結晶前線の速度を示す。凝固領域はグラフのプラスy領域、溶解領域はグラフのマイナスy領域である。点線は非晶質シリコンに対応し、実線は結晶シリコンに対応する。
【0083】
このように、遅い溶解性質を持つロングパルス900に対し、核形成は迅速に始まり、非晶質Si IRFカーブ上のポイント905によって示されるような深過冷却状態で始まる。古典的な核形成理論から、深過冷却がより高い核形成率をもたらすことが周知である。このように、多数の核が短時間に形成され、それら核が成長を始めるにつれて融合熱が放出されることにより、膜が再熱を始める前に形成される(再熱現象と称される現象である)。核形成のこの高密度により、核形成成長は垂直方向に発生するので、領域内の横方向成長が実質的に除去される。大幅な横方向成長は、低均質構造、および平らでない膜表面を生成し得る。このように、膜上の単位時間当たりのエネルギーを低くする継続時間の長いパルスを使うことによって、膜は、(いくつかの)LPCVD膜を使って得られるものと同様に得られ、そこでは、高密度の微結晶が予め存在する。
【0084】
ショートパルス910を使うと、溶解は迅速に前進し、過冷却は減らせる。この条件は、IRF上の915に模式的に対応する。過冷却は、ロングパルスで照査された膜を使うよりも低くなるが、より低い率にあるにもかかわらず、核形成には依然としてまだ十分である。したがって、かなりの再熱現状が発生し別の核形成が止まる温度まで膜の更なる発熱をもたらす前の短い時間間隔で、より少ない核が形成される。核形成密度がより低くなるので、これらの種類の膜は、より多くの横方向成長にみまわれ、不均一な結晶成長をもたらす。
【0085】
通常のなエキシマレーザパルスは、ショートパルスシナリオを可能にするために十分短くなり得るが、(約300ns FWHMパルスを生成するために)8xパルスエクステンダーを使うと、パルスは、ロングパルスシナリオに移るために十分長く生成することができる。あるいは、長いパルスは、短いシーケンスでそれぞれが発射される複数のレーザチューブを使って生成され、単一の溶解および凝固サイクルを誘起することができる。
【0086】
したがって、均一の結晶膜は、遅い溶解性質を持つロングパルスを使うことによる単一パルス部分溶解処理を通じて得ることが可能である。この膜は、従来の、または非周期的なパルスELA処理に対する前駆体膜として使うことができる。
【0087】
完全溶解結晶化
別の形態において、完全な溶解レジームにおける照射は、微細粒子均質結晶膜を生成するために、または後の累積ELA処理を有利にする、最初に結晶化された多結晶膜を生成するために使われる。完全溶解結晶化(CMC)は、ワンショット照射がSi膜の完全な溶解に使われ、その後、その膜が核形成を通して結晶化する技術である(米国特許第10/525,288号「実質的な均一度を提供するための基板上の膜領域のレーザ結晶化プロセスのための処理およびシステム、およびそのような膜領域の構造(Process and system for laser crystallization processing of film regions on a substrate to provide substantial uniformity, and a structure of such film regions)」参照)。CMCは、レーザパルスのステージ同期放射を更に可能にするフラッド照射ツールを用いて実行されるUGS方法と称されるものの一つである(2D投影システムを使用する、米国特許第10/525,297号「縁領域を最小化するための基板上の膜領域のレーザ結晶化プロセスのための処理および方法、およびそのような膜領域の構造(Process and system for laser crystallization processing of film regions on a substrate to minimize edge areas, and a structure of such film regions)」、およびラインビームELAシステムを使用する、米国特許第11/373,772号「ライン型ビームを用いる基板上の膜領域のレーザ結晶化プロセスのための処理およびシステム、およびそのような膜領域の構造(Processes and systems for laser crystallization processing of film regions on a substrate utilizing a line −type beam, and structures of such film regions)」参照)。
【0088】
本開示されたCMC方法は、薄膜における非均質核形成が低欠陥小等軸晶Si膜の形成をもたらすことに焦点を当てる。システムは、例えば、膜の完全な溶解閾値よりも1.3から1.4倍大きい高エネルギー密度パルスを使用する。本処理は、大気中、または酸素を含むいかなる大気中でも実行され得る。本処理は、厚さ約50nm未満の酸化表面層またはギャップ層を持つ膜を使って実行することができる。システムは、SiO2ガラス、石英ウェハ上の(100nsから300nsの範囲の)比較的薄いSi膜と合わせて、約80nsから約500ns(例えば、200nsまたは400ns)の比較的長いパルス継続時間を使用する。先行技術で教示される均質の核形成シナリオの代わりに、ある所望の非均質核形成シナリオを誘起する処理のパラメータを選択することによって、核形成は、膜と酸化表面層間の界面および膜と基板間の界面で達成することができる。上記のパラメータにより、低欠陥密度結晶を形成することができる。
【0089】
本開示のCMC方法は、非常に高い処理能力を持つ低性能LTPS装置を作るために使うことができる。現在、そのような装置は、非晶質シリコンが不十分な性能レベル(nチャンネルUGS TFTに対して30または更に50cm2/Vsまでに比べ、nチャンネルa−Si TFTに対して約1cm2/Vs)にあると考えられるUD−LCD TV商品(例えば、約2000*4000画素、480Hz、80インチ)に対して考えられている。
【0090】
完全な溶解は、放射条件およびサンプル構成に応じて様々な核形成を誘起された微粒組織をもたらすことが知られており、処理の記述はS. Hazair等による「Nucleation-lnitiated Solidification of Thin Si Films」Mater. Res. Soc. Symp. Proc. Vol. 979 (2007)」で見出すことができる。これら微粒組織の多くは、大きな程度の不均一性(可変粒子サイズ、非常に不完全な領域)によって特徴づけられ、低い機器の均一度をもたらす。例えば、Hazairの論文のテーマは、不完全なコア領域が低欠陥密度「花弁形状粒子」の輪によって囲まれる花状粒子(fig−Si)の形成である。
【0091】
しかしながら、特にある微粒組織はこれに対する例外と考えられ、それはS.R. Stiffler、M.O. Thompson、およびP.S. PeercyによりPhys. Rev. Lett. 60, 2519 (1988)に初めに記載された。この微粒組織は、膜の厚さ全体に分散された均一な粒子から成り、非常に低い粒子内欠陥密度を持つ。そのような微粒組織は、良い素子均一度をもたらすことが期待され、程良い装置性能レベルを可能にし得る。これは、ボトムゲートTFTに対して更に真であり、なぜなら、小粒子Siを作る他の多くの方法(析出技術を含む)と違い、底にある/底の近くにある結晶は、低欠陥密度でサイズがより大きい。しかしながら、この微粒組織の形成後のメカニズムについて、問題は残っているため、この再現性を得るための条件が必要とされる。
【0092】
小さな等軸晶Si(seg−Si)は、Stifflerによって均質核形成、すなわち、界面のみではなく、液体の大部分全体における固体の核形成の結果として説明された。Stifflerは、前面反射および膜のコンダクタンスにおける同時降下を示す過度反射(「TR」)データおよび過度コンダクタンス(「TC」)データの組合せに基づいて結論づけた。これは、膜の大部分全体の核形成を示すものとして論じられた。20年間、これは、膜の大部分内の(すなわち、表面、または底界面に面していない)粒子の存在を説明するために受け入れられたモデルであった。最近では、TR研究に基づいて、Stifflerのモデルが不正確であることが発見された。
【0093】
代わりに本TR研究は、seg−Siが、不完全なコア領域の容積測定の再熱現象、再溶解、再凝固が続く非均質核形成(すなわち、界面において)の結果であると仮定したモデルを提供する。したがって、このシナリオの最初のステージは、fig−Siに至るものと同等であり、その違いは、不完全なコア領域が、再溶解し、低欠陥密度粒子で再凝固しseg−Siを形成することである。
【0094】
Stifflerのデータについて、微粒組織の特徴は、上面図平面SEM TEMおよびAFM画像に基づいている。しかしながら、これは、TRデータの全特徴を説明するには不十分であった。特に、Stifflerのモデルは、真空雰囲気において行われレーザ照射前の自然表面SiO2層の除去を伴う実験で観察され得る前側TR(「FTR」)における降下前の裏側TR(「BTR」)における降下を説明できなかった。
【0095】
現在、断面図のTEM微粒組織特徴と共に底面図平面に基づき、そのようなTR降下は、上向きに成長するように見え、膜の上側でより大きくなる底領域近くのより小さな粒子を持つ微粒組織をもたらすことが結論づけられている。他方、BTRとFTR両方のほぼ同時の降下は、Stifflerによって最初に観測された(および、均一なTFTを作るために最も最適であると更に考えられた)ようなseg−Siの形成にとって必要(だが十分ではない)条件である。
【0096】
一般的に、非均質核形成は、膜の底界面でのみ生じると理解されている。前側TRにおける降下は、膜の上界面での(すなわち、表面での/表面近くでの)核形成の発現に対応する。それから、(前後TR両側でのTR信号の同時降下によって立証されるように)膜の両側における核形成の同時発現は、膜に戻された潜熱のおよそ2倍の量をもたらすので、不完全なコア領域の更により効果的/広範な再溶解/再凝固をもたらす。表面における/表面近くでの核形成は、界面があることを必要とする。そのような界面は、例えば、(天然)酸化物を用いて成すことができる。そのような酸化膜は、照射前に存在することができる、または、酸素が存在する場合に放射の間に形成することができる。雰囲気に依存して、核形成のために適切な界面の形成を引き起こすことことができる他の表面反応が起こることが可能である。更に、(例えば、天然酸化物の除去による)そのような最上層無しに、および(例えば、真空下での放射による)放射の間そのような最上層の形成能力無しには、実際に、表面核形成は起こらず、Stifflerによって観測された様なseg−Siも形成されなかった、ということが発見された。最後に、比較的低いエネルギー密度において照射されたいくつかのサンプルにおいて、同時TR信号降下が観察されたが、Stifflerのseg−Siは観察されなかった。これは、上界面での核形成を介して形成された固体の完全な再溶解の結果であり得ると、現在考えられている。更に、100nmより薄い膜でも同時TR降下を見ることができるが、しかしながら、膜の容積における潜熱の量は、不完全なコア領域の効果的/広範な再溶解/再凝固をもたらすために不十分であることが明らかである。
【0097】
図10Aおよび図10Bは、最近のTR研究の結果を表す。図10Aは、真空における表面酸化物層のないガラス基板上の150nm a−Siに対するFTRおよびBTRを表す。グラフの最下ライン1400は膜が受けた照射である。上のラインは、CMTの様々な値に対する反射値である。図10Aのx軸は、ナノ秒単位の時間であり、y軸は、反射の正規化数である。図10Bは図10Aと同様だが、図10Bは空気内での結果を表す。図10Bは、BTR信号が、FTR信号がBTRと同時に降下を始めると思われる1.38CMTのエネルギー密度下でFTRにおける降下前に降下する(一連の信号はレーザ信号より上の、グラフ内の下側に配置した)ことを示す。このように、真空ではないシナリオにおいてでさえ、seg−Si微粒組織を得るために、より高いエネルギーが必要となる。図10Aおよび図10Bに示すように、固体と液体間での反射の違いはとても大きいので、TRデータから、固体から液体への転移、およびその逆の開始を区別することができる。非均質核形成は、FTRとBTRデータの両方、および結果として生じる微粒組織(図11Bに示す)の考慮して推定し得る。図11Aは、1.32CMT1500の空気内の200 nm a−Si膜、および1.4CMT1510の真空での200nm a−Si膜に対するナノ秒単位の時間(x軸)と正規化された反射値(y軸)のグラフを表す。図11Bは、空気環境において得られた微粒組織の画像である。図11Cは、真空環境において得られた微粒組織の画像である。2つの図から理解できるように、図11Bは、膜厚1520全体にわたるより大きな結晶を示す。図11Cは、膜の表面近くで、品質の良い結晶を示すが、基板1540との界面近くは質の低い小さな結晶を示している。このように、真の3D seg−Siは、表面での反応が表面ならびに底界面で非均質核形成に対する酸化物層を形成するように起こり得る空気内で得られ、非均質核形成が底界面でのみ起こり得る真空内では得られないことが理解され得る。
【0098】
本方法は、ボトムゲートTFTの製造への特別な関心対象であり、というのも、小粒子Si製造の他の多くの方法(析出技術を含む)と違い、底での/底近くでの結晶は低欠陥密度およびより大きなサイズを持つからである。このように、典型的なボトムゲートLTPS TFTは、低移動性の影響を受け、おそらく、高漏洩電流の影響も受ける。ボトムゲートTFTの製造は、Si膜の下にあり、絶縁層(ゲート誘電体)によってそれから分けられたパターン化された金属膜(ゲート)の変形を必要とする。レーザ照射の間、そのような金属膜は、ヒートシンクとして動作し、局所的に完全な溶解閾値(CMT)エネルギー密度の変化をもたらす。seg−Si変形に達する条件は、CMTにおけるこの局所的な移動が考慮されるならば、同じままであることが分かる。例えば、100nm厚酸化膜によりシリコン膜から分離した100nm厚金属に対し、完全な溶解閾値内での変化は、通常は、15パーセントから20パーセント高くなるだろう。このように、seg−Si変形のための一つの条件は、局所的CMTの1.3から1.4倍のエネルギー密度で照射することである。エネルギー密度を凝集や剥離の間にヒートシンクを持たない周りの膜に損傷を負わせるほど高くしすぎないことに注意しなければならない。例えば、100nm金属ゲートの上部の100nm厚酸化膜の上部にある100nm厚の膜に対し、膜は、膜の損傷閾値未満である局所的完全溶解閾値の1.4倍、または完全溶解閾値の約1.61から1.68倍の間で照射され得る。
【0099】
Stifflerが用いた実験条件は、本処理の条件とはいくらか明確に異なるものである。Stifflerはより短いレーザパルス(本開示の約80nsに対して30ns)を使い、より熱伝導性のある基板(SOI(Si基板上の薄い250nm SiO2上のSi膜)またはサファイア上のSi)も用いた。一般的に、均質核形成は、非常に迅速な急冷が必要となる。ガラス基板とより長いパルスを有する本開示処理の条件は、急冷はより遅くなるので、均質核形成の可能性を減らし、非均質核形成の可能性を増す。Stifflerが用いた酸化膜の厚さは、急速冷却を避けるために十分ではない。したがって、ガラス基板は、Stifflerの構成よりかなり遅い冷却をもたらす。このように、本方法は、Stifflerの材料が、何が起こるかについての正しい理解によって得られた有用で実用的な条件を実現する。
【0100】
本開示の実施形態に関して作成されたサンプルは、SiO2被覆ガラス、石英(または、酸化されたSiウェハ)上の100から300nmSi膜を含んだ。エキシマレーザに基づくシステム(308nm)を、様々なパルス継続時間(30〜250ns FWHM)、およびエネルギー密度で照射するために用いた。その場で、前側と後側の過度反射測定を使って分析が行われた。照射される材料の特徴づけは、TEMを用いて行った。Yikangの「Vacuum Experiment Update: Microstructure analysis」(2009年9月2日)も参照すること。
【実施例】
【0101】
大型TVにとって、画素ピッチは660マイクロメートルになり得る。600Hzレーザを用いると、このように、走査速度は約40cm/sになり得る。そのような条件は、60パーセント光学効率と仮定する約640mJ/cm2のパルスに対して100μm*75cmに形成された0.8Jパルスを用いて達成され得る。そこで、4チューブレーザをもちいると、5つの重なった走査が、完全な結晶化を達成するために必要とされる。2.2*2.5m2パネルに対して、結晶化時間は、(3つの並列走査)*(250cm/40cm/s)*(5つの重なった走査)=93.75秒である。5秒の加減速時間、並列走査間の10秒、および60秒の取付けおよび取出し時間をとる。そうすると、総処理時間は、約95+5*5+2*10+60=200秒である。より控えめとしても、5分の処理時間が仮定され得る。すなわち、それは60/5*24*30=約8.5kパネル/月に等しい。
【0102】
従来の20ショット、すなわち、膜の単位面積当たり20レーザパルスのELA処理は、400μm*75cmビームを得るために、4つのレーザチューブの同時起動が必要となろう。そうすると、20ショットに対し、走査速度は、1.2cm/秒となり、結晶化時間は、3*(250/1.2)=625秒となろう。総処理時間は、加減速時間を無視すると、ここで、625+2*10+60=705秒となる。より控えめとしても、12.5分の処理時間が仮定され得、処理能力は、すなわち、約3.4kパネル/月である。
【0103】
本発明の実施例が示され、記載されたが、本発明の範囲から逸脱することなしに様々な変更及び修正を行えることは当業者にとって実に明らかであろう。例として、選択した方向へ薄膜を進めることは、レーザビームの静止状態に維持し、膜をレーザ源に対して動かすことにより、ならびに膜が静止し、ビームが動く実施形態により実現され得ることが理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の選択された方向に薄膜を進める間、第1レーザパルスと第2レーザパルスを用いて前記薄膜の第1領域を照射し、各レーザパルスは成形ビームを供給し、前記薄膜を部分的に溶解するのに十分なフルエンスを持ち、前記第1領域が再凝固および結晶化して第1結晶化領域を形成すること;及び
第3レーザパルスと第4レーザパルスを用いて前記薄膜の第2領域を照射し、各パルスは成形ビームを供給し、前記薄膜を部分的に溶解するのに十分なフルエンスを持ち、前記第2領域が再凝固および結晶化して第2結晶化領域を形成することを含み、
前記第1レーザパルスと前記第2レーザパルス間の時間間隔は、前記第1レーザパルスと前記第3レーザパルス間の時間間隔の半分未満である、
薄膜処理方法。
【請求項2】
前記第1レーザパルスと前記第2レーザパルス間の前記時間間隔は、前記薄膜の単一の溶解および凝固サイクル間の時間間隔より長い、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1レーザパルスと前記第2レーザパルスのそれぞれは、同じエネルギー密度を持つ、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1レーザパルスと前記第2レーザパルスのそれぞれは、異なるエネルギー密度を持つ、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1レーザパルスと前記第2レーザパルスのそれぞれは、前記薄膜の同程度の溶解を達成する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第1レーザパルスと前記第2レーザパルスのそれぞれは、前記薄膜の異なる程度の溶解を達成する、
請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記薄膜は、既存の微結晶を欠いた非晶質シリコン膜を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第1レーザパルスは、前記非晶質シリコン膜を溶解し、不完全なコア領域を持つ結晶構造体を生成するのに十分なエネルギー密度を持つ、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第2レーザパルスは、前記不完全なコア領域を再溶解し、均質微細粒子結晶膜を生成するのに十分なエネルギー密度を持つ、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記薄膜は、非晶質シリコン膜を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記薄膜は、低圧化学蒸着、プラズマ促進化学蒸着、スパッタリング、および電子ビーム蒸着の一つを使って蒸着される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記薄膜は、処理されたシリコン膜を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記処理されたシリコン膜は、以下を含む方法により後で処理された既存の微結晶を欠いた非晶質シリコンである請求項12に記載の方法:
第2の選択された方向に前記非晶質シリコン膜を進める間、前記非晶質シリコン膜を部分的に溶解するのに十分なフルエンスを持つ広範囲のレーザパルスで前記非晶質シリコン膜を照射すること。
【請求項14】
前記広範囲のレーザパルスは、多数のレーザ源からのレーザパルスの連続的な重なりによって生成され、パルス間の遅延は、単一の溶解および凝固サイクルを誘起するほど十分短い、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記非晶質シリコン膜は、プラズマ促進化学蒸着を介して得られる、
請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記広範囲のレーザパルスは、300ns全幅半値より大きいパルス長を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記処理されたシリコン膜は、以下を含む方法により処理されたシリコン膜である請求項12に記載の方法:
第2の選択された方向に前記シリコン膜を進める間、前記シリコン膜を完全に溶解するのに十分なフルエンスを持つレーザパルスで前記シリコン膜を照射すること。
【請求項18】
前記レーザパルスは、複数のレーザ源からのレーザパルスの重なりによって生成される、
請求項17に記載の方法。
【請求項19】
第2の選択された方向に前記薄膜を進める間、第5レーザパルスと第6レーザパルスで前記薄膜の第3領域を照射し、各レーザパルスは、形成ビームを供給し、前記薄膜を部分的に溶解するのに十分なフルエンスを持ち、、前記第3領域は再凝固および結晶化して第3の結晶化領域を形成すること、及び
第7レーザパルスと第8レーザパルスで前記薄膜の第4領域を照射し、各パルスは、形成ビームを供給し、前記薄膜を部分的に溶解するのに十分なフルエンスを持ち、前記第4領域は再凝固および結晶化して第4の結晶化領域を形成することを含み、
前記第5レーザパルスと前記第6レーザパルス間の時間間隔は、前記第5レーザパルスと前記第7レーザパルス間の時間間隔の半分未満である、
請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記第2の選択された方向は前記第1の選択された方向と逆であり、前記第3の領域は前記第2の領域と重なり、前記第4の領域は前記第1の領域と重なる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記第2の選択された方向は、前記第1の選択された方向と同じであり、前記第3の領域は前記第1の領域と重なり、前記第4の領域は前記第2の領域と重なる、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記第2の選択された方向に前記薄膜を進める前に、前記第1の選択された方向と垂直な方向に前記薄膜を移動する、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
各レーザパルスは、上部に均一なエネルギー密度を持つラインビームを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
各レーザパルスは、フラッド照射パルスを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
請求項1に記載の方法により処理された薄膜。
【請求項26】
請求項1に記載の方法により処理された薄膜を含む装置であって、前記装置は、前記薄膜の複数の結晶化領域内に配置された複数の電子回路を含む装置。
【請求項27】
前記装置は表示装置を含む、請求項26に記載の装置。
【請求項28】
レーザパルスを生成するための一次および二次レーザ源と、
基板上の薄膜を固定する作業台と、
前記ビームパルスに対し前記薄膜を動かし、それにより前記薄膜の表面上の前記レーザビームパルスの伝搬方向を生成するための台と、
前記一次源からの第1レーザパルスによって照射される前記可動台に載せられた薄膜の第1領域、前記二次源からの第2レーザパルスによって照射される前記薄膜の第2領域、および前記一次源からの第3レーザパルスによって照射される前記薄膜の第3領域を提供するために台に同期したレーザを発射するための処理命令を持つコンピュータを含み、
処理命令は、前記第1、第2、および第3領域を照射するために、前記ビームパルスに対し、伝搬方向で前記膜を動かすために含まれ、
前記第1領域の中央と前記第2領域の中央間の距離は、前記第1領域の前記中央と前記第3の中央間の距離の半分未満であり、
前記第1、第2、および第3レーザパルスは、前記薄膜を部分的に溶解するのに十分なフルエンスを持つ、
非周期的なレーザパルスを使用する薄膜処理システム。
【請求項29】
前記台は一定速度で移動する、請求項28に記載のシステム。
【請求項30】
既存の微結晶を欠いた非晶質シリコン膜を細かい粒子から成る膜に変換する方法であり、前記方法は、
前記非晶質シリコン膜を第1の選択された方向に進める間、前記非晶質シリコン膜を部分的に溶解するのに十分なフルエンスを持つ広範囲のレーザパルスで前記非晶質シリコン膜を照射し、
前記細かい粒子から成る膜は前記膜の厚さより短い平均横方向寸法を持つ粒子を含む方法。
【請求項31】
前記広範囲のレーザパルスは、300ns全幅半値より大きいパルス長を含み、フラッド照射パルスである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記広範囲のレーザパルスは複数のレーザ源からのレーザパルスの遅延した重なりによって生成され、パルス間の前記遅延は単一の溶解および凝固サイクルを誘起するほど十分短い、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記非晶質シリコン膜は、プラズマ促進化学蒸着を介して得られる、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
基板上の半導体薄膜であって、前記薄膜は前記基板に隣接する底面に位置する底界面と、前記底面の反対側の上面を持つ半導体薄膜を提供すること;及び
前記膜の完全な溶解閾値の1.3倍より大きいエネルギー密度を持つレーザビームで前記薄膜を照射することを含み、前記エネルギー密度は前記膜を完全に溶解するよう選択され、
凝固の開始において、キャップ層が前記半導体膜の前記上面で表面界面を形成するために存在し、
前記膜の照射および完全な溶解の後で、非均質核形成が前記上界面と前記底界面の両方で発生し、
冷却に際して、前記非均質核形成は前記膜の前記底面で低欠陥シリコン粒子を形成する、
薄膜処理方法。
【請求項35】
前記レーザビームは、80nsより大きいパルス継続時間を持つ、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記レーザビームは、200nsより大きいパルス継続時間を持つ、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記レーザビームは、400nsより大きいパルス継続時間を持つ、請求項34に記載の方法。
【請求項38】
前記半導体薄膜は、厚さ約100nmから約300nm間のシリコン膜を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項39】
前記基板はガラスを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項40】
前記基板は石英を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項41】
前記粒子は小さな等軸晶を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項42】
前記レーザビームの前記エネルギー密度は、前記局所的に完全に溶解する閾値の1.4倍である、請求項34に記載の方法。
【請求項43】
前記キャップ層は、照射前に前記薄膜の前記上面に薄膜を蒸着することによって形成される、請求項34に記載の方法。
【請求項44】
前記キャップ層は、50nmより薄い厚さの酸化物層を含む、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記キャップ層は、酸素化環境において前記薄膜を照射することによって形成される、請求項34に記載の方法。
【請求項46】
前記酸素化環境は空気を含む、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記酸素化環境は酸素のみを含む、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
前記基板は絶縁膜によって覆われたパターン化された金属膜を含み、前記エネルギー密度は前記薄膜の前記完全な溶解閾値の1.3倍より大きい、請求項34に記載の方法。
【請求項49】
前記パターン化された金属膜はボトムゲートを含み、前記絶縁膜はゲート誘電体を含む、請求項48の方法によって作られたボトムゲートTFT。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図2D】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図8】
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【公表番号】特表2013−510443(P2013−510443A)
【公表日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−537941(P2012−537941)
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【国際出願番号】PCT/US2010/055106
【国際公開番号】WO2011/056787
【国際公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(506118526)ザ トラスティーズ オブ コロンビア ユニヴァーシティ イン ザ シティ オブ ニューヨーク (25)
【Fターム(参考)】