説明

非SiO2ゲート誘電体を有するMOSデバイスの製造方法

多結晶シリコン層(20)がゲート誘電体(10)上に堆積され、次いでその一部分が再酸化されて、当該ポリSi層と下側のゲート誘電体との間に酸化物(30)の薄層を形成するようにする。続いて、ポリSi層が完全シリサイド化形態(50)に変換され、FUSIゲートを生成させる。ゲート誘電体は、例えばHf含有材料であるhigh−k材料、又はSiON、或いは別の非SiO誘電体とすることができる。障壁酸化物層(30)は、好ましくは1nm未満の厚みである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集積回路デバイス製造の分野に関する。より詳細には、本発明は、金属−酸化物−シリコン(MOS)デバイスなど、特に高誘電率(high−k)ゲート誘電体、又はより一般的には、非SiOゲート誘電体すなわちSiOベースのもの(従ってドープSiO誘電体を含む)であっても典型的なSiO誘電体のようには作用しないゲート誘電体材料を利用するデバイスの製造に関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路デバイスのより高度なスケーリングに向けた継続的な取り組みは、MOSデバイスの誘電材料として従来から使用されているSiOの代替を求めることにつながっている。米国半導体工業会(SIA)の国際半導体技術ロードマップ(ITRS)2004では、CMOSに使用されるMOSFETデバイスは、65nm未満のゲート長を有するようにスケーリングされた場合には1.4又は1.5nm未満のゲート酸化物等価膜厚(EOT)が必要となり、2010年までには0.8nm以下に低下すると明記している。これはほんの数原子厚みのSiOゲート誘電層の使用が必要となるので、SiOゲート誘電体を使用して達成されるのは不可能でないとしても極めて困難となる。更に、量子力学的直接トンネリングに起因して、SiOゲート誘電体の厚みが小さくなるにつれて漏洩電流が増大する。
【0003】
従って、特に低ゲート漏洩電流が要求される用途においては、ゲート誘電体材料として使用する目的でhigh−k誘電体材料が注目を集めている。high−k誘電体材料は、窒化シリコンの誘電率kよりも大きく、すなわちk>7の誘電率を有する材料である。検討中の幾つかのhigh−k誘電体材料としては、タンタル(Ta)、ジルコニウム(Zr)及びハフニウム(Hf)などの金属の酸化物及びケイ酸塩が挙げられる。幾つかの既存の提案は、Hf、特にHfO、HfO/SiN、HfSiON及びHfAlOを含有するゲート誘電体材料の利用に関連している。
【0004】
ゲート材料としてSiOに換えてhigh−k誘電体材料を使用することが求められると問題が生じる。詳細には、SiOは、Si基板並びに既存の製造工程の両方に適合性がある。ゲート誘電体としてhigh−k誘電体材料又は全く別の非SiO誘電体を用いることができるためには、化学結合作用による潜在的な問題並びに既存の製造工程に新材料を組み込む望ましさから生じる障害を克服することが必要である。
【0005】
例えば、近年ではMOSFETゲート電極は多結晶シリコン(ポリSi)を常用して作製されている。high−k誘電体材料(又は他の非SiO誘電体)がポリSiゲートを有するゲート誘電体として使用される場合には、様々な問題が生じる。
【0006】
詳細には、非SiOゲート誘電体上にポリSiを使用すると、MOSFETデバイスのキャリア移動度が低くなる可能性がある。更に、閾値電圧Vtは、SiO誘電体とポリSiゲート電極とが共に使用される場合に観察されるものとは異なっており、すなわち典型的にはVtは、SiO上のポリSiについては−0.3Vであるのに対し、high−kゲート誘電体上のポリSiでは−0.6Vから−0.9Vである。更に、ポリSiがhigh−kゲート誘電体と共に使用される場合、一般的には、PMOSデバイスの閾値電圧Vtが高すぎることが観察される(ゲート仕事関数のフェルミ準位ピニングに起因する)。
【0007】
上述の問題を考慮して試みられた1つの手法は、ポリSiゲート電極材料をシリサイド(例えば、NiSi又はCoSi)に変え、これにより完全シリサイド化(又は「FUSI」)ゲート電極を形成することである。これは、金属様ゲート電極と見なすことができる。この手法は、ポリSiゲート電極を使用するときに観察されるポリ空乏化効果を回避し、従って、ゲートでの等価酸化膜厚(EOT)を低減する利点を有する。幾つかの提案では、FUSIゲート電極に関連するhigh−kゲート誘電体材料としてHfベースの材料(特に、HfSiON、HfO及びHfOxNy)を使用していた。
【0008】
しかしながら、FUSIゲート電極がhigh−kゲート誘電体材料と共に使用される場合には以下の問題が生じ、すなわち、不十分なPMOS/NMOS Vtモジュレーション(変調)(非対称Vt及び目標以上のVt値)が存在することになる。
【0009】
上記の問題を考慮して、様々な研究者は、FUSIゲートを有するCMOSデバイス用のゲート誘電体として用いる材料を選択する場合、high−k誘電体材料ではなくSiONを使用するのが好ましいと結論付けた。(SiON膜がOとNの比率に応じて約4から8の誘電率を有することを考慮して、SiONは、high−k誘電体材料に変更する途中の中間ステップとしてSiOゲート誘電体の代替として既に考慮されていた。)しかしながら、SiONゲート誘電体上にFUSIゲート電極を使用するデバイスにおいては、漏洩電流が不適切に高いことが一般に認められている。
【0010】
ポリSiゲート電極を有するhigh−kゲート誘電体の使用に伴う問題を克服するために試みられている代替の手法は、例えば、ゲート誘電体とポリSiゲート電極との間に障壁層(又は「キャッピング層」)を付加することによって、high−kゲート誘電体とポリSiゲート電極との間の境界面を修正することである。しかしながら、この手法は、様々な異なる材料及び堆積技法を用いてhigh−k材料上に障壁層を形成した場合でもあまり成功を収めておらず、ポリSiゲート電極によってその後でゲートスタック構造が完成したときのVtシフトの観測では低減されず、或いは低減が不十分であり、及び/又はキャリア移動度は低下した。場合によっては、NMOSデバイスの作製にはキャッピング技法は不適当であった。また、キャッピング層の導入によってEOTの望ましくない増大が生じる。
【0011】
Vtシフトに対処するのにキャッピングが不適当であることは図1から分かる。図1では、全てポリSiゲート電極を用いた幾つかの異なるPMOSFETのVtに対するゲート長(Ldrawnで表す)がプロットされている。これらのPMOSFET構造は、本発明を用いて達成された改良を実証するのに用いる比較例を構成する。
【0012】
第1の比較例は、2.5nm厚のSiOゲート誘電体を用いるPMOSFET構造であり、この第1の比較例の結果は、図1で中空四角を用いて示されている。第2の比較例は、1nm厚のSiNxキャッピング層で覆われた3nm厚のHfOゲート誘電体を用いたPMOSFET構造であり、この第2の比較例の結果は、図1で中空三角を用いて示されている。第3の比較例は、1nm厚のHfSiOxキャッピング層で覆われた2.5nm厚のHfOゲート誘電体を用いたPMOSFET構造であり、この第3の比較例の結果は、図1で中空円を用いて示されている。
【0013】
図1で分かるように、ポリシリコンゲートを有するHfO又はHfSiOxゲート誘電体のSiOに対するVtシフトは、許容できないほど高い。更に、Vtの差異は、より大きなゲート長及びより小さなゲート長で維持される。
【0014】
ポリSiゲート電極と共に使用されたキャッピングhigh−k誘電体材料では、high−k誘電体がSiOでキャッピングされている場合でも不十分な結果である。
【発明の開示】
【0015】
本発明者は、ポリSiゲート電極とキャッピングを有するhigh−k誘電体とを使用したゲートスタックにおいて観察される期待外れの結果の理由が、ポリSi層が堆積される前にキャッピング層がゲート誘電体層上に形成されるためであると仮定した。換言すれば、キャッピング層が形成される時点では、high−k誘電体材料とポリSiとの間の境界面はまだ存在していない。
【0016】
本発明は、添付の請求項に定められるように、FUSIゲートを備えるMOSデバイスを製造する新規の方法を提供する。
【0017】
本発明は、更に、添付の請求項に定められるように、FUSIゲートを備えるMOSデバイスを提供する。
【0018】
本発明の好ましい実施形態においては、ポリSi層がゲート誘電体層上に形成され、次いで、特に側方再酸化プロセスによってポリSiとゲート誘電体との間に酸化物の層が生成される。
【0019】
ポリSiがゲート誘電体上に既に堆積された後の薄い酸化物層の形成により、ゲートの仕事関数のフェルミ準位ピニングが解放され、より小さいゲートに対してより低い閾値電圧(Vt)を得ることが可能となる。結果として、望ましい仕事関数モジュレーションを達成することができる。
【0020】
側方再酸化プロセスは、フェルミ準位ピニングを解放してVtシフトを低減させることが分かっているので、このプロセスによって形成された酸化物の薄層は、ポリSiの酸化によって生成されると考えられる。
【0021】
再酸化プロセスは、ゲートでのEOTの増大をもたらすが、FUSIゲートの使用によって、すなわち換言すれば、ポリSi層を完全シリサイド化形態に変換することによって、CETinv(容量等価膜厚の逆数)の低下を達成することができる。このようにして、物理的により厚い誘電体によるEOTの増大は、金属様FUSIゲートを使用したポリシリコン空乏化のないことによって補償され、その結果、逆のトランジスタ作動条件のもとでのCETinvは全体として僅かしか増大せず又は増大しない。
【0022】
本発明の好ましい実施形態の一部においては、再酸化プロセスは、ゲート電極とゲート誘電体との間に、特に10オングストローム未満(<1nm)の厚みを有する層である特に薄い酸化物層を形成する。
【0023】
本発明の好ましい実施形態の一部においては、ゲート誘電体は、例えばHf含有材料であるhigh−k誘電体である。
【0024】
high−kゲート誘電体上のFUSIゲート電極を用いてMOSデバイスを製造する利点は、既存の製造設備を使用してULSIデバイスの更なるスケーリングが達成可能になることである。これにより、ULSIデバイス製造プロセスで使用される機械の大幅な変更を要する可能性のある、デュアル金属ゲート電極デバイスを導入する必要性が回避される。
【0025】
本発明の上述及び他の特徴並びに利点は、例証として与えられ且つ添付図面で説明される本発明の好ましい実施形態の以下の説明から明らかとなるであろう。
(発明を実施するための最良の形態)
【0026】
次に本発明の好ましい実施形態を図2から図4を参照しながら説明する。本明細書では、好ましい実施形態による方法は、MOSFETデバイスのゲートスタック構造を作製するのに使用されものとする。しかしながら、本発明は、MOSFETデバイスの作製での用途に限定されるものではない点を理解されたい。
【0027】
図2Aに示されるように、ゲート誘電体の層10が基板1(図2には図示せず。図3を参照)上に形成される。基板1は通常シリコンであり、例えば、ゲート誘電体10内の移動度を高め、又はゲート誘電体の堆積を可能にするためSiOなどの被覆層5(同様に図2には図示せず)を有することができる。本発明の好ましい実施形態においては、このゲート誘電体10は、特にHf含有材料(例えばHfO)であるhigh−k誘電体材料で形成される。ゲート誘電体層10を形成するために、限定ではないが、原子レベル化学蒸着法(ALCVD)、有機金属化学蒸着法(MOCVD)などを含むあらゆる好都合なプロセスをあらゆる適切な後加工処理(例えば堆積後アニーリング)と共に用いることができる。しかしながら、後加工処理により、層10を形成するhigh−k誘電体材料を通じる酸素の拡散能力が低下することになる場合には、再酸化条件を調整して補償する必要がある。通常、ゲート誘電体層10は、誘電率に応じて1nmから10nmの厚みを有することになる。
【0028】
必要に応じて、次工程の前にキャッピング層(図示せず)をゲート誘電体10上に形成することができる。これは、ゲート誘電体層10を形成するhigh−k材料が、酸素の透過に対する障壁として作用する場合に特に適切である(例えば、プラズマ窒化などの堆積後処理のため)。本発明によれば、ゲート誘電体の上部の数オングストロームが、酸素を通過させることができるのが望ましい(以下で詳細に説明されるように、ポリシリコンゲートの下部数オングストロームを酸化して、フェルミ準位ピニングを解放する薄い「特別な」層を形成させるようにする)。従って、ゲート誘電体層10を形成するhigh−k材料を通る酸素拡散が不十分である場合、少量のHfO、又は別の優れた酸素伝導体から形成されたキャッピング層を堆積させることが有利とすることができる(これは、より低温或いはより迅速な再酸化を達成する助けとなる)。
【0029】
ポリSi層20は、例えば化学蒸着法(CVD)、プラズマアシストCVD、スパッタリングなどのあらゆる好都合なプロセスによってゲート誘電体10上に(或いは妥当な場合には、キャッピング層の上に)形成される。このステージでは、ポリSi層20は通常、10nmから200nmの厚みを有する。ポリSi層を堆積させるのに使用される技術は、本発明を成功させるためには重要でない。しかしながら、実用上の観点からは、細粒結晶又は柱状結晶ポリSiの層の形成をもたらす堆積技法を用いるのが好ましい(以下で検討される側方再酸化ステップの間に迅速に酸化されるようにする)。
【0030】
ポリSi層20は、ゲート電極の所要の寸法に従ってパターニングされ、図2Bに概略的に示されるような構造体を生成する。通常、パターニング後、ポリSi層は、テクノロジーノードに応じて25から100nmの範囲の長さを有する。
【0031】
ポリSi層20をパターニングするためにあらゆる好都合なプロセスを使用することができ、例えば、場合によっては、標準ドライエッチング・プロセスを用いることができる。ゲート誘電体層10がhigh−k材料から形成される場合、標準ドライエッチング・プロセスを既知の方法で修正して、下側のSi基板に凹部を形成することなく、ゲート電極のエッチング中に露出される区域から確実にhigh−k誘電体を除去することができるようにする。
【0032】
ゲート電極のパターニングが行われた後、図2Cに示されるように、ポリSi材料20とゲート誘電体10との間の境界面に二酸化シリコン(SiO)の障壁層30を生成させる目的で、制御された側方酸化プロセスが行われる。酸化物層30の厚みは、酸化プロセス中に適用されるプロセス条件によって決定付けられる。
【0033】
側方再酸化プロセスは、HfOゲート誘電体10とポリSi層20との間に薄いSiO層30を上手く生成させることができる。このことは、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて作成された画像を示す図3において図示されている。図3の画像は、ポリシリコンのパターニング後に、通常の高温700−900℃熱酸化ステップで処理されたウェーハから作成された。
【0034】
図3Aは、側方再酸化プロセスが行われる前のHfOゲート誘電体層10とポリSi層20との間の境界面を示す。図3Bは、側方再酸化プロセスの終了後の境界面を示す。障壁酸化物層30が図3Bで標識されている。
【0035】
図3によって示された実施例においては、障壁層30は、0.8nm(8オングストローム)の厚みを有する。これは、望ましい厚みよりも大きいが、側方再酸化プロセスが、high−k誘電体層10と上側のポリSi層20との間にSiOの層を生成させるのに有効であることを実証するのに役立つ。
【0036】
ポリシリコンとhigh−k層との間に、実施可能な用途向けに側方酸化によって成長させた十分に厚みが薄いSiO層を生成するためには、バッチ式ウェーハ炉内での低温500−700℃酸化、或いは単一ウェーハツール内での600−800℃急速熱酸化を用いることが望ましい。デバイスウェーハ上の側方成長SiOの厚みを推定することは困難であるので、酸化条件は、デバイスウェーハと同じ条件を用いて酸化されるベアSiモニタウェーハ上で検証される。側方成長SiOの厚みは、ベアSiOウェーハ上に成長したものよりも遙かに薄くなる。
【0037】
更に、酸化条件は、ゲート誘電体材料、特に材料の酸素拡散特性によって左右されることになる。誘電体層を通る酸素の迅速な側方拡散は、より短時間及び/又はより低温の酸化手順を可能とする。HfOは、側方での酸素の急速拡散を可能にし、一方、Hfシリケートは、より遅い拡散を可能にする。HfSiONは極めて遅い酸素拡散を可能にする可能性が高く、従って、より強化された(より高温又はより長時間)酸化条件を必要とする。側方酸化によってゲート誘電体層10とポリSi層20との間に薄いSiO層を成長させるためには、ベアシリコンウェーハ上に1−2nmのターゲットSiO層を生成させる酸化条件が最適である。
【0038】
本発明の好ましい実施形態によれば、酸化物障壁層30の厚みは、ゲート長に関連付けられる必要がある。パターニングされたポリSiラインにわたる側方酸化の程度は、酸化温度、分圧、酸化時間、誘電体を通過する酸素透過度に強い依存性があり、ポリシリコン結晶粒子の酸化速度に対して弱い依存性がある。この関係は数学的に複雑であるが、酸化厚みは拡散限界によって決定付けられる値で飽和することが分かっている。
【0039】
より詳細には、酸化物層30の厚みを10オングストローム(1nm)未満、例えば6オングストロームの値に設定することが有利であることが分かった。
【0040】
原理的には、フェルミ準位ピニングを解放し、非SiO誘電体上のポリSiのVt値をSiO上のポリSiのVt値に近付けるには、1単分子層又は〜0.3nm厚の最小SiO層で十分であろう。しかしながら、実際には、側方酸化によってSiOの0.3nm層の均一な成長を確保することは困難な可能性がある。実際の問題として、0.5nm+/−0.1nmSiO2層を生成する目的で酸化条件を設定することは容易である。この厚みのSiO層は、Vtシフト低減の利点を与えるが、EOTでは限定的な増大を生じさせるに過ぎない。EOTのこの増大は、ポリSi層20を完全シリサイド化形態に変換して、金属様FUSIゲートの使用により得られるポリ空乏化ゲイン(〜0.4nm)を上手く利用することを可能にすることによって補償することができる。厚み及びプロセス条件のこの選択によれば、Vt低減又はSiOとのVt整合及びポリ空乏化の利点を実現することができる。
【0041】
本発明の好ましい実施形態による方法の後続のステップ(図2Dから図2Fに示される)は、FUSIゲート電極を構成するためのポリSi層20から完全シリサイド化形態への変換に関する。しかしながら、好ましい方法におけるこれらの後続のステップの説明を続ける前に、図2Cのゲートスタック構造に基づくMOSデバイス、すなわちポリSiゲート電極を有するデバイスの特性を考察することは有用である。
【0042】
本発明者は、本発明の好ましい実施形態による方法を用いて作製されたデバイスが、ゲート長のスケールダウンされるとVtシフトが低減されることに気付いた。デバイス性能におけるこの改良は、上述の側方再酸化プロセスによって生成された酸化物の薄い障壁層30に起因する。
【0043】
改良されたVtシフトは、図4の考察から理解することができる。図4は、再酸化(上述のような)によって生成された障壁酸化物層30を有するが、ポリSiゲート電極のデバイスに関する。
【0044】
図4Aには、これまで説明された上記の好ましい実施形態による方法を用いて作製されたPMOSFET構造体の第1のグループについて、並びにポリSiゲート電極で2.5nmSiOゲート誘電体を用いた第1の比較例についてのVtに対するゲート長がプロットされている。本発明によるPMOSFET構造体のこの第1のグループは、上記の比較例の第1のグループに基づいている。
【0045】
本発明による第1の実施例は、上述の第2の比較例に基づいたPMOSFET構造体であり、これは3nm厚のHfOゲート誘電体(SNxキャッピング層がない)を使用し、ポリSiゲート電極とゲート電極層との間には、バッチ炉内のプロセス条件下で側方酸化によって700℃でベアウェーハ上に2nm厚SiO層を与えるように形成されたSiO障壁層が存在する。デバイスウェーハ上のこの層の正確な厚みは、後でXTEMによって見られる。この第1の実施例についての結果は、図4Aで中空円を用いて示される。
【0046】
本発明による第2の実施例は、上述の第3の比較例に基づいたPMOSFET構造体であり、これは、1nm厚のHfSiOxキャッピング層によって覆われた2.5nm厚のHfOゲート誘電体を使用し、ポリSiゲート電極とゲート電極層との間には、バッチ炉内のプロセス条件下で側方酸化によって700℃で2nm厚SiO層30を与えるように形成されたSiO障壁層が存在する。この第2の実施例についての結果は、図4Aで中空三角を用いて示される。
【0047】
第2の比較例について図1に示された結果(三角)と、第1の実施例についての図4Aに示された結果(円)との比較は、HfOゲート誘電体とポリSiゲート電極との間の側方酸化成長層SiOによって、このhigh−k誘電体材料を使用するときに観察されるVtシフトの低減がもたらされることを示している。Vtシフトの低減は、より短いゲート長で特に顕著である。
【0048】
第3の比較例について図1に示された結果(円)と第2の実施例について図4Aに示された結果(三角)との比較は、この場合もまた、HfSiOxでキャッピングされたHfOゲート誘電体とポリSiゲート電極との間の側方酸化成長SiOにより、このhigh−k誘電体材料を使用するときに観察されるVtシフトの低減がもたらされ、より短いゲート長で著しいことを示している。
【0049】
図4Aは、側方酸化によるVt低下は、実際には炉内バッチ式ウェーハ酸化ステップが使用された場合において達成されるという概念を示している。しかしながら、これらの実施例における側方再酸化成長層30の厚みは、必要とされるよりも厚くなる可能性がある。従って、より短時間及びより低温を使用する急速熱酸化単一ウェーハツールを用いて実験が反復され、より薄いSiO層を実現することができた。モニタウェーハのデータは、当該反復された実験において、EOTの増大が<0.8nmであったことを示した。この実験は、側方酸化によるVt低下の作用が、1単分子層が理論的限界であるより薄いSiOの層を用いても達成できることを示した。
【0050】
図4Bには、上述の好ましい実施形態で採用された再酸化方法を用いて作製されたPMOSFET構造体の第2のグループについて、並びに第1の比較例についてのVtに対するゲート長がプロットされている。PMOSFET構造体の第2のグループは全て、1nmのHfSiOキャッピング層によって覆われた2.5nm厚のHfO層から形成されたゲート誘電体層と、ポリSiゲート電極層を使用する。
【0051】
第3の実施例は、HfSiO誘電体キャッピング層とポリSiゲート電極との間で、側方成長SiO層(34秒間の800℃及び1Torrでの急速熱酸化条件、すなわちベアSiウェーハ上に1nmの酸化物層を成長させる条件下で成長した)を有するPMOSFET構造体である。この第3の実施例についての結果は、図4Bに中空直立三角を用いて示されている。
【0052】
第4の実施例は、HfSiO誘電体キャッピング層とポリSiゲート電極との間で、側方成長SiO層(68秒間の800℃及び1Torrでの急速熱酸化条件、すなわちベアSiウェーハ上に2nmの酸化物層を成長させる条件下で成長した)を有するPMOSFET構造体である。この第4の実施例についての結果は、図4Bに中空円(すなわち図で下辺が水平な三角)を用いて示される。
【0053】
第5の実施例は、HfSiO誘電体キャッピング層とポリSiゲート電極との間に、コールドウォール式急速熱処理チャンバ内のin−situ蒸気発生(ISSG)により形成された酸化物層30を有するPMOSFET構造体であり、ウェーハが、12.5Torrの圧力のNO中26秒間800℃に保持される(ベアSiウェーハ上で名目上1nm成長を目標とする)。この第5の実施例についての結果は、図4Bに中空横向き三角(すなわちその下辺が傾斜している三角)を用いて示される。
【0054】
本発明による第6の実施例は、HfSiO誘電体キャッピング層とポリSiゲート電極との間に、コールドウォール式急速熱処理チャンバにおいてISSGにより形成された酸化物層30を有するPMOSFET構造体であり、ウェーハが、12.5Torrの圧力のNO中52秒間800℃に保持される。この第6の実施例についての結果は、図4Bに中空菱形を用いて示される。
【0055】
図4Bは、急速熱酸化条件で行われる更に短時間の酸化手順でもVtシフト低減をもたらす側方酸化を達成するのに有効であることを示している。
【0056】
上記の結果は、high−k誘電体とポリSi電極との間の薄い酸化物障壁層の形成が、フェルミ準位ピニングを解放し且つ許容可能な仕事関数モジュレーションを提供するのに有効であることを明示している。更にポリ空乏化も改善される。しかしながら、酸化物障壁層の厚みが最小にされる場合であっても、この酸化物障壁層の生成はゲートでのEOTのほぼ0.4nmの増大をもたらす。従って、EOTでのこの増大を打ち消すための何らかの手段を導入することが望ましい。
【0057】
high−k誘電体又はSiON上にFUSIゲートを使用するデバイスは、ポリSiゲートを使用する比較デバイスよりも有意に低いCETinvを有することは公知である。詳細には、ポリSiゲート電極を有するデバイスと比較して、ほぼ0.3nmのCETinvでの低下がFUSIゲート電極を有するデバイスにおいて見られる。
【0058】
本発明の好ましい実施形態によれば、酸化物障壁層30が形成された後、ポリSi層20は完全シリサイド化形態に変換されてFUSIゲート電極が生成し、これによってデバイスのEOTが低減される。
【0059】
ここで図2に戻り、ポリSi層20をFUSIゲート電極に変換するプロセスを説明する。障壁酸化物層30が形成された後、通常ニッケル(Ni)又はコバルト(Co)である金属層40が、図2Dに示されたようにポリSi層20の上に堆積される。典型的にはニッケル層がスパッタリングによって堆積される。当該層は、ポリSi及び周囲の活性ソース/ドレイン領域を含むウェーハ全体を覆って堆積される。通常、スペーサが、ゲートとソース/ドレイン領域との間に存在することになる(その結果、シリサイド化がゲートとソース及びドレイン領域とでは起こるがスペーサの上では起こらず、従って、ゲートとソース−ドレイン領域との間の導電経路が回避される)。
【0060】
結果として得られたゲートスタック構造体は、通常、300−500℃の間の温度で焼結され、これにより当該金属種はポリSi内に拡散してこれと完全に反応する(障壁酸化物層30との境界面に至るまで)。これは、図2Eに示されるように完全シリサイド化層50を生成し、これにより完成したゲートスタック構造体が形成される(コンタクトの接続ができる状態)。
【0061】
層50は、ポリSiプロセスに適合するあらゆる望ましい厚みを有することができる。金属層40(例えばNi)の厚みは、ポリシリコンの完全シリサイド化を与えるようにポリSi層20の厚みに基づいて調整される。FUSIゲート電極を形成させるのに必要な技術及び条件は当業者に公知であり、従って更なる詳細はここでは与えられない。
【0062】
本発明の好ましい実施形態による方法は、適切な仕事関数モジュレーションのFUSIゲート電極とhigh−kゲート誘電体とを有するMOSデバイスを作製できることが認められた。このことは、65nm及び45nmテクノロジーノードでのFUSI電極の使用を実現可能にする。従って、ULSIデバイス特徴部が45/65nmにまでスケールダウンされる場合であっても、従来型の製造設備を使用することが依然として可能となる。より詳細には、公知のプロセス及び設備を用いて、本発明の様々なステップを実施することができ、再酸化又はシリサイド化ステップのための処理条件において軽微な改変が必要となるだけである(これによって、ゲート誘電体材料とのこれらのプロセスの適合性が確保され、これにより薄い側方酸化成長SiO層が形成される)。
【0063】
本発明は、特定の好ましい実施形態に関して上記で説明してきたが、この好ましい実施形態の特定の詳細を参照することにより本発明が限定されるものではない点を理解されたい。より具体的には、当業者であれば、添付の請求項で定義される本発明の範囲を逸脱することなく好ましい実施形態において修正及び展開を行い得ることを容易に理解するであろう。
【0064】
例えば、上述の好ましい実施形態において、薄い酸化物層は、high−k誘電体、特にHf含有high−k誘電体上に形成されたポリSi層の間に成長する。しかしながら、本発明は、他のhigh−k誘電体材料上、及びSiONゲート誘電体層などの他の非SiO誘電体材料上に形成されたポリSi層の間に酸化物層を成長させるように適用することができる。
【0065】
更に、本発明の上述の好ましい実施形態において、ポリSi層は、側方再酸化ステップが行われる前に、所要の形状のゲート電極を形成するようにパターニングされた。しかしながら、代替の手法が実施可能である。例えば、ポリSiの超薄層をウェーハ上の誘電体層10を覆って堆積させ、次いで完全酸化させ、次いでエッチングによって許容可能な厚みまで薄化させることができる。
【0066】
加えて、本発明は、MOSFETデバイスのゲートスタック構造体の作製に関する実施形態において説明してきたが、本発明は、特に閾値電圧制御は重要であるが、誘電体がSiOから非SiO誘電体(例えばhigh−k誘電体)に変更されるときには達成するのが困難である他のデバイスの製造に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明を利用しないPMOSFET構造体の種々の比較例における、ゲート長がスケールダウンされたときにどのようにVtが変化するかを示すグラフである。
【図2】本発明の1つの好ましい実施形態によるCMOSデバイスを形成する方法の主要ステップを概略的に示す図であり、図2Aから図2Eは当該方法においてそれぞれ異なるステップを示す。
【図3A】本発明の第1の好ましい実施形態のCMOSデバイス製造技法による、MOSデバイスのゲートスタック構造体のSiO障壁層の形成を示す図であり、初期におけるゲートスタック構造体を示す。
【図3B】本発明の第1の好ましい実施形態のCMOSデバイス製造技法による、MOSデバイスのゲートスタック構造体のSiO障壁層の形成を示す図であり、後期でのゲートスタック構造体を示す。
【図4A】本発明の好ましい実施形態による再酸化方法を用いて製造された様々なPMOSFETにおけるゲート長がスケールダウンされたときにVtがどのように変化するかを示すグラフであって、比較例の第1のグループに基づいたPMOSFET構造体の第1のグループについて得られた結果を示す。
【図4B】本発明の好ましい実施形態による再酸化方法を用いて製造された様々なPMOSFETにおけるゲート長がスケールダウンされたときにVtがどのように変化するかを示すグラフであって、PMOSFETの第2のグループについて得られた結果を示す。
【符号の説明】
【0068】
10 ゲート誘電体
20 多結晶シリコン層
30 酸化物
40 金属層
50 完全シリサイド化形態

【特許請求の範囲】
【請求項1】
MOSデバイスを製造する方法であって、
基板上にゲート誘電体材料の層を形成する段階と、
前記ゲート誘電体層上に多結晶シリコンの層を形成する段階と、
を含み、
前記ゲート誘電体材料の層の上に前記多結晶シリコンの層が形成された後に、前記多結晶シリコン層と前記ゲート誘電体との間に酸化物の層を形成する段階と、
前記多結晶シリコンを完全シリサイド化形態に変換する段階と、
を含むことによって特徴付けられる方法。
【請求項2】
前記酸化物層の形成段階が、1nm未満の厚みを有する酸化物層の形成を引き起こすように適合されたプロセス段階を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のMOSデバイス製造方法。
【請求項3】
前記ゲート誘電体材料がhigh−k誘電体材料である、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のMOSデバイス製造方法。
【請求項4】
前記ゲート誘電体材料がHf含有材料である、
ことを特徴とする請求項3に記載のMOSデバイス製造方法。
【請求項5】
前記ゲート誘電体材料がSiONである、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のMOSデバイス製造方法。
【請求項6】
ゲート誘電体及びFUSIゲート電極を備え、前記ゲート電極と前記ゲート誘電体との間に酸化物の層が存在する、
ことを特徴とする請求項1から請求項5の何れかの1つに記載のMOSデバイス製造方法。
【請求項7】
前記ゲート電極と前記誘電体との間の前記酸化物層が1nm未満の厚みである、
ことを特徴とする請求項6に記載のMOSデバイス。
【請求項8】
前記ゲート誘電体が、high−k誘電体材料の層を含む、
ことを特徴とする請求項6又は7に記載のMOSデバイス。
【請求項9】
前記ゲート誘電体がSiONの層を含む、
ことを特徴とする請求項6又は7に記載のMOSデバイス。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図4A】
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【図4B】
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【図3A】
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【図3B】
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【公表番号】特表2008−537347(P2008−537347A)
【公表日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−506933(P2008−506933)
【出願日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【国際出願番号】PCT/EP2005/051784
【国際公開番号】WO2006/111203
【国際公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【出願人】(504199127)フリースケール セミコンダクター インコーポレイテッド (806)
【Fターム(参考)】