説明

3次元形状測定装置

【課題】焦点位置を高速に移動させることなく、測定対象物の表面に形成されるレーザ光の照射スポットを小さく保つことができる3次元形状測定装置を提供する。
【解決手段】
レーザ光を出射するレーザ光源10と前記レーザ光を反射して走査するミラー30を設ける。レーザ光源10とミラー30の間にスポット形成器20を設ける。スポット形成器20は、前記レーザ光を平行光に変換するコリメートレンズ22、前記平行光をリング状の輪帯光に変換するフィルタ23、前記輪帯光を集光する第1リレーレンズ24及び第2リレーレンズ25を備える。さらに、測定した測定対象物までの距離の平均値を算出して、前記算出した平均値に応じてスポット形成器20を前記レーザ光の光軸方向に移動させる移動装置20aを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象物にレーザ光を走査しながら照射し、その反射光である散乱光を受光器で受光して、レーザ光の照射位置又は照射方向と、反射光の受光位置との関係から、3角測量法の原理により、測定対象物の3次元形状を測定する3次元形状測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、下記特許文献1に示されているように、レーザ光の焦点位置を測定対象物上に保持するように焦点位置を移動させる制御装置を設けて、測定対象物の表面に形成されるレーザ光の照射スポットを小さく保つことにより測定精度を向上させた測定装置は知られている。この制御装置は、レーザ光を透過させる複数のレンズの相対位置を変化させて、焦点位置を移動させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平08−193810号公報
【発明の概要】
【0004】
しかし、レーザ光を走査しながら照射して3次元形状を測定する装置においては、測定対象物の表面に急峻な凹凸がある場合には、レーザ光の焦点位置を高速に移動させる必要があり、そのための制御装置を設けるにはコストがかかる。本発明は上記問題に対処するためになされたもので、その目的は、焦点位置を高速に移動させることなく、測定対象物の表面に形成されるレーザ光の照射スポットを小さく保つことができる3次元形状測定装置を提供することにある。なお、下記本発明の各構成要件の記載においては、本発明の理解を容易にするために、後述する実施形態の対応箇所の符号を括弧内に記載しているが、本発明の各構成要件は、実施形態の符号によって示された対応箇所の構成に限定解釈されるべきものではない。
【0005】
上記目的を達成するために、本発明の特徴は、測定対象物(OB)に向けてレーザ光を出射するレーザ光源(10)と、レーザ光源から出射されたレーザ光の出射方向を変更して測定対象物の表面をレーザ光に走査させるレーザ光出射方向変更手段(30,40)と、レーザ光出射方向変更手段によるレーザ光の測定対象物への出射方向を検出する出射方向検出手段(41)と、測定対象物の表面にて反射する散乱光を受光する受光センサ(60)と、受光センサにおける散乱光の受光位置を検出する受光位置検出手段(170)と、受光位置検出手段によって検出された散乱光の受光位置を用いて、3角測量法の原理に基づいて測定対象物までの距離を算出し、出射方向検出手段によって検出されたレーザ光の出射方向及び前記算出した測定対象物までの距離を用いて前記測定対象物の表面の形状を表す3次元座標データを算出する座標データ算出手段(180)とを備えた3次元形状測定装置において、レーザ光源から出射されたレーザ光をリング状の輪帯光に変換する変換器(23,22A,23A,23B,23C)及び前記輪帯光を所定の焦点位置に集光する集光器(24,25)を有するスポット形成器(20)を、レーザ光源とレーザ光出射方向変更手段との間に設けたことにある。
【0006】
上記のように構成した3次元形状測定装置によれば、輪帯光を集光することによって、焦点深度を長くするとともに照射スポットを小さくすることができる。したがって、測定対象物の表面に急峻な凹凸がある場合であっても、測定対象物の表面の位置が常に焦点深度の範囲内にあれば、焦点位置を移動させなくても、測定精度を高く保つことができる。
【0007】
また、本発明の他の特徴は、前記算出した測定対象物までの距離を用いて算出した前記距離の平均値に応じて前記焦点位置を変更する焦点位置変更手段(20a)をさらに設けたことにある。この場合、焦点位置変更手段は、スポット形成器をレーザ光の光軸方向に移動させる移動装置(20a1,20a2)を備えるとよい。これによれば、測定対象物の表面の位置ができるだけ焦点深度の範囲内にあるように焦点位置を移動させることができる。上記のように、焦点深度が長いので急峻な凹凸がある場合でも焦点位置を高速に移動させる必要はなく、緩やかではあるが高低差の大きい凹凸に対応して、ゆっくりと焦点位置を移動させればよい。そのため、焦点位置変更手段の構成を簡単にできる。また、スポット形成器全体を移動させることにより焦点位置を移動させるようにしたので、上記従来の測定装置のようにスポット形成器を構成する変換器及び集光器の相対的な位置を変更して焦点位置を移動させる場合に比べて収差の発生量を小さくすることができ、照射スポットをより小さくすることができる。
【0008】
また、本発明の他の特徴は、変換器は、レーザ光の入射面又は出射面が円錐面状に形成されたアキシコンレンズ(23A,23B)を含むことにある。これによれば、平行光を輪帯光に変換するときのレーザ光の損失をほとんど無くすことができる。したがって、レーザ光源が出射するレーザ光の強度を高くする必要がないため、レーザ光源の劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態に係る3次元形状測定装置の全体概略図である。
【図2】レーザ光の光路を説明する説明図である。
【図3】図2の焦点位置を拡大した拡大図である。
【図4】コントローラが実行する3次元形状測定処理のフローチャートである。
【図5】コントローラが実行するケース駆動処理のフローチャートである。
【図6A】本発明の変形例に係り、スポット形成器を構成するレンズの配置を示す配置図である。
【図6B】本発明の他の変形例に係り、スポット形成器を構成するレンズの配置を示す配置図である。
【図6C】本発明のさらに他の変形例に係り、スポット形成器を構成するレンズの配置を示す配置図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施形態に係る3次元形状測定装置について図面を用いて説明する。この3次元形状測定装置は、図1に示すように、レーザ光を走査しながら測定対象物OBに照射するとともに、同照射による測定対象物OBからの反射光(散乱光)を受光する3次元カメラCAを備えている。
【0011】
3次元カメラCAは、レーザ光源10、スポット形成器20、ミラー30、モータ40、結像レンズ50及び受光センサ60を備えた筐体70を有する。レーザ光源10から出射されたレーザ光は、スポット形成器20及びミラー30を介して測定対象物OBに照射される。そして、測定対象物OBからの反射光(散乱光)は、ミラー30及び結像レンズ50を介して、受光センサ60に導かれて受光される。また、3次元カメラCAは、筐体70を回転させるモータ80及び減速装置90も有する。
【0012】
レーザ光源10は、3次元カメラCAから測定対象物OBまでの距離を測定するためのレーザ光を出射する。スポット形成器20は、ケース21、コリメートレンズ22、フィルタ23、第1リレーレンズ24及び第2リレーレンズ25を備える。ケース21は、中心軸方向の両端が開放された円筒状に形成されていて、ケース21の中心軸とレーザ光源10から出射されるレーザ光の光軸とが一致するように配置されている。コリメートレンズ22、フィルタ23、第1リレーレンズ24及び第2リレーレンズ25は、レーザ光源10側からこの順にケース21の内部に間隔をおいて固定されている。コリメートレンズ22は、レーザ光源10から出射されたレーザ光を平行光に変換する。フィルタ23は、中央部に円形に遮光された遮光部と周縁部に輪帯状の透光部を有し、コリメートレンズ22を透過して平行光となったレーザ光をリング状の輪帯光に変換する。第1リレーレンズ24及び第2リレーレンズ25は、フィルタ23を透過して輪帯光となったレーザ光を集光してミラー30を介して測定対象物OBの表面上に照射スポットを形成する。第2リレーレンズ25の焦点距離f2は、第1リレーレンズ24の焦点距離f1よりもやや小さい。第1リレーレンズ24及び第2リレーレンズ25は、図2に示すように、焦点距離f1の2倍の間隔をおいて配置されている。したがって、第2リレーレンズ25を透過したレーザ光は平行光に近いが、遠方で集光する光になる。なお、図2においては、ミラー30を省略している。また、第1リレーレンズ24及び第2リレーレンズ25を透過して集光された輪帯光は、光軸上で位相が一致して強め合う。そして、輪帯光を用いる場合は、レーザ光源10からのレーザ光をコリメートレンズ22で平行光に変換してフィルタ23を介すことなく第1リレーレンズ24及び第2リレーレンズ25で集光した通常のレーザ光よりも、焦点深度が長く焦点のスポット径が小さいビームを形成することができる。図3において、輪帯光によるビームを破線で示し、かつ通常のレーザ光によるビームを2点鎖線で示す。なお、図3においては、レーザ光の光軸方向の垂直方向を拡大していて、レーザ光の光軸方向を縮小している。
【0013】
また、この3次元カメラCAは、ケース21をその中心軸方向に移動させる移動装置20aも備えている。移動装置20aは、支持台20a1、圧電アクチュエータ20a2及び位置検出センサ20a3からなる。支持台20a1は、ケース21の側面部に組み付けられていて、図示しないガイド部材によって、ケース21の中心軸方向にのみ移動可能に支持されている。圧電アクチュエータ20a2は、筐体70に固定されていて、供給される電気信号の強度(電圧又は電流の大きさ)に応じて支持台20a1を駆動してケース21を移動させる。位置検出センサ20a3は、筐体70に固定されていて、ケース21の外周面に一定の光量の光を照射する光源(例えば、LED)及びこの光のケース21の外周面からの反射光を受光するフォトディテクタからなる。ケース21の外周面のうち、位置検出センサ20a3の光源から光が照射される部分は、前記光の反射率がケース21の移動方向に変化するようになっている。したがって、ケース21の移動量に応じて、フォトディテクタの受光量が変化する。フォトディテクタは受光量に応じた強度の受光信号を出力する。そのため、フォトディテクタの出力する受光信号の強度によって、ケース21の位置を検出することができる。この位置検出センサ20a3の検出結果は、詳しくは後述するように、圧電アクチュエータ20a2に供給する電気信号の強度の制御に用いられる。
【0014】
ミラー30は、長尺状に形成されていて、スポット形成器20からの輪帯光を反射するとともに、測定対象物OBからの反射光(散乱光)を反射するガルバノミラーである。ミラー30は、ミラー30の長手方向に平行かつレーザ光源10から出射されるレーザ光の光軸に垂直な軸31回りに回転可能に支持されている。ミラー30の軸31は、モータ40の回転軸に組み付けられていて、モータ40が正転逆転を繰り返すことによりミラー30が所定の回転角度の範囲で正転逆転する。これにより、スポット形成器20からの輪帯光を走査する。モータ40内には、モータ40の回転軸の回転を検出して、同回転を表す回転検出信号を出力するエンコーダ41が組み込まれている。この回転検出信号は、モータ40の回転軸の回転位置が基準回転位置に来るごとに発生されるz相信号φZ1と、所定の微小な回転角度ずつハイレベルとローレベルを繰り返す互いにπ/2だけ位相のずれたA相信号φA1及びB相信号φB1からなるパルス列信号とからなる。以下の説明においては、ミラー30の回転軸をX軸と言い、レーザ光源10からの出射されるレーザ光の光軸をY軸という。また、X軸及びY軸に直交する軸をZ軸と言う。
【0015】
結像レンズ50は、ミラー30にて反射した測定対象物OBからの反射光(散乱光)を受光センサ60上に結像させる。受光センサ60は、受光量に応じた強度の電気信号を出力する複数の受光素子を一列に配置したラインセンサである。
【0016】
また、筐体70は、軸71によってY軸周りに回転可能に3次元カメラCAのフレームに支持されている。フレームは、3次元カメラCAを構成する部品を支持する支持部材である。軸71は、減速装置90を介してモータ80の回転軸に組み付けられている。モータ80内には、モータ80の回転軸の回転を検出して、同回転を表す回転検出信号を出力するエンコーダ81が組み込まれている。この回転検出信号は、モータ80の回転軸の回転位置が基準回転位置に来るごとに発生されるz相信号φZ2と、所定の微小な回転角度ずつハイレベルとローレベルを繰り返す互いにπ/2だけ位相のずれたA相信号φA2及びB相信号φB2からなるパルス列信号とからなる。
【0017】
また、この3次元形状測定装置は、ミラー駆動回路100、ミラー角度検出回路110、ケース位置検出回路120、ケース駆動回路130、筐体駆動回路140、筐体角度検出回路150、形状測定用レーザ駆動回路160、センサ信号取り込み回路170及びコントローラ180も備えている。
【0018】
ミラー駆動回路100は、コントローラ180からのモータ40の駆動開始の指示に応答して、モータ40を駆動するための駆動信号をモータ40に出力する。この駆動信号は、ミラー30を所定の回転角度の範囲で正転逆転させるために、一定の周期でモータ40の回転方向を反転させる信号(例えば、矩形波、三角波、正弦波など)である。また、ミラー駆動回路100は、コントローラ180からのミラー30を初期回転角度にする指示に応答して、ミラー30を初期回転角度にするための駆動信号をモータ40に出力する。
【0019】
ミラー角度検出回路110は、エンコーダ41から回転検出信号を入力し、入力した回転検出信号のうちのパルス列信号を用いて、ミラー30の回転方向と回転速度とを含む、ミラー30の回転角度θxを算出する。ミラー角度検出回路110は、コントローラ180から、ミラー30の回転角度θxの出力開始を指示されると、前記算出した回転角度θxを表すデジタルデータのコントローラ180への出力を開始する。また、前記算出した回転角度θxを表すデジタルデータは、ミラー駆動回路100にも出力され、ミラー駆動回路100によるモータ40の回転駆動における回転速度の制御及びミラー30を初期回転角度にするための制御にも利用される。
【0020】
ケース位置検出回路120は、コントローラ180からのケース21の現在の位置を検出する指示に応じて、位置検出センサ20a3の検出結果を用いてケース21の現在の位置を算出して、ケース駆動回路130に出力する。ケース駆動回路130は、コントローラ180からスポット形成器20を指定する位置へ移動させるよう指示されると、ケース位置検出回路120による検出結果を用いて、ケース21の位置が前記指定された位置になるような駆動信号を圧電アクチュエータ20a2に出力する。
【0021】
筐体駆動回路140は、コントローラ180からのモータ80の駆動開始の指示に応答して、モータ80を駆動するための駆動信号を出力する。筐体駆動回路140は、モータ80の回転速度が一定になるように駆動信号を制御する。モータ80は、筐体駆動回路140から駆動信号を供給されて一定の速度で回転し、減速装置90を介して筐体70を回転させる。筐体70は、3次元形状測定の開始から終了まで一定の回転速度で一定の方向へ回転する。筐体70の回転速度は、ミラー30の回転速度よりも遅い。また、筐体駆動回路140は、コントローラ180からの筐体70を初期回転角度にする指示に応答して、筐体70を初期回転角度にするための駆動信号をモータ80に出力する。筐体角度検出回路150は、エンコーダ81から回転検出信号を入力し、入力した回転検出信号のうちのパルス列信号を用いて、筐体70の回転方向と回転速度とを含む、筐体70の回転角度θyを算出する。筐体角度検出回路150は、コントローラ180から筐体70の回転角度θyの出力開始を指示されると、算出した回転角度θyを表すデジタルデータのコントローラ180への出力を開始する。また、前記算出した回転角度θyを表すデジタルデータは、筐体駆動回路140にも出力され、筐体駆動回路140によるモータ80の回転駆動における回転速度の制御及び筐体70を初期回転角度にするための制御にも利用される。
【0022】
形状測定用レーザ駆動回路160は、コントローラ180から測定開始の指示を入力すると、一定強度のレーザ光がレーザ光源10から出射されるように駆動信号を制御してレーザ光源10に供給する。センサ信号取り込み回路170は、受光センサ60に接続されていて、コントローラ180からの取り込み開始指示を入力すると、受光センサ60の各受光素子が出力する信号を取り込んで、コントローラ180への出力を開始する。
【0023】
コントローラ180は、CPU、ROM、RAM、ハードディスクなどからなるマイクロコンピュータによって構成されており、キーボード、マウスなどからなる入力装置181からの測定開始の指示に応答して図4及び図5の各プログラムを実行する。そしてコントローラ180は、前記プログラムの実行により、ミラー駆動回路100、ミラー角度検出回路110、ケース位置検出回路120、ケース駆動回路130、筐体駆動回路140、筐体角度検出回路150、形状測定用レーザ駆動回路160及びセンサ信号取り込み回路170を制御するとともに、測定対象物OBの3次元画像データを作成して、測定対象物OBの3次元画像を表示装置182に表示する。
【0024】
つぎに、上記のように構成した3次元形状測定装置の動作について図4及び図5を用いて説明する。まず、作業者は、測定対象物OBの表面がおおよそ焦点深度内に位置するように測定対象物OB及び3次元カメラCAをセットする。そして、作業者が、入力装置181を用いて測定開始を指示すると、コントローラ180は、ステップS100にて、3次元形状測定処理を開始する。つぎに、コントローラ180は、ステップS102にて、各測定ポイントの番号を表す測定ポイント番号nを「0」に初期化する。つぎに、コントローラ180は、ステップS104にて、ミラー角度検出回路110、筐体角度検出回路150及びセンサ信号取り込み回路170にデータ出力開始を指示する。この指示に応答して、ミラー角度検出回路110は、ミラー30の回転角度θxを表すデジタルデータの出力を開始し、筐体角度検出回路150は、筐体70の回転角度θyを表すデジタルデータの出力を開始し、センサ信号取り込み回路170は、受光センサ60の各受光素子が出力する信号の強度を表すデジタルデータの出力を開始する。つぎに、コントローラ180は、ステップS106にて、ミラー30及び筐体70の回転角度を初期の回転角度にするよう、ミラー駆動回路100及び筐体駆動回路140に指示する。ミラー駆動回路100及び筐体駆動回路140は、前記指示に応答して、ミラー30及び筐体70を回転させて、それぞれの角度を初期の回転角度に設定する。
【0025】
つぎに、ステップS108にて、形状測定用レーザ駆動回路160にレーザ照射開始を指示する。形状測定用レーザ駆動回路160は、レーザ照射開始の指示に応答して、レーザ光源10に駆動信号を供給してレーザ光を出射させる。ここで、コントローラ180は、図5に示すケース駆動処理も開始する。前記ステップS108の処理後、コントローラ180は、ステップS110にて、ミラー駆動回路100にミラー30の駆動開始を指示する。ミラー駆動回路100は、駆動開始の指示に応答して、ミラー30に駆動信号を供給する。これにより、ミラー30がX軸回りに正転逆転し始める。つぎに、コントローラ180は、ステップS112にて、筐体駆動回路140に筐体70の駆動開始を指示する。これにより、筐体70がY軸回りに回転し始める。つぎに、コントローラ180は、ステップS114にて時間計測を開始する。
【0026】
つぎに、コントローラ180は、ステップS116にて、現在の時刻が測定ポイント番号nと所定の時間間隔Tとを乗算して算出される時刻を経過しているか否かを判定する。最初、測定ポイント番号nは「0」に初期化されているので、ステップS116においては、「Yes」と判定し、ステップS118に進む。つぎに、コントローラ180は、ステップS118にて、ミラー角度検出回路110から出力される、ミラー30の回転角度θxを表すデジタルデータを取り込む。
【0027】
つぎに、コントローラ180は、ステップS120にて、筐体角度検出回路150から出力される、筐体70の回転角度θyを表すデジタルデータを取り込む。つぎに、コントローラ180は、ステップS122にて、センサ信号取り込み回路170から出力される、受光センサ60の各受光素子が出力する信号の強度を表すデジタルデータを取り込む。そして、コントローラ180は、図示しない別のプログラムを開始し、各受光素子が出力した信号の強度を表すデジタルデータを用いて、3角測量法の原理に基づいて、3次元カメラCAから測定対象物OBまでの距離を表す距離データLを算出することを開始する。
【0028】
つぎに、コントローラ180は、ステップS124にて、前記ステップS120において取り込んだ回転角度θyが、予め設定された限界角度よりも大きいか否かを判定する。限界角度とは、筐体70が回転可能な最大の角度よりもやや小さい角度である。回転角度θyが限界角度以下である場合は、ステップS126に進んで、測定ポイント番号nをインクリメントし、ステップS116に戻る。ステップS126の処理により、測定ポイント番号nは「1」となっているので、ステップS116において、現在の時刻がT(すなわち、1×T)を経過しているかを判定する。判定結果が「No」のときは、再びステップS116を実行する。すなわち、判定結果が「Yes」となるまでステップS116を繰り返し実行する。そして、ステップS116の判定結果が「Yes」となると、上記のステップS118乃至ステップS124を実行する。このように、コントローラ180は、回転角度θyが限界角度に達するまで、ステップS116乃至ステップS126を繰り返し実行する。上記の通り、筐体70の回転速度は、ミラー30の回転速度よりも遅く、ミラー30の回転角度θxは、入力される駆動波形に応じて、周期的に変化する。したがって、筐体70の回転角度θyが限界角度に達するまで上記ステップS116乃至ステップS126を繰り返している間に、ミラー30の回転方向は何度も反転する。このように、コントローラ180は、レーザ光を走査しながら測定対象物OBに照射して、ステップS116乃至ステップS126からなる処理を繰り返し実行し、一定の時間間隔Tでミラー30の回転角度θxを表すデジタルデータ、筐体70の回転角度θyを表すデジタルデータ及び受光センサ60の各受光素子が出力する信号の強度を表すデジタルデータを取り込むとともに、受光センサ60の各受光素子が出力する信号の強度を表すデジタルデータを用いて距離データLを算出する。そして、取り込んだ回転角度θxを表すデジタルデータ、回転角度θyを表すデジタルデータ及び算出した距離データLを測定ポイント番号nごとにコントローラ180が備えるRAMに記憶する。
【0029】
そして、筐体70の回転角度θyが限界角度に達すると、コントローラ180は、ステップS128にて、形状測定用レーザ駆動回路160にレーザ照射停止を指示する。形状測定用レーザ駆動回路160は、レーザ照射停止の指示に応答して、レーザ光源10への駆動信号の供給を停止して、レーザ光の照射を停止させる。つぎに、コントローラ180は、ステップS130にて、ミラー駆動回路100にミラー30の駆動停止を指示する。ミラー駆動回路100は、駆動停止の指示に応答して、モータ40への駆動信号の供給を停止する。これにより、ミラー30の回転が停止する。つぎに、コントローラ180は、ステップS132にて、筐体駆動回路140に筐体70の駆動停止を指示する。筐体駆動回路140は、駆動停止の指示に応答して、モータ80への駆動信号の供給を停止する。これにより、筐体70の回転が停止する。つぎに、コントローラ180は、ステップS134にて、ミラー角度検出回路110、筐体角度検出回路150及びセンサ信号取り込み回路170にデータ出力停止を指示する。ミラー角度検出回路110、筐体角度検出回路150及びセンサ信号取り込み回路170は、この指示に応答してデータの出力を停止する。
【0030】
つぎに、コントローラ180は、ステップS136にて、各測定ポイントごとの距離データL、回転角度θx及び回転角度θyを用いて、測定対象物OBの表面形状を表す座標データ(x,y,z)群を算出する。コントローラ180は、一定の時間間隔Tで各種データを取り込んでいるため、各測定ポイントごとに算出される各座標データのx座標及びy座標が等間隔にならない場合がある。この場合、コントローラ180は、x座標及びy座標が等間隔になるように、前記算出した座標データを用いて補間演算を行う。そして、算出した座標データ群から測定対象物OBの3次元画像を表示装置182に表示するための3次元画像データを作成する。作成された3次元画像データは、表示装置182に供給され、表示装置182に測定対象物OBの3次元画像が表示される。そして、コントローラ180は、ステップS138にて、3次元形状測定処理を終了する。
【0031】
つぎに、図5に示すケース駆動処理について説明する。コントローラ180は、ステップS108によってレーザ照射開始の指示をすると、ステップS200にて、ケース駆動処理も開始する。つぎに、コントローラ180は、ステップS202にて、3次元カメラCAから測定対象物OBまでの距離の平均値を表す平均距離Laveを算出するために用いる距離データLのデータ数をカウントするカウンタmの値を「1」に初期化する。つぎにコントローラ180は、ステップS204にて、受光センサ60の受光信号を新たに取り込んで距離データLを算出したか否かを判定する。新たな距離データLを算出していない場合は、「No」と判定し、ステップS206に進む。コントローラ180は、ステップS206にて、レーザ照射を停止したか否かを判定し、レーザ照射を停止した場合は「Yes」と判定して、ステップS208にてケース駆動処理を終了する。一方、未だレーザ照射を停止していない場合は、ステップS204に戻る。コントローラ180は、新たな距離データLを算出すると、ステップS204にて「Yes」と判定し、ステップS210に進む。
【0032】
つぎに、コントローラ180は、ステップS210にて、前記3次元測定処理のステップS122において算出した距離データLをコントローラ180のRAMに設けられた平均距離算出バッファL(m)(ただし、m=1、2・・・30)にコピーする。つぎに、ステップS212にて、カウンタmの値が「30」であるか否かを判定する。最初、カウンタmの値が「1」に初期化されているので、ステップS212においては、「No」と判定し、ステップS214に進み、カウンタmの値をインクリメントする。これにより、カウンタmの値が「2」になる。そして、ステップS204に戻り、次の受光信号を取り込んで距離データLを算出するまで待機する。このように、コントローラ180は、ステップS204乃至ステップS210からなる処理を繰り返し実行し、30個の距離データLを平均距離算出バッファL(1)〜L(30)にコピーすると、ステップS212にて「Yes」と判定し、ステップS216に進む。そして、ステップS216にて、平均距離算出バッファL(1)〜L(30)の値を用いて、平均距離Laveを算出する。
【0033】
つぎに、コントローラ180は、ステップS218にて、前記ステップS216において算出した平均距離Laveを用いて、ケース21を移動させる位置を算出する。そして、ステップS220にて、前記ステップS218にて算出した位置にケース21を移動させるよう、ケース駆動回路130に指示し、ステップS202に戻る。コントローラ180は、上記のステップS204〜ステップS220からなる処理を、3次元形状測定処理におけるデータ取り込みが行われている間中実行し、30個の測定ポイントについての測定が終了するごとに平均距離Laveを算出して、平均距離Laveに基づいてケース21を移動させる。なお、この実施形態においては、平均距離Laveを算出するために30個の距離データL(1)〜L(30)を用いるようにしたが、平均距離Laveを算出するために用いる距離データLのデータ数は、30個に限られず、測定対象物OBに応じて増減可能である。
【0034】
上記のように構成した3次元形状測定装置においては、輪帯光を集光することによって、焦点深度を長くするとともに照射スポットを小さくした。したがって、測定対象物OBの表面に急峻な凹凸がある場合であっても、その部分の測定対象物OBの表面の位置が焦点深度の範囲内にあれば、測定精度を高く保つことができる。そのため、焦点位置を高速に移動させる必要がないので、3次元形状測定装置の構成を簡単にできる。さらに、3次元カメラCAから測定対象物OBまでの距離を30ポイント測定するごとに、この30個の測定値を用いて、3次元カメラCAから測定対象物OBまでの平均距離を算出し、算出した平均距離に応じて焦点の位置を移動させるようにした。すなわち、測定対象物OBの表面の位置ができるだけ焦点深度の範囲内にあるように焦点位置を移動させるようにしたので、測定精度を高く保つことができる。とくに、測定対象物OBの表面に、緩やかではあるが高低差の大きい凹凸がある場合に有効である。すなわち、上記のように焦点深度が長いので急峻な凹凸がある場合でも焦点位置を高速に移動させる必要はなく、緩やかではあるが高低差の大きい凹凸に対応して、ゆっくりと焦点位置を移動させればよい。そのため、移動装置20aの構成を上記のような簡単な構成にできる。また、ケース21を移動させることにより焦点位置を移動させるようにしたので、ケース21を固定した状態でスポット形成器20を構成する第1リレーレンズ24及び第2リレーレンズ25の相対的な位置を変更することにより焦点位置を移動させる場合に比べて収差の発生量を小さくすることができ、照射スポットをより小さくすることができる。
【0035】
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0036】
上記実施形態においては、コリメートレンズ22を透過して平行光となったレーザ光を輪帯光に変換するために、中央部が遮光されて周縁部に開口部を有するフィルタ23を用いた。しかし、図6Aに示すように、中央部に遮光材(例えばアルミニウム)を蒸着することによって、円形の遮光域を形成したコリメートレンズ22Aを用いてもよい。これによれば、フィルタ23が不要になる。また、図6Bに示すように、フィルタ23に代えて、円錐状に形成された円錐面を有するアキシコンレンズ23A,23Bを、それぞれの円錐面を向かい合わせて配置してもよい。この場合、アキシコンレンズ23Aの有効径に合わせて、コリメートレンズ22を選択すればよい。選択したコリメートレンズ22の外径がケース21の内径よりも小さい場合は、スペーサ21aを利用すればよい。これによれば、平行光を輪帯光に変換するときのレーザ光の損失をほとんど無くすことができる。また、図6Cに示すように、フィルタ23に代えて、アキシコンレンズ23Aと凸レンズ23Cを並べて配置してもよい。これによっても、平行光を輪帯光に変換するときのレーザ光の損失をほとんど無くすことができる。したがって、レーザ光源10が出射するレーザ光の強度を高くする必要がないため、レーザ光源10の劣化を抑制することができる。
【0037】
また、上記実施形態においては、移動装置20aによってケース21をその中心軸方向に移動させることによって、焦点位置を移動させるようにした。しかし、測定対象物OBの表面の凹凸の高低差が少なく、常に焦点深度の範囲内にある場合は、移動装置20a、ケース位置検出回路120及びケース駆動回路130を省略できる。そして、コントローラ180は、3次元形状測定処理のみを実行し、ケース駆動処理を実行しないようにすればよい。また、上記実施形態においては、ミラー30及び筐体70をそれぞれモータ40及びモータ80によって回転させてレーザ光を2方向に走査するようにしたが、照射スポットの位置を変化させることができるならばどのような構成にしてもよい。例えば、筐体70を固定して、2つのガルバノミラーを用いて2方向に走査してもよい。また、例えば、1つのガルバノミラーを用いて一方向に走査するとともに、3次元カメラCAを前記ガルバノミラーの走査方向に直角な方向に平行移動させるようにしてもよい。また、上記実施形態においては、ミラー30は、ガルバノミラーとしたが、ミラー30をポリゴンミラーにしてもよい。また、上記実施形態においては、測定対象物OBからの反射光(散乱光)を、ミラー30を介してラインセンサ60で受光するようにしたが、反射光(散乱光)をミラー30を介すことなくエリアセンサにて受光するようにしてもよい。これによれば、ミラー30を小型にできる。
【符号の説明】
【0038】
10…レーザ光源、20…スポット形成器、20a…移動装置、20a1…支持台、20a2…圧電アクチュエータ、21…ケース、22,22A…コリメートレンズ、23…フィルタ、23A,23B…アキシコンレンズ、24…第1リレーレンズ、25…第2リレーレンズ、30…ミラー、40…モータ、41…エンコーダ、60…受光センサ、100…ミラー駆動回路、110…ミラー角度検出回路、120…ケース位置検出回路、130…ケース駆動回路、160…形状測定用レーザ駆動回路、170…センサ信号取り込み回路、180…コントローラ、OB…測定対象物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物に向けてレーザ光を出射するレーザ光源と、
前記レーザ光源から出射されたレーザ光の出射方向を変更して前記測定対象物の表面を前記レーザ光に走査させるレーザ光出射方向変更手段と、
前記レーザ光出射方向変更手段による前記レーザ光の測定対象物への出射方向を検出する出射方向検出手段と、
前記測定対象物の表面にて反射する散乱光を受光する受光センサと、
前記受光センサにおける前記散乱光の受光位置を検出する受光位置検出手段と、
前記受光位置検出手段によって検出された前記散乱光の受光位置を用いて、3角測量法の原理に基づいて前記測定対象物までの距離を算出し、前記出射方向検出手段によって検出された前記レーザ光の出射方向及び前記算出した測定対象物までの距離を用いて前記測定対象物の表面の形状を表す3次元座標データを算出する座標データ算出手段とを備えた3次元形状測定装置において、
前記レーザ光源から出射されたレーザ光をリング状の輪帯光に変換する変換器及び前記輪帯光を所定の焦点位置に集光する集光器を有するスポット形成器を、前記レーザ光源と前記レーザ光出射方向変更手段との間に設けたことを特徴とする3次元形状測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の3次元形状測定装置において、
前記算出した測定対象物までの距離を用いて算出した前記距離の平均値に応じて前記焦点位置を変更する焦点位置変更手段をさらに設けたことを特徴とする3次元形状測定装置。
【請求項3】
請求項2に記載の3次元形状測定装置において、
前記焦点位置変更手段は、前記スポット形成器を前記レーザ光の光軸方向に移動させる移動装置を備えたことを特徴とする3次元形状測定装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のうちのいずれか1つに記載の3次元形状測定装置において、
前記変換器は、レーザ光の入射面又は出射面が円錐面状に形成されたアキシコンレンズを含む3次元形状測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【公開番号】特開2012−7897(P2012−7897A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−141445(P2010−141445)
【出願日】平成22年6月22日(2010.6.22)
【出願人】(000112004)パルステック工業株式会社 (179)
【Fターム(参考)】