III族窒化物半導体素子、エピタキシャル基板、及びIII族窒化物半導体素子を作製する方法
【課題】良好な表面モフォロジを有する窒化ガリウム系半導体膜を含むIII族窒化物半導体素子を提供する。
【解決手段】III族窒化物半導体光素子11aは、III族窒化物半導体支持体13、GaN系半導体領域15、活性層17及びGaN系半導体領域19を備える。III族窒化物半導体支持体13の主面13aは、基準軸Cxに直交する基準平面Scに対して傾斜する非極性を示しており、基準軸CxはIII族窒化物半導体のc軸方向に延びる。GaN系半導体領域15は半極性主面上13aに設けられる。GaN系半導体領域15のGaN系半導体層21は例えばn型GaN系半導体からなり、n型GaN系半導体にはシリコンが添加されている。GaN系半導体層23の酸素濃度が5×1016cm−3以上であるとき、GaN系半導体層23の主面上に引き続き成長される活性層17の結晶品質が良好になる。
【解決手段】III族窒化物半導体光素子11aは、III族窒化物半導体支持体13、GaN系半導体領域15、活性層17及びGaN系半導体領域19を備える。III族窒化物半導体支持体13の主面13aは、基準軸Cxに直交する基準平面Scに対して傾斜する非極性を示しており、基準軸CxはIII族窒化物半導体のc軸方向に延びる。GaN系半導体領域15は半極性主面上13aに設けられる。GaN系半導体領域15のGaN系半導体層21は例えばn型GaN系半導体からなり、n型GaN系半導体にはシリコンが添加されている。GaN系半導体層23の酸素濃度が5×1016cm−3以上であるとき、GaN系半導体層23の主面上に引き続き成長される活性層17の結晶品質が良好になる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、III族窒化物半導体素子、エピタキシャル基板、及びIII族窒化物半導体素子を作製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、酸素濃度に比例したn型キャリアをもつn型GaNが記載されている。酸素を原料ガスに含ませてGaAs基板の上にGaNをエピタキシャル成長させる。GaAs基板を除去してGaN自立膜を得る。
【0003】
特許文献2には、窒化ガリウム単結晶を成長する方法が記載されている。この方法によれば、酸素をn型ドーパントとして取り込むことができる。
【0004】
特許文献3には、GaN系化合物半導体の製造方法が記載されている。充填容器内に少なくとも一部が液体となるようにGaN系化合物半導体製造用アンモニアを充填する。該液相のアンモニア中の水分濃度がフーリエ変換赤外分光法(FT−IR)で測定して0.5volppm以下である。このアンモニアを原料として、基板を収容した反応室内にガス状態で導入して、GaN系化合物からなる層を基板上に形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−044400号公報
【特許文献2】特開2002−373864号公報
【特許文献3】特開2004−363622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
発明者の知見によれば、窒化ガリウムの非c面にはドナーとして働く酸素が取り込まれやすい。この現象は、半極性や無極性を有する主面を有する窒化ガリウム基板上に窒化ガリウム系半導体を堆積するとき、酸素の思わぬ取り込みによりデバイス特性を損ねないように酸素濃度を制御する必要があることを示している。一方、ファセット面に酸素が取り込まれやすいことは、酸素の添加により、窒化ガリウム系半導体の成長中において非c面の生成を安定化できる可能性を示唆している。このとき、窒化ガリウム基板の半極性や無極性を有する主面上への窒化ガリウム系半導体の成長では、窒化ガリウム系半導体はその酸素濃度により異なる結晶品質を有することになる。
【0007】
デバイス特性の見地からは、エピタキシャル膜が、n型のGaN基板のときに用いられる酸素濃度を有するとき、酸素が窒化ガリウム系半導体においてn型ドーパントであることを考慮するならば、半導体素子の電気特性が変わることを無視できないと推測される。例えば半導体光素子では、n型窒化ガリウム系半導体層、発光層及びp型窒化ガリウム系半導体への酸素ドープ量に応じてデバイスの発光効率及び電気特性が変わることを無視できないと推測される。
【0008】
本発明は、このような事情を鑑みて為されたものであり、良好な表面モフォロジを有する窒化ガリウム系半導体膜を含むIII族窒化物半導体素子を提供することを目的とし、また、III族窒化物半導体素子を作製する方法を提供する目的とし、さらに、良好な表面モフォロジを有する窒化ガリウム系半導体膜を含むエピタキシャル基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面に係るIII族窒化物半導体素子は、(a)III族窒化物半導体からなり、該III族窒化物半導体のc軸方向に延びる基準軸に直交する基準平面に対して有限の角度をなす主面を有するIII族窒化物半導体支持体と、(b)5×1016cm−3以上5×1018cm−3以下の酸素濃度を有しており、前記III族窒化物半導体支持体の前記主面上に設けられた窒化ガリウム系半導体領域とを備える。前記主面は半極性及び無極性のいずれか一方を示しており、前記窒化ガリウム系半導体領域は第1導電型窒化ガリウム系半導体層を含む。
【0010】
このIII族窒化物半導体素子によれば、窒化ガリウム系半導体領域が半極性面又は無極性面上に設けられると共に窒化ガリウム系半導体領域が5×1016cm−3以上の酸素を含むとき、窒化ガリウム系半導体領域の表面モフォロジが平坦になる。窒化ガリウム系半導体領域の表面も、基板主面の半極性面又は無極性面に応じてそれぞれ半極性又は無極性を示す。窒化ガリウム系半導体領域が5×1018cm−3以下の範囲を超えて酸素を含むとき、窒化ガリウム系半導体領域の結晶品質が良好ではなくなる。また、窒化ガリウム系半導体領域が1×1017cm−3以上の酸素を含むとき、窒化ガリウム系半導体領域の表面モフォロジがさらに平坦になる。
【0011】
本発明に係るIII族窒化物半導体素子は、(a)III族窒化物半導体からなり、該III族窒化物半導体のc軸方向に延びる基準軸に直交する基準平面に対して有限の角度をなす主面を有するIII族窒化物半導体支持体と、(b)5×1016cm−3以上5×1018cm−3以下の酸素濃度を有しており、前記III族窒化物半導体支持体の前記主面上に設けられた窒化ガリウム系半導体領域と、(c)前記窒化ガリウム系半導体領域上に設けられた活性層と、(d)前記活性層上に設けられた第2導電型窒化ガリウム系半導体層とを備える。前記主面は半極性及び無極性のいずれか一方を示しており、前記窒化ガリウム系半導体領域は第1導電型窒化ガリウム系半導体層を含み、前記活性層は、前記第1導電型窒化ガリウム系半導体層と前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層との間に設けられる。
【0012】
このIII族窒化物半導体素子によれば、窒化ガリウム系半導体領域が半極性面又は無極性面上に設けられると共に窒化ガリウム系半導体領域が5×1016cm−3以上の酸素を含むとき、窒化ガリウム系半導体領域の表面モフォロジが平坦になる。窒化ガリウム系半導体領域の表面も、基板主面の半極性面又は無極性面に応じてそれぞれ半極性又は無極性を示す。窒化ガリウム系半導体領域が5×1018cm−3以下の範囲を超えて酸素を含むとき、窒化ガリウム系半導体領域の結晶品質が良好ではなくなる。上記範囲の酸素濃度によれば、良好な表面モフォロジの第1導電型窒化ガリウム系半導体層上に活性層を設けることができる。また、窒化ガリウム系半導体領域が1×1017cm−3以上の酸素を含むとき、窒化ガリウム系半導体領域の表面モフォロジがさらに平坦になる。
【0013】
本発明の一側面に係るIII族窒化物半導体素子では、前記活性層における酸素濃度は5×1016cm−3以上であることができる。このIII族窒化物半導体素子によれば、活性層が5×1016cm−3以上の酸素を含むとき、活性層の表面モフォロジが平坦になる。また、酸素はドナーとして働くため、活性層が5×1016cm−3以上の酸素を含むとき、素子の駆動電圧が低減する、活性層のピエゾ電界が低減する、といった効果もある。さらに、本発明の一側面に係るIII族窒化物半導体素子では、前記活性層における酸素濃度は1×1017cm−3以上であることができる。このIII族窒化物半導体素子によれば、活性層が1×1017cm−3以上の酸素を含むとき、活性層の表面モフォロジがさらに平坦になる。
【0014】
本発明の一側面に係るIII族窒化物半導体素子では、前記活性層における酸素濃度は5×1018cm−3以下であることができる。このIII族窒化物半導体素子によれば、活性層が5×1018cm−3以下の範囲を超えて酸素を含むとき、活性層の結晶品質が良好ではなくなる。また、活性層が5×1018cm−3以下の範囲を超えて酸素を含むとき、活性層における自由キャリア吸収による光学ロスが増加する。
【0015】
本発明の一側面に係るIII族窒化物半導体素子では、前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層における酸素濃度は5×1016cm−3以上であることができる。このIII族窒化物半導体素子によれば、第2導電型窒化ガリウム系半導体層における酸素濃度が5×1016cm−3以上の酸素を含むとき、第2導電型窒化ガリウム系半導体層の表面モフォロジが平坦になる。また、本発明の一側面に係るIII族窒化物半導体素子では、前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層における酸素濃度は1×1017cm−3以上であることができる。このIII族窒化物半導体素子によれば、第2導電型窒化ガリウム系半導体層における酸素濃度が1×1017cm−3以上の酸素を含むとき、第2導電型窒化ガリウム系半導体層の表面モフォロジがさらに平坦になる。
【0016】
本発明の一側面に係るIII族窒化物半導体素子では、前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層における酸素濃度は5×1018cm−3以下であることができる。このIII族窒化物半導体素子によれば、第2導電型窒化ガリウム系半導体層における酸素濃度が5×1018cm−3以下の範囲を超えて酸素を含むとき、第2導電型窒化ガリウム系半導体層の結晶品質が良好ではなくなる。また、第2導電型窒化ガリウム系半導体層における酸素濃度が5×1018cm−3以下の範囲を超えて酸素を含むとき、第2導電型窒化ガリウム系半導体層の導電性が良好ではなくなる。
【0017】
本発明の一側面に係るIII族窒化物半導体素子では、前記第1導電型窒化ガリウム系半導体層の炭素濃度は5×1018cm−3以下であり、前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層の炭素濃度は5×1018cm−3以下であり、前記活性層の炭素濃度は5×1018cm−3以下であることができる。このIII族窒化物半導体素子によれば、成長中に不可避的に窒化ガリウム系半導体に取り込まれる炭素濃度が高いとき、安定なc面ファセットが出現しやすくなる。窒化ガリウム系半導体の炭素濃度を下げることにより、窒化ガリウム系半導体にファセットの発生を避けることができる。ただし、ここでいう炭素濃度からは窒化ガリウム系半導体を成長後に表面に形成されるコンタミネーションを除外する。
【0018】
本発明の一側面に係るIII族窒化物半導体素子は、別の第2導電型窒化ガリウム系半導体層を更に備えることができる。前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層のバンドギャップは前記別の第2導電型窒化ガリウム系半導体層のバンドギャップよりも大きく、前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層の酸素濃度は、前記活性層の酸素濃度よりも大きく、前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層は前記別の第2導電型窒化ガリウム系半導体層と前記活性層との間に設けられており、前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層は前記別の第2導電型窒化ガリウム系半導体層と接合を形成する。
【0019】
このIII族窒化物半導体素子によれば、第2導電型窒化ガリウム系半導体層の酸素濃度が活性層の酸素濃度よりも大きいので、第2導電型窒化ガリウム系半導体層と別の第2導電型窒化ガリウム系半導体層との接合面が平坦になり、これ故に、この界面における散乱ロスが低減される。
【0020】
本発明の一側面に係るIII族窒化物半導体素子は、前記活性層と前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層との間に設けられ窒化ガリウム系半導体からなる光ガイド層を更に備えることができる。前記活性層は、前記基準平面に対して傾斜する平面に沿って延在しており、前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層は電子ブロック層である。
【0021】
このIII族窒化物半導体素子によれば、半極性面や無極性面上に、活性層、光ガイド層及び第2導電型窒化ガリウム系半導体層を設けるので、これらの半導体層におけるピエゾ電界はc面上における半導体層におけるピエゾ電界に比べて小さい。小さいピエゾ分極により該主面上ではキャリアオーバーフローが発生しにくいので、ドナーして働く酸素をp型半導体層に添加して平坦化の効果を得ることができる。これ故に、酸素添加による平坦な表面モフォロジを有するp型半導体層に加えて、高いキャリア注入効率を提供できる。
【0022】
本発明のIII族窒化物半導体素子では、前記活性層は、交互に配列された井戸層及び障壁層を含み、前記井戸層の酸素濃度は6×1017cm−3以下であることができる。このIII族窒化物半導体素子によれば、活性層の酸素濃度が高いとき、自由キャリア吸収による光学的ロスが増加する。井戸層の酸素濃度が6×1017cm−3以下であるので、実効的な光学的ロスを避けることができ、また、井戸層の結晶品質の低下による発光効率の低下を避けることができる。
【0023】
本発明の一側面に係るIII族窒化物半導体素子では、前記主面の法線と前記基準軸との成す角度は10度以上170度以下であることができる。このIII族窒化物半導体素子によれば、非極性による寄与が適切に発揮される。この非極性は半極性及び無極性を表す。
【0024】
本発明の一側面に係るIII族窒化物半導体素子では、前記主面の法線と前記基準軸との成す角度は10度以上80度以下であり、或いは前記主面の法線と前記基準軸との成す角度は100度以上170度以下であることができる。このIII族窒化物半導体素子によれば、半極性や無極性による寄与が適切に発揮される。
【0025】
本発明の一側面に係るIII族窒化物半導体素子では、前記主面の法線と前記基準軸との成す角度は63度以上80度以下であり、或いは前記主面の法線と前記基準軸との成す角度は100度以上117度以下であることができる。このIII族窒化物半導体素子によれば、オフ角が上記の範囲にあるとき、ピエゾ分極が特に小さくなる。これ故に、キャリアオーバーフローが生じにくい。
【0026】
本発明の別の側面は、III族窒化物半導体素子のためのエピタキシャルウエハである。エピタキシャルウエハは、(a)III族窒化物半導体からなり、該III族窒化物半導体のc軸方向に延びる基準軸に直交する基準平面に対して有限の角度をなす主面を有するIII族窒化物半導体基板と、(b)5×1016cm−3以上5×1018cm−3以下の酸素濃度を有しており、前記III族窒化物半導体基板の前記主面上に設けられた第1導電型窒化ガリウム系半導体層と、(c)前記第1導電型窒化ガリウム系半導体層上に設けられた発光層と、(d)前記発光層上に設けられた第2導電型窒化ガリウム系半導体層とを備える。前記主面は半極性及び無極性のいずれか一方を示す。
【0027】
このエピタキシャルウエハによれば、第1導電型窒化ガリウム系半導体層が半極性面や無極性面上に設けられると共に第1導電型窒化ガリウム系半導体層が5×1016cm−3以上の酸素を含むとき、第1導電型窒化ガリウム系半導体層の表面モフォロジが平坦になる。良好な表面モフォロジの第1導電型窒化ガリウム系半導体層上に発光層を設けることができる。また、第1導電型窒化ガリウム系半導体層の表面も非極性を示す。第1導電型窒化ガリウム系半導体層が5×1018cm−3以下の範囲を超えて酸素を含むとき、第1導電型窒化ガリウム系半導体層の結晶品質が良好ではなくなる。
【0028】
本発明の別の側面に係るエピタキシャルウエハは、別の第2導電型窒化ガリウム系半導体層を更に備えることができる。前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層のバンドギャップは前記別の第2導電型窒化ガリウム系半導体層のバンドギャップよりも大きく、前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層の酸素濃度は、前記発光層の酸素濃度よりも大きく、前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層は前記別の第2導電型窒化ガリウム系半導体層と前記発光層との間に設けられており、前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層は前記別の第2導電型窒化ガリウム系半導体層と接合を形成する。
【0029】
このエピタキシャルウエハによれば、第2導電型窒化ガリウム系半導体層のバンドギャップが別の第2導電型窒化ガリウム系半導体層のバンドギャップよりも大きいと共に第2導電型窒化ガリウム系半導体層が別の第2導電型窒化ガリウム系半導体層と発光層との間に設けられるので、第2導電型窒化ガリウム系半導体層は電子ブロック層として働き、また別の第2導電型窒化ガリウム系半導体層はクラッド層として働く。第2導電型窒化ガリウム系半導体層の酸素濃度が発光層の酸素濃度よりも大きいので、第2導電型窒化ガリウム系半導体層と別の第2導電型窒化ガリウム系半導体層との接合の平坦性が優れる。これ平坦性により、第2導電型窒化ガリウム系半導体層と別の第2導電型窒化ガリウム系半導体層との界面による光散乱が低減される。
【0030】
本発明の別の側面に係るエピタキシャルウエハでは、前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層の酸素濃度は5×1016cm−3以上であり、前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層の酸素濃度は5×1018cm−3以下である。前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層は電子ブロック層であり、前記発光層は、交互に配列された井戸層及び障壁層を有する活性層を含み、前記発光層は、窒化ガリウム系半導体からなる光ガイド層を更に備え、該光ガイド層は、前記活性層と前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層との間に設けられ、前記発光層の前記光ガイド層は、前記基準平面に対して傾斜する平面に沿って延在している。また、本発明の別の側面に係るエピタキシャルウエハでは、前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層の酸素濃度は1×1017cm−3以上であることができる。
【0031】
このエピタキシャルウエハによれば、半極性面や無極性面上に、活性層、光ガイド層及び第2導電型窒化ガリウム系半導体層を設けるので、これらの半導体層におけるピエゾ電界はc面上の半導体層におけるピエゾ電界に比べて小さい。キャリア補償の観点からドナー不純物の酸素をp型半導体層に添加しないことが良いが、半極性面や無極性面による小さいピエゾ分極のため本基板主面ではキャリアオーバーフローが低減される。これ故に、第2導電型窒化ガリウム系半導体層の酸素濃度が5×1016cm−3以上5×1018cm−3以下であるけれども、キャリア注入効率の低下を避けることができる。
【0032】
本発明の別の側面に係るエピタキシャルウエハでは、前記主面の法線と前記基準軸との成す角度は10度以上80度以下であり、或いは前記主面の法線と前記基準軸との成す角度は100度以上170度以下であることができる。或いは、本発明の別の側面に係るエピタキシャルウエハでは、前記主面の法線と前記基準軸との成す角度は前記基準平面に対して63度以上80度以下であり、或いは前記主面の法線と前記基準軸との成す角度は前記基準平面に対して100度以上117度以下である。
【0033】
本発明の更なる別の側面は、III族窒化物半導体素子を作製する方法である。この方法は、(a)III族窒化物半導体からなり、主面を有するIII族窒化物半導体基板を準備する工程と、(b)III族原料及び窒素原料を成長炉に供給して、5×1016cm−3以上5×1018cm−3以下の酸素濃度を有する第1導電型窒化ガリウム系半導体層を前記III族窒化物半導体基板の前記主面上に成長する工程と、(c)III族原料及び窒素原料を前記成長炉に供給して、前記第1導電型窒化ガリウム系半導体層上に発光層を成長する工程と、(d)III族原料及び窒素原料を前記成長炉に供給して、第2導電型窒化ガリウム系半導体層を前記発光層上に成長する工程とを備える。前記主面は半極性及び無極性のいずれか一方を示し、前記第1導電型窒化ガリウム系半導体層の酸素は、前記III族原料及び前記窒素原料の少なくともいずれか一つに含まれる不純物として提供され、前記III族窒化物半導体基板の前記主面は、該III族窒化物半導体のc軸方向に延びる基準軸に直交する基準平面に対して有限の角度をなす。
【0034】
この方法によれば、半極性面や無極性面上に成長された窒化ガリウム系半導体層が、5×1016cm−3以上の酸素を含むとき、この窒化ガリウム系半導体層の表面モフォロジが平坦になる。このため、第1導電型窒化ガリウム系半導体層の表面にc面が現れることなく、窒化ガリウム系半導体層の表面も基板主面に応じた極性を示す。半極性面上に成長された窒化ガリウム系半導体層が5×1018cm−3以下の範囲を超える酸素を含むとき、この窒化ガリウム系半導体層の結晶品質が良好ではなくなる。良好な表面モフォロジの第1導電型窒化ガリウム系半導体層上に発光層の成長を行うことができる。また、窒化ガリウム系半導体層が、1×1017cm−3以上の酸素を含むとき、この窒化ガリウム系半導体層の表面モフォロジがより平坦になる。
【0035】
本発明に係る方法では、前記窒素原料はアンモニアを含み、前記窒素原料は不純物として水を含む。前記発光層における酸素濃度は5×1016cm−3以上であり、前記発光層における酸素濃度は5×1018cm−3以下であり、前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層における酸素濃度は5×1016cm−3以上であり、前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層における酸素濃度は5×1018cm−3以下である。前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層の酸素濃度は、前記発光層の酸素濃度よりも大きいことが良い。
【0036】
この方法によれば、酸素を含む窒化ガリウム系半導体の成長を主面上に行う際に、該主面の極性の向きに合わない特定のファセット面が成長中に出現することを抑制できる。このため、表面モフォロジが平坦になる。また、本発明に係る方法では、前記発光層における酸素濃度は1×1017cm−3以上であることができる。さらに、本発明に係る方法では、前記発光層における酸素濃度は5×1018cm−3以下であり、前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層における酸素濃度は1×1017cm−3以上であることができる。これらの方法によれば、表面モフォロジがさらに平坦になる。
【0037】
本発明に係る方法では、前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層の成長温度は前記1導電型窒化ガリウム系半導体層の成長温度よりも低いことが良い。この方法によれば、第2導電型窒化ガリウム系半導体層の成長温度を下げるので、発光層への熱ストレスが低減される。
【0038】
本発明に係る方法では、前記発光層はInAlGaN層を含むことができる。InAlGaN層では、アルミニウム組成により酸素濃度を調整可能であり、In組成の調整により適切なバンドギャップを得ることができる。或いは、本発明に係る方法では、前記発光層はInGaN層を含むことができる。
【0039】
本発明に係る方法では、前記窒素原料として、水分含有量500ppb%以下のアンモニアを用いることができる。また、本発明に係る方法では、前記窒素原料として、水分含有量50ppb%以下のアンモニアを用いることができる。さらに、前記窒素原料として、水分含有量1ppb%以下のアンモニアを用いることができる。
【0040】
本発明に係る方法では、前記窒素原料の原料源と前記成長炉との間に設けられた精製装置を用いて前記窒素原料の水分濃度を調整した後に、前記成長炉に前記窒素原料を供給し、前記窒素原料はアンモニアからなることができる。この発明に係る方法では、前記窒素原料の前記水分濃度は1ppb%以下であることができる。窒素原料中の水分濃度を調整することによって、半導体層中の酸素濃度を制御することができる。同様にして、半導体層中の酸素濃度を制御するのに、III族原料中の水分濃度を調整してもよい。
【0041】
本発明の上記の目的および他の目的、特徴、並びに利点は、添付図面を参照して進められる本発明の好適な実施の形態の以下の詳細な記述から、より容易に明らかになる。
【発明の効果】
【0042】
以上説明したように、本発明の一側面によれば、良好な表面モフォロジを有する窒化ガリウム系半導体膜を含むIII族窒化物半導体素子を提供できる。また、本発明の別の側面によれば、このIII族窒化物半導体素子を作製する方法を提供できる。さらに、本発明の更なる別の側面によれば、良好な表面モフォロジを有する窒化ガリウム系半導体膜を含むエピタキシャル基板を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】図1は、本実施の形態に係るIII族窒化物半導体光素子を概略的に示す図面である。
【図2】図2は、本実施の形態に係るIII族窒化物半導体光素子を概略的に示す図面である。
【図3】図3は、c面及び半極性面上における、活性層、光ガイド層及びp型窒化ガリウム系半導体層におけるバンドダイアグラムを示す図面である。
【図4】図4は本実施の形態の作製方法における主要な工程における生産物を示す図面である。
【図5】図5は本実施の形態の作製方法における主要な工程における生産物を示す図面である。
【図6】図6は本実施の形態の作製方法における主要な工程における生産物を示す図面である。
【図7】図7は本実施の形態の作製方法における主要な工程における生産物を示す図面である。
【図8】図8は、実施例1における半導体レーザLD1を示す図面である。
【図9】図9は、半導体レーザLD1及び半導体レーザLDC1におけるレーザ構造のp型コンタクト層の表面モフォロジを表す微分干渉顕微鏡像を示す図面である。
【図10】図10は、実施例2における半導体レーザLD2を示す図面である。
【図11】図11は、絶対温度300度及び絶対温度10度において測定したELスペクトルを示す図面である。
【図12】図12は、実施例3における発光ダイオードを示す図面である。
【図13】図13は、実施例4におけるレーザダイオードの構造を示す図面である。
【図14】図14は、実施例4および比較例のp型コンタクト層における表面モフォロジを示す図面である。
【図15】図15は、実施例5におけるレーザダイオードの構造を示す図面である。
【図16】図16は、実施例4及びその比較例におけるレーザダイオードのI−V特性を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本発明の知見は、例示として示された添付図面を参照して以下の詳細な記述を考慮することによって容易に理解できる。引き続いて、添付図面を参照しながら、本発明のIII族窒化物半導体素子、エピタキシャル基板、並びにエピタキシャル基板及びIII族窒化物半導体素子を作製する方法に係る実施の形態を説明する。可能な場合には、同一の部分には同一の符号を付する。引き続く説明では、半導体素子の一例として半導体光素子を説明する。
【0045】
図1は、本実施の形態に係るIII族窒化物半導体光素子を概略的に示す図面である。図1に示されたIII族窒化物半導体光素子は、例えば発光ダイオードに適用可能な構造を有する。III族窒化物半導体光素子11aは、III族窒化物半導体支持体13と、窒化ガリウム系半導体領域15と、活性層17と、窒化ガリウム系半導体領域19とを備える。III族窒化物半導体支持体13は、例えばGaN、InGaN、AlGaNといったIII族窒化物半導体からなる。III族窒化物半導体支持体13は主面13a及び裏面13bを含む。III族窒化物半導体支持体13の主面13aは、非極性を示す。この非極性は、半極性及び無極性のいずれかを表す。
【0046】
III族窒化物半導体支持体13が無極性の主面13aを有するとき、主面13aは、III族窒化物半導体のa面、m面であることができ、或いはc軸の回りに関する回転によりa面又はm面から傾斜した面であることができる。III族窒化物半導体支持体13が半極性の主面13aを有するとき、III族窒化物半導体支持体13の主面13aは、基準軸Cxに直交する基準平面Scに対して傾斜する半極性を示しており、基準軸CxはIII族窒化物半導体のc軸方向に延びる。
【0047】
基準平面Scは例えば代表的なc面を示している。基準平面Scはc軸ベクトルVCに直交しており、主面13aには法線ベクトルVNが示されている。c軸ベクトルVCは法線ベクトルVNに対して角度Aoffの角度を成す。この角度Aoffはc面に対するオフ角と呼ばれる。図1を参照すると、III族窒化物半導体の六法晶系の結晶軸a軸、m軸及びc軸を示す結晶座標系CRが示されており、六法晶におけるc面を「(0001)」を表記し、「(000−1)」と表記される面方位は(0001)面に対して反対を向く。また、直交座標系Sは、幾何学座標軸X、Y、Zを示す。傾斜の方向は例えばa軸またはm軸であることができる。窒化ガリウム系半導体領域15、活性層17及び窒化ガリウム系半導体領域19は非極性主面上に軸Axに沿って配列されている。主面13aの法線ベクトルVNと基準軸Cxとの成す角度は基準平面Scに対して10度以上170度以下であることができる。
【0048】
窒化ガリウム系半導体領域15は主面上13aに設けられている。窒化ガリウム系半導体領域15は、5×1016cm−3以上5×1018cm−3以下の酸素濃度を有する。酸素濃度は、例えば原料中の不純物濃度、基板のオフ角、成長温度、混晶の組成等により制御可能である。また、窒化ガリウム系半導体領域15の酸素濃度は、1×1017cm−3以上であることがさらに好ましい。窒化ガリウム系半導体領域15は一または複数の窒化ガリウム系半導体層を含むことができる。本実施例では、窒化ガリウム系半導体領域15は第1導電型窒化ガリウム系半導体層21及び窒化ガリウム系半導体層23からなる。窒化ガリウム系半導体層21は例えばn型半導体層であり、窒化ガリウム系半導体層23は例えば緩衝層であることができる。第1導電型窒化ガリウム系半導体層21は例えばn型窒化ガリウム系半導体からなり、n型窒化ガリウム系半導体には、例えばシリコンといったn型ドーパントが添加されている。n型窒化ガリウム系半導体は、例えばGaN、AlGaN、InGaN、InAlGaN等からなることができる。窒化ガリウム系半導体層23は例えばアンドープ窒化ガリウム系半導体からなる。窒化ガリウム系半導体は、例えばInGaN、InAlGaN、GaN等からなることができる。窒化ガリウム系半導体層23が5×1016cm−3以上の酸素濃度を有するとき、窒化ガリウム系半導体層23の主面上に引き続き成長される活性層17の結晶品質が良好になる。また、窒化ガリウム系半導体層23とこの半導体層の主面上に成長される窒化ガリウム系半導体との界面が良好になる。また、窒化ガリウム系半導体層23が1×1017cm−3以上の酸素濃度を有するとき、窒化ガリウム系半導体層23の主面上に引き続き成長される活性層17の結晶品質がさらに良好になる。
【0049】
また、窒化ガリウム系半導体領域19は一または複数の窒化ガリウム系半導体層を含むことができ、本実施例では、窒化ガリウム系半導体領域19は窒化ガリウム系半導体層25及び第2導電型窒化ガリウム系半導体層27からなる。窒化ガリウム系半導体層25は例えばアンドープまたはp型窒化ガリウム系半導体からなることができる。第2導電型窒化ガリウム系半導体層27は例えばp型窒化ガリウム系半導体からなり、p型窒化ガリウム系半導体には、例えばマグネシウムといったp型ドーパントが添加されている。p型窒化ガリウム系半導体は、例えばGaN、AlGaN、InAlGaN、InGaN等からなることができる。第2導電型窒化ガリウム系半導体層25は例えば電子ブロック層であり、窒化ガリウム系半導体層27は例えばp型コンタクト層であることができる。窒化ガリウム系半導体層21と窒化ガリウム系半導体層27との間には、活性層17が設けられる。活性層17は窒化ガリウム系半導体領域15上に設けられており、窒化ガリウム系半導体領域19は活性層17上に設けられる。
【0050】
このIII族窒化物半導体光素子11aによれば、窒化ガリウム系半導体領域15が主面13a上に設けられると共に窒化ガリウム系半導体領域15が5×1016cm−3以上の酸素を含むとき、窒化ガリウム系半導体領域15の主面15aにおける表面モフォロジが平坦になる。また、窒化ガリウム系半導体領域15が1×1017cm−3以上の酸素を含むとき、主面15aにおける表面モフォロジがさらに平坦になる。このため、窒化ガリウム系半導体領域15の表面15aにc面ファセットが現れることなく、窒化ガリウム系半導体領域15の表面15aの全体が、基板主面13aの極性特性(半極性、無極性)に応じた極性特性を示す。窒化ガリウム系半導体領域15が5×1018cm−3以下の範囲を超えた酸素を含むとき、窒化ガリウム系半導体領域15の結晶品質が良好ではなくなる。上記の酸素濃度の範囲では、良好な表面モフォロジの窒化ガリウム系半導体領域15上に活性層17を設けることができる。これ故に、窒化ガリウム系半導体領域15と活性層17との界面31aが平坦になる。
【0051】
酸素の添加は、非c面の生成を安定化させていると考えられる。これ故に、主面上への窒化ガリウム系半導体領域15の成長では成長面の非極性(半極性及び無極性のいずれか)を保ちながら結晶成長を行うことができる。この結果、表面モフォロジが良好になる。酸素の供給源としては、意図的にドーパントとして添加することを排除するものではないが、原料ガスに含まれている不純物量を管理することによって、原料ガスの不純物を利用できる。半極性面や無極性面に取り込まれる酸素量を制御することによって、活性層17の下地となる窒化ガリウム系半導体領域の表面モフォロジを平坦にできる。
【0052】
活性層17が5×1016cm−3以上の酸素を含むとき、活性層17の表面モフォロジが平坦になる。活性層17が5×1018cm−3以下の酸素を含むとき、活性層17の結晶品質が良好である。活性層17の表面の平坦性の向上により、発光ダイオードでは発光の不均一が低減可能になる。また、活性層17が1×1017cm−3以上の酸素を含むとき、活性層17の表面モフォロジがさらに平坦になる。この更なる平坦性向上により、発光ダイオードでは発光の不均一がさらに低減可能になる。
【0053】
III族窒化物半導体光素子11aの活性層17は、交互に配列された井戸層29a及び障壁層29bを含む量子井戸構造29を有することができる。井戸層29aは、例えばGaN、AlGaN、InGaN、InAlGaN等からなることができ、障壁層29bは、例えばGaN、AlGaN、InGaN、InAlGaN等からなることができる。活性層17の井戸層29aの酸素濃度は、6×107cm−3以下であることができる。井戸層29aの酸素濃度が高いとき、自由キャリア吸収による光学的ロスが増加する。井戸層29aの酸素濃度が6×107cm−3以下であるので、光学的ロスを避けることができ、また、井戸層29aの結晶品質の低下による発光効率の低下を避けることができる。また、障壁層29bの酸素濃度は井戸層29aの酸素濃度以上であるとき、障壁層29bの表面モフォロジが良好になる。良好な表面モフォロジの障壁層29b上に井戸層29aを成長できる。
【0054】
活性層17はInAlGaN層を含むことができ、このInAlGaN層は、井戸層29a及び/又は障壁層29bとして用いられる。InAlGaN層では、アルミニウム組成により酸素濃度を調整可能であり、In組成の調整により適切なバンドギャップを得ることができる。或いは、活性層17はInGaN層を含むことができ、このInGaN層は、井戸層29a及び/又は障壁層29bとして用いられる。InGaN層ではバンドギャップの調整が容易であり、酸素濃度の調整は原料の不純物濃度や成長温度といった成長条件によって行う。
【0055】
活性層17の酸素濃度は5×1016cm−3以上であるとき、引き続き活性層17の主面上に成長される第2導電型窒化ガリウム系半導体層25、27の結晶品質が良好になる。また、活性層17とこの半導体層の主面上に成長される窒化ガリウム系半導体との界面が平坦になる。さらに、活性層17の酸素濃度は1×1017cm−3以上であるとき、第2導電型窒化ガリウム系半導体層25、27の結晶品質および上記の界面平坦性がさらに優れたものになる。
【0056】
窒化ガリウム系半導体層25が5×1016cm−3以上の酸素を含むとき、窒化ガリウム系半導体層25の表面モフォロジが平坦になる。また、窒化ガリウム系半導体層25が1×1017cm−3以上の酸素を含むとき、窒化ガリウム系半導体層25の表面モフォロジがさらに平坦になる。窒化ガリウム系半導体層25の酸素濃度は5×1018cm−3以下であることができる。5×1018cm−3を越える酸素濃度は窒化ガリウム系半導体層25の結晶品質を低下させる可能性がある。
【0057】
また、窒化ガリウム系半導体層27が5×1016cm−3以上の酸素を含むとき、窒化ガリウム系半導体層27の表面モフォロジが平坦になる。また、窒化ガリウム系半導体層27が1×1017cm−3以上の酸素を含むとき、窒化ガリウム系半導体層27の表面モフォロジがさらに平坦になる。窒化ガリウム系半導体層27の酸素濃度は5×1018cm−3以下であることができる。5×1018cm−3を越える酸素濃度は、窒化ガリウム系半導体層27の結晶品質を低下させる。窒化ガリウム系半導体層25の酸素濃度が窒化ガリウム系半導体層27の酸素濃度より大きいとき、窒化ガリウム系半導体層25の表面モフォロジが平坦になるため、その上に形成される窒化ガリウム系半導体層27の結晶品質が優れたものになる。窒化ガリウム系半導体層25の酸素濃度が窒化ガリウム系半導体層27の酸素濃度より小さいとき、窒化ガリウム系半導体層25において酸素によるp型電導の補償の影響が低減され、キャリア注入効率が優れたものになる。
【0058】
半極性面や無極性面上に設けられる窒化ガリウム系半導体では、窒化ガリウム系半導体に取り込まれる炭素濃度が高いとき、安定なc面ファセットが出現しやすくなる。窒化ガリウム系半導体の炭素濃度を下げることにより、窒化ガリウム系半導体にファセットの発生を避けることができる。これ故に、窒化ガリウム系半導体層21、23の炭素濃度は5×1018cm−3以下であることが良い。窒化ガリウム系半導体層25、27の炭素濃度は5×1018cm−3以下であり、活性層17の炭素濃度は5×1018cm−3以下であることができる。炭素は例えば有機金属原料から供給される。炭素濃度は、原料中の不純物濃度、炭素をドープするための原料ガス、基板のオフ角、成長温度、成長圧力等により制御可能である。
【0059】
このIII族窒化物半導体光素子11aによれば、窒化ガリウム系半導体層(例えば、電子ブロック層)25のバンドギャップは窒化ガリウム系半導体層(例えば、p型コンタクト層)27のバンドギャップよりも大きく、また窒化ガリウム系半導体層25は窒化ガリウム系半導体層27と活性層17との間に設けられている。窒化ガリウム系半導体層25は窒化ガリウム系半導体層27と接合31bを形成する。窒化ガリウム系半導体層25の酸素濃度は、活性層17の酸素濃度よりも大きいので、接合面31bが平坦になる。
【0060】
III族窒化物半導体光素子11aでは、窒化ガリウム系半導体層27上には、第1の電極(例えばアノード)33が設けられる。窒化ガリウム系半導体層25が平坦な接合面31a上に設けられるので、窒化ガリウム系半導体層25が良好な結晶品質を有する。これ故に、良好なコンタクト特性が提供される。
【0061】
III族窒化物半導体光素子11aでは、主面13aの角度Aoffは基準平面Scに対して10度以上80度以下であることができる。主面13aの角度Aoffは基準平面Scに対して100度以上170度以下であることができる。このIII族窒化物半導体光素子11aによれば、半極性による寄与が適切に発揮される。支持基体13の裏面13b上には、第2の電極(例えばカソード)35が設けられる。また、III族窒化物半導体光素子11aでは、主面13aが無極性面であることができる。このIII族窒化物半導体光素子11aによれば、無極性による寄与が適切に発揮される。
【0062】
III族窒化物半導体光素子11aでは、このIII族窒化物半導体光素子11aによれば、主面13a上に、活性層17及び窒化ガリウム系半導体層27を設けるので、これらの半導体層におけるピエゾ電界はc面上における半導体層におけるピエゾ電界に比べて小さい。酸素はドナーして働くので、p型半導体層に添加しないことが好ましいけれども、適切な範囲の酸素の添加により、良好なコンタクト特性が提供される。
【0063】
III族窒化物半導体光素子11aでは、傾斜の角度Aoffは基準平面Scに対して63度以上80度以下であることができる。また、角度Aoffは基準平面Aoffに対して100度以上117度以下であることができる。このIII族窒化物半導体光素子11aによれば、オフ角が上記の範囲にあるとき、ピエゾ分極が特に小さくなる。
【0064】
図2は、本実施の形態に係るIII族窒化物半導体光素子を概略的に示す図面である。図2に示されたIII族窒化物半導体光素子は、例えば半導体レーザに適用可能な構造を有する。III族窒化物半導体光素子11bは、III族窒化物半導体支持体13と、窒化ガリウム系半導体領域15と、発光層37と、窒化ガリウム系半導体領域19とを備える。本実施例では、発光層37は、活性層17と、第1及び第2の光ガイド層39、41を含むことができる。活性層17は、第1の光ガイド層39と第2の光ガイド層41との間に設けられている。光ガイド層39、41は窒化ガリウム系半導体からなり、この窒化ガリウム系半導体は例えばアンドープであることができる。
【0065】
このIII族窒化物半導体光素子11bによれば、半極性面や無極性面上に、活性層17、光ガイド層39、41及び窒化ガリウム系半導体層19を設けるので、これらの半導体層におけるピエゾ電界は、図3(a)及び図3(b)に示されるように、c面上における半導体層におけるピエゾ電界に比べて小さい。酸素はドナーして働くので、p型半導体層に添加しないことが好ましいけれども、小さいピエゾ分極により半極性面や無極性面上ではキャリアオーバーフローが発生しにくい。これ故に、酸素濃度が高めであるけれども、キャリア注入効率の低下が抑制される。
【0066】
第1及び第2の光ガイド層39、41の各々は、既に説明した理由に基づき、5×1016cm−3以上の酸素濃度を有することが良い。第1及び第2の光ガイド層39、41の各々は、既に説明した理由に基づき、5×1018cm−3以下の酸素濃度であることが良い。
【0067】
窒化ガリウム系半導体領域19は、窒化ガリウム系半導体層25、27に加えて、更なる別の第2導電型窒化ガリウム系半導体層43を含むことができる。窒化ガリウム系半導体層43は例えばp型窒化ガリウム系半導体からなり、p型窒化ガリウム系半導体には、例えばマグネシウムといったp型ドーパントが添加されている。p型窒化ガリウム系半導体は、例えばGaN、AlGaN、InAlGaN等からなることができる。窒化ガリウム系半導体層43は例えばp型クラッド層であることができる。
【0068】
窒化ガリウム系半導体領域15は、窒化ガリウム系半導体層45を含むことができる。窒化ガリウム系半導体層45は例えばn型窒化ガリウム系半導体からなり、n型窒化ガリウム系半導体には、例えばシリコンといったn型ドーパントが添加されている。n型窒化ガリウム系半導体は、例えばGaN、AlGaN、InAlGaN等からなることができる。窒化ガリウム系半導体層45は例えばn型クラッド層であることができる。
【0069】
窒化ガリウム系半導体層(例えばn型クラッド層)45と窒化ガリウム系半導体層(例えばp型クラッド層)43との間には、発光層37が設けられる。窒化ガリウム系半導体層45及び窒化ガリウム系半導体層43の屈折率は、光ガイド層39、41の屈折率よりも小さい。窒化ガリウム系半導体層45及び窒化ガリウム系半導体層43は、発光層37に光を閉じ込める。
【0070】
窒化ガリウム系半導体層25のバンドギャップは窒化ガリウム系半導体層43のバンドギャップよりも大きい。窒化ガリウム系半導体層25は窒化ガリウム系半導体層43と接合45aを形成する。窒化ガリウム系半導体層25の酸素濃度は、発光層37の酸素濃度よりも大きいとき、接合面45aが平坦になり、これ故に、この界面45aにおける散乱ロスが低減される。また、発光層37は窒化ガリウム系半導体領域19と接合45cを成す。
【0071】
また、窒化ガリウム系半導体領域15は発光層37と接合45bを形成する。窒化ガリウム系半導体領域15の酸素濃度は、発光層37の酸素濃度よりも大きくするので、窒化ガリウム系半導体領域15の表面モフォロジが良好であり、また接合45bが平坦になる。これ故に、この界面45bにおける散乱ロスが低減される。
【0072】
III族窒化物半導体光素子11bでは、窒化ガリウム系半導体層27上には、保護のための絶縁膜47が設けられている。絶縁膜47は、ストライブ状の開口47aを有する。絶縁膜47及び開口47a上に第1の電極(例えばアノード)49aが設けられる。支持基体13の裏面13b上には、第2の電極(例えばカソード)49bが設けられる。窒化ガリウム系半導体層27が平坦なモフォロジの窒化ガリウム系半導体層43上に設けられるので、窒化ガリウム系半導体層27が良好な結晶品質を有し、良好なコンタクト特性が提供される。窒化ガリウム系半導体層43は窒化ガリウム系半導体層27と接合45dを形成する。この接合面45dが平坦である。
【0073】
III族窒化物半導体光素子11bでは、傾斜の角度Aoffは基準平面Scに対して63度以上80度以下及び100度以上117度以下の範囲であるとき、キャリアオーバーフローが生じにくい。
【0074】
このIII族窒化物半導体光素子11bは例えば利得ガイド型レーザダイオードの構造を有する。III族窒化物半導体光素子11bは、一対の端面50a、50bを有することができる。端面50a、50bは、共振器を形成するために劈開面であることが良い。III族窒化物半導体光素子11bによるレーザ光Lは、端面50a、50bの一方から出射される。
【0075】
次いで、エピタキシャル基板及びIII族窒化物半導体光素子を作製する方法を説明する。図4〜図7は、上記の作製方法における主要な工程における生産物を示す図面である。
【0076】
有機金属気相成長法により発光素子のエピタキシャル構造を作製した。原料にはトリメチルガリウム(TMG)、トリメチルアルミニウム(TMA)、トリメチルインジウム(TMI)、アンモニア(NH3)を用いた。ドーパントガスとして、シラン(SiH4)及びビスシクロペンタジエニルマグネシウム(CP2Mg)を用いた。引き続く説明では、例えば半極性主面を有するIII族窒化物半導体基板として、六方晶系半極性窒化ガリウム基板を用いることができる。また、例えば無極性主面を有するIII族窒化物半導体基板として、六方晶系無極性窒化ガリウム基板を用いることができる。以下の説明において、n型ドーパントとしての酸素は、III族原料及び窒素原料の少なくともいずれか一つに含まれる不純物として提供される。引き続く説明では、六方晶系半極性窒化ガリウム基板を参照しながら説明する。
【0077】
工程S101では、図4(a)に示されるように、窒化ガリウム基板を準備した。窒化ガリウム基板の主面はc面からm面方向又はa面方向に10〜80度の角度で傾斜している。窒化ガリウム基板の主面の面積は、例えば25平方ミリメートル以上であり、このサイズは例えば5ミリメートル角に相当する。窒化ガリウム基板51の主面51aのサイズは、例えば2インチ以上であることが良い。反応炉10内にGaN基板51を設置した後に、工程S102では、図4(b)に示されるように、GaN基板51のサーマルクリーニングを成長炉10を用いて行う。摂氏1050度の温度で、NH3とH2を含むガスG0を成長炉10に流しながら、10分間の熱処理を行う。
【0078】
工程S103では、図4(c)に示されるように、III族原料及び窒素原料を含む原料ガスG1を成長炉10に供給して、GaN基板51の主面51a上に、n型の窒化ガリウム系半導体領域53をエピタキシャルに成長する。原料ガスG1は、例えばTMG、TMA、NH3、SiH4を含む。窒化ガリウム系半導体領域53として、例えば摂氏1050度の温度でSiドープAlGaNクラッド層を成長する。このAlGaN層の厚さは例えば2μmである。窒化ガリウム系半導体領域53の酸素濃度は、例えば5×1016cm−3以上5×1018cm−3以下の範囲である。この方法によれば、酸素を含む窒化ガリウム系半導体の成長を半極性面上に行う際に、半極性面に合わない特定のファセット面が成長中に出現することを抑制する。このため、表面モフォロジが平坦になる。引き続く成長においても、酸素の添加により、特定のファセット面が成長中に出現することを抑制できる。また、窒化ガリウム系半導体領域53の炭素濃度は5×1018cm−3以下であるとき、窒化ガリウム系半導体にファセットの発生を避けることができる。また、窒化ガリウム系半導体領域53の酸素濃度は、例えば1×1017cm−3以上であるとき、より平坦な表面モフォロジ及びファセット面の抑制が提供される。
【0079】
次いで、摂氏840度に基板温度を下げた後に、工程S104では、図5(a)に示されるように、III族原料及び窒素原料を含む原料ガスG2を成長炉10に供給して、アンドープInGaN光ガイド層55aをエピタキシャルに成長する。原料ガスG2は、例えばTMG、TMI、NH3を含む。InGaN光ガイド層55aの酸素濃度は、例えば5×1016cm−3以上5×1018cm−3以下の範囲である。InGaN光ガイド層55aの厚さは、100nmである。また、InGaN光ガイド層55aの酸素濃度は、例えば1×1017cm−3以上であることが好適である。
【0080】
引き続き、量子井戸構造を有する活性層を成長する。この活性層における平均酸素濃度は5×1016cm−3以上であり、活性層における平均酸素濃度は5×1018cm−3以下である。また、この平均酸素濃度は1×1017cm−3以上であることができる。工程S105では、図5(b)に示されるように、III族原料及び窒素原料を含む原料ガスG3を成長炉10に供給して、摂氏840度の基板温度で、GaN障壁層57をInGaN光ガイド層55a上に成長する。原料ガスG2は、例えばTMG、NH3を含む。このGaN層57の厚さは例えば15nmである。
【0081】
この後に摂氏790度に基板温度を下げた後に、工程S106では、図5(c)に示されるように、III族原料及び窒素原料を含む原料ガスG4を成長炉10に供給して、GaN障壁層57上に、アンドープInGaN井戸層59をエピタキシャルに成長する。原料ガスG4は、例えばTMG、TMI、NH3を含む。InGaN井戸層59の酸素濃度は、例えば6×1017cm−3以下であることが良い。井戸層59の厚さは例えば3nmである。
【0082】
その後、摂氏840度まで基板温度を上げた後に、厚さ15nmのGaN障壁層57を成長する。必要な場合には、障壁層57の成長及び井戸層59の成長を繰り返す。さらに、工程S107で、摂氏840度の基板温度で、III族原料及び窒素原料を含む原料ガスG5を成長炉10に供給して、光ガイド層55aと同様に、アンドープInGaN光ガイド層55bをエピタキシャルに成長して、図6(a)に示されるように、活性層61及び発光層63を作製する。発光層63の炭素濃度は5×1018cm−3以下であるとき、窒化ガリウム系半導体にファセットの発生を避けることができる。
【0083】
次いで、III族原料及び窒素原料を前記成長炉に供給して、第2導電型窒化ガリウム系半導体領域を発光層63上に成長する。このために、工程S108では、基板温度を摂氏1000度に上昇した後に、III族原料及び窒素原料を含む原料ガスG6を成長炉10に導入して、図6(b)に示されるように、発光層63上に、電子ブロック層65をエピタキシャルに成長する。原料ガスG6は、例えばTMG、TMA、NH3、CP2Mgを含む。電子ブロック層65の厚さは例えば20nmである。
【0084】
次いで、工程S109において、III族原料及び窒素原料を含む原料ガスG7を成長炉10に導入して、図7(a)に示されるように、電子ブロック層65上に、p型クラッド層67をエピタキシャルに成長する。原料ガスG7は、例えばTMG、TMA、NH3、CP2Mgを含む。p型クラッド層67の厚さは例えば400nmである。
【0085】
続けて、工程S110において、III族原料及び窒素原料を含む原料ガスG8を成長炉10に導入して、図7(b)に示されるように、p型クラッド層67上にp型コンタクト層69をエピタキシャルに成長する。原料ガスG8は、例えばTMG、NH3、CP2Mgを含む。p型コンタクト層69の厚さは例えば50nmである。
【0086】
窒化ガリウム系半導体層65、67、69の酸素濃度は5×1016cm−3以上であり、窒化ガリウム系半導体層65、67、69の酸素濃度は5×1018cm−3以下である。また、酸素濃度は1×1017cm−3以上であることができる。窒化ガリウム系半導体層65、67、69の酸素濃度は、発光層63の酸素濃度よりも大きいことが良い。また、窒化ガリウム系半導体領域70の炭素濃度は5×1018cm−3以下であるとき、窒化ガリウム系半導体にファセットの発生を避けることができる。
【0087】
ここで、発光層とn型窒化ガリウム系半導体層のモフォロジと酸素ドーピングについて説明する。InGaN井戸層の成長温度は低く、原子がマイレーションしにくいので、島状に成長する傾向にある。一方、n型GaN、AlGaNといった窒化ガリウム系半導体の成長温度は高いので、ステップフロー成長を得やすい。酸素ドーピングによってモフォロジが平坦化する効果は、上述の島状、ステップフロー成長といった成長モードとは異なる。酸素のドーピングにより、半極性面が安定化される。例えば窒化ガリウムの結晶成長においてc面は安定な面であると考えられており、半極性面上への窒化ガリウムの結晶成長において、ファセット面としてc面が生成されやすい。c面の生成は、半極性面上でのエピタキシャル成長において、モフォロジを悪化させる。酸素のドーピングにより、半極性面上でのエピタキシャル成長においてモフォロジを悪化させるファセット面の生成を抑制できる。
【0088】
基板温度を室温まで降温した後に、エピタキシャル基板EP1を成長炉から取り出す。エピタキシャル基板EP1は、III族窒化物半導体基板51と、第1導電型窒化ガリウム系半導体領域53と、発光層63と、第2導電型窒化ガリウム系半導体領域70とを備える。このエピタキシャル基板EP1によれば、窒化ガリウム系半導体領域53、70が5×1016cm−3以上の酸素を含むとき、窒化ガリウム系半導体領域53、70の表面モフォロジが平坦になる。このため、窒化ガリウム系半導体領域53、70の表面にc面が現れることなく、窒化ガリウム系半導体領域53、70の表面も半極性を示す。窒化ガリウム系半導体領域53、70が1×1017cm−3以上の酸素を含むとき、上記の技術的な寄与が優れたものになる。窒化ガリウム系半導体領域53、70が5×1018cm−3以下の範囲を超えた酸素を含むとき、窒化ガリウム系半導体領域53、70の結晶品質が良好ではなくなる。良好な表面モフォロジの窒化ガリウム系半導体領域53上に発光層63を設けることができる。
【0089】
エピタキシャル基板EP1のp型窒化ガリウム系半導体領域70上にアノード電極を形成してp型コンタクト層69に電気的な接続を成すと共に基板51の裏面51bを必要に応じて研磨した後に研磨裏面にカソード電極を形成する。これらの電極は、例えば蒸着により作製される。
【0090】
n型窒化ガリウム系半導体領域53の酸素濃度が、発光層63及びp型窒化ガリウム系半導体領域70の酸素濃度よりも大きいとき、発光素子のエピタキシャル膜積層において半導体領域53が最も厚いので、モフォロジ改善への寄与が大きい。酸素がn型ドーパントであるので、酸素の添加によりキャリアの補償が生じることがない。発光層63の酸素濃度が低いとき、発光層63の発光効率が向上される。酸素濃度がn型ドーパントであるので、p型窒化ガリウム系半導体領域70の酸素濃度が低いとき、酸素の添加によるキャリアの補償の影響が小さい。
【0091】
発光層63の酸素濃度がp型窒化ガリウム系半導体領域70の酸素濃度よりも大きいとき、発光層63のモフォロジ改善はp型窒化ガリウム系半導体領域70の結晶品質の改善に寄与する。p型窒化ガリウム系半導体領域70の酸素濃度が低いとき、キャリア濃度が大きい。
【0092】
p型窒化ガリウム系半導体領域70の酸素濃度が、発光層63の酸素濃度よりも小さいとき、マグネシウム(Mg)の添加により平坦性が損なわれやすいけれども、酸素の添加により、この半導体領域70の平坦性が改善できる。発光層63の酸素濃度が低いとき、発光層63の発光効率が良好になる。p型窒化ガリウム系半導体領域70の成長温度を下げてこの半導体領域70の酸素濃度を高めるとき、発光層63への熱的ストレスが低減される。
【0093】
p型窒化ガリウム系半導体領域70の酸素濃度が、n型窒化ガリウム系半導体領域53よりも大きいとき、酸素の添加により、この半導体領域70の平坦性が改善できる。p型窒化ガリウム系半導体領域70のAl増加により酸素濃度を高めるとき、レーザダイオードにおける光閉じ込め性が向上される。p型窒化ガリウム系半導体領域70の成長温度を下げてこの半導体領域70の酸素濃度を高めるとき、発光層63への熱的ストレスが低減される。
【0094】
(実施例1)
レーザダイオードLD1を作製した。m軸方向に75度の角度θ1で傾斜させた半極性主面を有するGaN基板71を準備した。この半極性主面は(20−21)面に相当する。GaN基板71を成長炉に配置した後に、成長炉にアンモニア(NH3)及び水素(H2)を供給して、摂氏1050度の雰囲気にGaN基板71を保持した。保持時間は10分であった。この前処理(サーマルクリーニング)の後に、原料ガスを成長炉に供給して以下のレーザ構造を作製した。まず、n型Al0.04Ga0.96Nクラッド層72を摂氏1050度で成長した。摂氏840度に基板温度を下げた後にIn0.03Ga0.97N光ガイド層73aを成長した。In0.03Ga0.97N光ガイド層73a上に量子井戸活性層74を成長した。さらに、摂氏840度に基板温度で、この活性層74上にIn0.03Ga0.97N光ガイド層73bを成長した。摂氏1000度に基板温度を上昇した後に、Al0.12Ga0.88N電子ブロック層78、p型Al0.06Ga0.94Nクラッド層75及びp型GaNコンタクト層76を成長した。このレーザ構造のフォトルミネッセンス波長は450nm帯にあった。このレーザ構造において表面モフォロジに最も大きく影響するものは、GaN基板71の直上に位置しかつ大きな膜厚のクラッド層である。この実施例ではクラッド層72の酸素濃度は3×1017cm−3であった。コンタクト層76には絶縁膜77の開口を介してアノードを形成すると共にGaN基板71の裏面71bにカソードを形成して、図8に示される半導体レーザLD1を作製した。
【0095】
摂氏1150度の成長温度でn型Al0.04Ga0.96Nクラッド層を成長して、半導体レーザLD0を作製した。このクラッド層の酸素濃度を9×1016cm−3であった。図9(a)は、半導体レーザLD1におけるレーザ構造のp型GaNコンタクト層の表面モフォロジを示す。図9(b)は、半導体レーザLD0におけるレーザ構造のp型コンタクト層も表面モフォロジを示す。半導体レーザLD0におけるレーザ構造のp型コンタクト層は、良好な表面モフォロジを示す。高い酸素濃度のn型AlGaNクラッド層を含む半導体レーザLD1では、半極性面が安定化されたと考えられる。これらのレーザ構造の比較により、半導体レーザLD1におけるレーザ構造はより平坦なモフォロジを示した。
【0096】
(実施例2)
レーザダイオードを作製した。m軸方向に75度の角度θ2で傾斜させた半極性主面を有するGaN基板81を準備した。この半極性主面は(20−21)面に相当する。GaN基板81を成長炉に配置した後に、成長炉にアンモニア(NH3)及び水素(H2)を供給して、摂氏1050度の雰囲気にGaN基板81を保持した。保持時間は10分であった。このサーマルクリーニングの後に、原料ガスを成長炉に供給して以下のレーザ構造を作製した。まず、n型Al0.04Ga0.96Nクラッド層82を摂氏1050度で成長した。摂氏840度に基板温度を下げた後に、厚さ100nmのIn0.02Ga0.98N光ガイド層83aを成長した。光ガイド層83上に量子井戸活性層84を成長した。さらに、摂氏840度に基板温度で、この活性層84上にIn0.02Ga0.98N光ガイド層83bを成長した。摂氏1000度に基板温度を上昇した後に、Al0.12Ga0.88N電子ブロック層85、p型Al0.06Ga0.94Nクラッド層86及びp型GaNコンタクト層87を成長した。このレーザ構造のフォトルミネッセンス波長は405nm帯にあった。
【0097】
コンタクト層87には絶縁膜(例えばSiO2)88のストライプ窓(幅10μm)を介してアノード89aを形成すると共にGaN基板81の裏面81aにカソード89bを形成した。この後に、800μm間隔でa面でへき開して、図10に示されるゲインガイド型半導体レーザLD2を作製した。
【0098】
この実施例では、n型クラッド層の酸素濃度は3×1017cm−3であった。量子井戸活性層84の酸素濃度は2×1017cm−3であった。p型電子ブロック層85の酸素濃度は1×1018cm−3であった。p型クラッド層86の酸素濃度は7×1017cm−3であった。この構造では、p層の酸素濃度が発光層よりも高い。
【0099】
比較のために、同じ成膜条件で、c面GaN基板上にもLD構造を作製した。同じ成膜条件でc面上への成長においては、GaN系半導体への酸素の取り込み量が異なり、酸素濃度は全エピタキシャル層で1×1017cm−3以下であった。また、m面でへき開を行って、共振器ミラーを有するゲインガイド型半導体レーザLDC2を作製した。
【0100】
これらの半導体レーザLD2、LDC2に電流2mAを印加して、エレクトロルミネッセンス(EL)を絶対温度300度(300K)と絶対温度10度(10K)において測定した。図11(a)は、絶対温度300度において測定したELスペクトルを示し、図11(b)は、絶対温度10度において測定したELスペクトルを示す。ELスペクトルELS(300)及びELS(10)は実施例の半導体レーザLD2において測定され、ELスペクトルELC(300)及びELC(10)は、比較例の半導体レーザLDC2において測定された。温度300K及び10KにおけるELスペクトルを比較した。温度300Kでは、いずれの半導体レーザLD2、LDC2のELスペクトルELS(300)及びELC(300)は、405nm付近にMQWに起因するピークを有する。一方、測定温度10Kでは、実施例の半導体レーザLD2のELスペクトルは単一のピークを示したが、比較例の半導体レーザLDC2は、MQWピークの他にp型半導体層におけるドナーアクセプタ対(DAP)発光を有する。これは、比較例ではホールが枯渇する低温において電子がp型半導体層へオーバーフローしていることを示す。
【0101】
本実施例の半導体レーザLD2では、p型半導体層にドナーとして働く酸素を発光層よりも高い濃度でドープしているけれども、良好なキャリア注入効率を示す。p型半導体層の平坦性はMg添加によって損なわれやすい。しかし、適正な範囲で酸素を添加することによって、表面平坦性とキャリア注入効率の両方が提供される。p型半導体層の平坦性を改善し、電子ブロック層/クラッド層の界面の急峻性を高めることは、半導体レーザの共振器を伝搬する光の散乱ロス低減につながる。
【0102】
(実施例3)
発光ダイオードを作製した。a軸方向に18度の角度θ3で傾斜させた半極性主面を有するGaN基板91を準備した。GaN基板91を成長炉に配置した後に、成長炉にアンモニア(NH3)及び水素(H2)を供給して、摂氏1050度の雰囲気にGaN基板91を保持した。保持時間は10分であった。このサーマルクリーニングの後に、原料ガスを成長炉に供給して以下の発光ダイオード構造を作製した。まず、厚さ2μmのn型GaN層92を摂氏1050度で成長した。摂氏840度に基板温度を下げた後にIn0.04Ga0.96N緩衝層93を成長した。厚さ100nmの緩衝層93上に量子井戸活性層94を成長した。具体的には、摂氏840度の基板温度で厚さ15nmのGaN障壁層94aを成長すると共に摂氏700度の基板温度で厚さ3nmのInAlGaN井戸層94bを成長して、活性層94を形成した。摂氏1000度に基板温度を上昇した後に、この活性層94上に厚さ20nmのp型Al0.18Ga0.82N電子ブロック層95及び厚さ50nmのp型GaNコンタクト層96を成長した。コンタクト層96にはアノード(Ni/Au)97とパッド電極99aを形成すると共に基板91の裏面91bにカソード(Ti/Al)を形成して、図12に示される発光ダイオードLED1を作製した。異なるインジウム組成のInAlGaN井戸層を有する発光ダイオード構造を作製した。井戸層の酸素濃度と光出力との関係を調べた。
LED構造、In組成、Al組成、酸素濃度(cm−3)、光出力
LED1 :0.18、0、 2×1017、 1
LED2 :0.19、0.03、4×1017、 0.85
LED3 :0.20、0.06、1×1018、 0.54。
450nm付近の発光波長を得るように、井戸層のIn組成を変更した。井戸層中の酸素濃度が増加するに従い、発光出力は低下した。これは、酸素の添加が井戸層の結晶品質を低下させたと考えられる。井戸層のAlは酸素を吸着しやすくまた低温(井戸層にInが取り込まれるような温度)で吸着した酸素が脱離しにくいことを利用して、井戸層の酸素濃度を制御した。
【0103】
(実施例4)
m面主面を有するGaN基板を準備した。このGaN基板上にレーザダイオードLD3を作製した。図13は、実施例4におけるレーザダイオードの構造を示す図面である。GaN基板101を成長炉に配置した後に、成長炉にアンモニア(NH3)及び水素(H2)を供給して、摂氏1050度の雰囲気でサーマルクリーニングを行った後に、実施例1と同様にして、以下のレーザ構造をGaN基板101の無極性主面101a上に作製した。
Al0.04Ga0.96Nクラッド層102:n型、2μm、
In0.03Ga0.97N光ガイド層103a:アンドープ、100nm、
活性層104:In0.18Ga0.82N井戸層(厚さ3nm)/GaN障壁層(厚さ15nm)、
In0.03Ga0.97N光ガイド層103b:アンドープ、100nm、
Al0.12Ga0.88N電子ブロック層105:p型、20nm、
Al0.06Ga0.94Nクラッド層106:p型、400nm、
GaNコンタクト層107:p型、50nm。
ストライプ窓(幅10μm)を有する絶縁膜(例えばSiO2)108及びコンタクト層107上にアノード109aを形成すると共に、GaN基板101の裏面101bにカソード109bを形成した。この後に、へき開によりゲインガイド型半導体レーザLD3を作製した。
【0104】
測定の結果、このレーザ構造のn型Al0.04Ga0.96Nクラッド層102の酸素濃度は1×1017cm−3であった。この値は、比較のためのLD構造における酸素濃度2×1016cm−3に比べて大きい。図14は、実施例4のp型コンタクト層107および比較例のp型コンタクト層における表面モフォロジを示す図面である。図14(a)に示されたp型コンタクト層表面を図14(b)に示されたp型コンタクト層表面と比較すると、実施例4のエピタキシャル膜の表面は比較的平坦なモフォロジを示した。一方、比較例のエピタキシャル膜の表面にはc軸に直交する方向に延びる多数のファセットが見られた。実施例4によれば、無極性面でも酸素による安定化の効果があるものと考えられる。
【0105】
(実施例5)
レーザダイオードLD4を作製した。図15は、実施例5におけるレーザダイオードの構造を示す図面である。m軸方向に68度の角度θ4で傾斜させた半極性主面を有するGaN基板111を準備した。GaN基板111を成長炉に配置した後に、成長炉にアンモニア(NH3)及び水素(H2)を供給して、摂氏1050度の雰囲気にGaN基板111を保持した。この前処理の後に、原料ガスを成長炉に供給して以下のレーザ構造を作製した。まず、n型Al0.04Ga0.96Nクラッド層112を摂氏1050度で成長した。摂氏840度に基板温度を下げた後にIn0.03Ga0.97N光ガイド層113aを成長した。In0.03Ga0.97N光ガイド層113a上に活性層114を成長した。さらに、摂氏840度に基板温度で、この活性層114上にIn0.03Ga0.97N光ガイド層113bを成長した。摂氏1000度に基板温度を上昇した後に、Al0.12Ga0.88N電子ブロック層115、p型Al0.06Ga0.94Nクラッド層116及びp型GaNコンタクト層117を成長した。このレーザ構造のフォトルミネッセンス波長は450nm帯にあった。
【0106】
アンモニアといった窒素原料の水分濃度を調整するために、窒素原料の供給源と成長炉との間に精製装置を設けた。この精製装置を用いて、精製されて窒素原料としてアンモニアを成長炉に供給した。精製装置を用いて、窒素原料として、水分含有量500ppb%以下のアンモニアを成長炉に供給できる。また、精製装置を用いて、窒素原料として水分含有量50ppb%以下のアンモニアを用いることができる。さらに、精製装置を用いて、窒素原料として、水分含有量1ppb%以下のアンモニアを成長炉に供給できる。この実施例において、水分濃度50ppb%のアンモニアを窒素原料として成長炉に供給した。
【0107】
測定によれば、p型Al0.06Ga0.94Nクラッド層の酸素濃度は2×1017cm−3であった。比較のために、水分濃度1ppm%のアンモニアを窒素原料として用いた。測定によれば、このp型AlGaN層の酸素濃度は8×1018cm−3であった。
【0108】
実施例のLD構造におけるp型GaNコンタクト層117の表面にSiO2膜を成膜し、この後に幅10μmのストライプ窓をウェットエッチングにより形成して保護膜118を設けた。Ni/Auからなるp電極119aとTi/Auから成るパッド電極を蒸着により形成した。基板裏面111bにはTi/Alから成るn電極119bとTi/Auから成るパッド電極を蒸着により形成した。比較例のLD構造にも、本実施例と同様に、SiO2膜及び電極を形成した。この後に、800μm間隔でa面へき開して、ゲインガイド型レーザを作製した。
【0109】
図16は、実施例4及び比較例におけるレーザダイオードのI−V特性を示す図面である。特性線IV1、IVCは、それぞれ、実施例5及び比較例のためのI−V特性を示す。比較例のレーザダイオードにおける駆動電圧は、実施例5のレーザダイオードにおける駆動電圧に比べて著しく高い。これは、比較例のレーザダイオードでは、低いアンモニア純度に起因してp型コンタクト層中の酸素濃度が高くなり、p型導電性が損なわれたためと考えられる。
【0110】
以上説明したように、本実施の形態によれば、良好な表面モフォロジを有する窒化ガリウム系半導体膜を含むIII族窒化物半導体光素子を提供できる。また、本実施の形態によれば、このIII族窒化物半導体光素子を作製する方法を提供できる。さらに、本実施の形態によれば、良好な表面モフォロジを有する窒化ガリウム系半導体膜を含むエピタキシャル基板を提供できる。
【0111】
以上の説明では、半導体光素子を参照しながら本実施の形態を説明したが、本発明は、半導体素子の一例としてIII族窒化物半導体電子デバイスにも適用可能である。したがって、良好な表面モフォロジを有する窒化ガリウム系半導体膜を含むIII族窒化物半導体電子デバイスを提供できる。また、本実施の形態によれば、このIII族窒化物半導体電子デバイスを作製する方法を提供できる。さらに、本実施の形態によれば、良好な表面モフォロジを有する窒化ガリウム系半導体膜を含むエピタキシャル基板を提供できる。
【0112】
好適な実施の形態において本発明の原理を図示し説明してきたが、本発明は、そのような原理から逸脱することなく配置および詳細において変更され得ることは、当業者によって認識される。本実施の形態では、本発明は、本実施の形態に開示された特定の構成に限定されるものではない。また、本実施の形態では、有機金属気相成長法を用いる窒化物半導体の成長について例示的に説明しているけれども、本発明は、酸素の取り込みがある分子線エピタキシ法を用いる窒化物半導体の成長にも適用できる。したがって、特許請求の範囲およびその精神の範囲から来る全ての修正および変更に権利を請求する。
【符号の説明】
【0113】
11a、11b…III族窒化物半導体光素子、13…III族窒化物半導体支持体、15…窒化ガリウム系半導体領域、17…活性層、19…窒化ガリウム系半導体領域、Sc…基準平面、VC…c軸ベクトル、VN…法線ベクトル、Aoff…傾斜角、21…第1導電型窒化ガリウム系半導体層、23…窒化ガリウム系半導体層、25…窒化ガリウム系半導体層、27…第2導電型窒化ガリウム系半導体層、29a…井戸層、29b…障壁層、29…量子井戸構造、31a、31b…接合面、33…第1の電極、35…第2の電極
【技術分野】
【0001】
本発明は、III族窒化物半導体素子、エピタキシャル基板、及びIII族窒化物半導体素子を作製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、酸素濃度に比例したn型キャリアをもつn型GaNが記載されている。酸素を原料ガスに含ませてGaAs基板の上にGaNをエピタキシャル成長させる。GaAs基板を除去してGaN自立膜を得る。
【0003】
特許文献2には、窒化ガリウム単結晶を成長する方法が記載されている。この方法によれば、酸素をn型ドーパントとして取り込むことができる。
【0004】
特許文献3には、GaN系化合物半導体の製造方法が記載されている。充填容器内に少なくとも一部が液体となるようにGaN系化合物半導体製造用アンモニアを充填する。該液相のアンモニア中の水分濃度がフーリエ変換赤外分光法(FT−IR)で測定して0.5volppm以下である。このアンモニアを原料として、基板を収容した反応室内にガス状態で導入して、GaN系化合物からなる層を基板上に形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−044400号公報
【特許文献2】特開2002−373864号公報
【特許文献3】特開2004−363622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
発明者の知見によれば、窒化ガリウムの非c面にはドナーとして働く酸素が取り込まれやすい。この現象は、半極性や無極性を有する主面を有する窒化ガリウム基板上に窒化ガリウム系半導体を堆積するとき、酸素の思わぬ取り込みによりデバイス特性を損ねないように酸素濃度を制御する必要があることを示している。一方、ファセット面に酸素が取り込まれやすいことは、酸素の添加により、窒化ガリウム系半導体の成長中において非c面の生成を安定化できる可能性を示唆している。このとき、窒化ガリウム基板の半極性や無極性を有する主面上への窒化ガリウム系半導体の成長では、窒化ガリウム系半導体はその酸素濃度により異なる結晶品質を有することになる。
【0007】
デバイス特性の見地からは、エピタキシャル膜が、n型のGaN基板のときに用いられる酸素濃度を有するとき、酸素が窒化ガリウム系半導体においてn型ドーパントであることを考慮するならば、半導体素子の電気特性が変わることを無視できないと推測される。例えば半導体光素子では、n型窒化ガリウム系半導体層、発光層及びp型窒化ガリウム系半導体への酸素ドープ量に応じてデバイスの発光効率及び電気特性が変わることを無視できないと推測される。
【0008】
本発明は、このような事情を鑑みて為されたものであり、良好な表面モフォロジを有する窒化ガリウム系半導体膜を含むIII族窒化物半導体素子を提供することを目的とし、また、III族窒化物半導体素子を作製する方法を提供する目的とし、さらに、良好な表面モフォロジを有する窒化ガリウム系半導体膜を含むエピタキシャル基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面に係るIII族窒化物半導体素子は、(a)III族窒化物半導体からなり、該III族窒化物半導体のc軸方向に延びる基準軸に直交する基準平面に対して有限の角度をなす主面を有するIII族窒化物半導体支持体と、(b)5×1016cm−3以上5×1018cm−3以下の酸素濃度を有しており、前記III族窒化物半導体支持体の前記主面上に設けられた窒化ガリウム系半導体領域とを備える。前記主面は半極性及び無極性のいずれか一方を示しており、前記窒化ガリウム系半導体領域は第1導電型窒化ガリウム系半導体層を含む。
【0010】
このIII族窒化物半導体素子によれば、窒化ガリウム系半導体領域が半極性面又は無極性面上に設けられると共に窒化ガリウム系半導体領域が5×1016cm−3以上の酸素を含むとき、窒化ガリウム系半導体領域の表面モフォロジが平坦になる。窒化ガリウム系半導体領域の表面も、基板主面の半極性面又は無極性面に応じてそれぞれ半極性又は無極性を示す。窒化ガリウム系半導体領域が5×1018cm−3以下の範囲を超えて酸素を含むとき、窒化ガリウム系半導体領域の結晶品質が良好ではなくなる。また、窒化ガリウム系半導体領域が1×1017cm−3以上の酸素を含むとき、窒化ガリウム系半導体領域の表面モフォロジがさらに平坦になる。
【0011】
本発明に係るIII族窒化物半導体素子は、(a)III族窒化物半導体からなり、該III族窒化物半導体のc軸方向に延びる基準軸に直交する基準平面に対して有限の角度をなす主面を有するIII族窒化物半導体支持体と、(b)5×1016cm−3以上5×1018cm−3以下の酸素濃度を有しており、前記III族窒化物半導体支持体の前記主面上に設けられた窒化ガリウム系半導体領域と、(c)前記窒化ガリウム系半導体領域上に設けられた活性層と、(d)前記活性層上に設けられた第2導電型窒化ガリウム系半導体層とを備える。前記主面は半極性及び無極性のいずれか一方を示しており、前記窒化ガリウム系半導体領域は第1導電型窒化ガリウム系半導体層を含み、前記活性層は、前記第1導電型窒化ガリウム系半導体層と前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層との間に設けられる。
【0012】
このIII族窒化物半導体素子によれば、窒化ガリウム系半導体領域が半極性面又は無極性面上に設けられると共に窒化ガリウム系半導体領域が5×1016cm−3以上の酸素を含むとき、窒化ガリウム系半導体領域の表面モフォロジが平坦になる。窒化ガリウム系半導体領域の表面も、基板主面の半極性面又は無極性面に応じてそれぞれ半極性又は無極性を示す。窒化ガリウム系半導体領域が5×1018cm−3以下の範囲を超えて酸素を含むとき、窒化ガリウム系半導体領域の結晶品質が良好ではなくなる。上記範囲の酸素濃度によれば、良好な表面モフォロジの第1導電型窒化ガリウム系半導体層上に活性層を設けることができる。また、窒化ガリウム系半導体領域が1×1017cm−3以上の酸素を含むとき、窒化ガリウム系半導体領域の表面モフォロジがさらに平坦になる。
【0013】
本発明の一側面に係るIII族窒化物半導体素子では、前記活性層における酸素濃度は5×1016cm−3以上であることができる。このIII族窒化物半導体素子によれば、活性層が5×1016cm−3以上の酸素を含むとき、活性層の表面モフォロジが平坦になる。また、酸素はドナーとして働くため、活性層が5×1016cm−3以上の酸素を含むとき、素子の駆動電圧が低減する、活性層のピエゾ電界が低減する、といった効果もある。さらに、本発明の一側面に係るIII族窒化物半導体素子では、前記活性層における酸素濃度は1×1017cm−3以上であることができる。このIII族窒化物半導体素子によれば、活性層が1×1017cm−3以上の酸素を含むとき、活性層の表面モフォロジがさらに平坦になる。
【0014】
本発明の一側面に係るIII族窒化物半導体素子では、前記活性層における酸素濃度は5×1018cm−3以下であることができる。このIII族窒化物半導体素子によれば、活性層が5×1018cm−3以下の範囲を超えて酸素を含むとき、活性層の結晶品質が良好ではなくなる。また、活性層が5×1018cm−3以下の範囲を超えて酸素を含むとき、活性層における自由キャリア吸収による光学ロスが増加する。
【0015】
本発明の一側面に係るIII族窒化物半導体素子では、前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層における酸素濃度は5×1016cm−3以上であることができる。このIII族窒化物半導体素子によれば、第2導電型窒化ガリウム系半導体層における酸素濃度が5×1016cm−3以上の酸素を含むとき、第2導電型窒化ガリウム系半導体層の表面モフォロジが平坦になる。また、本発明の一側面に係るIII族窒化物半導体素子では、前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層における酸素濃度は1×1017cm−3以上であることができる。このIII族窒化物半導体素子によれば、第2導電型窒化ガリウム系半導体層における酸素濃度が1×1017cm−3以上の酸素を含むとき、第2導電型窒化ガリウム系半導体層の表面モフォロジがさらに平坦になる。
【0016】
本発明の一側面に係るIII族窒化物半導体素子では、前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層における酸素濃度は5×1018cm−3以下であることができる。このIII族窒化物半導体素子によれば、第2導電型窒化ガリウム系半導体層における酸素濃度が5×1018cm−3以下の範囲を超えて酸素を含むとき、第2導電型窒化ガリウム系半導体層の結晶品質が良好ではなくなる。また、第2導電型窒化ガリウム系半導体層における酸素濃度が5×1018cm−3以下の範囲を超えて酸素を含むとき、第2導電型窒化ガリウム系半導体層の導電性が良好ではなくなる。
【0017】
本発明の一側面に係るIII族窒化物半導体素子では、前記第1導電型窒化ガリウム系半導体層の炭素濃度は5×1018cm−3以下であり、前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層の炭素濃度は5×1018cm−3以下であり、前記活性層の炭素濃度は5×1018cm−3以下であることができる。このIII族窒化物半導体素子によれば、成長中に不可避的に窒化ガリウム系半導体に取り込まれる炭素濃度が高いとき、安定なc面ファセットが出現しやすくなる。窒化ガリウム系半導体の炭素濃度を下げることにより、窒化ガリウム系半導体にファセットの発生を避けることができる。ただし、ここでいう炭素濃度からは窒化ガリウム系半導体を成長後に表面に形成されるコンタミネーションを除外する。
【0018】
本発明の一側面に係るIII族窒化物半導体素子は、別の第2導電型窒化ガリウム系半導体層を更に備えることができる。前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層のバンドギャップは前記別の第2導電型窒化ガリウム系半導体層のバンドギャップよりも大きく、前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層の酸素濃度は、前記活性層の酸素濃度よりも大きく、前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層は前記別の第2導電型窒化ガリウム系半導体層と前記活性層との間に設けられており、前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層は前記別の第2導電型窒化ガリウム系半導体層と接合を形成する。
【0019】
このIII族窒化物半導体素子によれば、第2導電型窒化ガリウム系半導体層の酸素濃度が活性層の酸素濃度よりも大きいので、第2導電型窒化ガリウム系半導体層と別の第2導電型窒化ガリウム系半導体層との接合面が平坦になり、これ故に、この界面における散乱ロスが低減される。
【0020】
本発明の一側面に係るIII族窒化物半導体素子は、前記活性層と前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層との間に設けられ窒化ガリウム系半導体からなる光ガイド層を更に備えることができる。前記活性層は、前記基準平面に対して傾斜する平面に沿って延在しており、前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層は電子ブロック層である。
【0021】
このIII族窒化物半導体素子によれば、半極性面や無極性面上に、活性層、光ガイド層及び第2導電型窒化ガリウム系半導体層を設けるので、これらの半導体層におけるピエゾ電界はc面上における半導体層におけるピエゾ電界に比べて小さい。小さいピエゾ分極により該主面上ではキャリアオーバーフローが発生しにくいので、ドナーして働く酸素をp型半導体層に添加して平坦化の効果を得ることができる。これ故に、酸素添加による平坦な表面モフォロジを有するp型半導体層に加えて、高いキャリア注入効率を提供できる。
【0022】
本発明のIII族窒化物半導体素子では、前記活性層は、交互に配列された井戸層及び障壁層を含み、前記井戸層の酸素濃度は6×1017cm−3以下であることができる。このIII族窒化物半導体素子によれば、活性層の酸素濃度が高いとき、自由キャリア吸収による光学的ロスが増加する。井戸層の酸素濃度が6×1017cm−3以下であるので、実効的な光学的ロスを避けることができ、また、井戸層の結晶品質の低下による発光効率の低下を避けることができる。
【0023】
本発明の一側面に係るIII族窒化物半導体素子では、前記主面の法線と前記基準軸との成す角度は10度以上170度以下であることができる。このIII族窒化物半導体素子によれば、非極性による寄与が適切に発揮される。この非極性は半極性及び無極性を表す。
【0024】
本発明の一側面に係るIII族窒化物半導体素子では、前記主面の法線と前記基準軸との成す角度は10度以上80度以下であり、或いは前記主面の法線と前記基準軸との成す角度は100度以上170度以下であることができる。このIII族窒化物半導体素子によれば、半極性や無極性による寄与が適切に発揮される。
【0025】
本発明の一側面に係るIII族窒化物半導体素子では、前記主面の法線と前記基準軸との成す角度は63度以上80度以下であり、或いは前記主面の法線と前記基準軸との成す角度は100度以上117度以下であることができる。このIII族窒化物半導体素子によれば、オフ角が上記の範囲にあるとき、ピエゾ分極が特に小さくなる。これ故に、キャリアオーバーフローが生じにくい。
【0026】
本発明の別の側面は、III族窒化物半導体素子のためのエピタキシャルウエハである。エピタキシャルウエハは、(a)III族窒化物半導体からなり、該III族窒化物半導体のc軸方向に延びる基準軸に直交する基準平面に対して有限の角度をなす主面を有するIII族窒化物半導体基板と、(b)5×1016cm−3以上5×1018cm−3以下の酸素濃度を有しており、前記III族窒化物半導体基板の前記主面上に設けられた第1導電型窒化ガリウム系半導体層と、(c)前記第1導電型窒化ガリウム系半導体層上に設けられた発光層と、(d)前記発光層上に設けられた第2導電型窒化ガリウム系半導体層とを備える。前記主面は半極性及び無極性のいずれか一方を示す。
【0027】
このエピタキシャルウエハによれば、第1導電型窒化ガリウム系半導体層が半極性面や無極性面上に設けられると共に第1導電型窒化ガリウム系半導体層が5×1016cm−3以上の酸素を含むとき、第1導電型窒化ガリウム系半導体層の表面モフォロジが平坦になる。良好な表面モフォロジの第1導電型窒化ガリウム系半導体層上に発光層を設けることができる。また、第1導電型窒化ガリウム系半導体層の表面も非極性を示す。第1導電型窒化ガリウム系半導体層が5×1018cm−3以下の範囲を超えて酸素を含むとき、第1導電型窒化ガリウム系半導体層の結晶品質が良好ではなくなる。
【0028】
本発明の別の側面に係るエピタキシャルウエハは、別の第2導電型窒化ガリウム系半導体層を更に備えることができる。前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層のバンドギャップは前記別の第2導電型窒化ガリウム系半導体層のバンドギャップよりも大きく、前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層の酸素濃度は、前記発光層の酸素濃度よりも大きく、前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層は前記別の第2導電型窒化ガリウム系半導体層と前記発光層との間に設けられており、前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層は前記別の第2導電型窒化ガリウム系半導体層と接合を形成する。
【0029】
このエピタキシャルウエハによれば、第2導電型窒化ガリウム系半導体層のバンドギャップが別の第2導電型窒化ガリウム系半導体層のバンドギャップよりも大きいと共に第2導電型窒化ガリウム系半導体層が別の第2導電型窒化ガリウム系半導体層と発光層との間に設けられるので、第2導電型窒化ガリウム系半導体層は電子ブロック層として働き、また別の第2導電型窒化ガリウム系半導体層はクラッド層として働く。第2導電型窒化ガリウム系半導体層の酸素濃度が発光層の酸素濃度よりも大きいので、第2導電型窒化ガリウム系半導体層と別の第2導電型窒化ガリウム系半導体層との接合の平坦性が優れる。これ平坦性により、第2導電型窒化ガリウム系半導体層と別の第2導電型窒化ガリウム系半導体層との界面による光散乱が低減される。
【0030】
本発明の別の側面に係るエピタキシャルウエハでは、前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層の酸素濃度は5×1016cm−3以上であり、前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層の酸素濃度は5×1018cm−3以下である。前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層は電子ブロック層であり、前記発光層は、交互に配列された井戸層及び障壁層を有する活性層を含み、前記発光層は、窒化ガリウム系半導体からなる光ガイド層を更に備え、該光ガイド層は、前記活性層と前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層との間に設けられ、前記発光層の前記光ガイド層は、前記基準平面に対して傾斜する平面に沿って延在している。また、本発明の別の側面に係るエピタキシャルウエハでは、前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層の酸素濃度は1×1017cm−3以上であることができる。
【0031】
このエピタキシャルウエハによれば、半極性面や無極性面上に、活性層、光ガイド層及び第2導電型窒化ガリウム系半導体層を設けるので、これらの半導体層におけるピエゾ電界はc面上の半導体層におけるピエゾ電界に比べて小さい。キャリア補償の観点からドナー不純物の酸素をp型半導体層に添加しないことが良いが、半極性面や無極性面による小さいピエゾ分極のため本基板主面ではキャリアオーバーフローが低減される。これ故に、第2導電型窒化ガリウム系半導体層の酸素濃度が5×1016cm−3以上5×1018cm−3以下であるけれども、キャリア注入効率の低下を避けることができる。
【0032】
本発明の別の側面に係るエピタキシャルウエハでは、前記主面の法線と前記基準軸との成す角度は10度以上80度以下であり、或いは前記主面の法線と前記基準軸との成す角度は100度以上170度以下であることができる。或いは、本発明の別の側面に係るエピタキシャルウエハでは、前記主面の法線と前記基準軸との成す角度は前記基準平面に対して63度以上80度以下であり、或いは前記主面の法線と前記基準軸との成す角度は前記基準平面に対して100度以上117度以下である。
【0033】
本発明の更なる別の側面は、III族窒化物半導体素子を作製する方法である。この方法は、(a)III族窒化物半導体からなり、主面を有するIII族窒化物半導体基板を準備する工程と、(b)III族原料及び窒素原料を成長炉に供給して、5×1016cm−3以上5×1018cm−3以下の酸素濃度を有する第1導電型窒化ガリウム系半導体層を前記III族窒化物半導体基板の前記主面上に成長する工程と、(c)III族原料及び窒素原料を前記成長炉に供給して、前記第1導電型窒化ガリウム系半導体層上に発光層を成長する工程と、(d)III族原料及び窒素原料を前記成長炉に供給して、第2導電型窒化ガリウム系半導体層を前記発光層上に成長する工程とを備える。前記主面は半極性及び無極性のいずれか一方を示し、前記第1導電型窒化ガリウム系半導体層の酸素は、前記III族原料及び前記窒素原料の少なくともいずれか一つに含まれる不純物として提供され、前記III族窒化物半導体基板の前記主面は、該III族窒化物半導体のc軸方向に延びる基準軸に直交する基準平面に対して有限の角度をなす。
【0034】
この方法によれば、半極性面や無極性面上に成長された窒化ガリウム系半導体層が、5×1016cm−3以上の酸素を含むとき、この窒化ガリウム系半導体層の表面モフォロジが平坦になる。このため、第1導電型窒化ガリウム系半導体層の表面にc面が現れることなく、窒化ガリウム系半導体層の表面も基板主面に応じた極性を示す。半極性面上に成長された窒化ガリウム系半導体層が5×1018cm−3以下の範囲を超える酸素を含むとき、この窒化ガリウム系半導体層の結晶品質が良好ではなくなる。良好な表面モフォロジの第1導電型窒化ガリウム系半導体層上に発光層の成長を行うことができる。また、窒化ガリウム系半導体層が、1×1017cm−3以上の酸素を含むとき、この窒化ガリウム系半導体層の表面モフォロジがより平坦になる。
【0035】
本発明に係る方法では、前記窒素原料はアンモニアを含み、前記窒素原料は不純物として水を含む。前記発光層における酸素濃度は5×1016cm−3以上であり、前記発光層における酸素濃度は5×1018cm−3以下であり、前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層における酸素濃度は5×1016cm−3以上であり、前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層における酸素濃度は5×1018cm−3以下である。前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層の酸素濃度は、前記発光層の酸素濃度よりも大きいことが良い。
【0036】
この方法によれば、酸素を含む窒化ガリウム系半導体の成長を主面上に行う際に、該主面の極性の向きに合わない特定のファセット面が成長中に出現することを抑制できる。このため、表面モフォロジが平坦になる。また、本発明に係る方法では、前記発光層における酸素濃度は1×1017cm−3以上であることができる。さらに、本発明に係る方法では、前記発光層における酸素濃度は5×1018cm−3以下であり、前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層における酸素濃度は1×1017cm−3以上であることができる。これらの方法によれば、表面モフォロジがさらに平坦になる。
【0037】
本発明に係る方法では、前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層の成長温度は前記1導電型窒化ガリウム系半導体層の成長温度よりも低いことが良い。この方法によれば、第2導電型窒化ガリウム系半導体層の成長温度を下げるので、発光層への熱ストレスが低減される。
【0038】
本発明に係る方法では、前記発光層はInAlGaN層を含むことができる。InAlGaN層では、アルミニウム組成により酸素濃度を調整可能であり、In組成の調整により適切なバンドギャップを得ることができる。或いは、本発明に係る方法では、前記発光層はInGaN層を含むことができる。
【0039】
本発明に係る方法では、前記窒素原料として、水分含有量500ppb%以下のアンモニアを用いることができる。また、本発明に係る方法では、前記窒素原料として、水分含有量50ppb%以下のアンモニアを用いることができる。さらに、前記窒素原料として、水分含有量1ppb%以下のアンモニアを用いることができる。
【0040】
本発明に係る方法では、前記窒素原料の原料源と前記成長炉との間に設けられた精製装置を用いて前記窒素原料の水分濃度を調整した後に、前記成長炉に前記窒素原料を供給し、前記窒素原料はアンモニアからなることができる。この発明に係る方法では、前記窒素原料の前記水分濃度は1ppb%以下であることができる。窒素原料中の水分濃度を調整することによって、半導体層中の酸素濃度を制御することができる。同様にして、半導体層中の酸素濃度を制御するのに、III族原料中の水分濃度を調整してもよい。
【0041】
本発明の上記の目的および他の目的、特徴、並びに利点は、添付図面を参照して進められる本発明の好適な実施の形態の以下の詳細な記述から、より容易に明らかになる。
【発明の効果】
【0042】
以上説明したように、本発明の一側面によれば、良好な表面モフォロジを有する窒化ガリウム系半導体膜を含むIII族窒化物半導体素子を提供できる。また、本発明の別の側面によれば、このIII族窒化物半導体素子を作製する方法を提供できる。さらに、本発明の更なる別の側面によれば、良好な表面モフォロジを有する窒化ガリウム系半導体膜を含むエピタキシャル基板を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】図1は、本実施の形態に係るIII族窒化物半導体光素子を概略的に示す図面である。
【図2】図2は、本実施の形態に係るIII族窒化物半導体光素子を概略的に示す図面である。
【図3】図3は、c面及び半極性面上における、活性層、光ガイド層及びp型窒化ガリウム系半導体層におけるバンドダイアグラムを示す図面である。
【図4】図4は本実施の形態の作製方法における主要な工程における生産物を示す図面である。
【図5】図5は本実施の形態の作製方法における主要な工程における生産物を示す図面である。
【図6】図6は本実施の形態の作製方法における主要な工程における生産物を示す図面である。
【図7】図7は本実施の形態の作製方法における主要な工程における生産物を示す図面である。
【図8】図8は、実施例1における半導体レーザLD1を示す図面である。
【図9】図9は、半導体レーザLD1及び半導体レーザLDC1におけるレーザ構造のp型コンタクト層の表面モフォロジを表す微分干渉顕微鏡像を示す図面である。
【図10】図10は、実施例2における半導体レーザLD2を示す図面である。
【図11】図11は、絶対温度300度及び絶対温度10度において測定したELスペクトルを示す図面である。
【図12】図12は、実施例3における発光ダイオードを示す図面である。
【図13】図13は、実施例4におけるレーザダイオードの構造を示す図面である。
【図14】図14は、実施例4および比較例のp型コンタクト層における表面モフォロジを示す図面である。
【図15】図15は、実施例5におけるレーザダイオードの構造を示す図面である。
【図16】図16は、実施例4及びその比較例におけるレーザダイオードのI−V特性を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本発明の知見は、例示として示された添付図面を参照して以下の詳細な記述を考慮することによって容易に理解できる。引き続いて、添付図面を参照しながら、本発明のIII族窒化物半導体素子、エピタキシャル基板、並びにエピタキシャル基板及びIII族窒化物半導体素子を作製する方法に係る実施の形態を説明する。可能な場合には、同一の部分には同一の符号を付する。引き続く説明では、半導体素子の一例として半導体光素子を説明する。
【0045】
図1は、本実施の形態に係るIII族窒化物半導体光素子を概略的に示す図面である。図1に示されたIII族窒化物半導体光素子は、例えば発光ダイオードに適用可能な構造を有する。III族窒化物半導体光素子11aは、III族窒化物半導体支持体13と、窒化ガリウム系半導体領域15と、活性層17と、窒化ガリウム系半導体領域19とを備える。III族窒化物半導体支持体13は、例えばGaN、InGaN、AlGaNといったIII族窒化物半導体からなる。III族窒化物半導体支持体13は主面13a及び裏面13bを含む。III族窒化物半導体支持体13の主面13aは、非極性を示す。この非極性は、半極性及び無極性のいずれかを表す。
【0046】
III族窒化物半導体支持体13が無極性の主面13aを有するとき、主面13aは、III族窒化物半導体のa面、m面であることができ、或いはc軸の回りに関する回転によりa面又はm面から傾斜した面であることができる。III族窒化物半導体支持体13が半極性の主面13aを有するとき、III族窒化物半導体支持体13の主面13aは、基準軸Cxに直交する基準平面Scに対して傾斜する半極性を示しており、基準軸CxはIII族窒化物半導体のc軸方向に延びる。
【0047】
基準平面Scは例えば代表的なc面を示している。基準平面Scはc軸ベクトルVCに直交しており、主面13aには法線ベクトルVNが示されている。c軸ベクトルVCは法線ベクトルVNに対して角度Aoffの角度を成す。この角度Aoffはc面に対するオフ角と呼ばれる。図1を参照すると、III族窒化物半導体の六法晶系の結晶軸a軸、m軸及びc軸を示す結晶座標系CRが示されており、六法晶におけるc面を「(0001)」を表記し、「(000−1)」と表記される面方位は(0001)面に対して反対を向く。また、直交座標系Sは、幾何学座標軸X、Y、Zを示す。傾斜の方向は例えばa軸またはm軸であることができる。窒化ガリウム系半導体領域15、活性層17及び窒化ガリウム系半導体領域19は非極性主面上に軸Axに沿って配列されている。主面13aの法線ベクトルVNと基準軸Cxとの成す角度は基準平面Scに対して10度以上170度以下であることができる。
【0048】
窒化ガリウム系半導体領域15は主面上13aに設けられている。窒化ガリウム系半導体領域15は、5×1016cm−3以上5×1018cm−3以下の酸素濃度を有する。酸素濃度は、例えば原料中の不純物濃度、基板のオフ角、成長温度、混晶の組成等により制御可能である。また、窒化ガリウム系半導体領域15の酸素濃度は、1×1017cm−3以上であることがさらに好ましい。窒化ガリウム系半導体領域15は一または複数の窒化ガリウム系半導体層を含むことができる。本実施例では、窒化ガリウム系半導体領域15は第1導電型窒化ガリウム系半導体層21及び窒化ガリウム系半導体層23からなる。窒化ガリウム系半導体層21は例えばn型半導体層であり、窒化ガリウム系半導体層23は例えば緩衝層であることができる。第1導電型窒化ガリウム系半導体層21は例えばn型窒化ガリウム系半導体からなり、n型窒化ガリウム系半導体には、例えばシリコンといったn型ドーパントが添加されている。n型窒化ガリウム系半導体は、例えばGaN、AlGaN、InGaN、InAlGaN等からなることができる。窒化ガリウム系半導体層23は例えばアンドープ窒化ガリウム系半導体からなる。窒化ガリウム系半導体は、例えばInGaN、InAlGaN、GaN等からなることができる。窒化ガリウム系半導体層23が5×1016cm−3以上の酸素濃度を有するとき、窒化ガリウム系半導体層23の主面上に引き続き成長される活性層17の結晶品質が良好になる。また、窒化ガリウム系半導体層23とこの半導体層の主面上に成長される窒化ガリウム系半導体との界面が良好になる。また、窒化ガリウム系半導体層23が1×1017cm−3以上の酸素濃度を有するとき、窒化ガリウム系半導体層23の主面上に引き続き成長される活性層17の結晶品質がさらに良好になる。
【0049】
また、窒化ガリウム系半導体領域19は一または複数の窒化ガリウム系半導体層を含むことができ、本実施例では、窒化ガリウム系半導体領域19は窒化ガリウム系半導体層25及び第2導電型窒化ガリウム系半導体層27からなる。窒化ガリウム系半導体層25は例えばアンドープまたはp型窒化ガリウム系半導体からなることができる。第2導電型窒化ガリウム系半導体層27は例えばp型窒化ガリウム系半導体からなり、p型窒化ガリウム系半導体には、例えばマグネシウムといったp型ドーパントが添加されている。p型窒化ガリウム系半導体は、例えばGaN、AlGaN、InAlGaN、InGaN等からなることができる。第2導電型窒化ガリウム系半導体層25は例えば電子ブロック層であり、窒化ガリウム系半導体層27は例えばp型コンタクト層であることができる。窒化ガリウム系半導体層21と窒化ガリウム系半導体層27との間には、活性層17が設けられる。活性層17は窒化ガリウム系半導体領域15上に設けられており、窒化ガリウム系半導体領域19は活性層17上に設けられる。
【0050】
このIII族窒化物半導体光素子11aによれば、窒化ガリウム系半導体領域15が主面13a上に設けられると共に窒化ガリウム系半導体領域15が5×1016cm−3以上の酸素を含むとき、窒化ガリウム系半導体領域15の主面15aにおける表面モフォロジが平坦になる。また、窒化ガリウム系半導体領域15が1×1017cm−3以上の酸素を含むとき、主面15aにおける表面モフォロジがさらに平坦になる。このため、窒化ガリウム系半導体領域15の表面15aにc面ファセットが現れることなく、窒化ガリウム系半導体領域15の表面15aの全体が、基板主面13aの極性特性(半極性、無極性)に応じた極性特性を示す。窒化ガリウム系半導体領域15が5×1018cm−3以下の範囲を超えた酸素を含むとき、窒化ガリウム系半導体領域15の結晶品質が良好ではなくなる。上記の酸素濃度の範囲では、良好な表面モフォロジの窒化ガリウム系半導体領域15上に活性層17を設けることができる。これ故に、窒化ガリウム系半導体領域15と活性層17との界面31aが平坦になる。
【0051】
酸素の添加は、非c面の生成を安定化させていると考えられる。これ故に、主面上への窒化ガリウム系半導体領域15の成長では成長面の非極性(半極性及び無極性のいずれか)を保ちながら結晶成長を行うことができる。この結果、表面モフォロジが良好になる。酸素の供給源としては、意図的にドーパントとして添加することを排除するものではないが、原料ガスに含まれている不純物量を管理することによって、原料ガスの不純物を利用できる。半極性面や無極性面に取り込まれる酸素量を制御することによって、活性層17の下地となる窒化ガリウム系半導体領域の表面モフォロジを平坦にできる。
【0052】
活性層17が5×1016cm−3以上の酸素を含むとき、活性層17の表面モフォロジが平坦になる。活性層17が5×1018cm−3以下の酸素を含むとき、活性層17の結晶品質が良好である。活性層17の表面の平坦性の向上により、発光ダイオードでは発光の不均一が低減可能になる。また、活性層17が1×1017cm−3以上の酸素を含むとき、活性層17の表面モフォロジがさらに平坦になる。この更なる平坦性向上により、発光ダイオードでは発光の不均一がさらに低減可能になる。
【0053】
III族窒化物半導体光素子11aの活性層17は、交互に配列された井戸層29a及び障壁層29bを含む量子井戸構造29を有することができる。井戸層29aは、例えばGaN、AlGaN、InGaN、InAlGaN等からなることができ、障壁層29bは、例えばGaN、AlGaN、InGaN、InAlGaN等からなることができる。活性層17の井戸層29aの酸素濃度は、6×107cm−3以下であることができる。井戸層29aの酸素濃度が高いとき、自由キャリア吸収による光学的ロスが増加する。井戸層29aの酸素濃度が6×107cm−3以下であるので、光学的ロスを避けることができ、また、井戸層29aの結晶品質の低下による発光効率の低下を避けることができる。また、障壁層29bの酸素濃度は井戸層29aの酸素濃度以上であるとき、障壁層29bの表面モフォロジが良好になる。良好な表面モフォロジの障壁層29b上に井戸層29aを成長できる。
【0054】
活性層17はInAlGaN層を含むことができ、このInAlGaN層は、井戸層29a及び/又は障壁層29bとして用いられる。InAlGaN層では、アルミニウム組成により酸素濃度を調整可能であり、In組成の調整により適切なバンドギャップを得ることができる。或いは、活性層17はInGaN層を含むことができ、このInGaN層は、井戸層29a及び/又は障壁層29bとして用いられる。InGaN層ではバンドギャップの調整が容易であり、酸素濃度の調整は原料の不純物濃度や成長温度といった成長条件によって行う。
【0055】
活性層17の酸素濃度は5×1016cm−3以上であるとき、引き続き活性層17の主面上に成長される第2導電型窒化ガリウム系半導体層25、27の結晶品質が良好になる。また、活性層17とこの半導体層の主面上に成長される窒化ガリウム系半導体との界面が平坦になる。さらに、活性層17の酸素濃度は1×1017cm−3以上であるとき、第2導電型窒化ガリウム系半導体層25、27の結晶品質および上記の界面平坦性がさらに優れたものになる。
【0056】
窒化ガリウム系半導体層25が5×1016cm−3以上の酸素を含むとき、窒化ガリウム系半導体層25の表面モフォロジが平坦になる。また、窒化ガリウム系半導体層25が1×1017cm−3以上の酸素を含むとき、窒化ガリウム系半導体層25の表面モフォロジがさらに平坦になる。窒化ガリウム系半導体層25の酸素濃度は5×1018cm−3以下であることができる。5×1018cm−3を越える酸素濃度は窒化ガリウム系半導体層25の結晶品質を低下させる可能性がある。
【0057】
また、窒化ガリウム系半導体層27が5×1016cm−3以上の酸素を含むとき、窒化ガリウム系半導体層27の表面モフォロジが平坦になる。また、窒化ガリウム系半導体層27が1×1017cm−3以上の酸素を含むとき、窒化ガリウム系半導体層27の表面モフォロジがさらに平坦になる。窒化ガリウム系半導体層27の酸素濃度は5×1018cm−3以下であることができる。5×1018cm−3を越える酸素濃度は、窒化ガリウム系半導体層27の結晶品質を低下させる。窒化ガリウム系半導体層25の酸素濃度が窒化ガリウム系半導体層27の酸素濃度より大きいとき、窒化ガリウム系半導体層25の表面モフォロジが平坦になるため、その上に形成される窒化ガリウム系半導体層27の結晶品質が優れたものになる。窒化ガリウム系半導体層25の酸素濃度が窒化ガリウム系半導体層27の酸素濃度より小さいとき、窒化ガリウム系半導体層25において酸素によるp型電導の補償の影響が低減され、キャリア注入効率が優れたものになる。
【0058】
半極性面や無極性面上に設けられる窒化ガリウム系半導体では、窒化ガリウム系半導体に取り込まれる炭素濃度が高いとき、安定なc面ファセットが出現しやすくなる。窒化ガリウム系半導体の炭素濃度を下げることにより、窒化ガリウム系半導体にファセットの発生を避けることができる。これ故に、窒化ガリウム系半導体層21、23の炭素濃度は5×1018cm−3以下であることが良い。窒化ガリウム系半導体層25、27の炭素濃度は5×1018cm−3以下であり、活性層17の炭素濃度は5×1018cm−3以下であることができる。炭素は例えば有機金属原料から供給される。炭素濃度は、原料中の不純物濃度、炭素をドープするための原料ガス、基板のオフ角、成長温度、成長圧力等により制御可能である。
【0059】
このIII族窒化物半導体光素子11aによれば、窒化ガリウム系半導体層(例えば、電子ブロック層)25のバンドギャップは窒化ガリウム系半導体層(例えば、p型コンタクト層)27のバンドギャップよりも大きく、また窒化ガリウム系半導体層25は窒化ガリウム系半導体層27と活性層17との間に設けられている。窒化ガリウム系半導体層25は窒化ガリウム系半導体層27と接合31bを形成する。窒化ガリウム系半導体層25の酸素濃度は、活性層17の酸素濃度よりも大きいので、接合面31bが平坦になる。
【0060】
III族窒化物半導体光素子11aでは、窒化ガリウム系半導体層27上には、第1の電極(例えばアノード)33が設けられる。窒化ガリウム系半導体層25が平坦な接合面31a上に設けられるので、窒化ガリウム系半導体層25が良好な結晶品質を有する。これ故に、良好なコンタクト特性が提供される。
【0061】
III族窒化物半導体光素子11aでは、主面13aの角度Aoffは基準平面Scに対して10度以上80度以下であることができる。主面13aの角度Aoffは基準平面Scに対して100度以上170度以下であることができる。このIII族窒化物半導体光素子11aによれば、半極性による寄与が適切に発揮される。支持基体13の裏面13b上には、第2の電極(例えばカソード)35が設けられる。また、III族窒化物半導体光素子11aでは、主面13aが無極性面であることができる。このIII族窒化物半導体光素子11aによれば、無極性による寄与が適切に発揮される。
【0062】
III族窒化物半導体光素子11aでは、このIII族窒化物半導体光素子11aによれば、主面13a上に、活性層17及び窒化ガリウム系半導体層27を設けるので、これらの半導体層におけるピエゾ電界はc面上における半導体層におけるピエゾ電界に比べて小さい。酸素はドナーして働くので、p型半導体層に添加しないことが好ましいけれども、適切な範囲の酸素の添加により、良好なコンタクト特性が提供される。
【0063】
III族窒化物半導体光素子11aでは、傾斜の角度Aoffは基準平面Scに対して63度以上80度以下であることができる。また、角度Aoffは基準平面Aoffに対して100度以上117度以下であることができる。このIII族窒化物半導体光素子11aによれば、オフ角が上記の範囲にあるとき、ピエゾ分極が特に小さくなる。
【0064】
図2は、本実施の形態に係るIII族窒化物半導体光素子を概略的に示す図面である。図2に示されたIII族窒化物半導体光素子は、例えば半導体レーザに適用可能な構造を有する。III族窒化物半導体光素子11bは、III族窒化物半導体支持体13と、窒化ガリウム系半導体領域15と、発光層37と、窒化ガリウム系半導体領域19とを備える。本実施例では、発光層37は、活性層17と、第1及び第2の光ガイド層39、41を含むことができる。活性層17は、第1の光ガイド層39と第2の光ガイド層41との間に設けられている。光ガイド層39、41は窒化ガリウム系半導体からなり、この窒化ガリウム系半導体は例えばアンドープであることができる。
【0065】
このIII族窒化物半導体光素子11bによれば、半極性面や無極性面上に、活性層17、光ガイド層39、41及び窒化ガリウム系半導体層19を設けるので、これらの半導体層におけるピエゾ電界は、図3(a)及び図3(b)に示されるように、c面上における半導体層におけるピエゾ電界に比べて小さい。酸素はドナーして働くので、p型半導体層に添加しないことが好ましいけれども、小さいピエゾ分極により半極性面や無極性面上ではキャリアオーバーフローが発生しにくい。これ故に、酸素濃度が高めであるけれども、キャリア注入効率の低下が抑制される。
【0066】
第1及び第2の光ガイド層39、41の各々は、既に説明した理由に基づき、5×1016cm−3以上の酸素濃度を有することが良い。第1及び第2の光ガイド層39、41の各々は、既に説明した理由に基づき、5×1018cm−3以下の酸素濃度であることが良い。
【0067】
窒化ガリウム系半導体領域19は、窒化ガリウム系半導体層25、27に加えて、更なる別の第2導電型窒化ガリウム系半導体層43を含むことができる。窒化ガリウム系半導体層43は例えばp型窒化ガリウム系半導体からなり、p型窒化ガリウム系半導体には、例えばマグネシウムといったp型ドーパントが添加されている。p型窒化ガリウム系半導体は、例えばGaN、AlGaN、InAlGaN等からなることができる。窒化ガリウム系半導体層43は例えばp型クラッド層であることができる。
【0068】
窒化ガリウム系半導体領域15は、窒化ガリウム系半導体層45を含むことができる。窒化ガリウム系半導体層45は例えばn型窒化ガリウム系半導体からなり、n型窒化ガリウム系半導体には、例えばシリコンといったn型ドーパントが添加されている。n型窒化ガリウム系半導体は、例えばGaN、AlGaN、InAlGaN等からなることができる。窒化ガリウム系半導体層45は例えばn型クラッド層であることができる。
【0069】
窒化ガリウム系半導体層(例えばn型クラッド層)45と窒化ガリウム系半導体層(例えばp型クラッド層)43との間には、発光層37が設けられる。窒化ガリウム系半導体層45及び窒化ガリウム系半導体層43の屈折率は、光ガイド層39、41の屈折率よりも小さい。窒化ガリウム系半導体層45及び窒化ガリウム系半導体層43は、発光層37に光を閉じ込める。
【0070】
窒化ガリウム系半導体層25のバンドギャップは窒化ガリウム系半導体層43のバンドギャップよりも大きい。窒化ガリウム系半導体層25は窒化ガリウム系半導体層43と接合45aを形成する。窒化ガリウム系半導体層25の酸素濃度は、発光層37の酸素濃度よりも大きいとき、接合面45aが平坦になり、これ故に、この界面45aにおける散乱ロスが低減される。また、発光層37は窒化ガリウム系半導体領域19と接合45cを成す。
【0071】
また、窒化ガリウム系半導体領域15は発光層37と接合45bを形成する。窒化ガリウム系半導体領域15の酸素濃度は、発光層37の酸素濃度よりも大きくするので、窒化ガリウム系半導体領域15の表面モフォロジが良好であり、また接合45bが平坦になる。これ故に、この界面45bにおける散乱ロスが低減される。
【0072】
III族窒化物半導体光素子11bでは、窒化ガリウム系半導体層27上には、保護のための絶縁膜47が設けられている。絶縁膜47は、ストライブ状の開口47aを有する。絶縁膜47及び開口47a上に第1の電極(例えばアノード)49aが設けられる。支持基体13の裏面13b上には、第2の電極(例えばカソード)49bが設けられる。窒化ガリウム系半導体層27が平坦なモフォロジの窒化ガリウム系半導体層43上に設けられるので、窒化ガリウム系半導体層27が良好な結晶品質を有し、良好なコンタクト特性が提供される。窒化ガリウム系半導体層43は窒化ガリウム系半導体層27と接合45dを形成する。この接合面45dが平坦である。
【0073】
III族窒化物半導体光素子11bでは、傾斜の角度Aoffは基準平面Scに対して63度以上80度以下及び100度以上117度以下の範囲であるとき、キャリアオーバーフローが生じにくい。
【0074】
このIII族窒化物半導体光素子11bは例えば利得ガイド型レーザダイオードの構造を有する。III族窒化物半導体光素子11bは、一対の端面50a、50bを有することができる。端面50a、50bは、共振器を形成するために劈開面であることが良い。III族窒化物半導体光素子11bによるレーザ光Lは、端面50a、50bの一方から出射される。
【0075】
次いで、エピタキシャル基板及びIII族窒化物半導体光素子を作製する方法を説明する。図4〜図7は、上記の作製方法における主要な工程における生産物を示す図面である。
【0076】
有機金属気相成長法により発光素子のエピタキシャル構造を作製した。原料にはトリメチルガリウム(TMG)、トリメチルアルミニウム(TMA)、トリメチルインジウム(TMI)、アンモニア(NH3)を用いた。ドーパントガスとして、シラン(SiH4)及びビスシクロペンタジエニルマグネシウム(CP2Mg)を用いた。引き続く説明では、例えば半極性主面を有するIII族窒化物半導体基板として、六方晶系半極性窒化ガリウム基板を用いることができる。また、例えば無極性主面を有するIII族窒化物半導体基板として、六方晶系無極性窒化ガリウム基板を用いることができる。以下の説明において、n型ドーパントとしての酸素は、III族原料及び窒素原料の少なくともいずれか一つに含まれる不純物として提供される。引き続く説明では、六方晶系半極性窒化ガリウム基板を参照しながら説明する。
【0077】
工程S101では、図4(a)に示されるように、窒化ガリウム基板を準備した。窒化ガリウム基板の主面はc面からm面方向又はa面方向に10〜80度の角度で傾斜している。窒化ガリウム基板の主面の面積は、例えば25平方ミリメートル以上であり、このサイズは例えば5ミリメートル角に相当する。窒化ガリウム基板51の主面51aのサイズは、例えば2インチ以上であることが良い。反応炉10内にGaN基板51を設置した後に、工程S102では、図4(b)に示されるように、GaN基板51のサーマルクリーニングを成長炉10を用いて行う。摂氏1050度の温度で、NH3とH2を含むガスG0を成長炉10に流しながら、10分間の熱処理を行う。
【0078】
工程S103では、図4(c)に示されるように、III族原料及び窒素原料を含む原料ガスG1を成長炉10に供給して、GaN基板51の主面51a上に、n型の窒化ガリウム系半導体領域53をエピタキシャルに成長する。原料ガスG1は、例えばTMG、TMA、NH3、SiH4を含む。窒化ガリウム系半導体領域53として、例えば摂氏1050度の温度でSiドープAlGaNクラッド層を成長する。このAlGaN層の厚さは例えば2μmである。窒化ガリウム系半導体領域53の酸素濃度は、例えば5×1016cm−3以上5×1018cm−3以下の範囲である。この方法によれば、酸素を含む窒化ガリウム系半導体の成長を半極性面上に行う際に、半極性面に合わない特定のファセット面が成長中に出現することを抑制する。このため、表面モフォロジが平坦になる。引き続く成長においても、酸素の添加により、特定のファセット面が成長中に出現することを抑制できる。また、窒化ガリウム系半導体領域53の炭素濃度は5×1018cm−3以下であるとき、窒化ガリウム系半導体にファセットの発生を避けることができる。また、窒化ガリウム系半導体領域53の酸素濃度は、例えば1×1017cm−3以上であるとき、より平坦な表面モフォロジ及びファセット面の抑制が提供される。
【0079】
次いで、摂氏840度に基板温度を下げた後に、工程S104では、図5(a)に示されるように、III族原料及び窒素原料を含む原料ガスG2を成長炉10に供給して、アンドープInGaN光ガイド層55aをエピタキシャルに成長する。原料ガスG2は、例えばTMG、TMI、NH3を含む。InGaN光ガイド層55aの酸素濃度は、例えば5×1016cm−3以上5×1018cm−3以下の範囲である。InGaN光ガイド層55aの厚さは、100nmである。また、InGaN光ガイド層55aの酸素濃度は、例えば1×1017cm−3以上であることが好適である。
【0080】
引き続き、量子井戸構造を有する活性層を成長する。この活性層における平均酸素濃度は5×1016cm−3以上であり、活性層における平均酸素濃度は5×1018cm−3以下である。また、この平均酸素濃度は1×1017cm−3以上であることができる。工程S105では、図5(b)に示されるように、III族原料及び窒素原料を含む原料ガスG3を成長炉10に供給して、摂氏840度の基板温度で、GaN障壁層57をInGaN光ガイド層55a上に成長する。原料ガスG2は、例えばTMG、NH3を含む。このGaN層57の厚さは例えば15nmである。
【0081】
この後に摂氏790度に基板温度を下げた後に、工程S106では、図5(c)に示されるように、III族原料及び窒素原料を含む原料ガスG4を成長炉10に供給して、GaN障壁層57上に、アンドープInGaN井戸層59をエピタキシャルに成長する。原料ガスG4は、例えばTMG、TMI、NH3を含む。InGaN井戸層59の酸素濃度は、例えば6×1017cm−3以下であることが良い。井戸層59の厚さは例えば3nmである。
【0082】
その後、摂氏840度まで基板温度を上げた後に、厚さ15nmのGaN障壁層57を成長する。必要な場合には、障壁層57の成長及び井戸層59の成長を繰り返す。さらに、工程S107で、摂氏840度の基板温度で、III族原料及び窒素原料を含む原料ガスG5を成長炉10に供給して、光ガイド層55aと同様に、アンドープInGaN光ガイド層55bをエピタキシャルに成長して、図6(a)に示されるように、活性層61及び発光層63を作製する。発光層63の炭素濃度は5×1018cm−3以下であるとき、窒化ガリウム系半導体にファセットの発生を避けることができる。
【0083】
次いで、III族原料及び窒素原料を前記成長炉に供給して、第2導電型窒化ガリウム系半導体領域を発光層63上に成長する。このために、工程S108では、基板温度を摂氏1000度に上昇した後に、III族原料及び窒素原料を含む原料ガスG6を成長炉10に導入して、図6(b)に示されるように、発光層63上に、電子ブロック層65をエピタキシャルに成長する。原料ガスG6は、例えばTMG、TMA、NH3、CP2Mgを含む。電子ブロック層65の厚さは例えば20nmである。
【0084】
次いで、工程S109において、III族原料及び窒素原料を含む原料ガスG7を成長炉10に導入して、図7(a)に示されるように、電子ブロック層65上に、p型クラッド層67をエピタキシャルに成長する。原料ガスG7は、例えばTMG、TMA、NH3、CP2Mgを含む。p型クラッド層67の厚さは例えば400nmである。
【0085】
続けて、工程S110において、III族原料及び窒素原料を含む原料ガスG8を成長炉10に導入して、図7(b)に示されるように、p型クラッド層67上にp型コンタクト層69をエピタキシャルに成長する。原料ガスG8は、例えばTMG、NH3、CP2Mgを含む。p型コンタクト層69の厚さは例えば50nmである。
【0086】
窒化ガリウム系半導体層65、67、69の酸素濃度は5×1016cm−3以上であり、窒化ガリウム系半導体層65、67、69の酸素濃度は5×1018cm−3以下である。また、酸素濃度は1×1017cm−3以上であることができる。窒化ガリウム系半導体層65、67、69の酸素濃度は、発光層63の酸素濃度よりも大きいことが良い。また、窒化ガリウム系半導体領域70の炭素濃度は5×1018cm−3以下であるとき、窒化ガリウム系半導体にファセットの発生を避けることができる。
【0087】
ここで、発光層とn型窒化ガリウム系半導体層のモフォロジと酸素ドーピングについて説明する。InGaN井戸層の成長温度は低く、原子がマイレーションしにくいので、島状に成長する傾向にある。一方、n型GaN、AlGaNといった窒化ガリウム系半導体の成長温度は高いので、ステップフロー成長を得やすい。酸素ドーピングによってモフォロジが平坦化する効果は、上述の島状、ステップフロー成長といった成長モードとは異なる。酸素のドーピングにより、半極性面が安定化される。例えば窒化ガリウムの結晶成長においてc面は安定な面であると考えられており、半極性面上への窒化ガリウムの結晶成長において、ファセット面としてc面が生成されやすい。c面の生成は、半極性面上でのエピタキシャル成長において、モフォロジを悪化させる。酸素のドーピングにより、半極性面上でのエピタキシャル成長においてモフォロジを悪化させるファセット面の生成を抑制できる。
【0088】
基板温度を室温まで降温した後に、エピタキシャル基板EP1を成長炉から取り出す。エピタキシャル基板EP1は、III族窒化物半導体基板51と、第1導電型窒化ガリウム系半導体領域53と、発光層63と、第2導電型窒化ガリウム系半導体領域70とを備える。このエピタキシャル基板EP1によれば、窒化ガリウム系半導体領域53、70が5×1016cm−3以上の酸素を含むとき、窒化ガリウム系半導体領域53、70の表面モフォロジが平坦になる。このため、窒化ガリウム系半導体領域53、70の表面にc面が現れることなく、窒化ガリウム系半導体領域53、70の表面も半極性を示す。窒化ガリウム系半導体領域53、70が1×1017cm−3以上の酸素を含むとき、上記の技術的な寄与が優れたものになる。窒化ガリウム系半導体領域53、70が5×1018cm−3以下の範囲を超えた酸素を含むとき、窒化ガリウム系半導体領域53、70の結晶品質が良好ではなくなる。良好な表面モフォロジの窒化ガリウム系半導体領域53上に発光層63を設けることができる。
【0089】
エピタキシャル基板EP1のp型窒化ガリウム系半導体領域70上にアノード電極を形成してp型コンタクト層69に電気的な接続を成すと共に基板51の裏面51bを必要に応じて研磨した後に研磨裏面にカソード電極を形成する。これらの電極は、例えば蒸着により作製される。
【0090】
n型窒化ガリウム系半導体領域53の酸素濃度が、発光層63及びp型窒化ガリウム系半導体領域70の酸素濃度よりも大きいとき、発光素子のエピタキシャル膜積層において半導体領域53が最も厚いので、モフォロジ改善への寄与が大きい。酸素がn型ドーパントであるので、酸素の添加によりキャリアの補償が生じることがない。発光層63の酸素濃度が低いとき、発光層63の発光効率が向上される。酸素濃度がn型ドーパントであるので、p型窒化ガリウム系半導体領域70の酸素濃度が低いとき、酸素の添加によるキャリアの補償の影響が小さい。
【0091】
発光層63の酸素濃度がp型窒化ガリウム系半導体領域70の酸素濃度よりも大きいとき、発光層63のモフォロジ改善はp型窒化ガリウム系半導体領域70の結晶品質の改善に寄与する。p型窒化ガリウム系半導体領域70の酸素濃度が低いとき、キャリア濃度が大きい。
【0092】
p型窒化ガリウム系半導体領域70の酸素濃度が、発光層63の酸素濃度よりも小さいとき、マグネシウム(Mg)の添加により平坦性が損なわれやすいけれども、酸素の添加により、この半導体領域70の平坦性が改善できる。発光層63の酸素濃度が低いとき、発光層63の発光効率が良好になる。p型窒化ガリウム系半導体領域70の成長温度を下げてこの半導体領域70の酸素濃度を高めるとき、発光層63への熱的ストレスが低減される。
【0093】
p型窒化ガリウム系半導体領域70の酸素濃度が、n型窒化ガリウム系半導体領域53よりも大きいとき、酸素の添加により、この半導体領域70の平坦性が改善できる。p型窒化ガリウム系半導体領域70のAl増加により酸素濃度を高めるとき、レーザダイオードにおける光閉じ込め性が向上される。p型窒化ガリウム系半導体領域70の成長温度を下げてこの半導体領域70の酸素濃度を高めるとき、発光層63への熱的ストレスが低減される。
【0094】
(実施例1)
レーザダイオードLD1を作製した。m軸方向に75度の角度θ1で傾斜させた半極性主面を有するGaN基板71を準備した。この半極性主面は(20−21)面に相当する。GaN基板71を成長炉に配置した後に、成長炉にアンモニア(NH3)及び水素(H2)を供給して、摂氏1050度の雰囲気にGaN基板71を保持した。保持時間は10分であった。この前処理(サーマルクリーニング)の後に、原料ガスを成長炉に供給して以下のレーザ構造を作製した。まず、n型Al0.04Ga0.96Nクラッド層72を摂氏1050度で成長した。摂氏840度に基板温度を下げた後にIn0.03Ga0.97N光ガイド層73aを成長した。In0.03Ga0.97N光ガイド層73a上に量子井戸活性層74を成長した。さらに、摂氏840度に基板温度で、この活性層74上にIn0.03Ga0.97N光ガイド層73bを成長した。摂氏1000度に基板温度を上昇した後に、Al0.12Ga0.88N電子ブロック層78、p型Al0.06Ga0.94Nクラッド層75及びp型GaNコンタクト層76を成長した。このレーザ構造のフォトルミネッセンス波長は450nm帯にあった。このレーザ構造において表面モフォロジに最も大きく影響するものは、GaN基板71の直上に位置しかつ大きな膜厚のクラッド層である。この実施例ではクラッド層72の酸素濃度は3×1017cm−3であった。コンタクト層76には絶縁膜77の開口を介してアノードを形成すると共にGaN基板71の裏面71bにカソードを形成して、図8に示される半導体レーザLD1を作製した。
【0095】
摂氏1150度の成長温度でn型Al0.04Ga0.96Nクラッド層を成長して、半導体レーザLD0を作製した。このクラッド層の酸素濃度を9×1016cm−3であった。図9(a)は、半導体レーザLD1におけるレーザ構造のp型GaNコンタクト層の表面モフォロジを示す。図9(b)は、半導体レーザLD0におけるレーザ構造のp型コンタクト層も表面モフォロジを示す。半導体レーザLD0におけるレーザ構造のp型コンタクト層は、良好な表面モフォロジを示す。高い酸素濃度のn型AlGaNクラッド層を含む半導体レーザLD1では、半極性面が安定化されたと考えられる。これらのレーザ構造の比較により、半導体レーザLD1におけるレーザ構造はより平坦なモフォロジを示した。
【0096】
(実施例2)
レーザダイオードを作製した。m軸方向に75度の角度θ2で傾斜させた半極性主面を有するGaN基板81を準備した。この半極性主面は(20−21)面に相当する。GaN基板81を成長炉に配置した後に、成長炉にアンモニア(NH3)及び水素(H2)を供給して、摂氏1050度の雰囲気にGaN基板81を保持した。保持時間は10分であった。このサーマルクリーニングの後に、原料ガスを成長炉に供給して以下のレーザ構造を作製した。まず、n型Al0.04Ga0.96Nクラッド層82を摂氏1050度で成長した。摂氏840度に基板温度を下げた後に、厚さ100nmのIn0.02Ga0.98N光ガイド層83aを成長した。光ガイド層83上に量子井戸活性層84を成長した。さらに、摂氏840度に基板温度で、この活性層84上にIn0.02Ga0.98N光ガイド層83bを成長した。摂氏1000度に基板温度を上昇した後に、Al0.12Ga0.88N電子ブロック層85、p型Al0.06Ga0.94Nクラッド層86及びp型GaNコンタクト層87を成長した。このレーザ構造のフォトルミネッセンス波長は405nm帯にあった。
【0097】
コンタクト層87には絶縁膜(例えばSiO2)88のストライプ窓(幅10μm)を介してアノード89aを形成すると共にGaN基板81の裏面81aにカソード89bを形成した。この後に、800μm間隔でa面でへき開して、図10に示されるゲインガイド型半導体レーザLD2を作製した。
【0098】
この実施例では、n型クラッド層の酸素濃度は3×1017cm−3であった。量子井戸活性層84の酸素濃度は2×1017cm−3であった。p型電子ブロック層85の酸素濃度は1×1018cm−3であった。p型クラッド層86の酸素濃度は7×1017cm−3であった。この構造では、p層の酸素濃度が発光層よりも高い。
【0099】
比較のために、同じ成膜条件で、c面GaN基板上にもLD構造を作製した。同じ成膜条件でc面上への成長においては、GaN系半導体への酸素の取り込み量が異なり、酸素濃度は全エピタキシャル層で1×1017cm−3以下であった。また、m面でへき開を行って、共振器ミラーを有するゲインガイド型半導体レーザLDC2を作製した。
【0100】
これらの半導体レーザLD2、LDC2に電流2mAを印加して、エレクトロルミネッセンス(EL)を絶対温度300度(300K)と絶対温度10度(10K)において測定した。図11(a)は、絶対温度300度において測定したELスペクトルを示し、図11(b)は、絶対温度10度において測定したELスペクトルを示す。ELスペクトルELS(300)及びELS(10)は実施例の半導体レーザLD2において測定され、ELスペクトルELC(300)及びELC(10)は、比較例の半導体レーザLDC2において測定された。温度300K及び10KにおけるELスペクトルを比較した。温度300Kでは、いずれの半導体レーザLD2、LDC2のELスペクトルELS(300)及びELC(300)は、405nm付近にMQWに起因するピークを有する。一方、測定温度10Kでは、実施例の半導体レーザLD2のELスペクトルは単一のピークを示したが、比較例の半導体レーザLDC2は、MQWピークの他にp型半導体層におけるドナーアクセプタ対(DAP)発光を有する。これは、比較例ではホールが枯渇する低温において電子がp型半導体層へオーバーフローしていることを示す。
【0101】
本実施例の半導体レーザLD2では、p型半導体層にドナーとして働く酸素を発光層よりも高い濃度でドープしているけれども、良好なキャリア注入効率を示す。p型半導体層の平坦性はMg添加によって損なわれやすい。しかし、適正な範囲で酸素を添加することによって、表面平坦性とキャリア注入効率の両方が提供される。p型半導体層の平坦性を改善し、電子ブロック層/クラッド層の界面の急峻性を高めることは、半導体レーザの共振器を伝搬する光の散乱ロス低減につながる。
【0102】
(実施例3)
発光ダイオードを作製した。a軸方向に18度の角度θ3で傾斜させた半極性主面を有するGaN基板91を準備した。GaN基板91を成長炉に配置した後に、成長炉にアンモニア(NH3)及び水素(H2)を供給して、摂氏1050度の雰囲気にGaN基板91を保持した。保持時間は10分であった。このサーマルクリーニングの後に、原料ガスを成長炉に供給して以下の発光ダイオード構造を作製した。まず、厚さ2μmのn型GaN層92を摂氏1050度で成長した。摂氏840度に基板温度を下げた後にIn0.04Ga0.96N緩衝層93を成長した。厚さ100nmの緩衝層93上に量子井戸活性層94を成長した。具体的には、摂氏840度の基板温度で厚さ15nmのGaN障壁層94aを成長すると共に摂氏700度の基板温度で厚さ3nmのInAlGaN井戸層94bを成長して、活性層94を形成した。摂氏1000度に基板温度を上昇した後に、この活性層94上に厚さ20nmのp型Al0.18Ga0.82N電子ブロック層95及び厚さ50nmのp型GaNコンタクト層96を成長した。コンタクト層96にはアノード(Ni/Au)97とパッド電極99aを形成すると共に基板91の裏面91bにカソード(Ti/Al)を形成して、図12に示される発光ダイオードLED1を作製した。異なるインジウム組成のInAlGaN井戸層を有する発光ダイオード構造を作製した。井戸層の酸素濃度と光出力との関係を調べた。
LED構造、In組成、Al組成、酸素濃度(cm−3)、光出力
LED1 :0.18、0、 2×1017、 1
LED2 :0.19、0.03、4×1017、 0.85
LED3 :0.20、0.06、1×1018、 0.54。
450nm付近の発光波長を得るように、井戸層のIn組成を変更した。井戸層中の酸素濃度が増加するに従い、発光出力は低下した。これは、酸素の添加が井戸層の結晶品質を低下させたと考えられる。井戸層のAlは酸素を吸着しやすくまた低温(井戸層にInが取り込まれるような温度)で吸着した酸素が脱離しにくいことを利用して、井戸層の酸素濃度を制御した。
【0103】
(実施例4)
m面主面を有するGaN基板を準備した。このGaN基板上にレーザダイオードLD3を作製した。図13は、実施例4におけるレーザダイオードの構造を示す図面である。GaN基板101を成長炉に配置した後に、成長炉にアンモニア(NH3)及び水素(H2)を供給して、摂氏1050度の雰囲気でサーマルクリーニングを行った後に、実施例1と同様にして、以下のレーザ構造をGaN基板101の無極性主面101a上に作製した。
Al0.04Ga0.96Nクラッド層102:n型、2μm、
In0.03Ga0.97N光ガイド層103a:アンドープ、100nm、
活性層104:In0.18Ga0.82N井戸層(厚さ3nm)/GaN障壁層(厚さ15nm)、
In0.03Ga0.97N光ガイド層103b:アンドープ、100nm、
Al0.12Ga0.88N電子ブロック層105:p型、20nm、
Al0.06Ga0.94Nクラッド層106:p型、400nm、
GaNコンタクト層107:p型、50nm。
ストライプ窓(幅10μm)を有する絶縁膜(例えばSiO2)108及びコンタクト層107上にアノード109aを形成すると共に、GaN基板101の裏面101bにカソード109bを形成した。この後に、へき開によりゲインガイド型半導体レーザLD3を作製した。
【0104】
測定の結果、このレーザ構造のn型Al0.04Ga0.96Nクラッド層102の酸素濃度は1×1017cm−3であった。この値は、比較のためのLD構造における酸素濃度2×1016cm−3に比べて大きい。図14は、実施例4のp型コンタクト層107および比較例のp型コンタクト層における表面モフォロジを示す図面である。図14(a)に示されたp型コンタクト層表面を図14(b)に示されたp型コンタクト層表面と比較すると、実施例4のエピタキシャル膜の表面は比較的平坦なモフォロジを示した。一方、比較例のエピタキシャル膜の表面にはc軸に直交する方向に延びる多数のファセットが見られた。実施例4によれば、無極性面でも酸素による安定化の効果があるものと考えられる。
【0105】
(実施例5)
レーザダイオードLD4を作製した。図15は、実施例5におけるレーザダイオードの構造を示す図面である。m軸方向に68度の角度θ4で傾斜させた半極性主面を有するGaN基板111を準備した。GaN基板111を成長炉に配置した後に、成長炉にアンモニア(NH3)及び水素(H2)を供給して、摂氏1050度の雰囲気にGaN基板111を保持した。この前処理の後に、原料ガスを成長炉に供給して以下のレーザ構造を作製した。まず、n型Al0.04Ga0.96Nクラッド層112を摂氏1050度で成長した。摂氏840度に基板温度を下げた後にIn0.03Ga0.97N光ガイド層113aを成長した。In0.03Ga0.97N光ガイド層113a上に活性層114を成長した。さらに、摂氏840度に基板温度で、この活性層114上にIn0.03Ga0.97N光ガイド層113bを成長した。摂氏1000度に基板温度を上昇した後に、Al0.12Ga0.88N電子ブロック層115、p型Al0.06Ga0.94Nクラッド層116及びp型GaNコンタクト層117を成長した。このレーザ構造のフォトルミネッセンス波長は450nm帯にあった。
【0106】
アンモニアといった窒素原料の水分濃度を調整するために、窒素原料の供給源と成長炉との間に精製装置を設けた。この精製装置を用いて、精製されて窒素原料としてアンモニアを成長炉に供給した。精製装置を用いて、窒素原料として、水分含有量500ppb%以下のアンモニアを成長炉に供給できる。また、精製装置を用いて、窒素原料として水分含有量50ppb%以下のアンモニアを用いることができる。さらに、精製装置を用いて、窒素原料として、水分含有量1ppb%以下のアンモニアを成長炉に供給できる。この実施例において、水分濃度50ppb%のアンモニアを窒素原料として成長炉に供給した。
【0107】
測定によれば、p型Al0.06Ga0.94Nクラッド層の酸素濃度は2×1017cm−3であった。比較のために、水分濃度1ppm%のアンモニアを窒素原料として用いた。測定によれば、このp型AlGaN層の酸素濃度は8×1018cm−3であった。
【0108】
実施例のLD構造におけるp型GaNコンタクト層117の表面にSiO2膜を成膜し、この後に幅10μmのストライプ窓をウェットエッチングにより形成して保護膜118を設けた。Ni/Auからなるp電極119aとTi/Auから成るパッド電極を蒸着により形成した。基板裏面111bにはTi/Alから成るn電極119bとTi/Auから成るパッド電極を蒸着により形成した。比較例のLD構造にも、本実施例と同様に、SiO2膜及び電極を形成した。この後に、800μm間隔でa面へき開して、ゲインガイド型レーザを作製した。
【0109】
図16は、実施例4及び比較例におけるレーザダイオードのI−V特性を示す図面である。特性線IV1、IVCは、それぞれ、実施例5及び比較例のためのI−V特性を示す。比較例のレーザダイオードにおける駆動電圧は、実施例5のレーザダイオードにおける駆動電圧に比べて著しく高い。これは、比較例のレーザダイオードでは、低いアンモニア純度に起因してp型コンタクト層中の酸素濃度が高くなり、p型導電性が損なわれたためと考えられる。
【0110】
以上説明したように、本実施の形態によれば、良好な表面モフォロジを有する窒化ガリウム系半導体膜を含むIII族窒化物半導体光素子を提供できる。また、本実施の形態によれば、このIII族窒化物半導体光素子を作製する方法を提供できる。さらに、本実施の形態によれば、良好な表面モフォロジを有する窒化ガリウム系半導体膜を含むエピタキシャル基板を提供できる。
【0111】
以上の説明では、半導体光素子を参照しながら本実施の形態を説明したが、本発明は、半導体素子の一例としてIII族窒化物半導体電子デバイスにも適用可能である。したがって、良好な表面モフォロジを有する窒化ガリウム系半導体膜を含むIII族窒化物半導体電子デバイスを提供できる。また、本実施の形態によれば、このIII族窒化物半導体電子デバイスを作製する方法を提供できる。さらに、本実施の形態によれば、良好な表面モフォロジを有する窒化ガリウム系半導体膜を含むエピタキシャル基板を提供できる。
【0112】
好適な実施の形態において本発明の原理を図示し説明してきたが、本発明は、そのような原理から逸脱することなく配置および詳細において変更され得ることは、当業者によって認識される。本実施の形態では、本発明は、本実施の形態に開示された特定の構成に限定されるものではない。また、本実施の形態では、有機金属気相成長法を用いる窒化物半導体の成長について例示的に説明しているけれども、本発明は、酸素の取り込みがある分子線エピタキシ法を用いる窒化物半導体の成長にも適用できる。したがって、特許請求の範囲およびその精神の範囲から来る全ての修正および変更に権利を請求する。
【符号の説明】
【0113】
11a、11b…III族窒化物半導体光素子、13…III族窒化物半導体支持体、15…窒化ガリウム系半導体領域、17…活性層、19…窒化ガリウム系半導体領域、Sc…基準平面、VC…c軸ベクトル、VN…法線ベクトル、Aoff…傾斜角、21…第1導電型窒化ガリウム系半導体層、23…窒化ガリウム系半導体層、25…窒化ガリウム系半導体層、27…第2導電型窒化ガリウム系半導体層、29a…井戸層、29b…障壁層、29…量子井戸構造、31a、31b…接合面、33…第1の電極、35…第2の電極
【特許請求の範囲】
【請求項1】
III族窒化物半導体からなり、該III族窒化物半導体のc軸方向に延びる基準軸に直交する基準平面に対して有限の角度をなす主面を有するIII族窒化物半導体支持体と、
5×1016cm−3以上5×1018cm−3以下の酸素濃度を有しており、前記III族窒化物半導体支持体の前記主面上に設けられた窒化ガリウム系半導体領域と
を備え、
前記主面は半極性及び無極性のいずれか一方を示し、
前記窒化ガリウム系半導体領域は、第1導電型窒化ガリウム系半導体層を含む、ことを特徴とするIII族窒化物半導体素子。
【請求項2】
前記窒化ガリウム系半導体領域上に設けられた活性層と、
前記活性層上に設けられた第2導電型窒化ガリウム系半導体層と
を更に備え、
前記活性層は、前記第1導電型窒化ガリウム系半導体層と前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層との間に設けられる、ことを特徴とする請求項1に記載されたIII族窒化物半導体素子。
【請求項3】
前記活性層における酸素濃度は5×1016cm−3以上であり、前記活性層における酸素濃度は5×1018cm−3以下である、ことを特徴とする請求項2に記載されたIII族窒化物半導体素子。
【請求項4】
前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層における酸素濃度は5×1016cm−3以上であり、前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層における酸素濃度は5×1018cm−3以下である、ことを特徴とする請求項2または請求項3に記載されたIII族窒化物半導体素子。
【請求項5】
前記第1導電型窒化ガリウム系半導体層の炭素濃度は5×1018cm−3以下であり、
前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層の炭素濃度は5×1018cm−3以下であり、
前記活性層の炭素濃度は5×1018cm−3以下である、ことを特徴とする請求項2〜請求項4のいずれか一項に記載されたIII族窒化物半導体素子。
【請求項6】
前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層の酸素濃度は5×1016cm−3以上であり、
前記活性層の酸素濃度は5×1016cm−3以上である、ことを特徴とする請求項2〜請求項5のいずれか一項に記載されたIII族窒化物半導体素子。
【請求項7】
前記活性層は、交互に配列された井戸層及び障壁層を含み、
前記井戸層の酸素濃度は6×1017cm−3以下である、ことを特徴とする請求項2〜請求項6のいずれか一項に記載されたIII族窒化物半導体素子。
【請求項8】
別の第2導電型窒化ガリウム系半導体層を更に備え、
前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層のバンドギャップは前記別の第2導電型窒化ガリウム系半導体層のバンドギャップよりも大きく、
前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層の酸素濃度は、前記活性層の酸素濃度よりも大きく、
前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層は前記別の第2導電型窒化ガリウム系半導体層と前記活性層との間に設けられており、
前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層は前記別の第2導電型窒化ガリウム系半導体層と接合を形成する、ことを特徴とする請求項2〜請求項7のいずれか一項に記載されたIII族窒化物半導体素子。
【請求項9】
前記活性層と前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層との間に設けられ窒化ガリウム系半導体からなる光ガイド層を更に備え、
前記活性層は、前記基準平面に対して傾斜する平面に沿って延在しており、
前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層は電子ブロック層である、ことを特徴とする請求項2〜請求項8のいずれか一項に記載されたIII族窒化物半導体素子。
【請求項10】
前記主面の法線と前記基準軸との成す角度は10度以上170度以下である、ことを特徴とする請求項2〜請求項9のいずれか一項に記載されたIII族窒化物半導体素子。
【請求項11】
前記主面の法線と前記基準軸との成す角度は10度以上80度以下及び100度以上170度以下の範囲にある、ことを特徴とする請求項2〜請求項10のいずれか一項に記載されたIII族窒化物半導体素子。
【請求項12】
前記主面の法線と前記基準軸との成す角度は63度以上80度以下及び100度以上117度以下の範囲にある、請求項2〜請求項11のいずれか一項に記載されたIII族窒化物半導体素子。
【請求項13】
III族窒化物半導体素子のためのエピタキシャルウエハであって、
III族窒化物半導体からなり、該III族窒化物半導体のc軸方向に延びる基準軸に直交する基準平面に対して有限の角度をなす主面を有するIII族窒化物半導体基板と、
5×1016cm−3以上5×1018cm−3以下の酸素濃度を有しており、前記III族窒化物半導体基板の前記主面上に設けられた第1導電型窒化ガリウム系半導体層と、
前記第1導電型窒化ガリウム系半導体層上に設けられた発光層と、
前記発光層上に設けられた第2導電型窒化ガリウム系半導体層と
を備え、
前記主面は半極性及び無極性のいずれか一方を示す、ことを特徴とするエピタキシャルウエハ。
【請求項14】
別の第2導電型窒化ガリウム系半導体層を更に備え、
前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層のバンドギャップは前記別の第2導電型窒化ガリウム系半導体層のバンドギャップよりも大きく、
前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層の酸素濃度は、前記発光層の酸素濃度よりも大きく、
前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層は前記別の第2導電型窒化ガリウム系半導体層と前記発光層との間に設けられており、
前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層は前記別の第2導電型窒化ガリウム系半導体層と接合を形成する、ことを特徴とする請求項13に記載されたエピタキシャルウエハ。
【請求項15】
前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層の酸素濃度は5×1016cm−3以上であり、前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層の酸素濃度は5×1018cm−3以下であり、
前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層は電子ブロック層であり、
前記発光層は、交互に配列された井戸層及び障壁層を有する活性層を含み、
前記発光層は、窒化ガリウム系半導体からなる光ガイド層を更に備え、該光ガイド層は、前記活性層と前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層との間に設けられ、
前記発光層の前記光ガイド層は、前記基準平面に対して傾斜する平面に沿って延在している、ことを特徴とする請求項13または請求項14に記載されたエピタキシャルウエハ。
【請求項16】
前記主面の法線と前記基準軸との成す角度は10度以上170度以下である、ことを特徴とする請求項13〜請求項15のいずれか一項に記載されたエピタキシャルウエハ。
【請求項17】
前記主面の法線と前記基準軸との成す角度は10度以上80度以下及び100度以上170度以下の範囲にある、ことを特徴とする請求項13〜請求項16のいずれか一項に記載されたエピタキシャルウエハ。
【請求項18】
前記主面の法線と前記基準軸との成す角度は63度以上80度以下及び100度以上117度以下の範囲にある、ことを特徴とする請求項13〜請求項17のいずれか一項に記載されたエピタキシャルウエハ。
【請求項19】
III族窒化物半導体素子を作製する方法であって、
III族窒化物半導体からなり、主面を有するIII族窒化物半導体基板を準備する工程と、
III族原料及び窒素原料を成長炉に供給して、5×1016cm−3以上5×1018cm−3以下の酸素濃度を有する第1導電型窒化ガリウム系半導体層を前記III族窒化物半導体基板の前記主面上に成長する工程と、
III族原料及び窒素原料を前記成長炉に供給して、前記第1導電型窒化ガリウム系半導体層上に発光層を成長する工程と、
III族原料及び窒素原料を前記成長炉に供給して、第2導電型窒化ガリウム系半導体層を前記発光層上に成長する工程と
を備え、
前記主面は半極性及び無極性のいずれか一方を示し、
前記第1導電型窒化ガリウム系半導体層の酸素は、前記III族原料及び前記窒素原料の少なくともいずれか一つに含まれる不純物として提供され、
前記III族窒化物半導体基板の前記主面は、該III族窒化物半導体のc軸方向に延びる基準軸に直交する基準平面に対して有限の角度をなす、ことを特徴とする方法。
【請求項20】
前記窒素原料はアンモニアを含み、
前記窒素原料は不純物として水を含み、
前記発光層における平均酸素濃度は5×1016cm−3以上であり、前記発光層における酸素濃度は5×1018cm−3以下であり、
前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層における酸素濃度は5×1016cm−3以上であり、前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層における酸素濃度は5×1018cm−3以下であり、
前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層の酸素濃度は、前記発光層の酸素濃度よりも大きい、ことを特徴とする請求項19に記載された方法。
【請求項21】
前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層の成長温度は前記第1導電型窒化ガリウム系半導体層の成長温度よりも低い、ことを特徴とする請求項19または請求項20に記載された方法。
【請求項22】
前記発光層はInGaN層を含む、ことを特徴とする請求項19〜請求項21のいずれか一項に記載された方法。
【請求項23】
前記主面の法線と前記基準軸との成す角度は10度以上170度以下である、ことを特徴とする請求項19〜請求項22のいずれか一項に記載された方法。
【請求項24】
前記主面の法線と前記基準軸との成す角度は63度以上80度以下及び100度以上117度以下の範囲にある、ことを特徴とする請求項19〜請求項23のいずれか一項に記載された方法。
【請求項25】
前記窒素原料の原料源と前記成長炉との間に設けられた精製装置を用いて前記窒素原料の水分濃度を調整した後に、前記成長炉に前記窒素原料を供給し、
前記窒素原料はアンモニアからなる、ことを特徴とする請求項19〜請求項24のいずれか一項に記載された方法。
【請求項26】
前記窒素原料として、水分含有量500ppb%以下のアンモニアを用いる、ことを特徴とする請求項19〜請求項25のいずれか一項に記載された方法。
【請求項27】
前記窒素原料として、水分含有量50ppb%以下のアンモニアを用いる、ことを特徴とする請求項19〜請求項26のいずれか一項に記載された方法。
【請求項28】
前記窒素原料として、水分含有量1ppb%以下のアンモニアを用いる、ことを特徴とする請求項19〜請求項27のいずれか一項に記載された方法。
【請求項29】
前記窒素原料の前記水分濃度は1ppb%以下である、ことを特徴とする請求項25に記載された方法。
【請求項1】
III族窒化物半導体からなり、該III族窒化物半導体のc軸方向に延びる基準軸に直交する基準平面に対して有限の角度をなす主面を有するIII族窒化物半導体支持体と、
5×1016cm−3以上5×1018cm−3以下の酸素濃度を有しており、前記III族窒化物半導体支持体の前記主面上に設けられた窒化ガリウム系半導体領域と
を備え、
前記主面は半極性及び無極性のいずれか一方を示し、
前記窒化ガリウム系半導体領域は、第1導電型窒化ガリウム系半導体層を含む、ことを特徴とするIII族窒化物半導体素子。
【請求項2】
前記窒化ガリウム系半導体領域上に設けられた活性層と、
前記活性層上に設けられた第2導電型窒化ガリウム系半導体層と
を更に備え、
前記活性層は、前記第1導電型窒化ガリウム系半導体層と前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層との間に設けられる、ことを特徴とする請求項1に記載されたIII族窒化物半導体素子。
【請求項3】
前記活性層における酸素濃度は5×1016cm−3以上であり、前記活性層における酸素濃度は5×1018cm−3以下である、ことを特徴とする請求項2に記載されたIII族窒化物半導体素子。
【請求項4】
前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層における酸素濃度は5×1016cm−3以上であり、前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層における酸素濃度は5×1018cm−3以下である、ことを特徴とする請求項2または請求項3に記載されたIII族窒化物半導体素子。
【請求項5】
前記第1導電型窒化ガリウム系半導体層の炭素濃度は5×1018cm−3以下であり、
前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層の炭素濃度は5×1018cm−3以下であり、
前記活性層の炭素濃度は5×1018cm−3以下である、ことを特徴とする請求項2〜請求項4のいずれか一項に記載されたIII族窒化物半導体素子。
【請求項6】
前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層の酸素濃度は5×1016cm−3以上であり、
前記活性層の酸素濃度は5×1016cm−3以上である、ことを特徴とする請求項2〜請求項5のいずれか一項に記載されたIII族窒化物半導体素子。
【請求項7】
前記活性層は、交互に配列された井戸層及び障壁層を含み、
前記井戸層の酸素濃度は6×1017cm−3以下である、ことを特徴とする請求項2〜請求項6のいずれか一項に記載されたIII族窒化物半導体素子。
【請求項8】
別の第2導電型窒化ガリウム系半導体層を更に備え、
前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層のバンドギャップは前記別の第2導電型窒化ガリウム系半導体層のバンドギャップよりも大きく、
前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層の酸素濃度は、前記活性層の酸素濃度よりも大きく、
前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層は前記別の第2導電型窒化ガリウム系半導体層と前記活性層との間に設けられており、
前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層は前記別の第2導電型窒化ガリウム系半導体層と接合を形成する、ことを特徴とする請求項2〜請求項7のいずれか一項に記載されたIII族窒化物半導体素子。
【請求項9】
前記活性層と前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層との間に設けられ窒化ガリウム系半導体からなる光ガイド層を更に備え、
前記活性層は、前記基準平面に対して傾斜する平面に沿って延在しており、
前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層は電子ブロック層である、ことを特徴とする請求項2〜請求項8のいずれか一項に記載されたIII族窒化物半導体素子。
【請求項10】
前記主面の法線と前記基準軸との成す角度は10度以上170度以下である、ことを特徴とする請求項2〜請求項9のいずれか一項に記載されたIII族窒化物半導体素子。
【請求項11】
前記主面の法線と前記基準軸との成す角度は10度以上80度以下及び100度以上170度以下の範囲にある、ことを特徴とする請求項2〜請求項10のいずれか一項に記載されたIII族窒化物半導体素子。
【請求項12】
前記主面の法線と前記基準軸との成す角度は63度以上80度以下及び100度以上117度以下の範囲にある、請求項2〜請求項11のいずれか一項に記載されたIII族窒化物半導体素子。
【請求項13】
III族窒化物半導体素子のためのエピタキシャルウエハであって、
III族窒化物半導体からなり、該III族窒化物半導体のc軸方向に延びる基準軸に直交する基準平面に対して有限の角度をなす主面を有するIII族窒化物半導体基板と、
5×1016cm−3以上5×1018cm−3以下の酸素濃度を有しており、前記III族窒化物半導体基板の前記主面上に設けられた第1導電型窒化ガリウム系半導体層と、
前記第1導電型窒化ガリウム系半導体層上に設けられた発光層と、
前記発光層上に設けられた第2導電型窒化ガリウム系半導体層と
を備え、
前記主面は半極性及び無極性のいずれか一方を示す、ことを特徴とするエピタキシャルウエハ。
【請求項14】
別の第2導電型窒化ガリウム系半導体層を更に備え、
前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層のバンドギャップは前記別の第2導電型窒化ガリウム系半導体層のバンドギャップよりも大きく、
前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層の酸素濃度は、前記発光層の酸素濃度よりも大きく、
前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層は前記別の第2導電型窒化ガリウム系半導体層と前記発光層との間に設けられており、
前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層は前記別の第2導電型窒化ガリウム系半導体層と接合を形成する、ことを特徴とする請求項13に記載されたエピタキシャルウエハ。
【請求項15】
前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層の酸素濃度は5×1016cm−3以上であり、前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層の酸素濃度は5×1018cm−3以下であり、
前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層は電子ブロック層であり、
前記発光層は、交互に配列された井戸層及び障壁層を有する活性層を含み、
前記発光層は、窒化ガリウム系半導体からなる光ガイド層を更に備え、該光ガイド層は、前記活性層と前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層との間に設けられ、
前記発光層の前記光ガイド層は、前記基準平面に対して傾斜する平面に沿って延在している、ことを特徴とする請求項13または請求項14に記載されたエピタキシャルウエハ。
【請求項16】
前記主面の法線と前記基準軸との成す角度は10度以上170度以下である、ことを特徴とする請求項13〜請求項15のいずれか一項に記載されたエピタキシャルウエハ。
【請求項17】
前記主面の法線と前記基準軸との成す角度は10度以上80度以下及び100度以上170度以下の範囲にある、ことを特徴とする請求項13〜請求項16のいずれか一項に記載されたエピタキシャルウエハ。
【請求項18】
前記主面の法線と前記基準軸との成す角度は63度以上80度以下及び100度以上117度以下の範囲にある、ことを特徴とする請求項13〜請求項17のいずれか一項に記載されたエピタキシャルウエハ。
【請求項19】
III族窒化物半導体素子を作製する方法であって、
III族窒化物半導体からなり、主面を有するIII族窒化物半導体基板を準備する工程と、
III族原料及び窒素原料を成長炉に供給して、5×1016cm−3以上5×1018cm−3以下の酸素濃度を有する第1導電型窒化ガリウム系半導体層を前記III族窒化物半導体基板の前記主面上に成長する工程と、
III族原料及び窒素原料を前記成長炉に供給して、前記第1導電型窒化ガリウム系半導体層上に発光層を成長する工程と、
III族原料及び窒素原料を前記成長炉に供給して、第2導電型窒化ガリウム系半導体層を前記発光層上に成長する工程と
を備え、
前記主面は半極性及び無極性のいずれか一方を示し、
前記第1導電型窒化ガリウム系半導体層の酸素は、前記III族原料及び前記窒素原料の少なくともいずれか一つに含まれる不純物として提供され、
前記III族窒化物半導体基板の前記主面は、該III族窒化物半導体のc軸方向に延びる基準軸に直交する基準平面に対して有限の角度をなす、ことを特徴とする方法。
【請求項20】
前記窒素原料はアンモニアを含み、
前記窒素原料は不純物として水を含み、
前記発光層における平均酸素濃度は5×1016cm−3以上であり、前記発光層における酸素濃度は5×1018cm−3以下であり、
前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層における酸素濃度は5×1016cm−3以上であり、前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層における酸素濃度は5×1018cm−3以下であり、
前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層の酸素濃度は、前記発光層の酸素濃度よりも大きい、ことを特徴とする請求項19に記載された方法。
【請求項21】
前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層の成長温度は前記第1導電型窒化ガリウム系半導体層の成長温度よりも低い、ことを特徴とする請求項19または請求項20に記載された方法。
【請求項22】
前記発光層はInGaN層を含む、ことを特徴とする請求項19〜請求項21のいずれか一項に記載された方法。
【請求項23】
前記主面の法線と前記基準軸との成す角度は10度以上170度以下である、ことを特徴とする請求項19〜請求項22のいずれか一項に記載された方法。
【請求項24】
前記主面の法線と前記基準軸との成す角度は63度以上80度以下及び100度以上117度以下の範囲にある、ことを特徴とする請求項19〜請求項23のいずれか一項に記載された方法。
【請求項25】
前記窒素原料の原料源と前記成長炉との間に設けられた精製装置を用いて前記窒素原料の水分濃度を調整した後に、前記成長炉に前記窒素原料を供給し、
前記窒素原料はアンモニアからなる、ことを特徴とする請求項19〜請求項24のいずれか一項に記載された方法。
【請求項26】
前記窒素原料として、水分含有量500ppb%以下のアンモニアを用いる、ことを特徴とする請求項19〜請求項25のいずれか一項に記載された方法。
【請求項27】
前記窒素原料として、水分含有量50ppb%以下のアンモニアを用いる、ことを特徴とする請求項19〜請求項26のいずれか一項に記載された方法。
【請求項28】
前記窒素原料として、水分含有量1ppb%以下のアンモニアを用いる、ことを特徴とする請求項19〜請求項27のいずれか一項に記載された方法。
【請求項29】
前記窒素原料の前記水分濃度は1ppb%以下である、ことを特徴とする請求項25に記載された方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図15】
【図16】
【図9】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図15】
【図16】
【図9】
【図14】
【公開番号】特開2010−212651(P2010−212651A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−207425(P2009−207425)
【出願日】平成21年9月8日(2009.9.8)
【分割の表示】特願2009−58057(P2009−58057)の分割
【原出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月8日(2009.9.8)
【分割の表示】特願2009−58057(P2009−58057)の分割
【原出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
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