説明

MEMS光スキャナおよびその製造方法

【課題】低コストで信頼性が高く、光の不要な反射を抑制することが可能なMEMS光スキャナおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】SOI基板(半導体基板)100を用いて形成され、外側フレーム部10、ミラー面21が設けられた可動部20、一対の捩りばね部30,30を有するミラー形成基板1と、第1のガラス基板200を用いて形成されミラー形成基板1の一表面側に接合された第1のカバー基板2と、ミラー形成基板1の他表面側に接合された第2のカバー基板3とを備える。第1のカバー基板2および第2のカバー基板3がミラー形成基板1と同じ外形寸法に形成され、第1のカバー基板2におけるミラー形成基板1とは反対の外表面側に、透光性樹脂もしくは低融点ガラスにより形成され光の反射を抑制する微細周期構造6を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MEMS光スキャナおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、マイクロマシニング技術などを利用して形成されるMEMS(micro electro mechanical systems)デバイスの一種として、マイクロマシニング技術などを利用して形成されて、光を反射するミラー面が設けられた可動部と、可動部を駆動する駆動手段とを備え、ミラー面に入射する光を走査するMEMS光スキャナが各所で研究開発されている(例えば、特許文献1参照)。なお、この種のMEMS光スキャナは、例えば、レーザプロジェクタ、レーザビームプリンタ、バーコードリーダ、内視鏡、距離画像センサなどの種々の光学機器への応用が考えられている。
【0003】
ここにおいて、上記特許文献1には、図8に示すように、半導体基板として第1のシリコン基板101a’と第2のシリコン基板101b’とを絶縁層(SiO層)101c’を介して張り合わせたSOI(Silicon on Insulator)基板100’を用いて形成され一表面側にミラー面(図示せず)が設けられたミラー形成基板1’と、第1のガラス基板200’を用いて形成されミラー形成基板1’の上記一表面側に接合された第1のカバー基板2’と、第2のガラス基板300’を用いて形成されミラー形成基板1’の他表面側に接合された第2のカバー基板3’とを備えたMEMS光スキャナが提案されている。
【0004】
上述のミラー形成基板1’は、矩形枠状の外側フレーム部10’と、外側フレーム部10’の内側に配置され上記ミラー面が設けられた矩形板状の可動部20’と、外側フレーム部10’の内側で可動部20’を挟む形で配置され外側フレーム部10’と可動部20’とを連結し捩れ変形が可能な一対の捩りばね部30’,30’とを備えている。また、ミラー形成基板1’は、可動部20’において一対の捩りばね部30’,30’を結ぶ方向に直交する方向の両側に形成された櫛形状の可動電極22’,22’と、外側フレーム部10’に形成され可動電極22’の複数の可動櫛歯片22b’,22b’に対向する複数の固定櫛歯片12b’,12b’を有する櫛形状の固定電極12’,12’とで構成され静電力により可動部20’を駆動する静電駆動式の駆動手段を備えている。なお、上述のSOI基板100’は、第2のシリコン基板101b’の厚さを500μm程度とし、第1のシリコン基板101a’の厚さを100μm以下としてある。
【0005】
また、図8に示した構成のMEMS光スキャナは、第2のカバー基板3’は、第2のガラス基板300’におけるミラー形成基板1’側の表面に、可動部20’の変位空間を確保する変位空間形成用凹部301’が形成されており、第1のカバー基板2’と外側フレーム部10’と第2のカバー基板3’とで囲まれた気密空間を真空としてあるので、駆動電圧の低電圧化を図りながらも必要な振れ角を確保することが可能となる。
【0006】
ところで、図8に示した構成のMEMS光スキャナでは、別置の光源(例えば、レーザ光源など)から出射され第1のカバー基板2’におけるミラー形成基板1’側とは反対の外表面に入射した光のうち、第1のカバー基板2’を透過してミラー形成基板1’の上記ミラー面で反射されて第1のカバー基板2’の上記外表面から出射する所望の光と、第1のカバー基板2’の上記外表面で反射された不要な光との進行方向が揃ってしまうことがあり、例えば、レーザプロジェクタに応用した場合、スクリーン上に不要な輝点が生じてしまう。
【0007】
また、従来から、光学素子などの分野において、入射する光の波長よりも周期の小さな微細周期構造を設けることで光の反射(フレネル反射)を抑制して透過率を高める技術が知られている(例えば、特許文献2,3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−109651号公報
【特許文献2】特開2004−219626号公報
【特許文献3】特開2002−182003号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、図8に示した構成のMEMS光スキャナにおいて、第1のカバー基板2’として、第1のガラス基板200’におけるミラー形成基板1’側とは反対の表面側に微細凹凸構造を形成したものを用いることが考えられるが、ミラー形成基板1’と第1のカバー基板2’とを陽極接合などにより接合する際の荷重に起因して微細周期構造に傷がついて光学特性(反射防止性能)が低下し、歩留まりの低下によるコストアップの原因となってしまう。また、ミラー形成基板1’と第1のカバー基板2’とを接合した後で、ダイシングを行うような場合、微細周期構造に微細粉(シリコンやガラスの粉)が付着して微細周期構造の光学特性に影響を与えることが考えられる。
【0010】
また、ミラー形成基板1’と第1のカバー基板2’とを接合した後で、目視や光学顕微鏡などによる外観検査によって各捩りばね部30’,30’、固定櫛歯片12b’、可動櫛歯片22b’などの折れや異物の付着やスティッキングなどがないかの検査を行うことが考えられるが、光学顕微鏡や目視による外観検査では、微細周期構造に起因して十分な検査ができず、接合工程で、不良品が発生した場合でもシステムに組み込んで動作させるまで不良の発生が分からないので、結果的にコストが高くなってしまう。なお、第1のカバー基板2’の材料としては、気密封止のためのミラー形成基板1’との接合性、SOI基板100’の主材料であるシリコンとの線膨張率差、ミラー形成基板1’の当該第1のカバー基板2’の透光性などを考慮してガラス基板を採用している。
【0011】
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、低コストで信頼性が高く、光の不要な反射を抑制することが可能なMEMS光スキャナおよびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1の発明は、半導体基板を用いて形成され、外側フレーム部、外側フレーム部の内側に配置されミラー面が設けられた可動部、および外側フレーム部の内側で可動部を挟む形で配置され外側フレーム部と可動部とを連結し捩れ変形が可能な一対の捩りばね部を有するミラー形成基板と、ミラー形成基板においてミラー面が設けられた一表面側に接合されたガラス基板からなる第1のカバー基板と、ミラー形成基板の他表面側に接合された第2のカバー基板と、可動部を駆動する駆動手段とを備えたMEMS光スキャナであって、第1のカバー基板および第2のカバー基板がミラー形成基板と同じ外形寸法に形成され、第1のカバー基板におけるミラー形成基板とは反対の外表面側に、透光性樹脂もしくは低融点ガラスにより形成され光の反射を抑制する微細周期構造を有することを特徴とする。
【0013】
この発明によれば、第1のカバー基板および第2のカバー基板がミラー形成基板と同じ外形寸法に形成され、第1のカバー基板におけるミラー形成基板とは反対の外表面側に、透光性樹脂もしくは低融点ガラスにより形成され光の反射を抑制する微細周期構造を有するので、ミラー形成基板と各カバー基板とを接合した後で、外観検査を行ってから、第1のカバー基板におけるミラー形成基板とは反対の外表面側に透光性樹脂もしくは低融点ガラスを塗布してから成形することにより微細周期構造を形成し、その後、ダイシングを行う製造プロセスを採用することが可能となり、第1のカバー基板の基礎となる第1のガラス基板を加工して微細周期構造を形成してから第1のカバー基板をミラー形成基板に接合するような製造プロセスを採用するような場合に比べて、低コストで信頼性が高く、光の不要な反射を抑制することが可能となる。
【0014】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記ミラー形成基板は、前記一表面側において前記外側フレーム部に形成され前記駆動手段に接続された複数のパッドを備え、前記第1のカバー基板は、各パッドそれぞれを全周に亘って露出させる複数の貫通孔が形成されてなることを特徴とする。
【0015】
この発明によれば、前記第1のカバー基板が各パッドと重なることがなく、前記第1のカバー基板と前記外側フレーム部との間に各パッドの一部が介在することもないので、前記第1のカバー基板と前記ミラー形成基板の前記外側フレーム部との接合が各パッドにより妨げられるのを防止することができるから、各パッドの厚みの影響で接合性や気密性が損なわれるのを防止することができ、前記ミラー形成基板の外形寸法を大きくする要因となる前記外側フレーム部の幅寸法を増大させずに歩留まりの向上による低コスト化を図れるとともに、動作安定性の低下、経時安定性の低下を抑制することができる。
【0016】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2記載のMEMS光スキャナの製造方法であって、ミラー形成基板が複数形成された第1のウェハと、第1のカバー基板が複数形成された第2のウェハおよび第2のカバー基板が複数形成された第3のウェハとが接合されたウェハレベルパッケージ構造体を形成した後、ウェハレベルパッケージ構造体の各第1のカバー基板における各ミラー形成基板とは反対の外表面側に透光性樹脂もしくは低融点ガラスを塗布してから成形することにより微細周期構造を形成し、その後、ウェハレベルパッケージ構造体からミラー形成基板の外形サイズに分割することを特徴とするMEMS光スキャナの製造方法。
【0017】
この発明によれば、ウェハレベルパッケージ構造体を形成し各微細周期構造を形成してから分割するので、小型化が可能であるとともにウェハレベルパッケージ構造体の形成後に光学顕微鏡や目視による外観検査を行うことができ、且つ、当該外観検査後にウェハレベルパッケージ構造体に複数の微細周期構造を同時に成形することができるので、低コストで信頼性が高く、光の不要な反射を抑制することが可能なMEMS光スキャナを提供することができる。
【発明の効果】
【0018】
請求項1の発明では、低コストで信頼性が高く、光の不要な反射を抑制することが可能となるという効果がある。
【0019】
請求項3の発明では、低コストで信頼性が高く、光の不要な反射を抑制することが可能なMEMS光スキャナを提供することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施形態1のMEMS光スキャナを示し、(a)は概略平面図、(b)は(a)のA−A’概略断面図、(c)は要部拡大平面図である。
【図2】同上のMEMS光スキャナの概略分解斜視図である。
【図3】同上のMEMS光スキャナの製造方法を説明するための主要工程断面図である。
【図4】実施形態2のMEMS光スキャナの概略分解斜視図である。
【図5】同上のMEMS光スキャナの概略斜視図である。
【図6】同上のMEMS光スキャナの製造方法を説明するための主要工程断面図である。
【図7】同上のMEMS光スキャナの他の構成例の概略断面図である。
【図8】従来例のMEMS光スキャナを示し、(a)は概略分解斜視図、(b)は概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(実施形態1)
以下、本実施形態のMEMS光スキャナについて図1および図2を参照しながら説明する。
【0022】
本実施形態のMEMS光スキャナは、半導体基板であるSOI基板100を用いて形成され、外周形状が矩形状の枠状(ここでは、矩形枠状)の外側フレーム部(固定フレーム部)10、外側フレーム部10の内側に配置され平面視矩形状のミラー面21が設けられた平面視矩形状の可動部20、および外側フレーム部10の内側で可動部20を挟む形で配置され外側フレーム部10と可動部20とを連結し捩れ変形が可能な一対の捩りばね部30,30を有するミラー形成基板1と、第1のガラス基板200を用いて形成されミラー形成基板1においてミラー面21が設けられた一表面側に接合された第1のカバー基板2と、第2のガラス基板300を用いて形成されミラー形成基板1の他表面側に接合された第2のカバー基板3とを備えている。
【0023】
ここにおいて、ミラー形成基板1および各カバー基板2,3の外周形状は矩形状であり、各カバー基板2,3はミラー形成基板1と同じ外形寸法に形成されている。
【0024】
上述のミラー形成基板1は、導電性を有する第1のシリコン層(活性層)100aと第2のシリコン層(シリコン基板)100bとの間に絶縁層(SiO層)100cが介在する上述のSOI基板100をバルクマイクロマシニング技術などにより加工することによって形成してある。また、第1のカバー基板2は、それぞれパイレックス(登録商標)ガラスなどからなる2枚のガラス板を厚み方向に重ねて接合することにより形成した第1のガラス基板200を用いて形成してあり、第2のカバー基板3は、パイレックス(登録商標)ガラスなどからなる第2のガラス基板300を加工することにより形成してある。なお、SOI基板100は、第1のシリコン層100aの厚さを30μm、第2のシリコン層100bの厚さを400μmに設定し、第1のガラス基板200および第2のガラス基板300の厚さは、0.5mm〜1.5mm程度の範囲で設定してあるが、これらの数値は一例であり、特に限定するものではない。また、半導体基板たるSOI基板100の一表面である第1のシリコン層10cの表面は(100)面としてある。
【0025】
ミラー形成基板1の外側フレーム部10は、SOI基板100の第1のシリコン層100a、絶縁層100c、第2のシリコン層100bそれぞれを利用して形成してあり、外側フレーム部10のうち第1のシリコン層100aにより形成された部位が第1のカバー基板2の外周部と全周に亘って接合され、外側フレーム部10のうち第2のシリコン層100cにより形成された部位が第2のカバー基板3の外周部と全周に亘って接合されており、上記一表面側において外側フレーム部10に、可動部20を駆動する後述の駆動手段に電気的に接続される2つのパッド13,13が形成されている。各パッド13,13は平面視形状が円形状であり、第1の金属膜(例えば、Al−Si膜など)により構成されている。なお、本実施形態では、各パッド13,13の膜厚を500nmに設定してあるが、この数値は一例であり、特に限定するものではない。
【0026】
また、ミラー形成基板1の可動部20および各捩りばね部30,30は、SOI基板100の第1のシリコン層100aを用いて形成されており、外側フレーム部10よりも十分に薄肉となっている。また、可動部20に設けられたミラー面21は、光源(例えば、レーザ光源など)からの光を反射するものであり、可動部20において第1のシリコン層100aにより形成された部位上に形成した第2の金属膜(例えば、Al−Si膜など)からなる反射膜21aの表面により構成されている。なお、本実施形態では、反射膜21aの膜厚を500nmに設定してあるが、この数値は一例であり、特に限定するものではない。
【0027】
以下では、図1(a),(b),(c)それぞれの左下に示すように、平面視において一対の捩りばね部30,30の並設方向に直交する方向をx軸方向、一対の捩りばね部30,30の並設方向をy軸方向、x軸方向およびy軸方向に直交する方向をz軸方向として説明する。
【0028】
上述のミラー形成基板1は、一対の捩りばね部30,30がy軸方向に並設されており、可動部20が、外側フレーム部10に対して一対の捩りばね部30,30の回りで変位可能となっている(y軸方向の軸回りで回動可能となっている)。つまり、一対の捩りばね部30,30は、外側フレーム部10に対して可動部20が揺動自在となるように外側フレーム部10と可動部20とを連結している。言い換えれば、外側フレーム部10の内側に配置される可動部20は、可動部20から相反する2方向へ連続一体に延長された2つの捩りばね部30,30を介して外側フレーム部10に揺動自在に支持されている。ここで、一対の捩りばね部30,30は、両者のy軸方向に沿った中心線同士を結ぶ直線が、平面視で可動部20の重心を通るように形成されている。なお、各捩りばね部30,30は、厚み寸法(z軸方向の寸法)を30μm、幅寸法(x軸方向の寸法)を、5μmに設定してあるが、これらの数値は一例であり、特に限定するものではない。また、可動部20およびミラー面21の平面視形状は、矩形状に限らず、例えば、円形状でもよい。また、外側フレーム部10の内周形状も矩形状に限らず、例えば、円形状でもよい。
【0029】
上述のミラー形成基板1は、可動部20において一対の捩りばね部30,30を結ぶ方向(一対の捩りばね部30,30の並設方向)に直交する方向(つまり、x軸方向)の両側に形成された櫛形状の可動電極22と、外側フレーム部10に形成され可動電極22の複数の可動櫛歯片22bに対向する複数の固定櫛歯片12bを有する櫛形状の固定電極12とで構成され静電力により可動部20を駆動する静電駆動式の駆動手段を備えている。なお、本実施形態では、駆動手段が、静電力により可動部20を駆動するものであるが、静電力によって可動部20を駆動する静電駆動式に限らず、電磁力によって可動部20を駆動する電磁駆動式でもよいし、圧電素子によって可動部20を駆動する圧電駆動式でもよい。
【0030】
上述の固定電極12,12は、平面視形状が櫛形状であり、櫛骨部12aが外側フレーム部10のうちy軸方向に沿った枠片部において第1のシリコン層100aにより形成された部位の一部により構成されており、櫛骨部12aにおける可動部20との対向面(外側フレーム部10におけるy軸方向に沿った内側面)には、第1のシリコン層100aの一部からなる多数の固定櫛歯片12bが一対の捩りばね部30,30の並設方向に沿って列設されている。一方、可動電極22,22は、可動部20における固定電極12の櫛骨部12a側の櫛骨部22a,22aの側面(可動部20におけるy軸方向に沿った側面)において、第1のシリコン層100aの一部により構成され固定櫛歯片12bにそれぞれ対向する多数の可動櫛歯片22bが上記並設方向に列設されている。ここで、櫛形状の固定電極12と櫛形状の可動電極22とは、櫛骨部12a,22aが互いに対向し、固定電極12の各固定櫛歯片12bが可動電極22の櫛溝に入り組んでおり、固定櫛歯片12bと可動櫛歯片22bとが、y軸方向において互いに離間しており、固定電極12と可動電極22との間に電圧が印加されることにより、固定電極12と可動電極22との間に互いに引き合う方向に作用する静電力が発生する。なお、y軸方向における固定櫛歯片12bと可動櫛歯片22bとの間の隙間は、例えば、2μm〜5μm程度の範囲で適宜設定すればよい。
【0031】
ミラー形成基板1の外側フレーム部10において第1のシリコン層100aにより形成された部位には、一方のパッド13(図2における右側のパッド13b)が固定電極12,12に電気的に接続されるとともに他方のパッド13(図2における左側のパッド13a)が可動電極22,22に電気的に接続され、且つ、固定電極12,12と可動電極22,22とが電気的に絶縁されるように、複数のスリット10a,10a,10aが絶縁層100cに達する深さで形成されている。ここで、本実施形態では、各スリット10a,10a,10aをトレンチとし、各スリット10a,10a,10aの平面視形状を外側フレーム部10の外側面側に開放されない形状とすることで、外側フレーム部10にスリット10a,10a,10aを形成した構造を採用しながらも、外側フレーム部10と第1のカバー基板2との接合性が低下するのを防止し、外側フレーム部10と各カバー基板2,3とで囲まれる空間の気密性を確保している。
【0032】
ここで、外側フレーム部10において第1のシリコン層100aにより形成された部分は、上述のスリット10a,10a,10aを形成することにより、一端部が可動部20の外側面に連続一体に連結された各捩りばね部30,30それぞれの他端部が内側面に連続一体に連結された2つのアンカー部11a,11bと、一方のアンカー部11aaと一方のパッド13aが形成された矩形状の島部11cと、上記一方のアンカー部11abと島部11acとをつなぐ平面視L字状の導電部11adとで構成される第1の導電性構造体11aが、可動部20の可動電極22,22と同電位になり、残りの部分からなり他方のパッド13bが形成された第2の導電性構造体11bが固定電極12,12と同電位になる。
【0033】
第1のカバー基板2は、上述のように第1のガラス基板200を用いており、第1のガラス基板200の厚み方向に貫通して各パッド13,13それぞれを全周に亘って露出させる2つの貫通孔202,202が形成されている。ここにおいて、第1のガラス基板200の各貫通孔202,202は、ミラー形成基板1から離れるにつれて開口面積が徐々に大きくなるテーパ状に形成されている。ここで、第1のカバー基板2の各貫通孔202,202は、サンドブラスト法により形成してあるが、サンドブラスト法に限定するものではなく、貫通孔202,202の形状によってはドリル加工法やエッチング法などを適宜採用してもよい。
【0034】
本実施形態のMEMS光スキャナでは、各パッド13,13の平面視形状を直径が0.5mmの円形状としてあり、各貫通孔202,202の第1のミラー形成基板1側での開口径が0.5mmよりも大きくなるようにしてあるが、各パッド13,13の直径は特に限定するものではなく、また、必ずしも円形状とする必要はなく、例えば、正方形状としてもよいが、貫通孔202,202の開口径を小さくするうえでは円形状の方が正方形状よりも好ましい。
【0035】
ここにおいて、各パッド13,13の一部が厚み方向において第1のカバー基板2に重なる場合には、パッド13,13の厚みの影響で接合性や気密性が損なわれて製造時の歩留まり低下や、動作安定性の低下、経時安定性の低下の原因となる懸念があり、外側フレーム部10の幅寸法(外側フレーム部10の外側面と内側面との距離)を増大させる必要が生じてMEMS光スキャナの小型化が制限されてしまうことが考えられる。
【0036】
これに対して、本実施形態のMEMS光スキャナでは、第1のカバー基板2が各パッド13,13と重なることがなく、第1のカバー基板2と外側フレーム部10との間にパッド13,13の一部が介在することもないので、第1のカバー基板2とミラー形成基板1の外側フレーム部10との接合が各パッド13,13により妨げられるのを防止することができるから、パッド13,13の厚みの影響で接合性や気密性が損なわれるのを防止することができ、外側フレーム部10の幅寸法を増大させずに歩留まりの向上による低コスト化を図れるとともに、動作安定性の低下、経時安定性の低下を抑制することができる。
【0037】
また、本実施形態のMEMS光スキャナでは、ミラー形成基板1の外側フレーム部10と各カバー基板2,3とで囲まれる気密空間を真空とすることで、低消費電力化を図りつつ可動部20の機械振れ角を大きくすることが可能となるので、上記気密空間を真空とするとともに、第2のカバー基板3におけるミラー形成基板1との対向面において外側フレーム部10に接合される部位よりも内側の適宜部位に非蒸発型ゲッタ(図示せず)を設けてある。なお、非蒸発型ゲッタは、例えば、Zrを主成分とする合金やTiを主成分とする合金などにより形成すればよい。また、本実施形態のMEMS光スキャナにおいて、外側フレーム部10と第1のカバー基板2と第2のカバー基板3とで囲まれた気密空間を不活性ガス雰囲気(例えば、ドライ窒素ガス雰囲気など)としてもよく、真空(真空雰囲気)とした場合、不活性ガス雰囲気とした場合のいずれも、ミラー面21の酸化を防止できるから、ミラー面21の材料の選択肢が多くなるとともに、ミラー面21の反射特性の経時変化を抑制することができる。
【0038】
ところで、第1のガラス基板200は、ミラー形成基板1との対向面に可動部20の変位空間を確保する変位空間形成用凹部(以下、第1の変位空間形成用凹部と称する)201を有しているが、上述のように2枚のガラス板を接合して形成されており、ミラー形成基板1に近い側に配置するガラス板(以下、第1のガラス板と称する)において第1の変位空間形成用凹部201に対応する部位に厚み方向に貫通する開孔部を形成するとともにミラー形成基板1から遠い側に配置するガラス板(以下、第2のガラス板と称する)を平板状としてあるので、1枚のガラス基板を用いて当該ガラス基板にサンドブラスト加工などにより第1の変位空間形成用凹部201を形成する場合に比べて、第1の変位空間形成用凹部201の内底面を滑らかな表面とすることができ、第1の変位空間形成用凹部201の内底面での拡散反射、光拡散、散乱損失などを低減できる。
【0039】
第2のカバー基板3は、第2のガラス基板300を用いて形成されており、厚み方向の両面を平面状としてあるが、可動部20の厚みや、半導体基板を構成するSOI基板100の第2のシリコン層100bの厚みなどによっては、第2のガラス基板300におけるミラー形成基板1側の一表面に、可動部20の変位空間を確保するための凹部(以下、第2の変位空間形成用凹部と称する)を形成してもよい。ここにおいて、第2のガラス基板300の上記一表面に第2の変位空間形成用凹部を形成する場合は、例えば、サンドブラスト法などにより形成すればよい。なお、第2のカバー基板3は、光を透過させる必要がないので、第2のガラス基板300に限らず、例えば、シリコン基板を用いて形成してもよく、この場合の第2の変位空間形成用凹部は、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して形成すればよい。
【0040】
なお、上述の各ガラス基板200,300のガラス材料としては、硼珪酸ガラスであるパイレックス(登録商標)を採用しているが、硼珪酸ガラスに限らず、例えば、ソーダライムガラス、無アルカリガラス、石英ガラスなどを採用してもよい。また、本実施形態では、各カバー基板2,3の厚さを0.5mm〜1.5mm程度の範囲で設定し、第1の変位空間形成用凹部201の深さを0.3mm程度に設定してあるが、これらの数値は一例であり、特に限定するものではない。
【0041】
次に、本実施形態のMEMS光スキャナの動作について簡単に説明する。
【0042】
本実施形態のMEMS光スキャナでは、一対のパッド13,13を通して、対向する可動電極22と固定電極12との間に可動部20を駆動するためのパルス電圧を与えることにより、可動電極22・固定電極12間に静電力が発生し、可動部20がy軸方向の軸回りで回動する。しかして、本実施形態のMEMS光スキャナでは、可動電極22・固定電極12間に所定の駆動周波数のパルス電圧を印加することにより、周期的に静電力を発生させることができ、可動部20を揺動させることができる。
【0043】
ここで、上述の可動部20は、内部応力に起因して、静止状態でも水平姿勢(xy平面に平行な姿勢)ではなく、きわめて僅かであるが傾いているので、例えば、可動電極22・固定電極12間にパルス電圧が印加されると、静止状態からであっても、可動部20に略垂直な方向(z軸方向)の駆動力が加わり、可動部20が一対の捩りばね部30,30を回動軸として当該一対の捩りばね部30,30を捩りながら回動する。そして、可動電極22・固定電極12間の駆動力を、可動櫛歯片22bと固定櫛歯片12bとが完全に重なりあうような姿勢となったときに解除すると、可動部20は、慣性力により、一対の捩りばね部30,30を捩りながら回動し続ける。そして、可動部20の回動方向への慣性力と、一対の捩りばね部30,30の復元力とが等しくなったとき、当該回動方向への可動部20の回動が停止する。このとき、可動電極22・固定電極12間に再びパルス電圧が印加されて静電力が発生すると、可動部20は、一対の捩りばね部30,30の復元力と可動電極22および固定電極12により構成される駆動手段の駆動力により、それまでとは逆の方向への回動を開始する。可動部20は、駆動手段の駆動力と一対の捩りばね部30,30の復元力とによる回動を繰り返して、一対の捩りばね部30,30を回動軸として揺動する。
【0044】
本実施形態のMEMS光スキャナでは、可動部20と一対の捩りばね部30,30とにより構成される振動系の共振周波数の略2倍の周波数のパルス電圧を印加することにより、可動部20が共振現象を伴って駆動され、機械振れ角(xy平面に平行な水平面を基準としたときの傾き)が大きくなる。なお、可動電極22・固定電極12間への電圧(駆動電圧)の印加形態や周波数は特に限定するものではなく、例えば、可動電極22・固定電極12間に印加する電圧を正弦波電圧としてもよい。
【0045】
ところで、本実施形態のMEMS光スキャナは、第1のカバー基板2におけるミラー形成基板1とは反対の外表面側に透光性樹脂(例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂など)もしくは低融点ガラスにより形成され光の反射を抑制する微細周期構造6を有している。なお、透光性樹脂としては、熱硬化型ものを用いているが、熱硬化型に限らず、紫外線硬化型のものや、紫外線・熱併用硬化型のものを用いてもよい。また、低融点ガラスとしては、環境負荷を低減する観点から、鉛フリーの低融点ガラスを用いることが好ましい。
【0046】
上述の微細周期構造6は、図1(b),(c)に示すように、四角錘状の山部61が2次元アレイ状に配列されているが、山部61の形状は、四角錘状に限らず、例えば、円錐状でもよいし、四角柱状でもよい。ここにおいて、微細周期構造6は、当該微細周期構造の周期(山部61のピッチ)を、ミラー面21での走査対象(スキャン対象)の光の波長程度(好ましくは、光の波長の1/4倍〜1倍)に設定し、山部61のアスペクト比を1〜2程度に設定することが好ましい。本実施形態では、微細周期構造6の山部61と当該微細周期構造6の隣り合う山部61の間の媒質(ここでは、空気)とで構成される屈折率周期構造の有効屈折率は、微細周期構造6の山部61の媒質(透光性樹脂もしくは低融点ガラス)と隣り合う山部61間の媒質(空気)との中間の値とすることができるので、山部61の媒質を第1のガラス基板200の媒質と略同じ屈折率としておけば、屈折率周期構造の有効屈折率を第のガラス基板200の屈折率と空気の屈折率との中間の値とすることができる。
【0047】
以下、本実施形態のMEMS光スキャナの製造方法について図3を参照しながら説明するが、(a)〜(d)は図1(a)のA−B’断面に対応する部分の概略断面を示している。
【0048】
まず、半導体基板であるSOI基板100の上記一表面側に所定膜厚(例えば、500nm)の金属膜(例えば、Al−Si膜)をスパッタ法や蒸着法などにより成膜する金属膜形成工程を行い、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して金属膜をパターニングすることにより各パッド13,13および反射膜21aを形成する金属膜パターニング工程を行うことによって、図3(a)に示す構造を得る。なお、本実施形態では、各パッド13,13と反射膜21aとの材料および膜厚を同じに設定してあるので、各パッド13,13と反射膜21aとを同時に形成しているが、各パッド13,13と反射膜21aとの材料や膜厚が相違する場合には、各パッド13,13を形成するパッド形成工程と反射膜を形成する反射膜形成工程とを別々に設ければよく、パッド形成工程と反射膜形成工程との順序はどちらが先でもよい。
【0049】
上述の各パッド13,13および反射膜21aを形成した後、SOI基板100の上記一表面側で、第1のシリコン層100aのうち可動部20、一対の捩りばね部30,30、外側フレーム部10、固定電極12,12、可動電極22,22に対応する部位を覆うようにパターニングされた第1のレジスト層130をマスクとして、第1のシリコン層100aを絶縁層100cに達する深さ(第1の所定深さ)までエッチングすることにより第1のシリコン層100aをパターニングする第1のシリコン層パターニング工程(表面側パターニング工程)を行うことによって、図3(b)に示す構造を得る。要するに、第1のシリコン層パターニング工程は、半導体基板であるSOI基板100を上記一表面から第1の所定深さまでエッチングする表面側パターニング工程を構成している。第1のシリコン層パターニング工程での第1のシリコン層100aのエッチングは、誘導結合プラズマ(ICP)型のエッチング装置などの異方性の高いエッチングが可能なドライエッチング装置により行えばよい。また、第1のシリコン層パターニング工程では、絶縁層100cをエッチングストッパ層として利用している。
【0050】
上述の第1のシリコン層パターニング工程の後、SOI基板100の上記一表面側の第1のレジスト層130を除去してから、SOI基板100の上記一表面側の全面に第2のレジスト層131を形成し、続いて、SOI基板100の他表面側で、第2のシリコン層100bのうち外側フレーム部10に対応する部位以外を露出させるようにパターニングされた第3のレジスト層132をマスクとして、第2のシリコン層100bを絶縁層100cに達する深さ(第2の所定深さ)までエッチングすることにより第2のシリコン層100bをパターニングする第2のシリコン層パターニング工程を行うことによって、図3(c)に示す構造を得る。要するに、第2のシリコン層パターニング工程は、半導体基板であるSOI基板100を上記他表面から第2の所定深さまでエッチングする裏面側パターニング工程を構成している。第2のシリコン層パターニング工程での第2のシリコン層100bのエッチングは、誘導結合プラズマ(ICP)型のエッチング装置などの異方性が高く垂直深堀が可能なドライエッチング装置により行えばよい。また、第2のシリコン層パターニング工程では、絶縁層100cをエッチングストッパ層として利用している。
【0051】
上述の第2のシリコン層パターニング工程の後、SOI基板100の絶縁層100cにおいて外側フレーム部10と可動部20との間の部位、可動電極22,22と固定電極12,12との間の部位を、SOI基板100の上記他表面側からエッチングする絶縁層パターニング工程を行うことでミラー形成基板1を形成してから、第2のレジスト層131および第3のレジスト層132を除去し、その後、ミラー形成基板1と、第1のカバー基板2および第2のカバー基板3とを陽極接合などにより接合する接合工程を行い、続いて、光学顕微鏡により、第1のカバー基板2側から、ミラー形成基板1のミラー面21、各捩りばね部30,30、固定櫛歯片12b、可動櫛歯片22bの外観検査を行い、その後、第1のカバー基板2におけるミラー形成基板1とは反対の外表面側に透光性樹脂もしくは低融点ガラスを塗布してから成形することにより微細周期構造6を形成する微細周期構造形成工程を行うことによって、図3(d)に示す構造のMEMS光スキャナを得る。
【0052】
ここにおいて、接合工程では、ミラー形成基板1のミラー面21を保護する観点から、第1のカバー基板2とミラー形成基板1とを接合する第1の接合過程を行ってから、ミラー形成基板1と第2のカバー基板3とを接合する第2の接合過程を行うことが好ましい。ここで、第1の接合過程では、先ず、第1のガラス基板200に第1の変位空間形成用凹部201や各貫通孔202,202を形成した第1のカバー基板2とミラー形成基板1とを重ねた積層体を、所定真空度(例えば、10Pa以下)の真空中で所定の接合温度(例えば、300℃〜400℃程度)に加熱した状態で、第1のシリコン層100aと第1のカバー基板2との間に第1のカバー基板2側を低電位側として所定電圧(例えば、400V〜800V程度)を印加し、この状態を所定の接合時間(例えば、20分〜60分程度)だけ保持すればよい。また、第2の接合過程では、上述の第1の接合過程に準じて、第2のシリコン層100bと第2のカバー基板3との陽極接合を行う。なお、ミラー形成基板1と各カバー基板2,3を接合する接合方法は、陽極接合に限らず、例えば、常温接合法などでもよい。また、第1のシリコン層パターニング工程の後に、SOI基板100と第1のカバー基板2とを接合し、その後、第2のシリコン層パターニング工程、絶縁層パターニング工程を行うことでミラー形成基板1を形成し、その後、ミラー形成基板1と第2のカバー基板3とを接合するようにしてもよい。
【0053】
また、微細周期構造形成工程では、第1のカバー基板2におけるミラー形成基板1とは反対の外表面側に熱硬化型の透光性樹脂もしくは低融点ガラスを塗布してから、微細周期構造6の形状に対応したモールド型を押し付けて当該モールド型を介して透光性樹脂もしくは低融点ガラスを加熱することで透光性樹脂もしくは低融点ガラスを硬化させ、モールド型を離型するようにしている。なお、透光性樹脂として紫外線硬化型のものを用いる場合には、モールド型を押し付けて紫外線を照射することで透光性樹脂を硬化させるようにすればよく、紫外線・熱併用硬化型紫外線のものを用いる場合には、紫外線を照射するとともに加熱を行うようにすればよい。また、微細周期構造6を形成する微細周期構造形成工程では、第1のカバー基板2の貫通孔202,202内に透光性樹脂もしくは低融点ガラスが入らないように、適宜、枠部材やマスクを設ければよい。
【0054】
ところで、本実施形態のMEMS光スキャナの製造方法では、微細周期構造形成工程が終了するまでの全工程をミラー形成基板1および各カバー基板2,3それぞれについてウェハレベルで行うことでMEMS光スキャナを複数備えたウェハレベルパッケージ構造体を形成するようにし、当該ウェハレベルパッケージ構造体から個々のMEMS光スキャナに分割する分割工程を行うようにしている。要するに、本実施形態のMEMS光スキャナの製造方法では、ミラー形成基板1を複数形成した第1のウェハと、第1のカバー基板2を複数形成した第2のウェハおよび第2のカバー基板3を複数形成した第3のウェハとを接合することでウェハレベルパッケージ構造体を形成した後、ウェハレベルパッケージ構造体の各第1のカバー基板2における各ミラー形成基板1とは反対の外表面側に透光性樹脂もしくは低融点ガラスを塗布してから成形することにより各微細周期構造6を形成し、その後、ウェハレベルパッケージ構造体からミラー形成基板1の外形サイズに分割するようにしているので、各カバー基板2,3の平面サイズをミラー形成基板1の外形サイズに合わせることができるから、微細周期構造6を備えた小型のMEMS光スキャナセンサを簡易なプロセスで製造することができ、また、量産性を高めることができる。
【0055】
以上説明した本実施形態のMEMS光スキャナでは、第1のカバー基板2および第2のカバー基板3がミラー形成基板1と同じ外形寸法に形成され、第1のカバー基板2におけるミラー形成基板1とは反対の外表面側に透光性樹脂もしくは低融点ガラスにより形成され光の反射を抑制する微細周期構造6を有するので、ミラー形成基板1と各カバー基板2,3とを接合した後で、外観検査を行ってから、第1のカバー基板2におけるミラー形成基板1とは反対の外表面側に透光性樹脂もしくは低融点ガラスを塗布してから成形することにより微細周期構造6を形成し、その後、ダイシングを行う製造プロセスを採用することが可能となり、第1のカバー基板2の基礎となる第1のガラス基板200を加工して微細周期構造を形成してから第1のカバー基板2をミラー形成基板1に接合するような製造プロセスを採用するような場合に比べて、低コストで信頼性が高く、MEMS光スキャナへ入射する光、ミラー面で反射された光の不要な反射を抑制することができる。しかして、MEMS光スキャナに入射して不要に反射された光の方向がミラー面21で反射されMEMS光スキャナから出射される光の方向に揃うのを抑制することが可能となる。
【0056】
また、本実施形態のMEMS光スキャナでは、微細周期構造6の山部61が2次元アレイ状に配列されているので、MEMS光スキャナへの光の入射方向やミラー面21での光の反射方向によらず、不要に反射された光の方向がミラー面21で反射された光の方向に揃うのを抑制することが可能となる。
【0057】
また、本実施形態のMEMS光スキャナでは、SOI基板100の第1のシリコン層100aにより各捩りばね部30,30を形成してあるので、半導体基板としてシリコン基板を用いる場合に比べて各捩りばね部30,30の厚み寸法の精度を高めることができ、可動部20と一対の捩りばね部30,30とで構成される振動系の共振周波数の精度を高めることができる。
【0058】
また、本実施形態のMEMS光スキャナの製造方法では、ミラー形成基板1が複数形成された第1のウェハと、第1のカバー基板2が複数形成された第2のウェハおよび第2のカバー基板3が複数形成された第3のウェハとが接合されたウェハレベルパッケージ構造体を形成した後、ウェハレベルパッケージ構造体の各第1のカバー基板2における各ミラー形成基板1とは反対の外表面側に透光性樹脂もしくは低融点ガラスを塗布してから成形することにより各微細周期構造6を形成し、その後、ウェハレベルパッケージ構造体からミラー形成基板1の外形サイズに分割するので、小型化が可能であるとともにウェハレベルパッケージ構造体の形成後に光学顕微鏡や目視による外観検査を行うことができ、且つ、当該外観検査後にウェハレベルパッケージ構造体に複数の微細周期構造6を同時に成形することができるので、低コストで信頼性が高く、光の不要な反射を抑制することが可能なMEMS光スキャナを提供することができる。
【0059】
(実施形態2)
本実施形態のMEMS光スキャナの基本構成は実施形態1と略同じであって、図4、図5および図6(f)に示すように、可動部20および第2のカバー基板3などの構造が相違する。なお、実施形態1と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を適宜省略する。
【0060】
本実施形態では、可動部20が、外側フレーム部10に一対の捩りばね部30,30(以下、第1の捩りばね部30,30と称する)を介して揺動自在に支持された枠状(ここでは、矩形枠状)の可動フレーム部23と、可動フレーム部23の内側に配置されミラー面21が設けられた平面視矩形状のミラー部24と、可動フレーム部23の内側でミラー部24を挟む形で配置され可動フレーム部23とミラー部24とを連結し捩れ変形が可能な一対の捩りばね部25,25(以下、第2の捩りばね部25,25と称する)とを有している。
【0061】
第2の捩りばね部25,25は、第1の捩りばね部30,30の並設方向(y軸方向)とは直交する方向(x軸方向)に並設されている。要するに、可動部20は、一対の第2の捩りばね部25,25がx軸方向に並設されており、ミラー部24が、可動フレーム部23に対して一対の第2の捩りばね部25,25の回りで変位可能となっている(x軸方向の軸回りで回動可能となっている)。つまり、一対の第2の捩りばね部25,25は、可動フレーム部23に対してミラー部24が揺動自在となるように可動フレーム部23とミラー部24とを連結している。言い換えれば、可動フレーム部23の内側に配置されるミラー部24は、ミラー部24から相反する2方向へ連続一体に延長された2つの第2の捩りばね部25,25を介して可動フレーム部23に揺動自在に支持されている。ここで、一対の第2の捩りばね部25,25は、両者のx軸方向に沿った中心線同士を結ぶ直線が、平面視でミラー部24の重心を通るように形成されている。なお、各第2の捩りばね部25,25は、厚み寸法(z軸方向の寸法)を30μm、幅寸法(y軸方向の寸法)を、30μmに設定してあるが、これらの数値は一例であり、特に限定するものではない。また、ミラー部24およびミラー面21の平面視形状は、矩形状に限らず、例えば、円形状でもよい。また、可動フレーム部23の内周形状も矩形状に限らず、例えば、円形状でもよい。
【0062】
上述の説明から分かるように、ミラー部24は、一対の第1の捩りばね部30,30の軸回りの回動と、一対の第2の捩りばね部25,25の軸回りの回動とが可能である。要するに、ミラー部24のミラー面21が、2次元的に回動可能に構成されている。ここにおいて、可動部20は、可動フレーム部23における第1のカバー基板2側とは反対側に一体に設けられ可動フレーム部23を支持する枠状の支持体29を備えており、当該支持体29が可動フレーム部23と一体に回動可能となっている。
【0063】
そこで、第2のカバー基板3は、第2のガラス基板300におけるミラー形成基板1側の上記一表面に、可動部20の変位空間を確保するための第2の変位空間形成用凹部301を形成してある。
【0064】
また、本実施形態では、外側フレーム部10に、3つのパッド13,13,13が平面視において一直線上に並ぶように略等間隔で並設されており、第1のカバー基板2に、各パッド13,13,13それぞれを各別に露出させる3つのテーパ状の貫通孔202,202,202が貫設されている。
【0065】
また、本実施形態のMEMS光スキャナにおけるミラー形成基板1は、実施形態1と同様、可動部20において一対の第1の捩りばね部30,30を結ぶ方向(一対の第1の捩りばね部30,30の並設方向)に直交する方向(つまり、x軸方向)の両側に形成された櫛形状の可動電極22,22(以下、第1の可動電極22,22と称する)と、外側フレーム部10に形成され第1の可動電極22,22の複数の可動櫛歯片22bに対向する複数の固定櫛歯片12bを有する櫛形状の固定電極12,12(以下、第1の固定電極12,12と称する)とを備えているだけでなく、さらに、ミラー部24において一対の第2の捩りばね部25,25を結ぶ方向(一対の第2の捩りばね部25,25の並設方向)に直交する方向(つまり、y軸方向)の両側に形成された櫛形状の第2の可動電極27,27と、可動フレーム部23に形成され第2の可動電極27,27の複数の可動櫛歯片27bに対向する複数の固定櫛歯片26bを有する櫛形状の第2の固定電極26,26とを備えており、第1の可動電極22,22と第1の固定電極12,12との組、第2の可動電極27,27と第2の固定電極26,26との組、それぞれが静電力により可動部20を駆動する静電駆動式の駆動手段を構成している。
【0066】
上述の第2の固定電極26,26は、平面視形状が櫛形状であり、櫛骨部26aが可動フレーム部23の一部により構成されており、櫛骨部26aにおけるミラー部24との対向面(可動フレーム部23におけるx軸方向に沿った内側面)には多数の固定櫛歯片26bが一対の第2の捩りばね部25,25の並設方向に沿って列設されている。一方、第2の可動電極27,27はミラー部24の一部により構成されており、第2の固定電極26,26の櫛骨部26a,26a側の側面(ミラー部24におけるx軸方向に沿った側面)には、固定櫛歯片26bにそれぞれ対向する多数の可動櫛歯片27bが上記並設方向に列設されている。ここで、櫛形状の第2の固定電極26と櫛形状の第2の可動電極27とは、櫛骨部26a,27aが互いに対向し、第2の固定電極26の各固定櫛歯片26bが第2の可動電極27の櫛溝に入り組んでおり、固定櫛歯片26bと可動櫛歯片27bとが、x軸方向において互いに離間しており、第2の固定電極26と第2の可動電極22との間に電圧が印加されることにより、第2の固定電極26と第2の可動電極27との間に互いに引き合う方向に作用する静電力が発生する。なお、x軸方向における固定櫛歯片26bと可動櫛歯片27bとの間の隙間は、例えば、2μm〜5μm程度の範囲で適宜設定すればよい。
【0067】
ミラー形成基板1は、外側フレーム部10において第1のシリコン層100aにより形成された部位に複数のスリット10a,10a,10aを形成するとともに、可動部20の可動フレーム部23において第1のシリコン層100aにより形成された部位に複数のスリット20a,20a,20a,20aを形成することにより、3つのパッド13,13,13のうち図4における真ん中のパッド13(13b)が第1の固定電極12,12と電気的に接続されて同電位となり、右側のパッド13(13a)が第1の可動電極22,22および第2の可動電極26,26と電気的に接続されて同電位となり、左側のパッド13(13c)がミラー部24の第2の可動電極27,27と電気的に接続されて同電位となっている。
【0068】
ここで、外側フレーム部10の複数のスリット10a,10a,10aは絶縁層100cに達する深さで形成されている。本実施形態においても、実施形態1と同様、各スリット10a,10a,10aをトレンチとし、各スリット10a,10a,10aの平面視形状を外側フレーム部10の外側面側に開放されない形状とすることで、外側フレーム部10にスリット10a,10a,10aを形成した構造を採用しながらも、外側フレーム部10と第1のカバー基板2との接合性が低下するのを防止し、外側フレーム部10と各カバー基板2,3とで囲まれる空間の気密性を確保している。
【0069】
また、可動部20における可動フレーム部23の各スリット20a,20a,20a,20aは、トレンチとしてあり、SOI基板100の絶縁層100cの一部と第2のシリコン層100bの一部とで構成される上述の支持体29における絶縁層100cに達する深さに形成してある。要するに、本実施形態では、可動フレーム部23に複数のスリット20a,20a,20a,20aを形成した構成を採用しながらも支持体29により可動フレーム部23を支持しているので、可動フレーム部23と支持体29とが、一対の第1の捩りばね部30,30の軸回りで一体に回動可能となっている。ここにおいて、支持体29は、可動フレーム部23のうち各固定櫛歯片26bおよび各可動櫛歯片22bを除く部位を覆う枠状(矩形枠状)に形成されている(図5参照)。また、可動フレーム部23の複数のトレンチ20a,20a,20a,20aは、支持体29を含めた可動部20の重心が、平面視において一対の第1の捩りばね部30,30のy軸方向に沿った中心線を結ぶ直線の略真ん中に位置するように形状設計してある。しかして、可動部20が一対の第1の捩りばね部30,30の軸回りでスムーズに揺動し、反射光のスキャンが適正に行われる。なお、本実施形態では、支持体29において第2のシリコン層100bにより構成される部位の厚さを外側フレーム部10において第2のシリコン層100bにより構成される部位と同じ厚さに設定してあるが、同じに限らず、厚くしてもよいし薄くしてもよい。
【0070】
本実施形態のMEMS光スキャナでは、例えば、第1の可動電極22および第2の固定電極26が電気的に接続されたパッド13aの電位を基準電位として、第1の固定電極12および第2の可動電極27それぞれの電位を周期的に変化させることにより、可動部20を一対の第1の捩りばね部30,30の軸回りで回動させることができるとともに、ミラー部24を一対の第2の捩りばね部25,25の軸回りで回動させることができる。要するに、一対のパッド13b,13aを通して、対向する第1の固定電極12と可動電極22との間に可動部20を駆動するためのパルス電圧を与えることにより、第1の固定電極12・第1の可動電極22間に静電力が発生し、可動部20がy軸方向の軸回りで回動し、また、一対のパッド13a,13cを通して、対向する第2の固定電極26と第2の可動電極27との間にミラー部24を駆動するためのパルス電圧を与えることにより、第2の固定電極26・第2の可動電極27間に静電力が発生し、ミラー部24がx軸方向の軸回りで回動する。しかして、本実施形態のMEMS光スキャナでは、第1の固定電極12・第1の可動電極22間に所定の第1の駆動周波数のパルス電圧を印加することにより、周期的に静電力を発生させることができ、可動部20全体を揺動させることができ、さらに、第2の固定電極26・第2の可動電極27間に所定の第2の駆動周波数のパルス電圧を印加することにより、周期的に静電力を発生させることができ、可動部20のミラー部24を揺動させることができる。なお、本実施形態におけるミラー形成基板1は、外側フレーム部10と第1のカバー基板2とで囲まれた空間側において、第1のシリコン層100aの反射膜21aが形成されていない部位の表面に、シリコン酸化膜111a(図6(f)参照)が形成されている。
【0071】
本実施形態のMEMS光スキャナでは、第1の固定電極12・第1の可動電極22間に、可動部20と一対の第1の捩りばね部30,30とにより構成される振動系の共振周波数の略2倍の周波数のパルス電圧を印加することにより、可動部20が共振現象を伴って駆動され、機械振れ角(xy平面に平行な水平面を基準としたときの傾き)が大きくなる。また、本実施形態のMEMS光スキャナでは、第2の固定電極26・第2の可動電極27間に、ミラー部24と一対の第2の捩りばね部25,25とにより構成される振動系の共振周波数の略2倍の周波数のパルス電圧を印加することにより、ミラー部24が共振現象を伴って駆動され、機械振れ角(可動フレーム部23における第1のカバー基板2側の表面に平行な面を基準としたときの傾き)が大きくなる。
【0072】
以下、本実施形態のMEMS光スキャナの製造方法について図6を参照しながら説明するが、(a)〜(d)は図4のA−B断面に対応する部分の概略断面を示している。
【0073】
まず、半導体基板であるSOI基板100の上記一表面側および上記他表面側それぞれに熱酸化法などによりシリコン酸化膜111a,111bを形成する酸化膜形成工程を行うことによって、図6(a)に示す構造を得る。
【0074】
その後、SOI基板100の上記一表面側のシリコン酸化膜111aのうち可動部20において反射膜21aの形成予定領域以外の部分、第1の捩りばね部30,30などに対応する部位などが残るようにフォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して第1のシリコン層100aをパターニングする第1のシリコン層パターニング工程を行うことによって、図6(b)に示す構造を得る。
【0075】
その後、SOI基板100の上記一表面側に所定膜厚(例えば、500nm)の金属膜(例えば、Al−Si膜)をスパッタ法や蒸着法などにより成膜する金属膜形成工程を行い、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して金属膜をパターニングすることにより各パッド13,13および反射膜21aを形成する金属膜パターニング工程を行うことによって、図6(c)に示す構造を得る。なお、本実施形態では、各パッド13,13と反射膜21aとの材料および膜厚を同じに設定してあるので、各パッド13,13と反射膜21aとを同時に形成しているが、各パッド13,13と反射膜21aとの材料や膜厚が相違する場合には、各パッド13,13を形成するパッド形成工程と反射膜を形成する反射膜形成工程とを別々に設ければよい。
【0076】
上述の各パッド13,13および反射膜21aを形成した後、SOI基板100の上記一表面側で、第1のシリコン層100aのうち可動フレーム部23、ミラー部24、一対の第1の捩りばね部30,30、一対の第2の捩りばね部25,25、外側フレーム部10、第1の固定電極12,12、第2の可動電極22,22、第2の固定電極26,26、第2の可動電極27,27に対応する部位を覆うようにパターニングされた第1のレジスト層130をマスクとして、第1のシリコン層100aを絶縁層100cに達する深さ(第1の所定深さ)までエッチングすることにより第1のシリコン層100aをパターニングする第1のシリコン層パターニング工程(表面側パターニング工程)を行うことによって、図6(d)に示す構造を得る。第1のシリコン層パターニング工程での第1のシリコン層100aのエッチングは、誘導結合プラズマ(ICP)型のエッチング装置などの異方性の高いエッチングが可能なドライエッチング装置により行えばよい。また、第1のシリコン層パターニング工程では、絶縁層100cをエッチングストッパ層として利用している。
【0077】
上述の第1のシリコン層パターニング工程の後、SOI基板100の上記一表面側の第1のレジスト層130を除去してから、SOI基板100の上記一表面側の全面に第2のレジスト層131を形成し、続いて、SOI基板100の他表面側で、第2のシリコン層100bのうち外側フレーム部10、支持体29に対応する部位以外を露出させるようにパターニングされた第3のレジスト層132をマスクとして、第2のシリコン層100bを絶縁層100cに達する深さ(第2の所定深さ)までエッチングすることにより第2のシリコン層100bをパターニングする第2のシリコン層パターニング工程を行うことによって、図6(e)に示す構造を得る。第2のシリコン層パターニング工程での第2のシリコン層100bのエッチングは、誘導結合プラズマ(ICP)型のエッチング装置などの異方性が高く垂直深堀が可能なドライエッチング装置により行えばよい。また、第2のシリコン層パターニング工程では、絶縁層100cをエッチングストッパ層として利用している。
【0078】
上述の第2のシリコン層パターニング工程の後、SOI基板100の絶縁層100cの不要部分をSOI基板100の上記他表面側からエッチングする絶縁層パターニング工程を行うことでミラー形成基板1を形成し、続いて、第2のレジスト層131および第3のレジスト層132を除去し、その後、ミラー形成基板1と、第1のカバー基板2および第2のカバー基板3とを陽極接合などにより接合する接合工程を行い、続いて、光学顕微鏡により、第1のカバー基板2側から、ミラー形成基板1のミラー面21、各捩りばね部25,25,30,30、各固定櫛歯片12b,26b、各可動櫛歯片22b,27bの外観検査を行い、その後、第1のカバー基板2におけるミラー形成基板1とは反対の外表面側に透光性樹脂もしくは低融点ガラスを塗布してから成形することにより微細周期構造6を形成する微細周期構造形成工程を行うことによって、図6(f)に示す構造のMEMS光スキャナを得る。ここにおいて、接合工程では、ミラー形成基板1のミラー面21を保護する観点から、第1のカバー基板2とミラー形成基板1とを接合する第1の接合過程を行ってから、ミラー形成基板1と第2のカバー基板3とを接合する第2の接合過程を行うことが好ましい。なお、第1のシリコン層パターニング工程の後に、SOI基板100と第1のカバー基板2とを接合し、その後、第2のシリコン層パターニング工程、絶縁層パターニング工程を行うことでミラー形成基板1を形成し、その後、ミラー形成基板1と第2のカバー基板3とを接合するようにしてもよい。
【0079】
ところで、本実施形態のMEMS光スキャナの製造方法では、微細周期構造形成工程が終了するまでの全工程をミラー形成基板1および各カバー基板2,3それぞれについてウェハレベルで行うことでMEMS光スキャナを複数備えたウェハレベルパッケージ構造体を形成するようにし、当該ウェハレベルパッケージ構造体から個々のMEMS光スキャナに分割する分割工程を行うようにしている。要するに、本実施形態のMEMS光スキャナの製造方法では、ミラー形成基板1を複数形成した第1のウェハと、第1のカバー基板2を複数形成した第2のウェハおよび第2のカバー基板3を複数形成した第3のウェハとを接合することでウェハレベルパッケージ構造体を形成した後、ウェハレベルパッケージ構造体の各第1のカバー基板における各ミラー形成基板とは反対の外表面側に透光性樹脂もしくは低融点ガラスを塗布してから成形することにより各微細周期構造6を形成し、その後、ウェハレベルパッケージ構造体からミラー形成基板1の外形サイズに分割するようにしているので、各カバー基板2,3の平面サイズをミラー形成基板1の外形サイズに合わせることができるから、微細周期構造6を備えた小型のMEMS光スキャナを簡易なプロセスで製造することができ、また、量産性を高めることができる。
【0080】
以上説明した本実施形態のMEMS光スキャナでは、実施形態1と同様、第1のカバー基板2および第2のカバー基板3がミラー形成基板1と同じ外形寸法に形成され、第1のカバー基板2におけるミラー形成基板1とは反対の外表面側に透光性樹脂もしくは低融点ガラスを塗布してから成形することにより形成され光の反射を抑制する微細周期構造6を有するので、ミラー形成基板1と各カバー基板2,3とを接合した後で、外観検査を行ってから、第1のカバー基板2におけるミラー形成基板1とは反対の外表面側に透光性樹脂もしくは低融点ガラスを塗布してから成形することにより微細周期構造6を形成し、その後、ダイシングを行う製造プロセスを採用することが可能となり、第1のカバー基板2の基礎となる第1のガラス基板200を加工して微細周期構造を形成してから第1のカバー基板2をミラー形成基板1に接合するような製造プロセスを採用するような場合に比べて、低コストで信頼性が高く、MEMS光スキャナへ入射する光、ミラー面で反射された光の不要な反射を抑制することができる。しかして、MEMS光スキャナに入射して不要に反射された光の方向がミラー面21で反射されMEMS光スキャナから出射される光の方向に揃うのを抑制することが可能となる。
【0081】
また、本実施形態のMEMS光スキャナにおいて、各パッド13それぞれの代わりに、例えば、図7に示すように、第1のカバー基板2の外表面とミラー形成基板1における外側フレーム部10の表面と貫通孔202の内側面とに跨って形成された貫通配線213を外部接続電極として形成してもよく、実施形態1において同様の外部接続電極を採用してもよい。
【符号の説明】
【0082】
1 ミラー形成基板
2 第1のカバー基板
3 第2のカバー基板
6 微細周期構造
13 パッド
20 可動部
21 ミラー面
30 捩りばね部
61 山部
100 SOI基板(半導体基板)
200 第1のガラス基板
202 貫通孔
300 第2のガラス基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板を用いて形成され、外側フレーム部、外側フレーム部の内側に配置されミラー面が設けられた可動部、および外側フレーム部の内側で可動部を挟む形で配置され外側フレーム部と可動部とを連結し捩れ変形が可能な一対の捩りばね部を有するミラー形成基板と、ミラー形成基板においてミラー面が設けられた一表面側に接合されたガラス基板からなる第1のカバー基板と、ミラー形成基板の他表面側に接合された第2のカバー基板と、可動部を駆動する駆動手段とを備えたMEMS光スキャナであって、第1のカバー基板および第2のカバー基板がミラー形成基板と同じ外形寸法に形成され、第1のカバー基板におけるミラー形成基板とは反対の外表面側に、透光性樹脂もしくは低融点ガラスにより形成され光の反射を抑制する微細周期構造を有することを特徴とするMEMS光スキャナ。
【請求項2】
前記ミラー形成基板は、前記一表面側において前記外側フレーム部に形成され前記駆動手段に接続された複数のパッドを備え、前記第1のカバー基板は、各パッドそれぞれを全周に亘って露出させる複数の貫通孔が形成されてなることを特徴とする請求項1記載のMEMS光スキャナ。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載のMEMS光スキャナの製造方法であって、ミラー形成基板が複数形成された第1のウェハと、第1のカバー基板が複数形成された第2のウェハおよび第2のカバー基板が複数形成された第3のウェハとが接合されたウェハレベルパッケージ構造体を形成した後、ウェハレベルパッケージ構造体の各第1のカバー基板における各ミラー形成基板とは反対の外表面側に透光性樹脂もしくは低融点ガラスを塗布してから成形することにより微細周期構造を形成し、その後、ウェハレベルパッケージ構造体からミラー形成基板の外形サイズに分割することを特徴とするMEMS光スキャナの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−112806(P2011−112806A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−268095(P2009−268095)
【出願日】平成21年11月25日(2009.11.25)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】