説明

SiC形成方法、膜形成方法、チャンバへのSiC形成方法、半導体製造装置の製造方法、SiC形成装置及びこれらで形成された膜構造

【課題】基板上やチャンバ内壁面にSiCの形成を可能とする。
【解決手段】チャンバ10内の基板22aへ珪素を供給すると共に、チャンバ10内へハロゲン含有ガスを供給し、ハロゲン含有ガスを解離して炭素含有部材20bから基板22aへ炭素を供給することによって基板22aにSiCを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SiC形成方法、膜形成方法、チャンバへのSiC形成方法、半導体製造装置の製造方法、SiC形成装置及びこれらで形成された膜構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、原料として四塩化珪素(SiCl4)とメタン(CH4)とを組み合わせて、化学気相成長(CVD)を行うことによって対象物の表面にSiC膜をコーティングする方法が知られている。
【0003】
特許文献1には、SiCl4とCH4との組み合わせの他に、水素ガスをキャリアガスとして、CH3SiCl3、(CH33、SiCl、CH3SiHCl2等の有機珪素化合物を気相で還元熱分解させることによりSiC膜を形成する方法が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2004−176140号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、珪素化合物ガスと炭化物ガスを用いた気相成長法では、成膜装置へ供給ガスを供給するための設備が必要であり、成膜装置の構成が複雑化かつ大型化してしまう問題がある。特に、SiC膜以外の成膜を行うことを可能とするためには、珪素化合物ガス及び炭化物ガス以外のガス供給設備も設ける必要があり、さらに成膜装置の構成が複雑化かつ大型化してしまう。
【0006】
本発明は、SiC形成方法、膜形成方法、チャンバへのSiC形成方法、半導体製造装置の製造方法、SiC形成装置及びこれらで形成された膜構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ハロゲン含有ガスを解離して得たラジカルを炭素含有部材に作用させることによりハロゲンと炭素とからなる前駆体を生成し、表面に珪素を有する対象物に対して前記前駆体を供給すると共に前記ラジカルを作用させることにより前記対象物の表面上にSiCを形成することを特徴とするSiC形成方法である。
【0008】
また、本発明は、ハロゲン含有ガスを解離して得たラジカルを炭素含有部材に作用させることによりハロゲンと炭素とからなる前駆体を生成し、表面に珪素膜を有する対象物に対して前記前駆体を供給すると共に前記ラジカルを作用させることにより、前記珪素膜の一部のみをSiC化させ、酸化珪素膜とSiC膜との間にアモルファスSi層を有する膜を形成する膜形成方法である。例えば、前記前駆体を供給すると共に前記ラジカルを作用させる時間等を調整することによって、珪素を含む膜の一部のみにSiC化を生じさせる方法等が挙げられる。
【0009】
また、本発明は、チャンバ内の対象物へ珪素を供給すると共に、前記チャンバ内へハロゲン含有ガスを供給し、当該ハロゲン含有ガスを解離して炭素含有部材から前記対象物へ炭素を供給することによって前記対象物にSiCを形成することを特徴とするSiC形成方法である。
【0010】
また、本発明は、チャンバの壁面へ珪素を供給すると共に、前記チャンバ内へハロゲン含有ガスを供給し、当該ハロゲン含有ガスを解離して炭素含有部材から炭素を前記チャンバの壁面へ供給することによって前記チャンバの壁面にSiCを形成することを特徴とするチャンバへのSiC形成方法である。
【0011】
例えば、チャンバを備えた半導体製造装置を製造する工程において、前記チャンバ内へ珪素含有部材を配置するステップと、前記チャンバの壁面の温度を前記珪素含有部材の温度よりも低く維持しつつ、前記チャンバ内へハロゲン含有ガスを供給し、当該ハロゲン含有ガスを解離して前記珪素含有部材から珪素を前記チャンバの壁面へ供給するステップと、前記チャンバ内の前記珪素含有部材と炭素含有部材とを交換するステップと、前記チャンバの壁面の温度を前記炭素含有部材の温度よりも低く維持しつつ、前記チャンバ内へハロゲン含有ガスを供給し、当該ハロゲン含有ガスを解離して前記炭素含有部材から炭素を前記チャンバの壁面へ供給するステップと、を備え、前記チャンバの壁面にSiCを形成することを特徴とする半導体製造装置へのSiC形成方法である。
【0012】
ここで、前記対象物へ炭素を供給するステップにおいて、前記対象物の温度を前記炭素含有部材の温度よりも低く維持することが好適である。例えば、チャンバの内壁にSiCを形成する場合、チャンバの壁の温度を前記炭素含有部材の温度よりも低く維持することが好適である。このような条件下では、解離されたハロゲン含有ガスによる還元反応が起こると推察され、良質なSiCを形成することが可能になる。
【0013】
また、前記対象物へ珪素を供給する処理においても、チャンバ内へハロゲン含有ガスを供給し、当該ハロゲン含有ガスを解離して珪素含有部材から前記対象物へ珪素を供給してもよい。このとき、前記対象物へ珪素を供給するステップの後に前記対象物へ炭素を供給するステップを行うことが好適である。また、SiC膜を形成する際に、必要とされるSiCの膜厚に応じて、前記対象物へ珪素を供給するステップと、前記対象物へ炭素を供給するステップと、を繰り返してもよい。
【0014】
なお、ハロゲン含有ガスを解離する方法としては、プラズマアンテナを用いてチャンバ外部からチャンバ内部へと電力を導入することによってハロゲン含有ガスプラズマを発生させる方法がある。また、ハロゲン含有ガスを熱励起によって解離してもよい。
【0015】
また、前記対象物へ珪素を供給するステップと、前記対象物へ炭素を供給するステップと、の間に前記対象物に形成された珪素の酸化膜を除去するステップを備えることも好適である。すなわち、珪素の表面の不要物を除去した後に炭素を供給することによって、より良質なSiCを形成することができると考えられる。
【0016】
また、前記対象物へ珪素を供給するステップと、前記対象物へ炭素を供給するステップと、を別々に行わず、前記対象物へ珪素を供給しつつ、同時に前記対象物へ炭素を供給してもよい。
【0017】
ここで、前記珪素を含んでなる膜の一部のみをSiC化することによって、酸化珪素膜とSiC膜との間にアモルファスSi層を有する膜を形成するものとしてもよい。
【0018】
また、本発明は、チャンバ内へハロゲン含有ガスを供給するガス供給手段と、前記チャンバ内に炭素含有部材を設置する部材固定部と、を備え、前記チャンバ内へ珪素を供給すると共に、前記チャンバ内へ前記ハロゲン含有ガスを供給し、当該ハロゲン含有ガスを解離して前記部材固定部に設置された前記炭素含有部材から炭素を供給することによって対象物にSiCを形成することを特徴とするSiC形成装置である。これにより、上記本発明における各方法を実現することができる。
【0019】
ここで、前記対象物の温度を前記炭素含有部材の温度よりも低い温度に制御する温度制御手段を備えることが好適である。例えば、チャンバの壁面にSiCを形成する際には、前記温度制御手段は、前記チャンバの壁面の少なくとも一部の温度を前記炭素含有部材の温度よりも低い温度に制御する手段とする。また、チャンバ内部に配置された基板にSiCを形成する際には、基板の温度を調整する手段としてもよい。
【0020】
ここで、前記温度制御手段は、炭素含有部材の温度よりも前記対象物の温度を低く制御できることが好適であり、特に、前記対象物の温度を500℃以下、好ましくは400℃以下、より好ましくは350℃以下、更に好ましくは300℃以下に制御できることが好適である。その温度に制御することによって、前記対象物のみに選択的にSiCを形成することができる。
【0021】
また、ハロゲン含有ガスを励起する手段として、前記チャンバの外部から前記チャンバの内部へ電力を導入するプラズマアンテナを備えることが好適である。また、前記ガス供給手段は、前記チャンバの内壁へ向けてハロゲン含有ガスを吹き付けるガス供給ノズルを含むことも好適である。例えば、前記プラズマアンテナは、前記チャンバの外壁に沿って配置され、前記炭素含有部材は、前記チャンバの内壁に沿って配置され、一部に開口穴が設けられていることによって、前記チャンバの内壁に効率よくSiCを形成することができる。
【0022】
また、前記チャンバとゲートバルブを介して接続され、前記炭素含有部材を前記部材固定部に設置するための部材交換手段を備えてもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、より簡易かつより小型なSiC形成装置を提供することができる。また、半導体製造装置等のチャンバ内壁に容易にSiCを形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
<第1の実施の形態>
[装置構成]
第1の実施の形態におけるSiC形成装置100は、図1の装置全体の断面図に示すように、チャンバ10、天板12、プラズマアンテナ14、整合器16、電源18、部材固定部20、基板サセプタ22、冷媒循環手段24、加熱手段26、真空ポンプ28、真空ゲージ30、ガス供給ノズル32、ガス流量制御器34、ロードロックチャンバ36、真空ポンプ38、真空ゲージ40、部材搬送手段42及びゲートバルブ44を含んで構成される。
【0025】
チャンバ10は、絶縁材料からなる部材で構成される。本実施の形態では、チャンバ10は円筒状としているが、これに限定されるものではない。例えば、チャンバ10は、球状等の他の外形を有してもよい。チャンバ10の上面には開口部が設けられ、下部には排気口が設けられている。チャンバ10の上面の開口部は、取り外し可能な天板12により塞がれる。天板12は、ガラスやアルミナ等の絶縁材料により円盤状に形成される。また、チャンバ10の排気口には真空ポンプ28が接続される。真空ポンプ28は、チャンバ10内の気体を排気口から排気する。真空ゲージ30により圧力を測定しつつ、真空ポンプ28を作動させることによってチャンバ10内を所定の圧力となるように維持させることができる。
【0026】
ロードロックチャンバ36も、金属材料(例えば、アルミ、ステンレス、チタン等)により形成される。ロードロックチャンバ36には排気口が設けられている。ロードロックチャンバ36の排気口には真空ポンプ38が接続される。真空ポンプ38は、ロードロックチャンバ36内の気体を排気口から排気する。真空ゲージ40により圧力を測定しつつ、真空ポンプ38を作動させることによってロードロックチャンバ36内を所定の圧力となるように維持させることができる。
【0027】
ゲートバルブ44を閉じた状態において、ロードロックチャンバ36を大気開放することによって、チャンバ10を真空状態に保ったままロードロックチャンバ36に成膜用の部材を導入することができる。ロードロックチャンバ36には部材導入フランジ(図示しない)が設けられ、ロードロックチャンバ36を大気開放することによって部材導入フランジから珪素含有部材(例えば、珪素単体からなる部材等)や炭素を含む炭素含有部材(例えば、炭素単体からなる部材、珪素及び炭素を含む部材等)を部材搬送手段42に装着する。部材搬送手段42は、搬送用ロボットアーム等を含んで構成される。珪素含有部材及び炭素含有部材を導入した後、ロードロックチャンバ36は真空排気される。ロードロックチャンバ36に導入された珪素含有部材及び炭素含有部材は、ゲートバルブ44を開いた状態で、部材搬送手段42を用いてチャンバ10内へ搬送され、部材固定部20に設置される。珪素含有部材及び炭素含有部材は、例えば、チャンバ10へ交互に搬送・設置される。
【0028】
本実施の形態では、部材固定部20は、チャンバ10内において天板12の近傍に設けられる。部材固定部20は、このようにプラズマアンテナ14の近傍に配置することが好ましい。部材固定部20は、珪素含有部材及び炭素含有部材をチャンバ10内にて支持する。珪素含有部材及び炭素含有部材は、例えば、チャンバ10の内壁の周方向に亘って複数に分割された形状を有することが好ましい。珪素含有部材及び炭素含有部材は、部材固定部20によって、チャンバ10の内壁からチャンバ10の中心に向かって突出するように設置される。
【0029】
基板サセプタ22は、チャンバ10の上部に配置される珪素含有部材及び炭素含有部材に基板設置面が対向するように、チャンバ10内の下方に設けられる。基板サセプタ22は、一般的に、円盤形状をしている。基板サセプタ22上の基板設置面には、SiC膜をコーティングする対象となる対象物(例えば、シリコン基板等の半導体基板、ガラス等の絶縁基板)が設置される。また、例えば、別途設けられるロードロックチャンバ(図示しない)から、ゲートバルブを介して、基板サセプタ22上に基板22aを設置できるような構成としてもよい。
【0030】
基板サセプタ22には、冷媒循環手段24が設けられる。冷媒循環手段24は、制御部(図示しない)による制御によって外部から供給された冷媒を基板サセプタ22内に循環させることによって、基板サセプタ22の温度を調整する温度調整手段の一部として用いられる。また、基板サセプタ22には、加熱手段26が設けられる。加熱手段26は、抵抗加熱ヒーター等とすることができる。加熱手段26は、制御部による制御によって基板サセプタ22の温度を調整する温度調整手段の一部として用いられる。
【0031】
円筒状のチャンバ10の側壁には、後述する基板サセプタ22の上面より上方にガス供給ノズル32が設けられる。ガス供給ノズル32は、例えば、チャンバ10の周囲に亘って8箇所に設けられる。ガス供給ノズル32には、ガス流量制御器34を介して、ガス供給装置(図示しない)が接続される。ガス供給ノズル32は、塩素を含有するガス(ヘリウム(He)、アルゴン(Ar)等の希ガスにより塩素濃度が50%以下、好ましくは10%程度に希釈された塩素ガス(Cl2))をチャンバ10内に供給するために設けられる。ガス流量制御器34は、金属膜の成膜時にチャンバ10内に供給される供給ガスが所定の流量となるように制御する。
【0032】
なお、供給ガスは、ヘリウム(He)等の希ガスで希釈された塩素ガス(Cl2)に限定されるものではなく、ハロゲン含有ガスであればよい。例えば、塩素ガス(Cl2)を単独で使用してもよい。後述する珪素供給処理と炭素供給処理において、チャンバ10内に供給するハロゲン含有ガスの種類・組成を適宜調整してもよい。
【0033】
天板12の外部上面にはプラズマアンテナ14が配置される。プラズマアンテナ14は、チャンバ10の上面方向からみて平面的なコイル(渦巻き)状に成形される。プラズマアンテナ14の一端は、整合器16を介して、電源18に接続される。また、プラズマアンテナ14の他端は接地される。プラズマアンテナ14、整合器16及び電源18はプラズマ発生手段を構成する。
【0034】
なお、本実施の形態では、プラズマアンテナ14は平面コイル状としたが、これに限定されるものではない。プラズマアンテナ14は、チャンバ10の外形に沿った形状であればよい。プラズマアンテナ14を、チャンバ10の外形に沿って配置することによって、チャンバ10の外部から内部へと電力を効率良く導入することが可能となり、ハロゲン含有ガスを効率良く解離させることができる。
【0035】
[SiC形成処理]
SiCを基板サセプタ22上に設置された基板22aの表面に形成する処理について説明する。SiC形成処理は、図2に示すフローチャートに沿って行われる。
【0036】
ステップS10では、SiCを形成する前に、基板サセプタ22上に基板22aを設置する。SiCの形成対象となる基板22aは、例えば、シリコン基板等の半導体基板、ガラス基板等の絶縁基板、アルミニウム等の金属を含む基板とすることができる。次に、真空ポンプ28を用いて、チャンバ10内を必要な真空度となるまで排気する。
【0037】
ステップS12では、ロードロックチャンバ36を用いて、チャンバ10内に珪素含有部材20aを導入し、部材固定部20に珪素含有部材20aを取り付ける。
【0038】
ステップS14では、基板22aの表面上にSiが形成される。ガス供給ノズル32から塩素含有ガスをチャンバ10内に導入する。このとき、真空ポンプ28に流量制御バルブ等を設け、真空ゲージ30で検出される圧力値に基づいて流量制御バルブの開度をフィードバック制御することによって、チャンバ10内の供給ガスの圧力を所定の値とすることができる。
【0039】
基板サセプタ22に設けられている冷媒循環手段24及び加熱手段26を制御部(図示しない)により制御することによって、Si形成時における基板22aの温度は、珪素含有部材20aよりも低い温度に制御される。例えば、珪素含有部材20aよりも低い温度として、基板22aの温度を500℃以下、好ましくは400℃以下、より好ましくは350℃以下、更に好ましくは300℃以下に制御することが好適である。
【0040】
供給ガスを供給した状態下において、電源18からプラズマアンテナ14に所定の周波数及び所定のパワーの高周波電力を供給する。併せて、整合器16によりチャンバ10内に対するインピーダンスの整合を調整することによって、プラズマアンテナ14を介してチャンバ10内に電磁波を照射する。これによって、供給ガスに含まれる塩素ガス(Cl2)が解離されてプラズマ(塩素ガスプラズマ)が発生する。電源18から供給される電磁波の周波数,パワー、供給ガスの流量,圧力等を調整することによって、成膜時には天板12に設けられたプラズマアンテナ14下にプラズマを発生させることができる。
【0041】
例えば、供給ガスとして塩素ガス(Cl2)を供給した場合、塩素ガスが解離されて塩素ガスプラズマが発生する。塩素ガスプラズマは、チャンバ10内のプラズマアンテナ14付近の空間、すなわち珪素含有部材20a近傍の空間に発生する。
【0042】
塩素ガスプラズマにより、珪素含有部材20aがエッチングされ、前駆体(SixCly:x,yは1以上の整数)が発生する。このとき、珪素含有部材20aは、塩素ガスプラズマにより基板22aの温度よりも高い所定の温度に維持されている。チャンバ10内で生成された前駆体(SixCly)は、珪素含有部材20aよりも低い温度に制御された基板22aの表面へ搬送される。基板22aに搬送された前駆体(SixCly)は還元反応によりSiラジカルのみとなった状態で基板22aの表面に当たり、基板22aの表面にSi膜がコーティングされる。反応に関与しないガス及びエッチング生成物は排気口から排気される。
【0043】
このときの反応は、次式で表すことができると推察される。
Si+2C12 → SiCl4 → Si↓+2Cl2
【0044】
ステップS16では、ロードロックチャンバ36を用いて、チャンバ10からロードロックチャンバ36へ珪素含有部材20aを搬出し、代わりに、ロードロックチャンバ36からチャンバ10内へ炭素含有部材20bを導入し、部材固定部20に炭素含有部材20bを取り付ける。
【0045】
ステップS18では、SiCが形成される。ガス供給ノズル32から塩素含有ガスをチャンバ10内に導入する。このとき、Si形成時と同様に、チャンバ10内の供給ガスの圧力を所定の値とすることができる。また、基板サセプタ22に設けられている冷媒循環手段24及び加熱手段26を制御部(図示しない)により制御することによって、基板22aの温度は、炭素含有部材20bよりも低い温度に制御される。例えば、炭素含有部材20bよりも低い温度として、基板22aの温度を500℃以下、好ましくは400℃以下、より好ましくは350℃以下、更に好ましくは300℃以下に制御することが好適である。
【0046】
ガスを供給した状態下において、電源18からプラズマアンテナ14に所定の周波数及び所定のパワーの高周波電力を供給する。併せて、整合器16によりチャンバ10内に対するインピーダンスの整合を調整することによって、プラズマアンテナ14を介してチャンバ10内に電磁波を照射する。これによって、プラズマ(塩素ガスプラズマ)を発生させる。塩素ガスプラズマは、チャンバ10内のプラズマアンテナ14付近の空間、すなわち炭素含有部材20b近傍の空間に発生する。
【0047】
塩素ガスプラズマにより、炭素含有部材20bがエッチングされ、前駆体(CmCln:m,nは1以上の整数)が発生する。このとき、炭素含有部材20bは、塩素ガスプラズマにより基板22aの温度よりも高い所定の温度に維持されている。チャンバ10内で生成された前駆体(CmCln)は、炭素含有部材20bよりも低い温度に制御された基板22aの表面へ搬送される。
【0048】
このときのCの供給は、次式で表すことができると推察される。
C+2C12 → CCl4 → C↓+2Cl2
【0049】
上記反応式はCの供給を表したものであるが、本実施例では、基板22aの表面には予めSi膜が形成されており、この上から前駆体(CmCln)が輸送されることで、Si膜にC成分が浸潤すると考えられ、その結果、基板22a上にSiC膜が形成される。具体的には、基板22aの表面に対して塩素ラジカルと前駆体(CmCln)とが輸送されると、基板22aの表面近傍においてSi成分がC成分に置換されながら、C成分がSi膜内に拡散しつつ塩素成分が離脱する還元反応が生じていると考えられ、その結果、基板22a上にSiC膜が形成される。反応に関与しないガス及びエッチング生成物は排気口から排気される。
【0050】
本実施の形態では、Si膜の全体をSiC膜としなくてもよい。例えば、基板表面がSi等の酸化膜で構成される場合において、基板22a(実際には酸化膜)上にSi膜の膜厚を比較的厚く形成し、この上から前駆体(CmCln)とハロゲンのラジカルとを供給し、成膜時間等の成膜条件を制御することにより、Si膜に対するC成分の置換・拡散の度合いを制御し、Si膜の下層を残したままで、表層部分をSiC膜とすることも可能である。これにより、図10に示すように、SiC膜80と酸化膜82との間に中間層84、具体的にはアモルファスSi層が介在することとなる。これにより、中間層84がSiC膜80と酸化膜82との間の応力緩和層となって、熱膨張等によるSiC膜の破壊や剥離を有効に防止することができる。
【0051】
なお、ステップS18において基板22aにCを供給する前に、予め形成されたSiの表面に形成された不純物(例えば、酸化珪素膜等)を除去したうえでCを供給することが好適である。例えば、電源18から供給するパワーを高く設定してエッチング反応が高まる条件で生成された塩素ガスプラズマを基板22aの表面に当て、その後パワーを低下させてCを供給することによって、Siの表面から不純物を除去して良質なSiC膜を形成することができる。
【0052】
また、必要とされるSiC膜の膜厚に応じて、ステップS12〜S18の工程を繰り返してもよい。例えば、前駆体(CmCln)に含まれるC成分が浸潤可能な厚さでSi膜を形成し、上述したようにC成分の浸潤によりSiC膜を形成し、このステップを複数回繰り返すことによって所望の膜厚のSiC膜を形成することができる。また、このようにしてSiC膜を積層することにより、仮に1層目のSiC薄膜にピンホール等の孔が形成されたとしても、この上から2層目のSiC薄膜を積層するので、膜厚方向に連通するピンホールが形成されるのを有効に防止することもできる。
【0053】
また、本実施の形態では、ステップS12でチャンバ10内に珪素含有部材20aを設置し、ステップS14で塩素ガスプラズマを用いてSiを形成したが、これに限定されるものではない。Siの形成処理には他の方法を用いてもよい。例えば、ステップS12及びステップS14での処理を、シラン等のガスを用いた化学気相成長法(CVD法)やスパッタリング等の物理的成膜方法によるSi膜のコーティングに置き換えてもよい。
【0054】
<変形例1>
上記SiC形成処理では、珪素含有部材20aと炭素含有部材20bを交互に設置し、Siを供給する処理とCを供給する処理とを別々に行っている。しかし、これに限定されるものではなく、珪素及び炭素の両方を含む珪素・炭素含有部材20cを用いてもSiCを形成することができる。変形例1におけるSiC形成処理を、図3に示すフローチャートに沿って説明する。
【0055】
ステップS20では、上記ステップS10と同様に、基板22aの設置、及び、チャンバ10内の真空排気が行われる。
【0056】
ステップS22では、ロードロックチャンバ36を用いて、チャンバ10内に珪素・炭素含有部材20cを導入し、部材固定部20に珪素・炭素含有部材20cを取り付ける。
【0057】
ステップS24では、SiCの形成が行われる。ガス供給ノズル32から塩素含有ガスをチャンバ10内に導入する。この場合も、チャンバ10内の供給ガスの圧力を所定の値に調整する。また、基板22aの温度は、珪素・炭素含有部材20cよりも低い温度に制御される。
【0058】
供給ガスを供給した状態下において、電源18からプラズマアンテナ14に所定の周波数及び所定のパワーの高周波電力を供給する。併せて、整合器16によりチャンバ10内に対するインピーダンスの整合を調整することによって、プラズマアンテナ14を介してチャンバ10内に電磁波を照射する。これによって、供給ガスに含まれる塩素ガス(Cl2)が励起されてプラズマ(塩素ガスプラズマ)が発生する。電源18から供給される電磁波の周波数、パワー、供給ガスの流量、圧力等を調整することによって、成膜時には天板12に設けられたプラズマアンテナ14下にプラズマを発生させることができる。塩素ガスプラズマは、チャンバ10内のプラズマアンテナ14付近の空間、すなわち珪素・炭素含有部材20c近傍の空間に発生する。
【0059】
塩素ガスプラズマにより、珪素・炭素含有部材20cがエッチングされ、前駆体(SixCly:x,yは1以上の整数、及び、CmCln:m,nは1以上の整数)が発生する。このとき、珪素・炭素含有部材20cは、塩素ガスプラズマにより基板22aの温度よりも高い所定の温度に維持されている。チャンバ10内で生成された前駆体(SixCly,CmCln)は、珪素・炭素含有部材20cよりも低い温度に制御された基板22aの表面へ搬送される。基板22aに搬送された前駆体(SixCly,CmCln)は還元反応によりSiラジカル及びCラジカルとなった状態で基板22aの表面に当たり、基板22aの表面にSiCが形成される。反応に関与しないガス及びエッチング生成物は排気口から排気される。
【0060】
[半導体製造装置へのSiC形成処理]
上記のSiCの形成処理は、SiC形成装置100のチャンバ10の内壁へのSiC形成処理にも適用することができる。
【0061】
SiC形成装置100のチャンバ10の内壁にSiCを形成する場合、図1に示すように、チャンバ10の温度を調整するための温度制御手段46を設ける。温度制御手段46は、外壁に沿わせて配置された冷媒循環手段や加熱手段を含むものとすることができる。このパイプに冷媒を循環させることによって、SiCの形成時において、チャンバ10の内壁の温度を珪素含有部材20a,炭素含有部材20b及び珪素・炭素含有部材20cの温度よりも低く維持することができる。
【0062】
温度制御手段46を用いてチャンバ10の内壁の温度を珪素含有部材20a及び炭素含有部材20bの温度よりも低く維持した状態において、上記ステップS12〜S18を実行することによって、チャンバ10の内壁へSiラジカル及びCラジカルを交互に供給し、チャンバ10の内壁にSiCを形成することができる。
【0063】
また、温度制御手段46を用いてチャンバ10の内壁の温度を珪素・炭素含有部材20cの温度よりも低く維持した状態において、上記ステップS24を実行することによって、チャンバ10の内壁へSiラジカル及びCラジカルを供給し、チャンバ10の内壁にSiCを形成することもできる。
【0064】
以上のように、SiC形成装置100では、チャンバ10の温度を調整することによってチャンバ10の内壁にSiCを容易に形成することができる。また、チャンバ10の内壁に亀裂等が発生した場合には、SiCをコーティングすることによって亀裂等の傷を塞ぐことができる。また、このように形成されたSiCは結晶性が高く、チャンバ内壁のエッチング耐性、特に塩素ラジカル等によるエッチング耐性等を高めるために有効である。
【0065】
また、一般的に、半導体製造装置のチャンバ内壁にSiC膜をコーティングするためには、チャンバを対象物として処理可能な容量を有するチャンバを備えたSiC形成装置を用意するか、又は、対象物となるチャンバ内部に珪素化合物ガス及び炭化物ガスを供給して気相成長を行うことができる設備を用意する必要があったが、SiC形成装置100においてチャンバ10の温度を調整するだけで、チャンバ10の内壁にSiCを容易に形成することができる。
【0066】
すなわち、本発明は、半導体製造装置の製造プロセスにも適用可能である。ここで、半導体製造装置の一例として、例えば、基板に金属膜を形成する薄膜作製装置等が挙げられる。このような薄膜作製装置の一例としては、例えば、ウェハ等の基板が収容される真空容器であるチャンバ内に金属ハロゲン化物を形成し得る材料からなる被エッチング部材が設置され、このチャンバ内にハロゲン含有ガスが導入され、プラズマ等によりチャンバ内にハロゲンラジカルを生成し、そのハロゲンラジカルにより被エッチング部材をエッチングすることにより、ハロゲンと金属とからなる前駆体を形成すると共に、基板の温度を被エッチング部材の温度よりも低く制御することにより、前駆体を基板に輸送すると共に基板に前駆体に含まれる金属を析出させることで、基板に金属膜を作製する薄膜作製装置等が挙げられる。そして、このような薄膜作製装置においては、被エッチング部材を交換する交換手段を備えている場合、この交換手段を用いることにより、上述したように、珪素含有部材と炭素含有部材とを交換しながらチャンバ内において所望のSiCを形成することが可能となり、特にチャンバの温度を被エッチング部材の温度よりも低く制御可能に構成することで、SiC膜をチャンバの内壁に選択的に形成することが可能となる。すなわち、SiCコーティングされたチャンバを用意して薄膜作製装置を組み立てなくても、薄膜作製装置の製造プロセスにおいて、例えば、被エッチング部材の交換手段を組み付けた後、この交換手段を利用して、チャンバの内壁にハロゲン又はハロゲンラジカル等に対するエッチング耐性を有するSiC膜を形成することが可能となる。
【0067】
なお、上述した薄膜作製装置において、基板22aにSiCを形成する際には、温度調整手段46を用いてチャンバ10の温度をできるだけ高く維持することによって、チャンバ10の内壁へのSiCの形成を抑制してもよい。
【0068】
なお、上記実施の形態、変形例1及び半導体製造装置へのSiC形成処理では、供給ガスとして塩素ガスを単独で用いた場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。塩素以外のフッ素等のハロゲンを含有するガスとしてもよい。また、He,Ar等の希ガスで希釈されたハロゲンガスを用いた場合にも同様の反応が起こる。これらは第2の実施の形態以降でも同様である。
【0069】
特に、塩化水素(HCl)ガスを用いた場合、プラズマとして塩化水素ガスプラズマが生成される。珪素含有部材20aではエッチングにより生成される前駆体はSixCly(:x,yは1以上の整数)、炭素含有部材20bではエッチングにより生成される前駆体はCmCln(:m,nは1以上の整数)となる。このように、塩素ガスと塩化水素ガスとの混合ガスを用いてもよい。
【0070】
<第2の実施の形態>
また、チャンバの製造工程において、チャンバにガス供給ノズル、プラズマアンテナを取り付け、ハロゲン含有ガスプラズマの作用を利用してチャンバの内壁にSiCを形成することもできる。
【0071】
チャンバ内壁へのSiC形成処理を行う場合、図4の透過斜視図及び図5の分解組立図に示すように、チャンバ50の製造工程においてチャンバ50にガス供給ノズル52、プラズマアンテナ54、整合器56、電源58、部材60及び真空ポンプ62を取り付ける。
【0072】
本実施の形態では、ガス供給ノズル52は、円盤状の天板66の中心から突き出すように配置される。天板66をチャンバ50の上面に取り付けることによって、円筒形状のチャンバ50の中心軸に沿って突き出すようにガス供給ノズル52が配置される。ガス供給ノズル52には周壁にはガス吹き出し孔が多数設けられる。このように、ガス供給ノズル52は、チャンバ50の内周壁に向けてガスの流れができるように塩素含有ガスを吹き付けることができる形状にすることが好ましい。
【0073】
また、チャンバ50の外壁の形状に沿ってプラズマアンテナ54を配置する。本実施の形態では、例として円筒状のチャンバ50を用いているので、チャンバ50の外周壁にコイル状に巻かれたプラズマアンテナ54が取り付けられる。プラズマアンテナ54の一端は、整合器56を介して、電源58に接続される。また、プラズマアンテナ54の他端は接地される。プラズマアンテナ54、整合器56及び電源58はプラズマ発生手段を構成する。
【0074】
また、チャンバ50内には原料部材60が配置される。原料部材60は、固定部60aと部材本体60bから構成される。原料部材60は、チャンバ50の内壁の形状に沿った形状を有し、一部に開口穴が設けられることが好ましい。
【0075】
本実施の形態では、チャンバ50は円筒状であるので、原料部材60は、一部に開口穴が設けられた円筒形状とする。具体的には、チャンバ50の内周壁の径よりわずかに小さい径を有する円環状の固定部60aを上下に配置し、上下の固定部60aの間に短冊状の部材本体60bを円環に沿って複数配置する構成としている。固定部60aは絶縁体により構成することができる。また、部材本体60bは、珪素及び炭素の両方を含む珪素・炭素含有部材とすることができる。また、珪素含有部材と炭素含有部材とを交互に入れ替えてコーティング処理を行ってもよい。
【0076】
これにより、ガス供給ノズル52から塩素含有ガスが部材本体60bに向けて吹き付けられ、塩素ガスプラズマと部材本体60bとを効率よく反応させることができると共に、部材本体60bの間からチャンバ50の内周壁等へ向けてSiラジカルやCラジカルを効率よく供給することができる。
【0077】
なお、原料部材60の具体的な形状はこれに限定されるものではない。例えば、図6に示すように、チャンバ50の内周壁の径よりわずかに小さい径を有する円環状の固定部60aを上下に配置し、上下の固定部60aの間に多数孔が開けられた円筒状の部材本体60cを配置する構成としてもよい。
【0078】
コーティング処理時には、まずチャンバ50内の真空排気を行なう。続いて、ガス供給ノズル52から塩素含有ガスをチャンバ50内に導入する。この場合も、チャンバ50内の供給ガスの圧力を所定の値に調整することが好ましい。
【0079】
供給ガスを供給した状態下において、電源58からプラズマアンテナ54に所定の周波数及び所定のパワーの高周波電力を供給する。併せて、整合器56によりチャンバ50内に対するインピーダンスの整合を調整することによって、プラズマアンテナ54を介してチャンバ50内に電磁波を照射する。これによって、供給ガスに含まれる塩素ガス(Cl2)が励起されてプラズマ(塩素ガスプラズマ)が発生する。電源58から供給される電磁波の周波数、パワー、供給ガスの流量、圧力等を調整することによって、プラズマアンテナ54が巻き付けられているチャンバ50の内周壁の近傍にプラズマを発生させることができる。
【0080】
塩素ガスプラズマは、チャンバ50の内周壁近傍に設けられている部材本体60b(60c)と反応し、前駆体(SixCly:x,yは1以上の整数、及び、CmCln:m,nは1以上の整数)が発生する。このとき、部材本体60b(60c)は、塩素ガスプラズマによりチャンバ50の内周壁の温度よりも高い所定の温度に維持されている。生成された前駆体(SixCly,CmCln)は、部材本体60bの間又は部材本体60cの孔を通ってチャンバ50の内壁へ搬送される。これにより、チャンバ50の内壁面にSiC膜がコーティングされる。反応に関与しないガス及びエッチング生成物は排気口から排気される。
【0081】
このとき、上記半導体製造装置へのSiC形成処理と同様に、チャンバ50の壁面に冷媒循環手段や加熱手段等の温度調整手段(図示しない)を設けて、チャンバ50の内壁の温度を成膜に適した温度となるように制御してもよい。このとき、原料部材60よりも低い温度としてチャンバ50の壁面温度を500℃以下、好ましくは400℃以下、より好ましくは350℃以下、更に好ましくは300℃以下に制御することによって、その温度範囲に制御された壁面領域のみに選択的にSiCを形成することができる。
【0082】
<変形例2>
チャンバ50の内壁面へのSiCの形成装置の変形例を示す。図7の透過斜視図及び図8の分解組立図に示すように、チャンバ50の製造工程においてチャンバ50にガス供給ノズル52、プラズマアンテナ68、整合器56、電源58、部材70及び真空ポンプ62を取り付ける。このような装置によっても上記実施の形態と同様にチャンバ50の内壁にSiCを形成することができる。
【0083】
本実施の形態では、天板66の上面にコイル状のプラズマアンテナ68が取り付けられる。プラズマアンテナ68の一端は、整合器56を介して、電源58に接続される。また、プラズマアンテナ68の他端は接地される。プラズマアンテナ68、整合器56及び電源58はプラズマ発生手段を構成する。
【0084】
また、チャンバ50内には原料部材70が配置される。本実施の形態では、原料部材70は、チャンバ50の内周壁の内周と略等しい外径を有する円環状の固定部70aと、固定部70aの中心に向けて突出するように固定部70aに固定された部材本体70bと、から構成されている。固定部70aは絶縁体により構成することができる。
【0085】
また、上記実施の形態と同様に、部材本体70bは、珪素及び炭素の両方を含む珪素・炭素含有部材とすることができる。また、珪素含有部材と炭素含有部材とを交互に入れ替えてコーティング処理を行ってもよい。部材本体70bは、固定部70aの周囲に亘って幾つかに分割される。
【0086】
塩素ガスプラズマは、部材本体70bと反応し、前駆体(SixCly:x,yは1以上の整数、及び、CmCln:m,nは1以上の整数)が発生する。このとき、珪素・炭素含有原料部材70cは、塩素ガスプラズマによりチャンバ50の内周壁の温度よりも高い所定の温度に維持されている。ガス供給ノズル52からチャンバ50の内壁に向けて塩素含有ガスが吹き付けられ、部材本体70bから発生した前駆体が効率よくチャンバ50の内壁へ供給される。これにより、チャンバ50の内壁面にSiC膜がコーティングされる。反応に関与しないガス及びエッチング生成物は排気口から排気される。
【0087】
このときも、上記実施の形態と同様に、チャンバ50の壁面に冷媒循環手段や加熱手段等の温度調整手段(図示しない)を設けて、チャンバ50の内壁の温度を成膜に適した温度となるように制御してもよい。具体的には、原料部材60よりも低い温度としてチャンバ50の壁面温度を500℃以下、好ましくは400℃以下、より好ましくは350℃以下、更に好ましくは300℃以下に制御することによって、その温度範囲に制御された壁面領域のみに選択的にSiCを形成することができる。
【0088】
なお、上記実施の形態及び変形例2において、図9に示すように、ガス供給ノズル72をチャンバ50の内周壁から突出させ、内周壁へ向けて折り返すような構造としてもよい。このような構造とした場合、ガス供給ノズル72はチャンバ50の内周に沿って複数設けることが好ましい。このような構造としても、チャンバ50の内周壁に向けてガスの流れができ、チャンバ50の内壁にSiC膜を効率的にコーティングすることができる。
【0089】
本実施の形態及び変形例2によれば、チャンバの製造工程において部材等を設置するだけでチャンバにSiCを形成することができる。また、塩素ガスプラズマを発生させることができる装置である場合、使用中のチャンバであったとしても、装置を解体することなく部材を設置するだけでSiCを形成することができる。
【0090】
特に、上記実施の形態及び変形例で形成されるSiCは結晶性が高く、耐塩素性等のエッチング耐性を高くすることができるので、エッチング反応を含む処理を行うチャンバの内壁の強化に有効である。また、通常のCVD法に比べて前駆体が拡散し易いと考えられており、SiCの埋め込み特性が良好である。例えば、SiC膜に穴等のダメージが生じている場合、これを補修(修復)するためには、一般的に、ダメージを受けているSiC膜を一旦除去した後、新たにSiC膜をコーティングすること等が必要となるが、上記実施の形態及び変形例で示したSiC形成方法によれば、前駆体が比較的拡散し易いと考えられるため、面へのコーティングだけでなく、複雑な形状をした部材へのコーティングや穴のような箇所の埋め込み補修においても極めて有効である。
【0091】
なお、本実施の形態及び変形例2におけるSiCの形成処理は、金属膜、半導体膜、絶縁体膜等の各種膜について成膜処理、エッチング処理、加工処理等の種々の処理に用いられるチャンバに適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の実施の形態におけるSiC形成装置の構成を示す断面図である。
【図2】本発明の実施の形態におけるSiC膜のコーティング処理を示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施の形態におけるSiC膜のコーティング処理の変形例を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施の形態におけるチャンバへのSiC膜のコーティング装置の構成を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態におけるチャンバへのSiC膜のコーティング装置の分解・組立図である。
【図6】本発明の実施の形態におけるチャンバへのSiC膜のコーティング装置の部材の別例を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態におけるチャンバへのSiC膜のコーティング装置の変形例を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態におけるチャンバへのSiC膜のコーティング装置の変形例の分解・組立図である。
【図9】本発明の実施の形態におけるチャンバへのSiC膜のコーティング装置のガス供給ノズルの変形例を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態において形成される膜の構造の例を示す図である。
【符号の説明】
【0093】
10 チャンバ、12 天板、14 プラズマアンテナ、16 整合器、18 電源、20 部材固定部、20a 珪素含有部材、20b 炭素含有部材、20c 珪素・炭素含有部材、22 基板サセプタ、22a 基板、24 冷媒循環手段、26 加熱手段、28 真空ポンプ、30 真空ゲージ、32 ガス供給ノズル、34 ガス流量制御器、36 ロードロックチャンバ、38 真空ポンプ、40 真空ゲージ、42 部材搬送手段、44 ゲートバルブ、46 温度制御手段、50 チャンバ、52 ガス供給ノズル、54 プラズマアンテナ、56 整合器、58 電源、60 原料部材、60a 固定部、60b 部材本体、60c 部材本体、62 真空ポンプ、66 天板、68 プラズマアンテナ、70 原料部材、70a 固定部、70b 部材本体、72 ガス供給ノズル、80 SiC膜、82 酸化膜(酸化珪素膜)、84 中間層(アモルファスSi層)、100 SiC形成装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハロゲン含有ガスを解離して得たラジカルを炭素含有部材に作用させることによりハロゲンと炭素とからなる前駆体を生成し、表面に珪素を有する対象物に対して前記前駆体を供給すると共に前記ラジカルを作用させることにより前記対象物の表面上にSiCを形成することを特徴とするSiC形成方法。
【請求項2】
ハロゲン含有ガスを解離して得たラジカルを炭素含有部材に作用させることによりハロゲンと炭素とからなる前駆体を生成し、表面に珪素膜を有する対象物に対して前記前駆体を供給すると共に前記ラジカルを作用させることにより、前記珪素膜の一部のみをSiC化させ、酸化珪素膜とSiC膜との間にアモルファスSi層を有する膜を形成する膜形成方法。
【請求項3】
チャンバ内の対象物へ珪素を供給すると共に、
前記チャンバ内へハロゲン含有ガスを供給し、当該ハロゲン含有ガスを解離して炭素含有部材から前記対象物へ炭素を供給することによって前記対象物にSiCを形成することを特徴とするSiC形成方法。
【請求項4】
請求項3に記載のSiC形成方法であって、
前記対象物へ炭素を供給するステップにおいて、前記対象物の温度を前記炭素含有部材の温度よりも低く維持することを特徴とするSiC形成方法。
【請求項5】
請求項3又は4に記載のSiC形成方法であって、
前記対象物へ珪素を供給するステップの後に前記対象物へ炭素を供給するステップを行うことを特徴とするSiC形成方法。
【請求項6】
請求項3〜5のいずれか1つに記載のSiC形成方法であって、
前記対象物へ珪素を供給するステップと、前記対象物へ炭素を供給するステップと、を繰り返すことを特徴とするSiC形成方法。
【請求項7】
請求項3〜6のいずれか1つに記載のSiC形成方法であって、
前記対象物へ珪素を供給するステップと、前記対象物へ炭素を供給するステップと、の間に前記対象物に形成された珪素の酸化膜を除去するステップを備えることを特徴とするSiC形成方法。
【請求項8】
請求項3又は4に記載のSiC形成方法であって、
前記対象物へ珪素を供給しつつ、同時に前記対象物へ炭素を供給することを特徴とするSiC形成方法。
【請求項9】
請求項3〜7のいずれか1つに記載のSiC形成方法であって、
前記珪素を供給する処理において、前記チャンバ内へ前記ハロゲン含有ガスを供給し、当該ハロゲン含有ガスを解離して珪素含有部材から前記対象物へ珪素を供給することを特徴とするSiC形成方法。
【請求項10】
請求項9に記載のSiC形成方法であって、
前記対象物へ前記珪素を供給する処理を行った後、前記チャンバ内の前記珪素含有部材を前記炭素含有部材に交換し、前記対象物へ前記炭素を供給する処理を行うことによって前記対象物にSiCを形成することを特徴とするSiC形成方法。
【請求項11】
請求項3〜10のいずれか1つに記載のSiC形成方法であって、
前記珪素を含んでなる膜の一部のみをSiC化することによって、酸化珪素膜とSiC膜との間にアモルファスSi層を有する膜を形成するSiC形成方法。
【請求項12】
チャンバの壁面へ珪素を供給すると共に、
前記チャンバ内へハロゲン含有ガスを供給し、当該ハロゲン含有ガスを解離して炭素含有部材から炭素を前記チャンバの壁面へ供給することによって前記チャンバの壁面にSiCを形成することを特徴とするチャンバへのSiC形成方法。
【請求項13】
チャンバを備えた半導体製造装置を製造する工程において、
前記チャンバ内へ珪素含有部材を配置するステップと、
前記チャンバの壁面の温度を前記珪素含有部材の温度よりも低く維持しつつ、前記チャンバ内へハロゲン含有ガスを供給し、当該ハロゲン含有ガスを解離して前記珪素含有部材から珪素を前記チャンバの壁面へ供給するステップと、
前記珪素含有部材と炭素含有部材とを交換するステップと、
前記チャンバの壁面の温度を前記炭素含有部材の温度よりも低く維持しつつ、前記チャンバ内へハロゲン含有ガスを供給し、当該ハロゲン含有ガスを解離して前記炭素含有部材から炭素を前記チャンバの壁面へ供給して前記チャンバの壁面にSiCを形成するステップと、を備えたことを特徴とする半導体製造装置の製造方法。
【請求項14】
チャンバ内へハロゲン含有ガスを供給するガス供給手段と、
前記チャンバ内に炭素含有部材を設置する部材固定部と、を備え、
前記チャンバ内へ珪素を供給すると共に、前記チャンバ内へ前記ハロゲン含有ガスを供給し、当該ハロゲン含有ガスを解離して前記部材固定部に設置された前記炭素含有部材から炭素を供給することによって対象物にSiCを形成することを特徴とするSiC形成装置。
【請求項15】
請求項14に記載のSiC形成装置であって、
前記対象物の温度を前記炭素含有部材の温度よりも低い温度に制御する温度制御手段を備えることを特徴するSiC形成装置。
【請求項16】
請求項15に記載のSiC形成装置であって、
前記温度制御手段は、前記チャンバの壁面の少なくとも一部の温度を前記炭素含有部材の温度よりも低い温度に制御する手段であることを特徴とするSiC形成装置。
【請求項17】
請求項14に記載のSiC形成装置であって、
前記ガス供給手段は、前記チャンバの内壁へ向けて前記ハロゲン含有ガスを吹き付けるガス供給ノズルを含むことを特徴とするSiC形成装置。
【請求項18】
請求項17に記載のSiC形成装置であって、
前記チャンバの外部から前記チャンバの内部へ電力を導入するプラズマアンテナを備え、
前記プラズマアンテナは、前記チャンバの外壁に沿って配置され、
前記炭素含有部材は、前記チャンバの内壁に沿って配置され、一部に開口穴が設けられていることを特徴とするSiC形成装置。
【請求項19】
請求項14〜18のいずれか1つに記載のSiC形成装置であって、
前記チャンバとゲートバルブを介して接続され、前記炭素含有部材を前記部材固定部に設置するための部材交換手段を備えることを特徴とするSiC形成装置。
【請求項20】
珪素酸化膜とSiC膜との間にアモルファスSi層を有する膜構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−231469(P2008−231469A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−69832(P2007−69832)
【出願日】平成19年3月19日(2007.3.19)
【出願人】(506239658)株式会社フィズケミックス (37)
【Fターム(参考)】