説明

へテロ接合トランジスタ及びその製造方法

【課題】チャネル層中のキャリア濃度を増すため、高いアルミニウム含有率を有した厚いAlGaN層は、成長中か冷却後にひびが入る傾向があり、これによってデバイスが破壊される。
【解決手段】基板上の第1のIII族窒化物層は第1の歪みを有する。GaN層のような第2のIII族窒化物層が、第1のIII族窒化物層上に設けられている。第2のIII族窒化物層は、第1のIII族窒化物層のバンドギャップよりも小さなバンドギャップを有し、かつ第1の歪みの大きさよりも大きい第2の歪みを有する。AlGaN層又はAlN層のような第3のIII族窒化物層がGaN層上に設けられている。第3のIII族窒化物層は、第2のIII族窒化物層のバンドギャップよりも大きなバンドギャップを有し、かつ第2の歪みと逆の歪みの型の第3の歪みを有する。ソースコンタクトとドレインコンタクトとゲートコンタクトを第3のIII族窒化物層上に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、へテロ接合トランジスタ及びその製造方法に関し、より詳細には、歪み平衡窒化物へテロ接合トランジスタ及びその製造方法に関し、特に、高周波トランジスタ、あるいは窒化物能動層を組み込んだ高電子移動度トランジスタ(HEMT)に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、トランジスタを高電力、高温、及び/又は高周波用途に適したものにすることができる半導体材料で形成されたへテロ接合トランジスタに関する。シリコン(Si)及びガリウム砒素(GaAs)のような材料は、低電力及び(Siの場合)低周波用途の半導体デバイスに広く応用されている。しかし、これらの比較的よく知られている半導体材料は、比較的小さなバンドギャップ(例えば、室温でSiの1.12eV及びGaAsの1.42eV)及び/又は比較的小さな降伏電圧のために、より大きな電力及び/又は高周波用途に十分に適していないことがある。
【0003】
Si及びGaAsで起こる困難さを考慮して、高電力、高温及び/又は高周波用の用途及びデバイスに対する関心は、炭化ケイ素(室温で、アルファSiCの2.996eV)及びIII族窒化物(例えば、室温でGaNの3.36eV)のような広いバンドギャップの半導体材料の方に向いた。これらの材料は、一般に、ガリウム砒素及びシリコンに比べてより高い電界降伏強度及びより高い電子飽和速度を有する。
【0004】
高電力及び/又は高周波用途にとって特に関心のあるデバイスは、高電子移動度トランジスタ(High Electron Mobility Transistor;HEMT)であり、この高電子移動度トランジスタは、変調ドープ電界効果トランジスタ(MODFET)としても知られている。これらのデバイスはいくつかの環境の下で動作上の利点を示すことができる。その理由は、異なるバンドギャップエネルギーを有する2つの半導体材料のヘテロ接合で2次元電子ガス(2DEG)が形成され、そしてそこでバンドギャップの小さい方の材料がより高い電子親和力を有するからである。2DEGは、ドープされないバンドギャップの小さい方の材料中の蓄積層であり、例えば、1013キャリア/cmを超える非常に高い面積電子濃度を含むことができる。さらに、バンドギャップの広い方の半導体で生じた電子は2DEGに移動し、イオン化不純物散乱の減少によって高電子移動度を可能にする。
【0005】
高キャリア濃度と高キャリア移動度のこの組合せで、HEMTに非常に大きな相互コンダクタンスを与えることができ、さらに高周波用途に関して金属半導体電界効果トランジスタ(MESFET)に優る有力な性能上の利点を実現することができる。
【0006】
図3は、従来のHEMT構造を示す断面構成図である。HEMT構造40は、基板42とバッファ層44とGaNチャネル層46とAlGaN障壁層48とを備えている。AlGaN障壁層48にソースコンタクト45とドレインコンタクト49とゲートコンタクト47が設けられている。GaNチャネル層46は、格子テンプレートとして作用するので、AlGaN障壁層48は引張りで歪みんでいる。AlGaN障壁層48が厚くなるか又はアルミニウムのパーセント値が増すにつれて、AlGaN障壁層48がデバイスに与える歪みエネルギーは増加する傾向があり、これによって、ひび割れが生じることがある。したがって、AlGaN障壁層48の厚さは制限され、これによって、トランジスタ40のチャネル中の達成可能なキャリア密度が制限される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5,192,987号明細書
【特許文献2】米国特許第5,296,395号明細書
【特許文献3】米国特許第6,316,793号明細書
【特許文献4】米国特許第Re.34,861号明細書
【特許文献5】米国特許第4,946,547号明細書
【特許文献6】米国特許第5,200,022号明細書
【特許文献7】米国特許第6,218,680号明細書
【特許文献8】米国特許第5,210,051号明細書
【特許文献9】米国特許第5,393,993号明細書
【特許文献10】米国特許第5,523,589号明細書
【特許文献11】米国特許第5,292,501号明細書
【特許文献12】米国特許出願第09/904,333号明細書
【特許文献13】米国特許仮出願第60/290,195号明細書
【特許文献14】米国特許出願第10/102,272号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
窒化ガリウム/窒化アルミニウムガリウム(GaN/AlGaN)材料で製造された高電子移動度トランジスタは、前述の高降伏電界、広いバンドギャップ、大きな伝導帯オフセット、及び/又は高飽和電子ドリフト速度を含む材料特性の組合せのために、大量のRF電力を生成する可能性を有する。2DEG中の電子の大部分は、AlGaNの分極によると考えられている。GaN/AlGaN材料で製造されたHEMTは既に知られている。特許文献1及び特許文献2には、AlGaN/GaNのHEMT構造及び製造方法が記載されている。また、特許文献3には、半絶縁性炭化ケイ素基板と、この基板上の窒化アルミニウムバッファ層と、バッファ層上の絶縁性窒化ガリウムと、窒化ガリウム層上の窒化アルミニウムガリウム障壁層及び窒化アルミニウムガリウム能動構造上のパシベーション層とを有するHEMTデバイスが記載されている。
【0009】
窒化物をベースにしたHEMTの構成における1つの制限要素は、AlGaN障壁層のアルミニウム濃度及び厚さとすることができる。チャネル層中のキャリア濃度を増すために、又は最大限にするために、比較的高いアルミニウム含有率を有する比較的厚いAlGaN障壁層を有することが望ましい。上述したように、AlGaN障壁層は、2次元電子ガスのキャリアの供給源である。したがって、障壁層が厚いほど、チャネルにより多くのキャリアを供給することができる。その上、より高いアルミニウム組成のより厚いAlGaNで、より大きな圧電電界及びより多くの自然電荷を生成することができ、このことは、高キャリア濃度を有する2次元電子ガスの形成に寄与する。しかし、高アルミニウム含有率を有する厚いAlGaN層は、成長中か冷却後かどちらかで、ひびが入る傾向があり、これによってデバイスが破壊される。
【0010】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、窒化物をベースにしたへテロ接合トランジスタ及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の実施例は、基板及びこの基板上の第1のAlGaN層を含んだ窒化物をベースにしたヘテロ接合トランジスタを提供する。第1のAlGaN層は、関連した第1の歪み(strain)エネルギーを有する。GaN層は第1のAlGaN層上に設けられている。GaN層は、第1のAlGaN層のバンドギャップよりも小さなバンドギャップを有し、かつ関連した第2の歪みエネルギーを有する。第2の歪みエネルギーは、第1の歪みエネルギーの大きさ(magnitude)よりも大きな大きさを有する。第2のAlGaN層はGaN層上に設けられている。第2のAlGaN層は、GaN層のバンドギャップよりも大きなバンドギャップを有し、かつ関連した第3の歪みエネルギーを有する。第3の歪みエネルギーは、第2の歪みエネルギーと逆の歪みの型である。また、ソースコンタクトとドレインコンタクトとゲートコンタクトを第2のAlGaN層上に設けることができる。
【0012】
本発明の他の実施例では、AlN層は、GaN層上に設けられ、かつGaN層と第2のAlGaN層との間に配置されている。ある特定の実施例では、第1のAlGaN層は、AlN層とGaN層との短周期超格子である。そのような実施例において、短周期超格子のAlN層及びGaN層は、それぞれAlN層及びGaN層であることができる。第2のAlGaN層は、またAlGa1−xN層であることができ、ここで0<x≦1である。
【0013】
本発明のさらに他の実施例では、第1のAlGaN層は下部閉込め層(bottom confinement layer)であり、GaN層はチャネル層であり、さらに第2のAlGaN層は障壁層である。さらに他の実施例では、下部閉込め層は第1のアルミニウム濃度を有し、そして障壁層は第1のアルミニウム濃度と異なった第2のアルミニウム濃度を有する。第2のアルミニウム濃度は第1のアルミニウム濃度よりも高いことがある。
【0014】
本発明の他の実施例では、第2のAlGaN層は、GaN層との界面に2D電子ガスの形成を誘起するのに十分な大きさの厚さ及びアルミニウム濃度を有するが、ひび割れ又は欠陥形成が生じる厚さよりも薄い。本発明の特定の実施例では、第2のAlGaN層は、少なくとも約10nmの厚さを有する。
【0015】
本発明の他の実施例では、成長温度での第1のAlGaN層と、GaN層と、第2のAlGaN層の合計歪みエネルギーは、ほぼゼロである。
【0016】
本発明のさらに他の実施例では、第1のAlGaN層と、GaN層と、第2のAlGaN層は、「a」結晶格子方向で実質的に首尾一貫して歪んでいる。
【0017】
本発明の他の実施例では、基板と第1のAlGaN層の間にバッファ層が設けられる。バッファ層はAlN層であることができる。
【0018】
本発明の他の実施例では、GaN層は、第1のAlGaN層の直上に設けられている。第2のAlGaN層は、またGaN層の直上に設けられている。第1のAlGaN層は、グレーデッドAlGaN層であることができる。第1のAlGaN層は、AlGaN層であることができる。もしくは、第1のAlGaN層は、AlInGaN層であることができる。
【0019】
本発明のある特定の実施例では、第1のAlGaN層は、約10%よりも大きなアルミニウムのパーセント値を有する。第2のAlGaN層は、また、約20%よりも大きなアルミニウムのパーセント値を有することができる。第1のAlGaN層は、少なくとも約1000nmの厚さを有することができる。GaN層は、約30Åから約300Åまでの厚さを有することができる。もしくは、GaN層は、約500Åよりも大きな厚さを有することができる。さらに、ある特定の実施例では、基板は、炭化ケイ素基板、サファイア基板、AlN基板及び/又はシリコン基板であることができる。
【0020】
本発明のさらに他の実施例では、基板の上に実質的に歪みのないAlGaN層を形成し、この実質的に歪みのないAlGaN層上に圧縮歪みGaN層を形成し、さらに、この圧縮歪みGaN層上に引張歪みAlGaN層を形成することによる、窒化物をベースにしたヘテロ接合トランジスタの製造方法が提供される。引張歪みAlGaN層は、圧縮歪みGaN層上に所定の引張歪みを有して形成される。所定の引張歪みは、圧縮歪みGaN層と引張歪みAlGaN層の合計歪みエネルギーがほぼゼロであるように、引張歪みを与えることができる。また、引張歪みAlGaN層の厚さ、実質的に歪みのないAlGaN層の組成、及び/又は引張歪みAlGaN層のアルミニウム濃度を所定の引張歪みを与えるように調整して、所定の引張歪みを実現することができる。
【0021】
本発明の追加の実施例では、実質的に歪みのないAlGaN層は、基板上にAlGaN材料の3次元アイランドを形成し、さらに、AlGaN材料が3次元アイランドの間に合体して実質的に歪みのないAlGaN層を実現するようにAlGaN材料を成長することで形成される。実質的に歪みのないAlGaN層は、実質的に歪みのないAlGaN層であることができる。もしくは、実質的に歪みのないAlGaN層は、実質的に歪みのないAlInGaN層であることができる。引張歪みAlGaN層は、引張歪みAlGaN層であることができる。もしくは、引張歪みAlGaN層は、引張歪みAlInGaN層であることができる。さらに、引張歪みAlGaN層は、少なくとも10nmの厚さを有することができる。圧縮歪みGaN層は、約30Åから約300Åまでの厚さを有することができる。もしくは、圧縮歪みGaN層は、約500Åよりも大きな厚さを有することができる。
【0022】
本発明のさらに他の実施例では、実質的に歪みのないAlGaN層は、第1のアルミニウム濃度を有する実質的に歪みのないAlGaN層で形成され、さらに、引張歪みAlGaNをベースにした層は、第1のアルミニウム濃度と異なった第2のアルミニウム濃度を有する引張歪みAlGaN層で形成される。特定の実施例では、第2のアルミニウム濃度は第1のアルミニウム濃度よりも大きい。さらに、引張歪みAlGaN層は、圧縮歪みGaN層との界面に2D電子ガスの形成を誘起するのに十分な大きさの厚さ及びアルミニウム濃度を有するが、ひび割れ及び欠陥形成が生じる厚さより薄い。
【0023】
本発明の他の実施例では、窒化物をベースにしたヘテロ接合トランジスタは、AlGaN下部閉込め層と、下部閉込め層上のGaNチャネル層と、チャネル層上のAlGaN障壁層とを備えている。障壁層は、下部閉込め層よりも高いアルミニウム濃度を有する。チャネル層は、約30Åから約300Åまでの厚さを有することができる。障壁層は、少なくとも約10nmの厚さを有することができる。下部閉込め層は、例えば、炭化ケイ素基板、サファイア基板、AlN基板及び/又はシリコン基板上に設けることができる。炭化ケイ素基板と下部閉込め層の間にAlNバッファ層を設けることもできる。下部閉込め層は、また、グレーデッドAlGaN層であることができる。障壁層上にGaNコンタクト層を設けることができる。下部閉込め層及び障壁層は各々約10%よりも大きなアルミニウム濃度を有することができる。
本発明のさらに他の実施例では、基板及びこの基板上の第1のIII族窒化物層を有するIII族窒化物をベースにしたヘテロ接合トランジスタが提供され、この第1のIII族窒化物層は、関連した第1の歪みを有する。第1のIII族窒化物層上に第2のIII族窒化物層が設けられている。第2のIII族窒化物層は、第1のIII族窒化物層のバンドギャップよりも小さなバンドギャップを有し、かつ関連した第2の歪みを有する。第2の歪みは、第1の歪みの大きさよりも大きな大きさを有する。第1のIII族窒化物層の反対側の第2のIII族窒化物層上に第3のIII族窒化物層が設けられている。第3のIII族窒化物層は、第2のIII族窒化物層のバンドギャップよりも大きなバンドギャップを有し、かつ第2の歪みと逆の歪みの型である関連した第3の歪みを有する。本発明の追加の実施例では、第1のIII族窒化物層は、AlGa1−xN層であり、ここで0<x≦1である。第2のIII族窒化物層は、GaN層であることができる。第3のIII族窒化物層は、AlN層であることができる。そして、そのようなヘテロ接合トランジスタの製造方法も提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明のヘテロ接合トランジスタの一実施例を説明するための断面構成図である。
【図2】本発明の実施例のバンドエネルギーを示す図である。
【図3】従来のHEMT構造を示す図である。
【図4】本発明のヘテロ接合トランジスタの他の実施例を説明するための断面構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明の実施の態様について説明する。
なお、本発明は、多くの変更例を伴うもので、以下に説明する実施例に限定されるものではない。また、全体を通して同じ機能を有する構成要素については同一の符号を付してある。また、図に示す様々な層及び領域は模式的に図示したもので、図に示される相対的な大きさ及び間隔に限定されるものではない。さらに、基板又は他の層の「上」に形成された層とは、基板又は他の層の直上に形成された層、あるいは基板又は他の層上に形成された1つ又は複数の介在層の直上に形成された層のことを言う。
【0026】
図1は、本発明のヘテロ接合トランジスタの一実施例を説明するための断面構成図で、高電子移動度トランジスタ(HEMT)を模式的に示した図である。高電子移動度トランジスタ10は、半絶縁性炭化ケイ素(SiC)基板12を備え、この炭化ケイ素基板12は、例えば、4Hポリタイプの炭化ケイ素で構成されている。他の炭化ケイ素候補のポリタイプには、3C、6H、及び15Rポリタイプがある。「半絶縁性」と言う用語は、絶対的な意味ではなくて記述的に使用される。本発明の特定の実施例では、炭化ケイ素バルク結晶は、室温で1×10Ω‐cm以上の抵抗率を有する。
【0027】
随意の窒化アルミニウムバッファ層14は、基板12上に設けられ、炭化ケイ素基板とデバイスの残りのものとの間に適切な結晶構造の遷移を実現する。炭化ケイ素は、サファイア(Al)よりもIII族窒化物に対して遥かに近い結晶格子整合を有する。サファイアは、III族窒化物デバイス用の非常に一般的な基板材料である。より近い格子整合によって、一般にサファイア上に得られるものよりも高品質なIII族窒化物膜が結果として得られる。また、炭化ケイ素は、非常に高い熱伝導度を有するので、炭化ケイ素上のIII族窒化物デバイスの全出力電力は、一般に、同じデバイスがサファイア上に形成された場合ほどには基板の熱放散で制限されない。また、半絶縁性炭化ケイ素基板を使用できることで、デバイスの分離及び寄生キャパシタンスの低減が可能になることがある。
【0028】
炭化ケイ素は、好ましい基板材料であるが、本発明の実施例は、サファイア、窒化アルミニウム、窒化アルミニウムガリウム、窒化ガリウム、シリコン、GaAs、LGO、ZnO、LAO、InPなどのような任意の適切な基板を使用することができる。いくつかの実施例では、適切なバッファ層も形成することができる。
【0029】
本明細書で使用されるときに、「III族窒化物」という用語は、窒素と周期律表のIII族の元素、すなわち、通常アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、及び/又はインジウム(In)との間に形成されたそれらの半導体化合物のことを言う。また、この用語は、AlGaN及びAlInGaNのような三元及び四元化合物も意味する。また、III族元素は、窒素と結合して、二元化合物(例えば、GaN)、三元化合物(例えば、AlGaN、AlInN)、及び四元化合物(例えば、AlInGaN)を形成することができる。これらの化合物はすべて、1モルの窒素が合計で1モルのIII族元素と結合する実験式を有する。したがって、AlGa1−xN(ここで、0≦x≦1)のような式が、しばしば、これらの化合物を記述するために使用される。
【0030】
適切なSiC基板は、例えば、特許文献4〜7に記載されている。これらの特許文献の内容は、全体を参照して本明細書に組み込まれる。同様に、III族窒化物のエピタキシャル成長技術は、例えば、特許文献8〜11に記載されており、これらの特許文献の内容もまた全体を参照して本明細書に組み込まれる。GaNをベースにしたHEMTの適切な構造は、例えば、特許文献3、特許文献12、特許文献13、特許文献14に記載されている。このようにして、これらの開示は、全体を参照して本明細書に組み込まれる。
【0031】
図1に戻って、トランジスタ10は、下部閉込め層16とチャネル層18を備えている。下部閉込め層16は、チャネル層18のバンドギャップよりも大きなバンドギャップを有する。本発明のある特定の実施例では、下部閉込め層16はチャネル層18の歪みエネルギーよりも実質的に低い歪みエネルギーを有し、実質的に緩和していることがある(すなわち、実質的に歪みが無い)。例えば、下部閉込め層は、約0である歪みを有することができ、又はチャネル層18の歪みの約0から約100%の歪みを有することができる。本発明のある特定の実施例では、下部閉込め層16は、約1GPa未満の応力を有する。本発明のいくつかの実施例では、下部閉込め層16は、AlGaN又はAlInGaNのようなIII族窒化物を含むことがあり、AlGaN及びAlInGaNは、Si及びMgのようなドーパントを実質的に含まないことがある。下部閉込め層16は、少なくとも約1000nmの厚さとすることができるが、ひび割れ又は欠陥形成を生じるほどには厚くない。下部閉込め層16は半絶縁性とすることができる。ある特定の実施例では、下部閉込め層16は、約1%から100%の間の、好ましくは、10%より大きな実質的に一様なアルミニウム濃度を有するAlGaNである。もしくは、下部閉込め層16は、チャネル層18の格子定数により適切に整合するように、増加、減少及び/又は増減するアルミニウム濃度とともに徐々に変化することがある。下部閉込め層16は、また、交互になるAlNとGaNの層の短周期超格子とすることができる。また、AlGaN層の用語は、AlNとGaN及び/又はAlGaN、及びAlN及び/又はGaNの超格子を意味することができる。
【0032】
基板12又はバッファ層14の上に3次元アイランドを形成し、AlGaN材料がアイランド間に合体するように下部閉込め層16を成長させることによって、下部閉込め層16を実質的に緩和した層として製造することができる。そのような成長で、実質的に緩和しかつ下に存在する基板の格子定数を呈しないAlGaN層を実現することができる。より大きなアイランドを形成することは、引張歪みを減少する点で有利となることがある。
【0033】
例えば、本発明のある特定の実施例では、半絶縁性AlN層が、核形成/バッファ層として半絶縁性SiC基板の上に高温(>1000℃)で堆積される。次に、半絶縁性AlGa1−xN層(x≒0.1〜0.2)がALN層上に高温(>1000℃)で堆積される。成長条件(温度、圧力、V/III比、成長速度、厚さ、その他のような)は、AlGaNがAlN層に対して首尾一貫してひずんでいないことを保証するように調整される。好ましくは、AlGaNは、最初に、比較的小さな核密度(<10cm−2)の3次元モードで成長を始める。詳細な成長条件は、反応炉の形状寸法に依存して異なることがあるので、これらの特性を有するAlGaNを達成するように状況に応じて調整することができる。
【0034】
さらに他の実施例では、AlGa1−xN層は、成長中の組成xの減少とともに徐々に変化する。さらに、AlGaNが上述のように実質的に緩和された方法でSiC基板の直ぐ上に成長されるように、AlN層なしで、層を成長することができる。
【0035】
随意のバッファ層14に加えて、1つ又は複数の随意の介在層(図示しない)に接して又はその上方に下部閉込め層16を形成することができる。そのような場合、介在層が構造全体に与える歪みエネルギーを以下に説明する。
【0036】
本発明のいくつかの実施例では、チャネル層18のバンドギャップが下部閉込め層16のバンドギャップよりも小さいという条件で、チャネル層18はAlGa1−xN(ここで、0≦x<1)のようなIII族窒化物である。本発明のある特定の実施例では、x=0であり、チャネル層18がGaNであることを示す。チャネル層18はドープされないことがあるし、また約30から約300Åの厚さに成長することがある。したがって、チャネル層18は従来のGaNのHEMTデバイスのチャネル層よりも薄いことがある。従来のGaNのHEMTデバイスのチャネル層は、一般に厚さが500Åよりも大きい。下部閉込め層16で実現される閉じ込めのために、GaN層中へのキャリアの「テーリング(tailing)」はより小さいことがある。したがって、結果として得られるデバイスは、従来技術のデバイスよりも優れた直線性を示すことができる。もしくは、歪み制御が考慮すべきことであり、閉じ込めの追加がそんなに考慮すべきことでない場合には、GaNチャネル層18を500Åよりも厚く成長することができ、さらに、下部閉込め層16のアルミニウムのパーセント値を減らすことができる。
【0037】
さらに、下部閉込め層16とチャネル層18の間の界面はn型にドープすることができる。例えば、チャネル層に近接した下部閉込め層16の部分は、約3×1012cm−2にドープすることができる。界面のそのようなドーピングは、界面の正電荷の効果を打ち消すことができる。チャネル層18又は下部閉込め層16に近接したチャネル層18の部分は、n型にドープすることができる。
【0038】
障壁層20はチャネル層18上に設けられる。下部閉込め層16と同じように、障壁層20はIII族窒化物であることができ、チャネル層18のバンドギャップよりも大きなバンドギャップを有し、さらに、以下で説明するように引張りでひずんでいることがある。したがって、障壁層20はAlGaN、AlInGaN及び/又はAlNであることができる。障壁層20は、少なくとも約10nmの厚さであることができるが、ひび割れ又は欠陥形成が生じほどには厚くない。好ましくは、障壁層20はドープされていないか、又は約1019cm−3より少ない濃度でドープされている。本発明のいくつかの実施例では、障壁層20はAlGa1−xNである。ここで、0<x≦1。本発明のある特定の実施例では、障壁層20は、約5%から約100%のアルミニウム濃度を有するAlGaNを含んでいる。本発明の特定の実施例では、アルミニウム濃度は約10%よりも大きい。さらに、障壁層20のアルミニウム濃度は、下部閉込め層16のアルミニウム濃度よりも大きいことがある。
【0039】
障壁層については、特許文献14に記載されているように、多層で設けることができる。この特許文献14による開示は、本明細書に組み込まれる。したがって、本発明の実施例は、障壁層を単一層に制限するものとして解釈すべきでなく、例えば、GaN層、AlGaN層及び/又はAlN層の組合せを有する障壁層を含むことができる。例えば、GaN、AlN構造を使用して、合金散乱の原因になることがあるコンタクト材料によるGaN層の汚染を減らすか又は防止することができる。
【0040】
図4は、本発明の本発明のヘテロ接合トランジスタの他の実施例を説明するための断面構成図である。ここで、AlN窒化物障壁層20’は、GaNをベース層18上に設けられており、さらにAlGa1−xN層22はAlN障壁層20’上に設けられている。ここで、0≦x≦1。つまり、AlN障壁層20’は、GaNをベース層18上に設けられ、かつGaN層18とAlGaN層22の間に配置されている。
【0041】
随意のGaNコンタクト層又はキャップ層(図示しない)を障壁層20上に設けて、トランジスタ10のコンタクトの形成を容易にすることができる。そのようなキャップ層の例は、特許文献12に開示されている。その上、障壁層20とコンタクト層又はキャップ層の間に組成漸変遷移層(図示しない)があることができる。ソースコンタクト35とドレインコンタクト37とびゲートコンタクト36は、特許文献3に記載されているように製造することができる。
【0042】
図2は、本発明の実施例のバンドエネルギーを示す図で、高さ(x)に対してトランジスタの伝導帯Eを示している。結晶格子にアルミニウムが存在するために、AlGaNはGaNよりも広いバンドギャップを有する。このようにして、チャネル層18と障壁層20の間の界面に、障壁層20の伝導帯E及び価電子帯Eが片寄っているヘテロ構造が形成される。圧電効果及び自然ドーピングのためにキャリアが誘起される。障壁層20に直ぐ隣接したチャネル層18の領域で、伝導帯EはフェルミレベルEの下にもぐっている。その結果、2次元電子ガス(2DEG)の面積電荷領域15が、チャネル層16と障壁層20の間のヘテロ接合に誘起され、一方で、層20は伝導帯の形のために可動キャリアが枯渇している。しかし、バンドギャップ構成及び圧電電荷の配列のために、チャネル層18と下部閉込め層16の間の界面に同様な面積電荷領域は誘起されない。その代わりに、下部閉込め層16は可動キャリアをチャネル層18に閉じ込めるように働き、それによって、チャネル層18のキャリア濃度が増す。さらに、下部閉込め層16及び/又はチャネル層18の一部をドーピングすることで、下部閉込め層16とチャネル層18の間の界面の電荷を減少させることができ、それによって、下部閉込め層16とチャネル層18の間の界面に生じることがある2DHG(2D正孔ガス)領域が減少するか又は無くなる。
【0043】
2DEG面積電荷領域15の電子は高いキャリア移動度を示す。この領域の伝導度は、ゲート電極36に電圧を加えることで変化する。逆電圧を加えたとき、伝導層15の近傍の伝導帯はフェルミレベルより上に持ち上げられ、伝導層15の一部はキャリアが枯渇し、それによって、ソース35からドレイン37への電流の流れが妨げられる。
【0044】
上述したように、従来のHEMT構造の1つの欠点は、AlGaN障壁層が特定のクリティカルな厚さ(この厚さは、一般に、デバイスの形状寸法、層構造、成長条件及び他の要素に依存する)を超えて成長されたとき、AlGaN障壁層にひびが入ることである。2DEG領域15のキャリア密度を増加させ又は最大限にするために、厚くて高アルミニウム組成のAlGaN障壁を有することが望ましい。障壁層のひび割れの1つの原因は、構造中の蓄積された歪みエネルギーである。結果的に、本発明の実施例は、デバイス中の様々な層がもたらす歪みエネルギー成分を釣り合わせることで、デバイスの全体的な歪みエネルギーを減少させることができる。
【0045】
半導体結晶構造では、一般に、2つの異なる材料が互いに隣接している場合、歪み効果が存在する。その結果として、エピタキシャル層の好ましい厚さは、デバイスの他の性能パラメータに適切であるがクリティカルな厚さよりも薄い厚さである。このクリティカルな厚さは、一般に、転位又はひび割れが広がり始める前に層がひずんだやり方で成長することができる最大厚さである。
【0046】
2つの層の間の歪み(「ε」)は、2つの層の間の結晶格子パラメータの差(Δa)をその2つの層のうちの1つの格子パラメータで割ったものとして表されることが多い。この歪み値が大きいほど、その2つの材料の間で成長させることができる層は薄くなる。さらに、図1に示すような多層構造では、全体的な歪みエネルギー(「Σ」)は、個々の層の歪みの関数すなわち合計であり、「実効歪み」と呼ばれる。全体的な歪みエネルギー、すなわち、合計歪みエネルギーは、歪み値の一次結合か、又は歪みエネルギーの重みつき結合とすることができる。例えば、合計歪みエネルギーは、歪み値の2乗の重みつき和とすることができる。したがって、合計歪みエネルギーは
【0047】
【数1】


に比例することがある。ここで、tは層iの厚さである。
【0048】
歪みは、一般に、2つのモードすなわち引張モード又は圧縮モードのうちの1つとして説明される。結晶格子の圧縮歪みは、結晶格子が通常よりも小さなスペースに圧縮されていることを示し、一方で、引張モードは、結晶格子が通常よりも大きなスペースに引き伸ばされていることを示す。結晶格子は、格子結合が壊れ始めそしてひび割れが結晶に表れる前に、圧縮か引張りかどちらかの、ある特定の量の歪みに耐えることができるに過ぎない。
【0049】
本発明のいくつかの実施例では、下部閉込め層16は、チャネル層18及び障壁層20がデバイスに与える歪みを限定するように、緩和した又はほぼ緩和したテンプレート(template)として作用する。つまり、下部閉込め層16はほぼ緩和されている。したがって、トランジスタ10の後のエピタキシャル層は、下部閉込め層16の格子定数を受け継ぎ、したがって、エピタキシャル層の格子定数が下部閉込め層16の格子定数と異なる程度に「疑似形態論的にひずんで」いる。チャネル層18は圧縮で歪み、一方で、障壁層20は引張りでひずんでいる。このことは、デバイス中の平均歪み、すなわち実効的な歪みを釣り合せる傾向がある。
【0050】
さらに、障壁層20とチャネル層18の特定の引張歪み及び/又は圧縮歪みは、例えば、それぞれの層のアルミニウム濃度を制御することで制御できる。
【0051】
上述したように、下部閉込め層16とチャネル層18と障壁層20の格子定数は、「a」方向(すなわち、図1のページを横切る水平方向)では実質的に同じである。しかし、「c」方向(すなわち、垂直方向すなわち厚さ又は成長方向)では、格子定数が異なる。したがって、チャネル層18及び障壁層20に歪みが誘起される。特に、チャネル層18のひずんでいない「a」格子定数は、下部閉込め層16の格子定数よりも大きく、したがって、チャネル層18に圧縮歪みが誘起される。その理由は、チャネル層18は、それが成長されたより小さな格子定数の下部閉込め層16と同じになろうとするからである。同様に、チャネル層18の歪みのない「a」格子定数はまた障壁層20の格子定数よりも大きく、したがって、引張歪みが障壁層20に誘起される。その理由は、障壁層20は、それが成長されたより大きな格子定数のチャネル層18と同じになろうとするからである。図1に示す実施例は特定の成長方向に関して説明したが、本発明はそのような実施例に制限されるように解釈すべきでなく、すべてが同じ歪んだ面内格子定数を有するように首尾一貫して歪んだ層に適用することができる。
【0052】
本発明のある特定の実施例では、トランジスタ10の合計歪みエネルギーはゼロにほぼ等しい。上述したように、合計歪みエネルギーは、歪みエネルギーの加重平均、重みつけのない平均、二乗和又は他のそのような結合とすることができる。さらに、合計歪みエネルギーは室温で決定することができる。いくつかの実施例では、室温での合計歪みエネルギーがほぼゼロであるように、成長温度でゼロでない大きさの合計歪みエネルギーを与えることができる。したがって、ある一定の量の歪みに対してそうでない場合に可能であるよりも大きな厚さに、障壁層20を成長することができる。ここで使用されるように、いくつかの実施例では、「ほぼゼロ」の合計歪みエネルギーという用語は、約0.1%の格子不整合を有する対応する2層構造よりも少ない合計歪みエネルギーを意味し、一方、他の実施例では、「ほぼゼロ」は約1%の格子不整合を有する対応する2層構造よりも少ない合計歪みエネルギーを意味することができる。
【0053】
本発明の特定の実施例では、下部閉込め層16はAlGa1−xNであることができ、チャネル層18は、tGaNの厚さのGaN層であることができ、さらに障壁層20はtの厚さを有するAlGa1−yNであることができる。そのような実施例で、x、yの値及び厚さtGaN及びtは、歪みの一次重みつけの場合、次の式を満たすことができる。
【0054】
【数2】


又は、歪みの二乗の重み付けの場合、
【0055】
【数3】


したがって、例えば、そのような実施例で、障壁層20及びチャネル層18が同じ厚さを有する場合、xは約1/2yとなることがある。
【0056】
例えば、2枚のSiCウェハを使用して、2つの異なる下の層、すなわち、AlGa1−xN層(x≒0.1〜0.2)を含む本発明の1つと従来のGaN層を使用するもう1つ、を成長した。これらの両方の層の上に、GaNを堆積し、続いて25nmの厚さを有する高アルミニウムAlGa1‐xN層(x>0.4)を堆積した。GaN層上に成長した層では、ほんの≒1μm程度のひび割れ間隔でAlGaN層にひびが入り、面積抵抗率の測定が妨げられた。AlGaN上に成長した層では、AlGaN層にひびが入らず、面積抵抗率はほんの300Ω/□であった。このことは、上のAlGaN層の引張応力を、ひび割れを起こさないように効果的減少させることができることを示している。
【0057】
本発明のある特定の実施例と異なって、従来技術のHEMT構造は、デバイスの下の層として厚い緩和GaN層を使用し、このとき、このGaN層がデバイスの残りの層にとって格子テンプレートとして作用する。そのようなデバイスにおいて、厚くて高アルミニウムパーセント値のAlGaN障壁層を成長すると、余りにも大きな歪みエネルギーを構造に与える傾向があり、これによって、最終的に、望ましくないひび割れが発生するようになることがある。
【0058】
上述した図3に示した従来のHEMT構造40は、基板42とバッファ層44とGaNチャネル層46とAlGaN障壁層48からなり、AlGaN障壁層48にソースコンタクト45とドレインコンタクト49とゲートコンタクト47が設けられている。GaNチャネル層46は格子テンプレートとして作用するので、AlGaN障壁層48は引張りでひずんでいる。AlGaN障壁層48が厚くなるか又はアルミニウムのパーセント値が増すにつれて、AlGaN障壁層48がデバイスに与える歪みエネルギーは増加する傾向があり、これによって、上述したようにひび割れが生じることがある。したがって、AlGaN障壁層48の厚さは制限され、これによって、トランジスタ40のチャネル中の達成可能なキャリア密度が制限される。
【0059】
図1に示したトランジスタ10のように、歪み制御技術を使用することによって、デバイスの層がエピタキシャルで堆積されているときに構造の合計歪みエネルギーが結晶構造にひび割れを発生させることがあるクリティカルなレベルを決して超えないように、トランジスタ10は構成されている。したがって、GaNチャネル層18の歪みは、AlGaN障壁層20の歪みの型と反対の型であり、その結果、歪みは互いに実質的に相殺し、そして実質的に歪みの釣り合ったデバイスが実現され、歪みは、デバイスに損傷が生じるクリティカルな閾値より低く保たれる。デバイスの結果として得られる合計歪みエネルギーは、圧縮又は引張りとすることができる。
【0060】
以上、図面及び明細書で本発明の好ましい実施例を開示した。そして、特有の用語が使用されているが、この用語は一般的な記述的な意味でのみ使用され、限定する目的で使用されたものではない。また、本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲で明らかにされる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化物をベースにしたヘテロ接合トランジスタであって、
基板と、
該基板上に設けられ、第1の歪みを有する第1のAlGaN層と、
該第1のAlGaN層上に設けられ、該第1のAlGaN層のバンドギャップよりも小さなバンドギャップを有し、かつ前記第1の歪みの大きさよりも大きい大きさの第2の歪みを有するGaN層と、
前記第1のAlGaN層の反対側で、前記GaN層上に設けられ、該GaN層のバンドギャップよりも大きなバンドギャップを有し、かつ前記第2の歪みと逆の歪みの型である第3の歪みを有する第2のAlGaN層と
を備えたことを特徴とするヘテロ接合トランジスタ。
【請求項2】
前記第2のAlGaN層上に、ソースコンタクトとドレインコンタクトとゲートコンタクトとを備えたことを特徴とする請求項1に記載のヘテロ接合トランジスタ。
【請求項3】
前記GaN層上に、該GaN層と前記第2のAlGaN層の間に配置されたAlN層を備えたことを特徴とする請求項1に記載のヘテロ接合トランジスタ。
【請求項4】
前記第1のAlGaN層は、AlN層とGaN層の短い周期の超格子を備えたことを特徴とする請求項1に記載のヘテロ接合トランジスタ。
【請求項5】
前記短い周期の超格子の前記AlN層及び前記GaN層は、それぞれAlN層及びGaN層を備えたことを特徴とする請求項4に記載のヘテロ接合トランジスタ。
【請求項6】
前記第2のAlGaN層は、AlGa1−xN層を備え、0<x≦1であることを特徴とする請求項1に記載のヘテロ接合トランジスタ。
【請求項7】
前記第1のAlGaN層は下部閉込め層を備え、前記GaN層はチャネル層を備え、前記第2のAlGaN層は障壁層を備えたことを特徴とする請求項1に記載のヘテロ接合トランジスタ。
【請求項8】
前記下部閉込め層は第1のアルミニウム濃度を有し、前記障壁層は前記第1のアルミニウム濃度と異なった第2のアルミニウム濃度を有することを特徴とする請求項7に記載のヘテロ接合トランジスタ。
【請求項9】
前記第2のアルミニウム濃度は、前記第1のアルミニウム濃度よりも大きいことを特徴とする請求項8に記載のヘテロ接合トランジスタ。
【請求項10】
前記第2のAlGaN層は、前記GaN層との界面に2D電子ガスの形成を誘起するのに十分な大きさの厚さ及びアルミニウム濃度を有し、ひび割れ及び欠陥形成が生じる厚さよりも薄いことを特徴とする請求項1に記載のヘテロ接合トランジスタ。
【請求項11】
前記第2のAlGaN層は、少なくとも約10nmの厚さを有することを特徴とする請求項1に記載のヘテロ接合トランジスタ。
【請求項12】
前記第1のAlGaN層と前記GaN層と前記第2のAlGaN層の合計歪みエネルギーは、ほぼゼロであることを特徴とする請求項1に記載のヘテロ接合トランジスタ。
【請求項13】
前記合計歪みエネルギーは、前記へテロ接合トランジスタの層の歪みの重み付け和であることを特徴とする請求項12に記載のヘテロ接合トランジスタ。
【請求項14】
室温における前記第1のAlGaN層と前記GaN層と前記第2のAlGaN層の合計歪みエネルギーは、ほぼゼロであることを特徴とする請求項1に記載のヘテロ接合トランジスタ。
【請求項15】
前記合計歪みエネルギーの大きさは、成長温度でほぼゼロよりも大きいことを特徴とする請求項14に記載のヘテロ接合トランジスタ。
【請求項16】
前記第1のAlGaN層と前記GaN層と前記第2のAlGaN層は、すべてが同じ歪んだ面内格子定数を有するように首尾一貫して歪んでいることを特徴とする請求項1に記載のヘテロ接合トランジスタ。
【請求項17】
前記基板と前記第1のAlGaN層の間にバッファ層を備えたことを特徴とする請求項1に記載のヘテロ接合トランジスタ。
【請求項18】
前記バッファ層は、AlN層を備えたことを特徴とする請求項17に記載のヘテロ接合トランジスタ。
【請求項19】
前記GaN層は、前記第1のAlGaN層の直上に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のヘテロ接合トランジスタ。
【請求項20】
前記第2のAlGaN層は、前記GaN層の直上に設けられていることを特徴とする請求項19に記載のヘテロ接合トランジスタ。
【請求項21】
前記第1のAlGaN層は、グレーデットAlGaNをベースにした層であることを特徴とする請求項1に記載のヘテロ接合トランジスタ。
【請求項22】
前記第1のAlGaN層は、AlGaN層であることを特徴とする請求項1に記載のヘテロ接合トランジスタ。
【請求項23】
前記第1のAlGaN層は、AlInGaN層であることを特徴とする請求項1に記載のヘテロ接合トランジスタ。
【請求項24】
前記第1のAlGaN層は、約10%よりも大きなアルミニウムのパーセント値を有することを特徴とする請求項1に記載のヘテロ接合トランジスタ。
【請求項25】
前記第2のAlGaN層は、約20%よりも大きなアルミニウムのパーセント値を有することを特徴とする請求項1に記載のヘテロ接合トランジスタ。
【請求項26】
前記第1のAlGaN層は、少なくとも約1000nmの厚さを有することを特徴とする請求項1に記載のヘテロ接合トランジスタ。
【請求項27】
前記GaN層は、約30Åから約300Åまでの厚さを有することを特徴とする請求項1に記載のヘテロ接合トランジスタ。
【請求項28】
前記GaN層は、約500Åよりも大きな厚さを有することを特徴とする請求項1に記載のヘテロ接合トランジスタ。
【請求項29】
前記基板は、炭化ケイ素基板を備えたことを特徴とする請求項1に記載のヘテロ接合トランジスタ。
【請求項30】
窒化物をベースにしたヘテロ接合トランジスタの製造方法であって、
実質的に歪みのないAlGaN層を基板上に形成するステップと、
前記実質的に歪みのないAlGaN層上に圧縮歪みGaN層を形成するステップと、
前記圧縮歪みGaN層上に引張歪みAlGaN層を形成するステップと
を有することを特徴とするヘテロ接合トランジスタの製造方法。
【請求項31】
前記引張歪みAlGaN層を形成するステップは、前記圧縮歪みGaN層上に所定の引張歪みを有する引張歪みAlGaN層を形成するステップを有し、前記所定の引張歪みは、前記圧縮歪みGaN層と前記引張歪みAlGaN層の合計歪みエネルギーがほぼゼロであるように、引張歪みを与えることを特徴とする請求項30に記載のヘテロ接合トランジスタの製造方法。
【請求項32】
前記引張歪みAlGaN層の厚さ、前記実質的に歪みのないAlGaN層の組成、及び/又は前記引張歪みAlGaN層のアルミニウム濃度の少なくとも1つを、前記所定の引張歪みを与えるように調整して、前記所定の引張歪みは与えられることを特徴とする請求項31に記載のヘテロ接合トランジスタの製造方法。
【請求項33】
前記合計歪みエネルギーは、歪みエネルギーの一次合計であることを特徴とする請求項31に記載のヘテロ接合トランジスタの製造方法。
【請求項34】
前記合計歪みエネルギーは、歪みエネルギーの重み付け合計であることを特徴とする請求項31に記載のヘテロ接合トランジスタの製造方法。
【請求項35】
前記合計歪みエネルギーは、前記歪みエネルギーの二乗の重み付け和であることを特徴とする請求項31に記載のヘテロ接合トランジスタの製造方法。
【請求項36】
前記実質的に歪みのないAlGaN層を形成するステップは、
前記基板上にAlGaN材料の3次元アイランドを形成するステップと、
前記AlGaN材料が前記3次元アイランドの間に合体して前記実質的に歪みのないAlGaN層を形成するように前記AlGaN材料を成長するステップと
を有することを特徴とする請求項30に記載のヘテロ接合トランジスタの製造方法。
【請求項37】
前記実質的に歪みのないAlGaN層を形成するステップは、実質的に歪みのないAlGaN層を形成することを特徴とする請求項30に記載のヘテロ接合トランジスタの製造方法。
【請求項38】
前記実質的に歪みのないAlGaN層を形成するステップは、AlN層とGaN層との実質的に歪みのない短周期超格子を形成することを特徴とする請求項30に記載のヘテロ接合トランジスタの製造方法。
【請求項39】
前記実質的に歪みのないAlGaN層を形成するステップは、AlN層とGaN層の実質的に歪みのない短周期超格子を形成することを特徴とする請求項30に記載のヘテロ接合トランジスタの製造方法。
【請求項40】
前記実質的に歪みのないAlGaN層を形成するステップは、実質的に歪みのないAlInGaN層を形成することを特徴とする請求項30に記載のヘテロ接合トランジスタの製造方法。
【請求項41】
前記GaN層上に、該GaN層と前記引張歪みAlGaN層との間に配置された引張歪みAlN層を形成するステップを有することを特徴とする請求項30に記載のヘテロ接合トランジスタの製造方法。
【請求項42】
前記引張歪みAlGaN層を形成するステップは、引張歪みAlGaN層を形成することを特徴とする請求項30に記載のヘテロ接合トランジスタの製造方法。
【請求項43】
前記引張歪みAlGaN層を形成するステップは、引張歪みAlInGaN層を形成することを特徴とする請求項30に記載のヘテロ接合トランジスタの製造方法。
【請求項44】
前記引張歪みAlGaN層を形成するステップは、少なくとも10nmの厚さを有する引張歪みAlGaN層を形成することを特徴とする請求項30に記載のヘテロ接合トランジスタの製造方法。
【請求項45】
前記圧縮歪みGaN層を形成するステップは、約30Åから約300Åまでの厚さを有する圧縮歪みGaN層を形成することを特徴とする請求項30に記載のヘテロ接合トランジスタの製造方法。
【請求項46】
前記圧縮歪みGaN層を形成するステップは、約500Åよりも大きな厚さを有する圧縮歪みGaN層を形成することを特徴とする請求項30に記載のヘテロ接合トランジスタの製造方法。
【請求項47】
前記実質的に歪みのないAlGaN層を形成するステップは、第1のアルミニウム濃度を有する実質的に歪みのないAlGaN層を形成し、前記引張歪みAlGaN層を形成するステップは、前記第1のアルミニウム濃度と異なった第2のアルミニウム濃度を有する引張歪みAlGaN層を形成することを特徴とする請求項30に記載のヘテロ接合トランジスタの製造方法。
【請求項48】
前記第2のアルミニウム濃度は、前記第1のアルミニウム濃度よりも大きいことを特徴とする請求項47に記載のヘテロ接合トランジスタの製造方法。
【請求項49】
前記引張歪みAlGaN層を形成するステップは、前記圧縮歪みGaN層との界面に2D電子ガスの形成を誘起するのに十分な大きさの厚さ及びアルミニウム濃度を有し、ひび割れ及び欠陥形成が生じる厚さよりも薄い引張歪みAlGaN層を形成することを特徴とする請求項30に記載のヘテロ接合トランジスタの製造方法。
【請求項50】
窒化物をベースにしたヘテロ接合トランジスタであって、
AlGaN下部閉込め層と、
該下部閉込め層上に設けられたGaNチャネル層と、
前記下部閉込め層の反対側で、前記チャネル層上に設けられたAlGaN障壁層と
を備え、該障壁層は、前記下部閉込め層よりも高いアルミニウム濃度を有することを特徴とするヘテロ接合トランジスタ。
【請求項51】
前記チャネル層は、約30Åから約300Åまでの厚さを有することを特徴とする請求項50に記載のヘテロ接合トランジスタ。
【請求項52】
前記障壁層は、少なくとも約10nmの厚さを有することを特徴とする請求項50に記載のヘテロ接合トランジスタ。
【請求項53】
前記下部閉込め層は、炭化ケイ素基板であることを特徴とする請求項50に記載のヘテロ接合トランジスタ。
【請求項54】
前記炭化ケイ素基板と前記下部閉込め層の間にAlNバッファ層を備えたことを特徴とする請求項53に記載のヘテロ接合トランジスタ。
【請求項55】
前記下部閉込め層は、グレーデットAlGaN層であることを特徴とする請求項50に記載のヘテロ接合トランジスタ。
【請求項56】
前記障壁層上にGaNコンタクト層を備えたことを特徴とする請求項50に記載のヘテロ接合トランジスタ。
【請求項57】
前記下部閉込め層は、約10%よりも大きなアルミニウム濃度を有することを特徴とする請求項50に記載のヘテロ接合トランジスタ。
【請求項58】
前記障壁層は、約20%よりも大きなアルミニウム濃度を有することを特徴とする請求項50に記載のヘテロ接合トランジスタ。
【請求項59】
前記GaN層上に、前記GaNチャネル層と前記AlGaN障壁層の間に配置されたAlN層を備えたことを特徴とする請求項50に記載のヘテロ接合トランジスタ。
【請求項60】
窒化物をベースにしたヘテロ接合トランジスタの製造方法であって、
基板上にAlGaN下部閉込め層を形成するステップと、
該下部閉込め層上にGaNチャネル層を形成するステップと、
該チャネル層上にAlGaN障壁層を形成するステップと
を有し、前記障壁層は、前記下部閉込め層よりも高いアルミニウム濃度を有することを特徴とするヘテロ接合トランジスタの製造方法。
【請求項61】
前記チャネル層は、約30Åから約300Åまでの厚さに形成されることを特徴とする請求項60に記載のヘテロ接合トランジスタの製造方法。
【請求項62】
前記障壁層は、少なくとも約10nmの厚さに形成されることを特徴とする請求項60に記載のヘテロ接合トランジスタの製造方法。
【請求項63】
前記AlGaN下部閉込め層を形成するステップは、炭化ケイ素基板上にAlGaN下部閉込め層を形成することを特徴とする請求項60に記載のヘテロ接合トランジスタの製造方法。
【請求項64】
前記炭化ケイ素基板上にAlNバッファ層を形成し、前記AlGaN下部閉込め層を形成するステップは、前記バッファ層上にAlGaN下部閉込め層を形成することを特徴とする請求項63に記載のヘテロ接合トランジスタの製造方法。
【請求項65】
前記AlGaN下部閉込め層を形成するステップは、グレーデットAlGaN層を形成することを特徴とする請求項60に記載のヘテロ接合トランジスタの製造方法。
【請求項66】
前記障壁層上にGaNコンタクト層を形成することを特徴とする請求項60に記載のヘテロ接合トランジスタの製造方法。
【請求項67】
前記下部閉込め層は、約10%よりも大きなアルミニウム濃度を有することを特徴とする請求項60に記載のヘテロ接合トランジスタの製造方法。
【請求項68】
前記障壁層は、約20%よりも大きなアルミニウム濃度を有することを特徴とする請求項60に記載のヘテロ接合トランジスタの製造方法。
【請求項69】
前記GaN層上に、前記GaNチャネル層と前記AlGaN障壁層との間に配置されたAlN層を形成するステップを有することを特徴とする請求項60に記載のヘテロ接合トランジスタの製造方法。
【請求項70】
III族窒化物をベースにしたヘテロ接合トランジスタであって、
基板と、
該基板上に設けられ、第1の歪みを有する第1のIII族窒化物層と、
該第1のIII族窒化物層上に設けられ、該第1のIII族窒化物層のバンドギャップよりも小さなバンドギャップを有し、かつ前記第1の歪みの大きさよりも大きい大きさの第2の歪みを有する第2のIII族窒化物層と、
前記第1のIII族窒化物層の反対側で、前記第2のIII族窒化物層上に設けられ、前記第2のIII族窒化物層のバンドギャップよりも大きなバンドギャップを有し、かつ前記第2の歪みと逆の歪みの型である第3の歪みを有する第3のIII族窒化物層と
を備えたことを特徴とするヘテロ接合トランジスタ。
【請求項71】
前記第1のIII族窒化物層は、AlGa1−xN層を備え、0<x<1であることを特徴とする請求項70に記載のヘテロ接合トランジスタ構造。
【請求項72】
前記第2のIII族窒化物層は、GaN層を備えたことを特徴とする請求項71に記載のヘテロ接合トランジスタ。
【請求項73】
前記第3のIII族窒化物層は、AlN層を備えたことを特徴とする請求項72に記載のヘテロ接合トランジスタ。
【請求項74】
III族窒化物をベースにしたヘテロ接合トランジスタの製造方法であって、
基板上に、第1の歪みを有する第1のIII族窒化物層を形成するステップと、
前記第1のIII族窒化物層上に、該第1のIII族窒化物層のバンドギャップよりも小さなバンドギャップを有し、かつ前記第1の歪みの大きさよりも大きい大きさの第2の歪みを有する第2のIII族窒化物層を形成するステップと、
前記第1のIII族窒化物層の反対側で、前記第2のIII族窒化物層上に、前記第2のIII族窒化物層のバンドギャップよりも大きなバンドギャップを有し、かつ前記第2の歪みと逆の歪みの型である関連した第3の歪みを有する第3のIII族窒化物層を形成するステップと
を有することを特徴とするヘテロ接合トランジスタの製造方法。
【請求項75】
前記第1のIII族窒化物層を形成するステップは、AlGa1−xN層を形成し、0<x<1であることを特徴とする請求項74に記載のヘテロ接合トランジスタの製造方法。
【請求項76】
前記第2のIII族窒化物層を形成するステップは、GaN層を形成することを特徴とする請求項75に記載のヘテロ接合トランジスタの製造方法。
【請求項77】
前記第3のIII族窒化物層を形成するステップは、AlN層を形成することを特徴とする請求項76に記載のヘテロ接合トランジスタの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−89871(P2012−89871A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−270859(P2011−270859)
【出願日】平成23年12月12日(2011.12.12)
【分割の表示】特願2003−550289(P2003−550289)の分割
【原出願日】平成14年11月20日(2002.11.20)
【出願人】(592054856)クリー インコーポレイテッド (468)
【氏名又は名称原語表記】CREE INC.
【Fターム(参考)】