説明

めっき基板、無電解めっき方法およびこの方法を用いた回路形成方法

【課題】 各基材における鏡面状の被処理面に銅めっきを良好に密着させることができ、これにより、ファインピッチの配線パターンを形成することができるとともに、高周波特性が良好な回路を形成する。
【解決手段】 塩化錫溶液と塩化パラジウム溶液とを用いて、ガラス成分を含有したセラミック基材に第1触媒層を形成する第1触媒工程と、セラミック基材を酸素を含む分域内において加熱する銅めっき前熱処理工程と、塩化錫溶液および塩化パラジウム溶液を用いて、セラミック基材に積層触媒層を形成する積層触媒処理工程と、セラミック基材に微量のニッケルイオンを含む銅めっき液を用いて銅めっき膜を形成するめっき処理工程と、セラミック基材をガラス転移温度以下の熱処理温度によって加熱する銅めっき後熱処理工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は酸化物を少なくとも表面に有するガラス基材或いはセラミック基材に銅めっきを形成しためっき基板、銅めっきを形成する無電解めっき方法およびこの方法を用いた回路形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、ガラス基材やセラミック基材にめっき膜を形成する方法として、無電解銅めっき方法が知られている(例えば、特許文献1、2および3参照)。
【0003】
従来の無電解銅めっき方法は、アンカー効果により、基材における銅めっきが形成される被処理面と銅めっきとの間の高い密着力を確保するため、まず被処理面を強く粗面化処理して、被処理面に粗い凹凸形状を形成する。
【0004】
そして、粗面化処理を行ったセラミック基材を銅めっき液に浸漬させることにより、セラミック基材に銅めっきを形成するようになっている。
【0005】
しかし、このように粗面化処理が施されたセラミック基材の被処理面に設けられた銅めっきを、誘電体共振器等の電極として用いる場合、100μm程度のピッチの配線パターンの電極を形成することは可能であるが、20μm程度のピッチの配線パターンを形成するのは困難となってしまい、ファインピッチの配線パターンを形成するには限界があった。
【0006】
また、このような誘電体共振器においては、無負荷時におけるQ値が低くなってしまい、高周波特性が低下してしまうという問題があった。
【0007】
そして、このような問題は、被処理面の凹凸形状が粗い程顕著になる。そこで、特許文献1に示すように、粗面化処理において被処理面の凹凸形状をなるべく細かく形成し、凹凸形状が細かい場合であっても、この被処理面に対する銅めっきの良好な密着力を確保することができる無電解銅めっき方法が考えられている。
【0008】
このような無電解銅めっき方法においては、粗面化処理によりセラミック基材の被処理面に細かい凹凸形状を形成した後、粗面化処理を行ったセラミック基材を銅めっき液に浸漬させることにより銅めっきを形成する。ここで、特許文献1に記載の無電解銅めっき方法によれば、細かい凹凸形状が形成された被処理面に対する前記銅めっきの密着力を向上させるため、銅めっき液には、銅めっき中の銅100モルに対し最適範囲として0.01〜1.0モルのニッケルイオンが含まれている。このようにして被処理面の凹凸形状が細かい場合であっても、被処理面に対する銅めっきの高い密着力を確保するようになっている。
【0009】
このように、特許文献1によれば、被処理面に形成された凹凸形状が細かい場合であっても、銅めっきを被処理面に良好に密着させることができるが、この無電解銅めっき方法によっても、セラミック基材の被処理面に粗面化処理を行うようになっている。しかし、ファインピッチの配線パターンの形成や高周波特性を一層の向上を図るという観点からは、基材の被処理面の鏡面化が望まれていた。
【0010】
また、粗面化処理の一工程にはフッ酸が用いられるため、廃液処理も必要となり、製造工程が増加して製造コストが上昇してしまうので、環境問題や製造コストの低廉化の観点からは、粗面化処理を行わないことが望ましい。
【0011】
しかし、セラミック基材における鏡面状の被処理面に銅めっきを形成した場合には、被処理面に対する銅めっきの密着力が著しく低下してしまうという問題を有していた。
【0012】
【特許文献1】特開2000−54153号公報
【特許文献2】特開2003−013247号公報
【特許文献3】特開2004−332023号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、各基材における鏡面状の被処理面に銅めっきを良好に密着させることができ、これにより、ファインピッチの配線パターンを形成することができるとともに、高周波特性が良好な回路を形成することができるめっき基板、無電解めっき方法およびこの方法を用いた回路形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的を達成するため、本発明に係るめっき基板の特徴は、酸化物を少なくとも表面に有するガラス基材或いはセラミック基材と、微量のニッケルイオン、コバルトイオンおよび鉄イオンのうち少なくとも1つを含む銅めっき液を用いて形成された銅めっき膜と、前記各基材および前記銅めっき膜の間に介在し、前記各基材の基材成分、前記銅めっき膜のめっき膜成分、および塩化錫溶液と塩化パラジウム溶液とを用いて形成された触媒層の触媒成分からなる中間層とを有する点にある。
【0015】
また、本発明に係る他のめっき基板の特徴は、酸化物を少なくとも表面に有するガラス基材或いはセラミック基材と、微量のニッケルイオン、コバルトイオンおよび鉄イオンのうち少なくとも1つを含む銅めっき液を用いて形成された銅めっき膜と、前記各基材および前記銅めっき膜の間に介在し、前記各基材の基材成分、前記銅めっき膜のめっき膜成分、および錫・パラジウムコロイド溶液を用いて形成された触媒層の触媒成分からなる中間層とを有する点にある。
【0016】
これらのめっき基板によれば、各基材の基材成分、銅めっき膜のめっき膜成分、および触媒層の触媒成分からなる中間層が形成されており、この中間層により、各基材に対し触媒層を良好に密着させることができる。特に、銅めっき膜を形成する前に酸素雰囲気中で熱処理を行うことにより、錫を基材の成分である酸素に、一層確実に結合させることができる。また、銅めっき膜の形成前および形成後に熱処理を行うことにより、錫とパラジウムとが金属結合し、さらには、銅めっき液中におけるニッケルイオン、コバルトイオンまたは鉄イオンの存在によって、触媒層と銅めっき膜との良好な高い密着力を確保することができる。
【0017】
本発明に係る無電解めっき方法の特徴は、塩化錫溶液と塩化パラジウム溶液とを用いて、酸化物を少なくとも表面に有するガラス基材或いはセラミック基材に触媒層を形成する触媒処理工程と、前記触媒処理工程の後、前記各基材を、酸素を含む雰囲気内において加熱する銅めっき前熱処理工程と、前記銅めっき前熱処理工程の後、前記各基材に、微量のニッケルイオン、コバルトイオンおよび鉄イオンのうち少なくとも1つを含む銅めっき液を用いて、銅めっき膜を形成するめっき処理工程と、前記めっき処理工程の後、前記各基材を、実質的に酸素および水素を含まない雰囲気内においてガラス転移温度以下の熱処理温度によって加熱する銅めっき後熱処理工程とを有する点にある。
【0018】
また、本発明に係る他の無電解めっき方法の特徴は、錫・パラジウムコロイド溶液を用いて、酸化物を少なくとも表面に有するガラス基材或いはセラミック基材に触媒層を形成する触媒処理工程と、前記触媒処理工程の後、前記各基材を、酸素を含む雰囲気内において加熱する銅めっき前熱処理工程と、前記銅めっき前熱処理工程の後、前記各基材に、微量のニッケルイオン、コバルトイオンおよび鉄イオンのうち少なくとも1つを含む銅めっき液を用いて、めっき膜を形成するめっき処理工程と、前記めっき処理工程の後、前記各基材を、実質的に酸素および水素を含まない雰囲気内においてガラス転移温度以下の熱処理温度によって加熱する銅めっき後熱処理工程とを有する点にある。
【0019】
これらの無電解めっき方法によれば、酸化物を少なくとも表面に有するガラス基材或いはセラミック基材に形成された触媒層には錫(Sn)とパラジウム(Pd)が存在し、銅めっき前熱処理および銅めっき後熱処理を行うことにより、前記各基材と触媒層との界面において錫が前記各基材における基材の成分の酸素と結合するため、前記各基材に対し触媒層を良好に密着させることができる。特に、銅めっき前熱処理工程において、酸素雰囲気中で熱処理を行うことにより、錫をガラス成分の酸素に、一層確実に結合させることができる。また、第1熱処理工程および第2熱処理工程により、錫とパラジウムとが金属結合し、さらには、銅めっき液中におけるニッケルイオン、コバルトイオンまたは鉄イオンの存在によって、触媒層と銅めっき膜との良好な高い密着力が確保される。
【0020】
また、前記セラミック基材にAg系のビアが形成されている場合には、前記Ag系のビア上にも、錫とパラジウムが存在し、銅めっき前熱処理および銅めっき後熱処理によって、パラジウムと銀とは強固に結合するので、ビアのAg層と触媒層とを良好に密着させることができる。
【0021】
本発明に係る他の無電解めっき方法の特徴は、前記触媒処理工程を第1触媒層を形成する第1触媒処理工程とし、前記銅めっき前熱処理工程の後であって前記めっき処理工程の前に、塩化錫溶液および塩化パラジウム溶液、または錫・パラジウムコロイド溶液を用いて、前記各基材に積層触媒層を形成する積層触媒処理工程を有することを特徴とする点にある。
【0022】
この無電解めっき方法によれば、銅めっき前熱処理工程の後に積層触媒処理工程を行うことによって積層触媒層を形成することにより、第1めっき処理工程における銅めっき膜の形成速度を向上させることができる。
【0023】
本発明に係る他の無電解めっき方法の特徴は、Ag系のビアが形成されている前記各基材に対する無電解めっき方法であって、前記銅めっき前熱処理工程における熱処理温度が、酸化銀の分解温度以上であり、前記銅めっき前熱処理工程の後であって前記めっき処理工程の前に、前記ビアの表面に形成された酸化膜を除去する酸化膜除去工程を有する点にある。
【0024】
本発明に係る他の無電解めっき方法の特徴は、前記酸化膜除去工程において、純水、H水溶液、温純水、アンモニア水および希硝酸のいずれかを用いる点にある。
【0025】
本発明に係る他の無電解めっき方法の特徴は、前記積層触媒処理工程を、前記酸化膜除去工程の後に行う点にある。
【0026】
これら本発明に係る無電解めっき方法によれば、Ag系のビアにおいては、銅めっき前熱処理工程の後、温度が低下する過程においてAg層が酸化することにより酸化膜が形成されてしまうが、酸化膜除去工程においてビアに形成されてしまった除去することができる。また、銅めっき後熱処理工程における熱処理温度を酸化銀の分解温度以上とすることにより、ビアに酸化膜が形成されてしまうのを防止することができる。
【0027】
本発明に係る他の無電解めっき方法の特徴は、前記銅めっき液に含まれる銅イオン100モルに対し、前記ニッケルイオンの添加量が1〜25モルである点にある。
【0028】
本発明に係る他の無電解めっき方法の特徴は、前記銅めっき前熱処理工程および前記銅めっき後熱処理工程における熱処理温度が250〜450℃である点にある。
【0029】
本発明に係る他の無電解めっき方法の特徴は、前記銅めっき前熱処理工程および前記銅めっき後熱処理工程における熱処理時間が10分以上である点にある。
【0030】
また、本発明に係る他の無電解めっき方法の特徴は、前記銅めっき後熱処理工程において、前記各基材に所定の圧力を加えながら熱処理を行う点にある。
【0031】
本発明に係る他の無電解めっき方法の特徴は、前記各基材に所定の圧力を加えながら熱処理を行う場合の前記銅めっき後熱処理工程における熱処理温度が、150〜400℃である点にある。
【0032】
これら本発明に係る無電解めっき方法によれば、銅めっき後熱処理工程を圧力を加えながら行うことにより、ナノメートルオーダーの凹凸に追随してめっき膜が密着するので、銅めっき後熱処理工程の熱処理温度をより低温度にして銅めっき膜の密着力を向上させることができる。
【0033】
さらに、本発明に係る他の無電解めっき方法の特徴は、前記めっき処理工程を銅めっき膜を形成する第1めっき処理工程とし、前記銅めっき後熱処理工程の後、ニッケル化合物のめっき液を用いてニッケルめっき膜を形成する第2めっき処理工程と、前記第2めっき処理工程の後、前記各基材を、実質的に酸素および水素を含まない雰囲気内においてニッケル化合物の硬度が変化しない温度以下の熱処理温度によって加熱するニッケルめっき後熱処理工程とを有する点にある。
【0034】
本発明に係る他の無電解めっき方法の特徴は、前記第2めっき処理工程の後であって前記ニッケルめっき後熱処理工程の前に、金めっき液を用いて金めっき膜を形成する第3めっき処理工程を有する点にある。
【0035】
本発明に係る他の無電解めっき方法の特徴は、前記ニッケルめっき後熱処理工程の熱処理温度が150〜350℃である点にある。
【0036】
本発明に係る他の無電解めっき方法の特徴は、前記ニッケルめっき後熱処理工程の熱処理時間が10分〜12時間である点にある。
【0037】
ここで、銅めっき膜上に、単にニッケルめっき膜や金めっき膜を形成しても、ニッケルめっき膜や金めっき膜を形成した銅めっき膜は基材から剥離しやすいことがわかっている。これは、第2めっき処理および第3めっき処理工程中に水素ラジカルがニッケルめっき膜、金めっき膜および銅めっき膜中に入り込んでしまい、この水素ラジカルが銅めっき膜と基材との間の密着性を低下させていると考えられているからである。そこで、これら本発明に係る無電解めっき方法によれば、第2めっき処理工程や、第3めっき処理工程の後に、ニッケルめっき後熱処理を行うことにより、ニッケルめっき膜や金めっき膜を形成した銅めっき膜と基材との密着性を向上させることができる。これは、ニッケルめっき後熱処理工程により、ニッケルめっき膜、金めっき膜、銅めっき膜および中間層から水素ラジカルを放出させることができると考えられるからである。
【0038】
本発明に係る回路形成方法の特徴は、塩化錫溶液と塩化パラジウム溶液とを用いて、酸化物を少なくとも表面に有するガラス基材或いはセラミック基材に触媒層を形成する触媒処理工程と、前記触媒処理工程の後、前記各基材を、酸素を含む雰囲気内において加熱する銅めっき前熱処理工程と、前記銅めっき前熱処理工程の後、前記各基材に、微量のニッケルイオン、コバルトイオンおよび鉄イオンのうち少なくとも1つを含む銅めっき液を用いてめっき膜を形成するめっき処理工程と、前記めっき処理工程の後、前記各基材を、実質的に酸素および水素を含まない雰囲気中においてガラス転移温度以下の熱処理温度によって加熱する銅めっき後熱処理工程と、前記触媒層、または前記めっき膜をパターニング処理するパターニング処理工程とを有する点にある。
【0039】
本発明に係る他の回路形成方法の特徴は、錫・パラジウムコロイド溶液を用いて、酸化物を少なくとも表面に有するガラス基材或いはセラミック基材に触媒層を形成する触媒処理工程と、前記触媒処理工程の後、前記各基材を、酸素を含む雰囲気内において加熱する銅めっき前熱処理工程と、前記銅めっき前熱処理工程の後、前記各基材に、微量のニッケルイオン、コバルトイオンおよび鉄イオンのうち少なくとも1つを含む銅めっき液を用いてめっき膜を形成するめっき処理工程と、前記めっき処理工程の後、前記各基材を、実質的に酸素および水素を含まない雰囲気中においてガラス転移温度以下の熱処理温度によって加熱する銅めっき後熱処理工程と、前記触媒層または前記めっき膜をパターニング処理するパターニング工程とを有する点にある。
【0040】
これら本発明に係る無電解銅めっき方法を用いた回路形成方法によれば、前記各基材に対し触媒層を良好に密着させることができるとともに、触媒層と銅めっき膜とを良好に密着させることができ、これにより、鏡面状の前記各基材に銅めっき膜によって回路を形成することができる。このため、前記各基材上において配線パターンをファインピッチに形成することが可能となるとともに、回路の高周波特性を向上させることができる。
【0041】
本発明に係る他の回路形成方法の特徴は、Ag系のビアが形成されている前記各基材に対する無電解めっき方法を用いた回路形成方法であって、前記銅めっき前熱処理工程における熱処理温度が、酸化銀の分解温度以上であり、前記銅めっき前熱処理工程の後であって前記めっき処理工程の前に、前記ビアの表面に形成される酸化膜を除去する酸化膜除去工程を有する点にある。
【0042】
この本発明に係る回路形成方法によれば、Ag系のビアにおいては、銅めっき前熱処理工程の後、温度が低下する過程においてAg層が酸化することにより酸化膜が形成されてしまうが、酸化膜除去工程においてビアに形成されてしまった除去することができる。また、銅めっき後熱処理工程における熱処理温度を酸化銀の分解温度以上とすることにより、ビアに酸化膜が形成されてしまうのを防止することができる。
【0043】
本発明に係る他の回路形成方法の特徴は、前記めっき処理工程を銅めっき膜を形成する第1めっき処理工程とし、前記銅めっき後熱処理工程の後、ニッケル化合物のめっき液を用いてニッケルめっき膜を形成する第2めっき処理工程と、 前記第2めっき処理工程の後、前記各基材を、実質的に酸素および水素を含まない雰囲気内においてニッケル化合物の硬度が変化しない温度以下の熱処理温度によって加熱するニッケルめっき後熱処理工程とを有する点にある。
【0044】
本発明に係る他の回路形成方法の特徴は、前記第2めっき処理工程の後であって前記ニッケルめっき後熱処理工程の前に、金めっき液を用いて金めっき膜を形成する第3めっき処理工程を有する点にある。
【0045】
これら本発明に係る回路形成方法によれば、第2めっき処理工程や、第3めっき処理工程の後に、ニッケルめっき後熱処理を行うことにより、ニッケルめっき膜、金めっき膜、銅めっき膜および中間層から水素ラジカルを放出させることができると考えられ、ニッケルめっき膜や金めっき膜を形成した銅めっき膜と基材との間の密着性を向上させることができる。
【0046】
本発明に係る他の無電解めっき方法の特徴は、塩化錫溶液と塩化パラジウム溶液とを用いて、ガラス基材に触媒層を形成する触媒処理工程と、前記触媒処理工程の後、微量のニッケルイオン、コバルトイオンおよび鉄イオンのうち少なくとも1つを含む銅めっき液を用いて、めっき膜を形成するめっき処理工程と、前記めっき処理工程の後、前記ガラス基材を実質的に酸素および水素を含まない雰囲気中においてガラス転移温度以下の熱処理温度によって加熱する銅めっき後熱処理工程とを有する点にある。
【0047】
本発明に係る他の無電解めっき方法の特徴は、錫・パラジウムコロイド溶液を用いて、ガラス基材に触媒層を形成する触媒処理工程と、前記触媒処理工程の後、微量のニッケルイオン、コバルトイオンおよび鉄イオンのうち少なくとも1つを含む銅めっき液を用いて、めっき膜を形成するめっき処理工程と、前記めっき処理工程の後、前記ガラス基材を実質的に酸素および水素を含まない雰囲気中においてガラス転移温度以下の熱処理温度によって加熱する銅めっき後熱処理工程とを有する点にある。
【0048】
本発明に係る他の無電解めっき方法の特徴は、前記銅めっき液に含まれる銅イオン100モルに対し、前記ニッケルイオンの添加量が1.0〜25モルである点にある。
【0049】
本発明に係る他の無電解めっき方法の特徴は、前記熱処理温度が250〜450℃である点にある。
【0050】
本発明に係る他の無電解めっき方法の特徴は、熱処理時間が10分以上である点にある。
【0051】
これらの本発明に係る無電解銅めっき方法によれば、ガラス基材に形成された触媒層には錫(Sn)とパラジウム(Pd)が存在し、銅めっき後熱処理を行うことにより、ガラス基材と触媒層との界面において錫はガラスの酸素と結合するため、ガラス基材に対し触媒層が良好に密着することになる。また、前記銅めっき後熱処理工程により、錫とパラジウムとが金属結合し、さらには、銅めっき液中におけるニッケルイオンの存在によって、触媒層とめっき膜との高い密着力が確保され、これにより、銅めっきをガラス基材に高密着させることができる。
【0052】
本発明に係る他の無電解めっき方法の特徴は、前記銅めっき後熱処理工程において、前記ガラス基材に所定の圧力を加えながら熱処理を行う点にある。
【0053】
本発明に係る他の無電解めっき方法の特徴は、前記ガラス基材に所定の圧力を加えながら熱処理を行う場合の前記銅めっき後熱処理工程における熱処理温度が150〜400℃である点にある。
【0054】
これら本発明に係る無電解めっき方法によれば、銅めっき後熱処理工程を圧力を加えながら行うことにより、ナノメートルオーダーの凹凸に追随してめっき膜が密着するので、銅めっき後熱処理工程の熱処理温度をより低温度にして銅めっき膜の密着力を向上させることができる。
【0055】
本発明に係る他の無電解めっき方法の特徴は、前記めっき処理工程を銅めっき膜を形成する第1めっき処理工程とし、前記銅めっき後熱処理工程の後、ニッケル化合物のめっき液を用いてニッケルめっき膜を形成する第2めっき処理工程と、前記第2めっき処理工程の後、前記ガラス基材を、実質的に酸素および水素を含まない雰囲気内においてニッケル化合物の硬度が変化しない温度以下の熱処理温度によって加熱するニッケルめっき後熱処理工程とを有する点にある。
【0056】
本発明に係る他の無電解めっき方法の特徴は、前記第2めっき処理工程の後であって前記ニッケルめっき後熱処理工程の前に、金めっき液を用いて金めっき膜を形成する第3めっき処理工程を有する点にある。
【0057】
本発明に係る他の無電解めっき方法の特徴は、前記ニッケルめっき後熱処理工程の熱処理温度が150〜350℃である点にある。
【0058】
本発明に係る他の無電解めっき方法の特徴は、前記ニッケルめっき後熱処理工程の熱処理時間が10分〜12時間である点にある。
【0059】
ここで、銅めっき膜上に、単にニッケルめっき膜や金めっき膜を形成しても、ニッケルめっき膜や金めっき膜を形成した銅めっき膜は基材から剥離しやすいことがわかっている。これは、第2めっき処理および第3めっき処理工程中に水素ラジカルがニッケルめっき膜、金めっき膜および銅めっき膜中に入り込んでしまい、この水素ラジカルが銅めっき膜と基材との間の密着性を低下させていると考えられているからである。そこで、これら本発明に係る無電解めっき方法によれば、第2めっき処理工程や、第3めっき処理工程の後に、ニッケルめっき後熱処理を行うことにより、ニッケルめっき膜や金めっき膜を形成した銅めっき膜と基材との密着性を向上させることができる。これは、ニッケルめっき後熱処理工程により、ニッケルめっき膜、金めっき膜、銅めっき膜および中間層から水素ラジカルを放出させることができると考えられるからである。
【0060】
本発明に係る他の回路形成方法の特徴は、塩化錫溶液と塩化パラジウム溶液とを用いて、ガラス基材に触媒層を形成する触媒処理工程と、前記触媒処理工程の後、微量のニッケルイオン、コバルトイオンおよび鉄イオンのうち少なくとも1つを含む銅めっき液を用いて、めっき膜を形成するめっき処理工程と、前記めっき処理工程の後、前記ガラス基材を実質的に酸素および水素を含まない雰囲気中においてガラス転移温度以下の熱処理温度によって加熱する熱処理工程と、前記触媒層、または前記めっき膜をパターニング処理するパターニング処理工程とを有する点にある。
【0061】
本発明に係る他の回路形成方法の特徴は、錫・パラジウムコロイド溶液を用いて、ガラス基材に触媒層を形成する触媒処理工程と、前記触媒処理工程の後、微量のニッケルイオン、コバルトイオンおよび鉄イオンのうち少なくとも1つを含む銅めっき液を用いて、めっき膜を形成するめっき処理工程と、前記めっき処理工程の後、前記ガラス基材を実質的に酸素および水素を含まない雰囲気中においてガラス転移温度以下の熱処理温度によって加熱する熱処理工程と、前記触媒層、または前記メッキ膜をパターニング処理するパターニング処理工程とを有する点にある。
【0062】
これらの本発明に係る回路形成方法によれば、ガラス基材に形成された触媒層には錫とパラジウムが存在し、めっき処理後に熱処理を行うことにより、ガラス基材と触媒層との界面において錫はガラスの酸素と結合するため、ガラス基材に対する触媒層の密着力が向上することになる。また、前記熱処理工程により、錫とパラジウムとが金属結合し、さらには、銅めっき液中におけるニッケルイオンの存在によって、触媒層とめっき膜との高い密着力が確保され、これにより、銅めっきをガラス基材に高密着させることができる。
【0063】
本発明に係る他の回路形成方法の特徴は、前記めっき処理工程を銅めっき膜を形成する第1めっき処理工程とし、前記熱処理工程を銅めっき後熱処理工程とし、前記銅めっき後熱処理工程の後、ニッケル化合物のめっき液を用いてニッケルめっき膜を形成する第2めっき処理工程と、前記第2めっき処理工程の後、前記ガラス基材を、実質的に酸素および水素を含まない雰囲気内においてニッケル化合物の硬度が変化しない温度以下の熱処理温度によって加熱するニッケルめっき後熱処理工程とを有する点にある。
【0064】
本発明に係る他の回路形成方法の特徴は、前記第2めっき処理工程の後であって前記ニッケルめっき後熱処理工程の前に、金めっき液を用いて金めっき膜を形成する第3めっき処理工程を有する点にある。
【0065】
これら本発明に係る回路形成方法によれば、第2めっき処理工程や、第3めっき処理工程の後に、ニッケルめっき後熱処理を行うことにより、ニッケルめっき膜、金めっき膜、銅めっき膜および中間層から水素ラジカルを放出させることができると考えられ、ニッケルめっき膜や金めっき膜を形成した銅めっき膜と基材との間の密着性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0066】
以上述べたように、本発明に係るめっき基板および無電解めっき方法によれば、酸化物を少なくとも表面に有するガラス基材或いはセラミック基材が鏡面状であっても、そのセラミック基材に銅めっきを良好に密着させることができる。これにより、銅めっき膜によって電極を形成する場合には、配線パターンをファインピッチに形成することが可能となる。また、前記各基材の被処理面に凹凸形状を形成するための粗面化処理を行う必要がないので、粗面化処理にともなう種々の不都合を排除することができる。
【0067】
また、本発明に係る回路形成方法によれば、鏡面状の前記各基材に銅めっき膜を良好に密着させることができ、これにより鏡面状の前記各基材に銅めっき膜により回路を形成することができるので、銅めっき膜によりファインピッチの配線パターンを形成することができるとともに、回路の高周波特性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0068】
以下、本発明に係るめっき基板、無電解めっき方法およびこの方法を用いた回路形成方法の実施形態を図1から図7を参照して説明する。
【0069】
図1は、本実施形態に係るめっき基板を示す概略断面図であり、図1に示すように、前記めっき基板20は、ガラス成分を表面に有するセラミック基材1を有する。前記セラミック基材1の表面には、微量のニッケルイオン、コバルトイオンおよび鉄イオンのうち少なくとも1つを含む銅めっき液を用いて形成された銅めっき膜6が設けられており、前記セラミック基材1および銅めっき膜1の間には、セラミック基材1の基材成分、銅めっき膜6のめっき膜成分、および塩化錫溶液と塩化パラジウム溶液とを用いて形成された第1触媒層5および積層触媒層9の触媒成分とからなる中間層が形成されている。
【0070】
なお、本実施形態においては、めっき基板20の基材をガラス成分を有するセラミック基材1として説明しているが、これに限定されるものではなく、シリコン酸化物、アルミ酸化物、酸化ジルコニウムなどの基材、シリコンやアルミなどの酸化物を含むセラミック基材、シリコン、アルミなどの酸化物を含むガラス基材など、酸化物を含むガラスやセラミックなどの基材であればよい。さらに、最表面を紫外線処理、プラズマ処理、熱処理および酸処理などで酸化した単結晶シリコン、炭化ケイ素および窒化ケイ素などの基材や、最表面にシリコン酸化膜などの酸化物薄膜を形成した基材のような、表面に酸化物を有する基材であってもよい。また、本実施形態においては第1触媒層5および積層触媒層9が塩化錫溶液と塩化パラジウム溶液を用いて形成されているが、これに限定されず、少なくとも一方が錫・パラジウムコロイド溶液を用いて形成されていてもよい。さらに、第1触媒層5および積層触媒層9が形成されているが、これに限定されず、第1触媒層5のみであってもよい。
【0071】
続いて、前記めっき基板の製造するための無電解めっき方法および回路形成方法について図2から図5を参照して説明する。
【0072】
図2は、前記めっき基板のめっき膜を形成するための無電解めっき方法の各工程を示すフローチャートであり、図3は、本実施形態の無電解めっき方法を利用した回路形成方法の各工程を示す概念図である。
【0073】
まず、本実施形態に係る無電解めっき方法に用いられる基材1として、約50%のホウ珪酸ガラスと約50%のアルミナ微粉とを混合して低温焼成したガラス成分を表面に有するセラミック基材1を用意する。このセラミック基材1は、その製造工程上、平滑な第1面2aと、第1面2aより平滑性が劣る第2面2bとが存在し、本実施形態においては、第1面2aと第2面2bとの両面を被処理面として銅めっき膜6を形成することとする。なお、セラミック基材1としては、前述のような50%のホウ珪酸ガラスと50%のアルミナ微粉とを材料とする低温共焼成セラミック基材1に限定されるものではない。
【0074】
図2に示すように、このセラミック基材1に付着したゴミや油脂類等の不純物を除去するため、セラミック基材1を脱脂洗浄する(ST1)。
【0075】
一方、1.33%の塩化錫、0.54%の塩酸を含む塩酸性の塩化錫水溶液、および0.015%の塩化パラジウムを含む塩化パラジウム水溶液を用意する。
【0076】
そして、まず、前記脱脂洗浄をしたセラミック基材1を、23℃の前記塩化錫水溶液中に3分間浸漬させた後、十分に水洗する。
【0077】
続いて、前記セラミック基材1を、30℃の前記塩化パラジウム水溶液中に2分間浸漬させた後、十分に水洗する。
【0078】
さらに、前記セラミック基材1を、再度、前記塩化錫水溶液中に2分間浸漬させた後、前記塩化パラジウム水溶液中に1分間浸漬させることにより、セラミック基材1の第1面2aおよび第2面2bに第1触媒層5を形成する第1触媒処理を行う(ST2)。
【0079】
なお、前述の第1触媒処理工程においては、塩化錫水溶液および塩化パラジウム水溶液にかえて、錫・パラジウムコロイド溶液を用いてもよい。
【0080】
このように、セラミック基材1を塩化錫水溶液と塩化パラジウム水溶液とに交互に浸漬させる第1触媒処理工程を経た後、このセラミック基材1を十分に水洗してから乾燥させる。
【0081】
その後、セラミック基材1に対し、酸素を含む雰囲気内において所定の熱処理時間、所定の熱処理温度によって銅めっき前熱処理を行う(ST3)。ここで、前記熱処理温度については、250〜450℃の範囲内で、また熱処理時間については、10分以上の熱処理が行われることが好ましい。
【0082】
この銅めっき前熱処理工程の後、セラミック基材1を、塩化錫溶液と塩化パラジウム溶液とに再度浸漬させて、セラミック基材1の第1面2aおよび第2面2bに積層触媒層9を形成する積層触媒処理を行う(ST4)。なお、前述の積層触媒処理工程においても、塩化錫水溶液および塩化パラジウム水溶液にかえて、錫・パラジウムコロイド溶液を用いてもよい。
【0083】
さらに、この積層触媒処理工程の後、セラミック基材1を再度脱脂洗浄し、約0.05%の硫酸(HSO)および4%のホルマリンを含有するホルマリン水溶液に1分間浸漬することにより、第1触媒層5および積層触媒層9を還元する(ST5)。
【0084】
その後、前記セラミック基材1を水洗せずに、第1面2aおよび第2面2bに銅めっき膜6を形成するための第1めっき処理を行う。この第1めっき処理においては、2.5g/L(0.039mol/L)の銅イオン(Cu)と、0.138g/L(0.0023mol/L)のニッケルイオン(Ni)と、錯化剤として酒石酸ナトリウムカリウム四水和物(ロッシェル塩)(KNaC・4HO)と、還元剤として約0.2%のホルムアルデヒド(CHO)を含む銅めっき液を用いる。すなわち、本実施形態における銅めっき液には、前記銅めっき液に含まれる銅イオン100モルに対し、6モルのニッケルイオンが含まれている。
【0085】
なお、銅めっき液におけるニッケルイオンの添加量は、本実施形態に限定されるものではないが、好ましくは、銅めっき液に含まれる銅イオン100モルに対し1〜25モルのニッケルイオンが含まれるとよい。もし、ニッケルイオンが、銅イオン100モルに対して1モル未満であると、セラミック基材1と銅めっき膜6との十分な密着性が得られなくなってしまい、一方、ニッケルイオンが25モルよりも多い場合には、銅の物性が低下してしまい、例えば比抵抗が大幅に増加してしまう。
【0086】
さらに、この銅めっき液には、pH調整のための約1.5g/Lの水酸化ナトリウム(NaOH)が含まれてpHが約12.6に調整されているとともに、さらに、約0.1%のキレート剤が含まれている。
【0087】
そして、セラミック基材1を36℃の銅めっき液に所定時間浸漬させることにより、第1面2aおよび第2面2bに約2μmの膜厚の銅めっき膜6を形成する第1めっき処理を行う(ST6)。
【0088】
続いて、銅めっき膜6を形成したセラミック基材1を十分に洗浄した後、乾燥させる(ST7)。
【0089】
さらに、乾燥させたセラミック基材1を、例えば窒素ガス等の不活性ガス雰囲気中や真空中等の実質的に酸素および水素を含まない雰囲気中において、ガラス転移温度以下の熱処理温度により所定の熱処理時間加熱する銅めっき後熱処理を行う(ST8)。ここで、前記熱処理温度については、250〜450℃の範囲内で、また熱処理時間については、10分以上の熱処理が行われることが好ましい。これにより、セラミック基材1の第1面2aおよび第2面2bに高密着性の銅めっき膜6を形成し、めっき基板を20製造する。
【0090】
なお、銅めっき後熱処理工程においては、セラミック基材1に所定の圧力を加えながら熱処理を行ってもよい。所定の圧力を加えながら熱処理を行う場合、熱処理温度は150〜400℃であることが好ましい。
【0091】
続いて、銅めっき膜6が形成されたセラミック基材1の第1面2aおよび第2面2bに第2触媒層10を形成する第2触媒処理を行う(ST9)。第2触媒処理工程においては、例えば、前記セラミック基材1を、所定温度のパラジウム溶液に所定時間浸漬させることにより行う。なお、第2触媒処理工程において、触媒の条件は本実施形態に限定されるものではない。
【0092】
そして、第2触媒層10を形成したセラミック基材1を純水を用いて洗浄した後、このセラミック基材1を、所定温度のニッケル−リンめっき液に所定時間浸漬させることにより、第1面2aおよび第2面2bに約2μmの膜厚のニッケルめっき膜7を形成する第2めっき処理を行う(ST10)。第2めっき処理工程のめっき処理時間については、20分程度が好ましく、めっき処理温度は80℃程度が好ましい。
【0093】
さらに、前記セラミック基材1を、所定温度の金めっき液に所定時間浸漬させることにより、第1面2aおよび第2面2bに約0.05μmの膜厚の金めっき膜8を形成する第3めっき処理を行う(ST11)。第3めっき処理工程のめっき処理時間については10分程度が好ましく、めっき処理温度は60℃程度が好ましい。
【0094】
なお、第2めっき処理工程および第3めっき処理工程のめっき処理条件は、本実施形態に限定されるものではない。
【0095】
その後、ニッケルめっき膜7および金めっき膜8が形成されたセラミック基材1を、例えば窒素ガス等の不活性ガス雰囲気中や真空中等の実質的に酸素および水素を含まない雰囲気中において、所定の熱処理温度により所定の熱処理時間加熱するニッケルめっき後熱処理を行う(ST12)。ここで、前記熱処理温度については、150〜350℃の範囲内であることが好ましい。150℃以下であると、めっき中に取り込まれた水素の除去が不十分となり、一方、350°以上であると、ニッケルめっき膜7および金めっき膜8が剥離しやすくなってしまうからである。また、熱処理時間については、10分〜12時間の熱処理が行われることが好ましい。10分以下では、めっき中に取り込まれた水素の除去が不十分となり、一方12時間以上であると、作業性が悪くなってしまうからである。これにより、セラミック基材1の第1面2aおよび第2面2bに高密着性のニッケルめっき膜7および金めっき膜8を形成する。
【0096】
次に、本実施形態に係る無電解めっき方法の作用について説明する。
【0097】
本実施形態によれば、セラミック基材1に形成された第1触媒層5、積層触媒層9には錫とパラジウムが存在し、銅めっき前熱処理および銅めっき後熱処理を行うことにより、セラミック基材1と触媒層との界面において錫がセラミック基材1におけるガラス成分の酸素と結合するため、セラミック基材1に対し第1触媒層5および積層触媒層9を良好に密着させることができる。
【0098】
特に、銅めっき前熱処理工程において、酸素雰囲気中において熱処理を行うことにより、錫をガラス成分の酸素に、より確実に結合させることができる。これは、銅めっき前熱処理工程において、窒素雰囲気中において熱処理を行った場合、第1触媒層5および積層触媒層9とセラミック基材1との密着力が低下することから、推測することができる。すなわち、例えば、窒素雰囲気中において銅めっき前熱処理工程の熱処理を行った場合、セラミック基材1におけるガラス成分の酸素が抜けてしまい、ガラス成分の酸素が欠乏してしまう。このため、錫をガラス成分の酸素に十分に結合させることができず、この結果、第1触媒層5および積層触媒層9をセラミック基材1に良好に密着させることができなくなってしまうからである。このため、銅めっき前熱処理工程を酸素雰囲気中において行うことにより、第1触媒層5および積層触媒層9をセラミック基材1に良好に密着させることができる。
【0099】
また、銅めっき前熱処理工程および銅めっき後熱処理工程により、錫とパラジウムとが金属結合し、さらには、銅めっき液中におけるニッケルイオンの存在によって、第1触媒層5および積層触媒層9と銅めっき膜6との高い密着力が確保される。
【0100】
さらに、前記銅めっき膜6上に、単にニッケルめっき膜7や金めっき膜8を形成しても、ニッケルめっき膜7および金めっき膜8を形成した銅めっき膜6は、基材1から剥離しやすいことがわかっている。これは、第2めっき処理および第3めっき処理工程中に水素ラジカルがニッケルめっき膜7、金めっき膜8および銅めっき膜6中に入り込んでしまい、この水素ラジカルが密着性を低下させていると考えられている。そこで、第2めっき処理工程および第3めっき処理工程の後、ニッケルめっき後熱処理を行うことにより、銅めっき膜6と基材1との密着性を向上させることができる。これは、ニッケルめっき後熱処理工程により、ニッケルめっき膜7、金めっき膜8、銅めっき膜6および中間層5から水素ラジカルを放出させることができると考えられるからである。
【0101】
したがって、セラミック基材1における第1面2aおよび第2面2bが鏡面状であっても、前記両面2a、2bに銅めっき膜6を良好に密着させることができ、これにより、銅めっき膜6により電極を形成する場合に、配線パターンをファインピッチに形成することができる。
【0102】
また、本実施形態における無電解めっき方法においては、セラミック基材1の第1面2aおよび第2面2bに凹凸形状を形成するための粗面化処理を行う必要がないので、粗面化処理にともなう種々の不都合を排除することができる。
【0103】
さらに、銅めっき前熱処理工程の後に積層触媒処理工程を行うことによって積層触媒層9を形成することにより、第1めっき処理工程における銅めっき膜6の形成速度を向上させることができる。
【0104】
さらにまた、銅めっき膜6とニッケルめっき膜7や金めっき膜8との密着性を向上させることができ、これにより、銅めっき膜6上にニッケルめっき膜7や金めっき膜8を形成して電極を構成する場合に、配線パターンをファインピッチに形成することができる。
【0105】
また、銅めっき後熱処理工程を圧力を加えながら行うことにより、ナノメートルオーダーの凹凸に追随してめっき膜が密着するので、銅めっき後熱処理工程の熱処理温度をより低温度にして銅めっき膜6の密着力を向上させることができる。
【0106】
次に、前記無電解めっき方法を用いた回路形成方法について、図3を参照して説明する。
【0107】
まず、ガラス成分を表面に有するセラミック基材1を用意し、図3(a)に示すように、このセラミック基材1の第1面2aおよび第2面2bにレジストを塗布した後、所定のマスクを用いて露光、現像を行うことにより、所定のパターンのレジスト3を形成する。
【0108】
次に、図3(b)に示すように、第1触媒処理を行って前記セラミック基材1の第1面2aおよび第2面2bに第1触媒層5を形成した後、図3(c)に示すようにレジスト3を除去して、第1触媒層5を所定のパターンに形成する。そして、酸素雰囲気中においてセラミック基材1を加熱することにより銅めっき前熱処理を行った後、再度、図3(d)に示すような所定のパターンのレジスト3を形成する。
【0109】
続いて、積層触媒処理を行ってセラミック基材1の第1面2aおよび第2面2bに積層触媒層9を形成した後、レジスト3を除去して、図3(e)に示すように、第1触媒層5および積層触媒層9を所定のパターンに形成する。
【0110】
さらに、セラミック基材1を前述の無電解めっき方法における第1の実施形態と同様のホルマリン水溶液に1分間浸漬させて触媒層5を還元した後、水洗せずに、セラミック基材1を36℃の温度の銅めっき液に所定時間浸漬させて、図3(f)に示すように、触媒層5上に銅めっき膜6を形成する。
【0111】
続いて、銅めっき膜6を形成したセラミック基材1を十分に水洗してから乾燥させる。
【0112】
さらに、ガラス転移温度以下の熱処理温度によって、所定の熱処理時間、前記セラミック基材1に銅めっき後熱処理を行った後、第2触媒処理を行ってセラミック基材1の第1面2aおよび第2面2bに第2触媒層10を形成する。そして、図3(g)に示すように、前記銅めっき膜6上に、前記無電解めっき方法と同様の工程によってニッケルめっき膜7、および金めっき膜8を積層形成する。
【0113】
その後、ニッケル合金の硬度が変化しない温度以下の温度によって、所定の熱処理時間、前記セラミック基材1にニッケルめっき後熱処理を行うことにより、セラミック基材1上に所定の配線パターンの回路を形成する。
【0114】
次に、本実施形態に係る無電解めっき方法を用いた回路形成方法の作用について説明する。
【0115】
本実施形態によれば、前記無電解めっき方法を用いて回路を形成することにより、セラミック基材1に対し第1触媒層5および積層触媒層9を良好に密着させることができるとともに、第1触媒層5および積層触媒層9と銅めっき膜6とを良好に密着させることができる。さらに、第2触媒層10を介して銅めっき膜6とニッケルめっき膜7および金めっき膜8とを良好に密着させることができる。
【0116】
したがって、セラミック基材1における鏡面状の第1面2aおよび第2面2bに回路を形成することができるので、セラミック基材1上において配線パターンをファインピッチに形成することが可能となる。
【0117】
また、粗面化処理がされない第1面2aおよび第2面2bに各めっき膜によって回路を形成することができるので、回路の高周波特性を向上させることができる。
【0118】
続いて、本発明に係る無電解めっき方法の第2の実施形態について図4および図5を用いて説明する。
【0119】
まず、本実施形態に係る無電解めっき方法に用いられるセラミック基材1として、約50%のホウ珪酸ガラスと約50%のアルミナ微粉とを混合して低温焼成したセラミック基材1を用意する。このセラミック基材1には、ビアホール11が形成され、ビアホール11の内面にはAg系の導電材料によりAg層12が形成されており、これにより、セラミック基材1の第1面2aおよび第2面2bに形成される回路を接続するAg系のビア13が形成されている。なお、第2の実施形態においても、セラミック基材1としては、前述のような50%のホウ珪酸ガラスと50%のアルミナ微粉とを材料とする低温共焼成セラミック基材1に限定されるものではない。
【0120】
図3に示すように、このセラミック基材1を、脱脂洗浄する(ST21)。
【0121】
次に、第1の実施形態と同様にして、第1触媒処理を行った後(ST22)、セラミック基材1を十分に水洗してから乾燥させる。
【0122】
続いて、セラミック基材1を、第1の実施形態と同様に、酸素を含む雰囲気内において酸化銀の分解温度(150〜180℃)以上の温度によって加熱する銅めっき前熱処理を行った後(ST23)、常温のH水溶液を用いて、前記ビア13の表面に形成される酸化膜を除去する処理を行う(ST24)。なお、酸化膜除去工程においては、H水溶液に限定されず、純水、温純水、アンモニア水または希硝酸等を用いることができる。
【0123】
そして、酸化膜除去工程の後、第1の実施形態と同様にして、積層触媒処理を行う(ST25)。
【0124】
さらに、セラミック基材1を十分に水洗した後、約0.05%の硫酸(HSO)を含むホルマリン約4%のホルマリン水溶液に1分間浸漬することにより、第1触媒層5および積層触媒層9を還元する(ST26)。
【0125】
続いて、第1の実施形態と同様にして、セラミック基材1の第1面2aおよび第2面2bに銅めっき膜6を形成するための第1めっき処理を行う(ST27)。
【0126】
次に、銅めっき膜6を形成したセラミック基材1を十分に洗浄した後、乾燥させる(ST28)。
【0127】
さらに、乾燥させたセラミック基材1を、例えば窒素ガス等の不活性ガス雰囲気中や真空中等の実質的に酸素および水素を含まない雰囲気中において、ガラス転移温度以下の熱処理温度により所定の熱処理時間加熱する銅めっき後熱処理を行う(ST29)。ここで、前記熱処理温度については、250〜450℃の範囲内で、また熱処理時間については、10分以上の熱処理が行われることが好ましい。これにより、セラミック基材1の第1面2aおよび第2面2bに銅めっき膜6を形成する。
【0128】
なお、銅めっき後熱処理工程においては、セラミック基材1に所定の圧力を加えながら熱処理を行ってもよい。所定の圧力を加えながら熱処理を行う場合、熱処理温度は150〜400℃であることが好ましい。
【0129】
続いて、めっき処理されたセラミック基材1の第1面2aおよび第2面2bに第2触媒層10を形成する第2触媒処理を行う(ST30)。第2触媒処理工程においては、例えば、前記セラミック基材1を、所定温度のパラジウム溶液に所定時間浸漬させることにより行う。なお、第2触媒処理工程において、触媒の条件は本実施形態に限定されるものではない。
【0130】
そして、第2触媒層10を形成したセラミック基材1を純水を用いて洗浄した後、第1の実施形態と同様にして、このセラミック基材1の第1面2aおよび第2面2bにニッケルめっき膜7を形成するための第2めっき処理を行った後(ST31)、金めっき膜8を形成するための第3めっき処理を行う(ST32)。
【0131】
その後、前記セラミック基材1を、第1の実施形態と同様にして、ニッケルめっき後熱処理を行う(ST33)。
【0132】
次に、第2の実施形態に係る無電解めっき方法の作用について説明する。
【0133】
第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様に、セラミック基材1に対し第1触媒層5および積層触媒層9を良好に密着させることができるとともに、第1触媒層5および積層触媒層9と銅めっき膜6とを良好に密着させることができる。また、第2めっき処理工程および第3めっき処理工程の後、ニッケルめっき後熱処理を行うことにより、銅めっき膜6と基材1との密着性を向上させることができる。さらに、ビア13上においても、錫とパラジウムが存在し、銅めっき前熱処理および銅めっき後熱処理によって、パラジウムと銀とは強固に結合するので、ビア13のAg層12と第1触媒層5および積層触媒層9とを良好に密着させることができる。
【0134】
ここで、銅めっき前熱処理工程における熱処理温度を酸化銀の分解温度以上とすることにより、銅めっき前熱処理中にビア13のAg層12に酸化膜が形成されてしまうのを防止することができる。
【0135】
また、ビア13のAg層12においては、銅めっき前熱処理工程の後、温度が低下する過程において酸化膜が形成されてしまうが、酸化膜除去工程においてAg層12に形成された酸化膜を除去することができる。
【0136】
したがって、Ag系のビア13が形成されているガラス成分を表面に有するセラミック基材1において、このセラミック基材1の第1面2aおよび第2面2bが鏡面状であっても、前記両面2a、2bに銅めっき膜6を良好に密着させることができ、これにより、銅めっき膜6により電極を形成する場合に、配線パターンをファインピッチに形成することができる。また、銅めっき膜6を形成したセラミック基材1の完成品においてビア13のAg層12に酸化膜が形成されることを防止することができる。
【0137】
さらに、第2の実施形態における無電解めっき方法においても、セラミック基材1の第1面2aおよび第2面2bに凹凸形状を形成するための粗面化処理を行う必要がないので、粗面化処理にともなう種々の不都合を排除することができる。
【0138】
さらにまた、銅めっき前熱処理工程の後に積層触媒処理工程を行うことによって積層触媒層9を形成することにより、めっき処理工程における銅めっき膜6の形成速度を向上させることができる。
【0139】
また、銅めっき膜6とニッケルめっき膜7や金めっき膜8との密着性を向上させることができ、これにより、銅めっき膜7上にニッケルめっき膜7や金めっき膜8を形成して電極を構成する場合に、配線パターンをファインピッチに形成することができる。
【0140】
次に、第2の実施形態における無電解めっき方法を用いた回路形成方法について、図5を参照して説明する。
【0141】
図5は、本実施形態の回路形成方法の各工程を示す概念図である。
【0142】
まず、ガラス成分を表面に有するセラミック基材1を用意する。このセラミック基材1にはビアホール11が形成され、ビアホール11の内面にはAg層12が設けられており、これにより、Ag系のビア13が形成されている。このセラミック基材1を脱脂洗浄する。
【0143】
続いて、図5(a)に示すように、このセラミック基材1の第1面2aおよび第2面2bにレジスト3を塗布し、所定のマスクを用いて露光、現像を行うことにより、所定のパターンのレジスト3を形成した後、十分に水洗する。
【0144】
次に、図5(b)に示すように、第1触媒処理を行ってセラミック基材の第1面2aおよび第2面2bに第1触媒層5を形成した後、図5(c)に示すように、レジスト3を除去して第1触媒層5を所定のパターンに形成する。その後、酸素雰囲気中においてセラミック基材1を加熱することにより銅めっき前熱処理を行い、そして、セラミック基材1の冷却過程においてビア13の表面に形成される酸化膜を除去する処理を行う。
【0145】
その後、再度、セラミック基材1上にレジスト3を図5(d)に示すようなパターンに形成し、積層触媒処理を行って、セラミック基材1の第1面2aおよび第2面2bに積層触媒層9を形成した後、レジスト3を除去し、図5(e)に示すように第1触媒層5および積層触媒層9によって所定のパターンを形成し、セラミック基材1を十分に水洗する。
【0146】
さらに、セラミック基材1を、ホルマリン水溶液に浸漬させて第1触媒層5および積層触媒層9を還元した後、水洗せずに、図5(f)に示すように、セラミック基材1を銅めっき液に所定時間浸漬させて、第1触媒層5および積層触媒層9上に銅めっき膜6を形成する。
【0147】
続いて、銅めっき膜6を形成したセラミック基材1を十分に洗浄した後、前記セラミック基材1を十分に水洗してから乾燥させる。
【0148】
さらに、ガラス転移温度以下の熱処理温度によって、所定の熱処理時間、前記セラミック基材1に銅めっき後熱処理を行った後、銅めっき後触媒処理を行ってセラミック基材1の第1面2aおよび第2面2bに第2触媒層10を形成する。そして、図5(g)に示すように、前記銅めっき膜6上に、前記第2めっき処理工程によりニッケルめっき膜7、および前記第3めっき処理工程により金めっき膜8を積層形成する。
【0149】
その後、ニッケル合金の硬度が変化しない温度以下の温度によって、所定の熱処理時間、前記セラミック基材1にニッケルめっき後熱処理を行うことにより、セラミック基材1上に所定の配線パターンの回路を形成する。
【0150】
第2の実施形態によれば、前記無電解めっき方法を用いて回路を形成することにより、セラミック基材1に対し第1触媒層5および積層触媒層9を良好に密着させることができるとともに、第1触媒層5および積層触媒層9と銅めっき膜6とを良好に密着させることができる。さらに、銅めっき膜6とニッケルめっき膜7や金めっき膜8とを良好に密着させることができる。
【0151】
したがって、Ag系のビア13を有するセラミック基材1における鏡面状の第1面2aおよび第2面2bに回路を形成することができるので、セラミック基材1上において配線パターンをファインピッチに形成することが可能となり、さらには、回路の高周波特性を向上させることができる。
【0152】
また、銅めっき前熱処理工程における熱処理温度を酸化銀の分解温度以上とすることにより、銅めっき前熱処理工程中にAg層12に酸化膜が形成されてしまうのを防止することができるとともに、酸化膜除去工程において、ビア13のAg層12に形成された酸化膜を除去することができるすることができる。
【0153】
なお、前述の第1および第2の無電解めっき方法を用いた回路形成方法の実施形態においては、第1触媒層5および積層触媒層9を所定の形状にパターニングした後、めっき処理を行うようにしたが、これに限定されるものではない。例えば、本発明に係る無電解めっき方法を用いた回路形成方法の他の実施形態として、第1めっき処理を行った後、銅めっき膜6上にレジスト3を塗布し、前記レジスト3を露光・現像して、所定のパターンのレジスト3を形成する。そして、銅めっき膜6をエッチングして所定の配線パターンを形成した後、銅めっき膜6上に残っているレジスト3を除去することにより、回路を形成してもよい。
【0154】
続いて、前記めっき基板20の製造するための他の無電解めっき方法および回路形成方法について図6および図7を参照して説明する。
【0155】
図6は、第3の実施形態に係る無電解めっき方法の各工程を示すフローチャートである。
【0156】
まず、本実施形態に係る無電解めっき方法に用いられる基材1として、ホウ珪酸ガラスからなるガラス基材1を用意する。なお、ガラス基材1としては、ホウ珪酸ガラスに限定されず、ソーダライムガラス等からなる種々のガラス基材1を用いることができる。
【0157】
そして、図1に示すように、このガラス基材1における銅めっき膜6を形成する被処理面を鏡面状となるように研磨した後(ST41)、このガラス基材1に付着したゴミや油脂類等の不純物を除去するため、ガラス基材1を脱脂洗浄する(ST42)。なお、無研磨であっても良好な鏡面を有するガラス基材1を用いる場合には、前記ガラス基材1の被処理面を研磨する工程(ST41)を除く場合がある。
【0158】
一方、1.33%の塩化錫、0.54%の塩酸を含む塩酸性の塩化錫水溶液、および0.015%の塩化パラジウムを含む塩化パラジウム水溶液を用意する。
【0159】
そして、前記脱脂洗浄をしたガラス基材1を、23℃の塩化錫水溶液中に3分間浸漬させた後、十分に水洗する。
【0160】
続いて、前記ガラス基材1を、30℃の塩化パラジウム水溶液中に2分間浸漬させた後、十分に水洗する。
【0161】
また、前記ガラス基材1を、再度塩化錫水溶液中に2分間浸漬させた後、さらに、塩化パラジウム水溶液中に1分間浸漬させることにより、第1触媒層5を形成する第1触媒処理を行う(ST43)。
【0162】
なお、前述の触媒処理工程においては、塩化錫水溶液および塩化パラジウム水溶液にかえて、錫・パラジウムコロイド溶液を用いてもよい。
【0163】
このように、ガラス基材1を塩化錫水溶液と塩化パラジウム水溶液とに交互に浸漬させて第1触媒処理を行った後、このガラス基材1を十分に水洗し、約0.05%の硫酸(HSO)を含むホルマリン約4%のホルマリン水溶液に1分間浸漬することにより、第1触媒層を還元する(ST44)。
【0164】
続いて、被処理面に銅めっき膜6を形成するための第1めっき処理を行う。この第1めっき処理においては、2.5g/L(0.039mol/L)の銅イオン(Cu)と、0.23g/L(0.039mol/L)のニッケルイオン(Ni)と、錯化剤として酒石酸ナトリウムカリウム四水和物(ロッシェル塩)(KNaC・4HO)と、還元剤として約0.2%のホルムアルデヒド(CHO)を含む銅めっき液を用いる。すなわち、本実施形態における銅めっき液には、前記銅めっき液に含まれる銅イオン100モルに対し、10モルのニッケルイオンが含まれている。
【0165】
なお、ニッケルイオンの添加量は、本実施形態に限定されるものではないが、好ましくは、銅めっき液に含まれる銅イオン100モルに対し1〜25モルのニッケルイオンが含まれるとよい。
【0166】
さらに、この銅めっき液には、pH調整のための約1.5g/Lの水酸化ナトリウム(NaOH)が含まれてpHが約12.6に調整されているほか、さらに、約0.1%のキレート剤が含まれている。
【0167】
そして、ガラス基材1を36℃の銅めっき液に所定時間浸漬させることにより、被処理面に約2μmの膜厚の銅めっき膜6を形成する第1めっき処理を行う(ST45)。
【0168】
続いて、銅めっき膜6を形成したガラス基材1を十分に洗浄した後、乾燥させる(ST46)。
【0169】
さらに、乾燥させたガラス基材1を、例えば窒素ガス等の不活性ガス雰囲気中や真空中等の実質的に酸素および水素を含まない雰囲気中において、ガラス転移温度以下の熱処理温度により所定の熱処理時間加熱する銅めっき後熱処理を行う(ST47)。ここで、銅めっき後熱処理工程における熱処理温度については、250〜450℃の範囲内で、また熱処理時間については、10分以上の熱処理が行われることが好ましい。これにより、ガラス基材1の被処理面に銅めっきを形成し、めっき基板20を製造する。
【0170】
なお、銅めっき後熱処理工程において、ガラス基材1に所定の圧力を加えながら熱処理を行ってもよい。所定の圧力を加えながら熱処理を行う場合、熱処理温度は150〜400℃であることが好ましい。
【0171】
続いて、銅めっきが形成されたガラス基材1に第2触媒層10を形成する第2触媒処理を行う(ST48)。第2触媒処理工程においては、例えば、前記ガラス基材1を、所定温度のパラジウム溶液に所定時間浸漬させることにより行う。なお、第2触媒処理工程において、触媒の条件は本実施形態に限定されるものではない。
【0172】
そして、第2触媒層9を形成したガラス基材1を純水を用いて洗浄した後、このガラス基材1を、所定温度のニッケル−リンめっき液に所定時間浸漬させることにより、約2μmの膜厚のニッケルめっき膜7を形成する第2めっき処理を行う(ST49)。第2めっき処理工程のめっき処理時間については、20分程度が好ましく、めっき処理温度は80℃程度が好ましい。
【0173】
さらに、前記ガラス基材1を、所定温度の金めっき液に所定時間浸漬させることにより、約0.05μmの膜厚の金めっき膜8を形成する第3めっき処理を行う(ST50)。第3めっき処理工程のめっき処理時間については10分程度が好ましく、めっき処理温度は60℃程度が好ましい。
【0174】
なお、第2めっき処理工程および第3めっき処理工程のめっき処理条件は、本実施形態に限定されるものではない。
【0175】
その後、ニッケルめっき膜7および金めっき膜8が形成されたガラス基材1を、例えば窒素ガス等の不活性ガス雰囲気中や真空中等の実質的に酸素および水素を含まない雰囲気中において、所定の熱処理温度により所定の熱処理時間加熱するニッケルめっき後熱処理を行う(ST51)。ここで、前記熱処理温度については、150〜350℃の範囲内で、また熱処理時間については、10分〜12時間の熱処理が行われることが好ましい。これにより、ガラス基材1に高密着性のニッケルめっき膜7および金めっき膜8を形成する。
【0176】
次に、第3の実施形態に係る無電解めっき方法の作用について説明する。
【0177】
本実施形態によれば、ガラス基材1に形成された第1触媒層5には錫とパラジウムが存在し、めっき処理後に熱処理を行うことにより、ガラス基材1と第1触媒層5との界面において錫がガラスの酸素と結合するため、ガラス基材1に対し第1触媒層5を高密着させることができると考えられる。また、前記銅めっき後熱処理工程により、錫とパラジウムとが金属結合し、さらには、銅めっき液中におけるニッケルイオンの存在によって、第1触媒層5と銅めっき膜6との高い密着力が確保されると考えられる。この密着力向上の効果は、前述の脱脂工程で表面の不純物を除去することにより、さらに顕著に現れるようになる。
【0178】
さらに、前記銅めっき膜6上に、単にニッケルめっき膜7や金めっき膜8を形成しても、ニッケルめっき膜7および金めっき膜8を形成した銅めっき膜6は、基材1から剥離しやすいことがわかっている。そこで、第2めっき処理工程および第3めっき処理工程の後、ニッケルめっき後熱処理を行うことにより、銅めっき膜6と基材1との密着性を向上させることができる。
【0179】
したがって、ガラス基材1における被処理面が鏡面状であっても、被処理面に銅めっき膜6を高密着させることができ、これにより、銅めっき膜6により電極を形成する場合に、配線パターンをファインピッチに形成することができる。さらに、本実施形態における無電解めっき方法においては、ガラス基材1の被処理面に凹凸形状を形成するための粗面化処理を行う必要がないので、粗面化処理にともなう種々の不都合を排除することができる。
【0180】
さらにまた、銅めっき膜6とニッケルめっき膜7や金めっき膜8との密着性を向上させることができ、これにより、銅めっき膜6上にニッケルめっき膜7や金めっき膜8を形成して電極を構成する場合に、配線パターンをファインピッチに形成することができる。
【0181】
また、銅めっき後熱処理工程を圧力を加えながら行うことにより、ナノメートルオーダーの凹凸に追随してめっき膜が密着するので、銅めっき後熱処理工程の熱処理温度をより低温度にして銅めっき膜6の密着力を向上させることができる。
【0182】
次に、第3の実施形態の無電解めっき方法を用いた回路形成方法について、図7を参照して説明する。
【0183】
図7は、本実施形態の回路形成方法の各工程を示す概念図である。
【0184】
まず、本実施形態において回路基板を構成するガラス基材1として、ホウ珪酸ガラス等からなるガラス基材1を用意し、このガラス基材1における被処理面を、鏡面状となるように研磨した後、ガラス基材1を脱脂洗浄する。
【0185】
続いて、図7(a)に示すように、ガラス基材1の被処理面2にフォトレジストを塗布し、所定のマスクを用いて露光、現像を行うことにより、所定のパターンのレジスト3を形成する。
【0186】
次に、図7(b)に示すように、触媒処理を行って第1触媒層5を形成した後、レジスト3を除去して、第1触媒層5を所定のパターンに形成する。
【0187】
さらに、ガラス基材1をホルマリン水溶液に1分間浸漬させて触媒層5を還元した後、水洗せずに、図7(c)に示すように、前記ガラス基材に第1の実施形態と同様の工程によってめっき処理を行う。
【0188】
そして、図7(d)に示すように、ガラス基材1を36℃の温度の銅めっき液に所定時間浸漬させて、第1触媒層5上に約2μmの膜厚の銅めっき膜6を形成する。
【0189】
続いて、銅めっき膜6を形成したガラス基材1を十分に洗浄した後、乾燥させる。
【0190】
さらに、N等の不活性ガス中で、ガラス転移温度以下の熱処理温度によって、所定の熱処理時間、前記ガラス基材1に銅めっき後熱処理を行った後、第2触媒処理を行ってガラス基材1に第2触媒層10を形成する。そして、図7(e)に示すように、前記銅めっき膜6上に、前記無電解めっき方法と同様の工程によってニッケルめっき膜7、および金めっき膜8を積層形成する。
【0191】
その後、ニッケル合金の硬度が変化しない温度以下の温度によって、所定の熱処理時間、前記ガラス基材1にニッケルめっき後熱処理を行うことにより、ガラス基材1上に所定の配線パターンの回路を形成する。
【0192】
次に、第3の実施形態における回路形成方法の作用について説明する。
【0193】
本実施形態によれば、ガラス基材1に対し第1触媒層5を良好に密着させることができるとともに、第1触媒層5と銅めっき膜6とを良好に密着させることができる。さらに、第2触媒層10を介して銅めっき膜6とニッケルめっき膜7や金めっき膜8とを良好に密着させることができる。
【0194】
したがって、ガラス基材1における鏡面状の被処理面2に回路を形成することができるので、ガラス基材1上において配線パターンをファインピッチに形成することが可能となる。
【0195】
また、鏡面状の被処理面2に各めっき膜によって回路を形成することができるので、回路の高周波特性を向上させることができる。
【0196】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、必要に応じて種々変更することが可能である。
【0197】
例えば、前記各実施形態においては、第2めっき処理および第3めっき処理を行った後、ニッケルめっき後熱処理を行うことにより、銅めっき膜6と基材1との密着性の向上を図っているが、これに限定されるものではない。例えば、第2めっき処理の後に所定時間、所定の温度で熱処理を行うことにより、銅めっき膜6と基材1との密着性の向上を図ることができる。
【実施例】
【0198】
(実施例1)
約50%のホウ珪酸ガラスと約50%のアルミナ微粉とを混合して、ガラス成分を有するセラミック基材を、脱脂洗浄した。
【0199】
続いて、前記セラミック基材を、前記第1の実施形態に示す23℃の塩化錫水溶液に3分間浸漬させてから、十分水洗した後、前記第1の実施形態に示す30℃の塩化パラジウム水溶液に2分間浸漬させた。
【0200】
さらに、前記セラミック基材を、前記塩化錫水溶液に2分間浸漬させた後、前記塩化パラジウム水溶液に1分間浸漬させて触媒層を形成し、十分に水洗した後、乾燥させた。
【0201】
次に、前記セラミック基材に対し、表1に示すように、熱処理温度を250〜450℃の範囲内において異ならせて、熱処理時間を10分〜2時間の範囲内で空気中において銅めっき前熱処理を行った。
【0202】
銅めっき前熱処理工程の後、第1の実施形態に記載のホルマリン水溶液に1分間浸漬させて触媒層を還元させた。
【0203】
また、本実施例においては、2.5g/L(0.039mol/L)の銅イオンと、酒石酸ナトリウムカリウム四水和物と、約0.2%のホルムアルデヒドを含み、さらに、約1.5g/Lの水酸化ナトリウム(NaOH)および約0.1%のキレート剤を含む銅めっき液を用意した。このような銅めっき液において、表1に示すように、0.00039mol/L、0.0023mol/L、0.0039mol/L、0.01mol/Lのニッケルイオンが含まれる銅めっき液、およびニッケルイオンが含まれない銅めっき液の5種類を用意した。
【0204】
そして、前記セラミック基材を、36℃に設定された各銅めっき液のうちいずれか1種類の銅めっき液にそれぞれ浸漬させ、2μmの膜厚の銅めっき膜を形成した後、セラミック基材を十分に洗浄してから、乾燥させた。
【0205】
さらに、前記セラミック基材に対し、表1に示すように、熱処理温度を250〜450℃の範囲内において異ならせて、10分〜2時間の熱処理時間の範囲内において窒素雰囲気により銅めっき後熱処理を行い、セラミック基材に銅めっき膜を形成した。
【0206】
このように、めっき処理における銅めっき液中のニッケルイオンの添加量の条件、銅めっき前熱処理および銅めっき後熱処理における熱処理温度および熱処理時間の条件をそれぞれ異ならせて形成した銅めっき膜について、セラミック基材に対する銅めっき膜の密着力を比較した。
【0207】
密着力の評価は、底面が平坦であってこの底面にエポキシ樹脂がコーティングされた直径2mmのアルミ製の評価用ピンを用い、評価用ピンの底面を銅めっき膜に接触させて150℃の温度で加熱し、エポキシ樹脂を介して評価用ピンを銅めっき膜に固着させる。そして、評価用ピンを介して引っ張り試験を行い、銅めっき膜がセラミック基材から剥離するときの引っ張り強度(MPa)を、セラミック基材における第1面および第1面よりも表面が粗い第2面の両面について測定することにより行った(セバスチャン法)。
【0208】
【表1】

【0209】
表1によれば、ニッケルイオンの濃度が、0.00039mol/L〜0.001mol/Lの銅めっき液を用いた場合には、セラミック基材における第1面および第2面のいずれにおいても、引っ張り強度がほぼ30Mpa以上となり、セラミック基材が破壊してしまうか、または評価用ピンと銅めっき膜との接着部が破壊してしまう程度にまで、銅めっき膜の密着力を向上させることができた。これにより、銅めっき膜と触媒層との界面または触媒層とセラミック基材との界面において剥離は生じなかった。一方、ニッケルイオンを含まない銅めっき液を用いた場合には、銅めっき膜とセラミック基材との密着力をほとんど確保することができなかった。
【0210】
また、シリコン酸化膜基材、アルミナ焼結基材、サファイヤ基材、石英ガラス基材、単結晶石英基材に、実施例1と同一の条件によって、ニッケルイオンの濃度が0.00039mol/L〜0.01mol/Lの銅めっき液を用いた電解めっき方法を行ったところ、各基材における銅めっき膜の引っ張り強度は、ほぼ50Mpa以上となり、銅めっき膜の密着力を向上させることができた。
【0211】
一方、比較例として、表2に示すように、銅めっき前熱処理および銅めっき後熱処理を行わずに、他の工程については前述の実施例1と同一の条件の下、セラミック基材に銅めっき膜を形成し、前述のセバスチャン法と同一の条件で、セラミック基材から銅めっき膜が剥離するときの引っ張り強度を測定した。また、銅めっき前熱処理工程および銅めっき後熱処理工程のうち、2時間の熱処理時間、450℃の熱処理温度の条件の下銅めっき前熱処理のみを行い、さらには、7時間の熱処理時間、450℃の熱処理温度の条件の下、銅めっき後熱処理のみを行って形成した銅めっき膜についても、同様に引っ張り強度を測定した。
【0212】
【表2】

【0213】
表2に示すように、銅めっき前熱処理および銅めっき後熱処理とも行わなかった場合には、セラミック基材の第1面および第2面においてともに銅めっき膜とセラミック基材との密着力を確保することができなかった。また、いずれか一方の熱処理のみを行った場合には、いずれも第1面において銅めっき膜とセラミック基材との密着力を確保することができなかった。さらに、第2面においては、銅めっき膜とセラミック基材との密着力は確保できるものの、引っ張り強度はほぼ20Mpa以下であり、銅めっき膜はセラミック基材から容易に剥離してしまった。
【0214】
(実施例2)
約50%のホウ珪酸ガラスと約50%のアルミナ微粉とを混合して、ガラス成分を有するセラミック基材を脱脂洗浄した。
【0215】
続いて、第1面および第2面にレジストを塗布し、所定のパターンのマスクを用いて前記フォトレジストを露光・現像し、所定のパターンのレジストを形成した後、十分に水洗した。
【0216】
次に、前記セラミック基材を、第1の実施形態の無電解めっき方法を用いた回路形成方法において示す塩化錫水溶液に3分間浸漬させてから、十分水洗した後、前記第1の実施形態に示す塩化パラジウム水溶液に2分間浸漬させた。
【0217】
さらに、前記セラミック基材を再度前記塩化錫水溶液に2分間浸漬させた後、前記塩化パラジウム水溶液に1分間浸漬させ、十分に水洗した後、レジストを除去し所定のパターンの触媒層を形成した。
【0218】
そして、セラミック基材を十分に水洗した後、乾燥し、空気中において450度の熱処理温度と30分の熱処理時間の条件の下、銅めっき前熱処理を行った。
【0219】
続いて、セラミック基材を十分に水洗した後、前記第1の実施形態に記載のホルマリン水溶液に1分間浸漬させて触媒層を還元し、その後水洗せずにめっき処理を行った。
【0220】
ここで、実施例2においては、2.5g/L(0.039mol/L)の銅イオンと、0.14g/L(0.0024mol/L)のニッケルイオンと、酒石酸ナトリウムカリウム四水和物と、約0.2%のホルムアルデヒドを含み、さらに、約1.5g/Lの水酸化ナトリウム(NaOH)および約0.1%のキレート剤を含む銅めっき液を用意した。
【0221】
そして、36℃の前記銅めっき液に前記セラミック基材を浸漬させ、2μmの膜厚の銅めっき膜を形成した後、セラミック基材を十分に洗浄してから、乾燥させた。
【0222】
続いて、前記セラミック基材に対し、窒素雰囲気において、350℃の熱処理温度および30分の熱処理時間の条件の下に銅めっき後熱処理を行い、セラミック基材に銅めっき膜を形成した。
【0223】
さらに、前記セラミック基材を、十分に洗浄して乾燥させた後、30℃のパラジウム溶液に1分間浸漬させて触媒処理を行い、その後、純水を用いて洗浄した。
【0224】
そして、前記セラミック基材を、80℃の無電解ニッケル−リンめっき液に20分間浸漬させて、2μmのニッケルめっき膜を形成した後、60℃の金めっき液に10分間浸漬させて0.05μmの金めっき膜を積層形成した。その後、窒素雰囲気中において、350℃の熱処理温度および1時間の熱処理時間の条件の下にニッケルめっき後熱処理を行い、セラミック基材上に回路を形成した。
【0225】
このように形成された回路におけるニッケルめっき膜および金めっき膜の引っ張り強度は、64Mpaとなり、密着力を向上させることができた。銅めっき膜の比抵抗は、約2.5〜5μΩ・cmとなり、高周波特性の高い回路を形成することができた。
【0226】
さらに、シリコン酸化膜が形成されたシリコン基材に、実施例2の回路形成方法により回路を形成したところ、シリコン基材におけるニッケルめっき膜および金めっき膜の引っ張り強度は、50Mpa以上となり、密着力を向上させることができた。また、銅めっき膜の比抵抗は、約2.5〜5μΩ・cmとなり、高周波特性の高い回路を形成することができた。
【0227】
(実施例3)
約50%のホウ珪酸ガラスと約50%のアルミナ微粉とを混合して、ガラス成分を有するセラミック基材であってAg系のビアが形成されたものを、水酸化ナトリウム、炭酸塩、リン酸塩等を含む脱脂液によって脱脂洗浄した。
【0228】
続いて、前記セラミック基材を、前記第2の実施形態に示す23℃の塩化錫水溶液に3分間浸漬させてから、十分水洗した後、前記第2の実施形態に示す30℃の塩化パラジウム水溶液に2分間浸漬させた。さらに、前記セラミック基材を、前記塩化錫水溶液に2分間浸漬させた後、前記塩化パラジウム水溶液に1分間浸漬させて触媒層を形成し、十分に水洗した後、乾燥させた。
【0229】
次に、前記セラミック基材に対し、表3に示すように、熱処理温度を250℃と、450℃とに異ならせ、熱処理時間を10分〜2時間の範囲内において空気中において銅めっき前熱処理を行った。
【0230】
銅めっき前熱処理工程の後、常温の3%のH水溶液を用いて、1分間、酸化膜除去の処理を行い、十分に水洗した後、第2の実施形態に記載のホルマリン水溶液に1分間浸漬させて触媒層を還元させた。
【0231】
また、実施例3においては、2.5g/L(0.039mol/L)の銅イオンと、酒石酸ナトリウムカリウム四水和物と、約0.2%のホルムアルデヒドを含み、さらに、約1.5g/Lの水酸化ナトリウム(NaOH)および約0.1%のキレート剤を含む銅めっき液を用意した。このような銅めっき液において、表3に示すように、0.00039mol/L、0.0023mol/L、0.0039mol/L、0.01mol/Lのニッケルイオンが含まれる銅めっき液、およびニッケルイオンが含まれない銅めっき液の5種類を用意した。
【0232】
そして、前記セラミック基材を、36℃に設定された各銅めっき液のうち1種類の銅めっき液にそれぞれ浸漬させ、2μmの膜厚のめっき膜を形成した後、セラミック基材を十分に洗浄してから、十分水洗した後に乾燥させた。
【0233】
さらに、前記セラミック基材に対し、表3に示すように、熱処理温度を250℃と、450℃とに異ならせ、10分〜2時間の熱処理時間の範囲内において窒素雰囲気により銅めっき後熱処理を行い、セラミック基材に銅めっきを形成した。
【0234】
このように、めっき処理における銅めっき液中のニッケルイオンの添加量の条件、銅めっき前熱処理および銅めっき後熱処理における熱処理温度および熱処理時間の条件をそれぞれ異ならせて形成した銅めっき膜について、ビアのAg層に対する銅めっき膜の密着力を比較した。
【0235】
密着力の評価は、実施例1と同様のセバスチャン法により、銅めっきがAg層から剥離するときの引っ張り強度を、セラミック基材における第1面および第1面よりも表面が粗い第2面の両面側のAg層について測定することにより行った。
【0236】
【表3】

【0237】
表3によれば、ニッケルイオンの濃度が、0.00039mol/L〜0.01mol/Lの銅めっき液を用いた場合には、第1面および第2面のいずれの面側のAg層においても、引っ張り強度がほぼ30Mpa以上となり、Ag層が破壊してしまうか、または評価用ピンとめっき膜との接着部が破壊してしまう程度にまで、銅めっきの密着力を向上させることができた。これにより、銅めっき膜と触媒層との界面または触媒層とAg層との界面において剥離は生じなかった。一方、ニッケルイオンを含まない銅めっき液を用いた場合には、銅めっき膜とAg層との密着力をほとんど確保することができなかった。
【0238】
また、比較例として、表4に示すように、銅めっき前熱処理および銅めっき後熱処理を行わずに、他の工程については第3の実施例と同一の条件の下、Ag層が形成されたセラミック基材に銅めっき膜を形成し、前述のセバスチャン法と同一の条件で、Ag層から銅めっき膜が剥離するときの引っ張り強度を測定した。また、銅めっき前熱処理工程および銅めっき後熱処理工程のうち、2時間の熱処理時間、450℃の熱処理温度の条件の下銅めっき前熱処理のみを行い、さらには、7時間の熱処理時間、450℃の熱処理温度の条件の下銅めっき後熱処理のみを行って形成した銅めっき膜についても、同様に引っ張り強度を測定した。
【0239】
【表4】

【0240】
表4に示すように、銅めっき前熱処理および銅めっき後熱処理とも行わなかった場合には、セラミック基材の第1面および第2面側に形成されたAg層においてともに銅めっき膜とAg層との密着力を確保することができなかった。また、銅めっき前熱処理のみを行った場合には、第1面および第2面において、銅めっき膜とAg層との密着力をほとんど確保することができなかった。一方、銅めっき後熱処理のみを行った場合、ニッケルイオンの濃度が、0.00039mol/L〜0.01mol/Lの銅めっき液を用いて銅めっき膜を形成すると、セラミック基材における第1面および第2面のいずれの面側のAg層においても、引っ張り強度が45Mpa以上となり、銅めっき膜の密着力を向上した。
【0241】
(実施例4)
約50%のホウ珪酸ガラスと約50%のアルミナ微粉とを混合して、ガラス成分を有するセラミック基材であってAg系のビアが形成されたものを脱脂洗浄した。
【0242】
続いて、第1面および第2面にレジストを塗布し、所定のパターンのマスクを用いて前記レジストを露光・現像し、所定のパターンのレジストを形成した後、十分に水洗した。
【0243】
次に、前記セラミック基材を、第2の実施形態の無電解めっき方法を用いた回路形成方法において示す塩化錫水溶液に3分間浸漬させてから、十分水洗した後、前記第2の実施形態に示す塩化パラジウム水溶液に2分間浸漬させた。
【0244】
さらに、前記セラミック基材を再度前記塩化錫水溶液に2分間浸漬させた後、前記塩化パラジウム水溶液に1分間浸漬させ、十分に水洗した後、レジストを除去し所定のパターンの触媒層を形成した。
【0245】
そして、セラミック基材を十分に水洗した後、乾燥し、空気中において熱処理温度450℃、熱処理時間30分の条件の下、銅めっき前熱処理工程を行った。
【0246】
銅めっき前熱処理工程の後、常温の3%のH水溶液を用いて、1分間、酸化膜除去の処理を行い、十分に水洗した後、前記第2の実施形態に記載のホルマリン水溶液に1分間浸漬させて触媒層を還元し、その後水洗せずにめっき処理を行った。
【0247】
ここで、実施例4においては、2.5g/L(0.039mol/L)の銅イオンと、0.14g/L(0.0024mol/L)のニッケルイオンと、酒石酸ナトリウムカリウム四水和物と、約0.2%のホルムアルデヒドを含み、さらに、約1.5g/Lの水酸化ナトリウム(NaOH)および約0.1%のキレート剤を含む銅めっき液を用意した。
【0248】
そして、36℃の前記銅めっき液に前記セラミック基材を浸漬させ、2μmの膜厚の銅めっき膜を形成した後、セラミック基材を十分に洗浄してから乾燥させた。
【0249】
続いて、前記セラミック基材に対し、窒素雰囲気において、350℃の熱処理温度および30分の熱処理時間の条件の下に銅めっき後熱処理を行い、セラミック基材に銅めっき膜を形成した。
【0250】
さらに、銅めっき膜上に、無電解ニッケルめっき方法により2μmのニッケルめっき膜、さらに無電解金めっき方法により膜厚0.05μmの金めっき膜を積層形成して、セラミック基材上に回路を形成した。
【0251】
このように形成された回路における銅めっき膜の比抵抗は、約2.5〜5μΩ・cmとなり、高周波特性の高い回路を形成することができた。
【0252】
(実施例5)
基材として、サファイア基材を用い、サファイア基材を、15%の濃度の50℃の水酸化ナトリウムを用いて3分間脱脂洗浄した。
【0253】
続いて、前記基材を、0.005mol/Lの塩化錫を含む室温の塩酸性の塩化錫水溶液に3分間浸漬させてから、十分水洗した後、0.003mol/Lの塩化パラジウムを含む30℃の塩化パラジウム水溶液に2分間浸漬させ、十分に水洗した後、乾燥させた。
【0254】
その後、空気中において熱処理温度400℃、熱処理時間1時間の条件の下、銅めっき前熱処理を行った。
【0255】
銅めっき前熱処理工程の後、再度、前記触媒工程と同様の塩酸性の塩化錫水溶液に3分間浸漬させてから、十分水洗した後、0.003mol/Lの塩化パラジウムを含む30℃の塩化パラジウム水溶液に2分間浸漬させて触媒層を形成し、十分に水洗した後、乾燥させた。
【0256】
さらに、第1の実施形態に記載のホルマリン水溶液に1分間浸漬させて触媒層を還元し、その後水洗せずに銅めっき処理を行った。
【0257】
本実施例においては、2.5g/L(0.039mol/L)の銅イオンと、0.138g/L(0.0023mol/L)のニッケルイオンと、錯化剤として酒石酸ナトリウムカリウム四水和物(ロッシェル塩)と、還元剤として約0.2%のホルムアルデヒドとを含み、さらに、pHが約12.6に調整され、約0.1%のキレート剤を含む銅めっき液を用意した。そして、前記各基材を、前記銅めっき液に浸漬させて、約1μmの銅めっき膜を形成した後、十分洗浄してから乾燥させた。
【0258】
さらに、前記サファイア基材に対し、熱処理温度を150℃とし、1kg/cm2の圧力を加えながら、熱処理時間を1時間として窒素雰囲気中において銅めっき後熱処理を行った。
【0259】
このように形成された銅めっき膜について、150℃の温度で行う銅めっき後熱処理工程において、所定の圧力を加えた場合には、サファイア基材における銅めっき膜の引っ張り強度が40Mpa以上となり、銅めっき膜の密着力を向上させることができた。一方、圧力を加えない場合には、銅めっき膜とサファイア基材との密着力をほとんど確保することができなかった。
【0260】
(実施例6)
ホウ珪酸ガラスからなるガラス基材の被処理面を研磨して鏡面状とし、前記ガラス基材を脱脂洗浄した。
【0261】
続いて、前記ガラス基材を、前記第3の実施形態に示す塩化錫水溶液に3分間浸漬させてから、十分水洗した後、前記第3の実施形態に示す塩化パラジウム水溶液に2分間浸漬させた。
【0262】
さらに、前記ガラス基材を、前記塩化錫水溶液に2分間浸漬させた後、前記塩化パラジウム水溶液に1分間浸漬させて触媒層を形成し、十分に水洗した後、第3の実施形態に記載のホルマリン水溶液に1分間浸漬させて触媒層を還元させた。
【0263】
また、本実施例においては、2.5g/L(0.039mol/L)の銅イオンと、酒石酸ナトリウムカリウム四水和物と、約0.2%のホルムアルデヒドを含み、さらに、約1.5g/Lの水酸化ナトリウム(NaOH)および約0.1%のキレート剤を含む銅めっき液を用意した。このような銅めっき液において、表5に示すように0.00039mol/L、0.0023mol/L、0.0039mol/L、0.01mol/Lのニッケルイオンが含まれる銅めっき液、およびニッケルイオンが含まれない銅めっき液の5種類を用意した。
【0264】
そして、前記ガラス基材を、各銅めっき液のうち1種類の銅めっき液にそれぞれ浸漬させ、2μmの膜厚の銅めっき膜を形成した後、ガラス基材を十分に洗浄してから、乾燥させた。
【0265】
さらに、前記ガラス基材に対し、表5に示すように、熱処理温度を150〜450℃、熱処理時間を10〜120分の範囲内において異ならせて、窒素雰囲気により熱処理を行い、ガラス基材に銅めっき膜を形成した。
【0266】
このように、めっき処理における銅めっき液中のニッケルイオンの添加量の条件、熱処理における熱処理温度および熱処理時間の条件をそれぞれ異ならせて形成した銅めっき膜について、ガラス基材に対する銅めっき膜の密着力を比較した。
【0267】
密着力の評価は、第1実施例のセバスチャン法と同様の条件によって引っ張り試験を行い、銅めっき膜がガラス基材から剥離するときの引っ張り強度(MPa)を測定した。
【0268】
【表5】

【0269】
表5によれば、0.00039mol/L〜0.01mol/Lのニッケルイオンを含んだ銅めっき液を用いて銅めっき膜を形成した場合には、ガラス基材が破壊してしまうか、または評価用ピンと銅めっき膜との接着部が破壊してしまう程度にまで、ガラス基材と銅めっき膜との密着力を向上させることができた。このように、銅めっき膜と触媒層との界面または触媒層とガラス基材との界面において剥離せず、ガラス基材と銅めっき膜との密着力は極めて良好となった。
【0270】
なお、前述した熱処理時間の範囲内ではないが、120分以上熱処理を行った場合、ガラス基材と銅めっき膜との密着力は、120分程度熱処理を行ったものとあまり変化がなかった。
【0271】
一方、ニッケルイオンを含まない銅めっき液を用いた場合には、銅めっき膜とガラス基材との密着力をほとんど確保することができず、さらに、銅めっき膜を形成した後に熱処理を行わない場合には、銅めっき膜が触媒層と銅めっき膜との界面から容易に剥離してしまった。
【0272】
(実施例7)
ホウ珪酸ガラスからなるガラス基材の被処理面を研磨して鏡面状とし、前記ガラス基材を脱脂洗浄した。
【0273】
続いて、被処理面にフォトレジストを塗布し、所定のパターンのマスクを用いて前記フォトレジストを露光・現像し、所定のパターンのレジストを形成した後、十分に水洗した。
【0274】
次に、前記ガラス基材を、第3の実施形態における無電解めっき方法用いた回路形成方法に示す塩化錫水溶液に3分間浸漬させてから、十分水洗した後、前記第3の実施形態に示す塩化パラジウム水溶液に2分間浸漬させた。
【0275】
さらに、前記ガラス基材を再度前記塩化錫水溶液に2分間浸漬させた後、前記塩化パラジウム水溶液に1分間浸漬させ、十分に水洗した後、レジストを除去し所定のパターンの触媒層を形成した。
【0276】
そして、ガラス基材を十分に水洗した後、前記第3の実施形態に記載のホルマリン水溶液に1分間浸漬させて触媒層を還元し、その後水洗せずにめっき処理を行った。
【0277】
ここで、実施例7においては、2.5g/L(0.039mol/L)の銅イオンと、0.14g/L(0.0024mol/L)のニッケルイオンと、酒石酸ナトリウムカリウム四水和物と、約0.2%のホルムアルデヒドを含み、さらに、約1.5g/Lの水酸化ナトリウム(NaOH)および約0.1%のキレート剤を含む銅めっき液を用意した。
【0278】
そして、36℃の前記銅めっき液に前記ガラス基材を浸漬させ、2μmの膜厚の銅めっき膜を形成した後、ガラス基材を十分に洗浄してから、乾燥させた。
【0279】
続いて、前記ガラス基材に対し、窒素雰囲気において、450℃の熱処理温度および60分の熱処理時間によって銅めっき後熱処理を行い、ガラス基材に銅めっき膜を形成した。
【0280】
さらに、前記ガラス基材を、十分に洗浄し、乾燥させた後、30℃のパラジウム溶液に1分間浸漬させて触媒処理を行い、その後、純水を用いて洗浄した。
【0281】
そして、前記ガラス基材を、80℃の無電解ニッケル−リンめっき液に20分間浸漬させて、2μmのニッケルめっき膜を形成した後、60℃の金めっき液に10分間浸漬させて0.05μmの金めっき膜を積層形成した。その後、窒素雰囲気中において、350℃の熱処理温度および1時間の熱処理時間の条件の下にニッケルめっき後熱処理を行い、ガラス基材上に回路を形成した。
【0282】
このように形成された回路におけるニッケルめっき膜および金めっき膜の引っ張り強度は、60Mpaとなり、密着力を向上させることができた。銅めっき膜の比抵抗は、約2.5〜5μΩ・cmとなり、高周波特性の高い回路を形成することができた。
【0283】
(実施例8)
基材として、ソーダライムガラス、およびホウ珪酸ガラスからなるガラス基材を用い、前記ガラス基材を、第3の実施形態における無電解めっき方法を用いた回路形成方法に示す塩化錫水溶液に3分間浸漬させてから、十分水洗した後、前記第3の実施形態に示す塩化パラジウム水溶液に2分間浸漬させた。
【0284】
さらに、前記ガラス基材を再度前記塩化錫水溶液に2分間浸漬させた後、前記塩化パラジウム水溶液に1分間浸漬させ、十分に水洗した。
【0285】
そして、第3の実施形態に記載のホルマリン水溶液に1分間浸漬させて触媒層を還元し、その後水洗せずにめっき処理を行った。
【0286】
ここで、実施例8においては、実施例7と同様の銅めっき液を用意した。そして、30℃の前記銅めっき液に前記各ガラス基材を浸漬させ、2μmの膜厚の銅めっき膜を形成した後、ガラス基材を十分に洗浄してから、乾燥させた。
【0287】
続いて、前記ガラス基材に対し、窒素雰囲気において、400℃の熱処理温度および60分の熱処理時間によって銅めっき後熱処理を行い、ガラス基材に銅めっき膜を形成した。
【0288】
次に、銅めっき膜上にフォトレジストを塗布し、所定のパターンのマスクを用いて前記フォトレジストを露光・現像し、塩化鉄系の銅エッチング液を用いてエッチングして銅めっき膜を所定のパターンに形成した。
【0289】
さらに、前記ガラス基材を、30℃のパラジウム溶液に1分間浸漬させて触媒処理を行い、その後、純水を用いて洗浄した。
【0290】
そして、前記ガラス基材を、80℃の無電解ニッケル−リンめっき液に20分間浸漬させて、2μmのニッケルめっき膜を形成した後、60℃の金めっき液に10分間浸漬させて0.05μmの金めっき膜を積層形成した。その後、窒素雰囲気中において、350℃の熱処理温度および1時間の熱処理時間の条件の下にニッケルめっき後熱処理を行い、前記各ガラス基材上に回路を形成した。
【0291】
このように形成された各ガラス基材の回路におけるニッケルめっき膜および金めっき膜の引っ張り強度は、いずれも50Mpa以上となり、密着力を向上させることができた。
【0292】
(実施例9)
基材として、ホウ珪酸ガラス基材、ソーダライムガラス基材、パイレックス(登録商標)ガラス基材を用い、各基材を、15%の濃度の50℃の水酸化ナトリウムを用いて3分間脱脂洗浄した。
【0293】
続いて、前記各基材を、0.005mol/Lの塩化錫を含む室温の塩酸性の塩化錫水溶液に3分間浸漬させてから、十分水洗した後、0.003mol/Lの塩化パラジウムを含む30℃の塩化パラジウム水溶液に2分間浸漬させて触媒層を形成し、十分に水洗した後、乾燥させた。
【0294】
さらに、第3の実施形態に記載のホルマリン水溶液に1分間浸漬させて触媒層を還元し、その後水洗せずにめっき処理を行った。
【0295】
本実施例においては、2.5g/L(0.039mol/L)の銅イオンと、0.138g/L(0.0023mol/L)のニッケルイオンと、錯化剤として酒石酸ナトリウムカリウム四水和物(ロッシェル塩)と、還元剤として約0.2%のホルムアルデヒドとを含み、さらに、pHが約12.6に調整され、約0.1%のキレート剤を含む銅めっき液を用意した。そして、前記各基材を、前記銅めっき液に浸漬させて、約1μmの銅めっき膜を形成した後、十分洗浄してから乾燥させた。
【0296】
さらに、前記各基材に対し、表6に示すように、熱処理温度を150〜200℃の範囲内において異ならせるとともに、1〜3kg/cm2の範囲内において圧力を加えながら、熱処理時間を1時間として窒素雰囲気中において熱処理を行った。
【0297】
このように、熱処理における熱処理温度および加圧の条件をそれぞれ異ならせて形成した銅めっき膜について、各基材に対する銅めっき膜の密着力を比較した。
【0298】
密着力の評価は、第1実施例のセバスチャン法と同様の条件によって引っ張り試験を行い、銅めっき膜がガラス基材から剥離するときの引っ張り強度(MPa)を測定した。
【0299】
【表6】

【0300】
表6によれば、150〜200℃の温度で行う熱処理工程において、所定の圧力を加えた場合には、前記各基材における引っ張り強度が少なくとも20Mpa以上となり、銅めっき膜の密着力を向上させることができた。一方、圧力を加えない場合には、銅めっき膜と各基材との密着力をほとんど確保することができなかった。
【0301】
(実施例10)
基材として、ホウ珪酸ガラス基材を用い、前記ガラス基材を、15%の濃度の50℃の水酸化ナトリウムを用いて3分間脱脂洗浄した。
【0302】
続いて、前記各基材を、0.005mol/Lの塩化錫を含む室温の塩酸性の塩化錫水溶液に3分間浸漬させてから、十分水洗した後、0.003mol/Lの塩化パラジウムを含む30℃の塩化パラジウム水溶液に2分間浸漬させて触媒層を形成し、十分に水洗した後、乾燥させた。
【0303】
さらに、第3の実施形態に記載のホルマリン水溶液に1分間浸漬させて触媒層を還元し、その後水洗せずにめっき処理を行った。
【0304】
本実施例においては、2.5g/L(0.039mol/L)の銅イオンと、0.138g/L(0.0023mol/L)のコバルトと、錯化剤として酒石酸ナトリウムカリウム四水和物(ロッシェル塩)と、還元剤として約0.2%のホルムアルデヒドとを含み、さらに、pHが約12.6に調整され、約0.1%のキレート剤を含む銅めっき液を用意した。そして、前記各基材を、前記銅めっき液に浸漬させて、約1μmの銅めっき膜を形成した後、十分洗浄してから乾燥させた。
【0305】
さらに、前記ガラス基材に対し、熱処理温度を400℃とし、熱処理時間を1時間として窒素雰囲気中において熱処理を行った。
【0306】
このように形成されたガラス基材の銅めっき膜の引っ張り強度は、40Mpa以上となり、銅めっき膜の密着力を向上させることができた。
【図面の簡単な説明】
【0307】
【図1】本発明に係るめっき基板の一実施形態を示す概略断面図
【図2】本発明に係る無電解めっき方法の各工程の一実施形態を示すフローチャート
【図3】(a)は、図2の無電解めっき方法を用いた回路形成方法の各工程において、所定パターンのレジストを形成した工程、(b)は、触媒処理工程、(c)は、レジストを除去し、第1触媒層を所定のパターンに形成する工程、(d)は、再度レジストを形成する工程、(e)は、レジストを除去し積層触媒層を所定のパターンに形成する工程、(f)は、銅めっき膜を形成する工程、(g)は、ニッケルめっき膜および金めっき膜を形成する工程を示す概念図
【図4】本発明に係る他の無電解めっき方法の各工程の一実施形態を示すフローチャート
【図5】(a)は、図4の無電解めっき方法を用いた回路形成方法の各工程において、所定パターンのレジストを形成した工程、(b)は、触媒処理工程、(c)は、レジストを除去し、第1触媒層を所定のパターンに形成する工程、(d)は、再度レジストを形成する工程、(e)は、レジストを除去し積層触媒層を所定のパターンに形成する工程、(f)は、銅めっき膜を形成する工程、(g)は、ニッケルめっき膜および金めっき膜を形成する工程を示す概念図
【図6】本発明に係る他の無電解めっき方法の各工程の他の実施形態を示すフローチャート
【図7】(a)は、図6の無電解めっき方法を用いた回路形成方法の各工程において、所定パターンのレジストを形成した工程、(b)は、触媒処理工程、(c)は、レジストを除去する工程、(d)は、銅めっき膜を形成する工程、(e)は、ニッケルめっき膜および金めっき膜を形成する工程を示す概念図
【符号の説明】
【0308】
1 基材
3 レジスト
5 第1触媒層
6 銅めっき膜
7 ニッケルめっき膜
8 金めっき膜
9 積層触媒層
10 第2触媒層
11 ビアホール
12 Ag層
13 ビア
20 めっき基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化物を少なくとも表面に有するガラス基材或いはセラミック基材と、
微量のニッケルイオン、コバルトイオンおよび鉄イオンのうち少なくとも1つを含む銅めっき液を用いて形成された銅めっき膜と、
前記各基材および前記銅めっき膜の間に介在し、前記各基材の基材成分、前記銅めっき膜のめっき膜成分、および塩化錫溶液と塩化パラジウム溶液とを用いて形成された触媒層の触媒成分からなる中間層とを有することを特徴とするめっき基板。
【請求項2】
酸化物を少なくとも表面に有するガラス基材或いはセラミック基材と、
微量のニッケルイオン、コバルトイオンおよび鉄イオンのうち少なくとも1つを含む銅めっき液を用いて形成された銅めっき膜と、
前記各基材および前記銅めっき膜の間に介在し、前記各基材の基材成分、前記銅めっき膜のめっき膜成分、および錫・パラジウムコロイド溶液を用いて形成された触媒層の触媒成分からなる中間層とを有することを特徴とするめっき基板。
【請求項3】
塩化錫溶液と塩化パラジウム溶液とを用いて、酸化物を少なくとも表面に有するガラス基材或いはセラミック基材に触媒層を形成する触媒処理工程と、
前記触媒処理工程の後、前記各基材を、酸素を含む雰囲気内において加熱する銅めっき前熱処理工程と、
前記銅めっき前熱処理工程の後、前記各基材に、微量のニッケルイオン、コバルトイオンおよび鉄イオンのうち少なくとも1つを含む銅めっき液を用いて、銅めっき膜を形成するめっき処理工程と、
前記めっき処理工程の後、前記各基材を、実質的に酸素および水素を含まない雰囲気内においてガラス転移温度以下の熱処理温度によって加熱する銅めっき後熱処理工程とを有することを特徴とする無電解めっき方法。
【請求項4】
錫・パラジウムコロイド溶液を用いて、酸化物を少なくとも表面に有するガラス基材或いはセラミック基材に触媒層を形成する触媒処理工程と、
前記触媒処理工程の後、前記各基材を、酸素を含む雰囲気内において加熱する銅めっき前熱処理工程と、
前記銅めっき前熱処理工程の後、前記各基材に、微量のニッケルイオン、コバルトイオンおよび鉄イオンのうち少なくとも1つを含む銅めっき液を用いて、めっき膜を形成するめっき処理工程と、
前記めっき処理工程の後、前記各基材を、実質的に酸素および水素を含まないの雰囲気内においてガラス転移温度以下の熱処理温度によって加熱する銅めっき後熱処理工程とを有することを特徴とする無電解めっき方法。
【請求項5】
前記触媒処理工程を第1触媒層を形成する第1触媒処理工程とし、
前記銅めっき前熱処理工程の後であって前記めっき処理工程の前に、塩化錫溶液および塩化パラジウム溶液、または錫・パラジウムコロイド溶液を用いて、前記各基材に積層触媒層を形成する積層触媒処理工程を有することを特徴とする請求項3または請求項4記載の無電解めっき方法。
【請求項6】
Ag系のビアが形成されている前記各基材に対する無電解めっき方法であって、
前記銅めっき前熱処理工程における熱処理温度が、酸化銀の分解温度以上であり、
前記銅めっき前熱処理工程の後であって前記めっき処理工程の前に、前記ビアの表面に形成された酸化膜を除去する酸化膜除去工程を有することを特徴とする請求項3から請求項5のいずれか1項に記載の無電解めっき方法。
【請求項7】
前記酸化膜除去工程において、純水、H水溶液、温純水、アンモニア水および希硝酸のいずれかを用いることを特徴とする請求項6に記載の無電解めっき方法。
【請求項8】
前記積層触媒処理工程を、前記酸化膜除去工程の後に行うことを特徴とする請求項6または請求項7に記載の無電解めっき方法。
【請求項9】
前記銅めっき液に含まれる銅イオン100モルに対し、前記ニッケルイオンの添加量が1〜25モルであることを特徴とする請求項3から請求項8のいずれか1項に記載の無電解めっき方法。
【請求項10】
前記銅めっき前熱処理工程および前記銅めっき後熱処理工程における熱処理温度が250〜450℃であることを特徴とする請求項3から請求項9のいずれか1項に記載の無電解めっき方法。
【請求項11】
前記銅めっき前熱処理工程および前記銅めっき後熱処理工程における熱処理時間が10分以上であることを特徴とする請求項3から請求項10のいずれか1項に記載の無電解めっき方法。
【請求項12】
前記銅めっき後熱処理工程において、前記各基材に所定の圧力を加えながら熱処理を行うことを特徴とする請求項3から請求項11のいずれか1項に記載の無電解めっき方法。
【請求項13】
前記各基材に所定の圧力を加えながら熱処理を行う場合の前記銅めっき後熱処理工程における熱処理温度が、150〜400℃であることを特徴とする請求項12に記載の無電解めっき方法。
【請求項14】
前記めっき処理工程を銅めっき膜を形成する第1めっき処理工程とし、
前記銅めっき後熱処理工程の後、ニッケル化合物のめっき液を用いてニッケルめっき膜を形成する第2めっき処理工程と、
前記第2めっき処理工程の後、前記各基材を、実質的に酸素および水素を含まない雰囲気内においてニッケル化合物の硬度が変化しない温度以下の熱処理温度によって加熱するニッケルめっき後熱処理工程とを有することを特徴とする請求項3から請求項13のいずれか1項に記載の無電解めっき方法。
【請求項15】
前記第2めっき処理工程の後であって前記ニッケルめっき後熱処理工程の前に、金めっき液を用いて金めっき膜を形成する第3めっき処理工程を有することを特徴とする請求項14に記載の無電解めっき方法。
【請求項16】
前記ニッケルめっき後熱処理工程における熱処理温度が150〜350℃であることを特徴とする請求項14または請求項15に記載の無電解めっき方法。
【請求項17】
前記ニッケルめっき後熱処理工程の熱処理時間が10分〜12時間であることを特徴とする請求項14から請求項16のいずれか1項に記載の無電解めっき方法。
【請求項18】
塩化錫溶液と塩化パラジウム溶液とを用いて、酸化物を少なくとも表面に有するガラス基材或いはセラミック基材に触媒層を形成する触媒処理工程と、
前記触媒処理工程の後、前記各基材を、酸素を含む雰囲気内において加熱する銅めっき前熱処理工程と、
前記銅めっき前熱処理工程の後、前記各基材に、微量のニッケルイオン、コバルトイオンおよび鉄イオンのうち少なくとも1つを含む銅めっき液を用いてめっき膜を形成するめっき処理工程と、
前記めっき処理工程の後、前記各基材を、実質的に酸素および水素を含まない雰囲気中においてガラス転移温度以下の熱処理温度によって加熱する銅めっき後熱処理工程と、
前記触媒層、または前記めっき膜をパターニング処理するパターニング処理工程とを有することを特徴とする無電解めっき方法を用いた回路形成方法。
【請求項19】
錫・パラジウムコロイド溶液を用いて、酸化物を少なくとも表面に有するガラス基材或いはセラミック基材に触媒層を形成する触媒処理工程と、
前記触媒処理工程の後、前記各基材を、酸素を含む雰囲気内において加熱する銅めっき前熱処理工程と、
前記銅めっき前熱処理工程の後、前記各基材に、微量のニッケルイオン、コバルトイオンおよび鉄イオンのうち少なくとも1つを含む銅めっき液を用いてめっき膜を形成するめっき処理工程と、
前記めっき処理工程の後、前記各基材を、実質的に酸素および水素を含まないの雰囲気中においてガラス転移温度以下の熱処理温度によって加熱する銅めっき後熱処理工程と、
前記触媒層または前記めっき膜をパターニング処理するパターニング工程とを有することを特徴とする無電解めっき方法を用いた回路形成方法。
【請求項20】
Ag系のビアが形成されている前記各基材に対する無電解めっき方法を用いた回路形成方法であって、
前記銅めっき前熱処理工程における熱処理温度が、酸化銀の分解温度以上であり、
前記銅めっき前熱処理工程の後であって前記めっき処理工程の前に、前記ビアの表面に形成される酸化膜を除去する酸化膜除去工程を有することを特徴とする請求項18または請求項19に記載の無電解めっき方法を用いた回路形成方法。
【請求項21】
前記めっき処理工程を銅めっき膜を形成する第1めっき処理工程とし、
前記銅めっき後熱処理工程の後、ニッケル化合物のめっき液を用いてニッケルめっき膜を形成する第2めっき処理工程と、
前記第2めっき処理工程の後、前記各基材を、実質的に酸素および水素を含まない雰囲気内においてニッケル化合物の硬度が変化しない温度以下の熱処理温度によって加熱するニッケルめっき後熱処理工程とを有することを特徴とする請求項18から請求項20のいずれか1項に記載の無電解めっき方法を用いた回路形成方法。
【請求項22】
前記第2めっき処理工程の後であって前記ニッケルめっき後熱処理工程の前に、金めっき液を用いて金めっき膜を形成する第3めっき処理工程を有することを特徴とする請求項21に記載の無電解めっき方法を用いた回路形成方法。
【請求項23】
塩化錫溶液と塩化パラジウム溶液とを用いて、ガラス基材に触媒層を形成する触媒処理工程と、
前記触媒処理工程の後、微量のニッケルイオン、コバルトイオンおよび鉄イオンのうち少なくとも1つを含む銅めっき液を用いて、めっき膜を形成するめっき処理工程と、
前記めっき処理工程の後、前記ガラス基材を実質的に酸素および水素を含まないの雰囲気中においてガラス転移温度以下の熱処理温度によって加熱する熱処理工程とを有することを特徴とする無電解めっき方法。
【請求項24】
錫・パラジウムコロイド溶液を用いて、ガラス基材に触媒層を形成する触媒処理工程と、
前記触媒処理工程の後、微量のニッケルイオン、コバルトイオンおよび鉄イオンのうち少なくとも1つを含む銅めっき液を用いて、めっき膜を形成するめっき処理工程と、
前記めっき処理工程の後、前記ガラス基材を実質的に酸素および水素を含まない雰囲気中においてガラス転移温度以下の熱処理温度によって加熱する熱処理工程とを有することを特徴とする無電解めっき方法。
【請求項25】
前記銅めっき液に含まれる銅イオン100モルに対し、前記ニッケルイオンの添加量が1.0〜25モルであることを特徴とする請求項23または請求項24に記載の無電解めっき方法。
【請求項26】
前記熱処理温度が250〜450℃であることを特徴とする請求項23から請求項25のいずれか1項に記載の無電解めっき方法。
【請求項27】
熱処理時間が10分以上であることを特徴とする請求項23から請求項26のいずれか1項に記載の無電解めっき方法。
【請求項28】
前記熱処理工程において、前記ガラス基材に所定の圧力を加えながら熱処理を行うことを特徴とする請求項23から請求項27のいずれか1項に記載の無電解めっき方法。
【請求項29】
前記ガラス基材に所定の圧力を加えながら熱処理を行う場合の前記熱処理工程における熱処理温度が150〜400℃であることを特徴とする請求項28に記載の無電解めっき方法。
【請求項30】
前記めっき処理工程を銅めっき膜を形成する第1めっき処理工程とし、
前記熱処理工程を銅めっき後熱処理工程とし、
前記銅めっき後熱処理工程の後、ニッケル化合物のめっき液を用いてニッケルめっき膜を形成する第2めっき処理工程と、
前記第2めっき処理工程の後、前記ガラス基材を、実質的に酸素および水素を含まない雰囲気内においてニッケル化合物の硬度が変化しない温度以下の熱処理温度によって加熱するニッケルめっき後熱処理工程とを有することを特徴とする請求項23から請求項29のいずれか1項に記載の無電解めっき方法。
【請求項31】
前記第2めっき処理工程の後であって前記ニッケルめっき後熱処理工程の前に、金めっき液を用いて金めっき膜を形成する第3めっき処理工程を有することを特徴とする請求項30に記載の無電解めっき方法。
【請求項32】
前記ニッケルめっき後熱処理工程の熱処理温度が150〜350℃であることを特徴とする請求項30または請求項31に記載の無電解めっき方法。
【請求項33】
前記ニッケルめっき後熱処理工程の熱処理時間が10分〜12時間であることを特徴とする請求項30から請求項32のいずれか1項に記載の無電解めっき方法。
【請求項34】
塩化錫溶液と塩化パラジウム溶液とを用いて、ガラス基材に触媒層を形成する触媒処理工程と、
前記触媒処理工程の後、微量のニッケルイオン、コバルトイオンおよび鉄イオンのうち少なくとも1つを含む銅めっき液を用いて、めっき膜を形成するめっき処理工程と、
前記めっき処理工程の後、前記ガラス基材を実質的に酸素および水素を含まない雰囲気中においてガラス転移温度以下の熱処理温度によって加熱する熱処理工程と、
前記触媒層、または前記めっき膜をパターニング処理するパターニング処理工程とを有することを特徴とする無電解めっき方法を用いた回路形成方法。
【請求項35】
錫・パラジウムコロイド溶液を用いて、ガラス基材に触媒層を形成する触媒処理工程と、
前記触媒処理工程の後、微量のニッケルイオン、コバルトイオンおよび鉄イオンのうち少なくとも1つを含む銅めっき液を用いて、めっき膜を形成するめっき処理工程と、
前記めっき処理工程の後、前記ガラス基材を実質的に酸素および水素を含まない雰囲気中においてガラス転移温度以下の熱処理温度によって加熱する熱処理工程と、
前記触媒層、または前記めっき膜をパターニング処理するパターニング処理工程とを有することを特徴とする無電解めっき方法を用いた回路形成方法。
【請求項36】
前記めっき処理工程を銅めっき膜を形成する第1めっき処理工程とし、
前記熱処理工程を銅めっき後熱処理工程とし、
前記銅めっき後熱処理工程の後、ニッケル化合物のめっき液を用いてニッケルめっき膜を形成する第2めっき処理工程と、
前記第2めっき処理工程の後、前記ガラス基材を、実質的に酸素および水素を含まない雰囲気内においてニッケル化合物の硬度が変化しない温度以下の熱処理温度によって加熱するニッケルめっき後熱処理工程とを有することを特徴とする請求項34または請求項35に記載の無電解めっき方法を用いた回路形成方法。
【請求項37】
前記第2めっき処理工程の後であって前記ニッケルめっき後熱処理工程の前に、金めっき液を用いて金めっき膜を形成する第3めっき処理工程を有することを特徴とする請求項36に記載の無電解めっき方法を用いた回路形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−152431(P2006−152431A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−247658(P2005−247658)
【出願日】平成17年8月29日(2005.8.29)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】