説明

アクチュエーター、光スキャナーおよび画像形成装置

【課題】製造における可動部の形状ばらつきを従来よりも小さくして、可動部の回動時の慣性モーメントを低減することができるアクチュエーター、光スキャナーおよび画像形成装置を提供すること。
【解決手段】光スキャナー1は、光反射性を有する光反射部211と、光反射部211を備え、かつ所定の回動中心軸まわりに回動可能な板状の可動部21と、可動部21に連結し、かつ前記可動部21の回動に伴って捩り変形する連結部23、24と、連結部23、24を支持する支持部22と、を有し、可動部21は、可動部21の板厚方向からの平面視にて四角形の四隅の部分をそれぞれ矩形に欠いた形状(十字状)をなし、連結部23、24の回動中心軸に垂直な断面は、可動部21の第1の面から前記第1の面に対向する第2の面側に向けて幅が漸増する形状をなす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクチュエーター、光スキャナーおよび画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アクチュエーターとしては、捩り振動子を用いたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
例えば、特許文献1には、可動板(可動部)と、支持枠(支持部)と、可動板を支持枠に対して捩り回動可能に支持する1対の弾性支持部(連結部)とを有し、各弾性支持部が2本の棒(梁部材)で構成された光偏向器が開示されている。
このような可動板、支持枠および1対の弾性支持部は、主面がシリコンの(100)面で構成されたシリコン基板を異方性エッチングすることにより一体形成される。
【0003】
また、特許文献1に係る光偏向器では、可動板が平面視にて八角形をなしている。このような平面視形状をなす可動板は、回動軸から離れた位置での可動板の重量を小さくし、慣性モーメントを低減できるという利点がある。
しかし、平面視形状が八角形をなす可動板は、その製造が難しいという問題があった。特に、このような可動板は、前述したような異方性エッチングを用いて製造した場合、結晶面との関係から、形状制御が難しく、形状のばらつきが大きくなるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−79243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、製造における可動部の形状ばらつきを従来よりも小さくして、可動部の回動時の慣性モーメントを低減することができるアクチュエーター、光スキャナーおよび画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明のアクチュエーターでは、所定の回動中心軸まわりに回動可能な板状の可動部と、
前記可動部に連結し、かつ前記可動部の回動に伴って捩り変形する連結部と、
前記連結部を支持する支持部と、を有し、
前記可動部は、前記可動部の板厚方向からの平面視にて十字状をなし、
前記連結部の前記回動中心軸に垂直な断面は、前記可動部の第1の面から前記第1の面に対向する第2の面に向けて幅が漸増する形状をなすことを特徴とする。
このような本発明のアクチュエーターによれば、製造における可動部の形状ばらつきを小さくして、可動部の回動時の慣性モーメントを低減することができる。
【0007】
本発明のアクチュエーターでは、前記板厚方向からの平面視における前記可動部の外形は、主として、前記回動中心軸に平行な線分と、前記回動中心軸に対して垂直な線分とで構成されていることが好ましい。
これにより、製造における可動部の形状ばらつきを小さくすることができる。
本発明のアクチュエーターでは、前記可動部、前記支持部および前記連結部は、シリコン基板を異方性エッチングすることにより形成されたものであることが好ましい。
これにより、形状ばらつきを小さくして、可動部、支持部および連結部を容易に形成することができる。
【0008】
本発明のアクチュエーターでは、前記可動部の板面は、シリコンの(100)面で構成されていることが好ましい。
これにより、板面が(100)面で構成されたシリコン基板を異方性エッチングすることにより、形状ばらつきを小さくして、可動部、支持部および連結部を容易に形成することができる。
【0009】
本発明のアクチュエーターでは、前記可動部の側面は、主として、シリコンの(111)面で構成されていることが好ましい。
これにより、板面が(100)面で構成されたシリコン基板を異方性エッチングすることにより、シリコンの(111)面をエッチングの停止層として利用し、形状ばらつきを小さくして、可動部、支持部および連結部を容易に形成することができる。
【0010】
本発明のアクチュエーターでは、前記可動部の側面には、前記可動部の板面に直交する断面においてV字状をなす溝が形成されていることが好ましい。
これにより、可動部の慣性モーメントを低減することができる。また、このような溝は、板面が(100)面で構成されたシリコン基板を異方性エッチングすることにより、シリコンの(111)面をエッチングの停止層として利用し、形状ばらつきを小さくして、可動部を容易に形成することができる。
【0011】
本発明のアクチュエーターでは、前記連結部の表面は、シリコンの(100)面および(111)面で構成されていることが好ましい。
これにより、シリコンの(111)面をエッチングの停止層として利用し、形状ばらつきを小さくして、連結部を容易に形成することができる。
本発明のアクチュエーターでは、前記連結部は、2つの梁状の梁部材を有することが好ましい。
これにより、連結部の長さを短くすることが出来るため、デバイス全体の大きさを小さくすることが出来る。
【0012】
本発明のアクチュエーターでは、前記梁部材の前記回動中心軸に垂直な断面は、平行四辺形をなし、
前記2つの梁部材間の距離は、前記可動部の前記第1の面から前記第2の面に向けて漸増することが好ましい。
このような連結部は、シリコン基板を異方性エッチングすることにより、平面視形状が十字状または四角形の四隅を矩形に欠いた形状をなす可動部とともに一括して容易に形成することができる。
【0013】
本発明のアクチュエーターでは、前記連結部の前記回動中心軸に垂直な断面は、台形をなすことが好ましい。
このような連結部は、シリコン基板を異方性エッチングすることにより、平面視形状が十字状または四角形の四隅を矩形に欠いた形状をなす可動部とともに一括して容易に形成することができる。
【0014】
本発明のアクチュエーターでは、前記可動部は、前記板厚方向からの平面視にて前記回動中心軸に対して対称な形状をなしていることが好ましい。
これにより、可動部の重心を可動部の回動中心軸上に位置させ、可動部の回動を円滑なものとすることができる。
本発明のアクチュエーターでは、前記可動部は、前記板厚方向からの平面視にて前記可動部の中心を通りかつ前記回動中心軸に対して垂直な線分に対して対称な形状をなしていることが好ましい。
これにより、可動部の設計が容易となる。
【0015】
本発明のアクチュエーターは、所定の回動軸まわりに回動可能な板状の可動部と、
前記可動部に連結し、かつ前記可動部の回動に伴って捩り変形する連結部と、
前記連結部を支持する支持部と、を有し、
前記可動部は、前記可動部の板厚方向からの平面視にて四角形の四隅の部分をそれぞれ矩形に欠いた形状をなし、
前記連結部の前記回動中心軸に垂直な断面は、前記可動部の第1の面から前記第1の面に対向する第2の面に向けて幅が漸増する形状をなすことを特徴とする。
このような本発明のアクチュエーターによれば、製造における可動部の形状ばらつきを小さくして、可動部の回動時の慣性モーメントを低減することができる。
【0016】
本発明の光スキャナーは、光反射性を有する光反射部と、
前記光反射部を備え、かつ所定の回動中心軸まわりに回動可能な板状の可動部と、
前記可動部に連結し、かつ前記可動部の回動に伴って捩り変形する連結部と、
前記連結部を支持する支持部と、を有し、
前記可動部は、前記板厚方向からの平面視にて十字状をなし、
前記連結部の前記回動中心軸に垂直な断面は、前記可動部の第1の面から前記第1の面に対向する第2の面に向けて幅が漸増する形状をなすことを特徴とする。
このように構成された光スキャナーによれば、製造における可動部の形状ばらつきを小さくして、可動部の回動時の慣性モーメントを低減することができる。
【0017】
本発明の光スキャナーは、光反射性を有する光反射部と、
前記光反射部を備え、かつ所定の回動中心軸まわりに回動可能な板状の可動部と、
前記可動部に連結し、かつ前記可動部の回動に伴って捩り変形する連結部と、
前記連結部を支持する支持部と、を有し、
前記可動部は、前記可動部の板厚方向からの平面視にて四角形の四隅の部分をそれぞれ矩形に欠いた形状をなし、
前記連結部の前記回動中心軸に垂直な断面は、前記可動部の第1の面から前記第1の面に対向する第2の面に向けて幅が漸増する形状をなすことを特徴とする。
このように構成された光スキャナーによれば、製造における可動部の形状ばらつきを小さくして、可動部の回動時の慣性モーメントを低減することができる。
【0018】
本発明の画像形成装置は、光を出射する光源と、
前記光源からの光を走査する光スキャナーと、を備え、
前記光スキャナーは、
光反射性を有する光反射部と、
前記光反射部を備え、かつ所定の回動中心軸まわりに回動可能な板状の可動部と、
前記可動部に連結し、かつ前記可動部の回動に伴って捩り変形する連結部と、
前記連結部を支持する支持部と、を有し、
前記可動部は、前記板厚方向からの平面視にて十字状をなし、
前記連結部の前記回動中心軸に垂直な断面は、前記可動部の第1の面から前記第1の面に対向する第2の面に向けて幅が漸増する形状をなすことを特徴とする。
このように構成された画像形成装置によれば、製造における可動部の形状ばらつきを小さくして、可動部の回動時の慣性モーメントを低減することができる。そのため、安価に、高品位な画像を得ることができる。
【0019】
本発明の画像形成装置は、光を出射する光源と、
前記光源からの光を走査する光スキャナーと、を備え、
前記光スキャナーは、
光反射性を有する光反射部と、
前記光反射部を備え、かつ所定の回動中心軸まわりに回動可能な板状の可動部と、
前記可動部に連結し、かつ前記可動部の回動に伴って捩り変形する連結部と、
前記連結部を支持する支持部と、を有し、
前記可動部は、前記可動部の板厚方向からの平面視にて四角形の四隅の部分をそれぞれ矩形に欠いた形状をなし、
前記連結部の前記回動中心軸に垂直な断面は、前記可動部の第1の面から前記第1の面に対向する第2の面に向けて幅が漸増する形状をなすことを特徴とする。
このように構成された画像形成装置によれば、製造における可動部の形状ばらつきを小さくして、可動部の回動時の慣性モーメントを低減することができる。そのため、安価に、高品位な画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態に係る光スキャナー(アクチュエーター)を示す平面図である。
【図2】図1中のA−A線断面図である。
【図3】図1に示す光スキャナーに備えられた可動板を説明するための平面図である。
【図4】図1中のB−B線断面図である。
【図5】図4の部分拡大断面図である。
【図6】図1に示す光スキャナーの製造方法を説明する断面図である。
【図7】図1に示す光スキャナーの製造方法を説明する断面図である。
【図8】図1に示す光スキャナーの製造方法を説明する断面図である。
【図9】図8(e)に示すエッチング工程における連結部の形成(マスクずれのない場合)を説明するための図である。
【図10】図8(e)に示すエッチング工程における連結部の形成(マスクずれのある場合)を説明するための図である。
【図11】本発明の第2実施形態に係る光スキャナーを示す平面図である。
【図12】図11中のB−B線部分拡大断面図である。
【図13】本発明の第3実施形態に係るスキャナーに備えられた可動板を説明するための平面図である。
【図14】本発明の第4実施形態に係るスキャナーに備えられた可動板を説明するための平面図である。
【図15】本発明の画像形成装置の構成の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明のアクチュエーター、光スキャナーおよび画像形成装置の好適な実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。なお、本実施形態では、本発明のアクチュエーターを光スキャナーに適用した場合を例に説明する。
<第1実施形態>
まず、本発明の光スキャナーの第1実施形態について説明する。
【0022】
図1は、本発明の第1実施形態に係る光スキャナー(アクチュエーター)を示す平面図、図2は、図1中のA−A線断面図、図3は、図1に示す光スキャナーに備えられた可動板を説明するための平面図、図4は、図1中のB−B線断面図、図5は、図4の部分拡大断面図である。図6は、図1に示す光スキャナーの製造方法を説明する断面図、図7は、図1に示す光スキャナーの製造方法を説明する断面図である。図8は、図1に示す光スキャナーの製造方法を説明する断面図、図9は、図8(e)に示すエッチング工程における連結部の形成(マスクずれのない場合)を説明するための図、図10は、図8(e)に示すエッチング工程における連結部の形成(マスクずれのある場合)を説明するための図である。なお、以下では、説明の便宜上、図2、4〜10中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0023】
図1に示すように、光スキャナー1は、振動系を有する基体2と、基体2を支持する支持体3と、基体2の振動系を振動させる駆動部4とを有する。
また、基体2は、光反射部211が設けられた可動板(可動部)21と、可動板21に連結する1対の連結部23、24と、1対の連結部23、24とを支持する支持部22とを有している。支持部22は連結部23、24を介して可動板21を支持しているとも言え、1対の連結部23、24は可動板21と支持部22とを連結しているとも言える。
このような光スキャナー1では、駆動部4の駆動力により、各連結部23、24を捩り変形させながら、可動板21を連結部23、24に沿った所定の軸(回動中心軸)まわりに回動させる。これにより、光反射部211で反射した光を所定の一方向に走査することができる。
【0024】
以下、光スキャナー1を構成する各部を順次詳細に説明する。
[基体]
基体2は、前述したように、光反射部211が設けられた可動板21と、可動板21を支持する支持部22と、可動板21と支持部22とを連結する1対の連結部23、24とを有する。
【0025】
このような基体2は、シリコンを主材料として構成されており、可動板21、支持部22および連結部23、24が一体的に形成されている。より具体的には、基体2は、後に詳述するように、板面がシリコンの(100)面で構成されたシリコン基板を異方性エッチングすることにより形成されたものである。このような異方性エッチングにより、シリコンの(111)面をエッチング停止層として利用して簡単かつ高精度に、可動板21、支持部22および1対の連結部23、24を形成することができる。なお、シリコン基板としては、一般的に単結晶シリコン基板が用いられる。
【0026】
また、このような基体2の上面および下面は、それぞれ、シリコンの(100)面で構成されている。また、支持部22の内周面、可動板21の側面、および、各連結部23、24の側面の軸線Xに平行な部分は、それぞれ、シリコンの(111)面で構成されている。
また、シリコンは軽量かつSUSなみの剛性を有するため、基体2がシリコンを主材料として構成されていることにより、優れた振動特性を有する基体2が得られる。また、シリコンは後述するようにエッチングにより高精度な寸法精度で加工が可能であるので、シリコン基板を用いて基体2を形成することにより、所望の形状(所望の振動特性)を有する基体2を得ることができる。
【0027】
以下、基体2についてさらに詳述する。
支持部22は、図1に示すように、枠状をなしている。より具体的には、支持部22は、四角環状をなしている。このような支持部22は、1対の連結部23、24を介して可動板21を支持する。なお、支持部22の形状としては、1対の連結部23、24を介して可動板21を支持することができれば、特に限定されず、例えば、各連結部23、24に対応して分割された形状をなしていてもよい。
このような支持部22の内側には、可動板21が設けられている。
【0028】
可動板21は、板状をなしている。また、本実施形態では、可動板21は、可動板21の板厚方向からの平面視にて、四角形(本実施形態では正方形)の4つの角部をそれぞれ欠損した形状(十字状)をなしている。これにより、可動板21の上面の光反射部211の面積(光反射領域)を十分に確保しつつ、可動板21の回動時の慣性モーメントを低減することができる。また、このような可動板21は後に詳述するようにシリコン基板を異方性エッチングすることにより、簡単かつ高精度に形成することができる。
【0029】
より具体的に説明すると、図3に示すように、可動板21は、本体部212と、この本体部212から軸線Xに平行な方向に両側へ突出する1対の突出部213、214と、本体部212から軸線Xに垂直な方向(線分Yに平行な方向)に両側に突出する1対の突出部215、216とで構成されている。これにより、可動板21は、平面視にて十字状をなす。
【0030】
そして、可動板21の外周に沿った方向における突出部213と突出部215との間には、欠損部251が形成されている。また、可動板21の外周に沿った方向における突出部213と突出部216との間には、欠損部252が形成されている。また、可動板21の外周に沿った方向における突出部214と突出部216との間には、欠損部254が形成されている。また、可動板21の外周に沿った方向における突出部214と突出部215との間には、欠損部253が形成されている。
【0031】
言い換えると、可動板21の板厚方向からの平面視において、可動板21の外周に沿って、欠損部251、突出部213、欠損部252、突出部216、欠損部254、突出部214、欠損部253、突出部215がこの順で並んで設けられている。
また、欠損部251と欠損部252とは突出部213を介して対向している。また、欠損部252と欠損部254とは突出部216を介して対向している。また、欠損部253と欠損部254とは突出部214を介して対向している。また、欠損部251と欠損部253とは突出部215を介して対向している。
【0032】
このような突出部213〜216および欠損部251〜254は、それぞれ、可動板21の板厚方向からの平面視にて四角形をなしている。なお、図1、3では、各欠損部251〜254の平面視形状が正方形をなす状態を一例として図示している。また、突出部213〜216および欠損部251〜254の平面視形状の角部が丸み付けされていてもよい。なお、可動板21の十字状の外形における角部には、所定の結晶面だけではなく複数の結晶面が現れるため角部は厳密には直角とならず、突出部213〜216および欠損部251〜254は厳密には四角形とならない場合がある。しかし、本実施形態においては、上記の状態を含めて各欠損部251〜254は四角形であるとみなす。
【0033】
このような可動板21の板厚方向からの平面視における外形は、主として、可動板21の回動中心軸(軸線X)に平行な線分と、可動板21の回動中心軸(軸線X)に対して垂直な線分(線分Y)とで構成されている。これにより、後述するようにシリコン基板を異方性エッチングすることにより、可動板21を簡単かつ高精度に形成することができる。なお、可動板21の十字状の外形における角部には、所定の結晶面だけではなく複数の結晶面が現れる。従って、可動板21の板厚方向からの平面視における角部の外形は軸線Xまたは線分Yに必ずしも平行な線分とならない場合がある。すなわち、可動板21の板厚方向からの平面視における外形は、少なくとも上記の可動板21の角部を除いて、軸線Xに平行な線分と線分Yに平行な線分とで構成されている。
【0034】
また、可動板21は、平面視にて可動板21の回動中心軸(軸線X)に対して対称な形状をなしている。これにより、簡単に、可動板21の重心を可動板21の回動中心軸上に位置させ、可動板21の回動を円滑なものとすることができる。
また、可動板21は、平面視にて可動板21の中心Pを通りかつ可動板21の回動中心軸(軸線X)に対して垂直な線分Yに対して対称な形状をなしている。これにより、可動板の設計が容易となる。
【0035】
また、可動板21の板面は、シリコンの(100)面で構成されている。これにより、後述するように板面が(100)面で構成されたシリコン基板を異方性エッチングすることにより、可動板21、支持部22および1対の連結部23、24を簡単かつ高精度に形成することができる。
また、可動板21の側面は、主として、シリコンの(111)面で構成されている。これにより、後述するように板面が(100)面で構成されたシリコン基板を異方性エッチングすることにより、シリコンの(111)面をエッチングの停止層として利用し、可動板21、支持部22および1対の連結部23、24を簡単かつ高精度に形成することができる。なお、可動板21の板厚方向からの平面視における外形の角部においては、可動板21の側面は(111)面以外の結晶面を含んでいる。従って、可動板21の側面は、少なくとも当該角部における側面を除いて、シリコンの(111)面で構成されている。
【0036】
また、可動板21の側面には、可動板21の板面に直交する横断面においてV字状をなす溝217が形成されている。これにより、可動板21の慣性モーメントを低減することができる。また、このような溝は、板面が(100)面で構成されたシリコン基板を異方性エッチングすることにより、シリコンの(111)面をエッチングの停止層として利用し、簡単かつ高精度に形成することができる。
【0037】
また、可動板21の板厚方向からの平面視における回動中心軸(軸線X)に対して垂直な方向(以下、「線分Y方向」とも言う)での長さをAとし、可動板21の回動中心軸(軸線X)に平行な方向(以下、「軸線X方向」とも言う)での長さをBとし、各欠損部251〜254の線分Y方向に沿った長さをaとし、各欠損部251〜254の軸線X方向に沿った長さをbとしたとき、下記式(A)、(B)をそれぞれ満たす。
【0038】
【数1】

【0039】
上記式(A)、(B)をそれぞれ満たすことにより、可動板21の光反射部211の光反射に必要な面積を確保しつつ、可動板21の回動時における慣性モーメントを効率的に低減することができる。
これに対し、長さa、bが前記下限値未満であると、それぞれ、可動板21の回動時における慣性モーメントを低減する効果が小さい傾向となる。そのため、可動板21の厚さによっては、可動板21の動撓みが大きくなり、光スキャナー1の光学特性を低下させる場合がある。
【0040】
一方、長さa、bが前記上限値を超えると、可動板21の光反射部211の面積を効率的に用いることができず、光反射部211での反射光の強度が小さくなる傾向を示す。
なお、図3では、上記式(A)、(B)を満たし、a、bをそれぞれ最大とした場合の可動板21A、a、bをそれぞれ最小とした場合の可動板21Bをそれぞれ鎖線で示している。
【0041】
以下、上記式(A)、(B)について簡単に説明する。
図3に示すように平面視にて可動板21に光Lの円形または楕円形のスポットが内接する場合、各欠損部251〜254が光Lのスポットの外側で面積が最大となるのは、a=(1−1/√2)A、b=(1−1/√2)Bである。
また、かかる場合、欠損部251〜254を形成する効果が発揮される範囲において、aが最大となりbが最小となるのは、軸線Xに対して30°傾斜した線分と光Lのスポットの外周縁との交点P2に各欠損部251〜254の角P3が位置するときである。
【0042】
また、かかる場合、欠損部251〜254を形成する効果が発揮される範囲において、aが最小となりbが最大となるのは、軸線Xに対して60°傾斜した線分と光Lのスポットの外周縁との交点P1に各欠損部251〜254の角P3が位置するときである。
さらに、光Lとして通常用いられるレーザーのスポット径の有効範囲は、一般的にピーク輝度の1/e以上となる輝度の範囲とされる。したがって、その有効範囲が光反射部211内に収まっていれば、理想的な光反射を行うことができる。
【0043】
ただし、実際のレーザーは、上記有効範囲の外側であっても、若干の光が存在し、a、bが上記値に対して若干小さかったり大きかったりしても、実使用上問題なく許容できる。
具体的には、上述したように求めたa、bの許容値を−20%以上+200%以下とすることができる。
以上のようなことから、上記式(A)、(B)が得られる。
【0044】
また、可動板21は、上記長さAおよびBは、互いに等しくても異なっていてもよい。なお、図1では、A=Bの場合を図示している。
このような可動板21の上面には、光反射性を有する光反射部211が設けられている。一方、可動板21の下面には、後述する駆動部4の永久磁石41が設けられている。なお、永久磁石41については、後述する駆動部4の説明において詳述する。
【0045】
各連結部23、24は、長手形状をなしており、弾性変形可能に構成されている。また、連結部23および連結部24は可動板21を介して対向している。このような連結部23、24は、それぞれ、可動板21を支持部22に対して回動可能とするように、可動板21と支持部22とを連結している。1対の連結部23、24は、軸線Xに沿って同軸的に設けられており、この軸線Xを回動中心軸として、可動板21が支持部22に対して回動する。
【0046】
本実施形態では、図1に示すように、連結部23は、1対の梁部材231、232で構成されている。同様に、連結部24は、1対の梁部材241、242で構成されている。 このように構成された連結部23、24は、連結部が1本で構成された場合よりも長さを短くすることが可能となり、光スキャナー1の板厚方向の平面視における面積を小さくすることができる。以下、連結部23について代表的に説明し、連結部24については、連結部23と同様であるので、その説明を省略する。
【0047】
各梁部材231、232は、軸線Xに沿って設けられているとともに、軸線Xを介して対向している。また、各梁部材231、232は、その横断面形状が平行四辺形をなしている。
より具体的には、各梁部材231、232の横断面の外形は、それぞれ、シリコンの(100)に沿った1対の辺と、シリコンの(111)面に沿った1対の辺とで構成された平行四辺形をなしている。すなわち、梁部材231は、上面2311および下面2312がそれぞれシリコンの(100)面で構成され、1対の側面2313、2314がそれぞれシリコンの(111)面で構成されている。同様に、梁部材232は、上面2321および下面2322がそれぞれシリコンの(100)面で構成され、1対の側面2323、2324がそれぞれシリコンの(111)面で構成されている。ここで、側面2313、2324、2323、2324は、それぞれ、シリコンの(111)面で構成されているので、基体2の上面または下面(すなわちシリコンの(100)面)に対する傾斜角θが54.73°となっている。このような横断面形状をなす各梁部材231、232は、板面がシリコンの(100)面で構成されたシリコン基板を異方性エッチングすることにより簡単かつ確実に形成することができる。
【0048】
このように連結部23の外表面がシリコンの(100)面および(111)面で構成されていると、後述するようにシリコンの(111)面をエッチングの停止層として利用し、簡単かつ高精度に連結部23を形成することができる。
また、梁部材231、232は、軸線Xに平行な方向からみたときに(言い換えると、図5に示す断面でみたとき)、上下に延び軸線Xを通る線分に対して対称な形状をなしている。
【0049】
また、図5に示す断面において、連結部23全体の幅(梁部材231の側面2313と梁部材232の側面2323との面間距離)は、下側から上側に向けて拡がって(漸増して)いる。なお、連結部23全体の幅とは、梁部材231と梁部材232とを合わせて連結部23を一つの部材としてみなした時の幅であり、連結部23を構成し、かつ回動中心軸に垂直な方向に回動中心軸から最も離れている2つの面の距離を示している。
【0050】
また、図5に示す断面において、梁部材231と梁部材232との間の距離(隙間の幅)は、下側から上側に向けて拡がって(漸増して)いる。なお、梁部材231と梁部材232との間の距離とは、可動板21の板面に平行な方向における、回動中心軸を挟んで互いに対向する梁部材231の面(側面2314)と梁部材232(側面2324)の面との距離を示している。
【0051】
すなわち、1対の梁部材231、232間の距離は、可動板21の回動中心軸に平行な方向からみたときに、可動板21の一方の面側から他方の面側に向けて(本実施形態では下側から上側に向けて)漸増している。
このような連結部23は、後述するようにシリコン基板を異方性エッチングすることにより、前述したような平面視形状をなす可動板21と一括して簡単かつ高精度に形成することができる。
また、1対の梁部材231、232の下側の端同士の間の距離をWとし、1対の梁部材231、232の可動板21の厚さ方向での厚さをtとしたとき、下記式(1)を満たす。
【0052】
【数2】

【0053】
後述に詳述するように、板面がシリコンの(100)面で構成されたシリコン基板をその両面側から異方性エッチングするため、可動板21、支持部22および1対の連結部23、24を形成する際に、シリコン基板の両面に形成したマスクの形成位置がずれることがある。このように、シリコン基板の両面のマスクの形成位置がずれると、各梁部材231、232のシリコンの(111)面で構成されるべき1対の側面2313、2314、2323、2324に段差が生じてしまう。上記式(1)を満たすことにより、シリコン基板の両面に形成したマスクの形成位置がずれた場合に、一方の側面に形成された段差と、他方の側面に形成された段差とをシリコン基板の厚さ方向にずらすことができる(図10参照)。そのため、可動板21の回動時における各梁部材231、232に生じる応力集中を緩和することができる。
このようにして、光スキャナー1は、駆動時の応力集中による破損を比較的簡単に防止することができる。
また、1対の梁部材231、232の上側の端同士の間の距離をWとしたとき、下記式(2)を満たす。
【0054】
【数3】

【0055】
これにより、板面がシリコンの(100)面で構成されたシリコン基板をその両面側から異方性エッチングすることにより、1対の梁部材231、232で構成された連結部23を簡単かつ確実に形成することができる。
【0056】
[支持体]
支持体3は、前述した基体2を支持する機能を有する。また、支持体3は、後述する駆動部4のコイル42を支持する機能をも有する。
この支持体3は、上方に開放する凹部31を有する箱状をなしている。言い換えると、支持体3は、板状をなす板状部32と、その板状部32の上面の外周部に沿って設けられた枠状をなす枠状部33とで構成されている。
【0057】
このような支持体3の上面のうち凹部31の外側の部分、すなわち、枠状部33の上面には、前述した基体2の支持部22の下面が接合されている。これにより、基体2の可動板21および1対の連結部23、24と支持体3との間には、可動板21の回動を許容する空間が形成されている。
このような支持体3の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、石英ガラス、パイレックスガラス(「パイレックス」は登録商標)、テンパックスガラス等のガラス材料や、単結晶シリコン、ポリシリコン等のシリコン材料、LTCC(低温焼結セラミックス)等が挙げられる。
また、基体2と支持体3との接合方法としては、支持体3の構成材料、形状等に応じて適宜決められるものであり、特に限定されないが、接着剤を用いた方法、陽極接合法、直接接合法等が挙げられる。
【0058】
[駆動部]
駆動部4は、永久磁石41およびコイル42を有し、前述した基体2の可動板21を電磁駆動方式(より具体的にはムービングマグネット型の電磁駆動方式)により回動駆動させるものである。電磁駆動方式は、大きな駆動力を発生させることができる。そのため、電磁駆動方式を採用する駆動部4によれば、低駆動電圧化を図りつつ、可動板21の振れ角を大きくすることができる。
【0059】
永久磁石41は、可動板21の下面に例えば接着剤を介して固定されている。また、永久磁石41は、長手形状をなしており、平面視にて軸線Xに対して直交する方向に延在するように設けられている。このような永久磁石41は、長手方向に磁化しており、長手方向の一方側がS極、他方側がN極となっている。永久磁石41を軸線Xに対して直交する方向に延在するように設けることにより、永久磁石41の両端部を軸線Xから離れたところに位置させることができる。そのため、コイル42が発生する磁界の作用により、可動板21により大きなトルクを与えることができる。
【0060】
このような永久磁石41としては、特に限定されず、例えば、ネオジウム磁石、フェライト磁石、サマリウムコバルト磁石、アルニコ磁石、ボンド磁石などの、硬磁性体を着磁したものを好適に用いることができる。
コイル42は、支持体3の凹部31の底面311上に、可動板21と対向するように設けられている。これにより、コイル42が発生する磁界を永久磁石41に効果的に作用させることができる。このコイル42は、図示しない電源に電気的に接続されており、電源から周期的に変化する電圧(交番電圧、間欠的な直流等)が印加されるようになっている。
このような駆動部4によって、次のように可動板21が回動する。
【0061】
まず、図示しない電源によりコイル42に例えば交番電圧を印加する。これにより、コイル42の上側(可動板21側)がN極、下側がS極となる第1の磁界と、コイル42の上側がS極、下側がN極となる第2の磁界とが、交互にかつ周期的に発生する。
第1の電界では、永久磁石41のN極側がコイル42に引きつけられ、反対にS極側がコイル42から遠ざかるように、可動板21が軸線Xを中心に図2にて反時計回りに回動する(第1の状態)。反対に、第2の電界では、永久磁石41のS極側がコイル42に引きつけられ、反対にN極側がコイル42から遠ざかるように、可動板21が軸線Xを中心に図2にて時計回りに回動する(第2の状態)。このような第1の状態と第2の状態とが交互に繰り返され、可動板21が軸線Xを中心に回動する。
【0062】
(アクチュエーターの製造方法)
以上のような光スキャナー1は、例えば、次のようにして製造することができる。以下、本発明のアクチュエーターの製造方法の一例として、図6ないし図10に基づいて、光スキャナー1の製造方法を説明する。また、図6ないし図8は、それぞれ、図2に対応する断面で示されており、図9および図10は、それぞれ、図5に対応する断面で示されている。
光スキャナー1の製造方法は、基体2を形成する工程を有する。
基体2を形成する工程は、[A]凹部218を形成する工程と、[B]可動板21、支持部22および1対の連結部23、24を形成する工程とを有する。
【0063】
以下、各工程を順次詳細に説明する。
[A]凹部218を形成する工程
−A1−
まず、図6(a)に示すように、シリコン基板102を用意する。
このシリコン基板102は、後述するエッチングを経ることにより基体2となるものである。
具体的には、シリコン基板102は、その主面がシリコンの(100)面で構成されたものである。
【0064】
−A2−
次に、図6(b)に示すように、シリコン基板102の上面上に窒化膜51を形成するとともに、シリコン基板102の下面上に窒化膜52を形成する。
この窒化膜51、52は、それぞれ、例えば、SiNで構成されている。
また、窒化膜51、52の形成方法は、ぞれぞれ、特に限定されないが、例えば、プラズマCVD等の気相成膜法を用いることができる。
また、窒化膜51、52の厚さは、特に限定されないが、0.01μm以上0.2μm以下程度である。
なお、窒化膜51、52に代えて、SiOで構成された酸化膜を例えば熱酸化法により形成してもよい。
【0065】
−A3−
次に、図6(c)に示すように、窒化膜51上にレジスト膜61を形成し、図6(d)に示すように、窒化膜52上にレジスト膜62を形成する。
このレジスト膜61、62は、それぞれ、ポジ型またはネガ型のレジスト材料で構成されている。
−A4−
次に、レジスト膜62を露光および現像することにより、レジスト膜62の凹部218の形成領域に対応した部分を除去する。これにより、図6(e)に示すように、開口621を有するレジスト膜62Aを得る。
【0066】
−A5−
次に、レジスト膜62Aをマスクとして用いて、窒化膜52の一部をエッチングにより除去する。これにより、図6(f)に示すように、開口521を有する窒化膜52Aを得る。
上記エッチング(開口521の形成方法)としては、特に限定されないが、例えば、リアクティブイオンエッチング(RIE)、CFを用いたドライエッチング等が挙げられる。
【0067】
−A6−
次に、レジスト膜61、62Aを除去する。これにより、図6(g)に示すように、シリコン基板102は、その上面が窒化膜51で覆われ、下面が窒化膜52Aで覆われた状態となる。
レジスト膜61、62の除去方法としては、特に限定されないが、例えば、硫酸による洗浄、Oアッシング等が挙げられる。
【0068】
次に、窒化膜52Aをマスクとして用いて、シリコン基板102をエッチングする。これにより、図7(a)に示すように、凹部218を有するシリコン基板102Aを得る。
上記エッチング(凹部218の形成方法)としては、特に限定されないが、後述する可動板21、支持部22等の形成のためのエッチングと同様、異方性エッチングが好適に用いられる。
かかる異方性エッチングは、特に限定されないが、例えば、KOH水溶液等を用いたウェットエッチングにより行うことができる。
【0069】
−A8−
次に、窒化膜51、52Aを除去する。これにより、図7(b)に示すように、シリコン基板102Aの上面および下面が露出した状態となる。
窒化膜51、52Aの除去方法としては、特に限定されないが、上記工程A5と同様、例えば、リアクティブイオンエッチング(RIE)、CFを用いたドライエッチング等が挙げられる。
【0070】
[B]可動板21、支持部22等を形成する工程
−B1−
次に、図7(c)に示すように、シリコン基板102Aの上面上に窒化膜71を形成するとともに、シリコン基板102Aの下面上に窒化膜72を形成する。
この窒化膜71、72は、それぞれ、例えば、SiNで構成されている。
【0071】
また、窒化膜71、72の形成方法は、ぞれぞれ、特に限定されないが、上記工程A2と同様、例えば、プラズマCVD等の気相成膜法を用いることができる。
また、窒化膜71、72の厚さは、特に限定されないが、0.01μm以上0.3μm以下程度である。
なお、窒化膜71、72に代えて、SiOで構成された酸化膜を例えば熱酸化法により形成してもよい。
【0072】
−B2−
次に、図7(d)に示すように、窒化膜71上にレジスト膜81を形成する。
このレジスト膜81は、ポジ型またはネガ型のレジスト材料で構成されている。
−B3−
次に、レジスト膜81を露光および現像することにより、レジスト膜81の可動板21、支持部22および1対の連結部23、24の形成領域に対応した部分が残存するように、レジスト膜81の一部を除去する。これにより、図7(e)に示すように、開口811を有するレジスト膜81Aを得る。なお、図7(e)では図示しないが、レジスト膜81Aには、1対の梁部材231、232の上端同士の間の隙間に対応して形成された開口も形成されている。
【0073】
−B4−
次に、レジスト膜81Aをマスクとして用いて、窒化膜71の一部をエッチングにより除去する。これにより、図7(f)に示すように、開口711を有する窒化膜71Aを得る。なお、図7(f)では図示しないが、窒化膜71Aには、1対の梁部材231、232の上端同士の間の隙間に対応して形成された開口も形成されている。
上記エッチング(開口711の形成方法)としては、特に限定されないが、上記工程A5と同様、例えば、リアクティブイオンエッチング(RIE)、CFを用いたドライエッチング等が挙げられる。
【0074】
−B5−
次に、レジスト膜81Aを除去する。これにより、図7(g)に示すように、シリコン基板102Aは、その上面が窒化膜71Aで覆われ、下面が窒化膜72で覆われた状態となる。
レジスト膜81Aの除去方法としては、特に限定されないが、例えば、硫酸による洗浄、Oアッシング等が挙げられる。
【0075】
−B6−
次に、図8(a)に示すように、窒化膜72上にレジスト膜82を形成する。
このレジスト膜82は、ポジ型またはネガ型のレジスト材料で構成されている。
−B7−
次に、レジスト膜82を露光および現像することにより、レジスト膜82の可動板21、支持部22および1対の連結部23、24の形成領域に対応した部分が残存するように、レジスト膜82の一部を除去する。これにより、図8(b)に示すように、開口821を有するレジスト膜82Aを得る。なお、図8(b)では図示しないが、レジスト膜82Aには、1対の梁部材231、232の下端同士の間の隙間に対応して形成された開口も形成されている。
【0076】
−B8−
次に、レジスト膜82Aをマスクとして用いて、窒化膜72の一部をエッチングにより除去する。これにより、図8(c)に示すように、開口721を有する窒化膜72Aを得る。なお、図8(c)では図示しないが、窒化膜72Aには、1対の梁部材231、232の下端同士の間の隙間に対応して形成された開口も形成されている。
上記エッチング(開口721の形成方法)としては、特に限定されないが、上記工程A5と同様、例えば、リアクティブイオンエッチング(RIE)、CFを用いたドライエッチング等が挙げられる。
【0077】
−B9−
次に、レジスト膜82Aを除去する。これにより、図8(d)に示すように、シリコン基板102Aは、その上面が窒化膜71Aで覆われ、下面が窒化膜72Aで覆われた状態となる。
レジスト膜82Aの除去方法としては、特に限定されないが、例えば、硫酸による洗浄、Oアッシング等が挙げられる。
【0078】
−B10−
次に、窒化膜71A、72Aをマスクとして用いて、シリコン基板102Aを異方性エッチングする。これにより、図8(e)に示すように、基体2を得る。すなわち、本工程の異方性エッチングでは、第1のマスクである窒化膜72Aと第2のマスクである窒化膜71Aとを介してシリコン基板102Aをその両面側から異方性エッチングすることにより、可動板21、支持部22および1対の連結部23、24を形成する。
【0079】
上記異方性エッチング(基体2の形成方法)は、特に限定されないが、例えば、KOH水溶液等を用いたウェットエッチングにより行うことができる。
ここで、かかる異方性エッチングによる連結部23の形成について詳述する。なお、連結部24の形成については、連結部23の形成と同様であるので、その説明を省略する。
図9に示すように、マスク(第2のマスク)として用いる窒化膜71Aは、連結部23の梁部材231の上面の形成領域に対応して形成された部分712と、連結部23の梁部材232の上面の形成領域に対応して形成された部分713とを有し、部分712と部分713との間には、開口(第2の開口)714が形成されている。この開口714は、1対の梁部材231、232の上端同士の間の隙間に対応して形成されている。
【0080】
また、マスク(第1のマスク)として用いる窒化膜72Aは、連結部23の梁部材231の下面の形成領域に対応して形成された部分722と、連結部23の梁部材232の下面の形成領域に対応して形成された部分723とを有し、部分722と部分723との間には、開口724(第1の開口)が形成されている。この開口724は、1対の梁部材231、232の下端同士の間の隙間に対応して形成されている。
ここで、開口724の幅をWm1とし、シリコン基板102Aの厚さをTとしたときに、下記式(3)の関係を満たす。
【0081】
【数4】

【0082】
このような関係式を満たすことにより、第1のマスクである窒化膜72Aと第2のマスクである窒化膜71Aとの位置関係がずれ、それにより、各梁部材231、232のシリコンの(111)面で構成されるべき1対の側面に段差が生じても、一方の側面に形成された段差と、他方の側面に形成された段差とをシリコン基板の厚さ方向にずらすことができる。そのため、得られたアクチュエーターにおいて、可動板21の回動時における各梁部材231、232に生じる応力集中を緩和することができる。
開口714の幅をWm2としたとき、下記式(4)を満たす。
【0083】
【数5】

【0084】
これにより、板面がシリコンの(100)面で構成されたシリコン基板102Aをその両面側から異方性エッチングすることにより、1対の梁部材231、232で構成された連結部23を簡単かつ確実に形成することができる。
以下、本工程の異方性エッチングにおける段差の発生について詳述する。
本工程における異方性エッチングに際し、マスクとして用いる窒化膜71A、72Aの形成位置がずれていない場合、図9(a)〜図9(d)に示すように、開口711、714を介してシリコン基板102Aの上面がエッチングされるとともに、開口721、724を介してシリコン基板102Aの下面がエッチングされていき、1対の梁部材231、232が形成される。
【0085】
この場合、開口714および開口724の幅方向での中心位置が互いに幅方向で一致しているので、図9(d)に示すように、各梁部材231、232の各側面は、段差のない、シリコンの(111)面で構成された一定の傾斜面となる。
一方、本工程における異方性エッチングに際し、マスクとして用いる窒化膜71A、72Aの形成位置がずれている場合、図10(a)〜図10(d)に示すように、開口711、714を介してシリコン基板102Aの上面がエッチングされるとともに、開口721、724を介してシリコン基板102Aの下面がエッチングされていき、1対の梁部材231、232が形成される。
【0086】
この場合、開口714および開口724の幅方向での中心位置が互いに幅方向で異なるので、図10(d)に示すように、梁部材231の一方の側面には段差2315が形成され、梁部材231の他方の側面には段差2316が形成される。また、これと同様に、梁部材232の一方の側面には段差2325が形成され、梁部材232の他方の側面には段差2326が形成される。
【0087】
段差2316は、前述したようにマスクとして用いる窒化膜72Aの開口724の幅が前記式(3)を満たすように形成されているため、シリコン基板102Aの厚さ方向での中央よりも窒化膜72A側(下側)に形成される。
これに対し、段差2315は、窒化膜71Aの開口711および窒化膜72Aの開口721の幅はシリコン基板102Aの厚さに対して大きすぎるため、シリコン基板102Aの厚さ方向での中央に形成される。
【0088】
そのため、段差2315と段差2316とはシリコン基板102Aの厚さ方向での位置が異なっている。同様に、段差2325と段差2326とはシリコン基板102Aの厚さ方向での位置が異なっている。
このように、段差2315と段差2316とがシリコン基板102Aの厚さ方向での位置が異なるため、可動板21の回動時に梁部材231の厚さ方向での中央部に応力が集中するのを防止または抑制することができる。同様に、可動板21の回動時に梁部材232の厚さ方向での中央部に応力が集中するのを防止または抑制することができる。その結果、駆動時の応力集中による連結部23の破損を防止することができる。同様に、駆動時の応力集中による連結部24の破損を防止することができる。
【0089】
仮に、開口724の幅が前記式(3)を満たしていないと、段差2315、2316、2325、2326はいずれもシリコン基板102Aの厚さ方向での中央の位置に形成されることとなる。すなわち、段差2315、2316、2325、2326は互いにシリコン基板102Aの厚さ方向での位置が同じになる。そのため、駆動時における応力集中による破損するおそれがある。
【0090】
−B11−
次に、窒化膜71A、72Aを除去する。これにより、図8(f)に示すように、基体2の上面および下面が露出した状態となる。
窒化膜71A、72Aの除去方法としては、特に限定されないが、上記工程A5と同様、例えば、リアクティブイオンエッチング(RIE)、CFを用いたドライエッチング、熱りん酸によるウェットプロセス等が挙げられる。
また、必要に応じて、基体2の角部を丸める処理を行う。
【0091】
かかる処理(丸め処理)は、特に限定されないが、例えば、フッ酸と硝酸と酢酸(または水)とによる等方性エッチング、熱処理(減圧下、1000〜1200℃程度、Hを導入したAr雰囲気下)等が挙げられる。
次に、図8(g)に示すように、可動板21の下面に、接着剤を介して永久磁石41を固定する。なお、可動板21の下面に、接着剤を介して硬磁性体を固定し、その後、この硬磁性体を着磁することにより、永久磁石41としてもよい。
【0092】
また、可動板21の上面に、金属膜を形成し、光反射部211を形成する。この金属膜の形成方法としては、特に限定されず、真空蒸着、スパッタリング(低温スパッタリング)、イオンプレーティング等の乾式メッキ法、電解メッキ、無電解メッキ等の湿式メッキ法、溶射法、金属箔の接合等が挙げられる。
また、図示しないが、支持体3上にコイル42を設け、支持体3と基体2とを接合する。
以上の工程により、光スキャナー1が得られる。
【0093】
以上説明したような光スキャナー1の製造方法によれば、前記式(3)を満たすので、得られた光スキャナー1(アクチュエーター)において、可動板21の回動時における各梁部材231、232、241、242に生じる応力集中を緩和することができる。
以上説明したような第1実施形態に係る光スキャナー1(アクチュエーター)によれば、可動板21が平面視にて十字状をなしているので、可動板21の光反射領域を確保しながら、可動板21の回動時の慣性モーメントを低減することができる。
また、各連結部23、24の横断面が可動板21の一方の面側から他方の面側に向けて幅が漸増しているので、シリコン基板を異方性エッチングすることにより、可動板21および1対の連結部23、24を簡単かつ高精度に形成することができる。
【0094】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
図11は、本発明の第2実施形態に係る光スキャナーを示す平面図、図12は、図11中のB−B線部分拡大断面図である。
以下、第2実施形態の光スキャナーについて、前述した実施形態の光スキャナーとの相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0095】
第2実施形態の光スキャナーは、連結部の横断面形状が異なる以外は、第1実施形態の光スキャナー1とほぼ同様である。なお、前述した実施形態と同様の構成には、同一符号を付してある。
本実施形態の光スキャナー1Aは、図11に示すように、振動系を有する基体2Aを有している。基体2Aは、可動板21と、支持部22と、可動板21を支持部22に対して回動可能に連結する1対の連結部23A、24Aとを有する。
【0096】
以下、連結部23について代表的に説明し、連結部24については、連結部23と同様であるので、その説明を省略する。
連結部23Aは、軸線Xに沿って設けられている。また、連結部23Aは、その横断面形状が台形をなしている。
より具体的には、連結部23Aは、軸線Xに平行な方向からみたときに(言い換えると、図12に示す断面でみたとき)、上下に延び軸線Xを通る線分に対して対称(図12にて左右対称)な形状をなしている。
【0097】
また、図12に示す断面において、連結部23A全体の幅は、下側から上側に向けて拡がっている。
また、連結部23Aの横断面の外形は、シリコンの(100)に沿った1対の辺と、シリコンの(111)面に沿った1対の辺とで構成されている。すなわち、連結部23Aは、上面233および下面234がそれぞれシリコンの(100)面で構成され、1対の側面235、236がそれぞれシリコンの(111)面で構成されている。ここで、側面235、236は、それぞれ、上面233または下面234に対する傾斜角θが54.73°となっている。このような横断面形状をなす連結部23Aは、前述した第1実施形態の連結部23と同様、板面がシリコンの(100)面で構成されたシリコン基板を異方性エッチングすることにより簡単かつ高精度に形成することができる。
以上説明したような第2実施形態の光スキャナー1Aによっても、光反射領域を確保しながら可動板の回動時の慣性モーメントを低減するとともに、可動板および1対の連結部の寸法精度を簡単に優れたものとすることができる。
【0098】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
図13は、本発明の第3実施形態に係るスキャナーに備えられた可動板を説明するための平面図である。
以下、第3実施形態の光スキャナーについて、前述した実施形態の光スキャナーとの相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0099】
第3実施形態の光スキャナーは、可動板の平面視形状が異なる以外は、第1実施形態の光スキャナー1とほぼ同様である。なお、前述した実施形態と同様の構成には、同一符号を付してある。
本実施形態の光スキャナーに備えられた可動板21Cは、図13に示すように、本体部212Cと、この本体部212Cから軸線X方向に両側へ突出する1対の突出部213C、214Cと、本体部212から線分Y方向に両側に突出する1対の突出部215C、216Cとで構成されている。これにより、可動板21Cは、平面視にて十字状をなす。
【0100】
そして、可動板21Cの外周に沿った方向における突出部213Cと突出部215Cとの間には、欠損部251Cが形成されている。また、可動板21Cの外周に沿った方向における突出部213Cと突出部216Cとの間には、欠損部252Cが形成されている。また、可動板21Cの外周に沿った方向における突出部214Cと突出部216Cとの間には、欠損部254Cが形成されている。また、可動板21Cの外周に沿った方向における突出部214Cと突出部215Cとの間には、欠損部253Cが形成されている。
【0101】
本実施形態では、可動板21Cは、板厚方向からの平面視にて軸線Xに対して対称となるように形成されているが、当該平面視にて線分Yに対して非対称となるように形成されている。なお、以下では、欠損部251C、253Cについて代表的に説明するが、欠損部252C、254Cについても同様である。
より具体的に説明すると、欠損部251の線分Y方向に沿った長さをa1とし、欠損部251Cの軸線X方向に沿った長さをb1としたとき、a1<b1の関係を満たす。すなわち、欠損部251Cは、軸線X方向に沿った長さが線分Y方向に沿った長さよりも長い長方形をなしている。これにより、可動板21Cの軸線Xから遠位の端部の質量を効率的に低減することができる。そのため、可動板21Cの回動時の慣性モーメントを効果的に抑えることができる。
【0102】
同様に、欠損部253Cの線分Y方向での長さをa3とし、欠損部253Cの軸線X方向での長さをb3としたとき、a3<b3の関係を満たす。すなわち、欠損部253Cは、軸線X方向の長さが線分Y方向での長さよりも長い長方形をなしている。これにより、可動板21Cの軸線Xから遠位の端部の質量を効率的に低減することができる。そのため、可動板21Cの回動時の慣性モーメントを効果的に抑えることができる。
【0103】
また、a1>a3、かつ、b1>b3の関係を満たす。これにより、軸線X軸に対して傾斜させて光を光反射部211に入射させる場合に、光反射領域を効率的に確保することができる。
また、この可動板21Cにおいても、可動板21Cの平面視における線分Y方向での長さをAとし、可動板21Cの軸線X方向での長さをBとし、各欠損部251C〜254Cの線分Y方向での長さをaとし、各欠損部251C〜254Cの軸線X方向での長さをbとしたとき、前記式(A)、(B)をそれぞれ満たす。
以上説明したような第3実施形態の光スキャナーによっても、光反射領域を確保しながら可動板の回動時の慣性モーメントを低減するとともに、可動板および1対の連結部の寸法精度を簡単に優れたものとすることができる。
【0104】
<第4実施形態>
次に、本発明の第4実施形態について説明する。
図14は、本発明の第4実施形態に係るスキャナーに備えられた可動板を説明するための平面図である。
以下、第4実施形態の光スキャナーについて、前述した実施形態の光スキャナーとの相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0105】
第4実施形態の光スキャナーは、可動板の平面視形状が異なる以外は、第1実施形態の光スキャナー1とほぼ同様である。なお、前述した実施形態と同様の構成には、同一符号を付してある。
本実施形態の光スキャナーに備えられた可動板21Dは、図14に示すように、本体部212Dと、この本体部212Dから軸線X方向に両側へ突出する1対の突出部213D、214Dと、本体部212から線分Y方向に両側に突出する1対の突出部215D、216Dとで構成されている。これにより、可動板21Dは、平面視にて十字状をなす。
【0106】
そして、可動板21Dの外周に沿った方向における突出部213Dと突出部215Dとの間には、欠損部251Dが形成されている。また、可動板21Dの外周に沿った方向における突出部213Dと突出部216Dとの間には、欠損部252Dが形成されている。また、可動板21Dの外周に沿った方向における突出部214Dと突出部216Dとの間には、欠損部254Dが形成されている。また、可動板21Dの外周に沿った方向における突出部214Dと突出部215Dとの間には、欠損部253Dが形成されている。
【0107】
本実施形態では、可動板21Dは、平面視にて軸線Xに対して非対称となるように形成され、平面視にて線分Yに対して対称となるように形成されている。なお、以下では、欠損部251D、252Dについて代表的に説明するが、欠損部253D、254Dについても同様である。
より具体的に説明すると、欠損部251Dの線分Y方向での長さをa1とし、欠損部251Dの軸線X方向での長さをb1としたとき、a1<b1の関係を満たす。すなわち、欠損部251Dは、軸線X方向の長さが線分Y方向での長さよりも長い長方形をなしている。これにより、可動板21Dの軸線Xから遠位の端部の質量を効率的に低減することができる。そのため、可動板21Dの回動時の慣性モーメントを効果的に抑えることができる。
【0108】
一方、欠損部252Dの線分Y方向での長さをa2とし、欠損部252Dの軸線X方向での長さをb2としたとき、a2>b2の関係を満たす。これにより、欠損部252Dの平面視での面積が欠損部251Dの平面視での面積より大きくても、可動板21Dの重心が軸線Xからずれるのを防止または抑制することができる。そのため、可動板21Dの回動を円滑なものとすることができる。なお、本実施形態では、a1×b1<a2×b2の関係を満たす。
【0109】
また、この可動板21Dにおいても、可動板21Dの平面視における線分Y方向での長さをAとし、可動板21Dの軸線X方向での長さをBとし、各欠損部251D〜254Dの線分Y方向での長さをaとし、各欠損部251D〜254Dの軸線X方向での長さをbとしたとき、前記式(A)、(B)をそれぞれ満たす。
以上説明したような第4実施形態の光スキャナーによっても、光反射領域を確保しながら可動板の回動時の慣性モーメントを低減するとともに、可動板および1対の連結部の寸法精度を簡単に優れたものとすることができる。
以上説明したような光スキャナーは、例えば、プロジェクター、レーザープリンター、イメージング用ディスプレイ、バーコードリーダー、走査型共焦点顕微鏡などの画像形成装置に好適に適用することができる。その結果、優れた描画特性を有する画像形成装置を提供することができる。
【0110】
(画像形成装置)
ここで、図15に基づいて、本発明の画像形成装置の一例を説明する。
図15は、本発明の画像形成装置の構成の一例を示す概略図である。なお、以下では、説明の便宜上、スクリーンSCの長手方向を「横方向」といい、長手方向に直角な方向を「縦方向」という。
【0111】
プロジェクター9は、レーザーなどの光を照出する光源装置91と、クロスダイクロイックプリズム92と、1対の本発明の光スキャナー93、94(例えば、光スキャナー1と同様の構成の光スキャナー)と、固定ミラー95とを有している。
光源装置91は、赤色光を照出する赤色光源装置911と、青色光を照出する青色光源装置912と、緑色光を照出する緑色光源装置913とを備えている。
【0112】
クロスダイクロイックプリズム92は、4つの直角プリズムを貼り合わせて構成され、赤色光源装置911、青色光源装置912、緑色光源装置913のそれぞれから照出された光を合成する光学素子である。
このようなプロジェクター9は、赤色光源装置911、青色光源装置912、緑色光源装置913のそれぞれから、図示しないホストコンピューターからの画像情報に基づいて照出された光をクロスダイクロイックプリズム92で合成し、この合成された光が、光スキャナー93、94によって走査され、さらに固定ミラー95によって反射され、スクリーンSC上でカラー画像を形成するように構成されている。
ここで、光スキャナー93、94の光走査について具体的に説明する。
【0113】
まず、クロスダイクロイックプリズム92で合成された光は、光スキャナー93によって横方向に走査される(主走査)。そして、この横方向に走査された光は、光スキャナー94によってさらに縦方向に走査される(副走査)。これにより、2次元カラー画像をスクリーンSC上に形成することができる。このような光スキャナー93、94として本発明の光スキャナーを用いることで、極めて優れた描画特性を発揮することができる。
【0114】
ただし、プロジェクター9としては、光スキャナーにより光を走査し、対象物に画像を形成するように構成されていれば、これに限定されず、例えば、固定ミラー95を省略してもよい。
このように構成されたプロジェクター9によれば、前述した光スキャナー1と同様の構成の光スキャナー93、94を備えるので、安価に、高品位な画像を得ることができる。
【0115】
以上、本発明のアクチュエーター、光スキャナーおよび画像形成装置について、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、本発明のアクチュエーター、光スキャナーおよび画像形成装置では、各部の構成は、同様の機能を発揮する任意の構成のものに置換することができ、また、任意の構成を付加することもできる。
また、前述した実施形態では、可動板が平面視において回動中心軸およびそれに垂直な線分の少なくとも一方に対して対称な形状をなす場合を説明したが、これに限定されず、可動板が平面視において回動中心軸およびそれに垂直な線分のいずれに対しても非対称な形状をなしていてもよい。
【0116】
また、前述した実施形態では、本発明のアクチュエーターを光スキャナーに適用した場合を例に説明したが、本発明のアクチュエーターは、これに限定されず、例えば、光スイッチ、光アッテネータ等の他の光学デバイスに適用することも可能である。
また、前述した実施形態では、可動板を回動させる駆動部がムービングマグネット型の電磁駆動方式を採用した構成を例に説明したが、かかる駆動部は、ムービングコイル型の電磁駆動方式であってもよいし、また、静電駆動方式、圧電駆動方式等の電磁駆動方式以外の駆動方式を採用するものであってもよい。
【符号の説明】
【0117】
1‥‥光スキャナー 2‥‥基体 2A‥‥基体 3‥‥支持体 4‥‥駆動部 9‥‥プロジェクター 21‥‥可動板 21A〜21D‥‥可動板 21a、21b‥‥可動板 22‥‥支持部 23、24‥‥連結部 23A、24A‥‥連結部 31‥‥凹部 32‥‥板状部 33‥‥枠状部 41‥‥永久磁石 42‥‥コイル 51‥‥窒化膜 52‥‥窒化膜 52A‥‥窒化膜 61‥‥レジスト膜 62‥‥レジスト膜 62A‥‥レジスト膜 71‥‥窒化膜 71A‥‥窒化膜 72‥‥窒化膜 72A‥‥窒化膜 81‥‥レジスト膜 81A‥‥レジスト膜 82‥‥レジスト膜 82A‥‥レジスト膜 91‥‥光源装置 92‥‥クロスダイクロイックプリズム 93‥‥光スキャナー 94‥‥光スキャナー 95‥‥固定ミラー 102‥‥シリコン基板 102A‥‥シリコン基板 211‥‥光反射部 212‥‥本体部 213〜216‥‥突出部 213C〜216C‥‥突出部 213D〜216D‥‥突出部 218‥‥凹部 231‥‥梁部材 232‥‥梁部材 233‥‥上面 234‥‥下面 241‥‥梁部材 242‥‥梁部材 251〜254‥‥欠損部 251C〜254C‥‥欠損部 251D〜254D‥‥欠損部 311‥‥底面 521‥‥開口 621‥‥開口 711‥‥開口 712‥‥部分 713‥‥部分 714‥‥開口 721‥‥開口 722‥‥部分 723‥‥部分 724‥‥開口 811‥‥開口 821‥‥開口 911‥‥赤色光源装置 912‥‥青色光源装置 913‥‥緑色光源装置 2311‥‥上面 2312‥‥下面 2313、2314‥‥側面 2315‥‥段差 2316‥‥段差 2321‥‥上面 2322‥‥下面 2323、2324‥‥側面 2325‥‥段差 2326‥‥段差 t‥‥厚さ L‥‥光 P1、P2‥‥交点 P3‥‥角 X‥‥軸線 SC‥‥スクリーン Y‥‥線分 W1、‥‥距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の回動中心軸まわりに回動可能な板状の可動部と、
前記可動部に連結し、かつ前記可動部の回動に伴って捩り変形する連結部と、
前記連結部を支持する支持部と、を有し、
前記可動部は、前記可動部の板厚方向からの平面視にて十字状をなし、
前記連結部の前記回動中心軸に垂直な断面は、前記可動部の第1の面から前記第1の面に対向する第2の面に向けて幅が漸増する形状をなすことを特徴とするアクチュエーター。
【請求項2】
前記板厚方向からの平面視における前記可動部の外形は、主として、前記回動中心軸に平行な線分と、前記回動中心軸に対して垂直な線分とで構成されている請求項1に記載のアクチュエーター。
【請求項3】
前記可動部、前記支持部および前記連結部は、シリコン基板を異方性エッチングすることにより形成されたものである請求項1または2に記載のアクチュエーター。
【請求項4】
前記可動部の板面は、シリコンの(100)面で構成されている請求項3に記載のアクチュエーター。
【請求項5】
前記可動部の側面は、主として、シリコンの(111)面で構成されている請求項3または4に記載のアクチュエーター。
【請求項6】
前記可動部の側面には、前記可動部の板面に直交する断面においてV字状をなす溝が形成されている請求項5に記載のアクチュエーター。
【請求項7】
前記連結部の表面は、シリコンの(100)面および(111)面で構成されている請求項3ないし6のいずれかに記載のアクチュエーター。
【請求項8】
前記連結部は、2つの梁状の梁部材を有する請求項1ないし7のいずれかに記載のアクチュエーター。
【請求項9】
前記梁部材の前記回動中心軸に垂直な断面は、平行四辺形をなし、
前記2つの梁部材間の距離は、前記可動部の前記第1の面から前記第2の面に向けて漸増する請求項8に記載のアクチュエーター。
【請求項10】
前記連結部の前記回動中心軸に垂直な断面は、台形をなす請求項1ないし7のいずれかに記載のアクチュエーター。
【請求項11】
前記可動部は、前記板厚方向からの平面視にて前記回動中心軸に対して対称な形状をなしている請求項1ないし10のいずれかに記載のアクチュエーター。
【請求項12】
前記可動部は、前記板厚方向からの平面視にて前記可動部の中心を通りかつ前記回動中心軸に対して垂直な線分に対して対称な形状をなしている請求項1ないし11のいずれかに記載のアクチュエーター。
【請求項13】
所定の回動軸まわりに回動可能な板状の可動部と、
前記可動部に連結し、かつ前記可動部の回動に伴って捩り変形する連結部と、
前記連結部を支持する支持部と、を有し、
前記可動部は、前記可動部の板厚方向からの平面視にて四角形の四隅の部分をそれぞれ矩形に欠いた形状をなし、
前記連結部の前記回動中心軸に垂直な断面は、前記可動部の第1の面から前記第1の面に対向する第2の面に向けて幅が漸増する形状をなすことを特徴とするアクチュエーター。
【請求項14】
光反射性を有する光反射部と、
前記光反射部を備え、かつ所定の回動中心軸まわりに回動可能な板状の可動部と、
前記可動部に連結し、かつ前記可動部の回動に伴って捩り変形する連結部と、
前記連結部を支持する支持部と、を有し、
前記可動部は、前記板厚方向からの平面視にて十字状をなし、
前記連結部の前記回動中心軸に垂直な断面は、前記可動部の第1の面から前記第1の面に対向する第2の面に向けて幅が漸増する形状をなすことを特徴とする光スキャナー。
【請求項15】
光反射性を有する光反射部と、
前記光反射部を備え、かつ所定の回動中心軸まわりに回動可能な板状の可動部と、
前記可動部に連結し、かつ前記可動部の回動に伴って捩り変形する連結部と、
前記連結部を支持する支持部と、を有し、
前記可動部は、前記可動部の板厚方向からの平面視にて四角形の四隅の部分をそれぞれ矩形に欠いた形状をなし、
前記連結部の前記回動中心軸に垂直な断面は、前記可動部の第1の面から前記第1の面に対向する第2の面に向けて幅が漸増する形状をなすことを特徴とする光スキャナー。
【請求項16】
光を出射する光源と、
前記光源からの光を走査する光スキャナーと、を備え、
前記光スキャナーは、
光反射性を有する光反射部と、
前記光反射部を備え、かつ所定の回動中心軸まわりに回動可能な板状の可動部と、
前記可動部に連結し、かつ前記可動部の回動に伴って捩り変形する連結部と、
前記連結部を支持する支持部と、を有し、
前記可動部は、前記板厚方向からの平面視にて十字状をなし、
前記連結部の前記回動中心軸に垂直な断面は、前記可動部の第1の面から前記第1の面に対向する第2の面に向けて幅が漸増する形状をなすことを特徴とする画像形成装置。
【請求項17】
光を出射する光源と、
前記光源からの光を走査する光スキャナーと、を備え、
前記光スキャナーは、
光反射性を有する光反射部と、
前記光反射部を備え、かつ所定の回動中心軸まわりに回動可能な板状の可動部と、
前記可動部に連結し、かつ前記可動部の回動に伴って捩り変形する連結部と、
前記連結部を支持する支持部と、を有し、
前記可動部は、前記可動部の板厚方向からの平面視にて四角形の四隅の部分をそれぞれ矩形に欠いた形状をなし、
前記連結部の前記回動中心軸に垂直な断面は、前記可動部の第1の面から前記第1の面に対向する第2の面に向けて幅が漸増する形状をなすことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−218098(P2012−218098A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−84839(P2011−84839)
【出願日】平成23年4月6日(2011.4.6)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】