説明

アモルファスシリコン膜の成膜方法および成膜装置

【課題】 より平滑な表面を持ち、かつ、更なる薄膜化を達成することが可能なアモルファスシリコン膜の成膜方法を提供すること。
【解決手段】 下地2を加熱し、加熱した下地2にアミノシラン系ガスを供給し、下地2表面にシード層3を形成する工程と、下地2を加熱し、加熱した下地2表面のシード層3にアミノ基を含まないシラン系ガスを供給し、シード層3上にアモルファスシリコン膜4を、層成長する厚さに形成する工程と、層成長する厚さに形成されたアモルファスシリコン膜4をエッチングし、該アモルファスシリコン膜4の膜厚tを減ずる工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、アモルファスシリコン膜の成膜方法および成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アモルファスシリコン膜は、半導体集積回路装置のコンタクトホールやラインの埋め込みなどに使用される。アモルファスシリコンの成膜方法は、例えば、特許文献1、2に記載されている。特に、特許文献2には、ジシランを400〜500℃にて分解して、表面が平滑な導電体層を得る方法が記載されている。
【0003】
近時、半導体集積回路装置の高集積化に伴い、コンタクトホールやラインの微細化が進んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭63−29954号公報
【特許文献2】特開平1−217956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
微細化が進んだコンタクトホールやラインを埋め込むためには、アモルファスシリコン膜の更なる薄膜化が必須の技術となる。
【0006】
ジシランは薄膜化に有利な成膜材料である反面、ジシランを用いて成膜したアモルファスシリコン膜では良好なステップカバレッジを得がたい。対して、シランはジシランに比較して良好なステップカバレッジを得やすいが、インキュベーション時間が長く、薄膜化には不利な成膜材料である。
【0007】
また、薄膜化とともに、より平滑な表面を持つアモルファスシリコン膜を成膜することも大切である。表面に凹凸を持つアモルファスシリコン膜でコンタクトホールやラインを埋め込むと、ボイドが発生するためである。
【0008】
この発明は、より平滑な表面を持ち、かつ、更なる薄膜化を達成することが可能なアモルファスシリコン膜の成膜方法及び成膜装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の第1の態様に係るアモルファスシリコン膜の成膜方法は、下地上にアモルファスシリコン膜を含む膜を成膜する成膜方法であって、(1)前記下地を加熱し、前記加熱した下地にアミノシラン系ガスを供給し、前記下地表面にシード層を形成する工程と、(2)前記下地を加熱し、前記加熱した下地表面のシード層にアミノ基を含まないシラン系ガスを供給し、前記シード層上にアモルファスシリコン膜を、層成長する厚さに形成する工程と、(3)前記層成長する厚さに形成された前記アモルファスシリコン膜をエッチングし、該アモルファスシリコン膜の膜厚を減ずる工程とを備える。
【0010】
この発明の第2の態様に係る成膜装置は、下地上にアモルファスシリコン膜を成膜する成膜装置であって、前記アモルファスシリコン膜が形成される下地を有した被処理体を収容する処理室と、前記処理室内に、処理に使用するガスを供給する処理ガス供給機構と、前記処理室内に収容された前記被処理体を加熱する加熱装置と、前記処理室内を排気する排気機構と、前記処理ガス供給機構、前記加熱装置、及び前記排気機構を制御するコントローラとを備え、前記コントローラが、第1の態様の(1)工程、(2)工程、及び(3)工程が順次実施されるように前記成膜装置を制御する。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、より平滑な表面を持ち、かつ、更なる薄膜化を達成することが可能なアモルファスシリコン膜の成膜方法及び成膜装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の第1の実施形態に係るアモルファスシリコン膜の成膜方法のシーケンスの一例を示す流れ図
【図2】シーケンス中のサンプルの状態を概略的に示す断面図
【図3】処理時間とアモルファスシリコン膜の膜厚との関係を示す図
【図4】図3中の破線枠A内を拡大した拡大図
【図5】アモルファスシリコン膜の膜厚とアモルファスシリコン膜表面の平均線粗さRaとの関係を示す図
【図6】アモルファスシリコン膜の表面及び断面の二次電子像を示す図面代用写真
【図7】アモルファスシリコン膜の表面及び断面の二次電子像を示す図面代用写真
【図8】この発明の第2の一実施形態に係るアモルファスシリコン膜の成膜方法のシーケンスの一例を示す流れ図
【図9】シーケンス中のサンプルの状態を概略的に示す断面図
【図10】アモルファスシリコン膜の表面及び断面の二次電子像を示す図面代用写真
【図11】第1、第2の実施形態に係るアモルファスシリコン膜の成膜方法を実施することが可能な成膜装置の一例を概略的に示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
本願発明者らは、アモルファスシリコン膜の表面ラフネスが、アモルファスシリコン膜のインキュベーション時間に関係するのではないか、と推測した。インキュベーション時間が長くなればなるほど、核のサイズがばらつきやすくなり、核の発生後に堆積が始まるアモルファスシリコンの表面ラフネスの精度に影響を与える、との仮定である。
【0014】
しかし、アモルファスシリコン膜のインキュベーション時間を短縮させる手法は知られていない。
【0015】
本願発明者らは、まず、アモルファスシリコン膜のインキュベーション時間の短縮に成功し、その結果、アモルファスシリコン膜の表面ラフネスの精度をさらに改善することに成功した。
【0016】
以下、この発明の実施形態を、図面を参照して説明する。なお、全図にわたり、共通の部分には共通の参照符号を付す。
【0017】
なお、本明細書においては、アモルファスシリコンを、アモルファスシリコンのみを指す用語ではなく、アモルファスシリコン、本明細書において開示する表面ラフネスの精度を達成できるアモルファス〜ナノサイズの結晶粒が集まったナノ結晶シリコン、及び上記アモルファスシリコンと上記ナノ結晶シリコンとが混在したシリコンの全てを含む用語と定義する。
【0018】
(第1の実施形態)
図1はこの発明の第1の実施形態に係るアモルファスシリコン膜の成膜方法のシーケンスの一例を示す流れ図、図2A〜図2Eはシーケンス中のサンプルの状態を概略的に示す断面図である。
【0019】
まず、図2Aに示す半導体基板、例えば、シリコン基板1上に厚さ約100nmの下地2が形成されたサンプル(図2A参照)を、成膜装置の処理室に搬入する。下地2の一例は、シリコン酸化膜である。しかし、下地2はシリコン酸化膜に限られるものではなく、例えばシリコン窒化膜、シリコン酸窒化膜などであっても良い。
【0020】
次に、図1及び図2Bに示すように、下地2の表面にシード層3を形成する。本例では、下地2を加熱し、加熱した下地2の表面にアミノシラン系ガスを流すことで、下地2の表面にシード層3を形成する(ステップ1)。
【0021】
アミノシラン系ガスの例としては、
BAS(ブチルアミノシラン)
BTBAS(ビスターシャリブチルアミノシラン)
DMAS(ジメチルアミノシラン)
BDMAS(ビスジメチルアミノシラン)
TDMAS(トリジメチルアミノシラン)、
DEAS(ジエチルアミノシラン)、
BDEAS(ビスジエチルアミノシラン)、
DPAS(ジプロピルアミノシラン)、
DIPAS(ジイソプロピルアミノシラン)
等を挙げることができる。本例では、DIPASを用いた。
【0022】
ステップ1における処理条件の一例は、
DIPAS流量: 500sccm
処 理 時 間: 5min
処 理 温 度: 400℃
処 理 圧 力: 53.2Pa(0.4Torr)
である。ステップ1の工程を、本明細書では以下プリフローと呼ぶ。
【0023】
次に、図1及び図2C〜図2Dに示すように、シード層3上にアモルファスシリコン膜4を形成する。
【0024】
本例では、下地2を加熱し、加熱した下地2の表面のシード層3にアミノ基を含まないシラン系ガスを供給し、このアミノ基を含まないシラン系ガスを熱分解させることで、シード層3上にアモルファスシリコン膜4を形成する(ステップ2)。
【0025】
アミノ基を含まないシラン系ガスの例としては、
SiH
Si
Si2m+2(ただし、mは3以上の自然数)の式で表されるシリコンの水素化物、及び
Si2n(ただし、nは3以上の自然数)の式で表されるシリコンの水素化物
の少なくとも一つを含むガスを挙げることができる。本例では、SiH(モノシラン)を用いた。
【0026】
ステップ2における処理条件の一例は、
SiH流 量: 500sccm
処 理 時 間: 30min
処 理 温 度: 500℃
処 理 圧 力: 53.2Pa(0.4Torr)
である。
【0027】
ここで、図3に、処理時間とアモルファスシリコン膜4の膜厚との関係を示す。図3は下地2をシリコン酸化膜(SiO)とした場合である。アモルファスシリコン膜4の膜厚は、処理時間を30minとしたとき、45minとしたとき、及び60minとしたときの3点で測定した。
【0028】
図3中の線Iはプリフロー有りの場合、線IIはプリフロー無しの場合の結果を示している。線I、IIは、測定された3つの膜厚を最小二乗法で直線近似した直線であり、式は次の通りである。
【0029】
線I : y = 17.572x − 20.855 …(1)
線II : y = 17.605x − 34.929 …(2)
図3に示すように、プリフロー有りの場合、プリフロー無しに比較してアモルファスシリコン膜4の膜厚が増す傾向が明らかとなった。
【0030】
上記(1)、(2)式をy=0、即ちアモルファスシリコン膜の膜厚を“0”としたとき、線I、IIと堆積時間との交点を求めたものを図4に示す。なお、図4は図3中の破線枠A内を拡大した拡大図に相当する。
【0031】
図4に示すように、下地2がプリフロー有りのシリコン酸化膜のとき、アモルファスシリコン膜4の堆積が、処理開始から約1.2min(x≒1.189)から始まる。対して、プリフロー無しのシリコン酸化膜のときには、アモルファスシリコン膜4の堆積が、処理開始から約2.0min(x≒1.984)から始まる。
【0032】
図5に、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて測定したアモルファスシリコン膜4の表面の平均線粗さ(表面ラフネス)Raを示す。図5に示す結果においては、AFMのスキャンサイズを1μm、スキャンレートを1.993Hzに設定した。
【0033】
図5に示すように、プリフロー有りの場合、プリフロー無しに比較して、平均線粗さ(表面ラフネス)Raは、0.101〜0.157nm改善されている。
【0034】
このように、下地2に対してアミノシラン系ガスのプリフローを行うことで、インキュベーション時間を約2.0minから約1.2minに短縮することができる。そして、インキュベーション時間を短縮できる結果、アモルファスシリコン膜4の表面ラフネスの精度が向上し、より平滑な表面を持つアモルファスシリコン膜4を得ることができる。
【0035】
また、アモルファスシリコン膜4は、成膜初期段階では、アイランド状に成長するいわゆる核成長が起こっている(図2C)。膜厚が増えてくると、アモルファスシリコン膜4の成長は、核成長から層成長に変化する(図2D)。
【0036】
シード層3上にモノシランを用いてアモルファスシリコン膜4を形成した場合、膜厚tがおおよそ8nmまでの範囲では核成長が起こり、膜厚tが8nmを超えてくると層成長に変化する。本例では、アモルファスシリコン膜4を、層成長する厚さに形成する。
【0037】
次に、図1及び図2Eに示すように、層成長する厚さに形成されたアモルファスシリコン膜4の膜厚を減ずる。本例では、Clガスを用いて、層成長する厚さに形成されたアモルファスシリコン膜4を、例えば、10分間ドライエッチングする。希釈ガスとして、Nガスを同時に流しても良い。これにより、膜厚の薄いアモルファスシリコン膜4を得ることができる(ステップ3)。
【0038】
ステップ3の処理条件の一例は、
Cl/N流量: 300/500sccm
処 理 温 度 : 300℃
処 理 圧 力 : 39.9〜66.5Pa(0.3〜0.5Torr)
処 理 時 間 : 処理時間を調整し、アモルファスシリコン膜4の膜厚を制御
である。
【0039】
図6AはClエッチング(ステップ3)後の膜厚9.6nmのアモルファスシリコン膜4のSEM写真、図6Bは膜厚9.6nmのアモルファスシリコン膜4を希フッ酸でエッチングしてピンホールの有無を確認したSEM写真である。
【0040】
同じく図7Aは膜厚8.0nmのアモルファスシリコン膜4のSEM写真、図7Bは膜厚8.0nmのアモルファスシリコン膜4を希フッ酸でエッチングしてピンホールの有無を確認したSEM写真である。
【0041】
図6A〜図7Bに示すように、層成長する厚さに達していないアモルファスシリコン膜4は、エッチングするとピンホールが発生する(図7B参照)。
【0042】
対して、層成長する厚さに形成されたアモルファスシリコン膜4では、エッチングしてもピンホールが発生することがない(図6B)。
【0043】
このように、アモルファスシリコン膜4を層成長する厚さに形成し、層成長する厚さに形成されたアモルファスシリコン膜4をエッチングすることで、膜厚の薄いアモルファスシリコン膜4を形成することができる。
【0044】
しかも、本例では、アモルファスシリコン膜4を形成する前に、アミノシラン系ガスによって下地にプリフローを行い、シード層3を形成するので、表面ラフネスの精度も向上する。
【0045】
従って、第1の実施形態によれば、より平滑な表面を持ち、かつ、更なる薄膜化を達成することが可能なアモルファスシリコン膜の成膜方法を得ることができる。
【0046】
(第2の実施形態)
図8はこの発明の第2の実施形態に係るアモルファスシリコン膜の成膜方法のシーケンスの一例を示す流れ図、図9A〜図9Fはシーケンス中のサンプルの状態を概略的に示す断面図である。
【0047】
図8に示すように、第2の実施形態が第1の実施形態と異なるところは、ステップ1とステップ2との間に、シード層3を強化する工程(ステップ4)があることである。
【0048】
シード層3は、アモルファスシリコン膜4が形成される下地、本例では、下地2、例えば、シリコン酸化膜の表面に、シリコンの核を均一に発生させ、モノシランを吸着させやすくするものである。ミクロな視点で考えてみると、シード層3のシリコンの核はアイランド状に均一に点在しているかも知れないし、核自体の平面的なサイズは極めて小さいものであるかも知れない。そのように考えると、核自体の平面的な大きさを大きくし、下地表面上で核が占める面積を大きくしてシード層3をアイランド状から平面である単層に限りなく近づける、あるいは究極的にはシード層3を平面である単層とし、アモルファスシリコン膜4の成長を“核成長”から“層成長”に近づけていけば、シード層3上には、層成長したアモルファスシリコン膜4を薄く形成することが可能となる。
【0049】
この点を踏まえ、第2の実施形態では、アモルファスシリコン膜4を形成する前に、シード層3を強化する工程を取り入れた。シード層3を強化することの具体例は、シード層3中のシリコンの核自体の平面的な大きさを大きくし、下地表面上で核が占める面積を大きくすることである。具体的な方法例は、モノシランを用いてアモルファスシリコン膜4を形成する前に、モノシランよりも高次のシランを用いて、シード層3の表面にシリコンを薄く吸着させることである(図9C)。より具体的には、シード層3が形成された下地2を加熱し、モノシランよりも高次のシランガス、本例ではジシラン(Si)ガスを供給する。
【0050】
ステップ4における処理条件の一例は、
ジシラン流 量: 120sccm
処 理 時 間: 30min
処 理 温 度: 400℃
処 理 圧 力: 39.9Pa(0.3Torr)
である。
【0051】
このように、モノシランを供給する前に、ジシランガスを供給しシード層3を強化しておくことで、図9D〜図9Eに示すように、層成長したアモルファスシリコン膜4の膜厚tをより薄くすることができる。
【0052】
次いで、層成長したアモルファスシリコン膜4を、第1の実施形態と同様にエッチングし、その膜厚を減ずる。
【0053】
このような第2の実施形態であっても、第1の実施形態と同様に、より薄いアモルファスシリコン膜4を形成することができる。
【0054】
図10Aは第2の実施形態に従って形成した膜厚2.8nmのアモルファスシリコン膜4のSEM写真、図10Bはそのアモルファスシリコン膜4を希フッ酸でエッチングし、ピンホールの有無を確認したSEM写真である。図10Bに示すように、第2の実施形態に従って形成した膜厚2.8nmのアモルファスシリコン膜4には、ピンホールが生じていない。
【0055】
よって、図10A〜図10Bに示すように、第2の実施形態では、層成長する厚さのアモルファスシリコン膜4を、膜厚2.8nmまで薄くすることができる。
【0056】
このように第2の実施形態は、層成長したアモルファスシリコン膜4の膜厚tをより薄くすることができ、また、膜厚tをより薄くできる結果、例えば、第1の実施形態に比較して、アモルファスシリコン膜4のエッチング時間を短縮することができる、という利点についても得ることができる。
【0057】
(第3の実施形態)
次に、上記第1、第2の実施形態に係るアモルファスシリコン膜の成膜方法を実施することが可能な成膜システムの一例を説明する。
【0058】
図11は、第1、第2の実施形態に係るアモルファスシリコン膜の成膜方法を実施することが可能な成膜装置の一例を概略的に示す断面図である。
【0059】
図11に示すように、成膜装置100は、下端が開口された有天井の円筒体状の処理室101を有している。処理室101の全体は、例えば、石英により形成されている。処理室101内の天井には、石英製の天井板102が設けられている。処理室101の下端開口部には、例えば、ステンレススチールにより円筒体状に成形されたマニホールド103がOリング等のシール部材104を介して連結されている。
【0060】
マニホールド103は処理室101の下端を支持している。マニホールド103の下方からは、被処理体として複数枚、例えば、50〜100枚の半導体基板、本例では、シリコン基板1を多段に載置可能な石英製のウエハボート105が処理室101内に挿入可能となっている。これにより、処理室101内に被処理体、例えば、半導体基板、本例では、例えば、下地としてSiO膜が予め堆積されたシリコン基板1が収容される。ウエハボート105は複数本の支柱106を有し、支柱106に形成された溝により複数枚のシリコン基板1が支持されるようになっている。
【0061】
ウエハボート105は、石英製の保温筒107を介してテーブル108上に載置されている。テーブル108は、マニホールド103の下端開口部を開閉する、例えば、ステンレススチール製の蓋部109を貫通する回転軸110上に支持される。回転軸110の貫通部には、例えば、磁性流体シール111が設けられ、回転軸110を気密にシールしつつ回転可能に支持している。蓋部109の周辺部とマニホールド103の下端部との間には、例えば、Oリングよりなるシール部材112が介設されている。これにより処理室101内のシール性が保持されている。回転軸110は、例えば、ボートエレベータ等の昇降機構(図示せず)に支持されたアーム113の先端に取り付けられている。これにより、ウエハボート105および蓋部109等は、一体的に昇降されて処理室101内に対して挿脱される。
【0062】
成膜装置100は、処理室101内に、処理に使用するガスを供給する処理ガス供給機構114を有している。
【0063】
処理ガス供給機構114は、アミノシラン系ガス供給源117、アミノ基を含まないシラン系ガス供給源118、及びエッチングガス供給源119を含んでいる。
【0064】
不活性ガス供給機構115は、不活性ガス供給源120を含んでいる。不活性ガスは、パージガス等に利用される。不活性ガスの一例は窒素(N)ガスである。
【0065】
アミノシラン系ガス供給源117は、流量制御器121a及び開閉弁122aを介して、分散ノズル123aに接続されている。分散ノズル123aは石英管よりなり、マニホールド103の側壁を内側へ貫通して上方向へ屈曲されて垂直に延びる。分散ノズル123aの垂直部分には、複数のガス吐出孔124が所定の間隔を隔てて形成されている。アミノシラン系ガスは、各ガス吐出孔124から水平方向に処理室101内に向けて略均一に吐出される。
【0066】
アミノ基を含まないシラン系ガス供給源118は、流量制御器121b及び開閉弁122bを介して、分散ノズル123bに接続されている。分散ノズル123bもまた、石英管よりなり、マニホールド103の側壁を内側へ貫通して上方向へ屈曲されて垂直に延びる。分散ノズル123bの垂直部分には、分散ノズル123aと同様に、複数のガス吐出孔124が所定の間隔を隔てて形成されている。アミノ基を含まないシラン系ガスは、各ガス吐出孔124から水平方向に処理室101内に向けて略均一に吐出される。
【0067】
第1の実施形態を実施する場合には、アミノ基を含まないシラン系ガス供給源118には、例えば、モノシランガス供給源のみを持たせれば良い。また、第2の実施形態を実施する場合には、アミノ基を含まないシラン系ガス供給源118には、例えば、モノシランガス供給源とジシランガス供給源とを持たせれば良い。
【0068】
エッチングガス供給源119は、アモルファスシリコン膜を薄膜化するためのエッチングガスを供給する。エッチングガスの一例としては、第1、第2実施形態において説明したように、Clガスである。エッチングガスの他例としては、Fガス、ClFガスを挙げることができる。エッチングガス供給源119は、流量制御器121c及び開閉弁122cを介して、分散ノズル123cに接続されている。分散ノズル123cは、分散ノズル123a、123bと同様のものであり、マニホールド103の側壁を内側へ貫通して上方向へ屈曲されて垂直に延びる石英管よりなる。また、図示はされないが、分散ノズル123cの垂直部分には、分散ノズル123a、123bと同様に、複数のガス吐出孔124が所定の間隔を隔てて形成されている。これにより、エッチングガスは、分散ノズル123cの、図11では図示されない各ガス吐出孔124から水平方向に処理室101内に向けて略均一に吐出される。
【0069】
不活性ガス供給源120は、流量制御器121d及び開閉弁122dを介して、マニホールドの側壁を内側に貫通するガス導入ポート128に接続されている。
【0070】
処理室101内の、分散ノズル123a〜123cと反対側の部分には、処理室101内を排気するための排気口129が設けられている。排気口129は処理室101の側壁を上下方向へ削りとることによって細長く形成されている。処理室101の排気口129に対応する部分には、排気口129を覆うように断面がコの字状に成形された排気口カバー部材130が溶接により取り付けられている。排気口カバー部材130は、処理室101の側壁に沿って上方に延びており、処理室101の上方にガス出口131を規定している。ガス出口131には、真空ポンプ等を含む排気機構132が接続される。排気機構132は、処理室101内を排気することで処理に使用した処理ガスの排気、及び処理室101内の圧力を処理に応じた処理圧力とする。
【0071】
処理室101の外周には筒体状の加熱装置133が設けられている。加熱装置133は、処理室101内に供給されたガスを活性化するとともに、処理室101内に収容された被処理体、例えば、半導体基板、本例ではシリコン基板1を加熱する。
【0072】
成膜装置100及びエッチング装置200の各部の制御は、例えばマイクロプロセッサ(コンピュータ)からなるコントローラ150により行われる。コントローラ150には、オペレータが成膜装置100を管理するためにコマンドの入力操作等を行うキーボードや、成膜装置100の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等からなるユーザーインターフェース151が接続されている。
【0073】
コントローラ150には記憶部152が接続されている。記憶部152は、成膜装置100で実行される各種処理をコントローラ150の制御にて実現するための制御プログラムや、処理条件に応じて成膜装置100の各構成部に処理を実行させるためのプログラムすなわちレシピが格納される。レシピは、例えば、記憶部152の中の記憶媒体に記憶される。記憶媒体は、ハードディスクや半導体メモリであってもよいし、CD-ROM、DVD、フラッシュメモリ等の可搬性のものであってもよい。また、他の装置から、例えば専用回線を介してレシピを適宜伝送させるようにしてもよい。レシピは、必要に応じて、ユーザーインターフェース151からの指示等にて記憶部152から読み出され、読み出されたレシピに従った処理をコントローラ150が実行することで、成膜装置100は、コントローラ150の制御のもと、所望の処理が実施される。
【0074】
本例では、コントローラ150の制御のもと、上記第1の実施形態に係る成膜方法のステップ1、ステップ2、及びステップ3、又は上記第2の実施形態に係る成膜方法のステップ1、ステップ4、ステップ2、ステップ3に従った処理を成膜装置100に順次実施させる。
【0075】
上記第1、第2実施形態に係る成膜方法は、図11に示すような成膜装置100を用いることで実施することができる。
【0076】
なお、図11に示す成膜装置100による利点は、アモルファスシリコン膜4の形成と、アモルファスシリコン膜4を形成した後のClエッチングとを、同一の処理室101(炉)内で連続して行うことができる、ということにある。
【0077】
例えば、アモルファスシリコン膜4を形成した後、基板1を、一旦、処理室101の外にとり出してしまうと、アモルファスシリコン膜4の表面にシリコン酸化膜(自然酸化膜)が形成されてしまう。Clガスはシリコン酸化膜をエッチングすることはできない。エッチングすることができたとしても、それはシリコン酸化膜(自然酸化膜)のピンホールを通してのエッチングとなるため、アモルファスシリコン膜4を均一にエッチングすることはできない。
【0078】
この点、図11に示す成膜装置100によれば、基板1を処理室101の外にとり出すことなく、アモルファスシリコン膜4に対し、Clガスによるドライエッチングを連続して行うことができるので、シリコン酸化膜(自然酸化膜)の影響を受けることなく、アモルファスシリコン膜4を均一にエッチングすることができる。
【0079】
さらに、図11に示す成膜装置100によれば、シード層3の形成とアモルファスシリコン膜4の形成とを行うので、表面ラフネスの精度も高く、均質なアモルファスシリコン膜4を得ることができる。しかも、この均質なアモルファスシリコン膜4に対してインサイチュでClガスエッチングを連続して行うことができるので、更なる薄膜化が達成されたアモルファスシリコン膜4を得ることができる。
【0080】
以上、この発明をいくつかの実施形態に従って説明したが、この発明は、上記いくつかの実施形態に限定されることは無く、種々変形可能である。
【0081】
例えば、上記一実施形態においては、処理条件を具体的に例示したが、処理条件は、上記具体的な例示に限られるものではない。
【0082】
この発明による利点であるアモルファスシリコン膜の表面ラフネスの改善は、アミノシラン系ガスを用いて下地2の表面をプリフローし、下地2の表面にシード層3を形成した後、アミノ基を含まないシラン系ガスをシード層3上に供給して熱分解させることで、アモルファスシリコン膜4を形成する、という構成を具備することで得られるものである。
【0083】
したがって、処理条件は、上記一実施形態に記載した具体的な例示に限られるものではなく、シリコン基板1の大きさ、処理室の容積変化等に応じて、上記利点を損なわない範囲で変更できることはもちろんである。
【0084】
なお、アミノシラン系ガスとしては1価のアミノシラン系ガス、例えば、DIPAS(ジイソプロピルアミノシラン)が良い。
さらに、アミノシランは分解させないで、例えば、下地2上に、吸着させるようにすることが良い。例えば、DIPASは450℃以上で熱分解する。アミノシランが熱分解されると、成膜される膜中に炭素(C)、窒素(N)などの不純物が巻き込まれてしまうことがある。アミノシランは分解させずに、例えば、下地2上に吸着させるようにすることで、成膜される膜中に不純物が巻き込まれてしまう事情を抑制できる、という利点を得ることができる。
【0085】
また、上記一実施形態においては、アミノ基を含まないシラン系ガスとして、
Si2m+2(ただし、mは3以上の自然数)の式で表されるシリコンの水素化物、及びSi2n(ただし、nは3以上の自然数)の式で表されるシリコンの水素化物の、いわゆる高次シランを例示した。
【0086】
高次シランとしては、例えば、Si2m+2(ただし、mは3以上の自然数)の式で表されるシリコンの水素化物が、
トリシラン(Si
テトラシラン(Si10
ペンタシラン(Si12
ヘキサシラン(Si14
ヘプタシラン(Si16
の少なくとも一つから選ばれることが良い。
【0087】
また、例えば、Si2n(ただし、nは3以上の自然数)の式で表されるシリコンの水素化物が、
シクロトリシラン(Si
シクロテトラシラン(Si
シクロペンタシラン(Si10
シクロヘキサシラン(Si12
シクロヘプタシラン(Si14
の少なくとも一つから選ばれることが良い。
【0088】
さらに、アミノシラン系ガスとアミノ基を含まないシラン系ガス(シリコンソース)との組み合わせを考慮した場合には、アミノシラン系ガスが熱分解する温度の近辺で熱分解しやすいモノシラン(SiH)、ジシラン(Si)が良い。
その他、この発明はその要旨を逸脱しない範囲で様々に変形することができる。
【符号の説明】
【0089】
1…シリコン基板、2…下地、3…シード層、4…アモルファスシリコン膜。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下地上にアモルファスシリコン膜を含む膜を成膜する成膜方法であって、
(1) 前記下地を加熱し、前記加熱した下地にアミノシラン系ガスを供給し、前記下地表面にシード層を形成する工程と、
(2) 前記下地を加熱し、前記加熱した下地表面のシード層にアミノ基を含まないシラン系ガスを供給し、前記シード層上にアモルファスシリコン膜を、層成長する厚さに形成する工程と、
(3) 前記層成長する厚さに形成された前記アモルファスシリコン膜をエッチングし、該アモルファスシリコン膜の膜厚を減ずる工程と
を備えることを特徴とするアモルファスシリコン膜の成膜方法。
【請求項2】
前記(1)工程と前記(2)工程との間に、
(4) 前記シード層が形成された半導体基板を加熱し、前記シード層の表面に前記(2)工程で用いられたシラン系ガスよりも高次のシラン系ガスを供給する工程
を、さらに備えることを特徴とする請求項1に記載のアモルファスシリコン膜の成膜方法。
【請求項3】
前記エッチングは、等方性エッチングであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のアモルファスシリコン膜の成膜方法。
【請求項4】
前記等方性エッチングは、ドライエッチングであることを特徴とする請求項3に記載のアモルファスシリコン膜の成膜方法。
【請求項5】
前記ドライエッチングのエッチャントは、少なくともClガス、Fガス、ClFガスの1つを含むことを特徴とする請求項4に記載のアモルファスシリコン膜の成膜方法。
【請求項6】
前記(2)工程と前記(3)工程とが、同一の処理室内で連続して行われることを特徴とする請求項1から請求項5いずれか一項に記載のアモルファスシリコン膜の成膜方法。
【請求項7】
前記アミノシラン系ガスが、
BAS(ブチルアミノシラン)
BTBAS(ビスターシャリブチルアミノシラン)
DMAS(ジメチルアミノシラン)
BDMAS(ビスジメチルアミノシラン)
TDMAS(トリジメチルアミノシラン)
DEAS(ジエチルアミノシラン)
BDEAS(ビスジエチルアミノシラン)
DPAS(ジプロピルアミノシラン)、及び
DIPAS(ジイソプロピルアミノシラン)
の少なくとも一つを含むガスから選ばれ、
前記アミノ基を含まないシラン系ガスが、
SiH
Si
Si2m+2(ただし、mは3以上の自然数)の式で表されるシリコンの水素化物、及び
Si2n(ただし、nは3以上の自然数)の式で表されるシリコンの水素化物
の少なくとも一つを含むガスから選ばれることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のアモルファスシリコン膜の成膜方法。
【請求項8】
前記Si2m+2(ただし、mは3以上の自然数)の式で表されるシリコンの水素化物が、
トリシラン(Si
テトラシラン(Si10
ペンタシラン(Si12
ヘキサシラン(Si14
ヘプタシラン(Si16
の少なくとも一つから選ばれ、
前記Si2n(ただし、nは3以上の自然数)の式で表されるシリコンの水素化物が、
シクロトリシラン(Si
シクロテトラシラン(Si
シクロペンタシラン(Si10
シクロヘキサシラン(Si12
シクロヘプタシラン(Si14
の少なくともいずれか一つから選ばれることを特徴とする請求項7に記載のアモルファスシリコン膜の成膜方法。
【請求項9】
前記アモルファスシリコン膜の成膜方法が、半導体装置の製造プロセスに用いられることを特徴とする請求項1から請求項8いずれか一項に記載のアモルファスシリコン膜の成膜方法。
【請求項10】
下地上にアモルファスシリコン膜を成膜する成膜装置であって、
前記アモルファスシリコン膜が形成される下地を有した被処理体を収容する処理室と、前記処理室内に、処理に使用するガスを供給する処理ガス供給機構と、前記処理室内に収容された前記被処理体を加熱する加熱装置と、前記処理室内を排気する排気機構と、前記処理ガス供給機構、前記加熱装置、及び前記排気機構を制御するコントローラとを備え、
前記コントローラが、請求項1に記載された(1)工程、(2)工程、及び(3)工程が順次実施されるように前記成膜装置を制御することを特徴とする成膜装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図11】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2013−26513(P2013−26513A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−161196(P2011−161196)
【出願日】平成23年7月22日(2011.7.22)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】