説明

インサート成形金型およびインサート成形装置並びにインサート成形方法

【課題】インサート成形金型およびインサート成形装置並びにインサート成形方法を提供する。
【解決手段】軸線Xに沿って配置されるインサート成形すべきインサート部品2に対し、軸線X側方から、型締め可能に配置される一対の型10a、10bを有する。
これら型10a、10bは、それぞれ、独立的に型締め動作可能に分割した、第1の分割型10a1、10b1と、第2の分割型10a2、10b2と、第3の分割型10a3、10b3とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インサート成形金型およびインサート成形装置並びにインサート成形方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ICや電気コイル等、防水性を必要とする機能部品を射出成形によって樹脂製ハウジングにて覆い、更に溶着技術等を適用して樹脂製ハウジングに防水性を付与する工法にてセンサやバルブ部品を製造していた。
これに対して、例えば押出し成形によるパイプ成形過程にてICや電気コイルを挿入してパイプで覆い、冷却前に内部エアを吸引して型締めし、パイプ開放部を溶着によりシールすることで、大幅なコストダウンが得られると共に、例えば通常のインサート成形ではインサートが困難な壊れやすい部品(ガラスパイプ、ベアチップ等)を成形により封止することが可能となる。
【0003】
機能部品(センサやバルブ部品)の製造には生産性に優れた射出成形の一工法であるインサート成形がごく一般的に用いられてきた。電気コイルやICをインサートする場合、部品筐体を形成する成形品には何らかの防水構造が必要となり、例えば特許文献1のように示された加熱ピン抜き成形工法や、特許文献2に示された成形溶着工法を適用し、内部インサート品に防水性を付与してきた。
【0004】
【特許文献1】特開平9−38982号公報
【特許文献2】特開平14−200643号公報
【0005】
ところで、射出成形においては、溶融した樹脂を金型内に射出工程にて射出し、樹脂の固化工程の相変化に伴う体積収縮を補って形状精度を保持するために、保圧工程にて高い圧力を金型内の樹脂にかけるという工程がなされている。このため、高強度の金型が必要となり、また、壊れやすい部品はインサートできないという問題が生じる。
【0006】
この問題に対して、特許文献3に示されたインサート成形方法では、押出したパイプ内部にインサート品を保持し、エア吸引や型締めによって賦形することで、従来の射出成形に必要とされる高圧が不要となり、これによって、壊れやすいインサート品の賦形や、金型の低剛性化によるコストダウンが可能であるとしている。
【0007】
そこでこのインサート成形方法について説明する。このインサート成形方法を実行するための工程は、(a)位置決め工程、(b)配置工程、(c)賦形工程からなる。
先ず、図18に示されるように、型1を準備し、型1を型開きした状態で、型1間の所定の位置にインサート部品2を位置決め配置する位置決め工程が実施される(図19参照)。
この場合、型1は1対からなり、夫々がインサート部品2の外形形状に対応した形成面1aを有する。型1には、ダイ3が付設されている。ダイ3は、型1間に樹脂材料としてパイプ状断面を有する溶融樹脂材mを押し出すために、溶融樹脂材mの搬送路である所定形状の賦形部4を有している。
さらに、型1の所定の位置には溶着手段としてのヒータ5が配設されている。
【0008】
インサート成形品2は、溶融樹脂材mにより被覆・賦形されない所定の部位を支持部6により支持され、当該支持部6を有するロボット等により、型1間の所定の位置に位置決め配置される(図19参照)。
次いで、インサート部品2の位置決め後、図20に示されるように、型1を型開きした状態のまま、ダイ3から型1間に溶融樹脂材mが押し出しされるとともに、溶融樹脂材mの内部空間にインサート部品2が配置される配置工程が行われる。
【0009】
ダイ3から押し出された溶融樹脂材mは、上述したダイ3の形状によりパイプ状断面を有しており、ダイ3から押し出された先端側は開口している。このとき、インサート部品2は、パイプ状断面を有する溶融樹脂材mの内部空間に配置される位置に、予め位置決め固定されているので、溶融樹脂材mの押し出しにより、溶融樹脂材mの開口側から内部空間にインサート部品2が挿入されることとなる。
【0010】
そして、インサート部品2を内部空間に配置する溶融樹脂材mに対して型1を型締めすることにより、図21に示される樹脂材料である溶融樹脂材mをインサート部品2に被覆・賦形させる賦形工程が行われる。
【0011】
このとき型1は、溶融樹脂材mとの当接面にインサート部品2の外形形状に対応した形成面1aを有しているので、型締めにより溶融樹脂材mは内部空間のエアが開口側から排出されつつ型1の形成面1aに対応した形状に変形することとなる(図22参照)。
以上のようなインサート成形工法によれば、インサート部品2の外形形状に対応した形成面1aを有する型1にて溶融樹脂材mが賦形されるので、形成されるインサート成形品7の外形形状の寸法精度を向上できるとしている(図23参照)。
【0012】
【特許文献3】特許第3979301号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上記に示された方法では、図24に示したように、パイプ状に押出された溶融樹脂材mとインサート保持金型1間の隙間を0とすることは困難であり、該ギャップG(図25参照)においてエア吸引時にエア洩れが発生し(図26参照)、賦形効率が低下したり、エア吸引効率が低下することで、生産性が低下したりする問題がある。また、エア洩れによって、パイプ温度が低下することから、型締め時の熱プレスによる溶着効率が低下する問題も発生する。更に、押出し成形は一般的に連続的に押出しを実施することがパイプ形状の賦形安定性が高く、従来型構造では間欠押出しが必要となることから、賦形安定性や生産性が低くなるという問題がある。
本発明は、上述の如き課題を克服するために提案されたものであって、安価に製造が可能な低強度の金型を用い、且つ壊れやすい内蔵物でも成形できるインサート成形工法において、賦形時のエア吸引効率の向上、溶着効率の向上、及びパイプ賦形安定性と高い生産性を実現できる、インサート成形金型およびインサート成形装置並びにインサート成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明では、インサート成形すべき成形品(11)を型締め可能に配置する第1、第2の型(10a、10b)を有し、これら第1、第2型(10a、10b)は、それぞれ、独立的に型締め動作可能に分割して構成したことを特徴とする。
【0015】
これにより、押出し直後のパイプ状の溶融樹脂材(m)を、温度低下前にインサート成形品(2)に押し付けることが可能となり、溶着効率が向上する。また、前記型締めによって、パイプ開放口が確実に封鎖され、エア漏れを防止し、エア吸引効率が向上する。
【0016】
請求項2に記載の発明では、成形金型(10)と、この成形金型(10)の、型締め面に向けて、溶融樹脂材(m)を送り込む押出しダイ(12)と、この押出しダイ(12)による溶融樹脂材(m)の押出し位置に、インサート成形すべき成形品(11)におけるインサート部品(2)を位置決め支持する支持部(20)とを具備するインサート成形装置(S)において、成形金型(10)は、成形品(11)を型締め可能に配置する第1、第2の型(10a、10b)を有し、これら第1、第2型(10a、10b)は、それぞれ、独立的に型締め動作可能に分割して構成したことを特徴とする。
【0017】
これにより、一部の分割型により、型締めを行うことで、押出し直後の高温のパイプ状の溶融樹脂材(m)を、温度低下前にインサート部品(2)に押し付けることが可能となり、溶着効率が向上する。また、前記型締めによって、パイプ開放口が確実に封鎖され、エア漏れを防止し、エア吸引効率が向上する。
【0018】
請求項3に記載の発明では、押出しダイ(12)に対し、溶融樹脂材(m)を送り込む押出し機(21)と、型締め後の成形品(11)を取出すための取出し機(22)を備え、成形金型(10)における第1、第2型(10a、10b)は、一部の分割型の型締め面に、押出し機(21)から押出しダイ(12)を通じて押出された溶融樹脂材(m)を充填してバッファ部(b)とするキャビティ(C)を設けたことを特徴とする。
【0019】
これにより、溶融樹脂材(m)をキャビティ(C)に充填することでバッファ部(b)としたので、溶融樹脂材(m)を連続的に押出しすることが可能となる。また、かかるバッファ部(b)は成形品取り出し時の保持部としても機能する。
【0020】
請求項4に記載の発明は、成形金型(10)と支持部(20)とは、押出しダイ(12)によるインサート部品(2)に対する溶融樹脂材(m)の押出し位置と、成形金型(10)による型締め後の成形品(11)の冷却、取出し位置との間で、相対的に移動可能に構成したことを特徴とする。
【0021】
これにより、インサート部品(2)に対する溶融樹脂材(m)の押出しと共に、型締め後の成形品(11)の冷却、取出しがなされ、次のインサート成形を連続的に実行することができる。
【0022】
請求項5に記載の発明は、成形金型(10)は、成形金型(10)による型締め後の成形品(11)の冷却、取出し位置と、押出しダイ(12)によるインサート部品(2)に対する溶融樹脂材(m)の押出し位置との間で往復動可能に構成したことを特徴とする。
【0023】
これにより、成形金型(10)による型締め後の成形品(11)の冷却、取出しを行う間に、押出しダイ(12)によるインサート部品(2)に対する溶融樹脂材(m)の押出し位置において、次のインサート部品(2)に対し、溶融樹脂材(m)の押出しを行うことができ、連続的な成形加工が可能である。
【0024】
請求項6に記載の発明は、パイプ状に押出した溶融樹脂材(m)内にインサート部品(2)を支持し、エア吸引を行うと共に、それぞれ、独立的に型締め動作可能に分割して構成した第1、第2の型(10a、10b)により賦形するインサート成形方法において、
前記パイプ状に押出した溶融樹脂材(m)に対し、前記第1、第2の型(10a、10b)のうちの一部の分割型により型締めを行い、前記インサート部品(2)の支持側近傍に前記溶融樹脂材(m)を押し付けて溶融樹脂材(m)の開口先端を封止し、
次いで、エア吸引と共に、前記第1、第2の型(10a、10b)のうちの別の分割型により型締めを行って、前記インサート部品(2)の周囲を前記溶融樹脂材(m)で包皮するように賦形し、
さらに、前記第1、第2の型(10a、10b)のうちの待機状態の分割型により型締めを行って、パイプ状に押出された溶融樹脂材mを切断して、前記溶融樹脂材(m)により包皮した成形品(11)を取出すことを特徴とする。
【0025】
これにより、押出しダイ(12)から押出されたパイプ状の溶融樹脂材(m)と、成形金型間の隙間をなくして、エア吸引時のエア洩れをなくすことができる。
また、エア漏れによる、パイプ状の溶融樹脂材(m)の温度低下を防止することができるから、型締め時の熱プレスによる溶着効率の低下も阻止することができる。
【0026】
さらに請求項7に記載の発明では、成形金型(10)を、成形金型(10)による型締め後の成形品(11)の冷却、取出し位置と、押出しダイ(12)によるインサート部品(2)に対する溶融樹脂材(m)の押出し位置との間で往復動可能に構成したインサート成形装置(S)を用いて押出し成形を行うに当たり、インサート部品(2)に対する溶融樹脂材(m)の押出し位置において、インサート部品(2)に対し、溶融樹脂材(m)をパイプ状に押出ししている間に、成形金型(10)の成形金型(10)による型締め後の成形品(11)の冷却、取出し位置において、成形金型(10)による型締め後の成形品(11)の冷却、取出しを行い、次いで、成形金型(10)を、インサート部品(2)に対する溶融樹脂材(m)の押出し位置にもたらして、押出し位置において、押出された溶融樹脂材(m)を介し、型締めを行い、成形金型(10)を型締めの状態で、型締め後の成形品(11)の冷却、取出し位置にもたらす一方、インサート部品(2)に対する溶融樹脂材(m)の押出し位置に、次のインサート成形にかかるインサート部品(2)を、位置決め支持して、インサート部品(2)に対し、溶融樹脂材(m)をパイプ状に押出しする工程を繰り返すことを特徴とする。
【0027】
これにより、一方で押出し成形前のインサート部品(2)に対し、溶融樹脂材(m)をパイプ状に押出ししている間に、他方で、成形金型(10)による型締め後の成形品(11)の冷却、取出しを行うことができる。
次いで、成形金型(10)を、溶融樹脂材(m)の押出し位置にもたらして、押出し位置において、押出された溶融樹脂材(m)を介し、型締めを行い、成形金型(10)を型締めの状態で、型締め後の成形品(11)の冷却、取出し位置にもたらす。
この際、溶融樹脂材(m)の押出し位置には、次のインサート成形にかかるインサート部品(2)を、位置決め支持して、インサート部品(2)に対し、溶融樹脂材(m)をパイプ状に押出しするというように、以上のような工程を繰り返すことで、押出し成形を連続的に実行することができる。
【0028】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
図1にインサート成形金型10を示す。
このインサート成形金型10は、軸線Xに沿って配置されるインサート成形すべきインサート部品2に対し、軸線X側方から、型締め可能に配置される一対の型10a、10bを有する。これら型10a、10bの内側、型締め面には、インサート成形品11の外形形状に対応した形成面11aを有する。
また、これら型10a、10bは、それぞれ、独立的に型締め動作可能に分割した、第1の分割型10a1、10b1と、第2の分割型10a2、10b2と、第3の分割型10a3、10b3とを備える。
【0030】
かかる成形金型10には、図2中、成形金型10の上部軸線Xに沿って位置決めして溶融樹脂材mを、型締め面に押出しする、押出しダイ12が設けられている。押出しダイ12には、インサート成形装置における押出し機(後述)から、溶融樹脂材mが送り込まれるようになっている。
押出しダイ12には、成形金型10の型締め面にパイプ状に溶融樹脂材mを押し出すための通路である賦形部13を形成している。さらに、押出しダイ12には、軸線Xに沿って、成形金型10の型締め面に向けて、吸引通路14を設けている。
なお、溶融樹脂材mの材料としては、押し出し成形に適合する周知の熱可塑性樹脂を用いることができる。
【0031】
またインサート成形すべきインサート部品2としては、ここでは、ICチップ15が搭載されたリード16と、接続部17において、リード16と溶着或いは熱かしめ等により電気的に接続されたケーブル18とにより構成される部品を挙げることができる。
このとき、ケーブル18はリード16との接続部17以外の部分が例えばサーモプラスチックエラストマー(TPEE)等の樹脂材料からなる被覆部材19により被覆されている。
以上のようなインサート部品2は、溶融樹脂材mにより被覆・賦形されない部位をロボット等(図示省略)の支持部20により支持され、ロボット等により、成形金型10の軸線Xの位置に位置決めするようにしている。
【0032】
次に、以上のような構成のインサート成形金型10により、インサート成形装置を用いたインサート成形工程について、説明する。
先ず、成形金型10における一対の型10a、10bを、全体として軸線Xを中心に互いに離隔させる型開きをすると共に、インサート部品2を支持部20を介してロボット等に把持して、ロボット等を動かし、成形金型10の軸線Xの位置に位置決めする(図1参照)。
【0033】
次に、インサート成形装置における押出し機から、成形金型10上部の押出しダイ12の賦形部13を通じて、パイプ状に、溶融樹脂材mを押出す。これにより、溶融樹脂材mは、インサート部品2周囲に、支持部20の近傍まで、等径のパイプ状に延出する。
【0034】
溶融樹脂材mがパイプ状に押出されると、成形金型10のうち、第3分割型10a3、10b3により型締めを行う(図3参照)。第3分割型10a3、10b3は、成形金型10の軸線Xの位置に位置決めされたインサート部品2のうち、支持部20近傍のケーブル18の側方に位置するため、押出し直後の高温状態にある、パイプ状の溶融樹脂材mを、ケーブル18に押し付けることが可能となり、溶着効率がよい。また、この型締めによって、パイプ状の溶融樹脂材mの開口先端が確実に封鎖されるので、エア漏れはなく、エア吸引効率が高められる。
【0035】
次いで、図4に示すように、押出しダイ12における吸引通路14を介してエア吸引と同時か、または、エア吸引終了後に、成形金型10のうちの第2分割型10a2、10b2により型締めを行う(図5参照)。これによって、溶融樹脂材mは、インサート部品2のケーブル18より上部に位置する接続部17、リード16、そしてICチップ15の周囲を包皮するように賦形する。この際、パイプ状の溶融樹脂材mの、インサート部品2のICチップ15に対応する側の開口端が型締めによって封止されると共に溶着される。
【0036】
そして、図6に示すように、成形金型10のうちの第1分割型10a1、10b1により、型締めを行うことによって、押出しダイ12からパイプ状の溶融樹脂材mが切断され、成形金型10の型開き、ロボットを駆動して、支持部20を成形金型10の軸線Xから移動して、インサート成形品11を取出して(図7参照)、次のインサート成形すべきインサート部品2の成形工程の待機状態とすることができる。
【0037】
このように、上述のインサート成形金型10を用いてインサート成形を実行することにより、押出しダイ12から押出されたパイプ状の溶融樹脂材mと、成形金型10間の隙間をなくして、エア吸引時のエア洩れをなくすことができる。従って、賦形効率の低下がなく、且つ、吸引効率の低下による、生産性の低下をなくすことができる。
また、エア漏れによる、パイプ状の溶融樹脂材mの温度低下を防止することができるから、型締め時の熱プレスによる溶着効率の低下も阻止することができる。
【0038】
さらに、以上のようなインサート成形金型10を搭載した、図8に示すインサート成形装置Sを用いれば、連続的に押出し成形を行うことができる。
そこで、ここで、用いられるインサート成形装置Sについて説明する。
インサート成形装置Sでは、成形金型10を、図示しない機構により、ステーションA、ステーションB間で、軸線Xと直交する方向に往復動可能に構成している。
また、インサート成形装置Sは、押出しダイ12に対し、溶融樹脂材mを送り込む押出し機21や、型締め後のインサート成形品11を取出すための取出し機22が設けられている。
さらに成形金型10のうちの第1分割型10a1、10b1には、型締め面に、押出し機21から押出しダイ12を通じて押出された溶融樹脂材mを充填してバッファ部bとするキャビティCが設けられている。
【0039】
次に、以上のインサート成形装置Sによる、連続成形工程について説明する。
上述のインサート成形装置Sにおいて、図8に示すように、ステーションBにおいて、直前に行われたインサート成形品11に対する仕上げ段階における型締め状態においてなされるインサート成形品11の冷却工程と共に、ステーションAにおいて、次にインサート成形を行うべきインサート部品2を、軸線Xに沿って、ロボット等の支持部20により支持させる。
【0040】
次に、図9において、ステーションBに位置する成形金型10の型開きと共に、賦形終了後のインサート成形品11を、取出し機22により取出すことができる(図10参照)。インサート成形品11は、押出し機21から押出しダイ12を通じて、第1分割型10a1、10b1のキャビティCに充填することによって形成されたバッファ部bを支えとして容易に取出すことができる。
一方、ステーションAでは、押出し機21から、押出しダイ12の賦形部13を通じて、ロボット等の支持部20により軸線Xに沿って支持したインサート部品2に対し、パイプ状に、溶融樹脂材mを押出していく。これにより、溶融樹脂材mは、インサート部品2周囲に、支持部20の近傍まで、等径のパイプ状に押出しすることができる。
【0041】
ステーションBにおいて、型開きした成形金型10から、工程終了後のインサート成形品11が取出されると共に、成形金型10を、軸線Xに直交する方向に、すなわちステーションA側に移動させる。その間、ステーションA側では、溶融樹脂材mを、インサート部品2周囲に、支持部20の近傍まで押出しする工程が引き続き実行され、やがて押出し工程が終了する(図11参照)。
【0042】
押出し工程により、溶融樹脂材mは、支持部20の近傍のケーブル18に至ると、成形金型10のうち、第3分割型10a3、10b3により型締めを行う(図12参照)。この型締めによって、押出し直後の高温の溶融樹脂材mが、温度低下前にケーブル18に押し付けられるため、パイプ状の溶融樹脂材mの開口先端が確実に封鎖されるので、エア漏れが生じることはなく、エア吸引効率が高められる。そのため、確実なエア吸引を行うことができる(図13、図14参照)。
【0043】
ステーションA側でエア吸引がなされていると同時に、ステーションB側では、取出し機22が取出し位置に復帰し、待機状態となり、次いで、成形金型10のうち、第2分割型10a2、10b2により型締めを行う(図15参照)。
引き続き、成形金型10のうちの第1分割型10a1、10b1により、型締めを行うことによって、押出しダイ12からのパイプ状の溶融樹脂材mが切断され(図16参照)、成形金型10を、インサート成形品11を挟んだ状態でステーションB側へ移動させる。
ステーションBへ成形金型10を移動させることで、取出し機22を成形金型10間のインサート成形品11に挿入することができる。一方、ステーションA側では、次の成形工程にかかるインサート部品2の受け入れ可能な状態となる。
【0044】
以上のように、インサート成形装置Sでは、ステーションAとステーションB間で成形金型10を往復動可能に構成し、一方で押出し成形前のインサート部品2に対し、溶融樹脂材mをパイプ状に押出ししている間に、他方で、成形金型10において冷却、取出しを行い、成形金型10を溶融樹脂材mの押出し位置に戻して、型締め、エア吸引、型締めを行うことができ、押出し成形を連続的に実行することができる。
このようにして、インサート部品2の連続押出し成形が可能となり、賦形安定性を損なうことなく、高い生産性を実現することができる。
【0045】
以上、インサート成形金型10を用いた成形工程の一例を示し、説明したが、成形金型10の構成は、第1〜第3分割型10a1、10b1、10a2、10b2、10a3、10b3に限られない。すなわち、金型の構成として、賦形対象物の形状によっては2分割、若しくは4分割以上であってもよい。
【0046】
また、成形金型10は、ステーションAからステーションBを往復移動可能な構成の他にも、押出し速度に同期して押出し方向(軸線X方向)に移動させる構成も考えられる。この場合は、第1分割型10a1、10b1の上流側に更に金型を設け、押出しされたパイプ状溶融樹脂材mを切断する構造とし、切断後に、金型を反押出し方向に移動させる構成とすることが考えられる。
【0047】
さらには、インサート成形装置Sでは、成形金型10と押出しダイ12側が相対的に移動して成形工程を行う機能を有するものであるので、逆に成形金型10ではなく、押出しダイ12を移動させる構成も考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明にかかるインサート成形金型の一例において、型開き、およびインサート部品を配置したところを示す、模式的な断面説明図である。
【図2】図1に示すインサート成形金型において、溶融樹脂材をパイプ状に押出しした状態を示す、模式的な断面説明図である。
【図3】図2に示す状態から、第1の分割型を移動させて型締めを行い、パイプ状の溶融樹脂材の一開口端側を熱溶着したところを示す、模式的な断面説明図である。
【図4】図3に示す状態から、エア吸引を行ったところを示す、模式的な断面説明図である。
【図5】第2の分割型を移動させて、型締めを行うところを示す、模式的な断面説明図である。
【図6】第1の分割型を移動させて、型締めを行うところを示す、模式的な断面説明図である。
【図7】図6に示す状態から、型開きを行い、取出されたインサート成形品の断面説明図である。
【図8】インサート成形を連続的に行う際の、インサート成形装置において、インサート部品の位置決め配置と、冷却工程を行う際の、要部斜視説明図である。
【図9】連続的にインサート成形を行う際のインサート成形装置において、溶融樹脂材の要部斜視説明図である。型開き工程を示した、要部斜視説明図である。
【図10】溶融樹脂材をパイプ状に押出しする工程と、インサート成形品を取出したところを示した、要部斜視説明図である。
【図11】パイプ状に押出しする工程と共に、成形金型を移動したところを示す、要部斜視説明図である。
【図12】成形金型において、第3分割型による型締めを行ったところを示す、要部斜視説明図である。
【図13】図12に示す状態において、吸引工程を行ったところを示す、要部斜視説明図である。
【図14】図13に示す状態において、取出し機を復帰させたところを示す、要部斜視説明図である。
【図15】図14に示す状態において、第2分割型による型締めを行ったところを示す、要部斜視説明図である。
【図16】図15に示す状態において、第1分割型による型締めを行ったところを示す、要部斜視説明図である。
【図17】図16に示す状態から、成形金型を移動したところを示す、要部斜視説明図である。
【図18】従来の金型の一例の構成と共に、型開き状態を示した、模式的な断面説明図である。
【図19】図18に示す状態において、インサート成形すべきインサート部品を配置したところを示す、模式的な断面説明図である。
【図20】インサート部品に対し、溶融樹脂材をパイプ状に押出しした状態を示す、模式的な断面説明図である。
【図21】図20に示す状態において、エア吸引を行ったところを示す、模式的な断面説明図である。
【図22】型締めによってケーブル溶着を行ったところを示す、模式的な断面説明図である。
【図23】図22に示す状態から、型開き後に、取出されたインサート成形品の断面説明図である。
【図24】従来の成形金型による、インサート成形の不都合を示した、模式的な断面説明図である。
【図25】従来の成形金型による、インサート成形の不都合を示した、模式的な断面説明図である。
【図26】従来の成形金型による、インサート成形の不都合を示した、模式的な断面説明図である。
【符号の説明】
【0049】
10 インサート成形金型
10a、10b 型
10a1、10b1 第1分割型
10a2、10b2 第2分割型
10a3、10b3 第3分割型
11 インサート成形品
11a 形成面
12 押出しダイ
13 賦形部
14 吸引通路
15 ICチップ
16 リード
17 接続部
18 ケーブル
19 被覆部材
20 支持部
21 押出し機
22 取出し機
m 溶融樹脂材
S インサート成形装置
C キャビティ
b バッファ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インサート成形すべき成形品(11)を型締め可能に配置する第1、第2の型(10a、10b)を有し、
これら第1、第2型(10a、10b)は、それぞれ、独立的に型締め動作可能に分割して構成したことを特徴とするインサート成形金型。
【請求項2】
成形金型(10)と、この成形金型(10)の、型締め面に向けて、溶融樹脂材(m)を送り込む押出しダイ(12)と、この押出しダイ(12)による溶融樹脂材(m)の押出し位置に、インサート成形すべき成形品(11)におけるインサート部品(2)を位置決め支持する支持部(20)とを具備するインサート成形装置(S)において、
前記成形金型(10)は、前記成形品(11)を型締め可能に配置する第1、第2の型(10a、10b)を有し、
これら第1、第2型(10a、10b)は、それぞれ、独立的に型締め動作可能に分割して構成したことを特徴とするインサート成形装置。
【請求項3】
前記押出しダイ(12)に対し、前記溶融樹脂材(m)を送り込む押出し機(21)と、型締め後の成形品(11)を取出すための取出し機(22)を備え、
前記成形金型(10)における第1、第2型(10a、10b)は、一部の分割型の型締め面に、前記押出し機(21)から押出しダイ(12)を通じて押出された溶融樹脂材(m)を充填してバッファ部(b)とするキャビティ(C)を設けたことを特徴とする請求項2に記載のインサート成形装置。
【請求項4】
前記成形金型(10)と前記支持部(20)とは、前記押出しダイ(12)によるインサート部品(2)に対する溶融樹脂材(m)の押出し位置と、成形金型(10)による型締め後の成形品(11)の冷却、取出し位置との間で、相対的に移動可能に構成したことを特徴とする請求項2または3に記載のインサート成形装置。
【請求項5】
前記成形金型(10)は、成形金型(10)による型締め後の成形品(11)の冷却、取出し位置と、前記押出しダイ(12)によるインサート部品(2)に対する溶融樹脂材(m)の押出し位置との間で往復動可能に構成したことを特徴とする請求項4に記載のインサート成形装置。
【請求項6】
パイプ状に押出した溶融樹脂材(m)内にインサート部品(2)を支持し、エア吸引を行うと共に、それぞれ、独立的に型締め動作可能に分割して構成した第1、第2の型(10a、10b)により賦形するインサート成形方法において、
前記パイプ状に押出した溶融樹脂材(m)に対し、前記第1、第2の型(10a、10b)のうちの一部の分割型により型締めを行い、前記インサート部品(2)の支持側近傍に前記溶融樹脂材(m)を押し付けて溶融樹脂材(m)の開口先端を封止し、
次いで、エア吸引と共に、前記第1、第2の型(10a、10b)のうちの別の分割型により型締めを行って、前記インサート部品(2)の周囲を前記溶融樹脂材(m)で包皮するように賦形し、
さらに、前記第1、第2の型(10a、10b)のうちの待機状態の分割型により型締めを行って、パイプ状に押出された溶融樹脂材mを切断して、前記溶融樹脂材(m)により包皮した成形品(11)を取出すことを特徴とするインサート成形方法。
【請求項7】
成形金型(10)を、成形金型(10)による型締め後の成形品(11)の冷却、取出し位置と、押出しダイ(12)によるインサート部品(2)に対する溶融樹脂材(m)の押出し位置との間で往復動可能に構成したインサート成形装置(S)を用いて押出し成形を行うに当たり、
前記インサート部品(2)に対する溶融樹脂材(m)の押出し位置において、インサート部品(2)に対し、前記溶融樹脂材(m)をパイプ状に押出ししている間に、前記成形金型(10)の成形金型(10)による型締め後の成形品(11)の冷却、取出し位置において、前記成形金型(10)による型締め後の成形品(11)の冷却、取出しを行い、
次いで、前記成形金型(10)を、前記インサート部品(2)に対する溶融樹脂材(m)の押出し位置にもたらして、押出し位置において、押出された溶融樹脂材(m)を介し、型締めを行い、前記成形金型(10)を型締めの状態で、型締め後の成形品(11)の冷却、取出し位置にもたらす一方、前記インサート部品(2)に対する溶融樹脂材(m)の押出し位置に、次のインサート成形にかかるインサート部品(2)を、位置決め支持して、前記インサート部品(2)に対し、前記溶融樹脂材(m)をパイプ状に押出しする工程を繰り返すことを特徴とするインサート成形装置によるインサート成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2009−262452(P2009−262452A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−116241(P2008−116241)
【出願日】平成20年4月25日(2008.4.25)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】