説明

エアコンプレッサ

【課題】物理的な電源スイッチを採用しないエアコンプレッサにおいて、駆動中に電源が遮断され、その後に復旧した場合に、タンク部の圧力状態に応じて自動的にモータ部の駆動制御を行うこと。
【解決手段】本発明に係るエアコンプレッサの制御手段20は、電源電圧検出手段28により検出された電源電圧の値に基づいて電力の供給が遮断されると判断した場合に、モータ手段の駆動の有無を判断し、モータ手段が駆動中であると判断した場合には、圧力検出手段12により検出された圧力状態に基づいてモータ手段の運転休止状態を判断して当該運転休止状態に関する情報を不揮発性記録手段30に記録する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアコンプレッサに関し、より詳細には、圧縮空気を生成するために駆動させるモータ手段と、モータ手段の駆動に応じて生成された圧縮空気を貯留する圧縮空気貯留手段と、モータ手段の駆動量を制御する制御手段とを備えたエアコンプレッサに関する。
【背景技術】
【0002】
圧縮空気を利用した釘打機等の駆動工具を建築現場で利用する場合には、駆動工具に対して圧縮空気を供給するエアコンプレッサを設置する必要がある。エアコンプレッサは、モータ部を駆動させることによって圧縮空気生成部で圧縮空気を生成し、生成させた空気をタンク部に貯留することによって、所定圧力の圧縮空気を駆動工具に供給する構造となっている。
【0003】
従来のエアコンプレッサでは、エアコンプレッサの駆動を行うための物理的な電源スイッチ(いわゆるロッカースイッチ)が設けられており、この電源スイッチをON側にセットすることによって、エアコンプレッサの駆動を開始させる構造となっている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
このような物理的な電源スイッチを備えたエアコンプレッサでは、駆動用の電源が遮断された場合(例えば、ブレーカ落ち等による遮断など)であっても、電源スイッチがON側にセットされた状態が保持されていた。このため、電源が復旧(再供給)された場合には、ON側に保持された電源スイッチによって自動的にエアコンプレッサの駆動が再開され、作業者がエアコンプレッサの電源を操作することなくエアコンプレッサの継続使用を行うことが可能となっていた。
【特許文献1】特開2002−285967号公報 (図1の符号6に示す電源スイッチ参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、今日では、物理的な電源スイッチではなく、タッチパネル等を用いて電源のON/OFF操作を行うパネル表示ボタン方式を備えたエアコンプレッサが多く存在する。パネル表示ボタンを供えたエアコンプレッサでは、駆動用の電源が遮断された場合に、操作設定がリセットされてしまうため、電源が復旧(再供給)されたときにエアコンプレッサが停止状態になってしまう。
【0006】
このため、作業者は、電源復旧後にエアコンプレッサのパネル表示ボタンを操作してエアコンプレッサを再度駆動させる必要が生じるという問題があった。特に、釘打機等を使用する場所からエアコンプレッサの設置場所まで距離がある場合や、釘打機等を高所(例えば、建物の上階)で使用し、エアコンプレッサを低所(例えば、建物の下階)に設置した場合には、作業を中断し、エアコンプレッサの設置位置(下階)まで作業者が移動してエアコンプレッサの駆動操作を行う必要が生じるため、操作負担が増大する傾向にあるという問題があった。
【0007】
さらに、エアコンプレッサは、タンク部の圧力状態に応じてモータ部の運転・休止を切り替えることにより、所定の圧力値を維持する構造となっている。このため、タンク部の圧力値が高い状態で電源の遮断および復旧が行われた場合には、タンク部内の圧力が高めに維持されている場合もあり得るため、必ずしもモータ部を全力で駆動させる必要がないという特徴を有していた。
【0008】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、物理的な電源スイッチ(例えば、ロッカースイッチ)を採用しないエアコンプレッサにおいて、駆動中に電源が遮断され、その後に復旧した場合に、タンク部の圧力状態に応じて自動的にモータ部の駆動制御を行うことが可能なエアコンプレッサを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係るエアコンプレッサは、圧縮空気を生成するために駆動させるモータ手段と、該モータ手段の駆動に応じて生成された前記圧縮空気を貯留する圧縮空気貯留手段と、前記モータ手段の駆動量を制御するための制御手段と、前記圧縮空気貯留手段に貯留された前記圧縮空気の圧力状態を検出する圧力検出手段と、電源より前記モータ手段に対して供給される電源電圧の値を検出する電源電圧検出手段と、前記制御手段より出力される情報を記録する不揮発性記録手段とを有し、前記制御手段は、前記電源電圧検出手段により検出された電源電圧の値に基づいて前記電源からの電力供給が遮断されると判断した場合に、前記モータ手段の駆動の有無を判断し、前記モータ手段が駆動中であると判断した場合には、前記圧力検出手段により検出された圧力状態に基づいて前記モータ手段の運転休止状態を判断して当該運転休止状態に関する情報を前記不揮発性記録手段に記録することを特徴とする。
【0010】
このように、本発明に係るエアコンプレッサでは、電力の供給が遮断されたと判断した場合に、制御手段が、圧力検出手段により検出された圧力状態に基づいてモータ手段の運転休止状態を判断して運転休止状態に関する情報を不揮発性記録手段に記録するので、電力が復旧された場合において、遮断前の運転休止状態に対応した適切な運転モードでモータ手段の運転を再開させることが可能となる。
【0011】
特に、エアコンプレッサの場合には、電力の復旧後に単にモータ手段の駆動を再開させればいいのではなく、圧縮空気貯留手段に蓄えられる圧縮空気の圧力状態に応じてモータ手段の駆動量を制御しなければ、所望の圧力状態を維持することができないという問題がある。このため、電力の供給が遮断されたときの圧力状態に基づいて判断されるモータ手段の運転休止状態の情報を不揮発性記録手段に記録させることによって、モータ手段の運転再開時より圧縮空気の圧力状態に適した駆動制御を確実に行うことが可能となる。
【0012】
また、上記エアコンプレッサでは、前記制御手段が、前記電源電圧検出手段により検出された電源電圧の値に基づいて遮断されていた電力が復旧されたと判断した場合に、前記不揮発性記録手段より前記モータ手段の運転休止状態に関する情報を読み取り、該運転休止状態に関する情報に応じて駆動量を調整して前記モータ手段の駆動を再開させることを特徴とする。
【0013】
本発明に係るエアコンプレッサでは、遮断されていた電力が復旧された場合に、制御手段が、前記不揮発性記録手段よりモータ手段の運転休止状態に関する情報を読み取り、運転休止状態に関する情報に応じて駆動量を調整してモータ手段の駆動を再開させるので、エアコンプレッサの電源スイッチに物理的なスイッチ(例えば、ロッカースイッチ)を採用しない場合であっても、電源復旧後に停止前の運転停止状態に応じて自動的にモータ手段の駆動を再開させることが可能となる。
【0014】
さらに、上記エアコンプレッサは、前記モータ手段の駆動再開を報知するための報知手段を有し、前記制御手段が、前記報知手段による報知をさせ、前記モータ手段の駆動を再開させるものであってもよい。
【0015】
このように、報知手段による報知をさせるとともに、モータ手段の駆動を再開させるため、遮断されていた電力が復旧されて自動的にモータ手段の駆動が再開されるときに、モータ手段の自動的な駆動再開を作業者に知らせることができ、エアコンプレッサの駆動に伴うトラブルなどの発生などを未然に抑制することが可能となる。
【0016】
また、上記エアコンプレッサが、遮断されていた電力が復旧された場合に前記モータ手段の駆動を再開させるか否かを設定する自動復帰設定手段を有し、前記制御手段が、前記電源電圧検出手段により検出された電源電圧の値に基づいて前記電源からの電力供給が遮断されると判断した場合に、前記自動復帰設定手段により設定された設定情報を前記不揮発性記録手段に記録し、遮断されていた電力が復旧された場合に、前記不揮発性記録手段より前記設定情報を読み取り、当該設定情報が前記モータ手段の駆動を再開させる旨の情報であった場合にのみ、前記モータ手段の駆動を再開させるものであってもよい。
【0017】
このように、自動復帰設定手段により設定された設定情報を不揮発性記録手段に記録し、遮断されていた電力が復旧された場合に、設定情報がモータ手段の駆動を再開させる旨の情報であった場合にのみ、モータ手段の駆動を再開させる構成とすることによって、モータ手段の自動復帰の有無を任意に設定することが可能となる。このため、電力の復旧時に自動的にモータ手段が駆動することを望まない場合には、エアコンプレッサの駆動を停止させたままとすることも可能となり、電力復旧時のエアコンプレッサの駆動制御を簡易かつ適切に設定することが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るモータ制御装置によれば、電力の供給が遮断されたと判断した場合に、制御手段が、圧力検出手段により検出された圧力状態に基づいてモータ手段の運転休止状態を判断して運転休止状態に関する情報を不揮発性記録手段に記録するので、電力が復旧された場合において、遮断前の運転休止状態に対応した適切な運転モードでモータ手段の運転を再開させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明に係るエアコンプレッサを、図面を用いて詳細に説明する。
【0020】
図1は、本発明に係るエアコンプレッサの概略構成を示したブロック図である。エアコンプレッサ1は、タンク部(圧縮空気貯留手段)2と、圧縮空気生成部3と、モータ部(モータ手段)4と、制御回路部5と、パネル表示ボタン(自動復帰設定手段)6と、表示パネルLED(報知手段)7aと、ブザー出力部(報知手段)7bとによって概略構成されている。
【0021】
タンク部2は、圧縮空気を貯留するための貯留タンク8を有している。貯留タンク8には、圧縮空気生成部3により生成された一定圧力の圧縮空気が蓄えられており、通常3.5MPa〜4.3MPa程度の圧力に維持されている。
【0022】
貯留タンク8には、複数の圧縮空気取出口9が設けられている。本実施の形態においては、高圧の圧縮空気を取り出すための高圧取出口9aと、常圧の圧縮空気を取り出すための常圧取出口9bとが設けられている。各取出口9a、9bには、それぞれの取出口9a、9bより得られる圧縮空気を所望の圧力に減圧させるための減圧弁10a、10bが設けられており、高圧取出口9aでは、減圧弁10aによって取り出される圧縮空気の圧力が1.5MPa〜2.50MPa程度に減圧され、常圧取出口9bでは、減圧弁10bによって取り出される圧縮空気の圧力が0.7MPa〜1.5MPa程度に減圧される。
【0023】
貯留タンク8内の圧縮空気は、上述したように通常3.5MPa〜4.3MPa程度の圧力に維持されるため、高圧取出口9aから取り出される圧縮空気も常圧取出口9bから取り出される圧縮空気も、上述した所望の圧力を減圧弁10a、10bによって維持することが可能となる。また、各取出口9a、9bには、減圧弁10a、10bにより減圧された圧縮空気を釘打機等の駆動工具に供給するために、エアホース(図示省略)を着脱することが可能となっている。
【0024】
また、貯留タンク8には、貯留タンク8内の圧力を検出するための圧力センサ(圧力検出手段)12が設けられている。圧力センサ12は、貯留タンク8内の圧力変化を内部の感圧素子によって電気信号に変換する機能を有しており、検出した電気信号は制御回路部5に伝達される。
【0025】
圧縮空気生成部3は、シリンダ内に設けられるピストンを往復運動させ、シリンダの吸気弁からシリンダ内に引き込まれた空気を圧縮することによって圧縮空気を生成する構造を備えている。圧縮された空気は、連結パイプ14を介してタンク部2の貯留タンク8へと供給される。
【0026】
モータ部4は、圧縮空気生成部3のピストンを往復運動させるための駆動力を発生させる役割を有している。モータ部4には、駆動力を発生させるためのステータ16とロータ17とが設けられている。ステータ16には、U相、V相、W相の巻線16a、16b、16cが形成されており、これらの巻線16a〜16cに対して電流を流すことによって回転磁界が形成される。
【0027】
ロータ17は、永久磁石によって構成されており、ステータ16の巻線16a、16b、16cを流れる電流によって形成される回転磁界により、ロータ17の回転が行われる。このロータ17の回転力によって圧縮空気生成部3のピストンの動作が行われる。
【0028】
制御回路部5は、図2に示すように、マイクロプロセッサ(MPU:Micro Processing Unit、制御手段)20と、コンバータ回路21と、インバータ回路22とによって概略構成されている。
【0029】
コンバータ回路21は、整流回路24と昇圧回路25と平滑回路26とにより概略構成されており、このコンバータ回路21によっていわゆるPAM(Pulse Amplitude Modulation)制御が実行される。ここで、PAM制御とは、コンバータ回路21によって出力電圧のパルスの高さを変化させることにより、モータ部4の回転数を制御する方法である。一方で、インバータ回路22では、いわゆるPWM(Pulse Width Modulation)制御が実行される。PWM制御とは、出力電圧のパルス幅を変化させてモータ部4の回転数を制御させる方法である。
【0030】
PAM制御は、PWM制御に比べて、モータ部4における低回転時の効率低下が少なく、電圧を上げることによって高回転にも対応することが可能であるという特性を有しているため、高出力時および定常運転時に主として用いられる制御方法である。一方で、PWM制御は、起動時や電圧低下時などにおいて主として用いられる制御方法である。マイクロプロセッサ20は、エアコンプレッサ1の運転状態に応じて、コンバータ回路21によるPAM制御とインバータ回路22によるPWM制御とを好適に切り替えて制御を実行する。
【0031】
コンバータ回路21の整流回路24および平滑回路26は、エアコンプレッサ1の駆動源となる交流電源(電源)29を整流・平滑にすることによって直流電圧に変換する役割を有している。昇圧回路25の内部には、スイッチング素子25aが設けられており、マイクロプロセッサ20の制御命令に応じて直流電圧の振幅制御を行う役割を有している。昇圧回路25は、マイクロプロセッサ20のPAM指令を受けた昇圧コントローラ27を介して制御されている。
【0032】
なお、コンバータ回路21と交流電源29との間には、電源電圧検出部(電源電圧検出手段)28が設けられている。電源電圧検出部28で検出される電圧値は、コンバータ回路21の昇圧回路25等を経て電圧値が昇圧される前の一次電圧(以下、この電圧を電源電圧という)の値であり、交流電源29の電圧値を示している。従って、電源電圧検出部28において電圧値を検出することによって、交流電源29より供給される電源電圧の変化を検出することが可能となっている。電源電圧検出部28により検出された電圧値は、マイクロプロセッサ20に出力される。
【0033】
インバータ回路22は、コンバータ回路21によって変換された直流電圧のパルスを一定周期で正負変換させるとともに、パルス幅を変換させることによって直流電圧を擬似的な正弦波を備える交流電圧に変換する役割を有している。このパルス幅を調整することによって、上述したようにモータ部4の回転数制御を行うことが可能となる。マイクロプロセッサ20は、インバータ回路22に対する出力値の調整を行うことによって、モータ部4の駆動量を制御する。
【0034】
マイクロプロセッサ20は、コンバータ回路21およびインバータ回路22の駆動制御を行うことによって、タンク部2の圧縮空気の圧力を3.5MPa〜4.3MPaに安定させるための制御手段である。マイクロプロセッサ20は、演算処理ユニット(CPU:Central Processing Unit)、ワークメモリ等の一時記録領域として利用されるRAM(Random Access Memory)、後述する制御処理プログラム(例えば、後述する図3および図4の処理に関するプログラム)や後述する処理に関するプログラム(例えば、後述する10msecの時間経過(計時)判断を行う計時タスクや、電源遮断時および電源復旧時におけるマイクロプロセッサ20の制御処理)等が記録されるROM(Read Only Memory)等の機能が、1チップのLSIにより実現されたものである。なお、マイクロプロセッサ20は、ROMに記録される上述した計時タスクに基づき、計時判断処理を行うことが可能となっている。
【0035】
さらに、マイクロプロセッサ20には、フラッシュメモリ(不揮発性記録メモリ、例えば、EEPROMなど、(不揮発性記録手段))30が接続されている。フラッシュメモリ30とは、データの読み書きをマイクロプロセッサ20の指示に従って自由に行うことができ、さらに、電源供給が遮断された場合であっても、記録されたデータを保持し続ける(不揮発性を備える)記録手段である。マイクロプロセッサ20は、後述するように、フラッシュメモリ30に運転モードやタンク部2の圧力状態などを記録させることによって、緊急停止時のエアコンプレッサ1の状態を保持することが可能となっている。
【0036】
また、マイクロプロセッサ20には、圧力センサ12によって検出された貯留タンク8内の圧力情報(圧力値の情報)、電源電圧検出部28で検出された電源電圧値(交流電源29の電圧値の情報)、パネル表示ボタン6により操作された操作情報が入力される。
【0037】
一方で、マイクロプロセッサ20は、制御情報(PAM指令、PWM指令)をコンバータ回路21およびインバータ回路22に対して出力することが可能な構成となっている。コンバータ回路21およびインバータ回路22では、マイクロプロセッサ20によって出力された制御情報(PAM指令、PWM指令)に基づいて、モータ部4の駆動制御を実行する。
【0038】
マイクロプロセッサ20は、昇圧コントローラ27にPAM指令を出力することによって、昇圧コントローラ27を介して昇圧回路25のスイッチング素子25aを制御して、コンバータ回路21の駆動制御を行う。また、同様に、マイクロプロセッサ20は、インバータ回路22に対してPWM指令を出力することによってインバータ回路22の制御を行う。
【0039】
パネル表示ボタン6は、作業者がエアコンプレッサ1の駆動設定などを行うための入力手段である。パネル表示ボタン6は、エアコンプレッサ1の筐体外部に設けられており、タッチパネル機能を備えた液晶表示部により概略構成されている。作業者は、液晶表示部に表示されるボタン画像をタッチすることによって、エアコンプレッサ1の駆動設定や、エアコンプレッサ1の駆動開始操作および駆動停止操作を行うことが可能となっている。パネル表示ボタン6を介して設定された操作情報は、マイクロプロセッサ20に伝達され、RAMの所定領域に記録される。
なお、作業者は、パネル表示ボタン6を操作することによって、電源からの電力供給が遮断された場合、電源復旧時に自動的にエアコンプレッサ1を起動させるか、または、停止させた状態を保つか否かの設定情報(以下、自動的にエアコンプレッサ1を起動させる設定を自動復帰モードという。)をRAMに記録させることが可能となっている。
【0040】
表示パネルLED7aおよびブザー出力部7bは、エアコンプレッサ1の筐体外部に設けられている。表示パネルLED7aは、例えば赤色光を発するLEDであり、マイクロプロセッサ20の指示に従って、LEDの点灯/消灯/点滅動作を行うことが可能となっている。また、ブザー出力部7bは、例えば警告音や警告用の音声を発する装置であり、マイクロプロセッサ20の指示に従って、警告音の出力/停止を行うことが可能となっている。
【0041】
次に、エアコンプレッサ1の駆動中に電源からの電力供給が遮断された場合におけるマイクロプロセッサ20の制御方法を、図3に示すフローチャートを用いて説明する。
【0042】
まず、マイクロプロセッサ20は、ROMに記録される計時タスクに基づき、前回電源電圧の電圧値を取得したときから10msecの時間が経過したか否かの判断を行う(ステップS.1)。マイクロプロセッサ20は、10msecの時間が経過していないと判断する場合(ステップS.1においてNoの場合)、再度ステップS.1に示す計時判断処理を繰り返し実行する。
【0043】
10msecの時間が経過したものと判断した場合(ステップS.1においてYesの場合)、マイクロプロセッサ20は、電源電圧検出部28より電源電圧値を検出し(ステップS.2)、電源電圧値が切断レベルまで低下したか否かを判断する(ステップS.3)。
【0044】
ここで、電源電圧値が切断レベルまで低下した場合とは、具体的に、電源電圧値が0になった場合だけでなく、正常に電力が供給されている状態において検出され得ない値まで電圧値が低下する場合が含まれる。例えば、電源電圧の値が、AC30V以下となった場合、マイクロプロセッサ20は、電源電圧が切断レベルまで低下したものと判断する。
【0045】
マイクロプロセッサ20は、電源電圧値が切断レベルまで低下していないと判断した場合(ステップS.3においてNoの場合)、再度ステップS.1に示す計時判断処理を繰り返し実行する。一方で、電源電圧値が切断レベルまで低下したと判断した場合(ステップS.3においてYesの場合)、マイクロプロセッサ20は、RAMの所定領域に記録された操作情報を取得し(ステップS.4)、作業者により自動復帰モードの設定がなされているか否かを判断する(ステップS.5)。
【0046】
自動復帰モードの設定がなされていない場合(ステップS.5においてNoの場合)、マイクロプロセッサ20は、インバータ回路22およびコンバータ回路21を含むすべての駆動を停止させて(ステップS.12)処理を終了する。なお、電源供給が急激に遮断されて電源電圧が0Vになった場合であっても、昇圧回路25などに設けられるコンデンサなどから、マイクロプロセッサ20に対して駆動用の電源を一定時間(2〜3秒程度)供給することができるため、マイクロプロセッサ20は、図3のフローチャートに示す一連の処理を行うことが可能となっている。自動復帰モードの設定がなされている場合(ステップS.5においてYesの場合)、マイクロプロセッサ20は、自動復帰モードの設定情報(自動復帰モード情報)を、フラッシュメモリ30に記録する(ステップS.6)。
【0047】
次に、マイクロプロセッサ20は、ステップS.4において取得した操作情報に基づいて、エアコンプレッサ1が運転モード中(作業者によりエアコンプレッサ1の駆動操作が行われて、エアコンプレッサ1が駆動中の状態)であるか否かを判断する(ステップS.7)。操作情報に基づいて運転モード中でないと判断した場合(ステップS.7においてNoの場合)、マイクロプロセッサ20は、インバータ回路22およびコンバータ回路21を含むすべての駆動を停止させて(ステップS.12)処理を終了する。操作情報に基づいて運転モード中であると判断した場合(ステップS.7においてYesの場合)、マイクロプロセッサ20は、運転モード中である旨の情報(運転モード情報)をフラッシュメモリ30に記録する(ステップS.8)。
【0048】
次いで、マイクロプロセッサ20は、圧力センサ12よりタンク部2内の圧力情報を取得し(ステップS.9)、圧力情報に基づいてモータ部4がOFF圧停止状態であるか否かを判断する(ステップS.10)。モータ部4は、タンク部2の圧力を通常3.5MPa〜4.3MPa程度の状態に維持するようにして駆動している。このため、タンク部2の圧力が上限レベル(約4.0MPa以上)になった場合には、モータ部4の駆動を停止させ、タンク部2の圧力が下限レベル(約3.6MPa以下)になった場合には、モータ部4の駆動を再開させる構造となっている。このようにしてタンク部2内の圧力が上限レベルに到達し、モータ部4の駆動が停止している状態をOFF圧停止状態といい、タンク部2内の圧力が下限レベルまで落ち込み、モータ部4の駆動が再開している状態をON圧稼働状態という。
【0049】
圧力センサ12より取得した圧力情報に基づいて、モータ部4がOFF圧停止状態でないと判断し場合(ステップS.10においてNoの場合)、マイクロプロセッサ20は、インバータ回路22およびコンバータ回路21を含むすべての駆動を停止させて(ステップS.12)処理を終了する。一方で、圧力センサ12より取得した圧力情報に基づいて、モータ部4がOFF圧停止状態であると判断し場合(ステップS.10においてYesの場合)、マイクロプロセッサ20は、OFF圧停止状態である旨の情報(OFF圧停止状態情報)をフラッシュメモリ30に記録する(ステップS.11)。
【0050】
そして、マイクロプロセッサ20は、インバータ回路22およびコンバータ回路21を含むすべての駆動を停止させて(ステップS.12)処理を終了する。
【0051】
次に、遮断された電力供給が復旧した場合におけるマイクロプロセッサ20の制御方法を、図4に示すフローチャートを用いて説明する。
【0052】
電力供給が再開された場合、マイクロプロセッサ20は、フラッシュメモリ30に記録された情報、具体的には、自動復帰モードの設定がなされているか否かの情報、運転モード中であったか否かの情報、OFF圧停止状態であったか否かの情報を取得する(ステップS.21)。
【0053】
次に、マイクロプロセッサ20は、取得した情報に基づいて、自動復帰モードの設定がなされていたか否かの判断を行う(ステップS.22)。自動復帰モードの設定がなされていなかった場合(ステップS.22においてNoの場合)、マイクロプロセッサ20は、エアコンプレッサ1を停止状態に維持し(ステップS.23)、電源電圧の復旧による処理を終了する。
【0054】
一方で、自動復帰モードの設定がなされていた場合(ステップS.22においてYesの場合)、マイクロプロセッサ20は、取得した情報に基づいて、運転モード中である旨の情報が記録されていたか否かの判断を行う(ステップS.24)。運転モード中である旨の情報が記録されていなかった場合(ステップS.24においてNoの場合)、マイクロプロセッサ20は、エアコンプレッサ1を停止状態に維持し(ステップS.23)、電源電圧の復旧による処理を終了する。
【0055】
一方で、運転モード中である旨の情報が記録されていた場合(ステップS.24においてYesの場合)、マイクロプロセッサ20は、取得した情報に基づいて、OFF圧停止状態であった旨の情報が記録されていたか否かの判断を行う(ステップS.25)。OFF圧停止状態であった旨の情報が記録されていなかった場合(ステップS.25においてNoの場合)。マイクロプロセッサ20は、所定時間、例えば10秒間だけ表示パネルLED7aを点滅させるとともに、ブザー出力部7bより警告音を出力した後に、エアコンプレッサ1を通常の駆動方法により、より詳細には、エアコンプレッサ1がON圧稼働状態であると判断して起動させる(ステップS.26)。この通常の駆動方式によるエアコンプレッサ1の駆動により、モータ部4の駆動が開始され、タンク部2に対して圧縮された空気が蓄えられることになる。
【0056】
OFF圧停止状態であった旨の情報が記録されていた場合(ステップS.25においてYesの場合)。マイクロプロセッサ20は、エアコンプレッサ1がOFF圧停止状態で停止されたものと判断し、所定時間、例えば10秒間だけ表示パネルLED7aを点滅させるとともに、ブザー出力部7bより警告音を出力した後に、エアコンプレッサ1を起動させてOFF圧停止状態とする(ステップS.27)。このようにOFF圧停止状態とすることによって、タンク部2の圧力値が下限レベルまで低下したことを条件に、モータ部4の駆動が再開されてタンク部2内の圧力が最適な空気圧に維持されることになる。
なお、安全性を確保するために、10秒間の点滅中に作業者がパネル表示ボタン6を操作(押す)ことにより、エアコンプレッサ1が自動的に運転再開を行うことを中止させ、停止状態を維持する(ステップS.23)構成とするものであってもよい。
【0057】
このように、本発明に係るエアコンプレッサ1では、電源電圧が遮断された場合に、マイクロプロセッサ20が、エアコンプレッサ1の稼働情報、より詳細には、運転モード中であるか否かの情報や、OFF圧停止状態であるか否かの情報をフラッシュメモリ30に記録する。このため、エアコンプレッサ1は、エアコンプレッサ1の電源スイッチが物理的なスイッチ(例えば、ロッカースイッチ)を採用しない場合であっても、電源復旧後に停止前の運転状態に応じて適切なモードで運転を自動的に再開することが可能となる。
【0058】
特に、エアコンプレッサ1の場合には、電源復旧後に単にモータ部4を駆動させればよいのではなく、タンク部2の圧力状態に応じてモータ部4の駆動を制御しなくては、所望の圧力状態を維持することができないという問題がある。このため、電源電圧の遮断時にOFF圧停止状態であるか否かを、マイクロプロセッサ20が、圧力センサ12により検出されたタンク部2の圧力情報に基づいて判断してフラッシュメモリ30に記録させることによって、電源復旧後に、タンク部2の圧力状態に応じてモータ部4の駆動制御を適切に行うことが可能となる。
【0059】
また、本実施の形態に係るエアコンプレッサ1では、自動復帰モードを作業者が任意に設定することが可能となっている。このため、電源電圧復旧時に自動的に再起動することを望まない場合には、自動復旧モードの設定を行わないことによって、エアコンプレッサ1の起動を再開させないことも可能となり、エアコンプレッサ1の起動の有無を簡易かつ適切に設定することができる。
【0060】
さらに、自動復帰モードの設定により、電源電圧復旧後に自動的にエアコンプレッサ1が起動する場合には、表示パネルLED7aの点滅およびブザー出力部7bによる警告音出力により、作業者にエアコンプレッサ1の自動復帰を報知することができるので、エアコンプレッサ1の自動的な駆動再開に伴うトラブルなどの発生を抑制することが可能となる。
【0061】
以上、本発明に係るエアコンプレッサを、図面を用いて説明したが、本発明に係るエアコンプレッサは、実施の形態に示したものに限定されるものではない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0062】
例えば、本実施の形態に係るエアコンプレッサ1では、図3に示すように、マイクロプロセッサ20が、自動復帰モードの設定がなされていない場合(ステップS.5においてNoの場合)、運転モード中でない場合(ステップS.7においてNoの場合)および、OFF圧停止状態でない場合(ステップS.10においてNoの場合)には、それらの情報をフラッシュメモリ30に記録することなく、エアコンプレッサ1のすべての駆動を停止させて処理を終了する構成とした。しかしながら、マイクロプロセッサ20における制御は、図3に示した方法のみに限定されるものではなく、自動復帰モードの設定がなされていない場合(ステップS.5においてNoの場合)、運転モード中でない場合(ステップS.7においてNoの場合)および、OFF圧停止状態でない場合(ステップS.10においてNoの場合)であっても、各情報をそれぞれフラッシュメモリ30に記録する構成とするものであってもよい。
【0063】
このように各情報をフラッシュメモリ30に記録することによって、電源電圧復旧時に、確実に各設定に関する情報を読み出すことが可能となるため、制御処理のミスを低減させることが可能となる。また、各情報をフラッシュメモリ30に記録する方法を用いることによって、フラッシュメモリ30にいずれかの情報が記録されていない場合には、電源電圧遮断時におけるマイクロプロセッサ20の処理に何らかのエラーが発生したものと推定することができるため、エアコンプレッサ1の再起動を強制的に中止させる構成などにすることによって、エラーに伴うトラブルの発生を未然に防止することなどが可能となる。
【0064】
また、本実施の形態に係るエアコンプレッサ1では、表示パネルLED7aとブザー出力部7bとの両方を設置した場合について説明を行ったが、作業者に対して十分な報知を行うことが可能であるならば、表示パネルLED7aとブザー出力部7bとのいずれか一方のみを設置する構成とするものであってもよく、また他の報知手段を備える構成とするものであってもよい。
さらに、本実施の形態に係るエアコンプレッサ1では、表示パネルLED7aおよびブザー出力部7bによる報知処理を10秒間行った後に、エアコンプレッサ1の起動を行う構成としたが、必ずしも10秒間の報知処理終了後にエアコンプレッサ1の起動を行う構成には限定されず、報知処理が開始された後(例えば、10秒間の報知処理のうち、5秒間だけ報知が行われたとき)に、エアコンプレッサ1の駆動を再開させる構成とするものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本実施の形態に係るエアコンプレッサの概略構成を示すブロック図である。
【図2】本実施の形態に係るエアコンプレッサの制御回路部を示すブロック図である。
【図3】本実施の形態に係るマイクロプロセッサにより電源電圧が遮断された場合に行われる処理を示したフローチャートである。
【図4】本実施の形態に係るマイクロプロセッサにより電源電圧が復旧された場合に行われる処理を示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0066】
1 …エアコンプレッサ
2 …タンク部(圧縮空気貯留手段)
3 …圧縮空気生成部
4 …モータ部(モータ手段)
5 …制御回路部
6 …パネル表示ボタン(自動復帰設定手段)
7a …表示パネルLED(報知手段)
7b …ブザー出力部(報知手段)
8 …貯留タンク
9 …圧縮空気取出口
9a …高圧取出口
9b …常圧取出口
10a、10b …減圧弁
12 …圧力センサ(圧力検出手段)
14 …連結パイプ
16 …ステータ
16a、16b、16c …巻線
17 …ロータ
20 …マイクロプロセッサ(制御手段)
21 …コンバータ回路
22 …インバータ回路
24 …整流回路
25 …昇圧回路
25a …スイッチング素子
26 …平滑回路
27 …昇圧コントローラ
28 …電源電圧検出部(電源電圧検出手段)
29 …交流電源(電源)
30 …フラッシュメモリ(不揮発性記録手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮空気を生成するために駆動させるモータ手段と、
該モータ手段の駆動に応じて生成された前記圧縮空気を貯留する圧縮空気貯留手段と、
前記モータ手段の駆動量を制御する制御手段と、
前記圧縮空気貯留手段に貯留された前記圧縮空気の圧力状態を検出する圧力検出手段と、
電源より前記モータ手段に対して供給される電源電圧の値を検出する電源電圧検出手段と、
前記制御手段より出力される情報を記録する不揮発性記録手段と
を有し、
前記制御手段は、前記電源電圧検出手段により検出された電源電圧の値に基づいて前記電源からの電力供給が遮断されると判断した場合に、前記モータ手段の駆動の有無を判断し、前記モータ手段が駆動中であると判断した場合には、前記圧力検出手段により検出された圧力状態に基づいて前記モータ手段の運転休止状態を判断して当該運転休止状態に関する情報を前記不揮発性記録手段に記録すること
を特徴とするエアコンプレッサ。
【請求項2】
前記制御手段は、前記電源電圧検出手段により検出された電源電圧の値に基づいて遮断されていた電力が復旧されたと判断した場合に、前記不揮発性記録手段より前記モータ手段の運転休止状態に関する情報を読み取り、該運転休止状態に関する情報に応じて駆動量を調整して前記モータ手段の駆動を再開させること
を特徴とする請求項1に記載のエアコンプレッサ。
【請求項3】
前記モータ手段の駆動再開を報知するための報知手段を有し、
前記制御手段は、前記報知手段による報知をさせることと、前記モータ手段の駆動を再開させること
を特徴とする請求項2に記載のエアコンプレッサ。
【請求項4】
遮断されていた電力が復旧された場合に前記モータ手段の駆動を再開させるか否かを設定する自動復帰設定手段を有し、
前記制御手段は、
前記電源電圧検出手段により検出された電源電圧の値に基づいて前記電源からの電力供給が遮断されると判断した場合に、前記自動復帰設定手段により設定された設定情報を前記不揮発性記録手段に記録し、
遮断されていた電力が復旧された場合に、前記不揮発性記録手段より前記設定情報を読み取り、当該設定情報が前記モータ手段の駆動を再開させる旨の情報であった場合にのみ、前記モータ手段の駆動を再開させること
を特徴とする請求項2または請求項3に記載のエアコンプレッサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−174416(P2009−174416A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−13591(P2008−13591)
【出願日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願人】(000006301)マックス株式会社 (1,275)
【Fターム(参考)】