説明

エミッションコントロールの方法および装置

【課題】高温のEGR流が原因となるエンジン性能の低下を緩和し、フィルタ再生中に吸気側へと再循環させる高温の排気の量を減少することによって、EGRクーラにおける熱需要を減少し、さらなるエンジン性能と燃料経済利益をもたらす。
【解決手段】ターボチャージャー用タービンの上流に設けられたパティキュレートフィルタと、タービンの下流に設けられた触媒と、エンジン排気側とエンジン吸気側との間を連結するEGR通路とを備えたターボチャージャー付きエンジンを作動する方法であって、EGR通路を介して、フィルタの下流から吸気側へと排気を分流し、フィルタ作動状況に基づいて、分流される排気の量を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、選択的接触還元(SCR)触媒およびパティキュレートフィルタを有する自動車のエミッションコントロールの方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンシステムは、EGR(排気再循環)を用いて、NOx排出に対処されている。例えば、EGRシステムは、排気側のタービンの上流から吸気側のコンプレッサの下流へと、または排気側のタービンの下流から吸気側のコンプレッサの上流へと排気を分流している。EGRシステムを制御するために様々なアプローチがなされ、EGRの作動がエミッションコントロールの作動と連係して調整されている。アプローチの一例は、Arnoldにより特許文献1に示されている。そこでは、排気が吸気を通って再循環する前に微粒子をEGR流から取り除くことができるように、パティキュレートフィルタをEGR通路に備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許公開第20040050047A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、発明者らは、上記の方法に対していくつかの問題があることに気付いた。一例としては、フィルタを再生するために、高温の排気がEGR通路を通らなければならない場合がある。しかし、加熱されたEGR流量は、エンジン性能を低下させ、燃料ペナルティを増加しうる。一方、フィルタなしに、および/またはフィルタを再生せずに、EGR流とともに吸気側に再循環された微粒子物質は、コンプレッサに付着する原因となり、エンジン性能を低下しうる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一例を述べると、上述の問題は、ターボチャージャー用タービンの上流に設けられたパティキュレートフィルタと、タービンの下流に設けられた触媒と、排気側と吸気側との間を連結したEGR通路とを備えるターボチャージャー付きエンジンを作動する方法によって対処しうる。一実施形態において、本方法は、EGR通路を介して、フィルタの下流から吸気側へと排気を分流し、フィルタ作動状況に基づいて、分流される排気の量を調整することよりなる。
【0006】
このように、フィルタ作動に基づいてEGRを調整することによって、フィルタ再生中、必要に応じて、EGRを減少することができる。ターボチャージャー用タービンの上流かつEGR通路入口の上流である位置にパティキュレートフィルタを設けることによって、EGRとパティキュレートフィルタの両方に有利な効果を得ることができる。特に、上記で言及したように、EGRが求められる場合、排気は、フィルタを通った後、EGR通路を通って再循環され、それによって浄化されたEGR流を吸気側へ供給し、コンプレッサの劣化を抑制することができうる。そして、フィルタ再生が求められる場合、加熱された排気はフィルタを通るが、EGR通路を通って再循環されず(または比較的少量の排気を再循環し)、その結果、高温のEGR流が原因となるエンジン性能の低下を緩和しうる。さらに、フィルタ再生中に吸気側へと再循環させる高温の排気の量を減少することによって、EGRクーラにおける熱需要を減少し、その結果、エンジンに、さらなるエンジン性能と燃料経済利益をもたらす。
【0007】
上記の解決手段は、実施例においてより詳細に記載される概念を抜粋して簡潔な形で紹介するために示したものであることを理解するべきである。それは、請求項の主題の鍵となる、または欠くことのできない特徴を特定することを意図したものではなく、その範囲は、詳細な説明の次に示す請求項によって独自に定義される。さらにまた、請求項の手段は、上述した不利な点を解決するための実施またはこの開示の一部に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】内燃機関およびそれに関連するエミッションコントロール装置の模式図である。
【図2】エンジンの一部を示す図である。
【図3A】本開示の図1のエミッションコントロール装置を操作するためのハイレベルフローチャートである。
【図3B】本開示の図1のエミッションコントロール装置を操作するためのハイレベルフローチャートである。
【図4】フィルタ再生状況に基づいて、運転者が走行中にチップインをしたときのブースト問題に対処するためのハイレベルフローチャートである。
【図5】還元剤と排気との混合問題に対処するためのハイレベルフローチャートである。
【図6】上流にあるウェイストゲートを調整することによって、下流にあるSCR触媒の温度を制御するためのハイレベルフローチャートである。
【図7】ブーストに基づいて還元剤の注入を調整するためのハイレベルフローチャートである。
【図8】フィルタ再生状況に基づいて排気再循環を調整するためのハイレベルフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の明細書は、ターボチャージャー付き内燃機関に関するエミッションコントロール装置を操作するための装置および方法に関するものである。図1〜2に示すように、エミッションコントロール装置は、ターボチャージャー用タービンの下流に触媒(例えばSCR触媒)を、タービンの上流にパティキュレートフィルタ(例えばディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF))を備える。制御装置は、個々のエミッションコントロールデバイスの作動を互いに調整する、および、エミッションコントロールデバイスの作動と、排気再循環やブースティングのような他のエンジン作動とを調整するための制御ルーチン(例えば、図3Aおよび図3Bのルーチン)を実行するように設計されうる。
【0010】
エミッションコントロール装置は、還元剤注入装置をもタービンの上流に備えうる。タービンの上流に還元剤を注入し、注入された還元剤をタービンを通して排気と混合することによって、還元剤の気化率が上昇する。一方で、タービンの下流に触媒を置くことによって、十分に混合した還元剤を、触媒の温度特性の影響を受けずに触媒に供給しうる。制御装置は、ターボチャージャーのウェイストゲートを調整するための制御ルーチン(例えば、図5および図7のルーチン)を実行するように設計され、ターボチャージャーによるブースト量のような作動状況に基づいて注入される還元剤の量を調整し、および、排気と注入された還元剤との混合を促進するようにしうる。
【0011】
ターボチャージャーの上流にパティキュレートフィルタを備えることによって、さらなる効果を得ることが可能となる。例えば、フィルタ再生中に、ターボラグ状態にも相乗的に対処しうる。1以上のエンジン気筒に、エンジンサイクルの排気行程で遅れて燃料を噴射することによって、ターボチャージャー用タービンをスプールアップする前に排気温度を上昇しうる。排気温度を上昇することによって、排気は、タービン速度を増加し、ターボラグを減少する一方、フィルタをも再生しうる。制御装置は、図4のルーチンのような制御ルーチンを実行するように設計されうる。図4のルーチンでは、パティキュレートフィルタを再生するためにフィルタの温度を上昇するのに必要な熱量、および/または希望トルクを満たすようにタービン速度を増加するのに必要な熱量に基づいて、噴射時期および/または噴射量を調整する。
【0012】
フィルタをタービンの上流に、触媒をタービンの下流に置くことによって、エミッションコントロールデバイスの間の温度制御や調整をすることができる。例えば、フィルタを再生する間、SCR触媒温度を一定に保ちうる。制御装置は、フィルタ再生中、SCR触媒に向けての排気流を調整するために、タービンのウェイストゲートを調整する制御ルーチン(例えば、図6のルーチン)を実行するように設計されうる。このように、各種のフィルタ作動モードにおいて、SCR触媒温度を制御できる。
【0013】
エンジンシステムは、少なくとも一部の排気を吸気側に再循環させるために1以上のEGR通路をさらに備えうる。例えば、EGR通路は、タービンの上流かつパティキュレートフィルタの下流である位置から吸気側のコンプレッサの下流に、排気を分流しうる。ターボチャージャー用タービンの上流かつEGR通路入口の上流である位置にパティキュレートフィルタを設けることによって、EGRとパティキュレートフィルタの両方に有利な効果を得ることができる。したがって、EGRが求められる場合、より多くの排気がフィルタを通過した後、EGR通路を通って再循環され、それによって、吸気側に浄化されたEGR流を供給する。このように、例えば、EGRクーラ、EGRバルブ、吸気マニホールド、吸気バルブの劣化を抑制する。したがって、フィルタ再生が求められる場合には、フィルタを通過した後に、比較的少量の排気がEGR通路を通って再循環されることにより、高温のEGR流に起因するエンジンの性能の低下を抑制しうる。制御装置は、フィルタ作動に基づいてEGR流量を調整し、それによってEGRシステムとエミッションコントロール装置とを調整するための制御ルーチン(例えば、図8のルーチン)を実行するように設計されうる。
【0014】
図1は車両システム6の概略を示している。車両システム6はエンジンシステム8を備え、エンジンシステム8は、エミッションコントロール装置22に連結されたエンジン10を備える。エンジン10は複数の気筒30を備える。エンジン10は吸気系23と排気系25をも備える。吸気系23はスロットル62を含み、スロットル62は、吸気通路42を介してエンジン吸気マニホールド44に吸気が流れうるように連結している。排気系25は排気マニホールド48を備え、排気マニホールド48は、排気管35を介して大気中に排気を送る排気通路45につながっている。
【0015】
エンジン10は、さらにターボチャージャー50のようなブースト装置を備えうる。ターボチャージャー50は、吸気通路42に設けられたコンプレッサ52を備えうる。コンプレッサ52は、少なくとも部分的には、排気通路45に設けられているタービン54によってシャフト56を介して作動されうる。エンジン制御装置は、ターボチャージャーによるブースト量を変化させうる。例えば、ブースト量はウェイストゲート58を制御することにより調整できる。一例を述べると、ウェイストゲート58を開け、比較的多量の排気がタービンをバイパスすることにより、ブースト量は減少しうる。一方、ウェイストゲートを閉じ(またはウェイストゲートの開度を減少し)、比較的少量の排気がタービンをバイパスすることにより、ブースト量は増加しうる。他の例では、タービン54は可変容量タービン(VGT)または可変ノズルタービン(VNT)でありうる。VGTまたはVNTは、ブースト要求を満たすように調整されうる。さらに、速度超過の状況がターボチャージャーで起こらないように、ウェイストゲート、VNT、および/またはVGTを調整することができる。一部の実施形態では、吸気通路42内でコンプレッサ52の下流に必要に応じてチャージアフタークーラ34を備えてもよい。アフタークーラは、ターボチャージャー50によって圧縮された吸気の温度を下げるために設けられている。
【0016】
排気通路45に連結されたエミッションコントロール装置22は、排気系の密結合位置(close−coupled position)に装着された1以上のエミッションコントロールデバイス69を備えうる。1以上のエミッションコントロールデバイスは、パティキュレートフィルタ72、SCR触媒76、三元触媒、リーンNOxトラップ触媒、酸化触媒などを含みうる。エミッションコントロールデバイスは、排気通路45におけるタービン54の上流および/または下流に設けてもよい。一実施形態において、図に示すように、SCR触媒76はターボチャージャー用タービン54の下流に置かれる一方、パティキュレートフィルタ72はターボチャージャー用タービン54の上流に置かれうる。一例を述べると、パティキュレートフィルタ72はコーティングされていないディーゼルパティキュレートフィルタでありうる。代替的な実施形態では、パティキュレートフィルタ72は触媒コートを備えうる。使用される触媒コートは、例えば、パラジウム、炭化水素吸着剤(活性炭やゼオライトなど)、SCR触媒、HC吸着剤とSCR触媒との化合物、などを含んでもよい。
【0017】
ターボチャージャー用タービン54の上流に位置する還元剤注入装置80は、尿素やアンモニアのような還元剤82を、SCR触媒76でNOx種と反応させるために排気中に注入しうる。具体的には、還元剤注入装置80は、エンジン制御装置から受け取った信号に応答して、タービン54の上流かつパティキュレートフィルタ72の下流において排気中に還元剤82を注入しうる。タービンの上流に還元剤を注入し、注入された還元剤をタービンを介してSCR触媒へと供給することによって、還元剤の気化率が上昇し、そして、還元剤と排気との混合を促進しうる。図5で詳しく述べたとおり、排気と還元剤との混合する量を調整するために、タービンのウェイストゲートを調整しうる。さらに、図7で詳しく述べたとおり、還元剤の注入する量および/または時期は、ブーストの変化やウェイストゲートの変化のようなエンジン作動状況に基づいて調整されうる。代替的な実施形態では、還元剤注入装置80をタービン54の下流に設けてもよい。
【0018】
エンジン10は、排気側(具体的には排気通路45)から吸気側(具体的には吸気通路42)へと少なくとも排気の一部を再循環させるために、1以上の排気再循環(EGR)通路をさらに備えうる。一実施形態において、第一EGRシステム60および第二EGRシステム70を備えうる。具体的には、第一EGRシステム60は、タービン54の上流かつパティキュレートフィルタ72の下流である位置から、高圧EGR通路63を介して、吸気側のコンプレッサ52の下流へと排気の一部を分流しうる。この構成において、第一EGRシステム60は高圧EGRを構成する。第二EGRシステム70は、タービン54の下流から、低圧EGR通路73を介して、コンプレッサ52の上流側へと排気の一部を分流しうる。この構成において、第二EGRシステム70は低圧EGRを構成する。一例を述べると、ターボチャージャー50によるブーストがないような第一条件において、高圧EGRシステム60を作動しうる一方、ターボチャージャーによるブーストがある場合、および/または排気温度がしきい値を上回る場合のような第二条件において低圧EGRシステム70を作動しうる。他の例では、高圧EGRシステム60および低圧EGRシステム70を同時に作動しうる。
【0019】
各EGR通路はさらにEGRクーラを備えうる。例えば、低圧EGRシステム70は低圧EGRクーラ74を備えうる一方、高圧EGRシステム60は高圧EGRクーラ64を備えうる。高圧EGRクーラ64および低圧EGRクーラ74は、吸気側に再循環する前に、各々のEGR通路を通って流れ込む排気温度を下げるように設計されうる。一定の条件下で、水滴がコンプレッサに衝突するのを防ぐために、排気がコンプレッサに入る前に、低圧EGRシステム70を通って流れる排気を加熱するのに低圧EGRクーラ74は用いられうる。一部の実施形態では、1以上のEGRクーラ経路には、吸気側に再循環する前に、さらなる排気処理を行えるようにするため、SCR触媒がコーティングされる。
【0020】
図示された実施形態では、SCR触媒76の下流から排気の一部を分流する低圧EGR通路73が示される一方で、代替的な実施形態では、SCR触媒76の上流から少なくとも排気の一部を分流するように、低圧EGR通路73が設計されうる。一例を述べると、SCR触媒76の上流から吸気側に排気を分流することによって、得られる圧力差を大きくしながら、EGR通路の配管を短くすることができる。さらに他の実施形態では、1以上の触媒(例えば、SCR触媒および/またはディーゼル酸化触媒)を低圧EGR通路73に、例えば、低圧EGRクーラ74の上流に設けることができる。背圧制御弁を設けるようにしてもよい。また、排気スロットルの代わりに、コンプレッサの上流側に設けられた吸気スロットルが使われる場合もある。一例を述べると、低圧EGR通路73にSCRを備え、SCR触媒76の上流から排気を分流することによって、少なくとも一部の注入された還元剤(例えば、しきい値を超過した量)をそのSCRに蓄積して、NOxを再生成することなく、アンモニアスリップ量を減少させることができる。しかしながら、低圧EGR通路73に酸化触媒を備え、SCR触媒76の上流から排気を分流することによって、少なくとも一部の注入された還元剤(例えば、しきい値を超過した量)を酸化触媒で消費して、NOxを再生成することなく、アンモニアスリップ量を減少させることができる。
【0021】
一例を述べると、高圧EGRシステム60は、コンプレッサの下流かつチャージエアクーラ34の上流である位置に排気の一部を分流しうる。他の例では、高圧EGRシステム60は、コンプレッサの下流かつチャージエアクーラ34の下流である位置に排気の一部を分流しうる。一実施形態において、高圧EGRシステム60は、高圧EGR通路63における高圧EGRクーラ64の上流位置から、吸気側のチャージエアクーラ34の下流に、この両クーラを回避して、排気の一部を分流しうるように設けられたバイパス通路(図示せず)をさらに備えうる。このように、高圧EGRクーラおよびコンプレッサのチャージエアクーラの両方を回避することによって、必要なときにエンジンのウォームアップを早めるために、加熱排気を冷却せずに吸気側へと導くことができる。加えて、高圧EGRクーラへの付着物を減少することができる。
【0022】
エンジン制御装置12は、エンジン作動状況、排気温度、吸気マニホールド温度、パティキュレートフィルタの作動モード(またはフィルタの再生度合)、触媒の状況などに基づいて、EGR通路を介して分流される排気の量(および/または率)を調整しうる。各EGR通路は、EGRバルブを備え、制御装置12は、個々のEGRバルブの開度を調整することによって、分流される排気の量を調整するように設計されうる。例えば、吸気マニホールド44へと供給される高圧EGRの量および/または率は、高圧EGRバルブ29によって調整されうる。高圧EGRセンサ65は高圧EGR通路63内に設けることができ、高圧EGRシステム60により再循環される排気の圧力、温度、組成、濃度の中の1以上の指標を提供する。同様に、低圧EGRバルブ39を介して吸気通路42へと供給される低圧EGRの量および/または率は、制御装置12によって変更されうる。低圧EGRセンサ75は低圧EGR通路73内に設けることができ、低圧EGRシステム70により再循環される排気の圧力、温度、組成、濃度の中の1以上の指標を提供する。
【0023】
一部の例では、1以上のセンサは、高圧EGRシステムおよび低圧EGRシステムを通って流れ込む排気の総量を測定するために使用されうる。例えば、総EGR量を測定するために、吸気通路42内における高圧EGRシステムの下流出口に、汎用排気酸素(UEGO)センサを設けうる。例えば、吸気酸素濃度は、排気酸素濃度に対して調整されるEGRと直接関連がありうるので、総EGR量の制御は、吸気酸素濃度または質量燃焼割合に基づく。
【0024】
ある条件下で、高圧EGRシステム60および/または低圧EGRシステム70を通じる排気再循環は、吸気マニホールド内で、空気と燃料との混合物の温度を調整するために、および/または、例えばピーク燃焼温度を低下させることによって、NOx燃焼生成量を減少するために用いられうる。図8で詳しく述べたとおり、ある条件下で、例えば、パティキュレートフィルタ72の再生中、および/または、排気温度がしきい値を超える場合、高温のEGR流が原因となるエンジンの性能低下を緩和するために、EGR通路63を通って吸気側へと分流される総排気量を減少しうる。タービンの上流かつパティキュレートフィルタの下流である位置から排気を分流することにより、エミッションコントロール装置とEGRシステムとの間で有利な相乗効果を得ることができる。例えば、フィルタを通過する際に、排気が浄化されうる。したがって、浄化された排気を吸気側へと分流することができ、その排気からは微粒子物質がおおむね取り除かれている。それによって、例えば、吸気マニホールド、EGRクーラ、バルブへの排気微粒子に起因する付着物が減少する。
【0025】
制御装置12を備えた制御システム14および入力装置(図示せず)を介した自動車運転者からの入力によって、エンジン10は少なくとも部分的に制御されうる。制御システム14は、複数のセンサ16(本明細書に記載された様々な例)からの情報を受け取り、制御信号を複数のアクチュエータ81に送ることが示されている。一例として、センサ16は、エミッションコントロールデバイスの上流に設けられた排気センサ126、排気管35内のエミッションコントロール装置の下流に設けられた排気温度センサ128・排気圧センサ129、高圧EGR通路63に設けられた高圧EGRセンサ65、低圧EGR通路73に設けられた低圧EGRセンサ75を備えうる。一部の例では、センサ16は、例えば総EGR量を測定するために使われる1以上のセンサを含みうる。総EGR量は、例えば、質量燃焼割合および/または吸気酸素濃度に基づいている。さらに、圧力センサ、温度センサ、空燃比センサ、組成センサのような他のセンサを、車両システム6の様々な位置に設けうる。他の例としては、アクチュエータ81は、インジェクタ66、高圧EGRバルブ29、低圧EGRバルブ39、スロットル62、還元剤注入装置80、およびウェイストゲート58を含みうる。追加されるバルブやスロットルのような他のアクチュエータは、車両システム6の様々な位置に設けうる。制御装置12は、様々なセンサからの入力データを受け取り、入力データを処理し、1以上のルーチンに対応してプログラミングされた命令やコードに基づいて処理された入力データに応答してアクチュエータを作動しうる。制御ルーチンの具体例は、本明細書の図3〜8に記載されている。
【0026】
図2は、内燃機関エンジン10の燃焼室、すなわち気筒の実施形態の一例を示したものである。エンジン10は、少なくとも部分的に、制御装置12を備えた制御システムによって、そして、入力装置132を介した自動車運転者130からの入力によって制御されうる。この例では、入力装置132は、アクセルペダルおよびペダル位置信号PPに比例して生成されるペダル位置センサ134を含む。エンジン10の気筒(すなわち燃焼室)は、そこに配置されるピストン138を有する燃焼室壁136を含みうる。ピストンの往復運動がクランクシャフトの回転運動に変換されるように、ピストン138はクランクシャフト140に連結されうる。クランクシャフト140は、伝達システムを介して、自動車の少なくとも一つの駆動輪に連結されうる。さらに、始動モータは、エンジン10の始動作動を可能にするためにフライホイールを介してクランクシャフト140に連結されうる。
【0027】
気筒30は、一連の吸気通路142、144、および146を介して、吸気を吸入することができる。吸気通路146は、気筒30に加えて、エンジン10の他の気筒に通じることができる。一部の実施形態では、1以上の吸気通路は、吸気通路142と144の間に設けられたコンプレッサ52や、排気通路148に設けられた排気タービン54を有するターボチャージャーを備えうる。コンプレッサ52は、排気タービン54によって少なくとも一部の動力を、シャフト56を介して供給される。一部の実施形態では、シャフト56は、必要に応じて電気ブーストを供給するために、電気モータと連結している場合がある。スロットル板164を含むスロットル62をエンジンの気筒に供給される吸気流速および/または吸気圧を変化するために、エンジンの吸気通路に設けうる。例えば、スロットル62は、図示したとおり、コンプレッサ52の下流に設けることができる一方、コンプレッサ52の上流に設けることもできる。一部の例では、スロットルはコンプレッサ52の上流および下流の両方に設けることもできる。
【0028】
排気通路148には、気筒30に加えて、エンジン10の他の気筒からの排気も流入することができる。センサ126は、図示されたように、エミッションコントロールデバイス69の上流で排気通路148につながっている。排気センサ126は、リニア酸素センサ、UEGOセンサ、二状態酸素センサ、排気酸素(EGO)センサ(図示されている)、ヒーター付排気酸素(HEGO)センサ、NOxセンサ、HCセンサ、または、COセンサを含む、排気の空燃比を表示するための適切なセンサを備え得る。一部の例では、排気センサ126をタービン54の下流で、エミッションコントロールデバイス69の下流に位置する排気通路につなげる場合がある。エミッションコントロールデバイス69は、三元触媒(TWC)、NOxトラップ、他の様々なエミッションコントロールデバイス、またはそれらの組み合わせであってもよい。アンモニアや尿素のような還元剤との反応で、排気するNOx化学種を窒素へと還元させるためにSCR触媒76を設ける場合がある。還元剤注入装置80は、タービン54の上流である排気通路148に還元剤82を注入しうる。排気通路148は、排気から微粒子物質を取り除くため、タービン54および注入装置80の上流に位置するパティキュレートフィルタ72をも備えうる。
【0029】
エンジン10の各気筒は1以上の吸気バルブおよび1以上の排気バルブを備えうる。例えば、気筒30は、図示されているように、気筒30の上部に設けられた、1以上の吸気ポペットバルブ150および1以上の排気ポペットバルブ156を備える。一部の実施形態では、気筒30を含むエンジン10の各気筒は、気筒の上部に設けられた、2以上の吸気ポペットバルブおよび2以上の排気ポペットバルブを備える。
【0030】
吸気バルブ150は、制御装置12により、アクチュエータ152を介して制御されうる。同様に、排気バルブ156は、制御装置12により、アクチュエータ154を介して制御されうる。ある条件では、制御装置12は、アクチュエータ152、154に供給される信号を変更して、各々の吸気バルブおよび排気バルブを開閉制御することができる。吸気バルブ150および排気バルブ156の位置は、各々のバルブの位置センサ(図示せず)によって測定されうる。バルブのアクチュエータは、電気作動式、カム作動式、電気−油圧式、またはこれらの組み合わせからなりうる。吸気バルブタイミングと排気バルブタイミングとを同時に制御する、すなわち、可変吸気カムタイミング、可変排気カムタイミング、二重独立可変カムタイミング、または、固定カムタイミングのいずれかが使用されうる。各カムの作動システムは、1以上のカムを備え、バルブ作動を変更するために制御装置12により作動するカムプロフィールスイッチング(CPS)、可変カムタイミング(VCT)、可変バルブタイミング(VVT)、および/または可変バルブリフト(VVL)の中の1以上のシステムを利用することができる。例えば、一方では、気筒30は電気作動式によって制御される吸気バルブ、そして、CPSおよび/またはVCTを含めたカム作動式によって制御される排気バルブを備えうる。他の実施形態では、吸気バルブおよび排気バルブは、一般的なバルブアクチュエータやアクチュエーションシステム、または、可変バルブタイミングアクチュエータやそのアクチュエーションシステムによって制御されうる。エンジンはさらにカム位置センサを含み、カム位置センサのデータをクランクシャフト位置センサと組み合わせて、エンジン位置およびカムタイミングを決定する。
【0031】
気筒30においては、ピストンが最下点にあるときの容積の、ピストンが最上点にあるときの容積に対する比率である圧縮比が設定されている。従来、圧縮比は9:1〜10:1の範囲内である。しかし、一部の例では、異なった燃料を使うことにより、圧縮比が増大する場合がある。
【0032】
一部の実施形態では、エンジン10の各気筒は、燃焼が起こるように、点火プラグ192を備えうる。点火装置190は、作動モードを選択した状況下で、制御装置12からの点火進角信号SAに応答して、点火プラグ192を介して、燃焼室30に点火火花を供給しうる。しかしながら、一部の実施形態では、自動点火、すなわちディーゼルエンジンでの場合のように燃料噴射によってエンジン10が燃焼を開始する場合のように、点火プラグ192を取り付けない場合もある。
【0033】
一部の実施形態では、エンジン10の各気筒は、気筒に燃料を供給するための1以上のインジェクタを設けうる。非限定的な例としては、気筒30は、気筒30に直接連結されたインジェクタ166を備えることが示されている。インジェクタ166は、電気ドライバ168を介して制御装置12から受信した信号FPWのパルス幅に比例して燃料を直接的に噴射しうる。このように、インジェクタ166は、気筒30の燃焼で、燃料の直噴(以下、“DI”という)として知られるものを提供する。図2では、インジェクタ166はサイドインジェクタとして示しているが、点火プラグ192近傍の位置のようなピストンの上方に配置される場合もある。あるいは、インジェクタは、吸気バルブの上方で、かつ、吸気バルブ近傍に配置される場合がある。燃料は、燃料タンク、燃料ポンプ、燃料レールを含む高圧燃料供給装置172からインジェクタ166へと送られる場合がある。一方、燃料は低温で単段燃料ポンプで送られる場合がある。さらに、燃料タンクは、図示されていないが、制御装置12へと信号を提供する圧力変換器を有する場合がある。
【0034】
別の実施形態では、インジェクタ166は、気筒30の上流にある吸気ポートに燃料を供給するポートインジェクタがありうることを理解されたい。気筒30は、複数のポートインジェクタ、複数の直噴インジェクタ、またはそれらの組み合わせのような複数のインジェクタから燃料を受けることができることも理解されたい。
【0035】
制御装置12は、マイクロプロセッサ106、入出力ポート108、実行可能プログラムおよび較正値用の電子記憶媒体(具体的な例において、リードオンリーメモリ(read−only memory)110として示される)、ランダムアクセスメモリ112、キープアライブメモリ(keep alive memory)114、およびデータバスを備えるマイクロコンピュータとして図2に示されている。制御装置12は、上述した信号に加えて、質量空気流量センサ122からの吸気された質量空気流量(MAF)の測定値、冷却スリーブ118に連結された温度センサ116からのエンジン冷媒温度(ECT)、クランクシャフト140に連結されたホール効果センサ120(または、クランクシャフト位置センサのような他のタイプ)からのプロファイル点火ピックアップ信号(PIP)、スロットル位置センサからのスロットル位置(TP)(図示せず)、センサ124からのマニホールド絶対圧信号(MAP)を含むエンジン10に結合されたセンサからの種々の信号を受けうる。エンジン速度信号RPMが、信号PIP(または、クランクシャフト位置センサ)から、制御装置12によって、従来の方法で生成されうる。マニホールド圧センサからのマニホールド圧信号MAPが、吸気マニホールド内の真空度の指標または圧力の指標を提供するために使われうる。記憶媒体であるリードオンリーメモリ110は、以下に記載されている方法の他に、予測されるが、特に記載されていない他の変形例でも同様に実行できるよう、マイクロプロセッサ106によって実行可能な命令を表した、コンピュータが読み込み可能なデータでプログラミングされている。
【0036】
1以上の排気再循環(EGR)通路(図1に示したように)は、排気通路148から吸気通路144へと所望の排気の一部を送ることができる。例えば、パティキュレートフィルタ72を通してフィルタにかけられた排気の一部は、EGR通路63を介して吸気通路144へと分流されうる。吸気側へと供給されるEGR流量は、制御装置12により、高圧EGRバルブ29を用いて変更することができる。EGRセンサ(図示せず)は、EGR通路63内に設けることができ、排気の圧力、温度、濃度の中の1以上の指標を提供する。ある条件下で、EGRシステムは、燃焼室内で空気と燃料とを混合したときの温度を調整するために用いることができ、したがって、いくつかの燃焼モードでの点火時期の制御方法を提供する。
【0037】
上述の通り、図2は、多気筒エンジンにおける1つのシリンダーのみを示している。各シリンダーは、それぞれ同様に、吸気/排気バルブ、インジェクタ、点火プラグなどのセットを含みうる。
【0038】
図3A−Bを参照すると、ルーチン300は、ターボチャージャーの作動およびEGRの作動と、図1のエミッションコントロール装置の作動とを調整することを図示している。具体的には、ルーチン300は、SCR触媒温度を制御し、還元剤の混合を促進するよう、パティキュレートフィルタの再生を考慮した上で、ターボチャージャーのウェイストゲートを調整する。ルーチンは、フィルタ再生を考慮して、ウェイストゲートを調整することを可能とし、それによって、高圧EGRおよび低圧EGRを介して再循環される排気の量をも調整する。さらに、ルーチンは、例えば、還元剤の注入の調整やスロットルの位置調整を介して、ウェイストゲートの調整を補整する。
【0039】
302において、エンジン作動状況を測定し、および/または推定する。これは、例えば、触媒温度(Tcat)(例としてSCR触媒76の触媒温度)、フィルタ温度(Tfill)(例としてパティキュレートフィルタ72のフィルタ温度)、エンジン速度(N)、排気NOxレベル、排気温度、運転者による要求トルク量などを含みうる。例えば、SCR触媒に蓄積された還元剤の量、および/またはフィルタに蓄積された微粒子の量のような、SCR触媒およびフィルタの状況もさらに推定しうる。
【0040】
304において、要求トルクおよび推定されるエンジン作動状況に基づいて、要求トルクを供給するために必要なブーストの量を決定する場合がある。306において、所望のEGR流量を供給することより推定される排気NOxレベルおよび排気温度に基づいて、初期EGR設定値を決定する場合がある。例えば、高圧EGRの低圧EGRに対する比率を、所望のEGR温度またはマニホールドの空気温度を提供するよう決定する。高圧EGRの低圧EGRに対する初期比率は、過熱状態を避けるために、コンプレッサの入口温度によって決まり、同様に、サージおよびチョークを回避するために、マスフローや圧力比によって決まりうる。高圧EGRの低圧EGRに対する初期比率は、少なくとも一部の排気が、パティキュレートフィルタの下流かつタービンの下流である位置から、吸気エンジンシステム(ターボチャージャー用のコンプレッサの上流)へと分流されるようにする一方、少なくとも一部の排気が、パティキュレートフィルタの下流かつタービンの上流である位置から、吸気エンジンシステム(ターボチャージャー用のコンプレッサの下流)へと分流されるようにする場合がある。決定される初期EGR設定値は、流速、バルブの開度、EGRクーラの設定値などを含みうる。308において、所望のブーストに基づいて、ウェイストゲートの初期開度を決定する場合がある。
【0041】
310において、運転者が走行中にチップイン(tip−in)をするのに応じて、何らかのブースト問題が発生するかどうかを判定しうる。ブースト問題が発生しない場合は、ルーチンは直接314に進む。ブースト問題が存在する場合は、図4に詳しく述べたとおり、ルーチンは314に進む前に312において、遅れた燃料噴射およびウェイストゲートの調整によってブースト問題に対処しうる。314において、注入された還元剤を排気と十分に混合するかどうかを判定しうる。混合問題が発生しない場合は、ルーチンは直接318に進む。混合問題が存在する場合は、図5に詳しく述べたとおり、ルーチンは318に進む前に316において、さらにウェイストゲートを調整することによって混合問題に対処しうる。318において、SCR触媒温度が所望の作動範囲内であるかどうかを判定しうる。温度問題が発生しない場合は、ルーチンは直接322に進む。SCR触媒温度が範囲外である場合は、図6に詳しく述べたとおり、ルーチンは322に進む前に320において、さらにウェイストゲートを調整することによって触媒温度問題に対処しうる。
【0042】
322において、ルーチンは、312、316、320において判定された調整に基づいて最終的なウェイストゲートの開度を決定しうる。一例を述べると、ルーチンは、各調整に異なった重み付けを与えることにより、ウェイストゲートの調整の優先順位を決めうる。例えば、SCR触媒温度問題、および/またはターボチャージャーの速度超過の状況に対応するウェイストゲートの調整は、ブースト問題に対応するウェイストゲートの調整よりも大きい重み付けを与えられる場合がある。一例を述べると、ウェイストゲートの開度を増加することによって、SCR触媒温度問題に対処することを決定し、同時に、ウェイストゲートの開度を減少することによって、ブースト問題に対処することを決定しうる。ここで、一例を述べると、ルーチンは、ブースト問題に対応してのウェイストゲートの調整は行わず、触媒温度問題への対処に限り、ウェイストゲートの開度を第一の大きな量増加する場合もある。他の例では、ルーチンは、ブースト問題に対処するために必要なウェイストゲートの調整を検討し、いずれの問題へも対処するために、ウェイストゲートの開度を第二の小さな量だけ増加する場合もある。さらに他の例では、各種の問題の調整に全て同等の重み付けを行う場合もある。
【0043】
324において、ルーチンは、最終的なウェイストゲートの開度に基づいて、タービンの上流に注入される還元剤の量を調整しうる。さらに図7に詳しく述べたとおり、還元剤の注入は、ウェイストゲートの開度の変化から生じるブーストの変化に基づいて調整されうる。326において、他のエンジンの作動パラメータを調整すると、ウェイストゲートの調整が補整されうる。この調整は、例えば、スロットル位置の変更、バルブタイミングやカムタイミングの変更、点火のタイミングの変更などを含めうる。
【0044】
328において、EGR実行中であるか、およびそれに加えてパティキュレートフィルタは再生中かどうかを判定しうる。EGRの作動とフィルタ再生の作動の両方を確認した場合、328において、高圧EGRと低圧EGRの比率は、図8に詳しく述べたとおり、エンジン作動状況に基づいて調整されうる。
【0045】
このように、SCR触媒およびパティキュレートフィルタのようなエミッションコントロールデバイスの作動とブーストおよびEGRの作動とを調整しうる。
【0046】
図4を参照すると、ルーチン400は、フィルタ再生、および特定のブースト作動状況(例えば、運転者が走行中にチップインをしたとき)に基づいて、エンジンに遅れて注入される燃料の量を調整するのを図示している。ルーチン400は、制御ルーチン300の一部分、具体的には312において行われうる。
【0047】
402において、運転者が走行中にチップインをしたとき、ターボチャージャーによるブースト量はしきい値を下回っているかどうかを判定する。このように、ターボラグの状況が存在するかどうかを判定しうる。一部の例では、しきい値は所望のブースト量に基づいている場合がある。例えば、402において、所望のブーストと実際のブーストの差がしきい値を下回っているかどうかを判定しうる。ここで、しきい値は、運転者による要求トルク量に基づいて調整されうる。ブーストがしきい値を下回らない場合は、適切なブースト量を供給し、ルーチンを終了しうる。ターボラグが確認された場合、404において、パティキュレートフィルタを再生する(または再生することになる)かどうかを決定しうる。例えば、フィルタに蓄積された微粒子の量がしきい値を上回る、および/または蓄積モードでのフィルタ作動の継続時間がしきい値を超える場合に、フィルタ再生は行われうる。
【0048】
フィルタを再生することを確定した場合、406において、ルーチンは、トルク要求時のブーストレベルに基づいて、遅れて注入される燃料の量を決定しうる。例えば、ブーストレベルがしきい値を下回る場合、注入される燃料の量を増加しうる。遅れて注入される燃料の量は、排気温度を十分に上昇しうる量であるため、加熱排気は希望トルクを形成するようにタービン速度を増加し、その結果、ターボラグを減少する。ターボラグを減少することによって、運転者が走行中にチップインをしたときに要求するトルクに応じて、求められたブーストを供給しうる。別の実施形態では、遅れて注入される燃料の量は、運転者が要求するトルク量に基づいている場合がある。
【0049】
408において、遅れて注入される燃料の量は、排気温度に基づいて、さらに調整されうる。一例を述べると、排気温度は、フィルタ温度を推測するのに使われる場合がある。また、遅れて注入される燃料の量は、フィルタ温度、および/または、蓄積された微粒子の量に基づいて調整されうる。例えば、フィルタを再生し、蓄積された微粒子を焼き払う場合のしきい値を上回る排気温度に上昇するように、遅れて注入される燃料の量を調整しうる。しきい値は、再生する際、所望のフィルタ温度に達するように、および/または、フィルタに蓄積された微粒子の量に基づいて、調整されうる。その調整は、例えば、排気温度またはフィルタ温度が低下する(例えば、しきい値を下回る温度に低下する)場合、注入される燃料の量を増加する、および/または、フィルタに蓄積された微粒子の量が増加する場合、注入される燃料の量を増加することを含みうる。
【0050】
410において、決定された燃料の量は、エンジンサイクルの排気行程中、フィルタの上流に遅れて注入される場合があり、注入される燃料は、エンジン気筒で燃焼されない。そのかわりに、発熱反応がフィルタで発生し、その結果、フィルタ温度が上昇し、タービンに達する排気温度が上昇する。一例を述べると、フィルタは、排気行程中に注入された燃料を過剰酸素とフィルタで発熱反応させるように、触媒コートを備えうる。例えば、しきい値を上回るブーストの上昇(例えば、要求トルクが供給できるレベルに上昇したブースト)や要求トルクを上回って増加するエンジントルクに応じて、注入は中止されうる。一部の例では、しきい値は所望のブースト量に基づいている場合がある。例えば、所望のブーストと実際のブーストとの差がしきい値よりも大きい場合、注入を中止しうる。あるいは、排気温度(またはフィルタ温度)がしきい値を超えて上昇した、および/または、蓄積された微粒子の量がしきい値を下回って減少したのに応じて注入を中止する。さらに一部の実施形態では、注入された燃料の量に基づいて次の燃料噴射(例えば、次のエンジンサイクルの間の燃料噴射量)は調整されうる(例えば、所望の空燃比を維持するため)。
【0051】
このように、特定のブースト作動状況下で、パティキュレートフィルタの上流に燃料を遅れて注入することによって、フィルタ再生中に、チップインをしたことによってブーストが上昇した問題に対処しうる。
【0052】
図5を参照すると、ルーチン500は、SCR触媒と還元剤との混合問題に対処してウェイストゲートの開度を調整するのを図示している。ルーチン500は、制御ルーチン300の一部分、具体的には316において行われうる。
【0053】
502において、ルーチンは、排気流の特性を測定しうる。この特性は、例えば、排気流速、排気温度、EGR(例えば、低圧EGRおよび/または高圧EGR)を介して吸気側へと再循環させる排気量に対する触媒へと導かれる排気量などを含めうる。ルーチンは、注入量、注入流速、注入圧のような注入の詳細をも測定しうる。504において、排気と注入された還元剤とをさらに混合することを求めるかどうかを決定しうる。このように、混合状況は、測定された排気流の詳細および還元剤の注入の詳細から推測されうる。例えば、より高い注入圧によって、効果的に混合できる。同様に、注入された還元剤の気化率が上昇するために、より高い排気温度によって、効果的に混合できる。エンジン制御装置は、十分に還元剤の混合を行える排気温度・排気流速・タービン速度・ウェイストゲートの開度・注入圧の組み合わせの範囲を定めたルックアップテーブルを含みうる。一例を述べると、混合問題は、502において測定された、排気および注入のパラメータが所望の範囲/組み合わせ以外であるかどうかを特定しうる。一方、ウェイストゲートの開度が第一のしきい値を上回り、タービン速度が第二のしきい値を下回るかどうかによって混合問題を推測することができる。
【0054】
混合剤がもっと必要な場合、508において、ウェイストゲートの開度は、タービンを介してSCR触媒へと導かれる還元剤の量を増加するように調整されうる。一例を述べると、還元剤の混合度合を高めるために、ウェイストゲートの開度を減少しうる。反対に、これ以上混合剤が必要ない場合、506において、ウェイストゲートの開度は、タービンを介してSCR触媒へと導かれる還元剤の量を減少するように調整しうる。一例を述べると、ウェイストゲートの開度を増加すると、還元剤の混合度合は減少しうる。しかしながら、タービンを介して送りこまれる還元剤の量を変更することが、触媒へと送りこまれる還元剤の正味の量に影響しない場合があることを理解されたい。
【0055】
このように、エンジン制御装置は、排気タービンの上流に還元剤を注入するように設計され、タービンを介して、排気と注入された還元剤とを混合し、混合された還元剤を下流にある触媒へと送り込む場合がある。還元剤をタービンの上流に注入することによって、例えば、還元剤をタービンの下流に注入する場合と比較して、タービンを通ることによる排気温度の変化により、還元剤の気化率が上昇するように有利に用いることができる。具体的には、タービンの上流でのより高い排気温度によって、注入された還元剤の気化率が上昇するように用いることができ、その結果、排気との混合を促進する。加えて、タービンブレードおよびタービンベーンを通った乱流によって、注入された還元剤を微粒子化し、さらに混合しやすくすることができる。さらに、混合機や混合部を設けることなく、注入された還元剤の混合を促進することによって、構成要素およびコスト削減をなしうる。そうして、よく混合された還元剤が、より低い排気温度でタービンの下流にあるSCR触媒へと送り込まれ、その結果、温度超過による触媒問題は減少する。ウェイストゲートの調整は、図3で上記に詳しく述べたとおり、親ルーチン300の326において、調整されうる。
【0056】
図6を参照すると、ルーチン600は、ウェイストゲートの開度を調整し、それによって所望の触媒温度または温度範囲へとSCR触媒温度を調整するのを図示している。ルーチン600は、制御ルーチン300の一部分、具体的には320において行われうる。
【0057】
602において、SCR触媒温度(Tcat)がしきい値の温度または温度範囲を下回るかどうかを決定しうる。もし、触媒温度がしきい値の温度を下回るなら、604において、ルーチンは、ウェイストゲート以外の温度アクチュエータの調整が制限されるかどうかを判定しうる。例えば、ウェイストゲート以外のアクチュエータを触媒温度に影響を与えるように調整する場合、第一の方法として、そのような他のアクチュエータを温度問題に対処するために用いる場合がある。したがって、触媒温度を調整し、所望の温度範囲に導くために、ウェイストゲート以外のアクチュエータ(例えば、噴射のタイミング)が、調整に使用できるのであれば、606において、ルーチンは、ウェイストゲート以外の温度アクチュエータで触媒温度問題に対処しうる。
【0058】
反対に、ウェイストゲート以外の全ての温度アクチュエータの調整が制限されている(例えば、燃焼安定限界、トルク制御、エミッションコントロールのため、など)のであれば、608において、ルーチンは、ウェイストゲートの調整で触媒温度問題に対処しうる。具体的には、ウェイストゲートの開度を調整(例えば、増加)し、その結果、ウェイストゲートを介して触媒へと流れる排気流を増加する。一例を述べると、調整は触媒温度に基づいて行われうる。他の例では、調整は排気温度に基づいて行われ、排気温度から触媒温度を推測しうる。さらに他の例では、上流にあるパティキュレートフィルタの再生度合に基づいて調整は行われうる。調整は、例えば、触媒温度が所望の触媒温度を下回る場合、ウェイストゲートの開度を増加することを含み、触媒温度が所望の触媒温度を上回る場合、ウェイストゲートの開度を減少することを含みうる。他の例では、調整は、フィルタ再生中、ウェイストゲートの開度を増加することをさらに含みうる。例えば、フィルタ再生中、下流にあるタービン(例えばタービン54)で、温度超過が起こる危険性がありうる。したがって、一定の条件の下で、フィルタ再生中に温度超過しないようにするため、ウェイストゲートの開度を増加する場合がある。
【0059】
SCR触媒温度が所望の温度を下回ることに応じて、ウェイストゲートは、排気の大部分が、タービンを経由せずに、触媒に直接達するように調整されうる。このように、タービンを通過中に、タービンによって加熱排気から少なくとも一部の熱を取り出しうる。したがって、タービンを通って触媒に達する排気温度は、ウェイストゲートを介して触媒に達する排気温度よりも低い場合がある。所望の作動温度よりも下回る場合に、ウェイストゲートを介して触媒に達する加熱排気の量を増加することによって、触媒温度を上昇させうる。このことを考慮したウェイストゲートの調整は、図3で上記に詳しく述べたとおり、親ルーチン300の、具体的には326において補正される場合がある。一部の例では、ウェイストゲートの調整は、さらに、ターボチャージャーのブーストおよび速度に依存する場合がある。例えば、ターボチャージャーの温度条件を超えるのを回避し、ブーストの要求を満たすために、ウェイストゲートバルブを調整しうる。
【0060】
このように、タービンのウェイストゲートは、下流にあるSCR触媒へと送り込まれる加熱排気の量を調整するのに有利に用いられ、その結果、触媒温度を制御しうる。上流にあるパティキュレートフィルタの作動モードに基づいて、ウェイストゲートの初期開度を調整し、そしてその後、フィルタ再生中に使われ、ウェイストゲートを介して触媒へと送りこまれる高温の排気の量を調整し、様々なエミッションコントロールデバイスの作動を共に組み合わせながら、ウェイストゲートの開度を調整することによって触媒温度を調整しうる。タービンの上流への還元剤の注入を調整することによって、最終的なウェイストゲートの開度に基づいて、図7に詳しく述べるとおり、触媒へと送りこまれる還元剤の量をも制御しうる。SCR触媒の温度およびSCR触媒へ投与する還元剤の量を制御することによって、触媒の性能は向上し、排気中のNOx含有量を減少させうる。
【0061】
図7を参照すると、ルーチン700は、ウェイストゲートの調整に応じて、タービンの上流に注入する還元剤の量を調整し、それによって、下流にあるSCR触媒に送る還元剤の量を調整するのを図示している。ルーチン700は、制御ルーチン300の一部分、具体的には324において行われうる。具体的には、還元剤の注入によって、先のウェイストゲートの調整から生じたブーストの変化を補いうる。
【0062】
702において、ルーチンは、エンジン作動状況に基づいて、還元剤の初期注入量を決定しうる。例えば、運転者のトルク要求に応じて推測されるブースト、SCR触媒・触媒温度・排気NOxレベルなどで既に決められた還元剤の注入量に基づいて、還元剤の初期注入量を調整しうる。704において、ルーチンは、ブーストに何らかの変化があるかどうかを判定しうる。例えば、上述のウェイストゲートの調整(図3の312〜322に詳しく述べた通り)が原因で、何らかのブーストの変化が生じる、または、生じると推測できるかどうかを判定しうる。あるいは、何か突然の、または、一時的なブーストの変化(例えば、突然のブーストの一時的な低下)があるかどうかを判定しうる。706において、還元剤の初期注入量を、ブーストの変化に基づいて調整しうる。一例を述べると、調整は、ブーストがしきい値を下回って低下する(例えば、突然のブーストの低下中)場合、注入される還元剤の量が一時的に減少することも含みうる。ブーストが目標値に戻った場合に、注入の調整を止める場合がある。代替的な実施形態では、調整は、ウェイストゲートの開度が減少する場合、還元剤の注入量を増加し、ウェイストゲートの開度が増加する場合、注入される還元剤の量を減少させること、タービン速度が上昇する場合、還元剤の注入量を増加させること、および/または、ブーストの存在下、還元剤の注入量を増加させることを含みうる。このように、エンジン制御装置は、上述のウェイストゲートの調整に基づいて、排気に注入される還元剤の量を調整するよう設計しうる。
【0063】
図8を参照すると、ルーチン800は、エンジン作動状況に基づいて、フィルタ再生作動中、高圧EGR通路および低圧EGR通路を介して吸気側に再循環される排気の比率を調整するのを図示している。ルーチン800は、制御ルーチン300の一部分、具体的には328において行われうる。
【0064】
802において、高圧EGRが実行中であるか、高圧EGRが要求されているかを判定しうる。高圧EGR中は、タービンの上流かつパティキュレートフィルタの下流である位置から、高圧EGR通路を介して、吸気側のコンプレッサの下流へと少なくとも排気の一部を分流しうる。一例を述べると、しきい値を上回る排気NOxレベルが原因で、高圧EGRが実行される(または、要求される)場合がある。もし、高圧EGR中であれば、804において、フィルタ再生の詳細を判定する。これには、例えば、再生量、再生率、再生中の排気温度、再生中の排気流速、蓄積される微粒子の量、推測される再生時間などを含みうる。806において、ルーチンは、推測されるフィルタの作動状況(例えば、フィルタ温度および/またはフィルタ再生中か否か)に基づいて、分流される排気の量を調整しうる。具体的には、フィルタ再生中の高圧EGRに応じて、ルーチンは、再生の詳細に基づいて、高圧EGRの量および/または率を調整するために、高圧EGRバルブを調整しうる。
【0065】
一例を述べると、もし、フィルタ再生開始時に高圧EGR実行中であるなら、フィルタ再生中に排気が加熱されることを見込んで、高圧EGRバルブの開度を減少することによって、タービンの上流かつフィルタの下流である位置から、吸気側へと再循環させる総EGR量を減少しうる。例えば、高圧EGRバルブ29の開度を減少することによって、EGR通路63を介して分流される加熱排気の量を減少しうる。さらに、クーラバイパスを通るEGR流をそれに応じて調整しうる。一例を述べると、例えば、高圧EGRバルブを完全に閉じることにより、実質的に排気を高圧EGRを介して吸気側へと分流しない場合もある。フィルタ再生中、吸気側へ再循環される加熱排気の量を減らすことによって、排気NOxおよびエンジン性能での高温のEGR流の好ましくない働きを抑えることができる。さらに、EGRクーラでの熱需要をも減らしうるので、それによってエンジン燃料効率を向上することができる。
【0066】
他の例では、フィルタ再生終了時に高圧EGRを実行中であるなら、フィルタ再生後に排気が冷却することを見込んで、高圧EGRバルブの開度を増加することによって、タービンの上流かつフィルタの下流である位置から吸気側へと再循環させる総EGR量を増加させうる。例えば、高圧EGRバルブ29の開度を増加させることによって、(EGR通路63を介して)分流される加熱排気の量を増加させうる。さらに、クーラバイパスを通るEGR流をそれに応じて調整しうる。フィルタを通過して吸気側へ再循環される加熱排気の量を増加することによって、浄化されたEGR流を吸気側へ供給し、その結果、EGRクーラ、EGRバルブ、および吸気マニホールドの劣化を抑制することができ、エンジン性能および排気を改善することができる。
【0067】
このように、フィルタ再生の開始時および停止時の排気温度の変化量は、フィルタ再生の途中における排気温度の変化量よりも大きい場合がある。結果として、フィルタ再生の開始時および停止時におけるEGRの調整量は、フィルタ再生の途中におけるEGRの調整量よりも大きい場合がある。一例を述べると、排気温度のプロファイルに基づいて、EGRの調整を徐々に行いうる。
【0068】
代替的な実施形態では、フィルタの作動モードに応じて、調整を行う場合がある。例えば、フィルタに微粒子を蓄積している場合(蓄積モード)、分流される排気の量を増加し、フィルタを再生している場合(再生モード)、分流される排気の量を減少することがありうる。さらに他の例では、フィルタ温度に応じて、調整を行う場合がある。例えば、フィルタ温度がしきい値を下回る場合、分流される排気の量を増加し、フィルタ温度がしきい値を上回る場合、分流される排気の量を減少しうる。
【0069】
808について、高圧EGRの量の変化に基づいて、低圧EGRの量を調整しうる。具体的には、第一の排気は、パティキュレートフィルタの下流かつタービンの上流である位置から吸気システムへと分流された(高圧EGR)後、第二の排気は、パティキュレートフィルタの下流かつタービンの下流である位置から吸気システムへと分流される(低圧EGR)。第一の排気の量はパティキュレートフィルタの再生比率に基づいて決められ、第二の排気の量は第一の排気の量の調整と反対になるように調整される。さらに、図6で上述したように、総EGR流は、パティキュレートフィルタの再生が行われるか否かに左右されうる。
【0070】
一例を述べると、高圧EGRの低圧EGRに対する比率は、最終的に求められるEGRの率や質量燃焼割合や吸気酸素濃度を維持するように調整されうる。他の例では、その比率は、所望のマニホールド温度に達するように調整されうる。例えば、フィルタを再生している間、高圧EGRによって、吸気マニホールドが比較的高い温度(例えば、しきい値よりも高い温度)となる場合、ルーチンは高圧EGRの量を減少し、それに応じて、低圧EGRの量を増加する場合がある。他の例では、フィルタを再生している間、高圧EGRによって、吸気マニホールドが比較的低い温度(例えば、しきい値よりも低い温度)となる場合、ルーチンは高圧EGRの量を増加し、それに応じて、低圧EGRの量を減少する場合がある。
【0071】
このように、フィルタ再生状況に基づいて、高圧EGRと低圧EGRの量を調整することによって、排気を浄化し、様々なエミッションコントロールデバイスとEGRとを調整して作動しうる。
【0072】
本明細書に含まれる制御例および推定ルーチンは、様々なエンジンおよび/または車両システム構成と共に使用することができる。本明細書に記載されている特定のルーチンは、例えば、イベント駆動型、割り込み駆動型、マルチタスク型、マルチスレッディングなどの処理方法のうち少なくとも一つであればよい。このように、例示される様々な作動、操作、機能は、連続して、並列に実行されるか、または場合によっては省略される。同様に、処理の順序は、記載された実施例の特徴および効果を達成するために必ずしも必要という訳ではないが、図例および説明を容易化するために提供される。少なくとも一つの例示された作動または機能は、使用されている特定の方法に基づいて繰り返し実行されうる。さらに、記載されている作動は、エンジン制御システムにおけるコンピュータが読み込み可能なストレージ媒体にプログラムされたコードを図式的に表したものである。
【0073】
本明細書において開示される構成およびルーチンは実際には例示に過ぎず、これらの特定の具体例に限定されることなく、様々なバリエーションが可能であることは言うまでもない。例えば、上記技術は、V−6、I−4、I−6、V−12、対向型−4および他のエンジンタイプにも適用することができる。本開示の主題は、全ての新しくそして非自明の組み合わせ、および、様々なシステム、構成の一部の組合せ、および、本明細書に記載された他の特徴、機能、および/または、特性の組合せを含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターボチャージャー用タービンの上流に設けられたパティキュレートフィルタと、
上記タービンの下流に設けられた触媒と、
エンジン排気側とエンジン吸気側とを連結するEGR通路とを備えたターボチャージャー付きエンジンの作動方法であって、
上記フィルタの下流から上記EGR通路を介して上記吸気側へと排気を分流し、フィルタ作動状況に基づいて、上記分流される排気の量を調整する
ことを特徴とするエンジンの作動方法。
【請求項2】
請求項1に記載のエンジンの作動方法において、
上記フィルタ作動状況は、フィルタ温度および/またはフィルタ再生中か否かを含む
ことを特徴とするエンジンの作動方法。
【請求項3】
請求項2に記載のエンジンの作動方法において、
上記吸気側への排気の分流は、上記タービンの上流から、吸気側のターボチャージャー用コンプレッサの下流へと排気を分流することを含む
ことを特徴とするエンジンの作動方法。
【請求項4】
請求項3に記載のエンジンの作動方法において、
上記調整は、フィルタ温度がしきい値を上回る場合、分流される排気の量を減少し、フィルタ温度が上記しきい値を下回る場合、分流される排気の量を増加することを含む
ことを特徴とするエンジンの作動方法。
【請求項5】
請求項3に記載のエンジンの作動方法において、
上記調整は、上記フィルタに微粒子を蓄積している場合、分流される排気の量を増加し、上記フィルタを再生している場合、分流される排気の量を減少することを含む
ことを特徴とするエンジンの作動方法。
【請求項6】
請求項1に記載のエンジンの作動方法において、
上記EGR通路は、EGRバルブを備え、
分流される排気の量を調整することは、分流される上記排気の量を減少させるために、上記EGRバルブの開度を減少し、分流される上記排気の量を増加させるために、上記EGRバルブの開度を増加することを含む
ことを特徴とするエンジンの作動方法。
【請求項7】
請求項6に記載のエンジンの作動方法において、
上記EGR通路は、さらにEGRクーラを備える
ことを特徴とするエンジンの作動方法。
【請求項8】
ターボチャージャー用タービンの上流に設けられたパティキュレートフィルタと、
上記タービンの下流に設けられた触媒と、
エンジン排気側とエンジン吸気側とを連結するEGR通路とを備えたターボチャージャー付きエンジンの作動方法であって、
上記パティキュレートフィルタの下流かつ上記タービンの上流である位置から吸気側へと少なくとも一部の排気を分流し、上記パティキュレートフィルタの下流かつ上記タービンの下流である位置から吸気側へと少なくとも一部の排気を分流する
ことを特徴とするエンジンの作動方法。
【請求項9】
請求項8に記載のエンジンの作動方法において、
少なくとも一部の排気を分流することは、上記フィルタを通って浄化された上記排気を分流することを含む
ことを特徴とするエンジンの作動方法。
【請求項10】
請求項8に記載のエンジンの作動方法において、
上記パティキュレートフィルタの下流かつ上記タービンの上流である位置から上記吸気側へと少なくとも一部の排気を分流することは、上記吸気側のターボチャージャー用のコンプレッサの下流へと排気を分流することを含む
ことを特徴とするエンジンの作動方法。
【請求項11】
請求項8に記載のエンジンの作動方法において、
上記パティキュレートフィルタの下流かつ上記タービンの下流である位置から上記吸気側へと少なくとも一部の排気を分流することは、上記吸気側のターボチャージャー用のコンプレッサの上流へと排気を分流することを含む
ことを特徴とするエンジンの作動方法。
【請求項12】
請求項8に記載のエンジンの作動方法において、
第一条件では、上記パティキュレートフィルタの下流かつ上記タービンの上流である位置から上記吸気側へと少なくとも一部の排気の分流が行われ、第二条件では、上記パティキュレートフィルタの下流かつ上記タービンの下流である位置から上記吸気側へと少なくとも一部の排気の分流が行われる
ことを特徴とするエンジンの作動方法。
【請求項13】
請求項12に記載のエンジンの作動方法において、
上記第二条件は、排気温度がしきい値を上回る、および/または、ターボチャージャーによるブーストがある
ことを特徴とするエンジンの作動方法。
【請求項14】
請求項13に記載のエンジンの作動方法において、
上記第二条件では、上記パティキュレートフィルタの下流かつ上記タービンの上流である位置から上記吸気側へと排気を分流せず、かつ、第一条件は、ブーストがないことを含む
ことを特徴とするエンジンの作動方法。
【請求項15】
請求項8に記載のエンジンの作動方法において、
上記パティキュレートフィルタの再生度合に基づいて、上記パティキュレートフィルタの下流かつ上記タービンの上流である位置から上記吸気側へと分流される第一の排気の量を調整し、さらに上記パティキュレートフィルタの下流かつ上記タービンの下流である位置から上記吸気側へと分流される第二の排気の量を第一の排気の量の上記調整と反対になるように調整することをさらに含む
ことを特徴とするエンジンの作動方法。
【請求項16】
請求項8に記載のエンジンの作動方法において、
上記パティキュレートフィルタの下流かつ上記タービンの上流である位置から上記吸気側への少なくとも一部の排気の分流は、排気温度およびフィルタの作動モードの少なくとも一に基づいて調整する
ことを特徴とするエンジンの作動方法。
【請求項17】
請求項16に記載のエンジンの作動方法において、
上記調整は、上記排気温度がしきい値を下回る場合、および/または上記フィルタが蓄積モードである場合、分流される排気の量を増加することを含む
ことを特徴とするエンジンの作動方法。
【請求項18】
請求項16に記載のエンジンの作動方法において、
上記調整は、上記排気温度がしきい値を上回る場合、および/または上記フィルタが再生モードである場合、分流される排気の量を減少することを含む
ことを特徴とするエンジンの作動方法。
【請求項19】
吸気系と排気系とを有するエンジンと、
タービンとコンプレッサとを有するターボチャージャーと、
排気の少なくとも一部を排気側から吸気側へと送るためのEGR通路と、
上記タービンの上流に設けられたパティキュレートフィルタと、
タービンの下流に設けられたSCR触媒と、
上記フィルタの下流から上記EGR通路を介して上記吸気側へと排気を分流し、フィルタ再生度合に基づいて、分流される排気の量を調整するように設計された制御システムと
を備えた車両システム。
【請求項20】
請求項19に記載の車両システムにおいて、
上記フィルタの下流かつ上記タービンの上流である位置に還元剤を注入する還元剤注入装置をさらに備える
ことを特徴とする車両システム。
【請求項21】
請求項19に記載の車両システムにおいて、
排気を吸気側へと分流することは、上記タービンの下流から上記コンプレッサの上流へと排気を分流することを含む
ことを特徴とする車両システム。
【請求項22】
請求項19に記載の車両システムにおいて、
上記調整は、フィルタ温度がしきい値を下回る場合、分流される排気の量を増加し、フィルタ温度が上記しきい値を上回る場合、分流される排気の量を減少することを含む
ことを特徴とする車両システム。
【請求項23】
請求項19に記載の車両システムにおいて、
上記調整は、フィルタの再生度合が増大するにしたがって、分流される排気の量を減少することを含む
ことを特徴とする車両システム。
【請求項24】
請求項19に記載の車両システムにおいて、
上記調整は、上記EGR通路において、EGRバルブの開度を調整することを含む
ことを特徴とする車両システム。
【請求項25】
ターボチャージャー用のタービンの下流に設けられたSCR触媒と、上記タービンの上流に設けられたパティキュレートフィルタとを有する排気通路と、
新気を少なくとも一部含有する吸気を通すチャージエアクーラが設けられた吸気通路と、
排気通路上のタービンの上流と吸気通路上のチャージエアクーラの上流とを連結した高圧排気再循環システムとを備えたターボチャージャー付き内燃機関システム。
【請求項26】
請求項25に記載の内燃機関システムにおいて、
高圧排気再循環通路は排気再循環クーラを備えず、
チャージエアクーラと、調整バルブを設けた高圧排気再循環バイパス通路とを組み合わせてさらに備える
ことを特徴とする内燃機関システム。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−132946(P2011−132946A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−277087(P2010−277087)
【出願日】平成22年12月13日(2010.12.13)
【出願人】(503136222)フォード グローバル テクノロジーズ、リミテッド ライアビリティ カンパニー (236)
【Fターム(参考)】