説明

エレベータのガイドレール据付精度測定装置

【課題】より精度の高いエレベータのガイドレール据付精度測定装置を提供する。
【解決手段】エレベータのガイドレール1aとかご2との変位距離を検出しガイドレール変位信号を出力するガイドレール変位検出手段101,102と、ガイドレールの昇降路内への据付時の位置の基準となる昇降路の頂部から底部まで垂下されたピアノ線7と、このピアノ線とかごとの間隔の変位距離を検出しかご変位信号を出力するかご変位検出手段103,104と、かご変位検出手段からのかご変位信号とガイドレール変位検出手段からのガイドレール変位信号からガイドレールの精度を演算して求める精度測定手段120と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エレベータのガイドレール据付精度測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エレベータのガイドレールとかごとの変位寸法を検出してガイドレールの変位信号を出力するガイドレール変位検出器と、昇降路の頂部から垂下させた金属テープとかごとの間隔の変位距離を検出してかごの変位距離信号を出力するかご変位検出器と、かご変位検出器より出力されたかごの変位距離信号とガイドレール変位検出器より出力されたガイドレールの変位信号とを受けてガイドレールの据付精度を演算する演算器と、を基本構成とする、エレベータのガイドレール据付精度測定装置があった(例えば特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平1−321283号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように従来のエレベータのガイドレール据付精度測定装置においては、ガイドレール据付時の位置の基準となる昇降路の頂部から底部まで垂下させたピアノ線は細いために、その位置の測定が困難であるため、上述の金属テープのような別の基準となるものを新に設け、これに基づいてガイドレールの据付精度の測定等を行っていた。しかしながら、このように新な基準を設ければそこで新たな誤差が発生することは当然である。
【0005】
この発明は上記の課題を解消するものであり、より精度の高いエレベータのガイドレール据付精度測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、エレベータのガイドレールとかごとの変位距離を検出しガイドレール変位信号を出力するガイドレール変位検出手段と、ガイドレールの昇降路内への据付時の位置の基準となる昇降路の頂部から底部まで垂下されたピアノ線と、このピアノ線とかごとの間隔の変位距離を検出しかご変位信号を出力するかご変位検出手段と、上記かご変位検出手段からのかご変位信号と上記ガイドレール変位検出手段からのガイドレール変位信号からガイドレールの精度を演算して求める精度測定手段と、を備えたことを特徴とするエレベータのガイドレール据付精度測定装置にある。
【発明の効果】
【0007】
この発明では、ガイドレールの昇降路内への据付時の位置の基準となるピアノ線の位置をもとにガイドレール据付精度測定するので、より精度の高いエレベータのガイドレール据付精度測定装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施の形態1.
図1はこの発明によるエレベータのガイドレール据付精度測定装置100を一方のガイドレール1aの据付精度を測定するために取り付けた状態の昇降路内のかごを示す側面図である。主ロープ3を駆動する巻上機(図示せず)で駆動されるかご2は、上下のそれぞれの両側に設けられたガイドシュー4を両側のガイドレール1a,1bに摺動させながら昇降路内を昇降する。ガイドレール1a,1bは昇降路壁上に水平方向に延びるブラケット5にボルト等で固定され、またジョイント部6は固定金具6aおよびボルト6aで固定されている。図1においてガイドレール1aの裏側にあるピアノ線7は、ガイドレール1aの昇降路内への据付時に位置の基準として昇降路の昇降路壁近傍に頂部から底部まで垂下されて固定されたものである。ピアノ線7aは同様のガイドレール1bのためのものである。そして図1では、ガイドレール1aについて据付精度測定を行うために、ガイドレール据付精度測定装置100のセンサ群からなる検出部110がかご2の上側のガイドレール1a側のガイドシュー4上に取り付けられ、例えば昇降路の下部にある測定装置本体120にコード130により接続されている。
【0009】
図2は、図1の検出部110の付近を図1の矢印Aの方向から見た上面図で、特に各種センサの取り付け位置を示すものである。また図3は、後述するかご変位検出用のX軸方向センサ103とY軸方向センサ104の図2のガイドシュー4上の実際の測定時の取り付け状態を示し、図3の(a)(b)は図2のそれぞれ矢印B、Cの方向から見た側面図である。そして図4は、ガイドレール据付精度測定装置100の全体構成の一例を示す図である。
【0010】
図2のガイドシュー4上において、ガイドレール1a又は1bとかご2との変位距離(XG、YG)を検出しガイドレール変位信号を出力するガイドレール変位検出手段を構成するX軸方向レールセンサ101とY軸方向レールセンサ102は、ガイドレール1aの一方の側面とかご側面との変位距離を測定する位置にそれぞれ固定されている。これらのセンサ101,102は、例えば照射光とこれの被測定面での反射光から三角測距方式等により変位距離を求める変位センサからなり、具体例として例えば、OMRON社製、LED式変位センサ、Z4W−V等からなる。
【0011】
ピアノ線7とかご2との間隔の変位距離(XC、YC)を検出し相対的なかご変位信号を出力するかご変位検出手段を構成するX軸方向ピアノ線センサ103とY軸方向ピアノ線センサ104は、それぞれのセンサのピアノ線7に面した測定面に沿った方向のピアノ線7の変位を測定する位置にそれぞれ固定されている。これらのセンサ103,104は細いものでも測定可能な分解能の高い高精度のセンサからなり、例えばそれぞれ発光部103a,104aと受光部103b,104bを含み、図5にセンサ104を例に挙げて示すように、平行ビームの端からビーム中の例えばピアノ線7によって遮られた最初のエッジから最後のエッジの中央までの幅Wを検出する平行光ラインセンサ、具体的には例えば、OMRON社製、平行光ラインセンサ、Z4LC等からなる。
【0012】
図3に示すように、X軸方向センサ103は、発光部103aおよび受光部103bがガイドシュー4上のセンサ固定板123の縦板123bに、ピアノ線7のかご側で縦に重なるように固定され、反射板103cがピアノ線7に対して発光部103aおよび受光部103bと反対側の昇降路壁(図示省略)側にくるように縦板123b上に固定されている。反射板103cを設けたのは、ピアノ線7と昇降路壁側のブラケット5との間のスペースが狭く干渉を防止するためである。Y軸方向センサ104は、発光部104aおよび受光部104bがピアノ線7を間に挟むようにしてX軸方向に沿ってセンサ固定板123の横板123a上に固定されている。横板123aは上面図がU字形でU字部の中央をピアノ線7が通るようにされている。
【0013】
かご2の昇降路内の走行方向の位置を検出するかご走行方向位置検出手段を構成するジョイントセンサ105およびブラケットセンサ106は、昇降路側のジョイント部6の固定金具6a又はボルト6bおよびブラケット5が検出可能なガイドシュー4上の位置にそれぞれ固定され、昇降路内の走行方向のジョイント位置(J)、ブラケット位置(B)を検出する。これらは例えば距離設定形光電スイッチ、具体的には例えば、OMRON社製、距離設定形光電スイッチ、E3Z−LS等からなる。なお図2の上面図では説明の便宜上、ブラケット5とジョイント部6を同じ位置に示した。
【0014】
これらの各センサ101〜106の出力はコード130により測定装置本体120に接続されている。測定装置本体120は、各センサ101〜106からの、ガイドレール1a又は1bとかご2との変位距離(XG、YG)であるガイドレール変位信号と、ピアノ線7とかご2との間隔の変位距離(XC、YC)であるかご変位信号とからガイドレールの精度を演算して求める精度測定手段を構成する制御部121と、測定結果をかご走行方向のジョイント位置(J)、ブラケット位置(B)と共に表示する表示手段を構成する表示部122とからなり、これらは例えばコンピュータと表示装置からなる。
【0015】
図6に測定装置本体120の制御部121の動作の一例を示すフローチャートを示し、以下のその動作を説明する。ガイドレール据付精度測定はかご2を昇降路を走行させながら行う。かご2を走行させ、例えば最初のブラケット5をブラケットセンサ106が検出すると測定開始となる(ステップS1)。そして例えば制御部121で記憶されている検出されたブラケット数を”0”にリセットする(ステップS2)。まずX軸方向レールセンサ101の出力(XG)からX軸方向ピアノ線センサ103の出力(XC)を差し引いた値が、ガイドレール1aの変位検出値からかご2の揺れによる変位値を差し引いたガイドレール1aのX軸方向の真の変位として求められ(ステップS3)、次にY軸方向レールセンサ102の出力(YG)からY軸方向ピアノ線センサ104の出力(YC)を差し引いた値が、ガイドレール1aの変位検出値からかご2の揺れによる変位値を差し引いたガイドレール1aのY軸方向の真の変位として求められる(ステップS4)。
【0016】
次にジョイントセンサ105の出力(J)およびブラケットセンサ106の出力(G)を得る(ステップS5,S6)。そしてステップS3,S4で得られたガイドレール1aのX軸、Y軸方向のそれぞれの真の変位を、ジョイントセンサ105の出力(J)およびブラケットセンサ106の出力(G)と共に表示部122に時系列的に表示する(ステップS7)。そしてこの時点で、検出されたブラケット数がまだ所定値以上になっていなければ(ステップS8)、このサイクルでブラケットを検出したが否かを判定し(ステップS9)、検出されていなければステップS3に戻り、検出されていれば検出ブラケット数を”1”カウントアップしてステップS3に戻る(ステップS10)。そしてステップS8で、検出されたブラケット数が所定値以上になっていれば(ステップS8)、例えばかご2が昇降路中の測定範囲外に達したと判断して測定を終了する。なお、ステップS3からステップS6までの処理は、これらの処理が同時に行われたと見なされる程度の速度で実行される。ガイドレール据付精度測定の表示部122での表示の一例を図8に示す。縦の1目盛りが1mm、横の1目盛りが10秒を示し、XがガイドレールのX軸の変位、YはY軸の変位を示す。500はブラケット5の検出位置、600はジョイント部6の検出位置を示し、これらにより昇降路の走行方向すなわち縦位置のどこでの変位かが解る。
【0017】
なお、上記説明では測定の開始と終了をブラケット5の検出に基づいて行ったが、ブラケット5の代わりにジョイント部6の検出に基づいて行ってもよい。また、測定時間を予め設定して、その時間の間において行うようにしてもよい。
【0018】
また、測定装置本体120はより簡単な構成として図7に示すように、X軸方向レールセンサ101の出力(XG)からX軸方向ピアノ線センサ103の出力(XC)を差し引いた値を示す差動増幅器125、Y軸方向レールセンサ102の出力(YG)からY軸方向ピアノ線センサ104の出力(YC)を差し引いた値を示す差動増幅器126と、これらの2つの差動増幅器125,126の出力に、ジョイントセンサ105の出力(J)およびブラケットセンサ106の出力(G)を合わせて時系列的に表示する表示部122aとしてもよい。
【0019】
なお、ガイドレール1bの据付精度測定を行う場合には、図2に示す検出部110の各センサを図1に破線で示すように、ガイドレール1b側のガイドシュー4上に同様に取り付けることで、同様に据付精度測定を行うことができる。また、上記説明ではガイドレール据付精度測定装置100の検出部110を上側のガイドシュー4上に取り付けているが、下側のガイドシュー4上に同様に取り付けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明によるエレベータのガイドレール据付精度測定装置を取り付けた状態の昇降路内のかごを示す側面図である。
【図2】図1の検出部の付近を図1の矢印Aの方向から見た上面図である。
【図3】(a)は図2の矢印Bの方向から、(b)は図2の矢印Cの方向から見たそれぞれ側面図である。
【図4】この発明によるガイドレール据付精度測定装置の全体構成の一例を示す図である。
【図5】この発明で使用される平行光ラインセンサを説明するための図である。
【図6】この発明によるガイドレール据付精度測定装置の制御部の動作の一例を示すフローチャートである。
【図7】この発明によるガイドレール据付精度測定装置の測定装置本体の他の構成を示す図である。
【図8】この発明によるガイドレール据付精度測定の表示部での表示の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0021】
1a,1b ガイドレール、2 かご、3 主ロープ、4 ガイドシュー、5 ブラケット、6 ジョイント部、6a 固定金具、6b ボルト、7,7a ピアノ線、100 ガイドレール据付精度測定装置、101 X軸方向レールセンサ、102 Y軸方向レールセンサ、103 X軸方向ピアノ線センサ、103a,104a 発光部、103b,104b 受光部、103c 反射板、104 Y軸方向ピアノ線センサ、105 ジョイントセンサ、106 ブラケットセンサ、110 検出部、120 測定装置本体、121 制御部、122,122a 表示部、123 センサ固定板、123a 横板、123b 縦板、125,126 差動増幅器、130 コード。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータのガイドレールとかごとの変位距離を検出しガイドレール変位信号を出力するガイドレール変位検出手段と、
ガイドレールの昇降路内への据付時の位置の基準となる昇降路の頂部から底部まで垂下されたピアノ線と、
このピアノ線とかごとの間隔の変位距離を検出しかご変位信号を出力するかご変位検出手段と、
上記かご変位検出手段からのかご変位信号と上記ガイドレール変位検出手段からのガイドレール変位信号からガイドレールの精度を演算して求める精度測定手段と、
を備えたことを特徴とするエレベータのガイドレール据付精度測定装置。
【請求項2】
上記ガイドレール変位検出手段およびかご変位検出手段が、水平面内の上記かごの両側のガイドレールを結ぶY軸方向とこれに直交するX軸方向の双方の方向の変位を検出する2つのセンサをそれぞれ有することを特徴とする請求項1に記載のエレベータのガイドレール据付精度測定装置。
【請求項3】
上記ピアノ線が昇降路壁近傍に沿って延び、上記かご変位検出手段のセンサがそれぞれ発光部および受光部を含む平行光ラインセンサからなり、X軸方向の変位を検出するセンサが、発光部および受光部にさらに上記発光部からの光を反射させて受光部に導く反射板を含み、上記発光部および受光部が上記ピアノ線に対してかご側、上記反射板が上記ピアノ線に対して上記発光部および受光部と反対側に配置されていることを特徴とする請求項2に記載のエレベータのガイドレール据付精度測定装置。
【請求項4】
センサにより上記かごの昇降路内の走行方向の位置を検出するかご走行方向位置検出手段をさらに備え、上記精度測定手段が上記かごの走行方向の位置と合わせてガイドレールの精度を測定し、さらに測定結果を表示する表示手段を備えたことを特徴とする請求項2または3に記載のエレベータのガイドレール据付精度測定装置。
【請求項5】
上記各検出手段のセンサがかご側のガイドシュー上に固定されることを特徴とする請求項2ないし4のいずれか1項に記載のエレベータのガイドレール据付精度測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−8675(P2007−8675A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−192804(P2005−192804)
【出願日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】