説明

エンジン

【課題】複数の過給機を直列に配置するエンジンにおいて、エンジンの燃焼状態を最適にする過給圧において、少なくとも1つの過給機について、効率の良い流量で制御する手段を提供する。
【解決手段】直列に配置される高圧過給機及び低圧過給機と、過給圧を検出する過給圧検出手段と、を有するエンジン100において、少なくとも1つの前記過給機は、該過給機の排気経路3を短絡するバイパス経路4と、過給機回転数を検出する過給機回転数検出手段と、を備え、少なくとも過給機回転数に基づいて前記バイパス経路24を通過するバイパス流量を調整するバイパス流量調整手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の過給機を直列に配置するエンジンの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の過給機を直列に配置して備えるエンジンとして、二段式過給システムを備えるエンジンは公知である。二段式過給システムは、低圧過給機及び高圧過給機を組み合わせて、吸気経路及び排気経路に流量制御装置を設けるシステムである。流量制御装置として、過給機を短絡するバイパス経路、並びにバイパス経路のバイパス流量を調整するバイパス弁は公知である。特許文献1は、低圧過給機及び高圧過給機を組み合わせて、高圧過給機の吸気経路及び排気経路にバイパス経路を設け、低圧過給機の排気経路にバイパス経路を設ける2段式過給システムを備えるエンジンを開示している。
【0003】
しかし、特許文献1が開示する2段式過給システムを備えるエンジンは、吸入空気量把握手段としてエアフローセンサー(ブーストセンサー)によって、エンジンの燃焼状態を最適にする過給圧に制御しているのみである。ここで、2段式過給システムにおいて、低圧過給機と高圧過給機とは、1つの過給圧に対して複数の作動状態(流量、過給機回転数、効率)の組み合わせが存在する。そのため、ブーストセンサーのみで制御する2段式過給システムにおいて、エンジンの燃焼状態を最適にする過給圧に制御できるものの、低圧過給機又は高圧過給機について、それぞれ効率の良い流量で制御していない点で不利である。
【特許文献1】特開2004−92646号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、複数の過給機を直列に配置するエンジンにおいて、エンジンの燃焼状態を最適にする過給圧において、少なくとも1つの過給機について、効率の良い流量で制御する手段を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の解決しようとする課題を解決するための手段を説明する。
【0006】
請求項1においては、直列に配置される複数の過給機と、過給圧を検出する過給圧検出手段と、を有するエンジンにおいて、少なくとも1つの前記過給機は、該過給機の排気経路を短絡するバイパス経路と、過給機回転数を検出する過給機回転数検出手段と、を備え、少なくとも過給機回転数に基づいて前記バイパス経路を通過するバイパス流量を調整するバイパス流量調整手段と、を備えるものである。
【0007】
請求項2においては、請求項1記載のエンジンにおいて、少なくとも過給圧に基づいて吸気経路を通過する吸気流量を調整する吸気流量調整手段と、を備えるものである。
【0008】
請求項3においては、直列に配置される複数の過給機と、過給圧を検出する過給圧検出手段と、を有するエンジンにおいて、全ての前記過給機は、該過給機の排気経路を短絡するバイパス経路と、過給機回転数を検出する過給機回転数検出手段と、を備え、少なくとも過給圧及び過給機回転数に基づいて前記バイパス経路を通過するバイパス流量を調整するバイパス流量調整手段と、を備えるものである。
【0009】
請求項4においては、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のエンジンにおいて、少なくとも過給機回転数に基づいて燃料噴射特性を制御する燃料噴射特性制御手段を備えるものである。
【0010】
請求項5においては、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のエンジンにおいて、排気ガスを吸気側へ再循環させるEGR装置と、少なくとも過給圧及び過給機回転数に基づいて前記EGR装置を通過するEGR流量を調整するEGR流量調整手段と、を備えるものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0012】
請求項1においては、複数の過給機を直列に配置するエンジンにおいて、過給機回転数に基づいてバイパス経路を通過するバイパス流量を調整するため、エンジンの燃焼状態を最適にする過給圧において、少なくとも1つの過給機について、最も効率の良い流量で制御する手段を提供できる。
【0013】
請求項2においては、複数の過給機を直列に配置するエンジンにおいて、従来からある吸気流量調整手段を用いて過給圧を制御するため、吸気経路を短絡するバイパス経路を設ける必要がない。
【0014】
請求項3においては、複数の過給機を直列に配置するエンジンにおいて、過給機回転数に基づいてバイパス経路を通過するバイパス流量を調整するため、エンジンの燃焼状態を最適にする過給圧において、全ての過給機について、それぞれ最も効率の良い流量で制御する手段を提供できる。
【0015】
請求項4においては、複数の過給機を直列に配置するエンジンにおいて、過給機回転数に基づいて燃料噴射制御も行うため、エンジン出力を精度良く制御する手段を提供できる。
【0016】
請求項5においては、複数の過給機を直列に配置するエンジンにおいて、少なくとも過給圧及び過給機回転数に基づいて、EGR装置を通過するEGR流量を調整するため、EGR装置のEGR流量に基づくフィードバック制御を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明の実施形態1に係る2段式過給機システムを備えるエンジンの全体的な構成を示す構成図、図2は同じくエンジンの機能を示す構成図、図3はコンプレッサ性能曲線を示すグラフ図である。
図4はエンジンの過給機制御のフローを示すフロー図、図5は本発明の実施形態1に係る2段式過給機システムを備えるエンジンの全体的な構成を示した構成図、図6は同じくエンジンの機能を示す構成図である。
図7は同じく過給機制御のフローを示すフロー図、図8は本発明の実施形態3に係る2段式過給機システムを備えるエンジンの全体的な構成を示した構成図、図9は同じくエンジンの機能を示すフロー図である。図10は同じくEGR制御のフローを示すフロー図である。
【0018】
図1を用いて、本発明の実施形態1であるエンジン100の構成について説明する。エンジン100は、直噴式6気筒ディーゼルエンジンであって、吸気経路2が接続される吸気マニホールド12と、排気経路3が接続される排気マニホールド13と、コモンレールに蓄圧された燃料をインジェクタによって各気筒に噴射するコモンレール式燃料噴射装置(以下、燃料噴射装置)15と、を備えている。
【0019】
また、エンジン100は、二段式過給システム20を備えている。二段式過給システム20は、高圧コンプレッサ21と高圧ターボ22とからなる高圧過給機と、低圧コンプレッサ31と低圧ターボ32とからなる低圧過給機と、を直列に配置して備えている。
【0020】
吸気経路2は、上流側から吸気マニホールド12に向かって、低圧コンプレッサ31と、低圧コンプレッサ31で過給される空気を冷却するインタークーラー33と、高圧コンプレッサ21と、高圧コンプレッサ21で過給される空気を冷却するインタークーラー23と、吸気経路2を通過する吸気流量を調整する吸気絞り弁40と、を備えている。
【0021】
排気経路3は、排気マニホールド13から下流側に向かって、高圧ターボ22と、高圧過給機である高圧ターボ22を短絡するバイパス経路4と、バイパス経路4のバイパス流量を調整するバイパス弁24と、低圧ターボ32と、を備えている。
【0022】
Engine Control Unit(以下、ECU)60は、アンプ65を介して高圧コンプレッサ21に設けられるターボセンサー61と、吸気経路2において吸気絞り弁40の下流に設けられるブーストセンサー62と、バイパス弁24と、吸気絞り弁40と、燃料噴射装置15と、を接続して構成されている。
【0023】
図2を用いて、エンジン100の機能について説明する。エンジン100は、過給機回転数検出手段71と、過給圧検出手段72と、バイパス流量調整手段73と、吸気流量調整手段74と、燃料噴射特性制御手段79と、を備えている。
過給機回転数検出手段71は、ECU60がターボセンサー61によって高圧過給機の過給機回転数(ターボ回転数Nta)を検出する手段である。より詳しくは、過給機回転数検出手段71は、ターボセンサー61が高圧コンプレッサ21の1回転あたりの翼に対応するパルス信号を出力し、アンプ65がパルス信号をTransistor−Transistor Logic(TTL)信号に変換し、ECU60がTTL信号を高圧過給機の過給機回転数として検出する手段である。
【0024】
過給圧検出手段72は、ECU60がブーストセンサー62によって過給圧(ブースト圧Bpa)を検出する手段である。
バイパス流量調整手段73は、ECU60が、少なくとも高圧過給機の過給機回転数に基づいて、バイパス弁24によってバイパス経路4のバイパス流量を調整する手段である。
吸気流量調整手段74は、ECU60が、少なくとも過給圧に基づいて、吸気絞り弁40によって吸気経路2を通過する吸気流量を調整する手段である。
燃料噴射特性制御手段79については、詳しくは後述する。
【0025】
ここで、後述する過給機制御を行うにあたって、エンジン100の運転状態について説明する。まず、エンジン100は、バイパス弁24を全閉とし、吸気絞り弁40を全開としている。そのため、排気ガスは、全て高圧ターボ22に流入し、膨張した後に低圧ターボ32に流入して過給圧を発生させている。また、エンジン100は、上記状態から排気流量が増加すれば、バイパス弁24の開度を増加する。そのため、排気ガスの一部は、低圧ターボ32に直接流入し、低圧過給機の流量は増加する。
【0026】
さらに、エンジン100は、上記状態からさらに排気流量が増加すれば、高圧過給機は最高回転数に達するため、バイパス弁24の開度を増加する。そのため、余剰の排気ガスの全ては、低圧ターボ32に流入する。ここで、エンジン100は、後述する過給機制御によって、エンジン100の燃焼状態を最適にする過給圧において、高圧過給機について、最も効率の良い流量で制御する。
【0027】
図3に示すコンプレッサ性能曲線を用いて、後述する過給機制御におけるターボ回転数の役割について説明する。一般に過給機において、圧力比(過給圧)と、流量Qと、ターボ回転数Ntaと、過給機効率ηと、は複雑な相関を示している。また、コンプレッサ性能曲線は、過給機効率ηは中心に向かうほど効率が良く、ターボ回転数Ntaは圧力比(過給圧)と流量Qとに比例して大きくなることを示している。
【0028】
さらに、コンプレッサ性能曲線は、過給機において、1つの過給圧に対して複数の作動状態(流量、過給機回転数、効率)の組み合わせが存在することを示している。そこで、過給機は、過給圧が決定した場合に、過給機回転数に基づいて、効率を最大とする流量を決定することができる。
【0029】
図4を用いて、エンジン100の過給機制御について説明する。ECU60は、目標ブースト圧Bpatrgと、目標ターボ回転数ωctrgと、目標バイパス弁開度Ebyp_trgと、を算出する(S110)。
目標ブースト圧Bpatrgは、エンジン100の燃焼状態を最適にする過給圧として、指令噴射量と、エンジン回転数と、に基づいて、予めECU60に記憶されているマップから最適な過給圧が算出される。
目標ターボ回転数ωctrgは、高圧過給機について、最も効率良く作動する過給機回転数として、目標ブースト圧Bpatrgと、コンプレッサ性能曲線(図3参照)と、に基づいて算出される。
目標バイパス弁開度Ebyp_trgは、ターボ回転数Ntaが目標ターボ回転数ωctrgとなる開度として、ブースト圧Bpaと、指令噴射量と、エンジン回転数と、に基づいて予め記憶されている開度が算出される。
【0030】
ECU60は、条件(11)として、ブースト圧Bpaと目標ブースト圧Bpatrgとの差の絶対値が所定値α2より小さいかどうか、条件(12)として、ターボ回転数Ntaと目標ターボ回転数ωctrgとの差の絶対値が所定値α3より小さいかどうか、について判断する(S120)。
【0031】
ECU60は、S120において、条件(11)及び条件(12)を満足する場合は、現在エンジン100が燃焼状態を最適とする過給圧において、高圧過給機について、最も効率の良い流量を制御していると判断する。そこで、ECU60は、目標バイパス弁開度Ebyp_trgを現在のバイパス弁開度Ebyp_actに更新する(S130)。このようにして、エンジン100の経年劣化に対応した目標バイパス弁開度Ebyp_trgを設定できる。
【0032】
一方、ECU60は、S120において、条件(11)又は条件(12)を満足しない場合は、現在エンジン100が燃焼状態を最適とする過給圧ではない、或いは高圧過給機について、最も効率の良い流量で制御していないと判断する。そこで、ECU60は、吸気流量調整手段74によって(1)を満足するまで吸気絞り弁40を増減する(S140)。次にECU60は、バイパス流量調整手段73によって条件(12)を満足するまでバイパス弁24の開度調整を行う(S150)。
【0033】
ECU60は、S150を10回繰り返すことによっても条件(12)を満足しない場合は、ターボセンサー61が異常であると判断する(S160)。
【0034】
このようにして、二段式過給システム20を備えるエンジン100において、少なくともターボ回転数Ntaに基づいてバイパス経路4を通過するバイパス流量を調整するため、エンジンの燃焼状態を最適にする目標ブースト圧Bpatrgにおいて、高圧過給機について、最も効率の良い流量で制御できる手段を提供できる。また、従来からある吸気流量調整手段74を用いてブースト圧Bpaを制御するため、高圧過給機の吸気経路を短絡するバイパス経路を設ける必要がない。
【0035】
また、エンジン100の燃料噴射特性制御手段79について説明する(図2参照)。燃料噴射特性制御手段70は、ECU60が、エンジン回転数と、ブースト圧Bpaと、ターボ回転数Ntaとにより、指令噴射量を算出し、燃料噴射装置15によって噴射する。なお、この燃料噴射制御については、後述する実施形態2であるエンジン200、並びに実施形態3であるエンジン300についても適用できる。
【0036】
このようにして、二段式過給システム20を備えるエンジン100において、ターボ回転数Ntaに基づいて燃料噴射制御も行うため、エンジン出力を精度良く制御する手段を提供することができる。例えば、エンジン100を2台並列して備えるプレジャーボートにおいて、2台のエンジン出力を精度良く同一とすることができる。
【0037】
図5を用いて、本発明の実施形態2であるエンジン200について説明する。エンジン200は、直墳式6気筒ディーゼルエンジンであって、吸気経路2が接続される吸気マニホールド12と、排気経路3が接続される排気マニホールド13と、コモンレールに蓄圧された燃料を各気筒に備えられるインジェクタによって噴射する燃料噴射装置15と、を備えている。
【0038】
また、エンジン200は、二段式過給システム20を備えている。二段式過給システム20は、高圧コンプレッサ21と高圧ターボ22とからなる高圧過給機、並びに低圧コンプレッサ31と低圧ターボ32とからなる低圧過給機を直列に配置して構成されている。
【0039】
吸気経路2は、上流側から吸気マニホールド12に向かって、上述した低圧コンプレッサ31と、低圧コンプレッサ31で過給される空気を冷却するインタークーラー33と、上述した高圧コンプレッサ21と、高圧コンプレッサ21で過給される空気を冷却するインタークーラー23と、を備えている。
【0040】
排気経路3は、排気マニホールド13から下流側に向かって、上述した高圧ターボ22と、高圧過給機である高圧ターボ22を短絡する高圧バイパス経路4と、高圧バイパス経路4のバイパス流量を調整する高圧バイパス弁24と、上述した低圧ターボ32と、低圧過給機である低圧ターボ32を短絡する低圧バイパス経路7と、低圧バイパス経路7のバイパス流量を調整する低圧バイパス弁34と、を備えている。
【0041】
Engine Control Unit(以下、ECU)60は、アンプ65を介して高圧コンプレッサ21に設けられる高圧ターボセンサー61と、吸気経路2に設けられるブーストセンサー62と、アンプ65を介して低圧コンプレッサ32に設けられる低圧ターボセンサー63と、高圧バイパス弁24と、低圧バイパス弁34と、燃料噴射装置15と、を接続して構成されている。
【0042】
図6を用いて、エンジン200の機能について説明する。エンジン200は、高圧過給機回転数検出手段71と、低圧過給機回転数検出手段75と、過給圧検出手段72と、高圧バイパス流量調整手段73と、低圧バイパス流量調整手段76と、を備えている。
高圧過給機回転数検出手段71は、ECU60が高圧ターボセンサー61によって高圧過給機の過給機回転数(高圧ターボ回転数Nta_hp)を検出する手段である。より詳しくは、高圧過給機回転数検出手段71は、高圧ターボセンサー61が高圧コンプレッサ21の1回転あたりの翼に対応するパルス信号を出力し、アンプ65がパルス信号をTransistor−Transistor Logic(TTL)信号に変換し、ECU60がTTL信号を高圧過給機の過給機回転数として検出する手段である。
低圧過給機回転数検出手段75は、ECU60が低圧ターボセンサー63によって低圧過給機の過給機回転数(低圧ターボ回転数Nta_lp)を検出する手段である。
【0043】
過給圧検出手段72は、ECU60がブーストセンサー62によって過給圧(ブースト圧Bpa)を検出する手段である。
高圧バイパス流量調整手段73は、ECU60が、少なくとも高圧過給機の過給機回転数に基づいて、高圧バイパス弁24によって高圧バイパス経路4のバイパス流量を調整する手段である。
低圧バイパス流量調整手段76は、ECU60が、少なくとも低圧過給機の過給機回転数に基づいて、低圧バイパス弁34によって低圧バイパス経路7のバイパス流量を調整する手段である。
【0044】
ここで、エンジン200の運転状態について説明する。ECU60は、エンジン回転数が低くかつエンジン負荷が低い場合は、高圧バイパス弁24及び低圧バイパス弁34を全閉としている。ECU60は、上記状態からエンジン負荷が増加すれば、後述する過給機制御によって、高圧バイパス弁24及び低圧バイパス弁34を開き側に作動し、エンジン200の燃焼状態を最適にする過給圧において、高圧過給機及び低圧過給機を最も効率の良い流量で制御する。
【0045】
図7を用いて、エンジン200の過給機制御について説明する。ECU60は、目標ブースト圧Bpatrgと、目標高圧ターボ回転数ωctrg_hpと、目標低圧ターボ回転数ωctrg_lpと、目標高圧バイパス弁開度Ebyp_trg_hpと、目標低圧バイパス弁開度Ebyp_trg_lpと、を算出する(S210)。なお、それぞれの目標値の算出については実施形態1と同様であるため説明を省略する。
【0046】
ECU60は、ブースト圧Bpaと目標ブースト圧Bpatrgとの差の絶対値が所定値α6より小さいかどうかを判断する(S220)。
ここで、ECU60は、S220を満足する場合は、現在エンジン200が燃焼状態を最適とする過給圧に制御されていると判断する。
一方、ECU60は、S220を満足しない場合は、現在エンジン200が燃焼状態を最適とする過給圧に制御されていないと判断する。そこで、ECU60は、S220を満足するまで、高圧バイパス流量調整手段73と低圧バイパス流量調整手段76とによって、高圧バイパス弁24と低圧バイパス弁34との開度を調整する。
【0047】
ECU60は、条件(21)として、高圧ターボ回転数Nta_hpと目標高圧ターボ回転数ωctrg_hpとの差の絶対値が所定値α7より小さいかどうか、条件(22)として、低圧ターボ回転数Nta_lpと目標低圧ターボ回転数ωctrg_lpとの差の絶対値が所定値α8より小さいかどうかについて判断する(S240)。
【0048】
ここで、ECU60は、S240を満足する場合は、高圧過給機及び低圧過給機について、最も効率良い流量で制御していると判断する。そこで、ECU60は、目標高圧バイパス弁開度Ebyp_trg_hpを現在の高圧バイパス弁開度Ebyp_act_hpに、目標低圧バイパス弁開度Ebyp_trg_lpを現在の低圧バイパス弁開度Ebyp_act_lpに更新する(S270)。
一方、ECU60は、S240を満足しない場合は、高圧過給機及び低圧過給機について、最も効率の良い流量で制御していないと判断する。そこで、ECU60は、高圧バイパス流量調整手段73によって条件(21)を満足するまで高圧バイパス弁24の開度を調整し、低圧バイパス流量調整手段76によって条件(22)を満足するまで低圧バイパス弁34の開度を調整する(S250)。
【0049】
ECU60は、S250を10回繰り返すことによってもS240を満足しない場合は、高圧ターボセンサー61又は低圧ターボセンサー63が異常であると判断する(S260)。
【0050】
このようにして、二段式過給システム20を備えるエンジン200において、高圧ターボ回転数Nta_hpに基づいて高圧バイパス経路4を通過するバイパス流量を調整し、低圧ターボ回転数Nta_lpに基づいて低圧バイパス経路7を通過するバイパス流量を調整するため、エンジンの燃焼状態を最適にする目標ブースト圧Bpatrgにおいて、最も効率の良い流量で高圧過給機及び低圧過給機を制御できる。
【0051】
図8及び図9を用いて、本発明の実施形態3であるエンジン300について説明する。エンジン300は、実施形態1であるエンジン100において、EGR装置50と、EGR流量調整手段77と、を備えるエンジンである。
図8に示すように、EGR装置50は、排気ガスの一部を吸気側へ再循環させる装置である。また、EGR装置50は、排気マニホールド13と吸気マニホールド12とを短絡するEGR経路5において、排気マニホールド13から吸気マニホールド12に向かって、排気ガスを冷却するEGRクーラー53と、EGR流量を調整するEGR弁51を接続して構成されている。
図9に示すように、EGR流量調整手段77は、ECU60が、少なくとも過給機回転数に基づいて、EGR弁51によってEGR装置50を通過するEGR流量を調整する手段である。
【0052】
図10を用いて、エンジン300のEGR制御について説明する。まず、EGR制御における過給機回転数の役割について説明する。上述したように、一般に過給機において、1つの過給圧に対して複数の作動状態(流量、過給機回転数、効率)の組み合わせが存在する。そこで、過給圧及び過給機回転数が決定されれば、過給機を通過する流量が既存の計算式により求められる。
【0053】
ECU60は、目標EGR率EGR_1と、EGR率EGRactと、を算出する(S310)。
目標EGR率EGR_1は、エンジン300の燃焼状態を最適にするEGR率として、ブースト圧Bpaと、指令噴射量と、エンジン回転数と、に基づいて、予め記憶されている最適なEGR率が算出される。
EGR率EGRactは、排気流量Qair_wotとEGR流量Qair_actとによって算出される。排気流量Qair_wotは、EGR率が0のときの排気流量として、ブースト圧Bpaと、指令噴射量と、エンジン回転数とに基づいて、予め記憶されている流量が算出される。EGR流量Qair_actは、ブースト圧Bpaと、ターボ回転数Ntaと、排気ガス温度と排気ガス圧力とによって補正された密度と、に基づいて既存の計算式より流量が算出される。
【0054】
ECU60は、EGR率EGRactと目標EGR率EGR_1との差の絶対値が所定値α5より小さいかどうかについて判断する(S320)。次に、ECU60は、S320を満足しない場合は、EGR弁51の開度を調整する(S330)。次に、ECU60は、S330を10回繰り返すことによってもS320を満足しない場合は、EGR弁51が異常であると判断する(S340)。
【0055】
このようにして、二段式過給システム20を備えるエンジン300において、少なくともブースト圧Bpa及びターボ回転数Ntaに基づいて、EGR装置50を通過するEGR流量を調整するため、EGR装置50のEGR流量に基づくフィードバック制御を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の実施形態1に係る2段式過給機システムを備えるエンジンの全体的な構成を示す構成図。
【図2】同じくエンジンの機能を示す構成図。
【図3】コンプレッサ性能曲線を示すグラフ図。
【図4】エンジンの過給機制御のフローを示すフロー図。
【図5】本発明の実施形態1に係る2段式過給機システムを備えるエンジンの全体的な構成を示した構成図。
【図6】同じくエンジンの機能を示す構成図。
【図7】同じく過給機制御のフローを示すフロー図。
【図8】本発明の実施形態3に係る2段式過給機システムを備えるエンジンの全体的な構成を示した構成図。
【図9】同じくエンジンの機能を示すフロー図。
【図10】同じくEGR制御のフローを示すフロー図。
【符号の説明】
【0057】
2 吸気経路
3 排気経路
4 バイパス経路
12 吸気マニホールド
13 排気マニホールド
15 燃料噴射装置
20 二段式過給システム
21 高圧コンプレッサ
22 高圧ターボ
24 バイパス弁
31 低圧コンプレッサ
32 低圧ターボ
40 吸気絞り弁
50 EGR装置
60 Engine Control Unit
61 ターボセンサー
62 ブーストセンサー
71 過給機回転数検出手段
72 過給圧検出手段
73 バイパス流量調整手段
74 吸気流量調整手段
77 EGR流量調整手段
79 燃料噴射特性制御手段
100 エンジン
200 エンジン
300 エンジン


【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列に配置される複数の過給機と、
過給圧を検出する過給圧検出手段と、を有するエンジンにおいて、
少なくとも1つの前記過給機は、該過給機の排気経路を短絡するバイパス経路と、過給機回転数を検出する過給機回転数検出手段と、を備え、
少なくとも過給機回転数に基づいて前記バイパス経路を通過するバイパス流量を調整するバイパス流量調整手段と、を備えることを特徴とするエンジン。
【請求項2】
請求項1記載のエンジンにおいて、
少なくとも過給圧に基づいて吸気経路を通過する吸気流量を調整する吸気流量調整手段と、を備えることを特徴とするエンジン。
【請求項3】
直列に配置される複数の過給機と、
過給圧を検出する過給圧検出手段と、を有するエンジンにおいて、
全ての前記過給機は、該過給機の排気経路を短絡するバイパス経路と、過給機回転数を検出する過給機回転数検出手段と、を備え、
少なくとも過給圧及び過給機回転数に基づいて前記バイパス経路を通過するバイパス流量を調整するバイパス流量調整手段と、を備えることを特徴とするエンジン。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のエンジンにおいて、
少なくとも過給機回転数に基づいて燃料噴射特性を制御する燃料噴射特性制御手段を備えることを特徴とするエンジン。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のエンジンにおいて、
排気ガスを吸気側へ再循環させるEGR装置と、
少なくとも過給圧及び過給機回転数に基づいて前記EGR装置を通過するEGR流量を調整するEGR流量調整手段と、を備えることを特徴とするエンジン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−48104(P2010−48104A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−210947(P2008−210947)
【出願日】平成20年8月19日(2008.8.19)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】