説明

ステージ装置及びステージ装置におけるステージの位置決め制御方法

【課題】
可動テーブルの重量を増加させることなく、ステージ停止時における十分な制動力を発生するブレーキ機構を有するステージ装置を構成する。
【解決手段】
ステージ機構1は、Xベース120の上に固定されるX方向の案内機構としてのXガイド121と、これに拘束されてX方向に移動可能なXテーブル122と、これに可動部を固定されたXアクチュエータ123と、Xベース120の上に固定されたXテーブル122の制動機構であるXブレーキ124などから構成される。制御装置2は、ステージ停止時にXブレーキ124をXテーブル122の下面に押し付けて制動力を発生させ、ステージ停止後にはXアクチュエータをサーボ制御をオフにする位置決め制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、半導体製造分野における半導体の検査や評価に用いる電子顕微鏡装置の試料ステージとして好適なステージ装置、このステージ装置を備えた電子顕微鏡装置、およびステージ装置の位置決め制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の半導体素子の微細化に伴い、製造装置のみならず、検査や評価装置にもそれに対応した高精度化が要求されている。通常、半導体ウェハ上に形成したパターンの形状寸法が正しいか否かを評価するために、測長機能を備えた走査型電子顕微鏡(以下、測長SEMと称す)が用いられている。
【0003】
測長SEMでは、ウェハ上に電子線を照射し、得られた二次電子信号を画像処理し、その明暗の変化からパターンのエッジを判別して寸法を導き出している。ここで、前記した半導体素子の微細化に対応するためには、高い観察倍率において、よりノイズの少ない二次電子像を得ることが重要である。そこで、二次電子像を何枚も重ね合わせてコントラストを向上させる必要があり、ウェハを搭載保持している試料ステージには、ナノメートルオーダの振動やドリフトを抑えることが要求される。
【0004】
このような振動やドリフトを抑えるために、高精度な位置決めが可能なステージ装置が必要となり、これには一般的にリニアモータなどを駆動機構とするサーボ制御システムが構成されている。
【0005】
しかしながら、サーボ制御を行った場合、停止状態でもナノメートルオーダでは微少な振動が発生しており、ステージの振動とともに試料位置が変動するだけでなく、ステージの振動が装置全体を加振し、二次電子像に悪影響を及ぼすこともある。
【0006】
以上のようなサーボ制御を起因とする微小な振動への対策として、ステージの可動テーブルにブレーキ機構を設け、ステージ停止時にはブレーキをかけ、サーボ制御をオフにする技術がある(例えば、特許文献1参照)。この技術では、可動テーブルにエアシリンダで駆動されるブレーキを設け、これにより可動テーブルの移動方向に沿うプレート部材を挟み込んで、可動テーブルを制動することが可能となっている。
【0007】
また、前記技術とは別の技術として、可動テーブルにベース面に対する転がり部材を設け、ステージ停止時には可動テーブルに設けられた圧電素子の発生力により、転がり部材のベース面への押し付け力を増加させ、可動テーブルを制動する技術がある(特許文献2参照)。
【0008】
【特許文献1】特開2001−88695号公報(段落「0010」〜段落「0016」、図1〜図4)
【特許文献2】特開平8−222500号公報(段落「0025」〜段落「0028」、図4〜図5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特開2001−88695号公報に開示された技術によれば、可動テーブル側にブレーキ機構を搭載するため、可動テーブルの重量が増加し、これを駆動するためのモータとして、高い推力を発生するものが必要となる。また、前記した測長SEMのように試料室内が真空とされる環境では、エアシリンダの給気配管などに設計上の特別な配慮が必要となる。これらのことは、ステージ装置のコスト増大という問題につながる。
【0010】
また、特開平8−222500号公報に開示された技術によれば、特開2001−88695号公報に記載のブレーキ機構と同様、可動テーブル側にブレーキ機構を搭載するため、可動テーブルの重量が増加し、高推力のモータが必要となる。また、転がり部材の押し付け力を増加して得られる制動力を大きくするためには、大きな力を発生する圧電素子が必要となる。これらのことは、特開2001−88695号公報に記載の技術と同様、ステージ装置のコスト増大という問題につながる。
【0011】
本発明は、前記した問題を解決するためになされたものであり、前記した測長SEMのような半導体の検査や評価を目的した装置に適用可能なステージ装置であって、可動テーブルの重量を増加することなく、安価でありながら、ステージ停止時における十分な制動力を発生するブレーキ機構を備え、微小な振動やドリフトを抑えることが可能なステージ装置および同装置におけるステージの位置決め制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記した課題を解決するために、本発明では、可動テーブルの案内機構を搭載したベースに、可動テーブルのベースとの対向面に対して、一定のばね力により面部材を押し付けることにより制動力を発生するブレーキ機構を設け、ステージ移動時には、前記ばね力よりも大きい駆動力により前記ブレーキ機構の面部材と可動テーブルを非接触として制動力を解除する。さらに、ステージ停止時には、前記ばね力よりも大きい駆動力を解除して、再度前記ブレーキ機構の面部材を可動テーブルに対して一定のばね力で押し付けることにより制動力を発生し、可動テーブルを停止させ、さらに、ステージ停止直後にサーボ制御をオフにするという位置決め制御を行うようにした。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ブレーキ機構は可動テーブル側ではなくベース側に搭載されるため、可動テーブルの重量を増加させることなく、モータの必要推力増大もない。さらに、ブレーキ機構の駆動手段も圧縮ばねを用いた安価かつ単純なものであるため、ステージ装置のコスト増大を抑えることができる。
【0014】
また、ステージ停止時には、ブレーキ機構の制動力により可動テーブルの位置決め時の整定時間を短縮でき、さらに、ステージ停止直後にサーボ制御をオフすることにより、サーボ制御に起因する微小な振動をなくすとともに、ブレーキの十分な制動力により、ステージ停止後のドリフトを抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面(図1〜図6)を参照しながら、本発明実施形態に係るステージ装置および同装置におけるステージの位置決め制御方法について詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明実施形態に係るステージ装置の全体構成を示す図である。ここで、ステージ装置は、ステージ機構1と、その制御装置2と、ステージ機構1に搭載されるX方向およびY方向に移動可能なテーブル(以下、可動テーブル)の位置を検出するためのレーザ干渉計3とから構成される。
【0017】
図2は、本発明実施形態に係るステージ機構の概略見取図である。
【0018】
図2において、ステージ機構1は、ベース100の上に可動テーブルとそれを駆動するための機構を搭載している。まず、ベース100の上にYベース110が固定され、Yベース110の上にY方向(図2に示す座標軸のY方向)の案内機構としてのYガイド111が固定される。図2では、Yガイド111としては、Yベース110の中央(図示せず)と両端近傍にそれぞれ1本ずつの合計3本が設けられている。Yテーブル112は、Yガイド111に拘束され、Y方向のみに移動が可能となっている。Yテーブル112は、これに可動部を固定されたYアクチュエータ113の発生する推力により直線運動を行う。ここで、Yアクチュエータ113の固定部はベース100の上に固定される。なお、Yアクチュエータ113としては、例えば、リニアモータなどを利用する。さらに、Yテーブル112を停止させるための制動機構として、Yブレーキ114がYベース110の上に固定されている。図2では、Yアクチュエータ113およびYブレーキ114は、いずれもYテーブル112の両端近傍に設けてられている。ただし、これらは、必要な推力や制動力があれば、Yテーブル112の両端ではなく、どちらか一方の端のみに設けても良い。
【0019】
Yブレーキ114は、後述するように、Yテーブル112の下面に対して面部材を一定のばね力で押し付けることにより制動力を発生する機構であり、この面部材とYテーブル112との下面の接触/非接触の状態を制御することにより、制動力の有無を切り替えることができる。このように、Yブレーキ114は、可動テーブルであるYテーブル112ではなく、固定されたYベース110に搭載されているため、可動テーブルの重量を増加させることなく、Yアクチュエータ113の必要推力増大につながることもない。よって、ブレーキ機構の付加によるステージ装置のコスト増大を抑えることができる。
【0020】
Yテーブル112の上には、Y方向と直交するX方向の案内機構としてのXサブガイド115が搭載される。図2では、Xサブガイド115は2本設けられている。サブテーブル116(図示せず)は、Xサブガイド115に拘束され、X方向に移動が可能となっている。サブテーブル116は、これに結合されるトップテーブル130とともに、Xサブガイド115の上をX方向に直線運動を行う。
【0021】
また、ベース100の上には、Xベース120が固定され、Xベース120の上にX方向の案内機構としてのXガイド121が固定される。図2では、Xベース120は、Yベース110を挟む二つの部材として設けられており、Xガイド121もそれぞれのXベース120に1本ずつの合計2本が設けられている。Xテーブル122は、Xガイド121に拘束され、X方向のみに移動が可能となっている。Xテーブル122は、これに可動部を固定されたXアクチュエータ123の発生する推力により直線運動を行う。ここで、Xアクチュエータ123の固定部はベース100の上に固定される。なお、Xアクチュエータ123としては、例えば、リニアモータなどを利用する。さらに、Xテーブル122を停止させるための制動機構として、Xブレーキ124がXベース120の上に固定されている。図2では、Xアクチュエータ123およびXブレーキ124は、いずれもXテーブル122の両端近傍に設けられている。ただし、これらは、必要な推力や制動力があれば、Yテーブル112のどちらか一方の端のみに設けても良い。
【0022】
Xブレーキ124は、Yブレーキ114と同様に、Xテーブル122の下面に対して面部材を一定のばね力で押し付けることにより制動力を発生する機構であり、制動力の有無を切り替えることができる。
【0023】
Xテーブル122の上には、X方向と直交するY方向の案内機構としてのYサブガイド125が搭載される。図2では、Yサブガイド125は2本設けられている。トップテーブル130は、Yサブガイド125に拘束され、Y方向に移動が可能となっている。トップテーブル130は、これに結合されるサブテーブル116(図示せず)の運動とともに、Yサブガイド125の上をY方向に直線運動を行う。
【0024】
以上に述べた構造によれば、Xテーブル122とYテーブル110のそれぞれが移動することで、トップテーブル130のX方向およびY方向の二次元移動が可能となる。なお、トップテーブル130の上には、その位置をレーザ干渉計3により計測するための固定ミラー(Xミラー131,Yミラー132)と、試料ホルダ133が搭載されている。
【0025】
図1では、説明を簡単とするため、ステージ機構1をY方向から見た側面図として示しており、以下、X方向の位置決め制御の概略を説明する。
【0026】
まず、トップテーブル130のX方向の動作は、Xテーブル122を駆動するXアクチュエータ123の動作により決定される。すなわち、Xアクチュエータ123の可動部がX方向に直線運動することによって、これが固定されたXテーブル122がXガイド121に案内されて移動し、これとともにXテーブル122の上に搭載されたYサブガイド125に拘束されたトップテーブル130がX方向に移動する。制御装置2のサーボ制御部においてXアクチュエータ123の位置,速度,推力のサーボ制御を実行するために、トップテーブル130のX方向の位置がレーザ干渉計3で計測され、制御装置2のサーボ制御部にフィードバックされている。また、同サーボ制御部からは、Xアクチュエータ123の推力を発生させるための駆動電流が出力される。
【0027】
トップテーブル130が移動を開始すると、Xベース120の上に固定されたXブレーキ124による制動力が解除(以下、ブレーキオフ)され、トップテーブル130の位置決め時には、トップテーブル130のX方向の位置偏差が予め設定された一定の許容範囲内に入ったところで、Xブレーキ124の制動力が発生(以下、ブレーキオン)することにより、Xテーブル122を停止させる。さらに、Xテーブル122の停止直後にサーボ制御をオフ(以下、サーボオフ)することにより、サーボ制御に起因する微小な振動をなくすとともに、Xブレーキ124の制動力によりXテーブル122の停止後のドリフトを抑える。なお、以上のようなブレーキオン/オフの制御は、制御装置2のブレーキ制御部で実行され、ここからブレーキ駆動信号が出力される。
【0028】
図3は、本発明実施形態に係るブレーキ機構の概略模式図である。ここでは、ブレーキ機構の動作原理を説明のために、前記したXブレーキ124を例として、その断面構造と動作の概略を模式的に表している。なお、以下に述べる構造や動作に関しては、Yブレーキ114についても全く同様である。
【0029】
図3において、ブレーキベース1240の上に、圧縮コイルばね1243と吸引型アクチュエータ1244が固定され、これらの上に可動平面部材1241が固定されている。また、可動平面部材1241の上にはブレーキパッド1242が取り付けられており、これが可動テーブル(この場合、Xテーブル122)に接触する部分となる。このように、ブレーキ機構の駆動手段は、圧縮コイルばね1243と吸引型アクチュエータ1244を用いた安価かつ単純なものであるため、ステージ装置のコスト増大を抑えることができる。
【0030】
図3(a)において、吸引型アクチュエータ1244の発生推力により、圧縮コイルばね1243のばね力に抗して可動平面部材1241が下方向へ引き下げられ、Xテーブル122の下面とブレーキパッド1242が非接触となっている。これがブレーキオフの状態である。このときの可動平面部材1241の引き下げ量dが吸引型アクチュエータ1244の動作量となり、圧縮コイルばね1243の初期変位とdの合計から求まるばね力が吸引型アクチュエータ1244の必要推力となる。Xテーブル122が移動を開始すると、このようにブレーキオフの状態となる。ブレーキオフの状態では、吸引型アクチュエータ1244が推力を発生し続けている。
【0031】
図3(b)において、吸引型アクチュエータ1244の推力が解除され、圧縮コイルばね1243のばね力によって可動平面部材1241が上方向へ押し上げ、Xテーブル122の下面に対してブレーキパッド1242が押し付けられている。これがブレーキオンの状態である。このときのXテーブル122の下面に作用する制動力は、圧縮コイルばね1243の初期変位によるばね力から可動平面部材1241とブレーキパッド1242の重量を差し引いた正味の押し付け力に、ブレーキパッド1242とXテーブル122の下面との摩擦係数を乗じた摩擦力となる。Xテーブル122を位置決めするときに、このようにXブレーキ124をブレーキオンとすることにより、Xテーブル122を停止させる。さらに、Xブレーキ124の制動力により停止後のドリフトを抑える。
【0032】
なお、図3に示した吸引型アクチュエータ1244としては、例えば、通電吸引型の電磁ソレノイドやボイスコイルモータなどを利用する。また、図3のように吸引型アクチュエータ1244により可動平面部材1241を引き下げてブレーキオフの状態を発生させる機構の他に、例えば、回転モータとカム機構あるいは歯車機構を組み合わせて用いる機構も構成可能である。
【0033】
また、図3では、圧縮コイルばね1243を用いたブレーキ機構の構成を示したが、圧縮コイルばね1243の代わりに板ばねを用いたブレーキ機構も構成可能である。
【0034】
図4は、本発明実施形態に係るステージ装置における制御装置の概略構成を示す図である。
【0035】
図4において、制御装置2は、メイン制御部201とサーボ制御部202とブレーキ制御部203とから構成される。ここで、サーボ制御部202には、位置制御部2021,速度制御部2022,推力制御部2023があり、それぞれにおいて、レーザ干渉計3で計測したステージ機構1の位置情報に基づいて、位置制御ループ,速度制御ループ,推力制御ループの演算が実行される。このような演算の結果として求まるアクチュエータ駆動指令がアンプ2024を経由し、ステージ機構1のXテーブル122,Yテーブル112を駆動する各アクチュエータ(123,113)に出力される。
【0036】
また、ブレーキ制御部203には、図3に示したブレーキ機構における吸引型アクチュエータ1244の推力を制御するための電流制御部2031とアンプ2032がある。ここで、電流制御部2031では、図3に示したブレーキオフの状態からブレーキオンの状態に遷移する際に、可動テーブル(図3ではXテーブル122)の下面に対する押し付け力が急激に作用しないように、吸引型アクチュエータ1244の推力を徐々に減るようにその駆動電流を調整し、アンプ2032を経由して吸引型アクチュエータ1244に出力する。このような電流制御により、可動テーブルの下面に作用する押し付け力を連続的に増加させることができ、その結果として可動テーブルへの制動力を連続的に増加させることができる。例えば、吸引型アクチュエータ1244として、通電吸引型の電磁ソレノイドを利用した場合、ブレーキオフのときにコイルに最大電流を通電し、ブレーキオフからブレーキオンに遷移する間にコイル電流を徐々に減らし、完全なブレーキオンのときにはコイルを非通電にするように電流制御を行えば良い。
【0037】
メイン制御部201には、位置決め制御部2011があり、ここからサーボ制御部202とブレーキ制御部203の機能を呼び出し、サーボオン/オフ,ブレーキオン/オフを切り替えながら、ステージの位置決め制御を実行する。
【0038】
図5は、本発明実施形態に係るステージの位置決め制御方法の実行手順を示すフローチャートである。また、図6は、本発明実施形態に係るステージの位置決め制御方法により実現されるステージ位置決め時のステージの位置の時間応答波形の一例を示す図である。以下、図5および図6を用いて、本発明実施形態に係るステージの位置決め制御方法について説明する。
【0039】
図5に示すフローチャートによれば、位置決め制御を開始すると(ステップ501)、まず、目標位置の設定を行う(ステップ502)。具体的には、上位装置において、予め登録してある座標値、もしくはオペレータの手入力や画面上でカーソルで示す座標値を指定することにより目標位置が設定される。
【0040】
次に、ステージを駆動するアクチュエータをサーボオンし(ステップ503)、さらにブレーキオフにする(ステップ504)。ここで、レーザ干渉計3によりステージの現在位置を取得し(ステップ505)、ステージ移動開始時には、目標位置と現在位置との差分により移動距離を求め、所定の速度パターンに基づき、補間周期毎の位置補間演算を実行する(ステップ512)。この位置補間演算で求められる位置を制御周期毎の目標値として位置制御ループ演算を実行し(ステップ513)、位置制御ループ出力を目標値として速度制御ループ演算を実行し(ステップ514)、さらに、速度制御ループ出力を目標値として推力制御ループ演算を実行する(ステップ515)。なお、ここで述べた制御ループ演算(ステップ513,514,515)は、それぞれの制御周期での割り込み処理として実装されるため、実際にはステップ513,514,515が、同じタイミングで順番に実行されるということではない。これは、前記したステップ512についても同様である。
【0041】
図6において、ステージが目標位置に向かって移動を開始するときは、サーボオンかつブレーキオフの状態になっており、位置の時間応答曲線601は時間の経過とともにステージが目標位置に近づいていく様子を示す。ここに示すように、ステージが目標位置の近傍に到達すると、目標位置に対して行き過ぎや戻り過ぎが発生し、振動的な挙動を示す。このような振動を短時間で整定するために、図5に示したフローチャートでは、目標位置と現在位置の偏差が、予め設定された一定の位置決め幅w(図6に示した領域602)に入れば(ステップ509)、ブレーキオンにし(ステップ510)、ステージに制動をかける。また、ブレーキオンの時点からの経過時間を計測開始する(ステップ511)。このあと、経過時間が予め設定された一定の待ち時間tを超えれば、アクチュエータをサーボオフにする(ステップ508)。これにより、ステージ停止後のサーボ制御に起因する微小振動をなくすことができる。なお、サーボオフの状態になれば(ステップ508)、位置決め制御に関する一連の処理を完了する(ステップ516)。図6に示したように、ステージが目標位置に到達し、停止している間は、サーボオフかつブレーキオンの状態となっている。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明実施形態に係るステージ装置の全体構成を示す図である。
【図2】本発明実施形態に係るステージ機構の概略見取図である。
【図3】本発明実施形態に係るブレーキ機構の概略模式図である。
【図4】本発明実施形態に係るステージ装置における制御装置の概略構成を示す図である。
【図5】本発明実施形態に係るステージの位置決め制御方法の実行手順を示すフローチャートである。
【図6】本発明実施形態に係るステージの位置決め制御方法により実現されるステージ位置決め時のステージの位置の時間応答波形の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0043】
1 ステージ機構
2 制御装置
3 レーザ干渉計
100 ベース
110 Yベース
111 Yガイド
112 Yテーブル
113 Yアクチュエータ
114 Yブレーキ
115 Xサブガイド
116 サブテーブル
120 Xベース
121 Xガイド
122 Xテーブル
123 Xアクチュエータ
124 Xブレーキ
125 Yサブガイド
130 トップテーブル
131 Xミラー
132 Yミラー
133 試料ホルダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定されたベースと、
前記ベースに設けられた案内機構と、
前記案内機構に沿って移動する可動テーブルと、
前記可動テーブルを駆動する駆動機構と、
前記ベースに設けられ、前記可動テーブルを制動する制動機構とで構成されるステージ機構と、
前記可動テーブルの位置を測定する位置検出器と、
前記位置検出器により測定される前記可動テーブルの位置と予め設定される目標位置の偏差に基づき、前記駆動機構のサーボ制御を行うとともに、前記制動機構の制動力の発生を制御し、前記可動テーブルの位置決め制御を行う制御装置とを備えたことを特徴とするステージ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のステージ装置において、
前記制動機構は、
前記ベースに固定され、前記可動テーブルの前記ベースとの対向面に対して、一定のばね力により面部材を押し付けることにより制動力を発生するとともに、前記一定のばね力よりも大きい駆動力により前記面部材と前記可動テーブルとを非接触として前記制動力を解除することを特徴とするステージ装置。
【請求項3】
請求項1に記載のステージ装置において、
前記制御装置は、
前記可動テーブルの移動開始とともに、前記制動機構の制動力を解除し、前記可動テーブルの位置と前記目標位置との偏差が予め設定される位置決め幅よりも小さくなったとき、前記制動機構の制動力を発生して、前記可動テーブルを停止させ、前記可動テーブルが停止した直後に前記駆動機構のサーボ制御をオフにすることを特徴とするステージ装置。
【請求項4】
固定されたベースと、前記ベースに設けられた案内機構と、前記案内機構に沿って移動する可動テーブルと、前記可動テーブルを駆動する駆動機構と、前記ベースに設けられて前記可動テーブルを制動する制動機構とから構成されるステージ機構と、前記可動テーブルの位置を測定する位置検出器と、前記ステージ機構の位置決め制御を行う制御装置とを備えたステージ装置におけるステージの位置決め制御方法であって、
前記制御装置は、位置検出器により測定される前記可動テーブルの位置と予め設定される目標位置との偏差に基づき、前記駆動機構のサーボ制御を行うステップと、
前記偏差が予め設定される位置決め幅よりも小さくなったとき、前記制動機構の制動力を発生して、前記可動テーブルを停止させるステップと、
前記可動テーブルが停止した直後に前記駆動機構のサーボ制御をオフにするステップとを備えたことを特徴とするステージ装置におけるステージの位置決め制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−252809(P2009−252809A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−95649(P2008−95649)
【出願日】平成20年4月2日(2008.4.2)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】