ターボチャージャ付きエンジンの制御装置
【課題】タービン回転数を直接検出する部品を追加することなくタービンの回転数を精度よく推定することができ、タービンの回転数を精度よく推定することでタービンの回転数を精度よく許容値以下に抑えて過回転を防止することができるターボチャージャ付きエンジンの制御装置を提供する。
【解決手段】エンジンの吸気通路に配置されたコンプレッサ及び排気通路に配置されたタービンを有するターボチャージャと、前記エンジンの運転状態に応じて、前記エンジンへの燃料噴射量を制御する燃料噴射量制御手段と、を有するターボチャージャ付きエンジンの制御装置において、前記エンジンの運転状態から、前記タービンの回転数の推定値を計算上求めるタービン回転数推定手段を有し、前記燃料噴射量制御手段は、前記タービン回転数の推定値が所定の許容値を越える場合に、前記タービン回転数の推定値が前記許容値以下となるように燃料噴射量を制御する。
【解決手段】エンジンの吸気通路に配置されたコンプレッサ及び排気通路に配置されたタービンを有するターボチャージャと、前記エンジンの運転状態に応じて、前記エンジンへの燃料噴射量を制御する燃料噴射量制御手段と、を有するターボチャージャ付きエンジンの制御装置において、前記エンジンの運転状態から、前記タービンの回転数の推定値を計算上求めるタービン回転数推定手段を有し、前記燃料噴射量制御手段は、前記タービン回転数の推定値が所定の許容値を越える場合に、前記タービン回転数の推定値が前記許容値以下となるように燃料噴射量を制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターボチャージャ付きエンジンの制御装置に関するものであり、特にタービンの回転数を精度よく許容値以下に抑えることができるターボチャージャ付きエンジンの制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両や建設機械等において、ターボチャージャ付きのエンジンを採用したものが数多く使用されている。
【0003】
このような、ターボチャージャ付きのエンジンにおいては、気圧が低く空気密度の低い高地で使用する場合、低地で使用する場合と同量の空気をエンジンに供給しようとすると、エンジンに供給する空気体積で考えると低地で使用する場合よりも多量の空気をエンジンに供給する必要がある。そのため、ターボチャージャ付きのエンジンを空気密度が低い高地で使用すると、エンジンに多量に空気を供給するためにターボチャージャを構成するタービンの回転数が過剰に上昇し、ターボチャージャの破損を引き起こす可能性がある。
【0004】
そこで、ターボチャージャ付きのエンジンを空気密度が低い高地で使用した場合であっても、タービンの過回転を防止し、ターボチャージャの破損を事前に防止することができる技術が例えば特許文献1、特許文献2に開示されている。
【0005】
特許文献1に開示された技術は、タービンに可動ノズルベーンを装備したターボチャージャに付帯する回転数センサを設け、通常時においてはエンジンの運転状態に応じて出力される目標質量流量とターボチャージャのコンプレッサ上流側に設けたエアフローメータで計測される実質量流量が一致するようにノズルベーン開度制御をするものである。また、ターボチャージャの回転数検出値が理想回転数以上となった際に、コンプレッサの実吸気体積流量が体積流量マップに見合うように燃料噴射量を制御するものである。ここで、前記吸気体積流量は、エアフローメータで得られる吸気質量流量と吸気温度からの演算値である。
【0006】
また、特許文献2に開示された技術は、大気圧センサで計測した大気圧の情報から高度を判定し、判定した高度に基づいてタービン回転数を許容値以下に抑えるように、EGR制御弁を開操作するものである。この特許文献2に開示された技術は、油圧ショベル等の建設機械については、比較的高い回転数を保ちながら定格運転を行って油圧ポンプを連続的に駆動し、この油圧ポンプにより得られる油圧で土木作業を行うから、作業中における過給圧が比較的高く、空気密度の低い高地で排気ガスを再循環しても黒煙発生の問題が起こり難いため、EGR(Exhaust Gas Recirculation)制御弁を開操作することでタービン回転数を許容値以下に抑えることに適しているといえる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−299618号公報
【特許文献2】特開2008−184922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示された技術においては、回転数センサを設ける必要がある。通常、ターボチャージャの回転数を制御する必要はないため、特許文献1に開示される技術を採用するにあたっては、タービンの過回転検出のためだけに回転数センサを設けることとなり、これは製品コストの上昇に繋がるため好ましくない。また、質量流量と吸気温度の情報から体積流量を計算しているが、該計算に大気圧の情報を用いていない。体積流量は大気圧により変化するため、体積流量の演算が正確に行われているとは言えず、従って制御が正確に行われているとはいえない。
【0009】
また、特許文献2に開示された技術においては、EGR制御弁を開弁操作することでタービン回転数は低下するが、高負荷においてはもともと空気過剰率が低いためにスモークが発生しやすく、タービン回転数が上昇する低大気圧下での開弁操作は多量のスモーク発生に繋がる。
また、建設機械以外であって低負荷から高負荷への状態変化があるようなアプリケーションに対しては、ターボの過回転保護のためにEGRを導入すると黒煙発生の問題を引き起こす可能性が高いため、建設機械以外への適用は難しく適用範囲が狭い。
さらに、大気圧の情報から判定した高度の情報のみからタービン回転数を許容値に制御するものであるが、タービン回転数は気圧と吸気温度の両方に関係する。特許文献2に開示された技術のように、吸気温度を考慮しない場合、タービンの過回転が発生しやすい吸気温度が高い条件でも過回転が発生しないようにパラメータを設定する必要があり、吸気温度が低い時に必要以上に燃料噴射量を制限してしまい、エンジンの出力を必要以上に制限することとなる。
【0010】
上記課題を解決するため本発明においては、タービン回転数を直接検出する部品を追加することなくタービンの回転数を精度よく推定することができ、タービンの回転数を精度よく推定することでタービンの回転数を精度よく許容値以下に抑えて過回転を防止することができるターボチャージャ付きエンジンの制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明においては、エンジンの吸気通路に配置されたコンプレッサ及び排気通路に配置されたタービンを有するターボチャージャと、前記エンジンの運転状態に応じて、前記エンジンへの燃料噴射量を制御する燃料噴射量制御手段と、を有するターボチャージャ付きエンジンの制御装置において、前記エンジンの運転状態から、前記タービンの回転数の推定値を計算上求めるタービン回転数推定手段を有し、前記燃料噴射量制御手段は、前記タービン回転数の推定値が所定の許容値を越える場合に、前記タービン回転数の推定値が前記許容値以下となるように燃料噴射量を制御することを特徴とする。
【0012】
これにより、タービン回転数を直接検出する部品を追加することなく、エンジンの運転状態からタービン回転数を推定することができる。従って、タービン回転数を検知するセンサを仮に設けた場合に生じ得る製品コストの上昇、該センサの故障・誤検出による製品信頼性低下といった問題が発生することを回避できる。
また、タービン回転数が許容値を越える場合に燃料噴射量を制限することで、エンジン出力が制限され、これによりタービン回転数を所定値以下に抑えることができタービンの過回転を防止することができる。よってタービンの過回転に起因するターボチャージャの破損等を防止することができる。
【0013】
また、大気圧を測定する大気圧測定手段と、前記吸気通路に配置されたコンプレッサに吸入される吸気の吸気質量流量を測定する吸気質量流量測定手段と、前記吸気通路に配置されたコンプレッサに導入される吸気の温度を測定する吸気温度測定手段と、前記エンジンのブースト圧を測定するブースト圧測定手段と、を有し、前記タービン回転数推定手段は、前記大気圧と、前記吸気質量流量と、前記吸気温度とを用いて、前記吸気通路に配置されたコンプレッサに吸入される吸気の標準状態における吸気体積流量を求めるとともに、前記ブースト圧を大気圧で除算した給気圧力比を求め、前記標準状態における吸気体積流量と吸気圧力比と前記タービンの回転数の関係を示したターボチャージャの性能曲線を用いて、前記タービン回転数を推定するとよい。
【0014】
タービン回転数は、大気圧のみならず吸気温度にも影響を受ける。そこで、吸気体積流量と給気圧力比からターボチャージャの性能曲線を用いてタービン回転数を推定する際に、吸気体積流量として大気圧と吸気温度を考慮して求めた標準状態における吸気体積流量を使用することで精度よくタービン回転数を推定することができる。
ここで、標準状態とは25℃、1atmのことをいう。
【0015】
また、前記タービン回転数推定手段は、前記吸気体積流量と、前記給気圧力比と、前記タービン回転数との関係を示す第1マップを備え、該第1マップに基づいて前記タービン回転数を推定するとよい。
【0016】
タービン回転数は、大気圧のみならず吸気温度にも影響を受けるので、予め実験により求められた、吸気体積流量と、給気圧力比と、前記タービン回転数との関係を示す第1マップを記憶手段に備えておき、タービン回転数推定の際には、第1マップのデータを呼込むようにすることで、精度よくタービン回転数を推定することができる。
【0017】
また、前記第1マップにはEGR作動時と、EGR非作動時とにおけるそれぞれの関係のデータを有しているとよい。
【0018】
タービン回転数は、EGR作動時、又は非作動時によりタービンへの排気ガス流量が変化するので、タービン回転数も変化する。従って、EGR作動時と、非作動時における呼込みデータを切替えることにより、精度よくタービン回転数を推定することができる。
【0019】
また、大気圧を測定する大気圧測定手段と、前記吸気通路に配置されたコンプレッサに導入される吸気の温度を測定する吸気温度測定手段と、を有し、前記タービン回転数推定手段は、前記大気圧と、前記吸気温度とを用いて前記吸気の空気密度を算出し、予め実験により作成した吸気密度とタービン回転数の関係を示す第2マップを備え、該第2マップに基づいて、前記吸気の空気密度からタービン回転数を推定するとよい。
【0020】
これにより、ターボチャージャの性能曲線が不要であり、簡単な演算処理でタービン回転数を推定することができる。
【0021】
また、前記第2マップは、予め試験結果より求めたEGR作動時と、EGR非作動時における前記空気密度とタービン回転数との関係を示すデータを備え、EGRの使用状況よって切替えるようにするとよい。
【0022】
これにより、EGR作動時と、非作動時における呼込みデータを切替えることにより、精度よくタービン回転数を推定することができる。
【0023】
また、大気圧を測定する大気圧測定手段と、
前記吸気通路に配置されたコンプレッサに導入される吸気温度を測定する吸気温度測定手段と、を有し、
前記タービン回転数推定手段は、予め実験により作成した、前記大気圧と、前記吸気温度と、タービン回転数との三次元の関係を示す第3マップを備え、該第3マップに基づいて、前記大気圧測定手段と、前記吸気温度測定手段との検出値から、タービン回転数を推定するとよい。
【0024】
これにより、大気圧と、吸気温度との測定値によって、三次元マップから直接タービン回転数を推定するのでタービン回転数推定が速くなり噴射量制御が緻密になる。
【0025】
また、大気圧を測定する大気圧測定手段と、
前記吸気通路に配置されたコンプレッサに導入される吸気温度を測定する吸気温度測定手段と、を有し、
前記タービン回転数推定手段は、
予め実験により作成した、前記大気圧と、タービン回転数との関係を示す二次元マップを吸気温度毎に複数有する第4マップを備え、該第4マップに基づいて、前記大気圧測定手段と、前記吸気温度測定手段との検出値から、タービン回転数を推定するとよい。
【0026】
これにより、コンプレッサに導入される吸気の温度によって、大気圧とタービン回転数との関係を示す二次元マップを吸気温度毎に複数備えているので、吸気温度と、気圧変動に対するタービン回転数を精度よく推定できる。
【0027】
また、前記吸気温度測定手段は、前記エンジンの給気マニホールド内の給気マニホールド温度を測定する給気マニホールド温度測定手段と、予め実験により作成した給気マニホールド温度と吸気温度の関係を示す第5マップを備え、該第5マップに基づいて、前記給気マニホールド温度から吸気温度を求めることを特徴とする。
これにより、吸気通路に配置されたコンプレッサに導入される吸気の温度を直接検出するセンサ等が必要なくなる。そのため、吸気の温度を直接検出することができるセンサを有しないターボチャージャ付きエンジンに関しても、新たに該センサを設けることなく本発明の適用が可能となる。
【0028】
また、前記燃料噴射量制御手段は、前記タービン回転数と大気圧に応じて、前記タービン回転数が前記許容値以下となる最大の燃料噴射量を予め実験結果より求めて、これらタービン回転数と大気圧と最大の燃料噴射量との関係を示す第6マップを備え、該第6マップに基づいて前記タービン回転数が、前記許容値を越える場合に、前記大気圧とタービン回転数に応じた最大の燃料噴射量以下まで燃料噴射量を低減し、前記タービン回転数を前記許容値以下とするとよい。
これにより、燃料噴射量の最大値を容易に決定することができる。
【0029】
また、前記大気圧と、吸気温度とを用いて吸気の空気密度を演算する空気密度演算手段を有し、前記燃料噴射量制御手段は、前記タービン回転数と空気密度に応じて、前記タービン回転数が前記許容値以下となる最大の燃料噴射量が、予め実験結果より求めて、これらタービン回転数と空気密度と最大の燃料噴射量との関係が設定された第7マップを備え、該第7マップに基づいて前記タービン回転数が、前記許容値を越える場合に、前記空気密度とタービン回転数に応じた最大の燃料噴射量以下まで燃料噴射量を低減し、前記タービン回転数を前記許容値以下とするとよい。
これにより、燃料噴射量の上限値を決定する際にエンジン回転数と大気圧だけでなく吸気温度も考慮しているため、タービンの過回転を防止する際に燃料の噴射量の低減を小さく留め、エンジンの出力の低減を小さく留めることができる。
【0030】
また、前記燃料噴射量制御手段は、前記吸気温度に応じた燃費率の悪化割合を、予め実験結果より求めて、吸気温度と燃費率の関係を示した第8マップを備え、該第8マップに基づいて、前記悪化割合が大きいほど、前記最大の燃料噴射量を大きくなるように補正するとよい。
これにより、燃費率の変化を考慮することで、タービンの過回転を防止する際に、エンジン出力の低下をさらに小さく留めることができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、タービン回転数を直接検出する部品を追加することなくタービンの回転数を精度よく推定することができ、タービンの回転数を精度よく推定することでタービンの回転数を精度よく許容値以下に抑えて過回転を防止することができるターボチャージャ付きエンジンの制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】実施例1に係るターボチャージャ付きエンジンの制御装置が適用されるエンジン周辺を示す概略図である。
【図2】実施例1における燃料噴射量の制御のロジックを示す図である。
【図3】実施例1における燃料噴射量の制限にかかる制御のフローチャートである。
【図4】実施例1における最大噴射量制限判断の手順を示すフローチャートである。
【図5】実施例2における(A)は燃料噴射量の制御のロジックを示し、(B)はEGR作動、非作動時における燃料噴射量の制御のロジックを示す図である。
【図6】タービン回転数と空気密度の関係を示したグラフである。
【図7】実施例3における(A)は燃料噴射量の制御のロジックを示し、(B)は大気圧とタービン回転数との関係を示す二次元マップ吸気温度毎に構成したイメージを示す図である。
【図8】実施例4における燃料噴射量の制御のロジックを示す図である。
【図9】給気マニホールド温度と吸気温度との関係を示したグラフである。
【図10】実施例5における燃料噴射量の制御のロジックを示す図である。
【図11】一定のエンジン回転数における空気密度とタービン回転数が許容値以下となる最大燃料噴射量の関係を示すグラフである。
【図12】実施例6における燃料噴射量の制御のロジックを示す図である。
【図13】図10のグラフに示した実験点について、タービン回転数と空気密度の関係について示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
【0034】
(実施例1)
図1は、実施例1に係るターボチャージャ付きエンジンの制御装置が適用されるエンジン周辺を示す概略図である。図1において、エンジン2は4つの気筒を有する4サイクルディーゼルエンジンである。
【0035】
エンジン2には、吸気マニホールド6を介して吸気通路8が合流されるとともに、排気マニホールド10を介して排気通路12が接続されている。
【0036】
吸気通路8には、ターボチャージャ14のコンプレッサ14aが設けられている。コンプレッサ14aは後述するタービン14bに同軸駆動されるものである。吸気通路8のコンプレッサ14aよりも下流側には、吸気通路8を流れる給気と大気で熱交換を行うインタークーラー16が設けられている。また、吸気通路8のインタークーラー16よりも下流側には、吸気通路8内を流通する給気の流量を調節するスロットルバルブ18が設けられている。
【0037】
また、吸気通路8には、コンプレッサ14aの上流側に、吸気流量を検知するエアフローメータ26及び吸気温度を検知する温度センサ34が設けられ、インタークーラー16の下流側であってスロットルバルブ18の上流側に過給圧(ブースト圧)を検知する圧力センサ36が設けられている。また、給気マニホールド6には温度センサ28及び圧力センサ30が設けられている。
エアフローメータ26、温度センサ28、圧力センサ30、圧力センサ36の検知値は、それぞれA/D変換器46a、46b、46c、46eを介してエンジンコントロールユニット(Engine Control Unit:ECU)40に入力される。また、温度センサ34の検知値は、サーミスタ回路42を介してECU40に入力される。
更に、ECU40には、後述する本発明のターボチャージャ14の回転数を推定するマップを格納した記憶手段50が設けられている。
【0038】
排気通路12には、ターボチャージャ14のタービン14bが設けられている。タービン14bは、エンジン2からの排気ガスにより駆動されるものである。また、排気マニホールド10には、排気の一部を吸気通路8へ再循環させるEGR通路20が接続されている。EGR通路20には、EGRクーラー22及びEGR制御弁24が設けられている。
EGRクーラー22は、EGR制御弁24よりも排気マニホールド10側に設けられ、EGRクーラー22を通過するEGRガスと冷却水とで熱交換して、該EGRガスの温度を低下させるものである。また、EGR制御弁24は、EGR通路20を流れるEGRガスの流量を制御するものである。
【0039】
また、エンジン2にはエンジンスピードセンサ32が設けられており、エンジンスピードセンサ32の検知値はパルスカウント回路45を介してECU40に入力される。
更に、大気圧を測定することができる圧力センサ38が設けられており、圧力センサ38によって検知された大気圧は、A/D変換器46dを介してECU40に入力される。
なお、圧力センサ38に変えて、GPSなどの高度情報を入手できる手段を設け、ECU40により前記高度情報から大気圧を推測するようにしてもよい。
【0040】
ECU40では、前述の各入力された値を基にCPU47でEGR制御弁24及びスロットルバルブ18の目標開度を演算し、駆動回路43、44を介してEGR制御弁24及びスロットルバルブ18の開度を制御する。
また、前述の各入力された値を基にCPU47でエンジン4への燃料噴射量を演算し、インジェクタ駆動回路41を介してエンジン2の燃焼室4への燃料噴射量を制御する。
【0041】
さらに、本発明に特徴的な制御に係る事項として、前記燃料噴射量をタービン14bの回転数によって制限をかけている。
本発明における燃料噴射量の制限にかかる制御について説明する。
図2は、実施例1における燃料噴射量のロジックを示す図、図3は実施例1における燃料噴射量の制限にかかる制御のフローチャートである。
【0042】
図3に示したフローチャートにおいて処理が開始、ここではECU40が稼動するとステップS1に進む。
ステップS1では、ECU40に各センサのデータが読み込まれる。
ステップS1にて読み込むセンサデータは、圧力センサ38で検知される大気圧[kPa]、エアフローメータ26で検知される吸気質量流量[kg/s]、温度センサ34で検知される吸気温度[℃]、圧力センサ36で検知されるブースト圧[kPa]である。
【0043】
ステップS1にて各センサのデータの読み込みが終了するとステップS2に進む。
ステップS2では吸気体積流量演算を実施する。これは図2に示した51にあたる。ステップS2では、図2に51で示したように、エアフローメータ26で検知される吸気質量流量[kg/s]、圧力センサ38で検知される大気圧[kPa]及び温度センサ34で検知される吸気温度[℃]を用いて標準状態(25℃、1atm)における吸気体積流量[m3/s]を演算する。
【0044】
ステップS2にて標準状態における吸気体積流量の演算が終了すると、ステップS3に進む。
ステップS3では給気圧力比を演算する。これは図2に示した52にあたる。ステップS3では、図2に52で示すように、圧力センサ36で検知されるブースト圧[kPa]を圧力センサ38で検知される大気圧[kPa]で除して給気圧力比[−]を演算する。
【0045】
ステップS3にて給気圧力比の演算が終了すると、ステップS4に進む。
ステップS4では、タービン14bのタービン回転数を推定する。タービン回転数は、図2において53で示したような第1マップであるターボチャージャの性能曲線から推定する。第1マップはECU40の記憶手段50に格納されている。
ターボチャージャの性能曲線は、標準状態における吸気体積流量[m3/s]、給気圧力比[−]及びタービン回転数の関係を示したものであり、ターボチャージャごとに固有のものである。図2における53には、給気圧力比[−]と標準状態における空気体積流量[m3/s]との関係を、回転数毎に示した性能曲線の一例を図示している。このような性能曲線を用いることで、給気圧力比[−]と標準状態における空気体積流量[m3/s]からタービン回転数を推定することができる。
【0046】
つまり、ステップS2で各センサから読み込んだ情報を基に標準状態における吸気体積流量[m3/s]を演算し、ステップS3で圧力センサ38から読み込んだ大気圧[kPa]情報を基に給気圧力比[−]を演算し、ステップ4で性能曲線(第1マップ)を用いてタービン回転数を推定することで、センサから読み込んだ情報のみからタービン回転数を推定することができる。
【0047】
ステップS4が終了すると、ステップS5に進む。
ステップS5では、最大噴射量[mg/st]を演算する。ここで、最大噴射量とは、インジェクタ駆動回路41を介してエンジン2の燃焼室4へ噴射される燃料の量[mg/st]の上限値を意味している。
最大噴射量は、図2において54で示したようなマップを用いて求める。図2において54で示したマップは、最大噴射量[mg/st]、タービン回転数[rpm]、大気圧[kPa]の関係を示したものである。このようなマップを用いることで、圧力センサ38で検知した大気圧[kPa]及びステップS4にて演算したタービン回転数から最大噴射量を求めることができる。
なお、図2において54で示すように、大気圧及びタービン回転数から最大噴射量を求めることができるマップは、大気圧毎に、タービン回転数に応じて、タービン回転数が過回転を防止できる許容値以下となるような最大噴射量が求まるように予め作成しておく。
マップ54からは、大気圧が低い即ち高高度(高地)であるほど最大噴射量は小さくなることがわかる。
【0048】
ステップS5が終了すると、ステップS6に進む。
ステップS6では最大噴射量制限判断を行う。最大噴射量制限判断とは、エンジン2に噴射する燃料量の上限をステップS5で求めた最大噴射量に制限するか否かを判断することである。タービン回転数が所定以上の高回転である場合に、タービンの過回転が生じ、ターボチャージャの破損等が生じる可能性があることから、ステップS4で求められるタービン回転数が所定の許容値以上の高回転である場合に、エンジン2に噴射する燃料量の上限をステップS5で求めた最大噴射量に制限する。
前記最大噴射量制限判断は、タービン回転数が所定の許容値近辺である場合に、前記判断のON/OFFが頻繁に切り替わることがないように図2において55で示したようにヒステリシスを持たせて判断する。図2における55は最大噴射量制限判断に関するマップであって、縦軸は前記判断のON/OFF、横軸はタービン回転数を示しており、詳しくは以下で図4を用いて説明する。
【0049】
ステップS6における最大噴射量制限判断の一例を図4を用いて説明する。
図4は、実施例1における最大噴射量制限判断の手順を示すフローチャートである。
処理が開始すると、ステップS11で現状における噴射量制限フラグがONであるか否かを判断する。ここで噴射量制限フラグとは、エンジン2に噴射する燃料量の上限をステップS5で求めた最大噴射量に制限するか否かの判断を行うためのフラグであり、ステップS4で算出されるタービン回転数に影響されるものである。
【0050】
ステップS11でYES即ち現状における噴射量制限フラグがONであると判断されると、ステップS12に進む。
ステップS12では、Nt(タービン回転数)が18万rpmよりも小さいか否かを判断する。ステップS12でYES即ちNt<18万rpmであると判断されるとステップS15で噴射量制限フラグをOFFに変更して処理を終了する。ステップS12でNO即ちNt≧18万rpmであると判断されるとステップS13に進む。
ステップS13では、エンジンのキーがOFFされたか否かを判断する。ステップS13でYES即ちエンジンのキーがOFFであると判断されるとステップS15で噴射量制限フラグをOFFに変更して処理を終了する。
ステップS13でNO即ちエンジンのキーがONであると判断されるとステップS14に進む。
【0051】
ステップS14では、噴射量制限フラグがONとなってから例えば1時間等の所定時間が経過したか否かを判断する。ステップS14でYES即ち噴射量制限フラグがONとなってから所定時間経過したと判断されるとステップS15で噴射量制限フラグをOFFに変更して処理を終了する。
ステップS13でONと判断されると噴射量制限フラグをONのまま変更せずに処理を終了する。
つまり、ステップS12〜S14では、タービン回転数が18万rpmより小さい、エンジンのキーがOFFされた、噴射量制限フラグがONとなってから例えば1時間等の所定時間が経過した、の何れかを満たすと噴射量制限フラグがOFFに変更する。
【0052】
また、ステップS11でNO即ち現状における噴射量制限フラグがOFFであると判断されると、ステップS16に進む。
ステップS16では、Nt(タービン回転数)が19万rpmよりも大きいか否かを判断する。ステップS16でYES即ちNt>19万rpmであると判断されるとステップS17に進み、噴射量制限フラグをONに変更して処理を終了する。ステップS16でNO即ちNt≦19万rpmであると判断されると噴射量制限フラグをOFFのまま変更せずに処理を終了する。
【0053】
即ち、図4に示した最大噴射量制限判定によれば、現状における噴射量制限フラグの状態に関わらずNt>19万rpmでは噴射量制限フラグがON、Nt<18万rpmでは噴射量制限フラグがOFFとなって処理を終了する。また18万rpm≦Nt≦19万rpmの範囲では現状の噴射量制限フラグの状態を維持して処理を終了するが、現状の噴射量制限フラグの状態がONであり、且つエンジン2のキーがOFFされた又は、噴射量制限フラグがONとなってから所定時間が経過した場合には噴射量制限フラグをOFFに変更して処理を終了する。
【0054】
更に、ステップS13、ステップS14については、図4における、ステップS13のエンジンキーOFFの条件はエンジンキーがOFFになったらフラグをリセットさせるものである。
また、ステップS14のフラグONから所定時間経過の条件は、例えば、噴射量制限フラグONから所定の数時間が経過すると、気温が低下して空気密度が上昇する場合、又は車両に搭載されたエンジン2で、車両が下山することで空気密度が上昇する場合でも、エンジンキーがOFFされるまで燃料噴射量が制限されると、エンジン2の十分な出力を得難くなる。
従って、エンジンキーOFFと、噴射量制限フラグがONから所定時間経過の条件の組合せにより、効果的な燃料噴射量制限の制御が可能となる。
【0055】
また、図4に示したようにすることにより以下のような効果を得ることができる。
即ち、高回転、高負荷域を頻繁に使用するパワーショベル等においては、燃料噴射量制限ON―OFFを繰返すことになる。その結果、燃料噴射量制限機能のON―OFFが繰返されると、エンジン2出力の変動が繰返し発生して、運転者としては運転者の操作意図と異なる出力となり、操作に違和感を覚える。このような不具合を防止できる。
【0056】
図3に示したフローチャートにおけるステップS6が終了すると、図2に示したフローチャートにおいて、ステップS7に進む。
ステップS7においては、図4に示したフローチャートにより、最大噴射量制限判断(図2に示した55)がされると、前記噴射量制限フラグである場合には図2に示した回路56がONとなり、ステップS5(図2におけるマップ54)で求めた最大噴射量[mg/st]が出力される。前記噴射量制限フラグがOFFである場合には、燃料噴射量は特に制限されない。
【0057】
ステップS7が終了すると、処理を終了する。
ステップS7において、前記噴射量制限フラグがONであって最大噴射量が出力された場合には、ECU40は、前述の各入力された値を基にCPU47でエンジン4への燃料噴射量を演算しインジェクタ駆動回路41を介してエンジン4への燃料噴射量を制御する際に、燃料噴射量が前記最大噴射量を超えないように制御する。
【0058】
実施例1によれば、最大噴射量を制限することで、エンジン出力が制限され、これによりタービン回転数を所定値以下に抑えることができタービンの過回転を防止することができる。よってタービンの過回転に起因するターボチャージャの破損等を防止することができる。
【0059】
また、大気圧[kPa]、吸気質量流量[kg/s]、吸気温度[℃]、ブースト圧[kPa]の各検知値からタービン回転数を推測することができる。そのため、タービン回転数を検知するセンサを設ける必要がなく、該タービン回転数を検知するセンサを仮に設けた場合に生じ得る製品コストの上昇、該センサの故障・誤検出による製品信頼性低下といった問題が発生することを回避できる。
【0060】
さらに、本実施例においては大気圧やGPSからの高度情報のみならず、吸気温度も考慮してタービン回転数を推定しているため、精度よくタービン回転数を推定することができる。これにより、精度よくタービン回転数を許容値以下に抑えることができる。
【0061】
また、図2に示した53のようなターボチャージャの性能曲線を使用する際に、標準状態での体積流量を用いているため、精度よくターボチャージャの性能曲線からタービン回転数を推定することができる。
【0062】
さらに、タービンの過回転を防止するためにEGR制御弁を制御するものではないため、EGR装置付きのエンジンにも、本実施例の技術をそのまま適用することができる。
【0063】
(実施例2)
実施例1に係るターボチャージャ付きエンジンの制御装置が適用されるエンジン周辺を示す概略図については、実施例1にて説明した図1と同様であるため図1を援用しその説明を省略する。
【0064】
図5(A)は実施例2における燃料噴射量の制御のロジックを示す図である。
図5(A)において、図2と同一符号は同一の動作、制御を意味し、その説明を省略する。
実施例2においては、実施例1とはタービン回転数の推定方法が異なる。
図5(A)を用いて実施例2におけるタービン回転数の推定方法について説明する。
【0065】
図5(A)に示した61にて、ECU40に、圧力センサ38で検知される大気圧[kPa]と、温度センサ34で検知される吸気温度[℃]が入力され、大気圧[kPa]と吸気温度[℃]から空気密度[kg/m3]の演算を実施する。
【0066】
そして、図5(A)に示した62にて、タービン回転数[rpm]と空気密度[kg/m3]の関係を示した第2マップ(A)からタービン回転数[rpm]を推定する。
第2マップ(A)はECU40の記憶手段50に格納されている。
【0067】
第2マップ(A)は図6に示すように、タービン回転数[rpm]と空気密度[kg/m3]の関係を示したグラフの一例である。図6において縦軸はタービン回転数[×104rpm]、横軸は空気密度[kg/m3]であり、各プロットは実験点である。図6から、タービン回転数と空気密度との間には負の一次の相関関係があり、このようなタービン回転数と空気密度を予め作成しておけば、空気密度からタービン回転数を簡単に求めることができる。
【0068】
タービン回転数を算出した以降は実施例1と同様であり、その説明は省略する。
【0069】
実施例2によれば、ターボチャージャの性能曲線が不要であり、簡単な演算処理でタービン回転数の推定値を求めることができる。
【0070】
(実施例3)
図5(B)は実施例3における燃料噴射量の制御のロジックを示す図である。
図5(B)において、図2と同一符号は同一の動作、制御を意味し、その説明は省略する。
実施例3においては、実施例2におけるタービン回転数の推定方法に、EGR―ON(作動)/OFF(非作動)の条件を追加した内容が異なる。
【0071】
図5(B)に示した61にて、大気圧[kPa]と吸気温度[℃]から空気密度[kg/m3]の演算を実施した値と、EGRのON/OFFが63に入力される。
【0072】
そして、図5(B)に示した63にて、EGRのON(作動)/OFF(非作動)により、空気密度[kg/m3]が変化してタービン回転数が異なってくる。
従って、第2マップ(B)はタービン回転数[rpm]と空気密度[kg/m3]の関係を示した第2マップ(A)に、EGR―ON時(破線)と、EGR―OFF時(実線)とのタービン回転数と空気密度を予め作成しておくことにより、空気密度からEGRのON/OFF時別のタービン回転数を容易に求めることができるようにしたものである。
【0073】
タービン回転数を算出した以降は実施例1と同様であり、その説明は省略する。
【0074】
(実施例4)
実施例1に係るターボチャージャ付きエンジンの制御装置が適用されるエンジン周辺を示す概略図については、実施例1にて説明した図1と同様であるため図1を援用しその説明を省略する。
【0075】
図7(A)は実施例4における燃料噴射量の制御のロジックを示す図である。
図7(A)において、図2と同一符号は同一の動作、制御を意味し、その説明を省略する。
実施例4においては、実施例1とはタービン回転数の推定方法が異なる。
図7(A)を用いて実施例4におけるタービン回転数の推定方法について説明する。
【0076】
図7(A)に示した65にて、ECU40に圧力センサ38で検知される大気圧[kPa]と、温度センサ34で検知される吸気温度[degC]からタービン回転数[rpm]が算出されるようになっている。
第3マップは、65に示すように、タービン回転数[rpm]、大気圧[kPa]及び吸気温度[℃]との関係を、予め実験により求めた値を、X軸に大気圧[kPa]、Y軸にタービン回転数[rpm]、Z軸に吸気温度[℃]とした第3マップである三次元マップを作成して、ECU40の記憶手段50に格納されている。
尚、マップには、EGR―ON時(破線)と、EGR―OFF時(実線)とのタービン回転数と大気圧を予め作成しておくことにより、大気圧からEGRのON/OFF時別のタービン回転数を容易に求めることができる。
【0077】
そして、図7(A)に示した65にて、ECU40に入力された大気圧[kPa]と吸気温度[℃]から三次元マップによってタービン回転数[rpm]を直接推定する。
【0078】
タービン回転数[rpm]を算出した以降は実施例1と同様であり、その説明は省略する。
このようにすることにより、センサ38(大気圧)と、温度センサ34(吸気温度)によって検出された検出値から直接タービン回転数[rpm]を推定するので、推定が早く、素早い燃料噴射制御が可能になる。
【0079】
(実施例5)
図7(B)は実施例5における大気圧[kPa]とタービン回転数[rpm]との関係を示す二次元マップを吸気温度毎に構成したイメージ図を示す。
図7(B)は、図7(A)の65のタービン回転数の推定方法を66に変更したもので、図7(A)と同一符号は同一の動作、制御を意味し、その説明は省略する。
【0080】
図7(B)に示すように第4マップは66にて、大気圧[kPa]とタービン回転数[rpm]との関係を示す第3マップを吸気温度[℃]毎に作成したもので、ECU40の記憶手段50に格納されている。
尚、マップには、EGR―ON時(破線)と、EGR―OFF時(実線)とのタービン回転数と大気圧を予め作成しておくことにより、大気圧からEGRのON/OFF時別のタービン回転数を容易に求めることができる。
【0081】
タービン回転数を算出した以降は実施例1と同様であり、その説明は省略する。
このようにすることにより、吸気温度[℃]毎に作成したマップに基づいて、温度センサ34及び、大気圧センサ38によって検出された検出値から直接タービン回転数[rpm]を推定するので、推定が早く、吸気温度に基づいた緻密で、且つ素早い燃料噴射制御が可能になる。
【0082】
(実施例6)
図8は実施例6における燃料噴射量の制御のロジックを示す図である。
図8において、図2と同一符号は同一の動作、制御を意味し、その説明は省略する。
実施例6においては、実施例1における吸気体積流量演算51の際に使用される吸気温度[℃]に変えて、給気マニホールド温度[℃]から推定した吸気温度[℃]を使用できるようにしている。
【0083】
図8において、ECU40は温度センサ28で検知された給気マニホールド温度[℃]をローパスフィルタ71を通し、72で第5マップを用いて給気マニホールド温度[℃]から吸気温度[℃]を求める。ローパスフィルタ71は、過渡運転時において運転パターンが給気マニホールド温度変化に与える影響を抑える目的で適用している。
尚、第5マップはECU40の記憶手段50に格納されている。
【0084】
図9は、給気マニホールド温度[℃]と吸気温度[℃]との関係を示したグラフであり、縦軸は給気マニホールド温度[℃]、横軸は吸気温度[℃]、各プロットは実験点を表している。図9に示したように、高度に寄らず、即ち大気圧に寄らず吸気マニホールド温度[℃]と吸気温度[℃]との間には一次の相関関係があることがわかる。
従って、図9に示したようなマップを実験により予め作成しておくことで、給気マニホールド温度[℃]から、吸気温度[℃]を簡単に求めることができる。
【0085】
そして、吸気体積流量演算51時に、温度センサ34で直接検知した吸気温度[℃]と給気マニホールド温度[℃]から72に示したマップを用いて求めた吸気温度[℃]の何れを用いるかを、73で選択することができる。
【0086】
実施例6によれば、吸気温度を検知する温度センサ(図1においては34)を持たないターボチャージャ付きエンジンシステムにおいても、タービンの過回転の防止が可能である。
また、吸気温度を検知する温度センサ(図1においては34)を有する場合で、該温度センサが故障した場合においても、タービンの過回転の防止が可能となる。
【0087】
なお、給気マニホールド温度[℃]はEGR(排気再循環)によって影響を受けるため、給気マニホールド温度[℃]から吸気温度[℃]を用いる手法は、EGRを行わない(即ちEGR制御弁24の開度が0又はEGR通路20自体が存在しない)場合に適用が可能である。
【0088】
また、給気マニホールド温度[℃]から求める吸気温度[℃]は、実施例2において空気密度演算を実施する際に必要な吸気温度[℃]にも適用可能である。
【0089】
(実施例7)
実施例1〜3において、エアフローメータ26で検知される吸気質量流量[kg/s]に替えて、計算で求める吸気質量流量[kg/s]を使用することができる。
【0090】
EGR(排気ガス再循環)を行わない場合には、吸気質量流量[kg/s](Ga)は以下の式で求めることができる。
【数1】
なお、(1)式において、ρmは給気マニホールド内の空気密度[kg/m3]、VDは排気量[m3]、Neはエンジン回転数[rpm]、Rは気体定数(=287.05J/(kg・K))、Icycleはサイクル数、ncylはシリンダ数、ρV,m(Ne、Pm)は体積効率、Pmは給気マニホールド圧[Pa]、Tmは給気マニホールド温度[K]である。
【0091】
また、EGR(排気再循環)を行う場合には、EGRラインにEGRガス流量を検知するセンサを設けてEGRガス流量Gegrを計測し、上記(1)式によってシリンダに流入するガス流量Gcylを演算することで、吸気質量流量[kg/s](Ga)を以下の(2)式で求めることができる。
Ga=Gcyl−Gegr ・・・(2)
【0092】
実施例7によれば、エアフローメータを有さない過給気付きエンジンにおいても、タービンの過回転を防止することができる。
【0093】
(実施例8)
図11は、ある一定のエンジン回転数における空気密度とタービン回転数が許容値以下となる最大燃料噴射量の関係を示すグラフである。図11において縦軸は最大燃料噴射量[mg/st]、横軸は空気密度[kg/m3]を示しており、各プロットは実験点である。図11に示すように、最大燃料噴射量と空気密度の間には一定の関係があることがわかる。このようなグラフを回転数毎に作成することで、最大燃料噴射量と空気密度とタービン回転数の関係を示すマップを予め作成して、ECU40の記憶手段50に格納されている。
【0094】
図10は実施例8における燃料噴射量の制御のロジックを示す図である。
図10において、図2と同一符号は同一の動作、制御を意味し、その説明を省略する。
図10に示した81において、ECU40に、圧力センサ38で検知される大気圧[kPa]、温度センサ34で検知される吸気温度[℃]が入力され、大気圧[kPa]と吸気温度[℃]から空気密度[kg/m3]の演算を実施する。
【0095】
そして、図10に示した82において、予め作成した前記最大燃料噴射量と空気密度とタービン回転数の関係を示す第7マップに基づき最大噴射量を決定する。
尚、第6マップは、タービン回転数[rpm]と大気圧[kPa]に応じて、タービン回転数が許容値以下となる最大の燃料噴射量[mg/st]を予め実験結果より求めたものであるが、第7マップは、タービン回転数[rpm]と空気密度に応じて、タービン回転数が許容値以下となる最大の燃料噴射量[mg/st]を予め実験結果より求めたものである。
【0096】
実施例8によれば、入力値に対してより精密に最大噴射量を求めることができるマップが作成され、タービンの過回転を防止する際に、エンジンの出力の低下を小さく抑制することができる。
【0097】
(実施例9)
図13は、図11のグラフに示した実験点について、タービン回転数と空気密度の関係について示したグラフである。
図11及び図13においてa部で示したデータについては、図10において82で使用したようなマップによって最大燃料噴射量を制限すると、タービン回転数が許容値以下であるにも関わらず制限がかかることになる。これは、吸気温度によって燃費率が変化するためである。そこで、実施例9においては、吸気温度によって変化する燃費率によって最大噴射量に補正をかける。
【0098】
図12は、実施例9における燃料噴射量の制御のロジックを示す図である。
図12において、図2及び図10と同一符号は同一の動作、制御を意味し、その説明を省略する。
図12に示した91において吸気温度に応じた燃費率の悪化割合を、予め実験値により求めた第8マップがECU40の記憶手段50に格納されている。
91は、温度センサ34が検知した値から第8マップに基づいて燃費率の悪化割合を算出し、92で該燃費率の悪化割合に基づいて82でマップによって決定した最大噴射量に補正をかける。これにより、燃費率の悪化割合が大きいほど、最大噴射量が大きくなる。これは、タービン回転数の制限ぎりぎりまで出力(トルク)を出すことにあり、燃費率が悪化する高温時において,低温または常温時と同じ燃料噴射量で制限すると,まだタービン回転数に余裕がある出力(トルク)で制限がかかります。これを改善する目的で,燃費率が悪化割合を考慮し,燃費率が悪化する条件では最大噴射量を大きい側に補正するようにしてある。
【0099】
実施例9によれば、タービンの過回転を防止する際に、燃費率の変化を考慮することで、エンジンの出力の低下をさらに小さく抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明は、タービン回転数を直接検出する部品を追加することなくタービンの回転数を精度よく推定することができ、タービンの回転数を精度よく推定することでタービンの回転数を精度よく許容値以下に抑えて過回転を防止することができるターボチャージャ付きエンジンの制御装置として利用することができる。
【符号の説明】
【0101】
2 エンジン
6 給気マニホールド
14 ターボチャージャ
14a コンプレッサ
14b タービン
26 エアフローメータ(吸気質量流量測定手段)
28 温度センサ(給気マニホールド温度測定手段)
34 温度センサ(吸気温度測定手段)
36 圧力センサ(ブースト圧測定手段)
38 圧力センサ(大気圧測定手段)
40 ECU(タービン回転数推定手段及び燃料噴射量制御手段を兼ねる)
47 CPU
50 記憶手段
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターボチャージャ付きエンジンの制御装置に関するものであり、特にタービンの回転数を精度よく許容値以下に抑えることができるターボチャージャ付きエンジンの制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両や建設機械等において、ターボチャージャ付きのエンジンを採用したものが数多く使用されている。
【0003】
このような、ターボチャージャ付きのエンジンにおいては、気圧が低く空気密度の低い高地で使用する場合、低地で使用する場合と同量の空気をエンジンに供給しようとすると、エンジンに供給する空気体積で考えると低地で使用する場合よりも多量の空気をエンジンに供給する必要がある。そのため、ターボチャージャ付きのエンジンを空気密度が低い高地で使用すると、エンジンに多量に空気を供給するためにターボチャージャを構成するタービンの回転数が過剰に上昇し、ターボチャージャの破損を引き起こす可能性がある。
【0004】
そこで、ターボチャージャ付きのエンジンを空気密度が低い高地で使用した場合であっても、タービンの過回転を防止し、ターボチャージャの破損を事前に防止することができる技術が例えば特許文献1、特許文献2に開示されている。
【0005】
特許文献1に開示された技術は、タービンに可動ノズルベーンを装備したターボチャージャに付帯する回転数センサを設け、通常時においてはエンジンの運転状態に応じて出力される目標質量流量とターボチャージャのコンプレッサ上流側に設けたエアフローメータで計測される実質量流量が一致するようにノズルベーン開度制御をするものである。また、ターボチャージャの回転数検出値が理想回転数以上となった際に、コンプレッサの実吸気体積流量が体積流量マップに見合うように燃料噴射量を制御するものである。ここで、前記吸気体積流量は、エアフローメータで得られる吸気質量流量と吸気温度からの演算値である。
【0006】
また、特許文献2に開示された技術は、大気圧センサで計測した大気圧の情報から高度を判定し、判定した高度に基づいてタービン回転数を許容値以下に抑えるように、EGR制御弁を開操作するものである。この特許文献2に開示された技術は、油圧ショベル等の建設機械については、比較的高い回転数を保ちながら定格運転を行って油圧ポンプを連続的に駆動し、この油圧ポンプにより得られる油圧で土木作業を行うから、作業中における過給圧が比較的高く、空気密度の低い高地で排気ガスを再循環しても黒煙発生の問題が起こり難いため、EGR(Exhaust Gas Recirculation)制御弁を開操作することでタービン回転数を許容値以下に抑えることに適しているといえる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−299618号公報
【特許文献2】特開2008−184922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示された技術においては、回転数センサを設ける必要がある。通常、ターボチャージャの回転数を制御する必要はないため、特許文献1に開示される技術を採用するにあたっては、タービンの過回転検出のためだけに回転数センサを設けることとなり、これは製品コストの上昇に繋がるため好ましくない。また、質量流量と吸気温度の情報から体積流量を計算しているが、該計算に大気圧の情報を用いていない。体積流量は大気圧により変化するため、体積流量の演算が正確に行われているとは言えず、従って制御が正確に行われているとはいえない。
【0009】
また、特許文献2に開示された技術においては、EGR制御弁を開弁操作することでタービン回転数は低下するが、高負荷においてはもともと空気過剰率が低いためにスモークが発生しやすく、タービン回転数が上昇する低大気圧下での開弁操作は多量のスモーク発生に繋がる。
また、建設機械以外であって低負荷から高負荷への状態変化があるようなアプリケーションに対しては、ターボの過回転保護のためにEGRを導入すると黒煙発生の問題を引き起こす可能性が高いため、建設機械以外への適用は難しく適用範囲が狭い。
さらに、大気圧の情報から判定した高度の情報のみからタービン回転数を許容値に制御するものであるが、タービン回転数は気圧と吸気温度の両方に関係する。特許文献2に開示された技術のように、吸気温度を考慮しない場合、タービンの過回転が発生しやすい吸気温度が高い条件でも過回転が発生しないようにパラメータを設定する必要があり、吸気温度が低い時に必要以上に燃料噴射量を制限してしまい、エンジンの出力を必要以上に制限することとなる。
【0010】
上記課題を解決するため本発明においては、タービン回転数を直接検出する部品を追加することなくタービンの回転数を精度よく推定することができ、タービンの回転数を精度よく推定することでタービンの回転数を精度よく許容値以下に抑えて過回転を防止することができるターボチャージャ付きエンジンの制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明においては、エンジンの吸気通路に配置されたコンプレッサ及び排気通路に配置されたタービンを有するターボチャージャと、前記エンジンの運転状態に応じて、前記エンジンへの燃料噴射量を制御する燃料噴射量制御手段と、を有するターボチャージャ付きエンジンの制御装置において、前記エンジンの運転状態から、前記タービンの回転数の推定値を計算上求めるタービン回転数推定手段を有し、前記燃料噴射量制御手段は、前記タービン回転数の推定値が所定の許容値を越える場合に、前記タービン回転数の推定値が前記許容値以下となるように燃料噴射量を制御することを特徴とする。
【0012】
これにより、タービン回転数を直接検出する部品を追加することなく、エンジンの運転状態からタービン回転数を推定することができる。従って、タービン回転数を検知するセンサを仮に設けた場合に生じ得る製品コストの上昇、該センサの故障・誤検出による製品信頼性低下といった問題が発生することを回避できる。
また、タービン回転数が許容値を越える場合に燃料噴射量を制限することで、エンジン出力が制限され、これによりタービン回転数を所定値以下に抑えることができタービンの過回転を防止することができる。よってタービンの過回転に起因するターボチャージャの破損等を防止することができる。
【0013】
また、大気圧を測定する大気圧測定手段と、前記吸気通路に配置されたコンプレッサに吸入される吸気の吸気質量流量を測定する吸気質量流量測定手段と、前記吸気通路に配置されたコンプレッサに導入される吸気の温度を測定する吸気温度測定手段と、前記エンジンのブースト圧を測定するブースト圧測定手段と、を有し、前記タービン回転数推定手段は、前記大気圧と、前記吸気質量流量と、前記吸気温度とを用いて、前記吸気通路に配置されたコンプレッサに吸入される吸気の標準状態における吸気体積流量を求めるとともに、前記ブースト圧を大気圧で除算した給気圧力比を求め、前記標準状態における吸気体積流量と吸気圧力比と前記タービンの回転数の関係を示したターボチャージャの性能曲線を用いて、前記タービン回転数を推定するとよい。
【0014】
タービン回転数は、大気圧のみならず吸気温度にも影響を受ける。そこで、吸気体積流量と給気圧力比からターボチャージャの性能曲線を用いてタービン回転数を推定する際に、吸気体積流量として大気圧と吸気温度を考慮して求めた標準状態における吸気体積流量を使用することで精度よくタービン回転数を推定することができる。
ここで、標準状態とは25℃、1atmのことをいう。
【0015】
また、前記タービン回転数推定手段は、前記吸気体積流量と、前記給気圧力比と、前記タービン回転数との関係を示す第1マップを備え、該第1マップに基づいて前記タービン回転数を推定するとよい。
【0016】
タービン回転数は、大気圧のみならず吸気温度にも影響を受けるので、予め実験により求められた、吸気体積流量と、給気圧力比と、前記タービン回転数との関係を示す第1マップを記憶手段に備えておき、タービン回転数推定の際には、第1マップのデータを呼込むようにすることで、精度よくタービン回転数を推定することができる。
【0017】
また、前記第1マップにはEGR作動時と、EGR非作動時とにおけるそれぞれの関係のデータを有しているとよい。
【0018】
タービン回転数は、EGR作動時、又は非作動時によりタービンへの排気ガス流量が変化するので、タービン回転数も変化する。従って、EGR作動時と、非作動時における呼込みデータを切替えることにより、精度よくタービン回転数を推定することができる。
【0019】
また、大気圧を測定する大気圧測定手段と、前記吸気通路に配置されたコンプレッサに導入される吸気の温度を測定する吸気温度測定手段と、を有し、前記タービン回転数推定手段は、前記大気圧と、前記吸気温度とを用いて前記吸気の空気密度を算出し、予め実験により作成した吸気密度とタービン回転数の関係を示す第2マップを備え、該第2マップに基づいて、前記吸気の空気密度からタービン回転数を推定するとよい。
【0020】
これにより、ターボチャージャの性能曲線が不要であり、簡単な演算処理でタービン回転数を推定することができる。
【0021】
また、前記第2マップは、予め試験結果より求めたEGR作動時と、EGR非作動時における前記空気密度とタービン回転数との関係を示すデータを備え、EGRの使用状況よって切替えるようにするとよい。
【0022】
これにより、EGR作動時と、非作動時における呼込みデータを切替えることにより、精度よくタービン回転数を推定することができる。
【0023】
また、大気圧を測定する大気圧測定手段と、
前記吸気通路に配置されたコンプレッサに導入される吸気温度を測定する吸気温度測定手段と、を有し、
前記タービン回転数推定手段は、予め実験により作成した、前記大気圧と、前記吸気温度と、タービン回転数との三次元の関係を示す第3マップを備え、該第3マップに基づいて、前記大気圧測定手段と、前記吸気温度測定手段との検出値から、タービン回転数を推定するとよい。
【0024】
これにより、大気圧と、吸気温度との測定値によって、三次元マップから直接タービン回転数を推定するのでタービン回転数推定が速くなり噴射量制御が緻密になる。
【0025】
また、大気圧を測定する大気圧測定手段と、
前記吸気通路に配置されたコンプレッサに導入される吸気温度を測定する吸気温度測定手段と、を有し、
前記タービン回転数推定手段は、
予め実験により作成した、前記大気圧と、タービン回転数との関係を示す二次元マップを吸気温度毎に複数有する第4マップを備え、該第4マップに基づいて、前記大気圧測定手段と、前記吸気温度測定手段との検出値から、タービン回転数を推定するとよい。
【0026】
これにより、コンプレッサに導入される吸気の温度によって、大気圧とタービン回転数との関係を示す二次元マップを吸気温度毎に複数備えているので、吸気温度と、気圧変動に対するタービン回転数を精度よく推定できる。
【0027】
また、前記吸気温度測定手段は、前記エンジンの給気マニホールド内の給気マニホールド温度を測定する給気マニホールド温度測定手段と、予め実験により作成した給気マニホールド温度と吸気温度の関係を示す第5マップを備え、該第5マップに基づいて、前記給気マニホールド温度から吸気温度を求めることを特徴とする。
これにより、吸気通路に配置されたコンプレッサに導入される吸気の温度を直接検出するセンサ等が必要なくなる。そのため、吸気の温度を直接検出することができるセンサを有しないターボチャージャ付きエンジンに関しても、新たに該センサを設けることなく本発明の適用が可能となる。
【0028】
また、前記燃料噴射量制御手段は、前記タービン回転数と大気圧に応じて、前記タービン回転数が前記許容値以下となる最大の燃料噴射量を予め実験結果より求めて、これらタービン回転数と大気圧と最大の燃料噴射量との関係を示す第6マップを備え、該第6マップに基づいて前記タービン回転数が、前記許容値を越える場合に、前記大気圧とタービン回転数に応じた最大の燃料噴射量以下まで燃料噴射量を低減し、前記タービン回転数を前記許容値以下とするとよい。
これにより、燃料噴射量の最大値を容易に決定することができる。
【0029】
また、前記大気圧と、吸気温度とを用いて吸気の空気密度を演算する空気密度演算手段を有し、前記燃料噴射量制御手段は、前記タービン回転数と空気密度に応じて、前記タービン回転数が前記許容値以下となる最大の燃料噴射量が、予め実験結果より求めて、これらタービン回転数と空気密度と最大の燃料噴射量との関係が設定された第7マップを備え、該第7マップに基づいて前記タービン回転数が、前記許容値を越える場合に、前記空気密度とタービン回転数に応じた最大の燃料噴射量以下まで燃料噴射量を低減し、前記タービン回転数を前記許容値以下とするとよい。
これにより、燃料噴射量の上限値を決定する際にエンジン回転数と大気圧だけでなく吸気温度も考慮しているため、タービンの過回転を防止する際に燃料の噴射量の低減を小さく留め、エンジンの出力の低減を小さく留めることができる。
【0030】
また、前記燃料噴射量制御手段は、前記吸気温度に応じた燃費率の悪化割合を、予め実験結果より求めて、吸気温度と燃費率の関係を示した第8マップを備え、該第8マップに基づいて、前記悪化割合が大きいほど、前記最大の燃料噴射量を大きくなるように補正するとよい。
これにより、燃費率の変化を考慮することで、タービンの過回転を防止する際に、エンジン出力の低下をさらに小さく留めることができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、タービン回転数を直接検出する部品を追加することなくタービンの回転数を精度よく推定することができ、タービンの回転数を精度よく推定することでタービンの回転数を精度よく許容値以下に抑えて過回転を防止することができるターボチャージャ付きエンジンの制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】実施例1に係るターボチャージャ付きエンジンの制御装置が適用されるエンジン周辺を示す概略図である。
【図2】実施例1における燃料噴射量の制御のロジックを示す図である。
【図3】実施例1における燃料噴射量の制限にかかる制御のフローチャートである。
【図4】実施例1における最大噴射量制限判断の手順を示すフローチャートである。
【図5】実施例2における(A)は燃料噴射量の制御のロジックを示し、(B)はEGR作動、非作動時における燃料噴射量の制御のロジックを示す図である。
【図6】タービン回転数と空気密度の関係を示したグラフである。
【図7】実施例3における(A)は燃料噴射量の制御のロジックを示し、(B)は大気圧とタービン回転数との関係を示す二次元マップ吸気温度毎に構成したイメージを示す図である。
【図8】実施例4における燃料噴射量の制御のロジックを示す図である。
【図9】給気マニホールド温度と吸気温度との関係を示したグラフである。
【図10】実施例5における燃料噴射量の制御のロジックを示す図である。
【図11】一定のエンジン回転数における空気密度とタービン回転数が許容値以下となる最大燃料噴射量の関係を示すグラフである。
【図12】実施例6における燃料噴射量の制御のロジックを示す図である。
【図13】図10のグラフに示した実験点について、タービン回転数と空気密度の関係について示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
【0034】
(実施例1)
図1は、実施例1に係るターボチャージャ付きエンジンの制御装置が適用されるエンジン周辺を示す概略図である。図1において、エンジン2は4つの気筒を有する4サイクルディーゼルエンジンである。
【0035】
エンジン2には、吸気マニホールド6を介して吸気通路8が合流されるとともに、排気マニホールド10を介して排気通路12が接続されている。
【0036】
吸気通路8には、ターボチャージャ14のコンプレッサ14aが設けられている。コンプレッサ14aは後述するタービン14bに同軸駆動されるものである。吸気通路8のコンプレッサ14aよりも下流側には、吸気通路8を流れる給気と大気で熱交換を行うインタークーラー16が設けられている。また、吸気通路8のインタークーラー16よりも下流側には、吸気通路8内を流通する給気の流量を調節するスロットルバルブ18が設けられている。
【0037】
また、吸気通路8には、コンプレッサ14aの上流側に、吸気流量を検知するエアフローメータ26及び吸気温度を検知する温度センサ34が設けられ、インタークーラー16の下流側であってスロットルバルブ18の上流側に過給圧(ブースト圧)を検知する圧力センサ36が設けられている。また、給気マニホールド6には温度センサ28及び圧力センサ30が設けられている。
エアフローメータ26、温度センサ28、圧力センサ30、圧力センサ36の検知値は、それぞれA/D変換器46a、46b、46c、46eを介してエンジンコントロールユニット(Engine Control Unit:ECU)40に入力される。また、温度センサ34の検知値は、サーミスタ回路42を介してECU40に入力される。
更に、ECU40には、後述する本発明のターボチャージャ14の回転数を推定するマップを格納した記憶手段50が設けられている。
【0038】
排気通路12には、ターボチャージャ14のタービン14bが設けられている。タービン14bは、エンジン2からの排気ガスにより駆動されるものである。また、排気マニホールド10には、排気の一部を吸気通路8へ再循環させるEGR通路20が接続されている。EGR通路20には、EGRクーラー22及びEGR制御弁24が設けられている。
EGRクーラー22は、EGR制御弁24よりも排気マニホールド10側に設けられ、EGRクーラー22を通過するEGRガスと冷却水とで熱交換して、該EGRガスの温度を低下させるものである。また、EGR制御弁24は、EGR通路20を流れるEGRガスの流量を制御するものである。
【0039】
また、エンジン2にはエンジンスピードセンサ32が設けられており、エンジンスピードセンサ32の検知値はパルスカウント回路45を介してECU40に入力される。
更に、大気圧を測定することができる圧力センサ38が設けられており、圧力センサ38によって検知された大気圧は、A/D変換器46dを介してECU40に入力される。
なお、圧力センサ38に変えて、GPSなどの高度情報を入手できる手段を設け、ECU40により前記高度情報から大気圧を推測するようにしてもよい。
【0040】
ECU40では、前述の各入力された値を基にCPU47でEGR制御弁24及びスロットルバルブ18の目標開度を演算し、駆動回路43、44を介してEGR制御弁24及びスロットルバルブ18の開度を制御する。
また、前述の各入力された値を基にCPU47でエンジン4への燃料噴射量を演算し、インジェクタ駆動回路41を介してエンジン2の燃焼室4への燃料噴射量を制御する。
【0041】
さらに、本発明に特徴的な制御に係る事項として、前記燃料噴射量をタービン14bの回転数によって制限をかけている。
本発明における燃料噴射量の制限にかかる制御について説明する。
図2は、実施例1における燃料噴射量のロジックを示す図、図3は実施例1における燃料噴射量の制限にかかる制御のフローチャートである。
【0042】
図3に示したフローチャートにおいて処理が開始、ここではECU40が稼動するとステップS1に進む。
ステップS1では、ECU40に各センサのデータが読み込まれる。
ステップS1にて読み込むセンサデータは、圧力センサ38で検知される大気圧[kPa]、エアフローメータ26で検知される吸気質量流量[kg/s]、温度センサ34で検知される吸気温度[℃]、圧力センサ36で検知されるブースト圧[kPa]である。
【0043】
ステップS1にて各センサのデータの読み込みが終了するとステップS2に進む。
ステップS2では吸気体積流量演算を実施する。これは図2に示した51にあたる。ステップS2では、図2に51で示したように、エアフローメータ26で検知される吸気質量流量[kg/s]、圧力センサ38で検知される大気圧[kPa]及び温度センサ34で検知される吸気温度[℃]を用いて標準状態(25℃、1atm)における吸気体積流量[m3/s]を演算する。
【0044】
ステップS2にて標準状態における吸気体積流量の演算が終了すると、ステップS3に進む。
ステップS3では給気圧力比を演算する。これは図2に示した52にあたる。ステップS3では、図2に52で示すように、圧力センサ36で検知されるブースト圧[kPa]を圧力センサ38で検知される大気圧[kPa]で除して給気圧力比[−]を演算する。
【0045】
ステップS3にて給気圧力比の演算が終了すると、ステップS4に進む。
ステップS4では、タービン14bのタービン回転数を推定する。タービン回転数は、図2において53で示したような第1マップであるターボチャージャの性能曲線から推定する。第1マップはECU40の記憶手段50に格納されている。
ターボチャージャの性能曲線は、標準状態における吸気体積流量[m3/s]、給気圧力比[−]及びタービン回転数の関係を示したものであり、ターボチャージャごとに固有のものである。図2における53には、給気圧力比[−]と標準状態における空気体積流量[m3/s]との関係を、回転数毎に示した性能曲線の一例を図示している。このような性能曲線を用いることで、給気圧力比[−]と標準状態における空気体積流量[m3/s]からタービン回転数を推定することができる。
【0046】
つまり、ステップS2で各センサから読み込んだ情報を基に標準状態における吸気体積流量[m3/s]を演算し、ステップS3で圧力センサ38から読み込んだ大気圧[kPa]情報を基に給気圧力比[−]を演算し、ステップ4で性能曲線(第1マップ)を用いてタービン回転数を推定することで、センサから読み込んだ情報のみからタービン回転数を推定することができる。
【0047】
ステップS4が終了すると、ステップS5に進む。
ステップS5では、最大噴射量[mg/st]を演算する。ここで、最大噴射量とは、インジェクタ駆動回路41を介してエンジン2の燃焼室4へ噴射される燃料の量[mg/st]の上限値を意味している。
最大噴射量は、図2において54で示したようなマップを用いて求める。図2において54で示したマップは、最大噴射量[mg/st]、タービン回転数[rpm]、大気圧[kPa]の関係を示したものである。このようなマップを用いることで、圧力センサ38で検知した大気圧[kPa]及びステップS4にて演算したタービン回転数から最大噴射量を求めることができる。
なお、図2において54で示すように、大気圧及びタービン回転数から最大噴射量を求めることができるマップは、大気圧毎に、タービン回転数に応じて、タービン回転数が過回転を防止できる許容値以下となるような最大噴射量が求まるように予め作成しておく。
マップ54からは、大気圧が低い即ち高高度(高地)であるほど最大噴射量は小さくなることがわかる。
【0048】
ステップS5が終了すると、ステップS6に進む。
ステップS6では最大噴射量制限判断を行う。最大噴射量制限判断とは、エンジン2に噴射する燃料量の上限をステップS5で求めた最大噴射量に制限するか否かを判断することである。タービン回転数が所定以上の高回転である場合に、タービンの過回転が生じ、ターボチャージャの破損等が生じる可能性があることから、ステップS4で求められるタービン回転数が所定の許容値以上の高回転である場合に、エンジン2に噴射する燃料量の上限をステップS5で求めた最大噴射量に制限する。
前記最大噴射量制限判断は、タービン回転数が所定の許容値近辺である場合に、前記判断のON/OFFが頻繁に切り替わることがないように図2において55で示したようにヒステリシスを持たせて判断する。図2における55は最大噴射量制限判断に関するマップであって、縦軸は前記判断のON/OFF、横軸はタービン回転数を示しており、詳しくは以下で図4を用いて説明する。
【0049】
ステップS6における最大噴射量制限判断の一例を図4を用いて説明する。
図4は、実施例1における最大噴射量制限判断の手順を示すフローチャートである。
処理が開始すると、ステップS11で現状における噴射量制限フラグがONであるか否かを判断する。ここで噴射量制限フラグとは、エンジン2に噴射する燃料量の上限をステップS5で求めた最大噴射量に制限するか否かの判断を行うためのフラグであり、ステップS4で算出されるタービン回転数に影響されるものである。
【0050】
ステップS11でYES即ち現状における噴射量制限フラグがONであると判断されると、ステップS12に進む。
ステップS12では、Nt(タービン回転数)が18万rpmよりも小さいか否かを判断する。ステップS12でYES即ちNt<18万rpmであると判断されるとステップS15で噴射量制限フラグをOFFに変更して処理を終了する。ステップS12でNO即ちNt≧18万rpmであると判断されるとステップS13に進む。
ステップS13では、エンジンのキーがOFFされたか否かを判断する。ステップS13でYES即ちエンジンのキーがOFFであると判断されるとステップS15で噴射量制限フラグをOFFに変更して処理を終了する。
ステップS13でNO即ちエンジンのキーがONであると判断されるとステップS14に進む。
【0051】
ステップS14では、噴射量制限フラグがONとなってから例えば1時間等の所定時間が経過したか否かを判断する。ステップS14でYES即ち噴射量制限フラグがONとなってから所定時間経過したと判断されるとステップS15で噴射量制限フラグをOFFに変更して処理を終了する。
ステップS13でONと判断されると噴射量制限フラグをONのまま変更せずに処理を終了する。
つまり、ステップS12〜S14では、タービン回転数が18万rpmより小さい、エンジンのキーがOFFされた、噴射量制限フラグがONとなってから例えば1時間等の所定時間が経過した、の何れかを満たすと噴射量制限フラグがOFFに変更する。
【0052】
また、ステップS11でNO即ち現状における噴射量制限フラグがOFFであると判断されると、ステップS16に進む。
ステップS16では、Nt(タービン回転数)が19万rpmよりも大きいか否かを判断する。ステップS16でYES即ちNt>19万rpmであると判断されるとステップS17に進み、噴射量制限フラグをONに変更して処理を終了する。ステップS16でNO即ちNt≦19万rpmであると判断されると噴射量制限フラグをOFFのまま変更せずに処理を終了する。
【0053】
即ち、図4に示した最大噴射量制限判定によれば、現状における噴射量制限フラグの状態に関わらずNt>19万rpmでは噴射量制限フラグがON、Nt<18万rpmでは噴射量制限フラグがOFFとなって処理を終了する。また18万rpm≦Nt≦19万rpmの範囲では現状の噴射量制限フラグの状態を維持して処理を終了するが、現状の噴射量制限フラグの状態がONであり、且つエンジン2のキーがOFFされた又は、噴射量制限フラグがONとなってから所定時間が経過した場合には噴射量制限フラグをOFFに変更して処理を終了する。
【0054】
更に、ステップS13、ステップS14については、図4における、ステップS13のエンジンキーOFFの条件はエンジンキーがOFFになったらフラグをリセットさせるものである。
また、ステップS14のフラグONから所定時間経過の条件は、例えば、噴射量制限フラグONから所定の数時間が経過すると、気温が低下して空気密度が上昇する場合、又は車両に搭載されたエンジン2で、車両が下山することで空気密度が上昇する場合でも、エンジンキーがOFFされるまで燃料噴射量が制限されると、エンジン2の十分な出力を得難くなる。
従って、エンジンキーOFFと、噴射量制限フラグがONから所定時間経過の条件の組合せにより、効果的な燃料噴射量制限の制御が可能となる。
【0055】
また、図4に示したようにすることにより以下のような効果を得ることができる。
即ち、高回転、高負荷域を頻繁に使用するパワーショベル等においては、燃料噴射量制限ON―OFFを繰返すことになる。その結果、燃料噴射量制限機能のON―OFFが繰返されると、エンジン2出力の変動が繰返し発生して、運転者としては運転者の操作意図と異なる出力となり、操作に違和感を覚える。このような不具合を防止できる。
【0056】
図3に示したフローチャートにおけるステップS6が終了すると、図2に示したフローチャートにおいて、ステップS7に進む。
ステップS7においては、図4に示したフローチャートにより、最大噴射量制限判断(図2に示した55)がされると、前記噴射量制限フラグである場合には図2に示した回路56がONとなり、ステップS5(図2におけるマップ54)で求めた最大噴射量[mg/st]が出力される。前記噴射量制限フラグがOFFである場合には、燃料噴射量は特に制限されない。
【0057】
ステップS7が終了すると、処理を終了する。
ステップS7において、前記噴射量制限フラグがONであって最大噴射量が出力された場合には、ECU40は、前述の各入力された値を基にCPU47でエンジン4への燃料噴射量を演算しインジェクタ駆動回路41を介してエンジン4への燃料噴射量を制御する際に、燃料噴射量が前記最大噴射量を超えないように制御する。
【0058】
実施例1によれば、最大噴射量を制限することで、エンジン出力が制限され、これによりタービン回転数を所定値以下に抑えることができタービンの過回転を防止することができる。よってタービンの過回転に起因するターボチャージャの破損等を防止することができる。
【0059】
また、大気圧[kPa]、吸気質量流量[kg/s]、吸気温度[℃]、ブースト圧[kPa]の各検知値からタービン回転数を推測することができる。そのため、タービン回転数を検知するセンサを設ける必要がなく、該タービン回転数を検知するセンサを仮に設けた場合に生じ得る製品コストの上昇、該センサの故障・誤検出による製品信頼性低下といった問題が発生することを回避できる。
【0060】
さらに、本実施例においては大気圧やGPSからの高度情報のみならず、吸気温度も考慮してタービン回転数を推定しているため、精度よくタービン回転数を推定することができる。これにより、精度よくタービン回転数を許容値以下に抑えることができる。
【0061】
また、図2に示した53のようなターボチャージャの性能曲線を使用する際に、標準状態での体積流量を用いているため、精度よくターボチャージャの性能曲線からタービン回転数を推定することができる。
【0062】
さらに、タービンの過回転を防止するためにEGR制御弁を制御するものではないため、EGR装置付きのエンジンにも、本実施例の技術をそのまま適用することができる。
【0063】
(実施例2)
実施例1に係るターボチャージャ付きエンジンの制御装置が適用されるエンジン周辺を示す概略図については、実施例1にて説明した図1と同様であるため図1を援用しその説明を省略する。
【0064】
図5(A)は実施例2における燃料噴射量の制御のロジックを示す図である。
図5(A)において、図2と同一符号は同一の動作、制御を意味し、その説明を省略する。
実施例2においては、実施例1とはタービン回転数の推定方法が異なる。
図5(A)を用いて実施例2におけるタービン回転数の推定方法について説明する。
【0065】
図5(A)に示した61にて、ECU40に、圧力センサ38で検知される大気圧[kPa]と、温度センサ34で検知される吸気温度[℃]が入力され、大気圧[kPa]と吸気温度[℃]から空気密度[kg/m3]の演算を実施する。
【0066】
そして、図5(A)に示した62にて、タービン回転数[rpm]と空気密度[kg/m3]の関係を示した第2マップ(A)からタービン回転数[rpm]を推定する。
第2マップ(A)はECU40の記憶手段50に格納されている。
【0067】
第2マップ(A)は図6に示すように、タービン回転数[rpm]と空気密度[kg/m3]の関係を示したグラフの一例である。図6において縦軸はタービン回転数[×104rpm]、横軸は空気密度[kg/m3]であり、各プロットは実験点である。図6から、タービン回転数と空気密度との間には負の一次の相関関係があり、このようなタービン回転数と空気密度を予め作成しておけば、空気密度からタービン回転数を簡単に求めることができる。
【0068】
タービン回転数を算出した以降は実施例1と同様であり、その説明は省略する。
【0069】
実施例2によれば、ターボチャージャの性能曲線が不要であり、簡単な演算処理でタービン回転数の推定値を求めることができる。
【0070】
(実施例3)
図5(B)は実施例3における燃料噴射量の制御のロジックを示す図である。
図5(B)において、図2と同一符号は同一の動作、制御を意味し、その説明は省略する。
実施例3においては、実施例2におけるタービン回転数の推定方法に、EGR―ON(作動)/OFF(非作動)の条件を追加した内容が異なる。
【0071】
図5(B)に示した61にて、大気圧[kPa]と吸気温度[℃]から空気密度[kg/m3]の演算を実施した値と、EGRのON/OFFが63に入力される。
【0072】
そして、図5(B)に示した63にて、EGRのON(作動)/OFF(非作動)により、空気密度[kg/m3]が変化してタービン回転数が異なってくる。
従って、第2マップ(B)はタービン回転数[rpm]と空気密度[kg/m3]の関係を示した第2マップ(A)に、EGR―ON時(破線)と、EGR―OFF時(実線)とのタービン回転数と空気密度を予め作成しておくことにより、空気密度からEGRのON/OFF時別のタービン回転数を容易に求めることができるようにしたものである。
【0073】
タービン回転数を算出した以降は実施例1と同様であり、その説明は省略する。
【0074】
(実施例4)
実施例1に係るターボチャージャ付きエンジンの制御装置が適用されるエンジン周辺を示す概略図については、実施例1にて説明した図1と同様であるため図1を援用しその説明を省略する。
【0075】
図7(A)は実施例4における燃料噴射量の制御のロジックを示す図である。
図7(A)において、図2と同一符号は同一の動作、制御を意味し、その説明を省略する。
実施例4においては、実施例1とはタービン回転数の推定方法が異なる。
図7(A)を用いて実施例4におけるタービン回転数の推定方法について説明する。
【0076】
図7(A)に示した65にて、ECU40に圧力センサ38で検知される大気圧[kPa]と、温度センサ34で検知される吸気温度[degC]からタービン回転数[rpm]が算出されるようになっている。
第3マップは、65に示すように、タービン回転数[rpm]、大気圧[kPa]及び吸気温度[℃]との関係を、予め実験により求めた値を、X軸に大気圧[kPa]、Y軸にタービン回転数[rpm]、Z軸に吸気温度[℃]とした第3マップである三次元マップを作成して、ECU40の記憶手段50に格納されている。
尚、マップには、EGR―ON時(破線)と、EGR―OFF時(実線)とのタービン回転数と大気圧を予め作成しておくことにより、大気圧からEGRのON/OFF時別のタービン回転数を容易に求めることができる。
【0077】
そして、図7(A)に示した65にて、ECU40に入力された大気圧[kPa]と吸気温度[℃]から三次元マップによってタービン回転数[rpm]を直接推定する。
【0078】
タービン回転数[rpm]を算出した以降は実施例1と同様であり、その説明は省略する。
このようにすることにより、センサ38(大気圧)と、温度センサ34(吸気温度)によって検出された検出値から直接タービン回転数[rpm]を推定するので、推定が早く、素早い燃料噴射制御が可能になる。
【0079】
(実施例5)
図7(B)は実施例5における大気圧[kPa]とタービン回転数[rpm]との関係を示す二次元マップを吸気温度毎に構成したイメージ図を示す。
図7(B)は、図7(A)の65のタービン回転数の推定方法を66に変更したもので、図7(A)と同一符号は同一の動作、制御を意味し、その説明は省略する。
【0080】
図7(B)に示すように第4マップは66にて、大気圧[kPa]とタービン回転数[rpm]との関係を示す第3マップを吸気温度[℃]毎に作成したもので、ECU40の記憶手段50に格納されている。
尚、マップには、EGR―ON時(破線)と、EGR―OFF時(実線)とのタービン回転数と大気圧を予め作成しておくことにより、大気圧からEGRのON/OFF時別のタービン回転数を容易に求めることができる。
【0081】
タービン回転数を算出した以降は実施例1と同様であり、その説明は省略する。
このようにすることにより、吸気温度[℃]毎に作成したマップに基づいて、温度センサ34及び、大気圧センサ38によって検出された検出値から直接タービン回転数[rpm]を推定するので、推定が早く、吸気温度に基づいた緻密で、且つ素早い燃料噴射制御が可能になる。
【0082】
(実施例6)
図8は実施例6における燃料噴射量の制御のロジックを示す図である。
図8において、図2と同一符号は同一の動作、制御を意味し、その説明は省略する。
実施例6においては、実施例1における吸気体積流量演算51の際に使用される吸気温度[℃]に変えて、給気マニホールド温度[℃]から推定した吸気温度[℃]を使用できるようにしている。
【0083】
図8において、ECU40は温度センサ28で検知された給気マニホールド温度[℃]をローパスフィルタ71を通し、72で第5マップを用いて給気マニホールド温度[℃]から吸気温度[℃]を求める。ローパスフィルタ71は、過渡運転時において運転パターンが給気マニホールド温度変化に与える影響を抑える目的で適用している。
尚、第5マップはECU40の記憶手段50に格納されている。
【0084】
図9は、給気マニホールド温度[℃]と吸気温度[℃]との関係を示したグラフであり、縦軸は給気マニホールド温度[℃]、横軸は吸気温度[℃]、各プロットは実験点を表している。図9に示したように、高度に寄らず、即ち大気圧に寄らず吸気マニホールド温度[℃]と吸気温度[℃]との間には一次の相関関係があることがわかる。
従って、図9に示したようなマップを実験により予め作成しておくことで、給気マニホールド温度[℃]から、吸気温度[℃]を簡単に求めることができる。
【0085】
そして、吸気体積流量演算51時に、温度センサ34で直接検知した吸気温度[℃]と給気マニホールド温度[℃]から72に示したマップを用いて求めた吸気温度[℃]の何れを用いるかを、73で選択することができる。
【0086】
実施例6によれば、吸気温度を検知する温度センサ(図1においては34)を持たないターボチャージャ付きエンジンシステムにおいても、タービンの過回転の防止が可能である。
また、吸気温度を検知する温度センサ(図1においては34)を有する場合で、該温度センサが故障した場合においても、タービンの過回転の防止が可能となる。
【0087】
なお、給気マニホールド温度[℃]はEGR(排気再循環)によって影響を受けるため、給気マニホールド温度[℃]から吸気温度[℃]を用いる手法は、EGRを行わない(即ちEGR制御弁24の開度が0又はEGR通路20自体が存在しない)場合に適用が可能である。
【0088】
また、給気マニホールド温度[℃]から求める吸気温度[℃]は、実施例2において空気密度演算を実施する際に必要な吸気温度[℃]にも適用可能である。
【0089】
(実施例7)
実施例1〜3において、エアフローメータ26で検知される吸気質量流量[kg/s]に替えて、計算で求める吸気質量流量[kg/s]を使用することができる。
【0090】
EGR(排気ガス再循環)を行わない場合には、吸気質量流量[kg/s](Ga)は以下の式で求めることができる。
【数1】
なお、(1)式において、ρmは給気マニホールド内の空気密度[kg/m3]、VDは排気量[m3]、Neはエンジン回転数[rpm]、Rは気体定数(=287.05J/(kg・K))、Icycleはサイクル数、ncylはシリンダ数、ρV,m(Ne、Pm)は体積効率、Pmは給気マニホールド圧[Pa]、Tmは給気マニホールド温度[K]である。
【0091】
また、EGR(排気再循環)を行う場合には、EGRラインにEGRガス流量を検知するセンサを設けてEGRガス流量Gegrを計測し、上記(1)式によってシリンダに流入するガス流量Gcylを演算することで、吸気質量流量[kg/s](Ga)を以下の(2)式で求めることができる。
Ga=Gcyl−Gegr ・・・(2)
【0092】
実施例7によれば、エアフローメータを有さない過給気付きエンジンにおいても、タービンの過回転を防止することができる。
【0093】
(実施例8)
図11は、ある一定のエンジン回転数における空気密度とタービン回転数が許容値以下となる最大燃料噴射量の関係を示すグラフである。図11において縦軸は最大燃料噴射量[mg/st]、横軸は空気密度[kg/m3]を示しており、各プロットは実験点である。図11に示すように、最大燃料噴射量と空気密度の間には一定の関係があることがわかる。このようなグラフを回転数毎に作成することで、最大燃料噴射量と空気密度とタービン回転数の関係を示すマップを予め作成して、ECU40の記憶手段50に格納されている。
【0094】
図10は実施例8における燃料噴射量の制御のロジックを示す図である。
図10において、図2と同一符号は同一の動作、制御を意味し、その説明を省略する。
図10に示した81において、ECU40に、圧力センサ38で検知される大気圧[kPa]、温度センサ34で検知される吸気温度[℃]が入力され、大気圧[kPa]と吸気温度[℃]から空気密度[kg/m3]の演算を実施する。
【0095】
そして、図10に示した82において、予め作成した前記最大燃料噴射量と空気密度とタービン回転数の関係を示す第7マップに基づき最大噴射量を決定する。
尚、第6マップは、タービン回転数[rpm]と大気圧[kPa]に応じて、タービン回転数が許容値以下となる最大の燃料噴射量[mg/st]を予め実験結果より求めたものであるが、第7マップは、タービン回転数[rpm]と空気密度に応じて、タービン回転数が許容値以下となる最大の燃料噴射量[mg/st]を予め実験結果より求めたものである。
【0096】
実施例8によれば、入力値に対してより精密に最大噴射量を求めることができるマップが作成され、タービンの過回転を防止する際に、エンジンの出力の低下を小さく抑制することができる。
【0097】
(実施例9)
図13は、図11のグラフに示した実験点について、タービン回転数と空気密度の関係について示したグラフである。
図11及び図13においてa部で示したデータについては、図10において82で使用したようなマップによって最大燃料噴射量を制限すると、タービン回転数が許容値以下であるにも関わらず制限がかかることになる。これは、吸気温度によって燃費率が変化するためである。そこで、実施例9においては、吸気温度によって変化する燃費率によって最大噴射量に補正をかける。
【0098】
図12は、実施例9における燃料噴射量の制御のロジックを示す図である。
図12において、図2及び図10と同一符号は同一の動作、制御を意味し、その説明を省略する。
図12に示した91において吸気温度に応じた燃費率の悪化割合を、予め実験値により求めた第8マップがECU40の記憶手段50に格納されている。
91は、温度センサ34が検知した値から第8マップに基づいて燃費率の悪化割合を算出し、92で該燃費率の悪化割合に基づいて82でマップによって決定した最大噴射量に補正をかける。これにより、燃費率の悪化割合が大きいほど、最大噴射量が大きくなる。これは、タービン回転数の制限ぎりぎりまで出力(トルク)を出すことにあり、燃費率が悪化する高温時において,低温または常温時と同じ燃料噴射量で制限すると,まだタービン回転数に余裕がある出力(トルク)で制限がかかります。これを改善する目的で,燃費率が悪化割合を考慮し,燃費率が悪化する条件では最大噴射量を大きい側に補正するようにしてある。
【0099】
実施例9によれば、タービンの過回転を防止する際に、燃費率の変化を考慮することで、エンジンの出力の低下をさらに小さく抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明は、タービン回転数を直接検出する部品を追加することなくタービンの回転数を精度よく推定することができ、タービンの回転数を精度よく推定することでタービンの回転数を精度よく許容値以下に抑えて過回転を防止することができるターボチャージャ付きエンジンの制御装置として利用することができる。
【符号の説明】
【0101】
2 エンジン
6 給気マニホールド
14 ターボチャージャ
14a コンプレッサ
14b タービン
26 エアフローメータ(吸気質量流量測定手段)
28 温度センサ(給気マニホールド温度測定手段)
34 温度センサ(吸気温度測定手段)
36 圧力センサ(ブースト圧測定手段)
38 圧力センサ(大気圧測定手段)
40 ECU(タービン回転数推定手段及び燃料噴射量制御手段を兼ねる)
47 CPU
50 記憶手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの吸気通路に配置されたコンプレッサ及び排気通路に配置されたタービンを有するターボチャージャと、
前記エンジンの運転状態に応じて、前記エンジンへの燃料噴射量を制御する燃料噴射量制御手段と、を有するターボチャージャ付きエンジンの制御装置において、
前記エンジンの運転状態から、前記タービンの回転数の推定値を計算上求めるタービン回転数推定手段を有し、
前記燃料噴射量制御手段は、前記タービン回転数の推定値が所定の許容値を越える場合に、前記タービン回転数の推定値が前記許容値以下となるように燃料噴射量を制御することを特徴とするターボチャージャ付きエンジンの制御装置。
【請求項2】
大気圧を測定する大気圧測定手段と、
前記吸気通路に配置されたコンプレッサに吸入される吸気の吸気質量流量を測定する吸気質量流量測定手段と、
前記吸気通路に配置されたコンプレッサに導入される吸気の温度を測定する吸気温度測定手段と、
前記エンジンのブースト圧を測定するブースト圧測定手段と、を有し、
前記タービン回転数推定手段は、
前記大気圧と、前記吸気質量流量と、前記吸気温度とを用いて、前記吸気通路に配置されたコンプレッサに吸入される吸気の標準状態における吸気体積流量を求めるとともに、前記ブースト圧を大気圧で除算した給気圧力比を求め、前記標準状態における吸気体積流量と吸気圧力比と前記タービンの回転数の関係を示したターボチャージャの性能曲線を用いて、前記タービン回転数を推定することを特徴とする請求項1記載のターボチャージャ付きエンジンの制御装置。
【請求項3】
前記タービン回転数推定手段は、
前記吸気体積流量と、前記給気圧力比と、前記タービン回転数との関係を示す第1マップを備え、
該第1マップに基づいて前記タービン回転数を推定することを特徴とする請求項2記載のターボチャージャ付きエンジンの制御装置。
【請求項4】
前記第1マップにはEGR作動時と、非作動時とにおけるそれぞれの関係のデータ有していることを特徴とする請求項3記載のターボチャージャ付きエンジンの制御装置。
【請求項5】
大気圧を測定する大気圧測定手段と、
前記吸気通路に配置されたコンプレッサに導入される吸気の温度を測定する吸気温度測定手段と、を有し、
前記タービン回転数推定手段は、
前記大気圧と、前記吸気温度とを用いて前記吸気の空気密度を算出し、
予め実験により作成した吸気密度とタービン回転数の関係を示す第2マップを備え、該第2マップに基づいて前記吸気の空気密度からタービン回転数を推定することを特徴とする請求項1記載のターボチャージャ付きエンジンの制御装置。
【請求項6】
前記第2マップは
予め実験結果より求めたEGR作動時と、EGR非作動時における前記空気密度とタービン回転数との関係を示すデータを備え、EGRの使用状況によって切替えるようにしたことを特徴とする請求項5記載のターボチャージャ付きエンジンの制御装置。
【請求項7】
大気圧を測定する大気圧測定手段と、
前記吸気通路に配置されたコンプレッサに導入される吸気温度を測定する吸気温度測定手段と、を有し、
前記タービン回転数推定手段は、
予め実験により作成した、前記大気圧と、前記吸気温度と、タービン回転数との三次元の関係を示す第3マップを備え、該第3マップに基づいて、前記大気圧測定手段と、前記吸気温度測定手段との検出値から、タービン回転数を推定することを特徴とする請求項1記載のターボチャージャ付きエンジンの制御装置。
【請求項8】
大気圧を測定する大気圧測定手段と、
前記吸気通路に配置されたコンプレッサに導入される吸気温度を測定する吸気温度測定手段と、を有し、
前記タービン回転数推定手段は、
予め実験により作成した、前記大気圧と、タービン回転数との関係を示す二次元マップを吸気温度毎に複数有する第4マップを備え、該第4マップに基づいて、前記大気圧測定手段と、前記吸気温度測定手段との検出値から、タービン回転数を推定することを特徴とする請求項1記載のターボチャージャ付きエンジンの制御装置。
【請求項9】
前記吸気温度測定手段は、
前記エンジンの給気マニホールド内の給気マニホールド温度を測定する給気マニホールド温度測定手段と、
予め実験により作成した給気マニホールド温度と吸気温度の関係を示す第5マップを備え、該第5マップに基づいて前記給気マニホールド温度から吸気温度を求めることを特徴とする請求項2〜7何れかに記載のターボチャージャ付きエンジンの制御装置。
【請求項10】
前記燃料噴射量制御手段は、
前記タービン回転数と大気圧に応じて、前記タービン回転数が前記許容値以下となる最大の燃料噴射量を予め実験結果より求めて、これらタービン回転数と大気圧と最大の燃料噴射量との関係を示す第6マップを備え、該第6マップに基づいて、
前記タービン回転数が、前記許容値を越える場合に、前記大気圧とタービン回転数に応じた最大の燃料噴射量以下まで燃料噴射量を低減し、前記タービン回転数を前記許容値以下とすることを特徴とする請求項2〜8何れかに記載のターボチャージャ付きエンジンの制御装置。
【請求項11】
前記大気圧と、吸気温度とを用いて吸気の空気密度を演算する空気密度演算手段を有し、
前記燃料噴射量制御手段は、
前記タービン回転数と空気密度に応じて、前記タービン回転数が前記許容値以下となる最大の燃料噴射量が予め実験結果より求めて、これらタービン回転数と空気密度と最大の燃料噴射量との関係が設定された第7マップを備え、該第7マップに基づいて、
前記タービン回転数が、前記許容値を越える場合に、前記空気密度とタービン回転数に応じた最大の燃料噴射量以下まで燃料噴射量を低減し、前記タービン回転数を前記許容値以下とすることを特徴とする請求項2〜8何れかに記載のターボチャージャ付きエンジンの制御装置。
【請求項12】
前記燃料噴射量制御手段は、
前記吸気温度に応じた燃費率の悪化割合を予め実験結果より求めて、吸気温度と燃費率の悪化割合の関係を示した第8マップを備え、該第8マップに基づいて、前記悪化割合が大きいほど、前記最大の燃料噴射量が大きくなるように補正することを特徴とする請求項10又は11記載のターボチャージャ付きエンジンの制御装置。
【請求項1】
エンジンの吸気通路に配置されたコンプレッサ及び排気通路に配置されたタービンを有するターボチャージャと、
前記エンジンの運転状態に応じて、前記エンジンへの燃料噴射量を制御する燃料噴射量制御手段と、を有するターボチャージャ付きエンジンの制御装置において、
前記エンジンの運転状態から、前記タービンの回転数の推定値を計算上求めるタービン回転数推定手段を有し、
前記燃料噴射量制御手段は、前記タービン回転数の推定値が所定の許容値を越える場合に、前記タービン回転数の推定値が前記許容値以下となるように燃料噴射量を制御することを特徴とするターボチャージャ付きエンジンの制御装置。
【請求項2】
大気圧を測定する大気圧測定手段と、
前記吸気通路に配置されたコンプレッサに吸入される吸気の吸気質量流量を測定する吸気質量流量測定手段と、
前記吸気通路に配置されたコンプレッサに導入される吸気の温度を測定する吸気温度測定手段と、
前記エンジンのブースト圧を測定するブースト圧測定手段と、を有し、
前記タービン回転数推定手段は、
前記大気圧と、前記吸気質量流量と、前記吸気温度とを用いて、前記吸気通路に配置されたコンプレッサに吸入される吸気の標準状態における吸気体積流量を求めるとともに、前記ブースト圧を大気圧で除算した給気圧力比を求め、前記標準状態における吸気体積流量と吸気圧力比と前記タービンの回転数の関係を示したターボチャージャの性能曲線を用いて、前記タービン回転数を推定することを特徴とする請求項1記載のターボチャージャ付きエンジンの制御装置。
【請求項3】
前記タービン回転数推定手段は、
前記吸気体積流量と、前記給気圧力比と、前記タービン回転数との関係を示す第1マップを備え、
該第1マップに基づいて前記タービン回転数を推定することを特徴とする請求項2記載のターボチャージャ付きエンジンの制御装置。
【請求項4】
前記第1マップにはEGR作動時と、非作動時とにおけるそれぞれの関係のデータ有していることを特徴とする請求項3記載のターボチャージャ付きエンジンの制御装置。
【請求項5】
大気圧を測定する大気圧測定手段と、
前記吸気通路に配置されたコンプレッサに導入される吸気の温度を測定する吸気温度測定手段と、を有し、
前記タービン回転数推定手段は、
前記大気圧と、前記吸気温度とを用いて前記吸気の空気密度を算出し、
予め実験により作成した吸気密度とタービン回転数の関係を示す第2マップを備え、該第2マップに基づいて前記吸気の空気密度からタービン回転数を推定することを特徴とする請求項1記載のターボチャージャ付きエンジンの制御装置。
【請求項6】
前記第2マップは
予め実験結果より求めたEGR作動時と、EGR非作動時における前記空気密度とタービン回転数との関係を示すデータを備え、EGRの使用状況によって切替えるようにしたことを特徴とする請求項5記載のターボチャージャ付きエンジンの制御装置。
【請求項7】
大気圧を測定する大気圧測定手段と、
前記吸気通路に配置されたコンプレッサに導入される吸気温度を測定する吸気温度測定手段と、を有し、
前記タービン回転数推定手段は、
予め実験により作成した、前記大気圧と、前記吸気温度と、タービン回転数との三次元の関係を示す第3マップを備え、該第3マップに基づいて、前記大気圧測定手段と、前記吸気温度測定手段との検出値から、タービン回転数を推定することを特徴とする請求項1記載のターボチャージャ付きエンジンの制御装置。
【請求項8】
大気圧を測定する大気圧測定手段と、
前記吸気通路に配置されたコンプレッサに導入される吸気温度を測定する吸気温度測定手段と、を有し、
前記タービン回転数推定手段は、
予め実験により作成した、前記大気圧と、タービン回転数との関係を示す二次元マップを吸気温度毎に複数有する第4マップを備え、該第4マップに基づいて、前記大気圧測定手段と、前記吸気温度測定手段との検出値から、タービン回転数を推定することを特徴とする請求項1記載のターボチャージャ付きエンジンの制御装置。
【請求項9】
前記吸気温度測定手段は、
前記エンジンの給気マニホールド内の給気マニホールド温度を測定する給気マニホールド温度測定手段と、
予め実験により作成した給気マニホールド温度と吸気温度の関係を示す第5マップを備え、該第5マップに基づいて前記給気マニホールド温度から吸気温度を求めることを特徴とする請求項2〜7何れかに記載のターボチャージャ付きエンジンの制御装置。
【請求項10】
前記燃料噴射量制御手段は、
前記タービン回転数と大気圧に応じて、前記タービン回転数が前記許容値以下となる最大の燃料噴射量を予め実験結果より求めて、これらタービン回転数と大気圧と最大の燃料噴射量との関係を示す第6マップを備え、該第6マップに基づいて、
前記タービン回転数が、前記許容値を越える場合に、前記大気圧とタービン回転数に応じた最大の燃料噴射量以下まで燃料噴射量を低減し、前記タービン回転数を前記許容値以下とすることを特徴とする請求項2〜8何れかに記載のターボチャージャ付きエンジンの制御装置。
【請求項11】
前記大気圧と、吸気温度とを用いて吸気の空気密度を演算する空気密度演算手段を有し、
前記燃料噴射量制御手段は、
前記タービン回転数と空気密度に応じて、前記タービン回転数が前記許容値以下となる最大の燃料噴射量が予め実験結果より求めて、これらタービン回転数と空気密度と最大の燃料噴射量との関係が設定された第7マップを備え、該第7マップに基づいて、
前記タービン回転数が、前記許容値を越える場合に、前記空気密度とタービン回転数に応じた最大の燃料噴射量以下まで燃料噴射量を低減し、前記タービン回転数を前記許容値以下とすることを特徴とする請求項2〜8何れかに記載のターボチャージャ付きエンジンの制御装置。
【請求項12】
前記燃料噴射量制御手段は、
前記吸気温度に応じた燃費率の悪化割合を予め実験結果より求めて、吸気温度と燃費率の悪化割合の関係を示した第8マップを備え、該第8マップに基づいて、前記悪化割合が大きいほど、前記最大の燃料噴射量が大きくなるように補正することを特徴とする請求項10又は11記載のターボチャージャ付きエンジンの制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−185263(P2011−185263A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−226169(P2010−226169)
【出願日】平成22年10月6日(2010.10.6)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月6日(2010.10.6)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】
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