説明

ターボラグを回避するための接続圧力タンクを有するターボチャージャ付き往復ピストンエンジン、およびその作動方法

本発明は、燃焼チャンバを有するターボチャージャ付き往復ピストンエンジン、およびその作動方法に関する。燃焼チャンバは、少なくとも1つの吸気バルブ10と、1つの排気バルブ13と、ターボラグを回避するために圧縮空気をさらに供給する追加のチャージバルブ11とを有する。すべてのバルブ10、11、13は、カムシャフトを介してクランクシャフトに接続され、クランクシャフトへのチャージバルブの接続が作動停止されうることで、少なくとも1つのチャージバルブ11が閉じた状態にされる。化学量論的または準化学量論的な燃焼混合気用の空気の正確な計量は、ターボチャージャ4、およびスロットルバルブ8によってさらに達成される。圧縮空気タンクから空気を取り除く代わりに、チャージバルブ11が開いた瞬間の変位によって、円筒状の燃焼チャンバから圧縮空気タンク14内へ空気が注入される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、4ストロークサイクルを使用して作動させる改良型の過給内燃機関であって、ターボラグを回避する目的の圧縮空気タンクを有する過給内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
100年以上前に発明された往復ピストンエンジンは、その後も継続的に開発されてきたが、エンジンの最大効率は熱力学的な限界に従う。往復ピストンマシンが常に最大効率で作動させれば、実際に今日のように世界中で燃焼されている燃料のうち使用される燃料は、ほぼ半分で済むであろう。これまでの往復ピストンエンジンの利用が非効率的である主な理由として、一般に、効率が悪い部分負荷(都市交通、定速など)でしか運転されていないことが挙げられる。車の運転者は、最大限の高性能を備えた車両を望むため、結果的に部分負荷運転の割合が高くなり、したがって、燃料消費量が比較的多くなる。
【0003】
この問題を最も簡単かつ低コストで解決するための概念に、ほとんどの運転状況において効率が高いという理由から、小さな容積の往復ピストンエンジンを使用するということが挙げられる。車の運転者が最大性能を望んでいることを考慮して、前記小型往復ピストンエンジンは、排気ガスエンタルピーを利用したターボチャージャを採用して過給可能であることで、記載した負荷範囲の効率で達成される利得を犠牲にすることなく、2倍の容積の往復ピストンエンジンの性能を達成することができる。
【0004】
この概念は単純で費用のかからないものであり、自動車会社によってすでに一部で使用されている。しかしながら、この概念の場合、特に、ガソリンエンジンに適用される場合(ディーゼルエンジンでは標準的である)、この概念があまり使用されない理由がある。この理由は「ターボラグ」として知られており、すなわち、過給された往復ピストンエンジンの低回転速度で運転手が加速を要求する場合、過給システムに空気が不足し、低応答挙動を招く現象である。
【0005】
この問題は、圧縮空気タンクをシリンダ(=燃焼チャンバ)に接続することによって回避することができる。例えば、運転者によって大きなトルクが要求されれば、吸気バルブを介してすでに導入されている空気に加え、チャージバルブを開くことによって燃焼チャンバ内に追加の空気が直接導入されうる(!)。この追加の空気により、対応するサイクル(往復ピストンエンジンの4ストローク、すなわち:新しいガスの吸入−圧縮−燃焼/膨張−燃焼したガスの排気)に対して、より多くの燃料を噴射できるようになる。その結果、燃焼してすぐに高トルクが生成されるだけでなく、タービン、ひいては、ターボチャージャのコンプレッサを駆動する排気ガスエンタルピー流が増加する。したがって、コンプレッサは、より多くの空気をより高い圧力レベルに圧縮する。往復ピストンエンジンの吸気側の圧力が増加すると、吸気動作中に往復ピストンエンジンにより多くの空気が入ることで、「空気不足の悪循環」(まず、エンジンがほとんどトルクを生成しないことにより、排気ガスエンタルピーをほとんど生成せず、その結果、ターボチャージャが十分に駆動されないことから、チャーボチャージャのコンプレッサが新しい空気をほとんど送り出さず、その結果、限られた空気質量しか燃焼チャンバ内に入らず、限られた燃料の量しか噴射されず、結果的に、ほんのわずかなトルクしか生成できなくなるような悪循環)が中断される。その結果、圧縮空気タンクからさらに導入される空気を必要とするのは短時間のみである。ターボチャージャは、高回転速度に達するとすぐに、最大トルクの生成に十分な空気を供給する。
【0006】
往復ピストンエンジンの燃焼チャンバへの圧力タンクの接続(以下、「空気圧ハイブリッド方式」と記載)は、制動中に利用可能になり、(燃料を導入せずに)圧縮空気タンクに空気を吸排気、かつ蓄積することによって、従来の車両ブレーキで消失するエネルギーを回収できるようにするという多くの特許および科学文献の目的に適合する。この圧縮空気は、往復ピストンエンジンが(燃料を導入することなく)空気によってのみ駆動される別の時点で使用されうる。このようにして、空気圧始動が可能になる。しかしながら、これらの利点は、さまざまな考察がなされてきたように(www.hpe.ethz.chの文献リスト)、副次的なものである。前段落に記載した概念は、およそ25%の燃料節約を担うが、この段落に記載する利点では、燃料節約を全部で単におよそ32%まで上げるにすぎない。したがって、本発明は、ターボラグを回避するための空気圧ハイブリッド方式に的を絞る。
【0007】
以下、空気圧ハイブリッド方式の分野の先行技術に関する既存の関連特許の概要を、古いものから新しいものへ時系列に並べる。
【0008】
米国特許第1013528号明細書は、空気圧ハイブリッドエンジンについての最初の特許である。同特許において、往復ピストンエンジンは、圧縮空気膨張エンジンとしてさらに使用される。空気圧エンジン始動も同様に記載されている。圧縮空気タンクは、2つのシリンダが燃焼し、2つのシリンダが吸排気するとすぐに給気され、この場合、制動中に放出されるエネルギーの利用によるタンクの給気は、提供されない。
【0009】
米国特許第3765180号明細書は、同様に、内燃機関および空気圧モータの両方で動作可能な往復ピストンエンジンについて記載している。圧縮空気を生成するために外部電気コンプレッサが使用される。
【0010】
米国特許第3963379号明細書は、米国特許第1013528号明細書に一部基づいたものであるが、制動エネルギーは、この場合、圧縮空気を生成するために使用されうる(2ストロークサイクルでの吸排気)。同特許は、内燃機関、ポンプ、および空気圧モータとしての動作を可能にするすべての吸気バルブ、排気バルブ、およびチャージバルブに軸方向に調節可能なカムシャフトプロファイルを与える。同特許では、チャージバルブは、3つのカムプロファイルのうちの1つを介して常に作動され、これらの3つのカムプロファイルは、バルブを閉状態のままにするゼロカム、2ストロークポンピングサイクル用のダブルカム、および燃焼サイクルにおいて膨張、または燃焼ストロークが起こるときにチャージバルブを開くエンジン始動用のシングルカムである。さらに、記載されている往復ピストンエンジンは、両方の回転方向において機能する。
【0011】
米国特許第5529549号明細書は、センサ信号に基づいてバルブを作動するためにエンジン制御ユニットの使用が提供される空気圧ハイブリッドエンジンの最初の特許である。加えて、同特許は、この(ターボチャージャ無し)エンジンに対して可能である「過給」モードについて(最初の特許として)記載している。ここで、エンジンに給気するためにのみ圧力タンクからの空気が使用され、すなわち、周囲(通常の吸気経路)からの空気の使用がなく、燃料は燃焼チャンバ内に直接噴射される。したがって、より多くの空気がシリンダ内に入り、通常の内燃機関と比較してより多くの燃料が噴射されうる。この構成により、吸気チャネルを圧縮空気、または吸気経路(周囲から)のいずれかへ接続されるか、または何にも接続されない制御可能バルブが得られ、したがって、燃焼チャンバまでの過程で吸気経路、および高圧経路によって交互に使用される容積部がある。エンジンは、空気圧モータモード、通常燃焼モード、ポンプモード、およびシリンダ作動停止モードをさらに与える。エンジンに給気するための流体力学デバイスが、エンジンに設けられない。
【0012】
英国特許第2402169号明細書は、燃焼モードに加えて、ポンプモード、および空気圧モータモードを可能にする往復ピストンエンジン(2ストロークモード、および4ストロークモード)について記載している。空気圧モータモードに関して、空気が触媒コンバータ動作に対して問題を生じさせないようにするために、膨張空気が吸気側の方へ押し出される方法について記載されている。すべてのバルブは、(電気水力学的に)完全可変に作動され、さまざまなシリンダが異なるモードで動作できるようにする。加えて、科学文献において「エアパワーアシスト(APA:air power assist)モード」とも呼ばれるものが記載されている。吸入ストローク中、まず吸気バルブを介して空気が導入され、引き続き、同じ吸入ストローク中に圧力タンクからの空気が追加される。
【0013】
仏国特許出願公開第2865769号明細書は、ターボチャージャで過給され、ターボラグを回避するために空気圧ハイブリッド方式を使用した往復ピストンエンジンについて記載している。この目的で使用される「過給」モードと、米国特許第5529549号明細書における「過給」モードとの違いは、給気経路、および圧力タンク経路が燃焼チャンバまでの過程で何ら容積部を共に利用しない点である。さらに、まず空気が吸気側から引き出され、引き続き、空気が圧力タンクから引き出される。英国特許第2402169号明細書とは対照的に、圧力タンクからの空気は、この場合、吸入ストローク中に導入されず、シリンダの圧縮段階中に導入される。完全可変バルブ制御システムが、すべてのバルブに対して使用され、このようにして、いずれの場合においても、2ストロークプロセスにおいて、空気圧モータモードおよびポンプモードが可能になる。
【0014】
国際公開第2009/036992号パンフレットは、仏国特許出願公開第2865769号明細書のように、ターボチャージャで過給される往復ピストンエンジンであって、完全可変であり、好ましくは、電気水力学的に作動されるチャージバルブの助力で、圧縮空気タンクが燃焼チャンバに直接接続される往復ピストンエンジンについて記載している。対照的に、吸気バルブ、および排気バルブは、4ストロークサイクルごとに常に同じリフトプロファイルを有するカムシャフトを介して駆動される。したがって、ポンプモード、および空気圧モータモードは、4ストロークプロセスにおいて動作されうる。加えて、チャージバルブは、ターボラグを回避するために、仏国特許出願公開第2865769号明細書に類似して「過給」モードを可能にするように働く。さらなる実施形態において、圧縮空気タンクに加えて、排気ガス圧力タンクが使用される。排気ガスタンクは、新しい燃焼サイクルのために使用され、膨張の最後に燃焼されたガスが排気ガスタンクに移される。加圧排気ガスは、4ストロークプロセスにおいて空気圧モータモードのために使用されうる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、すでに上述した利点、すなわち、燃焼チャンバに直接導入される圧縮空気によってターボラグを回避した結果として、ターボチャージャを用いて公称出力を保持しながら往復ピストンエンジンの容積部が実質的に縮小されるという利点を有する、往復ピストンエンジンの空気圧ハイブリッド方式化という最も重要な利点を目的としたものである。
【0016】
バルブの作動システムの可変性が高いことは、従来の往復ピストンエンジンと比較して、複雑性が増大し、ひいては、コスト増につながるため、自動車製造業者にとってハードルが高いことを表している。これは、欧州特許出願公開第07018673.9号明細書において、すべての吸気バルブおよび排気バルブに対して従来の不可変のカムシャフトを使用することによって解決されている。依然として必要である完全可変チャージバルブの作動は、本特許においてカムシャフトベースのシステムがチャージバルブにも使用されることによって回避される。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の第1の実施形態(基本的な実施形態、または実施形態1)において、チャージバルブは、所定のカムシャフトプロファイルによって作動されるが、チャージバルブを担うカムシャフトと、チャージバルブとの間の機械的操作接続は、急速に作動停止または作動するための機構(作動機構)を有する。
【0018】
カムシャフトシステムに基づいたさまざまな作動機構は安価であり、実際の車両に使用されている。このように、欧州特許出願公開第07018673.9号明細書および仏国特許出願公開第2865769号明細書に類似した「過給」モードも可能である。この安価な構成により、過給エンジンにおけるターボラグの回避が可能になる。すべてのさらなる実施形態は、この構成に基づいたものである。
【0019】
しかしながら、ターボラグを回避するには、本発明において重要な特殊な手段が必要であり、すなわち、チャージバルブのカムに対してリフトプロファイルを修正することでは、シリンダの空気質量が、チャージバルブコントローラによって十分には修正されない。ガソリンエンジンの場合、このエンジンが排気ガスの後処理用に三方触媒コンバータを使用するために準化学量論的な燃料/空気の混合を常に必要とするため、シリンダの空気質量は発生可能なトルクに比例する。したがって、シリンダの空気質量は、電子的または電気機械的に作動可能なスロットルバルブを介して調整される必要がある。エンジン制御ユニット(往復ピストンエンジンの一部)は、ペダル変位変換器を介して所望のトルクを受け取り、この所望のトルクから、往復ピストンエンジンの瞬間状態に要求される燃料量が算出される。燃料の化学量論的燃焼に必要な空気量は、この燃料量から算出される。吸気バルブを介して利用可能な空気質量が、関連するエンジンサイクルの往復ピストンエンジンの瞬間状態に利用可能でない場合、エンジン制御ユニットは、(1つまたは複数の)スロットルバルブ、およびそれぞれの燃料噴射ユニットに対してそれぞれのチャージバルブを作動するためのコマンドを自動的に送信し、その結果、チャージバルブを閉じた後、事実上化学量論的な燃焼混合が達成される。ポート噴射の場合、非常に濃い混合気(すなわち、高い燃料過剰)が、吸気バルブの開口段階中にシリンダ内に導入され、圧縮空気タンクからの追加の空気のみにより、準化学量論的(または少なくとも可燃性の)混合が確保される。
【0020】
以下の図面に示す実施形態を用いて、本発明についてさらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明による往復ピストンエンジンの全体概念図を示す。
【図2】エンジン制御ユニット、ならびにセンサ、およびアクチュエータの作動方法に関する図を示す。
【図3】吸気バルブ、排気バルブ、およびチャージバルブの運動プロファイルに関する第1の図を示す。
【図4】吸気バルブ、排気バルブ、およびチャージバルブの運動プロファイルに関する第2の図を示す。
【図5】吸気バルブ、排気バルブ、およびチャージバルブの運動プロファイルに関する第3の図を示す。
【図6】吸気バルブ、排気バルブ、およびチャージバルブの運動プロファイルに関する第4の図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、本発明による往復ピストンエンジンの全体概念図を示す。図2は、センサおよびアクチュエータに関連付けられたエンジン制御ユニットを示す。以下に記載する実施形態は、実質的にチャージバルブのバルブ制御の複雑性の点で異なる。図3、図4、図5および図6は、さまざまな実施形態のチャージバルブのこのような可変性を示す。
【0023】
実施形態1(図3):空気経路は以下のように進む。周囲(1)から空気が吸入され、空気フィルタ(2)によって清浄にされる。ターボチャージャ(4)の流体力学コンプレッサが空気を圧縮し、圧縮空気を空気経路の次の容積部(5)に送る。容積部(5)とコンプレッサ(3)の前方の容積部との間の圧力比が大きすぎれば(コンプレッサを通る空気質量の流れを考慮して算出される)、ウェイストゲートバルブ(6)は規定された空気質量の流れを容積部(3)に案内して戻すように使用され、前記ウェイストゲートバルブは、機械的に機能するか(圧力差の関数として)、または好ましくは、エンジン制御ユニット(17)を介して電子的に作動される。コンプレッサによって圧縮される空気は、圧縮空気の密度を増加するために、チャージ空気冷却器(空気/水、または空気/空気)を用いて冷却される。冷却された空気は、電子的または電気機械的に作動可能なスロットルバルブ(8)によってスロットルが絞られ、その結果、後続の吸気容積部(9)の圧力が、通例、スロットルバルブの前方の容積部の圧力以下である。空気経路のこの部分は、場合によって、複数のターボチャージャ、スロットルバルブ、および吸気容積部との複数の並列経路に分割されうる。吸気バルブ(10)は、カムシャフトを介して作動され、その結果、すべての吸気バルブは、クランクシャフト(25)が2回転するごとに正確に1回開閉動作する。吸気バルブは、いずれの場合も、主に容積部を増大するピストン動作中に開状態になる。往復ピストンエンジンは、燃料の噴射を計量するためのデバイスを有し、好ましくは、このタイプのデバイスは、シリンダごとに1つずつ使用される。デバイスは、吸気チャネルに設置されるか、または燃焼チャンバ(図示せず)に直接燃料を噴射できるようにシリンダヘッドに配置される。往復ピストンエンジンがガソリンを燃料として使用する場合、各燃焼チャンバは、点火スパーク発生ユニット(12)を有する。すべての排気バルブ(13)がカムシャフトを介して同様に駆動され、正確に言えば、各排気バルブは、いずれの場合にも、クランクシャフトが2回転するごとに1回駆動される。排気バルブは、燃焼チャンバを排気容積部(15)に接続し、排気容積部(15)は、ターボチャージャ(4)のタービンに接続され、その結果、タービンを流れるエンタルピー流は、ターボチャージャのコンプレッサとともにシャフトに設置されたタービンを駆動する。ターボチャージャは、可変タービン形状(図示せず)、またはウェイストゲート(16)として知られているものを有しえ、前記ウェイストゲート(16)は、呼応して、機械的に、または電気機械的に作動されるとすぐに、タービンを通してガスを送ることができる。タービンおよびウェイストゲートを流れるガスは、周囲(19)に流出する前に、触媒コンバータ(18)を通って案内される(ガソリンエンジン:三方触媒コンバータ)。吸気空気経路と同様に排気ガス経路は、複数の排気容積部、およびターボチャージャと並列して分割されうる。制動段階において、またはエンジン制御ユニット(17)が制動を要求する場合、コンプレッサ(24)は、電子的にスイッチ可能なクラッチ(22)を介してクランクシャフト(25)に接続されうる。ここで、コンプレッサは、フィルタ(23)を介して周囲空気を吸引し、圧縮空気を圧縮空気タンク(14)内に送り出す。圧縮空気は、場合によって、冷却デバイス(27)を介して冷却されうる。バルブ(28)により、チャージバルブ(11)を介して燃焼チャンバに直接接続された圧縮空気タンク(14)からの空気の逆流が防止される。これらの実施形態において、チャージバルブは、カムシャフトがクランクシャフトの半分の速さで回転するように前記クランクシャフトに機械的に接続される前記カムシャフトを介して作動される。前記カムシャフトのカムは、それぞれの吸気バルブが閉じられ、または事実上閉じられた直後の圧縮のほぼ開始時に、チャージバルブが開かれるようにチャージバルブを駆動する。チャージバルブは、いずれの場合でも、それぞれの圧縮動作中に閉じられる。カムシャフトのチャージバルブへの機械的な接続は、すぐに、すなわち、最高でもクランクシャフトが10回転する間に作動停止状態にされえ、このとき、作動化および作動停止の動作は、エンジン制御ユニット(17)によって開始される。
【0024】
実施形態2(図4):この実施形態は、チャージバルブの作動の可変性の点でのみ実施形態1と異なる。ここで、チャージバルブと、チャージバルブを作動するカムシャフトとの機械的接続は、作動停止状態にされるだけでなく、チャージバルブの最大ストローク、およびストローク持続時間(クランク角の差に関して)が変更可能であるように、チャージバルブのリフトプロファイルが変更されうる。これは、BMW AG社のValvetronicなどの大量生産に適した技術によって実現されうる。チャージバルブが開いた瞬間は、変化しない状態のままであることが好ましい。この実施形態により、燃焼の開始前に燃焼チャンバに位置する空気質量をより正確に制御することができる。
【0025】
実施形態3(図5):この実施形態は、チャージバルブ制御の可変性、および外部コンプレッサ(24)、ならびに外部コンプレッサに要求されるコンポーネント(23)、(27)、(28)および(22)の省略の点で実施形態1と異なる。ここで、実施形態1と比較すると、チャージバルブ、およびチャージバルブを作動するカムシャフトの機械的接続は、作動停止状態にされるだけでなく、チャージバルブのリフトプロファイルは、チャージバルブが圧縮サイクルの終了時に向けて開かれるように位相シフトされうる。これは、エンジン制御ユニットが運転者の制動要求(例えば、ブレーキベダルを踏む)を記録することで行われる。この場合、燃料噴射は作動停止状態にされ、スロットルバルブは完全に開かれる。このようにして、空気が、接続された圧縮エアタンク内に注入される。カムシャフトベースのバルブ制御手段の位相シフトシステムは、実際の車両(例えば、BMW AG社のVANOS)でよく見られる。
【0026】
実施形態4(図6):この実施形態は、チャージバルブ作動の可変性と、外部コンプレッサ(24)、と外部コンプレッサに要求されるコンポーネント(23)、(27)、(28)および(22)の省略の点で実施形態1と異なる。ここで、実施形態1と比較すると、チャージバルブと、チャージバルブを作動するカムシャフトの機械的接続は、作動停止状態にされるだけでなく、チャージバルブのリフトプロファイルは位相シフトされえ、その結果、チャージバルブは圧縮サイクルの終了時に向けて開かれ、チャージバルブの最大ストローク、およびストロークの持続時間(クランク角の差に対して)が変更可能なように、チャージバルブのリフトプロファイルが変更されうる。これは、BMW AG社のValvetronicやVANOSなどの連続生産に適した技術の組み合わせによって実現されうる。この実施形態により、燃焼を始動する前に燃焼チャンバに位置する空気質量をより正確に制御でき(「過給」モード)、燃料噴射が作動停止状態になるポンプモードをより正確に制御できる。
【0027】
実施形態に関するコメント:実施形態1および2により、通常の内燃機関モードに加えて「過給」モードが可能になる一方で、車両の制動中に放出されるエネルギーの回復が、外部コンプレッサによってもたらされうる。実施形態3および4は、「過給」モードに加えて、4ストロークベースでポンプモードを生じさせうるため、追加のコンプレッサ(ここでは、任意に提供される)を必要としない。「過給」モードの場合、熱空気ではなく、可能な限り冷えた空気を噴射することが重要である。これは、タンクが金属製であり、周囲の空気へ十分に熱伝達を行えるように設計されること(大表面積)で達成可能であり、加えて、外部コンプレッサから現れる空気も(吸気セクションにあるような給気の空気冷却器と同様に)冷却されうる。さらに、チャージバルブ(およびチャージバルブの前方にある容積部)があまり加熱されないように確保されるべきである。したがって、すべての実施形態は、チャージバルブをエンジン冷却システム(容積部周囲の水冷却、および/またはチャージバルブへの供給チャネル周辺の水冷却)内に組み込むことが可能であり、またはチャージバルブは2つの吸気バルブ間に配設される。
【0028】
本発明は、空気圧モータモードをまったく使用しない。空気圧モータモードは、すべてのバルブに対するカムシャフトベースの解決策がもはやもたらされないような方法で、可変バルブ制御手段への要求を高める。さらに、排気ガスセクションにおける過度の空気が、空気圧モータモードの使用時に生じると、三方触媒コンバータの機能を損なう可能性があるため、空気圧モータモードの使用は、吸気バルブおよび排気バルブを可変式に作動できない場合は、不利になる。
【0029】
往復ピストンエンジンの空気圧始動を省く必要があるため、別の解決策が適切な場合がある。例えば、始動発電機(20)が、ある車両の連続生産にすでに据え付けられているので、クランクシャフトに取り付けられうる。前記始動発電機は、従来の小型始動機と取り替えられ、往復ピストンエンジンを静止状態から燃焼に適した回転速度まで急速に加速することができるため、往復ピストンエンジンのアイドリング動作の代わりに、車両が静止状態になるとすぐにエンジンのスイッチが切られうる。このタイプの始動発電機は、車両バッテリ(21)に接続される。始動発電機は、できる限りエンジンを補助するために、運転中にドライブトレーンに追加の正のトルクを出力しうる。これは、特に、ターボラグ回避動作をよりスムーズにするために使用されうる(すなわち、チャージバルブが作動または作動停止するときのトルクジャンプの低減)。始動発電機は、さらに、ドライブトレーンの運動エネルギーを電気エネルギーに変換しうる(クランクシャフトでの負のトルク)。これにより、車両の制動中に放出されるエネルギーのさらなる回収が可能になる。実施形態3および4の場合、制動中に利用可能なすべての放出エネルギーが、4ストロークベースでポンプモードを用いて回収可能なわけではなく、この場合、電気的な回収は、満足の行く付加である。電気的に蓄えられたエネルギーは、車両の電気消費機器を優先的に動作させるために使用される。加えて、低バッテリレベルの場合、往復ピストンエンジンが正のトルクをクランクシャフトに出力することによってバッテリを再充電でき、その結果、電気エネルギーを発生させるために過度のトルクを使用できる。
【0030】
「過給」モードは、調整技術の点で非常に洗練されたものであり、上述したセンサ−/エンジン制御ユニット−/アクチュエータ構造を必要とする。空気タンク圧力センサ信号を用いて、エンジン制御ユニットが算出できる場合に限り、現行のエンジンサイクルに対してチャージバルブの開口中のタンク圧力が常にシリンダ圧力より高い状態が常に作動され、したがって、可燃性燃料/空気混合気の圧縮エアタンク内への移動が防止されうる。このチェックは、例えば、シリンダ圧力センサを使用することによって行われうる。ターボラグが回避されている間、スロットルバルブの前方の圧力は、ターボチャージャの取り込むことで増大し、その結果、空気が圧力タンクから吹き込まれた後に所望の空気質量が位置するようにスロットルバルブが容積部(5)、および吸気容積部(9)の圧力差を調整する必要があり、運転者が望むトルクを生成するために、この所望の空気質量は、燃料を事実上完全に燃焼可能である(準化学量論比の場合)。スロットルバルブの前方の圧力が十分な空気でシリンダを充填できる高さになるとすぐに、スロットルバルブが開かれ、チャージバルブが再度作動停止される。ターボラグを回避している間、空気質量の流れが比較的低い状態で(要するに、要求される空気の一部が圧力タンクからくるため)、コンプレッサに高い圧力比が起こりうる。したがって、ウェイストゲートバルブは、コンプレッサがサージラインを超えないように調整される必要がある。
【0031】
原則的に、記載される本発明は、ディーゼルエンジンの向上でもある。ここで、回避されるターボラグはあまり大きくないが、それでも車両の運転操縦性は改良されうる。ディーゼルの場合、空気質量は二次的に重要なものであり、ディーゼルエンジンは常に希薄混合気で動作される。しかしながら、追加の圧縮空気を吹き込むと、場合によっては、煤の生成が減少し、運転者がトルクの増大を要求した直後の可能噴射量が向上する。ディーゼルエンジンは、シリンダヘッドに1つも点火スパーク発生ユニットを有しておらず、ディーゼルエンジンは圧縮点火エンジンである。他の点に関して、本発明の記載は、ディーゼルエンジンにも同様に適用される。
【0032】
一実施形態において、本発明は、ピストンが共通のクランクシャフト(25)に機械的に接続された、複数のシリンダ(円筒形の燃焼チャンバ)を有する往復ピストンエンジンであって、
a.いずれの場合も、シリンダごとに少なくとも1つの吸気バルブ(10)と、
b.いずれの場合も、シリンダごとに少なくとも1つの排気バルブ(13)と、
c.それぞれの吸気バルブ(10)の開口によってそれぞれのシリンダ容積部に接続可能な(任意に分割された)吸気容積部(9)と、
d.それぞれの排気バルブ(13)の開口によってそれぞれのシリンダ容積部に接続可能な(任意に分割された)排気容積部(15)と、
e.いずれの場合も、関連付けられたシリンダの2往復サイクルごとに1回、吸気バルブおよび排気バルブが開閉されるように、クランクシャフト、ならびに吸気バルブ、および排気バルブ(10、13)に機械的に接続された少なくとも1つのカムシャフトと、
f.シリンダ内への計量燃料噴射デバイスと、
g.シリンダごとに1つの点火スパーク発生ユニットと、
h.往復ピストンエンジンの排気ガスエンタルピーによって駆動される、給気容積部(9)の前方の容積部(5)の圧力を増大するための少なくとも1つの流体力学デバイス(ターボチャージャ4)と、
i.圧縮空気冷却デバイス(7)と、
j.流れがすでに通過した容積部(5)の圧力と比較して吸気容積部(9)の圧力を低減可能な少なくとも1つの電気的または電気機械的に制御されるスロットルバルブ(8)とを有する往復ピストンエンジンにおいて、
シリンダに属する吸気バルブが閉鎖動作の過程にあるか、またはすでに閉じられたときにチャージバルブが、関連付けられたシリンダの2往復サイクル中に開かれるとともに、関連付けられたピストンがシリンダ容積部を縮小する運動を完了する前にチャージバルブが再度閉じられるように、かつ、チャージバルブが、機構によって作動停止されたクランクシャフトに機械的接続を有しうることで、結果的に、2サイクル以上の往復サイクル中に閉じられたままになるように、
関連付けられたシリンダを(任意に分割された)圧縮空気タンク(14)に接続するとともに、同様に、クランクシャフトに機械的に接続されたカムシャフトに同様に接続される少なくとも1つのチャージバルブを少なくとも1つのシリンダがさらに含むことを特徴とする往復ピストンエンジンに関する。
【0033】
往復ピストンエンジンは、エンジン制御ユニット(17)に動作可能に接続されえ、エンジン制御ユニット(17)は、以下の入力変数、すなわち、
要求トルクと、
圧縮空気タンク(14)の空気圧と、
スロットルバルブ(8)の前方に位置する容積部(5)の空気圧と、
例えば、クランクシャフト位置センサによって決定される、クランクシャフトに機械的に接続されたバルブの予測開口回数と、または上記から導き出された変数から、
スロットルバルブ(8)の開口度合いと、
チャージバルブを作動させる必要の可否と、
燃料の噴射必要量と
を算出し、その結果、化学量論的、または準化学量論的な燃料/空気混合気の対応する量が生成され、この混合気は、燃焼時に要求トルクを生成し、呼応して、
スロットルバルブ(8)と、
チャージバルブのクランクシャフトへのそれぞれ機械的な作動停止可能な接続と、
シリンダ内への計量燃料噴射デバイスと、
を作動させる。
【0034】
さらに、往復ピストンエンジンは、流体力学デバイス(ターボチャージャ4のコンプレッサ)に、好ましくは電子制御可能なウェイストゲートバルブ(6)を有しうることで、吸気容積部(9)の前方の容積部(5)の圧力が過度に高い場合、前記流体力学デバイスの前方(3)に圧縮空気が逆流されうる。
【0035】
往復ピストンエンジンは、コンプレッサ(24)をさらに有しえ、コンプレッサ(24)は、
a.作動停止可能クラッチ(22)を介してクランクシャフトに接続可能であり、
b.圧縮空気タンク(14)に出口で接続される。
【0036】
往復ピストンエンジンは、圧縮空気タンク(14)をコンプレッサ(24)に接続する切り換え可能バルブ(28)を有しうる。
【0037】
往復ピストンエンジンは、コンプレッサ(24)によって圧縮される空気を冷却するための冷却デバイス(27)を有しうる。
【0038】
往復ピストンエンジンは、可変リフトプロファイルを有するチャージバルブ(11)を有しえ、変動の設定に応じて、チャージバルブが、それぞれのシリンダの下死点の近くで開かれることで、チャージバルブの開口時間中にそれぞれのシリンダの空気圧力が圧縮空気タンクの空気圧より低くなるように、またはそれぞれのシリンダの上死点の近くで閉鎖動作に位置することで、チャージバルブの開口時間中にそれぞれのシリンダの空気圧が圧縮空気タンクの空気圧より高くなるように、カムシャフトの位相シフトによってリフトプロファイルを変更することができる。
【0039】
往復ピストンエンジンの一実施形態において、チャージバルブ(11)のリフトプロファイルの持続時間および最大リフトが変更可能であることで、シリンダとタンクとの間で伝達される空気量を設定できる。
【0040】
往復ピストンエンジンの一実施形態において、チャージバルブ(11)を有する各シリンダは、少なくとも2つの吸気バルブ(10)を有しえ、チャージバルブは、吸気バルブ間で、チャージバルブ(11)の前方に位置する空気に排気バルブ(13)を通って流れるガスが及ぼす熱影響が低減されるように配置されうる。
【0041】
往復ピストンエンジンの一実施形態において、点火スパーク発生ユニット(12)は取り外されえ、上死点付近でのみ燃料が噴射されえ、コントローラは、要求された空気および燃料の量を約1のラムダ値ではなく、1.1より大きなラムダ値に設定する。
【0042】
一実施形態において、本発明は、少なくとも1つのシリンダにおいて以下のサイクル、すなわち、
a.シリンダ容積部を増大する第1のピストン運動中に、新しい空気または燃料/空気混合気の吸入をするサイクルと、
b.シリンダ容積部を縮小する第1のピストン運動中に、シリンダに位置するガスの圧縮をするサイクルと、
c.シリンダ容積部を縮小する前記第1のピストン運動後に、上死点付近の燃料/空気混合気の点火をするサイクルと、
d.前記シリンダに位置するガスが燃焼する(シリンダ容積部を増大する第2のピストン運動)、シリンダの膨張および仕事フェーズをするサイクルと、
e.シリンダ容積部を縮小する第2のピストン運動において燃焼ガスの排気をするサイクルと
を通る往復ピストンエンジンの作動方法を含み、
チャージバルブ(11)は、シリンダ容積部を縮小する第1のピストン運動の始動付近で開かれ、追加の圧縮空気は、圧縮空気タンク(14)からシリンダ内に吹き込まれ、スロットルバルブ(8)、および計量燃料噴射デバイスは、混合気が上死点付近で点火される前に、すなわち、シリンダ容積部を縮小する第1のピストン運動の終了時に向けて準化学量論的燃焼混合気が生成されるように予め作動される。
【0043】
往復ピストンエンジンの作動方法において、燃料/空気混合気の点火は、シリンダ容積部を縮小する第1のピストン運動(b)の後に上死点(c)付近での燃料噴射時の自動点火によって達成されえ、空気および燃料は、希薄燃料/空気比(ラムダ>1.1)が生成されるように測定される。
【0044】
往復ピストンエンジンの作動方法において、燃料がない新しい空気のみが、シリンダ容積部を増大する第1のピストン運動中にシリンダ内に吸入されえ、チャージバルブの開口時間の大部分の間におけるシリンダの圧力が、圧縮空気タンクの圧力より高いとき、チャージバルブ(11)は、シリンダ容積部を増大する後続のピストン運動の終了時に向けて開かれることで、圧縮空気タンクに空気が給気される。
【0045】
往復ピストンエンジンの作動方法において、シリンダで燃料が燃焼されるとき、クラッチ(22)は、コンプレッサ(24)とクランクシャフト(25)との間に接続を生じうる。
【0046】
往復ピストンエンジンの作動方法において、シリンダで燃料が燃焼されないとき、クラッチ(22)は、コンプレッサ(24)とクランクシャフト(25)との間に接続を生じえ、コンプレッサ(24)は、クランクシャフト(25)の運動とは反対のトルクをクランクシャフト(25)に発生させることで、クランクシャフト(25)が制動される。
【符号の説明】
【0047】
1 吸入セクション、新しい空気
2 空気フィルタ(任意)
3 コンプレッサの上流の容積部
4 ターボチャージャ
5 コンプレッサの下流の容積部
6 給気の空気冷却器の下流で分岐可能な作動可能ウェイストゲートバルブ
7 給気の空気冷却器(空気/空気、または空気/水)
8 スロットルバルブ(電子作動式)
9 吸気容積部
10 吸気バルブ
11 チャージバルブ
12 点火スパーク発生ユニット
13 排気バルブ
14 圧縮空気タンク
15 排気容積部
16 タービン用調整デバイス(ウェイストゲート)
17 エンジン制御ユニット
18 三方触媒コンバータ
19 排気管
20 始動発電機
21 他の搭載電子システムにも供給可能なバッテリ
22 外部コンプレッサ用クラッチ
23 引き込まれたコンプレッサ空気用の空気フィルタ(任意)
24 外部機械コンプレッサ
25 クランクシャフト、トランスミッションへ
26 フライホイール
27 圧縮空気冷却器(空気/空気、または空気/水)
28 バルブ(圧縮空気タンクからの戻り空気流を防止するため)
29 シリンダ=燃焼チャンバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
往復ピストンエンジンであって、
a.少なくとも1つの燃焼チャンバを有し、
b.前記少なくとも1つのチャンバが、前記燃焼チャンバに移動可能に配設されるとともに、クランクシャフト(25)に動作可能に機械的に接続されたピストンを有し、
c.前記少なくとも1つの燃焼チャンバが、少なくとも1つの吸気バルブ(10)と、少なくとも1つの排気バルブ(13)とを有し、
d.前記吸気バルブ(10)および前記排気バルブ(13)の両者が、前記ピストンの2往復サイクルにつき1回開閉するように、少なくとも1つのカムシャフトを介して前記クランクシャフトに動作可能に機械的に接続され、
e.前記往復ピストンエンジンが、少なくとも1つの流体力学デバイス(4)を有し、
前記少なくとも1つの流体力学デバイス(4)が、前記燃焼チャンバの上流にある吸気容積部(9)の圧力を増大するように作用し、前記吸気容積部(9)が、少なくとも1つの吸気バルブ(10)を介して、かつ
f.燃料を計量噴射するためのデバイスを介して前記燃焼チャンバに動作可能に接続され、
g.前記往復ピストンエンジンが、前記吸気容積部(9)の圧力に影響を及ぼすように作用する少なくとも1つのスロットルバルブ(8)を有し、
h.前記少なくとも1つの燃焼チャンバが、前記燃焼チャンバを圧縮空気タンク(14)に動作可能に接続するチャージバルブを有し、
i.前記チャージバルブ(11)が、カムシャフトを介して前記クランクシャフトに動作可能に接続され、
j.前記チャージバルブと前記クランクシャフトとの間の機械的動作接続を中断するように作用することで、前記チャージバルブ(11)が複数の往復サイクル中に閉じたままである作動機構が存在する、往復ピストンエンジン。
【請求項2】
前記圧縮空気タンク(14)を充填するためのコンプレッサ(24)を備え、前記コンプレッサ(24)が、クラッチ(22)を介して前記クランクシャフト(25)に動作可能に接続可能であることを特徴とする、請求項1に記載の往復ピストンエンジン。
【請求項3】
前記流体力学デバイス(4)が、前記往復ピストンエンジンの排気ガスエンタルピーによって駆動されるターボチャージャであることを特徴とする、請求項1または2に記載の往復ピストンエンジン。
【請求項4】
前記チャージバルブ(11)の前記クランクシャフト(25)への動作可能な接続は、前記チャージバルブ(11)が、前記吸気バルブ(10)が閉鎖動作の過程にあるとき、またはすでに閉じられたときに、前記関連付けられたピストンの2往復サイクル中に開かれるとともに、前記関連付けられたピストンが前記シリンダ容積部を縮小する運動を完了する前に再度閉じられるように構成されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の往復ピストンエンジン。
【請求項5】
点火スパーク発生ユニット(12)が、前記燃焼チャンバに動作可能に接続されるとともに、前記往復ピストンエンジンが、以下の入力変数の群、すなわち、
a.要求トルク、
b.前記圧縮空気タンク(14)の圧力、
c.前記スロットルバルブ(8)の前方に位置する容積部(5)の圧力、
d.前記吸気バルブおよび前記排気バルブ(10、13)の開口回数、または
e.前記入力変数から導き出された変数
に基づいて、
f.前記スロットルバルブ(8)の開口度合い、
g.前記チャージバルブを作動させる必要の可否、または
h.燃料の必要量
を算出することで、化学量論的または準化学量論的な燃料/空気混合気の対応する量が生成され、前記混合気が燃焼時に前記要求されたトルクを生成し、エンジン制御ユニット(17)が、呼応して前記スロットルバルブ(8)を作動させ、前記クランクシャフトへの前記チャージバルブのそれぞれの作動停止状態の機械的な接続を行い、前記計量燃料噴射デバイスを作動させることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の往復ピストンエンジン。
【請求項6】
前記燃料が上死点の付近で噴射され、前記往復ピストンエンジンが、エンジン制御ユニット(17)を有し、前記エンジン制御ユニット(17)が、以下の入力変数の群、すなわち、
a.要求トルク、
b.前記圧縮空気タンク(14)の圧力、
c.前記スロットルバルブ(8)の前方に位置する容積部(5)の圧力、
d.前記吸気バルブおよび前記排気バルブ(10、13)の開口回数、または
e.前記入力変数から導き出された変数
に基づいて、
f.前記スロットルバルブ(8)の開口度合い、
g.前記チャージバルブを作動させる必要の可否、または
h.燃料の必要量
を算出することで、ラムダが1.1より大きい燃料/空気混合気の対応する量が生成され、前記混合気が燃焼時に前記要求されたトルクを生成し、前記エンジン制御ユニット(17)が、呼応して前記スロットルバルブ(8)を作動させ、前記クランクシャフトへの前記チャージバルブの前記それぞれの作動停止状態の機械的な接続を行い、前記シリンダ内への前記計量燃料噴射デバイスを作動させることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の往復ピストンエンジン。
【請求項7】
前記流体力学デバイスに好ましくは電子的に制御可能なウェイストゲートバルブ(6)をさらに有することで、前記吸気容積部(9)の上流にある前記容積部(5)の圧力が過度に高い場合、前記流体力学デバイスの上流(3)に圧縮空気が逆流しうる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の往復ピストンエンジン。
【請求項8】
変動の設定に応じて、前記チャージバルブが、前記それぞれのシリンダの下死点の付近で開かれることで、前記チャージバルブの開口時間の間に前記それぞれのシリンダの空気圧力が前記圧縮空気タンクの空気圧力より低くなるように、
または前記閉鎖動作において前記それぞれのシリンダの前記上死点の付近に位置することで、前記チャージバルブの前記開口時間の間に前記それぞれのシリンダの前記空気圧力が前記圧縮空気タンクの前記空気圧力より大きくなるように、
前記チャージバルブ(11)の前記リフトプロファイルが、前記カムシャフトの位相シフトによって変更されうることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の往復ピストンエンジン。
【請求項9】
前記チャージバルブ(11)の前記リフトプロファイルの持続時間、および最大リフトが変更可能であることにより、前記シリンダと前記タンクとの間で伝達される空気量が設定可能であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の往復ピストンエンジン。
【請求項10】
前記燃焼チャンバが、チャージバルブ(11)と、少なくとも2つの吸気バルブ(10)とを有し、前記チャージバルブ(11)の上流に位置する空気に前記排気バルブ(13)を通って流れるガスが及ぼす熱影響が最小限に抑えられるように、前記チャージバルブが前記吸気バルブ(10)の間に配置されることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の往復ピストンエンジン。
【請求項11】
前記往復ピストンエンジンの燃焼チャンバにおいて以下のサイクル、すなわち、
a.前記シリンダ容積部を増大する第1のピストン運動中に、新しい空気、または燃料/空気混合気の吸入をするサイクルと、
b.前記シリンダ容積部を縮小する第1のピストン運動中に、前記シリンダに位置するガスの圧縮をするサイクルと、
c.前記シリンダ容積部を縮小する前記第1のピストン運動後に、前記上死点付近での燃料/空気混合気の点火をするサイクルと、
d.シリンダ容積部を増大する第2のピストン運動の間に、前記シリンダに位置するガスが燃焼する前記シリンダの膨張および仕事フェーズをするサイクルと、
e.前記シリンダ容積部を縮小する第2のピストン運動における燃焼ガスの排気をするサイクルと
を実行する方法であって、
前記チャージバルブ(11)が、前記シリンダ容積部を縮小する前記第1のピストン運動の開始付近で開かれるとともに、追加の圧縮空気が、前記圧縮空気タンク(14)から前記燃焼チャンバ内に吹き入れられ、
前記スロットルバルブ(8)および前記計量燃料噴射デバイスは、前記燃焼チャンバの燃料/空気混合気が、前記ピストンの前記上死点付近で点火される前に、準化学量論的燃焼混合気が生成されるように、前記エンジン制御ユニットによってすでに作動されている、請求項1〜10のいずれか一項に記載の往復ピストンエンジンを作動させる方法。
【請求項12】
前記燃料/空気混合気の点火が、前記シリンダ容積部を縮小する前記第1のピストン運動(b)の後、前記上死点(c)の付近での燃料噴射時の自動噴射によって達成されるとともに、空気および燃料が、ラムダ値が1.1より大きな希釈燃料/空気比が結果的に得られるように計量される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
燃料なしの新しい空気のみが、前記シリンダ容積部を増大する第1のピストン運動中に前記シリンダ内に吸入されるとともに、前記チャージバルブの前記開口時間の大部分の間の前記シリンダの前記圧力が、前記圧縮空気タンクの前記圧力より大きいとき、前記チャージバルブ(11)は、前記シリンダ容積部を増大する後続のピストン運動の終了時に向けて開かれることで、前記圧縮空気タンクに空気が給気されることを特徴とする、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
前記燃焼チャンバにおいて燃料が燃焼されるとき、前記クラッチ(22)が、前記コンプレッサ(24)と前記クランクシャフト(25)との間に接続を生じることを特徴とする、請求項11〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記クラッチ(22)が、前記シリンダにおいて燃料が燃焼されないとき、前記コンプレッサ(24)と前記クランクシャフト(25)との間に接続を生じるとともに、前記コンプレッサ(24)が、前記クランクシャフト(25)の運動とは反対のトルクを前記クランクシャフト(25)に発生させることで、前記クランクシャフト(25)が制動されることを特徴とする、請求項11〜14のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2013−501187(P2013−501187A)
【公表日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−523239(P2012−523239)
【出願日】平成22年8月3日(2010.8.3)
【国際出願番号】PCT/EP2010/004733
【国際公開番号】WO2011/015336
【国際公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(506110634)
【Fターム(参考)】