ターボ過給機付きエンジンの制御方法および制御装置
【課題】排気弁閉時期を遅角して開弁オーバラップ量を拡大し、これにより広い運転領域に亘って良好なトルク、および滑らかなトルク曲線を得て、ドライバビリティを向上することができるターボ過給機付きエンジンの制御方法および制御装置を提供する。
【解決手段】エンジンの要求負荷に応じて開弁オーバラップ量を増加させるターボ過給機付きエンジンにおいて、エンジンの低負荷領域では、吸気弁開時期の進角量を、排気弁閉時期の遅角量よりも多くして、開弁オーバラップ量を増加させ(ステップS16)、エンジンの高負荷領域では、排気弁閉時期の遅角量を、吸気弁開時期の進角量よりも多くして、開弁オーバラップ量を増加させる(ステップS17)。
【解決手段】エンジンの要求負荷に応じて開弁オーバラップ量を増加させるターボ過給機付きエンジンにおいて、エンジンの低負荷領域では、吸気弁開時期の進角量を、排気弁閉時期の遅角量よりも多くして、開弁オーバラップ量を増加させ(ステップS16)、エンジンの高負荷領域では、排気弁閉時期の遅角量を、吸気弁開時期の進角量よりも多くして、開弁オーバラップ量を増加させる(ステップS17)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エンジンの要求負荷に応じて吸気弁と排気弁とが共に開弁する開弁オーバラップ量を増加させる機能を備えたターボ過給機付きエンジンの制御方法および制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ターボ過給機付きエンジンにおいて、エンジンの要求負荷に応じて吸気弁と排気弁とが共に開弁する開弁オーバラップ量を、図9(a)の状態から同図(b)、同図(c)、同図(d)に示すように順次増大させると(但し、図9においては、図示の便宜上、開弁オーバラップ領域をハッチングにて示している)、掃気量が増加し、タービンの回転数が増加するので、これによりコンプレッサの回転数が増加し、吸気充填量が増えて、トルクが増大することが知られている。
【0003】
吸排気弁の開弁オーバラップ量を増加する際に、吸気弁開時期を進角させる方法と、排気弁閉時期を遅角させる方法と、これらを同時に行う方法とがあり、この場合、エンジンの低速領域においては、吸気弁開時期を進角させると、吸気充填量の面で有利となる。すなわち、吸気弁開時期を進角させるのに対応して吸気弁閉時期も進角させるように構成すれば、一旦、シリンダボア内に吸入された吸気の吹き返しが少なくなるため、吸気充填量の面で有利となることも知られている。
【0004】
なお、図9において、EVOは、エキゾースト・バルブ・オープンの略で、排気弁開時期を示し、EVCは、エキゾースト・バルブ・クローズの略で、排気弁閉時期を示し、IVOは、インテーク・バルブ・オープンの略で、吸気弁開時期を示し、IVCは、インテーク・バルブ・クローズの略で、吸気弁閉時期を示す。
【0005】
そこで、図10に示すように、バルブタイミングの変化とトルク変動との関係を検証するために、吸気弁開時期IVOの進角を優先し、その後に排気弁閉時期EVCを遅角することにより、吸排気弁の開弁オーバラップ量を増加させる場合(図10の特性b参照)と、吸気弁開時期IVOの進角と排気弁閉時期EVCを遅角とを同時に実行することにより、開弁オーバラップ量を増加させる場合(図10の特性d参照)と、排気弁閉時期EVCの遅角を優先し、その後に吸気弁開時期IVOを進角することにより、開弁オーバラップ量を増加させる場合(図10の特性e参照)との3通りについて実験を行った結果、上記特性bにおいて、矢印cで示すようなトルクダウンが発生することが明らかになった。なお、図10は、横軸にクランク角(開弁オーバラップ量に相当)をとり、縦軸にトルクをとって示す特性図である。
【0006】
上記矢印cで示すトルクダウンは、次の理由により発生するものである。つまり、吸気弁開時期を優先して進角させることにより、吸排気弁の開弁オーバラップ量を順次、増大して、掃気量を増やすと、吸気ポートから排気ポートに流れる空気量が増加し、排気が冷やされる。この排気が冷えることで、排気エネルギーが低下し、過給機のタービンを回転させるエネルギーが下がり、これによりトルクダウンが発生する。すなわち、トルクを上げるために、開弁オーバラップ量を増やしているにも拘わらず、矢印cで示すようなトルクの低下が生じることにより、滑らかなトルク曲線が得られなる結果、ドライバーに違和感が生じてドライバビリティが悪化するという問題点があった。
【0007】
一方、下記特許文献1には、吸排気弁の開弁オーバラップ量を増加させるときに、吸気弁開時期の進角量に対して、排気弁閉時期の遅角量を多く設定するものが開示されており、また、特許文献2には、吸排気弁の開弁オーバラップ量を増加させるときに、排気弁閉時期の遅角量に対して、吸気弁開時期の進角化を優先的に行うものが開示されている。しかし、上記特許文献1、2に開示された何れの構成においても、広い運転領域に亘って良好なトルク、および滑らかなトルク曲線を得て、ドライバビリティを向上させるという効果を充分に得ることができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−40275号公報
【特許文献2】特開2007−263083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、この発明は、吸気量が少ない時に吸気弁開時期を進角して、吸気量を効果的に増やしながら、吸排気弁の開弁オーバラップ量を拡大するものであるが、吸気量が多い時に吸気弁開時期を進角し過ぎると、吸気圧が排気圧を上回り、掃気された空気が排気管内に吹き抜けて、排気ガス温度が下がることで、ターボ駆動エネルギーの低下につながり、トルクを下げてしまうことに鑑み、排気弁閉時期を遅角して開弁オーバラップ量を拡大し、これにより広い運転領域に亘って良好なトルク、および滑らかなトルク曲線を得て、ドライバビリティを向上することができるターボ過給機付きエンジンの制御方法および制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明によるターボ過給機付きエンジンの制御方法は、エンジンの要求負荷に応じて開弁オーバラップ量を増加させるターボ過給機付きエンジンの制御方法であって、エンジンの低負荷領域では、吸気弁開時期の進角量を、排気弁閉時期の遅角量よりも多くして、開弁オーバラップ量を増加させ、エンジンの高負荷領域では、排気弁閉時期の遅角量を、吸気弁開時期の進角量よりも多くして、開弁オーバラップ量を増加させるものである。
【0011】
上記構成によれば、エンジンの低負荷領域(吸気量が少ない時)には、吸気弁開時期を進角して開弁オーバラップ量を拡大することにより、吸気充填量を効果的に増大することができる。また、上記吸気弁開時期の進角に対応させて吸気弁閉時期を進角させることにより、吸気の吹き返しを抑制して吸気量をさらに増やすことも可能である。そして、エンジンの高負荷領域(吸気量が多い時)には、排気弁閉時期を遅角して開弁オーバラップ量を拡大する。これにより、吸気量が多い時に、吸気弁開時期が進角し過ぎることに起因する排気ガス温度の低下、およびターボ駆動エネルギーの低下を防止することができ、広い範囲に亘って良好なトルク、および滑らかなトルク曲線を得て、ドライバビリティの向上を図ることができる。
【0012】
この発明の一実施形態においては、ターボ過給機のタービン上流における排気路に排気シャッタ弁を備え、エンジン回転数が低い低速側では上記排気シャッタ弁を絞り、エンジン回転数が高い高速側では上記排気シャッタ弁を開くものである。
【0013】
上記構成によれば、エンジン回転数が低い低速側では、排気シャッタ弁を絞って、タービンに与える排気流速を強め、この動圧過給により、ターボエネルギを確保して、吸気量を増加することができる。しかも、エンジン回転数が高い高速側では、排気シャッタ弁を開くことで、動圧過給能力を下げて吹き抜け空気を減少させ、後燃え量の抑制を図って、排気側の温度上昇を抑えることができる。
【0014】
因みに、開弁オーバラップ量の増加に伴って掃気量が増加すると、未燃の残留ガスが排気管の中で後燃えすることにより、排気ガス温度が急激に立ち上がって排気ガス温度が過度に上昇し、タービンやセンサ類の耐熱温度を超えて制御不能になる可能性がある。
【0015】
そこで、この実施形態では、上記のように高速側において排気シャッタ弁を開くことで、後燃え量を抑制して排気ガス温度の上昇を抑制するようにしている。但し、後燃えを中止すると、タービンのトルクを確保できないので、後燃えを中止することなく、排気シャッタ弁を開くことにより、後燃えを抑制し、タービンに流れる排気ガスの流速を弱めて掃気量をコントロールするようにしている。
【0016】
この発明の一実施形態においては、上記低負荷領域における負荷の上限となるしきい値、もしくは高負荷領域における負荷の下限となるしきい値を、エンジン回転数が高くなる程、小さくするものである。
【0017】
上記のようにエンジンが低負荷領域にあるか、高負荷領域にあるかを判別するためのしきい値をエンジン回転数に応じて変化させることにより、吸気充填量の増大作用および吸気の吹き返し抑制作用等が、さらに効果的に得られるという利点がある。
【0018】
この発明の一実施形態においては、上記低負荷領域における負荷の上限となるしきい値、もしくは高負荷領域における負荷の下限となるしきい値、または上記低速側と高速側とを切り換えるエンジンの回転数のしきい値を、排気ガス温度が高くなる程、上記しきい値を小さくするものである。
【0019】
上記構成によれば、排気ガス温度を加味した制御を実行することにより、吸気充填量の増大作用および吸気の吹き返し抑制作用等が、さらに効果的に得られる。また、排気シャッタ弁を備えたエンジンでは、排気ガス温度が低い時に、ターボエネルギを充分に確保して吸気量を増加することができるとともに、排気ガス温度の低い時に、後燃え量の抑制を図って、排気側の温度上昇を、より効果的に抑えることができる。
【0020】
また、この発明の一実施形態においては、エンジンの低負荷領域では、吸気弁開時期を吸気下死点から所定クランク角だけ離すように設定して、エンジンの有効圧縮比が膨張比と比べて小さくなるように制御し、この低負荷領域からの加速時における加速初期に、吸気弁閉時期を吸気下死点に近付けるように設定した後、排気弁と吸気弁との開弁オーバラップ量を増加させるものである。
【0021】
上記構成によれば、エンジンの低負荷時に吸気弁閉時期を吸気下死点よりも進角させ、または吸気弁閉時期を吸気下死点よりも遅角させることにより、エンジンの有効圧縮比を膨張比と比べて小さくすることができるため、ノッキングを抑制しながら熱効率を高めることができると共に、ポンピングロスを低減して燃費を向上させることができる。
【0022】
この発明の一実施形態においては、エンジンの低負荷領域における加速時に、異常燃焼が発生し易い環境条件下にあるか否かを判定し、異常燃焼が発生し易い条件下では、異常燃焼が発生し難い条件下に比べて、同一運転領域における排気弁閉時期の遅角量を多くするものである。
【0023】
上記構成によれば、エンジンの低負荷領域からの加速時時における異常燃焼が発生し易い条件下では、排気弁閉時期の遅角量を多くしたため、排気行程における掃気性を向上させることにより、筒内の残留ガスを効果的に押し出して低温の新気を多量に導入し、気筒内温度を充分に低下させることができる。したがって、上記のようにターボ過給機を設けることによりその過給効果で優れた加速性が得られる反面、筒内温度が過度に上昇すること等に起因してプレイグニッションやノッキング等が生じ易い傾向にあるエンジンであっても、その異常燃焼を効果的に防止することができる。
【0024】
この発明の一実施形態においては、エンジンの低負荷領域における加速時に、異常燃焼が発生し易い環境条件下にあると判定された場合に、異常燃焼が発生し難い条件下に比べて、同一運転領域における吸気弁開時期の進角量を少なくすると共に、排気弁閉時期の遅角量を多くするものである。
【0025】
上記構成によれば、エンジンの低負荷領域における加速時に、異常燃焼が発生し易い条件下では、異常燃焼が発生し難い条件下に比べて、同一運転領域における吸気弁開時期の進角量を少なくすると共に、排気弁閉時期の遅角量を多くすることにより、排気行程における掃気性を向上させることができるため、筒内の残留ガスを効果的に押し出して低温の新気を多量に導入することができる。したがって、上記のようにターボ過給機を設けることによりその過給効果で優れた加速性が得られる反面、筒内温度が過度に上昇すること等に起因してプレイグニッションやノッキング等が生じ易い傾向にあるエンジンにおいて、異常燃焼が発生し易い条件下で気筒内温度を充分に低下させることにより、異常燃焼をさらに効果的に防止することができる。
【0026】
この発明の一実施形態においては、エンジンの高負荷領域における加速時に、異常燃焼が発生し易い環境条件下にある否かを判定し、異常燃焼が発生し易い条件下では、異常燃焼が発生し難い条件下に比べて、同一運転領域における排気弁閉時期の遅角量および吸気弁開時期の進角量をそれぞれ少なくすることにより上記吸排気弁の開弁オーバラップ量を低減するものである。
【0027】
上記構成によれば、気筒内温度が上昇し易いことに起因して異常燃焼が頻繁に発生する傾向があるエンジンの高負荷領域では、排気弁閉時期の遅角量および吸気弁開時期の進角量をそれぞれ少なくして、上記吸排気弁の開弁オーバラップ量を大きく低減することにより、吸気充填量を充分に減少させることができるため、上記異常燃焼の発生を効果的に抑制できるという利点がある。
【0028】
この発明によるターボ過給機付きエンジンの制御装置は、エンジンの要求負荷に応じて吸気弁および排気弁の開閉時期を変更することにより開弁オーバラップ量を調節するバルブタイミング変更手段を備えたターボ過給機付きエンジンの制御装置であって、エンジン負荷(吸気充填効率)を検出する負荷検出手段を備え、上記バルブタイミング変更手段は、上記負荷検出手段によって検出されたエンジン負荷が低負荷領域である場合に、上記吸排気弁の開弁オーバラップ量を増加させる時、吸気弁開時期の進角量を、排気弁閉時期の遅角量よりも多くして、開弁オーバラップ量を増加させ、上記エンジン負荷が高負荷領域である場合に、上記吸排気弁の開弁オーバラップ量を増加させる時、排気弁閉時期の遅角量を、吸気弁開時期の進角量よりも多くして、開弁オーバラップ量を増加させるものである。
【0029】
上記構成によれば、上述の負荷検出手段は、エンジン負荷(吸気充填効率)を検出し、上述のバルブタイミング変更手段は、エンジンの要求負荷に応じて吸排気弁の開弁オーバラップ量を変更するが、エンジン負荷が低負荷領域である場合に、吸気弁開時期を進角することにより、吸気の吹き返しを抑制しつつ、吸気量を増やしながら、開弁オーバラップ量を拡大することができる。
【0030】
また、バルブタイミング変更手段は、エンジン負荷が高負荷領域である場合に、開弁オーバラップ量を増加させる時、排気弁閉時期を遅角して開弁オーバラップ量を拡大する。これにより、吸気量が多い時に、吸気弁開時期が進角し過ぎることに起因する排気ガス温度の低下、およびターボ駆動エネルギーの低下を防止することができ、広い範囲に亘って良好なトルク、および滑らかなトルク曲線を得て、ドライバビリティの向上を図ることができる。
【0031】
この発明の一実施形態においては、エンジンの低負荷領域における加速時に、異常燃焼が発生し易い環境条件下にある否かを判定する判定手段を備えると共に、上記バルブタイミング変更手段は、上記判定手段で異常燃焼が発生し易い条件下にあると判定された場合に、異常燃焼が発生し難い条件下に比べて、同一運転領域における吸気弁開時期の進角量を少なくすると共に、排気弁閉時期の遅角量を多くするように吸排気弁の開閉時期を変更するものである。
【0032】
上記構成によれば、異常燃焼が発生し易い条件下では、異常燃焼が発生し難い条件下に比べて、同一運転領域における吸気弁開時期の進角量を少なくすると共に、排気弁閉時期の遅角量を多くすることにより、排気行程における掃気性を向上させることができるため、筒内の残留ガスを効果的に押し出して低温の新気を多量に導入することができる。したがって、上記のようにターボ過給機を設けることによりその過給効果で優れた加速性が得られる反面、筒内温度が過度に上昇すること等に起因してプレイグニッションやノッキング等が生じ易い傾向にあるエンジンにおいて、異常燃焼が発生し易い条件下で気筒内温度を充分に低下させることにより、異常燃焼を効果的に防止することができる。
【0033】
この発明の一実施形態においては、エンジンの高負荷領域における加速時に、異常燃焼が発生し易い環境条件下にある否かを判定する判定手段を備えると共に、上記バルブタイミング変更手段は、上記判定手段で異常燃焼が発生し易い条件下にあると判定された場合に、異常燃焼が発生し難い条件下に比べて、同一運転領域における排気弁閉時期の遅角量および吸気弁開時期の進角量をそれぞれ少なくすることにより上記吸排気弁の開弁オーバラップ量を低減するように吸排気弁の開閉時期を変更するものである。
【0034】
上記構成によれば、気筒内温度が上昇し易いことに起因して異常燃焼が頻繁に発生する傾向があるエンジンの高負荷領域では、排気弁閉時期の遅角量および吸気弁開時期の進角量をそれぞれ少なくして、上記吸排気弁の開弁オーバラップ量を大きく低減することにより、吸気充填量を充分に減少させることができるため、上記異常燃焼の発生を効果的に抑制できるという利点がある。
【発明の効果】
【0035】
この発明によれば、吸気量が少ないエンジンの低負荷時には、吸気弁開時期を進角して、吸気量を効果的に増やしながら、開弁オーバラップ量を拡大するが、吸気量が多いエンジンの高負荷時には、吸気弁開時期を進角し過ぎると、吸気圧か排気圧を上回って掃気された空気が排気管内に吹き抜けて、排気ガス温度が低下することによるターボエネルギの低下につながり、トルクを下げてしまうので、排気弁閉時期を遅角して開弁オーバラップ量を拡大する。これにより、広い運転領域に亘って良好なトルク、滑らかなトルク曲線を得て、ドライバビリティを向上することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明のターボ過給機付きエンジンの制御装置を示す概略構成図である。
【図2】図1で示した構成の排気側を示す部分側断面図である。
【図3】排気シャッタ弁全開時の説明図である。
【図4】制御回路の構成を示すブロック図である。
【図5】RAMに記憶させたマップの説明図である。
【図6】ターボ過給機付きエンジンの制御方法を示すメインルーチンである。
【図7】ターボ過給機付きエンジンの制御方法を示すサブルーチンである。
【図8】クランク角に対する排気ガス温度および排気シャッタ弁開度の変化を示す制御特性図である。
【図9】吸気弁のリフト量を変化させた状態を示す開時期の進角および排気弁閉時期の遅角による開弁オーバラップ量の変更を示す特性図である。
【図10】クランク角(開弁オーバラップ量)に対するトルク変動を示す特性図である。
【図11】吸気弁のリフト量を変化させるように構成した実施例を示す特性図である。
【図12】ターボ過給機付きエンジンの制御方法における別の実施例を示すフローチャートである。
【図13】吸気弁開時期の進角量および排気弁閉時期の遅角量を変化させて異常燃焼を抑制する実施例を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
広い運転領域に亘って良好なトルク、および滑らかなトルク曲線を得て、ドライバビリティを向上するという目的を、エンジンの要求負荷に応じて開弁オーバラップ量を増加させる過給機付きエンジンの制御方法において、エンジンの低負荷領域では、吸気弁開時期の進角量を、排気弁閉時期の遅角量よりも多くして、開弁オーバラップ量を増加させ、エンジンの高負荷領域では、排気弁閉時期の遅角量を、吸気弁開時期の進角量よりも多くして、開弁オーバラップ量を増加させるという方法で実現した。
【実施例】
【0038】
図面は、過給機付きエンジンの制御方法および制御装置を示している。まず、図1を参照して、過給機付きエンジンの制御装置の構成について説明する。この過給機付きエンジンの吸気系には、吸入吸空気を浄化するエアクリーナ1が設けられている。このエアクリーナ1は、フレッシュエアの入口2とエレメント3とを備えている。このエアクリーナ1のエレメント3下流には、該エアクリーナ1から吸入した浄化空気の吸入量(吸気量)を電圧変化として検出するエアフローセンサ4が接続されている。
【0039】
また、吸気系と排気系との間には、ターボ過給機5が設けられている。このターボ過給機5として、吸気側のコンプレッサハウジング6内にコンプレッサインペラ7を配設し、排気側のタービンハウジング8内にタービンホイール9を配設して、排気側のタービンホイール9と吸気側のコンプレッサインペラ7とを、回転軸10で連結したものを用いている。このターボ過給機5は、排気ガスでタービンホイール9を回転し、このタービンホイール9でコンプレッサインペラ7を駆動して、自然吸入空気量以上の空気をエンジンに供給するものである。
【0040】
上述のエアフローセンサ4の下流と、コンプレッサCOMにおけるコンプレッサハウジング6の入口との間を、第1吸気通路11で連結接続すると共に、コンプレッサハウジング6の出口には、第2吸気通路12を介してインタクーラ13の入口を接続している。このインタクーラ13は、コンプレッサCOMで加圧された空気の温度を下げて、空気密度を上昇させ、吸気充填効率の向上を図るものである。
【0041】
上述のインタクーラ13の出口側には、第3吸気通路14を介して、スロットルボディ15が接続されている。このスロットルボディ15のスロットルチャンバ内には、スロットル弁16が取り付けられると共に、該スロットルボディ15には、スロットル開度を検出するスロットルセンサ17が設けられている。
【0042】
上述のスロットルボディ15の下流には、第4吸気通路18を介して、吸気マニホールド19が接続されている。この吸気マニホールド19の先端は、エンジン20の気筒数に対応して複数に分岐されており、吸気マニホールド19の分岐された部分は、図2に示すように、エンジン20を構成するシリンダヘッドの吸気ポート21にそれぞれ接続されている。
【0043】
図2に示すように、エンジン20は、上述の吸気ポート21と、排気ポート22と、これらの各ポート21,22とを適宜連通する燃焼室23と、ピストン(図示せず)等を備えている。上述の吸気ポート21および排気ポート22には、図示しない動弁機構によって開閉操作される吸気弁24と、排気弁25とが取り付けられている。
【0044】
この実施形態では、上記エンジン20として直列4気筒4サイクルエンジンを例示し、シリンダブロック26には、図1に示すように、第1〜第4の各気筒27a,27b,27c,27dが形成されるとともに、シリンダヘッドの排気ポート22と対応して、第1〜第4の排気通路28a,28b,28c,28dを備えた排気マニホールド28が取り付けられている。
【0045】
ここで、上述の排気マニホールド28は、その上流側においては4つの独立排気通路(各排気通路28a,28b,28c,28d参照)で構成され、合計4つの排気通路28a,28b,28c,28dのうちの2つの通路28b,28cがその下流側において集合形成されることにより、下流側においては3つの独立排気通路が構成されている。
【0046】
上述の排気マニホールド28の下流には、排気シャッタ弁ハウジング29の入口が連通接続され、このハウジング29内には、アクチュエータ30により駆動される排気シャッタ弁31が設けられると共に、上記排気シャッタ弁ハウジング29の出口側は、タービンTURにおけるタービンハウジング8の入口に接続されている。
【0047】
つまり、ターボ過給機5のタービンTUR上流における排気通路としての排気シャッタ弁ハウジングには、排気シャッタ弁31が設けられている。この排気シャッタ弁31は、図2に示すように、側面視扇形状に形成され、図2に示す絞り位置と、図3に示す全開位置との間を調整可能に構成されている。
【0048】
図2に示すように、排気シャッタ弁31を絞った場合には、タービンTURに与える排気流速を強めて、動圧過給によりターボ駆動エネルギーを確保し、吸気量を増加するものであり、また図3に示すように、排気シャッタ弁31を全開にした場合には、その下面31aが排気シャッタ弁ハウジング29による排気通路に抵抗を与えないように、この排気通路の上壁と排気シャッタ弁31の下面31aとが面一状、または略面一状となるように形成されている。
【0049】
しかも、図1に示すように、エンジン20のシリンダヘッド部には、エンジン20の要求負荷に応じて吸気弁24と排気弁25とを共に開弁する開弁オーバラップ量を変更可能な吸気バルブタイミング変更手段32と、排気バルブタイミング手段33とが設けられている。これらの吸排気双方のバルブタイミング変更手段32,33により、バルブタイミング変更手段34が構成されている。
【0050】
ここで、上述の吸気バルブタイミング変更手段32は、吸気弁24の開弁期間を一定としつつ、図9で示した吸気弁開時期IVOおよび吸気弁閉時期IVCを変更する位相式バルブタイミング変更機構VVT(variable valve timing)からなっている。また、上述の排気バルブタイミング手段33は、排気弁25の開弁期間を一定としつつ、図9で示した排気弁開時期EVOおよび排気弁閉時期EVCを変更する位相式バルブタイミング変更機構VVTからなっている。なお、図2、図3において、35は、シリンダヘッドに設けられて燃焼室23の頂部に火花を発生させる点火プラグである。
【0051】
図4は、過給機付きエンジンの制御装置における制御回路ブロック図を示し、制御手段としてのCPU50は、エンジン回転センサ41からのエンジン回転数Ne、エアフローセンサ4からの吸入空気量Q、スロットルセンサ17からのスロットル開度TVO、クランク角センサ42からのクランク角CA、排気温センサ43からの排気ガス温度tなどの必要な入力信号に基づき、ROM51に格納されたプログラムに従って、吸気バルブタイミング変更手段32、排気バルブタイミング変更手段33およびアクチュエータ30を駆動制御するように構成されている。上記アクチュエータ30は、図2、図3で示した排気シャッタ弁31の開度を制御し、RAM52は、図5で示すマップやM1やその他の必要なデータを記憶するものである。
【0052】
上述のCPU50、ROM51およびRAM52の三者で、エンジン制御ユニット(ECU)が構成される。上述のエンジン回転センサ41は、エンジンの回転数Neを検出する。このエンジン回転センサ41としては、イグニッションコイルを代用してもよい。
【0053】
スロットルセンサ17は、スロットル弁16の開度TVOを検出し、またクランク角センサはクランク角CAを検出する。さらに、排気温センサ43は、ターボ過給機5のタービンTURの下流と、キャタリスト(図示せず)の上流との間に取り付けられており、この排気温センサ43により排気管内の排気ガス温度tを直接検出する。
【0054】
図5に示すマップM1は、横軸にエンジン回転数Neをとり、縦軸に要求負荷をとって、低速側の過給運転領域R10,R11と、低回転低負荷領域R12と、高速側の過給運転領域R20,R21と、高回転低負荷領域R22とを区画したマップである。この実施例では、図示の便宜上、ハッチングを施して示す領域R10,R11,R12で排気シャッタ弁31を絞り制御し、他の領域R20,R21,R22で排気シャッタ弁31を全開制御するように構成している。
【0055】
また、図5において、WOTは、最大負荷トルクを示すものである。ここで、上述のCOP50は、吸気充填効率CE(エンジン負荷)を演算する負荷検出手段(図7に示すフローチャートのステップS12参照)と、この負荷検出手段により検出された吸気充填効率CEに基づいてエンジンが低負荷領域の運転状態あると判別された場合に、上述の吸排気弁24,25の開弁オーバラップ量OLを増加させる時、吸気弁開時期IVOの進角量を、排気弁閉時期EVCの遅角量よりも多くして、開弁オーバラップ量OLを増加させる第1の開弁オーバラップ量増加手段(図7に示すフローチャートのステップS16参照)と、上記負荷検出手段(ステップS12)によって検出されたエンジン負荷CEに基づいてエンジンが高負荷領域の運転状態あると判別された場合に、上述の吸排気弁24,25の開弁オーバラップ量OLを増加させる時、排気弁閉時期EVCの遅角量を、吸気弁開時期IVOの進角量よりも多くして、開弁オーバラップ量OLを増加させる第2の開弁オーバラップ量増加手段(図7に示すフローチャートのステップS17参照)とを兼ねるものである。
【0056】
次に、図6、図7に示すフローチャートを参照して、過給機付きエンジンの制御方法について説明する。図6に示すメインルーチンのステップS1で、CPU50は、エンジン回転センサ41からのエンジン回転数Ne、エアフローセンサ4からの吸入空気量Q、スロットルセンサ17からのスロットル開度TVO等の必要な入力の読み込みを実行すると共に、エンジン回転数Neと吸入空気量Qとに基づいて吸気充填効率CE(エンジン負荷)を演算する。
【0057】
次に、ステップS2で、CPU50は、読み取った検出信号の値に基づいて、エンジン20の目標トルク(図5に示すマップM1の要求負荷に相当)を演算する。次に、ステップS3で、CPU50は、エンジン回転数Neと要求負荷とに対応して、領域判定を実行し、低速側の過給運転領域R10,R11および低回転低負荷領域R12であって、図5に示すマップにおいてハッチングを施して示す領域内にあると判定された場合(YES判定時)には、次のステップS4に移行する。また、高速側の過給運転領域R20、R21および高回転低負荷領域R22にあると判定された場合(NO判定時)には、別のステップS5に移行する。
【0058】
上述のステップS4で、CUP50は、独立排気絞りモードを実行するが、この制御については、図7のサブルーチンを参照して後述する。一方、上記ステップS5で、CUP50は、アクチュエータ30を介して排気シャッタ弁31を、図3に示すように全開とする。次のステップS6で、CUP50は、通常運転モードを実行した後に、リターンする。なお、ステップS6の通常運転モードについて詳述しないが、このステップS6では、図7に示す各ステップS15〜S21の処理を省略した内容と略同等になる。
【0059】
次に、図7に示すサブルーチンを参照して、ステップS4に相当する制御について詳述する。図7のステップS11で、CUP50は、図6のステップS2で演算した目標トルクおよびこれに対応して設定されたた開弁オーバラップ量OLの目標値と、吸入空気量Q、エンジン回転数Ne、排気ガス温度t等検出値とをそれぞれ読み込む。
【0060】
次に、ステップS12で、CUP50は、エンジン回転数Neと吸入空気量Qとに基づいて、現行の吸気充填効率CE(i)を求め、この値をエンジン負荷として設定する。次いで、ステップS13において、CUP50は、上記目標トルクの演算値と、開弁オーバラップ量OLの目標値とに基づき、開弁オーバラップ拡大量(ΔOL)を演算する。次に、ステップS14で、CUP50は、読み込んだエンジン回転数Neおよび排気ガス温度tからエンジン負荷のしきい値CE1,CE2を設定する。
【0061】
ここで、上記しきい値CE1は、エンジンが低負荷領域にあるか、高負荷領域にある否かを判定するための低負荷領域の上限を示すしきい値(または、高負荷領域の下限を示すしきい値)であり、上記しきい値CE2は、排気シャッタ弁31を、絞り制御した状態と、所定開度(但し、全開を含む)に制御した状態とに切り換える負荷のしきい値であって、こらのしきい値CE1,CE2は、エンジン回転数Neが高くなる程、小さい値に設定されると共に、排気ガス温度tが高くなる程、小さい値に設定される。
【0062】
次に、ステップS15において、上記負荷のしきい値CE1と現行の吸気充填効率CE(エンジン負荷)(i)とを比較して、CE1>CE(i)の低負荷領域であると判定された場合(YES判定時)に、次のステップS16に移行し、CE1<CE(i)の高負荷領域であると判定された場合(NO判定時)には、別のステップS17に移行する。
【0063】
上述のステップS16で、CUP50は、エンジンが低負荷領域であることに対応して、ステップS13で既に演算されている開弁オーバラップ拡大量(ΔOL)まで吸気弁開時期IVOを進角させる。
【0064】
一方、上述のステップS17で、CUP50は、エンジンが高負荷領域であることに対応して、ステップS13で既に演算されている開弁オーバラップ拡大量(ΔOL)まで排気弁閉時期EVCを遅角させる。
【0065】
すなわち、上記各ステップS11〜S17での処理により、CE1>CE(i)の低負荷領域では、吸気弁開時期IVOの進角量を排気弁閉時期EVCの遅角量よりも多くして、開弁オーバラップ量OLを増加させ、CE1<CE(i)の高負荷領域では、排気弁閉時期EVCの遅角量を吸気弁開時期IVOの進角量よりも多くして、開弁オーバラップ量OLを増加させるものである。
【0066】
要するに、上記開弁オーバラップ量OLを増加させる際に、図10に示す切換点P1までは、吸気弁開時期IVOの進角を優先し、かつ切換点P1以降の高負荷側では、排気弁閉時期EVCの遅角を優先するように、吸気弁24および排気弁25の開閉時期を制御することにより、図10に特性aで示すように、トルクダウンのない滑らかなトルク曲線を実現できるようにしたものである。
【0067】
次に、ステップS18において、負荷のしきい値CE2と現行の吸気充填効率CE(エンジン負荷)(i)とを比較して、CE2>CE(i)(但し、CE2>CE1)の低負荷状態にあると判定された場合(YES判定時)には、次のステップS19に移行し、CE2<CE(i)の高負荷状態にあると判定され場合(NO判定時)には、別のステップS20に移行する。
【0068】
なお、上記ステップS18での負荷の比較による判定処理内容に代えて、エンジン回転数Neのしきい値THRneを設け、このしきい値THRneと現行のエンジン回転数Ne(i)とを比較して、THRne>Ne(i)のエンジン回転数Neが低い低速側ではステップS19に移行し、THRne<Ne(i)のエンジン回転数Neの高い高速側では、ステップS20に移行する構成を採用してもよい。
【0069】
上述のステップS19で、CUP50は、エンジンの低負荷時(または、エンジン回転数Neが低い低速時)に対応して、図2に示すように排気シャッタ弁31を絞り制御し、ターボ過給機5のタービンTURに与える排気流速を強め、この動圧過給により、ターボ駆動エネルギーを確保して、吸気量を増加する。
【0070】
一方、上述のステップS20で、CUP50は、エンジンの高負荷時(または、エンジン回転数Neが高い高速時)に対応して、現行の吸気充填効率CE(エンジン負荷)(i)および排気ガス温度から排気シャッタ弁31の開度VEを演算する。
【0071】
次に、ステップS21で、CUP50は、アクチュエータ30を介して、排気シャッタ弁31をステップS20で演算した開度VEまで開く。このため、排気シャッタ弁31は、図8に示すように切換点P2までは絞り制御されるが、切換点P2以降は該排気シャッタ弁31が所定開度VE(但し、全開を含む)に開放されるので、動圧過給能力を下げて、吹き抜け空気を減少し、未燃残留ガスの後燃え量を抑制することができる。この制御を実行しない場合には、図8に特性βで示すように排気ガス温度が急激に立ち上がるが、上記制御により図8に特性αで示すごとく排気ガス温度の急上昇を抑えることができる。
【0072】
このように、上記実施例のターボ過給機付きエンジンの制御方法は、エンジン20の要求負荷に応じて開弁オーバラップ量OLを増加させるエンジンの制御方法であって、エンジンの低負荷領域では、吸気弁開時期IVOの進角量を、排気弁閉時期EVCの遅角量よりも多くして、開弁オーバラップ量OLを増加させ(ステップS16参照)、エンジンの高負荷領域では、排気弁閉時期EVCの遅角量を、吸気弁開時期IVOの進角量よりも多くして、開弁オーバラップ量OLを増加させるものである(ステップS17参照)。
【0073】
この構成によれば、エンジンの低負荷領域(吸気量が少ない時)では、吸気弁開時期IVOを進角させると共に、これに対応させて吸気弁閉時期IVCを進角させることにより効果的に吸気充填量を増大させて、要求負荷に応じた出力トルクを得ることができる。しかも、上記吸気弁開時期IVOの進角に対応させて吸気弁閉時期IVCを進角させることにより、吸気の吹き返しを抑制しつつ、吸気量を増やしながら、開弁オーバラップ量OLを拡大することができる。また、エンジンの高負荷領域(吸気量が多い時)では、排気弁閉時期EVCを遅角して開弁オーバラップ量OLを拡大する。これにより、吸気量が多い時に、吸気弁開時期IVOが進角し過ぎることに起因する排気ガス温度の低下、およびターボ駆動エネルギーの低下を防止することができ、広い範囲に亘って良好なトルク、および滑らかなトルク曲線(図10の特性a参照)を得て、ドライバビリティの向上を図ることができる。
【0074】
また、上記実施例では、ターボ過給機5のタービンTUR上流における排気路(排気シャッタ弁ハウジング29参照)に排気シャッタ弁31を備え、エンジン回転数Neが低い低速側では上記排気シャッタ弁31を絞り(ステップS4、ステップS19参照)、エンジン回転数Neが高い高速側では上記排気シャッタ弁31を開く(ステップS5、S21参照)ようにしている。
【0075】
この構成によれば、エンジン回転数Neが低い低速側では、排気シャッタ弁31を絞って、タービンTURに与える排気流速を強め、この動圧過給により、ターボエネルギを確保して、吸気量を増加することができる。しかも、エンジン回転数Neが高い高速側では、排気シャッタ弁31を開くことで、動圧過給能力を下げて吹き抜け空気を減少させ、後燃え量の抑制を図って、排気側の温度上昇を抑えることができる。
【0076】
因みに、開弁オーバラップ量OLの増加に伴って掃気量が増加すると、未燃の残留ガスが排気管の中で後燃えし、排気ガス温度が急激に立ち上がって(図8の特性β参照)、排気ガス温度が過度に上昇し、タービンTURやセンサ類(排気温センサ43、不図示の空燃比センサなど)の耐熱温度を超えて制御不能になる可能性がある。
【0077】
そこで、この実施形態では、高速側において排気シャッタ弁31を開くことで、後燃え量を抑制して排気ガス温度の上昇を抑制するようにしている(図8の特性α参照)。但し、後燃えを中止すると、タービンTURのトルクを確保できないので、後燃えを中止することなく、排気シャッタ弁31を開くことにより、後燃えを抑制し、タービンTURに流れる排気ガスの流速を弱めて掃気量をコントロールするようにしている。
【0078】
さらに、上記低負荷領域における負荷の上限となるしきい値(若しくは高負荷領域における負荷の下限となるしきい値)CE1を、エンジン回転数Neが高くなる程を小さくするものである。
【0079】
この構成によれば、エンジンが低負荷領域にあるか、高負荷領域にあるかを判別するためのしきい値をエンジン回転数Neに応じて変化させることにより、吸気充填量の増大作用および吸気の吹き返し抑制作用等が、さらに効果的に得られるという利点がある。
【0080】
加えて、上記低負荷領域における負荷の上限となるしきい値(若しくは高負荷領域における負荷の下限となるしきい値)CE1と、またはエンジンの低速側と高速側とを切り換えるエンジン回転数Neのしきい値THRneとを設定し、排気ガス温度tが高くなる程、上記しきい値CE1またはTHRneを小さくするようにしてもよい。
【0081】
この構成によれば、排気ガス温度tを加味した制御を実行することにより、吸気充填量の増大作用および吸気の吹き返し抑制作用等が、さらに効果的に得られる。また、排気シャッタ弁31を備えたエンジンでは、排気ガス温度tが低い時に、ターボエネルギを充分に確保して吸気量を増加することができるとともに、排気ガス温度の低い時に、後燃え量の抑制を図って、排気側の温度上昇を、より効果的に抑えることができる。
【0082】
また、上記実施例に係るターボ過給機付きエンジンの制御装置は、エンジン20の要求負荷に応じて吸気弁24と排気弁25とが共に開弁する開弁オーバラップ量OLを変更可能なバルブタイミング変更手段34を備えた過給機付きエンジンの制御装置であって、吸気充填効率CE(エンジン負荷)を検出する負荷検出手段(ステップS12参照)を備え、上記バルブタイミング変更手段34は、上記負荷検出手段(ステップS12参照)によって検出されたエンジン負荷が所定値よりも低い低負荷領域である場合に、上記吸排気弁24,25の開弁オーバラップ量OLを増加させる時、吸気弁開時期IVOの進角量を、排気弁閉時期EVCの遅角量よりも多くして、開弁オーバラップ量OLを増加(ステップS16参照)させ、上記エンジン負荷が所定値よりも高い高負荷領域である場合に、上記吸排気弁24,25の開弁オーバラップ量OLを増加させる時、排気弁閉時期EVCの遅角量を、吸気弁開時期IVOの進角量よりも多くして、開弁オーバラップ量OLを増加(ステップS17参照)させるように吸気弁および排気弁の開閉時期を変更するものである(図1、図7参照)。
【0083】
この構成によれば、上述の負荷検出手段(ステップS12参照)は、吸気充填効率CE(エンジン負荷)を検出し、上述のバルブタイミング変更手段34は、エンジンの要求負荷に応じて吸気弁24と排気弁25とが共に開弁する開弁オーバラップ量OLを変更するが、エンジンの低負荷領域では、吸気弁開時期IVOを進角(ステップS16参照)させることにより効果的に吸気充填量を増大させて、要求負荷に応じた出力トルクを得ることができる。しかも、上記吸気弁開時期IVOの進角に対応させて吸気弁閉時期IVCを進角させることにより吸気の吹き返しを抑制しつつ、吸気量を増やしながら、開弁オーバラップ量OLを拡大することができる。
【0084】
また、バルブタイミング変更手段34は、エンジン負荷が所定値よりも高い高負荷領域である場合に、開弁オーバラップ量OLを増加させる時、排気弁閉時期EVCを遅角(ステップS17参照)し、開弁オーバラップ量OLを拡大する。これにより、吸気量が多い時に、吸気弁開時期IVOが進角し過ぎることに起因する排気ガス温度tの低下、およびターボ駆動エネルギーの低下を防止することができ、広い範囲に亘って良好なトルク、および滑らかなトルク曲線(図10の特性a参照)を得て、ドライバビリティの向上を図ることができる。
【0085】
この発明の構成と、上記実施例との対応において、この発明に係る排気シャッタ弁31が設けられた排気通路は、実施例の排気シャッタ弁ハウジング29に形成された排気通路に対応する。
【0086】
以下同様に、負荷検出手段は、CPU制御によるステップS12に対応し、エンジン負荷が低負荷領域である場合に、開弁オーバラップ量を増加させる時、吸気弁開時期の進角量を、排気弁閉時期の遅角量よりも多くして、開弁オーバラップ量を増加させる手段は、第1の開弁オーバラップ量増加手段S16に対応する。
【0087】
また、過給領域における高負荷領域である場合に、開弁オーバラップ量を増加させる時、排気弁閉時期の遅角量を、吸気弁開時期の進角量よりも多くして、開弁オーバラップ量を増加させる手段は、第2の開弁オーバラップ量増加手段S17に対応するも、この発明は、上記実施例の構成のみに限定されるものではない。
【0088】
例えば、上記実施例においては、吸気2弁、排気2弁タイプのエンジンを例示したが、吸気2弁、排気1弁タイプのエンジンであってもよく、またはエンジンの気筒数は4気筒に限定されるものではない。
【0089】
上記実施例では、図9に示すように、吸気弁24および排気弁25の開弁期間を一定としつつその開閉タイミングを可変とする位相式バルブタイミング変更機構VVT(variable valve timing)を備えたエンジンにおいて、低負荷時に吸気弁閉時期IVCを吸気下死点BDCよりも遅角側に設定した例について説明したが、後述するようにCVVLシステムを備えたエンジンにおいて、吸気弁閉時期IVCを吸気下死点BDCよりも進角側に設定してもよい。
【0090】
このようにエンジンの低負荷時に吸気弁閉時期IVCを吸気下死点BDCよりも進角させ、または上記図9に示すように吸気弁閉時期IVCを吸気下死点BDCよりも遅角させるように構成した場合には、エンジンの有効圧縮比を膨張比と比べて小さくすることにより、ノッキングを抑制しながら熱効率を高めることができると共に、ポンピングロスを低減して燃費を向上させることができる。
【0091】
そして、エンジンの低負荷領域における通常時には、吸気弁閉時期IVCを吸気下死点BDCから所定クランク角だけ離すように設定することにより、エンジンの有効圧縮比を膨張比と比べて小さくするように制御すると共に、この低負荷領域から加速する際の初期に、吸気弁開時期IVOを進角させて排気弁25と吸気弁24との開弁オーバラップ量OLを増加させると共に、これに対応させて吸気弁閉時期IVCを吸気下死点BDCに近付けるように構成してもよい。
【0092】
上記構成によれば、エンジンの低負荷領域では、ポンピングロスを低減しつつ、この低負荷領域から加速する際の初期に、吸気弁開時期IVOを進角させて開弁オーバラップ量OLを拡大することにより、掃気性を向上させて吸気充填量を効果的に増大させ、かつ吸気弁閉時期IVCを吸気下死点BDCに近付けることにより、有効圧縮比を高めて吸気充填量を効果的に増大させることができるとともに、ターボ過給機5の駆動エネルギーを増大させて優れた加速性が得られるという利点がある。
【0093】
例えば、吸気弁24のリフト量を変更可能なバルブリフト変更機構、例えばクランクシャフトの回転に関係なく、モータでバルブリフト量を変更し、同時にバルブの開閉タイミングを変更可能なCVVL(continuously variable valve lift)システムを備えるとともに、図11(a)に示すように、吸気弁閉時期IVCを吸気下死点BDCから所定クランク角だけ進角方向に離すように設定したエンジンにおいて、エンジンの加速時に要求負荷に応じ、図11(b)に示すように、吸気弁25のリフト量INを増大することにより、吸気弁閉時期IVCを遅角させて吸気下死点BDCに近付けた後、図11(c)に示すように、吸気弁開時期IVOを進角させることにより、開弁オーバラップ量OLを拡大するようにしてもよい。
【0094】
上記の構成によれば、エンジンの加速初期に、上記バルブリフト変更機構により吸気弁25のリフト量を増大させる操作等に応じて吸気弁閉時期IVCを吸気下死点BDCに近付けることができるため、吸気の吹き返しを抑制し、または有効圧縮比を高めて吸気充填量を効果的に増やすことにより、要求負荷に対応させてエンジンの出力トルクを効果的に増大させることができる。次いで、上記吸気弁開時期IVOを進角して開弁オーバラップ量OLを拡大することにより、さらに吸気充填量を増やして要求負荷に対応した充分な出力トルクが得られるという利点がある。
【0095】
また、例えば吸気弁24および排気弁25の開弁期間を一定としつつその開閉タイミングを可変とする位相式バルブタイミング変更機構VVTを備えたエンジンにおいて、エンジンの加速時に、ノッキング等の異常燃焼が発生し易い環境条件下にある否かを判定する判定手段(下記ステップS34に相当)を設け、その判定結果に応じた制御を実行するように構成してもよい。
【0096】
すなわち、図12に示すように、エンジンの運転状態、例えばスロットル開度TVO、エンジン回転数Neおよび吸気温度Tin等を検出した後(ステップS31)、この検出値に基づいて、要求負荷に対応した吸気弁24および排気弁25の基本位相角θvvtを演算すると共に(ステップS32)、筒内温度Tccを推定する(ステップS33)。次いで、上記筒内温度Tccの推定値が予め設定された基準温度Toよりも高いか否かを判別することにより、ノッキング等の異常燃焼が発生し易い環境条件下にある否かを判定する(ステップS34)。なお、エンジンの燃焼状態は、燃料のオクタン価等の影響も受けるので、これを考慮してエンジンの異常燃焼が発生するか否かを判別することが好ましい。
【0097】
そして、上記判定手段により異常燃焼が発生し易い条件下にないことが確認された場合、つまり上記ステップS34でNOと判定された場合には、ステップS32で演算した基本位相角θvvtに基づいて吸気弁24および排気弁25の開閉タイミングTMを設定する(ステップS36)、この開閉タイミングTMに基づいて吸排気弁24,25の開閉制御を実行する(ステップS37)。
【0098】
一方、上記判定手段により異常燃焼が発生し易い条件下にあることが確認された場合、つまり上記ステップS34でYESと判定された場合には、異常燃焼が発生し難い条件下に比べて、同一運転領域における吸気弁開時期IVOおよび排気弁閉時期を補正する補正値θoffを、上記筒内温度Tccの推定値等に基づいて演算し(ステップS35)、上記補正値θoffとステップS32で演算した基本位相角θvvtとに基づいて吸気弁24および排気弁25の開閉タイミングを設定することにより(ステップS36)、上記排気弁閉時期EVCの遅角量を通常時(異常燃焼が発生し難い条件下にある時)よりも増大させる制御等を実行する(ステップS37)。
【0099】
例えば、図13(a)に示すように、スロットル開度TVOに応じて加速状態にあることが確認された場合、通常時には、図13(b)の線Aに示すように、加速初期(低負荷領域)から吸気弁開時期IVOの進角量を大きくして開弁オーバラップ量OLを増大させた後、エンジン負荷が所定値以上となった切換点P1で、図13(c)の線Cに示すように、排気弁閉時期EVCの遅角量を大きくして開弁オーバラップ量OLを増大させるように構成されたエンジンにおいて、エンジンの低負荷領域で上記判定手段により異常燃焼が発生し易い環境条件下にあることが確認された場合に、図13(b)の線Bに示すように、吸気弁開時期IVOの進角量を、線Aで示す通常時に比べて減少させると共に、図13(c)の線Dに示すように、排気弁閉時期EVCの遅角量を、線Cで示す通常時に比べて増大させる制御を実行する。
【0100】
上記のようにエンジンの低負荷領域で吸気弁開時期IVOを進角させる際に、エンジンの異常燃焼が発生し易い環境条件下にあるか否かを判定する判定手段を設け(ステップS34参照)、この判定手段によりエンジンの異常燃焼が発生し易い条件下にあることが確認された場合に、上記排気弁閉時期EVCの遅角量を通常時(異常燃焼が発生し難い条件下にある時)よりも増大させるように構成した場合には、排気行程における掃気性を向上させることにより、筒内の残留ガスを効果的に押し出して低温の新気を多量に導入することができるため、気筒内温度を充分に低下させることができる。したがって、上記のようにターボ過給機5を設けることによりその過給効果で優れた加速性が得られる反面、筒内温度が過度に上昇すること等に起因してプレイグニッションやノッキング等が生じ易い傾向にあるエンジンであっても、その異常燃焼を効果的に防止することができる。
【0101】
しかも、上記実施例では、エンジンの低負荷領域でエンジンの異常燃焼が発生し易い環境条件下にあると判定された場合に、異常燃焼が発生し難い条件下に比べて、同一運転領域における吸気弁開時期IVOの進角量を少なくしつつ、排気弁閉時期EVCの遅角量を多くするように構成したため、排気弁閉時期EVCの遅角に応じて筒内温度の上昇を抑制することにより、異常燃焼の発生を防止できると共に、これと同時に吸気弁開時期IVOの進角量を少なくすることにより開弁オーバラップ量OLが過度に大きくなるのを防止できるという利点がある。
【0102】
特に、位相式バルブタイミング変更機構VVTを備えたエンジンにおいて、上記制御を実行するように構成した場合には、異常燃焼が発生し易い条件下で吸気弁開時期IVOの進角量を低減すると、これと同時に吸気弁閉時期IVOの遅角量も増大されるため、有効圧縮比が低下し、これによってもノッキング等の異常燃焼の発生が効果的に抑制されることになる。
【0103】
また、図13(b),(c)に示すように、エンジンの高負荷領域γにおける加速時に、異常燃焼が発生し易い環境条件下にある否かを判定し、異常燃焼が発生し易い条件下では、異常燃焼が発生し難い条件下に比べて、同一運転領域における排気弁閉時期EVCの遅角量および吸気弁開時期IVOの進角量をそれぞれ少なくすることにより上記吸排気弁の開弁オーバラップ量OLを低減するように構成してもよい。
【0104】
上記構成によれば、気筒内温度が上昇し易いことに起因して異常燃焼が頻繁に発生する傾向があるエンジンの高負荷領域γでは、排気弁閉時期EVCの遅角量および吸気弁開時期IVOの進角量をそれぞれ少なくして、上記吸排気弁の開弁オーバラップ量OLを大きく低減することにより、吸気充填量の増大を抑制することができるため、上記異常燃焼の発生を効果的に抑制できるという利点がある。
【符号の説明】
【0105】
5 過給機
20 エンジン
24 吸気弁
25 排気弁
29 排気シャッタ弁ハウジング(排気通路)
31 排気シャッタ弁
34 バルブタイミング変更手段
S12 負荷検出手段
S16,S17 開弁オーバラップ量増加手段
TUR タービン
【技術分野】
【0001】
この発明は、エンジンの要求負荷に応じて吸気弁と排気弁とが共に開弁する開弁オーバラップ量を増加させる機能を備えたターボ過給機付きエンジンの制御方法および制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ターボ過給機付きエンジンにおいて、エンジンの要求負荷に応じて吸気弁と排気弁とが共に開弁する開弁オーバラップ量を、図9(a)の状態から同図(b)、同図(c)、同図(d)に示すように順次増大させると(但し、図9においては、図示の便宜上、開弁オーバラップ領域をハッチングにて示している)、掃気量が増加し、タービンの回転数が増加するので、これによりコンプレッサの回転数が増加し、吸気充填量が増えて、トルクが増大することが知られている。
【0003】
吸排気弁の開弁オーバラップ量を増加する際に、吸気弁開時期を進角させる方法と、排気弁閉時期を遅角させる方法と、これらを同時に行う方法とがあり、この場合、エンジンの低速領域においては、吸気弁開時期を進角させると、吸気充填量の面で有利となる。すなわち、吸気弁開時期を進角させるのに対応して吸気弁閉時期も進角させるように構成すれば、一旦、シリンダボア内に吸入された吸気の吹き返しが少なくなるため、吸気充填量の面で有利となることも知られている。
【0004】
なお、図9において、EVOは、エキゾースト・バルブ・オープンの略で、排気弁開時期を示し、EVCは、エキゾースト・バルブ・クローズの略で、排気弁閉時期を示し、IVOは、インテーク・バルブ・オープンの略で、吸気弁開時期を示し、IVCは、インテーク・バルブ・クローズの略で、吸気弁閉時期を示す。
【0005】
そこで、図10に示すように、バルブタイミングの変化とトルク変動との関係を検証するために、吸気弁開時期IVOの進角を優先し、その後に排気弁閉時期EVCを遅角することにより、吸排気弁の開弁オーバラップ量を増加させる場合(図10の特性b参照)と、吸気弁開時期IVOの進角と排気弁閉時期EVCを遅角とを同時に実行することにより、開弁オーバラップ量を増加させる場合(図10の特性d参照)と、排気弁閉時期EVCの遅角を優先し、その後に吸気弁開時期IVOを進角することにより、開弁オーバラップ量を増加させる場合(図10の特性e参照)との3通りについて実験を行った結果、上記特性bにおいて、矢印cで示すようなトルクダウンが発生することが明らかになった。なお、図10は、横軸にクランク角(開弁オーバラップ量に相当)をとり、縦軸にトルクをとって示す特性図である。
【0006】
上記矢印cで示すトルクダウンは、次の理由により発生するものである。つまり、吸気弁開時期を優先して進角させることにより、吸排気弁の開弁オーバラップ量を順次、増大して、掃気量を増やすと、吸気ポートから排気ポートに流れる空気量が増加し、排気が冷やされる。この排気が冷えることで、排気エネルギーが低下し、過給機のタービンを回転させるエネルギーが下がり、これによりトルクダウンが発生する。すなわち、トルクを上げるために、開弁オーバラップ量を増やしているにも拘わらず、矢印cで示すようなトルクの低下が生じることにより、滑らかなトルク曲線が得られなる結果、ドライバーに違和感が生じてドライバビリティが悪化するという問題点があった。
【0007】
一方、下記特許文献1には、吸排気弁の開弁オーバラップ量を増加させるときに、吸気弁開時期の進角量に対して、排気弁閉時期の遅角量を多く設定するものが開示されており、また、特許文献2には、吸排気弁の開弁オーバラップ量を増加させるときに、排気弁閉時期の遅角量に対して、吸気弁開時期の進角化を優先的に行うものが開示されている。しかし、上記特許文献1、2に開示された何れの構成においても、広い運転領域に亘って良好なトルク、および滑らかなトルク曲線を得て、ドライバビリティを向上させるという効果を充分に得ることができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−40275号公報
【特許文献2】特開2007−263083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、この発明は、吸気量が少ない時に吸気弁開時期を進角して、吸気量を効果的に増やしながら、吸排気弁の開弁オーバラップ量を拡大するものであるが、吸気量が多い時に吸気弁開時期を進角し過ぎると、吸気圧が排気圧を上回り、掃気された空気が排気管内に吹き抜けて、排気ガス温度が下がることで、ターボ駆動エネルギーの低下につながり、トルクを下げてしまうことに鑑み、排気弁閉時期を遅角して開弁オーバラップ量を拡大し、これにより広い運転領域に亘って良好なトルク、および滑らかなトルク曲線を得て、ドライバビリティを向上することができるターボ過給機付きエンジンの制御方法および制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明によるターボ過給機付きエンジンの制御方法は、エンジンの要求負荷に応じて開弁オーバラップ量を増加させるターボ過給機付きエンジンの制御方法であって、エンジンの低負荷領域では、吸気弁開時期の進角量を、排気弁閉時期の遅角量よりも多くして、開弁オーバラップ量を増加させ、エンジンの高負荷領域では、排気弁閉時期の遅角量を、吸気弁開時期の進角量よりも多くして、開弁オーバラップ量を増加させるものである。
【0011】
上記構成によれば、エンジンの低負荷領域(吸気量が少ない時)には、吸気弁開時期を進角して開弁オーバラップ量を拡大することにより、吸気充填量を効果的に増大することができる。また、上記吸気弁開時期の進角に対応させて吸気弁閉時期を進角させることにより、吸気の吹き返しを抑制して吸気量をさらに増やすことも可能である。そして、エンジンの高負荷領域(吸気量が多い時)には、排気弁閉時期を遅角して開弁オーバラップ量を拡大する。これにより、吸気量が多い時に、吸気弁開時期が進角し過ぎることに起因する排気ガス温度の低下、およびターボ駆動エネルギーの低下を防止することができ、広い範囲に亘って良好なトルク、および滑らかなトルク曲線を得て、ドライバビリティの向上を図ることができる。
【0012】
この発明の一実施形態においては、ターボ過給機のタービン上流における排気路に排気シャッタ弁を備え、エンジン回転数が低い低速側では上記排気シャッタ弁を絞り、エンジン回転数が高い高速側では上記排気シャッタ弁を開くものである。
【0013】
上記構成によれば、エンジン回転数が低い低速側では、排気シャッタ弁を絞って、タービンに与える排気流速を強め、この動圧過給により、ターボエネルギを確保して、吸気量を増加することができる。しかも、エンジン回転数が高い高速側では、排気シャッタ弁を開くことで、動圧過給能力を下げて吹き抜け空気を減少させ、後燃え量の抑制を図って、排気側の温度上昇を抑えることができる。
【0014】
因みに、開弁オーバラップ量の増加に伴って掃気量が増加すると、未燃の残留ガスが排気管の中で後燃えすることにより、排気ガス温度が急激に立ち上がって排気ガス温度が過度に上昇し、タービンやセンサ類の耐熱温度を超えて制御不能になる可能性がある。
【0015】
そこで、この実施形態では、上記のように高速側において排気シャッタ弁を開くことで、後燃え量を抑制して排気ガス温度の上昇を抑制するようにしている。但し、後燃えを中止すると、タービンのトルクを確保できないので、後燃えを中止することなく、排気シャッタ弁を開くことにより、後燃えを抑制し、タービンに流れる排気ガスの流速を弱めて掃気量をコントロールするようにしている。
【0016】
この発明の一実施形態においては、上記低負荷領域における負荷の上限となるしきい値、もしくは高負荷領域における負荷の下限となるしきい値を、エンジン回転数が高くなる程、小さくするものである。
【0017】
上記のようにエンジンが低負荷領域にあるか、高負荷領域にあるかを判別するためのしきい値をエンジン回転数に応じて変化させることにより、吸気充填量の増大作用および吸気の吹き返し抑制作用等が、さらに効果的に得られるという利点がある。
【0018】
この発明の一実施形態においては、上記低負荷領域における負荷の上限となるしきい値、もしくは高負荷領域における負荷の下限となるしきい値、または上記低速側と高速側とを切り換えるエンジンの回転数のしきい値を、排気ガス温度が高くなる程、上記しきい値を小さくするものである。
【0019】
上記構成によれば、排気ガス温度を加味した制御を実行することにより、吸気充填量の増大作用および吸気の吹き返し抑制作用等が、さらに効果的に得られる。また、排気シャッタ弁を備えたエンジンでは、排気ガス温度が低い時に、ターボエネルギを充分に確保して吸気量を増加することができるとともに、排気ガス温度の低い時に、後燃え量の抑制を図って、排気側の温度上昇を、より効果的に抑えることができる。
【0020】
また、この発明の一実施形態においては、エンジンの低負荷領域では、吸気弁開時期を吸気下死点から所定クランク角だけ離すように設定して、エンジンの有効圧縮比が膨張比と比べて小さくなるように制御し、この低負荷領域からの加速時における加速初期に、吸気弁閉時期を吸気下死点に近付けるように設定した後、排気弁と吸気弁との開弁オーバラップ量を増加させるものである。
【0021】
上記構成によれば、エンジンの低負荷時に吸気弁閉時期を吸気下死点よりも進角させ、または吸気弁閉時期を吸気下死点よりも遅角させることにより、エンジンの有効圧縮比を膨張比と比べて小さくすることができるため、ノッキングを抑制しながら熱効率を高めることができると共に、ポンピングロスを低減して燃費を向上させることができる。
【0022】
この発明の一実施形態においては、エンジンの低負荷領域における加速時に、異常燃焼が発生し易い環境条件下にあるか否かを判定し、異常燃焼が発生し易い条件下では、異常燃焼が発生し難い条件下に比べて、同一運転領域における排気弁閉時期の遅角量を多くするものである。
【0023】
上記構成によれば、エンジンの低負荷領域からの加速時時における異常燃焼が発生し易い条件下では、排気弁閉時期の遅角量を多くしたため、排気行程における掃気性を向上させることにより、筒内の残留ガスを効果的に押し出して低温の新気を多量に導入し、気筒内温度を充分に低下させることができる。したがって、上記のようにターボ過給機を設けることによりその過給効果で優れた加速性が得られる反面、筒内温度が過度に上昇すること等に起因してプレイグニッションやノッキング等が生じ易い傾向にあるエンジンであっても、その異常燃焼を効果的に防止することができる。
【0024】
この発明の一実施形態においては、エンジンの低負荷領域における加速時に、異常燃焼が発生し易い環境条件下にあると判定された場合に、異常燃焼が発生し難い条件下に比べて、同一運転領域における吸気弁開時期の進角量を少なくすると共に、排気弁閉時期の遅角量を多くするものである。
【0025】
上記構成によれば、エンジンの低負荷領域における加速時に、異常燃焼が発生し易い条件下では、異常燃焼が発生し難い条件下に比べて、同一運転領域における吸気弁開時期の進角量を少なくすると共に、排気弁閉時期の遅角量を多くすることにより、排気行程における掃気性を向上させることができるため、筒内の残留ガスを効果的に押し出して低温の新気を多量に導入することができる。したがって、上記のようにターボ過給機を設けることによりその過給効果で優れた加速性が得られる反面、筒内温度が過度に上昇すること等に起因してプレイグニッションやノッキング等が生じ易い傾向にあるエンジンにおいて、異常燃焼が発生し易い条件下で気筒内温度を充分に低下させることにより、異常燃焼をさらに効果的に防止することができる。
【0026】
この発明の一実施形態においては、エンジンの高負荷領域における加速時に、異常燃焼が発生し易い環境条件下にある否かを判定し、異常燃焼が発生し易い条件下では、異常燃焼が発生し難い条件下に比べて、同一運転領域における排気弁閉時期の遅角量および吸気弁開時期の進角量をそれぞれ少なくすることにより上記吸排気弁の開弁オーバラップ量を低減するものである。
【0027】
上記構成によれば、気筒内温度が上昇し易いことに起因して異常燃焼が頻繁に発生する傾向があるエンジンの高負荷領域では、排気弁閉時期の遅角量および吸気弁開時期の進角量をそれぞれ少なくして、上記吸排気弁の開弁オーバラップ量を大きく低減することにより、吸気充填量を充分に減少させることができるため、上記異常燃焼の発生を効果的に抑制できるという利点がある。
【0028】
この発明によるターボ過給機付きエンジンの制御装置は、エンジンの要求負荷に応じて吸気弁および排気弁の開閉時期を変更することにより開弁オーバラップ量を調節するバルブタイミング変更手段を備えたターボ過給機付きエンジンの制御装置であって、エンジン負荷(吸気充填効率)を検出する負荷検出手段を備え、上記バルブタイミング変更手段は、上記負荷検出手段によって検出されたエンジン負荷が低負荷領域である場合に、上記吸排気弁の開弁オーバラップ量を増加させる時、吸気弁開時期の進角量を、排気弁閉時期の遅角量よりも多くして、開弁オーバラップ量を増加させ、上記エンジン負荷が高負荷領域である場合に、上記吸排気弁の開弁オーバラップ量を増加させる時、排気弁閉時期の遅角量を、吸気弁開時期の進角量よりも多くして、開弁オーバラップ量を増加させるものである。
【0029】
上記構成によれば、上述の負荷検出手段は、エンジン負荷(吸気充填効率)を検出し、上述のバルブタイミング変更手段は、エンジンの要求負荷に応じて吸排気弁の開弁オーバラップ量を変更するが、エンジン負荷が低負荷領域である場合に、吸気弁開時期を進角することにより、吸気の吹き返しを抑制しつつ、吸気量を増やしながら、開弁オーバラップ量を拡大することができる。
【0030】
また、バルブタイミング変更手段は、エンジン負荷が高負荷領域である場合に、開弁オーバラップ量を増加させる時、排気弁閉時期を遅角して開弁オーバラップ量を拡大する。これにより、吸気量が多い時に、吸気弁開時期が進角し過ぎることに起因する排気ガス温度の低下、およびターボ駆動エネルギーの低下を防止することができ、広い範囲に亘って良好なトルク、および滑らかなトルク曲線を得て、ドライバビリティの向上を図ることができる。
【0031】
この発明の一実施形態においては、エンジンの低負荷領域における加速時に、異常燃焼が発生し易い環境条件下にある否かを判定する判定手段を備えると共に、上記バルブタイミング変更手段は、上記判定手段で異常燃焼が発生し易い条件下にあると判定された場合に、異常燃焼が発生し難い条件下に比べて、同一運転領域における吸気弁開時期の進角量を少なくすると共に、排気弁閉時期の遅角量を多くするように吸排気弁の開閉時期を変更するものである。
【0032】
上記構成によれば、異常燃焼が発生し易い条件下では、異常燃焼が発生し難い条件下に比べて、同一運転領域における吸気弁開時期の進角量を少なくすると共に、排気弁閉時期の遅角量を多くすることにより、排気行程における掃気性を向上させることができるため、筒内の残留ガスを効果的に押し出して低温の新気を多量に導入することができる。したがって、上記のようにターボ過給機を設けることによりその過給効果で優れた加速性が得られる反面、筒内温度が過度に上昇すること等に起因してプレイグニッションやノッキング等が生じ易い傾向にあるエンジンにおいて、異常燃焼が発生し易い条件下で気筒内温度を充分に低下させることにより、異常燃焼を効果的に防止することができる。
【0033】
この発明の一実施形態においては、エンジンの高負荷領域における加速時に、異常燃焼が発生し易い環境条件下にある否かを判定する判定手段を備えると共に、上記バルブタイミング変更手段は、上記判定手段で異常燃焼が発生し易い条件下にあると判定された場合に、異常燃焼が発生し難い条件下に比べて、同一運転領域における排気弁閉時期の遅角量および吸気弁開時期の進角量をそれぞれ少なくすることにより上記吸排気弁の開弁オーバラップ量を低減するように吸排気弁の開閉時期を変更するものである。
【0034】
上記構成によれば、気筒内温度が上昇し易いことに起因して異常燃焼が頻繁に発生する傾向があるエンジンの高負荷領域では、排気弁閉時期の遅角量および吸気弁開時期の進角量をそれぞれ少なくして、上記吸排気弁の開弁オーバラップ量を大きく低減することにより、吸気充填量を充分に減少させることができるため、上記異常燃焼の発生を効果的に抑制できるという利点がある。
【発明の効果】
【0035】
この発明によれば、吸気量が少ないエンジンの低負荷時には、吸気弁開時期を進角して、吸気量を効果的に増やしながら、開弁オーバラップ量を拡大するが、吸気量が多いエンジンの高負荷時には、吸気弁開時期を進角し過ぎると、吸気圧か排気圧を上回って掃気された空気が排気管内に吹き抜けて、排気ガス温度が低下することによるターボエネルギの低下につながり、トルクを下げてしまうので、排気弁閉時期を遅角して開弁オーバラップ量を拡大する。これにより、広い運転領域に亘って良好なトルク、滑らかなトルク曲線を得て、ドライバビリティを向上することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明のターボ過給機付きエンジンの制御装置を示す概略構成図である。
【図2】図1で示した構成の排気側を示す部分側断面図である。
【図3】排気シャッタ弁全開時の説明図である。
【図4】制御回路の構成を示すブロック図である。
【図5】RAMに記憶させたマップの説明図である。
【図6】ターボ過給機付きエンジンの制御方法を示すメインルーチンである。
【図7】ターボ過給機付きエンジンの制御方法を示すサブルーチンである。
【図8】クランク角に対する排気ガス温度および排気シャッタ弁開度の変化を示す制御特性図である。
【図9】吸気弁のリフト量を変化させた状態を示す開時期の進角および排気弁閉時期の遅角による開弁オーバラップ量の変更を示す特性図である。
【図10】クランク角(開弁オーバラップ量)に対するトルク変動を示す特性図である。
【図11】吸気弁のリフト量を変化させるように構成した実施例を示す特性図である。
【図12】ターボ過給機付きエンジンの制御方法における別の実施例を示すフローチャートである。
【図13】吸気弁開時期の進角量および排気弁閉時期の遅角量を変化させて異常燃焼を抑制する実施例を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
広い運転領域に亘って良好なトルク、および滑らかなトルク曲線を得て、ドライバビリティを向上するという目的を、エンジンの要求負荷に応じて開弁オーバラップ量を増加させる過給機付きエンジンの制御方法において、エンジンの低負荷領域では、吸気弁開時期の進角量を、排気弁閉時期の遅角量よりも多くして、開弁オーバラップ量を増加させ、エンジンの高負荷領域では、排気弁閉時期の遅角量を、吸気弁開時期の進角量よりも多くして、開弁オーバラップ量を増加させるという方法で実現した。
【実施例】
【0038】
図面は、過給機付きエンジンの制御方法および制御装置を示している。まず、図1を参照して、過給機付きエンジンの制御装置の構成について説明する。この過給機付きエンジンの吸気系には、吸入吸空気を浄化するエアクリーナ1が設けられている。このエアクリーナ1は、フレッシュエアの入口2とエレメント3とを備えている。このエアクリーナ1のエレメント3下流には、該エアクリーナ1から吸入した浄化空気の吸入量(吸気量)を電圧変化として検出するエアフローセンサ4が接続されている。
【0039】
また、吸気系と排気系との間には、ターボ過給機5が設けられている。このターボ過給機5として、吸気側のコンプレッサハウジング6内にコンプレッサインペラ7を配設し、排気側のタービンハウジング8内にタービンホイール9を配設して、排気側のタービンホイール9と吸気側のコンプレッサインペラ7とを、回転軸10で連結したものを用いている。このターボ過給機5は、排気ガスでタービンホイール9を回転し、このタービンホイール9でコンプレッサインペラ7を駆動して、自然吸入空気量以上の空気をエンジンに供給するものである。
【0040】
上述のエアフローセンサ4の下流と、コンプレッサCOMにおけるコンプレッサハウジング6の入口との間を、第1吸気通路11で連結接続すると共に、コンプレッサハウジング6の出口には、第2吸気通路12を介してインタクーラ13の入口を接続している。このインタクーラ13は、コンプレッサCOMで加圧された空気の温度を下げて、空気密度を上昇させ、吸気充填効率の向上を図るものである。
【0041】
上述のインタクーラ13の出口側には、第3吸気通路14を介して、スロットルボディ15が接続されている。このスロットルボディ15のスロットルチャンバ内には、スロットル弁16が取り付けられると共に、該スロットルボディ15には、スロットル開度を検出するスロットルセンサ17が設けられている。
【0042】
上述のスロットルボディ15の下流には、第4吸気通路18を介して、吸気マニホールド19が接続されている。この吸気マニホールド19の先端は、エンジン20の気筒数に対応して複数に分岐されており、吸気マニホールド19の分岐された部分は、図2に示すように、エンジン20を構成するシリンダヘッドの吸気ポート21にそれぞれ接続されている。
【0043】
図2に示すように、エンジン20は、上述の吸気ポート21と、排気ポート22と、これらの各ポート21,22とを適宜連通する燃焼室23と、ピストン(図示せず)等を備えている。上述の吸気ポート21および排気ポート22には、図示しない動弁機構によって開閉操作される吸気弁24と、排気弁25とが取り付けられている。
【0044】
この実施形態では、上記エンジン20として直列4気筒4サイクルエンジンを例示し、シリンダブロック26には、図1に示すように、第1〜第4の各気筒27a,27b,27c,27dが形成されるとともに、シリンダヘッドの排気ポート22と対応して、第1〜第4の排気通路28a,28b,28c,28dを備えた排気マニホールド28が取り付けられている。
【0045】
ここで、上述の排気マニホールド28は、その上流側においては4つの独立排気通路(各排気通路28a,28b,28c,28d参照)で構成され、合計4つの排気通路28a,28b,28c,28dのうちの2つの通路28b,28cがその下流側において集合形成されることにより、下流側においては3つの独立排気通路が構成されている。
【0046】
上述の排気マニホールド28の下流には、排気シャッタ弁ハウジング29の入口が連通接続され、このハウジング29内には、アクチュエータ30により駆動される排気シャッタ弁31が設けられると共に、上記排気シャッタ弁ハウジング29の出口側は、タービンTURにおけるタービンハウジング8の入口に接続されている。
【0047】
つまり、ターボ過給機5のタービンTUR上流における排気通路としての排気シャッタ弁ハウジングには、排気シャッタ弁31が設けられている。この排気シャッタ弁31は、図2に示すように、側面視扇形状に形成され、図2に示す絞り位置と、図3に示す全開位置との間を調整可能に構成されている。
【0048】
図2に示すように、排気シャッタ弁31を絞った場合には、タービンTURに与える排気流速を強めて、動圧過給によりターボ駆動エネルギーを確保し、吸気量を増加するものであり、また図3に示すように、排気シャッタ弁31を全開にした場合には、その下面31aが排気シャッタ弁ハウジング29による排気通路に抵抗を与えないように、この排気通路の上壁と排気シャッタ弁31の下面31aとが面一状、または略面一状となるように形成されている。
【0049】
しかも、図1に示すように、エンジン20のシリンダヘッド部には、エンジン20の要求負荷に応じて吸気弁24と排気弁25とを共に開弁する開弁オーバラップ量を変更可能な吸気バルブタイミング変更手段32と、排気バルブタイミング手段33とが設けられている。これらの吸排気双方のバルブタイミング変更手段32,33により、バルブタイミング変更手段34が構成されている。
【0050】
ここで、上述の吸気バルブタイミング変更手段32は、吸気弁24の開弁期間を一定としつつ、図9で示した吸気弁開時期IVOおよび吸気弁閉時期IVCを変更する位相式バルブタイミング変更機構VVT(variable valve timing)からなっている。また、上述の排気バルブタイミング手段33は、排気弁25の開弁期間を一定としつつ、図9で示した排気弁開時期EVOおよび排気弁閉時期EVCを変更する位相式バルブタイミング変更機構VVTからなっている。なお、図2、図3において、35は、シリンダヘッドに設けられて燃焼室23の頂部に火花を発生させる点火プラグである。
【0051】
図4は、過給機付きエンジンの制御装置における制御回路ブロック図を示し、制御手段としてのCPU50は、エンジン回転センサ41からのエンジン回転数Ne、エアフローセンサ4からの吸入空気量Q、スロットルセンサ17からのスロットル開度TVO、クランク角センサ42からのクランク角CA、排気温センサ43からの排気ガス温度tなどの必要な入力信号に基づき、ROM51に格納されたプログラムに従って、吸気バルブタイミング変更手段32、排気バルブタイミング変更手段33およびアクチュエータ30を駆動制御するように構成されている。上記アクチュエータ30は、図2、図3で示した排気シャッタ弁31の開度を制御し、RAM52は、図5で示すマップやM1やその他の必要なデータを記憶するものである。
【0052】
上述のCPU50、ROM51およびRAM52の三者で、エンジン制御ユニット(ECU)が構成される。上述のエンジン回転センサ41は、エンジンの回転数Neを検出する。このエンジン回転センサ41としては、イグニッションコイルを代用してもよい。
【0053】
スロットルセンサ17は、スロットル弁16の開度TVOを検出し、またクランク角センサはクランク角CAを検出する。さらに、排気温センサ43は、ターボ過給機5のタービンTURの下流と、キャタリスト(図示せず)の上流との間に取り付けられており、この排気温センサ43により排気管内の排気ガス温度tを直接検出する。
【0054】
図5に示すマップM1は、横軸にエンジン回転数Neをとり、縦軸に要求負荷をとって、低速側の過給運転領域R10,R11と、低回転低負荷領域R12と、高速側の過給運転領域R20,R21と、高回転低負荷領域R22とを区画したマップである。この実施例では、図示の便宜上、ハッチングを施して示す領域R10,R11,R12で排気シャッタ弁31を絞り制御し、他の領域R20,R21,R22で排気シャッタ弁31を全開制御するように構成している。
【0055】
また、図5において、WOTは、最大負荷トルクを示すものである。ここで、上述のCOP50は、吸気充填効率CE(エンジン負荷)を演算する負荷検出手段(図7に示すフローチャートのステップS12参照)と、この負荷検出手段により検出された吸気充填効率CEに基づいてエンジンが低負荷領域の運転状態あると判別された場合に、上述の吸排気弁24,25の開弁オーバラップ量OLを増加させる時、吸気弁開時期IVOの進角量を、排気弁閉時期EVCの遅角量よりも多くして、開弁オーバラップ量OLを増加させる第1の開弁オーバラップ量増加手段(図7に示すフローチャートのステップS16参照)と、上記負荷検出手段(ステップS12)によって検出されたエンジン負荷CEに基づいてエンジンが高負荷領域の運転状態あると判別された場合に、上述の吸排気弁24,25の開弁オーバラップ量OLを増加させる時、排気弁閉時期EVCの遅角量を、吸気弁開時期IVOの進角量よりも多くして、開弁オーバラップ量OLを増加させる第2の開弁オーバラップ量増加手段(図7に示すフローチャートのステップS17参照)とを兼ねるものである。
【0056】
次に、図6、図7に示すフローチャートを参照して、過給機付きエンジンの制御方法について説明する。図6に示すメインルーチンのステップS1で、CPU50は、エンジン回転センサ41からのエンジン回転数Ne、エアフローセンサ4からの吸入空気量Q、スロットルセンサ17からのスロットル開度TVO等の必要な入力の読み込みを実行すると共に、エンジン回転数Neと吸入空気量Qとに基づいて吸気充填効率CE(エンジン負荷)を演算する。
【0057】
次に、ステップS2で、CPU50は、読み取った検出信号の値に基づいて、エンジン20の目標トルク(図5に示すマップM1の要求負荷に相当)を演算する。次に、ステップS3で、CPU50は、エンジン回転数Neと要求負荷とに対応して、領域判定を実行し、低速側の過給運転領域R10,R11および低回転低負荷領域R12であって、図5に示すマップにおいてハッチングを施して示す領域内にあると判定された場合(YES判定時)には、次のステップS4に移行する。また、高速側の過給運転領域R20、R21および高回転低負荷領域R22にあると判定された場合(NO判定時)には、別のステップS5に移行する。
【0058】
上述のステップS4で、CUP50は、独立排気絞りモードを実行するが、この制御については、図7のサブルーチンを参照して後述する。一方、上記ステップS5で、CUP50は、アクチュエータ30を介して排気シャッタ弁31を、図3に示すように全開とする。次のステップS6で、CUP50は、通常運転モードを実行した後に、リターンする。なお、ステップS6の通常運転モードについて詳述しないが、このステップS6では、図7に示す各ステップS15〜S21の処理を省略した内容と略同等になる。
【0059】
次に、図7に示すサブルーチンを参照して、ステップS4に相当する制御について詳述する。図7のステップS11で、CUP50は、図6のステップS2で演算した目標トルクおよびこれに対応して設定されたた開弁オーバラップ量OLの目標値と、吸入空気量Q、エンジン回転数Ne、排気ガス温度t等検出値とをそれぞれ読み込む。
【0060】
次に、ステップS12で、CUP50は、エンジン回転数Neと吸入空気量Qとに基づいて、現行の吸気充填効率CE(i)を求め、この値をエンジン負荷として設定する。次いで、ステップS13において、CUP50は、上記目標トルクの演算値と、開弁オーバラップ量OLの目標値とに基づき、開弁オーバラップ拡大量(ΔOL)を演算する。次に、ステップS14で、CUP50は、読み込んだエンジン回転数Neおよび排気ガス温度tからエンジン負荷のしきい値CE1,CE2を設定する。
【0061】
ここで、上記しきい値CE1は、エンジンが低負荷領域にあるか、高負荷領域にある否かを判定するための低負荷領域の上限を示すしきい値(または、高負荷領域の下限を示すしきい値)であり、上記しきい値CE2は、排気シャッタ弁31を、絞り制御した状態と、所定開度(但し、全開を含む)に制御した状態とに切り換える負荷のしきい値であって、こらのしきい値CE1,CE2は、エンジン回転数Neが高くなる程、小さい値に設定されると共に、排気ガス温度tが高くなる程、小さい値に設定される。
【0062】
次に、ステップS15において、上記負荷のしきい値CE1と現行の吸気充填効率CE(エンジン負荷)(i)とを比較して、CE1>CE(i)の低負荷領域であると判定された場合(YES判定時)に、次のステップS16に移行し、CE1<CE(i)の高負荷領域であると判定された場合(NO判定時)には、別のステップS17に移行する。
【0063】
上述のステップS16で、CUP50は、エンジンが低負荷領域であることに対応して、ステップS13で既に演算されている開弁オーバラップ拡大量(ΔOL)まで吸気弁開時期IVOを進角させる。
【0064】
一方、上述のステップS17で、CUP50は、エンジンが高負荷領域であることに対応して、ステップS13で既に演算されている開弁オーバラップ拡大量(ΔOL)まで排気弁閉時期EVCを遅角させる。
【0065】
すなわち、上記各ステップS11〜S17での処理により、CE1>CE(i)の低負荷領域では、吸気弁開時期IVOの進角量を排気弁閉時期EVCの遅角量よりも多くして、開弁オーバラップ量OLを増加させ、CE1<CE(i)の高負荷領域では、排気弁閉時期EVCの遅角量を吸気弁開時期IVOの進角量よりも多くして、開弁オーバラップ量OLを増加させるものである。
【0066】
要するに、上記開弁オーバラップ量OLを増加させる際に、図10に示す切換点P1までは、吸気弁開時期IVOの進角を優先し、かつ切換点P1以降の高負荷側では、排気弁閉時期EVCの遅角を優先するように、吸気弁24および排気弁25の開閉時期を制御することにより、図10に特性aで示すように、トルクダウンのない滑らかなトルク曲線を実現できるようにしたものである。
【0067】
次に、ステップS18において、負荷のしきい値CE2と現行の吸気充填効率CE(エンジン負荷)(i)とを比較して、CE2>CE(i)(但し、CE2>CE1)の低負荷状態にあると判定された場合(YES判定時)には、次のステップS19に移行し、CE2<CE(i)の高負荷状態にあると判定され場合(NO判定時)には、別のステップS20に移行する。
【0068】
なお、上記ステップS18での負荷の比較による判定処理内容に代えて、エンジン回転数Neのしきい値THRneを設け、このしきい値THRneと現行のエンジン回転数Ne(i)とを比較して、THRne>Ne(i)のエンジン回転数Neが低い低速側ではステップS19に移行し、THRne<Ne(i)のエンジン回転数Neの高い高速側では、ステップS20に移行する構成を採用してもよい。
【0069】
上述のステップS19で、CUP50は、エンジンの低負荷時(または、エンジン回転数Neが低い低速時)に対応して、図2に示すように排気シャッタ弁31を絞り制御し、ターボ過給機5のタービンTURに与える排気流速を強め、この動圧過給により、ターボ駆動エネルギーを確保して、吸気量を増加する。
【0070】
一方、上述のステップS20で、CUP50は、エンジンの高負荷時(または、エンジン回転数Neが高い高速時)に対応して、現行の吸気充填効率CE(エンジン負荷)(i)および排気ガス温度から排気シャッタ弁31の開度VEを演算する。
【0071】
次に、ステップS21で、CUP50は、アクチュエータ30を介して、排気シャッタ弁31をステップS20で演算した開度VEまで開く。このため、排気シャッタ弁31は、図8に示すように切換点P2までは絞り制御されるが、切換点P2以降は該排気シャッタ弁31が所定開度VE(但し、全開を含む)に開放されるので、動圧過給能力を下げて、吹き抜け空気を減少し、未燃残留ガスの後燃え量を抑制することができる。この制御を実行しない場合には、図8に特性βで示すように排気ガス温度が急激に立ち上がるが、上記制御により図8に特性αで示すごとく排気ガス温度の急上昇を抑えることができる。
【0072】
このように、上記実施例のターボ過給機付きエンジンの制御方法は、エンジン20の要求負荷に応じて開弁オーバラップ量OLを増加させるエンジンの制御方法であって、エンジンの低負荷領域では、吸気弁開時期IVOの進角量を、排気弁閉時期EVCの遅角量よりも多くして、開弁オーバラップ量OLを増加させ(ステップS16参照)、エンジンの高負荷領域では、排気弁閉時期EVCの遅角量を、吸気弁開時期IVOの進角量よりも多くして、開弁オーバラップ量OLを増加させるものである(ステップS17参照)。
【0073】
この構成によれば、エンジンの低負荷領域(吸気量が少ない時)では、吸気弁開時期IVOを進角させると共に、これに対応させて吸気弁閉時期IVCを進角させることにより効果的に吸気充填量を増大させて、要求負荷に応じた出力トルクを得ることができる。しかも、上記吸気弁開時期IVOの進角に対応させて吸気弁閉時期IVCを進角させることにより、吸気の吹き返しを抑制しつつ、吸気量を増やしながら、開弁オーバラップ量OLを拡大することができる。また、エンジンの高負荷領域(吸気量が多い時)では、排気弁閉時期EVCを遅角して開弁オーバラップ量OLを拡大する。これにより、吸気量が多い時に、吸気弁開時期IVOが進角し過ぎることに起因する排気ガス温度の低下、およびターボ駆動エネルギーの低下を防止することができ、広い範囲に亘って良好なトルク、および滑らかなトルク曲線(図10の特性a参照)を得て、ドライバビリティの向上を図ることができる。
【0074】
また、上記実施例では、ターボ過給機5のタービンTUR上流における排気路(排気シャッタ弁ハウジング29参照)に排気シャッタ弁31を備え、エンジン回転数Neが低い低速側では上記排気シャッタ弁31を絞り(ステップS4、ステップS19参照)、エンジン回転数Neが高い高速側では上記排気シャッタ弁31を開く(ステップS5、S21参照)ようにしている。
【0075】
この構成によれば、エンジン回転数Neが低い低速側では、排気シャッタ弁31を絞って、タービンTURに与える排気流速を強め、この動圧過給により、ターボエネルギを確保して、吸気量を増加することができる。しかも、エンジン回転数Neが高い高速側では、排気シャッタ弁31を開くことで、動圧過給能力を下げて吹き抜け空気を減少させ、後燃え量の抑制を図って、排気側の温度上昇を抑えることができる。
【0076】
因みに、開弁オーバラップ量OLの増加に伴って掃気量が増加すると、未燃の残留ガスが排気管の中で後燃えし、排気ガス温度が急激に立ち上がって(図8の特性β参照)、排気ガス温度が過度に上昇し、タービンTURやセンサ類(排気温センサ43、不図示の空燃比センサなど)の耐熱温度を超えて制御不能になる可能性がある。
【0077】
そこで、この実施形態では、高速側において排気シャッタ弁31を開くことで、後燃え量を抑制して排気ガス温度の上昇を抑制するようにしている(図8の特性α参照)。但し、後燃えを中止すると、タービンTURのトルクを確保できないので、後燃えを中止することなく、排気シャッタ弁31を開くことにより、後燃えを抑制し、タービンTURに流れる排気ガスの流速を弱めて掃気量をコントロールするようにしている。
【0078】
さらに、上記低負荷領域における負荷の上限となるしきい値(若しくは高負荷領域における負荷の下限となるしきい値)CE1を、エンジン回転数Neが高くなる程を小さくするものである。
【0079】
この構成によれば、エンジンが低負荷領域にあるか、高負荷領域にあるかを判別するためのしきい値をエンジン回転数Neに応じて変化させることにより、吸気充填量の増大作用および吸気の吹き返し抑制作用等が、さらに効果的に得られるという利点がある。
【0080】
加えて、上記低負荷領域における負荷の上限となるしきい値(若しくは高負荷領域における負荷の下限となるしきい値)CE1と、またはエンジンの低速側と高速側とを切り換えるエンジン回転数Neのしきい値THRneとを設定し、排気ガス温度tが高くなる程、上記しきい値CE1またはTHRneを小さくするようにしてもよい。
【0081】
この構成によれば、排気ガス温度tを加味した制御を実行することにより、吸気充填量の増大作用および吸気の吹き返し抑制作用等が、さらに効果的に得られる。また、排気シャッタ弁31を備えたエンジンでは、排気ガス温度tが低い時に、ターボエネルギを充分に確保して吸気量を増加することができるとともに、排気ガス温度の低い時に、後燃え量の抑制を図って、排気側の温度上昇を、より効果的に抑えることができる。
【0082】
また、上記実施例に係るターボ過給機付きエンジンの制御装置は、エンジン20の要求負荷に応じて吸気弁24と排気弁25とが共に開弁する開弁オーバラップ量OLを変更可能なバルブタイミング変更手段34を備えた過給機付きエンジンの制御装置であって、吸気充填効率CE(エンジン負荷)を検出する負荷検出手段(ステップS12参照)を備え、上記バルブタイミング変更手段34は、上記負荷検出手段(ステップS12参照)によって検出されたエンジン負荷が所定値よりも低い低負荷領域である場合に、上記吸排気弁24,25の開弁オーバラップ量OLを増加させる時、吸気弁開時期IVOの進角量を、排気弁閉時期EVCの遅角量よりも多くして、開弁オーバラップ量OLを増加(ステップS16参照)させ、上記エンジン負荷が所定値よりも高い高負荷領域である場合に、上記吸排気弁24,25の開弁オーバラップ量OLを増加させる時、排気弁閉時期EVCの遅角量を、吸気弁開時期IVOの進角量よりも多くして、開弁オーバラップ量OLを増加(ステップS17参照)させるように吸気弁および排気弁の開閉時期を変更するものである(図1、図7参照)。
【0083】
この構成によれば、上述の負荷検出手段(ステップS12参照)は、吸気充填効率CE(エンジン負荷)を検出し、上述のバルブタイミング変更手段34は、エンジンの要求負荷に応じて吸気弁24と排気弁25とが共に開弁する開弁オーバラップ量OLを変更するが、エンジンの低負荷領域では、吸気弁開時期IVOを進角(ステップS16参照)させることにより効果的に吸気充填量を増大させて、要求負荷に応じた出力トルクを得ることができる。しかも、上記吸気弁開時期IVOの進角に対応させて吸気弁閉時期IVCを進角させることにより吸気の吹き返しを抑制しつつ、吸気量を増やしながら、開弁オーバラップ量OLを拡大することができる。
【0084】
また、バルブタイミング変更手段34は、エンジン負荷が所定値よりも高い高負荷領域である場合に、開弁オーバラップ量OLを増加させる時、排気弁閉時期EVCを遅角(ステップS17参照)し、開弁オーバラップ量OLを拡大する。これにより、吸気量が多い時に、吸気弁開時期IVOが進角し過ぎることに起因する排気ガス温度tの低下、およびターボ駆動エネルギーの低下を防止することができ、広い範囲に亘って良好なトルク、および滑らかなトルク曲線(図10の特性a参照)を得て、ドライバビリティの向上を図ることができる。
【0085】
この発明の構成と、上記実施例との対応において、この発明に係る排気シャッタ弁31が設けられた排気通路は、実施例の排気シャッタ弁ハウジング29に形成された排気通路に対応する。
【0086】
以下同様に、負荷検出手段は、CPU制御によるステップS12に対応し、エンジン負荷が低負荷領域である場合に、開弁オーバラップ量を増加させる時、吸気弁開時期の進角量を、排気弁閉時期の遅角量よりも多くして、開弁オーバラップ量を増加させる手段は、第1の開弁オーバラップ量増加手段S16に対応する。
【0087】
また、過給領域における高負荷領域である場合に、開弁オーバラップ量を増加させる時、排気弁閉時期の遅角量を、吸気弁開時期の進角量よりも多くして、開弁オーバラップ量を増加させる手段は、第2の開弁オーバラップ量増加手段S17に対応するも、この発明は、上記実施例の構成のみに限定されるものではない。
【0088】
例えば、上記実施例においては、吸気2弁、排気2弁タイプのエンジンを例示したが、吸気2弁、排気1弁タイプのエンジンであってもよく、またはエンジンの気筒数は4気筒に限定されるものではない。
【0089】
上記実施例では、図9に示すように、吸気弁24および排気弁25の開弁期間を一定としつつその開閉タイミングを可変とする位相式バルブタイミング変更機構VVT(variable valve timing)を備えたエンジンにおいて、低負荷時に吸気弁閉時期IVCを吸気下死点BDCよりも遅角側に設定した例について説明したが、後述するようにCVVLシステムを備えたエンジンにおいて、吸気弁閉時期IVCを吸気下死点BDCよりも進角側に設定してもよい。
【0090】
このようにエンジンの低負荷時に吸気弁閉時期IVCを吸気下死点BDCよりも進角させ、または上記図9に示すように吸気弁閉時期IVCを吸気下死点BDCよりも遅角させるように構成した場合には、エンジンの有効圧縮比を膨張比と比べて小さくすることにより、ノッキングを抑制しながら熱効率を高めることができると共に、ポンピングロスを低減して燃費を向上させることができる。
【0091】
そして、エンジンの低負荷領域における通常時には、吸気弁閉時期IVCを吸気下死点BDCから所定クランク角だけ離すように設定することにより、エンジンの有効圧縮比を膨張比と比べて小さくするように制御すると共に、この低負荷領域から加速する際の初期に、吸気弁開時期IVOを進角させて排気弁25と吸気弁24との開弁オーバラップ量OLを増加させると共に、これに対応させて吸気弁閉時期IVCを吸気下死点BDCに近付けるように構成してもよい。
【0092】
上記構成によれば、エンジンの低負荷領域では、ポンピングロスを低減しつつ、この低負荷領域から加速する際の初期に、吸気弁開時期IVOを進角させて開弁オーバラップ量OLを拡大することにより、掃気性を向上させて吸気充填量を効果的に増大させ、かつ吸気弁閉時期IVCを吸気下死点BDCに近付けることにより、有効圧縮比を高めて吸気充填量を効果的に増大させることができるとともに、ターボ過給機5の駆動エネルギーを増大させて優れた加速性が得られるという利点がある。
【0093】
例えば、吸気弁24のリフト量を変更可能なバルブリフト変更機構、例えばクランクシャフトの回転に関係なく、モータでバルブリフト量を変更し、同時にバルブの開閉タイミングを変更可能なCVVL(continuously variable valve lift)システムを備えるとともに、図11(a)に示すように、吸気弁閉時期IVCを吸気下死点BDCから所定クランク角だけ進角方向に離すように設定したエンジンにおいて、エンジンの加速時に要求負荷に応じ、図11(b)に示すように、吸気弁25のリフト量INを増大することにより、吸気弁閉時期IVCを遅角させて吸気下死点BDCに近付けた後、図11(c)に示すように、吸気弁開時期IVOを進角させることにより、開弁オーバラップ量OLを拡大するようにしてもよい。
【0094】
上記の構成によれば、エンジンの加速初期に、上記バルブリフト変更機構により吸気弁25のリフト量を増大させる操作等に応じて吸気弁閉時期IVCを吸気下死点BDCに近付けることができるため、吸気の吹き返しを抑制し、または有効圧縮比を高めて吸気充填量を効果的に増やすことにより、要求負荷に対応させてエンジンの出力トルクを効果的に増大させることができる。次いで、上記吸気弁開時期IVOを進角して開弁オーバラップ量OLを拡大することにより、さらに吸気充填量を増やして要求負荷に対応した充分な出力トルクが得られるという利点がある。
【0095】
また、例えば吸気弁24および排気弁25の開弁期間を一定としつつその開閉タイミングを可変とする位相式バルブタイミング変更機構VVTを備えたエンジンにおいて、エンジンの加速時に、ノッキング等の異常燃焼が発生し易い環境条件下にある否かを判定する判定手段(下記ステップS34に相当)を設け、その判定結果に応じた制御を実行するように構成してもよい。
【0096】
すなわち、図12に示すように、エンジンの運転状態、例えばスロットル開度TVO、エンジン回転数Neおよび吸気温度Tin等を検出した後(ステップS31)、この検出値に基づいて、要求負荷に対応した吸気弁24および排気弁25の基本位相角θvvtを演算すると共に(ステップS32)、筒内温度Tccを推定する(ステップS33)。次いで、上記筒内温度Tccの推定値が予め設定された基準温度Toよりも高いか否かを判別することにより、ノッキング等の異常燃焼が発生し易い環境条件下にある否かを判定する(ステップS34)。なお、エンジンの燃焼状態は、燃料のオクタン価等の影響も受けるので、これを考慮してエンジンの異常燃焼が発生するか否かを判別することが好ましい。
【0097】
そして、上記判定手段により異常燃焼が発生し易い条件下にないことが確認された場合、つまり上記ステップS34でNOと判定された場合には、ステップS32で演算した基本位相角θvvtに基づいて吸気弁24および排気弁25の開閉タイミングTMを設定する(ステップS36)、この開閉タイミングTMに基づいて吸排気弁24,25の開閉制御を実行する(ステップS37)。
【0098】
一方、上記判定手段により異常燃焼が発生し易い条件下にあることが確認された場合、つまり上記ステップS34でYESと判定された場合には、異常燃焼が発生し難い条件下に比べて、同一運転領域における吸気弁開時期IVOおよび排気弁閉時期を補正する補正値θoffを、上記筒内温度Tccの推定値等に基づいて演算し(ステップS35)、上記補正値θoffとステップS32で演算した基本位相角θvvtとに基づいて吸気弁24および排気弁25の開閉タイミングを設定することにより(ステップS36)、上記排気弁閉時期EVCの遅角量を通常時(異常燃焼が発生し難い条件下にある時)よりも増大させる制御等を実行する(ステップS37)。
【0099】
例えば、図13(a)に示すように、スロットル開度TVOに応じて加速状態にあることが確認された場合、通常時には、図13(b)の線Aに示すように、加速初期(低負荷領域)から吸気弁開時期IVOの進角量を大きくして開弁オーバラップ量OLを増大させた後、エンジン負荷が所定値以上となった切換点P1で、図13(c)の線Cに示すように、排気弁閉時期EVCの遅角量を大きくして開弁オーバラップ量OLを増大させるように構成されたエンジンにおいて、エンジンの低負荷領域で上記判定手段により異常燃焼が発生し易い環境条件下にあることが確認された場合に、図13(b)の線Bに示すように、吸気弁開時期IVOの進角量を、線Aで示す通常時に比べて減少させると共に、図13(c)の線Dに示すように、排気弁閉時期EVCの遅角量を、線Cで示す通常時に比べて増大させる制御を実行する。
【0100】
上記のようにエンジンの低負荷領域で吸気弁開時期IVOを進角させる際に、エンジンの異常燃焼が発生し易い環境条件下にあるか否かを判定する判定手段を設け(ステップS34参照)、この判定手段によりエンジンの異常燃焼が発生し易い条件下にあることが確認された場合に、上記排気弁閉時期EVCの遅角量を通常時(異常燃焼が発生し難い条件下にある時)よりも増大させるように構成した場合には、排気行程における掃気性を向上させることにより、筒内の残留ガスを効果的に押し出して低温の新気を多量に導入することができるため、気筒内温度を充分に低下させることができる。したがって、上記のようにターボ過給機5を設けることによりその過給効果で優れた加速性が得られる反面、筒内温度が過度に上昇すること等に起因してプレイグニッションやノッキング等が生じ易い傾向にあるエンジンであっても、その異常燃焼を効果的に防止することができる。
【0101】
しかも、上記実施例では、エンジンの低負荷領域でエンジンの異常燃焼が発生し易い環境条件下にあると判定された場合に、異常燃焼が発生し難い条件下に比べて、同一運転領域における吸気弁開時期IVOの進角量を少なくしつつ、排気弁閉時期EVCの遅角量を多くするように構成したため、排気弁閉時期EVCの遅角に応じて筒内温度の上昇を抑制することにより、異常燃焼の発生を防止できると共に、これと同時に吸気弁開時期IVOの進角量を少なくすることにより開弁オーバラップ量OLが過度に大きくなるのを防止できるという利点がある。
【0102】
特に、位相式バルブタイミング変更機構VVTを備えたエンジンにおいて、上記制御を実行するように構成した場合には、異常燃焼が発生し易い条件下で吸気弁開時期IVOの進角量を低減すると、これと同時に吸気弁閉時期IVOの遅角量も増大されるため、有効圧縮比が低下し、これによってもノッキング等の異常燃焼の発生が効果的に抑制されることになる。
【0103】
また、図13(b),(c)に示すように、エンジンの高負荷領域γにおける加速時に、異常燃焼が発生し易い環境条件下にある否かを判定し、異常燃焼が発生し易い条件下では、異常燃焼が発生し難い条件下に比べて、同一運転領域における排気弁閉時期EVCの遅角量および吸気弁開時期IVOの進角量をそれぞれ少なくすることにより上記吸排気弁の開弁オーバラップ量OLを低減するように構成してもよい。
【0104】
上記構成によれば、気筒内温度が上昇し易いことに起因して異常燃焼が頻繁に発生する傾向があるエンジンの高負荷領域γでは、排気弁閉時期EVCの遅角量および吸気弁開時期IVOの進角量をそれぞれ少なくして、上記吸排気弁の開弁オーバラップ量OLを大きく低減することにより、吸気充填量の増大を抑制することができるため、上記異常燃焼の発生を効果的に抑制できるという利点がある。
【符号の説明】
【0105】
5 過給機
20 エンジン
24 吸気弁
25 排気弁
29 排気シャッタ弁ハウジング(排気通路)
31 排気シャッタ弁
34 バルブタイミング変更手段
S12 負荷検出手段
S16,S17 開弁オーバラップ量増加手段
TUR タービン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの要求負荷に応じて開弁オーバラップ量を増加させるターボ過給機付きエンジンの制御方法であって、
エンジンの低負荷領域では、吸気弁開時期の進角量を、排気弁閉時期の遅角量よりも多くして、開弁オーバラップ量を増加させ、
エンジンの高負荷領域では、排気弁閉時期の遅角量を、吸気弁開時期の進角量よりも多くして、開弁オーバラップ量を増加させることを特徴とするターボ過給機付きエンジンの制御方法。
【請求項2】
過給機のタービン上流における排気路に排気シャッタ弁を備え、
エンジン回転数が低い低速側では上記排気シャッタ弁を絞り、エンジン回転数が高い高速側では上記排気シャッタ弁を開くことを特徴とする請求項1に記載のターボ過給機付きエンジンの制御方法。
【請求項3】
上記低負荷領域における負荷の上限となるしきい値、もしくは高負荷領域における負荷の下限となるしきい値を、エンジン回転数が高くなる程、小さくすることを特徴とする請求項1または2に記載のターボ過給機付きエンジンの制御方法。
【請求項4】
上記低負荷領域における負荷の上限となるしきい値、もしくは高負荷領域における負荷の下限となるしきい値、または上記低速側と高速側とを切り換えるエンジンの回転数のしきい値を、排気ガス温度が高くなる程、小さくすることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のターボ過給機付きエンジンの制御方法。
【請求項5】
エンジンの低負荷領域では、吸気弁閉時期を吸気下死点から所定クランク角だけ離すように設定して、エンジンの有効圧縮比が膨張比と比べて小さくなるように制御し、
この低負荷領域からの加速時における加速初期に、吸気弁閉時期を吸気下死点に近付けるように設定した後、排気弁と吸気弁との開弁オーバラップ量を増加させることを特徴とする請求項1に記載のターボ過給機付きエンジンの制御方法。
【請求項6】
エンジンの低負荷領域における加速時に、異常燃焼が発生し易い環境条件下にあるか否かを判定し、
異常燃焼が発生し易い条件下では、異常燃焼が発生し難い条件下に比べて、同一運転領域における排気弁閉時期の遅角量を多くすることを特徴とする請求項1に記載のターボ過給機付きエンジンの制御方法。
【請求項7】
エンジンの低負荷領域における加速時に、異常燃焼が発生し易い環境条件下にあると判定された場合には、異常燃焼が発生し難い条件下に比べて、同一運転領域における吸気弁開時期の進角量を少なくすると共に、排気弁閉時期の遅角量を多くすることを特徴とする請求項6に記載のターボ過給機付きエンジンの制御方法。
【請求項8】
エンジンの高負荷領域における加速時に、異常燃焼が発生し易い環境条件下にある否かを判定し、
異常燃焼が発生し易い条件下では、異常燃焼が発生し難い条件下に比べて、同一運転領域における排気弁閉時期の遅角量および吸気弁開時期の進角量をそれぞれ少なくすることにより上記吸排気弁の開弁オーバラップ量を低減する特徴とする請求項1に記載のターボ過給機付きエンジンの制御方法。
【請求項9】
エンジンの要求負荷に応じて吸気弁および排気弁の開閉時期を変更することにより開弁オーバラップ量を調節するバルブタイミング変更手段を備えたターボ過給機付きエンジンの制御装置であって、
エンジン負荷(吸気充填効率)を検出する負荷検出手段を備え、
上記バルブタイミング変更手段は、上記負荷検出手段によって検出されたエンジン負荷が低負荷領域である場合に、上記吸排気弁の開弁オーバラップ量を増加させる時、吸気弁開時期の進角量を、排気弁閉時期の遅角量よりも多くして、開弁オーバラップ量を増加させ、
上記エンジン負荷が高負荷領域である場合に、上記吸排気弁の開弁オーバラップ量を増加させる時、排気弁閉時期の遅角量を、吸気弁開時期の進角量よりも多くして、開弁オーバラップ量を増加させるように吸気弁および排気弁の開閉時期を変更することを特徴とするターボ過給機付きエンジンの制御装置。
【請求項10】
エンジンの低負荷領域における加速時に、異常燃焼が発生し易い環境条件下にある否かを判定する判定手段を備えると共に、
上記バルブタイミング変更手段は、上記判定手段で異常燃焼が発生し易い条件下にあると判定された場合に、異常燃焼が発生し難い条件下に比べて、同一運転領域における吸気弁開時期の進角量を少なくすると共に、排気弁閉時期の遅角量を多くするように吸排気弁の開閉時期を変更することを特徴とする請求項9に記載のターボ過給機付きエンジンの制御装置。
【請求項11】
エンジンの高負荷領域における加速時に、異常燃焼が発生し易い環境条件下にある否かを判定する判定手段を備えると共に、
上記バルブタイミング変更手段は、上記判定手段で異常燃焼が発生し易い条件下にあると判定された場合に、異常燃焼が発生し難い条件下に比べて、同一運転領域における排気弁閉時期の遅角量および吸気弁開時期の進角量をそれぞれ少なくすることにより上記吸排気弁の開弁オーバラップ量を低減するように吸排気弁の開閉時期を変更することを特徴とする請求項9に記載のターボ過給機付きエンジンの制御装置。
【請求項1】
エンジンの要求負荷に応じて開弁オーバラップ量を増加させるターボ過給機付きエンジンの制御方法であって、
エンジンの低負荷領域では、吸気弁開時期の進角量を、排気弁閉時期の遅角量よりも多くして、開弁オーバラップ量を増加させ、
エンジンの高負荷領域では、排気弁閉時期の遅角量を、吸気弁開時期の進角量よりも多くして、開弁オーバラップ量を増加させることを特徴とするターボ過給機付きエンジンの制御方法。
【請求項2】
過給機のタービン上流における排気路に排気シャッタ弁を備え、
エンジン回転数が低い低速側では上記排気シャッタ弁を絞り、エンジン回転数が高い高速側では上記排気シャッタ弁を開くことを特徴とする請求項1に記載のターボ過給機付きエンジンの制御方法。
【請求項3】
上記低負荷領域における負荷の上限となるしきい値、もしくは高負荷領域における負荷の下限となるしきい値を、エンジン回転数が高くなる程、小さくすることを特徴とする請求項1または2に記載のターボ過給機付きエンジンの制御方法。
【請求項4】
上記低負荷領域における負荷の上限となるしきい値、もしくは高負荷領域における負荷の下限となるしきい値、または上記低速側と高速側とを切り換えるエンジンの回転数のしきい値を、排気ガス温度が高くなる程、小さくすることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のターボ過給機付きエンジンの制御方法。
【請求項5】
エンジンの低負荷領域では、吸気弁閉時期を吸気下死点から所定クランク角だけ離すように設定して、エンジンの有効圧縮比が膨張比と比べて小さくなるように制御し、
この低負荷領域からの加速時における加速初期に、吸気弁閉時期を吸気下死点に近付けるように設定した後、排気弁と吸気弁との開弁オーバラップ量を増加させることを特徴とする請求項1に記載のターボ過給機付きエンジンの制御方法。
【請求項6】
エンジンの低負荷領域における加速時に、異常燃焼が発生し易い環境条件下にあるか否かを判定し、
異常燃焼が発生し易い条件下では、異常燃焼が発生し難い条件下に比べて、同一運転領域における排気弁閉時期の遅角量を多くすることを特徴とする請求項1に記載のターボ過給機付きエンジンの制御方法。
【請求項7】
エンジンの低負荷領域における加速時に、異常燃焼が発生し易い環境条件下にあると判定された場合には、異常燃焼が発生し難い条件下に比べて、同一運転領域における吸気弁開時期の進角量を少なくすると共に、排気弁閉時期の遅角量を多くすることを特徴とする請求項6に記載のターボ過給機付きエンジンの制御方法。
【請求項8】
エンジンの高負荷領域における加速時に、異常燃焼が発生し易い環境条件下にある否かを判定し、
異常燃焼が発生し易い条件下では、異常燃焼が発生し難い条件下に比べて、同一運転領域における排気弁閉時期の遅角量および吸気弁開時期の進角量をそれぞれ少なくすることにより上記吸排気弁の開弁オーバラップ量を低減する特徴とする請求項1に記載のターボ過給機付きエンジンの制御方法。
【請求項9】
エンジンの要求負荷に応じて吸気弁および排気弁の開閉時期を変更することにより開弁オーバラップ量を調節するバルブタイミング変更手段を備えたターボ過給機付きエンジンの制御装置であって、
エンジン負荷(吸気充填効率)を検出する負荷検出手段を備え、
上記バルブタイミング変更手段は、上記負荷検出手段によって検出されたエンジン負荷が低負荷領域である場合に、上記吸排気弁の開弁オーバラップ量を増加させる時、吸気弁開時期の進角量を、排気弁閉時期の遅角量よりも多くして、開弁オーバラップ量を増加させ、
上記エンジン負荷が高負荷領域である場合に、上記吸排気弁の開弁オーバラップ量を増加させる時、排気弁閉時期の遅角量を、吸気弁開時期の進角量よりも多くして、開弁オーバラップ量を増加させるように吸気弁および排気弁の開閉時期を変更することを特徴とするターボ過給機付きエンジンの制御装置。
【請求項10】
エンジンの低負荷領域における加速時に、異常燃焼が発生し易い環境条件下にある否かを判定する判定手段を備えると共に、
上記バルブタイミング変更手段は、上記判定手段で異常燃焼が発生し易い条件下にあると判定された場合に、異常燃焼が発生し難い条件下に比べて、同一運転領域における吸気弁開時期の進角量を少なくすると共に、排気弁閉時期の遅角量を多くするように吸排気弁の開閉時期を変更することを特徴とする請求項9に記載のターボ過給機付きエンジンの制御装置。
【請求項11】
エンジンの高負荷領域における加速時に、異常燃焼が発生し易い環境条件下にある否かを判定する判定手段を備えると共に、
上記バルブタイミング変更手段は、上記判定手段で異常燃焼が発生し易い条件下にあると判定された場合に、異常燃焼が発生し難い条件下に比べて、同一運転領域における排気弁閉時期の遅角量および吸気弁開時期の進角量をそれぞれ少なくすることにより上記吸排気弁の開弁オーバラップ量を低減するように吸排気弁の開閉時期を変更することを特徴とする請求項9に記載のターボ過給機付きエンジンの制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−216464(P2010−216464A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−225152(P2009−225152)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
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