説明

ダイヤフラムバルブおよびこれを備えた基板処理装置

【課題】長期にわたって優れたシール性能を発揮することができるダイヤフラムバルブを提供する。ダイヤフラムバルブの閉状態において、処理流体配管を確実に閉塞することができる基板処理装置を提供する。
【解決手段】フッ素樹脂(PTFEまたはPFA)製の弁座30の先端部(ダイヤフラム25に対向する端部)には環状のシール部材20が配置されている。弁座30の上面には、弁座30の内面に連続する環状の段部45が形成されており、その段部45にシール部材20が収容されている。シール部材20は、フッ化ビニリデン系樹脂(FKM)によって形成されており、比較的高い弾性および耐薬性を有している。流路の閉鎖状態で、ダイヤフラム25と弁座30との間にシール部材20が密着状態で介装される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイヤフラムバルブ、およびダイヤフラムバルブを備えた基板処理装置に関する。基板処理装置は、半導体ウエハ、液晶表示装置用基板、プラズマディスプレイ用基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板などの基板の表面に対して処理を施す装置である。
【背景技術】
【0002】
半導体装置や液晶表示装置の製造工程には、半導体ウエハや液晶表示パネル用ガラス基板などの基板に薬液を供給して、その基板(基板上の薄膜)に対して薬液による処理を施す工程が含まれる。
このような薬液処理のための装置では、薬液タンクが備えられている。そして、その薬液タンクに貯留されている薬液が、薬液配管を通して基板に供給される。この薬液配管の途中部には、薬液の吐出/吐出停止を切り換えるためのバルブが介装されている。このバルブには、通常、ダイヤフラムバルブが採用されている。
【0003】
このダイヤフラムバルブは、薬液が流通するための流路と、この流路の途中部に配置された弁座と、この弁座に対して近接/離間可能に設けられたほぼ板状のダイヤフラムとを備えている。ダイヤフラムは、高い耐薬性を有する樹脂、たとえば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)やPFA(ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂)などのフッ素樹脂を用いて形成されている。
【0004】
ダイヤフラムが弁座に近接され、そのシール面が弁座に押しつけられることにより、ダイヤフラムと弁座との間がシールされて、流路が閉鎖される。一方、ダイヤフラムが弁座から離間されることにより、ダイヤフラムと弁座との間に隙間が生じて、流路が開放される。
【特許文献1】特開2003−185053号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、フッ素樹脂は他の樹脂に比較してその硬度が低いため、ダイヤフラムと弁座との間で異物を噛み込むと、ダイヤフラムのシール面に傷が付くおそれがある。ダイヤフラムのシール面に傷があると、ダイヤフラムバルブを閉じても、ダイヤフラムと弁座との間から薬液配管に薬液が漏出し、薬液配管を完全に閉塞することができなくなる。
また、フッ素樹脂は低弾性であるので、ダイヤフラムと弁座との間のシール力は、そもそもそれほど高くない。その上、フッ素樹脂はクリープ変形を生じ易い性質を有している。このため、長期間の使用により、ダイヤフラムのシール面と弁座とがシール状態で完全に密着しなくなり、その間から薬液が漏出するおそれもある。
【0006】
そのため、長期にわたって優れたシール性能を発揮することができるダイヤフラムバルブが望まれていた。
そこで、この発明の目的は、長期にわたって優れたシール性能を発揮することができるダイヤフラムバルブを提供することである。
また、この発明の他の目的は、ダイヤフラムバルブの閉状態において、処理流体配管を確実に閉塞することができる基板処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、流体が流入する流入口(21)と、この流入口から流入した流体が流出する流出口(22)と、前記流入口から前記流出口に至る流路(23)に設けられた弁座(30)と、前記弁座に接近して前記流路を閉鎖するとともに、前記弁座から離間して前記流路を開放するフッ素樹脂製のダイヤフラム(25)と、前記流路が閉鎖状態のときに、前記ダイヤフラムと前記弁座との間に密着状態で介装されるゴム製のシール部材(20,50)とを含む、ダイヤフラムバルブ(12,12A)である 。
【0008】
なお、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素等を表す。以下、この項において同じ。
この構成によれば、流路の閉鎖状態では、ダイヤフラムと弁座との間が、密着状態で介装されたゴム製のシール部材によってシールされる。シール部材はゴム製であるため比較的高い弾性を有している。その結果、ダイヤフラムと弁座との間が良好にシールされる。また、ダイヤフラムと弁座との間で異物を噛み込んでも、シール部材に傷が形成されにくい。これにより、長期にわたって優れたシール性能を発揮することができる。
【0009】
なお、ゴムとは、熱可塑性エラストマを含む趣旨である。
また、シール部材がゴム製であるのに対し、ダイヤフラムが比較的高い耐薬性を有するフッ素樹脂製である。したがって、流体として薬液が用いられる場合であっても、ダイヤフラムから流体への材質の溶出がない。また、流体とシール部材との接液面積が小さいので、流体へのシール部材の材質の溶出もほとんどない。したがって、流体中へのダイヤフラムの材質の溶出を抑制することができる。
【0010】
シール部材が、請求項2に記載のように、フッ素ゴムにより形成されていてもよい。フッ素ゴムとしては、フッ化ビニリデン系ゴム(FKM)や、テトラフルオロエチレン-パープルオロビニルエーテルゴム(FFKM)を用いることができる。このテトラフルオロエチレン-パープルオロビニルエーテルゴムとしては、たとえば、パーフロ(登録商標)やカルレッツ(登録商標)を例示することができる。
【0011】
フッ化ビニリデン系ゴム(FKM)は、安価であり、酸性の薬液に対して高い耐薬性を有する。そのため、ダイヤフラムバルブ内の流路を酸性の薬液が流通する場合、シール部材がフッ化ビニリデン系フッ素ゴムで形成されていると、シール部が薬液により悪影響を受けることが少ない。これにより、低コストで、高いシール性を実現することができる。
また、シール部材が、請求項3に記載のように、エチレン−プロピレン−ジエンゴムにより形成されていてもよい。エチレン−プロピレン−ジエンゴムはアルカリ性の薬液に対して高い耐薬性を有する。そのため、ダイヤフラムバルブ内の流路を、アルカリ性の薬液が流通する場合、シール部材がエチレン−プロピレン−ジエンゴムで形成されていると、シール部材が薬液により悪影響を受けることが少ない。これにより、低コストで、高いシール性を実現することができる。
【0012】
請求項4記載の発明は、基板(W)に対する処理に用いられる処理流体が流通する処理流体配管(9)と、前記処理流体配管に介装されて、前記処理流体配管を開閉するための処理流体バルブ(12)とを含み、前記処理流体バルブが、前記請求項1〜3のいずれか一項に記載のダイヤフラムバルブを含む、基板処理装置(1)である。
この構成によれば、処理流体バルブが、長期にわたって優れたシール性能を発揮するので、ダイヤフラムバルブの閉状態において、処理流体配管を確実に閉塞することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下では、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るダイヤフラムバルブ12が搭載された基板処理装置1の構成を示す模式図である。
基板処理装置1は、処理液を用いて、基板の一例である半導体ウエハW(以下、単に「ウエハW」という。)から汚染物質を除去するための洗浄処理を実行するための装置である。処理液として薬液やリンス液(たとえばDIW:脱イオン化された水)が用いられる。
【0014】
この基板処理装置1は、隔壁(図示せず)により区画された処理室2内に、ウエハWをほぼ水平に保持して回転させるためのスピンチャック3と、スピンチャック3に保持されたウエハWの表面(上面)に向けて、処理液(薬液やリンス液(たとえばDIW:脱イオン化された水)を供給するための処理液ノズル4と、スピンチャック3の周囲を取り囲み、ウエハWをから飛散する処理液を受け取るためのカップ5とを備えている。
【0015】
スピンチャック3は、モータ6と、このモータ6の回転駆動力によって鉛直軸線まわりに回転される円盤状のスピンベース7と、スピンベース7の周縁部の複数箇所にほぼ等間隔で設けられ、ウエハWをほぼ水平な姿勢で挟持するための複数個の挟持部材8とを備えている。これにより、スピンチャック3は、複数個の挟持部材8によってウエハWを挟持した状態で、モータ6の回転駆動力によってスピンベース7を回転させることにより、そのウエハWを、ほぼ水平な姿勢を保った状態で、スピンベース7とともに鉛直軸線まわりに回転させることができる。
【0016】
処理液ノズル4には、処理液を供給するための処理液配管(処理流体配管)9の一端が接続されている。処理液配管9は、その他端が処理液タンク10に接続されている。処理液配管9の途中部には、処理液タンク10に貯留されている処理液を、処理液ノズル4側に向けて送り出すための送りポンプ11と、処理液配管9の開閉を切り換えるためのエアオペレート式のダイヤフラムバルブ(処理流体バルブ)12とが、処理液タンク10側からこの順に介装されている。このダイヤフラムバルブ12が、本発明の一実施形態にかかるダイヤフラムバルブである。
【0017】
処理液タンク10に酸性の薬液(SC2(塩酸過酸化水素水混合液)、SPM(sulfuric acid/hydrogen peroxide mixture:硫酸過酸化水素水混合液)、フッ酸(HF)、バファードフッ酸(Buffered HF:フッ酸とフッ化アンモニウムとの混合液)など)が用いられる場合を例にとって説明する。
ダイヤフラムバルブ12には、このダイヤフラムバルブ12内の後述する第2空間34内にエアを供給するためのエア供給配管14が接続されている。このエア供給配管14には、エア供給源からのエアが供給されるようになっている。エア供給配管14の途中部には、エア供給配管14の開閉を切り換えるためのエア供給バルブ15が介装されている。
【0018】
また、エア供給バルブ15よりも下流側のエア供給配管14の途中部には、第2空間34からエアをリークするためのリーク配管17の一端が分岐接続されている。このリーク配管17の他端は大気中に開放されている。リーク配管17の途中部には、リーク配管17の開閉を切り換えるためのリークバルブ18が介装されている。
基板処理装置1は、マイクロコンピュータを含む構成の制御装置19を備えている。この制御装置19には、送りポンプ11、エア供給バルブ15およびリークバルブ18が、制御対象として接続されている。
【0019】
図2は、開状態におけるダイヤフラムバルブ12の断面図である。図3は、閉状態におけるダイヤフラムバルブ12の断面図である。
ダイヤフラムバルブ12は、その内部に流入口21から流出口22に至る流路23が形成されたボディ24と、流路23を開閉する弁体としてのダイヤフラム25と、ダイヤフラム25を駆動するためのピストンロッド26と、ピストンロッド26を内部に収容する筒体27とを備えている。
【0020】
ボディ24は、フッ素樹脂(PTFEまたはPFA)製であり、その内部に、流入口21に連通する流入路28が形成されている。流入口21は、上流側の処理液配管9に接続されており、処理液配管9を流通する処理液は、流入口21を介して流入路28に流入する。この流入路28は、その途中部において、ダイヤフラム25に向けてほぼ直角に屈曲している。
【0021】
また、ボディ24には、その内部に、流出口22に連通する流出路29が形成されている。この流出路29と流入路28とで流路23が構成されている。流出路29は、ダイヤフラム25に対向する入口端部を有し、この入口端部から所定距離だけ下流側で流出口22に向けて直角に屈曲されている。この流出路29の入口端部に、ダイヤフラム25を着座させるための弁座30が形成されている。したがって、流出路29は、弁座30を介して流入路28に連通している。流出口22は下流側の処理液配管9に接続されており、流入路28を流通する処理液は、流出口22を介して処理液配管9に流入する。
【0022】
弁座30は筒状(より具体的には円筒状)をなしており、その先端部(ダイヤフラム25に対向する端部)には環状のシール部材20が配置されている。このシール部材20は、たとえば断面形状が円形のOリングであり、その環状の先端縁が弁座30の先端面(ダイヤフラム25に対向する面)よりもダイヤフラム25側に突出するように設けられ、ダイヤフラム25が着座する座面を形成している。
【0023】
筒体27のボディ24に臨む端部には、ダイヤフラム25の移動を許容するための第1空間31が形成されており、さらに、第1空間31に連通するガイド孔32にピストンロッド26が挿通している。ピストンロッド26において筒体27の内部空間に配置された部位には、ピストン33が取り付けられている。このピストン33よりもボディ24側の第2空間34には、ボディ24の外表面に臨む第1ポート35が形成されている。第1ポート35には、エア供給配管14が接続されており、このエア供給配管14から、第2空間34内にエア(作動用の圧縮空気)が供給される。
【0024】
筒体27のボディ24とは反対側には、カバー36が取り付けられており、このカバー36の内面に形成された円筒状のボス37に、ピストンロッド26がスライド自在に挿通している。ボス37の周囲には、ボス37を取り囲むように圧縮コイルばね38が配置されている。圧縮コイルばね38は、ダイヤフラム25をボディ24側に向けて弾発的に付勢している。この圧縮コイルばね38が収容されている第3空間39は、第2ポート40を介して大気と連通している。
【0025】
ダイヤフラム25は、フッ素樹脂製(たとえば、PTFEまたはPFA)のほぼ板状体であり、弁座30の先端面と対向するシール面25Aを有している。ダイヤフラム25の中央部41は厚肉に形成されている。中央部41のシール面25Aとの反対面には、その中央部41に、ピストンロッド26の先端部に設けられた固定用突部26Aに嵌合する嵌合凹所42が形成されている。中央部41が嵌合凹所42を介して固定用突部26Aに外嵌されて、中央部41がピストンロッド26に固定されている。ダイヤフラム25の周縁部43は、ボディ24に固定されている。そのため、ピストンロッド26の移動に伴ってダイヤフラム25が変形する。
【0026】
リークバルブ18が閉じられつつエア供給バルブ15が開かれると、エア供給配管14からのエアが、第1ポート35を介して第2空間34に供給されて、第2空間34内が昇圧する。そして、ピストンロッド26が圧縮コイルばね38の弾性力に抗してカバー36側(図2および図3で示す上方)に移動する。このピストンロッド26に伴ってダイヤフラム25の中央部41が弁座30から離間してカバー36側に移動し、これにより、ダイヤフラム25が変形する。こうして、ダイヤフラム25と弁座30(およびシール部材20)との間に隙間Sが形成されて、流路23が開放状態になる(図2参照)。そのため、送りポンプ11の駆動状態では、流入路28内の処理液が隙間Sを介して流出路29に流入する。流出路29を流通する処理液は、流出口22を介して処理液配管9に供給される。このとき、第3空間39は狭空間になり、第3空間39内のエアは、第2ポート40を介して大気中に排出される。
【0027】
一方、エア供給バルブ15が閉じられ、リークバルブ18が開かれると、第2空間34内のエアが、第1ポート35を介してエア供給配管14およびリーク配管17を通して大気中に排出されて、第2空間34内の圧力が大気圧になる。そして、圧縮コイルばね38の弾性力によりピストンロッド26がボディ24側(図2および図3で示す下方)に移動し、ピストンロッド26に伴ってダイヤフラム25も元の形状に復元し、ダイヤフラム25と弁座30との間にシール部材20が密着状態で介装されて、流路23が閉鎖状態になる(図3参照)。そのため、送りポンプ11の駆動状態であっても、流入路28内の処理液は流出路29に流入しない。
【0028】
図4は、弁座30の拡大分解斜視図である。
弁座30の上面には、弁座30の内面に連続する環状の段部45が形成されている。その段部45には、環状のシール部材20が収容されている。段部45には、シール部材20が圧入により固定されている。段部45の深さFは、その内部に収容されたシール部材20の環状の先端縁が、弁座30の先端面よりもダイヤフラム25側に突出するように、シール部材20の断面外径Dよりも小さく設定されている。
【0029】
シール部材20は、たとえば断面形状が円形のOリングであり、たとえば、フッ化ビニリデン系樹脂(FKM)によって形成されている。そのため、シール部材20は、比較的高い弾性および耐薬性を有している。なお、シール部材20として、Oリングではなく、断面形状が角状の角リングや、断面形状が「×」状のXリングが採用されていてもよい。
この実施形態によれば、流路23の閉鎖状態では、ダイヤフラム25と弁座30との間が、密着状態で介装されたシール部材20によってシールされる。シール部材20はフッ化ビニリデン系樹脂(FKM)製であるため比較的高い弾性を有している。その結果、ダイヤフラム25と弁座30との間が良好にシールされる。また、ダイヤフラム25と弁座30との間で異物を噛み込んでも、シール部材20に傷が形成されにくい。これにより、長期にわたって優れたシール性能を発揮することができる。したがって、ダイヤフラムバルブ12の閉状態において、処理液配管9を確実に閉じることができる。
【0030】
また、シール部材20がフッ化ビニリデン系樹脂(FKM)製であるのに対し、ダイヤフラム25が比較的高い耐薬性を有するフッ素樹脂製である。その結果、ダイヤフラム25から流路23を流通する処理液(薬液)への材質の溶出がない。また、処理液(薬液)とシール部材20との接液面積が小さいので、処理液中のシール部材20の材質の溶出もほとんどない。そのため、たとえば、ダイヤフラム25全体の材質をフッ化ビニリデン系樹脂(FKM)製とする場合と比較して、流路23を流通する処理液中へのフッ化ビニリデン系樹脂(FKM)の溶出を抑制することができる。
【0031】
次に、この基板処理装置1を用いたウエハWに対する処理の一例を説明する。基板処理装置1には、処理液タンク10から処理ノズル4に至る処理液供給機構は、2つ用意されている。一方は、処理液として薬液を用いた薬液用の処理液供給機構であり、他方は、処理液としてリンス液として用いたリンス液用の処理液供給機構である。すなわち、処理液ノズル4、処理液配管9、処理液タンク10、送りポンプ11、ダイヤフラムバルブ12、エア供給配管14、エア供給バルブ15、リーク配管17およびリークバルブ18が、薬液用とリンス液用とで一対備えられている。
【0032】
処理対象のウエハWは、図示しない搬送ロボットによって処理室2内に搬入されて、スピンチャック3に保持される。なお、ウエハWの搬入時に、送りポンプ11は作動状態にある。
その後、制御装置19は、モータ6を制御して、ウエハWを回転開始させる。ウエハWの回転速度が1500rpmに達すると、制御装置19は、薬液用のエア供給バルブ15を開くとともに薬液用のリークバルブ18を閉じて、薬液用のダイヤフラムバルブ12を開く。これにより、処理液ノズル4からウエハWの表面の回転中心に向けて薬液が供給される。ウエハWの表面に供給された薬液が、ウエハWの回転による遠心力を受けてウエハWの周縁に向けて流れ、ウエハWの表面の全域に薬液を用いた処理が施される。
【0033】
ウエハWへの薬液の供給開始から所定の薬液処理時間が経過すると、制御装置19は、薬液用のエア供給バルブ15を閉じるとともに薬液用のリークバルブ18を開いて、薬液用のダイヤフラムバルブ12を閉じる。これにより、ウエハWへの薬液の供給が停止される。また、制御装置19は、リンス液用のエア供給バルブ15を開くとともにリンス液用のリークバルブ18を閉じて、リンス液用のダイヤフラムバルブ12を開く。これにより、処理液ノズル4からウエハWの表面の回転中心に向けてリンス液が供給される。ウエハWの表面に供給されたリンス液が、ウエハWの回転による遠心力を受けてウエハWの周縁に向けて流れ、ウエハWの表面に付着している薬液がリンス液によって洗い流される。
【0034】
リンス液の供給開始から所定のリンス時間が経過すると、制御装置19は、制御装置19は、リンス液用のエア供給バルブ15を閉じるとともにリンス液用のリークバルブ18を開いて、リンス液用のダイヤフラムバルブ12を閉じる。これにより、ウエハWへのリンス液の供給が停止される。また、制御装置19は、スピンチャック3をスピンドライ回転速度(たとえば3000rpm)まで加速する。これにより、リンス処理後のウエハWの表面に付着しているリンス液を遠心力で振り切って乾燥させるスピンドライ処理が実施される。スピンドライ処理が所定のスピンドライ時間にわたって行われると、スピンチャック3の回転が停止され、その後、図示しない搬送ロボットによってウエハWが搬出される。
【0035】
図5は、本発明の他の実施形態(第2の実施形態)に係るダイヤフラムバルブ12Aの一部構成を拡大して示す断面図である。この第2の実施形態において、図1〜図4に示す実施形態(第1の実施形態)に示された各部に対応する部分には、第1の実施形態と同一の参照符号を付して示し、説明を省略する。
この第2の実施形態に係るダイヤフラムバルブ12Aでは、シール部材50が、弁座30ではなく、ダイヤフラム25に固定されている。すなわち、ダイヤフラム25およびシール部材50が弁体を構成している。そして、シール部材50に対向する弁座30の頂面が、閉鎖状態においてシール部材50を着座させる座面を提供している。シール部材50は、中央部41におけるダイヤフラム25のシール面25A(弁座30に対向する面)に配置されている。このシール部材50は、たとえば、フッ化ビニリデン系樹脂(FKM)製の角リングであり、シール面25Aに接着されて固定されている。なお、シール部材50として、角リングではなく、OリングやXリングが採用されていてもよい。
【0036】
リークバルブ18が閉じられつつエア供給バルブ15が開かれると、ピストンロッド26のカバー36側に向けての移動に伴ってダイヤフラム25が変形し、シール部材50と弁座30との間に隙間が形成されて、流路23が開放状態になる。
一方、エア供給バルブ15が閉じられ、リークバルブ18が開かれると、ピストンロッド26がボディ24側に向けて移動するのに伴って、ダイヤフラム25も元の形状に復元し、ダイヤフラム25と弁座30との間にシール部材50が密着状態で介装されて、流路23が閉鎖状態になる。
【0037】
以上、この発明の2つの実施形態について説明したが、この発明は、他の形態で実施することもできる。
また、前述の各実施形態では、シール部材20,50がフッ化ビニリデン系樹脂(FKM)によって形成されているとして説明したが、シール部材20,50が、エチレン−プロピレン−ジエンゴムで形成されていてもよい。この場合、処理液にはアルカリ性の薬液が用いられていることが望ましい。この薬液として、SC1(アンモニア過酸化水素水混合液)およびアンモニア水などを例示することができる。
【0038】
その他、シール部材20,50の材質として、たとえば、パーフロ(登録商標)やカルレッツ(登録商標)などのテトラフルオロエチレン-パープルオロビニルエーテルゴム(FFKM)を用いることもできる。
また、第1実施形態においては、シール部材20が、フッ素樹脂製(たとえば、PTFEまたはPFA)の弁座30と一体成形されたものであってもよい。さらに、第2実施形態においては、シール部材50が、フッ素樹脂製(たとえば、PTFEまたはPFA)のダイヤフラム25と一体成形されたものであってもよい。
【0039】
また、前述の各実施形態では、処理液として薬液を用いる場合を例に挙げて説明したが、処理液としてDIW(脱イオン化された水)、純水、炭酸水、電解イオン水、水素水および磁気水などを用いることもできる。
また、前述の各実施形態では、エアオペレート式のダイヤフラムバルブ12を例にとって説明したが、この発明は、ソレノイドにより開閉が切り換えられる電磁式のダイヤフラムバルブにも適用することができる。
【0040】
また、前述の各実施形態では、基板処理装置1の処理液配管9の途中部に介装されるダイヤフラムバルブ12を例にとって説明したが、この発明に係るダイヤフラムバルブは、ウエハWに対する処理に用いられる処理ガスが流通する処理ガス流通路の途中部に介装されて、この処理ガス流通路を開閉するためのものであってもよい。
また、この発明に係るダイヤフラムは、基板処理装置以外の装置に適用することもできる。
【0041】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施形態に係るダイヤフラムバルブが搭載された基板処理装置の構成を示す模式図である。
【図2】開状態におけるダイヤフラムバルブの断面図である。
【図3】閉状態におけるダイヤフラムバルブの断面図である。
【図4】弁座の拡大分解斜視図である。
【図5】この発明の他の実施形態にかかるダイヤフラムバルブを説明するための図である。
【符号の説明】
【0043】
1 基板処理装置
9 処理液配管(処理流体配管)
12,12A ダイヤフラムバルブ(処理流体バルブ)
20,50 シール部材
21 流入口
22 流出口
23 流路
25 ダイヤフラム
30 弁座
W ウエハ(基板)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流入する流入口と、
この流入口から流入した流体が流出する流出口と、
前記流入口から前記流出口に至る流路に設けられた弁座と、
前記弁座に接近して前記流路を閉鎖するとともに、前記弁座から離間して前記流路を開放するフッ素樹脂製のダイヤフラムと、
前記流路が閉鎖状態のときに、前記ダイヤフラムと前記弁座との間に密着状態で介装されるゴム製のシール部材とを含む、ダイヤフラムバルブ。
【請求項2】
前記シール部材は、フッ素ゴムにより形成されている、請求項1記載のダイヤフラムバルブ。
【請求項3】
前記シール部材は、エチレン−プロピレン−ジエンゴムにより形成されている、請求項1記載のダイヤフラムバルブ。
【請求項4】
基板に対する処理に用いられる処理流体が流通する処理流体配管と、
前記処理流体配管に介装されて、前記処理流体配管を開閉するための処理流体バルブとを含み、
前記処理流体バルブが、前記請求項1〜3のいずれか一項に記載のダイヤフラムバルブを含む、基板処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−222189(P2009−222189A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−69568(P2008−69568)
【出願日】平成20年3月18日(2008.3.18)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】