説明

ダイヤモンドライクカーボン薄膜の作製方法

【課題】
DLC薄膜とターゲット基板との密着性を向上し、また、レーザーアブレーション法で問題となる溶融再凝固粒子(ドロップレット)や固体ターゲットのかけらなどの粗大粒子の混入によるなどによるDLC薄膜の品質低下の回避できるダイヤモンドライクカーボン薄膜の作製方法を提供する。
【解決手段】
原料ガス導入口に、炭酸ガスレーザーを照射することで,原料ガス分子を原子状に解離させ,基板構成原子の原子間結合エネルギーに相当する5eV程度の並進エネルギーを有する原子ビームを発生させる。原料ガスには、メタン、エチレン、アセチレンなどの直鎖炭化水素ガスを用いることで、炭素原子ビームを発生させ、シリコン基板などの固体ターゲット表面に共有結合によりダイヤモンドライクカーボン薄膜を形成する。シリコン基板上に炭素系薄膜の堆積を確認し、ラマン分光法による分析結果からDLC薄膜であるとことを確認した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザーデトネーション法で形成される高エネルギーを持つ炭素原子ビームを用いて、ダイヤモンドライクカーボン薄膜を作製する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ダイヤモンドライクカーボン(DLC)はアモルファス系高硬度炭素薄膜の総称であり、一般に用いられているDLCは構造も物性も曖昧で、ダイヤモンドに近い構造を有する膜からグラファイトや炭化水素系高分子に近い構造を有する膜まで多種多様である。
DLCは高い耐磨耗性を持つダイヤモンドと、大気中で良好な潤滑特性を持つグラファイトの混合物質であり、1971年にAisenbergらにより初の報告がなされて以来、その優れた物理・化学的特性により様々な分野への応用が図られている。
【0003】
例えば、DLCの絶縁性,低誘電率を利用してプラズマディスプレー用電子放出デバイスやLSI用絶縁膜に、高い赤外線透過率と高硬度を利用して赤外線用ウインドウ保護膜に、化学的安定性を利用して各種金型用コーティングや工具に、また優れた摺動特性を利用して各種機械部品や水栓,磁気ディスクの表面コーティングなどに広く応用が進んでいる。
また、潤滑油の環境負荷削減や、省エネルギー化も目的として、DLCをトライボロジー(磨耗・摩擦)分野へ応用しようという動きもあり、自動車用エンジン部品の固体潤滑用保護膜としての利用も始められている。
【0004】
現在、DLC薄膜の作製方法は大きく物理蒸着法(PVD)と化学蒸着法(CVD)の2種類に分けられる。PVDではマグネトロンスパッタ法,イオンビームデポジション法等が、CVDではプラズマCVD法が用いられることが多い(例えば、特許文献1)。
しかし、このようなDLC薄膜の作製方法においては、DLC薄膜はドライプロセスで形成されるため、ターゲット基板との密着性の問題がある。また、DLC薄膜の諸特性は作製方法や作製条件に強く依存しており、ターゲット基板との密着性や三次元形状基板あるいは大面積基板上での均一性、成膜速度や摺動環境依存性などの問題がある。
【0005】
また、ターゲット基板との密着性を向上させるDLC薄膜の作製方法として、レーザーなどの高エネルギービームによるアブレーション現象を利用する薄膜作製方法(レーザーアブレーション法)がある。アブレーションとは、レーザーなどの高エネルギー密度を有するビームを固体ターゲット表面に照射した際、ビームエネルギーを吸収した物質が大きなエネルギーもつフラグメントとして飛散する現象である。しかし、固体ターゲットのレーザー加熱にともなうミクロンあるいはサブミクロン程度の溶融再凝固粒子(ドロップレット)や固体ターゲットのかけらなどの粗大粒子の混入による膜質低下の問題があり、実用化にはいたっていない。
【0006】
【特許文献1】特開平08−217596号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、DLC薄膜とターゲット基板との密着性を向上し、また、レーザーアブレーション法で問題となる溶融再凝固粒子(ドロップレット)や固体ターゲットのかけらなどの粗大粒子の混入によるなどによるDLC薄膜の品質低下の回避できるダイヤモンドライクカーボン薄膜の作製方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、種々の方法でDLC薄膜の作製を試み、作製方法の改良を重ねた結果、本発明に係るダイヤモンドライクカーボン薄膜の作製方法を完成した。
本発明の観点からは、超熱炭素原子ビームを固体ターゲットに照射させることにより、該固体ターゲット表面にダイヤモンドライクカーボン薄膜を形成させることを特徴とするダイヤモンドライクカーボン薄膜の作製方法が提供される。
ここで、超熱炭素原子ビームとは、原子間結合エネルギーに相当する並進エネルギー1〜10 eV程度を有し、原子状炭素流束(フラックス)が1013-15 atoms/cm2s程度以上である炭素原子ビームをいう。
【0009】
本発明によれば、上記の超熱炭素原子ビームは、レーザーデトネーション法により生成されるが好ましい。
レーザーデトネーション法とは、パルス状に原料ガスを導入するノズル状の原料導入ノズル口に、該原料ガスに同期した炭酸ガスレーザーを集光させ、該原料ガスを解離して原子状ビームを生成する方法である。
原料導入ノズル口に、炭酸ガスレーザーを照射することで,原料ガス分子を原子状に解離させ,基板構成原子の原子間結合エネルギーに相当する5eV程度の並進エネルギーを有する原子ビームを発生させることができることができるのである。
ここで原料ガスにメタン、エチレン、アセチレンなどの直鎖炭化水素ガスを用いることで、炭素原子ビームを発生させ、固体ターゲット基板表面にダイヤモンドライクカーボン薄膜を形成させるのである。
特に、原料ガスにメタンガス(CH4)を用いることにより、水素化DLC薄膜を形成することができるのである。
【0010】
また、超熱炭素原子ビームを照射させる固体ターゲットは、シリコンなどの半導体基板や、ガラス,石英,金属などの基板、さらにはプラスチックフィルム,高分子系繊維からなる所謂フレキシブル基板などである。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るダイヤモンドライクカーボン薄膜の作製方法は、超熱炭素原子ビームを直接的に固体ターゲット表面に照射することにより成膜するものであり、キャリアガスを必要としないため、通常の分子線ビーム比べて膜内への不純物の混入を抑えることができ、DLC薄膜の品質を向上する効果を有する。
また、原料ガスであるメタンガスを原子状に解離させ、炭素原子ビームを生成するため、レーザーアブレーション法で問題となる溶融再凝固粒子(ドロップレット)や固体ターゲットのかけらなどの粗大粒子の混入によるなどによるDLC薄膜の品質低下の回避できる。
また、本発明に係るダイヤモンドライクカーボン薄膜の作製方法は、固体ターゲット表面の原子と炭素原子が共有結合することによってDLC薄膜が生成されるため、DLC薄膜とターゲット基板との密着性を向上するといった効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係るダイヤモンドライクカーボン薄膜の作製方法の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明していく。
【実施例1】
【0013】
実施例として、レーザーデトネーション法を用いて超熱炭素原子ビームを生成し、生成した超熱炭素原子ビームを固体ターゲットに照射させることにより、該固体ターゲット表面にダイヤモンドライクカーボン薄膜を形成するという作製方法について説明する。先ず、レーザーデトネーション型原子状ビーム発生装置について、図1の概略図を示しながら説明する。
【0014】
レーザーデトネーション型原子状ビーム発生装置は、図1に示すように、真空チャンバー内に、ピエゾ駆動のパルスバルブ3によってパルス状に原料ガスが導入される原料導入ノズル口1に、そのパルスに同期して炭酸ガスレーザー光を集光し照射させることで、ガス分子を原子状に解離・加速させることで、5eV程度の並進エネルギーを有する炭素原子ビームとして固体ターゲット基板5の表面に照射させるものである。
真空チャンバーは、図示しない真空排気装置に連結され、チャンバー内を10-3Paの以下の圧力とできる。これによって、固体ターゲット基板5への不純物の付着等を防止することができる。また、本成膜方法は、炭素原子ビームを直接的に固体ターゲット基板5の表面に照射して成膜するため、特にキャリアガスを必要としない。これも固体ターゲット基板5への不純物の付着が生じない理由である。固体ターゲット基板表面への不純物の付着がないことから、固体ターゲット基板表面と成膜する薄膜との密着性が向上するのである。
【0015】
原子状ビーム発生機構は、図1の概略図に示すように、真空チャンバー内に原料ガスを導入する原料導入管2と、ノズル状の原料導入ノズル口1と、図示しない炭酸ガスレーザー発振装置と、炭酸ガスレーザー発振装置から発振された炭酸ガスレーザーを反射して、原料ガス導入口に集光する表面が金で覆われた凹面鏡4とで構成されている。凹面鏡4で炭酸ガスレーザーを反射させて、原料導入ノズル口1に炭酸ガスレーザーを集光させているのは、凹面鏡4の角度等を調整することで、炭酸ガスレーザーの発振位置に影響されることなく、炭酸ガスレーザーを原料導入口に集光することができるためである。このため、凹面鏡4を設けることで真空チャンバーの大きさを小さくすることできるのである。
【0016】
原子状ビーム発生機構は、レーザー推進の原理を応用しており、すなわち、パルス状の原料ガスを、原料導入管2を介して原料導入ノズル口1に導入し、それに同期して炭酸ガスレーザーを照射する。これにより、ノズル内で生じたブレークダウンからデトネーション波が伝播し、5eV程度の原子状ビームを生成するものである。本実施例においては、原料ガスにメタンガス(CH4)を用いて、炭素原子ビームを生成している。
【0017】
生成された炭素原子ビームは、原子間結合エネルギーに相当する並進エネルギー2〜5eV,フラックス1013-15 atoms/cm2sである。ここで、炭素原子ビームのフラックスはAg薄膜をコーティングした水晶振動子微小天秤6(Quartz Crystal Microbalance ; QCM)により、また炭素原子ビームの組成および並進運動エネルギーは四重極質量分析計7(Quadrupole Mass Spectrometer ; QMS)を検出器とした飛行時間スペクトルを用いて測定している。
【0018】
本実施例では、固体ターゲット基板5に、RCA洗浄を施したシリコン基板 Si(100)を用いている。本レーザーデトネーション型原子状ビーム発生装置によって、生成された炭素原子ビームをシリコン基板に照射させることにより、シリコン基板上にDLC薄膜を成膜させることに成功したのである。
すなわち、シリコン基板上に炭素系薄膜の堆積を確認し、ラマン分光法による分析結果から、シリコン基板上の炭素系薄膜は、SP3結合を含む炭素原子を約58%含んでいるDLC薄膜であることを確認できたのである。
【0019】
また、炭素系薄膜は、本装置内の凹面鏡4にも堆積するのであるが、この炭素系薄膜がDLC薄膜であるため、赤外線に対して透明(吸収しない)となり、凹面鏡の性能が低下せず、成膜反応が継続して進行できるという実用面での利点もある。
【0020】
なお、シリコン基板上への炭素系薄膜形成における前処理方法において、シリコン基板上への薄膜の成膜前に、シリコン基板の表面への水素イオンの照射によるクリーニング処理などの前処理工程を行うことで、DLC薄膜とシリコン基板表面との密着性をさらに向上することが可能である。
【0021】
以下では、炭素原子ビームの測定結果、炭素系薄膜の分析結果について詳述していくこととする。先ず、図1に示される装置を用いて生成した炭素原子ビームの組成ならびに飛行時間測定を行った結果を図2に示す。図2(a)は四重極質量分析計7の検出質量電荷比を16(CH4+)に固定した場合の飛行時間スペクトルを示している。図2(a)の横軸の原点はパルスバルブのトリガーを基準としている。フライトタイム220μsに観察されるライン状のピークは、炭酸ガスレーザーの発光ピークであり、フライトタイムの測定基準点である。図2(a)には700μsと2000μsに2つのピークが存在することが理解できる。このうち、2000μsのピークはレーザーデトネーションによる加速を受けていない熱運動エネルギーを有する成分であり、700μsのものはレーザーにより加速された超熱分子線である。
【0022】
四重極質量分析計を検出器とする飛行時間測定の場合、イオン源での分子の電子衝突によるイオン化率が飛行速度の逆数(イオン源内での滞在時間)に比例するため、補正を行う必要があり、この補正を行った結果を図2(b)に示す。この図2(b)のスペクトルはレーザーの照射時刻を原点とした飛行時間スペクトルである。図2(b)の飛行時間スペクトルのピークの面積比より、約80%のCH4がレーザーにより加速され、20%程度は加速されずに熱運動速度で飛来していることが理解できる。
【0023】
また,フライトタイムより超熱エネルギーを有するCH4の運動エネルギーは約2.8eVであることが計算できている。さらにQMSにおいて検出する分子の質量電荷比を m/e=1, 12, 13, 14, 15に設定して同様の測定を行い、飛行時間スペクトルの測定を行った。これらのスペクトルにおけるピーク面積比を比較することにより、ビーム組成を調べた。下記表1に、飛行時間スペクトルから測定されたCH4をソースガスとして利用した場合のビームコンポーネントの原子組成比を示す。各分子が検出器であるQMSの電子衝撃型イオン源によりイオン化される場合のイオン化確率の差異を考慮していないため、この値の精度は高いものではないが、ビームの約60%がCH4であり、約40%のCHxラジカルを含んでいることが示唆されていることが理解できよう。
【0024】
【表1】

【0025】
一方、炭素原子ビームのフラックスは水晶振動子微小天秤の質量変化から見積もっている。図3は水晶振動子微小天秤6に炭素原子ビームを照射した際の水晶振動子の共振周波数変化を示している。図3の横軸は時間,縦軸は共振周波数変化である。ここで、共振周波数の減少は質量の増加(デポジション)を表している。図3において、80sでCH4の導入を開始し、100sで炭酸ガスレーザー照射を開始している。CH4だけを導入しても共振周波数には変化が生じない(薄膜の形成は行われない)が、炭酸ガスレーザーを同期させて照射し始めると、共振周波数が直線的に減少していることが示されている。これは一定のデポジションレートで炭素系薄膜が堆積していることを示すものである。この共振周波数の変化より、水晶振動子微小天秤6の上に蒸着した炭素系膜の質量を計算し、デポジションレートを算出したところ、単位面積,単位時間あたり、3.9×10-9g/cm2/sであると算定できている。
【0026】
本実施例の方法で作製したDLC薄膜のX線光電子分光法(XPS)の広域スペクトルおよびC1s, O1s 高分解能スペクトルを図4(a)〜(c)に示す。図4(d)〜(f)には比較のために同一条件で測定したプラズマCVD法により作製された市販の水素化DLCの分析結果を示している。
【0027】
図4(a)の広域スペクトルより本発明に係るDLC薄膜の作製方法で成膜した薄膜の表面組成は炭素が92%,酸素が8%であり、XPS測定前に一旦大気曝露していること、及びXPS測定前にスパッタクリーニングを施していないことを勘案すると不純物が少ないことが理解できる。プラズマCVD法により作製された市販の水素化DLCと比較しても表面組成はほぼ同様であり、組成としては市販の水素化DLCと遜色のないことが理解できる。
【0028】
図4(b), (c)にはC1sおよびO1sの高分解能スペクトルを示している。どちらのスペクトルも単一のピークから形成されており、C=Cなどの結合がほとんど含まれていないことが理解できる。市販の水素化DLCの高分解能スペクトル(図4(e), (f))と比較すると、ピーク形状はほぼ同様であるが、C1sのピーク位置が図4(b)では285.3 eV, 図4(e)では284.4 eVと、本発明に係るDLC薄膜の作製方法で成膜した炭素系薄膜の方が約0.9 eV高エネルギー側にシフトしている。O1s についても比較を行うと、図4(c) の方が0.6 eVほどシフトしていることから、基本的にはこのピーク位置の差異は表面のチャージアップに起因するものであり、炭素の結合性の差異による可能性は小さいと考えられる。従って、XPSからは本発明に係るDLC薄膜の作製方法で成膜したDLC薄膜はプラズマCVD法により作製された市販のDLCと同様の組成を有すると言えよう。
【0029】
次に、本発明に係るDLC薄膜の作製方法で成膜した薄膜について、炭素の結合状態を明らかにするためラマン散乱測定を行った。図5はラマン散乱測定を行った結果のRamanスペクトルを示している。アモルファスカーボンを特徴付けるブロードピークが観察され、グラファイト構造を示すG−band (1519 cm-1)の他に結晶構造の不規則性を表すD−band (1319 cm-1)が共存している典型的なDLCのRamanスペクトルが示されている。
G−bandとD−bandのピークポジション,ピーク面積を下表2に示す。
【0030】
【表2】

【0031】
D−bandとG−bandの面積強度比は0.45と計算されている。RobertsonによるとG−bandとD−bandのピーク面積強度比とDLC膜内のsp3構造の割合とは図6に示すような相関関係があることが報告されている。ここで,図6の横軸はsp3構造の割合,縦軸はG−bandのピーク位置および面積強度比を表している。本発明に係るDLC薄膜の作製方法で成膜した薄膜の値はそれぞれピーク位置1519cm-1, I(D)/I(G)=0.45であることから、sp3の割合は約58%と推測している。
【0032】
一方,レーザーデトネーションで作成した薄膜の表面構造を明らかにするため、原子間力顕微鏡(AFM)での観察を行った。図7にトポグラフ像と位相像を示す。図7に示すトポグラフ像より本実施例で作製した薄膜は、マイクロスコピックには完全に一様なlayer-by-layer成長をしているわけではなく、アイランド成長をしていることがわかる。このことはデポジションした炭素間の結合よりも基板と表面第1層の炭素との結合力が小さい(表面拡散が生じやすい)ことを示唆している。
【0033】
図7のトポグラフ像と位相像の断面形状を図8に示す。これより,図7の谷の部分はフラットな形状であり、山の部分は中央部が盛り上がった形状であることがわかる。また,位相像より炭素系薄膜の堆積位置では位相遅れが小さいことがわかる。AFMタッピングモードにおける位相遅れの減少は、堆積された薄膜の硬度が高いか、あるいは表面相互作用力(凝着力)が小さいことを示唆している。これらの特徴はDLCの典型的な特徴であり、本発明に係るDLC薄膜の作製方法により、シリコン基板上にDLC薄膜の形成が行われたことが理解できよう。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明に係るダイヤモンドライクカーボン薄膜の作製方法を用いることで、気相からDLC薄膜を作製することが可能であり、従来の固体ターゲットで問題なったドロップレットの回避やプラズマ法で問題となる荷電粒子によるダメージのない膜質に優れたDLC薄膜を作成できるため、半導体基板のDLC膜のコーティング等のDLC膜質が重要視される分野に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】レーザーデトネーション型原子状ビーム発生装置の概略断面図
【図2】(a)典型的なCH4ビームの飛行時間スペクトル,(b)イオン化室でのイオン化イールドを補正した後の飛行時間スペクトル
【図3】水晶振動子微小天秤に炭素ビームを照射した際の水晶振動子の周波数変化を示すグラフ
【図4】炭素系薄膜のX線光電子分光スペクトル。ここで、(a)レーザーデトネーション法で作成した炭素被膜の広域スペクトル,(b)レーザーデトネーション法で作成した炭素被膜のC1s高分解能スペクトル,(c)レーザーデトネーション法で作成した炭素被膜のO1s高分解能スペクトル,(d)市販水素化DLC薄膜の広域スペクトル,(e)市販水素化DLC薄膜のC1s高分解能スペクトル,(f)市販水素化DLC薄膜のO1s高分解能スペクトルを示している。
【図5】本発明に係るレーザーデトネーション法で作製した炭素系薄膜のラマン散乱スペクトル
【図6】炭素系薄膜に含まれるsp3結合の割合とラマン散乱のピーク位置とG-band およびD-bandの相対面積強度の関係を示すグラフ
【図7】本発明に係るレーザーデトネーション法で作製した炭素系薄膜のAFM像(a)トポグラフ像,(b)位相像
【図8】本発明に係るレーザーデトネーション法で作製した炭素系薄膜のAFM像の断面形状(a)トポグラフ像,(b)位相像
【符号の説明】
【0036】
1 原料導入ノズル口
2 原料導入管
3 パルスバルブ
4 凹面鏡
5 固体ターゲット基板
6 水晶振動子微小天秤(Quartz Crystal Microbalance ; QCM)
7 四重極質量分析計(Quadrupole Mass Spectrometer ; QMS)
8 オリフィス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超熱炭素原子ビームを固体ターゲットに照射させることにより、該固体ターゲット表面にダイヤモンドライクカーボン薄膜を形成させることを特徴とするダイヤモンドライクカーボン薄膜の作製方法。
【請求項2】
前記超熱炭素原子ビームが、レーザーデトネーション法により生成されることを特徴とする請求項1に記載のダイヤモンドライクカーボン薄膜の作製方法。
【請求項3】
前記レーザーデトネーション法において、原料ガスが炭化水素系ガスであることを特徴とする請求項2に記載のダイヤモンドライクカーボン薄膜の作製方法。
【請求項4】
前記レーザーデトネーション法において、原料ガスがメタンガスであることを特徴とする請求項2に記載のダイヤモンドライクカーボン薄膜の作製方法。
【請求項5】
前記固体ターゲットが、半導体基板であることを特徴とする請求項1乃至4に記載のいずれかのダイヤモンドライクカーボン薄膜の作製方法。
【請求項6】
前記固体ターゲットが、ガラス、石英、金属、プラスチックフィルム、高分子系繊維のうちから選択されたいずれかであることを特徴とする請求項1乃至4に記載のいずれかのダイヤモンドライクカーボン薄膜の作製方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−307251(P2006−307251A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−128844(P2005−128844)
【出願日】平成17年4月27日(2005.4.27)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2004年10月27日 日本真空協会発行の「第45回 真空に関する連合講演会 講演予稿集」に発表
【出願人】(504150450)国立大学法人神戸大学 (421)
【Fターム(参考)】