説明

チタン構成部材を有するターボ過給機

【課題】チタン構成部材を有するターボ過給機を提供する。
【解決手段】本発明の開示はターボ過給機を含む。ターボ過給機は、チタンアルミニドを含むタービンと、チタンを含むシャフトとを含む。単一の継手はタービンをシャフトに連結する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、エンジン用のターボ過給機、より詳しくは、チタンから製作された1つ以上の構成部材を含むターボ過給機に関する。
【背景技術】
【0002】
ターボ過給機は、追加の空気をエンジンシリンダに供給することによってエンジン動力を増大できる。圧縮機に連結された排気ガス駆動タービンを使用して、追加の空気を生成することが可能である。しかし、ターボ過給機タービンが適切な回転速度を発生する間に生じるターボ過給機ラグが問題である場合がある。ターボ過給機ラグを低減するための1つの方法は、タービンと、それに取り付けられたシャフトとを含むターボ過給機の回転部の重量を減少させることである。
【0003】
チタンアルミニドは、ターボ過給機タービンを製造するために使用可能な軽量で強固な材料を構成する。しかし、チタンアルミニドを使用することにより、鋼で製造されることが多いターボ過給機シャフトへのタービンの接合が面倒になることがある。チタンアルミニドおよび鋼は異なる熱膨張特性を有し、またチタンアルミニドと鋼との材料界面で望ましくない相変態を引き起こす可能性がある。したがって、大きな温度変化を経験する用途、例えばターボ過給機構成部材のために使用される場合、チタンアルミニドおよび鋼は、互いに直接接合するのに不適切であることがある。
【0004】
チタンアルミニドタービンを鋼製シャフトに接合する1つの方法は、2001年9月18日にグエン・ディン(Nguyen−Dinh)に交付された(特許文献1)に開示されている。この方法は、チタンアルミニドタービンと鋼製シャフトとの間に配置される中間層材料の使用について説明している。(特許文献1)の方法では、中間層材料がチタンアルミニドタービンおよび鋼製シャフトの両方に溶接される。したがって、(特許文献1)の方法はタービンとシャフトとの間に適切な連結を提供し得るが、溶接を2回行わなければならず、また追加の材料を使用しなければならないので、製造に対して相当の時間およびコストが付加されることがある。(特許文献1)は、鋼製シャフトが、ターボ過給機ラグを増大させることがある大きな重量をターボ過給機に加えるという点で、追加の課題を提示している。
【0005】
【特許文献1】米国特許第6,291,086号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の開示は、従来技術に存在する課題または不都合の1つ以上を克服することに向けられる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の開示の一形態はターボ過給機を含む。ターボ過給機は、チタンアルミニドを含むタービンと、チタンを含むシャフトとを含む。単一の継手はタービンをシャフトに連結する。
【0008】
本発明の開示の第2の形態は、ターボ過給機を製造する方法を含む。本方法は、チタンアルミニドを含むタービンと、チタンを含むシャフトとを用意するステップを含む。本方法はまた、単一の継手でタービンをシャフトに接合するステップを含む。
【0009】
本発明の開示の第3の形態は作業機械である。作業機械は、動力源、それに動作可能に連結された排気システム、およびターボ過給機を含む。ターボ過給機は、チタンアルミニドを含むタービンと、チタンを含むシャフトとを含む。単一の継手はタービンをシャフトに連結する。
【0010】
本明細書に組み込まれかつその一部を構成する添付図は、本開示の模範的な実施形態を示しており、記載した説明と共に、本開示の原理を説明するために役立つ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は、動力源5と排気システム7とターボ過給機9とを含む本発明の開示の作業機械3のブロック図を示している。ターボ過給機9は、図2と図3に示したように、タービン11とシャフト13と単一の継手15とを含む。ターボ過給機9は、動力源5のパワー出力を増大し得る。
【0012】
一実施形態では、ターボ過給機タービン11はチタンアルミニドを含むことが可能であり、またターボ過給機シャフト13はチタンを含むことが可能である。図3に示したように、ターボ過給機タービン11とターボ過給機シャフト13とを単一の継手15で動作可能に連結し得る。様々な方法で、継手15を製造することが可能である。例えば、ガスタングステンアーク溶接、ガスメタルアーク溶接、抵抗溶接、レーザ溶接、プラズマアーク溶接、電子ビーム溶接、摩擦溶接、ろう付け、半田付け、または他の任意の接合方法を使用して、継手15を形成してもよい。一実施形態では、継手15は、摩擦溶接継手、電子ビーム溶接継手またはレーザ溶接継手を含むことが可能である。
【0013】
排気システム7内に、タービン11およびシャフト13を少なくとも部分的に配置し得る。排気システム7の排気ガスにより、タービン11の回転を引き起こすことが可能である。タービン11に動作可能に連結されているシャフト13は、回転するタービンがシャフト13にトルクを及ぼすときに同様に回転する。次に、シャフト13は、空気を動力源5に流入させ得るパワーを圧縮機に与えることが可能である。動力源5は、流入された空気の結果として付加動力を発生させることができ得る。
【0014】
タービン11は様々な材料から製造できる。一実施形態では、タービン11は、例えばチタンアルミニドを含む1つ以上の材料から製造し得る。タービン11に含まれるチタンアルミニドは、いくつかのチタンアルミニド組成物から選択することが可能である。タービン11に使用するために適切であり得るチタンアルミニドは、例えば、γ−TiAl、TiAl、Ti3Al、TiAl3、Ti−48Al−2Nb−2CrおよびTi2AlNbを含む。
【0015】
シャフト13も様々な材料から製造できる。一実施形態では、シャフト13は、例えばチタンまたはチタン合金を含む1つ以上の材料から製造し得る。シャフト13に含まれるチタンは、精製されるかまたは合金にされる多数のチタン材料から選択することが可能である。チタンは多くの形態に利用可能であるが、シャフト13に含め得る2種類のチタン材料は、商業的に純粋なチタンおよびチタン合金である。チタン材料は、商業的に純粋なチタンおよびチタン合金の両方に適用される米国材料試験協会(ASTM)の適切な等級によって特定することが可能である。商業的に純粋なチタン材料の例は等級1、等級2、等級3、または等級4である。商業的に純粋なこれらの材料は、98重量%よりも大きなチタンである。
【0016】
シャフト13に使用可能なチタン合金は、例えば、αチタン合金、ニアαチタン合金、α−βチタン合金およびβチタン合金を含む。一実施形態では、シャフト13はα−βチタン合金を含み得る。この合金は約90重量%のチタン、6%重量のアルミニウム、および4重量%のバナジウムであり、またTi−6Al−4VまたはASTM等級5のチタンとしても知られている。他の元素を添加または除去して、合金の機械的特性、耐食性、熱特性、または溶接性を変更してもよい。例えば、還元酸素チタン合金は、強靭性がより高い材料を生成することが可能であり、またパラジウムまたはニッケル添加物は耐食性の向上をもたらすことが可能である。
【0017】
図4は、本発明の開示の他の実施形態を示している。本実施形態では、スリーブ17がターボ過給機シャフト13の少なくとも一部分を覆って位置決めされ得る。スリーブ17は、チタンの剛性よりも大きな剛性を有する任意の材料から製造してもよい。例えば、一実施形態では、スリーブ17は鋼を含むことが可能である。
【0018】
スリーブ17およびシャフト13は共に、選択された1組の機械的特性を含み得るアセンブリ18を形成し得る。これらの特性はスリーブ17および/またはシャフト13の材料特性および寸法の関数であり得る。一実施形態では、スリーブ17がシャフト13を覆って配置され、アセンブリ18の剛性を向上させることが可能である。
【0019】
スリーブ17は、異なる種類の様々な鋼から製造してもよい。一実施形態では、例えば、米国鉄鋼協会の4140鋼(AISI4140)のような中間炭素鋼を使用することが可能である。AISI4140は、開示したスリーブに組み込み得るいくつかの形態に利用可能である。例えば、いくつかの異なる熱処理プロトコルを用いて、AISI4140を熱処理してもよい。熱処理プロトコルを選択して、鋼の硬度、強靭性、剛性、延性、引張強度、降伏強度、被削性、または他の機械的特性を変更することが可能である。
【0020】
一実施形態では、スリーブ17は、1つ以上の軸受と係合するために十分に適している材料特性を有する1つ以上の軸受面セクションを含み得る。スリーブ17は、例えば、1つ以上の軸受面セクションの硬度が向上したまたは耐摩耗性が向上したセクションを含むスリーブ17の長さに沿って変化する材料特性を有することが可能である。スリーブ17のセクションを選択的に処理することによってまたはスリーブ17の長さに沿って材料組成を変更することによって、硬度または耐摩耗性の向上を行ってもよい。一実施形態では、火炎焼入れ、高周波焼入れ、レーザビーム硬化または電子ビーム硬化から選択されるプロトコルを用いて、スリーブ17のセクションを処理し得る。一実施形態では、スリーブ17は鋼から製造することが可能であり、また1つ以上の軸受面セクション17における鋼の炭素含有量を増加または減少させることが可能である。
【0021】
一実施形態では、シャフト13は、その長さに沿って1つ以上の位置で1つ以上の軸受と係合するための軸受面セクションを含み得る。本実施形態では、シャフト13またはその特定のセクションを処理して、1つ以上の軸受に係合するときに硬度を向上させるかまたは耐摩耗性を向上させることが可能である。他の実施形態では、スリーブ17およびシャフト13の両方が1つ以上の軸受面セクションを含んでもよい。
【0022】
図5は、ターボ過給機タービン11、ターボ過給機シャフト13、継手15およびスリーブ19を含む本発明の開示の他の実施形態を示している。スリーブ19は、第1のスリーブセクション21、第2のスリーブセクション23、および第3のスリーブセクション25を有する。スリーブ19のセクション21、23および25における直径は、スリーブの長さにわたって均一であり得るか、またはスリーブ19の近くに配置される他の構成部材の形状に従うように増大または減少させることが可能である。
【0023】
1つ以上の軸受構成部材に合致する直径を用意するために、スリーブ19の直径を1つ以上の軸受面セクションで増大または減少させてもよい。一実施形態では、スリーブ19はその両端に軸受面セクションを含むことが可能であり、また軸受面セクションは、1つ以上の軸受構成部材の容積の空間を設けるために選択される直径を有することが可能である。
【0024】
同様に、シャフト13とスリーブ19とを含むアセンブリ20の重量または機械的特性を変更するために、スリーブ19の直径を変更してもよい。例えば、図5の実施形態では、第1のスリーブセクション21および第3のスリーブセクション25を半径方向に配向される支持リブとして配列することが可能である。代わりに、第1のセクション21および/または第3のセクション25を長手方向に配向される支持リブとして配列してもよい。このようにして支持リブを設けることは、剛性および強度をスリーブ19に用意して、所望の1組の機械的特性を付与するのに役立ち得る。セクション21と25はまた、スリーブ19に対して螺旋パターンで配向することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明の開示は、ラグの減少、信頼性の向上および容易な製造を提供し得る軽量のターボ過給機を提供する。このターボ過給機は、ターボ過給機を組み込んでいるすべてのエンジン型式に有用であり得る。
【0026】
本発明の開示のターボ過給機は、チタンアルミニドを含むタービンを含み、タービンは単一の継手を介して、チタンを含むシャフトに接合される。本発明の開示のチタンシャフトは、鋼製シャフトの使用時に経験されるのと同一の接合の難しさを示さないので、単一の継手を使用して、チタンシャフトをチタンアルミニドタービンに接合することが可能である。本発明の開示の単一の継手は製造時間およびコストを低減し、また中間層材料の必要性を省略することによって信頼性を向上できる。
【0027】
さらに、本発明の開示は、従来技術で公知の鋼製シャフトと比較してより軽量のターボ過給機シャフトを提供する。本発明の開示の他の形態は、ターボ過給機シャフトに嵌め込むスリーブである。スリーブは、シャフトとスリーブとの組み合わせの機械的特性を制御するために、シャフト材料よりも大きな剛性を有する材料から製作することが可能であり、またスリーブは、軸受構成部材との係合領域における硬度の向上および摩耗に対する抵抗性を付与することが可能である。
【0028】
開示の範囲から逸脱することなく、開示したシステムおよび方法に様々な修正および変更をなし得ることが当業者には明白であろう。開示したシステムおよび方法の他の実施形態は、本明細書に開示した実施形態の仕様および実施を考慮すれば当業者には明白であろう。仕様および実施例は模範的なものに過ぎないと考えるべきであり、本開示の真の範囲は、特許請求の範囲およびそれらの等価物によって示されることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の開示の模範的な作業機械およびターボ過給機を含む作業機械のブロック図である。
【図2】接合される前の本発明の開示の模範的なタービンおよびシャフトの概略図である。
【図3】単一の継手によって連結された後の図2の模範的なタービンおよびシャフトの概略図である。
【図4】シャフトの一部分を覆う模範的なスリーブを有する本発明の開示のタービンおよびシャフトの概略図である。
【図5】シャフトの一部分を覆う模範的なスリーブを有する本発明の開示のタービンおよびシャフトの概略図である。
【符号の説明】
【0030】
3 作業機械
5 動力源
7 排気システム
9 ターボ過給機
11 ターボ過給機タービン
13 ターボ過給機シャフト
15 継手
17 スリーブ
18 スリーブおよびシャフトアセンブリ
19 スリーブ
20 スリーブおよびシャフトアセンブリ
21 第1のスリーブセクション
23 第2のスリーブセクション
25 第3のスリーブセクション

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターボ過給機であって、
チタンアルミニドを含むタービンと、
チタンを含むシャフトと、
前記タービンを前記シャフトに連結する単一の継手と
を備えるターボ過給機。
【請求項2】
単一の継手が、摩擦溶接継手、電子ビーム溶接継手またはレーザ溶接継手の少なくとも1つを含む請求項1に記載のターボ過給機。
【請求項3】
ターボ過給機を製造する方法であって、
チタンアルミニドを含むタービンを製造するステップと、
チタンを含むシャフトを製造するステップと、
単一の継手で前記タービンと前記シャフトとを接合するステップと
を含む方法。
【請求項4】
接合するステップが、摩擦溶接、電子ビーム溶接またはレーザ溶接の少なくとも1つから選択される方法によって実行される請求項3に記載の方法。
【請求項5】
作業機械であって、
動力源と、
動力源に動作可能に連結された排気システムと、
排気システム内に配置されたターボ過給機であって、
チタンアルミニドを含むタービンと、
チタンを含むシャフトと、
摩擦溶接、電子ビーム溶接またはレーザ溶接の少なくとも1つでタービンを前記シャフトに連結する単一の継手と
を含むターボ過給機と
を備える作業機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−105144(P2006−105144A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−287840(P2005−287840)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(391020193)キャタピラー インコーポレイテッド (296)
【氏名又は名称原語表記】CATERPILLAR INCORPORATED
【Fターム(参考)】