説明

チャックテーブルに保持された被加工物の計測装置およびレーザー加工機

【課題】チャックテーブルに保持された半導体ウエーハ等の被加工物の上面位置を計測する計測装置および計測装置を装備したレーザー加工機を提供する。
【解決手段】発光源からの光を第1の経路に導くとともに第1の経路を逆行する反射光を第2の経路に導く第1の光分岐手段と第1の経路に導かれた光を平行光にし、この平行光を第3の経路と第4の経路に分ける第2の光分岐手段と第3の経路に配設され第3の経路に導かれた光を被加工物に導く対物レンズと、第2の光分岐手段と対物レンズとの間に配設された集光レンズと、第4の経路に導かれた平行光を反射し、この反射光を逆行せしめる反射ミラーと、第2の経路に導かれた反射光を回折する回折格子と、回折光の所定の波長域における各波長の逆数の光強度を検出するイメージセンサーと、検出信号からの分光干渉波形と理論上の波形関数に基づくフーリエ変換理論による波形解析を実行する制御手段とを具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー加工機等の加工機に装備されるチャックテーブルに保持された半導体ウエーハ等の被加工物の高さを計測する計測装置およびレーザー加工機に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造工程においては、略円板形状である半導体ウエーハの表面に格子状に配列されたストリートと呼ばれる分割予定ラインによって複数の領域が区画され、この区画された領域にIC、LSI等のデバイスを形成する。そして、半導体ウエーハをストリートに沿って切断することによりデバイスが形成された領域を分割して個々の半導体デバイスを製造している。
【0003】
上述した半導体ウエーハ等のストリートに沿って分割する方法として、ウエーハに対して透過性を有するパルスレーザー光線を用い、分割すべき領域の内部に集光点を合わせてパルスレーザー光線を照射するレーザー加工方法が試みられている。このレーザー加工方法を用いた分割方法は、ウエーハの一方の面側から内部に集光点を合わせてウエーハに対して透過性を有する例えば波長が1064nmのパルスレーザー光線を照射し、ウエーハの内部にストリートに沿って変質層を連続的に形成し、この変質層が形成されることによって強度が低下したストリートに沿って外力を加えることにより、被加工物を分割するものである。(例えば、特許文献1参照。)このように被加工物に形成されたストリートに沿って内部に変質層を形成する場合、被加工物の上面から所定の深さ位置にレーザー光線の集光点を位置付けることが重要である。
【0004】
また、半導体ウエーハ等の板状の被加工物を分割する方法として、被加工物に形成されたストリートに沿ってパルスレーザー光線を照射することによりレーザー加工溝を形成し、このレーザー加工溝に沿ってメカニカルブレーキング装置によって割断する方法が提案されている。(例えば、特許文献2参照。)このように被加工物に形成されたストリートに沿ってレーザー加工溝を形成する場合にも、被加工物の所定高さ位置にレーザー光線の集光点を位置付けることが重要である。
【0005】
しかるに、半導体ウエーハ等の板状の被加工物にはウネリがあり、その厚さにバラツキがあるため、均一なレーザー加工を施すことが難しい。即ち、ウエーハの内部にストリートに沿って変質層を形成する場合、ウエーハの厚さにバラツキがあるとレーザー光線を照射する際に屈折率の関係で所定の深さ位置に均一に変質層を形成することができない。また、ウエーハに形成されたストリートに沿ってレーザー加工溝を形成する場合にもその厚さにバラツキがあると、均一な深さのレーザー加工溝を形成することができない。
【0006】
上述した問題を解消するために、チャックテーブルに保持された半導体ウエーハ等の被加工物の上面高さを確実に計測することができる計測装置が下記特許文献3に開示されている。下記特許文献3に開示された計測装置は、色収差レンズを通過した白色光が波長によって異なる焦点距離を有することを利用して、その反射光によって波長を特定することにより焦点距離を求めるので、チャックテーブルに保持された被加工物の高さ位置を正確に計測することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3408805号
【特許文献2】特開平10−305420号公報
【特許文献3】特開2008−170366号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
而して、白色光を色収差レンズによって集光すると、光軸上に各波長に対応した集光点が位置付けられるが、波長が長くなるに従って集光レンズの内側(光軸側)に位置付けられ実質的にNA値が小さくなるため、焦光点がボケて正確な表面高さ位置を検出することができないという問題がある。
【0009】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、チャックテーブルに保持された半導体ウエーハ等の被加工物の高さを正確に計測することができる計測装置および計測装置を装備したレーザー加工機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、加工機に装備されるチャックテーブルに保持された被加工物の位置を検出するチャックテーブルに保持された被加工物の計測装置において、
所定の波長領域を有する光を発する発光源と、
該発光源からの光を第1の経路に導くとともに該第1の経路を逆行する反射光を第2の経路に導く第1の光分岐手段と、
該第1の経路に導かれた光を平行光に形成するコリメーションレンズと、
該コリメーションレンズによって平行光に形成された光を第3の経路と第4の経路に分ける第2の光分岐手段と、
該第3の経路に配設され該第3の経路に導かれた光を該チャックテーブルに保持された被加工物に導く対物レンズと、
該第2の光分岐手段と該対物レンズとの間に配設され該第3の経路に導かれた平行光を集光し該対物レンズに集光点を位置付けて該対物レンズからの光を擬似平行光に生成する集光レンズと、
該第4の経路に配設され該第4の経路に導かれた平行光を反射して該第4の経路に反射光を逆行せしめる反射ミラーと、
該反射ミラーによって反射し該第4の経路と該第2の光分岐手段と該コリメーションレンズおよび該第1の経路を逆行して該第1の光分岐手段から該第2の経路に導かれた反射光と、該チャックテーブルに保持された被加工物で反射し該対物レンズと該集光レンズと該第2の光分岐手段と該コリメーションレンズおよび該第1の経路を逆行して該第1の光分岐手段から該第2の経路に導かれた反射光との干渉を回折する回折格子と、
該回折格子によって回折した反射光の所定の波長域における各波長の逆数の光強度を検出し、光強度信号を出力するイメージセンサーと、
該回折格子と該イメージセンサーとの間に配設され、該イメージセンサーで検出される波長域の間隔を各波長の逆数の間隔と等しい間隔になるように該回折格子によって回折した反射光の各波長を位置付けるレンズ手段と、
該イメージセンサーからの検出信号に基づいて分光干渉波形を求め、該分光干渉波形と理論上の波形関数に基づいてフーリエ変換理論に基づく波形解析を実行し、該第4の経路における該反射ミラーまでの光路長と該第3の経路における該チャックテーブルに保持された被加工物までの光路長との光路長差を求め、該光路長差に基づいて該チャックテーブルの表面から該チャックテーブルに保持された被加工物の上面までの距離を求める制御手段と、を具備している、
ことを特徴とするチャックテーブルに保持された被加工物の計測装置が提供される。
【0011】
上記制御手段が実行する波形解析は、分光干渉波形と理論上の波形関数との相関係数が高い該光路長差を求める。
【0012】
また、本発明によれば、被加工物を保持する保持面を有するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物にレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段と、該チャックテーブルに保持された被加工物の位置を検出する計測装置と、を具備するレーザー加工機において、
該計測装置は、所定の波長領域を有する光を発する発光源と、
該発光源からの光を第1の経路に導くとともに該第1の経路を逆行する反射光を第2の経路に導く第1の光分岐手段と、
該第1の経路に導かれた光を平行光に形成するコリメーションレンズと、
該コリメーションレンズによって平行光に形成された光を第3の経路と第4の経路に分ける第2の光分岐手段と、
該第3の経路に配設され該第3の経路に導かれた光を該チャックテーブルに保持された被加工物に導く対物レンズと、
該第2の光分岐手段と該対物レンズとの間に配設され該第3の経路に導かれた平行光を集光し該対物レンズに集光点を位置付けて該対物レンズからの光を擬似平行光に生成する集光レンズと、
該第4の経路に配設され該第4の経路に導かれた平行光を反射して該第4の経路に反射光を逆行せしめる反射ミラーと、
該反射ミラーによって反射し該第4の経路と該第2の光分岐手段と該コリメーションレンズおよび該第1の経路を逆行して該第1の光分岐手段から該第2の経路に導かれた反射光と、該チャックテーブルに保持された被加工物で反射し該対物レンズと該集光レンズと該第2の光分岐手段と該コリメーションレンズおよび該第1の経路を逆行して該第1の光分岐手段から該第2の経路に導かれた反射光との干渉を回折する回折格子と、
該回折格子によって回折した反射光の所定の波長域における各波長の逆数の光強度を検出し、光強度信号を出力するイメージセンサーと、
該回折格子と該イメージセンサーとの間に配設され、該イメージセンサーで検出される波長域の間隔を各波長の逆数の間隔と等しい間隔になるように該回折格子によって回折した反射光の各波長を位置付けるレンズ手段と、
該イメージセンサーからの検出信号に基づいて分光干渉波形を求め、該分光干渉波形と理論上の波形関数に基づいてフーリエ変換理論に基づく波形解析を実行し、該第4の経路における該反射ミラーまでの光路長と該第3の経路における該チャックテーブルに保持された被加工物までの光路長との光路長差を求め、該光路長差に基づいて該チャックテーブルの表面から該チャックテーブルに保持された被加工物の上面までの距離を求める制御手段と、を具備し、
該レーザー光線照射手段は、レーザー光線を発振するレーザー光線発振手段と、該集光レンズと該対物レンズとの間に配設され該レーザー光線発振手段から発振されたレーザー光線を該対物レンズに向けて方向変換するダイクロイックミラーと、を具備している、
ことを特徴とするレーザー加工機が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によるチャックテーブルに保持された被加工物の計測装置は以上のように構成され、イメージセンサーからの各波長の逆数の光強度信号に基づいて分光干渉波形を求め、該分光干渉波形と理論上の波形関数に基づいてフーリエ変換理論に基づく波形解析を実行し、第4の経路における反射ミラーまでの基準となる光路長と第3の経路におけるチャックテーブルに保持された被加工物までの光路長との光路長差を求め、該光路長差に基づいてチャックテーブルの表面からチャックテーブルに保持された被加工物の上面までの距離を求めるので、チャックテーブルに保持された被加工物の上面位置を正確に計測することができる。また、上記ラインイメージセンサーは回折格子によって回折した反射光の各波長における光強度を検出し、各波長の逆数の光強度信号を制御手段に送るようになっているので、制御手段は上記フーリエ変換理論に基づく演算を短時間で実行することができる。
また、本発明によるレーザー加工機は上記計測装置を装備しているので、チャックテーブルに保持された被加工物の上面位置を基準とした所定の位置に正確にレーザー加工を施すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に従って構成されたレーザー加工機の斜視図。
【図2】図1に示すレーザー加工機に装備される位置計測兼レーザー照射ユニットを構成する位置計測装置およびレーザー光線照射手段のブロック構成図。
【図3】図2に示す位置計測装置を構成する制御手段によって求められる分光干渉波形を示す説明図。
【図4】図2に示す位置計測装置を構成する制御手段によって求められる被加工物の表面までの光路長差を示す説明図。
【図5】図2に示す位置計測装置を構成する制御手段によって求められる被加工物の表面までの光路長差と被加工物の表面までの光路長差および被加工物の厚みを示す光路長差の説明図。
【図6】図1に示すレーザー加工機によって加工される被加工物としての半導体ウエーハの斜視図。
【図7】図6に示す半導体ウエーハが図1に示すレーザー加工機のチャックテーブルの所定位置に保持された状態における座標位置との関係を示す説明図。
【図8】図1に示すレーザー加工機に装備されたチャックテーブルに保持された被加工物の計測装置によって実施される高さ位置検出工程の説明図。
【図9】図1に示すレーザー加工機によって図6に示す半導体ウエーハに変質層を形成する加工工程の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に従って構成されたチャックテーブルに保持された被加工物の計測装置およびレーザー加工機の好適な実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
図1には、本発明に従って構成されたチャックテーブルに保持された被加工物の位置を計測する計測装置を装備したレーザー加工機の斜視図が示されている。図1に示すレーザー加工機1は、静止基台2と、該静止基台2に矢印Xで示す加工送り方向(X軸方向)に移動可能に配設され被加工物を保持するチャックテーブル機構3と、静止基台2に上記X軸方向と直交する矢印Yで示す割り出し送り方向(Y軸方向)に移動可能に配設されたレーザー光線照射ユニット支持機構4と、該レーザー光線照射ユニット支持機構4に矢印Zで示す集光点位置調整方向(Z軸方向)に移動可能に配設された位置計測兼レーザー照射ユニット5とを具備している。
【0017】
上記チャックテーブル機構3は、静止基台2上にX軸方向に沿って平行に配設された一対の案内レール31、31と、該案内レール31、31上にX軸方向に移動可能に配設された第一の滑動ブロック32と、該第1の滑動ブロック32上にY軸方向に移動可能に配設された第2の滑動ブロック33と、該第2の滑動ブロック33上に円筒部材34によって支持された支持テーブル35と、被加工物保持手段としてのチャックテーブル36を具備している。このチャックテーブル36は多孔性材料から形成された吸着チャック361を具備しており、吸着チャック361の上面である保持面上に被加工物である例えば円形形状の半導体ウエーハを図示しない吸引手段によって保持するようになっている。このように構成されたチャックテーブル36は、円筒部材34内に配設された図示しないパルスモータによって回転せしめられる。なお、チャックテーブル36には、半導体ウエーハ等の被加工物を保護テープを介して支持する環状のフレームを固定するためのクランプ362が配設されている。
【0018】
上記第1の滑動ブロック32は、その下面に上記一対の案内レール31、31と嵌合する一対の被案内溝321、321が設けられているとともに、その上面にX軸方向に沿って平行に形成された一対の案内レール322、322が設けられている。このように構成された第1の滑動ブロック32は、被案内溝321、321が一対の案内レール31、31に嵌合することにより、一対の案内レール31、31に沿ってX軸方向に移動可能に構成される。図示の実施形態におけるチャックテーブル機構3は、第1の滑動ブロック32を一対の案内レール31、31に沿ってX軸方向に移動させるための加工送り手段37を具備している。加工送り手段37は、上記一対の案内レール31と31の間に平行に配設された雄ネジロッド371と、該雄ネジロッド371を回転駆動するためのパルスモータ372等の駆動源を含んでいる。雄ネジロッド371は、その一端が上記静止基台2に固定された軸受ブロック373に回転自在に支持されており、その他端が上記パルスモータ372の出力軸に伝動連結されている。なお、雄ネジロッド371は、第1の滑動ブロック32の中央部下面に突出して設けられた図示しない雌ネジブロックに形成された貫通雌ネジ穴に螺合されている。従って、パルスモータ372によって雄ネジロッド371を正転および逆転駆動することにより、第1の滑動ブロック32は案内レール31、31に沿ってX軸方向に移動せしめられる。
【0019】
図示の実施形態におけるレーザー加工機1は、上記チャックテーブル36の加工送り量を検出するための加工送り量検出手段374を備えている。加工送り量検出手段374は、案内レール31に沿って配設されたリニアスケール374aと、第1の滑動ブロック32に配設され第1の滑動ブロック32とともにリニアスケール374aに沿って移動する読み取りヘッド374bとからなっている。この送り量検出手段374の読み取りヘッド374bは、図示の実施形態においては1μm毎に1パルスのパルス信号を後述する制御手段に送る。そして後述する制御手段は、入力したパルス信号をカウントすることにより、チャックテーブル36の加工送り量を検出する。なお、上記加工送り手段37の駆動源としてパルスモータ372を用いた場合には、パルスモータ372に駆動信号を出力する後述する制御手段の駆動パルスをカウントすることにより、チャックテーブル36の加工送り量を検出することもできる。また、上記加工送り手段37の駆動源としてサーボモータを用いた場合には、サーボモータの回転数を検出するロータリーエンコーダが出力するパルス信号を後述する制御手段に送り、制御手段が入力したパルス信号をカウントすることにより、チャックテーブル36の加工送り量を検出することもできる。
【0020】
上記第2の滑動ブロック33は、その下面に上記第1の滑動ブロック32の上面に設けられた一対の案内レール322、322と嵌合する一対の被案内溝331、331が設けられており、この被案内溝331、331を一対の案内レール322、322に嵌合することにより、Y軸方向に移動可能に構成される。図示の実施形態におけるチャックテーブル機構3は、第2の滑動ブロック33を第1の滑動ブロック32に設けられた一対の案内レール322、322に沿ってY軸方向に移動させるための第1の割り出し送り手段38を具備している。第1の割り出し送り手段38は、上記一対の案内レール322と322の間に平行に配設された雄ネジロッド381と、該雄ネジロッド381を回転駆動するためのパルスモータ382等の駆動源を含んでいる。雄ネジロッド381は、その一端が上記第1の滑動ブロック32の上面に固定された軸受ブロック383に回転自在に支持されており、その他端が上記パルスモータ382の出力軸に伝動連結されている。なお、雄ネジロッド381は、第2の滑動ブロック33の中央部下面に突出して設けられた図示しない雌ネジブロックに形成された貫通雌ネジ穴に螺合されている。従って、パルスモータ382によって雄ネジロッド381を正転および逆転駆動することにより、第2の滑動ブロック33は案内レール322、322に沿ってY軸方向に移動せしめられる。
【0021】
図示の実施形態におけるレーザー加工機1は、上記第2の滑動ブロック33の割り出し加工送り量を検出するための割り出し送り量検出手段384を備えている。割り出し送り量検出手段384は、案内レール322に沿って配設されたリニアスケール384aと、第2の滑動ブロック33に配設され第2の滑動ブロック33とともにリニアスケール384aに沿って移動する読み取りヘッド384bとからなっている。この送り量検出手段384の読み取りヘッド384bは、図示に実施形態においては1μm毎に1パルスのパルス信号を後述する制御手段に送る。そして後述する制御手段は、入力したパルス信号をカウントすることにより、チャックテーブル36の割り出し送り量を検出する。なお、上記第1の割り出し送り手段38の駆動源としてパルスモータ382を用いた場合には、パルスモータ382に駆動信号を出力する後述する制御手段の駆動パルスをカウントすることにより、チャックテーブル36の割り出し送り量を検出することもできる。また、上記加工送り手段37の駆動源としてサーボモータを用いた場合には、サーボモータの回転数を検出するロータリーエンコーダが出力するパルス信号を後述する制御手段に送り、制御手段が入力したパルス信号をカウントすることにより、チャックテーブル36の割り出し送り量を検出することもできる。
【0022】
上記レーザー光線照射ユニット支持機構4は、静止基台2上にY軸方向に沿って平行に配設された一対の案内レール41、41と、該案内レール41、41上に矢印Yで示す方向に移動可能に配設された可動支持基台42を具備している。この可動支持基台42は、案内レール41、41上に移動可能に配設された移動支持部421と、該移動支持部421に取り付けられた装着部422とからなっている。装着部422は、一側面にZ軸方向に延びる一対の案内レール423、423が平行に設けられている。図示の実施形態におけるレーザー光線照射ユニット支持機構4は、可動支持基台42を一対の案内レール41、41に沿ってY軸方向に移動させるための第2の割り出し送り手段43を具備している。第2の割り出し送り手段43は、上記一対の案内レール41、41の間に平行に配設された雄ネジロッド431と、該雄ネジロッド431を回転駆動するためのパルスモータ432等の駆動源を含んでいる。雄ネジロッド431は、その一端が上記静止基台2に固定された図示しない軸受ブロックに回転自在に支持されており、その他端が上記パルスモータ432の出力軸に伝動連結されている。なお、雄ネジロッド431は、可動支持基台42を構成する移動支持部421の中央部下面に突出して設けられた図示しない雌ネジブロックに形成された雌ネジ穴に螺合されている。このため、パルスモータ432によって雄ネジロッド431を正転および逆転駆動することにより、可動支持基台42は案内レール41、41に沿ってY軸方向に移動せしめられる。
【0023】
図示の実施形態のおける位置計測兼レーザー照射ユニット5は、ユニットホルダ51と、該ユニットホルダ51に取り付けられた円筒形状のユニットハウジング52を具備しており、ユニットホルダ51が上記可動支持基台42の装着部422に一対の案内レール423、423に沿って移動可能に配設されている。ユニットホルダ51に取り付けられたユニットハウジング52には、上記チャックテーブル36に保持された被加工物の高さ位置を検出する位置計測装置およびチャックテーブル36に保持された被加工物にレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段が配設されている。この位置計測装置およびレーザー光線照射手段について、図2を参照して説明する。
【0024】
図示の実施形態における位置計測装置6は、所定の波長領域を有する光を発する発光源61と、該発光源61からの光を第1の経路6aに導くとともに該第1の経路6aを逆行する反射光を第2の経路6bに導く第1の光分岐手段62と、第1の経路6aに導かれた光を平行光に形成するコリメーションレンズ63と、該コリメーションレンズ63によって平行光に形成された光を第3の経路6cと第4の経路6dに分ける第2の光分岐手段64とを具備している。
【0025】
発光源61は、例えば波長(λ)が820〜870nm領域の光を発光するLED、SLD、LD、ハロゲン電源、ASE電源、スーパーコンティニアム電源を用いることができる。上記第1の光分岐手段62は、偏波保持ファイバーカプラ、偏波保持ファイバーサーキュレーター、シングルモードファイバーカプラ、シングルモードファイバーカプラサーキュレーターなどを用いることができる。上記第2の光分岐手段64は、図示の実施形態においてはビームスプリッター641と、方向変換ミラー642とによって構成されている。なお、上記発光源61から第1の光分岐手段62までの経路および第1の経路6aは、光ファイバーによって構成されている。
【0026】
上記第3の経路6cには、第3の経路6cに導かれた光をチャックテーブル36に保持された被加工物Wに導く対物レンズ65と、該対物レンズ65と上記第2の光分岐手段64との間に集光レンズ66が配設されている。この集光レンズ66は、第2の光分岐手段64から第3の経路6cに導かれた平行光を集光し対物レンズ65内に集光点を位置付けて対物レンズ65からの光を擬似平行光に生成する。このように対物レンズ65と第2の光分岐手段64との間に集光レンズ66を配設して対物レンズ65からの光を擬似平行光に生成することにより、チャックテーブル36に保持された被加工物Wで反射した反射光が対物レンズ65と集光レンズ66と第2の光分岐手段64およびコリメーションレンズ63を介して逆行する際に第1の経路6aを構成する光ファイバーに収束させることができる。なお、対物レンズ65はレンズケース651に装着されており、このレンズケース651はボイスコイルモータやリニアモータ等からなる第1の集光点位置調整手段650によって図2において上下方向即ちチャックテーブル36の保持面に対して垂直な集光点位置調整方向(Z軸方向)に移動せしめられるようになっている。この第1の集光点位置調整手段650は、後述する制御手段によって制御される。
【0027】
上記第4の経路6dには、第4の経路6dに導かれた平行光を反射して第4の経路6dに反射光を逆行せしめる反射ミラー67が配設されている。この反射ミラー67は、図示の実施形態においては上記対物レンズ65のレンズケース650に装着されている。
【0028】
上記第2の経路6bには、コリメーションレンズ68と回折格子69とレンズ手段70およびラインイメージセンサー71が配設されている。コリメーションレンズ68は、反射ミラー67によって反射し第4の経路6dと第2の光分岐手段64とコリメーションレンズ63および第1の経路6aを逆行して第1の光分岐手段62から第2の経路6bに導かれた反射光と、チャックテーブル36に保持された被加工物Wで反射し対物レンズ65と集光レンズ66と第2の光分岐手段64とコリメーションレンズ63および第1の経路6aを逆行して第1の光分岐手段62から第2の経路6bに導かれた反射光を平行光に形成する。上記回折格子69は、コリメーションレンズ68によって平行光に形成された上記両反射光の干渉を回折し、ラインイメージセンサー71に送る。ラインイメージセンサー71は、回折格子69によって回折した反射光の各波長における光強度を検出し、各波長(λ)の逆数(1/λ)の光強度信号を制御手段80に送る。上記レンズ手段70は図示の実施形態においては凸レンズからなり、回折格子69とラインイメージセンサー71との間に配設され、ラインイメージセンサー71で検出される波長域の間隔を各波長(λ)の逆数(1/λ)の間隔と等しい間隔になるように回折格子69によって回折した反射光の各波長を位置付ける。
【0029】
制御手段80は、ラインイメージセンサー71による検出信号から分光干渉波形を求め、該分光干渉波形と理論上の波形関数に基づいて波形解析を実行し、第3の経路6cにおけるチャックテーブル36に保持された被加工物Wまでの光路長と第4の経路6dにおける反射ミラー67までの光路長の光路長差を求め、該光路長差に基づいてチャックテーブル36の表面からチャックテーブル36に保持された被加工物Wの上面までの距離を求める。即ち、制御手段80は、ラインイメージセンサー71からの検出信号に基づいて図3に示すような分光干渉波形を求める。図3において横軸は反射光の波長(λ)の逆数(1/λ)を示し、縦軸は光強度を示している。
【0030】
以下、制御手段80が上記分光干渉波形と理論上の波形関数に基づいて実行する波形解析の一例について説明する。
上記第3の経路6cにおける第2の光分岐手段64のビームスプリッター641からチャックテーブル36の表面までの光路長を(L1)とし、上記第4の経路6dにおける第2の光分岐手段64のビームスプリッター641から反射ミラー67までの光路長を(L2)とし、光路長(L2)と光路長(L1)との差を光路長差(d=L2−L1)とする。なお、図示の実施形態において光路長差(d=L2−L1)は、例えば500μmに設定されているものとする。
【0031】
次に、制御手段80は、上記分光干渉波形と理論上の波形関数に基づいて波形解析を実行する。この波形解析は、下記数式1、数式2、数式3に示すフーリエ変換理論に基づいて実行する。
【0032】
【数1】

【0033】
【数2】

【0034】
【数3】

【0035】
上記数式において、λは波長、dは上記光路長差(L2−L1)、W(λi)は窓関数である。
上記数式1は、cosの理論波形と上記分光干渉波形(I(λn))との比較で最も波の周期が近い(相関性が高い)、即ち分光干渉波形と理論上の波形関数との相関係数が高い光路長差(d)を求める。また、上記数式2は、sinの理論波形と上記分光干渉波形(I(λn))との比較で最も波の周期が近い(相関性が高い)、即ち分光干渉波形と理論上の波形関数との相関係数が高い光路長差(d)を求める。そして、上記数式3は、数式1の結果と数式2の結果の平均値を求める。この数式1および数式2の演算において、上記ラインイメージセンサー71は回折格子69によって回折した反射光の各波長における光強度を検出し、各波長(λ)の逆数(1/λ)の光強度信号を制御手段80に送るようになっているので、制御手段80は上記演算を短時間で実行することができる。
【0036】
制御手段80は、上記数式1、数式2、数式3に基づく演算を実行することにより、図4に示すように信号強度が高い光路長差(d)を求める。図4において横軸は光路長差(d)を示し、縦軸は信号強度を示している。図4の(a)は光路長差(d)が630μmの場合であり、この場合チャックテーブル36の表面から被加工物Wの表面(上面)までの距離は図示の実施形態においては130μmである。図4の(b)は光路長差(d)が580μmの場合であり、この場合チャックテーブル36の表面から被加工物Wの表面(上面)までの距離は図示の実施形態においては80μmである。このように、上記分光干渉波形と理論上の波形関数に基づいて波形解析を実行して光路長差(d)を求めることにより、チャックテーブル36の表面から被加工物Wの上面までの距離を求めることができる。なお、制御手段80は、上記図4に示す解析結果を表示手段81に表示する。
【0037】
上述した実施形態においては、被加工物Wがシリコンウエーハのように上記波長領域の光を透過しない場合について説明したが、次に被加工物Wがサファイアやガラス等の光が透過する材料によって形成されている場合について説明する。
光が透過する被加工物Wの場合には、被加工物Wに照射された光は被加工物Wの表面(上面)で反射する反射光と被加工物Wの裏面(下面)で反射する反射光が生成され、この両反射光が対物レンズ65と集光レンズ66と第2の光分岐手段64とコリメーションレンズ63および第1の経路6aを逆行して第1の光分岐手段62から第2の経路6bに導かれる。一方、上述したように反射ミラー67によって反射した反射光も第4の経路6dと第2の光分岐手段64とコリメーションレンズ63および第1の経路6aを逆行して第1の光分岐手段62から第2の経路6bに導かれる。このようにして第2の経路6bに導かれた各反射光がコリメーションレンズ68によって平行光に形成され、更に回折格子69によって回折された回折光が集光レンズ70を介してラインイメージセンサー71に導かれる。そして、ラインイメージセンサー71は回折格子69によって回折した反射光の各波長(λ)の逆数(1/λ)における光強度を検出し、検出信号を制御手段80に送る。このように被加工物Wの表面(上面)と裏面(下面)および反射ミラー67によって反射した各反射光による分光干渉波形と理論上の波形関数に基づいて上述した波形解析を実行すると、図5に示すように信号強度が高い光路長差(d)が3個求められる。図5において横軸は光路長差(d)を示し、縦軸は信号強度を示している。図5に示す例においては、光路長差(d)が620μmの位置と光路長差(d)が500μmの位置と光路長差(d)が120μmの位置で信号強度が高く表されている。光路長差(d)が620μmの位置の信号強度(A)は被加工物Wの表面(上面)を表し、この場合チャックテーブル36の表面から被加工物Wの表面(上面)までの距離は図示の実施形態においては120μmである。また、光路長差(d)が500μmの位置の信号強度(B)は被加工物Wの裏面(下面)を表し、この場合チャックテーブル36の表面から被加工物Wの裏面(下面)までの距離は図示の実施形態においては零(0)である。一方、光路長差(d)が120μmの位置の信号強度(C)は被加工物Wの厚みを表しており、被加工物Wの厚みが120μmであることが直接求められる。なお、制御手段80は、上記図5に示す解析結果を表示手段81に表示する。
【0038】
図2に戻って説明を続けると、図1に示す位置計測兼レーザー照射ユニット5のユニットハウジング52に配設されレーザー光線照射手段9は、パルスレーザー光線発振手段91と、該パルスレーザー光線発振手段91から発振されたパルスレーザー光線を上記対物レンズ65に向けて方向変換するダイクロイックミラー92を具備している。パルスレーザー光線発振手段91は、YAGレーザー発振器或いはYVO4レーザー発振器からなるパルスレーザー光線発振器911と、これに付設された繰り返し周波数設定手段912とから構成されており、例えば波長が1064nmのパルスレーザー光線を発振する。ダイクロイックミラー92は、上記集光レンズ66と対物レンズ65との間に配設され、集光レンズ66からの光は通過させるが、パルスレーザー光線発振手段91から発振されたパルスレーザー光線を対物レンズ65に向けて方向変換する。従って、パルスレーザー光線発振手段91から発振されたパルスレーザー光線(LB)は、ダイクロイックミラー92によって90度方向変換されて対物レンズ65に入光し、対物レンズ65によって集光されてチャックテーブル36に保持された被加工物Wに照射される。従って、対物レンズ65は、レーザー光線照射手段9を構成する集光レンズとしての機能を有する。
【0039】
図1に戻って説明を続けると、図示の実施形態におけるレーザー加工機1は、ユニットホルダ51を可動支持基台42の装着部422に設けられた一対の案内レール423、423に沿って矢印Zで示す集光点位置調整方向(Z軸方向)即ちチャックテーブル36の保持面に対して垂直な方向に移動させるための第2の集光点位置調整手段53を具備している。第2の集光点位置調整手段53は、一対の案内レール423、423の間に配設された雄ネジロッド(図示せず)と、該雄ネジロッドを回転駆動するためのパルスモータ532等の駆動源を含んでおり、パルスモータ532によって図示しない雄ネジロッドを正転および逆転駆動することにより、上記位置計測兼レーザー照射ユニット5を案内レール423、423に沿ってZ軸方向に移動せしめる。なお、図示の実施形態においてはパルスモータ532を正転駆動することにより位置計測兼レーザー照射ユニット5を上方に移動し、パルスモータ532を逆転駆動することにより位置計測兼レーザー照射ユニット5を下方に移動するようになっている。
【0040】
上記位置計測兼レーザー照射ユニット5を構成するユニットハウジング52の前端部には、撮像手段95が配設されている。この撮像手段95は、可視光線によって撮像する通常の撮像素子(CCD)の外に、被加工物に赤外線を照射する赤外線照明手段と、該赤外線照明手段によって照射された赤外線を捕らえる光学系と、該光学系によって捕らえられた赤外線に対応した電気信号を出力する撮像素子(赤外線CCD)等で構成されており、撮像した画像信号を後述する上記制御手段80に送る。
【0041】
図示の実施形態におけるレーザー加工機1は以上のように構成されており、以下その作用について説明する。
図6にはレーザー加工される被加工物としての半導体ウエーハ10の斜視図が示されている。図6に示す半導体ウエーハ10は、シリコンウエーハからなっており、その表面10aに格子状に配列された複数のストリート101によって複数の領域が区画され、この区画された領域にIC、LSI等のデバイス102が形成されている。
【0042】
上述したレーザー加工機1を用い、上記半導体ウエーハ10のストリート101に沿ってレーザー光線を照射し、半導体ウエーハ10の内部にストリート101に沿って変質層を形成するレーザー加工の実施形態について説明する。なお、半導体ウエーハ10の内部に変質層を形成する際に、半導体ウエーハの厚さにバラツキがあると、上述したように屈折率の関係で所定の深さに均一に変質層を形成することができない。そこで、レーザー加工を施す前に、上述した位置計測装置6によってチャックテーブル36に保持された半導体ウエーハ10の上面位置を計測する。
即ち、先ず上述した図1に示すレーザー加工機1のチャックテーブル36上に半導体ウエーハ10の裏面10bを上にして載置し、該チャックテーブル36上に半導体ウエーハ10を吸引保持する。半導体ウエーハ10を吸引保持したチャックテーブル36は、加工送り手段37によって撮像手段95の直下に位置付けられる。
【0043】
チャックテーブル36が撮像手段95の直下に位置付けられると、撮像手段95および制御手段8によって半導体ウエーハ10のレーザー加工すべき加工領域を検出するアライメント作業を実行する。即ち、撮像手段95および制御手段8は、半導体ウエーハ10の所定方向に形成されているストリート101と、該ストリート101に沿って半導体ウエーハ10の位置計測兼レーザー照射ユニット5を構成する位置測定装置6の対物レンズ65との位置合わせを行うためのパターンマッチング等の画像処理を実行し、検出位置のアライメントを遂行する。また、半導体ウエーハ10に形成されている所定方向と直交する方向に形成されているストリート101に対しても、同様に検出位置のアライメントが遂行される。このとき、半導体ウエーハ10のストリート101が形成されている表面10aは下側に位置しているが、撮像手段95が上述したように赤外線照明手段と赤外線を捕らえる光学系および赤外線に対応した電気信号を出力する撮像素子(赤外線CCD)等で構成された撮像手段を備えているので、裏面10bから透かしてストリート101を撮像することができる。
【0044】
上述したようにアライメントが行われると、チャックテーブル36上の半導体ウエーハ10は、図7の(a)に示す座標位置に位置付けられた状態となる。なお、図7の(b)はチャックテーブル36即ち半導体ウエーハ10を図7の(a)に示す状態から90度回転した状態を示している。
【0045】
なお、図7の(a)および図7の(b)に示す座標位置に位置付けられた状態における半導体ウエーハ10に形成された各ストリート101の送り開始位置座標値(A1,A2,A3・・・An)と送り終了位置座標値(B1,B2,B3・・・Bn)および送り開始位置座標値(C1,C2,C3・・・Cn)と送り終了位置座標値(D1,D2,D3・・・Dn)は、その設計値のデータが制御手段80のメモリに格納されている。
【0046】
上述したようにチャックテーブル36上に保持されている半導体ウエーハ10に形成されたストリート101を検出し、検出位置のアライメントが行われたならば、チャックテーブル36を移動して図7の(a)において最上位のストリート101を位置計測兼レーザー照射ユニット5を構成する位置計測装置6の対物レンズ65の直下に位置付ける。そして、更に図8で示すようにストリート101の一端(図8において左端)である送り開始位置座標値(A1)(図7の(a)参照)を対物レンズ65の直下に位置付ける。そして、位置計測装置6を作動するとともに、チャックテーブル36を図8において矢印X1で示す方向に移動し、送り終了位置座標値(B1)まで移動する(高さ位置検出工程)。この結果、半導体ウエーハ10の図7の(a)において最上位のストリート101に沿って上面の高さ位置が位置計測装置6によって上述したように計測される。この計測された上記光路長差(d)および高さ位置は、上記制御手段80のメモリに格納される。このようにして、半導体ウエーハ10に形成された全てのストリート101に沿って高さ位置検出工程を実施し、各ストリート101における上面の高さ位置を制御手段80のメモリに格納する。
【0047】
以上のようにして半導体ウエーハ10に形成された全てのストリート101に沿って高さ位置検出工程を実施したならば、半導体ウエーハ10の内部にストリート101に沿って変質層を形成するレーザー加工を実施する。
このレーザー加工を実施するためには、先ずチャックテーブル36を移動して図7の(a)において最上位のストリート101を位置計測兼レーザー照射ユニット5を構成するレーザー光線照射手段9の集光レンズとして機能する対物レンズ65の直下に位置付ける。そして、更に図9の(a)で示すようにストリート101の一端(図9の(a)において左端)である送り開始位置座標値(A1)(図9の(a)参照)を対物レンズ65の直下に位置付ける。そして、レーザー光線照射手段9を構成する対物レンズ65から照射されるパルスレーザー光線の集光点Pを半導体ウエーハ10の裏面10b(上面)から所定の深さ位置に合わせる。次に、レーザー光線照射手段9を作動し、対物レンズ65からパルスレーザー光線を照射しつつチャックテーブル36を矢印X1で示す方向に所定の加工送り速度で移動せしめる(レーザー加工工程)。そして、図9の(b)で示すように対物レンズ65の照射位置がストリート101の他端(図9の(b)において右端)に達したら、パルスレーザー光線の照射を停止するとともに、チャックテーブル36の移動を停止する。このレーザー加工工程においては、制御手段80はメモリに格納されている半導体ウエーハ10のストリート101における裏面10b(上面)の高さ位置に基いて、第1の集光点位置調整手段650を制御し、位置計測兼レーザー照射ユニット5をZ軸方向(集光点位置調整方向)に移動し、レーザー光線照射手段9を構成する対物レンズ65を図9の(b)で示すように半導体ウエーハ10のストリート101における裏面10b(上面)の高さ位置に対応して上下方向に移動せしめる。この第1の集光点位置調整手段650の制御においては、制御手段80は上記光路長差(d)が所定の値になるように制御する。この結果、半導体ウエーハ10の内部には、図9の(b)で示すように裏面10b(上面)から所定の深さ位置に裏面10b(上面)と平行に変質層110が形成される。
【0048】
なお、上記レーザー加工工程における加工条件は、例えば次のように設定されている。
レーザー :YVO4 パルスレーザー
波長 :1064nm
繰り返し周波数 :100kHz
パルス出力 :2.5μJ
集光スポット径 :φ1μm
加工送り速度 :100mm/秒
【0049】
以上のようにして、半導体ウエーハ10の所定方向に延在する全てのストリート101に沿って上記レーザー加工工程を実行したならば、チャックテーブル36を90度回動せしめて、上記所定方向に対して直交する方向に延びる各ストリート101に沿って上記レーザー加工工程を実行する。このようにして、半導体ウエーハ10に形成された全てのストリート101に沿って上記レーザー加工工程を実行したならば、半導体ウエーハ10を保持しているチャックテーブル36は、最初に半導体ウエーハ10を吸引保持した位置に戻され、ここで半導体ウエーハ10の吸引保持を解除する。そして、半導体ウエーハ10は、図示しない搬送手段によって分割工程に搬送される。
【0050】
以上、本発明によるチャックテーブルに保持された被加工物の計測装置をレーザー加工機に適用した例を示したが、本発明による計測装置は切削ブレードを装備した切削加工機等の他の加工機に適用してもよい。
【符号の説明】
【0051】
2:静止基台
3:チャックテーブル機構
36:チャックテーブル
37:加工送り手段
374:加工送り量検出手段
38:第1の割り出し送り手段
4:レーザー光線照射ユニット支持機構
42:可動支持基台
43:第2の割り出し送り手段
5:高さ計測兼レーザー照射ユニット
53:集光点位置調整手段
6:位置計測装置
61:発光源
62:第1の光分岐手段
63:コリメーションレンズ
64:第2の光分岐手段
65:対物レンズ
66:集光レンズ
67:反射ミラー
68:コリメーションレンズ
69:回折格子
70:集光レンズ
71:ラインイメージセンサー
80:制御手段
9:レーザー光線照射手段
91:パルスレーザー光線発振手段
92:ダイクロイックミラー
10:半導体ウエーハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工機に装備されるチャックテーブルに保持された被加工物の位置を検出するチャックテーブルに保持された被加工物の計測装置において、
所定の波長領域を有する光を発する発光源と、
該発光源からの光を第1の経路に導くとともに該第1の経路を逆行する反射光を第2の経路に導く第1の光分岐手段と、
該第1の経路に導かれた光を平行光に形成するコリメーションレンズと、
該コリメーションレンズによって平行光に形成された光を第3の経路と第4の経路に分ける第2の光分岐手段と、
該第3の経路に配設され該第3の経路に導かれた光を該チャックテーブルに保持された被加工物に導く対物レンズと、
該第2の光分岐手段と該対物レンズとの間に配設され該第3の経路に導かれた平行光を集光し該対物レンズに集光点を位置付けて該対物レンズからの光を擬似平行光に生成する集光レンズと、
該第4の経路に配設され該第4の経路に導かれた平行光を反射して該第4の経路に反射光を逆行せしめる反射ミラーと、
該反射ミラーによって反射し該第4の経路と該第2の光分岐手段と該コリメーションレンズおよび該第1の経路を逆行して該第1の光分岐手段から該第2の経路に導かれた反射光と、該チャックテーブルに保持された被加工物で反射し該対物レンズと該集光レンズと該第2の光分岐手段と該コリメーションレンズおよび該第1の経路を逆行して該第1の光分岐手段から該第2の経路に導かれた反射光との干渉を回折する回折格子と、
該回折格子によって回折した反射光の所定の波長域における各波長の逆数の光強度を検出し、光強度信号を出力するイメージセンサーと、
該回折格子と該イメージセンサーとの間に配設され、該イメージセンサーで検出される波長域の間隔を各波長の逆数の間隔と等しい間隔になるように該回折格子によって回折した反射光の各波長を位置付けるレンズ手段と、
該イメージセンサーからの検出信号に基づいて分光干渉波形を求め、該分光干渉波形と理論上の波形関数に基づいてフーリエ変換理論に基づく波形解析を実行し、該第4の経路における該反射ミラーまでの光路長と該第3の経路における該チャックテーブルに保持された被加工物までの光路長との光路長差を求め、該光路長差に基づいて該チャックテーブルの表面から該チャックテーブルに保持された被加工物の上面までの距離を求める制御手段と、を具備している、
ことを特徴とするチャックテーブルに保持された被加工物の計測装置。
【請求項2】
被加工物を保持する保持面を有するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物にレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段と、該チャックテーブルに保持された被加工物の高さ位置を検出する計測装置と、を具備するレーザー加工機において、
該計測装置は、所定の波長領域を有する光を発する発光源と、
該発光源からの光を第1の経路に導くとともに該第1の経路を逆行する反射光を第2の経路に導く第1の光分岐手段と、
該第1の経路に導かれた光を平行光に形成するコリメーションレンズと、
該コリメーションレンズによって平行光に形成された光を第3の経路と第4の経路に分ける第2の光分岐手段と、
該第3の経路に配設され該第3の経路に導かれた光を該チャックテーブルに保持された被加工物に導く対物レンズと、
該第2の光分岐手段と該対物レンズとの間に配設され該第3の経路に導かれた平行光を集光し該対物レンズに集光点を位置付けて該対物レンズからの光を擬似平行光に生成する集光レンズと、
該第4の経路に配設され該第4の経路に導かれた平行光を反射して該第4の経路に反射光を逆行せしめる反射ミラーと、
該反射ミラーによって反射し該第4の経路と該第2の光分岐手段と該コリメーションレンズおよび該第1の経路を逆行して該第1の光分岐手段から該第2の経路に導かれた反射光と、該チャックテーブルに保持された被加工物で反射し該対物レンズと該集光レンズと該第2の光分岐手段と該コリメーションレンズおよび該第1の経路を逆行して該第1の光分岐手段から該第2の経路に導かれた反射光との干渉を回折する回折格子と、
該回折格子によって回折した反射光の所定の波長域における各波長の逆数の光強度を検出し、光強度信号を出力するイメージセンサーと、
該回折格子と該イメージセンサーとの間に配設され、該イメージセンサーで検出される波長域の間隔を各波長の逆数の間隔と等しい間隔になるように該回折格子によって回折した反射光の各波長を位置付けるレンズ手段と、
該イメージセンサーからの検出信号に基づいて分光干渉波形を求め、該分光干渉波形と理論上の波形関数に基づいてフーリエ変換理論に基づく波形解析を実行し、該第4の経路における該反射ミラーまでの光路長と該第3の経路における該チャックテーブルに保持された被加工物までの光路長との光路長差を求め、該光路長差に基づいて該チャックテーブルの表面から該チャックテーブルに保持された被加工物の上面までの距離を求める制御手段と、を具備し、
該レーザー光線照射手段は、レーザー光線を発振するレーザー光線発振手段と、該集光レンズと該対物レンズとの間に配設され該レーザー光線発振手段から発振されたレーザー光線を該対物レンズに向けて方向変換するダイクロイックミラーと、を具備している、
ことを特徴とするレーザー加工機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−196785(P2011−196785A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−62958(P2010−62958)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】