説明

デバイス

【課題】圧電デバイスのパッケージを十分な接合強度で気密に封止する水晶振動子の提供。
【解決手段】Auからなる平均粒径0.1〜1.0μmの金属粉末と有機溶剤とセルロース系樹脂材料とを88〜93重量%、5〜15重量%、0.01〜4.0重量%の割合で配合した金属ペースト封止材18,19,20を、水晶振動片5を一体に形成した中間水晶板2の外枠6上下面の導電金属薄膜9,10、13に塗布し、比較的低温で加熱し、1次焼結処理を行う。これによりヤング率9〜16GPa及び密度10〜17g/cm3のポーラス構造の1次焼結体を形成した後、中間水晶板の上下に上側及び下側基板3、4を重ね合わせ、それら基板の金属薄膜と外枠上下面の1次焼結体とを接触させて加熱加圧し、2次焼結処理を行う。これにより1次焼結体の金属粒子を緻密に再結晶化させて接合膜25〜27を形成し、パッケージを気密に接合封止する水晶振動子1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動子、共振子、発振器、フィルタ、センサ等の水晶デバイスにおいて、例
えば音叉型又は厚みすべり振動モードの水晶振動片をパッケージに気密に封止するための
金属ペースト封止材、及び該金属ペースト封止材を用いて封止した水晶デバイス並びにそ
の封止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圧電デバイスは、より一層の小型化・薄型化が要求されると共に、回路基板等へ
の実装に適した表面実装型が多く使用されている。一般に表面実装型の圧電デバイスは、
セラミック等の絶縁材料からなるパッケージ内に圧電振動片を封止する構造が採用されて
いる。この従来構造のパッケージは、セラミック材料の薄板を積層した箱型ベースのキャ
ビティ内に圧電振動片を実装し、該ベースにリッドを気密に接合して封止する。
【0003】
ベースとリッドとの接合は、リッドが金属製の場合、ベースの上端面に金属シールリン
グを配置してシーム溶接する方法(例えば、特許文献1)や、金属膜を被覆したベースの
上端面に金属ろう材を配置して加熱溶融させる方法(例えば、特許文献2を参照)が知ら
れている。リッドがセラミック又はガラス材料の場合には、ベースとリッド間に配置した
低融点ガラス又は樹脂を加熱溶融させる方法(例えば、特許文献3を参照)や、リッドの
下面にメタライズ層を形成しかつ共晶はんだを溶融させてセラミックケースに接合する方
法(例えば、特許文献4を参照)、リッドの接合部に形成した共晶用金属膜層を加熱溶融
させる方法(例えば、特許文献5を参照)が知られている。
【0004】
ところが、低融点ガラスから発生するガスやシーム溶接の高熱は、水晶振動片の周波数
特性を低下させたり劣化させる虞がある。また、低融点ガラスは鉛を含む場合が多く、環
境に影響を及ぼす虞がある点において好ましくない場合がある。そこで、水晶振動片と外
枠とを一体化した水晶板を形成し、その上下にそれぞれベース及び蓋として基板を接合す
ることにより小型化及び薄型化した構造の水晶振動子が提案されている。
【0005】
かかる構造を気密封止するために、例えば水晶振動子と一体をなす外枠の上下面に設け
た金属層とガラスからなる蓋及びケースとを陽極接合した方法が知られている(例えば、
特許文献6を参照)。また、圧電板及び基板の鏡面研磨した相互接合面を紫外線照射又は
酸素プラズマにより清浄化し、水分の吸着による−OH基の水素結合で接合する方法が知
られている(例えば、特許文献7を参照)。また、圧電基板のAu膜を形成した接合表面
と保護基板のAg膜を形成した接合表面とを、プラズマ処理後に重ね合わせかつ加圧加熱
して拡散接合する方法が知られている(例えば、特許文献8を参照)。
【0006】
更に、IDTを形成した圧電基板の主面に形成した金属膜とベース基板の主面に形成し
た金属膜とを、イオンビームやプラズマ照射による表面活性化後に加圧して直接接合する
弾性表面波デバイスが知られている(例えば、特許文献9を参照)。
【0007】
最近は、圧電振動子等の電子部品を収容する容器において、平均粒径1〜100nmの
金属微粒子とアミン等の分散材とからなるペースト状の封止部材を、セラミック材料で形
成された箱型の容器部と金属製のフタとの接合部に用いて気密封止する方法が提案されて
いる(例えば、特許文献10,11を参照)。特許文献10記載の方法は、封止部材をス
クリーン印刷又はインクジェット法により容器部又はフタに塗布し、両者を合わせて25
0℃以下の雰囲気で加熱することにより接合する。特許文献11記載の方法は、ペースト
状の封止部材をシート状にし、これをフタとして容器部に接合することにより気密に封止
する。
【0008】
また、水晶振動板と上板及び下板とを、表面に有機系被膜を被覆した平均粒径1〜10
0nmの金属微粒子を有機溶媒中に分散させた金属微粒子ペースト接合材により接合した
水晶振動子等の圧電デバイスが知られている(例えば、特許文献12を参照)。ペースト
接合材は、約200℃での加熱により有機系被膜を溶融させて金属微粒子同士を相互融着
即ち焼結させる、金属微粒子間及び金属膜間での金属間結合により、圧電デバイスを気密
に封止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−223606号公報
【特許文献2】特開平11−307661号公報
【特許文献3】特開2001−244772号公報
【特許文献4】特開平9−36690号公報
【特許文献5】特開昭54−78694号公報
【特許文献6】特開2000−68780号公報
【特許文献7】特開平7−154177号公報
【特許文献8】国際公開番号WO00/76066号パンフレット
【特許文献9】特開昭54−78694号公報
【特許文献10】特開2005−317793号公報
【特許文献11】特開2005−317794号公報
【特許文献12】特開2006−186748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述した金属微粒子からなるペースト状の封止部材又は接合材は、金属
微粒子に平均粒径100nm以下のナノ粒子を用いているので、それらの凝集を防止する
ために、比較的多量の有機溶剤が分散剤として必要である。そのため、封止時に有機溶剤
からガスが発生してパッケージ内部に残留したり、封止後に接合部に残留した有機溶剤か
ら経時的にガスが発生して、圧電振動片の品質や周波数特性を劣化させる虞が生じる。ま
た、一般に有機溶剤は取り扱いが困難であり、有機溶剤を多量に含む封止部材は大量生産
に適しておらず、また保管、運搬上の取り扱いにも注意を要するという問題がある。
【0011】
そこで本発明は、上述した従来の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、接
合時及び封止後に有機溶剤からガスが発生して圧電振動片に悪影響を与える虞が無く、か
つ十分な接合強度及び高い信頼性をもってパッケージを気密に封止できる圧電デバイスの
封止方法を提供することにある。
【0012】
更に本発明の目的は、かかる圧電デバイスの封止方法に使用され、かつ取り扱いが比較
的容易で大量生産に適した金属ペースト封止材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば、上記目的を達成するために、水晶振動片と、複数の構成部品からなる
パッケージとを備え、例えばAu、Ag、Pt、又はPdの1種又は2種以上からなる平
均粒径0.1〜1.0μmの金属粒子と有機溶剤と樹脂材料とを88〜93重量%、5〜
15重量%、0.01〜4.0重量%の割合で配合した金属ペースト封止材を用いて前記
構成部品を接合し、パッケージ内に水晶振動片を気密に封止した水晶デバイスが提供され
る。
【0014】
本発明の水晶デバイスに使用する金属ペースト封止材は、従来技術のナノミクロン粒子
を用いた金属ペーストよりも、金属粒子の粒径が大きくかつ有機溶剤の割合が大幅に少な
いので、例えば約200〜300℃の比較的低温で焼結しても、金属粒子を緻密化したポ
ーラス構造の焼結体を形成し、かつ有機溶剤及び樹脂材料を焼結体に実質的に残存しない
ように十分に蒸発させることが容易にできる。このポーラス構造の焼結体は、特にヤング
率が9〜16GPaかつ密度が10〜17g/cm3の場合に、比較的低い圧力で加圧し
ても、金属粒子をより緻密に再結晶化することができる。この再結晶化によって、水晶デ
バイスのパッケージは高い気密性を確保できる。
【0015】
更に、微量の樹脂材料を含むことにより適度な粘性を発揮し、スクリーン印刷やディス
ペンサ、インクジェット等の公知技術を用いて微細なパターンに塗布でき、かつ塗布後も
流れ出すことなくそのパターンを維持することができる。この形状性の良さは、低温での
焼結後も同様に発揮され、塗布したままのパターンが焼結体を加圧して再結晶化したとき
もに維持される。従って、水晶デバイスは、パッケージを封止する際にその封止幅をより
狭く設定できるから、それだけパッケージ寸法を小さくしてデバイス全体を小型化し、又
は外形寸法を維持しつつパッケージの内部容量を大きくすることができる。
【0016】
或る実施例では、前記複数の構成部品が、水晶振動片と外枠とを一体に結合した中間水
晶板と、金属ペースト封止材により中間水晶板の上下各面にそれぞれ接合された上側基板
及び下側基板とからなるパッケージ構造の水晶デバイスにおいて、上側基板が水晶振動片
を駆動するための集積回路を形成したシリコン材料からなりかつその下面に集積回路に接
続された端子を有し、中間水晶板がその外枠上面に上側基板の端子に対応する位置に設け
た端子を有し、上側基板の端子と中間水晶板の端子とを導電接続材料により直接接続する
ことにより、より小型化かつ低背化した水晶発振器が実現される。
【0017】
別の実施例では、前記複数の構成部品が、上部を開放した箱形をなしかつその内部に水
晶振動片を実装したベースと、金属ペースト封止材によりベース上端面に気密に接合され
たリッドとからなるパッケージ構造の水晶デバイスにおいて、リッドが水晶振動片を駆動
するための集積回路を形成したシリコン材料からなりかつその下面に集積回路に接続され
た端子を有し、ベースがその上端面にリッドの端子に対応する位置に設けた端子を有し、
リッドの端子とベースの端子とを導電接続材料により直接接続することにより、同様に、
より小型化かつ低背化した水晶発振器が実現される。
【0018】
従って、本発明の金属ペースト封止材を利用して、様々なパッケージ構造を有する水晶
等の圧電デバイスを気密に封止する方法が提供される。
【0019】
本発明のある側面によれば、水晶振動片と外枠とを一体に結合した中間水晶板の上下各
面に上側基板及び下側基板をそれぞれ接合し、それらの間に画定されるキャビティ内に水
晶振動片を気密に封止するために、中間水晶板が外枠の上面及び下面に金属薄膜を有し、
かつ上側基板及び前記下側基板がそれぞれ前記外枠との接合面に金属薄膜を有し、
外枠上面の金属薄膜又は上側基板の金属薄膜の少なくとも一方に、上述した本発明の金
属ペースト封止材を塗布し、加熱することにより、ヤング率9〜16GPa及び密度10
〜17g/cm3のポーラス構造を有する1次焼結体を形成する第1の1次焼結処理工程
と、
外枠下面の金属薄膜又は下側基板の金属薄膜の少なくとも一方に、同様に上述した本発
明の金属ペースト封止材を塗布し、加熱することにより、ヤング率9〜16GPa及び密
度10〜17g/cm3のポーラス構造を有する1次焼結体を形成する第2の1次焼結処
理工程と、
前記中間水晶板と前記上側基板とを、それらの前記1次焼結体を形成した一方の前記金
属薄膜と他方の前記金属薄膜とを接触させて重ね合わせ、前記1次焼結体を加圧してその
金属粒子を緻密に再結晶化させることにより、前記外枠において気密に接合する第1の2
次焼結処理工程と、
中間水晶板と下側基板とを、それらの1次焼結体を形成した一方の金属薄膜と他方の金
属薄膜とを接触させて重ね合わせ、該1次焼結体を加圧してその金属粒子を緻密に再結晶
化させることにより、外枠において気密に接合する第2の2次焼結処理工程とを含む水晶
デバイスの封止方法が提供される。
【0020】
上述したように、本発明の金属ペースト封止材は、塗布時だけでなく、1次及び2次焼
結処理後も十分かつ良好な形状性を維持し、かつ2次焼結処理後の再結晶化により高い気
密性を発揮するので、中間水晶板の外枠における封止幅を従来よりも大幅に狭くすること
が可能になる。そのため、中間水晶板の外枠寸法を小さくして水晶デバイス全体を小型化
し、又は外枠の外郭寸法を維持しつつその内形寸法を大きくし、その分だけ実装可能な水
晶振動片の外形寸法を大きくして、水晶デバイスの特性向上を図ることができる。
【0021】
上述したヤング率及び密度の1次焼結体は、元のペースト状態でなく、かつ或る程度の
軟らかさを有するので、2次焼結処理で中間水晶板と上側及び下側基板とを重ね合わせて
加圧する際に、その材料が飛散して水晶振動片に付着したり、デバイス内部に残存する虞
がない。そのため、水晶デバイスの振動特性が劣化することなく、維持される。
【0022】
また、1次焼結体の前記ポーラス構造は、1次焼結処理を比較的低温で行うことにより
形成することができる。そのため、中間水晶板に金属ペースト封止材を塗布して1次焼結
処理する場合にも、水晶振動片に及ぼす熱ストレスを抑制することができる。
【0023】
更に、1次焼結体には、金属ペースト封止材の有機溶剤及び樹脂材料が実質的に残存し
ていないから、2次焼結処理において1次焼結体から有機溶剤又は樹脂からのアウタガス
が発生したり、それが圧電デバイスの内部に残留することはない。更に、接合後も経時的
に有機溶剤又は樹脂のアウタガスが発生する虞がないから、水晶デバイスの品質及び周波
数特性を長期間に亘って良好に維持することができる。
【0024】
このパッケージ構造の水晶デバイスにおいて、或る実施例では、上側基板及び下側基板
が、中間水晶板と同じ水晶で形成されることにより、パッケージ全体が同じ熱膨張率にな
るので、環境温度の変化等による歪みが抑制され、信頼性が向上する。
【0025】
別の実施例では、上側基板がシリコン材料からなりかつ水晶振動片を駆動するための集
積回路と該集積回路に接続された端子とを備え、中間水晶板がその外枠上面に上側基板の
端子に接続される端子を有し、第1の2次焼結処理工程において中間水晶板と上側基板と
を重ね合わせる際に、上側基板の端子と中間水晶板の端子とを導電接続材料により直接接
続することにより、発振器として機能する水晶デバイスを比較的少ない工数で製造するこ
とができる。
【0026】
本発明の別の側面によれば、上部を開放した箱形をなしかつその内部に水晶振動片を実
装したベースの上端面にリッドを接合して気密に封止するために、ベースがその上端面に
金属面を有し、かつリッドがベース上端面との接合面に金属面を有し、
ベース上端面の金属面又はリッドの金属面の少なくとも一方に、同様に本発明の金属ペ
ースト封止材を塗布し、加熱することにより、ヤング率9〜16GPa及び密度10〜1
7g/cm3のポーラス構造を有する1次焼結体を形成する1次焼結処理工程と、
ベースの上にリッドを、それらの1次焼結体を形成した一方の金属面と他方の金属面と
を接触させて重ね合わせ、該1次焼結体を加圧してその金属粒子を緻密に再結晶化させる
ことにより、気密に接合する2次焼結処理工程とを含む水晶デバイスの封止方法が提供さ
れる。
【0027】
かかるパッケージ構造の水晶デバイスにおいても、同様に上述した本発明による封止方
法の優れた作用効果が得られる。特に、従来のろう材やシーム溶接でベースとリッドとを
接合する方法と異なり、ベースに実装した圧電振動片に与える熱ストレスの影響を抑制で
きる。また、従来のシーム溶接のように封止材が飛散して水晶振動片に付着する虞がない
から、水晶デバイスの振動特性を劣化させることなく、維持することができる。更に、2
次焼結処理により前記金属粒子を再結晶化させた接合部は、従来のろう材による接合のよ
うに高温環境下で再溶融する虞がないから、経時的に高い気密性が確保される。従って、
水晶デバイスを回路基板等に実装した後に、不良部品のリペアプロセスで加熱されても、
気密性を損なう虞がなく、高い信頼性を維持することができる。
【0028】
また、このパッケージ構造を有する水晶等の圧電デバイスにおいて、或る実施例では、
前記リッドがガラス板からなり、かつその一方の面に金属膜を形成することにより、ベー
ス上端面の1次焼結体と接合し又は金属ペースト封止材を塗布するための金属面を設ける
ことができる。この場合、リッド下面の一部の領域に金属膜を形成しないことにより、封
止後に外側からリッドを透過して照射されるレーザ光で水晶振動片の周波数を調整するこ
とができる。
【0029】
別の実施例では、前記リッドが金属板からなり、かつその一方の面をそのまま、ベース
上端面の1次焼結体と接合し又は金属ペースト封止材を塗布するための金属面として利用
することができ、金属膜を形成する必要がないので、有利である。
【0030】
更に、別の実施例では、リッドがシリコン材料からなりかつ水晶振動片を駆動するため
の集積回路と該集積回路に接続された端子とを備え、ベースがその上端面にリッドの端子
に接続される端子を有し、2次焼結処理工程においてベースの上にリッドを重ね合わせる
際に、リッドの端子とベースの端子とを導電接続材料により直接接続することにより、発
振器として機能する水晶デバイスを比較的少ない工数で製造することができる。
【0031】
また、或る実施例では、2次焼結処理工程において加圧すると同時に加熱することによ
り、1次焼結体の金属粒子をより良好にかつ効果的に再結晶化させて接合することができ
る。
【0032】
更に本発明の別の側面によれば、第1構成部品と第2構成部品とからなるパッケージを
有する電子部品において、第1構成部品と第2構成部品とを接合してそれらの間に画定さ
れるキャビティ内に電子素子等を気密に封止するために、第1構成部品及び第2構成部品
が相互の接合面にそれぞれ金属面を有し、
第1構成部品の金属面又は第2構成部品の金属面の少なくとも一方に、本発明の金属ペ
ースト封止材を塗布し、加熱することにより、ヤング率9〜16GPa及び密度10〜1
7g/cm3のポーラス構造を有する1次焼結体を形成する1次焼結処理工程と、
第1構成部品と第2構成部品とを、それらの1次焼結体を形成した一方の金属面と他方
の金属面とを接触させて重ね合わせ、該1次焼結体を加圧してその金属粒子を緻密に再結
晶化させることにより、気密に接合する2次焼結処理工程とを含む電子部品の封止方法が
提供される。
【0033】
これにより、本発明の金属ペースト封止材を用いて、圧電デバイス以外の様々な電子部
品をパッケージ内に気密に封止することができ、同様に本発明による水晶デバイスの封止
方法について上述した優れた作用効果が得られる。この場合にも、2次焼結処理工程にお
いて加圧すると同時に加熱することにより、1次焼結体の金属粒子をより良好にかつ効果
的に再結晶化させて接合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】(A)図及び(B)図は、本発明の方法に従って第1実施例の水晶振動子を封止する工程を示す断面図。
【図2】(A)図は第1実施例の水晶振動子を構成する中間水晶板の上面図、(B)図はその下面図、(C)図はその断面図。
【図3】(A)図は第1実施例の水晶振動子を構成する上側基板の下面図、(B)図はその断面図。
【図4】(A)図は第1実施例の水晶振動子を構成する下側基板の上面図、(B)図はその断面図。
【図5】(A)図〜(C)図は、図1の封止工程において金属ペースト封止材がペースト状態から再結晶化する過程を模式的に示す部分拡大断面図。
【図6】(A)図は本発明の方法を適用した水晶振動子の製造工程において、一体に貼り合わせる3枚の水晶ウエハを示す概略斜視図、(B)図は金属ペースト封止材を塗布した中間水晶ウエハを示す部分拡大断面図。
【図7】(A)図は3枚の水晶ウエハを接合する要領を示す説明図、(B)図は3枚の水晶ウエハの接合体を示す概略斜視図。
【図8】金属ペースト材を塗布した図6の中間水晶ウエハを示す部分拡大平面図。
【図9】(A)図は本発明の方法により第2実施例の水晶振動子を封止する工程を示す断面図、(B)図は封止した第2実施例の水晶振動子を示す断面図。
【図10】第2実施例の水晶振動子のベースの平面図。
【図11】第2実施例の水晶振動子のリッドの下面図。
【図12】本発明を適用した水晶発振器の断面図。
【図13】図12の水晶発振器のベースの平面図。
【図14】図12の水晶発振器のリッドの下面図。
【図15】(A)、(B)図は図12の水晶発振器の封止工程を示す部分拡大断面図。
【図16】本発明を適用した別の水晶発振器の断面図。
【図17】図16の水晶発振器の中間水晶板の上面図。
【図18】図16の水晶発振器の上側基板の下面図。
【図19】本発明を適用した音叉型水晶振動子の断面図。
【図20】(A)図は図19の水晶振動子の中間水晶板の上面図、(B)図はその下面図。
【図21】図19の水晶振動子の上側基板の下面図。
【図22】図19の水晶振動子の下側基板の上面図。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下に、添付図面を参照しつつ、本発明の好適な実施例について詳細に説明する。
先ず、本発明による金属ペースト封止材は、金属粒子と有機溶剤と樹脂材料とから構成
される。前記金属粒子は、例えばAu、Ag、Pt、Pdの1種又は2種以上からなる平
均粒径0.1〜1.0μmのサブミクロン粒子である。前記有機溶剤は、約200℃の比
較的低温で蒸発し得るエステルアルコール等を使用する。前記樹脂材料は、前記金属ペー
スト封止材に或る程度の粘度を与えるために添加され、例えばセルロース系樹脂材料を使
用する。前記金属ペースト封止材の配合は、金属粉末88〜93重量%、有機溶剤5〜1
5重量%、樹脂材料0.01〜4.0重量%の割合で設定する。
【0036】
本発明の金属ペースト封止材は、従来技術のナノミクロン粒子を用いた金属ペーストよ
りも、金属粒子の粒径が大きくかつ有機溶剤の割合が大幅に少ないので、例えば約200
〜300℃の比較的低温で焼結することにより、後述するように金属粒子を融着させて緻
密化したポーラス構造の焼結体を容易に形成することができる。しかも、低温での焼結処
理によっても、金属ペースト封止材中の有機溶剤及び樹脂材料を、焼結体に実質的に残存
しないように十分に蒸発させることができる。また、このポーラス構造の焼結体は、比較
的低い圧力で加圧しても、前記金属粒子をより緻密化して再結晶化することが容易である
。この再結晶化によって高い気密性を確保できるので、特に圧電デバイスや電子部品のパ
ッケージを真空封止するのに適している。
【0037】
更に、本発明の金属ペースト封止材は、微量の樹脂材料を含むことにより、スクリーン
印刷やディスペンサ、インクジェット等の公知技術を用いて容易に所望の微細なパターン
に塗布でき、かつ塗布後も流れ出すことなくそのパターンを維持し得る適度な粘性を有す
る。この形状性の良さは、低温での焼結後も同じであり、塗布したときのパターンが焼結
体を加圧して再結晶化したときもそのまま維持される。従って、圧電デバイス等のパッケ
ージを封止する際に、その封止幅をより狭く設定することができる。
【0038】
図1(A)、(B)は、本発明の方法により第1実施例の水晶振動子を封止する工程を
説明している。本実施例の水晶振動子1は、水晶振動片を有する中間水晶板2、パッケー
ジの蓋となる上側基板3、及びベースとなる下側基板4を有する。中間水晶板2はATカ
ットの水晶板で形成され、その上下に上側及び下側基板3,4を積層して一体に接合され
る。上側及び下側基板3,4は、同様に水晶薄板で形成するのが好ましく、またはガラス
材料やシリコンで形成することもできる。
【0039】
中間水晶板2は、図2(A)〜(C)に示すように、全体として一様な厚さの水晶薄板
からなり、厚みすべりモードの水晶振動片5と、その基端部5aで一体に結合された外枠
6とを有する。水晶振動片5の上下各面には励振電極7,8が形成され、それぞれ基端部
5aから配線膜7a,8aにより引き出されて、外枠6の上面及び下面の全周に亘って形
成された導電金属薄膜9,10と電気的に接続されている。外枠6の水晶振動片5を結合
した側の長手方向端部にはスルーホール11が設けられ、該長手方向端部の下面には、水
晶素面の領域12で導電金属薄膜10から分離された導電金属薄膜13が形成され、スル
ーホール11内部の導電膜を介して上面の導電金属薄膜9と電気的に接続されている。
【0040】
上側基板3は、図3(A)、(B)に示すように、中間水晶板2との対向面即ち下面に
凹部3aが形成されている。上側基板3下面の凹部3aを囲繞する周辺部が、中間水晶板
2との接合面を構成し、前記外枠の導電金属薄膜9に対応する金属薄膜14で被覆されて
いる。
【0041】
下側基板4は、図4(A)、(B)に示すように、同様に中間水晶板2との対向面即ち
上面に凹部4aが形成されている。下側基板4上面の凹部4aを囲繞する周辺部が、中間
水晶板2との接合面を構成し、前記外枠の導電金属薄膜10に対応する金属薄膜15と、
該金属薄膜から水晶素面の領域16で分離して、前記外枠の導電金属薄膜13に対応する
金属薄膜17とが形成されている。また、下側基板4の下面には、外部への引出電極(図
示せず)が形成されている。
【0042】
前記中間水晶板の各導電金属薄膜9,10,13及び前記上側、下側基板の金属薄膜1
4,15,17は、例えばCr膜、Ni膜、Ni/Cr膜、Ti膜又はNi−Cr膜を下
地膜として、その上にAu膜を積層して形成するのが好ましい。別の実施例では、これら
の金属薄膜をAl、Ag、Cu、Pd、Pt、Sn、Ti、Al/Si、又はNi/Cr
で形成することができる。これら金属薄膜は、スパッタリング、蒸着、めっき、ダイレク
トめっきなどの公知方法を用いて又はそれらを組み合せて容易に成膜される。
【0043】
本発明の方法によれば、図1(A)に示すように、中間水晶板2の外枠6上下面の各導
電金属薄膜9,10,13上に上述した本発明の金属ペースト封止材18,19,20を
塗布する。前記金属ペースト封止材の塗布は、例えばスクリーン印刷、ディスペンサ、又
はインクジェット等の公知方法により行う。図5(A)は、導電金属薄膜9上に塗布した
金属ペースト封止材18の状態を例示している。同図に示すように、金属ペースト封止材
18は、金属粒子21が有機溶剤22中に略一様に分散している。更に、有機溶剤22中
には樹脂23が一様に分散し、前記金属ペースト封止材に或る程度の粘性を与えている。
この粘性によって、本発明の金属ペースト封止材は十分な形状性を発揮するので、高精度
なパターンに塗布しかつそれを維持することができる。例えば、前記金属粒子がAuの場
合、金属ペースト封止材はスクリーン印刷によって、最小パターン幅0.05mm、最小厚
み10μm程度まで微細に形成できる。
【0044】
次に、中間水晶板2を例えばホットプレート、クリーンオーブン、ベルト炉等の公知手
段を用いて約200〜300℃の比較的低温で短時間、例えば約10〜30分加熱するこ
とにより、1次焼結処理を行う。この1次焼結処理によって、前記金属ペースト封止材の
金属粒子を焼結させ、1次焼結体を形成する。図5(B)に例示するように、1次焼結体
24は、前記金属ペースト封止材から有機溶剤22及び樹脂23が蒸発して、隣接する金
属粒子21同士がその間に僅かな隙間を残しつつ融着して緻密に接するポーラス構造を構
成する。更に前記1次焼結体は、下側の前記各金属薄膜との界面においても金属粒子21
が緻密化し、該金属薄膜と結合する。樹脂23は、1次焼結処理によって完全に蒸発せず
に、その一部が残存することがある。その場合でも、残存した樹脂は、金属粒子21の隙
間に入り込むので、上述したポーラス構造を構成するのに何ら影響しない。
【0045】
本発明によれば、前記ポーラス構造は、1次焼結体24のヤング率が9〜16GPa、
密度が10〜17g/cm3であると、最も好都合である。金属粒子21は、1次焼結処
理の温度が低いと元の球形を比較的維持するが、高温になるほど、原形を留めない位に表
面の焼結が進行して互いに融着することが確認された。また、1次焼結体24のヤング率
及び密度は、1次焼結処理の温度が低いほど低く、高温になるほど高くなる。また、1次
焼結処理の加熱は比較的低温であるので、それが中間水晶板2の水晶振動片5に及ぼす熱
ストレスを抑制することができる。
【0046】
次に、中間水晶板2の上面及び下面に上側及び下側基板3、4をそれぞれ互いに位置合
わせして重ね合わせ、前記1次焼結体と金属薄膜14,15,17とを接触させて一様に
加圧することにより、2次焼結処理を行う。上述したヤング率及び密度を有する1次焼結
体24は、元のペースト状態ではなく、しかも適当な軟らかさを有するので、加圧によっ
てその材料が飛散して水晶振動片5に付着したり、キャビティ28内部に残存する虞がな
い。そのため、封止後の水晶振動片1の振動特性が劣化することなく、維持される。
【0047】
2次焼結処理の加圧条件は、中間水晶板や基板の寸法、接合面の大きさ、使用する前記
金属ペースト封止材の量や厚さによって異なるが、本実施例では、例えば約39〜176
N/mm2の圧力を約10分間印加する。更に、例えば約200〜350℃の温度で加熱
しながら加圧することによって、前記2次焼結処理をより良好に行うことができる。この
加熱も比較的低温であるので、中間水晶板2の水晶振動片5に及ぼす熱ストレスは抑制さ
れる。
【0048】
この2次焼結処理によって、前記1次焼結体は、前記金属粒子がより緻密に融着して、
図5(B)に示すポーラス構造の前記隙間を完全に圧潰し、図5(C)に例示するように
再結晶化した接合膜25を形成する。接合膜25〜27は、前記上側及び下側基板の各金
属薄膜14,15,17との界面においても、これら金属薄膜と前記金属粒子が緊密に結
合して一体化する。これにより、中間水晶板2と上側及び下側基板3、4とがそれぞれ高
い気密性をもって接合され、それらの間に画定されるキャビティ28内に、水晶振動片5
が基端部5aで片持ちに浮いた状態で封止される。
【0049】
前記2次焼結処理を真空雰囲気又は不活性ガス雰囲気内で行うと、水晶振動片5を真空
封止又はガス封止することができる。接合される中間水晶板2の前記1次焼結体と上側及
び下側基板3,4の前記金属薄膜とを、2次焼結処理前に公知のプラズマ処理やイオンビ
ーム処理などで表面活性化、清浄化しておくと、より良好にかつ安定して接合でき、接合
信頼性が向上する。
【0050】
上述したように、本発明の金属ペースト封止材は、塗布時だけでなく、1次及び2次焼
結処理後も十分かつ良好な形状性を維持し、かつ2次焼結処理後に金属粒子の再結晶化に
より高い気密性を発揮するので、外枠6における封止幅を従来よりも大幅に狭くすること
が可能になる。その結果、中間水晶板2の外形寸法を小さくして水晶振動子1全体を小型
化することができる。また、外枠6の外郭寸法を維持しつつキャビティ28の寸法を大き
くし、その分だけ実装可能な水晶振動片5の外形寸法を大きくして、水晶振動子の特性を
向上させることができる。
【0051】
また、本発明によれば、前記1次焼結処理で前記金属ペースト封止材の有機溶剤及び樹
脂が十分に蒸発しているので、2次焼結処理において1次焼結体から前記有機溶剤又は樹
脂のアウタガスが発生したり、水晶振動子1のキャビティ28内に残留することはない。
また、接合後に接合膜25〜27から経時的に前記有機溶剤又は樹脂のアウタガスが発生
する虞もない。従って、水晶振動子1の品質及び周波数特性を長期間に亘って良好に維持
することができる。
【0052】
別の実施例では、前記上側及び下側基板の金属薄膜14,15,17にも、前記金属ペ
ースト封止材を塗布することができる。これら金属薄膜上の前記金属ペースト封止材は、
中間水晶板2の場合と同様に加熱することにより1次焼結処理を行い、前記ポーラス構造
の1次焼結体を形成する。次に、上側及び下側基板3、4と中間水晶板2とをそれぞれ位
置合わせして重ね合わせ、それらの1次焼結体同士を接触させて、上記実施例と同様に加
圧することにより、2次焼結処理を行う。1次焼結体同士の界面では、金属粒子が緊密に
融着して再結晶化し、実質的に1つの接合膜を形成する。従って、中間水晶板2と上側及
び下側基板3、4とをより強固に接合することができる。
【0053】
また、別の実施例では、前記金属ペースト封止材を前記中間水晶板ではなく、前記上側
及び下側基板の金属薄膜14,15,17にのみ塗布することもできる。前記1次焼結処
理は前記上側及び下側基板についてのみ行うので、その加熱温度が中間水晶板2の水晶振
動片に影響を与える虞はない。
【0054】
更に別の実施例では、中間水晶板2と上側基板3又は下側基板4の一方を先に接合し、
その後に他方を接合することができる。この後の接合工程では、2次焼結処理を真空又は
所定のガス雰囲気内で行うことにより、水晶振動片5を真空封止又はガス封止することが
できる。更にこの2次焼結処理を行う際に、水晶ウエハを適当な温度で加熱しながら加圧
することもできる。
【0055】
次に、本発明の方法を適用して、多数の水晶振動子1を一括して製造する工程を説明す
る。先ず、図6(A)に示すように、複数の中間水晶板2を縦及び横方向に連続して配置
した大型の中間水晶ウエハ30を準備する。各中間水晶板2の水晶振動片5及び外枠6の
形状は、水晶ウエハを例えばフォトエッチングすることにより形成する。中間水晶ウエハ
30上下両面の水晶振動片5及び外枠6に対応する領域には、導電材料を蒸着、スパッタ
リングなどで成膜しかつパターニングすることにより、前記励振電極、配線膜及び導電金
属薄膜が形成される。
【0056】
これと並行して、複数の上側基板3及び下側基板4をそれぞれ縦及び横方向に連続して
配置した大型の上側水晶ウエハ31及び下側水晶ウエハ32を準備する。両水晶ウエハ3
1,32には、それぞれ中間水晶ウエハ30との対向面に複数の凹部3a、4aが、例え
ばエッチングまたはサンドブラスト加工などにより形成される。更に両水晶ウエハ31,
32には、上側基板3下面の金属薄膜14及び下側基板4上面の金属薄膜15、17にそ
れぞれ対応する金属薄膜(図示せず)が、中間水晶ウエハ30との対向面に蒸着、スパッ
タリングなどにより形成される。下側水晶ウエハ32には、縦及び横方向に直交する下側
基板4の外郭線の交点にそれぞれ円形貫通孔33が形成される。下側水晶ウエハ32の下
面には、各下側基板4下面の外部への引出電極が形成される。
【0057】
次に、図6(B)に示すように、本発明の金属ペースト封止材34、35を、中間水晶
ウエハ30上下両面の外枠6に対応する領域の前記導電金属薄膜上に塗布する。金属ペー
スト封止材34、35は、上述した配合により適度な粘性を有するので、スクリーン印刷
によって所望の微細なパターンに容易に塗布しかつ該パターンを維持することができる。
別の実施例では、図6(B)に想像線で示すようにディスペンサ36を用いて連続的に、
又はインクジェット法により連続するドット状に塗布することができる。本発明の金属ペ
ースト封止材は、上述した配合によって、直径0.1mm、厚さ15μmのドット状に塗
布することが可能である。
【0058】
更に別の実施例では、前記金属ペースト封止材を塗布すべき領域を画定するようにレジ
ストフレームを形成し、その内側に前記金属ペースト封止材を充填して塗布することがで
きる。このレジストフレームは、フォトリソグラフィ技術を利用してフォトレジストをパ
ターニングすることにより高精度に形成でき、前記金属ペースト封止材の塗布後に又は1
次焼成処理後に容易に除去することができる。
【0059】
次に、中間水晶ウエハ30を、図1(A)の場合と同様にホットプレート等により約2
00〜300℃の温度で所定の時間加熱して、1次焼結処理を行う。これにより、金属ペ
ースト封止材34、35を焼結して、前記ポーラス構造の1次焼結体を形成する。この中
間水晶ウエハ30の上下各面に、図7(A)に示すように上側及び下側水晶ウエハ31,
32をそれぞれ位置合わせして重ね合わせ、図1(B)の場合と同様に加圧して、2次焼
結処理を行う。
【0060】
前記2次焼結処理は、前記水晶ウエハを例えば約200〜350℃の温度で加熱しなが
ら行うことができる。また、前記2次焼結処理は、真空又は所定のガス雰囲気内で行うこ
とにより、同様に各水晶振動片5を真空封止又はガス封止することができる。更に、前記
中間水晶ウエハの上下両面の1次焼結体と前記上側及び下側水晶ウエハの各金属薄膜を、
適当な反応ガスでプラズマ処理し又はイオンビームを照射して一様に表面活性化すること
によって、より良好かつ安定した接合及び接合信頼性の向上を図ることができる。
【0061】
このようにして、中間水晶ウエハ30と上側及び下側水晶ウエハ31,32とを気密に
接合した図7(B)の水晶ウエハ積層体37が得られる。同図に示すように、水晶ウエハ
積層体37を縦横に直交する水晶振動子の外郭線38に沿って、ダイシングなどにより切
断分割して個片化することにより、図1に示す水晶振動子1が完成する。各下側基板4底
面の前記引出電極は、ダイシング前の水晶ウエハ積層体37の状態でスパッタなどにより
形成することもできる。
【0062】
図8に示すように、本発明の金属ペースト封止材を図6(A)の中間水晶ウエハ30に
スクリーン印刷で塗布した。金属ペースト封止材39は、ダイシングのために外郭線38
の両側に一定幅の領域30aを残すように、各外枠6に矩形枠状の微細なパターンに形成
した。金属ペースト封止材39の組成及び物性を次のように設定した。
組成: 金属(Au)粒子含有量: 88wt%、平均粒子径0.3μm
有機溶剤含有量: 10.4wt%
樹脂含有量: 1.6wt%
物性: 粘度: 190Pa・s
チクソ比: 4.9
この結果金属ペースト封止材39は、外寸2.95mm(L1)×1.25mm(W1)、
内寸2.85mm(L2)×1.15mm(W2)、線幅0.05mmの矩形枠状に微細パ
ターンを形成することができた。
【0063】
別の実施例では、中間水晶ウエハ30と上側水晶ウエハ31又は下側水晶ウエハ32の
一方を先に接合し、その後に他方を接合することができる。この場合、3枚目の前記水晶
ウエハを接合する後の工程で、2次焼結処理を真空又は所定のガス雰囲気内で行うことに
より、各水晶振動片5を真空封止又はガス封止することができる。
【0064】
また、先に2枚の前記水晶ウエハを接合した状態で、水晶振動片5毎に特性試験及び周
波数の測定を行うことができる。更に、例えばレーザ光の照射等により各水晶振動子5の
励振電極を部分的に削除して、その周波数を個別に調整することができる。
【0065】
この場合、中間水晶ウエハ30は、予め各外枠6の上下各面に前記導電金属薄膜を、水
晶振動子の外郭線38に沿ってダイシングする線幅分だけ除いてパターニングする。同様
に上側及び下側水晶ウエハ31,32は、予めそれぞれ前記上側及び下側基板の各金属薄
膜14,15,17に対応する前記金属薄膜を、水晶振動子の外郭線38に沿うダイシン
グの線幅だけ除いてパターニングする。金属ペースト封止材34、35は、上述したよう
に形状性が良くかつ前記導電金属薄膜上にのみ塗布される。従って、中間水晶ウエハ30
の各水晶振動片5は、1次及び2次焼結処理の前後においても、ウエハの状態で隣接する
他の水晶振動片から電気的に分離独立している。
【0066】
本発明は、上記第1実施例と異なる様々なパッケージ構造の圧電デバイスについても、
同様に適用することができる。図9(A)、(B)は、本発明の方法により第2実施例の
水晶振動子を封止する工程を説明している。本実施例の水晶振動子41は、絶縁材料から
なる矩形箱状のベース42と平板状のリッド43とからなるパッケージ構成を有する。ベ
ース42は、図9(A)及び図10に示すように、複数のセラミック材料薄板42a〜4
2cを積層して、上部を開放した箱型に形成する。ベース42内部に画定されるキャビテ
ィ44には、水晶振動片45が実装されている。
【0067】
本実施例の水晶振動片45は、例えばATカット水晶板からなる厚みすべりモードの振
動片であり、その上下各面には励振電極46,46が形成され、かつ一方の端部即ち基端
部45aには、左右に前記各励振電極からの引出電極47,47が形成されている。ベー
ス42のキャビティ44底面には、長手方向の一方の端部付近に1対の電極パッド48,
48が形成されている。水晶振動片45は、基端部45aにおいて各引出電極47,47
を対応する電極パッド48,48に導電性接着剤49で固定することにより、電気的に接
続されかつ片持ちで概ね水平に支持されている。
【0068】
本実施例のリッド43は、図11に示すように、ガラス材料からなる平坦な矩形の薄板
50で形成される。リッド43の下面には、金属薄膜51が全面に被覆されている。金属
薄膜51は、図11に想像線で示すように、リッド43下面の周辺部に沿って、ベース4
2上端面と接合される領域43aにのみ形成しても良い。別の実施例では、リッド43を
水晶やセラミック等の絶縁材料やコバール、SUS等の金属材料の薄板で形成することが
できる。リッド43が金属材料からなる場合、その材質に応じて金属薄膜51を省略し、
その金属面をそのまま接合面として使用することもできる。
【0069】
ベース42の上端面には、金属薄膜52が被着されている。リッド43及びベース42
の各金属薄膜51,52は、第1実施例の上側及び下側基板3,4と同様に、スパッタリ
ング、蒸着又はめっき等の方法で、例えばCr膜、Ni膜、Ni/Cr膜、Ti膜又はN
i−Cr膜からなる下地膜の上にAu膜を積層して形成するのが好ましく、またはAl、
Ag、Cu、Pd、Pt、Sn、Ti、Al/Si、又はNi/Crで形成することもで
きる。
【0070】
本発明の方法によれば、図9(A)に示すように、ベース42上端面の金属薄膜52上
に上述した本発明の金属ペースト封止材53を塗布する。前記金属ペースト封止材の塗布
は、同様にスクリーン印刷、ディスペンサ、又はインクジェット等の方法により行う。次
に、第1実施例の場合と同様に、ベース42を約200〜300℃の比較的低温で加熱す
ることにより、1次焼結処理を行う。これによって、金属ペースト封止材53は、その金
属粒子が焼結して、前記ポーラス構造を有する1次焼結体を形成する。1次焼結処理の加
熱は比較的低温であるので、それがベース42内の水晶振動片45に及ぼす熱ストレスは
抑制される。
【0071】
この状態で、水晶振動片45の特性試験及び周波数の測定を行い、更にレーザ光の照射
等により励振電極46を部分的に削除して周波数を調整することができる。金属ペースト
封止材53の塗布及び1次焼結処理は、水晶振動片45をベース42に実装する前又は後
のいずれに行っても良い。
【0072】
次に、ベース42の上端面にリッド43を位置合わせして配置し、第1実施例の場合と
同様の条件で加圧することにより、2次焼結処理を行う。前記1次焼結体は、上述したよ
うに適当な軟らかさを有するので、加圧によってその材料が飛散して水晶振動片45に付
着したり、キャビティ44内部に残存する虞がない。そのため、封止後の水晶振動片41
の振動特性が劣化することなく、維持される。
【0073】
図9(B)に示すように、2次焼結処理によって、前記1次焼結体は、前記金属粒子が
より緻密に融着して再結晶化した接合膜54を形成する。接合膜54は、前記リッドの金
属薄膜51との界面においても、該金属薄膜と前記金属粒子が緊密に結合して一体化し、
ベース42とリッド43とを高い気密性をもって接合する。前記金属粒子が再結晶化した
接合膜54は、従来のろう材による接合部のように高温環境下で再溶融する虞がないから
、経時的に高い気密性が確保される。従って、水晶振動子41を回路基板等に実装した後
に不良部品のリペアプロセスで加熱されても、気密性を損なう虞がなく、高い信頼性を維
持することができる。
【0074】
更に、前記2次焼結処理は、例えば約200〜350℃の温度で加熱しながら加圧する
と、より良好に行うことができる。この加熱も比較的低温であるので、水晶振動片45に
及ぼす熱ストレスは抑制される。前記2次焼結処理は、真空又は所望のガス雰囲気内で行
い、水晶振動片45を真空封止又はガス封止することができる。
【0075】
本実施例においても、本発明の金属ペースト封止材が、塗布時だけでなく1次及び2次
焼結処理後も発揮する良好な形状性と、2次焼結処理後の金属粒子の再結晶化による高い
気密性とによって、ベース42上端面における封止幅を従来よりも大幅に狭くすることが
可能になる。その結果、ベ−ス42の外形寸法を小さくして水晶振動子41全体を小型化
することができる。また、ベ−ス42の外郭寸法を維持しつつキャビティ44の寸法を大
きくし、その分だけ実装可能な水晶振動片45の外形寸法を大きくして、水晶振動子の特
性を向上させることができる。
【0076】
同様に、本発明の金属ペースト封止材をベース42上端面だけでなく、リッド43の金
属薄膜51にも塗布し、1次焼結処理により前記ポーラス構造の1次焼結体を形成し、こ
れをベース43上端面の前記1次焼結体と接触させて2次焼結処理を行うことができる。
また、本発明の金属ペースト封止材をリッド43の金属薄膜51にのみ塗布し、1次焼結
処理により前記ポーラス構造の1次焼結体を形成し、これをベース42上端面の金属薄膜
52と直接接触させて2次焼結処理を行うことができる。この場合、前記1次焼結処理は
リッド43についてのみ行うので、その加熱温度がベース42に実装した水晶振動片45
に影響を与える虞はない。
【0077】
本発明は、上記第1及び第2実施例と異なるパッケージ構造の圧電デバイスについても
同様に適用することができる。図12は、第2実施例に類似したパッケージ構造の水晶発
振器61を示している。水晶発振器61は、第2実施例のベース42と同様に、複数のセ
ラミック材料薄板を積層しかつ上部を開放した箱型に形成され、その内部に画定されるキ
ャビティ64内に水晶振動片65が実装されている。
【0078】
水晶振動片65は、ATカット水晶板からなる厚みすべりモードの振動片であり、その
上下各面に励振電極66,66が形成され、かつ一方の端部即ち基端部65aに前記各励
振電極からの引出電極67,67が形成されている。ベース62のキャビティ64底面に
は、その長手方向の一方の端部付近に1対の電極パッド68,68が形成されている。水
晶振動片65は、基端部65aにおいて前記各引出電極を対応する電極パッド68,68
に導電性接着剤69で固定することにより、電気的に接続されかつ片持ちで概ね水平に支
持されている。
【0079】
図13に示すように、ベース62の上端面には、その外周に沿って所定幅の金属薄膜7
0が被着されている。更に、ベース62の長手方向両端部の上端面には、金属薄膜70の
内側にかつ該金属薄膜から離隔して、それぞれボンディングパッド71,72が形成され
ている。前記各ボンディングパッドは、図示しない配線により水晶振動片65の前記励振
電極又は外部の電源、回路等に接続される端子として使用される。
【0080】
本実施例のリッド63は、シリコン材料の平坦な矩形薄板で形成される。図14に示す
ように、リッド63の下面には、その外周に沿ってベース62上端面と接合される部分に
所定幅の金属被膜73が被着されている。金属被膜73の内側には、リッド63の長手方
向両端部にボンディングパッド74,75が、それぞれベース62上端面のボンディング
パッド71,72に直接接続する端子として、それらに対応する位置に設けられている。
更に、リッド63の金属被膜73の内側領域には、水晶振動片65の駆動を制御するため
の集積回路及びそれとボンディングパッド74,75とを接続する配線が形成されている
(図示せず)。
【0081】
ベース62とリッド63とは、本発明の方法を利用して、図15(A)(B)に示すよ
うに接合される。第2実施例の場合と同様に、ベース62上端面の金属薄膜70上に本発
明の金属ペースト封止材76を、上述したスクリーン印刷等の方法で塗布する。ベース6
2を約200〜300℃の比較的低温で加熱して1次焼結処理を行い、金属ペースト封止
材76をポーラス構造の1次焼結体にする。他方、ベース62の前記各ボンディングパッ
ド上には、図15(A)に示すように、例えばAuボール78を溶着させてバンプを形成
する。前記バンプには、Au以外にはんだ等の様々な公知の導電材料を用いることができ
る。また前記バンプは、ベース62のボンディングパッドではなく、リッド63の各ボン
ディングパッド上に形成しても良い。
【0082】
次に、図15(B)に示すように、ベース62の上端面にリッド63を位置合わせして
配置し、上記各実施例と同様に加熱しつつ加圧して2次焼結処理を行う。これにより、金
属ペースト封止材76の前記1次焼結体は、それに含まれる金属粒子が緻密に融着して再
結晶化し、ベース62の金属薄膜70及びリッド63の金属被膜73と一体化して接合膜
77を形成する。これと同時に、2次焼結処理の加熱加圧作用によって、各バンプ79が
リッド63の前記各ボンディングパッドに溶着する。これにより、ベース62の各ボンデ
ィングパッド71,72とリッド63の対応するボンディングパッド74,75とを電気
的に接続される。
【0083】
ベース62の前記ボンディングパッドとリッド63の前記ボンディングパッドとは、A
u等の金属バンプ以外に、公知の様々な導電接続材料により電気的に接続することができ
る。例えば、導電性接着剤や導電ペースト、金属ペースト等を用いることができる。
【0084】
接合膜77によって、ベース62とリッド63とは高い気密性をもって接合され、水晶
振動片65をパッケージ内部に真空封止又はガス封止する。更に本実施例によれば、水晶
振動片65を実装したベース62に該水晶振動片の駆動用ICチップとして機能するリッ
ド63を気密に接合することによって、より小型化かつ低背化した表面実装型の水晶発振
器を実現することができる。
【0085】
このように水晶振動片を駆動するICチップを一体化した水晶発振器は、第1実施例の
パッケージ構造についても適用することができる。図16は、そのような第1実施例に類
似するパッケージ構造の水晶発振器81を示している。水晶発振器81は、第1実施例の
水晶振動子1と同様に、水晶振動片を有する中間水晶板82の上下に、パッケージの蓋と
なる上側基板83及びベースとなる下側基板84を積層して一体に接合される。本実施例
は、中間水晶板82が一様な厚さのATカット水晶板で形成され、下側基板84が水晶薄
板やガラス材料又はシリコン等で形成されるのに対し、上側基板83はシリコン材料で形
成される。
【0086】
中間水晶板82は、図17に示すように、厚みすべりモードの水晶振動片85と、その
基端部85aで一体に結合された外枠86とを有する。水晶振動片85の上下各面には励
振電極87,87が形成され、それぞれ基端部85aからそれを結合した側の外枠86の
長手方向端部に配線膜87aが引き出される。外枠86上面には、その外周に沿って所定
幅の導電金属薄膜88が形成されている。図示するように、本実施例では、導電金属薄膜
88と配線膜87aとを分離させたが、電気的に接続させても良い。
【0087】
中間水晶板82の下面は、図2の中間水晶板2と同様に形成される。外枠86の下面に
は全周に亘って導電金属薄膜が形成され、水晶振動片85下面の励振電極から引き出され
た前記配線膜と電気的に接続されている。外枠86下面の水晶振動片85を結合した側の
長手方向端部には、前記配線膜から分離した導電金属薄膜が形成され、スルーホール89
を介して外枠86上面の配線膜87aと電気的に接続されている。更に外枠86の長手方
向両端部の上面には、導電金属薄膜88の内側にかつ該金属薄膜から離隔して、それぞれ
ボンディングパッド90,91が形成されている。ボンディングパッド90,91は、図
示しない配線により水晶振動片85の前記励振電極又は外部の電源、回路等に接続される
端子として使用される。
【0088】
上側基板83は、図18に示すように、中間水晶板82との対向面即ち下面に凹部83
aが形成されている。上側基板83下面の凹部83aを囲繞する周辺部が、中間水晶板8
2との接合面を構成し、前記外枠の導電金属薄膜88に対応する金属薄膜92で被覆され
ている。金属被膜92の内側には、上側基板83の長手方向両端部にボンディングパッド
93,94が、それぞれ中間水晶板82の外枠86上面のボンディングパッド90,91
に直接接続する端子として、それらに対応する位置に設けられている。更に上側基板83
の金属被膜92の内側領域には、水晶振動片85の駆動を制御するための集積回路及びそ
れとボンディングパッド93,94とを接続する配線が形成されている(図示せず)。
【0089】
中間水晶板82と上側及び下側基板83,84とは、本発明の方法を利用して接合され
る。第1実施例の場合と同様に、中間水晶板82の外枠86上下面の前記導電金属薄膜に
本発明の金属ペースト封止材を塗布する。この中間水晶板82を約200〜300℃の比
較的低温で加熱して1次焼結処理を行い、前記金属ペースト封止材をポーラス構造の1次
焼結体にする。中間水晶板82の外枠86上面の前記各ボンディングパッド上には、図1
5(A)と同様に、Auボール等の様々な公知の導電材料からなるバンプを形成する。前
記バンプは、中間水晶板82ではなく、上側基板83の前記各ボンディングパッド上に形
成しても良い。
【0090】
次に、中間水晶板82の上面及び下面に上側及び下側基板83、84をそれぞれ位置合
わせして重ね合わせ、第1実施例と同様に加熱しつつ加圧して2次焼結処理を行う。これ
により、中間水晶板82の上下面と上側及び下側基板83、84との間で、前記金属ペー
スト封止材の1次焼結体は、それに含まれる金属粒子が緻密に融着して再結晶化し、接合
膜95,96を形成する。これと同時に、2次焼結処理の加熱加圧作用によって、バンプ
97、98が溶着することにより、中間水晶板82の各ボンディングパッド90,91と
上側基板83の対応するボンディングパッド93,94とを電気的に接続される。
【0091】
更に本発明は、音叉型水晶振動片を有する水晶振動子や水晶発振器等の水晶デバイスに
ついても適用することができる。図19は、図1の第1実施例のパッケージ構造を有する
音叉型水晶振動子101を示している。水晶振動子101は、第1実施例の水晶振動子1
と同様に、水晶振動片を有する平板状の中間水晶板102の上下に、パッケージの蓋とな
る上側基板103及びベースとなる下側基板104を積層して一体に接合される。中間水
晶板102は一様な厚さのATカット水晶板で形成され、上側及び下側基板103、10
4は好ましくは水晶薄板で、又はガラス材料やシリコン等で形成される。
【0092】
中間水晶板102は、図20(A)、(B)に示すように、1対の振動腕を有する音叉
型水晶振動片105と、その基端部105aで一体に結合された外枠106とを有する。
前記振動腕の表面に形成した一方の励振電極107は、基端部105aから引き出されて
外枠106上面の導電金属薄膜108と電気的に接続されている。前記振動腕表面の他方
の励振電極109は、同様に前記基端部から引き出されて外枠106下面の導電金属薄膜
110と電気的に接続されている。外枠106の水晶振動片105を結合した側の長手方
向端部は、スルーホール111内部の導電膜を介して、外枠106下面に導電金属薄膜1
10から分離した導電金属薄膜112が、外枠106上面の導電金属薄膜108と電気的
に接続されている。
【0093】
上側基板103は、図21に示すように、中間水晶板102との対向面に凹部103a
が形成され、該凹部を取り囲む周辺部分即ち中間水晶板102との接合面に金属薄膜11
3が形成されている。下側基板104は、図22に示すように、中間水晶板102との対
向面に凹部104aが形成され、該凹部を取り囲む周辺部分即ち中間水晶板102との接
合面に、該中間水晶板下面の導電金属薄膜110,112に対応する金属薄膜114,1
15が形成されている。それら凹部により画定されるキャビティ内に、水晶振動片105
はその基端部105aで片持ちに保持収容される。更に下側基板104には、その略中央
に封止孔116が貫設されている。
【0094】
中間水晶板102と上側及び下側基板103,104とは、本発明の方法を利用して接
合される。第1実施例の場合と同様に、中間水晶板102の外枠106上下面の導電金属
薄膜108,110,112に本発明の金属ペースト封止材を塗布する。この中間水晶板
102を約200〜300℃の比較的低温で加熱して1次焼結処理を行い、前記金属ペー
スト封止材をポーラス構造の1次焼結体にする。次に、中間水晶板102の上面及び下面
に上側及び下側基板103、104をそれぞれ位置合わせして重ね合わせ、加圧して2次
焼結処理を行う。これにより、前記金属ペースト封止材の1次焼結体は、それに含まれる
金属粒子が緻密に融着して再結晶化し、中間水晶板102の上下面と上側及び下側基板1
03、104との間に接合膜117〜119が形成され、水晶振動片105がパッケージ
内に封止される。
【0095】
次に、このパッケージを真空雰囲気に配置し、封止孔116をシール材120で気密に
閉塞する。シール材120には、例えばAu−Sn等の低融点金属材料を用いることがで
き、該金属材料を封止孔内に配置しかつ外部からレーザ光等を照射して溶着させる。前記
封止孔は、その内面を予め金属膜で被覆しておくと、金属材料をより良好に溶着できるの
で好ましい。本実施例では、このように前記封止孔を用いることにより、パッケージの気
密封止時に前記金属ペースト封止材から発生する虞がある不要なガスをパッケージ内部か
ら排除でき、水晶振動子101をより高い真空度で封止することができる。
【0096】
以上、本発明の好適実施例について詳細に説明したが、当業者に明らかなように、本発
明はその技術的範囲内において上記各実施例に様々な変更・変形を加えて実施することが
できる。例えば、前記中間水晶板は、水晶以外に、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウ
ムなどの他の様々な公知の圧電材料で形成することができる。また本発明は、振動子又は
発振器以外に、共振子、フィルタ、センサ等の圧電デバイスについても適用できる。第2
実施例と同様の構造では、パッケージ内にIC素子等を搭載することができる。また、水
晶振動片の代わりに圧電振動ジャイロ素子を搭載して圧電ジャイロセンサを構成すること
ができる。
【0097】
更に、本発明は、圧電デバイス以外の様々な電子部品をパッケージ内に気密に封止する
ために適用することができる。この場合、パッケージを構成する各部品は相互の接合面に
それぞれ金属面を有し、その少なくとも一方の金属面に本発明の金属ペースト封止材を塗
布し、上記各実施例と同様に加熱することにより、1次焼結処理を行う。これにより前記
ポーラス構造を有する1次焼結体を形成した後、両構成部品を、それらの1次焼結体を形
成した一方の金属面と他方の金属面とを接触させて重ね合わせ、任意により加熱しつつ、
1次焼結体を加圧してその金属粒子を緻密に再結晶化させることにより、2次焼結処理を
行う。これにより、パッケージを気密に接合してその内部に電子部品を気密に封止するこ
とができる。
【符号の説明】
【0098】
1,41,61,81,101…水晶振動子、2,82,102…中間水晶板、3,8
3,103…上側基板、3a,4a,83a,103a,104a…凹部、4,83,1
04…下側基板、5,45,65,85,105…水晶振動片、5a,45a,65a,
85a,105a…基端部、6,86,106…外枠、7,8,46,66,87,10
7,109…励振電極、7a,8a,87a…配線膜、9,10,13,88,108,
110,112…導電金属薄膜、11,89,111…スルーホール、12,16,30
a…領域、14,15,17,51,52,70,73,92,113〜115…金属薄
膜、18〜20,34,35,39,53,76…金属ペースト封止材、21…金属粒子
、22…欠け、23…樹脂、24…1次焼結体、25〜27,54,77,95,96,
117〜119…接合膜、28,44…キャビティ、30…中間水晶ウエハ、31…上側
水晶ウエハ、32…下側水晶ウエハ、33…貫通孔、36…ディスペンサ、37…ウエハ
積層体、38…外郭線、42,62…ベース、42a〜42c…セラミック材料薄板、4
3,63…リッド、47,67…引出電極、48,68…電極パッド、49,69…導電
性接着剤、50…薄板、71,72,74,75,90,91,93,94…ボンディン
グパッド、78…Auボール、79,97,98…バンプ、116…封止孔、120…シ
ール材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水晶振動片と、複数の構成部品からなるパッケージとを備え、平均粒径0.1〜1.0
μmの金属粒子と有機溶剤と樹脂材料とを88〜93重量%、5〜15重量%、0.01
〜4.0重量%の割合で配合した金属ペースト封止材を用いて前記構成部品を接合し、前
記パッケージ内に前記水晶振動片を気密に封止したことを特徴とする水晶デバイス。
【請求項2】
前記金属ペースト封止剤の前記金属粒子がAu、Ag、Pt、又はPdの1種又は2種
以上からなることを特徴とする請求項1に記載の水晶デバイス。
【請求項3】
前記複数の構成部品が、前記水晶振動片と外枠とを一体に結合した中間水晶板と、前記
金属ペースト封止材により前記中間水晶板の上下各面にそれぞれ接合された上側基板及び
下側基板とからなり、前記上側基板が前記水晶振動片を駆動するための集積回路を形成し
たシリコン材料からなりかつその下面に前記集積回路に接続された端子を有し、前記中間
水晶板が前記外枠上面に前記上側基板の前記端子に対応する位置に設けた端子を有し、前
記上側基板の前記端子と前記中間水晶板の前記端子とが導電接続材料により直接接続され
ていることを特徴とする請求項1又は2に記載の水晶デバイス。
【請求項4】
前記複数の構成部品が、上部を開放した箱形をなしかつその内部に前記水晶振動片を実
装したベースと、前記金属ペースト封止材により前記ベースの上端面に気密に接合された
リッドとからなり、前記リッドが前記水晶振動片を駆動するための集積回路を形成したシ
リコン材料からなりかつその下面に前記集積回路に接続された端子を有し、前記ベースが
その前記上端面に前記リッドの前記端子に対応する位置に設けた端子を有し、前記リッド
の前記端子と前記ベースの前記端子とが導電接続材料により直接接続されていることを特
徴とする請求項1又は2に記載の水晶デバイス。
【請求項5】
水晶振動片と外枠とを一体に結合した中間水晶板の上下各面に上側基板及び下側基板を
それぞれ接合し、それらの間に画定されるキャビティ内に前記水晶振動片を気密に封止す
るために、
前記中間水晶板が前記外枠の上面及び下面に金属薄膜を有し、かつ前記上側基板及び前
記下側基板がそれぞれ前記外枠との接合面に金属薄膜を有し、
前記外枠上面の前記金属薄膜又は前記上側基板の前記金属薄膜の少なくとも一方に請求
項1又は2に記載の金属ペースト封止材を塗布し、加熱することにより、ヤング率9〜1
6GPa及び密度10〜17g/cm3のポーラス構造を有する1次焼結体を形成する第
1の1次焼結処理工程と、
前記外枠下面の前記金属薄膜又は前記下側基板の前記金属薄膜の少なくとも一方に前記
金属ペースト封止材を塗布し、加熱することにより、ヤング率9〜16GPa及び密度1
0〜17g/cm3のポーラス構造を有する1次焼結体を形成する第2の1次焼結処理工
程と、
前記中間水晶板と前記上側基板とを、それらの前記1次焼結体を形成した一方の前記金
属薄膜と他方の前記金属薄膜とを接触させて重ね合わせ、前記1次焼結体を加圧してその
金属粒子を緻密に再結晶化させることにより、前記外枠において気密に接合する第1の2
次焼結処理工程と、
前記中間水晶板と前記下側基板とを、それらの前記1次焼結体を形成した一方の前記金
属薄膜と他方の前記金属薄膜とを接触させて重ね合わせ、前記1次焼結体を加圧してその
金属粒子を緻密に再結晶化させることにより、前記外枠において気密に接合する第2の2
次焼結処理工程とを含むことを特徴とする水晶デバイスの封止方法。
【請求項6】
上部を開放した箱形をなしかつその内部に水晶振動片を実装したベースの上端面にリッ
ドを接合して気密に封止するために、
前記ベースがその前記上端面に金属面を有し、かつ前記リッドが前記上端面との接合面
に金属面を有し、
前記ベース上端面の前記金属面又は前記リッドの前記金属面の少なくとも一方に請求項
1又は2に記載の金属ペースト封止材を塗布し、加熱することにより、ヤング率9〜16
GPa及び密度10〜17g/cm3のポーラス構造を有する1次焼結体を形成する1次
焼結処理工程と、
前記ベースの上に前記リッドを、それらの前記1次焼結体を形成した一方の前記金属面
と他方の前記金属面とを接触させて重ね合わせ、前記1次焼結体を加圧してその金属粒子
を緻密に再結晶化させることにより、気密に接合する2次焼結処理工程とを含むことを特
徴とする水晶デバイスの封止方法。
【請求項7】
前記上側基板及び前記下側基板が水晶からなることを特徴とする請求項5に記載の水晶
デバイスの封止方法。
【請求項8】
前記上側基板がシリコン材料からなりかつ前記水晶振動片を駆動するための集積回路と
前記集積回路に接続された端子とを備え、前記中間水晶板が前記外枠上面に前記上側基板
の前記端子に接続される端子を有し、前記第1の2次焼結処理工程において前記中間水晶
板と前記上側基板とを重ね合わせる際に、前記上側基板の前記端子と前記中間水晶板の前
記端子とを導電接続材料により直接接続することを特徴とする請求項5に記載の水晶デバ
イスの封止方法。
【請求項9】
前記リッドがガラス板からなり、かつその一方の面に金属膜を形成することにより前記
金属面を設けたことを特徴とする請求項6に記載の水晶デバイスの封止方法。
【請求項10】
前記リッドが金属板からなり、かつその一方の面に前記金属面を有することを特徴とす
る請求項6に記載の水晶デバイスの封止方法。
【請求項11】
前記リッドがシリコン材料からなりかつ前記水晶振動片を駆動するための集積回路と前
記集積回路に接続された端子とを備え、前記ベースがその前記上端面に前記リッドの前記
端子に接続される端子を有し、前記2次焼結処理工程において前記ベースの上に前記リッ
ドを重ね合わせる際に、前記リッドの前記端子と前記ベースの前記端子とを導電接続材料
により直接接続することを特徴とする請求項6に記載の水晶デバイスの封止方法。
【請求項12】
前記2次焼結処理工程において加圧すると同時に加熱することを特徴とする請求項5乃
至11のいずれかに記載の水晶デバイスの封止方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2012−235511(P2012−235511A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−159337(P2012−159337)
【出願日】平成24年7月18日(2012.7.18)
【分割の表示】特願2007−286419(P2007−286419)の分割
【原出願日】平成19年11月2日(2007.11.2)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】