説明

ナビゲーション装置、経路探索方法及び経路探索プログラム

【課題】徒歩移動や周囲環境の安全性に基づく具体的な条件を組み入れることで、ユーザが安全に利用できる経路を適切なタイミングで探索する。
【解決手段】ナビゲーション装置は、移動体の出発地及び目的地に関する指示情報を受信し、当該指示情報に基づいて、出発地及び目的地を設定する。続いて、ナビゲーション装置は、設定した出発地から目的地までの経路を設定する。移動体は、ナビゲーション装置によって設定された経路を用いて目的地まで誘導される。ナビゲーション装置は、移動体が移動する途中で、設定した経路とは別の安全な経路の要求を受けることがある。このような要求を受けると、ナビゲーション装置は、目的地までの安全な経路を再探索して設定する。よって、移動体は、移動する途中であっても、ナビゲーション装置の再探索により、新たに設定された安全な経路を用いて誘導されることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体を誘導するために経路を探索する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、携帯電話をはじめとする端末装置にGPS(Global Positioning System)受信機等を搭載させ、移動体の現在位置を含む周辺地図を画面に表示させることで、目的地までの誘導を行うナビゲーションシステムが知られている(例えば、特許文献1乃至5)。
【0003】
こうしたナビゲーションシステムにおいては、段差や公園といったエリアの状況や天候、時間帯等を考慮したり、安全性優先の重み付けを付与したりすることで、歩行者と歩行状況とに応じた適切な経路を探索し、誘導を行っている。
【0004】
【特許文献1】特開平10−319839号公報
【特許文献2】特開2003−021525号公報
【特許文献3】特開平11−166838号公報
【特許文献4】特開2007−114030号公報
【特許文献5】特開2001−027543号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のナビゲーションシステムによって探索された経路は、ユーザが安全に利用できる経路に必ずしも即していない。
【0006】
本発明が解決しようとする課題としては、上記のものが例として挙げられる。本発明は、徒歩移動や周囲環境の安全性に基づく具体的な条件を組み入れることで、ユーザが安全に利用できる経路を適切なタイミングで探索することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、移動体が移動する際の誘導を行うナビゲーション装置において、前記移動体の出発地及び目的地に関する指示情報を受信する指示情報受信手段と、前記指示情報に基づいて、前記出発地及び前記目的地を設定する地点設定手段と、前記地点設定手段により設定された前記出発地から前記目的地までの経路を設定する経路設定手段と、前記移動体が移動する途中で、前記経路設定手段により設定された経路とは別の安全な経路の要求を受ける要求受付手段と、前記要求受付手段により要求を受けると、前記目的地までの前記安全な経路を再探索して設定する再探索手段と、を備える。
【0008】
請求項18に記載の発明は、移動体が移動する際の誘導を行うナビゲーション装置により実行される経路探索方法であって、前記移動体の出発地及び目的地に関する指示情報を受信する指示情報受信工程と、前記指示情報に基づいて、前記出発地及び前記目的地を設定する地点設定工程と、前記地点設定工程により設定された前記出発地から前記目的地までの経路を設定する経路設定工程と、前記移動体が移動する途中で、前記経路設定工程により設定された経路とは別の安全な経路の要求を受ける要求受付工程と、前記要求受付工程により要求を受けると、前記目的地までの前記安全な経路を再探索して設定する再探索工程と、を備える。
【0009】
請求項19に記載の発明は、移動体が移動する際の誘導を行うコンピュータにより実行される経路探索プログラムであって、前記移動体の出発地及び目的地に関する指示情報を受信する指示情報受信手段、前記指示情報に基づいて、前記出発地及び前記目的地を設定する地点設定手段、前記地点設定手段により設定された前記出発地から前記目的地までの経路を設定する経路設定手段、前記移動体が移動する途中で、前記経路設定手段により設定された経路とは別の安全な経路の要求を受ける要求受付手段、前記要求受付手段により要求を受けると、前記目的地までの前記安全な経路を再探索して設定する再探索手段、として前記コンピュータを機能させる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の1つの観点では、移動体が移動する際の誘導を行うナビゲーション装置において、前記移動体の出発地及び目的地に関する指示情報を受信する指示情報受信手段と、前記指示情報に基づいて、前記出発地及び前記目的地を設定する地点設定手段と、前記地点設定手段により設定された前記出発地から前記目的地までの経路を設定する経路設定手段と、前記移動体が移動する途中で、前記経路設定手段により設定された経路とは別の安全な経路の要求を受ける要求受付手段と、前記要求受付手段により要求を受けると、前記目的地までの前記安全な経路を再探索して設定する再探索手段と、を備えることを特徴とする。
【0011】
上記のナビゲーション装置は、移動体の出発地及び目的地に関する指示情報を受信し、当該指示情報に基づいて、出発地及び目的地を設定する。続いて、ナビゲーション装置は、設定した出発地から目的地までの経路を設定する。移動体は、ナビゲーション装置によって設定された経路を用いて目的地まで誘導される。ナビゲーション装置は、移動体が移動する途中で、設定した経路とは別の安全な経路の要求を受けることがある。このような要求を受けると、ナビゲーション装置は、目的地までの安全な経路を再探索して設定する。よって、移動体は、移動する途中であっても、ナビゲーション装置の再探索により、新たに設定された安全な経路を用いて誘導されることが可能となる。
【0012】
上記ナビゲーション装置の一態様では、前記安全な経路は、明るい地物を通過する経路であることを特徴とする。よって、移動体は、ナビゲーション装置の再探索により、明るい地物を通過する安全な経路を用いて誘導されることが可能となる。
【0013】
上記ナビゲーション装置の他の一態様では、前記明るい地物は街灯であって、前記安全な経路は、前記街灯の設置数が他の経路に比して多い経路であることを特徴とする。よって、移動体は、ナビゲーション装置の再探索により、街灯の設置数が他の経路に比して多い、即ち治安面での安全性が高い経路を用いて誘導されることが可能となる。
【0014】
上記ナビゲーション装置の他の一態様では、前記明るい地物は店舗であって、前記安全な経路は、前記店舗を通過する経路であることを特徴とする。よって、移動体は、ナビゲーション装置の再探索により、店舗前を通過する治安面で安全性が高い経路を用いて誘導されることが可能となる。
【0015】
上記ナビゲーション装置の他の一態様では、前記経路設定手段により設定された経路が暗い領域を通過する経路である場合、前記安全な経路は、前記暗い領域を回避する経路であることを特徴とする。よって、移動体は、ナビゲーション装置の再探索により、治安面での危険性が高い暗い領域を回避した、安全な経路を用いて誘導されることが可能となる。
【0016】
上記ナビゲーション装置の他の一態様では、前記暗い領域は公園であることを特徴とする。これによれば、夜間の公園のように暗くなると治安面での危険性が増加する領域を回避した安全な経路を用いて、移動体を誘導することができる。
【0017】
上記ナビゲーション装置の他の一態様では、前記要求受付手段は、前記移動体が前記経路設定手段により設定された経路から逸脱したことを検出する検出手段を備え、前記検出手段により前記移動体が前記経路から逸脱したことを検出した場合に、前記安全な経路の要求を受けることを特徴とする。これによれば、ナビゲーション装置は、移動体が設定した経路から逸脱したことを検出した場合に、新たに安全な経路を探索する必要があると自動的に判断し、再探索を行う。よって、ナビゲーション装置は、自動的に適切なタイミングで再探索を行うことが可能となる。
【0018】
上記ナビゲーション装置の他の一態様では、前記検出手段により前記移動体が前記経路から逸脱したことを検出した場合に、逸脱地点から先の当該経路に存在する領域を認識する領域認識手段を備え、前記再探索手段は、前記逸脱地点から前記目的地までの前記安全な経路を再探索するものであって、前記安全な経路は、前記領域認識手段により認識された領域を回避する経路であることを特徴とする。これによれば、ナビゲーション装置は、移動体が設定した経路から逸脱した場合に、逸脱地点から目的地までの安全な経路を再探索して設定する。このとき、ナビゲーション装置は、当初設定されていた経路において逸脱地点から先に存在する領域、即ち、移動体が通行することを嫌った領域を認識する。そして、ナビゲーション装置は、再探索の際、移動体が通行することを嫌った領域を回避する経路を探索し、逸脱地点から目的地までの安全な経路として設定する。よって、移動体が通行することを嫌った領域を回避した安全な経路を用いて、当該移動体を誘導することができる。
【0019】
上記ナビゲーション装置の他の一態様では、前記要求受付手段は、前記経路設定手段により設定された経路とは別の安全な経路を要求する要求情報を受信する要求情報受信手段をさらに備え、前記要求情報受信手段により前記要求情報を受信した場合に、前記安全な経路の要求を受けることを特徴とする。これによれば、ナビゲーション装置は、要求情報を受信すると、再探索を行う。よって、ナビゲーション装置は、要求情報を受信した任意のタイミングで再探索を行うことが可能となる。換言すると、ユーザが所定の端末を操作することによって、要求情報をナビゲーションに送信する場合、ナビゲーション装置は、ユーザが指定する任意のタイミングで再探索を行うことが可能となる。
【0020】
上記ナビゲーション装置の他の一態様では、道路に対応するリンクを示すリンクデータと、道路上の所定の地点に対応するノード及び前記ノードを端点とするリンクを示すノードデータと、前記リンクに対応するコストを示すコストデータとを記憶する記憶手段をさらに備え、前記コストデータは、前記リンクの基本コストに、安全性に関する複数種別のコスト調整値が対応付されたものであって、前記再探索手段は、前記リンクデータ及び前記ノードデータと、前記基本コスト及び前記コスト調整値に基づいて算出されたトータルコストとに基づいて、前記目的地までの前記安全な経路を再探索することを特徴とする。
【0021】
上記のナビゲーション装置は、記憶手段に記憶されているリンクデータ、ノードデータ及びコストデータに基づいて、コスト計算を行うことで、出発地から目的地までの最適で安全な経路を探索する。コスト計算は、各リンクの基本コストのみならず、安全性に関する複数種別のコスト調整値をも考慮して、出発地から目的地に至る候補経路のトータルコストを算出することにより行われる。これによれば、安全な経路を探索するために用いられるトータルコストは、安全性に関する複数種別のコスト調整値を考慮して算出されるため、ナビゲーション装置は、複数の候補経路の中から最も安全な経路を用いて、移動体を誘導することができる。
【0022】
上記ナビゲーション装置の他の一態様では、前記移動体の現在位置を示す現在位置情報を受信する現在位置情報受信手段と、前記現在位置情報が示す前記現在位置に基づいて、前記移動体が実際に通行した経路を特定する通行経路特定手段と、前記経路設定手段により設定された経路と、前記通行経路特定手段により特定された通行経路とを安全性の観点から比較する比較手段と、前記比較手段による比較結果に基づき、前記コストデータにおいて、前記安全性に関する複数種別のコスト調整値を補正する補正手段をさらに備えることを特徴とする。
【0023】
上記のナビゲーション装置は、設定した経路と、移動体が実際に通行した経路とを安全性の観点から比較する。そして、ナビゲーション装置は、比較結果に基づいて、ユーザが好む経路又はユーザが嫌う経路の傾向を予測し、コストデータにおける安全性に関する複数種別のコスト調整値を補正する。ナビゲーション装置は、補正されたコストデータに基づいてコスト計算をして再探索を行うため、ユーザの嗜好に沿った安全な経路を探索することが可能となる。
【0024】
上記ナビゲーション装置の他の一態様では、前記補正手段によって、安全性を低くする方向に前記コスト調整値を補正する幅には、制限が設定されていることを特徴とする。これによれば、コストデータにおいて安全性に関する複数種別のコスト調整値を補正する際に、安全性を低くする方向に補正する幅が制限されている。ナビゲーション装置は、補正されたコストデータに基づいてコスト計算をして再探索を行うため、安全性を低くする方向に補正する幅が制限されていないと、治安面又は交通面での危険性が高い経路を用いて移動体を誘導してしまう可能性がある。つまり、安全性を低くする方向に補正する幅を制限することで、危険性が高い経路を用いて移動体を誘導することを防止することができる。
【0025】
上記ナビゲーション装置の他の一態様では、前記コストデータは、前記リンクの基本コストに対応付けて、当該リンク上における前記移動体の移動速度を考慮したコスト調整値を有していることを特徴とする。これによれば、ナビゲーション装置は、リンク上における移動体の移動速度を考慮し、移動時間に基づいて目的地までの安全な経路を探索することが可能となる。よって、ナビゲーション装置は、例えば、目的地までの移動時間が最短である安全な経路を探索する際に、リンク毎に設定されたコスト調整値に基づいて、適切な経路を探索することが可能となる。
【0026】
上記ナビゲーション装置の他の一態様では、前記コストデータは、前記リンクの基本コストに対応付けて、当該リンク上におけるマルチパスの影響を考慮したコスト調整値を有していることを特徴とする。これによれば、ナビゲーション装置は、リンク上におけるマルチパスの影響を考慮し、電波の受信状況が安定した目的地までの安全な経路を探索することが可能となる。
【0027】
上記ナビゲーション装置の他の一態様では、前記コストデータにおいて、前記リンクの基本コストに対応付けされた前記コスト調整値は、時間帯によって変化することを特徴とする。これによれば、ナビゲーション装置は、時間帯を考慮した上でコスト計算を行うため、目的地までの安全な経路を的確に探索することが可能となる。
【0028】
上記ナビゲーション装置の他の一態様では、前記経路設定手段は、前記出発地から前記目的地までの候補経路が複数存在する場合に、前記目的地までの時間が最短である候補経路を、前記出発地から前記目的地までの経路として設定し、前記再探索手段は、前記目的地までの候補経路が複数存在する場合に、前記目的地までの時間が最短である候補経路を、前記目的地までの前記安全な経路として設定する。これによれば、ナビゲーション装置は、目的地に至る候補経路が複数存在する場合に、目的地までの時間が最短である候補経路を、目的地までの安全な経路として設定する。即ち、「最短距離」ではなく「最短時間」という視点で、目的地までの経路を探索して設定することが可能となる。
【0029】
上記ナビゲーション装置のさらに他の一態様では、前記移動体は歩行者であることを特徴とする。このように、移動体が歩行者である場合、ナビゲーション装置が、治安面及び交通面で安全な経路を用いて誘導することで、歩行者に対する事件や事故を軽減させることが可能となる。
【0030】
本発明の他の観点では、移動体が移動する際の誘導を行うナビゲーション装置により実行される経路探索方法であって、前記移動体の出発地及び目的地に関する指示情報を受信する指示情報受信工程と、前記指示情報に基づいて、前記出発地及び前記目的地を設定する地点設定工程と、前記地点設定工程により設定された前記出発地から前記目的地までの経路を設定する経路設定工程と、前記移動体が移動する途中で、前記経路設定工程により設定された経路とは別の安全な経路の要求を受ける要求受付工程と、前記要求受付工程により要求を受けると、前記目的地までの前記安全な経路を再探索して設定する再探索工程と、を備えることを特徴とする。この方法によれば、移動体は、移動する途中であっても、ナビゲーション装置の再探索により、新たに設定された安全な経路を用いて誘導されることが可能となる。
【0031】
本発明のさらに他の観点では、移動体が移動する際の誘導を行うコンピュータにより実行される経路探索プログラムであって、前記移動体の出発地及び目的地に関する指示情報を受信する指示情報受信手段、前記指示情報に基づいて、前記出発地及び前記目的地を設定する地点設定手段、前記地点設定手段により設定された前記出発地から前記目的地までの経路を設定する経路設定手段、前記移動体が移動する途中で、前記経路設定手段により設定された経路とは別の安全な経路の要求を受ける要求受付手段、前記要求受付手段により要求を受けると、前記目的地までの前記安全な経路を再探索して設定する再探索手段、として前記コンピュータを機能させることを特徴とする。このプログラムをコンピュータ上で実行することにより、移動体は、移動する途中であっても、コンピュータの再探索により、新たに設定された安全な経路を用いて誘導されることが可能となる。
【0032】
上記のプログラムは、記憶媒体に記憶して取り扱うことができる。
【実施例】
【0033】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例について説明する。
[ナビゲーションシステムの構成及び機能概要]
まず、ナビゲーションシステム100の構成及び機能概要について、図1を用いて説明する。図1は、ナビゲーションシステム100の概略構成の一例を示す図である。
【0034】
図1に示すように、ナビゲーションシステム100は、サーバ1と、端末装置の一例としての複数の携帯電話機3と、を含んで構成されている。
【0035】
なお、本実施例のナビゲーションシステム100では、携帯電話機3の画面により、歩行者(ユーザ)を移動体として目的地に誘導することとしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、カーナビゲーション装置をはじめとする端末装置の画面により、ユーザが運転する車両等を移動体として目的地に誘導することとしてもよい。
【0036】
サーバ1と携帯電話機3とは、ネットワーク2を介して相互にデータの送受信が可能(例えば、通信プロトコルにTCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)を用いて、相互にデータの送受信が可能)になっている。なお、ネットワーク2は、例えば、インターネット、専用通信回線(例えば、CATV(Community Antenna Television)回線)、移動体通信網(無線基地局等を含む)、及びゲートウェイ等により構築されている。
【0037】
本実施例においては、ユーザが携帯電話機3を操作して、所望の出発地及び目的地を指定すると、サーバ1が出発地から目的地までの経路を探索して設定し、当該経路に基づいて、携帯電話機3が、現在地周辺の地図を画面に表示しながら出発地から目的地までの誘導を行うようになっている。なお、ユーザが所望の出発地を指定するのではなく、携帯電話機3の現在位置を出発地としてもよい。
【0038】
さらに、サーバ1は、現在位置に基づいて携帯電話機3が、設定した経路から逸脱したか否かを監視しており、携帯電話機3が当該経路から逸脱したことを検出した場合に、逸脱地点から目的地までの安全な経路を再探索する。携帯電話機3は、再探索された安全な経路に基づいて、画面により、逸脱地点から目的地までの誘導を行う。
【0039】
なお、ユーザは、携帯電話機3を操作して、サーバ1に要求情報を送信することで、設定された経路とは別の安全な経路による誘導を要求することができる。即ち、サーバ1に、設定された経路とは別の安全な経路を再探索するよう要求することができる。サーバ1は、要求情報を受信した場合に、その時点における携帯電話機3の現在位置から目的地までの安全な経路を再探索する。携帯電話機3は、探索された安全な経路に基づいて画面により、目的地までの誘導を行う。
【0040】
携帯電話機3は、サーバ1等からダウンロードされた地図表示アプリケーションプログラム(以下、「地図アプリ」と呼ぶ。)を実行することにより、ユーザにより指定された地点周辺の地図を画面に表示したり、上述した目的地までの誘導を行ったりするようになっている。地図を画面に表示したり、目的地までの誘導を行ったりする処理は、既知であるため、便宜上説明は省略する。
[サーバの構成及び機能]
次に、サーバ1の構成及び機能について説明する。図2は、サーバ1の概略構成の一例を示すブロック図である。
【0041】
図2に示すように、サーバ1は、各種プログラム及びデータ等を記憶する記憶部(例えば、ハードディスク等)11と、ネットワーク2に接続して携帯電話機3との通信状態を制御する通信部(例えば、ネットワークアダプタ等)12と、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Reading Only Memory)等を備えるシステム制御部13と、を備え、システムバス14を介して相互に接続されている。
【0042】
記憶部11には、携帯電話機3の画面に地図を表示するとともに、サーバ1により経路探索を行うために用いられる地図情報が記憶されている。この地図情報は、例えば、位置情報、地図背景情報、道路等の形状情報、経路計算用情報等、各種データから構成されている。これらの各データは、例えば、地図表示対象の地域を緯度方向及び経度方向に夫々所定間隔で略矩形領域に分割されたメッシュ毎に夫々まとめて格納されるようになっている。
【0043】
システム制御部13は、CPUが、ROMまたは記憶部11に記憶されたサーバ装置用プログラム等の各種プログラムを読み出し実行することにより、サーバ1の各部を統括制御するものである。
【0044】
具体的に、システム制御部13は、携帯電話機3から出発地及び目的地に関する指示情報を受信し、当該指示情報、携帯電話機3の現在位置及び地図情報に基づいて、適切なタイミングで目的地までの安全な経路を探索して設定する。また、システム制御部13は、設定した安全な経路によってユーザを誘導するために必要な情報を経路探索結果情報として携帯電話機3に送信する。
【0045】
なお、各種プログラム等は、例えば、他のサーバからダウンロードされるようにしてもよいし、CD−ROM等の記録媒体に記録されてドライブを介して読み込まれるようにしてもよい。
[経路計算用情報]
ここで、記憶部11に記憶されている地図情報を構成する経路計算用情報について図3乃至図7を参照し、詳しく説明する。
【0046】
経路計算用情報は、出発地から目的地までの経路を探索する際の経路計算に使用されるデータである。図3は、経路計算用情報のデータ構成を示す図であり、図4は、ノードデータのデータ構成を示す図である。図5は、ノード及びリンクの例であり、図6は、コストデータの構成を模式的に示す図である。
【0047】
図3に示すように経路計算用情報124は、ノードデータ125、リンクデータ126及びコストデータ127を含む。ノードは、道路上の交差点などの所定の地点に対応し、ノードデータ125は、ノード及びそのノードを含むリンクを示すデータである。一方、リンクは、交差点などにより区切られた道路の1区画に対応し、リンクデータ126は、リンクを示すデータである。本実施例においてリンクの端点はノードであるものとする。
【0048】
図5(a)に示す複数の道路35を含む地図は、図5(b)に示すように複数のノード及びリンクにより構成される。なお、図5(b)においては、各ノードをノードID(「A」や「B」などのアルファベット)で示し、各リンクをリンクID(「L1」や「L2」など)で示している。ノードデータ125は、図4に示すように、各ノードを識別するノードID毎に地理的な位置を示す座標データ(例えば、緯度経度等)と、対応するノードを端点として含むリンクを識別するリンクIDと、を有している。リンクデータ126は、例えばリンクの距離やリンク上の地理的な位置を示す座標データ等を有している。
【0049】
コストデータ127は、各リンクに設定されたコストを示すデータであって、図6(a)に示すように、リンクIDが示すリンクの基本コストに対応付けされた、コスト調整値及びリンクコストから構成されている。基本コストは、各リンクの長さ、屈曲率、平均徒歩移動速度等の各種データに基づいて設定されたリンクの基本評価値である。コスト調整値は、基本コストを調整する値であって、リンクコストを算出するにあたって考慮される複数の種別から構成されている。リンクコストは、基本コスト及びコスト調整値から算出される各リンクの評価値である。リンクコストは、種々の定義が可能であるが、本実施例ではリンクコストが小さい程安全な通行に適している、即ちノード間を安全に移動することができることを意味しているものとする。
【0050】
ここで、基本コスト及びコスト調整値に基づいて、リンクコストを算出する方法について説明する。本実施例においてリンクコストは、基本コストの値と、基本コストにコスト調整値を乗じた値との総和により算出される。コスト調整値は、基本コストを調整する値であって、各種別が基本コストに与える影響を示す値である。本実施例におけるリンクコストは小さい程ユーザの通行に適しているものであるため、コスト調整値は、移動時間が長いリンクや安全性の低いリンクほどコスト調整値が高く設定されている。換言すると、コスト調整値を構成する種別が、そのリンクの移動時間や安全性に影響を与えない場合、その種別のコスト調整値は「0.0」となる。具体的に、図6(a)に示すリンクID「L8」のリンク(以下、リンクL8と呼ぶ。)のリンクコストは、基本コスト「2.0」と、基本コストにコスト調整値を乗じた値「2.0×(0.3+0.3+0.0+0.3)=1.8」との総和である「3.8」となる。なお、リンクコストの算出方法は、ここに例示した方法に限らず、種々の方法を適用可能である。
【0051】
続いて、コスト調整値について詳しく説明する。図6(a)の例でコスト調整値は、階段や横断歩道など平均徒歩移動速度では移動できないリンク(即ち、道路)に対する「時間」種別と、各リンクを通行する際の安全性に関する「歩道」種別、「領域」種別、「街灯」種別とから構成されている。
【0052】
まず、階段や横断歩道など平均徒歩移動速度では移動できないリンクに対応する「時間」種別について説明する。「時間」種別として、平均徒歩移動速度では移動できないリンクに設定されるコスト調整値は、例えば、階段の昇降コスト調整値、エレベータやオートウォークの移動速度コスト調整値、坂道の移動速度コスト調整値、信号のある交差点(横断歩道)の通行コスト調整値が挙げられる。
【0053】
階段の昇降コスト調整値は、基本コストの値を設定する際に基準となる平坦な道路の平均徒歩移動速度が毎分80m(時速4.8km/h)であるのに対し、階段部分の平均徒歩移動速度は毎分30m(時速1.8km)であって、そのリンクの移動時間が平坦な道路より増加することを考慮し、基本コストを調整するための値である。換言すると、階段部分の平均徒歩移動速度が平坦な道路の平均徒歩移動速度より遅いことから、算出するリンクコストを上げるために加味する値である。
【0054】
エレベータやオートウォークの移動速度コスト調整値は、基準となる平坦な道路の平均徒歩移動速度が毎分80m(時速4.8km/h)であるのに対し、オートウォークの平均移動速度は毎分48m(時速2.9km/h)、エスカレータの平均移動速度は毎分30m(時速1.8km/h)であって、そのリンクの移動時間が平坦な道路を歩くより増加することを考慮し、基本コストを調整するための値である。換言すると、オートウォークやエレベータの平均移動速度が平坦な道路を歩く平均徒歩移動速度より遅いことから、算出するリンクコストを上げるために加味する値である。
【0055】
坂道の移動速度コスト調整値は、基準となる平坦な道の平均徒歩移動速度が毎分80m(時速4.8km/h)であるのに対し、上り坂の平均徒歩移動速度は毎分30m(時速1.8km/h)であって、そのリンクの移動時間が平坦な道路より増加することを考慮し、基本コストを調整するための値である。換言すると、上り坂の平均徒歩移動速度が平坦な道路の平均徒歩移動速度より遅いことから、算出するリンクコストを上げるために加味する値である。例えば、図5(b)に示すリンクL8は、坂道であるため、図6(a)に示すように「時間」種別のコスト調整値として「0.3」が基本コストに加味される。よって、リンクL8のリンクコストは、そのリンクの移動時間を考慮して増加することになる。
【0056】
信号のある交差点(横断歩道)の通行コスト調整値は、平均徒歩移動速度の基準となる信号のない道路と比較すると、信号のある交差点(横断歩道)では信号の待ち時間が発生するため、そのリンクの移動時間が信号のない道路より増加することを考慮し、基本コストを調整するための値である。換言すると、信号のある交差点(横断歩道)の通行箇所では一定時間(15秒)加算され移動時間が増加することから、算出するリンクコストを上げるために加味する値である。なお、横断する道路の幅員により移動時間に可変の待ち時間が加算されることを考慮して、コスト調整値を設定することとしてもよい。
【0057】
このように、階段や横断歩道など平均徒歩移動速度では移動できないリンクに対するコスト調整値を設定することで、移動時間が平均より多くなると予想されるリンクのリンクコストは増加することになる。これによれば、詳細は後述するがコスト計算に基づく経路探索において、「最短距離」ではなく「最短時間」という視点で経路を探索する際に、歩行者の移動に極めて最適な経路を探索することが可能となる。
【0058】
次に、各リンクを通行する際の安全性に関する「歩道」種別、「領域」種別、「街灯」種別、について説明する。
【0059】
「歩道」種別として各リンクに設定されるコスト調整値は、リンクに対応する道路の歩道の有無に基づいて、そのリンクにおける徒歩移動や周囲環境の安全性を考慮し、基本コストを調整するための値である。これによれば、歩道のある道路が歩道のない道路より交通面(事故等)での安全性が高いことから、算出するリンクコストを調整するため、歩道のある道路に対応するリンクのコスト調整値は、歩道のない道路に対応するリンクのコスト調整値より低く設定される。これは、本実施例においては値が小さい程、経路として選択される可能性が高くなるようにリンクコストを定義しているからである。
【0060】
なお、「歩道」種別のコスト調整値は、歩道の有無のみならず、歩道の種類に基づいて基本コストを調整することとしてもよい。例えば、「歩道のない道路」、「白線のみの道路」、「段差やガードレールのある道路」の場合、「歩道のない道路」が最も安全性が低いためコスト調整値を高めに設定し、「段差やガードレールのある道路」が最も安全性が高いためコスト調整値を低めに設定することとしてもよい。この場合、「白線のみの道路」のコスト調整値は、「歩道のない道路」に設定されたコスト調整値と「段差やガードレールのある道路」に設定されたコスト調整値との中間の値が設定される。
【0061】
また、歩道のない道路は、大半が狭く、人通りが少ない。よって、歩道の有無及び/又は歩道の種類に基づいて、そのリンクにおける徒歩移動や周囲環境の治安面での安全性を考慮し、「人通り」種別としてコスト調整値を設定することとしてもよい。これによれば、歩道のある道路は歩道のない道路より人通りが多く、治安面での安全性が高いことから、算出するリンクコストを調整するため、歩道のある道路に対応するリンクのコスト調整値は、歩道のない道路に対応するリンクのコスト調整値より低く設定される。
【0062】
「領域」種別として各リンクに設定されるコスト調整値は、リンクに対応する道路が通過する領域に基づいて、そのリンクにおける徒歩移動や周囲環境の安全性を考慮し、基本コストを調整するための値である。領域とは、治安面での安全性が低下する暗い領域、例えば公園等である。これによれば、暗い領域を通過しない道路は暗い領域を通過する道路より治安面での安全性が高いことから、算出するリンクコストを調整するため、暗い領域を通過しない道路に対応するリンクのコスト調整値は、暗い領域を通過する道路に対応するリンクのコスト調整値より低く設定される。
【0063】
このような領域を通過する道路は、明るい時間帯における治安面での安全性は他の道路と比較してもあまり変わらないが、特に、暗い時間帯における治安面での安全性が著しく低下する。そのため、朝から夕方までの明るい時間帯におけるコスト調整値は「0.0」とし、暗くなる時間帯にコスト調整値を増加させることが望ましい。また、時間帯に限らず、天候によっても治安面での安全性が変化する。地域毎に「日の出」、「日の入」時刻は異なり、また天候によっても左右されることから、地域や月別単位での設定はせず、日本全国で余裕を持って運用可能なコスト調整値を設定し、該当する時間帯や天候の場合に当該コスト調整値を考慮してリンクコストを算出することが良い。
【0064】
「街灯」種別として各リンクに設定されるコスト調整値は、リンクに対応する道路の街灯の数及び/又は街灯の充実度合いデータ(明るい/普通/暗い)を整備し、そのリンクにおける徒歩移動や周囲環境の治安面での安全性を考慮して、基本コストを調整するための値である。これによれば、街灯の数が多く明るい道路が、街灯の数が少なく暗い道路より治安面での安全性が高いことから、算出するリンクコストを調整するため、街灯の数が多く明るい道路に対応するリンクのコスト調整値は、街灯の数が少なく暗い道路に対応するリンクのコスト調整値より低く設定される。なお、リンクに対応する道路の明るさデータを整備し、「街灯」種別ではなく、「明るさ」種別のコスト調整値を設けることとしてもよい。この場合、例えば、街灯の数が他の道路と比して多い道路や明るい店舗(例えば、コンビニエンスストア等)を通過する道路であれば、明るさ度合が高いとしてコスト調整値を少なく設定する。
【0065】
同様に、リンクに対応する道路の犯罪発生率データ(高い/普通/低い)を整備し、そのリンクにおける徒歩移動や周囲環境の治安面での安全性を考慮して、「犯罪発生率」種別として基本コストを調整するためのコスト調整値を設定することとしてもよい。これによれば、犯罪発生率の低い道路は、犯罪発生率の高い道路より治安面での安全性が高いことから、算出するリンクコストを調整するため、犯罪発生率の低い道路に対応するリンクのコスト調整値は、犯罪発生率の高い道路に対応するリンクのコスト調整値より低く設定される。
【0066】
このように、各リンクを通行する際の安全性に関する種別のコスト調整値を設定することで、徒歩移動や周囲環境の安全性が低いと予想されるリンクのリンクコストは増加することになる。これによれば、詳細は後述するがコスト計算に基づく経路探索において、交通面及び治安面から最も安全性が高いと予想される経路を探索することが可能となる。具体的には、交通事故等の未然防止を図るために、選択可能な経路として人車共用道路及び歩行者専用道路が並存する場合には、歩行者専用道路(歩道)を優先して経路を探索することができる。また、女性の夜間時移動における安全性の確保を図るために、日の入及び日の出時刻を組み入れた上で、公園内を通過する経路を回避することができる。つまり、経路探索において、保存済み及び/又はリアルタイム取得の各種データを考慮して、ユーザにとって最も安全性が高いと予想される経路を探索することができる。
[携帯電話機の構成及び機能]
次に、携帯電話機3の構成及び機能について、図7を用いて説明する。
【0067】
図7は、本実施例に係る携帯電話機3の概要構成の一例を示すブロック図である。図7に示すように、携帯電話機3は、基地局との電波送受信により移動体通信網に接続して、他の携帯電話機3やネットワーク2に接続されたサーバ1等との通信を制御する無線通信部21と、例えば、マイクロホン、D/A変換器等を有し、ユーザの発話音声等をマイクロホンから入力すると当該音声に対応した音声データを生成して無線通信部21に出力する音声入力部22と、例えば、スピーカ、増幅回路等を有し、無線通信部21から供給された音声データに対応する音声を生成してスピーカにより拡声する音声出力部23と、を備え、他の携帯電話機3との通話やサーバ等とのデータ通信が可能となっている。かかる通信方式には、例えば、PDC(Personal Digital Cellular)方式や、IMT(International Mobile Telecommunication)方式、PHS(Personal Handyphone System)方式等が採用されている。
【0068】
また、携帯電話機3は、文字や画像等の情報を表示する表示部24(例えば、液晶ディスプレイ等)と、ユーザからの操作指示を受け付け、その指示内容を指示信号としてシステム制御部28に出力する入力手段の一例としての操作部25(例えば、ダイアルボタン、カーソルボタン等)と、各種プログラム(例えば、オペレーティングシステム、Webブラウザプログラム、地図アプリ等)及びデータ等を記憶する記憶部26(例えば、フラッシュメモリ等)と、を備えている。
【0069】
さらに、携帯電話機3は、GPS衛星から発信された衛星軌道及び時刻データを含む電波を受信するとともに、この受信した電波に基づいて携帯電話機3の現在位置(緯度経度等)を算出する測定手段の一例としてのGPS測位部27を備えている。GPS測位部27は、システム制御部28の制御により、現在位置の測位を開始し、一度測位を開始すると、システム制御部28による他の処理(プログラムの実行を含む)と並行して、連続して測位を行うようになっている。
【0070】
さらにまた、携帯電話機3は、CPU、RAM、ROM等を備えるシステム制御部28を備え、システム制御部28と各部とはシステムバス29を介して相互に接続されている。
【0071】
具体的に、システム制御部28は、GPS測位部27により測位された現在位置を示す現在位置情報をサーバ1に送信するようになっている。また、ユーザによる操作部25の操作による出発地及び目的地などの指定が行われると、当該出発地及び目的地に関する指示情報をサーバ1に送信するようになっている。
【0072】
また、システム制御部28は、サーバ1から送信された経路探索結果情報を受信すると、受信した経路探索結果情報を記憶部27に保存する。その経路探索結果情報に基づいて、画面上に、誘導経路を含む案内図を表示させる。このとき、誘導経路を含む案内図の出発地に歩行者の現在位置を示す目印(例えば、キャラクタ)を配置して当該案内図を表示させるとともに、目的地にも目印を表示させる。このような目印が配置された案内図を携帯電話機3の画面上に表示することによって、本実施例のナビゲーションシステム100は、ユーザの現在位置から目的地までの誘導を可能にする。
【0073】
なお、各種プログラム等は、例えばサーバ1等からダウンロードされるようにしてもよいし、メモリカード等の記録媒体から読み込まれるようにしてもよい。
【0074】
[探索ユニット]
図8は、ユーザが指定した目的地までの安全な経路を探索する探索ユニット200の機能ブロック図である。探索ユニット200は、実体的にはサーバ1の構成要素により構成される。つまり、本実施例においてサーバ1は、探索ユニット200が搭載されたナビゲーション装置として機能する。
【0075】
図8に示すように、探索ユニット200は、記憶部209、現在位置情報受信部210、指示情報受信部211、地点設定部212、探索部213、探索結果情報送信部214、到着判定部215、要求受付部216、領域認識部217、通行経路特定部218、比較部219及び補正部220を備える。
【0076】
記憶部209は、経路計算用情報を有する地図情報等を記憶しており、実体的には、サーバ1が備える記憶部11である。記憶部209は、本発明における記憶手段として機能する。
【0077】
現在位置情報受信部210は、携帯電話機3から、携帯電話機3の現在位置を示す現在位置情報を受信する。現在位置情報には、携帯電話機3の現在位置を示す座標データ(例えば、緯度経度等)が含まれている。現在位置情報受信部210は、本発明における現在位置情報受信手段として機能する。
【0078】
指示情報受信部211は、携帯電話機3から、ユーザが指定した出発地及び/又は目的地に関する指示情報を受信する。指示情報には、ユーザが指定した出発地及び/又は目的地の位置を示す座標データ(例えば、緯度経度等)が含まれている。指示情報受信部211は、本発明における指示情報受信手段として機能する。
【0079】
地点設定部212は、指示情報受信部211により受信された指示情報に含まれる座標データに基づいて、ユーザが指定した出発地及び/又は目的地の位置をそれぞれ設定する。なお、指示情報に出発地の座標データが含まれていない場合、地点設定部212は、現在情報受信部210により受信された現在位置情報に基づいて、携帯電話機3の現在位置を出発地に設定する。地点設定部212は、本発明における地点設定手段として機能する。
【0080】
探索部213は、地点設定部212により設定された出発地及び/又は目的地の位置と、記憶部209に記憶されている経路計算用情報とに基づいて、出発地から目的地までの経路を探索し、最も安全で適切な経路を設定するとともに、探索結果情報を作成する。
【0081】
具体的に、探索部213は、経路計算用情報124に含まれるノードデータ125、リンクデータ126及びコストデータ127に基づいて、出発地から目的地までの候補経路を計算する。こうして、出発地から目的地へ至る複数の候補経路が得られると、探索部213は、各候補経路についてコスト計算を行い、最小トータルコストを有する候補経路を経路に設定するとともに、設定した経路を携帯電話機3の画面上で表示するための探索結果情報を作成する。コスト計算とは、経路計算において一般的に用いられる手法であり、本実施例では、経路を構成する全てのリンクのリンクコストの総和であるトータルコストを算出することをいう。コスト計算は既知の手法であるので、その詳細な説明は省略する。
【0082】
探索結果情報送信部214は、携帯電話機3に、探索部213により作成された探索結果情報を送信する。
【0083】
到着判定部215は、現在位置情報受信部210により受信された現在位置情報に基づいて携帯電話機3の現在位置を特定し、当該携帯電話機3が目的地に到着したか否かを判定する。
【0084】
要求受付部216は、携帯電話機3から、当該携帯電話機3が移動する途中で、探索部213により設定された経路とは別の安全な経路の要求を受ける。具体的に、要求受付部216は、検出部及び要求情報受信部を有している。検出部は、現在位置情報受信部210により受信された現在位置情報に基づいて携帯電話機3の現在位置を特定し、当該携帯電話機3が探索部213により設定された経路から逸脱したことを検出する。第1の方法として要求受付部216は、検出部により携帯電話機3が設定された経路から逸脱したことを検出した場合に、別の経路の要求、即ち再探索の要求を受けるものとする。一方、要求情報受信部は、携帯電話機3から、探索部213により設定された経路とは別の経路を要求する要求情報を受信する。第2の方法として要求受付部216は、要求情報受信部により要求情報を受信した場合に、別の経路の要求、即ち再探索の要求を受けるものとする。要求受付部216は、本発明における要求受付手段、検出手段及び要求情報受信手段として機能する。
【0085】
領域認識部217は、要求受付部216が有する検出部により携帯電話機3が設定された経路から逸脱したことが検出された場合に、現在位置情報受信部210により受信された現在位置情報に基づいて逸脱地点を特定し、当該逸脱地点から先の当該経路上に存在する領域を認識する。領域とは、治安面での安全性が低下する暗い領域、例えば公園等である。任意に設定された領域を示す座標データ(例えば、緯度経度等)は、予め地図情報に含まれているものとする。よって、領域認識部217は、地図情報を参照することにより、逸脱地点から先の経路に存在する領域を認識することが可能である。領域認識部217は、本発明における領域認識手段として機能する。
【0086】
通行経路特定部218は、現在位置情報受信部210により受信された現在位置情報と、記憶部209に記憶されている経路計算用情報124とに基づいて、携帯電話機3が実際に通行した経路を通行経路として特定する。通行経路特定部218は、本発明における通行経路特定手段として機能する。
【0087】
比較部219は、コストデータ127に基づいて、探索部213により設定された経路における逸脱地点直後のリンクと、通行経路特定部218により特定された通行経路における逸脱地点直後のリンクのコスト調整値を、複数の種別毎に比較する。比較部219は、本発明における比較手段として機能する。
【0088】
補正部220は、領域認識部217により認識された領域及び/又は比較部219による比較結果に基づいて各ユーザの嗜好を予測し、コストデータ127において、各ユーザの嗜好に沿うように、基本コストに対応付けされたコスト調整値を種別毎に補正する。なお、コスト調整値を補正する幅には制限が設けられている。特に、安全性を軽視する方向でコスト調整値を補正する場合、探索部213によって危険な経路を探索・設定することを防止するため、コスト調整値を補正する幅に厳格な制限をすることが望ましい。補正後のコスト調整値は上書きされ、最新のコストデータ127として記憶部209に記憶される。補正部220は、本発明における補正手段として機能する。
【0089】
探索部213は、要求受付部216により要求を受けた場合に、記憶部209に記憶されている経路計算用情報124に基づいて、要求を受けた時点における携帯電話機3の現在位置から目的地までの経路を再探索し、より安全で適切な経路として設定するとともに、探索結果情報を作成する。このとき、探索部213は、補正部220により補正された最新のコストデータ127に基づいて、経路の再探索を行う。探索部213は、本発明における経路設定手段及び再探索手段として機能する。
【0090】
[探索処理]
次に、探索ユニット200により、各ユーザにとって安全性を考慮した上で最も適した経路を、適切なタイミングで探索する方法について説明する。図9は、本実施例に係る探索処理のフローチャートである。図10は、探索した経路を説明する図である。なお、探索処理は、サーバ1が所定のプログラムを実行し、探索ユニット200として機能することにより実行される。
【0091】
ユーザは、まず、携帯電話機3を操作して、出発地及び目的地を指定する。携帯電話機3は、出発地及び目的地に関する指示情報と、現在位置を示す現在位置情報とをサーバ1に送信する。
【0092】
サーバ1に搭載された探索ユニット200の現在位置情報受信部210は、携帯電話機3から現在位置情報を取得する。また、指示情報受信部211は、携帯電話機3から指示情報を受信する(ステップS1)。すると、地点設定部212は、指示情報に含まれる座標データに基づいて、出発地及び目的地を設定する(ステップS2)。図10に示す例において、地点設定部212は、ノードID「G」のノード(以下、ノードGと呼ぶ。)を出発地に設定し、ノードCを目的地に設定する。続いて、探索部213は、地点設定部212により設定された出発地及び目的地の位置と、経路計算用情報124に含まれるノードデータ125、リンクデータ126及びコストデータ127に基づいて、出発地から目的地までの候補経路を計算する。図10に示す例において、探索部213は、出発地ノードGから目的地ノードCまでの候補経路を計算すると、ノードG、E、D、A、Cの順に通過するルート(以下、ルートGEDACと呼ぶ。)と、ルートGEFBCと、ルートGJACの3つが得られる。
【0093】
探索部213は、記憶部209に記憶されている最新のコストデータ127に基づいて、候補経路を構成する各リンクのリンクコストを算出する。さらに、算出したリンクコストに基づいて、各候補経路のトータルコストを算出する(ステップS3)。図10に示す例では、ルートGEDACのトータルコストは12.4、ルートGEFBCのトータルコストは12.6、ルートGJACのトータルコストは12.5と算出される。そして、探索部213は、算出したトータルコストが最小の候補経路を、出発地から目的地までの経路として設定するとともに、探索結果情報を作成する(ステップS4)。図10に示す例では、候補経路の中でルートGEDACのトータルコストが12.4で最小であるため、ルートGEDACを経路として設定するとともに、ルートGEDACを用いてユーザを誘導するための探索結果情報を作成する。探索結果情報は、探索結果情報送信部214により、携帯電話機3に送信される。携帯電話機3は、受信した探索結果情報に基づいて、画面上に設定された経路(ルートGEDAC)を誘導経路とする案内図を表示させ、ユーザを目的地(ノードC)まで誘導する。
【0094】
一方、現在位置情報取得部210は、携帯電話機3から現在位置を示す現在位置情報を受信している(ステップS5)。そして、到着判定部215は、探索結果情報が送信されると、現在位置情報取得部210により取得される現在位置情報に基づいて、携帯電話機3が目的地に到着したか否かを判定する(ステップS6)。到着判定部215により携帯電話機3が目的地に到着したと判定されると(ステップS6;Yes)、探索ユニット200は、探索処理を完了する。一方、到着判定部215により携帯電話機3が目的地に到着していないと判定されると(ステップS6;No)、要求受付部216が有する検出部は、現在位置情報取得部210により取得される現在位置情報に基づいて、携帯電話機3が探索部213により設定された経路を逸脱したか否かを判定する(ステップS7)。検出部により逸脱していないと判定された場合(ステップS7;No)、探索ユニット200は、ステップS5乃至S7の処理を繰り返し行う。
【0095】
検出部により逸脱したと判定された場合(ステップS7;Yes)、要求受付部216は、探索部213により設定された経路とは別の安全な経路の要求を受ける。すると、領域認識部217は、逸脱地点から先の経路上に任意に設定された領域が存在すれば、その領域を認識する(ステップS8)。図10の例において、ユーザ、即ちユーザが携帯する携帯電話機3は、領域40内を通過するリンクL11の経路を避けて、領域40内を通過しないリンクL8の経路に逸脱したとする。領域40は公園であるものとする。この場合、領域認識部217は、ノードEの位置を逸脱地点に特定し、ノードEから先の経路上に存在する領域40、即ち公園を認識する。
【0096】
続いて、通行経路特定部218は、現在位置情報受信部210により受信された現在位置情報と、記憶部209に記憶されている経路計算用情報124とに基づいて、携帯電話機3が実際に通行した経路を通行経路として特定する(ステップS9)。図10の例において、携帯電話機3は探索部213により設定された経路を逸脱してリンクL8上に位置しているため、通行経路特定部218は、ルートGEFを通行経路として特定する。
【0097】
さらに、比較部219は、コストデータ127に基づいて、探索部213により設定された経路における逸脱地点直後のリンクと、通行経路特定部218により特定された通行経路における逸脱地点直後のリンクのコスト調整値を、種別毎に比較する(ステップS10)。図10の例において、比較部219は、探索部213により設定された経路であるルートGEDACにおける逸脱地点(ノードE)直後のリンクL11と、通行経路特定部218により特定された通行経路であるルートGEFにおける逸脱地点(ノードE)後のリンクL8のコスト調整値を、種別毎に比較する。例えば、図6(a)に示すようなコストデータ127の場合、リンクL11とリンクL8のコスト調整値を比較すると、ユーザが実際に通行したリンクL8の方が、「時間」種別及び「歩道」種別のコスト調整値は高いが、「領域」種別及び「街灯」種別のコスト調整値が低いことが分かる。このことから、ユーザは、時間がかかることや歩道と車両が分かれていないという交通面での安全性よりも、街灯が少なく、暗くなると安全性が低下する公園内を通過するという治安面での安全性を重視する嗜好であることが予測される。即ち、ユーザは、治安面での安全性を重視するため、街灯の少ない公園内を通過すうリンクL11を避けて、設定された経路を逸脱し、実際にはリンクL8を通行したものと考えられる。
【0098】
補正部220は、領域認識部217により認識された領域及び/又は比較部219による比較結果に基づいてユーザの嗜好を予測し、コストデータ127において、ユーザの嗜好に沿うように、リンクに対応付けされたコスト調整値を種別毎に補正する(ステップS11)。図10の例において、補正部220は、領域認識部217により認識された領域40及び比較部219による比較結果に基づいて、ユーザは、治安面での安全性を重視しており、リンクL11に対応する道路の通行を嫌っていると予測する。よって、補正部220は、図6(b)に示すように、コストデータ127において、例えば、リンクL11の治安面での安全性に関する種別である「領域」種別及び「犯罪発生率」種別のコスト調整値を0.1ずつ増加させる。これによれば、リンクL11のリンクコストが増加するため、探索部213による経路探索の際にリンクL11を含む経路を探索する可能性が低くなる。換言すると、探索部213による経路探索の際に、ユーザが嫌うリンクL11を含む経路を自動的に回避することが可能となる。
【0099】
探索部213は、記憶部209に記憶されている経路計算用情報124に基づいて、要求受付部216により要求を受けた時点における携帯電話機3の現在位置から目的地までの経路を再探索する。このとき、探索部213は、補正部220により補正された最新のコストデータ127に基づいて、経路の探索をし、より安全で適切な経路を設定するとともに、探索結果情報を作成する(ステップS4)。図10の例において、探索部213は、図6(b)に示すような、補正部220により補正された最新のコストデータ127に基づいて、再探索を行い、現在位置からノードF及びBを通過して目的地ノードCへ至る経路(ルートEFBC)を安全な経路として設定するとともに、探索結果情報を作成する。探索結果情報は、探索結果情報送信部214により、携帯電話機3に送信される。携帯電話機3は、受信した探索結果情報に基づいて、画面上に設定された経路(ルートEFBC)を誘導経路とする案内図を表示させ、ユーザを目的地(ノードC)まで誘導する。ステップS6において、到着判定部215により携帯電話機3が目的地に到着したと判定されまで、探索ユニット200は、ステップS4乃至S11の処理を繰り返し行う。
【0100】
このように、ユーザが携帯する携帯電話機3、即ち移動体が、サーバ1により設定された推奨経路を意図的に逸脱した場合、ユーザは、実際に通行した道路の環境を好むと判断する。さらに、サーバ1は、実際に通行した道路の環境を解析してコスト調整値を補正し、補正後のコスト調整値に基づいて、ユーザが好む環境を備える道路を優先的に選択するようにその後の経路を再探索する。
【0101】
例えば、後日ユーザによって、出発地ノードG及び目的地ノードCが指定されたとする。この場合、探索部213は、補正部220により補正された最新のコストデータ127に基づいて、経路の探索及び探索結果情報の作成を行う。つまり、探索部213は、出発地ノードGから目的地ノードCに至る候補経路であるルートGEDAC、ルートGEFBC、ルートGJACそれぞれのトータルコストを、最新のコストデータ127に基づいて算出する。最新のコストデータが図6(b)に示すようなものであれば、ルートGEDACのトータルコストは12.8、ルートGEFBCのトータルコストは12.6、ルートGJACのトータルコストは12.5と算出される。よって、探索部213は、算出したトータルコストが最小の候補経路であるルートGJACを経路として設定するとともに、ルートGJACを用いてユーザを誘導するための探索結果情報を作成する。このように、探索部213は、出発地及び目的地が同じであっても、補正後のコストデータ127に基づいて探索を行うことで、リンクL11を含むルートGEDACではなく、リンクL11を回避したルートGJACを経路として設定することになる。つまり、ユーザの嗜好に沿った安全な経路を的確に設定することが可能となる。
【0102】
なお、本実施例における探索処理では、検出部216により携帯電話機3が設定された経路を逸脱したことを検出した場合に、当該経路とは異なる別の安全な経路の要求を受けたとして、再探索を行うこととしている。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、要求情報受信部が携帯電話機3から要求情報を受信した場合に、当該経路とは異なる別の安全な経路の要求を受けたとして、再探索を行うこととしてもよい。つまり、探索部213は、経路からの逸脱を検出したタイミングで自動的に再探索を行ってもよいし、ユーザから指定された任意のタイミングで再探索を行ってもよい。
【0103】
また、本実施例では、図6に示すように、コストデータ127におけるコスト調整値が「時間」種別、「歩道」種別、「領域」種別及び「街灯」種別を有することとしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、コスト調整値が有する種別は任意に設定することができる。
【0104】
また、本実施例における探索処理で補正部220は、図6及び図9を例として、比較部219によりリンクL8とリンクL11を比較し、ユーザが実際に通行したリンクL8の方が、「領域」種別及び「街灯」種別のコスト調整値が低いことから、ユーザは、街灯が少なく、公園内を通過するリンクL8を嫌う、治安面での安全性を重視する嗜好であると判断している。この他にも、補正部220は、比較部219によるリンクの比較結果に基づいて、例えば「犯罪発生率」種別のコスト調整値が高いリンクを嫌う傾向であれば治安面での安全性を重視する嗜好であると判断して「犯罪発生率」種別及び「街灯」種別のコスト調整値を増加させたり、「歩道」種別のコスト調整値が高いリンクを嫌う傾向であれば交通面での安全性を重視する嗜好であると判断して「歩道」種別及び「人通り」種別のコスト調整値を増加させたりする。つまり、比較部218によるリンクの比較結果に基づいて、補正部220がどのようにコスト調整値を補正するかは、任意に設定することができる。
【0105】
また、本実施例において、リンクコストは、基本コストの値と基本コストにコスト調整値を乗じた値との総和であるとしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、基本コスト及びコスト調整値に基づいてどのようにリンクコストを算出するかは任意に設定することができる。
【0106】
また、本実施例では、領域を通過するリンクをユーザが嫌った場合、コストデータ127において、「領域」種別のコスト調整値を補正し、補正後のコストデータ127に基づいて再探索を行うことで、その領域を通過するリンクを回避した経路を設定することとしている。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、領域を通過するリンクをユーザが嫌った場合、その領域を通過するリンクやその領域のそばのリンクを回避した経路を設定することとしてもよい。この場合、「領域」種別のコスト調整値は必要なく、領域認識部217において認識された領域に基づいて、リンクデータ126を参照することで、その領域を通過するリンクやその領域のそばのリンクを特定し、回避することとする。
【0107】
また、本実施例では、階段や横断歩道など平均徒歩移動速度では移動できない道路に対応するリンクについて、「時間」種別のコスト調整値を設定することとしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、リンク毎に移動速度や待ち時間を設定することとしてもよい。この場合、探索部213は、待ち時間を含むリンク上の移動時間を算出し、当該移動時間に基づいて、複数の候補経路の中から「最短時間」の経路を探索し、設定する。
【0108】
また、本実施例における道路とは、舗装された道に限らず、歩行者が通行可能な道であって、例えば遊歩道等も含むものとする。
【0109】
また、本実施例では、探索ユニット200がサーバ1に搭載され、サーバ1が探索処理を実行することとしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、探索ユニット200が移動体が有する端末装置(携帯電話機3等)に搭載され、端末装置が探索処理を実行することとしてもよい。この場合、端末装置は、本発明におけるナビゲーション装置として機能する。
【0110】
このように、本実施例のナビゲーションシステム100によれば、安全性に関する種別という視点で、設定された経路とユーザが実際に通行した経路を比較し、比較結果に基づくユーザの嗜好をデータとして保存したり、リアルタイムに取得したりする。これによれば、ナビゲーションシステム100は、各ユーザの嗜好を考慮して、安全性の高い経路の探索が可能となる。また、ナビゲーションシステム100は、自動又はユーザが指定した任意のタイミングで再探索を行うため、適切なタイミングで、各ユーザにとっての安全性を考慮した経路の探索ができる。つまり、ナビゲーションシステム100によれば、徒歩移動や周囲環境の安全性に基づく具体的な条件を組み入れることで、ユーザが安全に利用できる経路を適切なタイミングで探索することが可能となる。
【0111】
[変形例]
上記の実施例では記載していないが、ナビゲーションシステム100は、経路を探索する際に、通行規制情報を考慮することとしてもよい。例えば、駅構内通路や地下通路、施設内(屋外/屋内)通路に関し、通行可能な時間帯を加味した上で経路を探索することとしてもよいし、エスカレータやオートウォーク等に関し、進行方向を加味した上で経路を探索することとしてもよい。エスカレータやオートウォーク等は、時間帯によって進行方向が変わる場合も考えられるため、時間帯も考慮することが望ましい。
【0112】
また、ナビゲーションシステム100は、経路を探索する際にマルチパスの影響が大きいと考えられる経路を回避することとしてもよい。マルチパスとは、放送や通信に使われる電波が、発射された後で建物などに反射して受信されるものである。マルチパスが強いと、直接受信する電波の信号がひずみ、通信品質が低下することから、携帯電話機3等を有するユーザを誘導する際には、マルチパスの影響が大きいと考えられる経路を回避することが望ましい。例えば、道路沿いの建物の高さや密集度、アーケードやアンダーパスなどの屋根に類する人工造形物を有する通路か否か等を考慮することで、マルチパスの影響が大きいと考えられる経路を回避する。具体的には、コストデータ127において「マルチパス」種別のコスト調整値を設定し、マルチパスの影響が大きい道路のコスト調整値を増加させることで、マルチパスの影響が大きい経路を回避することが可能となる。なお、マルチパスの影響が大きいと考えられる経路を回避するのではなく、そのような経路を用いて誘導する場合に、通行時にGPS測位精度が低下する点に関し、ユーザに注意を喚起することとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】本実施例に係るナビゲーションシステムのハードウェア構成の一例を示す図である。
【図2】本実施例に係るサーバの概要構成の一例を示すブロック図である。
【図3】経路計算用情報のデータ構成の一例を示す図である。
【図4】ノードデータのデータ構成の一例を示す図である。
【図5】ノード及びリンクの例を示す図である。
【図6】コストデータのデータ構成の一例を示す図である。
【図7】本実施例に係る携帯電話機の概要構成の一例を示すブロック図である。
【図8】探索ユニットの機能構成を示すブロック図である。
【図9】探索処理のフローチャートである。
【図10】本実施例において探索した経路を説明する図である。
【符号の説明】
【0114】
1 サーバ
2 ネットワーク
3 携帯電話機
11、26 記憶部
12 通信部
13、28 システム制御部
21 無線通信部
22 音声入力部
23 音声出力部
24 表示部
25 操作部
27 GPS測位部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体が移動する際の誘導を行うナビゲーション装置において、
前記移動体の出発地及び目的地に関する指示情報を受信する指示情報受信手段と、
前記指示情報に基づいて、前記出発地及び前記目的地を設定する地点設定手段と、
前記地点設定手段により設定された前記出発地から前記目的地までの経路を設定する経路設定手段と、
前記移動体が移動する途中で、前記経路設定手段により設定された経路とは別の安全な経路の要求を受ける要求受付手段と、
前記要求受付手段により要求を受けると、前記目的地までの前記安全な経路を再探索して設定する再探索手段と、を備えることを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項2】
前記安全な経路は、明るい地物を通過する経路であることを特徴とする請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項3】
前記明るい地物は街灯であって、
前記安全な経路は、前記街灯の設置数が他の経路に比して多い経路であることを特徴とする請求項2に記載のナビゲーション装置。
【請求項4】
前記明るい地物は店舗であって、
前記安全な経路は、前記店舗を通過する経路であることを特徴とする請求項2又は3に記載のナビゲーション装置。
【請求項5】
前記経路設定手段により設定された経路が暗い領域を通過する経路である場合、
前記安全な経路は、前記暗い領域を回避する経路であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のナビゲーション装置。
【請求項6】
前記暗い領域は公園であることを特徴とする請求項5に記載のナビゲーション装置。
【請求項7】
前記要求受付手段は、
前記移動体が前記経路設定手段により設定された経路から逸脱したことを検出する検出手段を備え、
前記検出手段により前記移動体が前記経路から逸脱したことを検出した場合に、前記安全な経路の要求を受けることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載のナビゲーション装置。
【請求項8】
前記検出手段により前記移動体が前記経路から逸脱したことを検出した場合に、逸脱地点から先の当該経路に存在する領域を認識する領域認識手段を備え、
前記再探索手段は、前記逸脱地点から前記目的地までの前記安全な経路を再探索して設定するものであって、
前記安全な経路は、前記領域認識手段により認識された領域を回避する経路であることを特徴とする請求項7に記載のナビゲーション装置。
【請求項9】
前記要求受付手段は、
前記経路設定手段により設定された経路とは別の安全な経路を要求する要求情報を受信する要求情報受信手段をさらに備え、
前記要求情報受信手段により前記要求情報を受信した場合に、前記安全な経路の要求を受けることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載のナビゲーション装置。
【請求項10】
道路に対応するリンクを示すリンクデータと、道路上の所定の地点に対応するノード及び前記ノードを端点とするリンクを示すノードデータと、前記リンクに対応するコストを示すコストデータとを記憶する記憶手段をさらに備え、
前記コストデータは、前記リンクの基本コストに、安全性に関する複数種別のコスト調整値が対応付されたものであって、
前記再探索手段は、前記リンクデータ及び前記ノードデータと、前記基本コスト及び前記コスト調整値に基づいて算出されたトータルコストとに基づいて、前記目的地までの前記安全な経路を再探索することを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載のナビゲーション装置。
【請求項11】
前記移動体の現在位置を示す現在位置情報を受信する現在位置情報受信手段と、
前記現在位置情報が示す前記現在位置に基づいて、前記移動体が実際に通行した経路を特定する通行経路特定手段と、
前記経路設定手段により設定された経路と、前記通行経路特定手段により特定された通行経路とを安全性の観点から比較する比較手段と、
前記比較手段による比較結果に基づき、前記コストデータにおいて、前記安全性に関する複数種別のコスト調整値を補正する補正手段をさらに備えることを特徴とする請求項10に記載のナビゲーション装置。
【請求項12】
前記補正手段によって、安全性を低くする方向に前記コスト調整値を補正する幅には、制限が設定されていることを特徴とする請求項11に記載のナビゲーション装置。
【請求項13】
前記コストデータは、前記リンクの基本コストに対応付けて、当該リンク上における前記移動体の移動速度を考慮したコスト調整値を有していることを特徴とする請求項10乃至12のいずれか一項に記載のナビゲーション装置。
【請求項14】
前記コストデータは、前記リンクの基本コストに対応付けて、当該リンク上におけるマルチパスの影響を考慮したコスト調整値を有していることを特徴とする請求項10乃至13のいずれか一項に記載のナビゲーション装置。
【請求項15】
前記コストデータにおいて、前記リンクの基本コストに対応付けされた前記コスト調整値は、時間帯によって変化することを特徴とする請求項10乃至14のいずれか一項に記載のナビゲーション装置。
【請求項16】
前記経路設定手段は、前記出発地から前記目的地までの候補経路が複数存在する場合に、前記目的地までの時間が最短である候補経路を、前記出発地から前記目的地までの経路として設定し、
前記再探索手段は、前記目的地までの候補経路が複数存在する場合に、前記目的地までの時間が最短である候補経路を、前記目的地までの前記安全な経路として設定することを特徴とする請求項1乃至15のいずれか一項に記載のナビゲーション装置。
【請求項17】
前記移動体は歩行者であることを特徴とする請求項1乃至16のいずれか一項に記載のナビゲーション装置。
【請求項18】
移動体が移動する際の誘導を行うナビゲーション装置により実行される経路探索方法であって、
前記移動体の出発地及び目的地に関する指示情報を受信する指示情報受信工程と、
前記指示情報に基づいて、前記出発地及び前記目的地を設定する地点設定工程と、
前記地点設定工程により設定された前記出発地から前記目的地までの経路を設定する経路設定工程と、
前記移動体が移動する途中で、前記経路設定工程により設定された経路とは別の安全な経路の要求を受ける要求受付工程と、
前記要求受付工程により要求を受けると、前記目的地までの前記安全な経路を再探索して設定する再探索工程と、を備えることを特徴とする経路探索方法。
【請求項19】
移動体が移動する際の誘導を行うコンピュータにより実行される経路探索プログラムであって、
前記移動体の出発地及び目的地に関する指示情報を受信する指示情報受信手段、
前記指示情報に基づいて、前記出発地及び前記目的地を設定する地点設定手段、
前記地点設定手段により設定された前記出発地から前記目的地までの経路を設定する経路設定手段、
前記移動体が移動する途中で、前記経路設定手段により設定された経路とは別の安全な経路の要求を受ける要求受付手段、
前記要求受付手段により要求を受けると、前記目的地までの前記安全な経路を再探索して設定する再探索手段、として前記コンピュータを機能させることを特徴とする経路探索プログラム。
【請求項20】
請求項19に記載の経路探索プログラムを記憶したことを特徴とする記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−229108(P2009−229108A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−71664(P2008−71664)
【出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【出願人】(595105515)インクリメント・ピー株式会社 (197)
【Fターム(参考)】