説明

ハイブリッド車両の制御装置

【課題】内燃機関と電動機とを併用または組み合わせて走行するハイブリッド車両において、バッテリの充電処理と排気浄化装置の浄化能力の再生処理とをより効率的に行うことにより、ハイブリッド車両のドライバビリティまたは燃費を向上させる技術を提供する。
【解決手段】ハイブリッド車両において、排気浄化装置の浄化能力の再生処理とバッテリの充電処理の一方の処理を実行する際(S102)には、他方の処理の実行要求の有無を確認する(S103)こととし、両方の処理を可能な限り同時に行うことによってドライバビリティと燃費が悪化する機会を可及的に減少させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車両の制御装置に関し、詳しくは、排気浄化装置の浄化能力の再生処理及びバッテリの充電処理についての制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、内燃機関に電動機を組み合わせ、内燃機関の出力及び/又は電動機の出力を併用または組み合わせて走行可能としたハイブリッド車両が実用化されている。このハイブリッド車両では、内燃機関は必要に応じて間欠的に運転されるとともに、効率の高い運転領域を選択して運転することが可能であるため、内燃機関の出力のみで走行する車両に比較して燃費及び排気浄化性能の点において有利である。
【0003】
しかしながら、このハイブリッド車両においても、内燃機関の運転に伴う排気ガスの排出は避けることができず、内燃機関から排出される排気ガスを浄化するための排気浄化装置の設置が必要となる。
【0004】
この排気浄化装置としては、内燃機関の排気中のNOxを浄化するための吸蔵還元型N
Ox触媒(以下、「NOx触媒」ともいう。)や排気中の微粒子物質を浄化するパティキュレートフィルタ(以下、「フィルタ」ともいう。)が知られている。
【0005】
NOx触媒については、このNOx触媒に排気中のSOxが吸蔵され、NOxの吸蔵能力が低下するSOx被毒を解消するために、NOx触媒の床温を上昇させるとともに還元剤を供給する処理が行われる(以下、「SOx再生処理」という。)。
【0006】
一方、フィルタについては、捕集された微粒子物質の堆積量が増加すると、フィルタの目詰まりによって排気における背圧が上昇し機関性能が低下するので、例えばフィルタに導入される排気の温度を上昇させることによりフィルタの温度を上昇させ、捕集された微粒子物質を酸化除去する処理が行われる(以下、「PM再生処理」という。)。
【0007】
これらのSOx再生処理及びPM再生処理においては、内燃機関の機関負荷や機関回転
数を通常運転時より大きく設定することで排気の温度を上昇させることが行われている。
【0008】
さらに、上述のハイブリッド車両においては少なくとも電動機の電力源となるバッテリを充電する処理が必要となる。このバッテリ充電処理においても、上記のSOx再生処理
やPM再生処理におけると同様、内燃機関の機関負荷や機関回転数が大きく設定される。そして、従来、上述のような処理が実行される度に、システムとしてのドライバビリティや燃費が悪化する場合があった。
【特許文献1】特開2002−242721号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、内燃機関と電動機とを併用または組み合わせて走行するハイブリッド車両において、バッテリの充電処理と排気浄化装置の浄化能力の再生処理とをより効率的に行うことにより、ハイブリッド車両のドライバビリティまたは燃費を向上させる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明は、ハイブリッド車両において、排気浄化装置の浄化
能力の再生処理とバッテリの充電処理の一方の処理を実行する際には、他方の処理の実行要求の有無を確認することとし、両方の処理を可能な限り同時に行うことによってドライバビリティと燃費が悪化する機会を可及的に減少させることを最大の特徴とする。
【0011】
より詳しくは、内燃機関と、
電力によって作動し前記内燃機関の出力のアシストを行う電動機と、
前記内燃機関からの排気が通過する排気通路に設けられ該排気通路を通過する排気を浄化するとともに、再生処理によって浄化能力が再生される排気浄化装置と、
少なくとも前記電動機の作動に用いられる電力源であり、充電処理において電力が供給されて充電されるバッテリと、
前記内燃機関の負荷または回転数に応じた電力を発電し、前記充電処理において前記バッテリに電力を供給する発電機と、
前記排気浄化装置の前記再生処理の実行要求に基づいて、前記内燃機関の負荷および/または回転数を増加させて前記再生処理を実行する再生処理手段と、
前記バッテリの充電処理の実行要求に基づいて、前記内燃機関の負荷および/または回転数を増加させて前記充電処理を実行する充電処理手段と、
を備え、
前記再生処理についての実行要求があった場合には、該再生処理を実行するとともに前記充電処理の実行要求の有無を確認する第1複数処理実行手段と、
前記充電処理についての実行要求があった場合には、該充電処理を実行するとともに前記再生処理の実行要求の有無を確認する第2複数処理実行手段と、のうち少なくとも一方をさらに備えたことを特徴とする。
【0012】
ここで、ハイブリッド車両においては、バッテリの充電処理と排気浄化装置の浄化能力の再生処理とを各々実行する必要がある。このバッテリの充電処理においては、内燃機関の負荷および/または回転数を増加させて発電機による発電量を増加させる。そして、バッテリを放電状態から充電状態に切換えて、発電機で発電された電力をバッテリに供給する。また、排気浄化装置の浄化能力の再生処理(具体的には、PM再生処理またはSOx
再生処理)においても、同様に内燃機関の負荷および/または回転数を増加させて排気の温度を上昇させ、そのことにより排気浄化装置の温度を上昇させる場合がある。
【0013】
従来から、バッテリの充電処理と、排気浄化装置の浄化能力の再生処理とは独立に行われていた。そうすると、各々の処理が実行される度にドライバビリティの悪化や燃費の悪化が生じることとなり、各処理が効率的に行われているとは言えなかった。
【0014】
そこで、本発明におけるハイブリッド車両の制御装置は、PM再生処理やSOx再生処
理についての実行要求があった場合には、それらの処理を実行するとともにバッテリの充電処理の実行要求の有無を確認する第1複数処理実行手段と、反対に、バッテリの充電処理についての実行要求があった場合には、その処理を実行するとともにPM再生処理やSOx再生処理の実行要求の有無を確認する第2複数処理実行手段と、のうち少なくとも一
方をさらに備えることとした。
【0015】
そうすれば、内燃機関の負荷および/または回転数を増加させた際のエネルギをPM再生処理やSOx再生処理とバッテリの充電処理との両方のために用いることができ、エネ
ルギを有効に利用することができる。その結果、ハイブリッド車両のドライバビリティや燃費を向上させることができる。
【0016】
また、本発明においては、前記充電処理の実行要求は、所定の第1実行条件が満たされた場合に出され、前記第1複数処理実行手段は、前記所定の第1実行条件を緩和した上で、前記充電処理の実行要求の有無を確認するようにしてもよい。さらに、前記再生処理の
実行要求は、所定の第2実行条件が満たされた場合に出され、前記第2複数処理実行手段は、前記所定の第2実行条件を緩和した上で、前記再生処理の実行要求の有無を確認するようにしてもよい。
【0017】
すなわち、PM再生処理やSOx再生処理が行われる際には、バッテリの充電処理の要
求が出されているかどうかを確認するが、その際に、バッテリの充電処理が出されるべき第1実行条件を緩和させることとする。換言すると、バッテリの充電処理の要求が出され易い状態にしておく。
【0018】
同様に、バッテリの充電処理が行われる場合には、PM再生処理やSOx再生処理の要
求が出されているかどうかを確認するが、その際に、PM再生処理やSOx再生処理の要
求が出されるべき第2実行条件を緩和させることとし、PM再生処理やSOx再生処理の
要求が出され易い状態にしておく。
【0019】
そうすれば、バッテリの充電処理とPM再生処理やSOx再生処理とが同時に行われる
可能性を高くすることができ、より確実に、ハイブリッド車両としてのドライバビリティと燃費とを向上させることができる。
【0020】
ここで、前記第1実行条件は、前記バッテリの充電量が所定充電量以下となったことであり、第1複数処理実行手段は、前記所定充電量の値を増加させた上で、バッテリの充電処理の実行要求の有無を確認するようにしてもよい。また、前記第2実行条件は、前記排気浄化装置への浄化物質の蓄積量が所定蓄積量以上になったことであり、前記第2複数処理実行手段は、前記所定蓄積量の値を減少させた上で、PM再生処理やSOx再生処理の
実行要求の有無を確認するようにしてもよい。
【0021】
なお、本発明における課題を解決するための手段は、可能な限り組み合わせて使用することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明にあっては、内燃機関と電動機とを併用または組み合わせて走行するハイブリッド車両において、バッテリの充電処理と排気浄化装置の浄化能力の再生処理とをより効率的に行うことにより、ハイブリッド車両のドライバビリティまたは燃費を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための最良の形態を例示的に詳しく説明する。
【実施例1】
【0024】
図1は、本実施例に係るハイブリッド車両の構成の概略を示す図である。本実施例に係るハイブリッド車両は、駆動源としてエンジン1及びモータ2を備えている。
【0025】
モータ2は例えば交流モータとして構成され、その出力軸が減速機3を介して負荷である駆動輪4と連結されており、モータ2を駆動させることにより駆動輪4を回転させることができる。さらに、駆動輪4の回転エネルギを利用してモータ2を発電運転させることによりバッテリ7に電気エネルギを蓄えることもできるようになっている。
【0026】
内燃機関としてのエンジン1については、その出力軸が動力分割機構5及び減速機3を介して駆動輪4と連結されており、エンジン1を駆動させることによっても駆動輪4を回転させることができる。また、ジェネレータ6は例えば交流発電機として構成され、その
回転軸が動力分割機構5を介してエンジン1の出力軸と連結されている。これにより、エンジン1の駆動エネルギを電気エネルギに変換し、この電気エネルギをバッテリ7に蓄えたりモータ2の駆動に用いたりすることができる。また、ジェネレータ6及びモータ2とバッテリ7との間にはインバータ8が設けられており、このインバータ8により電力の制御が行われるようになっている。また、バッテリ7には、バッテリの充電量を検出する充電量センサ15が設けられている。
【0027】
このハイブリッド車両においても、エンジン1には排気マニホールドを介して排気管9が接続されており、排気管9には、エンジン1からの排気中のNOxを浄化する吸蔵還元
型NOx触媒(以下、NOx触媒)と、排気中の微粒子物質を捕集するフィルタとが組み合わされたDPNR10が設けられている。
【0028】
また、本ハイブリッド車両には、図示しない入出力装置,制御プログラムや制御マップ等の記憶に用いられる記憶装置(ROM,RAM等),中央処理装置(CPU)及びタイマカウンタ等を備えたECU(電子制御ユニット)20が併設されている。ECU20は、充電量センサ15の他、各種センサからの情報に基づいてエンジン1,ジェネレータ6及びモータ7などを総合的に制御する装置であり、バッテリ7の充電処理やDPNR10の浄化能力の再生処理に関する制御も実行する。
【0029】
ここで、DPNR10においては、NOx触媒に排気中のSOxが吸蔵され、浄化能力が低下するSOx被毒を解消するために、NOx触媒の床温を上昇させるとともに還元剤を供給してSOx再生処理が行われる。また、DPNR10においては、捕集された微粒子物
質(PM:Particulate Matter)の堆積量が増加すると、フィルタの目詰まりによって排気における背圧が上昇し機関性能が低下するので、フィルタの温度を上昇させて捕集された微粒子物質を酸化除去するPM再生処理が行われる。
【0030】
そして、本実施例に係るSOx再生処理またはPM再生処理においては、エンジン1の
負荷及び回転数を増加させ、排気のエネルギを増加させることにより排気の温度を上昇させる。そして、この高温の排気をDPNR10に導入することによりDPNR10をPM再生処理またはSOx再生処理が可能な温度まで上昇させることとしている。
【0031】
次に、本ハイブリッド車両におけるバッテリ充電制御について説明する。バッテリ7の充電量が減少しているときにはECU20によって充電制御が行われる。すなわち、エンジン1の負荷及び回転数を増加させる。そして、ジェネレータ6による発電量を増加させた上で、発電された電力をバッテリに供給する。
【0032】
なお、バッテリ7への電力の充電状態/放電状態は、ジェネレータ6の発電量を調整することによって制御される。すなわち、ECU20は、エンジン1よるジェネレータ6の駆動を制御することによって発電量を調整し、バッテリ7への充電量と放電量の関係を調整することによってバッテリ7への電力の充電状態/放電状態を制御する。
【0033】
このように、本ハイブリッド車両においては、エンジン1の負荷および回転数を上昇させてPM再生処理、SOx再生処理及び、バッテリ充電処理を実行する。なお、これらの
処理が実行される際には強制的にエンジン1の運転状態が変更するため、これらの処理が頻繁に実行されると車両のドライバビリティが悪化したり、燃費が悪化したりするおそれがあった。
【0034】
そこで、本実施例においては、エンジン1の負荷および回転数が増加する制御の発生頻度を低下させるために、できる限りPM再生処理、SOx再生処理とバッテリ充電処理と
を同時に行うこととした。
【0035】
図2には、本実施例におけるバッテリ充電処理ルーチンについてのフローチャートを示す。本ルーチンはECU20のROMに記憶されたプログラムであり、ECU20によって、ハイブリッド車両の電源がONされている期間中は所定期間毎に実行されるルーチンである。
【0036】
本ルーチンが実行されると、まずS101においてバッテリ7の充電要求が出されているかどうかが判定される。ここで、バッテリ7の充電要求の有無はバッテリ充電要求フラグがONされているかどうかで判定される。このバッテリ充電要求フラグは、充電量センサ15の出力がECU20に読み込まれ、例えば、充電量が最大充電時の50%以下である場合にONされる(この閾値としての50%の値を、以下、限界充電量ともいう)。ここで、バッテリ充電要求が出されていないと判定された場合には、本ルーチンが一旦終了される。一方、バッテリ充電要求が出されていると判定された場合には、S102に進む。
【0037】
S102においては、バッテリ充電処理が開始される。このバッテリ充電処理は具体的には、エンジン1の負荷がQ1、回転数がN1に設定される。このQ1、N1の値は、予め実験的に求められた一定値でもよいし、充電量センサ15の出力値に応じた値がマップから読み出されるようにしてもよい。S102の処理が終了するとS103に進む。
【0038】
S103においては、PM再生要求が出されているがどうかが確認される。ここで、PM再生要求が出されているかどうかは、PM再生要求フラグがONされているかどうかを判定することによって確認される。このPM再生要求フラグは、DPNR10の前後に設けられた図示しない差圧センサの出力をECU20に読み込み、その差圧から推定されるPMの堆積量が予め実験的に定められた限界PM堆積量以上であると判定された場合にONされるようにしてもよいし、前回のPM再生処理の終了時からの車両走行距離をカウントし、その走行距離から推定されるPMの堆積量が限界PM堆積量以上であると判定された場合にONされるようにしてもよい。
【0039】
ここで、PM再生要求が出されていないと判定された場合にはPM再生処理を行わないのでS106に進む。一方、PM再生要求が出されていると判定された場合には、S104に進む。
【0040】
S104においては、PM再生処理が開始される。具体的には、エンジン1の負荷をQ2、回転数をN2に変更してもよい。すなわち、DPNR10内のPMを酸化除去するのに必要な負荷および回転数が、バッテリ7に充電するための負荷Q1、回転数N1より大きな値である場合には、そちらに変更してもよい。また、DPNR10内のPMを酸化除去するのに必要な負荷および回転数が、バッテリ7に充電するための負荷Q1、回転数N1より小さい値である場合には、負荷及び回転数をQ1、N1のまま維持してもよい。DPNR10内のPMを酸化除去するのに必要な負荷Q2および回転数N2は、予め実験的に求められた一定値でもよいし、差圧センサの出力または、前回のPM再生処理の終了時からの走行距離に応じた値をマップから読み出すようにしてもよい。S104の処理が終了するとS105に進む。
【0041】
S105においては、PM再生処理が終了したかどうかが判定される。この判定は、差圧センサからの出力値が予め実験によって定められたPM再生終了差圧以下となった場合にPM再生処理が終了したと判定してもよいし、PM再生処理の継続時間が予め実験によって定められたPM再生完了時間以上となった場合にPM再生処理が終了したと判定してもよい。
【0042】
S105においてPM再生処理が終了したと判定された場合には、S106に進む。PM再生処理が終了していないと判定された場合には、S104の処理の前に戻り、PM再生処理が継続される。
【0043】
S106においては、SOx再生要求が出されているかどうかが判定される。具体的に
は、SOx再生要求フラグがONされているかどうかが判定される。このSOx再生要求フラグは、DPNR10の下流側に設けられた図示しないNOxセンサの出力値から推定さ
れる、DPNR10に吸蔵されたSOxの量が予め実験的に定められた限界SOx吸蔵量以上であることをもってONされるようにしてもよいし、前回のSOx再生処理の終了時か
らの車両の走行距離から推定されるSOxの量が限界SOx吸蔵量以上となったことをもってONされるようにしてもよい。
【0044】
S106においてSOx再生要求がないと判定された場合にはS109に進む。一方、
SOx再生要求があると判定された場合にはS107に進む。
【0045】
S107においては、SOx再生処理が開始される。具体的には、エンジン1の負荷を
Q3、回転数をN3に変更した上で、図示しない還元剤添加装置からDPNR10に還元剤をスパイク状に添加するリッチスパイク制御を行うようにしてもよい。すなわち、DPNR10内に吸蔵されたSOxを還元放出させることができる温度まで、DPNR10の
温度を上昇させるために必要な負荷Q3および回転数N3が、バッテリ7に充電するための負荷Q1、回転数N1あるいはPM再生処理に必要な負荷Q2、回転数N2より大きな値である場合には、そちらに変更してもよい。
【0046】
また、DPNR10内に吸蔵されたSOxを還元放出させることができる温度まで、D
PNR10の温度を上昇させるために必要な負荷Q3および回転数N3が、その時点で設定されている負荷、回転数より小さい値である場合には、負荷及び回転数を現状のまま維持してもよい。負荷Q3および回転数N3は、予め実験によって求められた一定値でもよいし、NOxセンサの出力または、前回のSOx再生処理の終了時からの走行距離に応じた値をマップから読み出すようにしてもよい。S107の処理が終了するとS108に進む。
【0047】
S108においては、SOx再生処理が終了したかどうかが判定される。この判定は、
NOxセンサからの出力値が予め実験によって定められたSOx再生終了濃度以下となった場合にSOx再生処理が終了したと判定してもよいし、SOx再生処理の継続時間が予め実験によって定められたSOx再生完了時間以上となった場合にPM再生処理が終了したと
判定してもよい。
【0048】
S108においてSOx再生処理が終了したと判定された場合にはS109に進む。S
108においてSOx再生処理が終了していないと判定された場合には、S107の処理
の前に戻り、SOx再生処理が継続される。
【0049】
次に、S109においては、バッテリ充電処理が終了したかどうかが判定される。この判定は、例えば、充電量センサ15からの出力値が満充電時の95%以上となった場合にバッテリ充電処理が終了したと判定してもよいし、バッテリ充電処理の継続時間が予め実験によって定められたバッテリ充電完了時間以上となった場合にバッテリ充電処理が終了したと判定してもよい。S109においてバッテリ充電処理が終了していないと判定された場合には、S102の処理の前に戻る。バッテリ充電処理が終了したと判定された場合には、本ルーチンを一旦終了する。
【0050】
以上、説明したように、本ルーチンにおいては、バッテリ充電処理を行う場合に、エン
ジン1の負荷及び回転数を上昇させるとともに、PM再生処理とSOx再生処理の要求の
有無を確認した。そして、PM再生処理またはSOx再生処理の要求が有った場合には、
負荷及び回転数が増加した状態を双方の処理において利用することとしている。
【0051】
従って、エンジン1の負荷及び回転数が運転者の意思とは独立して増加する機会を可及的に減少させてハイブリッド車両のドライバビリティが悪化する機会を可及的に減少させることができるとともに燃費を向上させることができる。
【0052】
次に、本実施例におけるバッテリ充電処理ルーチンの別の態様について説明する。本態様では、バッテリ充電処理を行った際に、PM再生処理及びSOx再生処理の要求の有無
を確認する点では上述の態様と同じであるが、PM再生処理及びSOx再生処理の要求の
有無を確認する前に、各々の処理の要求が出されるか否かの基準となる限界PM堆積量及び、限界SOx吸蔵量の値を減少させる態様について説明する。
【0053】
図3には、本態様に係るバッテリ充電処理ルーチン2についてのフローチャートを示す。バッテリ充電処理ルーチン2と前述のバッテリ充電処理ルーチンとの相違点は、S103の処理の前にS201の処理が挿入され、S106の処理の前にS202の処理が挿入された点である。ここでは、本ルーチンとバッテリ充電処理ルーチンとの相違点についてのみ説明する。
【0054】
S201においては、PM再生要求が出されるか否かの閾値としての限界PM堆積量を減少させる。例えば、限界PM堆積量をバッテリ充電処理ルーチンにおける値の80%まで減少させてもよい。そして、限界PM堆積量の値を減少させた上で、S103に進みPM再生要求があるかどうかを判定する。
【0055】
また、S202においては、SOx再生要求が出されるか否かの閾値としての限界SOx吸蔵量を減少させる。例えば、限界SOx吸蔵量をバッテリ充電処理ルーチンにおける値
の80%まで減少させてもよい。そして、限界SOx吸蔵量の値を減少させた上で、S1
06に進みSOx再生要求があるかどうかを判定する。
【0056】
以上のように、本態様においては、PM再生要求やSOx再生要求の有無を確認する前
に、各要求が出されるかどうかの条件を緩和してから、各要求の有無を確認するので、通常の状態よりも、PM再生要求やSOx再生要求が出され易い状態とすることができる。
【0057】
そうすれば、より高い確率で、バッテリ充電処理とPM再生処理及びSOx再生処理と
を同時に行うことができ、より確実に、ハイブリッド車両のドライバビリティ及び燃費を向上させることができる。
【0058】
なお、上記において、S104、S105、S107、S108の処理を実行するECU20は、本実施例において再生処理手段に相当する。また、S102、S109の処理を実行するECU20は、本実施例において充電処理手段に相当する。また、S102、S103、S106の処理を実行するECU20は、本実施例において第2複数処理実行手段に相当する。
【0059】
また、上記においてPM再生要求フラグがONされるかどうかの基準は限界PM堆積量とし、SOx再生要求フラグがONされるかどうかの基準は限界SOx吸蔵量としたが、この基準の他に、エンジン1の過去の運転状態の履歴を基準に加えてもよい。ここで、限界PM堆積量及び限界SOx吸蔵量は、本実施例における所定蓄積量に相当する。また、こ
れらの値と、エンジン1の過去の運転状態の履歴を含めた基準は、本実施例における第2実行条件に相当する。
【実施例2】
【0060】
次に、本発明の実施例2について説明する。本実施例においては、実施例1とは逆に、PM再生処理が行われている際に、バッテリ充電処理の要求の有無を確認する例について説明する。
【0061】
図4には、本実施例におけるPM再生処理ルーチンについてのフローチャートを示す。本ルーチンが実行されると、まずS301において、PM再生要求が出されているがどうかが確認される。PM再生要求が出されているかどうかは、実施例1と同様、PM再生要求フラグがONされているかどうかを判定することによって確認される。ここで、PM再生要求が出されていないと判定された場合には本ルーチンを一旦終了する。一方、PM再生要求が出されていると判定された場合には、S302に進む。
【0062】
S302においては、PM再生処理が開始される。具体的には、エンジン1の負荷をQ2、回転数をN2に変更してもよい。この制御の内容は実施例1のS104の処理の内容と同等である。S302の処理が終了するとS303に進む。
【0063】
S303においては、バッテリ7の充電要求が出されているかどうかが確認される。ここで、バッテリ7の充電要求の有無は実施例1と同様バッテリ充電要求フラグがONされているかどうかで判定される。ここで、バッテリ充電要求が出されていないと判定された場合には、S306に進む。一方、バッテリ充電要求が出されていると判定された場合には、S304に進む。
【0064】
S304においては、バッテリ充電処理が開始される。こ具体的には、エンジン1の負荷がQ1、回転数がN1に設定される。このQ1、N1の値は、予め実験的に求められた一定値でもよいし、充電量センサ15の出力値に応じた値がマップから読み出されるようにしてもよい。なお、Q1、N1の値よりQ2、N2の値の方が大きい場合には、エンジン1の負荷及び回転数はQ2及びN2のまま維持されてもよい。S304の処理が終了するとS305に進む。
【0065】
S305においては、バッテリ充電処理が終了したかどうかが判定される。この判定は、例えば、充電量センサ15からの出力値が満充電時の95%以上となった場合にバッテリ充電処理が終了したと判定してもよいし、バッテリ充電処理の継続時間が予め実験によって定められたバッテリ充電完了時間以上となった場合にバッテリ充電処理が終了したと判定してもよい。ここでバッテリ充電処理が終了していないと判定された場合にはS304の処理の前に戻り、バッテリ充電処理が継続される。また、バッテリ充電処理が終了したと判定された場合には、S306に進む。
【0066】
S306においては、PM再生処理が終了したかどうかが判定される。この判定は、差圧センサからの出力値が予め実験によって定められたPM再生終了差圧以下となった場合にPM再生処理が終了したと判定してもよいし、PM再生処理の継続時間が予め実験によって定められたPM再生完了時間以上となった場合にPM再生処理が終了したと判定してもよい。
【0067】
S306においてPM再生処理が終了していないと判定された場合には、S302の処理の前に戻り、PM再生処理が継続される。PM再生処理が終了したと判定された場合には本ルーチンを一旦終了する。
【0068】
以上、説明したとおり、本ルーチンにおいては、実施例1とは逆にPM再生処理が行われた際に、バッテリ充電要求の有無が確認され、バッテリ充電要求がある場合には、PM
再生処理と同時にバッテリ充電処理も実施することとした。この制御によっても、エンジン1のドライバビリティと燃費の向上を図ることができる。
【0069】
なお、本実施例においても、バッテリ充電要求の有無を確認する前に、バッテリ充電要求を出す際の基準である限界充電量を増加するようにしてもよい。
【0070】
図5にはその場合のPM再生処理ルーチン2についてのフローチャートを示す。本ルーチンにおいては、S303の処理の前にS401の処理が挿入されている。このS401においては、バッテリ充電要求が出される(バッテリ充電要求フラグがONされる)基準としての限界充電量の値を増加させる。例えば、実施例1で示した50%から60%に増加させる。
【0071】
そうすることで、よりバッテリ充電要求が出され易い状態とすることができ、PM再生処理とバッテリ充電処理をより確実に同時に行えるようにすることができる。その結果、より確実にエンジン1のドライバビリティ及び燃費を向上させることができる。
【0072】
なお、本実施例においてS302、S303の処理を実行するECU20は、第1複数処理実行手段に相当する。
【0073】
また、本実施例においてバッテリ充電要求フラグがONされるかどうかの基準は限界充電量としたが、この基準の他に、バッテリ7の充電量の減少速度や、バッテリ7自身の試用期間などを基準に加えてもよい。ここで、限界充電量は、本実施例における所定充電量に相当する。また、この値と、バッテリ7の充電量の減少速度や、バッテリ7自身の試用期間などを含めた基準は、本実施例における第1実行条件に相当する。
【0074】
また、上記において、ハイブリッド車両の制御装置は、バッテリ充電処理ルーチンとPM再生処理ルーチン、あるいは、バッテリ充電処理ルーチン2とPM再生処理ルーチン2を併用するようにしてもよいことはもちろんである。
【0075】
また、上記の実施例においては、PM再生処理あるいはSOx再生処理においてDPN
R10の温度を上昇させるためにエンジン1の負荷及び回転数を増加させる制御を例にとって説明したが、PM再生処理あるいはSOx再生処理においてDPNR10の温度を上
昇させるためにDPNR10の上流側から還元剤を添加してDPNR10の温度を上昇させる制御に対して、本発明の思想を適用しても構わない。その場合は、バッテリ充電処理のためにエンジン1の負荷及び回転数は増加して、ある程度まで、エンジン1からの排気の温度を上昇させているので、DPNR10の上流側から添加する還元剤の量を減少させることができる。このことによっても燃費の向上を期待することができる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の実施例における本発明の実施例に係るハイブリッド車両の概略構成を示す図である。
【図2】本発明の実施例1におけるバッテリ充電処理ルーチンを示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施例1におけるバッテリ充電処理ルーチン2を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施例2におけるPM再生処理ルーチンを示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施例2におけるPM再生処理ルーチン2を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0077】
1・・・エンジン
2・・・モータ
3・・・減速機
4・・・駆動輪
5・・・動力分割機構
6・・・ジェネレータ
7・・・バッテリ
8・・・インバータ
9・・・排気管
10・・・DPNR
15・・・充電量センサ
20・・・ECU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関と、
電力によって作動し前記内燃機関の出力のアシストを行う電動機と、
前記内燃機関からの排気が通過する排気通路に設けられ該排気通路を通過する排気を浄化するとともに、再生処理によって浄化能力が再生される排気浄化装置と、
少なくとも前記電動機の作動に用いられる電力源であり、充電処理において電力が供給されて充電されるバッテリと、
前記内燃機関の負荷または回転数に応じた電力を発電し、前記充電処理において前記バッテリに電力を供給する発電機と、
前記排気浄化装置の前記再生処理の実行要求に基づいて、前記内燃機関の負荷および/または回転数を増加させて前記再生処理を実行する再生処理手段と、
前記バッテリの充電処理の実行要求に基づいて、前記内燃機関の負荷および/または回転数を増加させて前記充電処理を実行する充電処理手段と、
を備え、
前記再生処理についての実行要求があった場合には、該再生処理を実行するとともに前記充電処理の実行要求の有無を確認する第1複数処理実行手段と、
前記充電処理についての実行要求があった場合には、該充電処理を実行するとともに前記再生処理の実行要求の有無を確認する第2複数処理実行手段と、のうち少なくとも一方をさらに備えたことを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項2】
前記充電処理の実行要求は、所定の第1実行条件が満たされた場合に出され、
前記第1複数処理実行手段は、前記所定の第1実行条件を緩和した上で、前記充電処理の実行要求の有無を確認することを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項3】
前記再生処理の実行要求は、所定の第2実行条件が満たされた場合に出され、
前記第2複数処理実行手段は、前記所定の第2実行条件を緩和した上で、前記再生処理の実行要求の有無を確認することを特徴とする請求項1または2に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項4】
前記第1実行条件は、前記バッテリの充電量が所定充電量以下となったことであり、
前記第1複数処理実行手段は、前記所定充電量の値を増加させた上で、前記充電処理の実行要求の有無を確認することを特徴とする請求項2に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項5】
前記第2実行条件は、前記排気浄化装置への浄化物質の蓄積量が所定蓄積量以上になったことであり、
前記第2複数処理実行手段は、前記所定蓄積量の値を減少させた上で、前記再生処理の実行要求の有無を確認することを特徴とする請求項3に記載のハイブリッド車両の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−80875(P2008−80875A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−260691(P2006−260691)
【出願日】平成18年9月26日(2006.9.26)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】