ハイブリッド車両
【課題】気筒間空燃比ばらつき異常の検出精度を確保する。
【解決手段】多気筒内燃機関および電動機と、内燃機関の気筒間空燃比ばらつき異常を検出する検出手段と、車両を内燃機関および電動機の両方で駆動させるハイブリッド(HV)モードおよび車両を内燃機関のみで駆動させるエンジンモードを実行可能な制御手段とを備える。制御手段は、HVモードのとき所定の動作線b1上を内燃機関の実際の動作点c11が移動するよう内燃機関および電動機を制御し、HVモード実行中に所定の変更要求があったとき動作線をb2に変更してエンジンモードに移行し、且つHVモード実行中にばらつき異常検出が未実行または実行中であるとき動作線の変更およびエンジンモードへの移行を禁止してハイブリッドモードを維持する。
【解決手段】多気筒内燃機関および電動機と、内燃機関の気筒間空燃比ばらつき異常を検出する検出手段と、車両を内燃機関および電動機の両方で駆動させるハイブリッド(HV)モードおよび車両を内燃機関のみで駆動させるエンジンモードを実行可能な制御手段とを備える。制御手段は、HVモードのとき所定の動作線b1上を内燃機関の実際の動作点c11が移動するよう内燃機関および電動機を制御し、HVモード実行中に所定の変更要求があったとき動作線をb2に変更してエンジンモードに移行し、且つHVモード実行中にばらつき異常検出が未実行または実行中であるとき動作線の変更およびエンジンモードへの移行を禁止してハイブリッドモードを維持する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はハイブリッド車両に係り、特に、走行用の動力源として内燃機関(エンジン)と電動機(モータ)の二種類の動力源を備えるハイブリッド車両に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、走行用の動力源として多気筒内燃機関を搭載した車両において、気筒間の空燃比ばらつき異常を車載状態で検出することが要請されており(所謂OBD;On-Board Diagnostics)、最近ではこれを法規制化する動きもある。例えば一部の気筒の燃料噴射系が故障すると、気筒間の空燃比が大きくばらついてしまい、車両の排気エミッションが悪化する。このような車両の走行を未然に防止するため上記要請が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−013967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記ハイブリッド車両においても同様の要請がある。ハイブリッド車両においては一般的に、エンジンの燃費を最適化すべく、エンジンの実際の動作点が所定の動作線上を移動するようエンジンおよびモータが制御され、両者の併用で車両が走行される。
【0005】
しかし、かかるハイブリッド車両においては、所定の変更要求があったとき動作線を変更してエンジンのみで走行するときもある。このとき仮に、エンジンおよびモータでの走行中で且つばらつき異常を検出している最中に、動作線が変更され、エンジンのみでの走行に切り替わると、切り替え前後でエンジン運転条件が変化してしまい、精度の良い検出を実行できなくなってしまう。
【0006】
そこで本発明は、以上の事情に鑑みて創案され、その目的は、気筒間空燃比ばらつき異常の検出精度を十分に確保可能なハイブリッド車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様によれば、
走行用の第1の動力源としての多気筒内燃機関と、
走行用の第2の動力源としての電動機と、
前記内燃機関の気筒間空燃比ばらつき異常を検出する検出手段と、
車両を前記内燃機関および前記電動機の両方で駆動させるための制御モードであるハイブリッドモードと、前記車両を前記内燃機関のみで駆動させるための制御モードであるエンジンモードとを実行可能である制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、
前記ハイブリッドモードにおいて、前記内燃機関の回転数とトルクによって規定される座標系における所定の動作線上を前記内燃機関の実際の動作点が移動するように前記内燃機関および前記電動機を制御し、
前記ハイブリッドモードの実行中に所定の変更要求があったとき、前記動作線を変更して前記エンジンモードに移行し、且つ、
前記ハイブリッドモードの実行中にばらつき異常検出が未実行または実行中であるときには、前記動作線の変更および前記エンジンモードへの移行を禁止し、前記ハイブリッドモードを維持する
ことを特徴とするハイブリッド車両が提供される。
【0008】
好ましくは、前記制御手段は、前記電動機に供給される電力を蓄えるバッテリの充電量が所定値以下になったときに前記変更要求を発生する。
【0009】
好ましくは、前記制御手段は、
所定のモータモード条件が成立したとき、前記車両を前記電動機のみで駆動させるための制御モードであるモータモードを実行可能であり、且つ、
ばらつき異常検出が未実行または実行中であるときに前記モータモード条件が成立したとき、前記モータモードと、車両停止時に前記内燃機関のアイドル運転を停止する停止時アイドルストップ制御とを禁止し、前記ハイブリッドモードまたは前記エンジンモードを実行する
好ましくは、前記制御手段は、
ばらつき異常検出が未実行または実行中であるときに前記モータモード条件が成立したとき、所定のキャンセル条件が成立している場合、または前記キャンセル条件が非成立で且つモータモードスイッチがオフである場合に、前記モータモードと前記停止時アイドルストップ制御とを禁止し、前記ハイブリッドモードまたは前記エンジンモードを実行する。
【0010】
好ましくは、前記制御手段は、
ばらつき異常検出が未実行または実行中であるときに前記モータモード条件が成立したとき、前記キャンセル条件が非成立で且つ前記モータモードスイッチがオンである場合に、前記モータモードを実行する。
【0011】
本発明の第2の態様によれば、
走行用の第1の動力源としての多気筒内燃機関と、
走行用の第2の動力源としての電動機と、
前記内燃機関によって駆動される発電機と、
前記電動機に供給される電力を蓄えると共に前記発電機によって充電されるバッテリと、
前記内燃機関の気筒間空燃比ばらつき異常を検出する検出手段と、
前記バッテリの充電量が所定値以下のとき、充電量が所定値を超えるまでばらつき異常検出を禁止すると共に前記内燃機関によって前記発電機を駆動して前記バッテリを充電し、充電量が所定値を超えたならばばらつき異常検出を許可する制御手段と、
を備えることを特徴とするハイブリッド車両が提供される。
【0012】
本発明の第3の態様によれば、
走行用の動力源としての多気筒内燃機関と、
前記内燃機関の気筒間空燃比ばらつき異常を検出する検出手段と、
車両停止時に停止時アイドルストップ制御を実行すると共に、車両停止時にばらつき異常検出が未実行または実行中であるときには停止時アイドルストップ制御を禁止する制御手段と、
を備えることを特徴とする車両が提供される。
【0013】
好ましくは、前記制御手段は、
車両停止前の減速時に減速時アイドルストップ制御およびフリーラン制御の少なくとも一方を実行すると共に、当該減速時にばらつき異常検出が未実行または実行中であるときには、減速時アイドルストップ制御およびフリーラン制御の少なくとも一方を禁止する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、気筒間空燃比ばらつき異常の検出精度を十分に確保可能なハイブリッド車両を提供できるという、優れた効果が発揮される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係るハイブリッド車両の概略図である。
【図2】本実施形態に係る内燃機関の概略図である。
【図3】触媒前センサおよび触媒後センサの出力特性を示すグラフである。
【図4】気筒間空燃比ばらつき度合いに応じた排気空燃比の変動を示すグラフである。
【図5】図4のU部に相当する拡大図である。
【図6】内燃機関の動作特性を示すグラフである。
【図7】車両制御の第1実施例のルーチンを示すフローチャートである。
【図8】車両制御の第2実施例のルーチンを示すフローチャートである。
【図9】車両制御の第3実施例のルーチンを示すフローチャートである。
【図10】マニュアルトランスミッション車の概略図である。
【図11】オートマチックトランスミッション車の概略図である。
【図12】車両制御の第4実施例の各エンジン停止制御を説明するためのタイムチャートである。
【図13】車両制御の第4実施例のルーチンを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づき説明する。
【0017】
図1には本実施形態に係るハイブリッド車両50を概略的に示す。ハイブリッド車両50は、内燃機関すなわちエンジン1と、エンジン1の出力軸としてのクランクシャフト1aに接続された3軸式の動力分配機構51と、動力分配機構51に接続された発電可能な第1電動機すなわち第1モータジェネレータ(以下第1モータと略称)MG1と、動力分配機構51の出力軸であるリングギヤ軸51aに接続された減速ギヤ機構52と、減速ギヤ機構52に接続された発電可能な第2電動機すなわち第2モータジェネレータ(以下第2モータと略称)MG2と、車両全体を制御する制御手段としての電子制御ユニット(以下ECUと称す)20とを備える。
【0018】
エンジン1が走行用の第1の動力源をなし、第1モータMG1が走行用の第2の動力源をなす。第2モータMG2は、第1モータMG1に供給される電力を蓄えるバッテリ53に充電するための発電機として主に機能する。
【0019】
ECU20は、エンジン1を制御するエンジンECU、モータMG1,MG2を制御するモータECU、およびバッテリ53を管理するバッテリECUを含めて構成することができる。
【0020】
エンジン1は、ガソリンや軽油などの燃料を燃焼させて動力を発生し、例えば後に詳述するような多気筒火花点火式内燃機関から構成される。
【0021】
動力分配機構51は、遊星歯車機構から構成され、中心部に配置されたサンギヤ54と、外周部に配置されたリングギヤ55と、これらサンギヤ54およびリングギヤ55の間に配置された複数のピニオンギヤ56と、これらピニオンギヤ56を自転かつ公転自在に保持するキャリア57とを備える。
【0022】
キャリア57にはエンジン1のクランクシャフト1aが連結され、サンギヤ54には第1モータMG1が連結され、リングギヤ55にはリングギヤ軸51aを介して減速ギヤ機構52が連結されている。
【0023】
第1モータMG1が発電機として機能するときには、キャリア57から入力されるエンジン1からの動力をサンギヤ54側とリングギヤ55側に各ギヤ比に応じて分配する。
【0024】
また第1モータMG1が電動機として機能するときには、キャリア57から入力されるエンジン1からの動力と、サンギヤ54から入力される第1モータMG1からの動力を統合して、リングギヤ55側に出力する。リングギヤ55に出力された動力は、リングギヤ軸51aからギヤ機構58およびデファレンシャルギヤ59を介して、最終的に車両の駆動輪60a,60bに伝達される。
【0025】
第1モータMG1および第2モータMG2は、いずれも電動機と発電機の両方の機能を兼ね備える周知の同期発電電動機として構成されており、それぞれ第1インバータ61および第2インバータ62を介してバッテリ53と電力のやりとりを行なう。
【0026】
インバータ61,62とバッテリ53とを接続する電力ライン63は、各インバータ61,62が共用する正極母線および負極母線を有し、モータMG1,MG2のいずれかで発電される電力を他のモータで消費できるようになっている。したがって、バッテリ53は、モータMG1,MG2のいずれかから生じた電力や不足する電力により充放電されることになる。なお、モータMG1,MG2により電力収支のバランスをとるものとすれば、バッテリ53は充放電されない。
【0027】
ECU20には、モータMG1,MG2を制御するために必要な信号、例えばモータMG1,MG2の回転子の回転位置を検出する回転位置検出センサ(図示せず)からの信号や、モータMG1,MG2に印加される相電流を検出する電流センサ(図示せず)からの信号などが入力される。ECU20は、回転位置検出センサからの信号に基づいてモータMG1,MG2の回転数を演算する。ECU20からは、インバータ61,62へのスイッチング制御信号が出力される。
【0028】
ECU20には、バッテリ53を管理するのに必要な信号、例えばバッテリ53の正負端子間に設置された電圧センサ(図示せず)からの電圧信号,電力ライン63に取り付けられた電流センサ(図示せず)からの充放電電流信号,バッテリ53に取り付けられた温度センサ(図示せず)からのバッテリ温度信号などが入力される。
【0029】
またECU20は、電流センサにより検出された充放電電流の積算値に基づいてバッテリ53の充電量SOCを演算したり、充電量SOCとバッテリ温度に基づいてバッテリ53を充放電してもよい最大許容電力である入出力制限を演算したりしている。
【0030】
ECU20は、バッテリ53の充電量SOCを算出する際、電流センサで検出されたバッテリ53の充放電電流を積算していく。このとき充電電流をプラス値とし、放電電流をマイナス値とし、充放電電流積算値を充電量SOCに加算していく。なお、充電量SOCはこれ以外の方法で算出しても良い。このようにECU20は、バッテリ充電量を検出する充電量検出手段としても機能する。
【0031】
ECU20は、いずれも図示しないCPU、ROM、RAM、入出力ポート等を備えて構成される。ECU20は、イグニッションスイッチ(図示せず)からのオンオフ信号,シフトレバーの操作位置を検出するシフトポジションセンサ(図示せず)からのシフトポジション信号、アクセルペダル操作量を検出するアクセル開度センサ(図2に符号15で示す)からのアクセル開度信号、ブレーキペダル操作量を検出するブレーキポジションセンサ(図示せず)からのブレーキペダルポジション信号、車速センサ64からの車速信号、車両をモータのみで駆動する旨を指示するモータモードスイッチとしてのEVスイッチ65からのオンオフ信号、車両の燃費を優先する旨を指示するエコスイッチ(図示せず)からのオンオフ信号などを、入力ポートを介して入力する。
【0032】
ECU20は、ドライバによるアクセルペダル操作量に対応したアクセル開度と、車速とに基づき、駆動軸としてのリングギヤ軸51aに出力すべき要求トルクを計算し、この要求トルクに対応する要求動力がリングギヤ軸51aに実際に出力されるように、エンジン1とモータMG1,MG2とを制御する。
【0033】
特にECU20は、車両50をエンジン1および第1モータMG1の両方で駆動させるための制御モードであるハイブリッドモードと、車両50をエンジン1のみで駆動させるための制御モードであるエンジンモードと、車両50を第1モータMG1のみで駆動させるための制御モードであるモータモードとを実行可能である。
【0034】
次に、図2を用いてエンジン1の構成を説明する。エンジン1は、シリンダブロック2に形成された燃焼室3の内部で燃料および空気の混合気を燃焼させ、燃焼室3内でピストンを往復移動させることにより動力を発生する。本実施形態のエンジン1は多気筒内燃機関、より具体的には直列4気筒火花点火式内燃機関である。内燃機関1は#1〜#4気筒を備える。但し気筒数、形式等は特に限定されない。
【0035】
図示しないが、エンジン1のシリンダヘッドには吸気ポートを開閉する吸気弁と、排気ポートを開閉する排気弁とが気筒ごとに配設されており、各吸気弁および各排気弁は、カムシャフトを含む動弁機構によって開閉駆動される。シリンダヘッドの頂部には、燃焼室3内の混合気に点火するための点火プラグ7が気筒ごとに取り付けられている。
【0036】
各気筒の吸気ポートは気筒毎の枝管4を介して吸気集合室であるサージタンク8に接続されている。サージタンク8の上流側には吸気管13が接続されており、吸気管13の上流端にはエアクリーナ9が設けられている。そして吸気管13には、上流側から順に、吸入空気量を検出するためのエアフローメータ5と、電子制御式のスロットルバルブ10とが組み込まれている。吸気ポート、枝管、サージタンク8及び吸気管13により吸気通路が形成される。
【0037】
吸気通路、特に吸気ポート内に燃料を噴射するインジェクタ(燃料噴射弁)12が気筒ごとに配設されている。インジェクタ12から噴射された燃料は吸入空気と混合されて混合気をなし、この混合気が吸気弁の開弁時に燃焼室3に吸入され、ピストンで圧縮され、点火プラグ7で点火燃焼させられる。
【0038】
一方、各気筒の排気ポートは排気マニフォールド14に接続される。排気マニフォールド14は、その上流部をなす気筒毎の枝管14aと、その下流部をなす排気集合部14bとからなる。排気集合部14bの下流側には排気管6が接続されている。排気ポート、排気マニフォールド14及び排気管6により排気通路が形成される。
【0039】
排気管6の上流側と下流側にはそれぞれ三元触媒からなる触媒、すなわち上流触媒11と下流触媒19が直列に取り付けられている。上流触媒11の上流側及び下流側にそれぞれ排気ガスの空燃比を検出するための第1及び第2の空燃比センサ、即ち触媒前センサ17及び触媒後センサ18が設置されている。これら触媒前センサ17及び触媒後センサ18は、上流触媒11の直前及び直後の位置に設置され、排気中の酸素濃度に基づいて空燃比を検出する。このように上流触媒11の上流側の排気合流部に単一の触媒前センサ17が設置されている。
【0040】
上述の点火プラグ7、スロットルバルブ10及びインジェクタ12等はECU20に電気的に接続されている。ECU20には、図示されるように、前述のエアフローメータ5、触媒前センサ17、触媒後センサ18のほか、エンジン1のクランク角を検出するクランク角センサ16、アクセル開度を検出するアクセル開度センサ15、エンジン1の冷却水温度を検出するための水温センサ21、その他の各種センサが電気的に接続されている。ECU20は、各種センサの検出値等に基づいて、所望のエンジン出力が得られるように、点火プラグ7、スロットルバルブ10、インジェクタ12等を制御し、点火時期、燃料噴射量、燃料噴射時期、スロットル開度等を制御する。なおスロットル開度は通常アクセル開度に応じた開度に制御される。
【0041】
ECU20は、クランク角センサ16の出力に基づいてエンジン回転数Ne(rpm)を計算する。ここでエンジン回転数は単位時間当たりのエンジン回転数であり、回転速度と同義である。
【0042】
触媒前センサ17は所謂広域空燃比センサからなり、比較的広範囲に亘る空燃比を連続的に検出可能である。図3に触媒前センサ17の出力特性を示す。図示するように、触媒前センサ17は、排気空燃比に比例した大きさの電圧信号Vfを出力する。排気空燃比がストイキ(理論空燃比、例えばA/F=14.6)であるときの出力電圧はVreff(例えば約3.3V)である。
【0043】
他方、触媒後センサ18は所謂O2センサからなり、ストイキを境に出力値が急変する特性を持つ。図3に触媒後センサ18の出力特性を示す。図示するように、排気空燃比がストイキであるときの出力電圧、すなわちストイキ相当値はVrefr(例えば0.45V)である。触媒後センサ18の出力電圧は所定の範囲(例えば0〜1V)内で変化する。排気空燃比がストイキよりリーンのとき、触媒後センサの出力電圧はストイキ相当値Vrefrより低くなり、排気空燃比がストイキよりリッチのとき、触媒後センサの出力電圧はストイキ相当値Vrefrより高くなる。
【0044】
上流触媒11及び下流触媒19は、それぞれに流入する排気ガスの空燃比A/Fがストイキ近傍のときに排気中の有害成分であるNOx,HCおよびCOを同時に浄化する。この三者を同時に高効率で浄化できる空燃比の幅(ウィンドウ)は比較的狭い。
【0045】
そこで上流触媒11に流入する排気ガスの空燃比がストイキ近傍に制御されるように、空燃比制御(ストイキ制御)がECU20により実行される。この空燃比制御は、触媒前センサ17によって検出された排気空燃比を所定の目標空燃比であるストイキに一致させるような主空燃比制御(主空燃比フィードバック制御)と、触媒後センサ18によって検出された排気空燃比をストイキに一致させるような補助空燃比制御(補助空燃比フィードバック制御)とからなる。
【0046】
さて、例えば全気筒のうちの一部の気筒のインジェクタ12が故障し、気筒間に空燃比のばらつき(インバランス:imbalance)が発生したとする。例えば#1気筒が他の#2、#3及び#4気筒よりも燃料噴射量が多くなり、その空燃比が大きくリッチ側にずれる場合等である。このときでも前述の主空燃比フィードバック制御により比較的大きな補正量を与えれば、触媒前センサ17に供給されるトータルガスの空燃比をストイキに制御できる場合がある。しかし、気筒別に見ると、#1気筒がストイキより大きくリッチ、#2、#3及び#4気筒がストイキよりリーンであり、全体のバランスとしてストイキとなっているに過ぎず、エミッション上好ましくないことは明らかである。そこで本実施形態では、かかる気筒間空燃比ばらつき異常を検出する手段が装備されている。このばらつき異常を検出できれば、ばらつき異常をなくすよう気筒毎の燃料噴射量補正等を行い、気筒毎のエミッションを改善できる。
【0047】
図4に示すように、気筒間空燃比ばらつきが発生すると、1エンジンサイクル(=720°CA)を1周期とした周期的な排気空燃比の変動が大きくなる。(B)の空燃比線図a,b,cはそれぞればらつき無し、1気筒のみ20%のインバランス割合でリッチずれ、及び1気筒のみ50%のインバランス割合でリッチずれの場合の、触媒前センサ17による検出空燃比A/Fを示す。見られるように、ばらつき度合いが大きくなるほど空燃比変動の振幅が大きくなる。
【0048】
ここでインバランス割合(%)とは、空燃比ばらつきの大きさを表すパラメータである。即ち、インバランス割合とは、全気筒のうちある1気筒のみが燃料噴射量ズレを起こしている場合に、その燃料噴射量ズレを起こしている気筒(インバランス気筒)の燃料噴射量がどれくらいの割合で、燃料噴射量ズレを起こしていない気筒(バランス気筒)の燃料噴射量即ち基準噴射量からズレているかを示す値である。インバランス割合をIB、インバランス気筒の燃料噴射量をQib、バランス気筒の燃料噴射量即ち基準噴射量をQsとすると、IB=(Qib−Qs)/Qsで表される。インバランス割合IBが大きいほど、インバランス気筒のバランス気筒に対する燃料噴射量ズレが大きく、空燃比ばらつき度合いは大きい。
【0049】
空燃比ばらつき異常が発生すると触媒前センサ17の出力変動が大きくなるので、この特性を利用し、当該出力変動に基づいてばらつき異常を検出することが可能である。
【0050】
本実施形態では、空燃比センサ出力の変動度合いに相関するパラメータである出力変動パラメータを算出すると共に、この出力変動パラメータと、所定の判定値とに基づき、異常を検出する。
【0051】
以下に出力変動パラメータの算出方法を説明する。図5は図4のU部に相当する拡大図であり、特に1エンジンサイクル内の触媒前センサ出力の変動を簡略的に示す。触媒前センサ出力としては、触媒前センサ17の出力電圧Vfを空燃比A/Fに換算した値を用いる。但し触媒前センサ17の出力電圧Vfを直接用いることも可能である。
【0052】
図4(B)に示すように、ECU20は、1エンジンサイクル内において、所定のサンプル周期τ(単位時間、例えば4ms)毎に、触媒前センサ出力A/Fの値を取得する。そして今回のタイミング(第2のタイミング)で取得した値A/Fnと、前回のタイミング(第1のタイミング)で取得した値A/Fn−1との差ΔA/Fnの絶対値を次式(1)により求める。この差ΔA/Fnは今回のタイミングにおける微分値あるいは傾きと言い換えることができる。
【0053】
【数1】
【0054】
最も単純には、この差ΔA/Fnが触媒前センサ出力の変動を表す。変動度合いが大きくなるほど空燃比線図の傾きが大きくなり、差ΔA/Fnが大きくなるからである。そこで所定の1タイミングにおける差ΔA/Fnの値を出力変動パラメータとすることができる。
【0055】
但し、本実施形態では精度向上のため、複数の差ΔA/Fnの平均値を出力変動パラメータとする。本実施形態では、1エンジンサイクル内において、各タイミング毎に差ΔA/Fnを積算し、最終積算値をサンプル数Nで除し、1エンジンサイクル内の差ΔA/Fnの平均値を求める。そしてさらに、Mエンジンサイクル分(例えばM=100)だけ差ΔA/Fnの平均値を積算し、最終積算値をサイクル数Mで除し、Mエンジンサイクル内の差ΔA/Fnの平均値を求める。こうして求められた最終的な平均値を出力変動パラメータとし、以下「X」で表示する。触媒前センサ出力の変動度合いが大きいほど出力変動パラメータXは大きくなる。
【0056】
なお、触媒前センサ出力A/Fは増加する場合と減少する場合とがあるので、これら各場合の一方についてだけ上記差ΔA/Fnあるいはその平均値を求め、これを出力変動パラメータとしても良い。
【0057】
また、触媒前センサ出力の変動度合いに相関する如何なる値をも出力変動パラメータとすることができる。例えば、1エンジンサイクル内における触媒前センサ出力の最大ピークと最小ピークの差(所謂ピークトゥピーク; peak to peak)、または2階微分値の最大ピークまたは最小ピークの絶対値に基づいて、出力変動パラメータを算出することもできる。触媒前センサ出力の変動度合いが大きいほど、触媒前センサ出力の最大ピークと最小ピークの差は大きくなり、また2階微分値の最大ピークまたは最小ピークの絶対値も大きくなるからである。
【0058】
算出された出力変動パラメータXが所定の判定値以上であればばらつき異常ありと判定され、算出された出力変動パラメータXが判定値より小さければばらつき異常なし、即ち正常と判定される。
【0059】
ばらつき異常検出を実行するための前提条件には、排気ガス流量の代用値である吸入空気量Ga(具体的にはその検出値)が所定値以上であることが含まれる。触媒前センサ17への十分なガス当たりを確保し、ばらつき度合いに応じたセンサ出力変動の違いを明確に出すためである。またかかる前提条件にはエンジン1が定常運転中であることが含まれる。定常運転中でない非定常運転時(特に過渡運転時)には回転数や吸入空気量が変化し、これがセンサ出力変動に影響を与え、正確な検出が困難となるからである。この定常運転にはアイドル運転が含まれる。さらに前提条件には、エンジンがストイキ制御中であることなどが含まれる。かかる前提条件が成立したとき、ばらつき異常検出が実行ないし開始される。
【0060】
ばらつき異常検出の方法は、上記の触媒前センサ出力変動を利用する方法の他、任意の方法を採用することができる。すなわちばらつき異常検出の方法は上記の方法に限定されない。
【0061】
さて、本実施形態のハイブリッド車両50においては、ハイブリッドモードのとき、エンジン1の燃費を最適化すべく、エンジン1の実際の動作点が所定の動作線上を移動するようエンジン1および第1モータMG1が制御され、両者の併用で車両が走行される。
【0062】
一方、本実施形態のハイブリッド車両50においては、ハイブリッドモードの実行中に所定の変更要求があったとき、動作線を変更してエンジンモードに移行し、エンジン1のみで走行するときもある。このとき仮に、ハイブリッドモード且つばらつき異常検出の実行中に、変更要求があり、エンジンモードに切り替わってしまうと、動作線が変更され、切り替え前後でエンジン運転条件が変化してしまい、精度の良い検出を実行できなくなってしまう。
【0063】
この点を図6を参照して説明する。図6には、本実施形態のハイブリッド車両50におけるエンジン1の動作特性を示す。図示するように、エンジン回転数(rpm)とエンジントルク(Nm)をそれぞれ横軸および縦軸とする座標系によって、エンジンの運転領域が規定されている。aで示す複数の斜線はエンジン出力に関する等出力線を表し、図の右上に向かうほど出力は増大する。なお、トルクが力に相当するのに対し、出力は単位時間当たりの仕事量に相当するため、トルクが一定でも回転数が高いほど出力は大きくなる。
【0064】
本実施形態の車両制御では、座標系内の複数の動作線がECU20に予め記憶されている。そしてハイブリッドモードおよびエンジンモードのとき、アクセル開度センサ15によって検出されたアクセル開度、すなわち出力要求に基づき、一の動作線が選択され、且つエンジンの実際の動作点が選択された動作線上を移動するように、エンジン1およびモータMG1が制御される。ここで実際の動作点とは、実際のエンジンの回転数とトルクの組によって表される座標系上の点である。
【0065】
この動作線の典型的な一例は、図6にb1で示される、燃費が最良となるような燃費最適線である。この燃費最適線b1はエンジンの高トルク域に存在する。通常のハイブリッドモードでの走行時においては、燃費最適線b1が選択されると共に、実際の動作点(c11またはc12)が燃費最適線b1上を移動するように、エンジン1およびモータMG1が制御される。
【0066】
ところで、燃費最適線bが選択されているハイブリッドモードの最中に、所定の変更要求があると、動作線はより高トルク側の動作線b2に変更され、エンジンモードに移行される。変更要求とはECU20内部で発生する変更要求信号のことであり、典型的には、バッテリ53の充電量SOCが所定値SOC1(例えば45%)以下になった時、変更要求が発生する。
【0067】
変更要求が発生した場合、モータMG1の作動が停止されると共に、モータ出力分だけエンジン出力が増加させられ、エンジンのみにより車両が走行駆動されると共に、エンジンのみにより第2モータMG2が駆動させられて発電およびバッテリ充電が行われる。そして、ハイブリッドモードのときに燃費最適線b1上にあった動作点c11またはc12は、動作線b2上の等回転且つ高出力側の動作点c21またはc22へと移動させられる。この結果、等回転を維持しつつアクセル開度ひいてはスロットル開度が増大したのと同じとなり、吸入空気量Gaひいては排気ガス流量が増加する。
【0068】
すると、触媒前センサ17への排気ガスの当たり方も変化する。従って、仮に動作線ないしモードの変更前後でばらつき異常検出を行っていたとすると、変更後にセンサ出力変動状態が変化し、精度の良い検出を実行できなくなってしまう。
【0069】
そこで本実施形態では、異常検出の精度を十分に確保するため、ハイブリッドモードの実行中にばらつき異常検出が未実行または実行中であるときには、たとえ変更要求があったとしても、動作線の変更とエンジンモードへの移行とを強制的に禁止して、ハイブリッドモードを維持する。これにより吸入空気量Gaひいては排気ガス流量が変化するのを防止し、触媒前センサ17へのガス当たり状態およびセンサ出力変動状態を一定に保持して、異常検出の精度を十分に確保することが可能となる。
【0070】
ここで、本実施形態では1トリップ中に少なくとも1回、ばらつき異常検出を行うようにしている。1トリップとは、イグニッションスイッチが1回オンされた時から次にオフされる時までの時間をいう。そして現トリップ中にばらつき異常検出が1回も行われていない未実行の場合、ハイブリッドモードの最中に変更要求があったとしても、動作線の変更およびエンジンモードへの移行を強制的に禁止し、ハイブリッドモードを維持するようにしている。かかる未実行の場合にはその後ばらつき異常検出が開始される可能性が大きいことから、ばらつき異常検出開始後に動作線および制御モードが変更されるのを未然に防止するためである。
【0071】
この動作線変更禁止を含む車両制御の好適な第1実施例を図7を参照して説明する。図7に示す制御ルーチンは、ECU20により所定の演算周期(例えば4ms)毎に繰り返し実行されることができる。
【0072】
まずステップS101では、現トリップ中のばらつき異常検出が未実行または実行中であるか否かが判断される。未実行または実行中でない場合(既に実行済みである場合)、ルーチンが終了され、未実行または実行中である場合、ステップS102に進む。
【0073】
ステップS102では、ハイブリッド(HV)モードを実行するための所定の条件であるハイブリッドモード条件が成立しているか否かが判断される。ハイブリッドモード条件は、例えば、車速Vが所定値V1(例えば40km/h)を超えているか、または車速Vが所定値V1以下で且つ水温Twが所定値Tw1(例えば75℃)以下である(つまりエンジンの暖機が終了してない)ときに成立する。
【0074】
ハイブリッドモード条件が成立していない場合、ステップS103に進んで、モータモードを実行するための所定の条件であるモータモード条件が成立しているか否かが判断される。モータモード条件は、例えば、車速Vが所定値V1以下で且つ水温Twが所定値Tw1を超えている(つまりエンジンの暖機が終了している)ときに成立する。
【0075】
ステップS102において、ハイブリッドモード条件が成立していると判断された場合、ステップS105に進んで、ハイブリッドモードが実行されると共に、動作線および制御モードの変更が禁止される。これによりハイブリッドモードが維持され、ばらつき異常検出の実行前もしくは実行中に変更要求があったとしても、動作線の変更およびエンジンモードへの移行を禁止できる。そして正確なばらつき異常検出を行うことが可能となる。
【0076】
ステップS105の後、ステップS104に進み、前述したようなばらつき異常検出に関する処理が実行される。
【0077】
他方、ステップS103においてモータモード条件が成立していると判断された場合、ステップS106に進んで、モータモードおよび停止時アイドルストップ制御が強制的に禁止されると共に、ハイブリッドモードまたはエンジンモードが実行される。ここで停止時アイドルストップ制御とは、車両停止時にエンジンのアイドル運転を停止させる制御であり、ハイブリッドモードまたはエンジンモードのときに併せて実行される制御である。
【0078】
通常時だとモータモード条件が成立したときエンジンは停止(すなわち燃料噴射および点火が停止)され、モータモードが実行される。しかしこれだとばらつき異常検出を実行できなくなってしまう。そこでエンジンの停止を禁止し、ばらつき異常検出を実行できるようにするため、モータモードおよび減速アイドルストップ制御を強制的に禁止し、ハイブリッドモードまたはエンジンモードでエンジンを運転するようにしている。これにより、本来エンジンが停止されるような運転条件下でもばらつき異常検出を好適に実行することが可能となる。特に停止時アイドルストップ制御も禁止されるため、アイドル運転中にばらつき異常検出を実行することができ、検出機会をより多く確保することができる。
【0079】
ステップS106の後、ステップS104に進み、ばらつき異常検出処理が実行される。
【0080】
なお、ステップS103においてモータモード条件が非成立と判断された場合、エンジンモードが実行され、ステップS104においてばらつき異常検出処理が実行される。
【0081】
次に、動作線変更禁止を含む車両制御の好適な第2実施例を図8を参照して説明する。図8に示す制御ルーチンも、ECU20により所定の演算周期(例えば4ms)毎に繰り返し実行されることができる。
【0082】
この第2実施例のステップS201〜S205,S208はそれぞれ第1実施例のステップS101〜S105,S106と同じである。第2実施例において第1実施例と異なるのはステップS206,S207,S209が追加されている点である。
【0083】
ステップS203においてモータモード条件が成立していると判断された場合、ステップS206に進んで、モータモードをキャンセルするための所定の条件であるキャンセル条件が非成立であるか否かが判断される。
キャンセル条件は、例えばバッテリ充電量SOCが所定値SOC1以下になったとき、または所定の電気負荷(例えばデフロスター)がオンされたときに成立し、それ以外のときには非成立である。バッテリ充電量SOCが所定値以下になったときや所定の電気負荷がオンされたときには、第1モータMG1の使用を禁止してこれによるバッテリ電力の消費を無くすと共に、バッテリ53を充電したり、電気負荷を作動させたりするのに必要な電力を確保すべく、エンジン1と第2モータMG2を作動させる必要があるからである。
【0084】
キャンセル条件が非成立であると判断された場合、すなわち第1モータMG1の使用が許可される場合、ステップS207に進んでEVスイッチ65がオンであるか否かが判断される。
EVスイッチ65がオンであると判断された場合、ステップS209に進んでモータモードが実行され、ルーチンが終了される。すなわち、ばらつき異常検出が未実行または実行中であっても、モータモード条件が成立し、キャンセル条件が非成立であり、且つEVスイッチ65がオンされているときには、ばらつき異常検出よりもドライバの意思を優先して、モータモードが実行される。このとき仮にばらつき異常検出が実行中であった場合には、ばらつき異常検出が途中で中止されることとなる。
【0085】
他方、ステップS206においてキャンセル条件が非成立でない(成立している)と判断された場合、およびステップS207においてEVスイッチ65がオンでない(オフである)と判断された場合、ステップS208に進んで、モータモードおよび停止時アイドルストップ制御が強制的に禁止されると共に、ハイブリッドモードまたはエンジンモードが実行される。この後ステップS204に進み、ばらつき異常検出処理が実行される。
【0086】
このように、第1および第2実施例によれば、本来、一定のエンジン運転条件下でばらつき異常検出できないような状況下や、異常検出自体ができないような状況下においても、一定のエンジン運転条件下でばらつき異常検出を行うことが可能となり、十分な検出精度の確保と検出機会の増大とが可能となる。
【0087】
次に、車両制御の第3実施例を図9を参照して説明する。この車両制御は動作線変更禁止を含まない。図9に示す制御ルーチンも、ECU20により所定の演算周期(例えば4ms)毎に繰り返し実行されることができる。
【0088】
ステップS301は前記ステップS101と同じである。ステップS301において、現トリップ中のばらつき異常検出が未実行または実行中であると判断された場合、ステップS302に進んで、バッテリ充電量SOCが所定値SOC1以下か否かが判断される。
バッテリ充電量SOCが所定値SOC1以下と判断された場合、ステップS303に進んでばらつき異常検出処理が禁止される。そしてステップS304においてハイブリッドモードまたはエンジンモードが実行され、主にエンジン動力を利用して発電機としての第2モータMG2を駆動し、バッテリ53を充電する。このルーチンが、ステップS302において否定判定されるまで続行される。
【0089】
他方、ステップS302においてバッテリ充電量SOCが所定値SOC1を超えたと判断された場合、ステップS305においてばらつき異常検出処理が許可される。この後は図示しない別ルーチンにおいて、前提条件成立と同時にばらつき異常検出処理が実行されることとなる。
【0090】
この第3実施例によれば、バッテリ充電量SOCの所定値SOC1以上の確保がばらつき異常検出に優先されるため、ばらつき異常検出が車両の走行駆動に支障を来すことが防止される。そしてバッテリ充電量SOCを所定値SOC1以上確保した上でばらつき異常検出が実行されるため、検出実行中にバッテリ充電量SOCの不足を理由に検出が中止されることなどが防止され、安定した検出が可能となる。
【0091】
次に、車両制御の第4実施例を説明する。この車両制御も動作線変更禁止を含まず、また、上述のようなハイブリッド車両50以外の車両に適用される。
【0092】
この第4実施例に適用される車両は、上述のハイブリッド車両50よりも一般的な図10に示す如きマニュアルトランスミッション車(以下MT車と称す)60、または図11に示す如きオートマチックトランスミッション車(以下AT車と称す)70である。
【0093】
図10に示すMT車60は、上述のエンジン1およびECU20と、摩擦式クラッチ61と、手動変速機62とを含む。なおクラッチ61および手動変速機62をアクチュエータで自動操作するセミオートマチックシステムを含む車両も、当該MT車60に含まれる。クラッチ61の入力側にはスタータモータ63が設けられ、このスタータモータ63をECU20で制御することにより、エンジン1を自動的に始動できるようになっている。
【0094】
図11に示すAT車60は、上述のエンジン1およびECU20と、トルクコンバータ71と、自動変速機72とを含む。トルクコンバータ71の入力側にはスタータモータ73が設けられ、このスタータモータ73をECU20で制御することにより、エンジン1を自動的に始動できるようになっている。
【0095】
これら車両60,70においては、ECU20が上述の停止時アイドルストップ制御を実行可能である。停止時アイドルストップ制御中、ドライバが所定の操作を行うとECU20がスタータモータ63,73をオンし、エンジン1が自動的に始動される。ドライバが行う所定の操作とは、例えばMT車60ではブレーキペダルの解除やクラッチペダルの踏み込みであり、AT車70ではブレーキペダルの解除である。
【0096】
またこれら車両60,70においては、ECU20が減速時アイドルストップ制御を実行可能である。減速時アイドルストップ制御とは、車両停止直前の減速中にエンジン1を停止する制御、すなわち燃料噴射および点火を停止する制御である。
【0097】
これら車両60,70においては、図12に示すように、車両ないしエンジン1の減速時に減速フューエルカット(F/C)制御、すなわち燃料噴射および点火を停止する制御が実行される。減速フューエルカット制御は、例えばアクセル開度Acが略全閉であり、且つエンジン回転数Neが所定のアイドル回転数(例えば800rpm)より若干高い所定の復帰回転数(例えば1200rpm)以上であるとき、実行される。
【0098】
通常の車両では、減速フューエルカット制御の実行中にエンジン回転数Neが復帰回転数Ne1を下回った時(時刻t1)、減速フューエルカット制御が解除され、エンジン1が復帰運転され、燃料噴射および点火が再開される。しかし、本実施形態の車両60,70においては、減速時アイドルストップ制御の実行により、エンジン回転数Neが復帰回転数Ne1を下回ってもエンジン1が復帰運転されない。これにより車両停止時点t2までエンジンは停止状態となる。車両停止時点t2以降も停止時アイドルストップ制御によりエンジンが停止されるから、結局、減速時アイドルストップ制御によりエンジンが停止された時から、停止時アイドルストップ制御が終了するまでの間、エンジンは停止状態のままである。
【0099】
さらに、これら車両60,70においては、ECU20がフリーラン制御をも実行可能である。フリーラン制御とは、アクセル開度が略全閉で且つ手動変速機62または自動変速機72がニュートラルポジションにあるときにエンジン1の運転を停止する制御、すなわち燃料噴射および点火を停止する制御である。アクセル開度が略全閉で且つ変速機62,72がニュートラルポジションにあるときには、ドライバがエンジン出力を不要としているとみなせるので、エンジンを停止する。一般的には、車両停止前の減速時にドライバがアクセルペダルを全閉とし、変速機62,72をニュートラルポジションに操作した時点でエンジンが停止され、以降車両停止中までエンジン停止状態が継続することとなる。
【0100】
さて、これらのエンジン停止制御、すなわち停止時アイドルストップ制御、減速時アイドルストップ制御およびフリーラン制御のいずれかが実行されると、その実行中はエンジンが停止させられてしまうので、ばらつき異常検出を実行することができず、検出機会が失われてしまう。
【0101】
そこでこの第4実施例では、これらのエンジン停止制御を強制的に禁止し、ばらつき異常検出の検出機会をより多く確保するようにしている。
【0102】
第4実施例の制御ルーチンを図13を参照して説明する。図13に示す制御ルーチンも、ECU20により所定の演算周期(例えば4ms)毎に繰り返し実行されることができる。
【0103】
ステップS401は前記ステップS101と同じである。ステップS401において、現トリップ中のばらつき異常検出が未実行または実行中であると判断された場合、ステップS402に進んで、車速Vがゼロであるか否かが判断される。
車速Vがゼロであると判断された場合、ステップS403に進んで停止時アイドルストップ制御が禁止される。これによりエンジンはアイドル運転可能である。そしてステップS404に進んでアイドル運転中にばらつき異常検出処理が実行される。
【0104】
他方、ステップS402において車速Vがゼロでないと判断された場合、ステップS405に進んで、減速時アイドルストップ制御またはフリーラン制御の許可条件が成立したか否かが判断される。減速時アイドルストップ制御の許可条件は、例えばフューエルカット制御実行中にエンジン回転数Neが復帰回転数Ne1を下回ることである。フリーラン制御の許可条件は、例えば車速がゼロより大きく、アクセル開度が略全閉であり、且つ手動変速機62または自動変速機72がニュートラルポジションにあることである。
【0105】
かかる許可条件が成立してないと判断された場合、ステップS404に進んでばらつき異常検出処理が実行される。なお減速フューエルカットの実行中は当然にばらつき異常検出処理が実行されない。
【0106】
他方、かかる許可条件が成立したと判断された場合、ステップS406に進んで、成立した許可条件に対応する減速時アイドルストップ制御またはフリーラン制御が禁止される。これによりエンジンは停止されることなく運転状態となる。次いでステップS404に進んで、エンジン運転中(典型的にはアイドル運転中)にばらつき異常検出処理が実行される。
【0107】
なお、減速時アイドルストップ制御およびフリーラン制御はこれらのうちの少なくとも一方を行えばよい。ここでの例は両者を行うものであったが、いずれか一方のみを行うようにしてもよい。
【0108】
以上、本発明の好適な実施形態を詳細に述べたが、本発明の実施形態は他にも様々なものが考えられる。
【0109】
本発明の実施形態は前述の実施形態のみに限らず、特許請求の範囲によって規定される本発明の思想に包含されるあらゆる変形例や応用例、均等物が本発明に含まれる。従って本発明は、限定的に解釈されるべきではなく、本発明の思想の範囲内に帰属する他の任意の技術にも適用することが可能である。
【符号の説明】
【0110】
1 内燃機関(エンジン)
12 インジェクタ
11 上流触媒
17 触媒前センサ
20 電子制御ユニット(ECU)
50 ハイブリッド車両
53 バッテリ
MG1 第1モータ
MG2 第2モータ
【技術分野】
【0001】
本発明はハイブリッド車両に係り、特に、走行用の動力源として内燃機関(エンジン)と電動機(モータ)の二種類の動力源を備えるハイブリッド車両に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、走行用の動力源として多気筒内燃機関を搭載した車両において、気筒間の空燃比ばらつき異常を車載状態で検出することが要請されており(所謂OBD;On-Board Diagnostics)、最近ではこれを法規制化する動きもある。例えば一部の気筒の燃料噴射系が故障すると、気筒間の空燃比が大きくばらついてしまい、車両の排気エミッションが悪化する。このような車両の走行を未然に防止するため上記要請が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−013967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記ハイブリッド車両においても同様の要請がある。ハイブリッド車両においては一般的に、エンジンの燃費を最適化すべく、エンジンの実際の動作点が所定の動作線上を移動するようエンジンおよびモータが制御され、両者の併用で車両が走行される。
【0005】
しかし、かかるハイブリッド車両においては、所定の変更要求があったとき動作線を変更してエンジンのみで走行するときもある。このとき仮に、エンジンおよびモータでの走行中で且つばらつき異常を検出している最中に、動作線が変更され、エンジンのみでの走行に切り替わると、切り替え前後でエンジン運転条件が変化してしまい、精度の良い検出を実行できなくなってしまう。
【0006】
そこで本発明は、以上の事情に鑑みて創案され、その目的は、気筒間空燃比ばらつき異常の検出精度を十分に確保可能なハイブリッド車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様によれば、
走行用の第1の動力源としての多気筒内燃機関と、
走行用の第2の動力源としての電動機と、
前記内燃機関の気筒間空燃比ばらつき異常を検出する検出手段と、
車両を前記内燃機関および前記電動機の両方で駆動させるための制御モードであるハイブリッドモードと、前記車両を前記内燃機関のみで駆動させるための制御モードであるエンジンモードとを実行可能である制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、
前記ハイブリッドモードにおいて、前記内燃機関の回転数とトルクによって規定される座標系における所定の動作線上を前記内燃機関の実際の動作点が移動するように前記内燃機関および前記電動機を制御し、
前記ハイブリッドモードの実行中に所定の変更要求があったとき、前記動作線を変更して前記エンジンモードに移行し、且つ、
前記ハイブリッドモードの実行中にばらつき異常検出が未実行または実行中であるときには、前記動作線の変更および前記エンジンモードへの移行を禁止し、前記ハイブリッドモードを維持する
ことを特徴とするハイブリッド車両が提供される。
【0008】
好ましくは、前記制御手段は、前記電動機に供給される電力を蓄えるバッテリの充電量が所定値以下になったときに前記変更要求を発生する。
【0009】
好ましくは、前記制御手段は、
所定のモータモード条件が成立したとき、前記車両を前記電動機のみで駆動させるための制御モードであるモータモードを実行可能であり、且つ、
ばらつき異常検出が未実行または実行中であるときに前記モータモード条件が成立したとき、前記モータモードと、車両停止時に前記内燃機関のアイドル運転を停止する停止時アイドルストップ制御とを禁止し、前記ハイブリッドモードまたは前記エンジンモードを実行する
好ましくは、前記制御手段は、
ばらつき異常検出が未実行または実行中であるときに前記モータモード条件が成立したとき、所定のキャンセル条件が成立している場合、または前記キャンセル条件が非成立で且つモータモードスイッチがオフである場合に、前記モータモードと前記停止時アイドルストップ制御とを禁止し、前記ハイブリッドモードまたは前記エンジンモードを実行する。
【0010】
好ましくは、前記制御手段は、
ばらつき異常検出が未実行または実行中であるときに前記モータモード条件が成立したとき、前記キャンセル条件が非成立で且つ前記モータモードスイッチがオンである場合に、前記モータモードを実行する。
【0011】
本発明の第2の態様によれば、
走行用の第1の動力源としての多気筒内燃機関と、
走行用の第2の動力源としての電動機と、
前記内燃機関によって駆動される発電機と、
前記電動機に供給される電力を蓄えると共に前記発電機によって充電されるバッテリと、
前記内燃機関の気筒間空燃比ばらつき異常を検出する検出手段と、
前記バッテリの充電量が所定値以下のとき、充電量が所定値を超えるまでばらつき異常検出を禁止すると共に前記内燃機関によって前記発電機を駆動して前記バッテリを充電し、充電量が所定値を超えたならばばらつき異常検出を許可する制御手段と、
を備えることを特徴とするハイブリッド車両が提供される。
【0012】
本発明の第3の態様によれば、
走行用の動力源としての多気筒内燃機関と、
前記内燃機関の気筒間空燃比ばらつき異常を検出する検出手段と、
車両停止時に停止時アイドルストップ制御を実行すると共に、車両停止時にばらつき異常検出が未実行または実行中であるときには停止時アイドルストップ制御を禁止する制御手段と、
を備えることを特徴とする車両が提供される。
【0013】
好ましくは、前記制御手段は、
車両停止前の減速時に減速時アイドルストップ制御およびフリーラン制御の少なくとも一方を実行すると共に、当該減速時にばらつき異常検出が未実行または実行中であるときには、減速時アイドルストップ制御およびフリーラン制御の少なくとも一方を禁止する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、気筒間空燃比ばらつき異常の検出精度を十分に確保可能なハイブリッド車両を提供できるという、優れた効果が発揮される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係るハイブリッド車両の概略図である。
【図2】本実施形態に係る内燃機関の概略図である。
【図3】触媒前センサおよび触媒後センサの出力特性を示すグラフである。
【図4】気筒間空燃比ばらつき度合いに応じた排気空燃比の変動を示すグラフである。
【図5】図4のU部に相当する拡大図である。
【図6】内燃機関の動作特性を示すグラフである。
【図7】車両制御の第1実施例のルーチンを示すフローチャートである。
【図8】車両制御の第2実施例のルーチンを示すフローチャートである。
【図9】車両制御の第3実施例のルーチンを示すフローチャートである。
【図10】マニュアルトランスミッション車の概略図である。
【図11】オートマチックトランスミッション車の概略図である。
【図12】車両制御の第4実施例の各エンジン停止制御を説明するためのタイムチャートである。
【図13】車両制御の第4実施例のルーチンを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づき説明する。
【0017】
図1には本実施形態に係るハイブリッド車両50を概略的に示す。ハイブリッド車両50は、内燃機関すなわちエンジン1と、エンジン1の出力軸としてのクランクシャフト1aに接続された3軸式の動力分配機構51と、動力分配機構51に接続された発電可能な第1電動機すなわち第1モータジェネレータ(以下第1モータと略称)MG1と、動力分配機構51の出力軸であるリングギヤ軸51aに接続された減速ギヤ機構52と、減速ギヤ機構52に接続された発電可能な第2電動機すなわち第2モータジェネレータ(以下第2モータと略称)MG2と、車両全体を制御する制御手段としての電子制御ユニット(以下ECUと称す)20とを備える。
【0018】
エンジン1が走行用の第1の動力源をなし、第1モータMG1が走行用の第2の動力源をなす。第2モータMG2は、第1モータMG1に供給される電力を蓄えるバッテリ53に充電するための発電機として主に機能する。
【0019】
ECU20は、エンジン1を制御するエンジンECU、モータMG1,MG2を制御するモータECU、およびバッテリ53を管理するバッテリECUを含めて構成することができる。
【0020】
エンジン1は、ガソリンや軽油などの燃料を燃焼させて動力を発生し、例えば後に詳述するような多気筒火花点火式内燃機関から構成される。
【0021】
動力分配機構51は、遊星歯車機構から構成され、中心部に配置されたサンギヤ54と、外周部に配置されたリングギヤ55と、これらサンギヤ54およびリングギヤ55の間に配置された複数のピニオンギヤ56と、これらピニオンギヤ56を自転かつ公転自在に保持するキャリア57とを備える。
【0022】
キャリア57にはエンジン1のクランクシャフト1aが連結され、サンギヤ54には第1モータMG1が連結され、リングギヤ55にはリングギヤ軸51aを介して減速ギヤ機構52が連結されている。
【0023】
第1モータMG1が発電機として機能するときには、キャリア57から入力されるエンジン1からの動力をサンギヤ54側とリングギヤ55側に各ギヤ比に応じて分配する。
【0024】
また第1モータMG1が電動機として機能するときには、キャリア57から入力されるエンジン1からの動力と、サンギヤ54から入力される第1モータMG1からの動力を統合して、リングギヤ55側に出力する。リングギヤ55に出力された動力は、リングギヤ軸51aからギヤ機構58およびデファレンシャルギヤ59を介して、最終的に車両の駆動輪60a,60bに伝達される。
【0025】
第1モータMG1および第2モータMG2は、いずれも電動機と発電機の両方の機能を兼ね備える周知の同期発電電動機として構成されており、それぞれ第1インバータ61および第2インバータ62を介してバッテリ53と電力のやりとりを行なう。
【0026】
インバータ61,62とバッテリ53とを接続する電力ライン63は、各インバータ61,62が共用する正極母線および負極母線を有し、モータMG1,MG2のいずれかで発電される電力を他のモータで消費できるようになっている。したがって、バッテリ53は、モータMG1,MG2のいずれかから生じた電力や不足する電力により充放電されることになる。なお、モータMG1,MG2により電力収支のバランスをとるものとすれば、バッテリ53は充放電されない。
【0027】
ECU20には、モータMG1,MG2を制御するために必要な信号、例えばモータMG1,MG2の回転子の回転位置を検出する回転位置検出センサ(図示せず)からの信号や、モータMG1,MG2に印加される相電流を検出する電流センサ(図示せず)からの信号などが入力される。ECU20は、回転位置検出センサからの信号に基づいてモータMG1,MG2の回転数を演算する。ECU20からは、インバータ61,62へのスイッチング制御信号が出力される。
【0028】
ECU20には、バッテリ53を管理するのに必要な信号、例えばバッテリ53の正負端子間に設置された電圧センサ(図示せず)からの電圧信号,電力ライン63に取り付けられた電流センサ(図示せず)からの充放電電流信号,バッテリ53に取り付けられた温度センサ(図示せず)からのバッテリ温度信号などが入力される。
【0029】
またECU20は、電流センサにより検出された充放電電流の積算値に基づいてバッテリ53の充電量SOCを演算したり、充電量SOCとバッテリ温度に基づいてバッテリ53を充放電してもよい最大許容電力である入出力制限を演算したりしている。
【0030】
ECU20は、バッテリ53の充電量SOCを算出する際、電流センサで検出されたバッテリ53の充放電電流を積算していく。このとき充電電流をプラス値とし、放電電流をマイナス値とし、充放電電流積算値を充電量SOCに加算していく。なお、充電量SOCはこれ以外の方法で算出しても良い。このようにECU20は、バッテリ充電量を検出する充電量検出手段としても機能する。
【0031】
ECU20は、いずれも図示しないCPU、ROM、RAM、入出力ポート等を備えて構成される。ECU20は、イグニッションスイッチ(図示せず)からのオンオフ信号,シフトレバーの操作位置を検出するシフトポジションセンサ(図示せず)からのシフトポジション信号、アクセルペダル操作量を検出するアクセル開度センサ(図2に符号15で示す)からのアクセル開度信号、ブレーキペダル操作量を検出するブレーキポジションセンサ(図示せず)からのブレーキペダルポジション信号、車速センサ64からの車速信号、車両をモータのみで駆動する旨を指示するモータモードスイッチとしてのEVスイッチ65からのオンオフ信号、車両の燃費を優先する旨を指示するエコスイッチ(図示せず)からのオンオフ信号などを、入力ポートを介して入力する。
【0032】
ECU20は、ドライバによるアクセルペダル操作量に対応したアクセル開度と、車速とに基づき、駆動軸としてのリングギヤ軸51aに出力すべき要求トルクを計算し、この要求トルクに対応する要求動力がリングギヤ軸51aに実際に出力されるように、エンジン1とモータMG1,MG2とを制御する。
【0033】
特にECU20は、車両50をエンジン1および第1モータMG1の両方で駆動させるための制御モードであるハイブリッドモードと、車両50をエンジン1のみで駆動させるための制御モードであるエンジンモードと、車両50を第1モータMG1のみで駆動させるための制御モードであるモータモードとを実行可能である。
【0034】
次に、図2を用いてエンジン1の構成を説明する。エンジン1は、シリンダブロック2に形成された燃焼室3の内部で燃料および空気の混合気を燃焼させ、燃焼室3内でピストンを往復移動させることにより動力を発生する。本実施形態のエンジン1は多気筒内燃機関、より具体的には直列4気筒火花点火式内燃機関である。内燃機関1は#1〜#4気筒を備える。但し気筒数、形式等は特に限定されない。
【0035】
図示しないが、エンジン1のシリンダヘッドには吸気ポートを開閉する吸気弁と、排気ポートを開閉する排気弁とが気筒ごとに配設されており、各吸気弁および各排気弁は、カムシャフトを含む動弁機構によって開閉駆動される。シリンダヘッドの頂部には、燃焼室3内の混合気に点火するための点火プラグ7が気筒ごとに取り付けられている。
【0036】
各気筒の吸気ポートは気筒毎の枝管4を介して吸気集合室であるサージタンク8に接続されている。サージタンク8の上流側には吸気管13が接続されており、吸気管13の上流端にはエアクリーナ9が設けられている。そして吸気管13には、上流側から順に、吸入空気量を検出するためのエアフローメータ5と、電子制御式のスロットルバルブ10とが組み込まれている。吸気ポート、枝管、サージタンク8及び吸気管13により吸気通路が形成される。
【0037】
吸気通路、特に吸気ポート内に燃料を噴射するインジェクタ(燃料噴射弁)12が気筒ごとに配設されている。インジェクタ12から噴射された燃料は吸入空気と混合されて混合気をなし、この混合気が吸気弁の開弁時に燃焼室3に吸入され、ピストンで圧縮され、点火プラグ7で点火燃焼させられる。
【0038】
一方、各気筒の排気ポートは排気マニフォールド14に接続される。排気マニフォールド14は、その上流部をなす気筒毎の枝管14aと、その下流部をなす排気集合部14bとからなる。排気集合部14bの下流側には排気管6が接続されている。排気ポート、排気マニフォールド14及び排気管6により排気通路が形成される。
【0039】
排気管6の上流側と下流側にはそれぞれ三元触媒からなる触媒、すなわち上流触媒11と下流触媒19が直列に取り付けられている。上流触媒11の上流側及び下流側にそれぞれ排気ガスの空燃比を検出するための第1及び第2の空燃比センサ、即ち触媒前センサ17及び触媒後センサ18が設置されている。これら触媒前センサ17及び触媒後センサ18は、上流触媒11の直前及び直後の位置に設置され、排気中の酸素濃度に基づいて空燃比を検出する。このように上流触媒11の上流側の排気合流部に単一の触媒前センサ17が設置されている。
【0040】
上述の点火プラグ7、スロットルバルブ10及びインジェクタ12等はECU20に電気的に接続されている。ECU20には、図示されるように、前述のエアフローメータ5、触媒前センサ17、触媒後センサ18のほか、エンジン1のクランク角を検出するクランク角センサ16、アクセル開度を検出するアクセル開度センサ15、エンジン1の冷却水温度を検出するための水温センサ21、その他の各種センサが電気的に接続されている。ECU20は、各種センサの検出値等に基づいて、所望のエンジン出力が得られるように、点火プラグ7、スロットルバルブ10、インジェクタ12等を制御し、点火時期、燃料噴射量、燃料噴射時期、スロットル開度等を制御する。なおスロットル開度は通常アクセル開度に応じた開度に制御される。
【0041】
ECU20は、クランク角センサ16の出力に基づいてエンジン回転数Ne(rpm)を計算する。ここでエンジン回転数は単位時間当たりのエンジン回転数であり、回転速度と同義である。
【0042】
触媒前センサ17は所謂広域空燃比センサからなり、比較的広範囲に亘る空燃比を連続的に検出可能である。図3に触媒前センサ17の出力特性を示す。図示するように、触媒前センサ17は、排気空燃比に比例した大きさの電圧信号Vfを出力する。排気空燃比がストイキ(理論空燃比、例えばA/F=14.6)であるときの出力電圧はVreff(例えば約3.3V)である。
【0043】
他方、触媒後センサ18は所謂O2センサからなり、ストイキを境に出力値が急変する特性を持つ。図3に触媒後センサ18の出力特性を示す。図示するように、排気空燃比がストイキであるときの出力電圧、すなわちストイキ相当値はVrefr(例えば0.45V)である。触媒後センサ18の出力電圧は所定の範囲(例えば0〜1V)内で変化する。排気空燃比がストイキよりリーンのとき、触媒後センサの出力電圧はストイキ相当値Vrefrより低くなり、排気空燃比がストイキよりリッチのとき、触媒後センサの出力電圧はストイキ相当値Vrefrより高くなる。
【0044】
上流触媒11及び下流触媒19は、それぞれに流入する排気ガスの空燃比A/Fがストイキ近傍のときに排気中の有害成分であるNOx,HCおよびCOを同時に浄化する。この三者を同時に高効率で浄化できる空燃比の幅(ウィンドウ)は比較的狭い。
【0045】
そこで上流触媒11に流入する排気ガスの空燃比がストイキ近傍に制御されるように、空燃比制御(ストイキ制御)がECU20により実行される。この空燃比制御は、触媒前センサ17によって検出された排気空燃比を所定の目標空燃比であるストイキに一致させるような主空燃比制御(主空燃比フィードバック制御)と、触媒後センサ18によって検出された排気空燃比をストイキに一致させるような補助空燃比制御(補助空燃比フィードバック制御)とからなる。
【0046】
さて、例えば全気筒のうちの一部の気筒のインジェクタ12が故障し、気筒間に空燃比のばらつき(インバランス:imbalance)が発生したとする。例えば#1気筒が他の#2、#3及び#4気筒よりも燃料噴射量が多くなり、その空燃比が大きくリッチ側にずれる場合等である。このときでも前述の主空燃比フィードバック制御により比較的大きな補正量を与えれば、触媒前センサ17に供給されるトータルガスの空燃比をストイキに制御できる場合がある。しかし、気筒別に見ると、#1気筒がストイキより大きくリッチ、#2、#3及び#4気筒がストイキよりリーンであり、全体のバランスとしてストイキとなっているに過ぎず、エミッション上好ましくないことは明らかである。そこで本実施形態では、かかる気筒間空燃比ばらつき異常を検出する手段が装備されている。このばらつき異常を検出できれば、ばらつき異常をなくすよう気筒毎の燃料噴射量補正等を行い、気筒毎のエミッションを改善できる。
【0047】
図4に示すように、気筒間空燃比ばらつきが発生すると、1エンジンサイクル(=720°CA)を1周期とした周期的な排気空燃比の変動が大きくなる。(B)の空燃比線図a,b,cはそれぞればらつき無し、1気筒のみ20%のインバランス割合でリッチずれ、及び1気筒のみ50%のインバランス割合でリッチずれの場合の、触媒前センサ17による検出空燃比A/Fを示す。見られるように、ばらつき度合いが大きくなるほど空燃比変動の振幅が大きくなる。
【0048】
ここでインバランス割合(%)とは、空燃比ばらつきの大きさを表すパラメータである。即ち、インバランス割合とは、全気筒のうちある1気筒のみが燃料噴射量ズレを起こしている場合に、その燃料噴射量ズレを起こしている気筒(インバランス気筒)の燃料噴射量がどれくらいの割合で、燃料噴射量ズレを起こしていない気筒(バランス気筒)の燃料噴射量即ち基準噴射量からズレているかを示す値である。インバランス割合をIB、インバランス気筒の燃料噴射量をQib、バランス気筒の燃料噴射量即ち基準噴射量をQsとすると、IB=(Qib−Qs)/Qsで表される。インバランス割合IBが大きいほど、インバランス気筒のバランス気筒に対する燃料噴射量ズレが大きく、空燃比ばらつき度合いは大きい。
【0049】
空燃比ばらつき異常が発生すると触媒前センサ17の出力変動が大きくなるので、この特性を利用し、当該出力変動に基づいてばらつき異常を検出することが可能である。
【0050】
本実施形態では、空燃比センサ出力の変動度合いに相関するパラメータである出力変動パラメータを算出すると共に、この出力変動パラメータと、所定の判定値とに基づき、異常を検出する。
【0051】
以下に出力変動パラメータの算出方法を説明する。図5は図4のU部に相当する拡大図であり、特に1エンジンサイクル内の触媒前センサ出力の変動を簡略的に示す。触媒前センサ出力としては、触媒前センサ17の出力電圧Vfを空燃比A/Fに換算した値を用いる。但し触媒前センサ17の出力電圧Vfを直接用いることも可能である。
【0052】
図4(B)に示すように、ECU20は、1エンジンサイクル内において、所定のサンプル周期τ(単位時間、例えば4ms)毎に、触媒前センサ出力A/Fの値を取得する。そして今回のタイミング(第2のタイミング)で取得した値A/Fnと、前回のタイミング(第1のタイミング)で取得した値A/Fn−1との差ΔA/Fnの絶対値を次式(1)により求める。この差ΔA/Fnは今回のタイミングにおける微分値あるいは傾きと言い換えることができる。
【0053】
【数1】
【0054】
最も単純には、この差ΔA/Fnが触媒前センサ出力の変動を表す。変動度合いが大きくなるほど空燃比線図の傾きが大きくなり、差ΔA/Fnが大きくなるからである。そこで所定の1タイミングにおける差ΔA/Fnの値を出力変動パラメータとすることができる。
【0055】
但し、本実施形態では精度向上のため、複数の差ΔA/Fnの平均値を出力変動パラメータとする。本実施形態では、1エンジンサイクル内において、各タイミング毎に差ΔA/Fnを積算し、最終積算値をサンプル数Nで除し、1エンジンサイクル内の差ΔA/Fnの平均値を求める。そしてさらに、Mエンジンサイクル分(例えばM=100)だけ差ΔA/Fnの平均値を積算し、最終積算値をサイクル数Mで除し、Mエンジンサイクル内の差ΔA/Fnの平均値を求める。こうして求められた最終的な平均値を出力変動パラメータとし、以下「X」で表示する。触媒前センサ出力の変動度合いが大きいほど出力変動パラメータXは大きくなる。
【0056】
なお、触媒前センサ出力A/Fは増加する場合と減少する場合とがあるので、これら各場合の一方についてだけ上記差ΔA/Fnあるいはその平均値を求め、これを出力変動パラメータとしても良い。
【0057】
また、触媒前センサ出力の変動度合いに相関する如何なる値をも出力変動パラメータとすることができる。例えば、1エンジンサイクル内における触媒前センサ出力の最大ピークと最小ピークの差(所謂ピークトゥピーク; peak to peak)、または2階微分値の最大ピークまたは最小ピークの絶対値に基づいて、出力変動パラメータを算出することもできる。触媒前センサ出力の変動度合いが大きいほど、触媒前センサ出力の最大ピークと最小ピークの差は大きくなり、また2階微分値の最大ピークまたは最小ピークの絶対値も大きくなるからである。
【0058】
算出された出力変動パラメータXが所定の判定値以上であればばらつき異常ありと判定され、算出された出力変動パラメータXが判定値より小さければばらつき異常なし、即ち正常と判定される。
【0059】
ばらつき異常検出を実行するための前提条件には、排気ガス流量の代用値である吸入空気量Ga(具体的にはその検出値)が所定値以上であることが含まれる。触媒前センサ17への十分なガス当たりを確保し、ばらつき度合いに応じたセンサ出力変動の違いを明確に出すためである。またかかる前提条件にはエンジン1が定常運転中であることが含まれる。定常運転中でない非定常運転時(特に過渡運転時)には回転数や吸入空気量が変化し、これがセンサ出力変動に影響を与え、正確な検出が困難となるからである。この定常運転にはアイドル運転が含まれる。さらに前提条件には、エンジンがストイキ制御中であることなどが含まれる。かかる前提条件が成立したとき、ばらつき異常検出が実行ないし開始される。
【0060】
ばらつき異常検出の方法は、上記の触媒前センサ出力変動を利用する方法の他、任意の方法を採用することができる。すなわちばらつき異常検出の方法は上記の方法に限定されない。
【0061】
さて、本実施形態のハイブリッド車両50においては、ハイブリッドモードのとき、エンジン1の燃費を最適化すべく、エンジン1の実際の動作点が所定の動作線上を移動するようエンジン1および第1モータMG1が制御され、両者の併用で車両が走行される。
【0062】
一方、本実施形態のハイブリッド車両50においては、ハイブリッドモードの実行中に所定の変更要求があったとき、動作線を変更してエンジンモードに移行し、エンジン1のみで走行するときもある。このとき仮に、ハイブリッドモード且つばらつき異常検出の実行中に、変更要求があり、エンジンモードに切り替わってしまうと、動作線が変更され、切り替え前後でエンジン運転条件が変化してしまい、精度の良い検出を実行できなくなってしまう。
【0063】
この点を図6を参照して説明する。図6には、本実施形態のハイブリッド車両50におけるエンジン1の動作特性を示す。図示するように、エンジン回転数(rpm)とエンジントルク(Nm)をそれぞれ横軸および縦軸とする座標系によって、エンジンの運転領域が規定されている。aで示す複数の斜線はエンジン出力に関する等出力線を表し、図の右上に向かうほど出力は増大する。なお、トルクが力に相当するのに対し、出力は単位時間当たりの仕事量に相当するため、トルクが一定でも回転数が高いほど出力は大きくなる。
【0064】
本実施形態の車両制御では、座標系内の複数の動作線がECU20に予め記憶されている。そしてハイブリッドモードおよびエンジンモードのとき、アクセル開度センサ15によって検出されたアクセル開度、すなわち出力要求に基づき、一の動作線が選択され、且つエンジンの実際の動作点が選択された動作線上を移動するように、エンジン1およびモータMG1が制御される。ここで実際の動作点とは、実際のエンジンの回転数とトルクの組によって表される座標系上の点である。
【0065】
この動作線の典型的な一例は、図6にb1で示される、燃費が最良となるような燃費最適線である。この燃費最適線b1はエンジンの高トルク域に存在する。通常のハイブリッドモードでの走行時においては、燃費最適線b1が選択されると共に、実際の動作点(c11またはc12)が燃費最適線b1上を移動するように、エンジン1およびモータMG1が制御される。
【0066】
ところで、燃費最適線bが選択されているハイブリッドモードの最中に、所定の変更要求があると、動作線はより高トルク側の動作線b2に変更され、エンジンモードに移行される。変更要求とはECU20内部で発生する変更要求信号のことであり、典型的には、バッテリ53の充電量SOCが所定値SOC1(例えば45%)以下になった時、変更要求が発生する。
【0067】
変更要求が発生した場合、モータMG1の作動が停止されると共に、モータ出力分だけエンジン出力が増加させられ、エンジンのみにより車両が走行駆動されると共に、エンジンのみにより第2モータMG2が駆動させられて発電およびバッテリ充電が行われる。そして、ハイブリッドモードのときに燃費最適線b1上にあった動作点c11またはc12は、動作線b2上の等回転且つ高出力側の動作点c21またはc22へと移動させられる。この結果、等回転を維持しつつアクセル開度ひいてはスロットル開度が増大したのと同じとなり、吸入空気量Gaひいては排気ガス流量が増加する。
【0068】
すると、触媒前センサ17への排気ガスの当たり方も変化する。従って、仮に動作線ないしモードの変更前後でばらつき異常検出を行っていたとすると、変更後にセンサ出力変動状態が変化し、精度の良い検出を実行できなくなってしまう。
【0069】
そこで本実施形態では、異常検出の精度を十分に確保するため、ハイブリッドモードの実行中にばらつき異常検出が未実行または実行中であるときには、たとえ変更要求があったとしても、動作線の変更とエンジンモードへの移行とを強制的に禁止して、ハイブリッドモードを維持する。これにより吸入空気量Gaひいては排気ガス流量が変化するのを防止し、触媒前センサ17へのガス当たり状態およびセンサ出力変動状態を一定に保持して、異常検出の精度を十分に確保することが可能となる。
【0070】
ここで、本実施形態では1トリップ中に少なくとも1回、ばらつき異常検出を行うようにしている。1トリップとは、イグニッションスイッチが1回オンされた時から次にオフされる時までの時間をいう。そして現トリップ中にばらつき異常検出が1回も行われていない未実行の場合、ハイブリッドモードの最中に変更要求があったとしても、動作線の変更およびエンジンモードへの移行を強制的に禁止し、ハイブリッドモードを維持するようにしている。かかる未実行の場合にはその後ばらつき異常検出が開始される可能性が大きいことから、ばらつき異常検出開始後に動作線および制御モードが変更されるのを未然に防止するためである。
【0071】
この動作線変更禁止を含む車両制御の好適な第1実施例を図7を参照して説明する。図7に示す制御ルーチンは、ECU20により所定の演算周期(例えば4ms)毎に繰り返し実行されることができる。
【0072】
まずステップS101では、現トリップ中のばらつき異常検出が未実行または実行中であるか否かが判断される。未実行または実行中でない場合(既に実行済みである場合)、ルーチンが終了され、未実行または実行中である場合、ステップS102に進む。
【0073】
ステップS102では、ハイブリッド(HV)モードを実行するための所定の条件であるハイブリッドモード条件が成立しているか否かが判断される。ハイブリッドモード条件は、例えば、車速Vが所定値V1(例えば40km/h)を超えているか、または車速Vが所定値V1以下で且つ水温Twが所定値Tw1(例えば75℃)以下である(つまりエンジンの暖機が終了してない)ときに成立する。
【0074】
ハイブリッドモード条件が成立していない場合、ステップS103に進んで、モータモードを実行するための所定の条件であるモータモード条件が成立しているか否かが判断される。モータモード条件は、例えば、車速Vが所定値V1以下で且つ水温Twが所定値Tw1を超えている(つまりエンジンの暖機が終了している)ときに成立する。
【0075】
ステップS102において、ハイブリッドモード条件が成立していると判断された場合、ステップS105に進んで、ハイブリッドモードが実行されると共に、動作線および制御モードの変更が禁止される。これによりハイブリッドモードが維持され、ばらつき異常検出の実行前もしくは実行中に変更要求があったとしても、動作線の変更およびエンジンモードへの移行を禁止できる。そして正確なばらつき異常検出を行うことが可能となる。
【0076】
ステップS105の後、ステップS104に進み、前述したようなばらつき異常検出に関する処理が実行される。
【0077】
他方、ステップS103においてモータモード条件が成立していると判断された場合、ステップS106に進んで、モータモードおよび停止時アイドルストップ制御が強制的に禁止されると共に、ハイブリッドモードまたはエンジンモードが実行される。ここで停止時アイドルストップ制御とは、車両停止時にエンジンのアイドル運転を停止させる制御であり、ハイブリッドモードまたはエンジンモードのときに併せて実行される制御である。
【0078】
通常時だとモータモード条件が成立したときエンジンは停止(すなわち燃料噴射および点火が停止)され、モータモードが実行される。しかしこれだとばらつき異常検出を実行できなくなってしまう。そこでエンジンの停止を禁止し、ばらつき異常検出を実行できるようにするため、モータモードおよび減速アイドルストップ制御を強制的に禁止し、ハイブリッドモードまたはエンジンモードでエンジンを運転するようにしている。これにより、本来エンジンが停止されるような運転条件下でもばらつき異常検出を好適に実行することが可能となる。特に停止時アイドルストップ制御も禁止されるため、アイドル運転中にばらつき異常検出を実行することができ、検出機会をより多く確保することができる。
【0079】
ステップS106の後、ステップS104に進み、ばらつき異常検出処理が実行される。
【0080】
なお、ステップS103においてモータモード条件が非成立と判断された場合、エンジンモードが実行され、ステップS104においてばらつき異常検出処理が実行される。
【0081】
次に、動作線変更禁止を含む車両制御の好適な第2実施例を図8を参照して説明する。図8に示す制御ルーチンも、ECU20により所定の演算周期(例えば4ms)毎に繰り返し実行されることができる。
【0082】
この第2実施例のステップS201〜S205,S208はそれぞれ第1実施例のステップS101〜S105,S106と同じである。第2実施例において第1実施例と異なるのはステップS206,S207,S209が追加されている点である。
【0083】
ステップS203においてモータモード条件が成立していると判断された場合、ステップS206に進んで、モータモードをキャンセルするための所定の条件であるキャンセル条件が非成立であるか否かが判断される。
キャンセル条件は、例えばバッテリ充電量SOCが所定値SOC1以下になったとき、または所定の電気負荷(例えばデフロスター)がオンされたときに成立し、それ以外のときには非成立である。バッテリ充電量SOCが所定値以下になったときや所定の電気負荷がオンされたときには、第1モータMG1の使用を禁止してこれによるバッテリ電力の消費を無くすと共に、バッテリ53を充電したり、電気負荷を作動させたりするのに必要な電力を確保すべく、エンジン1と第2モータMG2を作動させる必要があるからである。
【0084】
キャンセル条件が非成立であると判断された場合、すなわち第1モータMG1の使用が許可される場合、ステップS207に進んでEVスイッチ65がオンであるか否かが判断される。
EVスイッチ65がオンであると判断された場合、ステップS209に進んでモータモードが実行され、ルーチンが終了される。すなわち、ばらつき異常検出が未実行または実行中であっても、モータモード条件が成立し、キャンセル条件が非成立であり、且つEVスイッチ65がオンされているときには、ばらつき異常検出よりもドライバの意思を優先して、モータモードが実行される。このとき仮にばらつき異常検出が実行中であった場合には、ばらつき異常検出が途中で中止されることとなる。
【0085】
他方、ステップS206においてキャンセル条件が非成立でない(成立している)と判断された場合、およびステップS207においてEVスイッチ65がオンでない(オフである)と判断された場合、ステップS208に進んで、モータモードおよび停止時アイドルストップ制御が強制的に禁止されると共に、ハイブリッドモードまたはエンジンモードが実行される。この後ステップS204に進み、ばらつき異常検出処理が実行される。
【0086】
このように、第1および第2実施例によれば、本来、一定のエンジン運転条件下でばらつき異常検出できないような状況下や、異常検出自体ができないような状況下においても、一定のエンジン運転条件下でばらつき異常検出を行うことが可能となり、十分な検出精度の確保と検出機会の増大とが可能となる。
【0087】
次に、車両制御の第3実施例を図9を参照して説明する。この車両制御は動作線変更禁止を含まない。図9に示す制御ルーチンも、ECU20により所定の演算周期(例えば4ms)毎に繰り返し実行されることができる。
【0088】
ステップS301は前記ステップS101と同じである。ステップS301において、現トリップ中のばらつき異常検出が未実行または実行中であると判断された場合、ステップS302に進んで、バッテリ充電量SOCが所定値SOC1以下か否かが判断される。
バッテリ充電量SOCが所定値SOC1以下と判断された場合、ステップS303に進んでばらつき異常検出処理が禁止される。そしてステップS304においてハイブリッドモードまたはエンジンモードが実行され、主にエンジン動力を利用して発電機としての第2モータMG2を駆動し、バッテリ53を充電する。このルーチンが、ステップS302において否定判定されるまで続行される。
【0089】
他方、ステップS302においてバッテリ充電量SOCが所定値SOC1を超えたと判断された場合、ステップS305においてばらつき異常検出処理が許可される。この後は図示しない別ルーチンにおいて、前提条件成立と同時にばらつき異常検出処理が実行されることとなる。
【0090】
この第3実施例によれば、バッテリ充電量SOCの所定値SOC1以上の確保がばらつき異常検出に優先されるため、ばらつき異常検出が車両の走行駆動に支障を来すことが防止される。そしてバッテリ充電量SOCを所定値SOC1以上確保した上でばらつき異常検出が実行されるため、検出実行中にバッテリ充電量SOCの不足を理由に検出が中止されることなどが防止され、安定した検出が可能となる。
【0091】
次に、車両制御の第4実施例を説明する。この車両制御も動作線変更禁止を含まず、また、上述のようなハイブリッド車両50以外の車両に適用される。
【0092】
この第4実施例に適用される車両は、上述のハイブリッド車両50よりも一般的な図10に示す如きマニュアルトランスミッション車(以下MT車と称す)60、または図11に示す如きオートマチックトランスミッション車(以下AT車と称す)70である。
【0093】
図10に示すMT車60は、上述のエンジン1およびECU20と、摩擦式クラッチ61と、手動変速機62とを含む。なおクラッチ61および手動変速機62をアクチュエータで自動操作するセミオートマチックシステムを含む車両も、当該MT車60に含まれる。クラッチ61の入力側にはスタータモータ63が設けられ、このスタータモータ63をECU20で制御することにより、エンジン1を自動的に始動できるようになっている。
【0094】
図11に示すAT車60は、上述のエンジン1およびECU20と、トルクコンバータ71と、自動変速機72とを含む。トルクコンバータ71の入力側にはスタータモータ73が設けられ、このスタータモータ73をECU20で制御することにより、エンジン1を自動的に始動できるようになっている。
【0095】
これら車両60,70においては、ECU20が上述の停止時アイドルストップ制御を実行可能である。停止時アイドルストップ制御中、ドライバが所定の操作を行うとECU20がスタータモータ63,73をオンし、エンジン1が自動的に始動される。ドライバが行う所定の操作とは、例えばMT車60ではブレーキペダルの解除やクラッチペダルの踏み込みであり、AT車70ではブレーキペダルの解除である。
【0096】
またこれら車両60,70においては、ECU20が減速時アイドルストップ制御を実行可能である。減速時アイドルストップ制御とは、車両停止直前の減速中にエンジン1を停止する制御、すなわち燃料噴射および点火を停止する制御である。
【0097】
これら車両60,70においては、図12に示すように、車両ないしエンジン1の減速時に減速フューエルカット(F/C)制御、すなわち燃料噴射および点火を停止する制御が実行される。減速フューエルカット制御は、例えばアクセル開度Acが略全閉であり、且つエンジン回転数Neが所定のアイドル回転数(例えば800rpm)より若干高い所定の復帰回転数(例えば1200rpm)以上であるとき、実行される。
【0098】
通常の車両では、減速フューエルカット制御の実行中にエンジン回転数Neが復帰回転数Ne1を下回った時(時刻t1)、減速フューエルカット制御が解除され、エンジン1が復帰運転され、燃料噴射および点火が再開される。しかし、本実施形態の車両60,70においては、減速時アイドルストップ制御の実行により、エンジン回転数Neが復帰回転数Ne1を下回ってもエンジン1が復帰運転されない。これにより車両停止時点t2までエンジンは停止状態となる。車両停止時点t2以降も停止時アイドルストップ制御によりエンジンが停止されるから、結局、減速時アイドルストップ制御によりエンジンが停止された時から、停止時アイドルストップ制御が終了するまでの間、エンジンは停止状態のままである。
【0099】
さらに、これら車両60,70においては、ECU20がフリーラン制御をも実行可能である。フリーラン制御とは、アクセル開度が略全閉で且つ手動変速機62または自動変速機72がニュートラルポジションにあるときにエンジン1の運転を停止する制御、すなわち燃料噴射および点火を停止する制御である。アクセル開度が略全閉で且つ変速機62,72がニュートラルポジションにあるときには、ドライバがエンジン出力を不要としているとみなせるので、エンジンを停止する。一般的には、車両停止前の減速時にドライバがアクセルペダルを全閉とし、変速機62,72をニュートラルポジションに操作した時点でエンジンが停止され、以降車両停止中までエンジン停止状態が継続することとなる。
【0100】
さて、これらのエンジン停止制御、すなわち停止時アイドルストップ制御、減速時アイドルストップ制御およびフリーラン制御のいずれかが実行されると、その実行中はエンジンが停止させられてしまうので、ばらつき異常検出を実行することができず、検出機会が失われてしまう。
【0101】
そこでこの第4実施例では、これらのエンジン停止制御を強制的に禁止し、ばらつき異常検出の検出機会をより多く確保するようにしている。
【0102】
第4実施例の制御ルーチンを図13を参照して説明する。図13に示す制御ルーチンも、ECU20により所定の演算周期(例えば4ms)毎に繰り返し実行されることができる。
【0103】
ステップS401は前記ステップS101と同じである。ステップS401において、現トリップ中のばらつき異常検出が未実行または実行中であると判断された場合、ステップS402に進んで、車速Vがゼロであるか否かが判断される。
車速Vがゼロであると判断された場合、ステップS403に進んで停止時アイドルストップ制御が禁止される。これによりエンジンはアイドル運転可能である。そしてステップS404に進んでアイドル運転中にばらつき異常検出処理が実行される。
【0104】
他方、ステップS402において車速Vがゼロでないと判断された場合、ステップS405に進んで、減速時アイドルストップ制御またはフリーラン制御の許可条件が成立したか否かが判断される。減速時アイドルストップ制御の許可条件は、例えばフューエルカット制御実行中にエンジン回転数Neが復帰回転数Ne1を下回ることである。フリーラン制御の許可条件は、例えば車速がゼロより大きく、アクセル開度が略全閉であり、且つ手動変速機62または自動変速機72がニュートラルポジションにあることである。
【0105】
かかる許可条件が成立してないと判断された場合、ステップS404に進んでばらつき異常検出処理が実行される。なお減速フューエルカットの実行中は当然にばらつき異常検出処理が実行されない。
【0106】
他方、かかる許可条件が成立したと判断された場合、ステップS406に進んで、成立した許可条件に対応する減速時アイドルストップ制御またはフリーラン制御が禁止される。これによりエンジンは停止されることなく運転状態となる。次いでステップS404に進んで、エンジン運転中(典型的にはアイドル運転中)にばらつき異常検出処理が実行される。
【0107】
なお、減速時アイドルストップ制御およびフリーラン制御はこれらのうちの少なくとも一方を行えばよい。ここでの例は両者を行うものであったが、いずれか一方のみを行うようにしてもよい。
【0108】
以上、本発明の好適な実施形態を詳細に述べたが、本発明の実施形態は他にも様々なものが考えられる。
【0109】
本発明の実施形態は前述の実施形態のみに限らず、特許請求の範囲によって規定される本発明の思想に包含されるあらゆる変形例や応用例、均等物が本発明に含まれる。従って本発明は、限定的に解釈されるべきではなく、本発明の思想の範囲内に帰属する他の任意の技術にも適用することが可能である。
【符号の説明】
【0110】
1 内燃機関(エンジン)
12 インジェクタ
11 上流触媒
17 触媒前センサ
20 電子制御ユニット(ECU)
50 ハイブリッド車両
53 バッテリ
MG1 第1モータ
MG2 第2モータ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行用の第1の動力源としての多気筒内燃機関と、
走行用の第2の動力源としての電動機と、
前記内燃機関の気筒間空燃比ばらつき異常を検出する検出手段と、
車両を前記内燃機関および前記電動機の両方で駆動させるための制御モードであるハイブリッドモードと、前記車両を前記内燃機関のみで駆動させるための制御モードであるエンジンモードとを実行可能である制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、
前記ハイブリッドモードにおいて、前記内燃機関の回転数とトルクによって規定される座標系における所定の動作線上を前記内燃機関の実際の動作点が移動するように前記内燃機関および前記電動機を制御し、
前記ハイブリッドモードの実行中に所定の変更要求があったとき、前記動作線を変更して前記エンジンモードに移行し、且つ、
前記ハイブリッドモードの実行中にばらつき異常検出が未実行または実行中であるときには、前記動作線の変更および前記エンジンモードへの移行を禁止し、前記ハイブリッドモードを維持する
ことを特徴とするハイブリッド車両。
【請求項2】
前記制御手段は、前記電動機に供給される電力を蓄えるバッテリの充電量が所定値以下になったときに前記変更要求を発生する
ことを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両。
【請求項3】
前記制御手段は、
所定のモータモード条件が成立したとき、前記車両を前記電動機のみで駆動させるための制御モードであるモータモードを実行可能であり、且つ、
ばらつき異常検出が未実行または実行中であるときに前記モータモード条件が成立したとき、前記モータモードと、車両停止時に前記内燃機関のアイドル運転を停止する停止時アイドルストップ制御とを禁止し、前記ハイブリッドモードまたは前記エンジンモードを実行する
ことを特徴とする請求項1または2に記載のハイブリッド車両。
【請求項4】
前記制御手段は、
ばらつき異常検出が未実行または実行中であるときに前記モータモード条件が成立したとき、所定のキャンセル条件が成立している場合、または前記キャンセル条件が非成立で且つモータモードスイッチがオフである場合に、前記モータモードと前記停止時アイドルストップ制御とを禁止し、前記ハイブリッドモードまたは前記エンジンモードを実行する
ことを特徴とする請求項3に記載のハイブリッド車両。
【請求項5】
前記制御手段は、
ばらつき異常検出が未実行または実行中であるときに前記モータモード条件が成立したとき、前記キャンセル条件が非成立で且つ前記モータモードスイッチがオンである場合に、前記モータモードを実行する
ことを特徴とする請求項4に記載のハイブリッド車両。
【請求項1】
走行用の第1の動力源としての多気筒内燃機関と、
走行用の第2の動力源としての電動機と、
前記内燃機関の気筒間空燃比ばらつき異常を検出する検出手段と、
車両を前記内燃機関および前記電動機の両方で駆動させるための制御モードであるハイブリッドモードと、前記車両を前記内燃機関のみで駆動させるための制御モードであるエンジンモードとを実行可能である制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、
前記ハイブリッドモードにおいて、前記内燃機関の回転数とトルクによって規定される座標系における所定の動作線上を前記内燃機関の実際の動作点が移動するように前記内燃機関および前記電動機を制御し、
前記ハイブリッドモードの実行中に所定の変更要求があったとき、前記動作線を変更して前記エンジンモードに移行し、且つ、
前記ハイブリッドモードの実行中にばらつき異常検出が未実行または実行中であるときには、前記動作線の変更および前記エンジンモードへの移行を禁止し、前記ハイブリッドモードを維持する
ことを特徴とするハイブリッド車両。
【請求項2】
前記制御手段は、前記電動機に供給される電力を蓄えるバッテリの充電量が所定値以下になったときに前記変更要求を発生する
ことを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両。
【請求項3】
前記制御手段は、
所定のモータモード条件が成立したとき、前記車両を前記電動機のみで駆動させるための制御モードであるモータモードを実行可能であり、且つ、
ばらつき異常検出が未実行または実行中であるときに前記モータモード条件が成立したとき、前記モータモードと、車両停止時に前記内燃機関のアイドル運転を停止する停止時アイドルストップ制御とを禁止し、前記ハイブリッドモードまたは前記エンジンモードを実行する
ことを特徴とする請求項1または2に記載のハイブリッド車両。
【請求項4】
前記制御手段は、
ばらつき異常検出が未実行または実行中であるときに前記モータモード条件が成立したとき、所定のキャンセル条件が成立している場合、または前記キャンセル条件が非成立で且つモータモードスイッチがオフである場合に、前記モータモードと前記停止時アイドルストップ制御とを禁止し、前記ハイブリッドモードまたは前記エンジンモードを実行する
ことを特徴とする請求項3に記載のハイブリッド車両。
【請求項5】
前記制御手段は、
ばらつき異常検出が未実行または実行中であるときに前記モータモード条件が成立したとき、前記キャンセル条件が非成立で且つ前記モータモードスイッチがオンである場合に、前記モータモードを実行する
ことを特徴とする請求項4に記載のハイブリッド車両。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−144219(P2012−144219A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−6032(P2011−6032)
【出願日】平成23年1月14日(2011.1.14)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月14日(2011.1.14)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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