説明

バニロイド受容体モジュレーターとして用いるためのピペリジン/シクロヘキサンカルボキサミド誘導体

本発明は、式(I):


[式中、R、R、P、P’、X、mおよびnは明細書中の記載と同意義である]
で示される化合物またはその医薬上許容される塩もしくは溶媒和物、かかる化合物の製造方法、かかる化合物を含む医薬組成物および医薬におけるかかる化合物の使用に関する。


【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、医薬活性を有する新規アミド誘導体、その製造方法、それらの含有する組成物および医薬におけるその使用、特に種々の障害の治療に有用である。
【0002】
バニロイドは、バニリル(4−ヒドロキシ−3−メトキシベンジル)基、または機能的に等価な基の存在により特徴づけられる、一連の天然および合成化合物である。その機能がかかる化合物により調節されるバニロイド受容体(VR1)は広く研究されており、またSzallasi and Blumberg (The American Society for Pharmacology and Experimental Therapeutics, 1999, Vol. 51, No. 2)。
【0003】
異なる構造の多種多様なバニロイド化合物はこの分野、例えば、ヨーロッパ特許出願番号EP0347000およびEP0401903、UK特許出願番号GB2226313および国際特許出願の公開番号WO92/09285、WO02/100819およびWO02/076946において開示されている分野にて知られている。バニロイド化合物、またはバニロイド受容体修飾因子の特に注目すべき例は、コショウ科植物から単離されるカプサイシンまたはトランス−8−メチル−N−バニリル−6−ノネンアミド、カプサゼピン(Tetrahedron, 53, 1997, 4791)、およびオルバニルまたは−N−(4−ヒドロキシ−3−メトキシベンジル)オレイン酸アミド(J. Med. Chem., 36, 1993, 2595)である。
【0004】
国際特許出願公開WO02/08221は、バニロイド受容体、特にI型バニロイド受容体(また、カプサイシンまたはVR1受容体として知られている)に高選択性および高アフィニティーで結合する、ジアリールピペラジンおよび関連化合物を開示している。この化合物は、慢性および急性の痛みの症状、掻痒および尿失禁の治療に有用であるとされている。
【0005】
国際特許出願公開WO02/16317、WO02/16318およびWO02/16319は、バニロイド受容体に対して高アフィニティーを有する化合物が、胃−十二指腸潰瘍の治療に有用であることを示唆している。
【0006】
また、国際特許出願公開WO02/072536、WO02/090326、WO03/022809、WO03/053945、WO03/068749およびWO04/024710;および同時係属国際特許出願番号PCT/GB2004/000543、PCT/EP2004/002377、PCT/GB2004/000978およびPCT/EP2004/002376も、バニロイド受容体アンタゴニストとして活性を有する種々の化合物を記載しいている。
【0007】
本発明の第1の態様により、式(I):
【化1】

[式中:
Pは、フェニル、キノリニル、イソキノリニル、1,2,3,4−テトラヒドロキノリニル、ベンゾイソキサゾリルまたはベンゾチアゾリルであり;
P’は、フェニル、ピリジニル、ピリミジニル、ピリダジニルまたはベンゾチアゾリルであり;
およびRは、同じであっても異なっていてもよく、アルキル、アルコキシ、ハロ、−CF、−OCF、−OH、=O、−CN、−NO、−SONH、−SOまたは−NRであり;
およびRは、同じであっても異なっていてもよく、−Hまたはアルキルであり;
mは0または1であり;
nは0、1、2、3、4または5であり;および
XはNまたはCHである]
またはその医薬上許容される塩もしくは溶媒和物を提供する:
ただし、該式(I)で示される化合物は:
4−フェニル−N−キノリン−7−イル−ピペリジン−1−カルボキサミド;
N−キノリン−7−イル−1−(5−トリフルオロメチルピリド−2−イル)−ピペリジン−4−カルボキサミド;
N−キノリン−7−イル−1−(6−トリフルオロメチルピリド−2−イル)−ピペリジン−4−カルボキサミド;
N−イソキノリン−5−イル−1−(5−トリフルオロメチルピリド−2−イル)−ピペリジン−4−カルボキサミド;および
4−(4−クロロフェニル)−N−(2−メチルベンゾチアゾール−5−イル)シクロヘキサン−1−カルボキサミド;
から選択される化合物を除く。
【0008】
適当には、Pは、フェニル、キノリニル、イソキノリニル、ベンゾイソキサゾリルまたはベンゾチアゾリルである。好ましくは、Pはフェニルである。好ましくは、Pは、キノリニル、イソキノリニル、ベンゾイソキサゾリルまたはベンゾチアゾリルである。
好ましくは、P’はフェニルである。好ましくは、P’はピリジニルまたはピリミジニルである。
好ましくは、Rは、アルキル、例えばメチル、ハロ、例えばクロロまたはブロモ、=O、−SONH、または−SOMeである。
好ましくは、Rは、アルキル、アルコキシ、例えばメトキシ、ハロ、例えばクロロまたはフルオロ、−CFまたは−CNである。
【0009】
好ましくは、Rは−Hまたはメチルである。
好ましくは、Rは−Hまたはメチルである。
好ましくは、mは0である。好ましくは、mは1である。
好ましくは、nは0、1または2である。
好ましくは、XはNである。好ましくは、XはCHである。
【0010】
本発明の好ましい化合物は、実施例1〜49またはその医薬上許容される塩または溶媒和物を含む。
本発明の特に好ましい化合物は、実施例1、3、8、16〜25、28〜29、31〜33、43〜45を含む。
【0011】
式(I)のある種の炭素原子はキラル炭素原子であり、したがって、式(I)で示される化合物は立体異性体として存在しうる。発明は、すべての光学異性体、例えばエナンチオマーおよびその混合物、例えばラセミ体を含む式(I)で示される化合物の立体異性体形態すべてに及ぶ。異なる立体異性体形態は、慣用的な方法により、他から1つに分離し、分割することができ、いずれの所定の異性体も、慣用的な立体特異的または不斉合成により得ることができる。
上記したように、式(I)で示される化合物は、塩、特に医薬上許容される塩を形成することができる。適当な医薬上許容される塩は、当該分野で慣用的に用いられるものであり、J. Pharm. Sci., 1977, 66, 1-19に記載のもの、例えば酸付加塩を含む。
【0012】
適当な医薬上許容される塩は酸付加塩を含む。
適当な医薬上許容される酸付加塩は、無機酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、オルトリン酸または硫酸との塩、または有機酸、例えばメタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、酢酸、プロピオン酸、乳酸、クエン酸、フマル酸、リンゴ酸、コハク酸、サリチル酸、マレイン酸、グリセロリン酸またはアセチルサリチル酸との塩を含む。
【0013】
医薬上許容されない式(I)で示される化合物の塩および/または溶媒和物は、式(I)で示される化合物の医薬上許容される塩および/または溶媒和物、または式(I)で示される化合物自体、例えば本発明の他の形態の調製における中間体として有用である。
【0014】
式(I)で示される化合物は、結晶または非結晶形態で調製することができ、結晶形態である場合、水和または溶媒和されていてもよい。本発明は、化学量論的水和物、ならびに種々の量の水を含有する化合物をその範囲に含む。
適当な溶媒和物は、医薬上許容される溶媒、例えば水和物を含む。
溶媒和物は、化学量論的溶媒和物および非化学量論的溶媒和物を含む。
【0015】
本明細書で用いられる場合、「アルキル」なる用語は、基としてまたは基の一部としても、1〜12個の炭素原子、適当には1〜6個の炭素原子を含有する、直鎖または分枝鎖飽和脂肪族炭化水素ラジカルを意味する。かかるアルキル基は、特に、メチル(「Me」)、エチル(「Et」)、n−プロピル(「Pr」)、イソ−プロピル(「Pr」)、n−ブチル(「Bu」)、sec−ブチル(「Bu」)、tert−ブチル(「Bu」)、ペンチルおよびヘキシルを含む。「シクロアルキル」なる用語は、他の基の一部としても、3〜12個の炭素原子、適当には3〜6個の炭素原子を含有する、飽和脂環式炭化水素ラジカルを意味する。適当な場合、かかるアルキル基は、ハロ(例えば、フルオロ、クロロ、ブロモ)、−CN、−CF、−OH、−OCF、C2−6アルケニル、C3−6アルキニル、C1−6アルコキシ、アリールおよびジ−C1−6アルキルアミノから選択される1個以上の基により置換されていてもよい。アルキルは、好ましくは非置換である。
【0016】
本明細書で用いられる場合、「アルコキシ」なる用語は、基としてまたは基の一部としても、「アルキル」なる用語が上記と同意義である、アルキルエーテルラジカルを意味する。かかるアルコキシ基は、特に、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、iso−プロポキシ、n−ブトキシ、iso−ブトキシ、sec−ブトキシおよびtert−ブトキシを含む。適当な場合、かかるアルコキシ基は、ハロ(例えば、フルオロ、クロロ、ブロモ)、−CN、−CF、−OH、−OCF、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C3−6アルキニル、アリールおよびジ−C1−6アルキルアミノから選択される1個以上の基により置換されていてもよい。アルコキシは、好ましくは非置換である。
本明細書で用いられる「ハロ」なる用語は、特記しない限り、フッ素(「フルオロ」)、塩素(「クロロ」)、臭素(「ブロモ」)またはヨウ素(「ヨウド」)から選択される基である。
【0017】
また、本発明は、式(I)で示される化合物またはその医薬上許容される塩または溶媒和物の製造方法であって:
(a)式(II):
【化2】

[式中、P、Rおよびnは式(I)の記載と同意義である]
で示される化合物を、式(III):
【化3】

[式中、P’、R、m、nおよびXは、式(I)の記載と同意義である]
で示される化合物と反応させ、ついで、その後要すれば、以下の工程:
(i)式(I)で示される化合物を他の式(I)で示される化合物に変換すること;
(ii)いずれの保護基を除去すること;
(iii)形成した化合物の塩または溶媒和物を調製すること;
の1つ以上を行うことを含む方法を提供する。
【0018】
式(II)で示される化合物と式(III)で示される化合物間の反応は、アミド結合形成に関する慣用的な方法、例えばJ March, Advanced Organic Chemistry, 4th edition, J Wiley & Sons, 1992, p. 419-421に記載の方法を用いて行うことができる。
【0019】
式(II)で示される化合物は、市販されているか、あるいは式(IV):
【化4】

[式中、P、Rおよびnは、式(I)の記載と同意義である]
で示される化合物と適当な還元剤との反応により調製することができる。
【0020】
式(IV)で示される化合物と還元剤との反応は、当該分野でよく知られた方法、例えばJ March, Advanced Organic Chemistry, 4th edition, J Wiley & Sons, 1992, p. 1216-1218に記載の方法により調製することができる。適当な還元剤は、(a)塩酸中の鉄または亜鉛金属、または(b)適当な触媒、例えば5%炭素担持パラジウムの存在下の水素を含む。水素を用いる還元は、有利いは、メタノールまたはエタノールのような溶媒中で行うことができる。
式(IV)で示される化合物は、市販されているか、あるいは、選択された特定の基により決定される条件下、文献の方法、例えばLarock R. F.「Comprehensive Organic Transformations」, New York, Wiley (1999)に記載の方法に従って調製することができる。
【0021】
式(III)で示される化合物は、市販されているか、あるいは式(V):
【化5】

[式中、P’、R、m、nおよびXは、式(I)の記載と同意義であり、R’はアルキル基である]
で示される化合物の加水分解により調製することができる。適当な加水分解剤は、塩酸である。適当な溶媒はジオキサンである。
【0022】
式(V)で示される化合物は、市販されているか、あるいは、文献の方法、例えばJ. Org. Chem. 28, 1963, 3259またはJ. Am. Chem. Soc. 118, 1996, 7215に記載の方法により調製することができる。
【0023】
上記した式(I)で示される化合物の他の式(I)で示される化合物への変換は、慣用的な方法を用いて行うことができるいずれもの変換を含むが、特に、該変換は、
(i) R基を他のR基に変換すること;および
(ii) R基を他のR基に変換すること;
の組み合わせを含む。
上記した変換(i)−(ii)は、選択された特定の基により決定される条件下、いずれの適当な方法を用いて行うことができる。
【0024】
上記した方法のいくつかにおいて、特定の反応性置換基を保護する必要がありうるということは、当業者によって理解されよう。Greene T.W. 「Protective groups in organic synthesis」, New York, Wiley (1981)で説明されているような、標準的な保護および脱保護技法を用いることが可能である。例えば、一級アミンはフタルイミド、ベンジル、ベンジルオキシカルボニル、またはトリチル誘導体として保護されることができる。カルボン酸基はエステルとして保護されうる。アルデヒドまたはケトン基は、アセタール、ケタール、チオアセタール、またはチオケタールとして保護する。かかる基の脱保護は、この分野でよく知られている慣用法を用いて達成される。
医薬上許容される塩は、適当な酸または酸誘導体との反応により慣用的に調製されてもよい。
【0025】
式(I)で示される化合物およびその医薬上許容される塩または溶媒和物は、バニロイド受容体アンタゴニスト(VR1)活性を有し、特定の障害の治療または予防、またはそれらに関連する痛み、例えば、痛み、慢性の痛み、神経因性の痛み、術後の痛み、関節リウマチ後の痛み、骨関節炎の痛み、背痛、内臓痛、癌痛、痛覚過敏、神経痛、歯痛、頭痛、偏頭痛、神経障害、手根管症候群、糖尿病性ニューロパシー、HIV関連ニューロパシー、ヘルペス後神経痛、線維筋痛症、神経炎、坐骨神経痛、神経損傷、虚血、神経変性、卒中、卒中後の痛み、多発性硬化症、呼吸器系疾患、喘息、咳、COPD、気管支収縮、炎症性障害、食道炎、胸やけ、Barrett化生、嚥下障害、胃食道逆流症(GERD)、胃および十二指腸潰瘍、機能性消化不良、過敏性腸症候群、炎症性腸疾患、結腸炎、クローン病、骨盤過敏症、骨盤痛み、月経痛、腎疝痛、尿失禁、膀胱炎、やけど、かゆみ、乾癬、掻痒、嘔吐(以後、「本発明の疾患」と言う)の治療に使用できると考えられる。
【0026】
したがって、本発明は、特に本発明の障害の治療および/または予防において、活性治療物質として用いるための、式(I)で示される化合物またはその医薬上許容される塩もしくは溶媒和物を提供する。
特に、本発明は痛みの治療または予防において用いるための式(I)で示される化合物またはその医薬上許容される塩もしくは溶媒和物を提供する。
【0027】
さらに本発明は、バニロイド(VR1)受容体の拮抗が有効である障害、特にヒトを含む哺乳動物での本発明の障害の治療または予防方法であって、それらを必要とする哺乳動物に、式(I)で示される化合物またはその医薬上許容される塩もしくは溶媒和物を、治療的に有効な量で投与することを含む方法を提供する。
【0028】
本発明は、バニロイド(VR1)受容体の拮抗が有効である障害、特に本発明の障害の治療または予防のための医薬の製造における、式(I)で示される化合物またはその医薬上許容される塩もしくは溶媒和物の使用を提供する。
治療において本発明の化合物を用いるために、通常は、標準的な薬務に従って医薬組成物に処方されるだろう。かくして、本発明は、式(I)で示される化合物またはその医薬上許容される塩もしくは溶媒和物、およびそのための医薬上許容される担体または賦形剤を含む、医薬組成物を提供する。
【0029】
本発明の医薬組成物は、適当には常温常圧下で混合することにより調製されてよく、通常は経口、非経口、直腸投与または膀胱への小胞内投与に適合し、それ自体が、錠剤、カプセル剤、経口用液体製剤、粉末剤、顆粒剤、トローチ剤、復元散剤、注射または注入用溶液、懸濁剤、または坐剤の形態であってもよい。一般的には経口投与が可能な組成物が好ましい。
【0030】
経口投与用の錠剤およびカプセルは単位剤形であってもよく、また結合剤、充填剤、錠剤の潤滑剤、崩壊剤、および許容される湿潤剤のような慣用的な賦形剤を含んでもよい。錠剤は通常の薬務でよく知られている方法に従ってコーティングされていてもよい。経口用液体製剤は、例えば水性または油性の懸濁液、溶液、乳濁液、シロップ、またはエリキシル剤のような形態であってよく、もしくは使用前に水または他の適当なビヒクルで復元するための乾燥製剤の形態であってもよい。かかる液体製剤は、懸濁剤、乳化剤、非水溶性の媒体(食用油を含んでよい)、防腐剤、また所望により慣用的な香料または色素のような慣用的な添加剤を含んでいてもよい。
【0031】
非経口投与に関しては、本発明の化合物またはその医薬上許容される塩、および滅菌ビヒクルを用いて、液体単位剤形を形成する。化合物は、ビヒクルおよび用いる濃度に応じて、ビヒクル中に懸濁または溶解させることができる。溶液の調製にあたって、注射のために化合物を溶かし、適当なバイアルまたはアンプルへ充填し、密封する前に、滅菌濾過することができる。
有利には、局所麻酔薬、防腐剤、および緩衝剤のようなアジュバントはビヒクルに溶解する。安定性を高めるために、組成物をバイアルへ充填後凍結し、ついで真空で水を除去することができる。非経口懸濁液は、化合物をビヒクルに溶かす代わりに懸濁させ、滅菌処理が濾過によりなし得ないことを除き、実質的には同じ方法で調製される。化合物は滅菌ビヒクルに懸濁させる前に、エチレンオキシドに曝すことにより滅菌することができる。有利には、界面活性剤または湿潤剤を、化合物の均一分布を促進するために組成物中に含ませる。
【0032】
組成物は投与方法に応じて、活性物質を0.1重量%〜99重量%、好ましくは、10〜60重量%含んでいてもよい。
上記した障害の治療に用いる化合物の投与量は、一般に、疾患の重症度、患者の体重、および他の同様な因子により変化するだろう。全身投与の場合、体重1キログラムあたり0.01mg〜100mgの投与量レベルが、痛みの治療において有用である。しかしながら、一般的な指針として、適当な単位用量は0.05〜1000mg、より適当には0.05〜20、20〜250、または0.1〜500.0mg、例えば0.2〜5および0.1〜250mgであってもよく、かかる単位用量は、1日に1回以上、例えば1日に2または3回投与されてもよく、結果として1日の全投与量は、約0.5〜1000mgの範囲内であり、かかる治療は数週間、または数ヶ月に及んでよい。
【0033】
本発明に従って投与される場合、本発明の化合物は許容できない毒性効果を示さない。
本明細書で引用した特許および特許出願を含め、すべての刊行物を出典明示により本明細書に組み入れる。
【0034】
以下の記載および実施例は本発明の化合物の製造を説明する。
省略記号
DMF=ジメチルホルムアミド、DCM=ジクロロメタン、
BINAP=2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル、
NaOH=水酸化ナトリウム、LiOH=水酸化リチウム
【0035】
記載1
5−ニトロ−1−メチルキノリニウムヨウダイド(D1)
DMF(8ml)中の5−ニトロキノリン(5g、0.028mol)およびヨウドメタン(5.4ml、0.086mol)の混合物を、40℃に加熱した。2時間後、粘性の暗色沈殿が形成し、混合物を冷却し、アセトンで希釈した。固体を濾過し、アセトンで洗浄し、乾燥して標題化合物を橙色固体として得た。
【0036】
記載2
5−ニトロ−1−メチル−2−(1H)−キノリノン(D2)
温水(90ml)中のD1(8.47g、0.03mol)の溶液を、45℃で維持した10%のNaOH中のフェリシアン化カリウム(33.6g、0.1mol)の溶液に滴下した。5時間後、温度を60℃に上昇させ、溶液を24時間加熱した。溶液を氷浴で15分間冷却し、灰緑色固体を濾過し、水で洗浄し、乾燥した。粗固体を最小量のDCM中に溶解し、シリカゲルで濾過し、酢酸エチルで、さらに生成物を溶出されなくなるまで洗浄した。減圧下で蒸発させて、標題化合物を暗橙色固体として得た。
【0037】
記載3
5−アミノ−1−メチル−2−(1H)−キノリノン(D3)
エタノール(100ml)およびDMF(30ml)中のD2(2.59g、0.13mol)を、10%の炭素担持パラジウム(1g、50%w/w水)で処理した。混合物を、8時間大気圧下で水素化し、触媒を除去した後、減圧下で濃縮した。エーテルでトリチュレートして、標題化合物を淡黄色固体して得た。
【0038】
記載4
1−(4−クロロフェニル)ピペリジン−4−カルボン酸,エチルエステル(D4)
ラセミBINAP(2.25g、0.0036mol)、酢酸パラジウム(0.82g、3.65mmol)および炭酸セシウム(16.86g、0.051mol)を、1、4−ジオキサン(100ml)中に懸濁させ、45分間、超音波で処理した。4−ブロモ−クロロベンゼン(5g、26.12mmol)およびエチルイソニペコアセテート(4.11g、26.12mmol)を、1,4−ジオキサン(100ml)中の溶液として加えた。混合物を、105℃で16時間加熱した。冷却して、溶媒を除去し、残渣を水(100ml)およびジエチルエーテル(100ml)間で分配した。水層をエーテルで抽出した。合した層を乾燥(NaSO)し、減圧下で濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(酢酸エチル/石油エーテル)により精製して、標題化合物を油として得た。
【0039】
記載5
1−(4−クロロ−フェニル)−ピペリジン−4−カルボン酸(D5)
1NのLiOH(30ml)およびジオキサン(30ml)中のD4(1.82g、0.0067mol)溶液を、室温にて16時間撹拌し、ついで、減圧下で蒸発させた。1MのHClおよび酢酸エチルで処理し、標題化合物を黄色固体として得た。
【0040】
以下の化合物を、記載4および5において用いた方法と類似の方法を用いて調製した。
1−(3−クロロフェニル)−ピペリジン−4−カルボン酸(D6)
1−(4−シアノフェニル)−ピペリジン−4−カルボン酸(D7)
1−(4−フルオロフェニル)−ピペリジン−4−カルボン酸(D8)
1−(4−メチルフェニル)−ピペリジン−4−カルボン酸(D9)
1−(4−メトキシフェニル)−ピペリジン−4−カルボン酸(D10)
1−(4−トリフルオロメチルフェニル)−ピペリジン−4−カルボン酸(D11)
1−(4−クロロ−2−メチルフェニル)−ピペリジン−4−カルボン酸(D12)
1−(4−クロロ−2−トリフルオロメチルフェニル)−ピペリジン−4−カルボン酸(D13)
1−(2,4−ジクロロフェニル)−ピペリジン−4−カルボン酸(D14)
1−(2,5−ジクロロフェニル)−ピペリジン−4−カルボン酸(D15)
1−(3,5−ジクロロフェニル)−ピペリジン−4−カルボン酸(D16)
1−(3,4−ジクロロ−フェニル)−ピペリジン−4−カルボン酸(D17)
1−(2−クロロ−4−フルオロフェニル)−ピペリジン−4−カルボン酸(D18)
1−(4−クロロ−3−フルオロフェニル)−ピペリジン−4−カルボン酸(D19)
1−(2,4−ジフルオロフェニル)−ピペリジン−4−カルボン酸(D20)
1−(5−クロロピリジン−2−イル)−ピペリジン−4−カルボン酸(D21)
1−(5−トリフルオロメチルピリジン−2−イル)−ピペリジン−4−カルボン酸(D22)
1−(3−クロロ−5−トリフルオロメチルピリジン−2−イル)−ピペリジン−4−カルボン酸(D23)
1−(3−トリフルオロメチルピリジン−2−イル)−ピペリジン−4−カルボン酸(D24)
1−(6−メチル−4−トリフルオロメチルピリジン−2−イル)−ピペリジン−4−カルボン酸(D25)
1−(ピリミジン−2−イル)−ピペリジン−4−カルボン酸(D26)
1−(4−トリフルオロメチルピリミジン−2−イル)−ピペリジン−4−カルボン酸(D27)
1−(6クロロピリダジン−3−イル)−ピペリジン−4−カルボン酸(D28)
1−(ベンゾチアゾール−2−イル)−ピペリジン−4−カルボン酸(D29)
【0041】
以下の化合物を、F.E.Blaney et al., J.Med.Chem., 1983, 26, 1747で用いられる方法と類似の方法を用いて調製した。
1−(ベンジル)−ピペリジン−4−カルボン酸(D30)
1−(2−クロロベンジル)−ピペリジン−4−カルボン酸(D31)
1−(3−クロロベンジル)−ピペリジン−4−カルボン酸(D32)
1−(4−クロロベンジル)−ピペリジン−4−カルボン酸(D33)
1−(2,4−ジクロロベンジル)−ピペリジン−4−カルボン酸(D34)
【0042】
記載35
6−アミノベンズイソキサゾール(D35)
6−ニトロベンゾイソキサゾール(F.Hollfelder et al., J.Org. Chem., 2001, 66, 5866)から、WO2004/024710の方法を用いて還元することにより標題化合物を調製した。
5−アミノ−2−メチルベンゾチアゾール、5−アミノイソキノリンおよび5−アミノキノリンは、市販されている。5−アミノ−1−メチルイソキノリンは、WO2004/024710に従って調製した。
【0043】
実施例1
1−(4−クロロフェニル)−N−(1−メチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−5−キノリニル)−4−ピペリジンカルボキサミド(E1)
DCM(5ml)中の1−(4−クロロフェニル)−4−ピペリジンカルボン酸(D5、150mg、0.63mM)の懸濁液を、アルゴン雰囲気下、塩化オキサリル(0.164ml、1.88mM)および1滴のDMFで処理した。2時間後、溶液を減圧下で濃縮し、ついで、DCM(10ml)中に再び溶解した。溶液を氷浴で冷却し、5−アミノ−1−メチル−2−(1H)−キノリノン、D3(109mg、0.03mmol)およびピリジン(0.061ml、0.75mmol)の溶液で処理した。混合物を25℃に約2時間保持し、ついで、さらに2時間45℃に保持し、再び25℃に24時間保持した。形成した粘性の沈殿を、遠心分離により除去して、DCM、エーテルで洗浄し、乾燥して、標題化合物を淡黄色固体として得た(156mg、63%)。MH396、394
【0044】
実施例2
4−(4−クロロフェニル)−N−5−キノリニルシクロヘキサンカルボキサミド(E2)
N,N−ジメチルアセトアミド(1mL)中の4−(4−クロロフェニル)シクロヘキサンカルボン酸(11.9mg、0.05mmol)の溶液に、塩化チオニル(2.0MのDCM溶液(25μL、0.05mmol)を加え、得られた溶液を30分間撹拌した。N,N−ジメチルアセトアミド(0.5mL)中の5−アミノキノリン(7.2mg、0.05mmol)およびジイソプロピルエチルアミン(19μL、0.15mmol)を加えた。混合物を16時間撹拌し、ついで、減圧下で蒸発させた。残渣を逆相HPLCにより精製して、標題化合物を白色固体として得た(6.0mg、33%)。MH=365、363
【0045】
表1に示す実施例3〜49を、実施例1および2に記載の方法と類似の方法により調製した。
【表1】

【0046】
【表2】

【0047】
【表3】

【0048】
【表4】

【0049】
【表5】

【0050】
薬理データ
(a)インビトロアッセイ
上記したように、本発明の化合物はバニロイド受容体(VR1)アンタゴニストであり、したがって、有用な医薬特性を有する。バニロイド受容体(VR1)アンタゴニスト活性は、慣用的な方法、例えばD. Le Bars, M. Gozarin and S. W. Cadden, [Pharmacological Reviews, 2001, 53(4), 597-652]などの標準的な参考文献、または本明細書で記載した他の文献中で開示されている方法を用いて、個々の化合物について確認し、立証をすることができる。
【0051】
本発明の化合物のために用いるスクリーンは、Smart et al.(British Journal of Pharmacology, 2000, 129, 227-230)により説明されたアッセイと同様の、FLIPRをベースとするカルシウムアッセイを基礎とした。
ヒトVR1を安定に発現する、形質移入された星状細胞腫1321N1細胞を、FLIPRプレートへ25,000セル/ウェル(96−ウェルプレート)で蒔き、一晩培養した。
【0052】
その後、細胞を4μMのフルオ−3AM(Molecular Probes)を含む培地に、2時間、暗所、室温でローディングさせた。ついでプレートを1.5mMのカルシウムを含む、プロベネシド不含のタイロードで4回洗浄した。細胞を化合物、またはバッファー対照と、室温で30分間前培養した。ついでカプサイシン(シグマ社)を細胞に添加した。
【0053】
カプサイシン添加後に蛍光を測定し、化合物不含のバッファー対照と比べて、その相違を検出することにより、ヒトVR1に対して拮抗活性を有する化合物を同定した。それ故に、例えば、バッファー対照では、カプサイシン添加により、細胞内のカルシウム濃度が増大し、結果として蛍光を生じる。拮抗活性を有する化合物はカプサイシンが受容体に結合するのを遮断し、情報伝達はなく、それ故に細胞内のカルシウムレベルは増大せず、結果として蛍光はより低い。pKb値は、Cheng−Prusoffの式を用いて、IC50値から算出した。
【0054】
上記した方法により試験したすべての化合物はpKb>5を有し、好ましい化合物(実施例1、3、8、16−25、28〜29、31〜33、43〜45)はpKb>7.0を有した。
【0055】
モルモットにおけるFCA−誘発痛覚過敏
インビトロでpKb>7.0を有する化合物を、モデル(a)に従って、痛覚過敏のモデルにおいても試験し(詳細はWO2004/024710を参照のこと)、活性であることが示された。実施例1は、5mg/kgpoの投与量で有意な活性を有した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

[式中:
Pは、フェニル、キノリニル、イソキノリニル、1,2,3,4−テトラヒドロキノリニル、ベンゾイソキサゾリルまたはベンゾチアゾリルであり;
P’は、フェニル、ピリジニル、ピリミジニル、ピリダジニルまたはベンゾチアゾリルであり;
およびRは、同じであっても異なっていてもよく、アルキル、アルコキシ、ハロ、−CF、−OCF、−OH、=O、−CN、−NO、−SONH、−SOまたは−NRであり;
およびRは、同じであっても異なっていてもよく、−Hまたはアルキルであり;
mは、0または1であり;
nは、0、1、2、3、4または5であり;
Xは、NまたはCHである]
で示される化合物またはその医薬上許容される塩もしくは溶媒和物:
ただし:
4−フェニル−N−キノリン−7−イル−ピペリジン−1−カルボキサミド;
N−キノリン−7−イル−1−(5−トリフルオロメチルピリド−2−イル)−ピペリジン−4−カルボキサミド;
N−キノリン−7−イル−1−(6−トリフルオロメチルピリド−2−イル)−ピペリジン−4−カルボキサミド;
N−イソキノリン−5−イル−1−(5−トリフルオロメチルピリド−2−イル)−ピペリジン−4−カルボキサミド;および
4−(4−クロロフェニル)−N−(2−メチルベンゾチアゾール−5−イル)シクロヘキサン−1−カルボキサミド;
から選択される化合物を除く化合物。
【請求項2】
Pが、フェニル、キノリニル、イソキノリニル、ベンゾイソキサゾリルまたはベンゾチアゾリルである、請求項1記載の式(I)で示される化合物。
【請求項3】
Pがフェニルである、請求項2記載の式(I)で示される化合物。
【請求項4】
Pが、キノリニル、イソキノリニル、ベンゾイソキサゾリルまたはベンゾチアゾリルである、請求項2記載の式(I)で示される化合物。
【請求項5】
P’がフェニルである、請求項1記載の式(I)で示される化合物。
【請求項6】
P’がピリジニルまたはピリミジニルである、請求項1記載の式(I)で示される化合物。
【請求項7】
実質的に実施例のいずれか1つに関して記載した、請求項1記載の式(I)で示される化合物またはその医薬上許容される塩もしくは溶媒和物。
【請求項8】
請求項1記載の式(I)で示される化合物またはその医薬上許容される塩もしくは溶媒和物の製造方法であって:
(a)式(II):
【化2】

[式中、P、Rおよびnは、式(I)の記載と同意義である]
で示される化合物を、式(III):
【化3】

[式中、P’、R、m、nおよびXは、式(I)の記載と同意義である]
で示される化合物と反応させ、ついで、この後要すれば、下記工程:
(i)式(I)で示される化合物を他の式(I)で示される化合物に変換すること;
(ii)いずれの保護基を除去すること;
(iii)形成した化合物の塩または溶媒和物を調製すること;
の1以上を行う方法。
【請求項9】
請求項1記載の式(I)で示される化合物またはその医薬上許容される塩もしくは溶媒和物および医薬上許容される担体または賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項10】
活性治療物質として用いるための式(I)で示される化合物またはその医薬上許容される塩もしくは溶媒和物。
【請求項11】
ヒトを含む哺乳動物における、バニロイド(VR1)受容体の拮抗が有益である障害、特に、本発明の障害の治療または予防方法であって、その治療または予防を必要とする哺乳動物に、治療的に有効な量の請求項1に記載の式(I)で示される化合物またはその医薬上許容される塩もしくは溶媒和物を投与することを含む方法。
【請求項12】
バニロイド(VR1)受容体の拮抗が有益である障害、特に本発明の障害の治療または予防用の医薬の製造における、請求項1記載の式(I)で示される化合物またはその医薬上許容される塩もしくは溶媒和物の使用。

【公表番号】特表2007−502258(P2007−502258A)
【公表日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−522995(P2006−522995)
【出願日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【国際出願番号】PCT/EP2004/009078
【国際公開番号】WO2005/016915
【国際公開日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(397009934)グラクソ グループ リミテッド (832)
【氏名又は名称原語表記】GLAXO GROUP LIMITED
【住所又は居所原語表記】Glaxo Wellcome House,Berkeley Avenue Greenford,Middlesex UB6 0NN,Great Britain
【Fターム(参考)】