説明

パッケージの製造方法、圧電振動子、発振器、電子機器および電波時計

【課題】パッケージ内の良好な真空度を確保できるパッケージの製造方法、このパッケージの製造方法により製造された圧電振動子、この圧電振動子を有する発振器、電子機器、および電波時計を提供する。
【解決手段】リッド基板用ウエハ50(第1基板)の内面に形成された接合膜35(接合材)と、ベース基板用ウエハ40(第2基板)の内面とを陽極接合して圧電振動子(パッケージ)を製造する圧電振動子の製造方法であって、リッド基板用ウエハ50の外面に第1ヒータ71を当接させ、ベース基板用ウエハ40の外面に第2ヒータ72を当接させて加熱する予備加熱工程S60と、接合膜35を陽極とし、ベース基板用ウエハ40を陰極として陽極接合する陽極接合工程S70と、を有し、予備加熱工程S60は、スペーサ75を配置し、スペーサ75を介してリッド基板用ウエハ50およびベース基板用ウエハ40を重ねた状態で行うことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、パッケージの製造方法、圧電振動子、発振器、電子機器および電波時計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、携帯電話や携帯情報端末には、時刻源や制御信号などのタイミング源、リファレンス信号源などとして水晶などを利用した圧電振動子が用いられている。この種の圧電振動子は、様々なものが知られているが、その一つとして、2層構造タイプの表面実装型の圧電振動子が知られている。
【0003】
このタイプの圧電振動子は、第1基板と第2基板とが直接接合されることでパッケージ化された2層構造になっており、両基板の間に形成されたキャビティ内に電子部品が収納されている。このような2層構造タイプのパッケージの1つとして、基板(本願の「第2基板」に相当)に貫通穴を設け、貫通穴の内面および貫通穴の周囲上下面もしくはそのいずれかの部分に配線用金属を形成し、その貫通穴に合金を溶着して気密端子(本願の「貫通電極」に相当)とした水晶部品(本願の「水晶振動子」に相当)が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
この水晶部品は、音叉型の水晶片(本願の「水晶振動片」に相当)を基板に接合後、蓋(本願の「第1基板」に相当)と基板とを陽極接合することで、水晶片を気密封止している。具体的には、蓋に陽極接合用の金属膜を形成し、金属膜とガラス材からなる基板との間に数百ボルトの直流電圧を印加して、真空中もしくは不活性ガス中で陽極接合している。
【0005】
ここで、一般に圧電振動子は、等価抵抗値(実効抵抗値、Re)がより低く抑えられたものが望まれている。等価抵抗値が低い圧電振動子は、低電力で圧電振動片を振動させることが可能であるため、エネルギー効率のよい高品質な圧電振動子になる。そして、等価抵抗値は、圧電振動片が封止されているパッケージ内が真空に近いほど低く抑えられることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−283951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、第1基板と第2基板とを陽極接合する際、各基板のガラス中に含まれている易移動性陽イオンの動きやすい温度は、200℃から250℃程度であることが知られている。したがって、陽極接合する際の第1基板および第2基板の各基板の温度(以下「接合温度」という。)が、200℃から250℃程度になるように各基板を加熱して陽極接合を行っている。
【0008】
ここで、通常、各基板のガラス材には有機物や水分等が含まれている。特に、ガラスフリットを焼成して貫通電極を形成している場合には、焼成後のガラスフリット中に有機溶剤が残存しているおそれがある。このため、各基板を加熱すると、各基板のガラス材およびガラスフリット内の有機物や水分等がアウトガスとして放出される。したがって、陽極接合の際、接合温度になるまで各基板を加熱すると、各基板からのアウトガスがパッケージ内に放出され、パッケージ内の真空度が低下するおそれがある。
【0009】
そこで本発明は、パッケージ内の良好な真空度を確保できるパッケージの製造方法、このパッケージの製造方法により製造された圧電振動子、この圧電振動子を有する発振器、電子機器、および電波時計の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明のパッケージの製造方法は、第1基板の内面に形成された接合材と、第2基板の内面とを陽極接合することによりパッケージを製造するパッケージの製造方法であって、前記第1基板の外面に設定温度T1の第1ヒータを当接させ、前記第2基板の外面に設定温度T2の第2ヒータを当接させ、前記各ヒータで前記各基板を加熱する予備加熱工程と、前記第1基板の接合材を陽極とし、前記第2基板を陰極として電圧を印加するとともに、前記第1基板を接合温度F1とし、前記第2基板を接合温度F2として、前記第1基板と前記第2基板とを接合する陽極接合工程と、を有し、前記予備加熱工程は、前記第1基板の前記接合材と前記第2基板との間にスペーサを配置し、前記スペーサを介して前記第1基板と前記第2基板とを重ねた状態で行うことを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、予備加熱工程を行うことで、陽極接合工程の前にアウトガスを放出させることができる。その際、第1基板の接合材と第2基板との間にスペーサを配置して予備加熱工程を行っているので、予備加熱工程により各基板から放出されたアウトガスは、スペーサにより形成された第1基板と第2基板との間隙から、各基板の外部に放出される。これにより、陽極接合工程でアウトガスがパッケージ内に放出されるのを抑制できるので、パッケージ内の良好な真空度を確保できる。
【0012】
また、前記予備加熱工程と同条件下で、前記第1ヒータを任意温度t1とし、前記第2ヒータを任意温度t2として前記各基板を加熱した場合の、前記第1ヒータの前記任意温度t1と前記第1基板の実温度f1との差分α1、および前記第2ヒータの前記任意温度t2と前記第2基板の実温度f2との差分α2を予め測定しておき、前記予備加熱工程の前記第1ヒータの設定温度T1、および前記第2ヒータの設定温度T2は、T1>F1+α1、かつ、T2>F2+α2、を満たすように設定されていることが望ましい。
【0013】
本発明によれば、予備加熱工程の第1ヒータの設定温度T1は、第1基板の接合温度F1に、第1ヒータの任意温度t1と第1基板の実温度f1との差分α1を加えた温度よりも高い温度としている。また、予備加熱工程の第2ヒータの設定温度T2は、第2基板の接合温度F2に、第2ヒータの任意温度t2と第2基板の実温度f2との差分α2を加えた温度よりも高い温度としている。これにより、予備加熱工程の各基板の実温度は、陽極接合工程の各基板の各接合温度F1,F2よりも高温となる。したがって、陽極接合工程でアウトガスがパッケージ内に放出されるのを確実に抑制し、パッケージ内のより良好な真空度を確保できる。
【0014】
また、前記第1基板からアウトガスが放出されるときの前記第1基板の放出温度をK1とし、前記第2基板からアウトガスが放出されるときの前記第2基板の放出温度をK2としたとき、前記予備加熱工程の前記第1ヒータの設定温度T1、および前記第2ヒータの設定温度T2は、T1>K1+α1、かつ、T2>K2+α2、を満たすように設定されていることが望ましい。
【0015】
本発明によれば、予備加熱工程の第1ヒータの設定温度T1は、第1基板からアウトガスが放出される放出温度K1に、第1ヒータの任意温度t1と第1基板の実温度f1との差分α1を加えた温度よりも高い温度としている。また、予備加熱工程の第2ヒータの設定温度T2は、第2基板からアウトガスが放出される放出温度K2に、第2ヒータの任意温度t2と第2基板の実温度f2との差分α2を加えた温度よりも高い温度としている。これにより、予備加熱工程の各基板の実温度は、各基板からアウトガスが放出される各放出温度K1,K2よりも高温となるので、各基板からアウトガスを放出しきることができる。したがって、陽極接合工程の際、および完成後のパッケージの使用時にも、アウトガスがパッケージ内に放出されるのを確実に防止し、パッケージ内のより良好な真空度を確保できる。
【0016】
また、本発明の圧電振動子は、上述のパッケージの製造方法により製造した前記パッケージの内部に、圧電振動片が封入されていることを特徴とする。
本発明によれば、良好な真空度を確保できるパッケージの内部に圧電振動片が封入されているので、電気的特性に優れた圧電振動子を提供できる。
【0017】
本発明の発振器は、上述した圧電振動子が、発振子として集積回路に電気的に接続されていることを特徴とする。
本発明の電子機器は、上述した圧電振動子が、計時部に電気的に接続されていることを特徴とする。
本発明の電波時計は、上述した圧電振動子が、フィルタ部に電気的に接続されていることを特徴とする。
【0018】
本発明の発振器、電子機器および電波時計によれば、電気的特性に優れた圧電振動子を備えているので、高性能な発振器、電子機器および電波時計を提供することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、予備加熱工程を行うことで、陽極接合工程の前にアウトガスを放出させることができる。その際、第1基板の接合材と第2基板との間にスペーサを配置して予備加熱工程を行っているので、予備加熱工程により各基板から放出されたアウトガスは、スペーサにより形成された第1基板と第2基板との間隙から、各基板の外部に放出される。これにより、陽極接合工程でアウトガスがパッケージ内に放出されるのを抑制できるので、パッケージ内の良好な真空度を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】圧電振動子を示す外観斜視図である。
【図2】図1に示す圧電振動子の内部構成図であって、リッド基板を取り外した状態の平面図である。
【図3】図2のA−A線における断面図である。
【図4】図1に示す圧電振動子の分解斜視図である。
【図5】圧電振動子の製造方法のフローチャートである。
【図6】ウエハ体の分解斜視図である。
【図7】予備加熱工程のうち、各基板用ウエハをセットしたときの側面図である。
【図8】予備加熱工程のうち、各基板用ウエハをセットしたときの平面図である。
【図9】陽極接合工程の説明図である。
【図10】発振器の一実施形態を示す構成図である。
【図11】電子機器の一実施形態を示す構成図である。
【図12】電波時計の一実施形態を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(圧電振動子)
以下、本発明の実施形態に係る圧電振動子を、図面を参照して説明する。
なお、以下の説明において、第1基板をリッド基板用ウエハとし、第2基板をベース基板用ウエハとして説明する。また、パッケージ(圧電振動子)におけるベース基板のリッド基板との接合面を上面Uとし、ベース基板の外側の面を下面Lとして説明する。
図1は圧電振動子の外観斜視図である。
図2は圧電振動子の内部構成図であって、リッド基板を取り外した状態の平面図である。
図3は図2のA−A線における断面図である。
図4は図1に示す圧電振動子の分解斜視図である。
なお、図4においては、図面を見易くするために後述する励振電極13,14、引き出し電極19,20、マウント電極16,17および重り金属膜21の図示を省略している。
図1から図4に示すように、本実施形態の圧電振動子1は、ベース基板2およびリッド基板3が接合膜35を介して陽極接合されたパッケージ9と、パッケージ9のキャビティ3aに収納された圧電振動片4と、を備えた表面実装型の圧電振動子1である。
【0022】
(圧電振動片)
圧電振動片4は、水晶やタンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム等の圧電材料から形成された音叉型の振動片であり、所定の電圧が印加されたときに振動するものである。圧電振動片4は、平行に配置された一対の振動腕部10,11と、前記一対の振動腕部10,11の基端側を一体的に固定する基部12と、一対の振動腕部10,11の両主面上に形成された溝部18とを備えている。この溝部18は、該振動腕部10,11の長手方向に沿って振動腕部10,11の基端側から略中間付近まで形成されている。
【0023】
励振電極13,14および引き出し電極19,20は、後述するマウント電極16,17の下地層と同じ材料のクロム(Cr)により単層膜が形成されている。これにより、マウント電極16,17の下地層を成膜するのと同時に、励振電極13,14および引き出し電極19,20を成膜することができる。
【0024】
励振電極13,14は、一対の振動腕部10,11を互いに接近又は離間する方向に所定の共振周波数で振動させる電極である。第1の励振電極13および第2の励振電極14は、一対の振動腕部10,11の外表面に、それぞれ電気的に切り離された状態でパターニングされて形成されている。
【0025】
マウント電極16,17は、Crと金(Au)との積層膜であり、水晶と密着性の良いCr膜を下地層として成膜した後に、表面にAuの薄膜を仕上げ層として成膜することにより形成される。
【0026】
一対の振動腕部10,11の先端には、自身の振動状態を所定の周波数の範囲内で振動するように調整(周波数調整)を行うための重り金属膜21が被膜されている。この重り金属膜21は、周波数を粗く調整する際に使用される粗調膜21aと、微小に調整する際に使用される微調膜21bとに分かれている。これら粗調膜21aおよび微調膜21bを利用して周波数調整を行うことで、一対の振動腕部10,11の周波数をデバイスの公称周波数の範囲内に収めることができる。
【0027】
(パッケージ)
図1から図4に示すように、ベース基板2およびリッド基板3は、ガラス材料、例えばソーダ石灰ガラスからなる陽極接合可能な基板であり、略板状に形成されている。リッド基板3におけるベース基板2との接合面側には、圧電振動片4を収容するキャビティ3aが形成されている。
【0028】
リッド基板3におけるベース基板2との接合面側の全体に、陽極接合用の接合膜35(接合材)が形成されている。すなわち接合膜35は、キャビティ3aの内面全体に加えて、キャビティ3aの周囲の額縁領域に形成されている。本実施形態の接合膜35はアルミニウム(Al)により形成されているが、シリコン(Si)やCr等で接合膜35を形成することも可能である。後述するように、この接合膜35とベース基板2とが陽極接合され、キャビティ3aが真空封止されている。
【0029】
図3に示すように、圧電振動子1は、ベース基板2を厚さ方向に貫通し、キャビティ3aの内側と圧電振動子1の外側とを導通する貫通電極32,33を備えている。そして、貫通電極32,33は、ベース基板2を貫通する貫通孔30,31内に配置され、圧電振動片4と外部とを電気的に接続する金属ピン7と、貫通孔30,31と金属ピン7との間に充填される筒体6と、により形成されている。なお、以下には貫通電極32を例にして説明するが、貫通電極33についても同様である。また、貫通電極33、引き回し電極37および外部電極39の電気的接続についても、貫通電極32、引き回し電極36および外部電極39と同様となっている。
【0030】
図3に示すように、貫通孔30は、上面U側から下面L側にかけて、内形が次第に大きくなるように形成されており、貫通孔30の中心軸Oを含む断面形状がテーパ状となるように形成されている。
金属ピン7は、銀(Ag)やNi合金、Al等の金属材料により形成された導電性の棒状部材であり、鍛造やプレス加工により成型される。金属ピン7は、線膨張係数がベース基板2のガラス材料と近い金属、例えば、鉄(Fe)を58重量パーセント、Niを42重量パーセント含有する合金(42アロイ)で形成することが望ましい。
筒体6は、ペースト状のガラスフリットが焼成されたものである。筒体6の中心には、金属ピン7が筒体6を貫通するように配されており、筒体6は、金属ピン7および貫通孔30に対して強固に固着している。
【0031】
ベース基板2の上面U側には、一対の引き回し電極36,37がパターニングされている。また、これら一対の引き回し電極36,37上にそれぞれAu等からなる先細り形状のバンプBが形成されており、前記バンプBを利用して圧電振動片4の一対のマウント電極が実装されている。これにより、圧電振動片4の一方のマウント電極16が、一方の引き回し電極36を介して一方の貫通電極32に導通し、他方のマウント電極17が、他方の引き回し電極37を介して他方の貫通電極33に導通するようになっている。
【0032】
ベース基板2の下面Lには、一対の外部電極38,39が形成されている。一対の外部電極38,39は、ベース基板2の長手方向の両端部に形成され、一対の貫通電極32,33に対してそれぞれ電気的に接続されている。
【0033】
このように構成された圧電振動子1を作動させる場合には、ベース基板2に形成された外部電極38,39に対して、所定の駆動電圧を印加する。これにより、圧電振動片4の第1の励振電極13および第2の励振電極14に電圧を印加することができるので、一対の振動腕部10,11を接近・離間させる方向に所定の周波数で振動させることができる。そして、この一対の振動腕部10,11の振動を利用して、時刻源や制御信号のタイミング源、リファレンス信号源等として利用することができる。
【0034】
(圧電振動子の製造方法)
次に、上述した圧電振動子の製造方法を、フローチャートを参照しながら説明する。
図5は本実施形態の圧電振動子の製造方法のフローチャートである。
図6は、ウエハ体60の分解斜視図である。なお、図6に示す点線は、後に行う切断工程で切断する切断線Mを図示している。
本実施形態に係る圧電振動子の製造方法は、主に、圧電振動片作製工程S10と、リッド基板用ウエハ作製工程S20と、ベース基板用ウエハ作製工程S30と、組立工程(S50以降)を有している。各工程のうち、圧電振動片作製工程S10、リッド基板用ウエハ作製工程S20およびベース基板用ウエハ作製工程S30は、並行して実施することができる。
【0035】
(圧電振動片作製工程S10)
圧電振動片作製工程S10では、圧電振動片4を作製している。具体的には、まず水晶のランバート原石を所定の角度でスライスし、ポリッシュなどの鏡面研磨加工を行って、所定の厚みのウエハとする。続いて、フォトリソグラフィ技術によって圧電振動片4の外形形状にパターニングするとともに、金属膜の成膜およびパターニングを行って、励振電極13,14、引き出し電極19,20、マウント電極16,17および重り金属膜21を形成する。その後、圧電振動片4の共振周波数の粗調を行う。以上で、圧電振動片作製工程S10が終了する。
【0036】
(リッド基板用ウエハ作製工程S20)
リッド基板用ウエハ作製工程S20では、後にリッド基板となるリッド基板用ウエハ50(請求項の「第1基板」に相当)を作製する。まず、ソーダ石灰ガラスからなる円板状のリッド基板用ウエハ50を、所定の厚さまで研磨加工して洗浄した後に、エッチングなどにより最表面の加工変質層を除去する(S21)。次いで、キャビティ形成工程S22では、リッド基板用ウエハ50におけるベース基板用ウエハ40との接合面に、キャビティ3aを複数形成する。キャビティ3aの形成は、加熱プレス成型やエッチング加工などによって行う。次に、接合面研磨工程S23では、ベース基板用ウエハ40との接合面を研磨する。
【0037】
次に、接合膜形成工程S24では、後述のベース基板用ウエハ40(請求項の「第2基板」に相当)との接合面に、Alからなる接合膜35(図3参照)を形成する。接合膜35は、ベース基板用ウエハ40との接合面に加えて、キャビティ3aの内面全体に形成してもよい。これにより、接合膜35のパターニングが不要になり、製造コストを低減することができる。接合膜35の形成は、スパッタやCVD等の成膜方法によって行うことができる。なお、接合膜形成工程S24の前に接合面研磨工程S23を行っているので、接合膜35の表面の平面度が確保され、ベース基板用ウエハ40との安定した接合を実現することができる。
【0038】
(ベース基板用ウエハ作製工程S30)
ベース基板用ウエハ作製工程S30では、後にベース基板となるベース基板用ウエハ40を作製する。まず、ソーダ石灰ガラスからなる円板状のベース基板用ウエハ40を、所定の厚さまで研磨加工して洗浄した後に、エッチングなどにより最表面の加工変質層を除去する(S31)。
【0039】
(貫通電極形成工程S32)
次いで、ベース基板用ウエハ40に、一対の貫通電極32を形成する貫通電極形成工程S32を行う。なお、以下には貫通電極32の形成工程を説明するが、貫通電極33の形成工程についても同様である。
【0040】
まず、ベース基板用ウエハ40の下面Lから上面Uにかけてプレス加工等で貫通孔30を成型する。次に、貫通孔30内に金属ピン7を挿入してガラスフリットを充填する。ガラスフリットは、主に粉末状のガラス粒子と、有機溶剤と、バインダ(固着剤)とにより構成されている。
【0041】
続いて、ガラスフリットを焼成して、ガラスの筒体6、貫通孔30および金属ピン7を一体化させる。例えば、ベース基板用ウエハ40を焼成炉に搬送した後、ガラスフリットを焼成している。このとき、ガラスフリット内部の有機溶剤やバインダ等が蒸発して、一酸化炭素(CO)や二酸化炭素(CO2)、水蒸気(H2O)等のアウトガスが発生し、ガラスフリットの外部に放出される。
【0042】
最後に、ベース基板用ウエハ40の上面Uおよび下面Lを研磨して、金属ピン7を上面Uおよび下面Lに露出させつつ平坦面とすることにより、貫通孔30内に貫通電極32を形成する。貫通電極32により、ベース基板用ウエハ40の上面U側と下面L側との導電性が確保されると同時に、ベース基板用ウエハ40の貫通孔30を封止することができる。
【0043】
(引き回し電極形成工程S33)
次に、貫通電極にそれぞれ電気的に接続された引き回し電極36,37を上面U上に複数形成する引き回し電極形成工程S33を行う。さらに、引き回し電極36,37上に、それぞれAu等からなる先細り形状のバンプを形成する。なお、図6では、図面の見易さのためバンプの図示を省略している。この時点でベース基板用ウエハ作製工程S30が終了する。
【0044】
(マウント工程S50)
次に、ベース基板用ウエハ40の引き回し電極36,37上に、バンプBを介して圧電振動片4を接合するマウント工程S50を行う。具体的には、圧電振動片4の基部12をバンプB上に載置し、バンプBを所定温度に加熱しながら、圧電振動片4をバンプBに押し付けつつ超音波振動を印加する。これにより、図3に示すように、圧電振動片4の振動腕部10,11がベース基板用ウエハ40の上面Uから浮いた状態で、基部12がバンプBに機械的に固着される。
【0045】
(予備加熱工程S60)
続いて、陽極接合工程S70に先立ち、リッド基板用ウエハ50およびベース基板用ウエハ40を予備加熱する予備加熱工程S60を行う。予備加熱工程S60は、リッド基板用ウエハ50およびベース基板用ウエハ40を真空チャンバ内にセットするセット工程S61と、リッド基板用ウエハ50およびベース基板用ウエハ40を予備加熱する各ウエハ加熱工程と、を有している。
予備加熱工程S60では、リッド基板用ウエハ50およびベース基板用ウエハ40の内部に残存している有機溶剤やバインダ、水分等を予備加熱により蒸発させ、一酸化炭素(CO)や二酸化炭素(CO2)、水蒸気(H2O)等のアウトガスを放出している。そして、後述の陽極接合工程S70の際、リッド基板用ウエハ50およびベース基板用ウエハ40が接合温度まで上昇しても、アウトガスが放出されるのを抑制している。
【0046】
(セット工程S61)
図7は、予備加熱工程S60のうち、各基板用ウエハをセットしたときの側面図である。
図8は、予備加熱工程S60のうち、各基板用ウエハをセットしたときの平面図である。
なお、図面をわかりやすくするために、各図では、スペーサ75の大きさを誇張して表現している。また、図8では、リッド基板用ウエハ50および第1ヒータ71の図示を省略している。
まず始めに、図7および図8に示すように、リッド基板用ウエハ50およびベース基板用ウエハ40を予備加熱するため、真空チャンバ65内の予備加熱室67aに、リッド基板用ウエハ50およびベース基板用ウエハ40をセットするセット工程S61を行う。
【0047】
真空チャンバ65には真空ポンプPが接続されており、この真空ポンプPにより予備加熱室67aの圧力が調節可能になっている。なお、真空チャンバ65内には、予備加熱室67aに隣接して陽極接合室67b(図9参照)が設けられており、予備加熱室67aと同様に陽極接合室67bの圧力が調節可能になっている。
予備加熱室67aには、リッド基板用ウエハ50を加熱する第1ヒータ71と、ベース基板用ウエハ40を加熱する第2ヒータ72と、が設けられている。第1ヒータ71および第2ヒータ72には、市販のホットプレート等が使用される。
【0048】
リッド基板用ウエハ50およびベース基板用ウエハ40は、以下の手順で予備加熱室67aにセットされる。
まず、第2ヒータ72の上面72aにベース基板用ウエハ40の下面L(外面)を当接させて、ベース基板用ウエハ40を配置する。第2ヒータ72の上面72aには不図示の治具が配置されており、ベース基板用ウエハ40が第2ヒータ72に対して位置決めされる。
【0049】
次に、図8に示すように、ベース基板用ウエハ40の上面Uに、複数(本実施形態では2個)のスペーサ75の下面75bを当接させて、複数のスペーサ75を配置する。
スペーサ75は、例えばステンレス等からなる平面視略矩形状をした平板部材である。スペーサ75は、例えば幅が10mm程度、長さが30mmから50mm程度、板厚が100μm程度である。各スペーサ75の長手方向をベース基板用ウエハ40の径方向に沿わせ、2個のスペーサ75とベース基板用ウエハ40の中心とで形成する角度が、例えば120度程度となるようにスペーサ75を配置する。また、ベース基板用ウエハ40の上面Uに形成された引き回し電極36,37等をスペーサ75で傷つけないように、切断線Mの外径側にスペーサ75を配置する。
【0050】
続いて、スペーサ75の上面75aにリッド基板用ウエハ50の接合膜35を当接させて、リッド基板用ウエハ50を配置する。このとき、スペーサ75は、ベース基板用ウエハ40とリッド基板用ウエハ50とにより挟持された状態となる。ここで、スペーサ75は100μm程度の厚みを有しているため、ベース基板用ウエハ40の上面Uと、リッド基板用ウエハ50の接合膜35との間には、スペーサ75の厚みと略同一の間隙Gが形成される。
【0051】
最後に、リッド基板用ウエハ50の上面50a(外面)に第1ヒータ71の下面71bを当接させて、第1ヒータ71を配置する。第1ヒータ71の下面71bには不図示の治具が配置されており、リッド基板用ウエハ50が第1ヒータ71に対して位置決めされる。以上で、リッド基板用ウエハ50およびベース基板用ウエハ40のセット工程S61が終了する。
【0052】
(各ウエハ加熱工程S63)
続いて、第1ヒータ71でリッド基板用ウエハ50を加熱し、第2ヒータ72でベース基板用ウエハ40を加熱する、各ウエハ加熱工程S63を行う。各ウエハ加熱工程S63では、真空下で、第1ヒータ71の設定温度をT1としてリッド基板用ウエハ50の上面50aに当接させ、第2ヒータ72の設定温度をT2としてベース基板用ウエハ40下面Lに当接させている。
【0053】
ところで、予備加熱工程S60では、リッド基板用ウエハ50およびベース基板用ウエハ40の外部にアウトガスを放出させることで、後述の陽極接合工程S70の際、アウトガスが発生するのを抑制することを目的としている。したがって、予備加熱工程S60におけるリッド基板用ウエハ50の実温度が、陽極接合工程S70におけるリッド基板用ウエハ50の接合温度F1を確実に上回っている必要がある。また同様に、予備加熱工程S60では、ベース基板用ウエハ40の実温度が、陽極接合工程S70におけるベース基板用ウエハ40の接合温度F2を確実に上回っている必要がある。
【0054】
ここで、予備加熱工程S60では、リッド基板用ウエハ50とベース基板用ウエハ40との間にスペーサ75が配置されている。これにより、リッド基板用ウエハ50とベース基板用ウエハ40との間に間隙Gが形成されるため、リッド基板用ウエハ50およびベース基板用ウエハ40の熱が間隙Gから放熱されるおそれがある。このため、予備加熱工程S60におけるリッド基板用ウエハ50の実温度は、第1ヒータ71の設定温度であるT1を大幅に下回り、さらに陽極接合工程S70におけるリッド基板用ウエハ50の接合温度F1を下回るおそれがある。また、予備加熱工程S60におけるベース基板用ウエハ40の実温度は、第2ヒータ72の設定温度であるT2を大幅に下回り、さらに接合温度F2を下回るおそれがある。このため、予備加熱工程S60で、リッド基板用ウエハ50およびベース基板用ウエハ40の外部へのアウトガスの放出が不十分となり、陽極接合工程S70でアウトガスを放出してしまうおそれがある。
【0055】
そこで、各ヒータの温度と各基板の実温度との差分を予め測定しておき、この差分を考慮して予備加熱工程における各ヒータの設定温度を決定することが望ましい。具体的には、第1ヒータ71の任意温度t1とリッド基板用ウエハ50の実温度f1との差分α1、および第2ヒータ72の任意温度t2とベース基板用ウエハ40の実温度f2との差分α2を予め測定する。
【0056】
差分α1および差分α2の測定は、圧電振動子1の各製造工程とは独立して、以下の手順で行われる。なお、差分α1および差分α2の測定は、予備加熱工程S60と同条件で行われる。すなわち、リッド基板用ウエハ50とベース基板用ウエハ40との間にスペーサ75を配置し、間隙Gを形成する。そして、真空下で、第1ヒータ71をリッド基板用ウエハ50の上面50aに当接させ、第2ヒータ72をベース基板用ウエハ40下面Lに当接させた状態で差分α1および差分α2の測定が行われる。
【0057】
まず、前述のセット工程S61と同じように、真空チャンバ65内の予備加熱室67aに、リッド基板用ウエハ50およびベース基板用ウエハ40をセットする(図7参照)。
続いて、真空下で、第1ヒータ71を任意温度t1としてリッド基板用ウエハ50の加熱を行い、第2ヒータ72を任意温度t2としてベース基板用ウエハ40の加熱を行う。ここで、リッド基板用ウエハ50およびベース基板用ウエハ40にはそれぞれ熱電対(不図示)が埋設されており、リッド基板用ウエハ50およびベース基板用ウエハ40の実温度は、各熱電対により測定される。そして、第1ヒータ71の任意温度t1とリッド基板用ウエハ50に埋設された熱電対との差分からα1が算出され、第2ヒータ72の任意温度t2とベース基板用ウエハ40に埋設された熱電対との差分からα2が算出される。なお、一例として、任意温度t1=420℃のとき、リッド基板用ウエハ50の実温度f1は330℃となり、差分α1=90℃となる。また、この差分α1,α2は、各ヒータの設定温度に関わらずほぼ一定となる。
【0058】
各ウエハ加熱工程S63における第1ヒータ71の設定温度T1、および第2ヒータ72の設定温度T2は、上述の差分α1およびα2を考慮して、
1>F1+α1・・・(1)、かつ、T2>F2+α2・・・(2)
を満たすように設定される。なお、一例として、リッド基板用ウエハ50の接合温度F1が200℃のとき、設定温度T1=290℃となる。
【0059】
各ウエハ加熱工程S63における第1ヒータ71の設定温度T1は、リッド基板用ウエハ50の接合温度F1に、第1ヒータ71の任意温度t1とリッド基板用ウエハ50の実温度f1との差分α1を加えた温度よりも高い温度に設定している。ここで、前述のとおり、差分α1は、第1ヒータ71の設定温度に関わらずほぼ一定となる。したがって、(1)式を満たすことで、予備加熱工程S60において、陽極接合工程S70におけるリッド基板用ウエハ50の接合温度F1よりも高温となるように、リッド基板用ウエハ50を加熱することができる。
また、第2ヒータ72の設定温度T2は、ベース基板用ウエハ40の接合温度F2に、第2ヒータ72の任意温度t2とベース基板用ウエハ40の実温度f2との差分α2を加えた温度よりも高い温度に設定している。ここで、前述のとおり、差分α2は、第2ヒータ72の設定温度に関わらずほぼ一定となる。したがって、(2)式を満たすことで、予備加熱工程S60において、陽極接合工程S70におけるベース基板用ウエハ40の接合温度F2よりも高温となるように、ベース基板用ウエハ40を加熱することができる。
したがって、後述の陽極接合工程S70でアウトガスがパッケージ内に放出されるのを確実に抑制できる。
【0060】
ところで、上述した(1)式および(2)式を満たすように第1ヒータ71および第2ヒータ72の温度を設定すると、陽極接合工程S70でアウトガスが放出されることはない。しかしながら、すべてのアウトガスが放出しきれていないおそれがある。このため、例えば圧電振動子1を電子機器等に実装した後、電子機器等の使用時に温度が上昇して、圧電振動子1が接合温度F1,F2に比較してかなりの高温になった場合には、アウトガスが放出されるおそれがある。
【0061】
そこで、予備加熱工程S60では、完全にアウトガスを放出しきるため、リッド基板用ウエハ50およびベース基板用ウエハ40がアウトガスを放出する放出温度K1,K2よりも高温になるように、リッド基板用ウエハ50およびベース基板用ウエハ40を加熱するのが望ましい。
【0062】
予備加熱工程S60では、上述した(1)式および(2)式を満たすように第1ヒータ71および第2ヒータ72の設定温度T1,T2が設定されている。
さらに、リッド基板用ウエハ50からアウトガスが放出されるときのリッド基板用ウエハ50の放出温度をK1とし、ベース基板用ウエハ40からアウトガスが放出されるときのベース基板用ウエハ40の放出温度をK2としたとき、予備加熱工程S60の第1ヒータ71の設定温度T1、および第2ヒータ72の設定温度T2は、
1>K1+α1・・・(3)、かつ、T2>K2+α2・・・(4)
を満たすように設定されている。なお、一例として、放出温度K1は、例えば、K1=330℃程度である。また、前述のとおり差分α1は90℃程度であるため、第1ヒータ71の設定温度T1は、例えば420℃以上に設定される。
【0063】
各ウエハ加熱工程S63における第1ヒータ71の設定温度T1は、リッド基板用ウエハ50からアウトガスが放出される放出温度K1に、第1ヒータ71の任意温度t1とリッド基板用ウエハ50の実温度f1との差分α1を加えた温度よりも高い温度に設定されている。したがって、(3)式を満たすことで、アウトガスが放出される放出温度K1よりも高温となるように、リッド基板用ウエハ50を加熱することができる。
また、各ウエハ加熱工程S63における第2ヒータ72の設定温度T2は、ベース基板用ウエハ40からアウトガスが放出される放出温度K2に、第2ヒータ72の任意温度t2とベース基板用ウエハ40の実温度f2との差分α2を加えた温度よりも高い温度に設定されている。
したがって、(4)式を満たすことで、アウトガスが放出される放出温度K2よりも高温となるように、ベース基板用ウエハ40を加熱することができる。
【0064】
(1)および(3)式を満たすように設定温度T1を設定し、第1ヒータ71でリッド基板用ウエハ50を加熱すると、リッド基板用ウエハ50からアウトガスが放出される。同様に、(2)および(4)式を満たすように設定温度T2を設定し、第2ヒータ72でベース基板用ウエハ40を加熱すると、ベース基板用ウエハ40からアウトガスが放出される。そして、アウトガスは、ベース基板用ウエハ40とリッド基板用ウエハ50との間隙Gから、真空チャンバ65の予備加熱室67a内に放出される。所定時間(例えばアウトガスが放出しきると想定される時間)経過した後、各ウエハ加熱工程S63を終了する。以上で、予備加熱工程S60が終了する。
【0065】
(陽極接合工程S70)
図9は、陽極接合工程S70の説明図である。
次に、リッド基板用ウエハ50およびベース基板用ウエハ40を陽極接合する陽極接合工程S70を行う。具体的には、以下の手順で陽極接合を行う。
まず、真空状態のまま、第1ヒータ71、第2ヒータ72およびスペーサ75と共に、リッド基板用ウエハ50およびベース基板用ウエハ40を予備加熱室67aから陽極接合室67bに移動する。陽極接合室67bでは、リッド基板用ウエハ50およびベース基板用ウエハ40は、前述のセット工程S61と同じ状態でセットされる。
【0066】
次に、図9に示すように、リッド基板用ウエハ50およびベース基板用ウエハ40の外径側にスペーサ75を移動させてスペーサ75を外し、リッド基板用ウエハ50の接合膜35と、ベース基板用ウエハ40の上面Uとを当接させる。
続いて、不図示の加圧装置で第1ヒータ71の上面71aを押圧して、ベース基板用ウエハ40にリッド基板用ウエハ50を押付ける。なお、加圧装置の押圧力は、例えば500N程度である。
【0067】
続いて、加圧装置で押圧しながら、第1ヒータ71でリッド基板用ウエハ50を加熱し、第2ヒータ72でベース基板用ウエハ40を加熱する。例えば、200℃程度に第1ヒータ71を設定して、リッド基板用ウエハ50を接合温度F1=190℃になるまで、リッド基板用ウエハ50を加熱している。また、例えば220℃程度に第2ヒータ72を設定して、接合温度F2=210℃になるまでベース基板用ウエハ40を加熱している。なお、第2ヒータ72の温度を第1ヒータ71の温度よりも若干高く設定するのが望ましい。これにより、陽極接合工程S70でベース基板用ウエハ40およびリッド基板用ウエハ50を接合した後に反りが発生するのを防止できる。
【0068】
ここで、前述の予備加熱工程S60では、(1)式および(2)式を満たすように、第1ヒータ71の設定温度T1および第2ヒータ72の設定温度T2を設定している。すなわち、予備加熱工程S60では、接合温度F1,F2よりも高温になるように、リッド基板用ウエハ50およびベース基板用ウエハ40を加熱している。したがって、陽極接合工程S70でリッド基板用ウエハ50およびベース基板用ウエハ40からアウトガスが放出されることがない。
【0069】
続いて、加圧装置で押圧しつつ第1ヒータ71および第2ヒータ72で加熱しながら、リッド基板用ウエハ50の接合膜35を電源77の陽極電極に、ベース基板用ウエハ40を電源77の陰極電極に接続し、各電極間に例えば500V程度の電圧を印加する。これにより、リッド基板用ウエハ50とベース基板用ウエハ40とを陽極接合することができ、図6に示すウエハ体60を得ることができる。以上で、陽極接合工程S70が終了する。
【0070】
次に、ベース基板用ウエハ40の下面Lに導電性材料をパターニングして、一対の貫通電極32,33にそれぞれ電気的に接続された一対の外部電極38,39(図3参照)を複数形成する外部電極形成工程S80を行う。この工程により、圧電振動片4は、貫通電極32,33を介して外部電極38,39と導通する。
【0071】
次に、ウエハ体60の状態で、キャビティ3a内に封止された個々の圧電振動子の周波数を微調整して所定の範囲内に収める微調工程S90を行う。具体的には、図3に示す外部電極38,39から所定電圧を継続的に印加して、圧電振動片4を振動させつつ周波数を計測する。この状態で、ベース基板用ウエハ40の外部からレーザ光を照射し、重り金属膜21の微調膜21b(図2参照)を蒸発させる。これにより、一対の振動腕部10,11の先端側の重量が低下するため、圧電振動片4の周波数が上昇する。これにより、圧電振動子の周波数を微調整して、公称周波数の範囲内に収めることができる。
【0072】
周波数の微調が終了後、接合されたウエハ体60を図6に示す切断線Mに沿って切断する切断工程S100を行う。具体的には、まずウエハ体60のベース基板用ウエハ40の表面にUVテープを貼り付ける。次に、リッド基板用ウエハ50側から切断線Mに沿ってレーザを照射する(スクライブ)。次に、UVテープの表面から切断線Mに沿って切断刃を押し当て、ウエハ体60を割断する(ブレーキング)。その後、UVを照射してUVテープを剥離する。これにより、ウエハ体60を複数の圧電振動子に分離することができる。なお、これ以外のダイシング等の方法によりウエハ体60を切断してもよい。
【0073】
なお、切断工程S100を行って個々の圧電振動子にした後に、微調工程S90を行う工程順序でも構わない。但し、上述したように、微調工程S90を先に行うことで、ウエハ体60の状態で微調を行うことができるため、複数の圧電振動子をより効率良く微調することができる。よって、スループットの向上化を図ることができるため好ましい。
【0074】
その後、内部の電気特性検査S110を行う。即ち、圧電振動片4の共振周波数や共振抵抗値、ドライブレベル特性(共振周波数および共振抵抗値の励振電力依存性)等を測定してチェックする。また、絶縁抵抗特性等を併せてチェックする。そして、最後に圧電振動子の外観検査を行って、寸法や品質等を最終的にチェックする。これをもって圧電振動子の製造が終了する。
【0075】
本実施形態によれば、予備加熱工程S60を行うことで、陽極接合工程S70の前にアウトガスを放出させることができる。その際、リッド基板用ウエハ50の接合膜35とベース基板用ウエハ40との間にスペーサ75を配置して予備加熱工程を行っている。このため、リッド基板用ウエハ50およびベース基板用ウエハ40から放出されたアウトガスは、スペーサ75により形成されたベース基板用ウエハ40とリッド基板用ウエハ50との間隙Gから外部に放出される。これにより、陽極接合工程S70でアウトガスが圧電振動子1の内部に放出されるのを抑制できるので、圧電振動子1の良好な真空度を確保できる。
【0076】
また、本実施形態によれば、予備加熱工程S60の第1ヒータ71の設定温度T1は、リッド基板用ウエハ50の接合温度F1に、第1ヒータ71の任意温度t1とリッド基板用ウエハ50の実温度f1との差分α1を加えた温度よりも高い温度としている。また、予備加熱工程S60の第2ヒータ72の設定温度T2は、ベース基板用ウエハ40の接合温度F2に、第2ヒータ72の任意温度t2とベース基板用ウエハ40の実温度f2との差分α2を加えた温度よりも高い温度としている。これにより、予備加熱工程S60のリッド基板用ウエハ50およびベース基板用ウエハ40の実温度は、陽極接合工程S70の各接合温度F1,F2よりも高温となる。したがって、陽極接合工程S70でアウトガスがパッケージ内に放出されるのを確実に抑制し、パッケージ内のより良好な真空度を確保できる。
【0077】
さらに、予備加熱工程S60において、アウトガスが放出される放出温度K1よりも高温となるようにリッド基板用ウエハ50を加熱し、アウトガスが放出される放出温度K2よりも高温となるように、ベース基板用ウエハ40を加熱している。これにより、リッド基板用ウエハ50およびベース基板用ウエハ40からアウトガスを放出しきることができる。したがって、陽極接合工程S70の際、および完成後の圧電振動子1の使用時にも、アウトガスが圧電振動子1の内部に放出されるのを確実に防止し、圧電振動子1のより良好な真空度を確保できる。
【0078】
(発振器)
次に、本発明に係る発振器の一実施形態について、図10を参照しながら説明する。
本実施形態の発振器110は、図10に示すように、圧電振動子1を、集積回路111に電気的に接続された発振子として構成したものである。この発振器110は、コンデンサ等の電子素子部品112が実装された基板113を備えている。基板113には、発振器用の前記集積回路111が実装されており、この集積回路111の近傍に、圧電振動子1の圧電振動片が実装されている。これら電子素子部品112、集積回路111および圧電振動子1は、図示しない配線パターンによってそれぞれ電気的に接続されている。なお、各構成部品は、図示しない樹脂によりモールドされている。
【0079】
このように構成された発振器110において、圧電振動子1に電圧を印加すると、圧電振動子1内の圧電振動片が振動する。この振動は、圧電振動片が有する圧電特性により電気信号に変換されて、集積回路111に電気信号として入力される。入力された電気信号は、集積回路111によって各種処理がなされ、周波数信号として出力される。これにより、圧電振動子1が発振子として機能する。
また、集積回路111の構成を、例えば、RTC(リアルタイムクロック)モジュール等を要求に応じて選択的に設定することで、時計用単機能発振器等の他、当該機器や外部機器の動作日や時刻を制御したり、時刻やカレンダー等を提供したりする機能を付加することができる。
【0080】
本実施形態の発振器110によれば、良好な真空度を確保でき、電気的特性に優れた圧電振動子1を備えているので、高性能な発振器110を提供することができる。
【0081】
(電子機器)
次に、本発明に係る電子機器の一実施形態について、図11を参照して説明する。なお電子機器として、前述した圧電振動子1を有する携帯情報機器120を例にして説明する。
始めに本実施形態の携帯情報機器120は、例えば、携帯電話に代表されるものであり、従来技術における腕時計を発展、改良したものである。外観は腕時計に類似し、文字盤に相当する部分に液晶ディスプレイを配し、この画面上に現在の時刻等を表示させることができるものである。また、通信機として利用する場合には、手首から外し、バンドの内側部分に内蔵されたスピーカおよびマイクロフォンによって、従来技術の携帯電話と同様の通信を行うことが可能である。しかしながら、従来の携帯電話と比較して、格段に小型化および軽量化されている。
【0082】
次に、本実施形態の携帯情報機器120の構成について説明する。この携帯情報機器120は、図11に示すように、圧電振動子1と、電力を供給するための電源部121とを備えている。電源部121は、例えば、リチウム二次電池からなっている。この電源部121には、各種制御を行う制御部122と、時刻等のカウントを行う計時部123と、外部との通信を行う通信部124と、各種情報を表示する表示部125と、それぞれの機能部の電圧を検出する電圧検出部126とが並列に接続されている。そして、電源部121によって、各機能部に電力が供給されるようになっている。
【0083】
制御部122は、各機能部を制御して音声データの送信や受信、現在時刻の計測、表示等、システム全体の動作制御を行う。また、制御部122は、予めプログラムが書き込まれたROMと、該ROMに書き込まれたプログラムを読み出して実行するCPUと、該CPUのワークエリアとして使用されるRAM等とを備えている。
【0084】
計時部123は、発振回路やレジスタ回路、カウンタ回路、インターフェース回路等を内蔵する集積回路と、圧電振動子1とを備えている。圧電振動子1に電圧を印加すると圧電振動片が振動し、該振動が水晶の有する圧電特性により電気信号に変換されて、発振回路に電気信号として入力される。発振回路の出力は二値化され、レジスタ回路とカウンタ回路とにより計数される。そして、インターフェース回路を介して、制御部122と信号の送受信が行われ、表示部125に、現在時刻や現在日付或いはカレンダー情報等が表示される。
【0085】
通信部124は、従来の携帯電話と同様の機能を有し、無線部127、音声処理部128、切替部129、増幅部130、音声入出力部131、電話番号入力部132、着信音発生部133および呼制御メモリ部134を備えている。
無線部127は、音声データ等の各種データを、アンテナ135を介して基地局と送受信のやりとりを行う。音声処理部128は、無線部127又は増幅部130から入力された音声信号を符号化および複号化する。増幅部130は、音声処理部128又は音声入出力部131から入力された信号を、所定のレベルまで増幅する。音声入出力部131は、スピーカやマイクロフォン等からなり、着信音や受話音声を拡声したり、音声を集音したりする。
【0086】
また、着信音発生部133は、基地局からの呼び出しに応じて着信音を生成する。切替部129は、着信時に限って、音声処理部128に接続されている増幅部130を着信音発生部133に切り替えることによって、着信音発生部133において生成された着信音が増幅部130を介して音声入出力部131に出力される。
なお、呼制御メモリ部134は、通信の発着呼制御に係るプログラムを格納する。また、電話番号入力部132は、例えば、0から9の番号キーおよびその他のキーを備えており、これら番号キー等を押下することにより、通話先の電話番号等が入力される。
【0087】
電圧検出部126は、電源部121によって制御部122等の各機能部に対して加えられている電圧が、所定の値を下回った場合に、その電圧降下を検出して制御部122に通知する。このときの所定の電圧値は、通信部124を安定して動作させるために必要な最低限の電圧として予め設定されている値であり、例えば、3V程度となる。電圧検出部126から電圧降下の通知を受けた制御部122は、無線部127、音声処理部128、切替部129および着信音発生部133の動作を禁止する。特に、消費電力の大きな無線部127の動作停止は、必須となる。更に、表示部125に、通信部124が電池残量の不足により使用不能になった旨が表示される。
【0088】
すなわち、電圧検出部126と制御部122とによって、通信部124の動作を禁止し、その旨を表示部125に表示することができる。この表示は、文字メッセージであっても良いが、より直感的な表示として、表示部125の表示面の上部に表示された電話アイコンに、×(バツ)印を付けるようにしても良い。
なお、通信部124の機能に係る部分の電源を、選択的に遮断することができる電源遮断部136を備えることで、通信部124の機能をより確実に停止することができる。
【0089】
本実施形態の携帯情報機器120によれば、良好な真空度を確保でき、電気的特性に優れた圧電振動子1を備えているので、高性能な携帯情報機器120を提供することができる。
【0090】
(電波時計)
次に、本発明に係る電波時計の一実施形態について、図12を参照して説明する。
本実施形態の電波時計140は、図12に示すように、フィルタ部141に電気的に接続された圧電振動子1を備えたものであり、時計情報を含む標準の電波を受信して、正確な時刻に自動修正して表示する機能を備えた時計である。
日本国内には、福島県(40kHz)と佐賀県(60kHz)とに、標準の電波を送信する送信所(送信局)があり、それぞれ標準電波を送信している。40kHz若しくは60kHzのような長波は、地表を伝播する性質と、電離層と地表とを反射しながら伝播する性質とを併せもつため、伝播範囲が広く、前述した2つの送信所で日本国内を全て網羅している。
【0091】
以下、電波時計140の機能的構成について詳細に説明する。
アンテナ142は、40kHz若しくは60kHzの長波の標準電波を受信する。長波の標準電波は、タイムコードと呼ばれる時刻情報を、40kHz若しくは60kHzの搬送波にAM変調をかけたものである。受信された長波の標準電波は、アンプ143によって増幅され、複数の圧電振動子1を有するフィルタ部141によって濾波、同調される。
本実施形態における圧電振動子1は、前記搬送周波数と同一の40kHzおよび60kHzの共振周波数を有する水晶振動子部148、149をそれぞれ備えている。
【0092】
更に、濾波された所定周波数の信号は、検波、整流回路144により検波復調される。
続いて、波形整形回路145を介してタイムコードが取り出され、CPU146でカウントされる。CPU146では、現在の年や積算日、曜日、時刻等の情報を読み取る。読み取られた情報は、RTC148に反映され、正確な時刻情報が表示される。
搬送波は、40kHz若しくは60kHzであるから、水晶振動子部148、149は、前述した音叉型の構造を持つ振動子が好適である。
【0093】
なお、前述の説明は、日本国内の例で示したが、長波の標準電波の周波数は、海外では異なっている。例えば、ドイツでは77.5KHzの標準電波が用いられている。従って、海外でも対応可能な電波時計140を携帯機器に組み込む場合には、さらに日本の場合とは異なる周波数の圧電振動子1を必要とする。
【0094】
本実施形態の電波時計140によれば、良好な真空度を確保でき、電気的特性に優れた圧電振動子1を備えているので、高性能な電波時計140を提供することができる。
【0095】
なお、この発明は上述した実施の形態に限られるものではない。
本実施形態では、本発明に係るパッケージ9の製造方法を使用しつつ、パッケージ9の内部に音叉型の圧電振動片4を封入して圧電振動子1を製造した。しかし、例えば、パッケージ9の内部にATカット型の圧電振動片(厚み滑り振動片)を封入して圧電振動子を製造してもよい。また、パッケージ9の内部に圧電振動片以外の電子部品を封入して、圧電振動子以外のデバイスを製造してもよい。
【0096】
本実施形態の予備加熱工程S60では、スペーサ75を2個使用して、リッド基板用ウエハ50とベース基板用ウエハ40との間に間隙Gを形成している。しかし、例えば、スペーサ75を3個以上使用して間隙Gを形成してもよい。ただし、短時間でスペーサ75を設置できる点で、本実施形態に優位性がある。
【符号の説明】
【0097】
1・・・圧電振動子 2・・・リッド基板(第1基板) 3・・・ベース基板(第2基板) 4・・・圧電振動片 9・・・パッケージ 71・・・第1ヒータ 72・・・第2ヒータ 75・・・スペーサ 110・・・発振器 120・・・携帯情報機器(電子機器) 123・・・計時部 140・・・電波時計 141・・・フィルタ部 S60・・・予備加熱工程 S70・・・陽極接合工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板の内面に形成された接合材と、第2基板の内面とを陽極接合することによりパッケージを製造するパッケージの製造方法であって、
前記第1基板の外面に設定温度T1の第1ヒータを当接させ、前記第2基板の外面に設定温度T2の第2ヒータを当接させ、前記各ヒータで前記各基板を加熱する予備加熱工程と、
前記第1基板の接合材を陽極とし、前記第2基板を陰極として電圧を印加するとともに、前記第1基板を接合温度F1とし、前記第2基板を接合温度F2として、前記第1基板と前記第2基板とを接合する陽極接合工程と、
を有し、
前記予備加熱工程は、前記第1基板の前記接合材と前記第2基板との間にスペーサを配置し、前記スペーサを介して前記第1基板と前記第2基板とを重ねた状態で行うことを特徴とするパッケージの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のパッケージの製造方法であって、
前記予備加熱工程と同条件下で、前記第1ヒータを任意温度t1とし、前記第2ヒータを任意温度t2として前記各基板を加熱した場合の、前記第1ヒータの前記任意温度t1と前記第1基板の実温度f1との差分α1、および前記第2ヒータの前記任意温度t2と前記第2基板の実温度f2との差分α2を予め測定しておき、
前記予備加熱工程の前記第1ヒータの設定温度T1、および前記第2ヒータの設定温度T2は、
1>F1+α1、かつ、T2>F2+α2
を満たすように設定されていることを特徴とするパッケージの製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載のパッケージの製造方法であって、
前記第1基板からアウトガスが放出されるときの前記第1基板の放出温度をK1とし、前記第2基板からアウトガスが放出されるときの前記第2基板の放出温度をK2としたとき、
前記予備加熱工程の前記第1ヒータの設定温度T1、および前記第2ヒータの設定温度T2は、
1>K1+α1、かつ、T2>K2+α2
を満たすように設定されていることを特徴とするパッケージの製造方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のパッケージの製造方法により製造した前記パッケージの内部に、圧電振動片が封入されていることを特徴とする圧電振動子。
【請求項5】
請求項4に記載の圧電振動子が、発振子として集積回路に電気的に接続されていることを特徴とする発振器。
【請求項6】
請求項4に記載の圧電振動子が、計時部に電気的に接続されていることを特徴とする電子機器。
【請求項7】
請求項4に記載の圧電振動子が、フィルタ部に電気的に接続されていることを特徴とする電波時計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−74969(P2012−74969A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−219009(P2010−219009)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】