説明

ブレーキ制御装置

【課題】回生制動により回収される過大なエネルギーがバッテリに与える負荷を軽減する技術を提供する。
【解決手段】ブレーキ制御装置において、回生ブレーキは、電動機による回生制動力を車両に設けられた車輪に付与する。制御装置は、車両制御のために目標となる目標総制動力を算出し、該目標総制動力を満たすように回生ブレーキにより発生させる目標回生制動力を決定するとともに該目標総制動力の不足分を満たすように液圧ブレーキにより発生させる目標液圧制動力を決定し、目標回生制動力および目標液圧制動力に応じて回生ブレーキと液圧ブレーキとを協調制御する。制御装置は、目標回生制動力が所定値より大きい場合、該目標回生制動力を低減した低減回生制動力に応じて回生ブレーキを制御する。制御装置は、低減された目標回生制動力を補うように目標液圧制動力を増大させた増大目標液圧制動力に応じて液圧ブレーキを制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に設けられた車輪に付与される制動力を制御するブレーキ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハイブリッド車両や電気自動車等のように走行駆動源として電動機を搭載する車両においては、制動時に、回生による制動力と液圧による制動力とを併用して要求制動力を発生させるという、いわゆる回生協調制御が行われる場合がある。回生制動により走行中の運動エネルギーの一部が制動時に電気エネルギーとして回収されるので、回生協調制御は車両の燃費向上に大きく寄与している。車両の燃費をより向上させるためには、制動時における回生制動の割合をなるべく多くする回生協調制御が望ましい。
【0003】
特許文献1には、運転者の操作等の情報に基づいて演算により算出された目標総制動力に対してエネルギー回生量が最大となるように回生による制動力を決定し、不足分を液圧制動力として決定するブレーキ制御装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−131247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、急制動時や低μ路でスリップした車輪がロックするときなどにおいては、回生制動により回収されるエネルギー(電力)が急激に大きくなるため、バッテリが受ける負荷が高くなる。
【0006】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、回生制動により回収される過大なエネルギーがバッテリに与える負荷を軽減する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様のブレーキ制御装置は、電動機による回生制動力を車両に設けられた車輪に付与する回生ブレーキと、液圧により車輪に摩擦部材を押圧し液圧制動力を付与する液圧ブレーキと、車両制御のために目標となる目標総制動力を算出し、該目標総制動力を満たすように前記回生ブレーキにより発生させる目標回生制動力を決定するとともに該目標総制動力の不足分を満たすように前記液圧ブレーキにより発生させる目標液圧制動力を決定し、前記目標回生制動力および前記目標液圧制動力に応じて前記回生ブレーキと前記液圧ブレーキとを協調制御する制御手段と、を備える。前記制御手段は、前記目標回生制動力が所定値より大きい場合、該目標回生制動力を低減した低減回生制動力に応じて前記回生ブレーキを制御する。
【0008】
決定された目標回生制動力が過大であると、回生制動時に電動機で回収されるエネルギーが過剰となるため、バッテリにかかる負荷が大きくなる。そこで、この態様によると、目標回生制動力が所定値より大きい場合には、目標回生制動力を低減した低減回生制動力に応じて回生ブレーキが制御されるため、回生制動時に電動機で回収される回生量(エネルギー)が低減され、バッテリにかかる負荷が低減される。なお、確実にバッテリにかかる負荷をなくすために低減回生制動力を実質的に0としてもよい。ここで、所定値は、バッテリの容量や回生ブレーキの性能を考慮して実験等により設定してもよい。また、車両制御とは、運転者のブレーキ操作部材による制動制御を始め、センサ情報に基づくいわゆるABS(Anti−lock Brake System)制御、VSC(Vehicle Stability Control)制御、TRC(Traction Control)制御等を含むものである。
【0009】
前記制御手段は、低減された目標回生制動力を補うように前記目標液圧制動力を増大させた増大目標液圧制動力に応じて前記液圧ブレーキを制御してもよい。これにより、目標回生制動力が低減されても車両全体の目標総制動力の確保が可能となる。
【0010】
前記制御手段は、前記所定値より大きかった前記目標回生制動力が減少し該所定値を下回った場合には、該目標回生制動力に応じて前記回生ブレーキを制御してもよい。これにより、それまでの制動によりバッテリに大きな負荷がかからない状態になった場合には、各車輪に適正な制動力を付与するとともに回生によるエネルギー回収も可能となる。また、例えば、スリップ制御が必要な場合であっても全車輪に対して適切な制動が可能となる。
【0011】
前記制御手段は、駆動車輪の空転を検出した場合に実行されるトラクション制御時において、前記目標回生制動力が所定値より大きいか否かを判定してもよい。これにより、車輪の空転時のような過大な回生制動力が生じ得るような状況において、目標回生制動力が所定値より大きいか否かが判定されるため、バッテリに過剰な負荷がかかることが適切に抑制される。また、車輪が空転しやすい急制動時に前述の判定を行ってもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、回生制動により回収されるエネルギーがバッテリに与える負荷を軽減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1の実施の形態に係るブレーキ制御装置が適用された車両を示す概略構成図である。
【図2】第1の実施の形態に係る液圧ブレーキユニットを中心としたブレーキ制御装置の系統図である。
【図3】第1の実施の形態に係る回生協調制御モードにおける制動処理を説明するためのフローチャートである。
【図4】第2の実施の形態に係るトラクション制御時における制動処理を説明するためのフローチャートである。
【図5】第2の実施の形態に係る制動制御を行うブレーキ制御装置の動作を示す系統図である。
【図6】第2の実施の形態に係る制動制御を行うブレーキ制御装置の動作を示す系統図である。
【図7】第3の実施の形態に係る車両を示す概略構成図である。
【図8】第4の実施の形態に係る車両を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
【0015】
図1は、第1の実施の形態に係るブレーキ制御装置が適用された車両を示す概略構成図である。車両1は、いわゆるハイブリッド車両として構成されており、エンジン2と、エンジン2の出力軸であるクランクシャフトに接続された3軸式の動力分割機構3と、動力分割機構3に接続された発電可能なモータジェネレータ4と、変速機5を介して動力分割機構3に接続された電動モータ6と、ドライブシャフト8を介して変速機5に連結された車両1の駆動輪たる右前輪9FRおよび左前輪9FLと、各アクチュエータを制御する電子制御ユニット(以下「ECU」という)とを備える。
【0016】
ECUは、車両1の制御手段として、その駆動系全体を制御するハイブリッドECU7、エンジンを制御するエンジンECU13、各モータを制御するモータECU14、ブレーキを制御するブレーキECU70等から構成されている。
【0017】
各ECUは、各種演算処理を実行するCPU、各種制御プログラムを格納するROM、データ格納やプログラム実行のためのワークエリアとして利用されるRAM、エンジン停止時にも記憶内容を保持できるバックアップRAM等の不揮発性メモリ、入出力インターフェース、各種センサ等から入力されたアナログ信号をデジタル信号に変換して取り込むためのA/Dコンバータ、計時用のタイマ等を備えるものである。
【0018】
エンジン2は、例えばガソリンや軽油等の炭化水素系燃料を用いて運転される内燃機関であり、エンジンECU13により制御される。エンジンECU13は、ハイブリッドECU7と通信可能であり、ハイブリッドECU7からの制御信号や、エンジン2の作動状態を検出する各種センサからの信号に基づいてエンジン2の燃料噴射制御や点火制御、吸気制御等を実行する。また、エンジンECU13は、必要に応じてエンジン2の作動状態に関する情報をハイブリッドECU7に与える。
【0019】
動力分割機構3は、図示しないが、遊星歯車装置を含むものであり、サンギヤにモータジェネレータ4が連結され、リングギヤに変速機5を介して電動モータ6が連結され、キャリヤにエンジン2のクランクシャフトが連結される。動力分割機構3は、変速機5を介して電動モータ6の出力を左右の前輪9FR,9FLに伝達する役割と、エンジン2の出力をモータジェネレータ4と変速機5とに振り分ける役割と、電動モータ6やエンジン2の回転速度を減速あるいは増速する役割とを果たす。
【0020】
モータジェネレータ4と電動モータ6とは、それぞれインバータを含む電力変換装置11を介してバッテリ12に接続されており、電力変換装置11には、モータECU14が接続されている。バッテリ12としては、例えばニッケル水素蓄電池などの蓄電池を用いることができる。モータECU14も、ハイブリッドECU7と通信可能であり、ハイブリッドECU7からの制御信号等に基づいて電力変換装置11を介してモータジェネレータ4および電動モータ6を制御する。
【0021】
ハイブリッドECU7やモータECU14による制御のもと、電力変換装置11を介してバッテリ12から電力を電動モータ6に供給することにより、電動モータ6の出力により左右の前輪9FR,9FLを駆動することができる。また、エンジン効率のよい運転領域では、車両1はエンジン2によって駆動される。この際、動力分割機構3を介してエンジン2の出力の一部をモータジェネレータ4に伝えることにより、モータジェネレータ4が発生する電力を用いて、電動モータ6を駆動したり、電力変換装置11を介してバッテリ12を充電したりすることが可能となる。
【0022】
また、車両1には車両の走行速度を検出するための車速センサ75が設けられている。車速センサ75は、車両の走行速度を検出してハイブリッドECU7やブレーキECU70などに与える。車速センサ75の検出値は、所定時間おきにハイブリッドECU7およびブレーキECU70等に与えられる。車速センサ75としては、典型的には各車輪に対応して設けられている車輪速センサなどを用いることができる。
【0023】
また、車両1を制動する際には、ハイブリッドECU7やモータECU14による制御のもと、前輪9FR,9FLから伝わる動力によって電動モータ6が回転させられ、電動モータ6が発電機として作動させられる。すなわち、電動モータ6、電力変換装置11、ハイブリッドECU7およびモータECU14等は、車両1の運動エネルギーを電気エネルギーに回生することによって左右の前輪9FR,9FLに制動力を付与する回生ブレーキユニット10として機能する。つまり、回生ブレーキユニット10は、電動モータ6による回生制動力を車両1に設けられた車輪に付与するものである。車両1は、このような回生ブレーキユニット10に加えて液圧ブレーキユニット20を備える。液圧ブレーキユニット20は、動力液圧源30と液圧アクチュエータ40とを含んで構成される。
【0024】
図2は、第1の実施の形態に係る液圧ブレーキユニットを中心としたブレーキ制御装置の系統図である。液圧ブレーキユニット20は、各車輪に対応して設けられたディスクブレーキユニット21FR、21FL、21RRおよび21RLと、マスタシリンダユニット27と、動力液圧源30と、液圧アクチュエータ40と、それらをつなぐ液圧回路とを含む。
【0025】
ディスクブレーキユニット21FR、21FL、21RRおよび21RLは、車両の右前輪9FR、左前輪9FL、図示しない右後輪および左後輪のそれぞれに制動力を付与する。
【0026】
マニュアル液圧源としてのマスタシリンダユニット27は、ブレーキ操作部材としてのブレーキペダル24の運転者による操作量に応じて加圧された作動液としてのブレーキフルードをディスクブレーキユニット21FR〜21RLに対して送出する。
【0027】
動力液圧源30は、動力の供給により加圧されたブレーキフルードを、運転者によるブレーキペダル24の操作から独立してディスクブレーキユニット21FR〜21RLに対して送出可能である。
【0028】
液圧アクチュエータ40は、動力液圧源30またはマスタシリンダユニット27から供給されたブレーキフルードの液圧を適宜調整してディスクブレーキユニット21FR〜21RLに送出する。これにより、液圧制動による各車輪に対する制動力が調整される。
【0029】
ディスクブレーキユニット21FR〜21RLは、それぞれブレーキディスク22とブレーキキャリパに内蔵されたホイールシリンダ23FR〜23RLと、車輪速センサ26FR〜26RLとを含む。そして、各ホイールシリンダ23FR〜23RLは、それぞれ異なる流体通路を介して液圧アクチュエータ40に接続されている。なお以下では適宜、ホイールシリンダ23FR〜23RLを総称して「ホイールシリンダ23」といい、車輪速センサ26FR〜26RLを総称して「車輪速センサ26」という。
【0030】
ディスクブレーキユニット21FR〜21RLにおいては、ホイールシリンダ23に液圧アクチュエータ40からブレーキフルードが供給されると、車輪とともに回転するブレーキディスク22に摩擦部材としてのブレーキパッドが押し付けられる。これにより、各車輪に制動力が付与される。なお、本実施の形態においてはディスクブレーキユニット21FR〜21RLを用いているが、例えばドラムブレーキ等のホイールシリンダ23を含む他の制動力付与機構を用いてもよい。
【0031】
マスタシリンダユニット27は、本実施の形態では液圧ブースタ付きマスタシリンダであり、液圧ブースタ31、マスタシリンダ32、レギュレータ33、およびリザーバ34を含む。ブレーキペダル24への運転者による入力が機械的に伝達されてマスタシリンダ32のブレーキフルードが加圧される。液圧ブースタ31は、ブレーキペダル24に連結されており、ブレーキペダル24に加えられたペダル踏力を増幅してマスタシリンダ32に伝達する。動力液圧源30からレギュレータ33を介して液圧ブースタ31にブレーキフルードが供給されることにより、ペダル踏力は増幅される。そして、マスタシリンダ32は、ペダル踏力に対して所定の倍力比を有するマスタシリンダ圧を発生する。
【0032】
マスタシリンダ32とレギュレータ33との上部には、ブレーキフルードを貯留するリザーバ34が配置されている。マスタシリンダ32は、ブレーキペダル24の踏み込みが解除されているときにリザーバ34と連通する。一方、レギュレータ33は、リザーバ34と動力液圧源30のアキュムレータ35との双方と連通しており、リザーバ34を低圧源とするとともに、アキュムレータ35を高圧源とし、マスタシリンダ圧とほぼ等しい液圧を発生する。レギュレータ33における液圧を以下では適宜、「レギュレータ圧」という。なお、マスタシリンダ圧とレギュレータ圧とは厳密に同一圧にされる必要はなく、例えばレギュレータ圧のほうが若干高圧となるようにマスタシリンダユニット27を設計することも可能である。
【0033】
動力液圧源30は、アキュムレータ35およびポンプ36を含む。アキュムレータ35は、ポンプ36により昇圧されたブレーキフルードの圧力エネルギーを窒素等の封入ガスの圧力エネルギーとして例えば14〜22MPa程度に変換して蓄えるものである。ポンプ36は、駆動源としてモータ36aを有し、その吸込口がリザーバ34に接続される一方、その吐出口がアキュムレータ35に接続される。また、アキュムレータ35は、マスタシリンダユニット27に設けられたリリーフバルブ35aにも接続されている。アキュムレータ35におけるブレーキフルードの圧力が異常に高まって例えば25MPa程度になると、リリーフバルブ35aが開弁し、高圧のブレーキフルードはリザーバ34へと戻される。
【0034】
上述のように、液圧ブレーキユニット20は、ホイールシリンダ23に対するブレーキフルードの供給源として、マスタシリンダ32、レギュレータ33およびアキュムレータ35を有している。そして、マスタシリンダ32にはマスタ配管37が、レギュレータ33にはレギュレータ配管38が、アキュムレータ35にはアキュムレータ配管39が接続されている。これらのマスタ配管37、レギュレータ配管38およびアキュムレータ配管39は、それぞれ液圧アクチュエータ40に接続される。
【0035】
液圧アクチュエータ40は、複数の流路が形成されるアクチュエータブロックと、複数の電磁制御弁を含む。アクチュエータブロックに形成された流路には、個別流路41、42、43および44と、主流路45とが含まれる。個別流路41〜44は、それぞれ主流路45から分岐されて、対応するディスクブレーキユニット21FR、21FL、21RR、21RLのホイールシリンダ23FR、23FL、23RR、23RLに接続されている。これにより、各ホイールシリンダ23は主流路45と連通可能となる。
【0036】
また、個別流路41、42、43および44の中途には、ABS保持弁51、52、53および54が設けられている。各ABS保持弁51〜54は、ON/OFF制御されるソレノイドおよびスプリングをそれぞれ有しており、いずれもソレノイドが非通電状態にある場合に開とされる常開型電磁制御弁である。開状態とされた各ABS保持弁51〜54は、ブレーキフルードを双方向に流通させることができる。つまり、主流路45からホイールシリンダ23へとブレーキフルードを流すことができるとともに、逆にホイールシリンダ23から主流路45へもブレーキフルードを流すことができる。ソレノイドに通電されて各ABS保持弁51〜54が閉弁されると、個別流路41〜44におけるブレーキフルードの流通は遮断される。
【0037】
さらに、ホイールシリンダ23は、個別流路41〜44にそれぞれ接続された減圧用流路46、47、48および49を介してリザーバ流路55に接続されている。減圧用流路46、47、48および49の中途には、ABS減圧弁56、57,58および59が設けられている。各ABS減圧弁56〜59は、ON/OFF制御されるソレノイドおよびスプリングをそれぞれ有しており、いずれもソレノイドが非通電状態にある場合に閉とされる常閉型電磁制御弁である。各ABS減圧弁56〜59が閉状態であるときには、減圧用流路46〜49におけるブレーキフルードの流通は遮断される。ソレノイドに通電されて各ABS減圧弁56〜59が開弁されると、減圧用流路46〜49におけるブレーキフルードの流通が許容され、ブレーキフルードがホイールシリンダ23から減圧用流路46〜49およびリザーバ流路55を介してリザーバ34へと還流する。なお、リザーバ流路55は、リザーバ配管77を介してマスタシリンダユニット27のリザーバ34に接続されている。
【0038】
主流路45は、中途に分離弁60を有する。この分離弁60により、主流路45は、個別流路41および42と接続される第1流路45aと、個別流路43および44と接続される第2流路45bとに区分けされている。第1流路45aは、個別流路41および42を介して前輪用のホイールシリンダ23FRおよび23FLに接続され、第2流路45bは、個別流路43および44を介して後輪用のホイールシリンダ23RRおよび23RLに接続される。
【0039】
分離弁60は、ON/OFF制御されるソレノイドおよびスプリングを有しており、ソレノイドが非通電状態にある場合に閉とされる常閉型の切替弁である。分離弁60が閉状態であるときには、主流路45におけるブレーキフルードの流通は遮断される。ソレノイドに通電されて分離弁60が開弁されると、第1流路45aと第2流路45bとの間でブレーキフルードを双方向に流通させることができる。
【0040】
また、液圧アクチュエータ40においては、主流路45に連通するマスタ流路61およびレギュレータ流路62が形成されている。より詳細には、マスタ流路61は、主流路45の第1流路45aに接続されており、レギュレータ流路62は、主流路45の第2流路45bに接続されている。また、マスタ流路61は、マスタシリンダ32と連通するマスタ配管37に接続される。レギュレータ流路62は、レギュレータ33と連通するレギュレータ配管38に接続される。
【0041】
マスタ流路61は、中途にマスタカット弁64を有する。マスタカット弁64は、マスタシリンダ32から各ホイールシリンダ23へのブレーキフルードの供給経路上に設けられている。マスタカット弁64は、ON/OFF制御されるソレノイドおよびスプリングを有しており、規定の制御電流の供給を受けてソレノイドが発生させる電磁力により閉弁状態が保証され、ソレノイドが非通電状態にある場合に開とされる常開型の切替弁である。開状態とされたマスタカット弁64は、マスタシリンダ32と主流路45の第1流路45aとの間でブレーキフルードを双方向に流通させることができる。ソレノイドに規定の制御電流が通電されてマスタカット弁64が閉弁されると、マスタ流路61におけるブレーキフルードの流通は遮断される。
【0042】
また、マスタ流路61には、マスタカット弁64よりも上流側において、切替弁としてのシミュレータカット弁68を介してストロークシミュレータ69が接続されている。すなわち、シミュレータカット弁68は、マスタシリンダ32とストロークシミュレータ69とを接続する流路に設けられている。シミュレータカット弁68は、ON/OFF制御されるソレノイドおよびスプリングを有しており、規定の制御電流の供給を受けてソレノイドが発生させる電磁力により開弁状態が保証され、ソレノイドが非通電状態にある場合に閉とされる常閉型の切替弁である。シミュレータカット弁68が閉状態であるときには、マスタ流路61とストロークシミュレータ69との間のブレーキフルードの流通は遮断される。ソレノイドに通電されてシミュレータカット弁68が開弁されると、マスタシリンダ32とストロークシミュレータ69との間でブレーキフルードを双方向に流通させることができる。
【0043】
ストロークシミュレータ69は、複数のピストンやスプリングを含むものであり、シミュレータカット弁68の開放時に運転者によるブレーキペダル24の踏力に応じた反力を創出する。ストロークシミュレータ69としては、運転者によるブレーキ操作のフィーリングを向上させるために、多段のバネ特性を有するものが採用されると好ましい。
【0044】
レギュレータ流路62は、中途にレギュレータカット弁65を有する。レギュレータカット弁65は、レギュレータ33から各ホイールシリンダ23へのブレーキフルードの供給経路上に設けられている。レギュレータカット弁65も、ON/OFF制御されるソレノイドおよびスプリングを有しており、規定の制御電流の供給を受けてソレノイドが発生させる電磁力により閉弁状態が保証され、ソレノイドが非通電状態にある場合に開とされる常開型の切替弁である。開状態とされたレギュレータカット弁65は、レギュレータ33と主流路45の第2流路45bとの間でブレーキフルードを双方向に流通させることができる。ソレノイドに通電されてレギュレータカット弁65が閉弁されると、レギュレータ流路62におけるブレーキフルードの流通は遮断される。
【0045】
液圧アクチュエータ40には、マスタ流路61およびレギュレータ流路62に加えて、アキュムレータ流路63も形成されている。アキュムレータ流路63の一端は、主流路45の第2流路45bに接続され、他端は、アキュムレータ35と連通するアキュムレータ配管39に接続される。
【0046】
アキュムレータ流路63は、中途に増圧リニア制御弁66を有する。また、アキュムレータ流路63および主流路45の第2流路45bは、減圧リニア制御弁67を介してリザーバ流路55に接続されている。増圧リニア制御弁66と減圧リニア制御弁67とは、それぞれリニアソレノイドおよびスプリングを有しており、いずれもソレノイドが非通電状態にある場合に閉とされる常閉型電磁制御弁である。増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67は、それぞれのソレノイドに供給される電流に比例して弁の開度が調整される。
【0047】
増圧リニア制御弁66は、各車輪に対応して複数設けられた各ホイールシリンダ23に対して共通の増圧用制御弁として設けられている。また、減圧リニア制御弁67も同様に、各ホイールシリンダ23に対して共通の減圧用制御弁として設けられている。つまり、本実施の形態においては、増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67は、動力液圧源30から送出される作動流体を各ホイールシリンダ23へ給排制御する1対の共通の制御弁として設けられている。このように増圧リニア制御弁66等を各ホイールシリンダ23に対して共通化すれば、ホイールシリンダ23ごとにリニア制御弁を設けるのと比べて安価とすることができる。
【0048】
なお、ここで、増圧リニア制御弁66の出入口間の差圧は、アキュムレータ35におけるブレーキフルードの圧力と主流路45におけるブレーキフルードの圧力との差圧に対応し、減圧リニア制御弁67の出入口間の差圧は、主流路45におけるブレーキフルードの圧力とリザーバ34におけるブレーキフルードの圧力との差圧に対応する。
【0049】
また、増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67のリニアソレノイドへの供給電力に応じた電磁駆動力をF1とし、スプリングの付勢力をF2とし、増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67の出入口間の差圧に応じた差圧作用力をF3とすると、F1+F3=F2という関係が成立する。したがって、増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67のリニアソレノイドへの供給電力を連続的に制御することにより、増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67の出入口間の差圧を制御することができる。
【0050】
液圧ブレーキユニット20において、動力液圧源30および液圧アクチュエータ40は、ブレーキECU70により制御される。ブレーキECU70は、上位のハイブリッドECU7などと通信可能であり、ハイブリッドECU7からの制御信号や、各種センサからの信号に基づいて動力液圧源30のポンプ36や、液圧アクチュエータ40を構成する電磁制御弁51〜54、56〜59、60、64〜68を制御する。
【0051】
また、ブレーキECU70には、レギュレータ圧センサ71、アキュムレータ圧センサ72、および制御圧センサ73が接続される。レギュレータ圧センサ71は、レギュレータカット弁65の上流側でレギュレータ流路62内のブレーキフルードの圧力、すなわちレギュレータ圧を検知し、検知した値を示す信号をブレーキECU70に与える。アキュムレータ圧センサ72は、増圧リニア制御弁66の上流側でアキュムレータ流路63内のブレーキフルードの圧力、すなわちアキュムレータ圧を検知し、検知した値を示す信号をブレーキECU70に与える。制御圧センサ73は、主流路45の第1流路45a内のブレーキフルードの圧力を検知し、検知した値を示す信号をブレーキECU70に与える。各圧力センサ71〜73の検出値は、所定時間おきにブレーキECU70に順次与えられ、ブレーキECU70の所定の記憶領域に所定量ずつ格納保持される。
【0052】
分離弁60が開状態とされて主流路45の第1流路45aと第2流路45bとが互いに連通している場合、制御圧センサ73の出力値は、増圧リニア制御弁66の低圧側の液圧を示すとともに減圧リニア制御弁67の高圧側の液圧を示すので、この出力値を増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67の制御に利用することができる。また、増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67が閉鎖されているとともに、マスタカット弁64が開状態とされている場合、制御圧センサ73の出力値は、マスタシリンダ圧を示す。さらに、分離弁60が開放されて主流路45の第1流路45aと第2流路45bとが互いに連通しており、各ABS保持弁51〜54が開放される一方、各ABS減圧弁56〜59が閉鎖されている場合、制御圧センサの73の出力値は、各ホイールシリンダ23に作用する作動流体圧、すなわちホイールシリンダ圧を示す。
【0053】
さらに、ブレーキECU70に接続されるセンサには、ブレーキペダル24に設けられたストロークセンサ25も含まれる。ストロークセンサ25は、ブレーキペダル24の操作量としてのペダルストロークを検知し、検知した値を示す信号をブレーキECU70に与える。ストロークセンサ25の出力値も、所定時間おきにブレーキECU70に順次与えられ、ブレーキECU70の所定の記憶領域に所定量ずつ格納保持される。なお、ストロークセンサ25以外のブレーキ操作状態検出手段をストロークセンサ25に加えて、あるいは、ストロークセンサ25に代えて設け、ブレーキECU70に接続してもよい。ブレーキ操作状態検出手段としては、例えば、ブレーキペダル24の操作力を検出するペダル踏力センサや、ブレーキペダル24が踏み込まれたことを検出するブレーキスイッチなどがある。
【0054】
上述のように構成された液圧ブレーキユニット20は、回生ブレーキユニット10と協働してブレーキ回生協調制御(以下、単に「回生協調制御」という)を実行する。この回生協調制御は、液圧ブレーキユニット20による液圧制動制御(以下、「液圧制御」ともいう)と、回生ブレーキユニット10による回生制動制御(以下、「回生制御」ともいう)とを協調させて行うものである。なお、本実施の形態に係るブレーキ制御装置の制御手段は、ハイブリッドECU7、ブレーキECU70、モータECU14等を含んで構成される。
【0055】
本実施の形態に係るブレーキ制御装置は、運転者によるブレーキペダル24の操作を受けて制動を開始する。つまり、回生ブレーキユニット10や液圧ブレーキユニット20は、制動要求を受けて制動を開始する。制動要求は、車両に制動力を付与すべきときに生起される。例えば、運転者がブレーキペダル24を操作した場合以外に、走行中に他の車両との距離を自動制御している際に当該他の車両との距離が所定の距離よりも狭まった場合や、ABS制御、VSC制御、TRC制御等が必要な状況が検出された場合などに生起される。なお、ブレーキECU70は、ストロークセンサ25からの信号に基づいて、ブレーキ制御装置が発生すべき制動力である要求制動力を演算する。
【0056】
ハイブリッドECU7は、ブレーキECU70から送られた要求回生制動力をモータECU14に出力する。モータECU14は、電動モータ6によって左右の前輪9FR、9FLに付与される制動力が要求回生制動力となるように電力変換装置11に制御指令を出力する。電力変換装置11は、モータECU14からの指令に基づいて電動モータ6を制御する。これにより車両1の運動エネルギーは電気エネルギーに変換されて、電動モータ6から電力変換装置11を介してバッテリ12に蓄積される。蓄積された電気エネルギーは以降の車輪の駆動等に用いられ、車両の燃費向上に寄与する。
【0057】
モータECU14は、電動モータ6の回転数など、回生ブレーキユニット10の実際の作動状態を示す情報を取得してハイブリッドECU7に送信する。ハイブリッドECU7は、回生ブレーキユニット10の実際の作動状態に基づいて、車輪に実際に付与されている制動力である回生実行値としての実回生制動力を演算し、その実回生制動力をブレーキECU70に送信する。
【0058】
ブレーキECU70は、要求制動力から実回生制動力を減じることにより、液圧ブレーキユニット20に発生させるべき液圧制動力である要求液圧制動力を演算する。そして、ブレーキECU70は、演算した要求液圧制動力に基づいて、各ホイールシリンダ23FR〜23RLの目標液圧を演算する。ブレーキECU70は、各ホイールシリンダ23のホイールシリンダ圧が目標液圧となるように、フィードバック制御により増圧リニア制御弁66や減圧リニア制御弁67に供給する制御電流の値を決定する。
【0059】
その結果、液圧ブレーキユニット20においては、ブレーキフルードが動力液圧源30から増圧リニア制御弁66を介して各ホイールシリンダ23に供給され、車輪に液圧制動力が付与される。また、各ホイールシリンダ23からブレーキフルードが減圧リニア制御弁67を介して必要に応じて排出され、車輪に付与される液圧制動力が調整される。
【0060】
本実施の形態においては、動力液圧源30、増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67等を含んでホイールシリンダ圧制御系統が構成されている。ホイールシリンダ圧制御系統によりいわゆるブレーキバイワイヤ方式の液圧制動力制御が行われる。ホイールシリンダ圧制御系統は、マスタシリンダユニット27からホイールシリンダ23へのブレーキフルードの供給経路に並列に設けられている。このとき、ブレーキECU70は、レギュレータカット弁65およびマスタカット弁64を閉状態とし、レギュレータ33およびマスタシリンダ32から送出されるブレーキフルードがホイールシリンダ23へ供給されないようにする。
【0061】
本実施の形態に係る車両1は、前述のように制動時の回生制動力を電気エネルギーに変換し、バッテリ12に蓄積する。制動時に発生する電気エネルギーは、回生制動力の大きさに応じて変化するため、例えば、運転者のブレーキ操作による急制動時のように、回生対象となる前輪の要求(目標)回生制動力が大きく算出されることがある。このような場合、バッテリ12に蓄積される回生電力も大きくなり、バッテリ12に過大な負荷がかかる可能性がある。
【0062】
そこで、このような問題に対処するために、本実施の形態に係る回生協調制御は、ある条件が成立した場合に駆動輪にかかる急激な回生制動力の増大を抑制し、バッテリにかかる負荷を低減するものである。
【0063】
図3は、第1の実施の形態に係る回生協調制御モードにおける制動処理を説明するためのフローチャートである。回生協調制御モードにおいては、ブレーキ回生協調制御が実行される。図3に示される処理は、ブレーキペダル24が操作されて制動要求が発生してから所定の周期、例えば数msec程度ごとに繰り返し実行される。
【0064】
回生協調制御モードによる制御処理が開始されると、ブレーキECU70は、各種センサの情報を参考に車両制御のために目標となる目標総制動力Fを算出する(S10)。そして、ブレーキECU70は、ハイブリッドECU7から取得した情報に基づき、目標総制動力Fを満たすように回生ブレーキユニット10により発生させる目標回生制動力F1を決定するとともに、目標総制動力Fの不足分を満たすように液圧ブレーキユニット20により発生させる目標液圧制動力F2を決定する(S12)。
【0065】
ブレーキECU70は、目標回生制動力F1が所定の閾値Cより大きいか否かを判定する(S14)。目標回生制動力F1が所定の閾値C以下の場合(S14のNo)、各ECUは、目標回生制動力F1および目標液圧制動力F2に応じて回生ブレーキユニット10と液圧ブレーキユニット20とを通常と同様に回生協調制御する(S16)。一方、目標回生制動力F1が所定の閾値Cより大きい場合(S14のYes)、そのまま回生協調制御が実行されると、回収される電気エネルギーが急激に大きくなり、バッテリ12にかかる負荷が大きくなることが懸念される。
【0066】
そのため、目標回生制動力F1を低減し閾値C以下となるように、新たに低減回生制動力F1’を算出する(S18)。ここで、F1’=F1−ΔA≦Cとなるように低減量ΔAが決められる。なお、低減量ΔA=F1として低減回生制動力F1’を0としてもよい。ここで、閾値Cは、バッテリ12の容量を考慮して理論的にあるいは実験により決定すればよい。
【0067】
ブレーキECU70は、このように算出された低減回生制動力F1’に応じて回生ブレーキユニット10を制御する(S22)。これにより、回生ブレーキユニット10による回生制動時に電動モータ6を介して回収されるエネルギーが低減され、バッテリ12にかかる負荷が低減される。
【0068】
なお、低減回生制動力F1’は、本来必要とされる目標回生制動力F1より小さいため、場合によっては、車両全体の制動力が不足することが考えられる。そこで、本実施の形態に係るブレーキECU70は、回生制動力の低減量ΔAを補うように目標液圧制動力F2を増大させた増大目標液圧制動力F2’を、増大目標液圧制動力F2’=F2+ΔAとして算出し(S20)、増大目標液圧制動力F2’に応じて液圧ブレーキユニット20を制御する(S22)。これにより、目標回生制動力F1が低減されても車両全体の目標総制動力Fの確保が可能となる。
【0069】
なお、制動が行われることにより車速が低下したり要求される制動力が低下したりすることで、ステップS12で算出される目標回生制動力F1がそれまでよりも減少し、所定の閾値Cを下回った場合(S14のNo)は、通常の回生協調制御のように目標回生制動力F1に応じて回生ブレーキユニット10が制御される(S16)。これにより、それまでの制動によりバッテリ12に大きな負荷がかからない状態になった場合には、各車輪に適正な制動力を付与するとともに回生による十分なエネルギー回収も可能となる。
【0070】
(第2の実施の形態)
第1の実施の形態では、運転者のブレーキペダル24の突発的・急激な操作による急制動時の回生制動により発生する高い電気エネルギーがバッテリに与える負荷を軽減する制御に着目して説明した。しかしながら、このような運転者の制動操作だけでなく、低μ路面において車輪が空転(スリップ)したことを検出した際に行われるトラクション制御時においても、空転している車輪に回生制動力が働くことで大きなエネルギーが発生する可能性が考えられる。そこで、第2の実施の形態では、トラクション制御時において回生制動により発生する高い電気エネルギーがバッテリに与える負荷を軽減する制御について説明する。
【0071】
図4は、第2の実施の形態に係るトラクション制御時における制動処理を説明するためのフローチャートである。
【0072】
この処理は、所定のタイミングで繰り返し実行される。図4に示すように、はじめに、各輪に設けられた車輪速センサ26や不図示のGセンサ等の情報に基づいて車輪がスリップしているか否かが検出される(S30)。スリップの発生が検出された場合(S30のYes)、トラクション制御により、過大な回生制動による過剰な電気エネルギーの発生の可能性があるため、そのような場合にバッテリ12で吸収されるエネルギーに制限を加えるように、ブレーキECU70は、ハイブリッドECU7に吸収エネルギー制限の指示を送出する(S32)。
【0073】
次に、検知したスリップ量が閾値Dより大きいか否かを判定する。このような判定を行うのは、トラクション制御では、スリップ量が多いほど車輪の空転を抑えるために必要な回生制動力が大きくなる傾向があるため、スリップ量の大小に応じて回生制動により発生する電気エネルギーの大きさが推定可能なためである。そこで、スリップ量が所定の閾値Dより大きい場合(S34のYes)、換言すれば、トラクション制御が機能することで算出される目標回生制動力が所定値より大きくなるような場合、車輪のロックが発生しないようにトラクション制御を中止する(S36)。ここで、閾値Dは、バッテリ12の容量を考慮して理論的にあるいは実験により決定すればよい。
【0074】
そして、回生制動により電気エネルギーが発生しないように、回生制動の対象とならない車輪(回生制動非対象車輪)、本実施の形態では後輪、のみに液圧ブレーキユニット20による制動を行い(S38)、駆動輪であり回生制動対象車輪である前輪のロックを防止する。図5および図6は、第2の実施の形態に係る制動制御を行うブレーキ制御装置の動作を示す系統図である。
【0075】
ステップS38の処理が開始すると、ブレーキECU70は、図5に示すように、分離弁60を閉じて液圧が前輪側に伝達されないように遮断する。その後、増圧リニア制御弁66が開弁され、アキュムレータ35で蓄圧されたブレーキフルードの液圧がアキュムレータ流路63を介してホイールシリンダ23RR,23RLに供給され、後輪が液圧により制動される。また、場合によっては、アキュムレータ35で発生する液圧に加えてあるいは代えて、レギュレータ33で発生した液圧をホイールシリンダ23RR,23RLに供給してもよい。この場合、所定のタイミングでレギュレータカット弁65が開弁される。
【0076】
このように、本実施の形態に係る制動制御は、トラクション制御を中止し、電動モータ6による回生制動力が働かない後輪側にのみ液圧制動力を付与することで、前輪のロックを防止している。これにより、車輪がロックする際に回生制動力として発生する過剰な電気エネルギーをバッテリ12が吸収する必要がなくなり、バッテリ12にかかる負荷が確実に軽減される。
【0077】
次に、ブレーキECU70は、図5に示すように本来前輪に付与される制動力が働かないため、制動力が不足しているか否かを判定する(S40)。制動力が不足していると判定された場合(S40のYes)、図6に示すように、分離弁60を開弁し、アキュムレータ35やレギュレータ33で発生した液圧が回生制動対象車輪である前輪のホイールシリンダ23FR,23FLに供給され、前輪が制動される(S42)。この際、ホイールシリンダ23FR,23FLに供給される液圧は、前輪がロックしない程度に調整されているとよい。また、本実施の形態に係るABS保持弁51〜54、ABS減圧弁56〜59の全部または一部に代えて適宜リニア弁を採用することで、車輪毎の制動力を変えることができる。これにより、回生制動の対象とはならない後輪には高い液圧による制動をかけながら、回生制動の対象となる前輪にはロックしないような低い液圧による制動をかけることができる。
【0078】
制動力が不足していないと判定された場合(S40のNo)、ステップS42の処理がスキップされる。これにより、前輪の回生制動力の低減により目標総制動力が不足するような状況であっても、車両全体の適正な目標総制動力の確保が可能となる。
【0079】
そして、これまで制限されていたバッテリ12で吸収されるエネルギーの量が所定の閾値Eを下回るような状況か否か、つまり、吸収エネルギーの制限がまだ必要か否かが判定される(S44)。所定の閾値Eは、バッテリに過剰な負荷を与えないような吸収エネルギーの量を参考に設定するとよい。ここで、吸収されるエネルギーの量が所定の閾値Eを下回るような状況とは、例えば、スリップが検知されていない場合(S30のNo)やスリップが検知されていてもスリップ量が閾値D以下の場合(S34のNo)である。
【0080】
目標回生制動力から予測される吸収エネルギーが閾値Eを下回る場合(S44のYes)、各ECUは、前述の目標回生制動力F1および目標液圧制動力F2に応じて回生ブレーキユニット10と液圧ブレーキユニット20とを通常と同様に回生協調制御する(S46)。一方、吸収エネルギーが閾値Eを下回らない場合(S44のNo)、ステップS38の処理に戻り、回生制動対象車輪である前輪にロックがかからないように制御を継続する。これにより、スリップ時の吸収エネルギー制限制御が必要な場合であっても全車輪に対して適切な制動が可能となる。
【0081】
本実施の形態に係るECUにおいては、車輪の空転時のような過大な回生制動力が生じ得るようなトラクション制御時において、目標回生制動力が所定値より大きいか否かが判定されるため、バッテリに過剰な負荷がかかることが適切に抑制される。
【0082】
(第3の実施の形態)
図7は、第3の実施の形態に係る車両101を示す概略構成図である。車両101は、前述の実施の形態に係る前輪駆動の車両1とは異なり、4輪駆動のハイブリッド車両として構成されている。以下の説明では、第1の実施の形態と同様の構成については同じ符号を付し、説明を適宜省略する。
【0083】
車両101の駆動系は、ハイブリッドECU7により制御される。車両101は、エンジン2と、エンジン2の出力軸であるクランクシャフトに接続された3軸式の動力分割機構3と、動力分割機構3に接続された発電可能なモータジェネレータ4と、前輪側の変速機5を介して動力分割機構3に接続されたフロント電動モータ106とを備える。前輪側の変速機5には、前輪側のドライブシャフト8を介して車両101の右前輪9FRおよび左前輪9FLが連結される。
【0084】
車両101はリア電動モータ116も備えている。後輪側の変速機115には、後輪側ドライブシャフト18を介して車両101の右後輪9RRおよび左後輪9RLが連結される。リア電動モータ116の出力は、後輪側の変速機115を介して左右の後輪9RR、9RLに伝達される。
【0085】
モータジェネレータ4、フロント電動モータ106およびリア電動モータ116は、それぞれモータ駆動用のインバータを含む電力変換装置11を介してバッテリ12に接続されており、電力変換装置11には、モータECU14が接続されている。モータECU14も、ハイブリッドECU7と通信可能であり、ハイブリッドECU7からの制御信号等に基づいて電力変換装置11を介してモータジェネレータ4、フロント電動モータ106およびリア電動モータ116を制御する。フロント電動モータ106およびリア電動モータ116には、それぞれの回転数を検出するための例えばロータリエンコーダ等の回転変位検出器が内蔵されている。回転変位検出器の出力信号はモータECU14に送信され、モータECU14はフロント電動モータ106およびリア電動モータ116の回転数を検出することができる。
【0086】
なお本実施の形態においてはフロント電動モータ106およびリア電動モータ116は共通のモータECU14および電力変換装置11により制御されているが、フロント電動モータ106およびリア電動モータ116のそれぞれを別個のコントローラにより制御するようにしてもよい。この場合、フロントモータ用コントローラおよびリアモータ用コントローラは共にハイブリッドECU7と通信可能に構成されるとともに、フロントモータ用およびリアモータ用コントローラ相互間も通信可能に構成される。
【0087】
ハイブリッドECU7やモータECU14による制御のもと、電力変換装置11を介してバッテリ12から電力をフロント電動モータ106、リア電動モータ116に供給することで、フロント電動モータ106の出力により左右の前輪9FR,9FLを駆動し、またリア電動モータ116の出力により左右の後輪9RR、9RLを駆動することができる。また、エンジン効率のよい運転領域では、車両101はエンジン2によって駆動される。この際、動力分割機構3を介してエンジン2の出力の一部をモータジェネレータ4に伝えることにより、モータジェネレータ4が発生する電力を用いて、フロント電動モータ106およびリア電動モータ116を駆動したり、電力変換装置11を介してバッテリ12を充電したりすることが可能となる。
【0088】
また、車両101を制動する際には、ハイブリッドECU7やモータECU14による制御のもと、前輪9FR,9FLから伝わる動力によってフロント電動モータ106が回転させられ、フロント電動モータ106が発電機として作動させられる。また、後輪9RR、9RLから伝わる動力によってリア電動モータ116が回転させられ、リア電動モータ116が発電機として作動させられる。すなわち、フロント電動モータ106、リア電動モータ116、電力変換装置11、ハイブリッドECU7およびモータECU14等は、車両101の運動エネルギーを電気エネルギーに回生することによって車両101を制動する回生ブレーキユニットとして機能する。
【0089】
車両101は、このような回生ブレーキユニットに加えて、図2に示す液圧ブレーキユニット20を備えており、両者を協調させるブレーキ回生協調制御を実行することにより車両101を制動可能なものである。
【0090】
本実施の形態に係る車両101は、前述のように制動時の回生制動力を電気エネルギーに変換し、バッテリ12に蓄積する。制動時に発生する電気エネルギーは、回生制動力の大きさに応じて変化するため、例えば、トラクション制御時や運転者のブレーキ操作による急制動時のように、回生対象となる前輪および後輪の要求(目標)回生制動力が大きく算出されることがある。このような場合、バッテリ12に蓄積される回生電力も大きくなり、バッテリ12に負荷がかかる可能性がある。
【0091】
そこで、このような問題に対処するために、本実施の形態に係る回生協調制御は、上述の各実施の形態と同様に、ある条件が成立した場合に駆動輪である前輪および後輪にかかる急激な回生制動力の増大を抑制し、バッテリにかかる負荷を低減するものである。
【0092】
具体的には、急制動時やトラクション制御時において、ブレーキECU70により前輪および後輪に働くそれぞれの目標回生制動力F1が決定され、所定の閾値に対して大きいか否かが判定される。そして、目標回生制動力F1が所定の閾値より大きいと判定された車輪については、目標回生制動力F1を低減し所定の閾値以下となるように、新たに低減回生制動力F1’が算出される。ブレーキECU70は、このように算出された低減回生制動力F1’に応じて回生ブレーキユニットを制御する。これにより、回生ブレーキユニットによる回生制動時にフロント電動モータ106やリア電動モータ116を介して回収されるエネルギーが低減され、バッテリ12にかかる負荷が低減される。
【0093】
なお、低減回生制動力F1’は、本来必要とされる目標回生制動力F1より小さいため、場合によっては、車両全体の制動力が不足することが考えられる。そこで、本実施の形態に係るブレーキECU70においても、回生制動力の低減量を補うように目標液圧制動力F2を増大させた増大目標液圧制動力F2’を算出し、増大目標液圧制動力F2’に応じて液圧ブレーキユニット20を制御する。この際、液圧ブレーキユニット20は、液圧制動対象となる車輪がロックしない程度の液圧をホイールシリンダ23に発生させるように制御される。これにより、目標回生制動力F1が低減されても車両全体の目標総制動力Fの確保が可能となる。
【0094】
なお、制動が行われることにより車速が低下したり要求される制動力が低下したりすることで、目標回生制動力F1がそれまでよりも減少し、所定の閾値Cを下回った場合は、通常の回生協調制御のように目標回生制動力F1に応じて回生ブレーキユニット10が制御される。これにより、それまでの制動によりバッテリ12に大きな負荷がかからない状態になった場合には、各車輪に適正な制動力を付与するとともに回生による十分なエネルギー回収も可能となる。
【0095】
(第4の実施の形態)
図8は、第4の実施の形態に係る車両201を示す概略構成図である。車両201は、前述の実施の形態に係る前輪駆動の車両1とは異なり、後輪駆動のハイブリッド車両として構成されている。以下の説明では、第1の実施の形態と同様の構成については同じ符号を付し、説明を適宜省略する。
【0096】
図8に示される車両201は、いわゆるハイブリッドシステムを採用した車両として構成されており、駆動源としてのエンジン2と、エンジン2の出力軸であるクランクシャフトに接続された動力分割機構3と、動力分割機構3に接続された発電可能なモータジェネレータ4と、変速機210を介してプロペラシャフト212に接続された電動モータ214と、車両201の駆動系全体を制御するハイブリッドECU7とを備える。
【0097】
プロペラシャフト212には、変速機210および最終減速装置218を介して車両201の駆動輪たる右後輪220RRおよび左後輪220RLが連結される。本実施の形態に係る変速機210は、2段変速付リダクション機構を有しており、変速比を2段階に変更することができる。
【0098】
動力分割機構3は、エンジン2の出力をモータジェネレータ4の駆動力とプロペラシャフト212を介して右後輪220RRおよび左後輪220RLの駆動力とに振り分ける役割を果たす。
【0099】
モータジェネレータ4と電動モータ214とは、それぞれ電力変換装置を構成するインバータ224を介してバッテリ12に接続されており、インバータ224には、ハイブリッドECU7が接続されている。そして、ハイブリッドECU7からの制御信号等に基づいてインバータ224を介してモータジェネレータ4および電動モータ214が制御される。
【0100】
ここで、電動モータ214は、駆動力と回生制動力の双方を変速機を介して車輪に付与可能な電動機として機能する。
【0101】
ハイブリッドECU7は、ブレーキECU70と通信可能であり、ブレーキECU70からの制御信号や、各種センサ270やスイッチからの信号に基づいて車両201の制御を行う。
【0102】
車両201においては、ハイブリッドECU7による制御のもと、インバータ224を介してバッテリ12から電力を電動モータ214に供給することにより電動モータ214が駆動され、その駆動力を変速機210を介してプロペラシャフト212に伝達することで、右後輪220RR、左後輪220RLの駆動力をアシストすることができる。また、エンジン効率のよい運転領域では、車両201はエンジン2によって駆動される。この際、動力分割機構3を介してエンジン2の出力の一部をモータジェネレータ4に伝えることにより、モータジェネレータ4が発生する電力を用いて、電動モータ214を駆動したり、インバータ224を介してバッテリ12を充電したりすることが可能となる。
【0103】
また、車両201を制動する際には、ハイブリッドECU7による制御のもと、右後輪220RR、左後輪220RLから変速機210を介して伝わる動力によって電動モータ214が回転させられ、電動モータ214が発電機として作動させられる。すなわち、電動モータ214、インバータ224、ハイブリッドECU7等は、車両201の運動エネルギーを電気エネルギーに回生することによって車両201を制動する回生ブレーキユニットとして機能する。
【0104】
本実施の形態に係るブレーキ制御装置は、このような回生ブレーキユニットに加えて、液圧ブレーキユニット230を備えており、両者を協調させるブレーキ回生協調制御を実行することにより車両201を制動可能なものである。
【0105】
液圧ブレーキユニット230は、右前輪220FR、左前輪220FLに対してそれぞれ設けられたディスクブレーキユニット21FR,21FLと、右後輪220RR、左後輪220RLに対してそれぞれ設けられたディスクブレーキユニット21RR,21RLと、各ディスクブレーキユニットに対する作動液としてのブレーキオイルの供給源である液圧発生装置240と、液圧発生装置240からのブレーキオイルの液圧を適宜調整して各ディスクブレーキユニットに供給することにより、車両201の各車輪に対する制動力を設定可能なブレーキアクチュエータ250とを含む。
【0106】
液圧発生装置240は、マスタシリンダ242、不図示のブースタ、レギュレータ、リザーバ、アキュムレータおよびポンプを含む。ブースタは、車輪への制動力伝達を指示する制動指示操作部材としてのブレーキペダル24に連結されており、ブレーキペダル24に加えられたペダル踏力を増幅してマスタシリンダ242に伝達する。そして、マスタシリンダ242は、ペダル踏力に対して所定の倍力比を有するマスタシリンダ圧を発生する。
【0107】
また、マスタシリンダ242には、ストロークシミュレータ246が接続されている。ストロークシミュレータ246は、複数のピストンやスプリングを含むものであり、ドライバによるブレーキペダル24の踏力に応じた反力を創出する。
【0108】
ブレーキアクチュエータ250は、複数の流体通路が形成されるアクチュエータブロックと、複数の電磁制御弁を含む油圧調整部252とを有する。また、ブレーキアクチュエータ250は、ブレーキペダル24の操作による制動要求に応じて供給液圧により液圧制動力を発生する液圧源として機能する。
【0109】
上述のように構成された液圧発生装置240やブレーキアクチュエータ250は、ブレーキECU70により制御される。そして、ブレーキECU70は、ハイブリッドECU7と通信可能であり、ハイブリッドECU7からの制御信号や、各種センサ280やスイッチからの信号に基づいて液圧発生装置240のポンプや、ブレーキアクチュエータ250を構成する電磁制御弁を制御する。なお、ブレーキアクチュエータ250の一例としては、図2に示す液圧アクチュエータ40やそれと類似する液圧アクチュエータが用いられる。
【0110】
本実施の形態に係る車両201は、前述のように制動時の回生制動力を電気エネルギーに変換し、バッテリ12に蓄積する。制動時に発生する電気エネルギーは、回生制動力の大きさに応じて変化するため、例えば、トラクション制御時や運転者のブレーキ操作による急制動時のように、回生対象となる後輪の要求(目標)回生制動力が大きく算出されることがある。このような場合、バッテリ12に蓄積される回生電力も大きくなり、バッテリ12に負荷がかかる可能性がある。
【0111】
そこで、このような問題に対処するために、本実施の形態に係る回生協調制御は、上述の各実施の形態と同様に、ある条件が成立した場合に駆動輪である後輪にかかる急激な回生制動力の増大を抑制し、バッテリにかかる負荷を低減するものである。
【0112】
具体的には、急制動時やトラクション制御時において、ブレーキECU70により後輪に働く目標回生制動力F1が決定され、所定の閾値に対して大きいか否かが判定される。そして、目標回生制動力F1が所定の閾値より大きいと判定された車輪については、目標回生制動力F1を低減し所定の閾値以下となるように、新たに低減回生制動力F1’が算出される。ブレーキECU70は、このように算出された低減回生制動力F1’に応じて回生ブレーキユニットを制御する。これにより、回生ブレーキユニットによる回生制動時に電動モータ214を介して回収されるエネルギーが低減され、バッテリ12にかかる負荷が低減される。
【0113】
なお、低減回生制動力F1’は、本来必要とされる目標回生制動力F1より小さいため、場合によっては、車両全体の制動力が不足することが考えられる。そこで、本実施の形態に係るブレーキECU70においても、回生制動力の低減量を補うように目標液圧制動力F2を増大させた増大目標液圧制動力F2’を算出し、増大目標液圧制動力F2’に応じて液圧ブレーキユニット230を制御する。これにより、目標回生制動力F1が低減されても車両全体の目標総制動力Fの確保が可能となる。
【0114】
なお、制動が行われることにより車速が低下したり要求される制動力が低下したりすることで、目標回生制動力F1がそれまでよりも減少し、所定の閾値を下回った場合は、通常の回生協調制御のように目標回生制動力F1に応じて回生ブレーキユニット10が制御される。これにより、それまでの制動によりバッテリ12に大きな負荷がかからない状態になった場合には、各車輪に適正な制動力を付与するとともに回生による十分なエネルギー回収も可能となる。
【0115】
以上、本発明を上述の各実施の形態を参照して説明したが、本発明は上述の各実施の形態に限定されるものではなく、各実施の形態の構成を適宜組み合わせたものや置換したものについても本発明に含まれるものである。また、当業者の知識に基づいて各実施の形態における組合せや処理の順番を適宜組み替えることや各種の設計変更等の変形を実施の形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうる。
【符号の説明】
【0116】
1 車両、 2 エンジン、 3 動力分割機構、 4 モータジェネレータ、 5 変速機、 6 電動モータ、 7 ハイブリッドECU、 8 ドライブシャフト、 10 回生ブレーキユニット、 11 電力変換装置、 12 バッテリ、 13 エンジンECU、 14 モータECU、 18 後輪側ドライブシャフト、 20 液圧ブレーキユニット、 22 ブレーキディスク、 23 ホイールシリンダ、 24 ブレーキペダル、 25 ストロークセンサ、 26 車輪速センサ、 27 マスタシリンダユニット、 30 動力液圧源、 31 液圧ブースタ、 32 マスタシリンダ、 33 レギュレータ、 34 リザーバ、 35 アキュムレータ、 36 ポンプ、 40 液圧アクチュエータ、 51 ABS保持弁、 56 ABS減圧弁、 60 分離弁、 64 マスタカット弁、 65 レギュレータカット弁、 66 増圧リニア制御弁、 67 減圧リニア制御弁、 70 ブレーキECU、 75 車速センサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機による回生制動力を車両に設けられた車輪に付与する回生ブレーキと、
液圧により車輪に摩擦部材を押圧し液圧制動力を付与する液圧ブレーキと、
車両制御のために目標となる目標総制動力を算出し、該目標総制動力を満たすように前記回生ブレーキにより発生させる目標回生制動力を決定するとともに該目標総制動力の不足分を満たすように前記液圧ブレーキにより発生させる目標液圧制動力を決定し、前記目標回生制動力および前記目標液圧制動力に応じて前記回生ブレーキと前記液圧ブレーキとを協調制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記目標回生制動力が所定値より大きい場合、該目標回生制動力を低減した低減回生制動力に応じて前記回生ブレーキを制御することを特徴とするブレーキ制御装置。
【請求項2】
前記制御装置は、低減された目標回生制動力を補うように前記目標液圧制動力を増大させた増大目標液圧制動力に応じて前記液圧ブレーキを制御することを特徴とする請求項1に記載のブレーキ制御装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記所定値より大きかった前記目標回生制動力が減少し該所定値を下回った場合には、該目標回生制動力に応じて前記回生ブレーキを制御することを特徴とする請求項1または2に記載のブレーキ制御装置。
【請求項4】
前記制御装置は、駆動車輪の空転を検出した場合に実行されるトラクション制御時において、前記目標回生制動力が所定値より大きいか否かを判定することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のブレーキ制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−206992(P2010−206992A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−51292(P2009−51292)
【出願日】平成21年3月4日(2009.3.4)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】