説明

プラズマ処理方法、及び素子分離方法

【課題】 STIプロセスにおけるシリコンのトレンチの内壁面に沿って、酸素の拡散に対するバリア性を有する数nm程度の厚みの薄膜を形成する方法を提供する。
【解決手段】 プラズマ処理装置100では、平面アンテナ31からマイクロ波透過板28を経て処理容器1内に放射されたマイクロ波により、処理容器1内で電磁界が形成され、ArガスおよびNガスがそれぞれプラズマ化する。プラズマ中の活性種の作用によりウエハWのトレンチの内壁面が極薄く窒化されることにより、緻密なライナーSiN膜が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種半導体装置の素子分離構造を形成する際に利用可能なプラズマ処理方法、及び素子分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン基板上に形成される素子を分離する技術として、シャロートレンチアイソレーション(STI;Shallow Trench Isolation)が知られている。STIは、シリコンをエッチングしてトレンチを形成し、その中に素子分離膜となるSiO膜を埋め込んだ後、化学機械研磨(CMP;Chemical Mechanical Polishing)処理により平坦化することにより実施される。
【0003】
STIでは、トレンチ内にSiO膜を埋め込む工程に先立ち、トレンチの内壁面に沿って薄い絶縁膜を形成することが行われている。この絶縁膜は、後のプロセスで、トレンチ内にSiO膜を埋め込む際に、反応ガス中の酸素がシリコン内に拡散することを防止する目的で形成される。つまり、トレンチの内壁に沿って薄く形成される絶縁膜は、酸素の拡散に対して一種のバリア膜として機能する。
【0004】
STIにおいて、トレンチの壁面に薄い絶縁膜を形成する技術として、例えば特許文献1では、堆積法によりトレンチ内壁面に10〜20nmの厚みの窒化珪素膜を形成する工程が開示されている。また、特許文献2では、酸素ガス及び窒素ガスを含む処理ガスのプラズマによって、トレンチ内をプラズマ酸化処理して1質量%以下の濃度で窒素を含むシリコン酸化膜を形成する工程が開示されている。なお、この特許文献2は、あくまでもシリコン酸化膜の形成を目的とする技術であり、窒素ガスはシリコンの酸化レートを促進する目的で添加されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−41901
【特許文献2】国際公開WO2007/136049
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
半導体装置の微細化の進展に伴い、デバイスの素子形成領域が小さくなるとともにSTIにおけるトレンチの開口幅も狭くなりつつある。特許文献1のような堆積法では、トレンチ内壁に沿って窒化珪素膜を数nm程度の薄膜に成膜することは困難である。また、堆積法による窒化珪素膜は、緻密性が低いため、微細化に対応して薄膜化していくと、バリア膜としての機能が損なわれてしまうという問題もあった。
【0007】
従って、本発明の目的は、STIプロセスにおけるシリコンのトレンチの内壁面に沿って、酸素の拡散に対するバリア性を有する数nm程度の厚みの薄膜を形成する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のプラズマ処理方法は、シリコン上に形成されたトレンチ内に絶縁膜を埋め込み、前記絶縁膜を平坦化して素子分離膜を形成するSTI法による素子分離において、前記トレンチ内への絶縁膜の埋め込みに先立ち、前記トレンチの内壁面のシリコンをプラズマにより窒化処理するプラズマ窒化処理工程を有するプラズマ処理方法である。そして、前記プラズマ窒化処理工程は、窒素含有ガスを含む処理ガスのプラズマにより、処理圧力が1.3Pa以上187Pa以下の範囲内、かつ全処理ガスに対する窒素含有ガスの体積流量比率が1%以上80%以下の範囲内の条件で行われ、前記トレンチの内壁面に厚さ1〜10nmの範囲内のシリコン窒化膜を形成することを特徴とする。
【0009】
本発明のプラズマ処理方法は、前記プラズマ窒化処理工程における処理圧力が1.3Pa以上40Pa以下の範囲内であることが好ましい。
【0010】
また、本発明のプラズマ処理方法は、前記プラズマ窒化処理工程の後に、さらに、前記シリコン窒化膜を、酸素含有ガスを含む処理ガスのプラズマにより酸化し、シリコン酸窒化膜に改質するプラズマ酸化処理工程を有することが好ましい。この場合、前記プラズマ酸化処理工程における処理圧力が1.3Pa以上1000Pa以下の範囲内であり、全処理ガスに対する酸素含有ガスの体積流量比率が1%以上80%以下の範囲内であることが好ましい。
【0011】
また、本発明のプラズマ処理方法において、前記プラズマ窒化処理工程及び前記プラズマ酸化処理工程は、複数の孔を有する平面アンテナにより処理容器内にマイクロ波を導入してプラズマを生成させるプラズマ処理装置により行われることが好ましい。
【0012】
本発明の素子分離方法は、シリコンにトレンチを形成する工程と、前記トレンチ内に絶縁膜を埋め込む工程と、前記絶縁膜を平坦化して素子分離膜を形成する工程と、を備えている。そして、前記トレンチ内に絶縁膜を埋め込む工程に先立ち、窒素含有ガスを含む処理ガスのプラズマにより、処理圧力が1.3Pa以上187Pa以下の範囲内、かつ全処理ガスに対する窒素含有ガスの体積流量比率が1%以上80%以下の範囲内の条件で、前記トレンチの内壁面を窒化処理し、厚さ1〜10nmの範囲内のシリコン窒化膜を形成するプラズマ窒化処理工程を有することを特徴とする。
【0013】
本発明の素子分離方法は、前記プラズマ窒化処理工程の後に、さらに、前記シリコン窒化膜を、酸素含有ガスを含む処理ガスのプラズマにより酸化し、シリコン酸窒化膜に改質するプラズマ酸化処理工程を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明のプラズマ処理方法によれば、短時間のプラズマ処理で、シリコンに形成されたトレンチの幅や深さをほとんど変化させずに、高温での熱酸化処理の際に酸素の拡散に対してバリア機能を有する厚さ1〜10nmの範囲内のライナー膜を形成できる。従って、各種半導体装置の製造プロセスにおいて、STIによる素子分離を行う際に本発明のプラズマ処理方法を適用することにより、微細化への対応を可能にしつつ、半導体装置の信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施の形態で使用可能なプラズマ処理装置の一例を示す概略断面図である。
【図2】平面アンテナの構造を示す図面である。
【図3】制御部の構成例を示す説明図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係るプラズマ処理方法の工程図であり、(a)はプラズマ窒化処理前の被処理体の構造を示し、(b)はプラズマ窒化処理後の被処理体の構造を示している。
【図5】本発明の第2の実施の形態で使用可能なプラズマ処理装置の一例を示す概略断面図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係るプラズマ処理方法の工程図であり、(a)はプラズマ窒化処理前の被処理体の構造を示し、(b)はプラズマ窒化処理後の被処理体の構造を示し、(c)はプラズマ酸化処理後の被処理体の構造を示している。
【図7】本発明の第2の実施の形態で使用可能な基板処理システムの概略構成を示す平面図である。
【図8】実験1における高温熱酸化処理の処理温度と増膜量との関係を示すグラフである。
【図9】実験2におけるプラズマ窒化処理の処理時間とSiN膜の膜厚との関係を示すグラフである。
【図10】実験2における高温熱酸化処理の処理温度と増膜量との関係をプラズマ窒化処理の処理時間別に示すグラフである。
【図11】実験3におけるプラズマ窒化処理の処理圧力と増膜量との関係を示すグラフである。
【図12】実験4におけるXPS分析によるSiN膜及びSiON膜中の窒素濃度及び酸素濃度を示す図面である。
【図13】STIプロセスによる素子分離構造を形成する手順を説明するウエハ表面付近の断面図である。
【図14】シリコン表面を露出させた状態のウエハ表面付近の断面図である。
【図15】トレンチを形成した後のウエハ表面付近の断面図である。
【図16】ライナーSiN膜(ライナーSiON膜)を形成した後のウエハ表面付近の断面図である。
【図17】埋め込み絶縁膜を形成した状態のウエハ表面付近の断面図である。
【図18】素子分離構造を形成したウエハ表面付近の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。本実施の形態のプラズマ処理方法は、シリコン上に形成されたトレンチ内に絶縁膜を埋め込み、前記絶縁膜を平坦化して素子分離膜を形成するSTI法による素子分離において、前記トレンチ内への絶縁膜の埋め込みに先立ち、前記トレンチの内壁面のシリコンをプラズマにより窒化処理する場合に好ましく適用される。本実施の形態のプラズマ処理方法は、STIプロセスにおいて、トレンチ内に絶縁膜を埋め込む工程に先立ち、トレンチの内壁面を、窒素含有ガスを含む処理ガスのプラズマにより窒化し、厚さ1〜10nmの範囲内のシリコン窒化膜を形成するプラズマ窒化処理工程を含むことができる。ここで、シリコンは、シリコン層(単結晶シリコンまたはポリシリコン)であってもよいし、シリコン基板であってもよい。
【0017】
<プラズマ処理装置>
図1は、第1の実施の形態に係るプラズマ処理方法に用いるプラズマ処理装置100の概略構成を模式的に示す断面図である。図2は、図1のプラズマ処理装置100の平面アンテナを示す平面図である。図3は、図1のプラズマ処理装置100を制御する制御部の構成例を示す図面である。
【0018】
プラズマ処理装置100は、複数のスロット状の孔を有する平面アンテナ、特にRLSA(Radial Line Slot Antenna;ラジアルラインスロットアンテナ)にて処理容器内にマイクロ波を導入することにより、高密度かつ低電子温度のマイクロ波励起プラズマを発生させ得るRLSAマイクロ波プラズマ処理装置として構成されている。プラズマ処理装置100では、1×1010〜5×1012/cmのプラズマ密度で、かつ0.7〜2eVの低電子温度を有するプラズマによる処理が可能である。従って、プラズマ処理装置100は、各種半導体装置の製造過程において、プラズマ窒化処理を行う目的で好適に利用できる。
【0019】
プラズマ処理装置100は、主要な構成として、気密に構成された処理容器1と、処理容器1内にガスを供給するガス供給装置18と、処理容器1内を減圧排気するための、真空ポンプ24を備えた排気装置と、処理容器1の上部に設けられ、処理容器1内にマイクロ波を導入するマイクロ波導入機構27と、これらプラズマ処理装置100の各構成部を制御する制御部50と、を備えている。なお、ガス供給装置18は、プラズマ処理装置100の構成部分とせずに、プラズマ処理装置100を外部のガス供給装置に接続してガスの供給を行うことも可能である。
【0020】
処理容器1は、接地された略円筒状の容器により形成されている。なお、処理容器1は角筒形状の容器により形成してもよい。処理容器1は、アルミニウム等の金属またはその合金からなる底壁1aと側壁1bとを有している。
【0021】
処理容器1の内部には、被処理体である半導体ウエハ(以下、単に「ウエハ」と記す)Wを水平に支持するための載置台2が設けられている。載置台2は、熱伝導性の高い材質例えばAlN等のセラミックスにより構成されている。この載置台2は、排気室11の底部中央から上方に延びる円筒状の支持部材3により支持されている。支持部材3は、例えばAlN等のセラミックスにより構成されている。
【0022】
また、載置台2には、その外縁部をカバーし、ウエハWをガイドするためのカバーリング4が設けられている。このカバーリング4は、例えば石英、AlN、Al、SiN等の材質で構成された環状部材である。カバーリング4は、載置台2の表面と側面を覆うようにすることが好ましい。これにより、シリコン上への金属汚染など防止できる。
【0023】
また、載置台2には、温度調節機構としての抵抗加熱型のヒータ5が埋め込まれている。このヒータ5は、ヒータ電源5aから給電されることにより載置台2を加熱して、その熱で被処理基板であるウエハWを均一に加熱する。
【0024】
また、載置台2には、熱電対(TC)6が配備されている。この熱電対6によって載置台2の温度計測を行うことにより、ウエハWの加熱温度を例えば室温から900℃までの範囲で制御可能となっている。
【0025】
また、載置台2には、ウエハWを支持して昇降させるためのウエハ支持ピン(図示せず)が設けられている。各ウエハ支持ピンは、載置台2の表面に対して突没可能に設けられている。
【0026】
処理容器1の内周には、石英からなる円筒状のライナー7が設けられている。また、載置台2の外周側には、処理容器1内を均一排気するため、多数の排気孔8aを有する石英製のバッフルプレート8が環状に設けられている。このバッフルプレート8は、複数の支柱9により支持されている。
【0027】
処理容器1の底壁1aの略中央部には、円形の開口部10が形成されている。底壁1aにはこの開口部10と連通し、下方に向けて突出する排気室11が設けられている。この排気室11には、排気管12が接続されており、この排気管12を介して真空ポンプ24に接続されている。
【0028】
処理容器1の上部には、中央部が開口するとともに、開閉機能を有する蓋部材(Lid)13が配備されている。開口の内周は、内側(処理容器内空間)へ向けて突出し、環状の支持部13aを形成している。
【0029】
処理容器1の側壁1bには、環状をなすガス導入部15が設けられている。このガス導入部15は、窒素含有ガスやプラズマ励起用ガスを供給するガス供給装置18に接続されている。なお、ガス導入部15はノズル状またはシャワー状に設けてもよい。
【0030】
また、処理容器1の側壁1bには、プラズマ処理装置100と、これに隣接する真空側搬送室(図示せず)との間で、ウエハWの搬入出を行うための搬入出口16と、この搬入出口16を開閉するゲートバルブG1とが設けられている。
【0031】
ガス供給装置18は、ガス供給源(例えば、不活性ガス供給源19a、窒素含有ガス供給源19b)と、配管(例えば、ガスライン20a、20b)と、流量制御装置(例えば、マスフローコントローラ21a、21b)と、バルブ(例えば、開閉バルブ22a,22b)とを有している。なお、ガス供給装置18は、上記以外の図示しないガス供給源として、例えば処理容器1内雰囲気を置換する際に用いるパージガス供給源等を有していてもよい。
【0032】
プラズマ窒化処理に用いるプラズマ生成用ガスとしての不活性ガスは、例えば希ガスなどを用いることができる。希ガスとしては、例えばArガス、Krガス、Xeガス、Heガスなどを用いることができる。これらの中でも、経済性に優れている点でArガスを用いることが特に好ましい。窒素含有ガスとしては、例えばN、NO、NO、NH等を挙げることができる。
【0033】
不活性ガスおよび窒素含有ガスは、ガス供給装置18の不活性ガス供給源19aおよび窒素含有ガス供給源19bから、それぞれガスライン20a、20bを介してガス導入部15に至り、ガス導入部15から処理容器1内に導入される。各ガス供給源に接続する各々のガスライン20a、20bには、マスフローコントローラ21a、21bおよびその前後の1組の開閉バルブ22a,22bが設けられている。このようなガス供給装置18の構成により、供給されるガスの切替えや流量等の制御が出来るようになっている。
【0034】
排気装置は、真空ポンプ24を備えている。真空ポンプ24は、例えばターボ分子ポンプなどの高速真空ポンプなどにより構成される。真空ポンプ24は、排気管12を介して処理容器1の排気室11に接続されている。処理容器1内のガスは、排気室11の空間11a内へ均一に流れ、さらに空間11aから真空ポンプ24を作動させることにより、排気管12を介して外部へ排気される。これにより、処理容器1内を所定の真空度、例えば0.133Paまで高速に減圧することが可能となっている。
【0035】
次に、マイクロ波導入機構27の構成について説明する。マイクロ波導入機構27は、主要な構成として、マイクロ波透過板28、平面アンテナ31、遅波材33、カバー部材34、導波管37、マッチング回路38およびマイクロ波発生装置39を備えている。
【0036】
マイクロ波を透過させるマイクロ波透過板28は、蓋部材13において内周側に張り出した支持部13a上に配備されている。マイクロ波透過板28は、誘電体、例えば石英やAl、AlN等のセラミックスから構成されている。このマイクロ波透過板28と支持部13aとの間は、シール部材29を介して気密にシールされている。したがって、処理容器1内は気密に保持される。
【0037】
平面アンテナ31は、マイクロ波透過板28の上方において、載置台2と対向するように設けられている。平面アンテナ31は、円板状をなしている。なお、平面アンテナ31の形状は、円板状に限らず、例えば四角板状でもよい。この平面アンテナ31は、蓋部材13の上端に係止されている。
【0038】
平面アンテナ31は、例えば表面が金または銀メッキされた銅板またはアルミニウム板から構成されている。平面アンテナ31は、マイクロ波を放射する多数のスロット状のマイクロ波放射孔32を有している。マイクロ波放射孔32は、所定のパターンで平面アンテナ31を貫通して形成されている。
【0039】
個々のマイクロ波放射孔32は、例えば図2に示すように、細長い長方形状(スロット状)をなしている。そして、典型的には隣接するマイクロ波放射孔32が「T」字状に配置されている。また、このように所定の形状(例えばT字状)に組み合わせて配置されたマイクロ波放射孔32は、さらに全体として同心円状に配置されている。
【0040】
マイクロ波放射孔32の長さや配列間隔は、導波管37内のマイクロ波の波長(λg)に応じて決定される。例えば、マイクロ波放射孔32の間隔は、λg/4〜λgとなるように配置される。なお、図2においては、同心円状に形成された隣接するマイクロ波放射孔32どうしの間隔をΔrで示している。なお、マイクロ波放射孔32の形状は、円形状、円弧状等の他の形状であってもよい。さらに、マイクロ波放射孔32の配置形態は特に限定されず、同心円状のほか、例えば、螺旋状、放射状等に配置することもできる。
【0041】
平面アンテナ31の上面には、真空よりも大きい誘電率を有する遅波材33が設けられている。この遅波材33は、真空中ではマイクロ波の波長が長くなることから、マイクロ波の波長を短くしてプラズマを調整する機能を有している。遅波材33の材質としては、例えば石英、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、ポリイミド樹脂などを用いることができる。
【0042】
なお、平面アンテナ31とマイクロ波透過板28との間、また、遅波材33と平面アンテナ31との間は、それぞれ接触させても離間させてもよいが、接触させることが好ましい。
【0043】
処理容器1の上部には、これら平面アンテナ31および遅波材33を覆うように、カバー部材34が設けられている。カバー部材34は、例えばアルミニウムやステンレス鋼等の金属材料によって形成されている。このカバー部材34と平面アンテナ31とで偏平導波路が形成されている。蓋部材13の上端とカバー部材34とは、シール部材35によりシールされている。また、カバー部材34の内部には、冷却水流路34aが形成されている。この冷却水流路34aに冷却水を通流させることにより、カバー部材34、遅波材33、平面アンテナ31およびマイクロ波透過板28を冷却できるようになっている。なお、カバー部材34は接地されている。
【0044】
カバー部材34の上壁(天井部)の中央には、開口部36が形成されており、この開口部36には導波管37が接続されている。導波管37の他端側には、マッチング回路38を介してマイクロ波を発生するマイクロ波発生装置39が接続されている。
【0045】
導波管37は、上記カバー部材34の開口部36から上方へ延出する断面円形状の同軸導波管37aと、この同軸導波管37aの上端部にモード変換器40を介して接続された水平方向に延びる矩形導波管37bとを有している。モード変換器40は、矩形導波管37b内をTEモードで伝播するマイクロ波をTEMモードに変換する機能を有している。
【0046】
同軸導波管37aの中心には内導体41が延在している。この内導体41は、その下端部において平面アンテナ31の中心に接続固定されている。このような構造により、マイクロ波は、同軸導波管37aの内導体41を介してカバー部材34と平面アンテナ31とで形成される偏平導波路へ放射状に効率よく均一に伝播され、平面アンテナ31のマイクロ波放射孔(スロット)32より処理容器内に導入されて、プラズマが生成される。
【0047】
以上のような構成のマイクロ波導入機構27により、マイクロ波発生装置39で発生したマイクロ波が導波管37を介して平面アンテナ31へ伝搬され、さらにマイクロ波透過板28を介して処理容器1内に導入されるようになっている。なお、マイクロ波の周波数としては、例えば2.45GHzが好ましく用いられ、他に8.35GHz、1.98GHz等を用いることもできる。
【0048】
プラズマ処理装置100の各構成部は、制御部50に接続されて制御される構成となっている。制御部50は、コンピュータを有しており、例えば図3に示したように、CPUを備えたプロセスコントローラ51と、このプロセスコントローラ51に接続されたユーザーインターフェース52および記憶部53を備えている。プロセスコントローラ51は、プラズマ処理装置100において、例えば温度、圧力、ガス流量、マイクロ波出力などのプロセス条件に関係する各構成部(例えば、ヒータ電源5a、ガス供給装置18、真空ポンプ24、マイクロ波発生装置39など)を統括して制御する制御手段である。
【0049】
ユーザーインターフェース52は、工程管理者がプラズマ処理装置100を管理するためにコマンドの入力操作等を行うキーボードや、プラズマ処理装置100の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等を有している。また、記憶部53には、プラズマ処理装置100で実行される各種処理をプロセスコントローラ51の制御にて実現するための制御プログラム(ソフトウエア)や処理条件データ等が記録されたレシピが保存されている。
【0050】
そして、必要に応じて、ユーザーインターフェース52からの指示等にて任意のレシピを記憶部53から呼び出してプロセスコントローラ51に実行させることで、プロセスコントローラ51の制御下、プラズマ処理装置100の処理容器1内で所望の処理が行われる。また、前記制御プログラムや処理条件データ等のレシピは、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体、例えばCD−ROM、ハードディスク、フレキシブルディスク、フラッシュメモリ、DVD、ブルーレイディスクなどに格納された状態のものを利用したり、あるいは、他の装置から、例えば専用回線を介して随時伝送させてオンラインで利用したりすることも可能である。
【0051】
このように構成されたプラズマ処理装置100では、600℃以下の低温で下地層等へのダメージフリーなプラズマ処理を行うことができる。また、プラズマ処理装置100は、プラズマの均一性に優れていることから、例えば300mm径以上の大型のウエハWに対してもウエハWの面内で処理の均一性を実現できる。
【0052】
<プラズマ処理方法>
次に、プラズマ処理装置100において行われる、プラズマ処理方法について図4を参照しながら説明する。図4は、本実施の形態のプラズマ処理方法の工程を説明するためのウエハW表面付近の断面図である。
【0053】
本実施の形態のプラズマ処理方法は、まず、処理対象のウエハWを準備する。図4(a)に示したように、ウエハWの表面には、シリコン(シリコン層又はシリコン基板)201と、酸化珪素(SiO)膜203、窒化珪素(SiN)膜205がこの順番に積層形成されている。また、ウエハWのシリコン201には、トレンチ207が形成されている。このトレンチ207は、SiN膜205をマスクとしてエッチングにより形成されたものであり、素子分離膜を埋め込む部分となる。
【0054】
次に、プラズマ処理装置100を用いてウエハWのトレンチ207の内壁面を、プラズマ窒化処理する。プラズマ窒化処理によって、トレンチ207の内壁面207aは薄く窒化され、図4(b)に示したように、ライナーSiN膜209が形成される。ここで、ライナーSiN膜209の厚みは、半導体装置の微細化への対応を図るため、例えば1nm以上10nm以下の範囲内とすることが好ましい。
【0055】
<プラズマ窒化処理の手順>
プラズマ窒化処理の手順は、以下のとおりである。まず、処理対象のウエハWをプラズマ処理装置100に搬入し、載置台2上に配置する。次に、プラズマ処理装置100の処理容器1内を減圧排気しながら、ガス供給装置18の不活性ガス供給源19a、窒素含有ガス供給源19bから、例えばArガス、Nガスを所定の流量でそれぞれガス導入部15を介して処理容器1内に導入する。このようにして、処理容器1内を所定の圧力に調節する。
【0056】
次に、マイクロ波発生装置39で発生させた所定周波数が例えば2.45GHzのマイクロ波を、マッチング回路38を介して導波管37に導く。導波管37に導かれたマイクロ波は、矩形導波管37bおよび同軸導波管37aを順次通過し、内導体41を介して平面アンテナ31に供給される。つまり、マイクロ波は、矩形導波管37b内ではTEモードで伝搬し、このTEモードのマイクロ波はモード変換器40でTEMモードに変換されて、同軸導波管37aを介してカバー部材34と平面アンテナ31とにより構成される偏平導波路を伝搬していく。そして、マイクロ波は、平面アンテナ31に貫通形成されたスロット状のマイクロ波放射孔32からマイクロ波透過板28を介して処理容器1内におけるウエハWの上方空間に放射される。この際のマイクロ波出力は、例えば200mm径以上のウエハWを処理する場合には、1000W以上5000W以下の範囲内から目的に応じて選択することができる。
【0057】
平面アンテナ31からマイクロ波透過板28を経て処理容器1内に放射されたマイクロ波により、処理容器1内で電磁界が形成され、ArガスおよびNガスがそれぞれプラズマ化する。この際、マイクロ波が平面アンテナ31の多数のマイクロ波放射孔32から放射されることにより、略1×1010〜5×1012/cmの高密度で、かつウエハW近傍では、略1.2eV以下の低電子温度のプラズマが生成される。このようにして生成されるプラズマは、下地膜へのイオン等によるプラズマダメージが少ない。そして、プラズマ中の窒素ラジカル、窒素イオンなどの活性種の作用によりウエハW表面のシリコン201にプラズマ窒化処理が行われる。すなわち、ウエハWのトレンチ207の内壁面207aが窒化されて、極薄く制御された緻密なライナーSiN膜209が形成される。
【0058】
以上のようにライナーSiN膜209を形成した後、ウエハWをプラズマ処理装置100から搬出することにより、1枚のウエハWに対する処理が終了する。
【0059】
<プラズマ窒化処理条件>
上述のプラズマ窒化処理の処理ガスとしては、希ガスと窒素含有ガスとを含むガスを用いることが好ましい。希ガスとしてはArガスを、窒素含有ガスとしてはNガスを、それぞれ使用することが好ましい。このとき、全処理ガスに対するNガスの体積流量比率(Nガス流量/全処理ガス流量の百分率)は、ライナーSiN膜209中の窒素濃度を高くして酸素バリア性に優れた緻密な膜を形成する観点から、1%以上80%以下の範囲内とすることが好ましく、10%以上30%以下の範囲内とすることがより好ましい。処理ガス流量として例えばArガスの流量は100mL/min(sccm)以上2000mL/min(sccm)以下が好ましく、1000mL/min(sccm)以上2000mL/min(sccm)以下の範囲内がより好ましい。Nガスの流量は50mL/min(sccm)以上500mL/min(sccm)以下の範囲内が好ましく、200mL/min(sccm)以上500mL/min(sccm)以下の範囲内がより好ましい。以上の流量範囲から、上記流量比になるように設定することが好ましい。
【0060】
また、処理圧力は、ライナーSiN膜209中の窒素濃度を高くして酸素バリア性に優れた緻密な膜を形成する観点から、例えば、187Pa以下が好ましく、1.3Pa以上187Pa以下の範囲内がより好ましく、1.3Pa以上40Pa以下が最も好ましい。プラズマ窒化処理における処理圧力が187Paを超えると、プラズマ中の窒化活性種としてイオン成分が少なくため、窒化レートが低下するとともに、窒素ドーズ量も低下してしまう。
【0061】
また、マイクロ波のパワー密度は、プラズマ中で活性種を効率よく生成させる観点から、0.7W/cm以上4.7W/cm以下の範囲内とすることが好ましく、1.4W/cm以上3.5W/cmの範囲内がより好ましい。なお、マイクロ波のパワー密度は、マイクロ波透過板28の面積1cmあたりに供給されるマイクロ波パワーを意味する(以下、同様である)。例えば200mm径以上のウエハWを処理する場合には、マイクロ波パワーを、1000W以上5000W以下の範囲内から上記パワー密度になるように設定することが好ましい。
【0062】
また、ウエハWの加熱温度は、載置台2の温度として、例えば200℃以上600℃以下の範囲内とすることが好ましく、400℃以上600℃以下の範囲内に設定することがより好ましい。
【0063】
また、プラズマ窒化処理の処理時間は、ライナーSiN膜209を所望の膜厚で形成できれば特に制限はない。例えば、トレンチ207の内壁面207aのシリコン表層のみを、均一に、高濃度に窒化して1〜10nm、好ましくは2〜5nmの厚みのライナーSiN膜209を形成する観点から、例えば1秒以上360秒以下の範囲内とすることが好ましく、90秒以上240秒以下の範囲内とすることがより好ましく、160秒以上240秒以下の範囲内とすることが最も好ましい。
【0064】
以上の条件は、制御部50の記憶部53にレシピとして保存されている。そして、プロセスコントローラ51がそのレシピを読み出してプラズマ処理装置100の各構成部例えばガス供給装置18、真空ポンプ24、マイクロ波発生装置39、ヒータ電源5aなどへ制御信号を送出することにより、所望の条件でプラズマ窒化処理が行われる。
【0065】
本実施の形態のプラズマ処理方法によれば、短時間のプラズマ窒化処理によって、高温での熱酸化処理、例えば高温のCVD法でSiO膜をトレンチ内に埋め込む等の際に反応ガス中の酸素の拡散に対してバリアとして機能する厚さが1〜10nmの範囲内のライナーSiN膜209を形成できる。このように形成したライナーSiN膜209の厚さは、トレンチの幅や深さをほとんど変化させない程度の薄膜であるため、例えば素子のチャンネル長が制約されるなどの影響を与えることがない。従って、各種半導体装置の製造プロセスにおいて、STIによる素子分離を行う際に本実施の形態のプラズマ処理方法を適用することにより、微細化への対応を容易にしつつ、半導体装置の信頼性を高めることができる。
【0066】
[第2の実施の形態]
本実施の形態のプラズマ処理方法は、シリコン上に形成されたトレンチ内に絶縁膜を埋め込み、前記絶縁膜を平坦化して素子分離膜を形成するSTI法による素子分離において、前記トレンチ内への絶縁膜の埋め込みに先立ち、前記トレンチの内壁面のシリコンをプラズマにより窒化処理する場合に好ましく適用できる。本実施の形態のプラズマ処理方法は、トレンチ内に絶縁膜を埋め込む工程に先立ち、トレンチの内壁面を、窒素含有ガスを含む処理ガスのプラズマにより窒化し、厚さ1〜10nmの範囲内のシリコン窒化膜を形成するプラズマ窒化処理工程と、シリコン窒化膜を、酸素含有ガスを含む処理ガスのプラズマにより酸化し、シリコン酸窒化膜に改質するプラズマ酸化処理工程と、を含むことができる。本実施の形態のプラズマ処理方法は、プラズマ窒化処理工程の後に、さらにプラズマ酸化処理工程を実施する点において第1の実施の形態と異なっている。
【0067】
<プラズマ処理装置>
第2の実施の形態のプラズマ処理方法では、図1に示したプラズマ処理装置100に加え、図5に示したプラズマ処理装置101を使用する。図5は、プラズマ処理装置101の概略構成を模式的に示す断面図である。図5に示すプラズマ処理装置101は、ガス供給装置18において、窒素含有ガス供給源19bに代えて、酸素含有ガス供給源19cを備えている点が、図1のプラズマ処理装置100と異なっている。従って、以下の説明では、図1との相違点を中心に説明を行い、図1と同じ構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0068】
図5に示すプラズマ処理装置101において、ガス供給装置18は、ガス供給源として、例えば、不活性ガス供給源19a及び酸素含有ガス供給源19cを有している。また、ガス供給装置18は、配管(例えば、ガスライン20a、20c)と、流量制御装置(例えば、マスフローコントローラ21a、21c)と、バルブ(例えば、開閉バルブ22a,22c)とを有している。なお、ガス供給装置18は、上記以外の図示しないガス供給源として、例えば処理容器1内雰囲気を置換する際に用いるパージガス供給源等を有していてもよい。
【0069】
不活性ガスとしては、例えば希ガスなどを用いることができる。希ガスとしては、例えばArガス、Krガス、Xeガス、Heガスなどを用いることができる。これらの中でも、経済性に優れている点でArガスを用いることが特に好ましい。また、プラズマ酸化処理に用いる酸素含有ガスとしては、例えば酸素ガス(O)、水蒸気(HO)、一酸化窒素(NO)、一酸化二窒素(NO)などを挙げることができる。
【0070】
不活性ガスおよび酸素含有ガスは、ガス供給装置18の不活性ガス供給源19a、および酸素含有ガス供給源19cから、それぞれガスライン20a、20cを介してガス導入部15に至り、ガス導入部15から処理容器1内に導入される。各ガス供給源に接続する各々のガスライン20a、20cには、マスフローコントローラ21a、21cおよびその前後の1組の開閉バルブ22a,22cが設けられている。このようなガス供給装置18の構成により、供給されるガスの切替えや流量等の制御が出来るようになっている。
【0071】
次に、本実施の形態のプラズマ処理方法について図6を参照しながら説明する。図6は、本実施の形態のプラズマ処理方法の工程を説明するためのウエハW表面付近の断面図である。
【0072】
<プラズマ窒化処理工程>
本実施の形態のプラズマ処理方法は、まず、第1の実施の形態と同様に、処理対象のウエハWに対して、プラズマ窒化処理を行う。被処理体であるウエハWは、図6(a)に示すように、第1の実施の形態と同様にトレンチ207が形成されたシリコン201を有している。シリコン201のトレンチ207内の内壁面207aをプラズマ窒化処理して、ライナーSiN膜209が形成される(図6(b))。本実施の形態において、プラズマ窒化処理工程は、第1の実施の形態と全く同様に実施できるので、説明を省略する。
【0073】
<プラズマ酸化処理工程>
次に、ライナーSiN膜209を有するウエハWに対し、プラズマ処理装置101を用いて、プラズマ酸化処理を行う。これにより、図6(c)に示したように、ライナーSiN膜209が酸化され、ライナーSiON膜211が形成される。
【0074】
<プラズマ酸化処理の手順>
プラズマ酸化処理の手順は、以下のとおりである。まず、プラズマ処理装置101の処理容器1内を減圧排気しながら、ガス供給装置18の不活性ガス供給源19a、酸素含有ガス供給源19cから、例えばArガス、Oガスを所定の流量でそれぞれガス導入部15を介して処理容器1内に導入する。このようにして、処理容器1内を所定の圧力に調節する。
【0075】
次に、マイクロ波発生装置39で発生させた所定周波数が例えば2.45GHzのマイクロ波を、マッチング回路38を介して導波管37に導く。導波管37に導かれたマイクロ波は、矩形導波管37bおよび同軸導波管37aを順次通過し、内導体41を介して平面アンテナ31に供給される。つまり、マイクロ波は、矩形導波管37b内ではTEモードで伝搬し、このTEモードのマイクロ波はモード変換器40でTEMモードに変換されて、同軸導波管37aを介してカバー部材34と平面アンテナ31とにより構成される偏平導波路を伝搬していく。そして、マイクロ波は、平面アンテナ31に貫通形成されたスロット状のマイクロ波放射孔32からマイクロ波透過板28を介して処理容器1内におけるウエハWの上方空間に放射される。この際のマイクロ波出力は、例えば200mm径以上のウエハWを処理する場合には、1000W以上5000W以下の範囲内から目的に応じて選択することができる。
【0076】
平面アンテナ31からマイクロ波透過板28を経て処理容器1に放射されたマイクロ波により、処理容器1内で電磁界が形成され、ArガスおよびOガスがそれぞれプラズマ化する。この際、マイクロ波が平面アンテナ31の多数のマイクロ波放射孔32から放射されることにより、略1×1010〜5×1012/cmの高密度で、かつウエハW近傍では、略1.2eV以下の低電子温度を有するプラズマが生成される。このようにして生成されるプラズマは、下地膜へのイオン等によるプラズマダメージが少ない。そして、プラズマ中の活性種OイオンやO()ラジカルの作用によりウエハWにプラズマ酸化処理が行われる。すなわち、ウエハWのトレンチ内に形成したライナーSiN膜209の表面を極薄く均一に酸化することにより、膜中の不安定な状態のSi−N結合や遊離したNの代わりに、Si−O結合が形成されてライナーSiON膜211が形成される。また、この際、シリコンとライナーSiN膜209の界面に酸素が拡散しない程度のプラズマ酸化条件で処理することが好ましい。ただし、Si/SiN界面まで酸素が拡散しても、膜厚が増膜しない程度であれば、トレンチ幅及びその深さはあまり変化しないため、素子のチャンネル長が制約を受けるなどの影響はほとんどないと考えられる。
【0077】
以上のようにライナーSiN膜209を酸化してライナーSiON膜211に改質した後、ウエハWをプラズマ処理装置101から搬出することにより、1枚のウエハWに対する処理が終了する。
【0078】
<プラズマ酸化処理条件>
プラズマ酸化処理の処理ガスとしては、希ガスと酸素含有ガスとを含むガスを用いることが好ましい。希ガスとしてはArガスを、酸素含有ガスとしてはOガスを、それぞれ使用することが好ましい。このとき、全処理ガスに対するOガスの体積流量比率(Oガス流量/全処理ガス流量の百分率)は、酸化レートを高くする観点から、1%以上80%以下の範囲内とすることが好ましく、1%以上70%以下の範囲内がより好ましく、1%以上15%以下の範囲内が最も好ましい。処理ガス流量としては、例えばArガスの流量は100mL/min(sccm)以上2000mL/min(sccm)以下が好ましく、1000mL/min(sccm)以上2000mL/min(sccm)以下の範囲内がより好ましい。Oガスの流量は、5mL/min(sccm)以上250mL/min(sccm)以下の範囲内が好ましく、20mL/min(sccm)以上250mL/min(sccm)以下の範囲内がより好ましい。以上の流量範囲から、上記流量比になるように設定することが好ましい。
【0079】
また、処理圧力は、酸化レートを高くする観点から、例えば、1.3Pa以上1000Pa以下の範囲内が好ましく、133Pa以上1000Pa以下の範囲内がより好ましく、400Pa以上667Pa以下の範囲内が最も好ましい。プラズマ酸化処理における処理圧力が133Pa未満になると、酸素イオン成分が多くなり、酸素イオンがライナーSiN膜209中を拡散してSi/SiN界面に到達し、Siを酸化してしまうため、実質増膜になり、トレンチ幅及びその深さが変化してしまい、例えば素子のチャンネル長が制約を受けるなどの影響が生じる場合がある。また、処理圧力が1000Paを超えると、酸素ラジカル成分が多くなるため、ライナーSiN膜209を十分に酸化しきれなかったり、均一に酸化されなかったりする場合があるので、トレンチ207内に高温でSiO膜を埋め込む際、反応ガス中の酸素に対するバリア性が低下する。
【0080】
また、マイクロ波のパワー密度は、プラズマ中で酸化活性種のOイオンやO()ラジカルを効率よく生成させる観点から、0.7W/cm以上4.7W/cm以下の範囲内とすることが好ましく、1.4W/cm以上3.5W/cmの範囲内がより好ましい。なお、マイクロ波のパワー密度は、マイクロ波透過板28の面積1cmあたりに供給されるマイクロ波パワーを意味する(以下、同様である)。例えば200mm径以上のウエハWを処理する場合には、マイクロ波パワーを、1000W以上5000W以下の範囲内から上記パワー密度になるように設定することが好ましい。
【0081】
また、ウエハWの加熱温度は、載置台2の温度として、例えば200℃以上600℃以下の範囲内とすることが好ましく、400℃以上600℃以下の範囲内の低温で処理することがより好ましい。
【0082】
また、プラズマ酸化処理の処理時間は、特に制限はないが、Si/SiN界面まで酸素が拡散しない程度、または、窒素膜を全て酸化膜にしないという観点から、例えば1秒以上360秒以下の範囲内とすることが好ましく、1秒以上60秒以下の範囲内とすることがより好ましい。
【0083】
以上の条件は、制御部50の記憶部53にレシピとして保存されている。そして、プロセスコントローラ51がそのレシピを読み出してプラズマ処理装置101の各構成部例えばガス供給装置18、真空ポンプ24、マイクロ波発生装置39、ヒータ電源5aなどへ制御信号を送出することにより、所望の条件でプラズマ酸化処理が行われる。
【0084】
<基板処理システム>
第2の実施の形態のプラズマ処理方法に好ましく利用できる基板処理システムについて説明する。図7は、ウエハWに対し、プラズマ窒化処理およびプラズマ酸化処理を真空条件で連続的に行なうように構成された基板処理システム200を示す概略構成図である。この基板処理システム200は、マルチチャンバ構造のクラスタツールとして構成されている。基板処理システム200は、主要な構成として、ウエハWに対して各種の処理を行う4つのプロセスモジュール100a,100b,101a,101bと、これらのプロセスモジュール100a,100b,101a,101bに対してゲートバルブG1を介して接続された真空側搬送室103と、この真空側搬送室103にゲートバルブG2を介して接続された2つのロードロック室105a,105bと、これら2つのロードロック室105a,105bに対してゲートバルブG3を介して接続されたローダーユニット107とを備えている。
【0085】
4つのプロセスモジュール100a,100b,101a,101bは、ウエハWに対して同じ内容の処理を行うこともできるし、あるいはそれぞれ異なる内容の処理を行うこともできる。本実施の形態では、プロセスモジュール100a,100bでは、プラズマ処理装置100(図1)によってウエハW上のシリコンのトレンチの内壁面をプラズマ窒化処理してライナーSiN膜209を形成する。プロセスモジュール101a,101bでは、プラズマ処理装置101(図5)によってプラズマ窒化処理により形成されたライナーSiN膜209をさらにプラズマ酸化処理する。
【0086】
真空引き可能に構成された真空側搬送室103には、プロセスモジュール100a,100b,101a,101bやロードロック室105a,105bに対してウエハWの受け渡しを行う第1の基板搬送装置としての搬送装置109が設けられている。この搬送装置109は、互いに対向するように配置された一対の搬送アーム部111a,111bを有している。各搬送アーム部111a,111bは同一の回転軸を中心として、屈伸及び旋回可能に構成されている。また、各搬送アーム部111a,111bの先端には、それぞれウエハWを載置して保持するためのフォーク113a,113bが設けられている。搬送装置109は、これらのフォーク113a,113b上にウエハWを載置した状態で、プロセスモジュール100a,100b,101a,101b間、あるいはプロセスモジュール100a,100b,101a,101bとロードロック室105a,105bとの間でウエハWの搬送を行う。
【0087】
ロードロック室105a,105b内には、それぞれウエハWを載置する載置台106a,106bが設けられている。ロードロック室105a,105bは、真空状態と大気開放状態を切り替えられるように構成されている。このロードロック室105a,105bの載置台106a,106bを介して、真空側搬送室103と大気側搬送室119(後述)との間でウエハWの受け渡しが行われる。
【0088】
ローダーユニット107は、ウエハWの搬送を行う第2の基板搬送装置としての搬送装置117が設けられた大気側搬送室119と、この大気側搬送室119に隣接配備された3つのロードポートLPと、大気側搬送室119の他の側面に隣接配備され、ウエハWの位置測定を行なう位置測定装置としてのオリエンタ121とを有している。
【0089】
大気側搬送室119は、例えば窒素ガスや清浄空気をダウンフローさせる循環設備(図示省略)を備え、クリーンな環境が維持されている。大気側搬送室119は、平面視矩形をなしており、その長手方向に沿ってガイドレール123が設けられている。このガイドレール123に搬送装置117がスライド移動可能に支持されている。つまり、搬送装置117は図示しない駆動機構により、ガイドレール123に沿ってX方向へ移動可能に構成されている。この搬送装置117は、上下2段に配置された一対の搬送アーム部125a,125bを有している。各搬送アーム部125a,125bは屈伸及び旋回可能に構成されている。各搬送アーム部125a,125bの先端には、それぞれウエハWを載置して保持する保持部材としてのフォーク127a,127bが設けられている。搬送装置117は、これらのフォーク127a,127b上にウエハWを載置した状態で、ロードポートLPのウエハカセットCRと、ロードロック室105a,105bと、オリエンタ121との間でウエハWの搬送を行う。
【0090】
ロードポートLPは、ウエハカセットCRを載置できるようになっている。ウエハカセットCRは、複数枚のウエハWを同じ間隔で多段に載置して収容できるように構成されている。
【0091】
オリエンタ121は、図示しない駆動モータによって回転される回転板133と、この回転板133の外周位置に設けられ、ウエハWの周縁部を検出するための光学センサ135とを備えている。
【0092】
<ウエハ処理の手順>
基板処理システム200においては、以下の手順でウエハWに対するプラズマ窒化処理、およびプラズマ酸化処理が行われる。まず、大気側搬送室119の搬送装置117のフォーク127a,127bのいずれかを用い、ロードポートLPのウエハカセットCRより1枚のウエハWが取り出され、オリエンタ121で位置合わせした後、ロードロック室105a(または105b)に搬入される。ウエハWが載置台106a(または106b)に載置された状態のロードロック室105a(または105b)では、ゲートバルブG3が閉じられ、内部が真空状態に減圧排気される。その後、ゲートバルブG2が開放され、真空側搬送室103内の搬送装置109のフォーク113a,113bによってウエハWがロードロック室105a(または105b)から運び出される。
【0093】
搬送装置109によりロードロック室105a(または105b)から運び出されたウエハWは、まず、プロセスモジュール100a,100bのいずれかに搬入され、ゲートバルブG1を閉じた後でウエハWに対してプラズマ窒化処理が行われる。
【0094】
次いで、前記ゲートバルブG1が開放され、ライナーSiN膜209が形成されたウエハWが搬送装置109によりプロセスモジュール100a(または100b)から真空状態のままプロセスモジュール101a,101bのいずれか片方に搬入される。そして、ゲートバルブG1を閉じた後でウエハWに対してプラズマ酸化処理が行われ、ライナーSiN膜209がライナーSiON膜211に改質される。
【0095】
次いで、前記ゲートバルブG1が開放され、ライナーSiON膜211が形成されたウエハWが搬送装置109によりプロセスモジュール101a(または101b)から真空状態のまま搬出され、ロードロック室105a(または105b)に搬入される。そして、前記とは逆の手順でロードポートLPのウエハカセットCRに処理済みのウエハWが収納され、基板処理システム200における1枚のウエハWに対する処理が完了する。なお、基板処理システム200における各処理装置の配置は、効率的に処理を行うことができる配置であれば、いかなる配置構成でもよい。さらに、基板処理システム200におけるプロセスモジュールの数は4つに限らず、5つ以上であってもよい。
【0096】
本実施の形態のプラズマ処理方法によれば、短時間のプラズマ処理で、トレンチの幅や深さをほとんど変化させずに、高温での熱酸化処理の際に酸素の拡散に対してバリア膜として機能する厚さ1〜10nmの範囲内のライナーSiON膜211を形成できる。従って、各種半導体装置の製造プロセスにおいて、STIによる素子分離を行う際に本実施の形態のプラズマ処理方法を適用することにより、微細化への対応を可能にしつつ、半導体装置の信頼性を高めることができる。
【0097】
本実施の形態における他の構成及び効果は、第1の実施の形態と同様である。
【0098】
[実験例]
次に、本発明の効果を確認した実験データについて説明する。
実験1:
シリコン基板に対し、以下のA〜Dの処理を行って、SiN膜、SiON膜又はSiO膜を形成した後、700℃、750℃、800℃又は850℃で、それぞれ30分間の熱酸化処理(以下、「高温熱酸化処理」と記すことがある)を行った。高温熱酸化処理後の各膜の膜厚の増膜量を測定し、酸素の拡散に対するバリア膜としての有効性を評価した。
【0099】
[処理A;熱酸化処理によるSiO膜の形成]
下記の条件で熱酸化処理を実施し、SiO膜aを形成した。
<熱酸化処理条件>
処理温度;800℃
処理時間;1800秒
膜厚(SiO);約6nm
【0100】
[処理B;熱酸化処理+プラズマ窒化処理によるSiON膜の形成]
処理Aと同様の条件で熱酸化処理を行った後、さらに下記の条件でプラズマ窒化処理を実施し、SiON膜bを形成した。
<プラズマ窒化処理条件>
Arガス流量;350mL/min(sccm)
ガス流量;250mL/min(sccm)
処理圧力;26Pa
載置台の温度;500℃
マイクロ波パワー;2400W(パワー密度;1.23W/cm
処理時間;240秒
膜厚(SiON);約6nm
【0101】
[処理C;プラズマ窒化処理によるSiN膜の形成]
下記の条件でプラズマ窒化処理を実施し、SiN膜cを形成した。
<プラズマ窒化処理条件>
Arガス流量;350mL/min(sccm)
ガス流量;250mL/min(sccm)
処理圧力;26Pa
載置台の温度;500℃
マイクロ波パワー;2400W(パワー密度;1.23W/cm
処理時間;240秒
膜厚(SiN);約4nm
【0102】
[処理D;プラズマ窒化処理+プラズマ酸化処理によるSiON膜の形成]
処理Cと同様の条件でプラズマ窒化処理を行った後、さらに下記の条件でプラズマ酸化処理を実施し、SiON膜dを形成した。
【0103】
<プラズマ酸化処理条件>
Arガス流量;990mL/min(sccm)
ガス流量;10mL/min(sccm)
処理圧力;133Pa
載置台の温度;500℃
マイクロ波パワー;4000W(パワー密度;2.04W/cm
処理時間;30秒
膜厚(SiON);約4nm
【0104】
実験結果を図8に示した。図8の縦軸は、高温熱酸化処理後の増膜量(=高温熱酸化処理後の膜厚−高温熱酸化処理前の膜厚)を示し、横軸は高温熱酸化処理の温度を示している。この図8より、処理AによるSiO膜aの場合は、高温熱酸化処理の温度が上昇するにつれて、増膜量が著しく増大していた。高温熱酸化処理における温度上昇に伴う増膜の傾向は、処理B(熱酸化処理後のプラズマ窒化処理)により形成したSiON膜bについても観察された。一方、処理C(プラズマ窒化処理)によるSiN膜c、処理D(プラズマ窒化処理後のプラズマ酸化処理)によるSiON膜dでは、高温熱酸化処理による増膜は全く観察されなかった。
【0105】
実験2:
シリコン基板に対し、以下の条件で、処理時間を変えてプラズマ窒化処理を行い、SiN膜を形成した後、700℃、750℃、800℃又は850℃で、それぞれ30分間の高温熱酸化処理を行った。高温熱酸化処理後の各膜の膜厚の増膜量を測定し、酸素の拡散に対するバリア膜としての有効性を評価した。
【0106】
<プラズマ窒化処理条件>
Arガス流量;350mL/min(sccm)
ガス流量;250mL/min(sccm)
処理圧力;26Pa
載置台の温度;500℃
マイクロ波パワー;2400W(パワー密度;1.23W/cm
処理時間;90秒、160秒、及び240秒
【0107】
図9に、処理時間(横軸)とSiN膜の膜厚(縦軸)との関係を示した。また、図10に、処理時間別の増膜量を示した。図10の縦軸は、高温熱酸化処理後の増膜量(=高温熱酸化処理後の膜厚−高温熱酸化処理前の膜厚)を示し、横軸は高温熱酸化処理の温度を示している。図9及び図10から、処理時間が長くなるに伴い、SiN膜の膜厚は増加していったが、高温熱酸化処理による増膜量は逆に減少していた。この結果から、例えば4nm程度の膜厚でライナーSiN膜を形成する場合には、上記プラズマ窒化処理条件において処理時間を90秒以上240秒以下の範囲内とすることが好ましく、160秒以上240秒以下の範囲内とすることがより好ましいと考えられた。
【0108】
実験3:
シリコン基板に対し、以下の条件で、処理圧力を変えてプラズマ窒化処理を行い、SiN膜を形成した後、850℃で、それぞれ30分間の高温熱酸化処理を行った。高温熱酸化処理後の各膜の膜厚の増膜量を測定し、酸素の拡散に対するバリア膜としての有効性を評価した。
【0109】
<プラズマ窒化処理条件>
Arガス流量;350mL/min(sccm)
ガス流量;250mL/min(sccm)
処理圧力;26Pa、667Pa、1066Pa
載置台の温度;500℃
マイクロ波パワー;2400W(パワー密度;1.23W/cm
処理時間;240秒
【0110】
図11に処理圧力別の増膜量を示した。図11の縦軸は、高温熱酸化処理後の増膜量(=高温熱酸化処理後の膜厚−高温熱酸化処理前の膜厚)を示し、横軸は処理圧力を示している。図11から、処理圧力が大きくなるに伴い、高温熱酸化処理による増膜量が大きくなっていた。従って、プラズマ窒化処理の処理圧力は、低いほど好ましいことが確認された。例えば、増膜量を20nm以下に抑えるには、上記プラズマ窒化処理条件において処理圧力を187Pa以下とすることが好ましく、1.3Pa以上187Pa以下の範囲内とすることがより好ましく、1.3Pa以上40Pa以下の範囲内とすることが最も好ましいと考えられた。
【0111】
実験4:
実験1の処理C及び処理Dで得られたSiN膜c及びSiON膜dについて、X線光電子分光(XPS)分析を行った。XPS分析によって測定したSiN膜c及びSiON膜dの化学組成プロファイルを重ねて図12に示した。図12の縦軸は、窒素濃度及び酸素濃度(いずれも原子%)を示し、横軸は、膜表面(0nm)からの深さを示している。SiN膜cでは、窒素が膜厚方向にほぼ均等に分布していたが、SiON膜dでは、窒素のピークがSiとの界面付近にシフトしていることが確認された。処理DによるSiON膜dでは、界面付近に窒素のピークが存在することで、高温熱酸化処理の際に、酸素がSi界面へ向けて拡散していく途中で窒素濃度の高い領域でブロックされ、Siとの結合が妨げられる結果、優れたバリア性が得られるものと推測された。
【0112】
以上の実験結果から、本発明の第1の実施の形態に相当するプラズマ窒化処理を実施した処理C、及び第2の実施の形態に相当する、プラズマ窒化処理とプラズマ酸化処理を実施した処理Dでは、SiN膜c及びSiON膜dが、いずれも優れたバリア膜として機能し、高温熱酸化処理における酸素の拡散を効果的に防止できることが確認された。このような酸素の拡散に対するバリア機能は、単なる膜組成の違い(SiONかSiNか)ではないことが、処理Bとの比較により理解される。
【0113】
[STIプロセスへの適用例]
次に、本発明に係るプラズマ処理方法を利用して、STIプロセスによる素子分離構造を形成する手順について、一例を挙げて説明する。図13〜図18は、STIプロセスの主要な工程を示すウエハ表面付近の断面図である。
【0114】
まず、図13に示すように、シリコン(シリコン層又はシリコン基板)201と、SiO膜203、SiN膜205がこの順番に積層形成されたウエハWを準備する。次に、SiN膜205の上にフォトレジスト層PRを設ける。そして、図示は省略するが、トレンチを形成しようとする領域上のSiN205が露出するように、フォトリソグラフィー技術によってフォトレジスト層PRをパターニングする。さらに、パターニングされたフォトレジスト層PRをマスクとして、図14に示すように、シリコン201表面が露出するまでSiN膜205及びSiO膜203を順次ドライエッチングする。
【0115】
次に、フォトレジスト層PRを除去した後、SiN膜205をマスクとして露出しているシリコン201の表面をドライエッチングし、図15に示すようにトレンチ207を形成する。
【0116】
次に、トレンチ207の内壁面207aに、第1の実施の形態で説明した方法により、プラズマ窒化処理を施し、図16に示すように、ライナーSiN膜209を形成する。なお、第2の実施の形態で説明した方法により、プラズマ窒化処理後にプラズマ酸化処理を行って、ライナーSiON膜211を形成してもよい。ライナーSiN膜209(又はライナーSiON膜211)の膜厚は、例えば1〜10nmの範囲内が好ましく、2〜5nmの範囲内がより好ましい。
【0117】
次に、図17に示すように、ライナーSiN膜209(又はライナーSiON膜211)の上から、トレンチ207が充填されるように埋め込み絶縁膜213を形成する。埋め込み絶縁膜213は、典型的には、高温での熱酸化により形成されるSiO膜である。これ以降の工程で、ライナーSiN膜209(又はライナーSiON膜211)は、埋め込み絶縁膜213から酸素がシリコン201の内部へ浸入することを防止するバリア膜として機能する。
【0118】
次に、図示は省略するが、SiN膜205が露出するまで、CMPを行い、埋め込み絶縁膜213の上部を平坦化する。さらに、ウェットエッチングにより、SiN膜205、SiO膜203、及び埋め込み絶縁膜213の上部を除去して、図18に示すように、目的とする素子分離構造を形成する。このように形成された素子分離構造では、ライナーSiN膜209(又はライナーSiON膜211)が酸素の拡散に対するバリア膜となるため、トレンチ207の周囲のシリコンが酸化されることが抑制される。その結果、埋め込み絶縁膜213の増膜が抑えられ、微細設計への対応を可能としつつ、素子分離構造の信頼性を高め、さらに、半導体装置の信頼性を向上させることができる。
【0119】
以上、本発明の実施の形態を述べたが、本発明は上記実施の形態に制約されることはなく、種々の変形が可能である。例えば、上記実施の形態では、プラズマ窒化処理及びプラズマ酸化処理にRLSA方式のマイクロ波プラズマ処理装置を用いたが、例えばICPプラズマ方式、ECRプラズマ方式、表面反射波プラズマ方式、マグネトロンプラズマ方式等の他の方式のプラズマ処理装置を用いることができる。
【0120】
また、被処理体である基板としては、半導体ウエハに限るものではなく、トレンチが形成されたシリコン層を有する基板であればよい。例えばフラットパネルディスプレイ用基板や太陽電池用基板などを処理対象とすることも可能である。
【符号の説明】
【0121】
1…処理容器、2…載置台、3…支持部材、5…ヒータ、12…排気管、15…ガス導入部、16…搬入出口、18…ガス供給装置、19a…不活性ガス供給源、19b…窒素含有ガス供給源、19c…酸素含有ガス供給源、24…真空ポンプ、28…マイクロ波透過板、29…シール部材、31…平面アンテナ、32…マイクロ波放射孔、37…導波管、37a…同軸導波管、37b…矩形導波管、39…マイクロ波発生装置、50…制御部、51…プロセスコントローラ、52…ユーザーインターフェース、53…記憶部、100,101…プラズマ処理装置、200…基板処理システム、201…シリコン、203…酸化珪素膜(SiO膜)、205…窒化珪素膜(SiN膜)、207…トレンチ、207a…内壁面、209…ライナーSiN膜、211…ライナーSiON膜、W…半導体ウエハ(基板)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン上に形成されたトレンチ内に絶縁膜を埋め込み、前記絶縁膜を平坦化して素子分離膜を形成するSTI法による素子分離において、前記トレンチ内への絶縁膜の埋め込みに先立ち、前記トレンチの内壁面のシリコンをプラズマにより窒化処理するプラズマ窒化処理工程を有するプラズマ処理方法であって、
前記プラズマ窒化処理工程は、窒素含有ガスを含む処理ガスのプラズマにより、処理圧力が1.3Pa以上187Pa以下の範囲内、かつ全処理ガスに対する窒素含有ガスの体積流量比率が1%以上80%以下の範囲内の条件で行われ、前記トレンチの内壁面に厚さ1〜10nmの範囲内のシリコン窒化膜を形成することを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項2】
前記プラズマ窒化処理工程における処理圧力が1.3Pa以上40Pa以下の範囲内である請求項1に記載のプラズマ処理方法。
【請求項3】
前記プラズマ窒化処理工程の後に、さらに、前記シリコン窒化膜を、酸素含有ガスを含む処理ガスのプラズマにより酸化し、シリコン酸窒化膜に改質するプラズマ酸化処理工程を有する請求項1又は2に記載のプラズマ処理方法。
【請求項4】
前記プラズマ酸化処理工程における処理圧力が1.3Pa以上1000Pa以下の範囲内であり、全処理ガスに対する酸素含有ガスの体積流量比率が1%以上80%以下の範囲内である請求項3に記載のプラズマ処理方法。
【請求項5】
前記プラズマ窒化処理工程及び前記プラズマ酸化処理工程は、複数の孔を有する平面アンテナにより処理容器内にマイクロ波を導入してプラズマを生成させるプラズマ処理装置により行われる請求項3又は4に記載のプラズマ処理方法。
【請求項6】
シリコンにトレンチを形成する工程と、前記トレンチ内に絶縁膜を埋め込む工程と、前記絶縁膜を平坦化して素子分離膜を形成する工程と、を備えた素子分離方法において、
前記トレンチ内に絶縁膜を埋め込む工程に先立ち、窒素含有ガスを含む処理ガスのプラズマにより、処理圧力が1.3Pa以上187Pa以下の範囲内、かつ全処理ガスに対する窒素含有ガスの体積流量比率が1%以上80%以下の範囲内の条件で、前記トレンチの内壁面を窒化処理し、厚さ1〜10nmの範囲内のシリコン窒化膜を形成するプラズマ窒化処理工程を有することを特徴とする素子分離方法。
【請求項7】
前記プラズマ窒化処理工程の後に、さらに、前記シリコン窒化膜を、酸素含有ガスを含む処理ガスのプラズマにより酸化し、シリコン酸窒化膜に改質するプラズマ酸化処理工程を有する請求項6に記載の素子分離方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−216632(P2012−216632A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−80076(P2011−80076)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】