説明

プラズマ処理方法及びプラズマ処理装置

【課題】レジスト膜をマスクとした反射防止膜のエッチング工程の前に、良好にレジスト膜を改質する。
【解決手段】プラズマ処理方法は、被エッチング層上に反射防止膜であるSi−ARC15が形成され、反射防止膜上にパターン化されたArFレジスト膜16が形成された積層膜に対して、エッチングガスから生成されたプラズマにより前記レジスト膜をマスクとして前記反射防止膜をエッチングするエッチング工程と、前記エッチング工程の前に実行され、プラズマ処理装置内にCFガスとCOSガスとArガスとを含む改質用ガスを導入し、該改質用ガスから生成されたプラズマによりArFレジスト膜16を改質する改質工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レジスト膜を用いて被エッチング層をプラズマ処理するプラズマ処理方法及びプラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体の製造工程のうち所望のパターンを形成するマスク工程では、被エッチング層上に感光膜をコーティングした後、露光及び現像によってパターニングが行われる。その際、露光における反射を防止するために、被エッチング層上であって感光膜の下に反射防止膜ARC(Anti Reflection Coating Layer)が形成されている。たとえば、特許文献1には、被エッチング層(有機膜、シリコン酸窒化膜(SiON膜))上の反射防止膜を用いて反射を抑えながらArFレジスト膜の所望のパターンにエッチングする際、高エッチングレートかつ高選択比でエッチングが可能なエッチング方法が開示されている。
【0003】
しかしながら、ArFレジスト膜をマスクとしたエッチング工程では、ArFレジスト膜のプラズマ耐性が低いため、レジスト膜の減少量が多く、レジスト膜の残膜が少なくなるという問題が生じていた。また、パターンのライン幅にバラツキが生じ、パターンが歪みLWR(Line Width Roughness)が悪化するという問題が生じていた。
【0004】
これに対して、特許文献2には、ArFレジスト膜をマスクとして反射防止膜をエッチングする工程の前工程にて、Hガスを含むガスをプラズマ化し、レジスト膜をプラズマ処理(ハードニング処理)することにより、レジスト膜にHイオンを注入してレジスト膜の耐エッチング性を高める方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−180358号公報
【特許文献2】特開2004−163451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ハードニングステップにHガスを使うと、処理容器内のオープンエリア(大きな穴等)にシリコンが堆積されて残渣が生じ、その後のエッチング処理によくない影響を与えていた。
【0007】
上記課題に対して、本発明の目的とするところは、レジスト膜をマスクとした反射防止膜のエッチング工程の前に、良好にレジスト膜を改質する工程を実行するプラズマ処理方法及びプラズマ処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、被エッチング層上に反射防止膜が形成され、前記反射防止膜上にパターン化されたレジスト膜が形成された積層膜に対して、エッチングガスから生成されたプラズマにより前記レジスト膜をマスクとして前記反射防止膜をエッチングするエッチング工程と、前記エッチング工程の前に実行され、プラズマ処理装置内にCFガスとCOSガスと不活性ガスとを含む改質用ガスを導入し、該改質用ガスから生成されたプラズマにより前記レジスト膜を改質する改質工程と、を含むことを特徴とするプラズマ処理方法が提供される。
【0009】
これによれば、レジスト膜をマスクとして反射防止膜をエッチングするエッチング工程の前に、CFガスとCOSガスと不活性ガスとを含む改質用ガスから生成されたプラズマにより前記レジスト膜を改質する改質工程が実行される。発明者の実験及び研究の結果、COSガスをベースとした改質ガスをプラズマ化し、レジスト膜をプラズマ処理(ハードニング処理)したほうが、Hガスをベースとした改質ガスを用いてレジスト膜を改質するより、レジスト膜の残膜を改善できることがわかった。よって、本発明によれば、レジスト膜の残膜を改善した状態でレジスト膜をマスクとして反射防止膜をエッチングすることにより、被エッチング層に精密なパターンを形成することができる。
【0010】
前記エッチング工程では、前記エッチングガスからプラズマを生成するために、プラズマ処理装置内に設けられた第1の電極に高周波電力を印加し、前記改質工程では、前記改質用ガスからプラズマを生成するために、前記プラズマ処理装置内に設けられた第1の電極に高周波電力を印加するとともに、前記プラズマ処理装置内に設けられた第2の電極に負の直流電圧を印加してもよい。
【0011】
前記プラズマ処理装置は、処理容器と、前記処理容器内に設けられ、前記積層膜を積層させた基板の載置台として機能する前記第1の電極としての下部電極と、前記処理容器内に設けられ、前記下部電極に対向するように配置された、前記第2の電極としての上部電極と、を有してもよい。
【0012】
前記改質用ガスに含まれるCFガスとCOSガスとの流量の割合(CF/COS)は、4/3≦(CF/COS)≦4であってもよい。
【0013】
前記改質用ガスに含まれるCFガスとCOSガスとの流量の割合(CF/COS)は、2≦(CF/COS)≦3であってもよい。
【0014】
前記レジスト膜は、ArF露光用のレジスト膜又はEUV露光用のレジスト膜のいずれかであってもよい。
【0015】
前記上部電極に印加する負の直流電圧の値は、0Vより小さく、−900V以上であってもよい。
【0016】
前記改質用ガスに含まれる不活性ガスは、アルゴンガスであってもよい。
【0017】
前記反射防止膜は、シリコンを含有してもよい。
【0018】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、被エッチング層上に反射防止膜が形成され、前記反射防止膜上にパターン化されたレジスト膜が形成された積層膜をエッチングするプラズマ処理装置であって、処理容器と、前記処理容器内に設けられ、前記積層膜を積層させた基板の載置台として機能する下部電極と、前記処理容器内に設けられ、前記下部電極に対向するように配置された上部電極と、前記下部電極に高周波電力を印加する高周波電源と、前記上部電極に負の直流電圧を印加する可変直流電源と、前記レジスト膜をマスクとして前記反射防止膜をエッチングする前に、前記処理容器内にCFガスとCOSガスと不活性ガスとを含む改質用ガスを導入するガス供給源と、を備え、前記高周波電力により前記改質用ガスからプラズマを生成し、前記負の直流電圧と前記生成されたプラズマとにより前記レジスト膜を改質することを特徴とするプラズマ処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように本発明によれば、レジスト膜をマスクとした反射防止膜のエッチング工程の前に、レジスト膜を改質する工程を実行することにより、被エッチング層に精密なパターンを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1及び第2実施形態に係るプラズマ処理装置の概略断面図である。
【図2】図1のプラズマ処理装置をより詳細に示した断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係るハードニング工程及びエッチング工程図である。
【図4】第1実施形態のハードニング工程の実行及び直流電圧の印加に対するレジスト膜の状態を説明するためグラフ及び表である。
【図5】第1実施形態のハードニング工程の効果を説明するための図である。
【図6】第1実施形態のハードニング工程におけるCOS流量制御を説明するための図である。
【図7】第1実施形態のハードニング工程におけるCF流量制御を説明するための図である。
【図8】第1実施形態のハードニング工程の効果を説明するための他の図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係るハードニング工程及びエッチング工程図である。
【図10】第2実施形態のハードニング工程の効果を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の各実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0022】
まず、後述する第1及び第2実施形態に係るプラズマ処理方法を実施可能なプラズマ処理装置の全体構成について、図1及び図2を参照しながら説明する。図1は、本発明の第1及び第2実施形態に係るプラズマ処理装置の概略断面図である。図2は、図1のプラズマ処理装置をより詳細に示した断面図である。
【0023】
プラズマ処理装置10は、例えば表面が陽極酸化処理されたアルミニウムからなる略円筒状のチャンバ(処理容器100)を有している。処理容器100は接地されている。プラズマ処理装置10は、処理容器100の内部にて下部電極であるサセプタ20と上部電極25とが対向配置された、下部RF2周波印加タイプの容量結合型平行平板プラズマエッチング装置である。プラズマ処理装置10には、サセプタ20に第1の高周波電源200からプラズマ生成用の27MHz以上の周波数、例えば40MHzの高周波(RF)電力が印加されるとともに、第2の高周波電源210からイオン引き込み用(バイアス用)の13.56MHz以下の周波数、例えば2MHzの高周波電力が印加される。さらに、プラズマ処理装置10には、上部電極25に接続された可変直流電源220から所定の直流(DC)電圧が印加される。
【0024】
図2を参照しながら更に詳しく説明する。処理容器100の底部には、セラミックス等からなる絶縁板22を介して円柱状のサセプタ支持台24が配置され、このサセプタ支持台24の上に例えばアルミニウムからなるサセプタ20が設けられている。前述したとおりサセプタ20は下部電極を構成し、その上に被処理基板である半導体ウエハWが載置される。
【0025】
サセプタ20の上面には、半導体ウエハWを静電力で吸着保持する静電チャック26が設けられている。この静電チャック26は、導電膜からなる電極28を一対の絶縁層または絶縁シートで挟んだ構造を有するものであり、電極28には直流電源30が電気的に接続されていて、直流電源30からの直流電圧により生じたクーロン力等の静電力により半導体ウエハWが静電チャック26に吸着保持される。
【0026】
半導体ウエハWの周囲でサセプタ20の上面には、エッチングの均一性を向上させるための、例えばシリコンからなる導電性のフォーカスリング32が配置されている。サセプタ20およびサセプタ支持台24の側面には、例えば石英からなる円筒状の内壁部材34が設けられている。
【0027】
サセプタ支持台24の内部には、例えば円周上に冷媒室36が設けられていて、冷媒室36には、装置外部に設けられたチラーユニット(図示せず)より配管36a,36bを介して所定温度の冷媒が循環供給され、これによりサセプタ上の半導体ウエハWの処理温度が制御される。静電チャック26の上面と半導体ウエハWの裏面との間には、伝熱ガスとして、例えばHeガスがガス供給ライン38を介して供給される。
【0028】
上部電極25及び下部電極であるサセプタ20間はプラズマ励起空間となる。上部電極25は、絶縁性遮蔽部材40を介して処理容器100の上部に支持されている。上部電極25は、多数の吐出孔42aを有する電極板42と、電極板42を着脱自在に支持し、導電性材料、例えば表面が陽極酸化処理されたアルミニウムからなる電極支持体44とを有している。電極板42は、ジュール熱の少ない低抵抗の導電体または半導体が好ましく、シリコンやSiCで構成されるのが好ましい。電極支持体44の内部には、ガス拡散室46が設けられ、このガス拡散室46からはガス吐出孔42aに連通する多数のガス通流孔48が下方に延びている。かかる構成により、上部電極25は所望のガスを供給するためのシャワーヘッドとして機能する。
【0029】
電極支持体44にはガス拡散室46へ処理ガスを導くガス導入口50が形成されている。ガス導入口50にはガス供給管52が接続されている。ガス供給管52には、開閉バルブ54及びマスフローコントローラ(MFC)56を介してガス供給源58が接続されている。
【0030】
エッチング工程では、ガス供給源58からはエッチングガスとして、F系ガスを含む混合ガスが供給され、ガス供給管52からガス拡散室46に至り、ガス通流孔48およびガス吐出孔42aを介してシャワー状にプラズマ励起空間に導入される。
【0031】
エッチング工程前に実行されるレジスト膜の改質工程では、ガス供給源58からは、改質用ガスとして、例えばCFガスとCOSガスとアルゴンガスが供給される。なお、改質用ガスに含まれるアルゴンガスは一例であり、不活性ガスであれば他のガスを使用してもよい。
【0032】
上部電極25には、ローパスフィルタ(LPF)60を介して可変直流電源220が電気的に接続されている。可変直流電源220はバイポーラ電源であってもよい。この可変直流電源220は、オン・オフスイッチ62により給電のオン・オフが可能となっている。可変直流電源220の極性および電流・電圧ならびにオン・オフスイッチ62のオン・オフは制御装置64により制御される。ローパスフィルタ(LPF)60は、後述する第1および第2の高周波電源からの高周波をトラップするためのものであり、好適にはLRフィルタまたはLCフィルタで構成される。
【0033】
処理容器100の側壁から上部電極25の高さ位置よりも上方に延びるように円筒状の接地導体100aが設けられている。この円筒状接地導体100aは、その上部に天壁を有している。
【0034】
サセプタ20には、整合器70を介してプラズマ励起用の高周波電力を出力する第1の高周波電源200が電気的に接続されている。サセプタ20には、また、整合器72を介してバイアス用の高周波電力を出力する第2の高周波電源210が接続されている。
【0035】
整合器70、72は、それぞれ第1および第2の高周波電源200、210の内部(または出力)インピーダンスに負荷インピーダンスを整合させるためのもので、処理容器100内にプラズマが生成されている時に第1および第2の高周波電源200、210の内部インピーダンスと負荷インピーダンスが見かけ上一致するように機能する。
【0036】
処理容器100の底部には排気口80が設けられ、この排気口80に排気管82を介して排気装置84が接続されている。排気装置84は、ターボ分子ポンプなどの真空ポンプを有しており、処理容器100内を所望の真空度まで減圧可能となっている。
【0037】
処理容器100の側壁には半導体ウエハWの搬入出口86が設けられており、この搬入出口86はゲートバルブ88により開閉可能となっている。また、処理容器100の内壁に沿って、処理容器100にエッチング副生物(デポ)が付着することを防止するためのデポシールド90が着脱自在に設けられている。すなわち、デポシールド90はチャンバ壁を構成している。また、デポシールド90は、内壁部材34の外周にも設けられている。処理容器100の底部のチャンバ壁側のデポシールド90と内壁部材34側のデポシールド90との間には排気プレート92が設けられている。デポシールド90および排気プレート92としては、アルミニウム材にY等のセラミックスを被覆したものを好適に用いることができる。デポシールド90のチャンバ内壁を構成する部分のウエハWとほぼ同じ高さ部分には、グラウンドにDC的に接続された導電性部材(GNDブロック)94が設けられており、これにより異常放電を防止する。
【0038】
制御装置64は、プラズマ処理装置10で実行される各種処理を実現するための制御プログラムや、処理条件に応じてプラズマ処理装置10の各構成部に処理を実行させるためのプログラムとしてのレシピに従いプラズマ処理装置10にプラズマ処理を実行させる。レシピは、図示しないハードディスクや半導体メモリに記憶されていてもよいし、CDROM、DVD等の可搬性のコンピュータにより読み取り可能な記憶媒体に収容されていてもよい。
【0039】
かかる構成のプラズマ処理装置10において改質工程及びエッチング工程を行う際には、まず、ゲートバルブ88を開状態とし、搬入出口86を介してエッチング対象である半導体ウエハWを処理容器100内に搬入し、サセプタ20上に載置する。そして、ガス供給源58から改質用のガス又はエッチング用のガスを所定の流量でガス拡散室46へ供給し、ガス通流孔48およびガス吐出孔42aを介して処理容器100内へ供給しつつ、排気装置84により処理容器100内を排気し、処理容器内の圧力をレシピの設定値に制御する。
【0040】
処理容器100内に改質用ガス又はエッチングガスを導入した状態で、サセプタ20に、第1の高周波電源200からプラズマ励起用の高周波電力を印加する。また、適宜、第2の高周波電源210よりイオン引き込み用の高周波電力を印加する。そして、可変直流電源220から所定の負の直流電圧を上部電極25に印加する。さらに、直流電源30から直流電圧を静電チャック26の電極28に印加して、半導体ウエハWをサセプタ20に固定する。
【0041】
上部電極25の電極板42に形成されたガス吐出孔42aから吐出されたガスは、高周波電力により生じた上部電極25と下部電極(サセプタ20)間のグロー放電中でプラズマ化し、このプラズマで生成されるラジカルやイオンによって半導体ウエハWの被処理面が改質又はエッチングされる。
【0042】
なお、下部電極であるサセプタ20は、プラズマを生成するために、プラズマ処理装置内に設けられた第1の電極に相当する。エッチング工程では、エッチングガスからプラズマを励起するために第1の電極にプラズマ励起用の高周波電力が印加される。また、上部電極25は、プラズマ処理装置内に設けられた第2の電極に相当する。改質工程では、改質用ガスからプラズマを励起するために第1の電極に高周波電力が印加されるとともに、前記プラズマ処理装置内に設けられた第2の電極に負の直流電圧が印加される。
【0043】
<第1実施形態>
次に、以上に説明したプラズマ処理装置10にて実行される、本発明の第1実施形態に係るプラズマ処理方法について説明する。第1実施形態に係るプラズマ処理方法は、ArFレジスト膜をマスクとしたSi−ARC膜のエッチングに適用可能である。図3は、本実施形態に係るレジスト膜の改質方法及び被エッチング層のエッチング方法を説明するための積層膜の断面図である。
【0044】
(パターニング)
図3(1)に示したように、半導体ウエハWのシリコン含有基板(Si−Sub11)上には、熱酸化膜単層(Th−Ox12)、シリコン窒化膜(SiN膜13)が形成されている。その直上には被エッチング層である有機膜14上が形成され、その上にはシリコン含有無機反射膜(Si−ARC膜15)が形成されている。Si−ARC膜15は、感光膜の露光工程時における反射を防止するためのものである。なお、有機膜14及びSiN膜13は被エッチング層の一例であり、被エッチング層はこれに限られず、例えば絶縁膜又は導電膜であってもよい。被エッチング層は、シリコン基板(Si−Sub11)であってもよい。
【0045】
Si−ARC膜15上にはArFレジスト膜16(ArF PR)が形成されている。ArFレジスト膜16は、Si−ARC膜15上にArFリソグラフィーを使用して形成される。具体的には、Si−ARC膜15上に感光剤を塗布し、焼き付けたいパターンを書き込んだマスクと呼ばれる遮光材を通じて、波長193nmのArFレーザ光線を照射し露光する。露光後、感光部分を化学的に腐食(エッチング)させることにより、ArFレジスト膜16に所望のパターンを形成する。このようにして、ArFレーザを露光光源とするArFリソグラフィーを使って短波長化を進めることにより、回路の微細化が達成される。
【0046】
(ハードニング:改質工程)
図3(2)のハードニング(改質工程)は、硫化カルボニルガス(COSガス)を含んだ改質ガスによりArFレジスト膜16を改質し硬化させる。具体的には、ハードニング工程は、エッチング工程の前に実行され、プラズマ処理装置内に四フッ化メタン(CF)ガスと硫化カルボニルガス(COSガス)とアルゴン(Ar)ガスとからなる改質用ガスを導入し、改質用ガスから励起されたプラズマによりArFレジスト膜16を改質する。
【0047】
ArFレジスト膜16はプラズマ耐性が低いため、従来から、ArFレジスト膜16をマスクとして反射防止膜をエッチングする工程の前工程として、Hガスを含むガスをプラズマ化し、ArFレジスト膜16をプラズマ処理することにより、ArFレジスト膜16にHイオンを注入してArFレジスト膜16の耐エッチング性を高めるハードニング工程が提案されていた。
【0048】
しかしながら、ArFレジスト膜16のハードニング工程にHガスを使うと、処理容器内のオープンエリア(大きな穴等)にシリコンが堆積されて残渣となり、堆積された残渣が、その後のエッチング処理によくない影響を与えていた。
【0049】
発明者の実験及び研究の結果、COSガスをベースとした改質ガスに基づきArFレジスト膜16をプラズマ処理した場合、Hガスをベースとした改質ガスに基づきArFレジスト膜16をプラズマ処理する場合に比べて、残渣が生じず、かつArFレジスト膜16の減少量が少ないことがわかった。これは、ハードニング工程中、COS+CF→CO+SO+SF+CSの化学反応によりArFレジスト膜16の表面がCSに改質されたためである。
【0050】
さらに、ハードニングステップの際、処理容器100に設けられた上部電極25に可変直流電源220から出力された負の直流電圧(DCS)を印加することにより、印加しない場合よりArFレジスト膜16の表面に形成される改質の膜を厚くすることができる。その結果、ArFレジスト膜16の残膜及びLWRの両方を改善できることがわかった。さらに、CD(Critical Dimension)を適正値に維持する効果もあった。以上のCOSガスの導入及び直流電圧の印加によるArFレジスト膜16の改質については、後ほどさらに詳しく説明する。また、後述するプロセス条件のうち、可変直流電源220から供給される直流電圧は絶対値で示されるが、実際は負の値を印加する。
【0051】
(Si−ARC膜のエッチング工程)
図3(3)のSi−ARC膜15のエッチング工程では、四フッ化メタン(CF)ガスと酸素(O)ガスを含む混合ガスをエッチングガスとしてSi−ARC膜15をエッチングする。このとき、ArFレジスト膜16はマスクとして機能する。エッチングの結果、Si−ARC膜15にはArFレジスト膜16のパターンが転写される。
【0052】
(有機膜のエッチング工程)
図3(4)の有機膜14のエッチング工程では、硫化カルボニルガス(COSガス)と酸素(O)ガスを含む混合ガスをエッチングガスとして有機膜14をエッチングする。このとき、Si−ARC膜15はマスクとして機能する。エッチングの結果、有機膜14にはSi−ARC膜15のパターンが転写される。
【0053】
(SiN膜のエッチング工程)
図3(5)のSiN膜13のエッチング工程では、四フッ化メタン(CF)ガスとトリフルオロメタン(CHF)ガスと酸素(O)ガスとアルゴン(Ar)ガスを含む混合ガスをエッチングガスとしてSiN膜13をエッチングする。このとき、有機膜14はマスクとして機能する。エッチングの結果、SiN膜13には有機膜14のパターンが転写される。
【0054】
(有機膜のアッシング工程)
図3(6)の有機膜14のアッシング工程では、酸素(O)ガスをアッシングガスとして有機膜14をアッシングする。アッシングの結果、半導体ウエハWのシリコン含有基板(Si−Sub11)上には、所望のパターンに微細加工されたSiN膜13が形成される。
【0055】
(COSガスの導入及び直流電圧の印加によるArFレジスト膜の改質)
次に、COSガスの導入及び直流電圧の印加によるArFレジスト膜16の改質について、発明者が行った実験結果に基づき詳細に説明する。
【0056】
発明者は、CFガスとCOSガスとArガスとからなる混合ガスを用いて、ArFレジスト膜16をハードニングした場合、ArFレジスト膜16のER(Etching Rate)とCD(Critical Dimension)を向上させることができることを実験により証明した。その結果を図4(a)(b)に示す。
【0057】
図4(a)は、ArFレジスト膜16のエッチングレートERを示す。(1)で示した左端の一対の棒グラフは、COSガスによるArFレジスト膜16の改質を行っていない場合(Initial)のArFレジスト膜16のERである。(2)で示した中央の一対の棒グラフは、COSガスによるArFレジスト膜16の改質、及び300Vの直流電圧(DCS)を印加した場合のArFレジスト膜16のERである。(3)で示した右端の一対の棒グラフは、COSガスによるArFレジスト膜16の改質、及び900Vの直流電圧(DCS)を印加した場合のArFレジスト膜16のERである。各一対の棒グラフの左側はArFレジスト膜16の中央部のエッチングレート、右側はArFレジスト膜16の端部のエッチングレートである。以下に、上記(1)〜(3)の3つのプロセス条件をさらに詳しく述べる。
【0058】
・(1)におけるArFレジスト膜16のエッチングガス種CF/CHF
(1)では、エッチング工程前のハードニングは行わない。
【0059】
・(2)におけるArFレジスト膜16のハードニング条件:
直流電圧300V、改質ガス種及び流量COS/CF/Ar=20/40/800sccm
(2)では、上記ハードニング条件でArFレジスト膜16を改質した後、(1)と同じエッチング条件でエッチングを行う。
【0060】
・(3)におけるArFレジスト膜16のハードニング条件:
直流電圧900V、改質ガス種及び流量COS/CF/Ar=20/40/800sccm
(3)では、上記ハードニング条件でArFレジスト膜16を改質した後、(1)と同じエッチング条件でエッチングを行う。(2)と(3)のハードニング条件の違いは、直流電圧値のみである。
【0061】
(エッチングレートER)
図4(a)の結果を参照すると、(2)(3)のCOSガスによるArFレジスト膜16の改質を行っている場合は、(1)の改質を行っていない場合に比べて、ArFレジスト膜16のエッチングレートが低下し、プラズマ耐性が向上されていることがわかる。さらに、(3)の改質中に直流電圧900Vを印加した場合は、(2)の改質中に直流電圧300Vを印加した場合に比べて、ArFレジスト膜16のエッチングレートがより低下し、さらにプラズマ耐性が向上されていることがわかる。
【0062】
プラズマ励起中、プラズマ生成空間の上部電極25近傍には主に電子が生成される。このような状況で改質工程において、上部電極25に可変直流電源220から直流電圧を印加すると、印加した直流電圧値とプラズマ電位との電位差により、電子はプラズマ励起空間の鉛直方向へ加速される。ここで、可変直流電源220の極性、電圧値、電流値を所望のものにすることにより、電子は半導体ウエハWに照射される。照射された電子は、COSガスによるArFレジスト膜16の組成をより効果的に改質させる。このため、直流電圧の印加によりArFレジスト膜16の改質はより強化される。つまり、本実施形態では、可変直流電源220の印加電圧値を可変(300V,900V)とし、印加電流値により上部電極25近傍で生成する電子の量と、このような電子のウエハWへの加速電圧を制御することで、ArFレジスト膜16に対するプラズマ耐性をより向上させることができた。これにより、被エッチング層の選択比を向上させることができる。
【0063】
(CD値)
次に、改質効果としてCD(Critical Dimension)について言及する。図4(b)におけるArFレジスト膜16のハードニング条件は、直流電圧300V、改質ガス種及び流量 改質ガス(H又はCOS)/CF/Ar=流量(100、20)/40/800sccmであった。
【0064】
図4(b)の結果を参照すると、ArFレジスト膜16の改質前(Initial)のCD値は「49.85」であった。これに対して、改質ガスにHガスを用い、その流量を100sccmとした場合のCD値は「53.72」であった。一方、本実施形態に係る改質ガスであるCOSガスを用いて、その流量を20sccmとした場合のCD値は「51.72」であった。この結果から、本実施形態に係るCOSガスを使用したプラズマ処理によってArFレジスト膜16を改質した場合、CD値をより適正値に維持することができ、より精密な微細加工が可能となることがわかった。
【0065】
(LWR)
次に、改質効果としてLWR(Line Width Roughness)について言及する。図5は、ArFレジスト膜16をハードニングした場合としない場合において、エッチング後のArFレジスト膜16の残膜とLWRを示した図である。
【0066】
・図5の場合のArFレジスト膜16のハードニング条件:
直流電圧900V、改質ガス種及び流量COS/CF/Ar=20/40/800sccm
・図5の場合のArFレジスト膜16のエッチングガス種CF/O
【0067】
図5(a)は、エッチング前(ハードニング前)のArFレジスト膜16(Initial)の状態を示した図である。この状態におけるArFレジスト膜16の高さは「113nm」であり、LWRは「6.0nm」である。
【0068】
これに対して、図5(b)は、ArFレジスト膜16をハードニング処理せずにSi−ARC膜15をエッチングした後のArFレジスト膜16の状態を示した図である。この状態におけるArFレジスト膜16の残膜の高さは「69nm」であり、LWRは「8.1nm」である。
【0069】
一方、図5(c)は、ArFレジスト膜16をハードニング処理し、改質後にSi−ARC膜15をエッチングした後のArFレジスト膜16の状態を示した図である。ハードニング後の状態におけるArFレジスト膜16の高さは「103nm」であり、LWRは「4.0nm」である。改質されたSi−ARC膜15をエッチングした後のArFレジスト膜16の残膜の高さは「85nm」であり、LWRは「4.0nm」である。
【0070】
以上から、本実施形態にかかるプロセス条件に基づきArFレジスト膜16を改質後、エッチング処理を実行すると、ArFレジスト膜16の残膜が多くなり、かつLWRの値を小さくすることができることがわかった。この結果、次工程であるエッチング工程で被エッチング層に精密なパターンを形成することができる。
【0071】
(COS/CFガス流量比:CFガス固定)
次に、発明者は、COSガスとCFガスの流量比(割合)を制御することにより改質ガスに含まれるFの量を制御できることに着目して、ArFレジスト膜が最も良好に改質されるCOS/CFガスの流量比を実験により求めた。図6は、CFガス及びArガスの流量をそれぞれ40、800sccmと固定した状態で、COSガスの流量を0〜40sccmの範囲で10sccm刻みに可変させた場合の実験結果である有機膜エッチング後のパターン形状を示す。
【0072】
・ArFレジスト膜16のハードニング条件:
直流電圧900V、改質ガス種及び流量COS/CF/Ar=可変(0,10,20,30,40)/40/800sccm
・Si−ARC膜15のエッチングガス種CF/CHF/O
・有機膜14のエッチングガス種O/COS
【0073】
図6の結果を考察すると、COSガスによるレジスト膜の改質を行わなかった場合(COS=0sccm:ハードニング工程なし)では、エッチング前後のCDの差分値が大きな値となっている。一方、COSガスによるレジスト膜の改質を行った場合(COS=10、20、30、40sccm)では、CDの差分値が小さな値となり、COSガスによるレジスト膜の改質を行わなかった場合よりパターン形状が整っていることがわかる。ただし、COS=40sccmの場合には残渣が生じてしまい、エッチング工程によくない影響を及ぼす状態となっている。
【0074】
図6の結果から、CFガスの流量が40sccmのとき、COSガスの流量は10〜30sccmであることが好ましいことがわかった。つまり、改質用ガスに含まれるCFガスとCOSガスとの流量の割合(CF/COS)は、4/3≦(CF/COS)≦4であることが好ましい。
【0075】
(COS/CFガス流量比:COSガス固定)
次に、発明者は、COSガス流量を固定値とし、CFガスを可変として流量比(割合)を制御した場合のArFレジスト膜16の改質状態を実験により求めた。
【0076】
ハードニング条件及びエッチング条件は、CFガス流量を固定値とした図6の実験とほぼ同じである。上記の通り、本実験では、改質ガスの流量のみが図6の実験の場合の条件と異なり、CF/COS/Ar=可変(40,60,80)/20/800sccmとなる。この条件での実験結果である有機膜エッチング後のパターン形状を図7に示す。
【0077】
図7の結果を考察すると、COSガスによるレジスト膜の改質を行わなかった場合(ハードニングなし)には、CDの差分値が大きな値となっている。COSガスによるレジスト膜の改質を行った場合(CF=40、60sccm)には、CDの差分値がハードニングなしの場合より小さな値となり、レジスト膜の改質を行わなかった場合よりパターン形状が整っていることがわかる。ただし、CF=80sccmの場合には、CDの差分値がそれほど小さな値ではなく、COSガスによるレジスト膜の改質を行わなかった場合に近い状態となっている。
【0078】
図7の結果から、COSガスの流量が20sccmのとき、CFガスの流量は40〜60sccmであることが好ましい。つまり、改質用ガスに含まれるCFガスとCOSガスとの流量の割合(CF/COS)は、2≦(CF/COS)≦3であることが好ましい。
【0079】
さらに、改質工程中、上部電極25に直流電圧を印加することにより、レジスト膜の改質層の厚さを増加させることができる。これについて、図8を参照しながら説明する。図8の左側枠内は、CFガス/Hガス/Arガスを改質ガスとして用いた場合のCFガスプラズマにおけるエッチング量を示す。図8の右側枠内は、本実施形態に係るCFガス/COSガス/Arガスを改質ガスとして用いた場合のCFガスプラズマにおけるエッチング量を示す。
【0080】
各枠内の棒グラフは、左から順に、ハードニング工程(改質工程)を行わずにCFガスプラズマで被エッチング層をエッチングした場合、ハードニング工程を行った後にCFガスプラズマで被エッチング層をエッチングした場合(直流電圧を印加しない)、ハードニング工程を行った後にCFガスプラズマで被エッチング層をエッチングした場合(直流電圧900Vを印加する)を示す。
【0081】
図8では、棒グラフが小さい程エッチング工程時にArFレジスト膜の削れ量が少ないことを示している。これによれば、ハードニング工程を行った後にCFガスプラズマで被エッチング層をエッチングした場合には、ハードニング工程(改質工程)を行わずにCFガスプラズマで被エッチング層をエッチングした場合よりArFレジスト膜の削れ量が少ないことがわかる。また、改質ガスにCFガス/COSガス/Arガスを用いた場合、改質ガスにCFガス/Hガス/Arガスを用いた場合よりArFレジスト膜の削れ量が少ないことがわかる。さらに、改質工程中に負の直流電圧900Vを印加した場合、改質工程中に直流電圧を印加しない場合よりArFレジスト膜の削れ量が少ないことがわかる。
【0082】
以上の結果及び前述した、改質ガスにCFガス/COSガス/Arガスを用いた場合にはレジスト膜がCSに改質するため残渣が生じにくいが、改質ガスにCFガス/Hガス/Arガスを用いた場合にはシリコンが堆積するため、シリコン含有の残渣が生じやすいという事実から、本実施形態にかかるプラズマ処理方法では、ArFレジスト膜16をマスクとしてSi−ARCの反射防止膜をエッチングするエッチング工程前に、CFガスとCOSガスとArガスとを含む改質用ガスから生成されたプラズマによりArFレジスト膜16を改質する改質工程を実行することが好ましいことがわかった。これにより、ArFレジスト膜16の表面を改質、硬化して、エッチング時のArFレジスト膜16の残膜を増加させることができ、エッチング選択比を向上させることができる。
【0083】
また、改質工程中に負の直流電圧を印加することによりArFレジスト膜の改質層の厚さを増やすことができる。これにより、さらにエッチング選択比を向上させることができる。
【0084】
なお、上記実験では、上部電極25に印加される負の直流電圧は−900Vであったが、負の直流電圧を少しでも印加すれば、印加しなかった場合よりレジスト膜の改質層の厚さを増加させることができる。よって、改質工程中に印加される負の直流電圧は、0Vより小さく、−900V以上であればよい。
【0085】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係るプラズマ処理方法について、図9を参照しながら説明する。第2実施形態に係るプラズマ処理方法は、EUVレジスト膜17をマスクとしたSi−ARC膜のエッチングに適用可能である。図9は、本実施形態に係るレジスト膜の改質方法及び被エッチング層のエッチング方法を説明するための積層膜の断面図である。
【0086】
(パターニング)
図9(1)に示したように、半導体ウエハWのシリコン含有基板(Si−Sub11)上には、熱酸化膜単層(Th−Ox12)が形成されている。その直上には被エッチング層である、シリコン窒化膜(SiN膜13)及び有機膜14上が形成され、その上にはシリコン含有無機反射膜(Si−ARC膜15)が形成されている。Si−ARC膜15上にはEUVレジスト膜17(EUV PR)が形成されている。第1実施形態の被エッチング層と異なる点は、レジスト膜の種類のみである。また、図9(2)〜(6)に示した、ハードニング工程及び各エッチング工程は、第1実施形態に係る各エッチング工程と同様である。よって、ここでは、図9(2)〜(6)の各工程の説明を省略する。
【0087】
(COSガス及び直流電圧の印加によるEUVレジスト膜の改質)
次に、COSガス及び直流電圧の印加によるEUVレジスト膜17の改質について、発明者が行った実験結果に基づき詳細に説明する。
【0088】
・EUVレジスト膜17のハードニング条件:
直流電圧900V、改質ガス種及び流量CF/COS/Ar=40/20/900sccm
・Si−ARC膜15のエッチングガス種CF/O
・有機膜14のエッチングガス種O/COS
・SiN膜13のエッチングガス種CF/CHF/Ar/O
・有機膜14のアッシングガス種O
【0089】
図10は、上段が図9に示した積層膜の側面図を示し、下段が積層膜の上面図を示している。図10の各列は、左から順に、エッチング前(ハードニング前)のEUVレジスト膜17(Initial)を示した図、ハードニング処理せずにエッチング処理を行った後のSiN膜13を示した図、CF/H/Arからなる改質ガスにてハードニング処理した後にエッチング処理を行った後のSiN膜13を示した図、CF/COS/Arからなる改質ガスにてハードニング処理した後にエッチング処理を行った後のSiN膜13を示した図である。
【0090】
最も左に示したエッチング前(ハードニング前)のEUVレジスト膜17(Initial)のCDは「28.9nm」であり、LWRは「6.6nm」である。
【0091】
これに対して、ハードニング処理せずにエッチング処理を行った後のSiN膜13のCDは「19.6nm」であり、LWRは「5.8nm」である。CF/H/Arからなる改質ガスにてハードニング処理した後にエッチング処理を行った後のSiN膜13のCDは「25.4nm」であり、LWRは「4.0nm」である。CF/COS/Arからなる改質ガスにてハードニング処理した後にエッチング処理を行った後のSiN膜13のCDは「30.7nm」であり、LWRは「3.9nm」である。
【0092】
以上から、本実施形態にかかるCF/COS/Arからなる改質ガスに基づきEUVレジスト膜17を改質後、エッチング処理を実行すると、エッチング処理後のSiN膜13のCD値は最も適正値を維持することができ、かつLWRの値を小さくすることができる。これにより、次工程であるエッチング工程で被エッチング層に精密なパターンを形成することができる。
【0093】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0094】
例えば、本発明にかかるレジスト膜は、ArF露光用のレジスト膜又はEUV露光用のレジスト膜のいずれかに限られず、他のレジスト膜であってもよい。また、本発明にかかる反射防止膜はSi−ARC膜に限られないが、シリコン含有の反射防止膜が好ましい。
【0095】
本発明に係るエッチング処理装置は、プラズマ処理装置であれば平行平板型のプラズマ処理装置に限られず、ICP(Inductively Coupled Plasma)プラズマ処理装置等のプラズマ処理装置でもよい。
【符号の説明】
【0096】
10 プラズマ処理装置
11 Si−Sub
12 Th−Ox
13 SiN
14 有機膜
15 Si−ARC
16 ArFレジスト膜
17 EUVレジスト膜
20 サセプタ
25 上部電極
100 処理容器
200 第1の高周波電源
210 第2の高周波電源
220 可変直流電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被エッチング層上に反射防止膜が形成され、前記反射防止膜上にパターン化されたレジスト膜が形成された積層膜に対して、エッチングガスから生成されたプラズマにより前記レジスト膜をマスクとして前記反射防止膜をエッチングするエッチング工程と、
前記エッチング工程の前に実行され、プラズマ処理装置内にCFガスとCOSガスと不活性ガスとを含む改質用ガスを導入し、該改質用ガスから生成されたプラズマにより前記レジスト膜を改質する改質工程と、
を含むことを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項2】
前記エッチング工程では、
前記エッチングガスからプラズマを生成するために、プラズマ処理装置内に設けられた第1の電極に高周波電力を印加し、
前記改質工程では、
前記改質用ガスからプラズマを生成するために、前記プラズマ処理装置内に設けられた第1の電極に高周波電力を印加するとともに、前記プラズマ処理装置内に設けられた第2の電極に負の直流電圧を印加することを特徴とする請求項1に記載のプラズマ処理方法。
【請求項3】
前記プラズマ処理装置は、
処理容器と、
前記処理容器内に設けられ、前記積層膜を積層させた基板の載置台として機能する前記第1の電極としての下部電極と、
前記処理容器内に設けられ、前記下部電極に対向するように配置された、前記第2の電極としての上部電極と、を有することを特徴とする請求項2に記載のプラズマ処理方法。
【請求項4】
前記改質用ガスに含まれるCFガスとCOSガスとの流量の割合(CF/COS)は、
4/3≦(CF/COS)≦4
であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のプラズマ処理方法。
【請求項5】
前記改質用ガスに含まれるCFガスとCOSガスとの流量の割合(CF/COS)は、
2≦(CF/COS)≦3
であることを特徴とする請求項4に記載のプラズマ処理方法。
【請求項6】
前記レジスト膜は、ArF露光用のレジスト膜又はEUV露光用のレジスト膜のいずれかであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のプラズマ処理方法。
【請求項7】
前記上部電極に印加する負の直流電圧の値は、0Vより小さく、−900V以上であることを特徴とする請求項2〜6のいずれか一項に記載のプラズマ処理方法。
【請求項8】
前記改質用ガスに含まれる不活性ガスは、アルゴンガスであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のプラズマ処理方法。
【請求項9】
前記反射防止膜は、シリコンを含有することを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載のプラズマ処理方法。
【請求項10】
被エッチング層上に反射防止膜が形成され、前記反射防止膜上にパターン化されたレジスト膜が形成された積層膜をエッチングするプラズマ処理装置であって、
処理容器と、
前記処理容器内に設けられ、前記積層膜を積層させた基板の載置台として機能する下部電極と、
前記処理容器内に設けられ、前記下部電極に対向するように配置された上部電極と、
前記下部電極に高周波電力を印加する高周波電源と、
前記上部電極に負の直流電圧を印加する可変直流電源と、
前記レジスト膜をマスクとして前記反射防止膜をエッチングする前に、前記処理容器内にCFガスとCOSガスと不活性ガスとを含む改質用ガスを導入するガス供給源と、を備え、
前記高周波電力により前記改質用ガスからプラズマを生成し、
前記負の直流電圧と前記生成されたプラズマとにより前記レジスト膜を改質することを特徴とするプラズマ処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−33833(P2012−33833A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−174149(P2010−174149)
【出願日】平成22年8月3日(2010.8.3)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】