説明

マイクロデバイス用基板及びその製造方法並びにマイクロデバイス及びその製造方法

【課題】微細径で且つ高アスペクト比の貫通配線を有するマイクロデバイス用基板及びその製造方法並びにマイクロデバイス及びその製造方法を提供する。
【解決手段】基板本体31と、この基板本体31を厚さ方向に貫通する貫通孔32と、この貫通孔32内に埋め込まれ且つIV族元素と該IV族元素との化合物を形成する金属との化合物を含む貫通配線37とを具備することを特徴とするマイクロデバイス用基板にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロデバイス用基板及びその製造方法並びにマイクロデバイス及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルネットワーク情報社会の発展に伴い、半導体を多機能化あるいは高性能化する要求が高まり、1チップに高度なシステム機能を詰め込んだシステム・オン・チップ(SoC)の他、複数のLSIを単一のパッケージに封止してシステム化したシステム・イン・パッケージ(SiP)が注目されている。また、このようなSiPの中で、複数の基板をウェハレベルで多層化したものがあり、この場合、上下の基板間の電気的な接続が問題となる。このように上下の基板間で電気的な接続を行う方法として、例えば、ワイヤボンディング方式が採用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一方、SiPの高密度化・小型化に伴って、上述したワイヤボンディングを用いた電気的な接続方式を採用するのが困難となってきている。このような背景において、1チップに高度なシステム機能を詰め込んだSoCや多層基板のSiPを実現する上では、基板を厚さ方向に貫通する貫通配線が重要となる。すなわち、例えば、半導体基板に、まず、貫通配線を設け、その後、半導体プロセスを実施した後、裏面で他のチップや配線との接続を行ったり、基板を多層化したりする場合があるが、貫通配線を形成する技術自体に問題があった。
【0004】
従来においては、銅メッキなどのメッキ法により貫通配線を形成する場合が一般的であるが、微細径又はアスペクト比の大きな貫通配線を形成する上で製造上の問題があった。また、メッキ液を使用するので、設備や排水処理においても問題があった。一方、ポリシリコンで貫通配線を形成する場合もあるが、抵抗が多きすぎるという問題がある。
【0005】
【特許文献1】特開2004−228323号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑み、微細径で且つ高アスペクト比の貫通配線を有するマイクロデバイス用基板及びその製造方法並びにマイクロデバイス及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成する本発明の第1の態様は、基板本体と、この基板本体を厚さ方向に貫通する貫通孔と、この貫通孔内に形成され且つIV族元素と該IV族元素との化合物を形成する金属との化合物を含む貫通配線とを具備することを特徴とするマイクロデバイス用基板にある。
【0008】
かかる第1の態様では、IV族元素と該IV族元素との化合物を形成する金属との化合物を含む貫通配線とすることにより、微細径で且つ高アスペクト比であっても比較的容易に貫通配線を具備するマイクロデバイス用基板とすることができる。
【0009】
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載のマイクロデバイス用基板において、前記貫通配線によって前記貫通孔が埋め込まれていることを特徴とするマイクロデバイス用基板にある。
【0010】
かかる第2の態様では、貫通配線により貫通孔が埋め込まれたマイクロデバイス基板とすることができる。
【0011】
本発明の第3の態様は、第1の態様に記載のマイクロデバイス用基板において、前記貫通配線が前記貫通孔の内周面に沿って形成され、前記貫通孔内には前記貫通配線で囲まれ且つ前記基板の厚さ方向に貫通する連通孔を有することを特徴とするマイクロデバイス用基板にある。
【0012】
かかる第3の態様では、貫通孔の内周面に貫通配線が形成され、中心に連通孔を有するマイクロデバイス基板とすることができる。
【0013】
本発明の第4の態様では、第1〜3の何れかの態様に記載のマイクロデバイス用基板において、前記貫通配線が、前記IV族元素からなるIV族元素薄膜に、前記金属とハロゲンラジカルとの化合物である前駆体及びハロゲンラジカルを作用させて形成されたものであることを特徴とするマイクロデバイス用基板にある。
【0014】
かかる第4の態様では、IV族元素からなるIV族元素薄膜に、金属とハロゲンラジカルとの化合物である前駆体及びハロゲンラジカルを作用させることにより、IV族元素と該IV族元素との化合物を形成する金属との化合物を含む貫通配線とすることができる。
【0015】
本発明の第5の態様は、第1〜4の何れかの態様に記載のマイクロデバイス用基板において、前記金属が、ニッケル、鉄、コバルト、チタン、ハフニウム及び亜鉛から選択される少なくとも1種であることを特徴とするマイクロデバイス用基板にある。
【0016】
かかる第5の態様では、ニッケル、鉄、コバルト、チタン、ハフニウム及び亜鉛から選択される少なくとも1種からなる金属を含む貫通配線を形成することができる。
【0017】
本発明の第6の態様は、第1〜5の何れか一つの態様に記載のマイクロデバイス用基板において、前記IV族元素が、シリコン、ゲルマニウム及び炭素からなる群から選択される少なくとも1種の元素であることを特徴とするマイクロデバイス用基板にある。
【0018】
かかる第6の態様では、IV族元素としてシリコン、ゲルマニウム又は炭素を含む金属IV族元素を含む貫通配線を形成することができる。
【0019】
本発明の第7の態様は、第1〜6の何れか一つの態様に記載のマイクロデバイス用基板において、前記貫通配線が、ニッケルシリサイド又はニッケルシリサイドを含有するニッケルからなることを特徴とするマイクロデバイス用基板にある。
【0020】
かかる第7の態様では、貫通配線がニッケルシリサイド又はニッケルシリサイドを含有するニッケルからなり、それぞれの特性を有する貫通配線を形成できる。
【0021】
本発明の第8の態様は、第1〜7の何れか一つの態様に記載のマイクロデバイス用基板において、前記基板本体の厚さが50〜100μmであり、前記貫通孔の内径が5〜20μmであることを特徴とするマイクロデバイス用基板にある。
【0022】
かかる第8の態様では、基板本体の厚さが50〜100μmで、貫通孔の内径が5〜20μmという比較的高アスペクト比の貫通孔に対して貫通配線を形成することができる。
【0023】
本発明の第9の態様は、第1〜8の何れか一つの態様に記載のマイクロデバイス用基板において、前記貫通配線を覆うように表面全体に絶縁層が設けられていることを特徴とするマイクロデバイス用基板にある。
【0024】
かかる第9の態様では、貫通配線を覆う絶縁層を設けられたマイクロデバイス用基板となり、半導体プロセス等に使用することができる。
【0025】
本発明の第10の態様は、第1〜9の何れか一つの態様に記載のマイクロデバイス用基板において、前記貫通孔の前記貫通配線の下地に酸化物膜を有することを特徴とするマイクロデバイス用基板にある。
【0026】
かかる第10の態様では、酸化物層がストップ層として働き、酸化物膜の内側に貫通配線が比較的容易に形成される。
【0027】
本発明の第11の態様は、第1〜8の何れか一つの態様に記載のマイクロデバイス用基板において、前記基板本体が、シリコン基板又はガラス基板であることを特徴とするマイクロデバイス用基板にある。
【0028】
かかる第11の態様は、シリコン基板又はガラス基板に貫通配線を形成したマイクロデバイス用基板となる。
【0029】
本発明の第12の態様は、貫通孔を有すると共に前記貫通孔内にIV族元素からなるIV族元素材料が設けられた基板本体の前記IV族元素薄膜に対して、前記IV族元素と化合物を形成する金属とハロゲンラジカルとの化合物である前駆体及びハロゲンラジカルを作用させて、前記貫通孔内にIV族元素と金属との化合物を含む貫通配線を形成する工程を具備することを特徴とするマイクロデバイス用基板の製造方法にある。
【0030】
かかる第12の態様では、IV族元素からなるIV族元素薄膜に、金属とハロゲンラジカルとの化合物である前駆体及びハロゲンラジカルを作用させることにより、IV族元素と該IV族元素との化合物を形成する金属との化合物を含む貫通配線とすることができる。
【0031】
本発明の第13の態様は、第12の態様に記載のマイクロデバイス用基板の製造方法において、前記貫通配線を形成する工程の前工程として、前記基板の前記貫通孔の内周面に前記IV族元素材料からなるIV族元素薄膜を形成する工程を具備し、前記貫通孔の内周面にIV族元素薄膜を設ける際に、当該IV族元素薄膜の内側に、前記金属とハロゲンラジカルとの化合物である前駆体及びハロゲンラジカルを作用させて前記貫通配線を形成しつつ当該貫通配線で埋め込むことができる空隙を有するようにすることを特徴とするマイクロデバイス用基板の製造方法にある。
【0032】
かかる第13の態様では、貫通孔の内周面にIV族元素薄膜を形成する際に空隙を設けて前駆体及びハロゲンラジカルを作用させることにより、貫通配線を形成しつつ貫通孔を貫通配線で埋め込むことができる。
【0033】
本発明の第14の態様は、第12の態様に記載のマイクロデバイス用基板の製造方法において、前記貫通配線を形成する工程の前工程として、前記基板の前記貫通孔の深さ方向の少なくとも一部を前記IV族元素材料で埋め込む工程を具備することを特徴とするマイクロデバイス用基板の製造方法にある。
【0034】
かかる第14の態様では、貫通孔をIV族薄膜で埋め込んで前駆体及びハロゲンラジカルを作用させることにより、貫通孔を埋め込むように貫通配線を形成できる。
【0035】
本発明の第15の態様は、第12〜14の何れかの態様に記載のマイクロデバイス用基板の製造方法において、前記基板本体は、絶縁材料で形成されると共に前記貫通孔の開口を塞ぐ補助基板を一方面側に当接した状態で処理されることを特徴とするマイクロデバイス用基板の製造方法にある。
【0036】
かかる第15の態様では、貫通孔の一方側の開口を塞ぐ補助基板を基板本体に当接させた状態で処理することにより、作業性よく処理を行うことができる。
【0037】
本発明の第16の態様は、第12〜15の何れかの態様に記載のマイクロデバイス用基板の製造方法において、前記金属が、ニッケル、鉄、コバルト、チタン、ハフニウム及び亜鉛から選択される少なくとも1種であることを特徴とするマイクロデバイス用基板の製造方法にある。
【0038】
かかる第16の態様では、ニッケル、鉄、コバルト、チタン、ハフニウム及び亜鉛から選択される少なくとも1種からなる金属を含む貫通配線を形成することができる。
【0039】
本発明の第17の態様は、第12〜16の何れか一つの態様に記載のマイクロデバイス用基板の製造方法において、前記IV族元素が、シリコン、ゲルマニウム及び炭素からなる群から選択される少なくとも1種の元素であることを特徴とするマイクロデバイス用基板の製造方法にある。
【0040】
かかる第17の態様では、IV族元素としてシリコン、ゲルマニウム又は炭素を含む金属IV族元素を含む貫通配線を形成することができる。
【0041】
本発明の第18の態様は、第12〜17の何れか一つの態様に記載のマイクロデバイス用基板の製造方法において、前記貫通配線が、ニッケルシリサイド又はニッケルシリサイドを含有するニッケルからなることを特徴とするマイクロデバイス用基板の製造方法にある。
【0042】
かかる第18の態様では、貫通配線がニッケルシリサイド又はニッケルシリサイドを含有するニッケルからなり、それぞれの特性を有する貫通配線を形成できる。
【0043】
本発明の第19の態様は、第12〜18の何れか一つの態様に記載のマイクロデバイス用基板の製造方法において、前記基板本体の厚さが50〜100μmであり、前記貫通孔の内径が5〜20μmであることを特徴とするマイクロデバイス用基板の製造方法にある。
【0044】
かかる第19の態様では、基板本体の厚さが50〜100μmで、貫通孔の内径が5〜20μmという比較的高アスペクト比の貫通孔に対して貫通配線を形成することができる。
【0045】
本発明の第20の態様は、第12〜19の何れか一つの態様に記載のマイクロデバイス用基板の製造方法において、前記貫通配線を覆うように表面全体に絶縁層を設ける工程をさらに具備することを特徴とするマイクロデバイス用基板の製造方法にある。
【0046】
かかる第20の態様では、貫通配線を覆う絶縁層が設けられたマイクロデバイス用基板を形成でき、半導体プロセス等に使用することができる。
【0047】
本発明の第21の態様は、第12〜20の何れか一つの態様に記載のマイクロデバイス用基板の製造方法において、前記貫通孔の内周面に前記IV族元素薄膜を形成する前に、当該貫通孔の内周面に酸化物膜を形成する工程を具備することを特徴とするマイクロデバイス用基板の製造方法にある。
【0048】
かかる第21の態様では、酸化物膜がストップ層として働き、酸化物膜の内側に貫通配線を比較的容易に形成することができる。
【0049】
本発明の第22の態様は、第12〜21の何れか一つの態様に記載のマイクロデバイス用基板の製造方法において、前記基板本体が、シリコン基板又はガラス基板であることを特徴とするマイクロデバイス用基板の製造方法にある。
【0050】
かかる第22の態様は、シリコン基板又はガラス基板に貫通配線を形成したマイクロデバイス用基板を製造できる。
【0051】
本発明の第23の態様は、第1〜11の何れか一つの態様に記載されたマイクロデバイス用基板を具備することを特徴とするマイクロデバイスにある。
【0052】
かかる第23の態様は、貫通配線を有するマイクロデバイス用基板を用いて所望のマイクロデバイスとすることができる。
【0053】
本発明の第24の態様は、第12〜22の何れか一つの態様に記載のマイクロデバイス用基板の製造方法で製造された基板を用いてマイクロデバイスを製造することを特徴とするマイクロデバイスの製造方法にある。
【0054】
かかる第24の態様では、貫通配線を有するマイクロデバイス用基板を製造し、その後、これを用いてマクロデバイスを製造することができる。
【発明の効果】
【0055】
本発明によれば、貫通配線を金属シリサイドなどの金属とIV族元素との化合物からなる材料や実質的に金属膜として機能する高濃度に金属を含有する材料とすることにより、比較的高アスペクト比の貫通孔に対しても貫通配線を比較的容易に設けることができ、これを適用したマイクロデバイスを比較的容易に製造することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0056】
本発明は、本発明者等によって開発された、金属をハロゲン化して再び還元し堆積させる技術(以下、MCR−CVD法(塩化還元気相成長法)という。)を応用したものである。よって、MCR−CVD法を最初に簡単に説明する。
【0057】
かかるMCR−CVD法では、まず、金属(M)製の被エッチング部材が備えられたチャンバ内にハロゲンを含む作用ガスを供給し、誘導プラズマを発生させてハロゲンガスプラズマを発生させ、ハロゲンラジカルを生成する。その後、ハロゲンラジカルで被エッチング部材をエッチングすることにより被エッチング部材に含まれる金属成分とハロゲンガス成分との前駆体を生成し、被エッチング部材よりも低い温度の基板上において、前駆体をハロゲンラジカルにより還元し、金属成分を基板表面に吸着させる方法である。
【0058】
かかる一連の反応はハロゲンを塩素とした場合、次式の様に表される。
(1)プラズマの解離反応;Cl2→2Cl*
(2)エッチング反応;M+Cl*→MCl(g)
(3)基板への吸着反応;MCl(g)→MCl(ad)
(4)成膜反応;MCl(ad)+Cl*→M+Cl2
式中のCl*は塩素ラジカル、(g)はガス状態、(ad)は吸着状態を示す。金属Mにはハロゲン化物を作る物質(銅など)が使用される。
【0059】
かかる、MCR−CVD法を応用した本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。なお、本実施の形態の説明は例示であり、本発明の構成は以下の説明に限定されない。
【0060】
<第1の実施の形態>
図1は本発明の第1の実施の形態に係るマイクロデバイス用基板の製造方法を実現する装置(MCR−CVD装置)の概略を示す正面図である。本形態に係る方法の説明に先立ち、この装置について説明しておく。
【0061】
図1に示すように、例えば石英を材料として円筒状に形成されたチャンバ1の底部近傍には支持台2が設けられ、支持台2には石英で形成した被処理部材3が載置されている。この被処理部材3としては、詳細は後述するが、図2(a)〜(d)に示すように、シリコン基板31に所望の貫通孔32を設け、この貫通孔32の内周面を含めて全体に酸化シリコン膜(二酸化シリコン膜)33と、シリコン膜34とを設け、シリコン膜34をパターニングして貫通孔32の内周面のみにシリコンパターン35を設けたものを用いる。
【0062】
支持台2にはヒータ4及び冷媒流通手段5を備えた温度制御手段6が設けられている。ここで、支持台2は温度制御手段6により所定温度(例えば、被処理部材3が200℃乃至400℃に維持される温度)に制御される。
【0063】
チャンバ1の上面は開口部とされ、開口部は絶縁材料製の板状の天井板7によって塞がれている。天井板7の上方にはチャンバ1の内部をプラズマ化するためのプラズマアンテナ8が設けられ、プラズマアンテナ8は天井板7の面と平行な平面リング状に形成されている。プラズマアンテナ8には整合器9及び電源10が接続されて高周波電流が供給される。これら、プラズマアンテナ8、整合器9及び電源10により誘導プラズマを発生させるプラズマ発生手段が構成されている。
【0064】
チャンバ1にはニッケルを含む材料で形成した被エッチング部材11が保持され、この被エッチング部材11はプラズマアンテナ8の電気の流れに対して被処理部材3と天井板7との間に不連続状態で配置されている。例えば、被エッチング部材11は、棒状の突起部12とリング部13とからなり、突起部12がチャンバ1の中心側に延びるようにリング部13が設けられている。これにより、被エッチング部材11はプラズマアンテナ8の電気の流れ方向である周方向に対して構造的に不連続な状態とされている。
【0065】
なお、プラズマアンテナ8の電気の流れに対して不連続状態にする構成としては、被エッチング部材11を格子状に形成したり、網目状に形成したりする等の態様が考えられる。
【0066】
被エッチング部材11の上方におけるチャンバ1の筒部の周囲にはチャンバ1の内部にハロゲンである塩素を含有する作用ガス(Clガス)21を供給するノズル14が周方向に等間隔で複数(例えば8箇所:図には2箇所を示してある)接続されている。ノズル14には流量及び圧力が制御される流量制御器15を介してClガス21が送られる。流量制御器15によりチャンバ1内に供給されるClガス21の量を制御することで、チャンバ1内のガスプラズマ密度を制御している。
【0067】
なお、反応に関与しないガス等は排気口18から排気され、天井板7によって塞がれたチャンバ1の内部は真空装置19によって真空引きすることにより所定の真空度に維持される。
【0068】
ここで、作用ガスに含有されるハロゲンとしては、フッ素、臭素及びヨウ素等を適用することが可能である。本形態ではハロゲンとして安価なClガスを用いたことによりランニングコストの低減を図ることができる。
【0069】
かかる装置を使用して、被処理部材3を処理すると、酸化シリコン膜33上に形成されているシリコンパターン35が、その内側の空隙36を介して処理され、シリコンパターン35が、図2(e)に示すように、ニッケルシリサイドを含有する貫通配線37となり、空隙36も埋め込まれる。
【0070】
以下、このような貫通配線37の形成プロセスについて説明する。
【0071】
まず、図2(a)に示すように、後に半導体プロセスに供するシリコンウェハなどのシリコン基板31の所望の位置に貫通孔32を設けた後、図2(b)に示すように、熱酸化処理などにより酸化シリコン膜33を設ける。続いて、図2(c)に示すように、例えば、後述するようにCVDなどにより多結晶シリコンからなるシリコン膜34を形成した後、図2(d)に示すように、貫通孔32の内周面の領域のみを残すようにシリコンパターン35とする。
【0072】
このような被処理部材3を、上述したMCR−CVD装置で処理する。この処理は以下のとおりである。
【0073】
まず、ノズル14からClガス21をチャンバ1内に供給するとともに、プラズマアンテナ8から高周波電磁波をチャンバ1内に入射することで、Clガス21をイオン化してClガスプラズマ23を発生させ、Clラジカルを生成する。
【0074】
ここで、ガスプラズマ23が被エッチング部材11に作用することにより、被エッチング部材11を加熱すると共に、被エッチング部材11にエッチング反応を生じさせる。このエッチング反応により被エッチング部材11の材料であるニッケルと塩素との化合物であるガス状の前駆体24(NiCl:m,nは1以上の整数)が形成される。そして、前駆体24は、前記被エッチング部材11よりも低温部となっている被処理部材3の表面に向かって輸送される。また、被処理部材3に対しては、前駆体24と共にClラジカルが輸送される。
【0075】
ここで、本実施形態では、シリコン基板31の貫通孔32の内周面(実際には酸化シリコン膜33の表面)上にはシリコンパターン35が設けられ、その内側に空隙36が残されており、この空隙36内に前駆体24とClラジカルとが輸送されることで、シリコンパターン35に対して空間選択的にNi成分が置換拡散すると考えられる。具体的には、シリコン基板31の表面に対してClラジカルと前駆体24とが輸送されると、シリコン基板31の表面近傍においてシリコンパターン35のみに空間選択的にClラジカルと前駆体24が作用してSi成分がNi成分に置換されながら、Ni成分がシリコンパターン35内に置換拡散しつつ塩素成分が離脱する還元反応が生じ、ニッケルシリサイドが生成し、ニッケル成分が置換拡散する。
【0076】
ここで、ニッケル成分の置換拡散の際の主な反応は下記の2つの反応、すなわち、Siの還元反応である反応(1)と、Clの還元反応である反応(2)であるが、金属種がニッケルの場合には、通常の総フラックス条件下では、反応(1)が支配的となり、過剰な量の総フラックス条件とした場合、反応(2)が支配的となる。
【0077】
NiCl+Si→Ni+SiCl ・・・(1)
NiCl+Cl→Ni+Cl ・・・(2)
【0078】
本実施形態では、過剰の総フラックス条件とすることにより、ニッケル成分の置換拡散と共にニッケルシリサイドの膜厚が増大して空隙36が徐々に小さくなり、最終的には空隙36が消滅し、ニッケルシリサイドが貫通孔32を埋め込むように形成される。また、この処理によると、ニッケルシリサイドの生成が、酸化シリコン膜33の位置で停止される。この結果、酸化シリコン膜33上に貫通孔32を埋め込むように(空隙36は消滅される)貫通孔32の径方向に所定のニッケル濃度分布を有する貫通配線37が形成される。なお、反応に関与しないガス及びエッチング生成物は排気口から排気される。
【0079】
本実施形態では、過剰の総フラックス条件とすることにより、ニッケル成分の置換拡散と共に空隙36を埋め込むように貫通配線37を形成するようにしたが、総フラックス量を通常量とすると、上記反応(2)が支配的になる。この場合の処理の結果を図3に示す(図2と同一部分には同一符号を付して重複する説明は省略する)。
【0080】
図3(d)に示すように、空隙36を有するようにシリコンパターン35を形成したものを処理すると、図3(e)に示すように、ニッケル成分の置換拡散と共にニッケルシリサイド(シリコンパターン35)の膜厚が減少し、当初より多少大きくなった空隙36Aが残存し、その周り、すなわち、貫通孔32の内周壁上にニッケルシリサイドからなる貫通配線37Aが形成される。
【0081】
本実施形態において、シリコンパターン35としては多結晶シリコン膜乃至単結晶シリコン膜の何れの膜も用いることはできるが、多結晶シリコン膜の方がより望ましい。単結晶シリコンに較べ、粒界が多い分、塩素ラジカルがシリコンパターン35内に侵入し易く、シリサイド化が容易且つ良好に行なわれ、NiSi、NiSi、NiSiなどを含むニッケルシリサイド膜を比較的容易に形成することができるからである。また、多結晶シリコン膜は、フォトリソグラフィー及びエッチングなどの公知の手法により、金属膜のパターニングなどと比較して比較的容易にパターニングすることができるという利点がある。
【0082】
IV族元素薄膜の一例である多結晶シリコンからなるシリコン膜34(図2(c)参照)は、例えば、公知のCVD法などにより成膜できる。一般的には、IV族元素薄膜は、基板を500℃〜1200℃にした後、IV族元素を含有するIV族元素含有化合物ガス中に曝すことにより容易に形成できる。例えば、シリコン膜34は、シリコン基板31を約600℃に保持し、原料ガスとしての100mTorrの下、20%SiH(N希釈)などに晒すことにより、成膜できる。また、シリコン膜34は、例えば、フォトリソグラフィーと、例えば、CF/Oガスによるドライエッチングにより容易にパターニングして、シリコンパターン35とすることができる。
【0083】
また、シリコンパターン35は、成膜後パターニングにより形成するほか、所望パターン以外の領域をレジストなどの保護膜で保護した後、CVD法などでシリコンパターン35を成膜してもよい。
【0084】
何れにしても、所望パターン形状のシリコンパターン35を有するものであれば、貫通孔32の内周面に設けられたシリコンパターン35のみに空間選択的にニッケル成分が置換拡散され、ニッケルシリサイドを含む貫通配線37又は37Aが形成できる。
【0085】
ここで、空間選択的とは、シリコンパターン35の領域のみにニッケル成分が空間選択的に置換拡散されて、その周囲の領域にはニッケルが作用しない状態をいう。すなわち、貫通配線37は、セルフアライメントされた状態でシリコンパターン35の領域に形成され、その周囲の領域には形成されない。なお、シリコンパターン35の周囲は、シリコン以外であれば特に限定されないが、酸化膜であるのが好ましく、酸化シリコン膜であるのが好ましい。
【0086】
また、シリコンパターン35の下地がシリコン基板の場合には、条件によってはニッケルがシリコン基板まで置換拡散するが、下地が酸化シリコン膜33であるので、置換拡散防止膜として作用し、ニッケル成分の置換拡散は酸化シリコン膜33で停止される。よって、シリコンパターン35を貫通配線37とする際には、下地として金属の置換拡散を規制する置換拡散防止膜を設けるのが好ましく、この場合には、酸化シリコン膜33が置換拡散防止膜として作用する。
【0087】
なお、従来技術で示した熱拡散により形成されたニッケルシリサイド膜の形成では、例えば、シリコン膜上にニッケル膜を設けて800℃で5分間加熱することによりニッケルがシリコン膜中に熱拡散するが、シリコン膜の下地に酸化シリコン膜があってもニッケルは酸化シリコン膜を突き抜けてさらに下層にまで熱拡散することになり、熱拡散を所定位置で制御するのが困難である。
【0088】
本発明の貫通配線は、処理温度を金属成分の熱拡散が生じない温度、例えば、200℃〜400℃、好ましくは200℃〜350℃で行うことができる。
【0089】
上述したMCR−CVD法では、一般的には、基板表面に作用するハロゲンラジカルのフラックスと前駆体のフラックスとの和である総フラックスと、総フラックスに対するハロゲンラジカルのフラックスの比率とにより、処理条件が決定し、ハロゲンラジカルのフラックスの比率が相対的に低くなると、成膜モードとなり、ハロゲンラジカルのフラックスの比率が高くなるとエッチングモードとなる。
【0090】
本発明方法では、総フラックスを高くなるように制御することにより、貫通配線中の平均ニッケル濃度を高くすることができ、逆に低くなるように制御することにより、平均ニッケル濃度を低くすることができる。例えば、被エッチング部材11を同一とし、ハロゲンガスである作用ガス21の導入量を一定とし、プラズマアンテナ8に印加するRFパワーを高くすると、総フラックスが高くなると共にニッケルを含む前駆体24のフラックスが高くなり、一方、RFパワーを低くすると、総フラックスが低くなると共にニッケルを含む前駆体24のフラックスが低下する。
【0091】
ここで、MCR−CVD法を実施する条件では、一般的には、ハロゲンラジカルのフラックスが飽和状態となるので、この条件下ではRFパワーを変化させてもハロゲンラジカルのフラックスはほとんど変化せずに、RFパワーを低くすると、前駆体のフラックスが低くなり、RFパワーを高くすると、前駆体のフラックスが高くなるので、これにより平均ニッケル濃度を制御することができる。
【0092】
また、平均ニッケル濃度は、ハロゲンラジカルのフラックスと前駆体24のフラックスとの比や被処理部材3の温度、基板の温度などによっても変化し、これらによって変化する前駆体24の吸着量と、この前駆体24が吸着した表面へ作用するハロゲンラジカルの量によって、ニッケルシリサイドの生成量が規定されると推定される。
【0093】
したがって、本発明方法によると、主にRFパワーによって制御できる総フラックスを制御することにより、平均ニッケル濃度を増減できるが、被エッチング部材11の形状、温度、ハロゲンガスの導入量、被処理部材3の温度など諸条件によっても変化するものである。例えば、他の条件を同一にし、被処理部材3の温度を高くすると、平均ニッケル濃度は低くなる方向に制御でき、逆に被処理部材3の温度を低くすると、平均ニッケル濃度が高くなる方向に制御できる。
【0094】
また、ニッケルとシリコンとの比が1:2〜2:1の領域、すなわち、例えば、ニッケル平均濃度が35%を超えると、ニッケルがシリコン中に全固溶する領域となり、ニッケルがシリコン中に拡散し易くなり、ニッケル分布が膜厚方向に平均化するようになる。一方、ニッケル濃度が35%〜60%の範囲では貫通配線37がニッケルシリサイド膜として機能する傾向が強く、ニッケル濃度が60%を超えると、ニッケル膜と同様な特性を有する傾向が強いが、これらは用途に応じて、金属含有量を選定すればよい。
【0095】
また、ニッケル濃度が60%を超え、特に80%以上となると、貫通配線37が実質的にはニッケル膜として機能する。
【0096】
かかる本発明方法によると、従来のメッキ法などでは不可能であった50μm径の貫通孔を埋め込むことができる。すなわち、シリコン基板31の厚さが50〜100μmで、貫通孔32の内径が50μm以下、好ましくは5〜20μmあっても、比較的容易に貫通配線とすることができる。
【0097】
また、本発明の貫通配線を形成する場合、上述したように、貫通孔32の内周面に、IV族元素薄膜としてのシリコンパターン35を設ける際に、その内側に空隙36を設けるのが好ましい。この空隙36は、上述したように、ニッケルとハロゲンラジカルとの化合物である前駆体及びハロゲンラジカルをシリコンパターン35に均一に作用させて、ニッケル成分をシリコンパターン35の厚さ方向(貫通孔32の径方向)に置換拡散させるためのものであり、且つ必要に応じてニッケル成分の置換拡散により埋め込むことができる程度の大きさとするのが好ましい。この空隙36の大きさは、製造する貫通配線の組成などによって適宜選定することができる。
【0098】
また、このように空隙36を介してニッケル成分が置換拡散して形成された貫通配線37、37Aは、貫通孔32の径方向に対しては、例えば、ニッケル濃度の分布を有するが、貫通方向に対しては成分の分布がほぼ一定となる。
【0099】
<第2の実施の形態>
上述した実施形態では、被処理部材3を処理するMCR−CVD装置(図1参照)の被エッチング部材11として、ニッケルからなるものを用いたが、本実施形態では、銅からなる被エッチング部材11を用いる以外は第1の実施の形態と同様に処理した。
【0100】
ここで、銅成分の置換拡散の際の主な反応は下記の2つの反応、すなわち、Siの還元反応である反応(11)と、Clの還元反応である反応(12)であるが、金属種が銅であるので、通常の総フラックス条件下では、反応(12)が支配的となり、過剰な量の総フラックス条件とした場合、反応(11)が支配的となる。
【0101】
CuCl+Si→Cu+SiCl ・・・(11)
CuCl+Cl→Cu+Cl ・・・(12)
【0102】
本実施形態の処理の状態は、図2又は図3と同一となるので、省略する。本実施形態では、通常の総フラックス条件とすることにより、銅成分の置換拡散と共に銅シリサイドの膜厚が増大して空隙36が徐々に小さくなり、最終的には空隙36が消滅し、銅シリサイドを含む貫通配線37が貫通孔32を埋め込むように形成される。なお、本実施形態においても、銅シリサイドの生成は、酸化シリコン膜33の位置で停止される。この結果、酸化シリコン膜33上に貫通孔32を埋め込むように(空隙36は消滅される)貫通孔32の径方向に所定の銅濃度分布を有する貫通配線37が形成される。
【0103】
一方、本実施形態では、過剰の総フラックス条件とすることにより、上記反応(12)が支配的になる。この場合の処理の結果は図3のようになる。すなわち、図3(d)に示すように、空隙36を有するようにシリコンパターン35を形成したものを処理すると、図3(e)に示すように、銅成分の置換拡散と共に銅シリサイド(シリコンパターン35)の膜厚が減少し、当初より多少大きくなった空隙36Aが残存し、その周り、すなわち、貫通孔32の内周壁上に銅シリサイドからなる貫通配線37Aが形成される。
【0104】
<第3の実施の形態>
上述した実施形態では、貫通孔32内にシリコンパターン35を形成する際に空隙36を設けたが、本実施形態は、空隙36を設けず、貫通孔32をシリコンパターンで埋め込んだ状態とする例を示す。なお、被処理部材3を処理するMCR−CVD装置(図1参照)としては、第1の実施の形態と同様に、ニッケルからなる被エッチング部材11を具備するものを用い、第1の実施形態と同様に処理した。
【0105】
本実施形態では、まず、図4(a)に示すように、後に半導体プロセスに供するシリコンウェハなどのシリコン基板31の所望の位置に貫通孔32を設けた後、熱酸化処理などにより酸化シリコン膜33を設けた基板の一方側に、貫通孔32を塞ぐ補助基板41を接合する。かかる補助基板41は、貫通孔32をシリコンパターンで埋めやすくするためのものであるが、上述した実施形態のようにシリコン膜を貫通孔32を埋めるように設けることができれば、補助基板41を用いる必要はない。逆に、上述した実施形態に補助基板41を適用してもよい。
【0106】
続いて、図4(b)に示すように、例えば、後述するようにCVDなどにより多結晶シリコンからなるシリコン膜を貫通孔32を埋めるように形成した後、貫通孔32の内のみを残すようにシリコンパターン35Aとする。
【0107】
このような被処理部材3を、上述した第1の実施の形態と同様にMCR−CVD装置で処理する。
【0108】
ここで、本実施形態では、シリコン基板31の貫通孔32内のシリコンパターン35Aに対して空間選択的にNi成分が置換拡散し、Si成分がNi成分に置換されながら、Ni成分がシリコンパターン35A内に置換拡散しつつ塩素成分が離脱する還元反応が生じ、ニッケルシリサイドが生成し、貫通配線37Bが形成される(図4(c))。
【0109】
なお、貫通配線37B形成後は、補助基板41を研磨や剥離などにより除去し、その後は、図4(d)に示すように、上述した実施形態と同様に処理する。
【0110】
ここで、上述した実施の形態のような空隙36を設けない場合には、貫通方向に亘っての濃度分布を一定するために時間がかかるが、時間短縮のためには、シリコンパターン35Aを貫通方向に分割して複数回に分けて形成し、それぞれを別々に処理してニッケルシリサイド化することにより、比較的短時間で貫通方向の濃度分布をほぼ一定に保持することができるようになる。
【0111】
また、補助基板41は、本実施形態では別体としたが、シリコン基板31の一部を補助基板として使用するようにしてもよい。
【0112】
ここで、シリコン基板の一部を補助基板とし、且つシリコンパターンを分割して処理した例を図5に示す。
【0113】
図5に示すように、この例では、厚さ方向の一部を補助基板41Aとして機能するシリコン基板31Aに貫通配線を形成する貫通孔として機能させるための凹部32Aを形成し、熱酸化処理などにより酸化シリコン膜33を設けた基板とし(図5(a))、凹部32Aの深さの半分程度までシリコンパターン35B−1を設ける(図5(b))。このシリコンパターン35B−1の形成は、凹部32のみを開口させたパターンなどを介してのスパッタリング等により行えばよい。これを第1の実施形態と同様なMCR−CVD装置で処理してニッケル成分を置換拡散し、ニッケルシリサイドを含む膜37B−1とする(図5(c))。次に、膜37B−1上にシリコンパターン35B−2を凹部32Aを埋め込むように形成し(図5(d))、その後、MCR−CVD装置で処理してニッケル成分を置換拡散し、ニッケルシリサイドを含む膜37B−2とする(図5(e))。その後、シリコン基板31Aの補助基板41Aの部分を凹部32Aの底部に形成された酸化シリコン膜33と共に研磨等により除去し、貫通配線37Bを有するシリコン基板31Bとする(図5(f))。
【0114】
<他の実施形態>
以上説明した各実施形態では、IV族元素としてシリコンを例示したが、化学的にシリコンに近いゲルマニウム又は炭素をシリコンに置き換えても同様な貫通配線が形成できる。
【0115】
また、上述した各実施形態では、金属としてニッケルを例示したいが、ニッケルの代わりに、鉄、コバルト、チタン、ハフニウム及び亜鉛などをニッケルに置き換えても、同様に貫通配線が形成できると容易に推測できる。
【0116】
以上説明した貫通配線の形成方法によると、従来より高アスペクト比の貫通孔に比較的容易に貫通配線を設けることができ、高密度配線のマイクロデバイス用基板として有用である。
【0117】
すなわち、本発明の貫通配線を有するマイクロデバイス用基板は、例えば、図2(e)又は図3(e)に示すように、貫通配線37又は37Aを設けた後、必要に応じて、図2(f)又は図3(f)に示すように、酸化シリコン膜などの保護膜38で表面を保護した後、半導体プロセスなどに供することができ、半導体プロセス後、貫通配線37を介して配線を形成することにより、多層基板マイクロデバイスなどに適用できる。
【0118】
なお、第1実施形態に用いた、図1に示す装置においては、チャンバ1内でハロゲンガスをプラズマ化することによりそのラジカルを形成したが、ラジカルの形成方法はこれに限る必要はない。例えば次のような方法によっても形成し得る。
1) チャンバ1内に連通する筒状の通路を流通するハロゲンガスに高周波の電界を作用させてこのハロゲンガスをプラズマ化する。
2) チャンバ1内に連通する筒状の通路を流通するハロゲンガスにマイクロ波を供給してこのハロゲンガスをプラズマ化する。
3) チャンバ1内に連通する筒状の通路を流通するハロゲンガスを加熱して熱的解離する。
4) チャンバ1内に連通する筒状の通路を流通するハロゲンガスに電磁波又は電子線を供給してこのハロゲンガスを解離させる。
5) チャンバ1内に連通する筒状の通路を流通するハロゲンガスを、触媒作用により解離させる触媒金属に接触させる。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明は、半導体装置の製造の他、他の電子デバイスの製造に関する産業分野で利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るマイクロデバイス用基板の製造方法に使用する装置の概略を示す正面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態におけるマイクロデバイス用基板の製造方法の一例を説明する断面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態の変形例におけるマイクロデバイス用基板の製造方法の一例を説明する断面図である。
【図4】本発明の第3の実施の形態におけるマイクロデバイス用基板の製造方法の一例を説明する断面図である。
【図5】本発明の第3の実施の形態の変形例におけるマイクロデバイス用基板の製造方法の一例を説明する断面図である。
【符号の説明】
【0121】
1 チャンバ
3 被処理部材
8 プラズマアンテナ
11 被エッチング部材
21 作用ガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板本体と、この基板本体を厚さ方向に貫通する貫通孔と、この貫通孔内に形成され且つIV族元素と該IV族元素との化合物を形成する金属との化合物を含む貫通配線とを具備することを特徴とするマイクロデバイス用基板。
【請求項2】
請求項1に記載のマイクロデバイス用基板において、前記貫通配線によって前記貫通孔が埋め込まれていることを特徴とするマイクロデバイス用基板。
【請求項3】
請求項1に記載のマイクロデバイス用基板において、前記貫通配線が前記貫通孔の内周面に沿って形成され、前記貫通孔内には前記貫通配線で囲まれ且つ前記基板の厚さ方向に貫通する連通孔を有することを特徴とするマイクロデバイス用基板。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載のマイクロデバイス用基板において、前記貫通配線が、前記IV族元素からなるIV族元素薄膜に、前記金属とハロゲンラジカルとの化合物である前駆体及びハロゲンラジカルを作用させて形成されたものであることを特徴とするマイクロデバイス用基板。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載のマイクロデバイス用基板において、前記金属が、ニッケル、鉄、コバルト、チタン、ハフニウム及び亜鉛から選択される少なくとも1種であることを特徴とするマイクロデバイス用基板。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1項に記載のマイクロデバイス用基板において、
前記IV族元素が、シリコン、ゲルマニウム及び炭素からなる群から選択される少なくとも1種の元素であることを特徴とするマイクロデバイス用基板。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか1項に記載のマイクロデバイス用基板において、
前記貫通配線が、ニッケルシリサイド又はニッケルシリサイドを含有するニッケルからなることを特徴とするマイクロデバイス用基板。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか1項に記載のマイクロデバイス用基板において、
前記基板本体の厚さが50〜100μmであり、前記貫通孔の内径が5〜20μmであることを特徴とするマイクロデバイス用基板。
【請求項9】
請求項1〜8の何れか1項に記載のマイクロデバイス用基板において、
前記貫通配線を覆うように表面全体に絶縁層が設けられていることを特徴とするマイクロデバイス用基板。
【請求項10】
請求項1〜9の何れか1項に記載のマイクロデバイス用基板において、
前記貫通孔の前記貫通配線の下地に酸化物膜を有することを特徴とするマイクロデバイス用基板。
【請求項11】
請求項1〜10の何れか1項に記載のマイクロデバイス用基板において、
前記基板本体が、シリコン基板又はガラス基板であることを特徴とするマイクロデバイス用基板。
【請求項12】
貫通孔を有すると共に前記貫通孔内にIV族元素からなるIV族元素材料が設けられた基板本体の前記IV族元素薄膜に対して、前記IV族元素と化合物を形成する金属とハロゲンラジカルとの化合物である前駆体及びハロゲンラジカルを作用させて、前記貫通孔内にIV族元素と金属との化合物を含む貫通配線を形成する工程を具備することを特徴とするマイクロデバイス用基板の製造方法。
【請求項13】
請求項12に記載のマイクロデバイス用基板の製造方法において、
前記貫通配線を形成する工程の前工程として、前記基板の前記貫通孔の内周面に前記IV族元素材料からなるIV族元素薄膜を形成する工程を具備し、
前記貫通孔の内周面にIV族元素薄膜を設ける際に、当該IV族元素薄膜の内側に、前記金属とハロゲンラジカルとの化合物である前駆体及びハロゲンラジカルを作用させて前記貫通配線を形成しつつ当該貫通配線で埋め込むことができる空隙を有するようにすることを特徴とするマイクロデバイス用基板の製造方法。
【請求項14】
請求項12に記載のマイクロデバイス用基板の製造方法において、
前記貫通配線を形成する工程の前工程として、前記基板の前記貫通孔の深さ方向の少なくとも一部を前記IV族元素材料で埋め込む工程を具備することを特徴とするマイクロデバイス用基板の製造方法。
【請求項15】
請求項12〜14の何れか1項に記載のマイクロデバイス用基板の製造方法において、
前記基板本体は、絶縁材料で形成されると共に前記貫通孔の開口を塞ぐ補助基板を一方面側に当接した状態で処理されることを特徴とするマイクロデバイス用基板の製造方法。
【請求項16】
請求項12〜15の何れか1項に記載のマイクロデバイス用基板の製造方法において、前記金属が、ニッケル、鉄、コバルト、チタン、ハフニウム及び亜鉛から選択される少なくとも1種であることを特徴とするマイクロデバイス用基板の製造方法。
【請求項17】
請求項12〜16の何れか1項に記載のマイクロデバイス用基板の製造方法において、
前記IV族元素が、シリコン、ゲルマニウム及び炭素からなる群から選択される少なくとも1種の元素であることを特徴とするマイクロデバイス用基板の製造方法。
【請求項18】
請求項12〜17の何れか1項に記載のマイクロデバイス用基板の製造方法において、
前記貫通配線が、ニッケルシリサイド又はニッケルシリサイドを含有するニッケルからなることを特徴とするマイクロデバイス用基板の製造方法。
【請求項19】
請求項12〜18の何れか1項に記載のマイクロデバイス用基板の製造方法において、
前記基板本体の厚さが50〜100μmであり、前記貫通孔の内径が5〜20μmであることを特徴とするマイクロデバイス用基板の製造方法。
【請求項20】
請求項12〜19の何れか1項に記載のマイクロデバイス用基板の製造方法において、
前記貫通配線を覆うように表面全体に絶縁層を設ける工程をさらに具備することを特徴とするマイクロデバイス用基板の製造方法。
【請求項21】
請求項12〜20の何れか1項に記載のマイクロデバイス用基板の製造方法において、
前記貫通孔の内周面に前記IV族元素薄膜を形成する前に、当該貫通孔の内周面に酸化物膜を形成する工程を具備することを特徴とするマイクロデバイス用基板の製造方法。
【請求項22】
請求項12〜21の何れか1項に記載のマイクロデバイス用基板の製造方法において、
前記基板本体が、シリコン基板又はガラス基板であることを特徴とするマイクロデバイス用基板の製造方法。
【請求項23】
請求項1〜11の何れか1項に記載されたマイクロデバイス用基板を具備することを特徴とするマイクロデバイス。
【請求項24】
請求項12〜22の何れか1項に記載のマイクロデバイス用基板の製造方法で製造された基板を用いてマイクロデバイスを製造することを特徴とするマイクロデバイスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−59971(P2009−59971A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−227113(P2007−227113)
【出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【出願人】(000227294)キヤノンアネルバ株式会社 (564)
【Fターム(参考)】