説明

マイクロニードルの成形方法

少なくとも1つのマイクロニードル(12)のネガ像を有する金型インサート(210)、圧縮コア(240)、および、金型インサートと圧縮コアの相互運動を可能にするように構成された金型ハウジングを備える金型装置を使用するマイクロニードルの成形方法。金型装置は、開放位置と閉鎖位置を有する。金型装置を閉鎖位置に置き、閉鎖した金型装置の中にポリマー材料を射出する。圧縮コアと金型インサートの相互運動により、射出されたポリマー材料を金型インサートと圧縮コアの間で圧縮する。また、金型装置が射出ゲート(270)を有する側壁を有する成形方法。また、加熱される金型インサートを備える成形方法。また、金型装置に超音波エネルギーなどの高周波数音響エネルギーを加えることを含む成形方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2004年12月7日に出願された米国仮出願第60/634,319号明細書の優先権を主張し、本明細書にその内容全体が組み込まれる。
【0002】
本発明は、マイクロニードルの成形方法に関する。一態様では、本発明はマイクロニードルアレイの成形方法に関する。
【背景技術】
【0003】
認可された化学エンハンサを使用しても、実証された治療価値を有する分子を限られた数しか皮膚を通して輸送することができない。皮膚を通した分子の輸送に対する主なバリアは、角質層(皮膚の最外層)である。
【0004】
皮膚および他の表面を通した治療剤および他の物質の送達に関して使用される、マイクロニードル又はマイクロピンと称されることがある比較的小さい構造の配列を具備するデバイスが開示されてきた。デバイスは、典型的には、治療剤又は他の物質が層を通過して下の組織に入ることができるように角質層を穿刺するため、皮膚に押し当てられる。
【0005】
マイクロニードルおよびマイクロニードルアレイを作製する成形プロセスが以前より開示されてきたが、マイクロニードルは、ポリマー成形プロセスで作製するのが困難な可能性がある非常に微細な構造であり、既知のマイクロニードル成形プロセスには全て、ある一定の欠点がある。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、とりわけ、射出および圧縮成形プロセスの組み合わせを含むマイクロニードルアレイを作製するための改善された成形プロセスを提供する。本発明の望ましい特徴には、最終的な成形品で金型形状を再現し、一貫した高さのマイクロニードルを確実に製造し、経済的な方式でマイクロニードルアレイを製造する能力がある。一実施形態では、本発明は、強靭なエンジニアリング用プラスチックから製造されるマイクロニードルの成形に特に好適である。
【0007】
一実施形態では、本発明は、少なくとも1つのマイクロニードルのネガ像を有する金型インサート(mold insert)、圧縮コア、射出ゲートを有する側壁、および、金型インサートと圧縮コアの相互運動を可能にするように構成された金型ハウジングを備える金型装置を使用するマイクロニードルの成形方法である。金型装置は、開放位置と閉鎖位置を有する。金型装置を閉鎖位置に置き、射出ゲートを通して閉鎖した金型装置の中にポリマー材料を射出する。圧縮コアと金型インサートの相互運動により、射出されたポリマー材料を金型インサートと圧縮コアの間で圧縮する。金型を開放し、成形されたマイクロニードルを金型から取り出す。
【0008】
別の実施形態では、本発明は、少なくとも1つのマイクロニードルのネガ像を有する金型インサート、圧縮コア、および、金型インサートと圧縮コアの相互運動を可能にするように構成された金型ハウジングを備える金型装置を使用するマイクロニードルの成形方法である。金型装置は、開放位置と閉鎖位置を有する。金型インサートを200°F(93.3℃)以上の温度に加熱する。金型装置を閉鎖位置に置き、閉鎖した金型装置の中にポリマー材料を射出する。圧縮コアと金型インサートの相互運動により、射出されたポリマー材料を金型インサートと圧縮コアの間で圧縮する。金型を開放し、成形されたマイクロニードルを金型から取り出す。
【0009】
別の実施形態では、本発明は、少なくとも1つのマイクロニードルのネガ像を有する金型インサート、圧縮コア、および、金型インサートと圧縮コアの相互運動を可能にするように構成された金型ハウジングを備える金型装置を使用するマイクロニードルの成形方法である。金型装置は、開放位置と閉鎖位置を有する。金型装置を閉鎖位置に置き、閉鎖した金型装置の中にポリマー材料を射出する。ポリマー材料は、ASTM D1238により300℃および1.2kgの荷重の条件で測定されるとき、約5g/10分より大きいメルトフローインデックスにより特徴付けられる。少なくとも1つのマイクロニードルのネガ像が、射出されたポリマー材料で実質的に完全に充填されるように、圧縮コアと金型インサートの相互運動により、射出されたポリマー材料を金型インサートと圧縮コアの間で圧縮する。金型を開放し、成形されたマイクロニードルを金型から取り出す。
【0010】
別の実施形態では、本発明は、少なくとも1つのマイクロニードルのネガ像を有する金型インサートを備える金型装置を使用するマイクロニードルの成形方法である。金型装置は、開放位置と閉鎖位置を有する。約5,000Hzより大きい周波数を有する音響エネルギーを金型装置に加える。金型装置を閉鎖位置に置き、閉鎖した金型装置の中にポリマー材料を射出する。金型を開放し、成形されたマイクロニードルを金型から取り出す。一実施形態では、音響エネルギーは超音波エネルギーである。
【0011】
別の実施形態では、本発明は、少なくとも1つのマイクロニードルのネガ像を有する金型インサート、圧縮コア、および、金型インサートと圧縮コアの相互運動を可能にするように構成された金型ハウジングを備える金型装置を使用するマイクロニードルの成形方法である。金型装置は、開放位置と閉鎖位置を有する。金型装置を閉鎖位置に置き、閉鎖した金型装置の中にポリマー材料を射出する。圧縮コアと金型インサートの相互運動により、射出されたポリマー材料を金型インサートと圧縮コアの間で圧縮する。金型を開放し、成形されたマイクロニードルを金型から取り出す。
【0012】
発明を実施するための最良の形態および添付の特許請求の範囲を含む開示の残りの部分を考慮することにより、本発明は当業者に更によく理解される。
【0013】
添付の図面を参照し、本発明の好ましい実施形態を下記に、より詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
マイクロニードルの成形方法の一実施形態を図1〜図4に示す。図1は、開放位置にある金型装置を示す。金型装置は、第1の金型部材220と第2の金型部材230から形成される金型ハウジングを備える。第1の金型部材220は、少なくとも1つのマイクロニードルのネガ像を有する金型インサート210を部分的に取り囲む。図示されている実施形態では、金型インサート210はマイクロニードルアレイのネガ像を有する。第2の金型部材230は、慣用的にはピストンの形態である圧縮コア240を部分的に取り囲む。金型ハウジングは、金型インサート210と圧縮コア240の相互運動を可能にするように構成されている。油圧シリンダ260によって駆動されるくさび250は、コア−くさび接続部245を介して圧縮コア240に力を伝達する。接続部245は、別々の片として示されているが、圧縮コア240の一部として一体形成されていてもよく、又は、くさび250の運動に基づく機械的力を伝達することができる任意の慣用的な連結であってもよい。投入ライン280を使用して、溶融ポリマー材料を、射出ゲート270を通して、金型装置が閉鎖位置にあるときに形成される金型キャビティの中に投入する。
【0015】
金型装置200は、図2では閉鎖位置で示されている。「C」として識別されている矢印は、第2の金型部材230、圧縮コア240、およびくさび250を備える装置の右部分の運動方向を示すが、図示されている金型装置の向きは任意であり、必要に応じて回転されても又は逆にされてもよいことに留意されたい。金型装置の左部分は、第1の金型部材220と金型インサート210を備える。閉鎖位置では、装置の左部分と右部分は、接合面によって互いに当接静止し、ポリマー材料が金型装置の中に射出されることを可能にする。左部分と右部分は、開放位置では離間し、成形されたマイクロニードルを金型から取り出すことが可能になる。
【0016】
閉鎖位置にある金型装置200は、金型キャビティ290を画成する。金型キャビティ290の形状は、1つの主面を金型インサート210によって、反対側の主面を圧縮コア240の近端275によって画成される。また、第2の金型部材230と金型インサート210は、側壁285も画成する。射出ゲート270は、側壁285上の開口部である。一実施形態では、側壁285は、完全に金型インサート210によって形成されてもよい、即ち、圧縮コア240の近端275は、第2の金型部材230の端部と同一平面上にある。別の実施形態では、側壁285は完全に第2の金型部材230によって形成されてもよい、即ち、金型インサートの右手側の面は第1の金型部材220の表面と同一平面上にある。側壁285は前記説明の任意の組み合わせによって形成されてもよく、別々の片である必要はないが、金型装置の部品全部の相互関係によって形成される金型キャビティ290の側面を画成することが意図されている。金型装置が、圧力下で溶融ポリマー材料で充填され得る金型キャビティを画成する限り、他の設計も同様に好適である。
【0017】
金型装置が閉鎖位置にあるとき、溶融ポリマー材料は投入ライン280および射出ゲート270を通して射出され、金型キャビティ290を部分的に充填する。金型キャビティ290が所望の量まで部分的に充填されると、油圧シリンダ260は図3に「A」として識別されている矢印の方向にくさび250を移動させ、金型装置200を圧縮位置に置く。くさび250が移動すると、「B」として識別されている矢印の方向に圧縮コア240が対応して移動する、即ち、圧縮コア240と金型インサート210の相互運動がある。従って、溶融ポリマー材料は金型キャビティ290内で圧縮され、それによって金型インサート210のマイクロニードルアレイのネガ像の充填を助ける。金型装置はその後、図4に示されるように開放され、矢印は、開放位置に戻る様々な部品(圧縮コア240、くさび250、第2の金型部材230)の運動方向を示す。次いで、成形されたマイクロニードルアレイ295を開放した金型装置から、突出しピン(図示せず)の使用などの任意の慣用的な方法で付き出す。その後、必要に応じて図1〜図4に示されるサイクルを繰り返し、複数の成形品を製造してもよい。
【0018】
一実施形態では、金型装置は、複数の個々の金型キャビティを有するように構成されていてもよい。射出および圧縮の1回のサイクルの結果、複数のマイクロニードルアレイが製造されるように、各金型キャビティはマイクロニードルアレイのネガ像を有する。個々の金型キャビティの数は、例えば、4以上、しばしば8以上、場合によっては32以上であってもよい。溶融プラスチック材料を金型キャビティの中に射出する射出圧力は、充填されるキャビティの形状、サイズ、および数に応じて調整されてもよい。個々の金型キャビティへの圧縮力は、圧縮力が異なるキャビティ全体にわたって均一に分配されるように構成されている油圧シリンダなどの単一のデバイスによって提供されてもよい。或いは、2つ以上のデバイスを使用して圧縮力を供給してもよい。例えば、各金型キャビティに、金型キャビティ2つごとに、又は金型キャビティ4つごとに圧縮力を供給する油圧シリンダを提供してもよい。
【0019】
一実施形態では、金型インサート210は約200°F(93.3℃)以上の温度に加熱され、250°F(121℃)以上の温度に加熱されることがある。金型インサートの加熱は、射出されたポリマー材料が金型インサートの微細構造に流入することを助けるのに望ましい場合がある。特に、金型インサートの加熱によって、より低い圧縮力の使用が可能になる場合がある、および/又はサイクル時間が短縮する場合がある。好ましい実施形態では、金型インサート210の温度は、実質的に一定に保持される。好ましくは、顕著な歪又はそりが発生することなく成形品が金型から脱離され、取り扱われることを可能にするのに十分な剛性を有する成形品がポリマー材料から形成される温度以下に金型インサートを維持する。これによって、金型インサートのより容易な充填が可能になると同時に、成形品を取り出す前の別々の冷却工程が回避される。例えば、第1の金型部材などの金型装置の別の部品を間接的に加熱し、熱が金型インサートに伝達されることによる、既知の任意の慣用的な手段で金型インサートの加熱を達成することができる。
【0020】
別の実施形態では、金型インサート210の温度をサイクルさせて、サイクルの充填部分の間の方が高温になり、成形品が付き出されるときの方が低温になるようにしてもよい。このいわゆる「熱サイクル」プロセスは、成形品の充填および取り出しを助ける場合がある。熱サイクル成形の更なる詳細は、米国特許出願第60/546780号明細書および米国特許第5,376,317号明細書(マウス(Maus)ら)に見出され、それらの開示内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0021】
一実施形態では、金型装置は、図5Aに示されているように、金型キャビティ290に接続されているオーバーフローベント400を具備する。投入ライン280を通して供給される溶融ポリマー材料は、射出ゲート270を通過し、金型キャビティ290に入る。矢印は投入ライン280から金型キャビティ290に入るポリマー材料の略流動方向を示す。ポリマー材料が金型キャビティを充填する時、それはキャビティ内にあった空気を置換する。一実施形態では、置換された空気は、金型キャビティ内又は金型インサートのマイクロニードルのネガ像内のポケットにほとんど又は全く捕捉されない。
【0022】
オーバーフローベント400は、置換された空気がキャビティから出て行くことを可能にする出口ゲートの役割をし、このようにして、金型キャビティをポリマー材料でより均一に充填することが可能になる。オーバーフローベントは、金型キャビティの外面上のどこに位置決めされていてもよい。一実施形態では、オーバーフローベントは、金型キャビティの側壁に沿って位置決めされる。図5Aに示されている実施形態では、オーバーフローベント400は側壁に沿って位置決めされ、射出ゲート270の反対側にある。図5Bは、投入ライン280内のポリマー材料282、オーバーフローベント400内のポリマー材料402、および金型キャビティ290内のマイクロニードルアレイ295の形態のポリマー材料の詳細な側面図を示す。
【0023】
様々なポリマー材料が本発明で使用するのに好適となり得る。一実施形態では、材料は、皮膚表面に適用されるとき曲げ又は破壊に抵抗する比較的硬質で強靭なマイクロニードルを形成できるように選択される。一態様では、ポリマー材料は、ASTM D1238により300℃および1.2kgの荷重の条件で測定されるとき、約5g/10分より大きいメルトフローインデックスを有する。メルトフローインデックスは、約10g/10分以上であることが多く、約20g/10分以上のことがある。別の実施形態では、ASTM D638(2.0インチ/分)により測定される破断点引張伸びは、約100パーセントより大きい。更に別の実施形態では、ASTM D256により測定される衝撃強さ、「ノッチ付きアイゾット」(73°F)は、約5フィート・ポンド/インチより大きい。好適な材料の例としては、ポリカーボネート、ポリエーテルイミド、ポリエチレンテレフタレート、およびこれらの混合物が挙げられる。一実施形態では、材料はポリカーボネートである。
【0024】
圧縮力は図示されている実施形態のくさびによって供給されるが、力を加える既知の任意の慣用的な方法を使用して、金型キャビティに圧縮力を提供してもよい。圧縮コアは、金型キャビティの主面を形成し、金型キャビティ内の材料に圧縮力を加えることを可能にする任意の好適な形状を有してもよい。圧縮コアは、ピストン又はピンの形態であってもよく、望ましくはピストン又はピンの面は、形成される成形品と同じ直径である。当業者には、例えば、油圧パンケーキシリンダを使用することなどの、力を加える多くの慣用的な方法を使用し得ることが分かる。
【0025】
本発明の一実施形態では、基材と一体形成されている成形されたマイクロニードルを有するマイクロニードルアレイが作製され得る。図6はこのようなマイクロニードルアレイ10を示す。マイクロニードル12がマイクロニードル基材表面16から突出しているアレイ10の一部が図示されている。マイクロニードル12は任意の所望のパターン14に配置されていても、又は基材表面16上にランダムに分布していてもよい。図示されているように、マイクロニードル12は、長方形の配置に置かれている均一な間隔の列に配置されている。一実施形態では、本発明のアレイの患者に面する表面の面積は、約0.1cm2より大きく約20cm2未満、場合によっては、約0.5cm2より大きく約5cm2未満である。図6に示されている実施形態では、基材表面16の一部はパターン形成されていない。一実施形態では、パターン形成されていない表面の面積は、患者の皮膚表面に面するデバイス表面の全面積の約1パーセントより大きく、約75パーセント未満である。一実施形態では、パターン形成されていない表面の面積は、約0.10平方インチ(0.65cm2)より大きく、約1平方インチ(6.5cm2)未満である。別の実施形態(図示せず)では、マイクロニードルは、アレイ10の実質的に全表面積に配置されている。基材表面の厚さは、マイクロニードルアレイの所望の最終用途に応じて様々であってよい。一実施形態では、基材表面は、厚さが200ミル(0.51cm)未満であってもよく、厚さが100ミル(0.25cm)未満であることが多く、厚さが50ミル(0.13cm)未満のことがある。基材表面は、典型的には厚さが1ミル(25.4μm)より大きく、厚さが5ミル(127μm)より大きいことが多く、厚さが10ミル(203μm)より大きいことがある。
【0026】
マイクロニードルは、典型的には、高さが1000ミクロン未満であり、高さが500ミクロン未満であることが多く、高さが250ミクロン未満のことがある。マイクロニードルは、典型的には高さが20ミクロンより大きく、高さが50ミクロンより大きいことが多く、高さが125ミクロンより大きいことがある。
【0027】
マイクロニードルは、アスペクト比によって特徴付けられ得る。本明細書で使用する時、「アスペクト比」の用語は、(マイクロニードルの基部を取り囲む表面より上の)マイクロニードルの高さ、対、最大基部寸法、即ち、(マイクロニードルの基部が占める表面で)基部が占める最長直線寸法の比である。長方形の基部を有する角錐状のマイクロニードルの場合、最大基部寸法は、基部を横切って反対側にある角を結ぶ対角線である。本発明のマイクロニードルのアスペクト比は、典型的には約2:1〜約5:1であり、約2.5:1〜約4:1のことがある。
【0028】
本発明の方法により作製されるマイクロニードルアレイは、以下の特許および特許出願に記載されているものなどの様々な構成のいずれかを備えてもよく、それらの開示内容は参照により本明細書に組み込まれる。マイクロニードルデバイスの一実施形態は、米国特許出願公開第2003/0045837号明細書に開示されている構造を備える。前述の特許出願に開示されている微細構造は、先細りの構造を有するマイクロニードルの形態であり、それらは各マイクロニードルの外面に形成された少なくとも1つのチャネルを具備する。マイクロニードルは、一方向に細長い基部を有してもよい。細長い基部を有するマイクロニードルのチャネルは、細長い基部の端部の1つからマイクロニードルの先端の方に延びてもよい。マイクロニードルの側部に沿って形成されたチャネルは、任意に、マイクロニードルの先端に届かずに終端してもよい。マイクロニードルアレイは、また、マイクロニードルアレイが配置されている基材の表面に形成された導管構造を具備してもよい。マイクロニードルのチャネルは、導管構造と流体連通していてもよい。マイクロニードルデバイスの別の実施形態は、切頭状の先細りの形状と制御されたアスペクト比を有するマイクロニードルを記載している、2003年7月17日に出願された同時係属中の米国特許出願第10/621620号明細書に開示されている構造を備える。マイクロニードルアレイの更に別の実施形態は、中空の中心チャネルを有する先細りの構造を記載している米国特許第6,313,612号明細書(シャーマン(Sherman)ら)に開示されている構造を備える。マイクロニードルアレイの更に別の実施形態は、マイクロニードルの先端の頂部表面に少なくとも1つの縦刃を有する中空のマイクロニードルを記載している、国際公開第00/74766号パンフレット(ガートシュタイン(Gartstein)ら)に開示されている構造を備える。
【0029】
図7を参照すると、各マイクロニードル12は、基材表面16上に基部20を具備し、マイクロニードルは基材表面より上で先端22となって終端する。図7に示されているマイクロニードル基部20は長方形の形状であるが、マイクロニードル12およびそれと結合している基部20の形状は様々であってもよく、基部には、例えば、1つ以上の方向に沿って細長いものがあっても、全方向で対称的なものがあってもよいことを理解されたい。基部20は、正方形、長方形、又は楕円形などの任意の好適な形状に形成されてもよい。一実施形態では、基部20は楕円形の形状を有してもよい(即ち、基材表面16上の伸長軸に沿って細長い)。
【0030】
本発明のマイクロニードルを特徴付け得る方法の1つは、高さ26である。マイクロニードル12の高さ26は、基材表面16から測定されてもよい。例えば、マイクロニードル12の基部から先端までの高さは、基材表面16から測定した時、約500マイクロメートル以下であることが好ましい場合がある。或いは、マイクロニードル12の高さ26は、基部20から先端22まで測定した時、約250マイクロメートル以下であることが好ましい場合がある。また、成形されたマイクロニードルの高さは、金型インサートのマイクロニードルトポグラフィーの高さの約90%より大きいことが好ましい場合があり、より好ましくは約95%より大きい。マイクロニードルは、金型インサートから付き出される時、僅かに変形又は伸長する場合がある。成形された材料が軟化点より低温に冷却されなかった場合、この状態は最も顕著であるが、材料が軟化点より低温に冷却された後でも、依然として起こる場合がある。成形されたマイクロニードルの高さは、金型のマイクロニードルトポグラフィーの高さの約115%未満であることが好ましく、より好ましくは約105%未満である。
【0031】
本発明のマイクロニードルの全体形状は先細りであってもよい。例えば、マイクロニードル12は、基材表面16の基部20の方が大きく、基材表面16から離れるように延び、先端22まで先細りになってもよい。一実施形態では、マイクロニードルの形状は角錐状である。別の実施形態では、マイクロニードルの形状は略円錐状である。一実施形態では、マイクロニードルが、基部と整列した平面で測定される表面積約20平方マイクロメートル以上、且つ100平方マイクロメートル以下の平坦な先端を有する、2003年7月17日に出願され、「マイクロニードルデバイスおよびマイクロニードル送達装置(MICRONEEDLE DEVICES AND MICRONEEDLE DELIVERY APPARATUS)」と題された、同時係属中で本出願人に譲渡された米国特許出願第10/621620号明細書に記載されているもののように、本マイクロニードルは先端の形が尖っていない。一実施形態では、平坦な先端の表面積は、基部と整列した平面で測定される断面積として測定され、その平面は基部から0.98hの距離に位置し、ここで、hは基部から先端まで測定される基材表面より上のマイクロニードルの高さである。
【0032】
説明のため、図2および図3の圧縮コア240の運動を誇張して示す。一実施形態では、金型キャビティ290の大部分は、圧縮前に実質的に充填され、圧縮工程は、主に金型インサート210のマイクロニードル12のネガ像を充填するために実施される。圧縮コアの運動は、一般に、初期射出工程で充填されていないままの金型キャビティの容積とサイズが類似の又はそれより大きい容積を置換するように選択される。特に、金型キャビティ内のポリマー材料の収縮のため、より大きい容積を置換することが望ましい場合がある。また、金型キャビティからパーティングラインのバリとして逃げる材料のため、又は金型プレートの撓みのため、より大きい容積を置換することが望ましい場合がある。圧縮コアの運動および得られる置換容積は、金型キャビティのサイズ、金型キャビティ内の特徴の形状および数、初期射出工程で充填された金型キャビティの量、並びに成形される材料の種類を含む多数のパラメータに応じて調整されてもよい。金型インサートのマイクロニードル像は高さと容積が両方とも比較的小さいため、圧縮ストロークである圧縮コアの運動は、典型的には、約0.001〜0.010インチ(25μm〜250μm)であり、0.002〜0.008インチ(50μm〜200μm)であることが多く、0.003〜0.006インチ(75μm〜150μm)のことがある。
【0033】
加えられる圧縮力は、典型的には、5000psi(34500kPa)より大きく、30000psi(207000kPa)より大きいことがあり、60000psi(414000kPa)より大きいことが多い。射出−圧縮成形に関する追加の詳細は、米国特許第4,489,033号明細書(宇田(Uda)ら)、同第4,515,543号明細書(ハムナー(Hamner))および同第6,248,281号明細書(阿部(Abe)ら)に見出され、これらの開示内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0034】
一実施形態では、金型を開放し、成形品を付き出す前に、少なくとも1つのマイクロニードルのネガ像は、射出されたポリマー材料で実質的に完全に充填される。実質的に完全に充填されるは、成形されたマイクロニードルの高さが、金型インサートのマイクロニードルトポグラフィーの対応する高さの約90パーセントより大きくなければならないと理解されたい。一実施形態では、成形されたマイクロニードルの高さは、金型インサートのマイクロニードルトポグラフィーの対応する高さの約95パーセントより大きい。成形されたマイクロニードルの高さが、金型インサートのマイクロニードルトポグラフィーの対応する高さと実質的に同じ(例えば、95パーセント〜105パーセント)であることが好ましい。
【0035】
本明細書で使用するのに好適な金型インサートは、既知の任意の慣用的な方法で製造されてもよい。一方法では、ポジの「マスター」を使用して金型インサートを形成する。ポジのマスターは、材料をマイクロニードルアレイが成形される形状に形成することによって製造される。このマスターを、銅、鋼、アルミニウム、真鍮、および他の重金属を含む材料から機械加工することができるが、これらに限定されない。また、マスターは、シリコーン金型を使用して圧縮成形される熱可塑性又は熱硬化性ポリマーから製造することもできる。マスターは、所望されるマイクロニードルアレイを直接複製するように製造される。多数の方法でポジのマスターを作製してもよく、例えば、角錐、円錐、又はピンなどの様々な形状のいずれかのマイクロニードルを有してもよい。ポジのマスターの突起は、後で形成される金型インサートを使用して成形する時に形成されるマイクロニードルアレイが、ポジのマスターと実質的に同じトポグラフィーを有するように、適切なサイズと間隔に作られる。
【0036】
米国特許第5,152,917号明細書(ピーパー(Pieper)ら)および米国特許第6,076,248号明細書(フープマン(Hoopman)ら)に開示されているダイヤモンド旋削などの直接機械加工技術によってポジのマスターを作製してもよく、それらの開示内容は参照により本明細書に組み込まれる。例えば、ダイヤモンド旋盤を使用することによって金属表面にマイクロニードルアレイを形成することができ、それからキャビティの形状の配列を有する金型インサートが製造される。アルミニウム、銅、又は青銅などのダイヤモンド旋削に適用可能な金属表面に所望の形状が残るようにダイヤモンド旋削した後、溝が付いた表面にニッケルめっきを施して金属マスターを提供することにより、金属のポジのマスターを製造することができる。電気鋳造することによりポジのマスターから金属製の金型インサートを製造することができる。これらの技術は、米国特許第6,021,559号明細書(スミス(Smith))に更に記載されており、その開示内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0037】
別の実施形態では、本発明は、マイクロニードルの成形方法を含み、それによって、超音波エネルギーなどの高周波数音響エネルギーが金型装置200に加えられる。超音波エネルギーなどの高周波数音響エネルギーは、キャビティ圧力および圧縮ストロークによって材料が金型キャビティに圧入される前に、射出されたポリマー材料が金型インサートの面に当たって硬化するのを防止することを助けるために加えられる。一実施形態では、超音波エネルギーは、例えば、図1〜図4に示されているように、射出および圧縮成形の組み合わせと共に、金型インサート210又は投入ラインに加えられる。一実施形態では、ポリマー材料は完全に充填する前にチャネルに「被膜を形成する」又はチャネル内で固化する傾向があり、このようにして更なる溶融材料流を閉塞させ得るため、超音波エネルギーを使用することによって、ポリマー材料が狭いチャネルを充填する前に実質的に冷却することが防止される。超音波エネルギーと共に使用される圧縮力は、典型的には、2000psi(13800kPa)より大きく、5000psi(34500kPa)より大きいことが多く、10000psi(69000kPa)より大きいことがある。
【0038】
図8を参照すると、超音波ホーン802を金型インサート810の一方側に当てて配置してもよい。第1の金型部材820は、ホーン802、金型インサート810および投入ライン880を支持する。第2の金型部材830は前述のように使用される。ポリマー材料の射出工程中、又は射出されたポリマー材料の圧縮工程中など、金型装置が閉鎖位置にある時、いつでもホーン802から超音波エネルギーを加えてよい。一実施形態では、超音波エネルギーは、最初、ポリマー材料の射出工程の開始後に加えられる。一実施形態では、超音波エネルギーは、最初、圧縮工程より前に加えられる。超音波エネルギーの印加は、好ましくは、金型装置が開放される前に停止される。一実施形態では、約0.5〜5秒間、場合によっては約0.5〜2秒間、超音波エネルギーを加えてもよい。
【0039】
別の実施形態では、図9A、図9Bの超音波ホーン902は、平坦な十字形の部材として示されている。超音波ブースタ904、906が、超音波ホーン902の反対側に連結されている。金型インサート910は、それが十字形のホーンの1つの「ローブ」上に配置されるように位置決めされた状態で示されている。ブースタ904、906から動力が加わると、図9BにEで標識されている両頭矢印で示されるように、金型インサート908の面を横切る剪断力の方向にエネルギーが加わる。図示されているように、超音波ホーン902の面は、金型インサート910の背面と同一平面で接触する。或いは、金型インサート910は、(図10に示されているように)超音波ホーン902の表面の中に部分的に又は完全に窪んでいてもよい。金型装置の残りの部分は、前述のように操作される。金型装置900は、また、装置900が閉鎖位置に置かれるときに形成される金型キャビティの中にポリマー材料を導入するのに好適な1つ以上の投入ラインおよび射出ゲート(図示せず)も有する。ポリマー材料の射出工程中、又は射出されたポリマー材料の圧縮工程中、ホーン902から超音波エネルギーを加えてもよい。金型装置を開放する前に超音波エネルギーの印加を停止してもよい。
【0040】
更に別の実施形態では、超音波ホーン602は、図10に示されるように整列した平坦な十字形の部材であってもよい。金型インサート670は、超音波ホーン602の一面の中に部分的に窪んだ状態で示されている。超音波ブースタ604、606は、超音波ホーン602の隣接する側に整列した状態で示されている。コンバータ(図示せず)をブースタ606に連結し、マイクロニードルキャビティの長さに平行な軸に沿って超音波振動させる。金型装置の残りの部分は、前述のように操作される。ポリマー材料の射出工程中、又は射出されたポリマー材料の圧縮工程中、ホーン602から超音波エネルギーを加えてもよい。金型装置を開放する前に超音波エネルギーの印加を停止してもよい。
【0041】
この実施形態および前述の実施形態では、例えば、ブースタを、金型インサートに接触しない超音波ホーンの各ローブに当てて配置することにより、又は、ブースタを超音波ホーンの他の面に当てて配置することにより、超音波ブースタの配置を変えてもよい。超音波ホーンは、超音波エネルギーを金型装置に伝達するのに好適な多数の他の慣用的な形状のいずれかを有してもよい。例えば、(図8に示されているような)段付きシリンダ、段付きバー、又は長方形のバーを使用してもよい。マイクロニードルアレイの平面に平行な方向に、マイクロニードルアレイの平面に垂直な方向に、又はマイクロニードルアレイに対して他の何らかの角度で超音波エネルギーを加えてもよい。一実施形態では、中実の第2の金型部材530(図11Aに示されている)を使用して、第1の金型部材520を押圧し、それによって金型インサート510と共に金型キャビティを形成してもよい。射出されたポリマー材料を金型インサートの中に充填し易くするため、超音波ホーン502およびブースタ504、506を前述のように使用する。金型インサート510は、それが十字形のホーンの1つの「ローブ」上に配置されるように位置決めされた状態で示されている。第1の金型部材520と第2の金型部材530は、任意に、複数の金型インサートを超音波ホーン502に当てて所定の位置に保持し得るように構成されていてもよい。図11Bは、3つの任意選択的金型インサート512をホーン502に当てて配置し得る場所を示している。金型装置500は、また、装置500が閉鎖位置に置かれるときに形成される金型キャビティの中にポリマー材料を導入するのに好適な1つ以上の投入ラインおよび射出ゲート(図示せず)を有する。前述の実施形態のいずれかで、金型インサートのサイズおよび超音波ホーンのサイズを考慮して、2つ以上の金型インサートを超音波ホーンに当てて配置することを採用してもよい。圧縮コアを採用する実施形態では、各金型インサートと共に個々の圧縮コアを使用することが有利な場合もあれば、又は、或いは単一の圧縮コアが、2つ以上の金型インサートに圧縮力を同時に提供するようなサイズに作られ、適切にゲート制御される場合もある。
【0042】
使用される超音波エネルギーは周波数が様々であってよいが、典型的には、約20,000Hz以上の周波数を有するものと定義される。任意の超音波周波数を使用してよいが、典型的には60,000Hz未満であり、40,000Hz未満であることが多く、30,000Hz未満のことがある。一実施形態では、周波数は約20,000Hzである。前述の図8〜図11の特定の実施形態は超音波エネルギーについて言及しているが、約5,000Hzより大きい周波数を有する比較的高い周波数の音響エネルギーも、金型インサートの狭いチャネルを充填することを助ける振動エネルギーを提供するのに好適である。一実施形態では、音響エネルギーは、約10,000Hz〜60,000Hzの周波数を有し、約15,000Hz〜40,000Hzの周波数を有することが多い。
【0043】
超音波ホーンを使用して超音波エネルギーを加えてもよい。超音波ホーンの運動の振幅は、典型的には、約0.005インチ(127μm)未満であり、約0.002インチ(51μm)未満であることが多い。一実施形態では、超音波ホーンの運動の振幅は、約0.0005インチ(12.7μm)〜0.0015インチ(38.1μm)であってもよい。超音波エネルギーは、一般に、所望の周波数の電気エネルギーを供給する電源を使用して供給される。電源は、典型的には、500〜3000Wの電力を提供する。電気エネルギーはコンバータ又は変換器に供給され、それによって電気エネルギーは同じ周波数を有する機械エネルギーに変換される。次いで、機械的振動は超音波ホーンによって増幅又は増強され、伝達される。
【0044】
超音波ホーンは、振動エネルギーが金型装置に伝達されるように、金型装置に対して位置する。例えば、超音波ホーンが金型インサートなどの金型装置の一部と直接接触することが望ましい場合がある。超音波ホーンが単に金型インサートに当てて保持されるように装置が構成されていてもよく、又は、超音波ホーンが任意の慣用的な手段で金型インサートに物理的に接続されてもよい。一実施形態では、超音波ホーンは金型インサートに直接溶接又は接着されていてもよい。別の実施形態では、超音波ホーンは、中に金型インサートを圧力嵌めすることができる窪んだ開口部を有してもよい。或いは、金型インサートを冷却し、このようにして寸法収縮を引き起こさせ、ホーン内の窪んだ開口部に入れた後、加温および膨張させ、このようにしてしっかりと取り付けることができる。一実施形態では、超音波ホーンおよび金型インサートを中間部材で互いに接続してもよい。このような中間部剤は、望ましくは、超音波エネルギーをホーンから金型インサートに効率的に伝達するように選択される。別の実施形態では、超音波ホーンが射出されたポリマー材料と直接接触するように、超音波ホーンは金型インサートと反対側の金型の面の一部又は全部を構成してもよい。
【0045】
別の実施形態では、本発明は、少なくとも1つのマイクロニードルのネガ像を有する金型インサート、圧縮コア、および、金型インサートと圧縮コアの相互運動を可能にするように構成された金型ハウジングを備える金型装置を使用するマイクロニードルの成形方法である。金型装置は、開放位置と閉鎖位置を有する。金型装置を閉鎖位置に置き、閉鎖した金型装置の中にポリマー材料を射出する。圧縮コアと金型インサートの相互運動により、射出されたポリマー材料を金型インサートと圧縮コアの間で圧縮する。金型を開放し、成形されたマイクロニードルを金型から取り出す。ポリマー材料は射出ゲートを通して金型装置の中に射出される。射出ゲートは、金型キャビティの側壁に沿っていてもよく(即ち、側面にゲートが設けられている)、又は、金型キャビティの主面に沿って整列していてもよい(即ち、中心にゲートが設けられている)。好適な射出ゲートの例としては、高温先端ゲート、弁ゲート、タブゲート、トンネルゲート、カシューゲート、および低温3枚型ピンゲートが挙げられる。
【0046】
本発明の方法で作製されるマイクロニードルアレイは、ワクチン接種など、経皮送達の変形で皮膚を通して、又は、皮内若しくは局所治療のために皮膚に薬物(任意の1種類又は複数種類の薬剤を含む)を送達するのに好適な場合がある。
【0047】
一態様では、分子量の大きい薬物を経皮的に送達し得る。薬物の分子量が増大すると、典型的には、補助なしでの経皮送達は減少する。本発明に使用するのに好適なマイクロニードルデバイスは、受動的経皮送達による送達が通常は困難な大分子の送達に使用される。このような大分子の例としては、蛋白質、ペプチド、核酸配列、モノクローナル抗体、DNAワクチン、多糖類(ヘパリンなど)、および抗生物質(セフトリアキソンなど)が挙げられる。
【0048】
別の態様では、本発明の方法で作製されるマイクロニードルアレイは、受動的経皮送達による送達が他の方法では困難な又は不可能な小分子の経皮送達を向上させる又は可能にするために使用され得る。このような分子の例としては、塩の形態;ビスホスホネート、好ましくはアレンドロン酸ナトリウム又はパミドロン酸ナトリウム(sodium pamedronate)などのイオン性分子;および受動的経皮送達に導かない物理化学的特性を有する分子が挙げられる。
【0049】
別の態様では、本発明の方法により作製されるマイクロニードルアレイは、皮膚科学的治療などにおける分子の皮膚への送達、ワクチン送達を向上させるために、又はワクチンアジュバントの免疫応答を向上させるのに使用され得る。一態様では、マイクロニードルデバイスを適用する前に、薬物を皮膚に(例えば、皮膚表面に綿棒で塗られる溶液の形態で、又は、皮膚表面に摺り込まれるクリームとして)塗布してもよい。
【0050】
即時送達のために、即ち、それらが適用され、適用部位から直ぐに除去される場合に、マイクロニードルデバイスを使用してもよく、又は、それらは長時間(数分から1週間もの長さの範囲であってもよい)、所定の位置に留置されてもよい。一態様では、長時間の送達は、塗布および即時の除去で得ることができるよりも完全な薬物送達が可能になるように、1〜30分であってもよい。別の態様では、長時間の送達は、薬物が持続的に放出されるように、4時間〜1週間であってもよい。
【実施例】
【0051】
実施例1
図1〜図4に概ね示されている装置に、熱サイクル装置(レゴプラス301DG熱サイクル装置(Regoplas 301 DG Thermal Cycling Unit))を装備した55トンの射出成形プレス(ミラコン・シンシナチACT D−シリーズ射出成形プレス(Milacon Cincinnati ACT D−Series Injection Molding Press))を使用して、成形されたマイクロニードルアレイを作製した。往復運動するスクリュの中にポリカーボネートのペレット(レキサン(Lexan)(登録商標)HPS1R−1125、マサチューセッツ州ピッツフィールド、GEプラスチックス(GE Plastics, Pittsfield, MA))を投入し、溶融するまで加熱した。ネガの金型インサートを340°F(171.1℃)の温度(以下、「射出時の溶融温度」と称する)まで加熱した。金型インサートは、2cm2の面積を有する円形のディスクの形状の基材を有するマイクロニードルアレイを提供するような形状であった。金型インサートは、円形のディスクの中心に正方形の形状(1cm2)のマイクロニードルの配列(37×37)のネガ像の形態のキャビティを有するように部分的にパターン形成されていた。マイクロニードルキャビティは、隣接するマイクロニードルキャビティの先端間の距離275ミクロンの規則的な間隔で正方形の形状のパターンに配置されていた。個々のマイクロニードルキャビティは、形状が角錐状であり、深さ250ミクロン、一辺の長さ83.3μmの正方形の開口部を有した。先端は切頭状であり、平坦な正方形の形状の頂部は一辺の長さが5μmであった。金型チャンバを閉鎖し、55トンの力で金型を締め付け、往復運動するスクリュからネガ型の金型インサートの中に材料の全量の第1の部分(成形品のサイズの容積の約50〜95%)を射出することにより、成形サイクルを開始した。材料の第1の部分をネガの金型インサートの中に、0.50インチ/秒(1.27cm/秒)の一定の速度(以下、「射出速度」と称される)で射出した。材料の第1の部分を射出した後、12000psi(81.6MPa)の一定の圧力(以下、「パッキング圧力」と称される)を加え、溶融材料の残りの部分をネガの金型インサートに圧入することによって、プロセスを射出運転から圧力運転モードに切り替えた。パッキング圧力を4秒の一定時間(以下、「保圧時間」と称する)加えた。金型チャンバの高さ(ピストンの面から金型インサートの面まで測定される)が30ミル(762μm)となるように、最初にピストンを位置決めした。溶融材料をマイクロニードルキャビティに圧入するため、ピストンをマイクロニードルキャビティの反対側の方に5ミル(127μm)の距離、移動させることによって圧縮を加えた。その後、パッキング圧力を解除し、ネガの金型インサートを250°F(121.1℃)の突き出し温度(以下、「突き出し時の金型温度」と称する)まで冷却した。次いで、金型チャンバを開放し、マイクロニードルアレイを突き出した。このようにして形成されたマイクロニードルの平均高さは、実体顕微鏡で観察することにより測定した時、250μmであった。
【0052】
実施例2
以下を例外として、実施例1におけるようにマイクロニードルアレイを作製した。第2の金型部材は固定された面を有し、従って圧縮工程(即ち、図11Aに示す)を使用しなかった。射出時の金型温度および突き出し時の金型温度は、共に200°F(93.3℃)であった、即ち、金型温度は一定のままであった。概ね図10に示されているように、金型インサートに超音波エネルギーを加えた。パッキング圧力を加える前(溶融材料の射出開始の約0.5秒後)に超音波エネルギーの電源を入れ、約1.0秒間、超音波エネルギーを加えた。周波数は20,000Hzであり、超音波ホーンの運動の振幅は、1.5ミル(38.1μm)であった。このようにして形成されたマイクロニードルの平均高さは、実体顕微鏡で観察することにより測定した時、240μmであった。
【0053】
実施例3
以下を例外として、実施例1におけるようにマイクロニードルアレイを作製した。射出時の金型温度および突き出し時の金型温度は、共に200°F(93.3℃)であった、即ち、金型温度は一定のままであった。概ね図10に示されるように、金型インサートに超音波エネルギーを加えた。パッキング圧力を加える前(溶融材料の射出開始の約0.5秒後)に超音波エネルギーの電源を入れ、約1.0秒間、超音波エネルギーを加えた。周波数は20,000Hzであり、超音波ホーンの運動の振幅は、1.5ミル(38.1μm)であった。このようにして形成されたマイクロニードルの平均高さは、実体顕微鏡で観察することにより測定した時、245μmであった。
【0054】
本発明の幾つかの実施形態を参照して本発明を説明してきた。前述の詳細な説明は、明確に理解されるように提供されたに過ぎず、それらに不要に限定されるべきではない。本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく前述の実施形態に多くの変更をなし得ることが、当業者には明らかである。従って、本発明の範囲は、本明細書に記載される通りの方法および構造の詳細に限定されるべきではなく、前記の特許請求の範囲の言語によるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】開放位置にある金型装置の一実施形態の概略断面図である。
【図2】閉鎖位置にある金型装置の一実施形態の概略断面図である。
【図3】圧縮位置にある金型装置の一実施形態の概略断面図である。
【図4】突き出された成形品を有する、開放位置にある金型装置の一実施形態の概略断面図である。
【図5A】金型装置の一実施形態の詳細図の概略断面図である。
【図5B】図5Aに示されている金型装置の詳細部分の内側にあるポリマー材料の概略断面側面図である。
【図6】マイクロニードルアレイの概略斜視図である。
【図7】マイクロニードルアレイの顕微鏡写真である。
【図8】金型装置の別の実施形態の概略断面図である。
【図9A】金型装置の更に別の実施形態の概略断面図である。
【図9B】図9Aに示されている金型装置の一部の側面図である。
【図10】金型装置の更に別の実施形態の概略断面図である。
【図11A】金型装置の更に別の実施形態の概略断面図である。
【図11B】図11Aに示されている金型装置の一部の側面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)少なくとも1つのマイクロニードルのネガ像を有する金型インサート、
圧縮コア、および
前記金型インサートと前記圧縮コアの相互運動を可能にするように構成された金型ハウジング、
を備える金型装置を提供する工程であって、前記金型装置が開放位置と閉鎖位置を有する工程、
(ii)前記金型装置を前記閉鎖位置に置く工程、
(iii)前記閉鎖した金型装置の中にポリマー材料を射出する工程、
(iv)前記圧縮コアと前記金型インサートの相互運動によって、前記射出されたポリマー材料を前記金型インサートと前記圧縮コアの間で圧縮する工程、
(v)前記金型を開放する工程、および
(vi)成形されたマイクロニードルを前記金型から取り出す工程、
を含むマイクロニードルの成形方法。
【請求項2】
前記金型装置が、射出ゲートを有する側壁を更に備え、前記ポリマー材料が前記射出ゲートを通して前記閉鎖した金型装置の中に射出される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ポリマー材料が前記射出ゲートを通して前記閉鎖した金型装置の中に射出される前に、前記金型インサートを200°F(93.3℃)以上の温度に加熱する工程を更に含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記側壁がオーバーフローベントを更に備える、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つのマイクロニードルのネガ像が、射出されたポリマー材料で実質的に完全に充填される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記射出されたポリマー材料が、300℃および1.2kgの荷重の条件で約5g/10分より大きいメルトフローインデックスを有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つのマイクロニードルのネガ像が、前記圧縮工程中に、前記射出されたポリマー材料で実質的に完全に充填される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
くさびを使用して前記圧縮コアを前記金型インサートの方に移動させる、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記くさびを前記圧縮コアの運動に垂直な方向に移動させる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記圧縮コアを前記金型インサートの方に0.002インチ(50.8μm)〜0.010インチ(254μm)の距離、移動させる、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記ポリマー材料が、ポリカーボネート、ポリエーテルイミド、ポリエチレンテレフタレート、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記ポリマー材料がポリカーボネートである、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記圧縮工程中に前記金型キャビティに加えられる圧縮力が、5000psi(34500kPa)より大きい、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記金型インサートが、アレイの形態の複数のマイクロニードルのネガ像を有する、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記金型インサートが複数のアレイのネガ像を有する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記成形されたマイクロニードルが、基材と一体形成された複数のマイクロニードルを備えるマイクロニードルアレイの一部として形成される、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
前記マイクロニードルアレイは、基部と整列した平面で測定される表面積が約20平方マイクロメートル以上、且つ100平方マイクロメートル以下の実質的に平坦な先端を有する複数のマイクロニードルを備える、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記マイクロニードルアレイが、より大きいアレイの一部として形成され、前記より大きいアレイの少なくとも一部が、パターン形成されていない基材を備える、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項19】
前記パターン形成されていない基材の面積が、約0.10平方インチ(0.65cm2)より大きく、約1平方インチ(6.5cm2)未満である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記マイクロニードルアレイの複数の成形されたマイクロニードルの高さが、前記金型インサートの前記マイクロニードルトポグラフィーの対応する高さの約95%より大きい、請求項16〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記マイクロニードルアレイが、実質的に角錐状の形状を有する複数のマイクロニードルを備える、請求項16〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記射出工程中に前記金型装置に超音波エネルギーを加えることを更に含む、請求項1〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記圧縮工程中に前記金型装置に超音波エネルギーを加えることを更に含む、請求項1〜22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記金型インサートが、前記射出工程中、圧縮工程中、および開放工程中、実質的に一定の温度に保持される、請求項1〜23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
(i)少なくとも1つのマイクロニードルのネガ像を有する金型インサートを備える金型装置を提供する工程であって、前記金型装置が開放位置と閉鎖位置を有する工程、
(ii)前記金型装置を前記閉鎖位置に置く工程、
(iii)前記金型装置に約5,000Hzより大きい周波数を有する音響エネルギーを加える工程、
(iv)前記閉鎖した金型装置の中にポリマー材料を射出する工程、
(v)前記金型を開放する工程、および
(vi)前記成形されたマイクロニードルアレイを前記金型から取り出す工程、
を含むマイクロニードルアレイの成形方法。
【請求項26】
前記音響エネルギーが、前記金型インサートに加えられる超音波エネルギーである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記金型装置が、圧縮コア、および、前記金型インサートと前記圧縮コアの相互運動を可能にするように構成された金型ハウジングを更に備え、前記圧縮コアと前記金型インサートの相互運動によって、前記射出されたポリマー材料を前記金型インサートと前記圧縮コアの間で圧縮する工程を更に含む、請求項25又は26に記載の方法。
【請求項28】
前記ポリマー材料がポリカーボネートである、請求項25、26、又は27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記圧縮工程中に前記金型キャビティに加えられる圧縮力が、5000psi(34500kPa)より大きい、請求項27又は28に記載の方法。
【請求項30】
前記金型インサートが、アレイの形態の複数のマイクロニードルのネガ像を有する、請求項25〜29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記金型インサートが複数のアレイのネガ像を有する、請求項25〜30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記成形されたマイクロニードルが、基材と一体形成された複数のマイクロニードルを備えるマイクロニードルアレイの一部として形成される、請求項30又は31に記載の方法。
【請求項33】
前記マイクロニードルアレイの複数の成形されたマイクロニードルの高さが、前記金型インサートの前記マイクロニードルトポグラフィーの対応する高さの約95%より大きい、請求項30、31又は32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記音響エネルギーが、前記マイクロニードルアレイの平面に垂直な方向に加えられる、請求項32又は33に記載の方法。
【請求項35】
前記音響エネルギーが、前記マイクロニードルアレイの平面に平行な方向に加えられる、請求項32又は33に記載の方法。
【請求項36】
前記音響エネルギーが、超音波ホーンによって加えられる、請求項25に記載の方法。
【請求項37】
前記超音波ホーンが、前記射出されたポリマー材料に直接接触する、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記超音波ホーンが十字形である、請求項36に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【公表番号】特表2008−522875(P2008−522875A)
【公表日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−545566(P2007−545566)
【出願日】平成17年12月7日(2005.12.7)
【国際出願番号】PCT/US2005/044121
【国際公開番号】WO2006/062974
【国際公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】