説明

マスク欠陥検査装置およびマスク欠陥検査方法

【目的】マスク面上のパターン領域と非パターン領域の間に段差があるマスクであっても、効率的に検査可能なマスク欠陥検査装置およびこれを用いたマスク欠陥検査方法を提供する。
【構成】マスク面に対するフォーカス合わせを行うフォーカス合わせ機構と、パターン画像の取り込み時の検査視野走査方向上の検査視野を挟む第1箇所と第2箇所のマスク面におけるフォーカスを、それぞれ検出する第1のフォーカス検出部および第2のフォーカス検出部と、第1および第2の箇所が、パターン領域と非パターン領域とのいずれに位置するかを判定する判定部と、判定部の判定結果に基づき、フォーカス合わせ機構に対しフォーカス合わせ方法を指示するフォーカス合わせ方法指示部と、を有することを特徴とするマスク欠陥検査装置およびこれを用いたマスク欠陥検査方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターンが形成されたマスクの欠陥を検査するマスク欠陥検査装置およびマスク欠陥検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体パターンの微細化は著しく進んでいる。半導体は、一般的にマスクに描画されたパターンをウェハに縮小投影する形で製造される。そのため、半導体の微細加工には縮小投影光学系における回折の影響による限界がある。
【0003】
縮小光学系が対応できる最小パターンサイズは使用する光の波長に比例するため、半導体露光装置の光源の短波長化は193nmまで進んでいる。しかし、これ以上の短波長化は、対応できる硝材がほとんどなくなるため、次世代露光装置では真空中の反射光学系で構成される極紫外線(EUV光)を使ったものまで一気に進むと考えられている。
【0004】
もっとも、この装置は解決すべき課題も多く、また非常にコスト高である。このため、その代案の1つとしてインプリント・リソグラフィが検討されている。
【0005】
インプリント・リソグラフィの原理は、半導体パターンと同サイズのパターンが彫られたガラスマスクをインプリント・レジストに押し付け、レジストを紫外線硬化させた後マスクを剥がす、いわば判子の原理である。そのため、インプリント・リソグラフィ用のマスクは、特許文献1にあるように、パターン領域が周辺の非パターン領域より突出した凸形状を持っている。
【0006】
インプリント・リソグラフィ用のマスクをマスク欠陥検査装置で検査する場合、以下のような問題が発生する。一般に、マスク欠陥検査装置は、リニア・サーペンタイン動作で検査領域をスキャンする。検査の対象となるパターン領域は、凸形状の端のぎりぎりまでパターンが形成されている。このため、マスク走行時に数十ミクロンから数百ミクロンある非パターン領域との段差でマスク面に対する大幅なデフォーカスが生じてしまう。
【0007】
この問題に対する対策としては、各マスク走行をフォーカスがマスク面のパターン領域に合った箇所から外れる箇所まで行い、次に逆方向にも同様の検査を行い検査の重なった領域をデジタル処理で融合するいわゆる往復型スキャンがある。しかし、往復型スキャンは通常のリニア・サーペンタイン型スキャンに比べて検査時間が長くなるため好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−23113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、マスク面上のパターン領域と非パターン領域の間に段差があるマスクであっても、効率的に検査可能なマスク欠陥検査装置およびマスク欠陥検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様のマスク欠陥検査装置は、パターンが形成されたパターン領域と、パターン領域を囲みパターンが形成されない非パターン領域とを有するマスク上に、光を照射して得られるパターン画像を用いてマスク上の欠陥を検査するマスク欠陥検査装置であって、マスク面に対するフォーカス合わせを行うフォーカス合わせ機構と、パターン画像の取り込み時の検査視野走査方向上の検査視野を挟む第1箇所と第2箇所のマスク面におけるフォーカスを、それぞれ検出する第1のフォーカス検出部および第2のフォーカス検出部と、第1および第2の箇所が、パターン領域と非パターン領域とのいずれに位置するかを判定する判定部と、判定部の判定結果に基づき、フォーカス合わせ機構に対しフォーカス合わせ方法を指示するフォーカス合わせ方法指示部と、を有することを特徴とする。
【0011】
上記態様のマスク欠陥検査装置において、フォーカス合わせ方法指示部が、判定部により第1および第2の箇所のうちパターン領域上に位置すると判定された箇所のフォーカスを検出する検出部のフォーカス検出結果に基づき、フォーカス合わせを行うよう指示することが望ましい。
【0012】
上記態様のマスク欠陥検査装置において、判定部が、第1および第2のフォーカス検出部によって検出されるフォーカス検出結果により判定することが望ましい。
【0013】
上記態様のマスク欠陥検査装置において、判定部が、第1および第2の箇所の両方がパターン領域上に位置すると判定する場合、フォーカス合わせ方法指示部が、第1および第2のフォーカス検出部のフォーカス検出結果の平均に基づき、フォーカス合わせを行うよう指示することが望ましい。
【0014】
本発明の一態様のマスク欠陥検査方法は、パターンが形成されたパターン領域と、パターン領域を囲みパターンが形成されない非パターン領域とを有するマスク上に、光を照射して得られるパターン画像を用いてマスク上の欠陥を検査するマスク欠陥検査方法であって、パターン画像の取り込み時の検査視野走査方向上の検査視野を挟む第1箇所と第2箇所のマスク面におけるフォーカスを、それぞれ検出し、第1および第2の箇所が、パターン領域と非パターン領域のいずれに位置するかを判定し、判定される結果に基づき、検査視野内のマスク面に対するフォーカス合わせ方法を決定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、マスク面上のパターン領域と非パターン領域の間に段差があるマスクであっても、効率的に検査可能なマスク欠陥検査装置およびマスク欠陥検査方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1の実施の形態の要部の構成を示す模式図である。
【図2】第1の実施の形態のマスク欠陥検査装置の全体構成を示す図である。
【図3】第1の実施の形態のマスク欠陥検査装置における検査の説明図である。
【図4】第1の実施の形態のマスク欠陥検査装置の被測定試料となるインプリント・リソグラフィ用のマスクの説明図である。
【図5】第1の実施の形態のマスク欠陥検査方法を示す図である。
【図6】第3の実施の形態の要部の構成を示す模式図である。
【図7】第4の実施の形態の要部の構成を示す模式図である。
【図8】第5の実施の形態の要部の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
【0018】
なお、本明細書中、「マスク面」とは、マスクのパターンが形成された側の面を意味するものとする。
【0019】
(第1の実施の形態)
本実施の形態のマスク検査装置は、パターンが形成されたパターン領域と、パターン領域を囲みパターンが形成されない非パターン領域とを有するマスク上に、光を照射して得られるパターン画像を用いてマスク上の欠陥を検査するマスク欠陥検査装置である。そして、マスク面に対するフォーカス合わせを行うフォーカス合わせ機構と、パターン画像の取り込み時の検査視野走査方向上の検査視野を挟む第1箇所と第2箇所のマスク面におけるフォーカスを、それぞれ検出する第1のフォーカス検出部および第2のフォーカス検出部と、第1および第2の箇所が、パターン領域と非パターン領域とのいずれに位置するかを判定する判定部と、判定部の判定結果に基づき、フォーカス合わせ機構に対しフォーカス合わせ方法を指示するフォーカス合わせ方法指示部と、を有する。
【0020】
本実施の形態のマスク検査装置は、少なくとも検査視野走査方向の前後の2箇所に2つのフォーカス検出部を備える。そして、常にマスク面の非パターン領域に位置する箇所のフォーカスを検出するフォーカス検出部は用いずに、パターン領域に位置する箇所のフォーカスを検出するフォーカス検出部だけを用いて検査視野内のマスク面に対するフォーカス合わせを行うことを可能にする。
【0021】
このため、マスク面上のパターン領域と非パターン領域の間に段差があるマスクであっても、段差の影響でフォーカス合わせ機構が無駄な動作をすることがなくなり、その動作に伴うタイムラグもなくなるため、効率的に検査することが可能となる。
【0022】
以下、マスク面上のパターン領域と非パターン領域の間に段差があるマスクとしてインプリント・リソグラフィ用のマスクを例に説明する。
【0023】
図2は、本実施の形態のマスク欠陥検査装置の全体構成を示す図である。図3は、本実施の形態のマスク欠陥検査装置における検査の説明図である。
【0024】
図2に示す、マスク欠陥検査装置100においては、被測定試料であるマスク101に形成されたパターンにおける被検査領域が、図3に示されるように、仮想的に幅Wの短冊状の検査ストライプに分割されている。そして、この分割された検査ストライプが連続的に操作されるように、図2に示すXYθテーブル102上にマスク101を搭載し、ステージをX軸方向に連続移動させながら検査が実行される。1つのストライプ検査が終了したら、隣のストライプを観察するためにY軸方向にステップ移動が行われる。この動作を続けることにより、本実施の形態では、リニア・サーペンタイン型スキャンが行われる。
【0025】
マスク101は、オートローダ130とオートローダ制御回路113を用いて、XYθテーブル102の上に載置されるが、テーブルの走行軸に対してパターンが平行になっているとは限らない。そのため、走行軸に平行に搭載できるようにθステージの上に固定される場合が多い。上記のXYθテーブル102の制御は、X軸モータ、Y軸モータ、θ軸モータとテーブル制御回路114を用いて行われる。
【0026】
マスク101に形成されたパターンには、適切な光源103から発せられた光が照明光学系170によって照射される。マスク表面で反射した光は拡大光学系104を介して、検査用撮像手段であるフォトダイオードアレイ105に入射される。フォトダイオードアレイ105の上には、図3に示す仮想的に分割されたパターンの短冊状領域の一部が拡大され、光学画像として結像される。結像状態を良好に保つためにマスク面でのデフォーカスが最小に抑えられるよう、オートフォーカス制御回路142によりオートフォーカス制御されている。
【0027】
フォトダイオードアレイ105上に結像したパターンの像は、フォトダイオードアレイ105によって光電変換され、さらにセンサ回路106によりA/D変換される。このセンサ回路106から出力された測定画像データは、位置回路107から出力されたXYθテーブル102上のマスク101の位置を示すデータと共に比較回路108に送られる。
【0028】
一方、マスク101のパターン形成時に用いた設計データは、磁気ディスク109から制御計算機110を介して展開回路140に読み出される。展開回路140では、読み出された設計データが、2値または多値の設計画像データに変換され、この設計画像データが参照回路144に送られる。参照回路144は、送られてきた図形の設計画像データに対して適切なフィルタ処理を施す。
【0029】
このフィルタ処理は、センサ回路106から得られた測定パターンデータには、拡大光学系104の解像特性やフォトダイオードアレイ105のアパーチャ効果等によってフィルタが作用した状態になるため、設計画像データにもフィルタ処理を施して、測定画像データに合わせるために行われる。比較回路108は、測定画像データと適切なフィルタ処理が施された設計画像データとを適切なアルゴリズムにしたがって比較し、一致しない場合には欠陥有りと判定する。
【0030】
このように、被検査試料であるマスク表面に形成されたパターンに存在する欠陥や異物を検査する本実施の形態のマスク検査装置では、高分解能顕微鏡と同様の光学系を用いてマスクパターン像を形成し、例えば、上記のフォトダイオードアレイのようなCCDカメラや、あるいはラインセンサ等の撮像素子によって画像情報として取得し、別に取得あるいは形成した基準画像との比較を行ってパターン内の欠陥や異物を見つけるようになっている。
【0031】
なお、ここでは欠陥検出のために設計画像データと測定画像データを比較するマスク欠陥検査装置について説明したが、測定画像データ同士を比較するマスク欠陥検査装置であってもかまわない。
【0032】
また、ここでは照明光学系として反射検査のための反射照明光学系のみを有するマスク欠陥検査装置について説明したが、透過検査のための透過照明光学系をさらに有するマスク欠陥検査装置であってもかまわない。
【0033】
図4は、本実施の形態のマスク欠陥検査装置の被測定試料となるインプリント・リソグラフィ用のマスクの説明図である。図4(a)が上面図、図4(b)が図4(a)のAA断面図である。
【0034】
インプリント・リソグラフィ用のマスク10には、パターン領域12と非パターン領域14が存在し、パターン領域12は、非パターン領域14から、数十ミクロンから数百ミクロン出っ張って形成されている。また、パターン領域には表面の凹凸によりパターンが形成されている。
【0035】
図1は、本実施の形態の要部の構成を示す模式図である。図1(a)はマスクの断面を含む模式図、図1(b)はフォーカス検出部のフォーカス検出位置の説明図である。
【0036】
図1(a)に示すように、本実施の形態のマスク欠陥検査装置は、XYθテーブル102上に載置されるインプリント・リソグラフィ用のマスク10を検査する。図1(a)では、マスク10のパターン面(またはマスク面)が上側にくるように図示している。すなわち、検査光は図の上方からマスク面に照射される。
【0037】
本実施の形態のマスク欠陥検査装置は、マスク面に対するフォーカス合わせを行うフォーカス合わせ機構22を備えている。フォーカス合わせ機構22は、マスク面におけるフォーカスまたはデフォーカス量の検出結果に基づき、例えば、図1(a)中黒矢印で示すように、XYθテーブル10を上下移動させることによりフォーカス合わせを行う。いわゆる、フォーカスサーボ処理が行われることになる。
【0038】
これにより、フォトダイオードアレイに結像されるマスク面のパターン画像の結像状態を良好に保つことが可能となる。図2に示すオートフォーカス回路142は、フォーカス合わせ機構22の一構成要素である。なお、フォーカス合わせは、必ずしも、XYθテーブル10の上下移動に限らず、例えば、対物レンズやフォーカス補正用の光学レンズ等を移動させることで行うものであってもかまわない。
【0039】
そして、パターン画像の取り込み時の検査視野走査方向(図1中白矢印)上の検査視野20を挟む2箇所、第1の箇所P1、第2の箇所P2のマスク面におけるフォーカスを、それぞれ検出する第1のフォーカス検出部24および第2のフォーカス検出部26を備えている。第1のフォーカス検出部24および第2のフォーカス検出部26は、パターン領域が合焦点位置となるよう調整されている。
【0040】
第1のフォーカス検出部24および第2のフォーカス検出部26は、検査視野20を挟む2箇所、すなわち、第1の箇所P1、第2の箇所P2のマスク面におけるフォーカスを検出しうる構成であれば特に限定されるものではない。例えば、マスク面と共役の位置に配置される検査視野用のスリットにパターンを設け、このパターンの光強度をパターン画像取得用のフォトダイオードアレイと別個のセンサでモニタすることでデフォーカス量を検出することが可能である。あるいは、検査光とは別個のフォーカス測定用光学系を用いてもかまわない。
【0041】
さらに、第1の箇所P1および第2の箇所P2が、パターン領域12と非パターン領域14とのいずれに位置するかを判定する判定部28を備えている。
【0042】
そして、判定部28の判定結果に基づき、フォーカス合わせ機構22に対しフォーカス合わせ方法を指示するフォーカス合わせ方法指示部30を備えている。
【0043】
本実施の形態においては、判定部28は、第1のフォーカス検出部24および第2のフォーカス検出部26により検出するフォーカスにより、第1の箇所P1および第2の箇所P2が、パターン領域12と非パターン領域14とのいずれに位置するかを判定する。例えば、第1のフォーカス検出部24または第2のフォーカス検出部26で検出されるパターン領域からのデフォーカス量が所定の閾値を超えるような場合、その箇所は非パターン領域に位置すると判定する。
【0044】
フォーカス合わせ方法指示部30では、判定部28の判定結果に基づき、フォーカス合わせ機構22に対しフォーカス合わせ方法を指示する。例えば、判定部28により、第1の箇所P1および第2の箇所P2のうちパターン領域12上に位置すると判定された箇所のフォーカスを検出する検出部のフォーカス検出結果に基づき、フォーカス合わせを行うよう指示するよう構成される。
【0045】
例えば、第1のフォーカス検出部24または第2のフォーカス検出部26のいずれか一方で検出されるデフォーカス量が所定の閾値を超え非パターン領域にあると判定され、他方で検出されるデフォーカス量が所定の閾値内にありパターン領域にあると判定されるとする。このような場合に、フォーカス合わせ方法指示部30がパターン領域にあると判定された方のフォーカス検出部で検出されるフォーカスを用いて、フォーカス合わせを行うようフォーカス合わせ機構22に指示するよう構成される。
【0046】
また、本実施の形態においては、判定部28が、第1および第2の箇所P1、P2の両方がパターン領域12上に位置すると判定する場合、フォーカス合わせ方法指示部30が、第1のフォーカス検出部24および第2のフォーカス検出部26のフォーカス検出結果の平均、例えば、検出されるデフォーカス量の平均値を用いてフォーカス合わせ機構22がフォーカス合わせを行うようフォーカス合わせ機構22に指示するよう構成されている。
【0047】
なお、判定部28およびフォーカス合わせ方法指示部30は、例えば、CPUや回路基板等のハードウェアまたはハードウェアとプログラム等のソウトウェアとの組み合わせで構成される。
【0048】
図5は、本実施の形態のマスク欠陥検査方法を示す図である。本実施の形態のマスク欠陥検査方法は、パターン画像の取り込み時の検査視野走査方向上の検査視野を挟む第1箇所と第2箇所のマスク面におけるフォーカスを、それぞれ検出し、第1および第2の箇所が、パターン領域と非パターン領域のいずれに位置するかを判定し、判定される結果に基づき、マスク面に対するフォーカス合わせ方法を変更する。
【0049】
マスク10の検査は、スキャン経路32のように、検査視野20がマスク面上をリニア・サーペンタイン動作で走査してパターン画像を取得していく。
【0050】
まず、パターン画像の取り込み時に、第1のフォーカス検出部24および第2のフォーカス検出部26で検出される第1および第2の箇所P1、P2のデフォーカス量の平均値を用いてフォーカス合わせ機構22が検査視野20内のマスク面に対するフォーカス合わせを行う。検査視野20の走査が進み、P1がパターン領域12をはずれ非パターン領域14に入り、検出されるデフォーカス量が所定の閾値を超えた場合、判定部28が、P1が非パターン領域に入ったと判定する。すると、フォーカス合わせ方法指示部30がフォーカス合わせ方法の変更を指示する。具体的には、第2のフォーカス検出部26で検出されるP2のフォーカス検出結果を用いて、フォーカス合わせを行うようフォーカス合わせ機構22に指示する。
【0051】
閾値は、あらかじめパターン領域12と非パターン領域14の段差の大きさ等を考慮して、フォーカス検出部の検出位置が非パターン領域14に入ったことを判定部28で識別できるよう設定される。
【0052】
その後、逆方向の走査に入り、P1が非パターン領域14からパターン領域12に入り、第1のフォーカス検出部24で検出されるデフォーカス量が許容範囲、すなわち、閾値内に入ったことが確認されると、フォーカス合わせ方法指示部30が第1のフォーカス検出部24および第2のフォーカス検出部26で検出されるデフォーカス量の平均値を用いてフォーカス合わせ機構22がフォーカス合わせを行うようフォーカス合わせ機構22にフォーカス合わせ方法の変更を指示する。
【0053】
本実施の形態のマスク欠陥検査装置およびマスク欠陥検査方法によれば、パターン領域12に対して大きな高低差のある非パターン領域14から得られるフォーカス情報を用いることなく、パターン領域12から得られるフォーカス情報のみでマスク面のフォーカス合わせが行われる。したがって、リニア・サーペンタイン動作の走査においても、マスクの段差の影響でフォーカス合わせ機構が無駄な動作、例えば、非パターン領域14にフォーカスを合わせるためのフォーカスサーボ処理、あるいは、非パターン領域14に合わせたフォーカスをフォーカスサーボ処理により再度パターン領域12に合わせなおすための待機等で生ずるタイムラグがなくなり、効率的に検査することが可能となる。
【0054】
また、本実施の形態では、第1および第2の箇所P1、P2が検査視野20外に設けられるため、検査視野20全体が非パターン領域14にはみ出るリニア・サーペンタイン動作であっても、有効に作用する。
【0055】
(第2の実施の形態)
本実施の形態は、判定部が、第1および第2の箇所P1、P2の両方がパターン領域上に位置すると判定する場合、フォーカス合わせ方法指示部が、検査視野の走査方向の後方に位置するフォーカス検出部のみを用いるよう指示すること以外は、第1の実施の形態と同様である。したがって、第1の実施の形態と重複する内容の記載は省略する。
【0056】
本実施の形態では、図1および図5において、判定部28が、第1および第2の箇所P1、P2の両方がパターン領域12上に位置すると判定する場合、フォーカス合わせ方法指示部30が、検査視野20に対して走査方向の後方に位置するフォーカス検出部である第2のフォーカス検出部26で検出される結果のみを用いて、フォーカス合わせ機構22が検査視野20内のマスク面に対するフォーカス合わせを行う。
【0057】
その後、逆方向の走査に入り、P1が非パターン領域14からパターン領域12に入り、第1のフォーカス検出部24で検出されるデフォーカス量が許容範囲、すなわち、閾値内に入ったことが確認されると、フォーカス合わせ方法指示部30が第1のフォーカス検出部24で検出される結果のみを用いてフォーカス合わせ機構22がフォーカス合わせを行うようフォーカス合わせ機構22にフォーカス合わせ方法の変更を指示する。
【0058】
本実施の形態によれば、検査視野の走査方向の前方に位置するフォーカス検出部が、パターン領域から非パターン領域に入る瞬間には、検査視野に対して走査方向の後方に位置するフォーカス検出部でフォーカス合わせが行われている。したがって、第1の実施の形態のように、フォーカス合わせ方法を短い時間で変更する要請がなくなり、より簡便な機構で効率的に検査することが可能となる。
【0059】
(第3の実施の形態)
本実施の形態は、判定部が、第1および第2のフォーカス検出部によって検出されるフォーカスにより判定することにかえて、第1および第2の箇所P1、P2のマスク面上の位置座標をモニタすることで判定すること以外は、第1の実施の形態と同様である。したがって、第1の実施の形態と重複する内容の記載は省略する。
【0060】
図6は、本実施の形態の要部の構成を示す模式図である。判定部28は、例えば、測定されるXYθステージのXY位置と、あらかじめ入力されるマスク10のパターン領域と非パターン領域との境界位置とから、第1および第2の箇所P1、P2がパターン領域と非パターン領域とのいずれに位置するかを判定する。
【0061】
本実施の形態によれば、フォーカス検出部の検出結果による判定より簡易な構成で判定が可能である。また、例えば、第1および第2の箇所P1、P2と、パターン領域と非パターン領域との境界位置までの距離も判定する構成とすることで、実際に、第1または第2の箇所P1、P2が非パターン領域に入る前に、フォーカス合わせ方法を変更することも可能になる。
【0062】
(第4の実施の形態)
本実施の形態は、検査視野内のマスク面におけるフォーカスを検出する第3のフォーカス検出部をさらに有する点、および、判定部が第1および第2の箇所P1、P2の両方がパターン領域上に位置すると判定する場合、フォーカス合わせ方法指示部が、第3のフォーカス検出部の検出結果のみを用いるよう指示すること以外は、第1の実施の形態と同様である。したがって、第1の実施の形態と重複する内容の記載は省略する。
【0063】
図7は、本実施の形態の要部の構成を示す模式図である。図7(a)はマスクの断面を含む模式図、図7(b)はフォーカス検出部のフォーカス検出位置の説明図である。
【0064】
本実施の形態のマスク欠陥検査装置は、検査視野20内のマスク面の第3の箇所P3におけるフォーカスを検出する第3のフォーカス検出部40を備えている。
【0065】
本実施の形態では判定部28が、第1および第2の箇所P1、P2の両方がパターン領域12上に位置すると判定する場合、フォーカス合わせ方法指示部30が、第3のフォーカス検出部40で検出される結果のみを用いて、検査視野20内のマスク面に対するフォーカス合わせを行うようフォーカス合わせ機構22に指示する。
【0066】
そして、判定部28が第1の箇所P1が非パターン領域に入ったと判定した場合、フォーカス合わせ方法指示部30が、検査視野20の走査方向の後方に位置するフォーカス検出部である第2のフォーカス検出部26で検出される結果のみを用いて、フォーカス合わせを行うようフォーカス合わせ機構22に指示する。
【0067】
その後、逆方向の走査に入り、P1が非パターン領域14からパターン領域12に入ったと判定部28が判定すると、再度、フォーカス合わせ方法指示部30が、第3のフォーカス検出部40で検出される結果のみを用いて、検査視野20内のマスク面に対するフォーカス合わせを行うようフォーカス合わせ機構22に指示する。
【0068】
本実施の形態によれば、パターン領域12と非パターン領域14との境界近傍以外では、検査視野20内の第3の箇所P3でフォーカス合わせが行われる。したがって、より精度の高いフォーカス合わせの実現が期待される。
【0069】
(第5の実施の形態)
本実施の形態は、検査視野極近傍のマスク面におけるフォーカスを検出する第4のフォーカス検出部と第5のフォーカス検出部を有する点で、第1の実施の形態と異なっている。以下、第1の実施の形態と重複する内容の記載は省略する。
【0070】
図8は、本実施の形態の要部の構成を示す模式図である。図8(a)はマスクの断面を含む模式図、図8(b)はフォーカス検出部のフォーカス検出位置の説明図である。
【0071】
本実施の形態のマスク欠陥検査装置は、検査視野20極近傍のマスク面の第4の箇所P4におけるフォーカスを検出する第4のフォーカス検出部42と、検査視野20極近傍のマスク面の第5の箇所P5におけるフォーカスを検出する第5のフォーカス検出部44とを備えている。
【0072】
本実施の形態では判定部28が、第1および第2の箇所P1、P2の両方がパターン領域12上に位置すると判定する場合、フォーカス合わせ方法指示部30が、第4のフォーカス検出部42および第5のフォーカス検出部44のフォーカス検出結果の平均、例えば、デフォーカス量の平均値を用いてフォーカス合わせ機構22がフォーカス合わせを行うようフォーカス合わせ機構22に指示する。
【0073】
そして、検査視野20の走査が進み、判定部28が第1の箇所P1が非パターン領域に入ったと判定した場合、フォーカス合わせ方法指示部30が、フォーカス合わせ方法の変更を指示する。具体的には、第5のフォーカス検出部44で検出されるP5のフォーカス検出結果を用いて、フォーカス合わせを行うようフォーカス合わせ機構22に指示する。
【0074】
その後、逆方向の走査に入り、P1が非パターン領域14からパターン領域12に入ったと判定部28が判定すると、再度、フォーカス合わせ方法指示部30が、第4のフォーカス検出部42および第5のフォーカス検出部44のフォーカス検出結果の平均、例えば、デフォーカス量の平均値を用いてフォーカス合わせ機構22がフォーカス合わせを行うようフォーカス合わせ機構22に指示する。
【0075】
本実施の形態によれば、検査視野20の極近傍の第4の箇所P4または第5の箇所P5でフォーカス合わせが行われる。したがって、より精度の高いフォーカス合わせの実現が期待される。
【0076】
以上、具体例を参照しつつ実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。
【0077】
例えば、被検査試料としてインプリント・リソグラフィ用のマスクを例に説明したが、パターン領域と非パターン領域との間に段差を有するマスクであれば、その他のマスクにも本発明を適用することが可能である。
【0078】
また、装置構成や制御手法等、本発明の説明に直接必要としない部分等については記載を省略したが、必要とされる装置構成や制御手法を適宜選択して用いることができる。その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全てのマスク欠陥検査装置およびマスク欠陥検査方法は、本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0079】
10 マスク
12 パターン領域
14 非パターン領域
20 検査視野
22 フォーカス合わせ機構
24 第1のフォーカス検出部
26 第2のフォーカス検出部
28 判定部
30 フォーカス合わせ方法指示部
100 マスク欠陥検査装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
パターンが形成されたパターン領域と、前記パターン領域を囲みパターンが形成されない非パターン領域とを有するマスク上に、光を照射して得られるパターン画像を用いて前記マスク上の欠陥を検査するマスク欠陥検査装置であって、
マスク面に対するフォーカス合わせを行うフォーカス合わせ機構と、
前記パターン画像の取り込み時の前記検査視野走査方向上の前記検査視野を挟む第1箇所と第2箇所のマスク面におけるフォーカスを、それぞれ検出する第1のフォーカス検出部および第2のフォーカス検出部と、
前記第1および第2の箇所が、前記パターン領域と前記非パターン領域とのいずれに位置するかを判定する判定部と、
前記判定部の判定結果に基づき、前記フォーカス合わせ機構に対しフォーカス合わせ方法を指示するフォーカス合わせ方法指示部と、
を有することを特徴とするマスク欠陥検査装置。
【請求項2】
前記フォーカス合わせ方法指示部が、前記判定部により前記第1および第2の箇所のうち前記パターン領域上に位置すると判定された箇所のフォーカスを検出する前記検出部のフォーカス検出結果に基づき、フォーカス合わせを行うよう指示することを特徴とする請求項1記載のマスク欠陥検査装置。
【請求項3】
前記判定部が、第1および第2のフォーカス検出部によって検出されるフォーカス検出結果により判定することを特徴とする請求項1または請求項2記載のマスク欠陥検査装置。
【請求項4】
前記判定部が、前記第1および第2の箇所の両方が前記パターン領域上に位置すると判定する場合、前記フォーカス合わせ方法指示部が、前記第1および第2のフォーカス検出部のフォーカス検出結果の平均に基づき、フォーカス合わせを行うよう指示することを特徴とする請求項1ないし請求項3いずれか一項記載のマスク欠陥検査装置。
【請求項5】
パターンが形成されたパターン領域と、前記パターン領域を囲みパターンが形成されない非パターン領域とを有するマスク上に、光を照射して得られるパターン画像を用いて前記マスク上の欠陥を検査するマスク欠陥検査方法であって、
前記パターン画像の取り込み時の検査視野走査方向上の前記検査視野を挟む第1箇所と第2箇所のマスク面におけるフォーカスを、それぞれ検出し、
前記第1および前記第2の箇所が、前記パターン領域と前記非パターン領域のいずれに位置するかを判定し、
判定される結果に基づき、前記マスク面に対するフォーカス合わせ方法を変更することを特徴とするマスク欠陥検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−68321(P2012−68321A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−211298(P2010−211298)
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【出願人】(504162958)株式会社ニューフレアテクノロジー (669)
【Fターム(参考)】